Home/ 国防・安全保障 国防・安全保障 武器輸出外交で日本は安全保障のパートナーを目指せ! 2014.10.27 文/幸福実現党 神奈川県本部副代表・HS政経塾4期生 壹岐愛子 ◆新三原則により鎖国が解かれた日本 2014年4月1日、武器輸出三原則に代わる防衛装備移転三原則が閣議決定されました。日本はこれまで戦争当事国のみならず、全ての国に対して原則的に武器輸出禁止していました。 今回の新三原則により、国際協同開発など日本の安全保障に基づいた場合において、武器輸出が可能になり、世界は今、鎖国が解かれた日本の防衛技術への関心が高まっております。 初の本格的な自国の武器輸出として注目されているのが、オーストラリアへの潜水艦輸出です。今月16日に行われた日豪防衛相会談において、潜水艦の共同開発に向けた協議を開始することで合意をとっております。(10月17日読売新聞) 潜水艦の更新を決定していたオーストラリアは以前から日本の潜水艦技術に注目しておりました。日本の潜水艦技術は世界トップレベルであり、今回共同開発される予定の「そうりゅう型」はスターリングエンジンを搭載し、非常に静かなことが特徴的です。 また、原子力潜水艦とは違い、通常型の潜水艦は数日で充電切れになり浮上しますが、「そうりゅう型」は2週間も潜伏することができます。 ◆技術はそのまま国家の抑止力になる 今回、留意しなければならないのが、「どこまで日本の防衛技術を共有するか」という点です。 国際共同開発で忘れてはならないことは、優れた技術力はそれだけで国家の抑止力になるため、鍵となる技術や兵器の開発力は国内に保持する必要があります。 例えば、日米の戦闘機共同開発においても、重要な部分はブラックボックス化されており、情報共有されておりません。 今回も全ての最新技術を盛り込んだ潜水艦ではなく、設計や能力を一部変更した改造艦で共同開発することが大切です。 ◆潜水艦の需要高まる東南アジア 潜水艦のニーズがあるのはオーストラリアだけではありません。今、東南アジアを中心に潜水艦の輸出は急増しています。 例えば、ベトナムはロシアから潜水艦6隻を購入決定しており、2016年までに引き渡す予定です。また、インドネシアも、韓国に潜水艦3隻を依頼し、さらに2020年までに12隻増強する予定です。シンガポールもドイツから2隻購入する契約がとれています。 こうした背景にあるのは、中国の南シナ海への進出です。 自国の領有権を拡大しようとする中国に対して、隠れているだけで抑止力につながる潜水艦の需要は今後ますます高まっていくでしょう。日本はこうした友好国に対して積極的に武器輸出を行うべきです。 しかし日本は武器輸出に関しては他国よりも遅れをとっています。すでに競合が数か国進出している中において、日本の取るべき戦略はソフト面を含めた複合提案です。 潜水艦の運転能力は早くても5年かかると言われるほど難易度の高い操縦技術です。日本は友好国の操舵員候補生を日本に留学させ、永続的に日本とのパイプをつくることも必要でしょう。 また、日本は哨戒機をはじめとした対潜技術関連の情報を他国より多くもっております。人材育成力、対潜知識を活かし、ただの販売に終わらず、相手国との堅実な同盟を見据えた提案をすべきです。 ◆同盟国・友好国への武器輸出は抑止力になる 今後、日本の防衛技術を東南アジアに武器輸出することが新たな外交手段になることは間違いありません。防衛技術を共有し、武器輸出をすることそれ自体が中国への抑止力となります。 新三原則による武器輸出は、世界の平和維持貢献に消極的な体制から、積極的な働きかけができる体制作りです!それは、日本が安全保障のパートナーになるチャンスでもあります! アジアに責任をもち、外交手腕を発揮していくことがこれからの日本のあるべき姿です。 広島から真の世界平和運動を! 2014.10.24 文/幸福実現党広島県本部副代表 佐伯 知子 ◆8月6日の広島 今年8月6日、広島市では67回目となる平和記念式典が執り行われました。43年ぶりの本格的な雨の中、式典で松井一美広島市長は次のような″平和宣言″をしました。 「『絶対悪』である核兵器の廃絶へ、武力ではなく、人と人とのつながりを大切に未来志向の対話ができる世界の構築が不可欠。」 「日本国憲法の崇高な平和主義の下で戦争をしなかった事実を重く受け止め、名実ともに平和国家の道を歩み続けるよう、政府に求める。」(2014年8月7日中国新聞朝刊より) 核保有や武力を「絶対悪」とし、戦後日本を守ってきた憲法9条は決して改正してはならないとする立場での宣言でした。 この日、式典会場の外側では、全国から集まった「平和勢力」と称される運動員らも大きな垂れ幕を掲げ、マイクを握り、憲法改正や集団的自衛権を激しく非難していました。 同日に開催された広島市主催の「被爆者代表から要望を聞く会」では被爆者側が安倍総理に集団的自衛権の閣議決定の撤回を要望し、原水爆禁止世界大会・広島大会においても「集団的自衛権行使容認に反対する特別決議」がなされました。 いずれにしても憲法9条への強い信仰を感じた8月6日でした。 ◆原動力は「自虐史観」 彼らが憲法9条死守!を言い続ける原動力となっているのは何でしょうか。その根源にある思想が東京裁判史観、すなわち「自虐史観」です。つまりこういうことです。 ☆日本はかつて侵略戦争を行い、南京大虐殺や従軍慰安婦に言われるように、アジアの人々を数多く犠牲にし、多大な迷惑をかけた。 ☆日本がそのような犯罪国家であるので、正義の国アメリカはやむをえず日本を空爆し、原爆を落とさざるをえず、結果として多大な犠牲者を出すに至った。 ☆こうした多くの犠牲と引きかえに、日本は憲法9条を手に入れたのであり、憲法9条があるからこそ、その後日本は悪事を犯すことなく今日まで平和を享受できたのである。この教訓と反省のために犠牲となった多くの人々の為にも、なんとしても憲法9条は死守しなければならない。 ◆明かされる不都合な「真実」 ところが、今年に入って彼らが平和運動の原動力としていたこれらの論拠が大きく崩れ始めました。 河野談話が日韓の合作であったことを報じた1月1日の産経新聞に始まり、2月の石原元官房副長官の河野談話作成過程に関する国会証言、そして8月には「慰安婦問題」について朝日新聞が自らの報道についに誤報を認めました。 続いて、いわゆる「南京大虐殺」の問題も、証拠として上げられた「婦女子を駆り集めて連れて行く日本人兵たち」と解説された写真について、それを取り上げた本多勝一氏が「誤用」を認めました。(週刊新潮9月25日号) この写真は、当時「アサヒグラフ」(朝日新聞社)に取り上げられた「我が兵に護られて野良仕事より部落へ帰る日の丸部落の女子供の群」であり、歴史の捏造であったということが明かされ始めました。 歴史の捏造でつくられた「自虐史観」が間違いであったのなら、憲法9条を死守しなければならないという根拠が崩れます。 ◆真実に基づいた平和運動を 日本が軍事力を持つと、再び侵略国家になるというのが平和勢力の言い分ですが、今、実際にアジアの平和を脅かしているのは日本ではなく、中国や北朝鮮であるということは国際的にも明らかです。 そんな中での現状の反核・平和運動は、これらの国の覇権欲を増徴させ、結果的に戦争を招き寄せてしまうのだということを知らねばなりません。 先の大戦で日本が戦ったことには、欧米列強の植民地支配からアジアの人々を解放し、白人優位の人種差別政策を打ち砕くという大義がありました。 敗戦し、大きな犠牲を払いましたが、結果としてアジアの多くの国々は独立を果たし、大義は遂げられました。世界中の有色人種にも勇気を与え、アフリカ諸国の独立にも影響を与えました。 この真実を、日本国民に、世界に、そして先の大戦で亡くなられた方々にも伝えなければなりません。日本が悪かったから戦争が起こったのではありません。日本が悪かったから犠牲になったのではないのです。 日本はこの真実に基づき、かつての日本がそうであったように、真の世界平和に貢献するという公的な義務を果たさなければなりません。そのために、誤った自虐史観に基づく「河野談話」「村山談話」を白紙撤回し、政府の公式見解として新たな談話を発表するべきです。 また、憲法9条を改正し、正当な防衛力・軍事力を持つことで、覇権主義国家の暴走を止めなければなりません。戦後70年、自虐史観に終止符を打つ時が来ています。 歴史認識を改め広島の平和運動も、真の世界平和に向けてのリーダーシップをとれる、強く、豊かで精神的高みを有する国づくりへの運動へと変わらなければなりません。 朝鮮半島有事の際、日本に備えはあるのか? 2014.10.22 文/HS政経塾第2期卒塾生 幸福実現党世田谷区代表 曽我周作 ◆日本が訪朝団を派遣 菅官房長官は22日の会見で、拉致問題に関して北朝鮮の特別調査委員会と日本側の担当者が28日、29日に平壌で協議することを発表しました。 今回日本側から北朝鮮に向けて担当者が派遣されるわけですが、これまで第三国での協議が重ねられてきました。 どうして今回、日本側から北朝鮮に行くように、北朝鮮側が求めてくるのでしょうか。 また、「今回は拉致被害者の安否などを示す1回目の通報とはならない」と菅官房長官が述べていますが、何のために、「今このタイミングで」北朝鮮に日本側から行かなければならないのかという事に強い疑問が残ります。 拉致被害者家族の方々も非常に複雑な思いの中にあるでしょう。 ◆きな臭い朝鮮半島情勢 一方このタイミングを見計らったかのように、北朝鮮で今年5月から拘束されていた米国人男性のジェフリー・ファウル氏が解放されました。 これは北朝鮮側が対話姿勢を演出する目的があるのかもしれません。あまりにもタイミングが合いすぎているように感じざるを得ません。 しかも、韓国で産経新聞の前支局長が在宅起訴され、韓国からの出国をできない状況を延長される中で、日本だけではなく、世界の各国から韓国政府への懸念が寄せられる中でのことでもあります。まさに、「あてつけ」の如きです。 さらに、「ロシア政府は、日本円で2兆6000億円余りをかけて北朝鮮の鉄道網の近代化を進めることで北朝鮮と合意」したと伝えられ、ロシアとの関係強化を伺わせています。 また、金第一書記の動静が伝えられない中、10月初めインチョンで行われたアジア大会の閉会式に合わせて北朝鮮の政権幹部3人が、突然韓国を訪問し政府高官と会談、しかも移動は金第一書記の専用機であったことも、なんとなく「演出過剰」な感じがします。 その後19日には、北朝鮮と韓国の軍事境界線付近で互いに銃撃を行っています。どうも朝鮮半島情勢は、非常にきな臭い状況です。 ◆朝鮮半島有事の際、日本に備えはあるのか 北朝鮮は、日本との協議に対してどのような「演出」を考えているのでしょうか。 金第一書記の動静が北朝鮮メディアで伝えられないなか、様々な憶測が飛び交っていました。一部には、金氏失脚の噂まで出ていることが報道でもなされるほどでした。 金正恩氏失脚の懸念と、それについてどのような事態が想定されるか、ということが様々な言説でも見られるところでありました。 しかし、金氏はいまも北朝鮮の政権の座に君臨しており、金氏失脚どころか、もしも近い将来、金正恩第一書記率いる北朝鮮と、朴大統領率いる韓国との間で有事が起きた時、日本をはじめ、世界はいかに対応するのでしょうか。 特にアメリカは、国内でのエボラウイルス感染に揺れており、さらにISISへの対応を含め、最近ではアジアシフトというよりも、むしろ中東やアフリカ方面に関心が移っているなかで、迅速な対応が取れるのか非常に懸念されます。 アメリカでは11月4日に中間選挙が行われますし、その後ますますオバマ政権がレームダック化する懸念もあります。 さらに、今韓国は、反日姿勢を強めて、媚中姿勢に終始しており、日韓関係が悪化しています。同時に、韓国はアメリカからの信頼も揺らいでいるのではないでしょうか。日米韓の関係は一枚岩とは程遠い状況です。 また、北朝鮮と中国との関係悪化も指摘され続けています。逆に、拉致問題の進展次第ですが、日朝関係にも今後改善の可能性もあり、そこにロシアも入り乱れております。 もし、今、朝鮮半島有事が発生したらどうなるのでしょう。近隣各国はどう動くのでしょうか。我が国はどうすべきなのでしょう。 北朝鮮の本当の実情は分かりかねるものがありますが、ここのところの動きが非常に「派手」に見えるので、逆に油断できないのではないかという気が致します。 ◆拉致被害者救出への国民の思い結集を 先月は拉致被害者救出に向けては、国民の想いの、もう一段の結集が必要ではないかと書きました。 北朝鮮の姿勢がこれまでのものから変化し、拉致被害者の方々とその家族を、即座に一人残らず日本に帰国させるように望みます。しかし、これまでの北朝鮮の姿勢を見るにつけて、過度な期待もできませんし、信用もできません。 今後、私達日本国民には、まだ集団的自衛権の行使容認を具体的に定める法改正は行われてはいませんが、万一朝鮮半島有事が発生した時に、在韓邦人の救出に加え、「自衛隊を送り込んででも」拉致被害者の方々の救出をするのか。それとも、結局はアメリカ任せになるのか。そういうことが突きつけられるのかもしれません。 一日も早く、どのような状況下でも我が国の国民を守るため、有事にも備えて法改正を急ぐべきだと思います。 イスラム圏で止まらない「中国の進撃」 2014.10.18 文/幸福実現党山形県本部副代表 城取良太 ◆イランにとって中国はかけがえのない存在? イスラム国の台頭で中東情勢が緊迫の一途を辿る中、中国はイランとの蜜月関係を更に深めつつあります。 イラン国内のメディアによると、イスラム国(ISIS)対策として、中国とイランは共同軍事訓練を行う計画があり、イラン軍の最高司令官は「もしイスラム国がイランに侵攻してきたら、我々はイラン領域に入る前に、彼らを殲滅させる」と中国との共闘を公に宣言しています。(10/2 ・IRNA) また時を同じくして、9月20日には中国海軍の艦艇が、初めてイランの港湾に入港し、大歓迎を受けています。 もともと、中国とイランの関係は1980年代から続いており、制裁措置が行われる最中においても、イランの核開発への支援、武器輸出やミサイル技術の提供などを続け、イラン産の原油や天然ガスを大量に買い支えてきました。 今も核開発を巡って欧米諸国から制裁を受けるイランにとって、中国は世界からの孤立を避ける上で「かけがえのない存在」のように感じるところでしょう。 ◆イスラム圏で止まらない「中国の進撃」 イラン以外でも、中東・北アフリカのイスラム圏において「中国の進撃」は止まることを知りません。 具体的には、70%がスンニ派イスラム教徒である北アフリカのスーダンでは、1989年にイスラム色の非常に強いバシル政権成立後、国際テロを助長しているとして欧米からの制裁が加えられましたが、その間隙をぬって中国の投資が入り込み、今ではスーダン経済に与える影響は他を圧倒しています。 3年前に分離独立した南スーダンに眠る豊富な石油権益を守るため、今年に入ってからは両国の停戦交渉の仲介まで買って出ております。 また、中国とパキスタンの関係も非常に良好で、戦闘機や戦車の共同生産、核技術の提供、港湾などインフラ整備などで中国が支援しており、対インドの共闘関係を示す通り、近年カシミールのパキスタン領内に中国軍を配備したとも言われています。 中国が手を広げるのは反米的国家のみではありません。 アメリカの戦略的同盟国と見なされてきたサウジアラビアにおいて、かつては「無神論国家」として警戒されてきた中国ですが、ここ30年間で貿易総額は約100倍に跳ね上がり、今ではサウジアラビア国王から「中国は我々の兄弟国」と呼ばれるまでの信頼関係を構築しています。 濃淡の差こそあれ、イスラム圏の幅広くに中国の影響力は増していると考えてよいでしょう。 ◆中国とイスラム圏の接近を指摘していたハンチントン教授とカダフィ大佐 こうした中国とイスラム圏の緊密化について、アメリカの国際政治学者であるサミュエル・ハンチントン氏は「文明の衝突」の中で、 「イスラム文明と中華文明は、宗教・文化をはじめ、全てにおいて根本的に異なっているが…兵器拡散や人権その他の問題について、西欧という共通の敵に対して協力をする」と述べています。 また、リビア内戦で処刑されたカダフィ大佐も、中国とイスラム諸国の関係について、 「新しい世界秩序とは、ユダヤ人とキリスト教徒がイスラム教徒を支配することを意味し、もしそれができたら、その後はインド、中国、日本のその他の宗教の信奉者を支配するだろう。」 「儒教グループを代表する中国と、新十字軍を主導するアメリカとの間に闘争が起こることを期待しよう。…我々イスラム教徒は、我々の共通の敵との戦いで、中国を支持する。」と、中国とアメリカの闘争を期待する見解を、20年も前に発表しておりました。 ◆日本の中東外交の深化は必要不可欠だ しかし、今や中国こそが、欧米、特にアメリカとイスラム圏の衝突のイニシアティブを握っているといっても過言ではありません。 莫大な資源外交でイスラム諸国をてなずけながら、特に反米国家や武装テロ組織などへの武器移転・資金援助を行うことで、中東有事を誘発・助長し、財政難に喘ぐアメリカを中東に釘づけにさせ、アジア回帰を有名無実化させる―― まさに兵法三十六計の三計「借刀殺人(同盟者や第三者が敵を攻撃するよう仕向ける)」の如く、決して自らはアメリカと対峙することなく、自らのアジアでの覇権戦略を進めていこうとする中国の思惑が理解できます。 日本の国内では、未だに「日本にとっての中東外交は石油外交」ということをもって良しとする論調が少なくありませんが、「中国の中東外交がいかに彼らの覇権戦略につながっているか」という点からも、日本の中東外交を更に深化させていくことは必要不可欠なのです。 また、雇用を生み出さない資源依存型経済を助長させ、武器移転によって暴力やテロリズムを蔓延させる「中国モデル」から、持ち前の教育力で人を育み、技術力を育み、産業を育む「日本モデル」への脱却こそが、イスラム圏の安定と未来の幸福に繋がるのです。 このように日本が本格的に、中東におけるキープレーヤーになることこそ、欧米とイスラム圏の融和を促しながらも、中国の覇権主義を退けていく大きな力となっていくはずです。 【参考書籍】 「進撃の華人」 ファン・パブロ・カルデナル他著 日本はアジアの希望の光であり続けよ 2014.10.15 文/幸福実現党徳島県本部副代表 小松由佳 ◆民主化を支持する国際世論の必要性 香港で続く民主派デモに対し、20日の中央委員会総会を前に事態を収束させたいとの中国政府の思惑からか、一部で警察によるバリケードの撤去が始まりました。 政府は同時に、デモへの支持を表明した知識人らを14日までに50人以上拘束し、約10人の著作を発禁処分にするなど、言論統制を強めています。 中国の他地域でも民衆弾圧は続いており、ウイグル自治区で13日、7月にカシュガル地区で発生した大規模暴動について、首謀者ら12人に死刑が言い渡されています。 習近平氏は今のところ、香港における天安門事件の二の舞は避けていますが、こうした自由と民主主義を求める人々のエネルギーを解放することこそ、経済繁栄はじめ国家発展の原動力となると気づくべきでしょう。 こうした中、幸福の科学グループの大川隆法総裁は、10月9日、「国際政治を見る眼」と題した説法を行い(http://info.happy-science.jp/2014/11784/)、香港の動きについて、中国の民主化に繋がる可能性と、それをバックアップする国際世論形成の必要性を述べました。 そして、日本は、先の大戦についての誤った認識から自由になり、アジアに一定の責任を持ち、積極的に言論を発すべきであり、安倍政権の下、日本が国際正義の一端を担えるよう国体を変えようとしていることは、香港や台湾にとっても心強いことだとしました。 また、韓国では、朴政権による産経新聞前ソウル支局長の出国禁止が続いていますが、これも民主主義に反する行為として国内外から批判を受けており、慰安婦問題への固執も目に余る朴大統領に対し、大川総裁も同説法で「退場勧告したい」とまで述べています。 ◆日本がアジアを救ったとする黄文雄氏 こうした情勢を受け、徳島市内でも10月12日、台湾生まれの評論家である黄文雄氏が、「近代日本がつくった世界」と題する講演を行い、正しい歴史認識について語りました。 黄氏は、日本は古来、自然摂理や社会システムに恵まれ、強盗・疫病・内乱などの少ない「超安定社会」であり、特に明治以降、日本からソフトとしての「文明開化」とハードとしての「殖産興業」の波が広がったことが、21世紀のアジアを創ったと述べました。 戦前のアジアで日本だけが近代化に成功した理由として、黄氏は「日本だけが強盗社会でなかった」ことを強調しました。他のアジア諸国が匪賊や山賊に溢れていたのに対し、日本は「魏志倭人伝」にすら「盗みをしない国」として特記されていたといいます。 また、江戸の都が「世界一衛生状態が良い」と言われていたのに対し、日本以外のアジアは全体的に衛生状態が悪く、世界規模の伝染病には歴史上、中国発のものが多く、日本人が入ってくる前の台湾も、平均寿命が30歳程度であったことを指摘しました。 韓国併合についても、反対したのはヤンパンと呼ばれる一部の特権階級であり、一般庶民は大賛成だったとしました。 なぜなら、18世紀以降、韓国は赤字に苦しむ破綻国家であり、19世紀に入っても物々交換による原始的な経済で、貨幣も流通しておらず、日本が40年間近く財政支援を行ったことで、20世紀まで生き残れたような状態だったからだといいます。 ◆人類史にとって貴重な日本文明 また、黄氏は、日本特有の「特攻隊」の精神を評価し、それに通ずる「武士道」の重要性も指摘しました。 黄氏は、「道徳は宗教の一部に過ぎない」とした上で、日本においては、様々な宗教が共存してきたと同時に、宗教に代わるものとしての「武士道」があったとし、「日本の文化そのものが道徳を超えている」と述べました。 これに対し、中国の「儒教道徳」には、その中心的な概念である「仁」について明確に定義できないなど不十分な部分があり、「中国の人々は、内的な受け皿が無いのに外から無理やりに道徳を強制されたため、逆に良心を奪われたのではないか」と指摘しました。 そして、「場」や「結び」といった独特の価値観の上に、様々なものを忍耐して受け入れ、徐々に新しいものを創りだす「オープンシステム」として、長年に渡って続いてきた日本文明は、人類史にとって貴重であり、守らなくてはならないと、黄氏は熱く語りました。 こうしたアジアの同胞の言葉には、非常に勇気づけられるものがあります。迷走し自滅しようとしている中国や韓国をも救うべく、日本はアジアの希望の光として、正しい価値観を体現し続けなくてはならないのです。 クリミア危機の行動から紐解くロシアに対する適切な「視点」 2014.10.13 文/HS政経塾4期生 西邑拓真 ◆ロシアの行動原理を知る必要性 クリミア危機における、ロシアの一連の動きについて、以前、アメリカのヒラリー・クリントン前国務長官は、「ロシアの今の行動が当時のナチスの行動と似ている」として、プーチン大統領を「ヒトラーのようだ」と指摘しました。 確かに、ロシアによるクリミア編入は、ウクライナ国内のロシア系住民の保護を理由としており、ナチスがゲルマン民族の保護を理由に周辺国に介入していった動きと軌を一にしていると見えなくもありません。 一方で、クリミア編入やウクライナ東部でのロシアの動きは、ウクライナにおいて、ヤヌコービッチ政権に対する反政府デモが生じる前は確認されていたわけではないことからも、単にそれらを「侵略的行動」と必ずしも断定できないと言うこともできます。 また、バランス・オブ・パワーの観点から見て、特に、昨今の中国の軍事的拡大は、日露両国にとって大きな脅威になっているのは周知の通りです。そこで、望ましい日露関係の構築を進めていくためにも、今一度ロシアの行動原理というものを明らかにしていく必要があると思われます。 ◆「リアリズム」とは何か ミアシャイマー(2014)は、「ウクライナ危機は、国際政治では依然としてリアリズムが重要であり、それを無視すれば大きなリスクに直面することを物語っている」と指摘しています。 リアリズムにおける、国の最終目標は「自国の生き残り」です。世界は「無政府状態」の中にありますが、諸国家はこの最終目標を達するために、与えられた情報を駆使して、バランス・オブ・パワーを調整し、それを自分たちに有利な方向へ変化させていきます。これがリアリズムの立場です。 ◆地政学上のウクライナの位置づけ ところで、地政学上、ロシアにとってウクライナは、どのような位置づけにあたるのでしょうか。 1812年のナポレオンのフランスによるロシア遠征、1916年のドイツ帝国などからなる中央同盟諸国軍によるロシア帝国へのブルシーロフ攻勢、1941年のナチス・ドイツによるバルバロッサ作戦など、西欧諸国によるロシアへの攻撃の際、ウクライナは「横切る必要のある国家」として捉えられています。 これらの事柄からも、ウクライナは、ロシアにとって重要な緩衝国家に相当すると述べることができるわけです。 1990年以降、NATOは東方へ拡大し、NATO加盟の布石と位置付けられるEUも拡大を続けています。また、ウクライナに欧米の価値観を浸透させ、同国をロシアから引き離すための民主化促進に対し、欧米が資金援助している実態も指摘されています。 こうした背景の中で、2013年、ヤヌコービッチ前大統領がEUとの間で連合協定の締結を行わないことを機に、ウクライナで反政府デモが生じます。そして、同氏のロシアへの亡命を経て、ロシアはクリミア編入を行うことになったわけです。 ロシアのウクライナ情勢での一連の動きに対し、それらを「侵略的」と捉える向きもある一方、別の観点として、ロシアは、同国にとって重要な緩衝国が欧米から侵害を受けたことに対する、リアクションをとったのにすぎないという見方もできることがわかります。 それに従うと、ロシアの行動は、あくまでもリアリズムに則っている一方、欧米は「民主化」を盾にした外交行動をとる中でリアリズムを軽視し、ロシアの立場を十分に解していなかったと述べることができます(ミアシャイマー,2014 参照)。 ◆北方領土問題解決の鍵は、日露間でのwin-win関係の構築 さて、リアリズム論における「パワー」に相当するのが「軍事力」であり、それを担保するのが、人口および経済力からなる「軍事的潜在力」です。 1969年の中ソ国境紛争を機に、中露関係はこじれた状況にありましたが、現在の両国間は「戦略的パートナーシップ」として「長期的で、些細なことでは争わない二国関係」にあるとされています。石郷岡(2013)はこのような状況を、「表面上は笑顔を見せ、しっかりと握手をしながら、裏では、厳しい対立と駆け引きを繰り広げている」関係にあると表現しています。 その中で、双方にとってメリットが享受されることを念頭に、2004年に中露国境協定が結ばれました。これで、1994年の画定分と合わせると、全ての国境が画定したことになり、両国間の懸念事項となっていた国境問題が解決に到りました。 しかし、一方で、軍事的にも経済的にも拡張・拡大を続ける隣国・中国のパワーは大きな脅威として、ロシアに映っているのは間違いありません。 そのため、ロシアは、「バランシング(他国と同盟関係を結んだり、自国の防衛費を向上することによりバランスを保持する戦略)」を行い、自国のバランス・オブ・パワーを維持するために、日本との緊密な関係を築いていきたいという願望を持っていると考えられます。 日露間での懸念事項として「北方領土問題」がありますが、中露国境策定に見られたwin-win関係の構築の原則が、その解決のカギになると考えられます。そして、それがバランス・オブ・パワーの観点からの、日露間の望ましい協力関係の形成につながると期待できるわけです。 日本は、長期的視座から国益を追求していくことを前提とした上で、ロシアの持つ「ニーズ」とは何かを考え、それをロシアに対する外交戦略に落とし込み、プーチン大統領に「柔道技」として仕掛けていく必要があります。その「ニーズ」を探る視点こそ、「リアリズム」から求めることができるのではないでしょうか。 参考文献 石郷岡建著『ウラジミール・プーチン-現実主義者の対中・対日戦略』(2013年, 東洋書店) 奥山真司著『地政学-アメリカの世界戦略地図,』(2004年, 五月書房) ジョン・ミアシャイマー著『大国政治の悲劇』(2008年, 五木書房) ジョン・ミアシャイマー著『悪いのはロシアではなく欧米だ』(2014年, Foreign Affairs Report 2014 NO.9所蔵) 「自主防衛の気概」が導いた、日米防衛協力のためのガイドライン改定 2014.10.09 文/HS政経塾1期卒塾生・逗子市政を考える会代表 彦川太志 ◆日米防衛協力のためのガイドライン 10月8日、日米両政府の間で改定交渉が進む、「日米防衛協力のためのガイドライン」の中間報告が発表されました。 「ガイドライン」とは、特に日本の周辺で発生する有事において、日米両政府が取りうる協力体制について、まとめられたものです。 今回の改定の特色は、今夏の集団的自衛権行使容認の閣議決定を反映し、「米軍に対して自衛隊が連携できる内容と範囲が大幅に拡大した」と報道されている点にあります。 このような防衛協力の拡大について、自主防衛に関する日本国民の意識の高まりがあった事を、用語と共に解説させて頂きます。 解説する用語は、「アセット(装備品等)の防護」と、「切れ目の無い、実行的な政府全体に渡る同盟内の調整」です。 ◆「アセット(装備品等)の防護」とは 集団的自衛権の行使容認により、自衛隊は武力攻撃を受ける米軍の軍艦や軍用機、基地を守れるようになりました。 アセット(装備品等)とは、この米軍の軍艦や軍用機、基地のことを指す言葉です。 これで日米安保条約の「片務性」が解消されることとなり、日米安保協力がより強固なものとなりました。 ◆「切れ目の無い~同盟内の調整」 これは尖閣諸島などの離島防衛を念頭に置いたものです。 わが国の防衛について、米軍と自衛隊の役割はこの「ガイドライン」で明確に分担されております。 現行の「ガイドライン」では、以下の3点について取り決めを作っています。 (1) 平素から行う協力 (2) 日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等 (3) 日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合(周辺事態)の協力 現行のガイドラインの問題は、この3点に含まれない「脅威」については何の取り決めもなされていないため、日米両政権の相性や政治的環境の変化によって、ケースバイケースの対応がありえたと言うことに尽きます。 例えば、(3)の「周辺事態」は、朝鮮半島や台湾有事を想定した「非戦闘地域」での協力を想定したものであり、尖閣諸島についての取り決めではありませんでした。 また、(2)の「武力攻撃」については、すでに戦争が起きてからの話であり、中国公船や漁民が尖閣諸島に上陸を試みるような、「戦争以前」の小競り合いは対象外でした。 何かが起きた時、日米両政府がどう対応するのか、その事前の取り決めがなかったのです。 これがいわゆる「グレーゾーン」であり、ここに目をつけたのが、中国でした。 日米関係が悪く、日本に自主防衛の意志が無い状態にあって、「ガイドライン」の取り決めがない隙間を突けば、日米安保の片務性を暴露することができます。 平たく言えば、「ガイドライン」に含まれない「グレーゾーン」を突けば日米関係を破壊できると踏んで、2010年の漁船衝突事件が起きたのです。 ◆「グレーゾーン」を埋めたのは、自主防衛の気概 漁船衝突事件では、中国船の恣意的な衝突映像を隠蔽しようとした民主党政権に対し、勇気ある海上保安官が情報をYouTubeに公開しました。 これによって、誰の目にも中国による海洋進出の脅威が明らかとなり、幸福実現党の主張する自主防衛の気運が、全国に広がり始めたのです。 このように、全国に広がった自主防衛の気運が、夏の集団的自衛権の行使容認や、今回のガイドライン改定に影響を与えたことは間違いありません。 防衛協力の「グレーゾーン」を埋めたのは、国民ひとりひとりの意識の高まりだったのです。 本ガイドラインの改定について報じる9日の五大紙は、いずれも改定の背後に中国の脅威があることを認めています。 今後は、自衛隊がひとり自国の防衛のみならず、世界の平和と安定のために、積極的な役割を果たす必要がある、と言う論調を主流とさせる努力が必要となるでしょう。 日露パイプラインで、エネルギー安全保障を盤石にせよ 2014.10.06 文/HS政経塾3期生 幸福実現党新潟県本部副代表 横井 基至 ◆インド洋が中国の海に 中国のエネルギー戦略として、中東やアフリカ方面から原油や天然ガスを供給するために、インド洋のシーレーンを確保しようとする動きが活発化しています。 先月9月22日にアデン湾の海賊活動に参加している中国海軍ミサイル駆逐艦「長春」とミサイルフリゲート「常州」が、イランのバンダル・アッバース軍港に初めて寄港し、両国が友好関係ならびに両海軍の協力関係の進展を強調していることから、利益を共有している両国による対米戦略での「布石」と報じられています。(ロイター電子版 2014.9.24) さかのぼること2011年12月、インド洋上の島国セーシェルによる、中国海軍基地の誘致は現在も継続中で、中国も前向きな姿勢を示しており、実現されれば中国にとっては初の公式な海外軍事基地としてインド洋での足場が誕生することになります。 また、日本人にも海外旅行先として人気が高いモルジブについては、インド海軍が潜水艦基地をモルジブに建設しようと政府間で交渉中でしたが、先月中旬に中国が割り込むかたちで、習近平国家主席がモルジブを訪問し、モルジブ大統領と首脳会談を行い、空港や港湾等の整備や観光産業の振興などを中心とする大々的な支援を約束しました。 以上の計画が実現すれば、インド洋周辺の中国海軍拠点はなんと8個も存在することとなり、それに対しての米海軍の拠点は3か所と、中国海軍の存在感は高まる一方です。 出典:JBPRESS 中国海軍艦艇がイランに初寄港、インド洋沿岸に着々と戦略拠点を確保 米海軍もはや対処できず(北村淳) ◆エネルギー輸入のリスク分散を 中国はシーレーンを手中に収めるのみならず、イラン、パキスタン、ミャンマーから地上パイプラインによってエネルギー安全保障を強化しています。 しかし、日本には、海上輸送だけが唯一の「生命線」となっているため、インド洋、南シナ海のシーレーンを中国に抑えられてしまったら、日本は中国に対し白旗を上げざるをえないのが現状です。 アメリカ海軍に依存したシーレーン防衛から、自国のエネルギーは自ら守る精神のもと、関係各国と協力してシーレーン防衛を行うと同時に、エネルギー安全保障の転換として石油・ガスパイプラインによる分散供給が不可欠です。 ◆ 日露パイプライン建設を急げ サハリンガス田から天然ガスパイプラインを敷く計画があり、それはサハリン南端から北海道の北端まで、わずか43キロメートルの海底の工事で済み、あとは関東圏まで地上にパイプライン施設するという計画です。このパイプラインで、年間輸送量は200万立方メートル、国内天然ガス需要の17%をまかなえます。 また、ウラジオストクから新潟を経由して仙台と関東圏に天然ガスを供給する計画もあります。すでに国内の両方のパイプラインは稼働していることから、ウラジオストクから新潟にパイプラインを施設することで、船舶輸送によるLNGの輸入額高騰に悩まされることなく安く輸入することができます。 日本海側の各県には同様の計画があり、まさにパイプライン誘致合戦が繰り広げられています。 プーチン大統領は「パイプラインなどの輸送インフラを高度に発達させることにより、広大な地域に広がるロシアの特殊性を逆に競争力へ転換させ得る」とし、現在稼働している東シベリアパイプラインについても「ロシア極東のインフラが持つ可能性を飛躍的に高める」としてアジア市場の獲得という明確な戦略を掲げ、同時に極東地域に対する日本からの投資を積極的に呼び込んでいます。 ◆国としてエネルギー安全保障戦略を明確にせよ パイプラインの施設の問題点に漁業補償の問題があります。技術的な解決を追求すると同時に、国家のエネルギー事情に関わる問題ですので、国富流出阻止のためにも政府の主導が必要です。 同時に、民間企業から資金と技術を呼び込むことで、日本経済の成長戦略の一つとして目玉事業になることは間違いありません。 日本政府は早急にロシアとの関係を回復させ、信頼関係を築き、「エネルギーを政治利用しない」意思を再確認し、早急に日露パイプラインの建設を開始するべきであると考えます。 ピンチをチャンスへ。今こそ日露関係改善を図るとき! 2014.09.29 文/HS政経塾4期生 窪田真人 ◆ 日露首脳11月会談、日露両政府基本合意 日露首脳会談が、11月北京で開催予定のAPEC首脳会議の際に行われると27日各紙が報じました。ロシアは日本にとって国防の面で対中国包囲網を形成する為に、地政学上大変重要な国です。 しかしこれまで日本政府は、ウクライナ問題を巡って米欧と共に対露制裁を発動し、今年秋に予定されていたプーチン大統領の訪日も困難になっていました。 こうした中での、日露首脳会談の開催は日本にとって大変大きな意義を持ちます。 ◆ 過去2回、日本の対露制裁における米露双方からの批判 2014年3月ロシアがウクライナ南部クリミア自治共和国の独立を承認した際には、日本は査証(ビザ)発給要件緩和に関する協議を停止する制裁措置を行いました。 7月マレーシア航空機墜落事故の際には、クリミア併合やウクライナ東部の騒乱に関与したとみられる40人、またクリミアのガス企業と石油供給会社の2社を対象とした資産凍結を行いました。 こうした日本による対露制裁は、米欧と比較して大変甘いものです。 特に2度目の制裁に関しては、欧米はプーチン大統領の側近や政府当局者に加え金融、エネルギー、軍事技術産業をターゲットにした幅広い追加制裁を推し進めたのです。 それに対し、日本は既に欧米で制裁されている2社に加え、ロシア政府要人が含まれていない40人を対象にした制裁内容であった為、「日本は対露制裁に関して熱心ではない」と米欧各国から批判が相次ぎました。 その一方でロシアからは、「いかなる留保を付けようとも、露日関係のあらゆる面に損失を与え、後退させることは必至である」という声明が出され、日露関係の悪化に繋がりました。すなわち、日本は米露双方から批判を受けるという非常に苦しい立場に立たされたのです。 ◆ 9月に入ってからの日露関係の動向 8月28日ロシア軍がウクライナ東部に数千人規模の部隊を侵入させていることが判明し、親ロシア派の司令官とウクライナ政府高官が認めたことにより、9月12日米欧が対露追加経済制裁を発動しました。 日本においても、米国から金融分野での対露追加制裁を要請され、24日から武器輸出の厳格化やロシアの一部銀行による証券発行制限など対露追加制裁を発動しています。 この対露制裁は表向き米欧に配慮したものであり、形式上は米欧並みとなっていますが、内容として実効性は乏しくロシアとの関係を重視したものとなっています。 しかしその結果、米欧からの評価を上げることはできましたが、ロシアからは批判声明が出され、日露関係をより冷え込ませる結果になってしまいました。 実際に制裁強化の検討が報じられて以降「露、外相会談を拒否」、「プーチン氏側近のイワノフ大統領府長官が北方領土の択捉島訪問」など日露関係の悪化を示唆するニュースが数多く報じられました。 さらに、「ロシアが中国に天然ガス供給へ」、「露中共同で日本海沿岸に北東アジア最大の港を建設へ」など中露における経済関係の強化を報じるニュースが数多く報じられている点も見過ごすべきではありません。 ウクライナ情勢を巡り米欧諸国との関係が悪化する中、ロシアが中国との経済関係を深めようとする構図が見受けられます。 ◆ 日露首脳11月会談を日本はどう活かすべきか 日本はアメリカとの関係強化により国防を守りつつ、一方ではロシアとの関係強化により国防上対中国包囲網を固めたい、また北方領土問題を解決したいというのが率直なところでしょう。 こうした状況において、日露首相会談は大変重要な意味をもちます。ではこの機会をどうやって日露関係の改善に繋げていくべきでしょうか。 その答えとして、(1)日本が強いリーダーシップを以て米欧とロシアの関係改善に積極的に働きかけること、(2)ロシアにとって必要なエネルギー輸出、ハイテク導入、また極東開発における経済協力を日本が進んで行うこと、この2点が挙げられます。 特に米欧とロシアの関係改善は大変難しいですが、日本にとっては非常に重要であり、進んで行うべきです。 例えばイスラム国対処においてアメリカは各国の連携を呼びかけていますが、ロシアは現在、国際連携を検討する立場をとっています。 ここで日本が積極的に働きかけ、ロシアを連携支持の立場に引き込んだのであれば、米露関係が改善され、日本のプレゼンスも上げることができるでしょう。 ピンチはチャンス。今こそ日本が主体的に日露関係の強化に踏み出す時ではないでしょうか。 「日本の安全保障を考える」――アジア・太平洋地域の安定のために 2014.09.26 文/静岡県本部副代表 江頭俊満 ◆常に最悪の状況を想定して備える 防衛白書は、日本の防衛の現状と課題およびその取組についての理解を得ることを目的として毎年刊行されており、平成26年版は刊行40回目になります。 防衛白書の刊行を積み重ねてきたことで、わが国の防衛政策の透明性は国際的にも高い評価を得ています。 その防衛白書を読むと、『平和、安全および独立は、願望するだけでは確保できない。』『防衛力は、侵略を排除する国家の意思と能力を表す安全保障の最終的担保であり、ほかのいかなる手段によっても代替できない。』(第Ⅱ部・第1章・第1節「わが国の安全保障を確保する方策」)という記述があります。 これは、まさしくそのとおりであり、評価すべき内容です。 今日の国際社会は、多様で複雑かつ重層的な安全保障上の課題や不安定要因に直面しており、「常に最悪の状況を想定して備える」という基本的考え方を持つことが必要です。 よく、「最悪の事態を想定する前に、そうならないようにするのが先決だ」という議論がありますが、「そうならないように」努力するだけで、最悪の事態に絶対にならないという考えは、楽観すぎるものです。 例えば、「火事」を出さないように努力していていても、火事は起こるものです。それゆえに、税金を使って「消防車」という「備え」が必要となります。 また、消防車さえあれば、火事を予防できるとは言えないので、「消火器」を設置し、「防火訓練」を実施することが必要となります。 外交においては、国際問題の解決のために、政治的交渉や話し合いをするという基本的な手段がありますが、外交的問題の顕在化を未然に抑制したり解決したりする外交の手段である「軍事力」や「武力の行使」を排除するのは、この「消防車」や「消火器」あるいは「防火訓練」を放棄することと同じはずです。 ◆国際的枠組みや関与のあり方を検討する また、防衛白書には『わが国を取り巻く安全保障環境を改善してわが国に対する脅威の発生を予防する観点から、アジア太平洋地域や国際社会の一員としての協力などの分野で防衛力が果たす役割の重要性は増している。』(第Ⅱ部・第1章・第1節「わが国の安全保障を確保する方策」)という記述もあります。 現在、ASEAN諸国においては、地域における安全保障協力枠組みであるASEAN地域フォーラムや、ASEAN域内における防衛当局間の閣僚会合であるASEAN国防相会議(ADMM)がそれぞれ開催されています。 これに加え、2010年5月の第4回ADMMにおいて、日本を含めたASEAN域外国8か国を加えた拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)が創設されています。 地域の安全保障・防衛協力の発展・深化の促進という観点から、きわめて大きな意義があります。 しかしながら、近年、世界各地で発生している紛争は、民族、宗教、領土、資源などの様々な問題に起因し、国際社会にとっては、それぞれの性格に応じた国際的枠組みや関与のあり方を検討することが重要となっています。 ◆「憲法9条を堅持する平和国家」から脱皮する ここで、また防衛白書に目を戻すと、下記のような記述があります。 『中国は、東シナ海や南シナ海をはじめとする海空域などにおいて活動を急速に拡大・活発化させている。特に、海洋における利害が対立する問題をめぐっては、力を背景とした現状変更の試みなど、高圧的とも言える対応を示している。』(第Ⅰ部・概観・第2章「アジア太平洋地域の安全保障環境」) 東南アジア諸国が「中国の進出」に脅威を感じているのは事実であり、日本は、「アジア・太平洋地域の安定」のために、具体的かつ現実的な形で、主体的に責任を果たしていくべきであり、「日米安保」関係を強化したうえで、「憲法9条を堅持する平和国家」から速やかに脱皮しなくてはなりません。 ◆必要なら、武力の行使を実行する 日本は世界で有数の経済大国でありながら、ほとんど資源の供給ができず、地理的には島国であり、海上交通路(シーレーン)が生命線となっています。 日本の主要なシーレーンは、東シナ海から南シナ海を通り、マラッカ海峡を走っており、このシーレーンが走る海域には多くの紛争要因が潜んでいます。 さらに、日本の周辺には、核兵器や弾道ミサイルを保有する国が存在します。 このような状況から、「日本はその経済と国民の生命を維持するために、必要なら武力の行使を実行するだろう」と考えるのは、非常に合理的なことです。 日本には、強大な「軍事力」を持つ「必然性」、「可能性」、「能力」があると世界から見られていることを、日本人は自覚しなくてなりません。 日本は、外交姿勢、安全保障に関する態度に透明性を持つと同時に、「世界が理解できる言葉」で、日本が「国際関係においてどこまで責任を持つ」のかを明らかにすべきです。 加えて、「国連」が多くの面で限界に直面しているなかで、「国連憲章」も現状に合わせて変えていく必要があり、「国連至上主義」に固執していてはなりません。 すべてを表示する « Previous 1 … 55 56 57 58 59 … 101 Next »