Home/ 川辺 賢一 川辺 賢一 執筆者:川辺 賢一 幸福実現党茨城県本部代表(兼)政務調査会経済部会長 日本は「元」襲来に備えた戦略と「円」国際化構想を持て 2015.02.17 文/HS政経塾第2期卒塾生 川辺賢一 ◆人民元が狙う国際通貨の地位 今から約1年半前、中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立構想を発表しました。本部は北京、総裁は中国人、最大の出資国は中国政府となり、2015年中の運営開始が予定されております。 2020年までに8兆ドルとも言われるアジアのインフラ需要に応えるべく、GDP世界第2位の中国が主導で、世界銀行やアジア開発銀行を補完する長期の信用供与機関が設立されます。 その他にもBRICsの5か国の共同出資による新開発銀行や上海協力機構開発銀行、また「中国版マーシャルプラン」とも言われる400億ドルの「シルクロード基金」の設立など、中国は対外的な経済政策に躍起になっております。 こうした対外経済政策を進める中国の狙いは経済援助を通じて、親中派の国を増やしていくことばかりではありません。 2008年のリーマン・ショック以降、中国はアジアやラテンアメリカ諸国と、そして2011年にはイギリスと人民元建ての通貨スワップ協定を結びました。 中国の狙いはGDP第2位の経済力を使って、人民元の国際化を推し進めることなのです。 世界で人民元建ての資産を持つ企業や金融機関が増えれば、元建てを隠れ蓑にした米国発の金融制裁回避ルートができ、また「元建て資産の凍結」という強力なカードを中国は手にすることになるため、人民元の国際化は中国の覇権戦略の重要な一角であると考えられます。 むろん現在、人民元の為替レートは政府・中銀に管理され、資本取引は厳しく規制されているため、人民元が即座に国際通貨となることは考えられません。 しかし、元建ての貿易決済額は、円のそれを2013年に抜き、2014年にはその差が倍に開いています。さらに2013年に0.63%だった国際銀行間の決済通貨としての人民元のシェアは2014年10月時点で1.69%となり、すでに国際通貨である円の2.91%に迫る勢いをみせております(ドルは43.5%)。 ◆日本は円の国際化戦略を復活させよ 現在、各国の外貨準備やIMFを構成する資産として使われている国際通貨はドル、ユーロ、ポンド、円の4種ですが、円の各種国際シェアはドルやユーロと比べると、低い地位に甘んじております。 90年代、かつて日本にも円の国際化が活発に議論されていた時期もありましたが、バブル崩壊後の不良債権処理に予想以上に長く悩まされ、またBIS規制等、米英発のグローバル・スタンダードに必要以上に屈したため、いまやほとんど円国際化の議論が聞かれることはありません。 しかし、2008年のリーマン・ショック以降、米国市場、米ドル一極支配の国際金融秩序は各国からの疑念に晒され、その間隙を突いて中国が新たな金融秩序を形成しようとしているのです。 日本は国益追求の観点からだけでなく、アジアや世界の安定の観点から、改めて円国際化の構想を復活させるべきです。 ◆日本がやるべきこと ではそのために日本として政策的に何を推し進めれば良いのでしょうか。 ここでは一点に絞り、政策投資銀行や国際協力銀行といった政府系金融機関の資本を強化し、長期の信用供与を担う金融機関として、円国際化のためにフル活用していくことを提言いたします。 各種民営化政策が推進された小泉政権下では、2012年~14年を目途に政策投資銀行も完全民営化することが決まりましたが、現在、諸般の事情があって、その時期は5~7年程、延期されました。 しかし、これは時代の逆行ではなく、むしろ民営化は見送りとし、民間では出来ない長期の信用供与、国家プロジェクト的な案件を担っていくことを政府系金融機関のミッションとして改めて定め、資本増強を図っていくべきだと筆者は考えます。 実際、政投銀はメタンハイドレードの探査のために三井海洋開発(株)に1兆円の融資枠を設けるなど、民間の金融機関では負えないリスクを引受けております。 同じく円の国際化推進や「元」襲来を防ぐために、政府系金融機関が果たすべき公的な役割は大きいと考えます。 例えば円国際化のためには、東京市場でアジア通貨建ての債券や証券、金融商品が活発に取引されている状況をつくっていく必要がありますが、政府系金融機関を先導役とすることで、そうした金融市場の整備を需要面から支えていくことができます。 また「中国バブル崩壊対策」を打ち出して、中国から日本国内や東南アジアへ工場や営業所の撤退を考えている日本企業を資金面から支援していくこともできるでしょう。 日本にはアジアや世界の金融秩序を安定化させる使命があります。こうした政策を打ち出すことで、日本は「元」襲来、そして円国際化の進展を推し進めていくべきです。 2015年は日本発・新国際金融秩序を構想せよ 2015.01.27 文/HS政経塾第2期卒塾生 川辺賢一 ◆昨年公表された新しい金融規制案 昨年11月、世界の金融当局で構成される金融安定理事会(FSB)は、国際業務を展開する30の巨大銀行を対象にした新しい自己資本比率規制案を発表しました。 その内容は2019年1月以降を導入時期として、銀行が保有するリスク資産に対して、最低16~20%の自己資本を積まなければならないとするもので、対象となる銀行には日本の3つのメガバンクも含まれます。 世界の巨大銀行に対する自己資本率規制の強化は一見、銀行システムを安定化させるようでいて、経済成長にマイナスの影響を与えます。 銀行は自己資本比率を引き上げるために、融資を削減して資産規模そのものを縮小させる可能性があるからです。 ◆日本経済低迷の一因となった自己資本比率規制 実際、1988年に公表され90年代初頭、各国銀行に適用された世界初の自己資本比率(バーゼルⅠ、BIS規制)は、幸福実現党・大川総裁が『自由を守る国へ』で述べているように、90年代以降の日本経済を低迷させた一因となりました。 一般にBIS規制は80年代初めの中南米危機で巨大な不良債権を米銀が抱えたことをきっかけに発案されたとされます。 しかし、元米外交評議会研究主任のエブサ・カブスタインはBIS規制の作成過程を分析して、80年代半ば以降、海外融資残高を一気に伸長させた邦銀を抑えようとする意図で規制案が作られたことを明らかにしております。 もともとBIS規制は社債市場が整備されていた米英に有利で、日本を含む間接金融が発達した国に不利な規制です。 実際、邦銀は国際シンジケート・ローンの組成額を88年に1260億ドル、89年に1210億ドル、90年には1080億ドルと、バブル崩壊の前から漸減させています。 複数の銀行でリスク分散が図られるものの、巨大プロジェクトへの融資を多くの場合、無担保で提供するシンジケート・ローンにおいては、BIS規制のインパクトがじかに現れたと理解することができます。 その後、90年代にBIS規制が実際に適用される頃にはバブル崩壊による不良債権問題と相まって、日本の銀行システム、そして日本経済は多大なダメージを受けました。 ◆日本は新しい国際金融秩序を提唱し、間違ったグローバル・スタンダードを打ち砕け さてリーマン・ショック以降、再び自己資本比率規制が強化される流れにありますが、そもそも自己資本比率規制は世界が抱える金融リスクの量を低減させ、世界経済を安定化させることに成功したのでしょうか。 確かに自己資本利率規制によって、銀行がローンを資産として抱えるリスクは減ったかもしれません。 しかし、実際には、例えば住宅ローンが住宅抵当証券になったように、世界が抱える金融リスクの量は減ったわけではなく、形を変えて一定に存在し続けているのです。 さらに新しい自己資本比率目標達成の過程で、銀行が融資を引き揚げていけば、それ自体が世界経済を低迷させる要因になります。 そもそも、中南米危機にせよ、リーマン・ショックにせよ、米国で起こった金融危機への対処策になぜ全世界が巻き込まれなければならないのか、いまだ合理的な説明が聞かれたことはありません。 アジアやオセアニア、ヨーロッパでも間接金融優位で発達してきた国は多数存在し、グローバル・スタンダードとして全ての国に自己資本比率規制が適しているわけではありません。 そうした国々の利益を代表して、BIS規制によって最も被害を受けた日本にこそ、新しい金融秩序を提唱する使命があります。 まずはアジア・オセアニア地域の中央銀行で新しいアジア決済銀行を創設し、この地域で起きた危機に対処するアジア・マネタリー・ファンドを創設するなど、新しい国際金融秩序創造に向けた議論を始めるべきです。 幸福実現党は日本と地球、全ての平和と発展・繁栄を目指し、全力で尽くします。 2015年、高度成長で日本が世界を牽引せよ 2015.01.06 文/HS政経塾第2期卒塾生 川辺賢一 ◆2015年の日本と世界の経済 今年、2015年は戦後70周年ということで日本にとって、また世界にとって歴史的な節目の年です。 同時に今年は日本の経済を考えるうえでも節目の年です。 なぜなら、戦後国際社会における日本のプレゼンスを飛躍的に向上させた「高度成長」から約60年が経過したからです。通説では日本の高度成長は1954年末に始まり、19年後の1973年に終焉したとされます。 この時期の経済成長率は平均で10%超、その結果、日本は世界第2位の経済大国に躍り出ました。 しかしながら、日本経済は90年代以降、長期停滞を経験。昨今のアベノミクスで回復の兆しを見せつつも、昨年4月に断行された消費増税が予想以上に重くのしかかり、今ひとつ離陸できない状況です。 そうしたなか、米経済は2014年7-9期の成長率が5%(前期比年率)と、11年ぶりの実績に沸きました。 IMFは2015年の成長率を、米国3.1%、ユーロ圏1.3%、日本0.8%、新興国5.0%と予想し、「独り勝ちの米経済」と「くすぶった日本経済」が対比されます。 年初に安倍首相は「日本を再び世界の中心で輝く国にする」と述べ、以前にも高度成長の立役者・下村治の成長理論を「普遍的な価値」を持っているものと表明していることからも、60周年を迎える高度成長を明確に意識していることが伺えます。 もちろん経済成長が全てを解決するわけではありません。しかし、経済成長が財政問題や格差や貧困、あるいは外交や安全保障、自国への自信や誇りという、あらゆる問題解決に役立つことは間違いありません。 今こそ、第2の高度成長を構想すべきです。そして立党以来、第2の高度成長、第2の所得倍増計画を提唱してきたのが幸福実現党なのです。 ◆インフレ目標の徹底・安定した金融政策 まず幸福実現党が立党以来、訴えてきたのは「3%のインフレ目標政策」と「より大胆な金融緩和」です。 過度なインフレや円安の副作用といった批判に耐えながらも一部、幸福実現党の政策を安倍政権が導入し、円安が進んだ結果、今月5日のニュースでは、パナソニックが中国の生産拠点を国内に回帰させていくことがわかりました。 90年代以来のデフレ促進的な金融政策のもとでは、企業は生き残るために海外に生産拠点を移さざるをえませんでした。一方、2%のインフレ目標が徹底されると、企業は同じく経済合理性から、自発的に、日本の内需や雇用ばかりか、安全保障にとってもプラスの意思決定を行ったのです。 かつての日本の金融政策はインフレ率に対する目標と関与が不明確であったために、為替に対する予想も困難でした。例えば米国の早期利上げ観測(ドル高要因)と原油安によるデフレ圧力(ドル安要因)が重なったとき、ドル円相場がどちらに動くのか、予測困難でした。 なぜなら米国は利上げ時期を遅らせることでデフレ圧力に対抗すると予測できても、日本が同じようにデフレと闘うのか、政府が気まぐれに介入するだけなのか、ほとんど読めなかったからです。 しかし、今は違います。原油安は米国にとってだけでなく、日本にとってもデフレ圧力として働く以上、日本も追加緩和でデフレに対抗すると予測できるからです。 インフレ目標の徹底は一見、過度な円安をもたらしたように見えますが、むしろ為替の動きを予測しやすくしました。インフレ目標が徹底されると、日本と米国のインフレ率に格差がなくなるまで、ドル高円安が続くと予測できるのです。 ◆減税で高度成長を再現せよ さて日銀の金融緩和で供給される貨幣は金融機関を通して、経済一般、いわゆる実体経済に波及します。 しかし日銀がいくら貨幣を金融機関の預金口座に積み立てても、企業が資金を銀行から借りなければ、金融緩和の効果はなかなか実体経済に現れません。 それに対して幸福実現党は減税の必要性を訴えてまいりました。日銀による大胆な金融緩和の効果を実体経済に対して、より早期に、強力に波及させるためにも、減税が不可欠なのです。 自民党は消費税を増税しつつも、巨大な財政出動によって、景気を浮揚させようとしました。 需要不足に悩む日本経済にとって財政出動も有効な一手ですが、政治の腐敗につながりやすい点、本当に市場が必要とする成長産業に貨幣が回らず、ゾンビ産業、ゾンビ企業の保護につながりやすい点など、難点も指摘できます。 一方、減税の効果は特定の産業にかかわらず、広く経済に行き渡ります。 確かに減税によって国債の発行額は増えるかもしれません。しかし減税によって発行される国債は単なる赤字国債ではなく、自由な市場経済が必要とする成長貨幣となり、成長産業に行き渡るのです。 幸福実現党はこうした政策を実行し、日本が世界を牽引する第2の高度成長に向け、全力を尽くしてまいります。 消費税は増税延期ではなく、5%への減税を! 2014.12.03 文/HS政経塾第2期卒塾生 川辺賢一 ◆2期連続マイナス成長の安倍政権 「アベノミクスが正しいのか、間違っているのか、この選挙戦を通じて明らかにする」――。 安倍総理は増税延期を決めた上で、「増税延期・アベノミクスの信を問う」と言って、衆院を解散し、今月2日、第47回衆院総選挙がスタートしました。 自民党代議士は今回の選挙を「アベノミクス解散」とし、「アベノミクスに反対するなら具体的な対案を示せ」と言います。 しかし消費税率を5%から8%に税率を引き上げて以降、各種経済指標は悪い結果ばかり。 本来、「2期連続マイナス成長」というあまりにもひどい結果を出したのですから、「安倍総理、麻生財務相は責任を取って辞任すべきだ」という議論が出ても何らおかしくありません。 一方、かろうじて最大野党の民主党は政権与党時代、もっと日本経済を悪くしました。それは安倍政権の「2期連続マイナス成長」がかすんで見えてしまうほどです。 実際、民主党は「失業率が改善したと言っても、安倍政権で増えたのは非正規雇用ばかり」と、批判しますが、失業率そのものが高止まりし、非正規雇用でさえ増えなかったのが民主党政権時代です。 かろうじて最大野党の民主党でさえ、こうした状況ですから、自民党代議士の「アベノミクスに反対するなら具体的な対案を示せ」という声に対して、ほとんどの野党は無力です。 しかし、ここに唯一、アベノミクスに対して正当な批判をし、具体的対案を示すことができる政党があります。 それが我々、幸福実現党です。 ◆増税によって財政が「不」健全化した日本 幸福実現党は今回の選挙戦で、消費税の増税延期ではなく、8%から元の5%に減税すべきだと訴えております。 消費税の減税を訴えている政党は他にも共産党など極左政党があります。 しかし、極左政党は「毎年、1兆円ずつ社会保障費が増えるのに、財源はどうするのか」という問いに対して、「富裕層や大企業に増税をする」と言って、結局、増税を主張しているのです。 幸福実現党は立党以来、一貫して減税路線を主張し、あくまでも経済成長による税収の自然増で財政規律を維持すべきだと訴えてきました。 そもそも税金を納めているのは私たち国民です。納税者である国民や企業が豊かにならずして、政府の税収だけが増えるということは絶対にないのです。 実際、1997年に消費税率を3%から5%に引上げたときも、増税による景気悪化で結局、税収が増えたのは最初の1年、97年のみでした。それ以降、税収は年々減少し、97年の税収を上回ったことは1度もありません。 増税によって国民が貧しくなって、結果、政府の財政まで悪化したのです。 ◆経済成長による財政再建は十分、可能だ 一方、2003年から2007年の期間、日本は1%の増税もしていないにもかかわらず、基礎的財政収支の赤字額は28兆円から6兆円まで22兆円も減額し、あと1年半で黒字化達成というところまでいきました。 この間の名目経済成長率はたったの1.1%。 現在、アベノミクスの一環として、日銀は2%のインフレ目標を設定しています。安倍政権は「日銀の緩和政策によって、デフレから脱却し、2%のインフレ目標達成は可能である」という立場です。 2%のインフレが達成するということは、「インフレ率+実質経済成長率=名目経済成長率」であるので、少なく見積もって、3%程度の名目成長は充分、達成できるということです。 過去、たった1.1%の名目成長で財政が大きく改善したのですから、2%のインフレ目標政策が実行され、黒田・日銀総裁のもと目標達成に向けた実弾、黒田バズーカが打たれている現在、いっそう力強い成長によって、財政を健全化に向かわせるのは可能なのです。 財政再建のため政府が行うべきは増税ではありません。必要なのは、日銀がやろうとしている「大胆な金融緩和によるデフレ脱却」を妨げない、邪魔しないことです。 実際、岩田・日銀副総裁の税収シュミレーションによれば、3%の名目成長で2023年には基礎的財政収支は均衡・黒字化するとのことです。(参照:『リフレは正しい』、岩田規久男) 安倍政権は「アベノミクスの対案を示せ」と言います。「減税を言うなら財源を示せ」と言います。 幸福実現党はそれができる唯一の政党です。単なる理想論だけでもなければ、現実論だけでもない、信念を持った責任政党だからです。 幸福実現党は減税を訴えつつも、責任政党として、財政の持続可能性をも提示しているのです。どうか、皆様、幸福実現党に清き一票をお願いいたします。 世界経済の新潮流――日本は減税で世界を照らせ! 2014.11.11 文/HS政経塾第2期卒塾生 川辺賢一 ◆FRBの量的緩和終了 米連邦準備理事会(FRB)は10月30日の連邦公開市場委員会(FOMC)で2008年の金融危機直後から続けて来た量的緩和政策を終了しました。 量的緩和の終了は国際経済の潮目が大きく変化したことを意味します。 第1に米国の量的緩和の終了は「百年に一度の大津波」と言われた金融危機に資本主義経済が打ち克ったことを象徴します。一時10%を上回った米国の失業率も今や5.8%まで改善し、米経済はゆるやかな景気拡大、正常化に向かっております。 第2に「強いドル」の復活です。米国は「強いドル」によって世界の余剰資金を集め、金融立国を強固にし、軍事技術はもちろん、ITやロボティクス、医療機器等、次世代の産業技術の創造を加速させるでしょう。 「強いドル」の復活は日本にとっても悪いことではありません。米国の量的緩和終了が伝わると、10月第3週には1ドル=105円台まで下がっていたドル円レートは109円台まで反発。その結果、日経平均株価も3週間ぶりの高値を付けました。 しかし第3に、量的緩和の終了は、目下、新興国にとっては冬の時代到来を意味します。それまで新興国に向かっていた巨大な緩和マネーは再び米国に反転し、資本流出や通貨安によるインフレと新興国は格闘しなければなりません。 げんに米国の量的緩和終了に伴いブラジルやロシアは急激な利上げに踏み切りました。金利を高く設定し、国内にマネーを引き留めようとするためです。しかし高い金利は企業家の投資需要を減退させ、国内経済を傷めつけます。 偶然にも31日、こうした変化に日銀は追加緩和で応じることとなり、結果的に新興国の外貨不足懸念を緩和したことは、対外的な観点からも評価されるべきです。 その他、日本としてはTPPやEPA等の自由貿易・経済連帯協定を積極的に締結し、市場を開放していくこと、外貨不足による新興国の債務不履行を防ぐべく通貨スワップ協定の枠組みを拡大していく等、新興国発の危機を未然に防ぐ努力を行っていくべきです。 ◆原油価格の下落と中東情勢 また現在、注目すべき世界経済のトピックとしては原油価格の大幅下落があげられます。今年7月に1バレル=115ドルだった北海ブレンド原油は今月4日には82ドルにまで下落しました。 要因は需要面からは欧州や新興国経済の不振による世界経済の減速懸念、そして供給面からは米国のシェール開発で原油輸出の市場競争が激化したことです。 実際、米国はシェール開発により日量100万バレルだったナイジェリアからの原油輸入を3年間で1/10に減らし、今年8月にはゼロにしています。 こうした米国の動きをけん制し、自国産原油の市場シェアを守るべく、サウジアラビアを始め中東諸国は、こぞって油価を下落させたのです。1バレル80円台では米国シェールは採算割れで開発できないからです。 さて、こうした「円安」かつ「原油安」また「米経済の回復」は、日本にとってはプラス要因であり、日本経済の対外環境は現在、稀な幸運に恵まれていると言えるでしょう。 しかし、極端な原油価格の下落やその持続は、別の問題を発生させます。 ロシアやイラン、イラク、オマーン等、1バレル=80円台ではとても財政均衡を持続できない産油国が多数存在し、そうした産油国の経済悪化は容易に政情不安に転化し、「アジア回帰」を掲げる米国の外交戦略にも影響を与えかねません。 日本は東アジア諸国とだけでなく、ロシアや中東諸国にも目を向けて、通貨スワップ協定や貿易・投資面での経済連帯協力等の締結により、幸運による日本経済の回復を中東諸国に波及させるべきです。 ◆日本は減税で世界を照らせ! さて31日に発表された日銀の追加緩和は国内においてだけでなく、海外市場からも好感を持って受け入れられました。日本の政策決定は世界経済に多大な影響を与えるのです。 追加緩和に関しては株高バブルを誘発させる等、一部副作用を指摘する声もありますが、元より幸福実現党は2009年の立党以来、「3%」のインフレ目標を政策に掲げ、2013年に日銀が異次元緩和を開始してからも、さらなる「緩和拡大」を求めてきました。 しかし消費増税の悪影響を打ち消すための最大の景気対策は、税率をもとの5%に引き下げることです。これで消費は回復し、日本の株価は暴騰するに違いありません。 再度、安倍政権はデフレ脱却の意志を鮮明にし、「アベノミクス第2フェーズ」を始めるべきです。 追加緩和が第1の矢であったならば、消費増税の撤回を第2の矢、そして法人税の大幅減税を第3の矢として、世界経済の需要を日本が牽引していく意志を表明すべきです。 幸福実現党は地球視野での経済繁栄に取り組み、世界をあまねく照らす新しい日本の国づくりに全力で尽くします。 どうなる日本経済!?アベノミクスの行方を問う 2014.10.21 文/HS政経塾2期卒塾生 川辺賢一 ◆揺れる世界経済――円安ドル高・株高トレンドは終わったか 10月初頭に1ドル=110円台を付けたドル円相場でしたが、第3週には一時105円台前半まで急落。また先月には1万6千円台を超えた日経平均株価も1万4千円台の前半まで続落しました。 その要因としては、世界経済の減速懸念や9月末に発表された米国の景気指標(米国の消費者信頼感指数等)が悪化し、米国の利上げ観測時期が遠のいたこと、世界的なリスク回避の動きから安全資産として円が買われたことが挙げられます。 しかし一方、足元の米経済指標が底堅い回復を示していることも無視できません。 今月16日に発表された米国の失業保険申請件数は大幅に減少、鉱工業生産指数は予想を上回る上昇、米住宅着工件数や大手金融機関の決算も大幅に改善しており、不安定な金融市場とは裏腹に米経済の回復基調には底堅いものがあります。 一部マスコミは世界同時株安を囃し立て、人々の不安を掻き立てますが、あまり踊らされるべきではありません。 米国の利上げ観測時期が遠のいたとはいえ、遅かれ早かれ利上げ局面に入ることに変りはなく、一方の日本では日銀による追加緩和が期待されています。 世界に放出されたドルが回収されるなか、円の放出はしばらく続く以上、中長期トレンドとしての円安ドル高、そして株高に変化はないと言えるでしょう。 ◆インフレの主犯は円安や金融緩和ではない さて日銀の「異次元緩和」が始まって日本のデフレ脱却が見えて参りましたが、一方で緩和政策による円安が原材料費等の輸入物価を押し上げ、国民の生活を苦しめているとし、金融緩和の副作用を批判する声もあります。 通貨安によるエネルギー価格の上昇や賃金の上昇によるインフレを、コスト・プッシュインフレといい、悪いインフレとされますが、果たして日本は日銀の緩和政策の結果、悪いインフレに向かっているのでしょうか。 現在のインフレ率(生鮮食料品除くコアCPI)は前年比3.1%(8月)で、このうちエネルギーの貢献は0.8%にすぎず、需要増加分はたったの0.2%であり、誤差の範囲です。 ではインフレ率3.1%のうちの残りの2.1%は何によるものなのでしょうか。 それが消費税の増税です。現在、徐々に始まり、国民生活を苦しめるとされているインフレは円安によるものでもなければ、エネルギー価格の上昇によるものもなく、金融緩和の副作用でさえありません。消費増税の効果です。 さらに消費増税は日銀がインフレ目標政策でターゲットにしているインフレ率、すなわち需要増に伴うインフレ率の上昇を抑えてしまうので、悪いことしかないのです。 ◆円安は是正すべきなのか また中小企業を中心に円安への懸念が表明されておりますが、円安は是正されるべきなのでしょうか。 まず、ほとんどの場合、デフレ脱却の過程で通貨安そのものは避けられません。ゆえに日本経済がデフレ脱却に向かっていくことを良しとするならば、円安を受け入れる方向で対策を考えていくべきです。 では円安は中小企業や海外から原材料を輸入する企業にとっては悪いことばかりなのでしょうか。 私自身、現在、ある中小ベンチャー企業のなかで、海外から部品を輸入して加工した最終製品を、主に国内向けに販売しておりますが、円安による原材料費上昇のマイナスよりも、円安に伴う大企業の株高や開発費増加によるプラス効果の方を強く感じます。 また円安になると、競合する海外メーカーの製品価格が上昇するため、国内で製品を販売する製造業であっても恩恵は受けるのです。国内市場においても海外製品と競合しているからです。 さらに言えば、中小企業であってもドル資産を持てば円安のリスクをヘッジできます。仮にドルが下落して、保有するドル資産の価値が目減りしても、ドル安によって原材料費が下がれば、その分の損失は相殺されます。 いずれにせよ、日本は自由な変動相場制を採用しているのですから、基本は自由な市場に任せるべきです。金融緩和によって起こる通貨安に備え、対策を打つことはできても、「是正する」ことはできませんし、すべきでもありません。 ◆世界を明るくできるのは日本だ! 現在、エボラ出血熱やイスラム国の台頭等、雲行きの怪しい世界情勢が人々の心理を不安にし、世界経済の回復を遅らせております。またそれが日本の回復を遅らせる要因にもなっております。 しかし現在、デフレ脱却過程にある大国・日本の経済の力をもってすれば、世界経済の見通しを明るく変えてゆくことができます。 まず日銀が市場の期待に応えて追加緩和を打ち出すべきです。続いて政府が消費増税を撤回し、韓国やシンガポール並みの大幅な法人税減税に向けた工程表を示すべきです。 日本が世界の需要を牽引する意志を示すことで、世界経済の見通しを明るくし、それをもって日本経済回復の起爆剤としてまいります。 “Japan is No.1”の志――本物の日本経済復活を目指せ! 2014.09.30 文/HS政経塾第2期卒塾生 川辺 賢一 ◆円安株高はどこまで進むか 9月第3週、日経平均株価は1万6321円で引け、3週続伸を記録、年初来高値を更新しました。 特に、1ドル=109円台の円安により、輸送用機器や精密機器等の輸出関連や鉄鋼等の材料関連を中心に幅広く株価が上昇しました。 さて日銀の異次緩和に始まり、米国連邦準備理事会(FRB)の量的緩和(QE3)終了と利上げ観測により、その勢いを吹き返した円安株高はどこまで続くのでしょうか。 通常、為替レートの決定要因として最も重視されるのは各国間の金利格差です。 国内で完結するビジネスを考えてみても、安い金利でお金を集め、高い収益が見込める事業に投資されるように、国境を超えた資本取引が自由化された世界では、低金利の国でお金を借りて、高い金利収益が見込める国に投資されます。 金利の高い国に世界の余剰資金が集まるため、高金利国の為替レートは上昇します。昨今進んでいる米国ドルの独歩高もFRBによる利上げ観測の結果だと言えます。 9月最終週は地政学リスクの高まりもあって、為替レートも株価も続伸が止まりましたが、実際に米国で利上げが実施されれば、もう一段の円安ドル高が進むと予想できます。 そして円安は悪いことではありません。金貨等と同様、世界で最も安全な資産である円が売られ、日本や米国で株価が上昇しているということは、リスク・オフからリスク・オンへ、世界経済のアクセルが踏み出されている証拠だからです。 円安が円高に反転する可能性があるとすれば、第1に米国の利上げよりも日銀の量的緩和終了が早かった場合です。日本の実質金利を大きく引き下げた量的緩和が止まれば、日米の相対的な金利格差は小さくなり、円安トレンドが終了します。 それ以外には、例えば米国によるシリア空爆が泥沼化し、世界情勢の雲行きが極度に悪くなる場合や米国の利上げが急速に進み、利払い費の高まりで返済不能に陥る債務者が増加し、金融危機が再来する等、安全資産である円に世界が逃避しなければならない場合です。 ◆バブル潰しを繰り返すな 奇しくも第1次安倍政権は戦後最長の好景気の最終局面に当たり、2007年には1ドル=124円台の円安、日経平均株価は1万8261円台まで上昇しました。 そして2003年度に28兆円だった基礎的財政収支の赤字額も、07年には6兆円にまで縮小し、あと一年半で黒字化達成というところまで改善されました。 財政の健全化に1%の増税も必要なかったのです。 その後、世界経済危機の煽りを受けて日本経済も低迷しましたが、アブプライム・ショック、リーマン・ショックと危機の震源地は米国であったにもかかわらず、日本経済は米国以上に深刻なデフレを伴う危機に陥りました。 その最大の原因は幸福実現党が立党以来訴えてきたように、2006年3月デフレ脱却が不十分であったにもかかわらず、出口戦略を焦り、量的緩和を解除したことです。 財政面においては増税、金融面においては量的緩和の解除や利上げと、日本政府はこれまで出口戦略を焦ることでデフレ脱却のチャンスを逃し、景気の火を消して来ました。 安倍政権が掲げる「経済再生」が本物であるならば、最低でも株価が1万8千円台を超えなければ、「経済が回復した」とは言えません。 米国はすでに「100年に1度と言われた危機」前の水準まで株価を回復させ、最高値更新を続けております。日本も米国の復活を念頭に置くならば、1989年末の株価3万8千円台を超えるまで「日本経済が復活した」とは言えません。 「失われた20年」から完全復活していない日本では、増税の議論自体が本来、早すぎると言えます。 ◆日本経済を復活させよ! 1979年、エズラ・ボーゲルの“Japan as No.1”がベストセラーとなり、1980年代、日本の経済モデルへの注目が世界的に高まりました。ところが90年代以降の低迷で“Japan as No.1”はもはや過去のものとなってしまいました。 だからこそ、私たち日本人は“Japan as No.1”ではなく、新しく“Japan is No.1”の志を持つべきです。 そのためにも政府は株価が上昇している局面で、規制改革や法人税の大減税等の構造改革を断行していくべきです。 規制改革には既得権益の抵抗がつきものです。株価の上昇局面で全体的に経済が向上しているなかでなければ、既得権益を打破し、規制改革を行っていくのは困難です。 また法人税の大幅減税も不可欠です。 シンガポールの17%台や韓国の24%並みに日本の法人税も引き下げることで、量的緩和による実質金利の低下で、海外に流出していく日本のマネーを国内に引き止め、さらに海外からの投資を引き込むことができます。 幸福実現党は“Japan is No.1”の志を持ち、本物の日本経済復活に全力を注ぎます。 「地方創生」本部発足――政府は哲学とビジョンを持て 2014.09.09 文/HS政経塾第2期卒塾生 川辺賢一 ◆政治術としての「地方創生」 今月3日、安倍首相は第2次政権発足後初の内閣改造を行い、なかでも石破茂氏の地方創生担当大臣への就任が注目を集めました。安倍首相自らが「地方創生本部」の本部長となり、アベノミクスの重点課題として「地方重視」が位置付けられました。 そこで「地方創生」の意義について、考えてまいりたいと思います。 都市と地方を巡る問題は歴史的にも国際的にも政治的に非常に重要なテーマとされており、日本だけでなく世界各国において、単なる政策論争を超えて、ときに根深い政治対立を生む原因となっております。 例えば日本においても、戦後政治史上、最大の派閥闘争とされる田中角栄氏と福田赳夫氏との政治闘争、「角福戦争」の背景にも都市と地方を巡る問題がありました。 「裏日本」と言われた日本海側地域の国土開発等、「日本列島改造論」「国土の均衡ある発展」をスローガンに掲げた田中氏に対して、福田氏は政府支出が肥大化しすぎだとして対抗しました。 ところで安倍首相の所属派閥は福田赳夫氏が創設した清和会(現・町村派)です。最近では地方分権改革を掲げた小泉純一郎元首相に象徴されるように、清和会の底流には公共事業費や地方への補助金等を削減して均衡財政主義を採る傾向があるといえます。 一方の石破氏は田中角栄氏の薫陶を受けて育った政治家であり、「おまえが親父の後に出ろ」と田中氏に言われたことが、石破氏が政治への道を歩むきっかけとなったとされます。 通常、大都市優先と地方重視とで政策は両立せず、主張の対立から政権が不安定化し、振り子が右から左へ振れるように政府がつくりかえられるわけですが、今回の内閣改造で安倍政権は田中角栄氏の流れを組む石破氏を地方創生担当相として取り込んでしまいました。 こうした背景を踏まえるならば、内閣改造で重点課題となった「地方創生」は政権の長期安定化を狙った政治術の一環であるといえるでしょう。 ◆経済政策としての「地方創生」 それでは「地方創生」に政治術以上の合理的な意義はあるのでしょうか。 地方分権改革を掲げた小泉政権は「ない」という結論を出したのだといえるでしょう。都市への人口集中が本当に問題のあるレベルに達したならば、自然と地方に人口が逆流すると考えたからです。 もしも政治が介入し、高い利益や所得獲得を目指して都市に移ろうとする企業や人口を地方にとどめようとするならば、国民全体の平均的な所得水準の向上を抑えることになってしまう。こうした論法からです。 そもそも近代以降の資本主義経済の発展は土地に縛られない、土地を必要としない経済への移行でした。農地や米が貨幣価値の源泉、基準であった農本主義の時代は土地の所有自体が価値のあることだと考えられましたが、いまや土地は将来収益を生むための数ある資源の一つにすぎません。 経済の成長に伴って「人・もの・金・情報」の集まる都市に企業や人口が流入するのは自然な流れであり、経済的な論理だけで考えるならば、政治が介入にして地方に企業や人口をとどめる意義を見出すのは困難です。 ◆「地方創生」の意義は何か では「地方創生」の合理的意義はどこにあるのでしょうか。 まず第1に国防上の観点からです。かつて尖閣諸島・魚釣島にも250人程度の日本人が生活し、仕事をしておりました。もし、現在も同じ状況であったらならば、尖閣諸島が日本の領土であることなど説明不要の自明の理とされたはずです。 尖閣諸島は特殊な例ですが、地方の過疎化によって地価が下がり、外国人による購入が進めば、国防上の危機が高まります。やがて破たん直前の地方債が外国に買われるようになれば、日本は財政的に分断されます。 第2に快適な暮らしという観点です。 例えば日本の人口はフランスの2倍ですが、日本の国土面積はフランスの1/2、くわえて日本の国土の約2/3は山間部で人が住めません。地方の土地を有効利用できていないことと重なって、日本の地価は異常に高く、サラリーマンは平均1時間半の通期時間を満員電車のなかですごさなければならないのです。 国土の狭い日本では陸海空のインフラ交通網の整備を通じて、国全体を一つの都市圏・経済圏として統合して国土の有効利用を進めていくべきですし、「日本をアジアの首都」として、世界中から人口が集まってくる国を目指すべきです。 ◆「地方創生」のカギは「一貫した国土計画」と「単年度予算の廃止」 このように「地方創生」進める上でも、単にお金を地方自治体にばらまけば良いものではなく、国家防衛や国土計画の全体観に調和したものでなければなりません。 そのために政府は一貫した国土計画を持ち、単年度で財政の均衡を図ろうとするのではなく、長期での回収、長期で均衡していくことを目指した財政政策が求められます。 政府はなぜ「地方創生」が必要なのか、その哲学を持つと同時に、一貫したビジョンを持って行っていく必要があります。 日本は未来を見据えた確たる成長戦略を 2014.08.19 文/HS政経塾2期卒塾生 川辺賢一 ◆FRBの「出口戦略」に備えよ 秋口から新年度が始まる米国では、8月初めに新年度以降の株式相場を予想する会合を開くのが毎年の恒例となっております。 そのなかで今月7日に開催された相場予想会合では、米連邦準備理事会(FRB)の政策短期金利引上げがリスク要因としてアナリストたちの共通認識とされ、昨年と比べると弱気材料を強調する向きが増えたとのことです。(参照:8/10産経新聞) 政策金利の引上げ時期を巡って様々な憶測がめぐらされておりますが、英イングランド銀行が年内にも金利引上げに動くことで、FRBの金利引上げも予想以上に早まるのではないかと指摘されております。 なぜイングランド銀行やFRBは金融緩和の出口戦略、すなわち利上げ時期を探っているのでしょうか。 その背景にあるのは住宅市場や株式市場等、金融市場の過熱です。例えば英国ではロンドンの不動産価格が1年間で17%も上昇しております。米国の株式市場も09年3月に底をついて以降、回復を続け、最高値を更新し続けております。 しかしその一方で経済全般の過熱度を示すインフレ率や長期金利は低いままです。こうした経済全体の過熱感を無視した利上げは非常に危険です。 金融危機後も果断な緩和策で最初に乗り越えたスウェーデンンにおいても、インフレ圧力が弱かったにもかかわらず、住宅価格の急上昇を懸念して、利上げを急いだ結果、デフレ不況に逆戻りしました。 米国発のサブプライム・ショックにおいても直接的な引き金となったのは経済全体が過熱していないなかでの金利引上げでした。04年FRBが金利を引上げた際、経済全体の過熱感を示す長期金利はむしろ低下しており、金融機関の利益は圧迫されていきました。 米国の利上げが日本経済に与える影響を考えて、日本も今から手を打っておかなければなりません。 ◆日本は追加緩和と大胆な法人税減税を打ち出せ まず第1に安倍政権はさらなる追加緩和を求め、黒田日銀に圧力をかけるべきです。 今月8日には米国によるイラク空爆承認が伝わり、8月第1週は地政学的リスクの高まりから世界的な株安局面となりましたが、日本だけが2カ月ぶりに15000円台を割り込む等、ひどく落ち込みました。 また内閣府が13日に発表した4~6月期のGDP速報値は実質6.8%減(年換算)となり、97年増税時の下げ幅(3.5%減)を大きく上回る景気の冷え込みを示しました。 こうした経済のマイナス材料を吹き消し、日本が成長軌道を取り戻していくためにも、まずは日銀による追加緩和が必要です。 と同時に緩和によって供給されるマネーを国内に引きとめ、さらに海外の余剰資金を日本に還流させるためにも、第2に法人税の大幅な減税が不可欠です。 世界の余剰資金は低金利国から高金利国へと流れて行きます。そのため追加緩和によって日本の実質金利が大幅に低下すると、日本で供給されたマネーは海外に流出します。 法人税の大幅減税を始め、日本の社債市場をいっそう整備する等、日本のビジネス環境の魅力を高めていくことで、海外の余剰資金を日本に還流させ、日銀の緩和政策によって生まれたマネーも上手く国内で回っていくことになります。 ◆安価なエネルギー供給確保を目指せ さて、60年代に高度成長を遂げた日本も70年代は安定成長に向かい、そのまま低成長の成熟国に向かうとの見方が強かったなかで、80年代に再び高成長を取り戻した要因は何だったのでしょうか。 80年代は円ドルレートが2倍に円高になる等、輸出企業の国際競争力という面で追い風が吹いていたわけではありません。 80年代日本の高成長を支えた要因として、いくつか挙げられるなかで、原油価格の大幅な下落がその一つとされます。 一方、近年は中東情勢の不安定化や新興国の需要増大によって原油価格が高騰し、資源の限界が世界経済の成長を規定する限界となり、紛争の要因にまでなりかねない現状があります。 日本としては幸福実現党が提唱してきた通り、安全な原発から早期再稼働を進めていくべきですし、米国のシェールガス採掘のための技術輸出を後押ししていく必要もあるでしょう。 また今世紀以降、地球温暖化によって北極圏の海氷が想定以上のスピードで溶け出している現実に着目すべきです。 温暖化による氷解で北極海の夏季航行が可能になれば、海底資源の探査が可能になるばかりか、新たな物流ルートの創出、ロシアを軸とした新しい経済圏の創出にもつながります。 私たちは北極海の氷解から世界地図が新しく描き直されることを想定し、ロシア外交の見直しや北極海の定期航路を計画する日本の海運業を政府として支援する等、日本のエネルギー戦略に新たな可能性を加えなければなりません。 日本は追加緩和と法人税減税で経済を活性化させつつも、長期の成長戦略として安価なエネルギー供給の方法を確立していくべきです。 資本主義の危機と終焉、その対策 2014.07.28 文/HS政経塾第二期卒塾生 川辺賢一 ◆歴史的低金利が続く世界 今月24日、ジャネット・イエレン米国連邦準備理事会(FRB)議長は、10月を目途とした量的緩和終了後においても、即座の金利引上げを行わず、当面、金利は現在のゼロ%付近にとどめることを表明しました。 バブル崩壊後の日本に始まり、今、先進国は長期に渡る「超低金利」時代を経験しております。なぜ今、世界の中央銀行は歴史的な低金利を続けるのでしょうか。 それは企業にお金を借りてもらい、新しい投資を増やしてもらうためです。中央銀行は金利を低くすることで、資本主義のエンジンである企業の資金需要、投資需要を喚起させようとしているのです。 ところがリーマン・ショック後の世界においては、金利を限りなくゼロの下限に近づけても、企業の投資需要に火が付きません。人々が実業の未来に楽観できず、低金利であっても利潤を見込める新規投資案件を見出せないでいるからです。 このように金利と利潤は裏表の関係にあり、金利は資本主義経済の活性度を示す体温のようなものだと言えます。 そして、このようなゼロ金利に向かっていく世界を指して、幸福実現党・大川隆法総裁は「資本主義経済は終わりを迎えようとしている」と述べております。(参照:2014年3月30日御法話「未来創造の帝王学」) ◆資本主義が直面するいくつかの危機 さて、金利がゼロの下限に達しても、企業の資金需要が復活しない状態をJ・M・ケインズは「流動性の罠」と呼びました。 「流動性の罠」経済においては、政府が国債を発行して支出を増やさなければ経済は縮小均衡に陥ります。 もしも今、世界が「流動性の罠」に陥っているのだとすれば、世界は経済の縮小を避けるために「大きな政府」を志向せざるをえず、結果、民間活力が失われ、資本主義経済は危機に直面します。 一方、日本を含む世界の中央銀行家たちは、「たとえ政策金利がゼロの下限に達したとしても、量的緩和政策を継続することで、財政支出の拡大に頼り過ぎることなく、景気回復を後押しできる」とします。 実際、米国も日本も、量的緩和によって株式市場を活性化させ、株高によって経済全体を回復させる戦略を採用し、一定の成果をあげております。 ところがこうした状況に対して鋭い批判を向ける左派経済学者もおります。 『21世紀の資本論』を上梓して話題を呼んでいる経済学者トマ・ピケティ氏は、株や不動産などの投資によって得られる資本収益率が経済一般の成長率を常に上回っていることを統計的に示し、その結果、所得と富の不平等が21世紀を通じて拡大していくという理論を発表しました。 格差問題に関しては、実のところ世界の貧困率がここ数十年で80%程度も下がっていることから、重要な問題だと考えられません。しかし株や不動産による投資の収益率が常に経済一般の成長率、実業の成長率を上回っているという事実は、資本主義経済の本質的な不安定性を示していると言えるでしょう。 実際、1970年代以降の世界経済は頻繁にバブルの発生と崩壊を繰り返し、数十年周期で100年に1度と言われる金融危機が起っております。資本主義経済は新しいバブルを発生させることで延命を図っていると言えるのかもしれません。 ◆その対策 さて、このように危機に陥り、終焉を迎えようとしている資本主義経済に対して、私たちはどのような対策を打ち、新しい経済モデルを創造していくべきでしょうか。 まず第1に金融緩和の出口を焦らないことです。90年初頭の日本も07年の米国も、バブル崩壊の直接的な要因は急激な金利引上げ、金融引締めに始まります。 高い利潤率を持つ革新的な実業が不足しているにもかかわらず、株や不動産などの資産市場が高騰しているという理由で金融緩和を止めてしまえば、さらに実業が圧迫されます。 特に25年近くも株価最高値を更新できていない日本においては、むしろ日銀は追加金融緩和を打ち出し、さらなる株高を演出しても良いのではないでしょうか。 第2に法人税の大減税です。もしも経済が「流動性の罠」に陥り、できることが政府支出の増大しかないのであれば、まず企業の自由を増やす法人減税を断行すべきです。 第3に産学連携の活性化です。企業が持つ自前の工場や研究室は短期的な利益追求には向きますが、息の長い基礎研究に始まる革新的な研究シーズの追求には不向きです。 しかし、求められるのは利潤率の高い実業であり、そのために必要なのは現時点では海のものとも山のものとも分からない研究を温め、それを実業化し、産業化していくことです。そうした研究は大学や政府系の研究所だからこそ追求できるものです。 次世代を創るイノベーションを誘発させ、第二、第三の産業革命を起こしていくために、新しい研究や技術、企業が交流する場、智慧のマーケットの創造が求められます。 すべてを表示する « Previous 1 2 3 4 5 Next »