Home/ 財政・税制 財政・税制 固定資産税制について考える【その2】 2015.07.08 文/HS政経塾第二期卒塾生 曽我周作 前回は、土地税制のうち固定資産税、特に建物固定資産税のあり方について、「応益税と言えるのか?」「投資を妨げる効果があるのでは?」という問題提起をさせていただきました。 固定資産税制について考える【その1】 http://hrp-newsfile.jp/2015/2223/ ◆担税力が反映されない建物固定資産税 現在、建物に対する固定資産税は「再建築価格」を課税標準としています。しかしこれも非常に問題を多く含んでいます。 まず、これでは「担税力」、つまり「税金を負担する能力」を反映できません。例えば、同じようなオフィスビルが東京都と、かたや田舎にあったとします。 当然、東京にあるオフィスビルの方が賃料も高くなりますので、東京のビルを所有する方が収益力は高く、従って担税力も高いということになります。 しかし、仕様の同じビルを東京と、田舎で建てるコストはそれほど大きな差はありません。当然土地の価格は全く違うでしょうが、建物の建築費用に通常は極端な差は出ないはずです。 単純に言えば、再建築価格が同じであれば、東京にあるビルも、田舎にあるビルも同様の固定資産税を課されることになります。 しかし、これでは収益性が反映できなくなってしまいます。 ◆固定資産税は「役所にとって」都合の良い安定財源 まず、この課税標準を「再建築価格」としていることは、行政サービスと関係しているとは言い難く、建物は行政サービスによって新築時よりも再建築価格の方が高くなることはないのではないでしょうか。 やはり、建物固定資産税を応益税とするのは無理があると思われます。 また、どれだけ景気が悪化するなどして、周辺の地価が下落しても、建物固定資産税は「再建築価格」によって課せられるため、地価の下落に応じて少なくなることもありません。 これは資産を持つ者にとっては不利であり、行政側にとっては有利な制度になります。なぜなら、行政のサービスが悪く地価が上がらない、または、下落したとしても、建物部分の固定資産税は変わらないわけですので、非常に安定した財源になります。 ◆税金をかけてよいのは「果実」の部分 幸福実現党の大川隆法総裁は『幸福維新』の中で、以下のように述べられています。 「今、この国では、『果実』でないものに、たくさん税金をかけています。それが経済活動を阻害しているのです。国を富ませるための根本を知らないからです。経済活動をしようとすると税金がかかるような税制になっています。これは、国を治めている人たちが勉強していないからです。税金をかけてよいのは『果実』だけなのです。」 つまり、経済活動の元手になるものへの税金はかけるべきではないと指摘されています。 特に企業にとって、建物固定資産税は経済活動を行っていく上での元手にかけられる税金であると言えるのではないでしょうか。 ◆償却資産に固定資産税を課税するのは間違いでは? さらに償却資産に対する税金も同様です。 GHQの要請によって1949年にカール・シャウプを団長とする日本税制使節団(シャウプ使節団)が日本の税制に関する報告書まとめました、これが日本の戦後の税制に大きな影響を与えました。 「シャウプ勧告」の第12章で課税標準をそれまでの賃貸価格から資産価格に新ためる勧告がなされ、その理由としては「本税(不動産税)を土地建物に限定しないで減価償却の可能なあらゆる事業資産に拡大するため」というものをあげています。 償却資産に対しても固定資産税が課されており、平成25年度で1.55兆円の課税(見込み額)がなされています。 しかし、この課税についても、単に大きな資産を持つことができるということに「担税力がある」とみなして課税しているにすぎず、建物固定資産税と同様、付加価値の元手に課する税金です。 そもそも、その所得や借入れによって手に入れた元手に税金を課する正当性はなく、本来そこから生み出された果実、つまり利益に対して課税がなされるべきです。 ◆固定資産税のあり方を変えていくべき 固定資産税は地方税の根幹をなすものでありますから、慎重に改革をすすめる必要があると思いますが、経済活動を阻害するような税金は無くしていく方向に進むべきであると思います。 政策研究大学院大学の福井秀夫氏が「建物に固定資産税を掛けると、どうしても投資を抑制してしまうわけです。保有税は、土地に掛けると有効利用のインセンティブになりますが、建物にかけると、建物に投資することが、その分だけ確実に不利になるわけです」と指摘しているように経済活動を阻害し、経済成長を妨げる圧力をかけてしまいます。 さらに、現在のような収益性が反映されない「建物の再建築価格」を課税標準とする税金のあり方にも問題があると言えるのではないでしょうか。 したがって、一定の移行期間を設ける必要があるかもしれませんが、固定資産税制の在り方は、役所にとって都合の良い制度であることを改め、大きく改革をしていかなければならないと思います。 次回は、固定資産税は「法律を作らずに増税されていた」ということを含めて、問題点を見ていきたいと思います。 ギリシャ危機に学ぶこと 2015.07.01 文/幸福実現党・千葉県本部副代表 古川裕三 ◆ギリシャ危機 ギリシャが再び危機に陥っています。09年10月にギリシャ政府による財政赤字の隠ぺいが明るみになって以来、財政再建が喫緊の課題であったわけです。 EUがギリシャ向け金融支援の月末での打ち切りを表明しており、同じく6月30日に支払期限を迎える国際通貨基金(IMF)への債務16億ユーロ(約220億円)の目途がつかなければ、債務不履行(デフォルト)になる可能性があります。 ギリシャのチプラス首相も「銀行が窒息状態にあるのにどうやって支払えというのか」と居直っています。 これを受け、すでにギリシャ国内では銀行業務が停止しており、ATMで引き出せる預金額も一日60ユーロに制限、さらに海外への送金も規制され、客で長蛇の列ができ混乱しています。 ◆注視される国民投票の行方 7月5日には、EUが求める緊縮財政策への賛否を問う国民投票が行われる予定ですが、国民がこの賛成案を拒否すれば、ギリシャのEU離脱という事態もありえます。 賛成票が勝った場合は、ギリシャへの融資が再開される可能性がありますが、否決された場合、公的債務の返済凍結、全面的な資本規制の開始、信用証書の発行増加という政策がとられることになり、国際的な信用失墜の危機を招くとも限りません。 デフォルトになった場合、国内の銀行で破たんも相次ぎ、年金や公務員給与の支払いができなくなるなどの恐れもあります。 さらには、経済規模の大きい欧州単一通貨であるユーロへの信用低下により、売り込まれる可能性があり、世界経済への影響も懸念されています。 ただ他方で、甘利経済再生相は、ギリシャの経済規模は小さく、影響を過大評価せずに冷静に対処すべきと発言しています。 ◆多すぎる公務員 ギリシャは過去30年にわたって積極財政路線で財政赤字が肥大化してきました。 歳出の大半が巨額な公共投資でしたが、必ずしも効率的ではなく、公的部門が民間よりも大きくなり、就業者数の4分の1が公務員と言われるまでになっています。 このことについてアテネ商工会議所の関係者は、「人口規模に比べて公的部門が大きすぎる。ギリシャの人口は約1100万人だが、110万人の公務員がいる。ちなみに人口規模がだいたい同じくらいのオーストリア(約830万人)は30万人だ」と指摘しています。 さらには、公務員の多さに加え、公務員の給与が民間よりも高いとも指摘されています。 自由を愛するギリシャの国の標語は「自由さもなくば死」だそうですが、公務員のストライキも頻発している昨今、「自由すぎる、そうすると死」ともいえる状況にさしかかっています。 努力して豊かになる自由ではなく、義務や努力からの自由、つまりは「怠け者の自由」を行使すると、国民の勤勉性が失われ、国力の衰退につながるのです。 ◆解決の方向性 こうした現状を踏まえると、大きくなりすぎた公的部門の民営化を進めていくべきでしょう。公務員が栄えて民間が衰退するのは国家経済の破滅を意味するからです。 ただし、EU側が提示する緊縮策を丸呑みできないギリシャの事情もわかります。ギリシャは観光が主要産業の一つです。 ギリシャ観光産業協会によると、観光業が昨年ホテルの予約などを通じて同国のGDPに直接貢献した額は全体の9%にあたる170億ユーロであり、かつ、店舗やレストラン、観光地などでの支出を通じて間接的にGDPに貢献した額は450億ユーロに上るといいます。 しかし、このホテル、レストランにも付加価値税(日本でいう消費税)を標準税率の23%に増税せよとEUの緊縮策では提言されています。 しかし、増税されれば国家としての稼ぎ頭である観光業がダメージをうけるのは必至であり、これに抵抗するのは当然と言えば当然です。 望むらくはギリシャの国民、特に公務員が、民間に下ってもっと勤勉になり、EUの金融支援に頼る「借金依存体質」を脱却せねばなりませんが、EU側も、数少ない主要産業の成長の芽を摘むような緊縮策を押し付けるべきではありません。 日本も、静観している、という大人な態度もいいですが、世界一の債権国なのですから、ピンチはチャンスとみて、EUとギリシャを仲介しつつ、大胆な金融支援でギリシャを救済し、EUへの影響力を増していくという考えがあってもよいのではないでしょうか。 いずれにせよ、大きな政府、高い税金の国は衰退し、小さな政府、安い税金の国は繁栄するということです。 幸福実現党は、日本の一国平和、繁栄主義ではなくして、世界の恒久平和と繁栄のために貢献するリーダー国家を目指してまいります。 時価総額バブル期超え――バブルとは言わせない本物の繁栄に向けて 2015.06.10 文/幸福実現党埼玉県本部幹事長代理 HS政経塾2期卒塾生 川辺賢一 ◆東証一部、時価総額バブル期超え 先月22日、東証一部の時価総額が591兆円に達し、バブル絶頂期(1989年12月)を上回り、25年ぶりに過去最高を記録しました。 こうした経済状況に対して、アベノミクスを評価する声もあれば、「官製相場」だと言ったり、「政治が無理やり作ったバブルだ」と言う声もあります。 では、私たちは一体、現在の経済状況をどのように分析し、どのような未来経済に向かうべきなのでしょうか。そこで本稿では経済金融の観点から、現在の分析と未来への提言を行います。 まず現在の相場を特別「官製相場」であるとする考えに対して、筆者は違和感を持ちます。 というのも、もし現在の相場が「官製」なら、「官製」でない相場を探す方が難しいからです。 例えば2003年4月末、厳格な不良債権処理に向けた小泉政権の方針発表を受け、当時バブル後最安値であった7603円台まで急落した相場も、デフレ容認的だった民主党政権期に8千円台~1万円台で低迷し続けた相場も「官製相場」に違いありません。 中央銀行を中心とした現代の銀行制度や統一的な財政制度を持つ近代的な主権国家を前提とするならば、良いか悪いかは別にして、政治の影響を受けない株式市場は存在しないのです。 そして一般に株価は景気の先行指標と言われますから、株は安いよりも高い方が良く、実体経済の回復のためにも株高は必要なのです。 ◆株高から「実感ある景気回復」へ しかし一方で現政権は実体経済の回復を潰すような、間違った政策も実行しております。 先月、名目賃金から物価上昇分を差し引いた実質賃金が24ヶ月ぶりにプラスに転じたと報道されましたが、24ヶ月も実質賃金が減少し続けたのは異常なことです。 それは昨年4月の消費税率の引上げで、賃金が上がらないのに一般物価が押し上げられたことが原因です。 また日本経済は米国等と比較して、株高が実体経済の回復に波及しづらいと言われます。 それなのに政府は昨年1月、NISA導入に伴って証券優遇税制を撤廃し、株高の実体経済への波及を阻害するばかりか、株高自体を阻害する手を打ってしまっているのです。 幸福実現党はかねてより消費税率5%への引戻しと証券売買に掛かる税金の撤廃を提唱し、株高から「実感ある景気回復」を後押しする経済をつくろうとしています。 ◆中央銀行改革――権力の正統性を問う さて冒頭では「政治の影響を受けない株式市場は存在しない」ということを述べました。 特に昨今の株高やドル高円安の為替相場が、日銀による2013年4月以降の「異次元緩和」や2014年末の「追加緩和」、また米連銀の「QE3終了」や「利上げ観測」によってもたらされているように、いかに中央銀行の権力が巨大であるかが伺えます。 円高が定着すれば、日本企業の海外移転比率が上昇し、円安が定着すれば、日本企業の国内回帰が促されるように、中央銀行の政策は為替への多大な影響を通じて、日本の産業構造をも変える力を持つのです。 しかし、こうした中央銀行の権力に関して、その正統性を問う議論はあまり見られません。 例えば日銀最大の株主は財務省であり、そのトップは財務大臣、そして財務大臣は総理大臣に任命され、総理大臣は国民に選出された国会議員により指名されます。 中央銀行においては時の政治や世論の動向に左右されない「独立性」が重要視されますが、その権力構造を冷静に分析する限り、「独立性」とは名ばかりで、一人一票を原則とした政治の原理と不可分であることがわかります。 「独立性」が担保されなければ、中央銀行は公共性や全体の景気動向を勘案するのではなく、マスコミ先導型の世論や政治の恣意的な判断に従って、例えば倒産寸前の金融機関につなぎ融資を提供したり、しなかったり、その判断を下すことになるのです。 それに対し、幸福実現党・大川隆法総裁は講演で「日銀は新たに出資を求めるべきだ」との提言を行っております。 日銀が民間から出資を募り、民間優位の資本構成になれば、これまでの世論による支配から、市場による支配へと、日銀の権力構造は根底から変わるのです。 現代の銀行制度の中心にあって一国の産業構造に多大な影響を与える中央銀行は、民間の金融機関や産業界の総意が反映される体制であるべきではないでしょうか。 東証一部、時価総額バブル期超えを迎えた今、株高を「実感ある景気回復」へ変え、バブルとは言わせない本物の繁栄を作っていく必要があります。 幸福実現党は新しい提案を通じて、日本と地球全ての平和と発展繁栄に全力で尽くします。 「健康は富を生み出す!」発想の転換による医療保険制度改革の必要性 2015.05.28 文/HS政経塾部長 兼 幸福実現党事務局部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ ◆医療保険制度の改革関連法が参院本会議で成立 「医療費の抑制」――。社会保障改革の議論で多く出てくるワードです。 連日、衆議院での平和安全法特別委員会で、安全保障関連法案の議論に注目が集まっている中、医療保険制度の改革関連法が参院本会議で成立しました。 ポイントは、慢性的な赤字体質が続く、国民健康保険(国保)の立て直しです。 自営業者・年金生活者・非正規労働者が加入している国民健康保険(国保)の運営主体を2018年度から市区町村から都道府県に移して、運営規模を大きくして、財政基盤を少しでも安定させることです。 ただ、国保の運営を都道府県に移すだけで、問題点が解決するわけではなく、国保の赤字を埋め合わせるために、2017年度以降、毎年3,400億円の国費が投入されることになっています。 そのための財源確保として、大企業の健康保険組合(健保)や公務員の共済組合の負担を増やすことが盛り込まれています。 2018年度時点での健保組合の負担増は600億円(事業主負担含む)、共済組合は700億円という厚労省は試算しているようです(5/28朝日)。 <主な内容> 1.国民健康保険(国保)は2018年度から、運営主体を市区町村から都道府県に移す 2.大企業の会社員が加入している健康保険組合(健保)や公務員の加入する共済組合による75歳以上の後期高齢医療制度に出す負担金の増額 3.2016~18年度での入院時の食事代の段階的引き上げ(現在260円→460円) 4.かかりつけ医の紹介状を持たない患者が大病院を受診する場合の定額負担(5千円~1万円) 5.保険診療と保険外の自由診療を併用する混合診療の枠を広げる 6.「保険者努力支援制度」の創設:ジェネリック医薬品の使用割合を高め、生活習慣病の予防指導に取り組むなど、医療費の抑制に努める自治体に対して優先的に国費を配分 ([参照]5/28産経・読売・朝日・東京) ◆赤字同士の「国保」と「健保」が支え合っている現状 赤字が広がる国保の財政支援をするために、健保や共済組合への負担が増えるということですが、健保の組合全体の2015年度の経常赤字見込みは1,429億円の見込みで、8年連続赤字の状態で、既に全体の約2割の組合が保険料率を引き上げています(5/28産経)。 つまり、国保と健保は、両方とも赤字の状態ですが、程度の軽い健保が、重症の国保を支えているという状況です。 ただ、お互いに赤字同士で支えあっており、そのため、入院時の食事代等の利用者負担の引き上げもしてはいますが、根本的な解決にはまだまだ長い道のりが続きそうです。 ◆「健康でいることの価値」をもっと打ち出すべき 医療保険改革は、生活への影響も大きく、多様な意見があるため、どうしても対応が対処療法となってしまっています。 かかりつけ薬局など医薬品の使用を適正化などの議論が出ていますが、今後の方向性としては、「健康でいることの価値」をより実感できる改革を推し進めるべきだと思います。 健康ポイントの創設の議論も出ていますが、それが具体的にどのようなものになるか、はっきりとは見えてきません。 そこで、例えば、一定の健康要件を満たしていれば、「保険料率が下がる」、「減税措置が受けられる」など、明確なインセンティブを打ち出すべきではないでしょうか。 健康を維持する「値打ち」、「健康維持の努力は報われる」という認識が浸透することで、結果として医療費の抑制に繋げるという議論も積極的にしていくべきではないでしょうか。 このまま保険料率の引き上げ傾向が続けば、景気が上向いて賃金が上昇しても、使えるお金(可処分所得)が増えず、消費拡大も減速します。 その結果、そもそも保険料の原資となる、賃金そのものが減ってしまうことにもなりかねません。 健康であってこそ仕事ができて、活力ある経済の土台があって福祉も成り立っています。 「健康は富を生み出す」――、発想を転換しての医療保険制度改革の方向性も検討するべきです。 「大阪都構想」の是非を問う住民投票を振り返って 2015.05.25 文/HS政経塾四期生 西邑拓真(にしむら たくま) ◆大阪都構想を巡る住民投票を振り返って 5月17日、「大阪都構想」の是非を問う住民投票が実施されました。 結果は、反対が70万5585票、賛成が69万4844票と、1万票余りの僅差で「大阪都構想」が否決される形となりました。 「大阪都構想」は、東京都と23特別区をモデルに、大阪市を解体して特別区に再編しようとするものです。 この度の住民投票で、賛成が一票でも上回っていたならば、政令指定都市初の「廃止」が決定し、大阪市が五つの特別区に分割されることになっていました。 これまで、大阪では、府と市の間の「二重行政問題」が問題視されてきました。 それぞれの主張の食い違いから協力体制を十分にとることができない行政の姿から、府と市の関係は、「府市合わせ(不幸せ)」であると揶揄されてもきました。 そのような状況の中で、大阪維新の会は、「都構想によって知事と市長を一本化することで、二重行政問題を解消しよう」という主張を繰り広げてきました。 しかし、都構想を実現するには、莫大な費用がかかることが徐々に明らかとなります。 初期費用として、区役所建設やシステム改修など最大約680億円かかることが明らかとなると共に、新たに設けられる特別区において、議会、教育委員会などを新設するに伴って生じる、高いランニング・コストの存在も指摘されていました。 一方、大阪維新の会が主張してきた、都構想を実現することによる「大きな経済効果」は、昨年の大阪市の集計によると、わずか年1億円に過ぎないことが判明しています。 このように、都構想実現によって「莫大な費用がかかる」といったことや、大阪市民から「無駄と切り捨てられる公的サービスに病院なども含まれている。必要なサービスまで簡単に削られそう(2015年5月18日付 日本経済新聞電子版)」などいった声が聞かれたように、「政令指定都市である大阪市が、一般市以下の権限になり、行政サービスが低下する」という反対派の主張が、わずかながらも、大阪市民に届いた形になったと言えます。 ◆地方分権推進の危険性 この住民投票が行われた同日、沖縄県那覇市で、「米軍普天間基地の辺野古への移設に反対」するための集会が開かれていました。 もし、大阪が「都構想」の実現に向けた住民投票で、賛成多数という結果であったならば、地方の権限肥大化を招き、「国家としての外交・安全保障政策などの遂行に困難が生じかねない」とする動きが、今後、沖縄などでより活発になっていたであろうと予想されます。 やはり、地方が、国とは独立した外交戦略等を行えば、国家として一体感のある安全保障政策を施行することに困難が生じかねないことを指摘する必要があります。 日本は、「防衛力の構築は、発展のためのコストである」ということを、今一度再確認し、地方分権を進めることが、実は、防衛力の低下を招き、結果的には大きな代償を払わなければならない可能性があることを認識する必要があるでしょう。 ◆残された課題に対し、真摯に取り組む必要性がある 再度、話題を大阪都構想に戻しますと、今回の拮抗した住民投票の結果を見ると、「大阪のあり方を改善してほしい」という声も多数存在することを読み取ることができます。 都構想賛成派の中には「(市の第三セクター破綻など)ずっと大阪の失敗を見続けてきた。現状を変えてほしい(2015年5月18日付 日本経済新聞電子版)」との声が現に上がっています。 また、財政的には、大阪市は2.9兆円、大阪府は5.3兆円という多額の赤字が存在するなど、大阪には多くの課題が山積しています。 今後は、市民のこうした声を重く受け止めつつ、「二重行政問題」など様々な問題の解決に向け、府と市が全面的に協力し合う必要があると共に、大阪維新の会が十分に提示できなかったと言える、大阪のこれからの明確な「未来ビジョン」が提示される必要があると言えるでしょう。 ◆東京・大阪間のリニア新幹線の早期開通をはじめとして、各都市と国が一枚岩となった改革を では、具体的にどのような取り組みが必要になってくるのでしょうか。 今、必要な改革の方向性とは、地方分権ではなく、地方や各都市と国が一枚岩となって発展を実現するというものだと考えます。 その取り組みの一つが、リニア新幹線の早期開通です。2027年には、東京・名古屋間でリニア新幹線が開通し、両区間をわずか40分で結ばれることになります。 40分という「移動距離」というのは、一般的な通勤圏だと考えられますので、東京・名古屋が一つの都市圏になるわけです。 これに対し、東京・大阪間を1時間強で結ぶリニア新幹線が開通するのは、東京・名古屋間開通から18年後である、2045年が予定されています。 名古屋が発展を遂げる18年の間に、関西・大阪において相対的に経済の地盤沈下が起こることが懸念されるわけです。 藤井聡氏の試算によると、大阪・名古屋のリニア同時開通によって、2044年時点で、大阪府の人口は26万人、大阪府の経済規模は1.3兆円増加するとされています(藤井聡著『大阪都構想が日本を破壊する』参照)。 このような都市圏の「統合」が進むことで、人・物・金・情報の行き来が活発になり、結果として、大阪だけではなく、日本全体としても大きな経済成長を見込むことができるでしょう。 そこで、今、JR東海が負担することになっている、大阪・名古屋間開通に必要な金額である約3.5兆円を、日本政府や関西の地方政府による負担や、「リニア債」の発行など、早期開通を実現するための何らかの具体策が示される必要があります。 ◆今、実現すべきは、「地方分権」ではなく、「オール・ジャパン」体制での経済発展 日本は、アメリカのカリフォルニア州と同等の面積しか有しません。高速鉄道網の整備が進む今日では、日本をいくつもの州に分断して、それぞれ独立的に発展を遂げようとすることは、やはり得策とは言えません(大川隆法著『政治の理想について』参考)。 日本は、地方が道州制につながる動きを賛同するなどといった動きをとるべきではなく、経済面・国防面の両面から見ても、「オール・ジャパン体制」を前提とした経済発展を成すことが合理的であると考えられます。 保育所待機児童の現状と課題について 2015.05.21 文/幸福実現党・愛知県本部副代表(兼)青年局長 中根 ひろみ ◆待機児童の現状 厚生労働省のまとめによると、昨年10月の保育所入所待機児童数は、43,184人で、平成25年10月と比較し934人減少したものの、東京・神奈川・大阪などの都市部では、子どもを預ける先がなく、困り果てる保護者の姿が見受けられます。 保育施設の利用は、秋頃になると次年度の利用申し込みが始まり、2月に選考の結果が通知されます。 残念ながら入所が決まらなかった場合、次は小規模保育施設、その次は認可外保育施設と、預け先を確保するために懸命な施設探しが始まります。 このような地域では、途中入園は不可能に近く、新学期に入園出来なかった場合、次のチャンスは1年後ということになります。 しかし、園児は次のクラスに持ち上がるため、新入園児の受け入れ枠は大変狭くなります。 私が施設長を勤める園では、44名の募集に対し、107名の応募を頂き、1~3才の入所倍率は5倍超となりました。 入所の選考はポイント制で行われるのですが、例えば「フルタイムの共働き」等の加算がないと、入所して頂くのは難しい状況です。 以下に主たる課題と、その改善策について取り上げます。 ◆課題(1)――用地確保の難しさ 自治体では新たに認可保育所をつくろうと設置者の公募をしてはいますが、都市部では土地探しに大変苦労します。 地価も高いため園庭のない園がほとんどですし、認可保育所であってもビルの中にある施設も少なくありません。 マンションが建設された場合、居住者が増え、それに伴って待機児童は更に増えることになります。 例えば、マンションを建設する際、託児所を導入する場合、行政が一定の支援を行うという方法もあるかもしれません。 ◆課題(2)――規制と運営資金 認可保育施設の認定を受けるには、国や自治体の基準を満たす必要があります。認可を受ければ運営費や運営補助金が受けられるため、結果として利用者は保育料以上のサービスを受けられることになります。 しかし、認可保育施設でない場合は保育料が高額となり、施設を運営する側にとっても、全て実費となるため、厳しい運営を強いられます。 そもそも、補助金に頼らなければ運営できない業態であることが、課題なのかもしれません。 ところで、託児施設の数を増やすためには、規制を緩和することがポイントになると考えます。 昨年、あるビルのフロアを認可保育施設として使えるか調べたところ、役所の判断は、保育室からトイレに行く際に共有スペース(廊下)を通る必要があるため認可は出来ないという結論でした。 しかし、なぜか「認可外保育施設にするなら大丈夫」ということでした。国から補助金をもらうのだから、条件も厳しくなると考えればよいのかもしれませんが、施設の区分は異なっても、子どもにとっての状況は同じはず。 子どもを守るための制度なのか、国や自治体が責任を回避するための制度なのか、疑問を抱いてしまいます。 「子どもの安全を守る」ための環境づくりという観点から、各種規制を緩和し、スリム化する必要があるのではないでしょうか。 ◆課題(3)――保育士不足 今年度を迎えるにあたり、都市部からも地方からも「例年になく保育士の確保が難しい」といった声が厚生労働省に届いたようです。そのための対応として厚労省は下記の内容を提示しました。 「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第33条第2項ただし書の規定により、『保育所一につき2人を下ることはできない』とされているところ、一定の条件の中で保育士の確保が特に難しい地域においては、『特例的に、平成27年度の間は、朝・夕の時間帯に児童が順次登所し、又は退所する過程で、当該保育所において保育する児童が少数である時間帯に、保育士1人に限り、当該保育士に代え、保育士でない者であって保育施設における十分な業務経験を有する者、家庭的保育者等適切な対応が可能なものを配置する取扱いもやむを得ないものと考えており、自治体においても配慮をお願いしたいこと。延長保育の場合についても、同様であること。』」 以上の内容が提示されています。 保育士不足を解消するためには、保育士資格がなくても子育ての経験がある方等に活躍の機会を提供することが大きなポイントになると考えます。 例えば「准看護士」同様に、「准保育士」制度を設け、多様な経験を持つ、より多くの方々に保育士になって頂く門戸を開くことで、新たな雇用の機会を提供することになり、保育士が増え、子どもにとっても、より良い保育環境を提供することができるのではないでしょうか。 以上、述べたように、現行制度の枠にとらわれることなく、保育の更なる質の向上を目指し、大胆な保育制度の改革に取り組むべきではないでしょうか。 固定資産税制について考える【その1】 2015.05.20 文/HS政経塾第二期卒塾生 曽我周作 ◆土地税制を考える 2020年の東京オリンピックの開催まであと約5年。 新しい国立競技場の建設について屋根がつかないままの開催か?などというニュースも入ってきていますが、これからその2020年に向けて東京では様々な都市開発事業が行われていくことになるでしょう。 ただ、その開発について阻害要因の一つとなりそうなのが、固定資産税という税金を含む土地税制ではないかと思われます。 土地などの不動産に係る税金としては固定資産税の他、不動産取得税などいくつかの税金がありますが、今回は「固定資産税」について考えてみたいと思います。 ◆固定資産税の位置づけ 土地や建物の所有に対して課税される固定資産税は、平成24年度の決算でいえば、税収は8兆5,804億円で市町村税の42.2%にあたる税金であり、地方財政の財源としては極めて重要な位置づけにある税金だといえます。 この固定資産税について、その課税根拠は様々な指摘がありますが、「最も有力な考え方は、地域的な行政サービスの対価として固定資産税を課すというものである」(岩田規久男:『都市と土地の理論』より)という指摘のように、固定資産税は地方行政のサービスに対する「応益課税」であるという意見が多くみられるところです。 ただし、(昭和6年の地租法制定について)「不動産についての保有税が本質的に収益課税であることから、これに最も適切な課税標準として賃貸価格が選択された…本税制は、シャウプ税制により課税標準を資本価格とされたが、課税の本質からすれば、地租税制度が優れていたと考えざるを得ない。」(佐藤和男:『土地と課税』p73)という指摘のように、土地の保有に関する税金は「資産収益」に課されるべきものであるという考えもあります。 また、「固定資産税は、地方自治体のサービスへの「応益課税」とされているが、同時に、貴重な都市空間の効率的な活用を促すための「市場価格」としての役割をもっている。…固定資産税は貴重な都市空間の「使用料」としての意味を持っている」(八代尚宏:『規制改革で何が変わるのか』より)というような指摘もあります。 この指摘から考えると、固定資産税には、特に「土地」という国家にとって限られた資産を使用するための使用料とも考えられますし、また、その限りある資源を有効活用して付加価値の創造を促すという意味もあるものとも考えられます。 ◆建物固定資産税は応益課税として妥当? ただ、現行の固定資産税は土地と建物に対して課税がなされるわけですが、特に建物固定資産税については「再建築価格」を課税標準としていますが、これは応益課税としてふさわしいものなのでしょうか。 というのも、「再建築価格」を課税標準とすると、質の良い建物ほど高い税金が課せられます。しかし、質の良い建物を建てるとその分行政サービスの充実が図られるとは単純には言えないと考えられるのです。 たとえば、先日川崎市内で簡易宿泊施設の火災があり、耐火建築物になっていなかったことが問題視されていますが、鉄筋コンクリートの耐火建築物になっていたならば、そしてスプリンクラーなどの設備があれば、あれほどの被害が出ずにすんだ可能性があります。 そうすると、それはある意味で、耐火構造の建築物は、もしもの時に人的被害等を軽減させると同時に、行政側の消防におけるサービスへの負荷をも軽減させると捉えることも可能になるわけです。しかしながら、反面、建物に対する固定資産税は高くなります。 これは質の良い建物に対して、その分行政サービスが増すと単純に言うことはできない例の一つだと考えられます。 ◆建物固定資産税は投資を妨げる効果がある さらに言えば、土地の保有に対して税金が課せられることは、前の指摘のように土地の有効利用を促すものになり得るものと考えられますが、建物に係る固定資産税は、より質の高い建物を建てればそれだけ税額も高くなるということになりますので、建物に投資することが不利に働いてしまいます。 したがって、建物固定資産税は投資を妨げる税制であると考えられるわけです。 そして、投資を妨げるだけではなく、例えば耐火構造の建築物への建替えなどを阻害してしまっては、火災の発生時、また大規模な震災などの発生時に被害を大きくしてしまうことにもつながります。 これは建物固定資産税のあり方は、非常に望ましくない形での租税回避行動にもつながる可能性があることを意味するわけです。 よって、この建物固定資産税の制度を見直すべきではないかと考えますが、次回は、さらに建物固定資産税の問題点を見ていきたいと思います。(その2につづく) 間違った金融規制案を迎撃せよ!――日本から生まれる新しい世界秩序 2015.05.12 文/HS政経塾2期卒塾生 川辺 賢一 ◆間違ったグローバルスタンダード 「90年代には、アメリカ押し付け型の『グローバルスタンダード』というのが流行っていましたが、これによって、他の国の経済は、そうとう破壊されたところがありました。」 「少なくとも、日本の経済が、『グローバルスタンダード』によって破壊されたことは間違いないと思います。これによって、日本の金融機関は軒並み潰れました。」 幸福実現党・大川隆法総裁が『国際政治を見る眼』(2014)のなかで、こう指摘するように、世界経済、とりわけ90年代の日本経済は、グローバルスタンダードの名を借りた金融規制、いわゆるバーゼル規制によって、大変、苦しめられてきた経緯があります。 以前にも筆者が指摘したように、それは当時、躍進中だった日本経済を狙い撃ちしたような内容であるばかりか、結果的に世界経済の低迷をも促すものでした。 参照:http://hrp-newsfile.jp/2015/1994/ http://hrp-newsfile.jp/2014/1478/ しかしながら、主要国からなるバーゼル銀行監督委員会は再び、間違った金融規制案を各国に課そうとしております。 具体的な規制内容としてバーゼル委員会は2つの選択肢を示しています。 1つは、購入時より値下がりしていく国債を保有している銀行は、新しい共通ルールにもとづいて、その国債の一部を売却するか、新たに資本を増強する必要に迫られるというもの。 もう1つは、各国の金融監督局の権限に基づいて国債値下がり時の売却や資本増強が求められるという内容で、不合理な規制に関しては、事実上、各国の裁量で無視できる余地が残ります。 もしも、最初の案が導入されれば、国債の値下がり時に、銀行によって国債が売却され、それが国債の値崩れにつながり、また国債が売却される、悪循環に陥る可能性があります。 これに対して銀行の国債保有率の低い欧州は規制強化を主張し、対して長期国債を多く保有する銀行の多い日米は各国の裁量の余地が残された柔軟な仕組みを求めています。 80年代後半に発案された国際金融規制(バーゼルI)は米英の結託によってグローバルスタンダードとなりましたが、今回の規制案は、日米で結託し、戦略的に迎撃していくべきです。 ◆日本は国際金融に関する骨太の哲学を持て さて、世界共通のルールに対して、異議を唱え、新しいルールの発案をしていくには、金融や貨幣、国債に関する根本的な議論が必要です。 国際金融論の大家として知られるJ・M・ケインズは、かつて「現金には国債やその他の資産とは違って金利がつかないのに、なぜ人々は現金を持ちたがるのか」という問題提起をしました。 ケインズは、様々な資産や財・サービスと容易に即座に交換できる現金特有の性質(流動性)に着目し、国債やその他の資産に金利がつくのは、流動性を手放すことへの対価であると考えました。 しかし、現在、世界は超低金利時代に入り、特に日本の10年物国債の金利は、今年に入って史上初の0.1%台にまで低下しました。 国債の金利が最低水準にあるということは、ケインズの世界観からすれば、日本では今、現金と国債の境界がなくなりつつあることを意味します。 実際、幸福実現党・大川総裁は『もしケインズなら日本経済をどうするか』(2012)で、「ケインズの考えでいくと、日本のような大国になれば、『国債を発行する』ということは、『単に借金をする』ということではなく、『アメリカがドル紙幣を刷っているような感覚に近い』ということです」と述べています。 こうした世界観からすれば、「国債をリスク資産とみなして、国債の保有量に応じて資本(現金)を積み立てる」という発想自体、日本やアメリカではナンセンスなのです。 それに対して、欧州では一つの金融機関の不良債権問題で一国の政府が吹っ飛んでしまうような小国が数多くあります。 そうした小国が発行する国債と、現金と同等に近い性質(流動性)を持つ国債は区別されるべきです。 ◆日本が新しい世界秩序形成をリードせよ さて、中国主導のAIIB設立が世界を賑わせ、欧州や新興国と米国との間でも異なる見解や対立があるように、国際金融のアリーナでは次の世界秩序形成をリードしようと各国がそれぞれの思惑をぶつけ合っています。 例えば欧州連合(EU)も、見方によっては、かつてナポレオンもヒトラーも成し遂げられなかった欧州統一の夢・野望を、21世紀において、通貨と財政の統合という非軍事的な手法で静かに進めていると考えることもできます。 翻って日本はこれまでのように米国や欧州が発信する新しい秩序やルールに受身で従っているばかりであってはなりません。 世界一の債権国である日本は、新しい世界秩序の形成をリードするだけでの資力を持っているのです。その資力を生かして、日本から新しい提案や構想、世界秩序のあり方を発信していく必要があります。 中小企業にとって相続税は致命傷! 2015.05.11 文/HS政経塾4期生 幸福実現党・大阪本部副代表 数森圭吾(かずもり・けいご) ◆中小企業の永続経営を阻む壁 日本には中小企業が約390万社あり、これは全企業数の99.7%を占める数です。また、雇用の約7割を担い、日本企業の売上高の約半分を占めているのも中小企業です。 つまり、中小企業こそが日本経済の屋台骨であるといっても過言ではないでしょう。よって中小企業の成長を支えることは日本経済にとって非常に重要であると考えます。 一口に「中小企業」といっても様々な企業が存在し、多くの経営課題が存在しますが、多くの企業が共通して抱える課題の一つに「企業相続」があります。 「中小企業白書(2006)」によれば、中小企業は年間約27万社が廃業しており、この原因として企業相続問題が大きく影響していると言われています。 企業が永続的に発展するためには、経営者が交代する際などにスムーズに企業相続が行われる必要がありますが、ここで大きな壁となっているのが相続税なのです。 ◆中小企業相続と相続税 中小企業の社長やオーナーが死亡した場合、 その会社の株は残された家族などに引き継がれることになります。この際、この株が相続税の対象となります。 中小企業といっても、 資産評価すると数十億円の価値がある会社もあり、その場合の株に対する相続税は非常に高額となってしまいます。 ところが中小企業の非上場株式は、簡単に売却してお金に変えることができないため、 相続税支払いに必要となる資金繰りが非常に難しいというのが現状なのです。 ◆企業相続シミュレーション 会社の株価総額が20億円だとした場合、その会社の株式を息子に相続すると、息子には約10億円の相続税がかかるといいます。 ある税理士の試算では、会社を引き次ぐ以前に、この息子が30台半ばからその会社の役員となり、年間に役員報酬を毎年2000万円受取ったとした場合、生活費・所得税を支払って貯金できるのは年間700万円程度となります。 そして20年後、息子の年齢が50台半ばになって父親からの事業承継が必要となった場合、息子の預金は1.4億円程度で、株式にかかる相続税10億円には遠く及ばないことになります。 このように企業相続するにも相続税が払えず廃業するという企業が多数発生しているのです。企業相続において相続税は非常に大きな壁となってしまっているのです。 過去には銀座の一等地にある文具店の社長が、莫大な相続税負担を悲観して自殺するという痛ましい事件も起こっているほどです。 ◆相続税に関する要件緩和 このような状況の中で、15年1月から相続税に関する、中小企業の非上場株式を承継する際の税負担を軽減する「納税猶予制度」の要件が一部緩和されました。 緩和内容としては大きく以下の内容が挙げられます。 ・事前確認の廃止 ・親族外承継の対象化 ・雇用8割維持要件の緩和 ・納税猶予打ち切りリスクの緩和 ・役員退任要件の緩和 ・債務控除方式の変更 ※詳細・中小企業庁HP http://www.chubu.meti.go.jp/c71jigyousyoukei/syoukei_tirashi0329.pdf しかし、これらの制度がどれほど機能するかは極めて不透明です。 2008年にも企業相続にかかる相続税の納税猶予制度改善策が導入されましたが、この制度の対象として認定された件数はわずか258件でした。 企業相続の際に発生する相続税は、企業の永続経営に対する影響力の大きさから考えても、要件緩和という手段ではなく、税制の根本的な見直しが必要なのではないでしょうか。 ◆世の中に必要とされる中小企業が残っていくために そもそも企業とは世にサービスを提供し、社会を豊かにするものであり、個人の枠を越えた社会的な存在だといえるでしょう。 そして中小企業の経営者が保持する自社の株というものは、企業が社会に貢献するための経営資産でもあります。 社会から必要とされ、利益を上げている会社が税金によって廃業に追い込まれるという事態には違和感を感じざるを得ません。 相続税が肯定される根拠なかに「相続などで無償所得した財産には課税し、社会に還元すべき」という考え方がありますが、企業相続に関して課税対象となる財産は、「企業の社会性」の観点から考えても、個人財産と同様の扱いをすべきものではないと思われます。 これらの理由から、日本の中小企業がより発展していくためにも、企業相続において発生する相続税には今後「減税・撤廃」が必要であると考えます。 日銀総裁の公約「物価上昇率2%」未達成の責任を問う 2015.05.10 文/幸福実現党・政務調査会チーフ 小鮒将人 ◆安倍政権の高支持率のカギは日銀の金融緩和 第2次安倍政権が誕生してから、2年半になろうとしています。1年間という短命で終わった第1次政権とは異なり、すでに長期政権に向けて期待の声が出始めています。 確かに安全保障の分野では、日本の国難に対して日米同盟を中心とする外交や、遅々とした歩みながらも、防衛力の増強などを進めておりますが、長期政権が期待される最大の理由は、日銀による金融緩和とそれに伴う株高であります。 日銀は黒田総裁が就任して、すでに2年以上が経過しており、一方では金融緩和→株高→支持率上昇という構図が変わりつつあるという意見はあるものの、少なくとも、日経平均株価も4月の下旬に、2万円を超えており、日銀の影響力まだまだ大きなものがあります。 安倍総理もこのことは強く認識しており、昨年末の消費増税の判断の際、GDP2014年7月~9月の速報値について、多くの専門家の予想を裏切る年率換算マイナス1.6%という厳しい結果になった事を受けて衆院を解散し、「消費増税延期の是非」を問う選挙を行いました。 その解散に合わせ、日銀は金融緩和の発表を行い、それに伴って株価も上昇トレンドを刻むこととなりました。このことが、結果として安倍政権勝利の一因になった事は間違いありません。 ◆日銀の黒田総裁が目標としたものは さて、黒田総裁は、就任後の2013年4月4日の会見で、以下のように目標を述べています。 『日本銀行は本日、消費者物価の前年比上昇率 2%の「物価安定の目標」を、2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するため、「量的・質的金融緩和」を導入することを決定しました。』 上記の発言に出てくる「消費者物価」とは、専門用語では「コアCPI」という言い、天候などによる変動幅が大きい生鮮食品を除いた総合的な物価を表す数値で、毎月総務省の統計局より発表されており、広く国民にも確認できます。 黒田総裁が言う「物価上昇率2%」とは、どのレベルかというと、かつて、この数値を記録したのが、1980年代後半以降では、1997年から98年にかけて一度、2008年のリーマンショック前の一度の計二度のみという状況で、いずれもこの20年以上の中で、少ない好況を実感しつつある時期でした。 したがって、黒田総裁は、就任時の目標として国民に好況を公約したと言ってよいのです。 ◆自らの発言が、自らの公約を潰した 確かに黒田総裁就任後、消費者物価は緩やかに上昇を始め、2013年は一年を通じ、総じて1%台を記録しました。国民も多くは好景気の予感を持ち、明るさが見えてきた一年でもありました。そのままいけば2014年度中の目標達成が見えていたのです。 ところが、2013年の参院選後、安倍総理が消費増税の判断を行うという時期に、黒田総裁から「消費増税推進」という話が公になりました。以下は、2013年7月に都内で行われた講演での黒田総裁の発言です。 『政府が予定通り2014年4月に3%、15年10月に2%の計5%の消費増税を行っても「日本経済の潜在成長率を上回る成長を遂げる見通しだ」「成長が大きく損なわれることはない」』 この発言が、日本の政財官界に大きな影響を与え、国民にも「消費増税やむなし」「増税しても影響は少ない」との認識を植え付ける事になりました。 何といっても当時は、アベノミクス成功の立役者の一人と見られていましたから、国民の信用は大きなものがありました。 ところが、2014年4月に消費増税が施行されると途端に国民の消費が止まり、景気に大きな影響を与える事になりました。 そして、その後の日本経済の失速は皆さまもご存じのとおりです。 そして、この景気の悪化が、GDPを押し下げ、消費者物価を押し下げる要因となりました。公式に発表された統計でも、物価の上昇率は、消費増税分を差し引いた数値は、ゼロ%台に逆戻りして、公約としていた2%の達成はできませんでした。 ◆日銀総裁が取るべき公約未達成の責任とは 現在のようなデフレ社会で消費者物価を押し上げるには、景気を良くする必要があります。これは、黒田総裁が2013年に体験したとおりです。 このことは、私たち幸福実現党も2009年の立党直後から訴えてきた事であり、2013年の増税への判断がなされる時にも、党として中止の判断を求める国民運動を展開しました。 黒田総裁は、私たちが訴えてきた事が全く理解できなかったようです。 黒田氏が財務省出身であり、省としての悲願であった消費増税の導入を強く希望したと思われますが、ここまで現実が厳しいとは想像していなかったのでしょう。 もちろん、黒田総裁は「異次元緩和」によって、現在の株高をもたらした功労者であるので、一概に批判をするべきではないものの、消費増税を推進し、そして、その結果、自らが掲げた消費者物価の目標を達成できなかった事に対して責任を問うべきではないでしょうか。 その責任とは、公約が達成できなかった理由を国民の前に明らかにする事です。 自らが推進し、日本経済を失速させた「消費増税」が誤りであった事、そして、安倍内閣は、10%へのさらなる増税を中止することはもちろん、元の5%に戻す事を訴えるべきではないでしょうか。 現在の厳しい状況と、今後のさらなる不透明感を見る限り、黒田総裁は、国民に対して、日本経済を悪化させた責任を負うべきです。 マスコミによる消費増税推進論や株高で、消費増税の厳しい現実がなかなか国民に届かない印象はありますが、統計上の数値を確認する限り、消費増税は明らかな失敗です。 黒田総裁に、日本経済に対する責任の一端があるのであれば、経済を回復させるための政策を推し進めていただきたいと強く望むものです。 参考文献 ※『幸福実現党テーマ別政策集 2 「減税」』/大川裕太(著) 幸福実現党 http://www.irhpress.co.jp/irhpress/news/21448/ すべてを表示する « Previous 1 … 6 7 8 9 10 … 33 Next »