Home/ 外交・国際政治 外交・国際政治 学問の領域に潜む黒い影――中国孔子学院の実態 2014.09.03 文/HS政経塾2期卒塾生 服部まさみ ◆中国「孔子学院」の実態 日本の学問の領域に静かに忍びよる黒い影があります。中国の文化教育・宣伝機関である「孔子学院」の存在です。 中国政府が03年から「中国語を世界語に」とのスローガンのもと、中国語・中国文化を世界に広げる国家プロジェクトが推進されました。 この国家プロジェクトの趣旨は、「世界に中国語を広め、世界各国の中国に対する理解と有効を深め、世界における中国の影響力を拡大すること」とし、その目標を達成するための中心政策が孔子学院なのです。 04年にソウルで一校目が設置された後、14年7月までに、全世界で約400、米国では90数カ所に開設され、日本でも立命館大学、早稲田大学、桜美林大学など約20大学に開かれています。 世界各国に設立されている孔子学院は、中国の政府機関と海外の教育機関との共同設置・運営を行っています。 限られた予算の中で授業を行わなければならない多くの教育機関にとって、中国側が初期投資の費用を提供してくれる孔子学院は魅力的であり、中国側にとっても提携機関のインフラを利用することで設備投資を軽減出来るメリットがあります。こうしたフランチャイズ方式が急速な拡大を可能にしたのです。 また、中国当局の訓練を受けた教師が中国から派遣され、教科書やプログラムなども中国当局が作成したものが使われています。しかし、相手国の教育機関のニーズをもとに作られているため中国のプロパガンダとは一見分からないようになっているのです。 大学などの教育機関の内部に設置され、教師の給料などの費用も中国政府が支給し、採算を度外視していることが特徴的です。 政府主導で自国の言葉や文化を広める英国のブリティッシュ・カウンシルや、ドイツのゲーテ・インスティテュートなど他国の組織は独立した語学学校という形を取っています。 孔子学院は、一般国民からは、中国語と中国文化を教える学校にしか見えませんが、中国教育省の高官は、「我が国の外交と対外宣伝工作の重要な一部だ」と強調しているほど、その実態は中国共産党のプロパガンダ的要素が強いのです。 ◆米国の教育機関を侵食する孔子学院 中国政府は、米国における中国語教育・中国文化の普及を大変重要視しているため、米国内の100近い大学に孔子学院が設置され、世界最多となっています。 しかし、今年の6月に、米国大学教授会は、「孔子学院は中国国家の一機関として機能し、学問の自由を無視する行動を取ることが多い。一方、米国の大学は学問の誠実性を犠牲にするようなパートナーシップを外部機関と結ぶことがしばしばある。孔子学院の開設を学内に許してきた米国の大学は、孔子学院との関係を再検討する必要がある」との公式声明を発表しています。 この公式声明が発表された背景には、米国の大学内にダライ・ラマの肖像画を飾ることを禁止したり、法輪功に加わったカナダ人教員に脱退を求めたり、中国政府に弾圧された民主化運動家の陳氏に対して圧力をかけ大学からの退去を求めたり、事実上、中国政府のコントロール下にあることに対して、市民の反対の声が大きくなってきたことにあります。 6月14日付のワシントンポスト紙の社説でも米国の大学が中国に管理されつつあることに警告を発しています。 果たして、米国のこの声明が中国の宣伝工作に対して歯止めをかけることができるでしょうか。 ◆中国の戦略的な手法 中国は、2020年までに世界の500の都市に孔子学院を設置することを目標にしています。今後は、さらに、初等教育や中等教育における中国語の普及により一層、重点を置くと考えられています。 米国の小・中・高等学校の教育課程において中国語教育の普及を広めるために、中国政府は毎年、米国から小・中・高等学校の校長、教育委員会から約2000名を中国に招聘して、豪華な中国旅行でもてなしています。その結果、中国語科目を提供する学校が以前より4倍に増加しています。 また、孔子学院を設置する州も中国との貿易が活発な州や、政府機関が多いワシントンD.C.近郊の州にターゲットを絞り、他の国の孔子学院の3倍の資金を投入するなど極めて戦略的です。 ◆日本は新たな「占領」を許すな 孔子学院の問題は、米国だけではなく、日本の教育機関に関わる大きな問題です。 大学設置審議会においては、孔子学院に代表される学問の領域への中国の宣伝工作の是非がしっかりと審議されるべきではないでしょうか。 未だ、GHQの占領政策による深い闇から抜け出せない日本において、新たな「占領」を許すわけにはいきません。幸福実現党は、日本と世界の平和のために自由の革命を起こして参ります。 「日米同盟」と「自主防衛力」に関する考察と戦略 2014.08.29 文/茨城県本部副代表 中村幸樹 ◆「防衛白書」(平成26年度版)で観る、我が国の安全保障政策 中国の脅威が高まる中、その対処として「国家安全保障戦略」「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画(平成26年度~平成30年度)」(平成25年12月17日閣議決定)に沿って、 国際協調主義に基づく積極的平和主義、防衛力の「質」「量」の確保、「統合機動防衛力」の構築、日米同盟の強化等を推進する方針、また、「国の存続を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成26年度7月1日閣議決定)で「集団的自衛権」を行使可能とし、前進したと言えます。 (1)日米同盟を基軸として、不敗の地に立て、(2)台湾を中心としたシーレーンを守れなければ、日本のエネルギー危機が来て未来は危ない、ということ(「日本外交の盲点」)を、一応押さえていると見られます。 しかし中国の覇権への執念と「日本支配」の可能性、「日米同盟」弱体化の危険見積もりという点では、判断に甘さが感じられます。 ◆帝国主義的侵略を目指している、危険な中国 中国の公表国防費は、過去26年間で約40倍、過去10年間で約4倍となっています。2014年度は約13兆円ですが、人民解放軍の衣食住コスト、人民武装警察部隊コスト、ミサイル戦力コスト、医療費と年金コスト、経営する武器製造企業のコスト、輸入外国製兵器、宇宙戦争予算等が入っていないために、実際は20兆円~30兆円とも言われています。 「先軍政治」で、数千万人粛清してでも国体を維持し、資源争奪、他国支配で、「軍事力をお金に換える」体質を持っています。 「アクセス(接近)阻止/エリア(領域)拒否」(「A2/AD」)能力の強化で、第一列島線~第二列島線と支配圏を拡大し、日本降伏と支配の計画、さらには世界制覇の野望も持って、軍事力の近代化を推し進め、三戦(さんせん)(輿(よ)論戦(ろんせん)、心理戦、法律戦)を展開しています。 ◆日米同盟の脆弱性(ぜいじゃくせい)。 アメリカは、時折、正義を見失い、判断を誤ることがあります。 日本に、人種差別をし、石油を止め、ABCD包囲網を敷き、ハルノートなどの外交で開戦に追い込んだ例、東京大空襲と原爆投下で民間人を大虐殺した例、戦後は、台湾を裏切り、中国共産党と手を組んだ例などです。 現在も、 (1)経済的理由で、世界の警察官としての使命を放棄し、『孤立主義』に入る可能性。 (2)中国との軍事的対決を避けるため、また中国との経済的関係を重視して、東アジアは中国に任せよう、との誘惑に駆られ、日米同盟を破棄し、『米中同盟』に入る可能性。 (3)将来、中国の軍事力が日米を上回って、日米同盟が『機能不全』に陥る可能性。 は完全には捨てきれず、戦略と対策が必要です。 ◆日米同盟の強化、継続の力 日米同盟の強化と継続には、日本が、アメリカから見て、 (1)敬意を払いたくなる『徳力』。 (2)敵対したくない『防衛力』。 (3)中国より魅力的な『経済力』。 を持っていることが、有効な力となります。 ◆敬意を払いたくなる『徳力』 「南京大虐殺」「従軍慰安婦」などの捏造歴史認識を、日本中・世界中から払拭させ、 「世界から人種差別と植民地支配をなくしてきた、正義のサムライ国家・日本」「世界最古の王朝が連綿と続く、奇蹟の国・日本」「今後も、世界の恒久平和のために尽くす、平和と正義の守護神・日本」といった内容のPR活動を大々的に行い、世界人類の幸福に責任を持って、発言力、外交力、リーダーシップを発揮していくべきです。 ◆敵対したくない『防衛力』 アメリカとの友好関係は常に親密にし、相互に軍事協力は推し進めつつも、同時に、高度な技術を有する「自主防衛力」を構築することが大事です。 傭兵に頼って経済的繁栄だけを求めていたカルタゴが徹底的に殲滅された事例を考えれば、自主独立した、高度で、頼りがいのある防衛力を保持することが、国防の隙をなくし、誇りある健全な同盟関係を持続させていく鍵になります。 自衛隊の最新兵器は、レベルは高いのですが、アメリカがソフトのコードを変えれば機能しなくなるものも多いという弱点があります。同盟関係なら問題ないのですが、米中に組まれたら、日本は奴隷国家へと転落するか、消滅するかという結末になります。 アメリカが日本を敵に回したくない「最新(未来型)通常兵器」の自主開発、「核抑止力」の自主構築が必要と考えます。 具体的には、各種軍事作戦を遂行し得る宇宙衛星、宇宙兵器、ミサイル防衛システム、原子力潜水艦、原子力空母、巡航ミサイル、弾道ミサイル、次世代航空機、各種無人機、ロボット兵器、レーザー兵器、サイバー戦技術、島嶼戦の装備、核シェルター、核抑止力、核ミサイルを無力化する兵器等において、技術的に中国に対して圧倒するレベルを確保することが大事です。 自主開発の高性能兵器を、アセアン諸国、インド、オーストラリア、韓国、ロシア、その他の友好国に、戦略的に輸出することは、中国包囲網を形成し、中国の侵略を抑止するための有効な方策となります。 ☆『経済力』に関しては、別の機会で論じたいと思います。 日露首脳会談は開催できるのか?! 2014.08.27 文/HS政経塾第2期卒塾生 幸福実現党世田谷区代表 曽我周作 ◆混迷するウクライナ情勢 前回7月30日にロシア-ウクライナ問題を取り上げてから約1か月が経過しました。 (「ウクライナ問題と日本の役割」http://hrp-newsfile.jp/2014/1611/) その間、ウクライナの上空でマレーシア航空が撃墜された事件についての真相も未だ明らかにならず、ウクライナ東部では激しい戦闘が続いています。 そんな中、この度8月26日にロシアのプーチン大統領とウクライナのポロシェンコ大統領が、ベラルーシの首都ミンスクで会談し、ウクライナ東部の情勢について話し合いました。しかし、この会談では事態の打開につながる成果は出なかったという見方が報道されています。 日本にとって最重要の同盟国であるアメリカのオバマ大統領、そしてアメリカ国内の言論も対ロシア強硬論が大勢を占めており、混迷するウクライナ情勢のもと、この秋に開催予定であった日露首脳会談についても開催を危ぶむ声が聞こえています。 さらに、最近ではロシアが制裁への報復として特定の日本人のロシアへの入国拒否や、北方領土での軍事演習を行いました。 ◆プーチン訪日の意義 そのため日本国内でも「安倍政権は、今秋にも予定していたプーチン氏の来日招請を延期するのはもちろん、首脳同士の個人的関係を頼んだ領土交渉の戦略も見直すべきときではないか」(8/16産経「社説」)という意見が出たりするなど、日ロ首脳会談の開催について真っ向から反対する声も出ています。 しかし、ロシアのラブロフ外相が25日の記者会見において、プーチン大統領の訪日ついて「ウクライナ情勢は露日関係には関連しない」(産経新聞8月26日)と述べ、訪日の計画には影響はないということを述べています。 これは、ロシアにとってやはり対日関係が非常に重要であり、安倍首相との首脳会談の開催を強く望んでいることの表れではないかと思われます。 ラブロフ外相の発言については「プーチン大統領が訪日できなかった場合、日本側に責任があると示唆する狙いがあるとみられる」(8/27朝日)という指摘もありますが、単に日本側に責任があるとしたところでロシア側にとっては利益が無く、やはり日本との関係改善、関係強化がロシアにとって重要とみるべきでしょう。 特に欧米各国との関係が悪化し、制裁も受ける中で、中国と天然ガスの長期の取引に合意するなど中国への接近が見られますが、ロシアとしても中国の脅威は厳然と存在し、対中国抑止のためにも、そして経済的な理由からも日本との関係強化は非常に重要であるはずだからです。 一方、我が国としても対中抑止のためにもロシアとの関係を良好に保つことは国益に資することであります。本来ウクライナ情勢の混迷さえなければ日露首脳会談は何の問題もなく、日本としても期待感をもって実現できたはずです。 ラブロフ外相の発言を受けて、菅官房長官は「今年2月ロシアのソチでの日ロ首脳会談の時に、大統領の訪日について合意したことは事実だ」としたうえで「日程はなんら決まっておらず、種々の要素を総合的に考慮したうえで判断したい」と述べています。 ◆ロシアをめぐるアメリカと日本の対応 やはり気になるのはアメリカのオバマ政権の反応です。ロシアとの関係は重要ですが、かといってアメリカとの同盟関係に深刻な亀裂を生じさせるわけにはいきません。 アメリカのサキ国務省報道官はプーチン大統領の訪日について「反対とは言わない」と述べましたが今後プーチン大統領の訪日に現実味が帯びてきたときにオバマ政権がどのような反応を示すかは予断を許しません。 一部では森元首相が、安倍首相からの親書を持ってロシアを訪問するかもしれないという報道もあります。親書は「プーチン大統領との首脳会談を行う」ということを伝えるものだということですが、公式には発表されていません。 もし、これが現実になったとしても、日ロ首脳会談で期待されるのは北方領土問題の進展です。日本としてはこの問題の進展がなければ対ロ関係を決定的に進めることはできないでしょう。 しかし、本当にそれができるのか。アメリカ国内に対ロ強硬論が吹き荒れるなかでロシアとの首脳会談を行うとするならば成果を出さなければならず、安倍政権にとっても非常にプレッシャーのかかるところであります。 プーチン大統領との首脳会談が行われるとするならば、これは日本の未来にとっても重大な決断になるでしょう。 また一つ重大な局面を迎えた我が国の外交ですが、ロシアについては日本がアメリカとの仲立ちをできることが望まれると思います。難しいかじ取りでありますが、今後ロシアが国際社会の中でどのような立場をとるかが非常に重要です。 ロシアは世界中で懸念される中国の覇権への抑止の最重要のカギを握る国の一つであることは間違いありません。安倍政権にはかじ取りを間違わず、正しい方向に導いていただきたいと切に期待するものであります。 9条改正の先にあるのは、「和の精神」と「武士道精神」の復活 2014.08.25 文/HS政経塾第3期生 森國英和 ◆社民党のポスター『あの日から、パパは帰ってこなかった』 今夏、集団的自衛権の行使を認める閣議決定を行った安倍晋三内閣に対し、社民党は7月16日に、憲法9条の解釈変更への反対を訴える新ポスターを発表しました。そのポスターには、『あの日から、パパは帰ってこなかった』と大きく記されていました。 このポスターは、「多くの自衛隊員が戦死する」「日本が徴兵制の国になる」ことを連想させるものであり、非常に扇動的であると言っても過言ではありません。自衛隊出身の佐藤正久衆議員は、「怒りと悲しさを覚える」と地方紙でコメントしていました。(北海道新聞7月27日付) このポスターは、集団的自衛権の行使容認や9条の改正への反対論を象徴しています。それを見ると、「平和憲法9条は日本の誇り」という戦後の“常識”を説得し切れていないことについて、反省させられます。 そこで改めて、憲法9条を改めることの意義を考えると、日本が古来より培ってきた「和の精神」「武士道精神」を取り戻すことであります。 ◆「和の精神」―アジア・西太平洋地域の友好国との連携強化 迫りくる日本の国防の危機とは、共産党の一党独裁国家・中国の軍事拡大です。 中国は、この10年で軍事費を4倍以上に膨らませると同時に、日本や台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インド等に対して、軍事的な圧力をかけ続け、虎視眈々と領土拡張を狙っています。 その中国を抑え込めなくなる可能性が高まっています。その世界的脅威を前に、日本が「和の精神」を発揮し、アジアや太平洋の友好国との連携を強化することが急務です。 例えば空軍力について、外交評論家の岡崎久彦氏は、かつては日本の自衛隊や在日米軍は、単独でも中国の空軍力に対抗できていたが、これからは、日米の軍事力を一体として計算しなければ、中国軍の動きを抑止できなくなると指摘しています。(文藝春秋2014年7月号『尖閣激突 中国航空戦力が日米を上回る日』) 集団的自衛権の行使容認、さらには9条の改正によって、日本の領域の外側でも自衛隊と米軍が共同して活動を行えるようになれば、中国の「拡大欲」にメスを入れることができます。 また、シーレーン防衛を共通の目的として、ASEANやオーストラリア、インドとの協力関係を築くことも重要です。 安倍首相は昨年12月の日・ASEAN特別首脳会談等の中で、「日本とASEANが、“WA”の精神で結ばれるとき、アジアと世界の未来は明るいことを信じましょう」と述べています。武器輸出や共同訓練、共同哨戒活動等を重ねながら、日本の「和の精神」の下で各国が連携する体制をつくり、中国の海洋進出を抑止することが望ましいと考えられます。 ◆「武士道精神」―大国としての道徳的な義務を果たす 敗戦後の日本は長らく、自衛隊の海外派遣すら行えませんでしたが、1991年の湾岸戦争以降、少しずつ活動の幅が広がっています。しかしながら、国家としての国際社会で道徳的な義務を果たせているとは、到底言えません。 日本の周辺、台湾や朝鮮半島で有事が起こったとき、日本の自衛隊を出動させられないことは当然として、日本に基地を置く米軍に対する後方支援すらも、大きく制限されています。 現在の日米ガイドラインでは、水や食料の提供や医療活動等はできますが、武器・弾薬の提供や戦闘機への給油は、日本国内でもできないことになっています。 集団的自衛権の行使容認で、活動の幅は多少広がるとはいえ、東シナ海や南シナ海、インド洋などの「航行の自由」を守るために万全とは言えません。 さらに言えば、日本がアジアにおいて、「対中国戦略の旗手」となることを示さなければなりません。 南シナ海への中国の海洋進出は、70年代半ばから始まり、すでに西沙・南沙諸島に恒久軍事施設を建設しており、南シナ海が完全に「中国の海」となることも予想されます。 このような惨禍に「見て見ぬふり」をすれば、日本は国益を損なうのみならず、「武士道精神は失われた」と国際社会から酷評されかねません。 ◆9条改正をしっかりと掲げよ! 集団的自衛権の行使容認に伴って自衛隊法など10本以上の法改正が必要となるため、安倍首相は9月に、「安全保障法制担当大臣」を新設します。 国会審議の中で、野党や左翼・護憲派の論陣から、さらなる反論・批判が寄せられることが予想され、先の社民党のポスターのような国民扇動にも対抗せねばなりません。そういう時だからこそ、9条改正の重要性を明言すべきです。 「平和憲法が日本の誇り」というのは、全く荒唐無稽です。少なくても数百年以上、日本が誇ってきたのは、「和の精神」と「武士道精神」であり、それは9条改正と方向を一にしています。 安倍首相には、今秋の臨時国会の所信表明演説、もしくは来年の施政方針演説において、9条改正をしっかりと明言するよう迫りたいところです。 主権国家「日本」の再建! 2014.08.22 文/香川県本部副代表 中西 利恵 ◆集団的自衛権 先般7月1日、安倍内閣による「集団的自衛権の行使容認」が閣議決定されました。 平和勢力を名乗る左派の反対活動ばかりが報道され、国民の不安を煽っていますが、そもそも集団的自衛権は国連憲章において定められた国家として当然の権利です。 ところが、我が国においては憲法9条という独自の国内理由によって「権利はあるけれども行使はしてはいけない」という政府解釈を維持してきたわけです。 今なぜ「集団的自衛権の行使容認」をする必要があるのでしょうか。 それは、明らかに侵略の意図をもって準備を進めている中国や北朝鮮という国があるからです。特に中国とフィリピン、ベトナム、台湾などはいつ紛争や戦争が起こってもおかしくない状況にあります。 中国とフィリピン、ベトナム、台湾との紛争や戦争が起こる場所は南シナ海や東シナ海の南側で、そこは日本のシーレーンであるため、日本の経済にも打撃を与える可能性が高まります。ですから日本にとって大きく国益を損なうことになります。 そうした意味で「集団的自衛権の行使」を容認すれば、米国や日本の周辺国との連携もスムーズになるため中国を牽制することにつながり、「集団的自衛権の行使容認」そのものが中国への抑止力となるからです。 ◆『自治基本条例』の危険性 また侵略は、外部からだけではありません。 先日のニュースファイル(http://hrp-newsfile.jp/2014/1641/)でも触れていましたが、市民参加・地方主権を謳い、選挙で託された人ではない、資格を問わず「誰でも市政に参加できる」条例が全国の6分の1の自治体で既に施行されています。 殆どの自治体でこの『自治基本条例』を「まちの憲法」すなわち最高規範性を有すると位置づけています。 例えば、神奈川県大和市の条例には、「市長及び市議会は…(在日米軍)厚木基地の移転が実現するよう努めるものとする」との規定があります。つまり、国法で誘致された自衛隊基地も条例次第で撤去できるということになります。 実際にいわゆる「市民」として共産系の個人やNPO団体が審議会に名前を連ねており、現時点では行政機関との緊密なパートナーシップ(協働)を重視しているようですが、やがては行政内部に深く浸透し、国の立法権・行政権から自立した「政府」となって地域社会を主導し支配していく目論みが見えてきています。(松下圭一著『政治・行政の考え方』参考) ◆幸福実現党が地方選挙に臨む意義 この条例の先駆的提唱者である松下氏の講演をきっかけとして最初にできたのが北海道ニセコ町の「ニセコ町づくり基本条例」です。 驚いたことに私の居住する高松市の大西市長は、総務省時代北海道に勤務、条例を成立させたニセコ町長との縁が以前からあり、この構想を市長選挙の公約として無投票当選を果たし、既に「自治基本条例」「子ども子育て条例」を施行させました。 「子ども子育て条例」については自民党香川県連から内容改善の提言があったにも関わらず、保守であるはずの市議の大半を占める自民党同志会は即日却下をするという疑問附の付くようなことが起こっています。 先般7月27日、小矢部市議選において初の幸福実現党市議が誕生しましたが、今後こうした内からの侵食を防ぎ、市政を護るためにも幸福実現党の地方への政治参加が急がれます。 ◆「十七条憲法」「教育勅語」に学ぶ憲法の根幹 1400年以上もの昔、聖徳太子によって定められた「十七条憲法」や明治天皇によって示された「教育勅語」は、今なお私たちの心に響く普遍的な真理を感じます。 「十七条憲法」第二条「篤く三宝(仏・法・僧)を敬え」とあるように、どちらもその中心には、仏神への尊崇の念があり、仏神から命を受けた指導者への尊敬、そして一人ひとりの精神的精進が国家を繁栄に導くものであることを示しています。 比べるに値しませんが、「自治基本条例」の大半は人間の権利主張であって仏神の心とは全くの対局にあり、その行く先は“破壊”です。 ◆自主憲法の制定によって主権国家へ 現憲法は、日本が二度と歯向かってこないように宗教と軍事を骨抜きにし、精神的にも軍事的にも叩きのめす、米国による弱体化政策でした。 日本は独立した国家でありながら占領下GHQから押し付けられた憲法をこれまで70年近く護り続けてきたわけです。主権国家の三要素といえば「領土」「国民」「主権」ですが、日本は国防主権を持っていませんので真の主権国家とは言えません。 来年、戦後70年を迎えます。今こそ、主権国家として自主憲法を制定し、当然の国防体制を整えるとともに抜き去られた宗教的精神と誇りを取り戻さなくてはなりません。その意味において祭政一致でなければ正しい政治も真の民主主義も成り立たないのだといえるでしょう。 終戦記念日を迎えるにあたり~日本の国防を考えよう~ 2014.08.13 文/千葉県本部 副代表 古川裕三 ◆ペマ・ギャルポ氏からの提言 先般、チベットから日本に帰化した国際政治学者のペマ・ギャルポ氏(桐蔭横浜大学大学院教授)の「これからの日本はいかにあるべきか」と題するセミナーを聴講する機会がありました。 ペマ・ギャルポ氏といえば、『最終目標は天皇の処刑 中国「日本解放工作」の恐るべき全貌』の著者として、中国が進める日本解放工作を明らかにしたことでも有名です。 本セミナーにおいてペマ氏は、日本の国連の常任理事国入りに向けて、他のアジア諸国から推薦される国家となるべく、特にインドとの関係強化に力を注ぐべきと主張されていました。 その論拠のひとつとして、先の大戦後、インドは、日本の主権が侵害されているという理由でサンフランシスコ講和会議にも出席せず、条約にも調印しませんでしたが、1951年の講和条約の調印後の翌年、インドは日本と単独で友好関係を築いたことをあげていました。 ◆インドの独立を支援した日本 周知の通り、日本の敗戦から2年後の1947年8月15日にインドはパキスタンとともに独立を果たしましたが、その原動力となったのは日本軍がインドの独立のために、決死のインパール作戦を決行し、多大な犠牲を払ったからにほかなりません。 このインパール作戦については、戦後、GHQの占領下において、自虐史観を植え込むために、惨敗だけが強調され「愚かな作戦」と言われてきました。 しかし、戦後、ロンドン大学のエリック・ホプスバウ教授が次のような言葉を残しています。 「インドの独立はガンジーやネールが率いた国民会議派が展開した非暴力の独立運動によるものではなく、日本軍とチャンドラ・ボースが率いるインド国民軍が協同してビルマを経由してインドへ進攻したインパール作戦によってもたらされたものである」 150年にわたるイギリスによるインドの植民地支配を解放したのは、日本の戦いがあったからなのです。幸福実現党はかねてより、日印同盟の必要性についても主張していますが、中国包囲網の形成のために、インドは要の国家であるといえます。 ◆中国に屈しないために また、ペマ氏は、中国についても、自国は核武装して軍拡を続けていながら日本にだけ憲法九条を守れというのは筋違いとしたうえで、「和を以て貴しとなす」聖徳太子の十七条憲法を例にしながら、日本人はもっと自国の歴史に誇りを持つべきであると激励してくださいました。 冒頭に紹介したペマ氏の著書『最終目標は天皇の処刑』のまえがきにおいても、「私は中国に侵略されたチベットの亡命難民として40年間この日本で過ごしました。それだけに、中国の悪意や謀略が手に取るようにわかります。 2005年、日本国籍を取得しましたが、第二の祖国がチベットのような悲劇に見舞われるのは何としても阻止したいという思いで一杯です。」と、執筆動機を著しています。特に本書から日本人が教訓とすべきは、侵略される前のチベットは、ちょうど今の日本と同じように「一国平和主義」で内向きだったことです。 チベットは高地にある国土のために、地政学的に侵略の危機が今まで少なかった分、帝国主義の怖さを実感できずに平和ボケに陥っていたというのです。 これは決して他人事ではありません。チベットやウイグルなど、中国に侵略された国家の悲劇を対岸の火事とすることなく、万全の備えを固めなければいけません。 日本の独立を守る国防強化の一環として、このたびの集団的自衛権の行使容認は必須でしたし、今後は、憲法9条の改正によって自衛隊を防衛軍とすることが急務なのです。 69回目の終戦記念日を迎えるにあたり、今一度、先の大東亜戦争で亡くなられた英霊たちに感謝を手向けるとともに、日本の国防にも思いを馳せるきっかけとしたいと思います。 ウイグルで死者2000人以上――真実を明らかにし、国際社会に正義を問える日本に 2014.08.08 文/HS政経塾1期卒塾生 伊藤のぞみ ◆「2000人以上のウイグル人が中国の治安部隊に殺害された」 ラマダン(断食)明けの7月28日、ウイグル自治区のカシュガルにおいて暴動が発生しました。 事件直後、中国の政府系メディア「天山網」は漢族35人、ウイグル族2人、犯行グループ59人が死亡したと報じました。 しかし、8月5日、世界ウイグル会議のラビア・カーディル議長は、「少なくとも2000人以上のウイグル人が中国の治安部隊に殺害された証拠を得ている」と米政府系メディア「ラジオ自由アジア(RFA)」の放送で発言しています。 ※参考;8月6日産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/world/news/140806/chn14080620590011-n1.htm ラビア・カーディル議長は、3日間程度かけて中国当局は遺体を片付けた、とも述べています。 国際ウイグル人権民主財団日本全権代表のトゥール・ムハメット氏は現地からの情報として女性や子供を含めて3000人が亡くなったと訴え、8月8日東京都港区で抗議活動を行いました。 事件が発生したカシュガルのヤルカンド県には、外国メディアの立ち入りが禁止され、中国政府に不都合な情報は完全に隠されている状況です。さらに、中国政府はこの件に関して中国版ツイッター「微博」に投稿された情報を削除しています。 政府によって情報統制がされているなか、中国系メディアの発表を信じることはできません。 ◆カシュガル暴動の背景 ウイグル自治区では5年前のウルムチ暴動以降、厳戒態勢がとられています。街の至るところに監視カメラが設置され、公安と武装警察が200メートルごとに立っていたそうです。 ※The Liberty web「中国・新疆ウイグル自治区の実態に迫る – 態勢のカシュガル潜入レポート」 http://the-liberty.com/article.php?item_id=7262 多くの人がイスラム教徒ですが、女性のスカーフの着用や、ひげを伸ばすことを禁止したり、モスクでの礼拝が制限されるなど、締め付けが強まっていました。 7月8日には、スカーフを着用している女性の取り締まりをしていた警察官が、7歳の少年を含む家族5人を射殺する事件も起きています。 2013年度の米国務省の信教の自由報告書には、中国治安部隊はテロリストと特定したウイグル族を自宅で銃撃しているという人権団体の話があります。また亡命を図ろうとしたウイグル族は投獄され、拷問が加えられているそうです。 こうした中国政府の弾圧とウイグルの文化・宗教に対する無理解が、今回の暴動につながったと考えられます。 ◆日本政府は中国政府に厳重に抗議すべき 思想、信教の自由は人間にとって最も基本的な人権です。信教の自由、価値観の多様性が認められなければ、人間に許されるのは無目的に生きるだけの「家畜の自由」でしかありません。 思想、信教の自由は、人間がいかに生きるか、理想とする人生とは何か、という人間を人間たらしめるために必要な条件です。 内心の自由、信教の自由を捨て、ただ生きるために与えられた環境のなかで生きていくというのは、あまりにも人間として悲しいあり方ではないでしょうか。 現在、ヤルカンド県は中国政府の完全な統制下におかれています。もし、ラビア・カーディル議長が主張するように、わずか2日間で女性も子供も含めて2000人以上のウイグル人が犠牲になったとすれば、中東のガザ地区より遥かに問題は深刻です。 日本政府はこの問題を重要視し、ウイグル自治区で何が起こっているのか真相を究明すべきです。真実を白日のもとにさらし、正義とは何かを国際社会に問う覚悟が必要です。 日本は今こそ国連常任理事国入りを目指せ! 2014.08.06 文/HS政経塾2期卒塾生 服部まさみ ◆問題だらけの国連常任理事国 8月6日、人類史上初めて原爆が投下された広島は、69回目の「原爆の日」を迎えました。 はじめに原爆により尊い命を奪われた数多くの方々の御霊に対し、謹んで哀悼の意を捧げると共に、被爆後遺症に苦しんでおられる皆様に心よりお見舞い申し上げます。 もう一つ私たちが思いを致すべきは、「この国のために命をかけて戦った英霊は今の日本を見て、何を思うのでしょうか。戦後の未来を生きてきた私たちは『立派な国になりました』と胸をはって言えるのでしょうか。」――ということです。 国際平和の維持と国際協力を目的とした組織である国連は、公平中立なものではなく、第二次世界大戦の戦勝国による「戦勝チーム」を永遠に維持する仕組みになっています。 今の常任理事国は、すべて、連合国、勝った側の国々です。戦勝国側の利害があるため、戦後69年目を迎え今も敗戦国である日本とドイツは常任理事国になれないでいます。 日本とドイツはGDP世界第3位と4位の経済大国です。又、日本はアメリカに次いで2番目に多い国連分担金を負担しています。 [分担金(米ドル)](外務省HP参照) 1.米国 6億2120万 2.日本 2億7650万 3.ドイツ 1億8220万 4.フランス 1億4270万 5.イギリス 1億3220万 6.中国 1億3140万 7.イタリア 8.カナダ 9.スペイン 10.ブラジル 日本は中国の約2倍の分担金を払っています。しかし、お金だけ負担して敗戦国扱いするのであれば、戦後69年経っても、賠償金を払い続けているのと同じことではないでしょうか。 世界で起こっている紛争の解決に常任理事国のどこかの国が反対し国連は全く機能していません。 現在もウイグル、チベットで人権弾圧を行なっている中国、世界の警察官を辞めると宣言したアメリカ、日本やドイツより経済規模が小さいイギリス、フランスの5カ国、こうした国々だけが果たして、国際平和の維持を目的とする国連の常任理事国としてふさわしいのでしょうか。 ◆国連の常任理事国入りを目指す安倍外交 現在、積極的な外交を続ける安倍首相は、各国首脳に国連の非常任理事国選挙での支援や安保理改革などの協力を要請しています。(7/29 産経) しかも、安倍首相は来年10月にある非常任理事国入りの選挙当選の先に常任理事国入りも見据えているようです。安倍首相は、カリブ共同体加盟国(14か国)との首脳会合で常任理事国拡大を含めた安保理改革への意欲を表明しています。 同じく、常任理事国を目指すドイツのメルケル首相とは今年4月の会談で安保理改革を推進する考えで一致しました。 又、今月、ブラジルのルセフ大統領とも連携して常任理事国入りを目指すことで一致しました。さらに、9月上旬のインドのモディ首相との会談でも常任理事国拡大に向けた協力を確認する予定です。 日本は4か国と連携を強化し、国際世論を味方につけていくことが今後の鍵を握ります。 ◆日本の常任理事国入りを阻む壁 安倍首相の積極的な外交が功を奏していますが、日本の常任理事国入りには、これまで以上に中国が反対運動を展開する可能性が高いと考えられています。2005年にも日本の常任理事国入りに反対して中国で大規模な反日デモが起きました。 当時のマスコミは、小泉元首相の靖国参拝が反日デモの原因だと報じましたが、その本質は、日本の常任理事国入りを辞めさせるために、南京大虐殺や従軍慰安婦などの歴史問題を持ち出して「日本人がいかに非人道的な人種であるか」を宣伝し、国際社会からの信用を失くすように工作したことにあります。 その手法は今も同じです。中国は、2020年までには、アジアの覇権を握るという国家戦略の下に動いているため、日本がアジアのリーダーとして、国際社会で発言力を得ることは何としても阻止したいのです。 また、国際平和の維持と国際協力を目的とした国連の常任理事国の条件として、基本的に、(1)防衛力、(2)核保有、(3)経済力が必要だと考えられています。 日本が世界の経済大国でありながら、常任理事国に入れない最大の理由は、軍事力の行使ができないことにあります。軍事力は、外交を行う担保であり、自分の国を自分で守ることは大国として当たり前のことです。 これができない日本は、他国からみて、「大国としての条件を満たしていない」ことになります。 安倍首相が安保理改革と常任理事国入りを本気で目指すのであれば、集団的自衛権の行使容認だけではなく、「憲法9条の改正」、そしてもう一段踏み込んだ「核保有」の検討までしっかりと視野に入れる必要があります。 ◆戦後体制を脱却し世界のリーダー国家へ 日本国内だけでなく、戦勝国中心の国連にも戦後体制が残ったままです。 国連という国際組織そのものが機能するかどうかという課題はまた別にありますが、戦後体制を脱却するためにも、ドイツ、インド、ブラジルと連携して国連改革を進めていく必要があります。 常任理事国入りは日本が大国に相応しい外交力と防衛力を持つための環境整備でもあります。 これからも幸福実現党は、この国が世界に責任をもつリーダー国家になるために自虐史観を払拭し、日本の誇りと自信を取り戻す活動を行って参ります。 日本の安全保障と集団的自衛権【後篇】 2014.08.02 文/幸福実現党 総務会長兼出版局長 矢内筆勝 ◆「双務性」による日米同盟の強化 日米同盟は日本の安全保障の要です。自衛隊は未だ国内法上は軍隊ではなく、核も敵地への攻撃力も持っていません。 また情報分野もほとんど米国頼りであり、海洋貿易立国でありながら生命線であるシーレーンも、実質上、その安全をアメリカ軍の第7艦隊に委ねるなど、残念ながら、日米同盟抜きに、独自の安全保障を維持することは困難な状態にあります。 その意味で、今回の集団的自衛権の行使容認は、その日米同盟をより強固にし、さらにアメリカをアジアにつなぎとめるという意味で、日本の安全保障上、極めて重要な意味を持っています。 その最大の理由が、今回の集団的自衛権の行使容認によって、日米同盟の脆弱性の1つであった「片務性」が解消され、「双務性」に向かうことです。 国家間の軍事同盟は一般的に、NATOがそうであるように同盟国同士の集団的自衛権によって成り立っています。しかし、現在の日米同盟は、日本に米軍を駐留させる代わりに、アメリカに日本の防衛する義務を付加するという「片務性」に基づいているのです。 それは、東西冷戦という“特殊な環境”下においては機能したものの、冷戦体制が終結するに至って、その「片務性」に対して、アメリカ国内からも、「日本に米軍基地を置けるというメリットだけで日本と同盟を結んでいることに、どれだけの利益があるのか」という「日本の安保ただ乗り」論が、萌出するに至っていました。 例えば、アメリカでも最大手の外交研究機関「外交問題評議会」が1997年にまとめた報告書は、日本の集団的自衛権禁止を「日米同盟全体に潜む危険な崩壊要因」と定義づけ、「有事の際にそうした回避が露わになれば、アメリカ国民は衝撃的に失望し、日米同盟自体が危機に瀕する」と警告し、日本に政策修正を求めました。 さらに2001年にも、ヘリテージ財団が、「日米同盟の重要性が高まったからこそ、日本と米国の有事の効率的な協力や、国連平和維持活動への参加を拒む、集団的自衛権行使の解除」を求める政策提言報告書を出しました。 同財団は、2005年にも、日米同盟強化を提言。その最大の障害が、集団的自衛権の行使禁止だと強調しています。(『日本を悪魔化する朝日新聞』古森義久WILL 2014年7月号より) 現在、日本が直面する中国との尖閣問題に関して、アメリカはオバマ大統領を始め、「日本の施政下にある領土は、尖閣諸島も含めて日米安全保障条約の第5条の適用対象となる」と、明言しています。 これは、アメリカが日米同盟に基づいて、「集団的自衛権を行使する」と言っていることに他なりません。もし、日本が従来のように集団的自衛権を行使できないまま、尖閣有事や朝鮮半島有事が勃発した場合、その「片務性」に対してアメリカ世論が沸騰し、日米同盟が崩壊する危険性すら存在していたのです。 その意味で、集団的自衛権の行使容認は、日米同盟を強化し、日米を真の同盟関係にするために、どうしても必要な国家の選択であったと言えます。 ◆憲法改正への嚆矢として さらにこの日米同盟が今、アメリカの国内問題によって大きく変化しつつあります。 2013年3月から始まった政府の歳出強制削減によって、アメリカは向こう10年間で3兆9000億ドル、日本円にして390兆円の歳出削減を迫られ、それに伴って国防予算は大きく削減されることになります。 その額は実に10年間で約5000億ドル(約50兆円)、一年間で日本の防衛予算(平成25年度4・68兆円)に匹敵する規模です。これによって、アメリカは「世界の警察」であることを放棄し、アジア太平洋地域における戦力や運用も、縮小せざるを得ない事態に追い込まれているのです。 ゆえに日本は、日米同盟のさらなる深化に向けて不断の努力を払う一方で、いつ何時、日米同盟が機能しなくなるような事態も想定し、今後、自らの力で中国や北朝鮮の軍事的脅威と対峙できる安全保障政策を構築しなければなりません。 すなわち「自分の国は自分で守る」――「自主防衛体制」の確立です。それは明治維新以降、日本が一貫して歩んできた道でもあり、独立国家としては当然の姿勢です。 そのためにどうしても避けて通れないのが憲法9条の改正です。今回の集団的自衛権の行使容認をめぐる国会での議論やマスコミ報道に見られるように、国際法で認められている自衛権の行使であっても、憲法解釈の変更の是非を巡って、日本の国論は分裂しました。 国家の根幹でもある安全保障政策をめぐる、こうした混乱と不毛な論議を避け、暴走する中国や北朝鮮の軍事的脅威から国民の生命、安全、財産を守るために、わが国は遠からず憲法9条の改正を実現する必要に迫られています。 なぜなら、現在の自衛隊は憲法上軍隊とは認められず、おのずと防衛行動に大きな制約が課せられているからです。 憲法改正に当たっては、自衛隊を国家防衛の軍事組織と位置づけ、従来のポジィティブ方式による法規定ではなく、諸外国の軍隊が採用しているネガティブ方式による規定化が望まれます。 当然のことながら、軍刑法の制定と特別裁判所設置も視野に入れるべきです。そのためには、憲法の解釈変更ではなく、憲法改正に踏み込まざるを得ません。 その意味で今回、集団的自衛権行使容認の是非をめぐって、国民的議論が喚起され、憲法改正への道筋を拓いたことは、実質的な抑止力向上と加えて、わが国の安全保障政策上、画期的な出来事であったと言えるのです。 日本の安全保障と集団的自衛権【前篇】 2014.08.01 文/幸福実現党 総務会長兼出版局長 矢内筆勝 ◆総論 本年7月、政府は臨時閣議で、憲法解釈を変更して集団的自衛権行使を限定容認することを決定しました。 集団的自衛権は、国際連盟憲章51条に基づいて、国連に加盟する全ての主権国家が保有を認められている自衛のための自然権です。 にもかかわらず、戦後、わが国は70年近くにわたって、憲法9条と日米安保条約をワンセットにして維持されてきた枠組み(いわゆる『戦後レジューム』)に基づいて、内閣法制局の「集団的自衛権の行使は認められない」との解釈を踏襲してきました。 その意味で、今回の憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認は、“平和憲法”によって自らの手足を縛ってきたわが国の安全保障政策上、極めて画期的な「パラダイムシフト」(思考の変更)であると言えます。 また、北朝鮮の核ミサイル開発や軍事大国化した中国の海洋進出など、わが国の安全保障環境は激変し、日々厳しさを増しています。 そうした中での今回の決定は、日本の安全保障の要である日米同盟を強化すると共に、財政問題を抱えて内向きになりがちなアメリカをアジアにつなぎ止め、アジア・オセアニア諸国とも連携して幅広い外交・安全保障政策が可能となるという意味で、わが国の抑止力強化に大きく資すると言えるでしょう。 ◆普通の主権国家への第一歩 集団的自衛権とは、密接な関係にある国が武力攻撃を受けた時、自国に対する攻撃とみなして、その攻撃を阻止する権利のことを言う。そしてこの集団的自衛権は、「国際連合憲章」(第51条)で、個別的自衛権とともに、加盟各国が持つ「固有の権利」であると明記されています。(※1) (※1)国連憲章第51条 「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国債の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使にあたって加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。」 しかも、この自衛権は「正当防衛権」であり自己及び他に及び、また仏語の語原では「自然権」(au droit naturel de legitime defense)で、成文の憲法を越える存在であるとされています。 日本は、戦後主権を回復し、サンフランシスコ平和条約と日米安全保障条約を締結、さらに国連憲章を批准して晴れて独立国家として国連に加盟しています。 それゆえ、本来なら、政府による従来の「国際法上は保有しているけれども、憲法上、行使することができない」との解釈や、集団的自衛権が憲法上許されるか否か等の、今回の集団的自衛権の行使容認に反対する議論の多くが、国際法に基づく「国際社会の常識」からすれば、日本の国内にしか通用しない「非常識」な議論といえます。 現在の国際世界の秩序は、国際連合憲章に基づく、国連加盟国による「集団安全保障システム」によって維持されています。 それは、多国間条約において全加盟国がほかの加盟国に対する武力の不行使を約束し、違反した場合には、違反国を除くすべての加盟国が違反国に対して共同して鎮圧、被害国の主権を回復させるというものであり、国連安保理がその主要な責任を負っています。 個別的自衛権と集団的自衛権は、その安保理が「国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間」認められているものです。 このように世界は、(安保理の拒否権行使による機能不全など、さまざまな問題を抱えているとしても、)国連憲章という国際法に依拠した集団安全保障で成り立っており、日本も国連加盟国の一員である以上、当然それに依拠した行動を求められているのです。 しかしながら、日本はこれまで、憲法9条と日米同盟という枠組みに拘泥するあまり、世界基準である国際法ではなく、国内法の枠組みの中での安全保障政策を踏襲し、大きな失敗を重ね、国家の威信を損なってきました。 その一例が、1992年の湾岸戦争での国際協力をめぐる日本の対応です。当時クウェートに侵攻したイラクのフセインに対して、国連の承認のもとアメリカ主導の多国籍軍が結成され、世界30カ国が参加しました。 日本は自衛隊による人的貢献 を「海外派兵となる」と見送り、代わりに約130億ドル(約1兆7000億円)もの巨額の資金を拠出しました。 しかし、国際社会からは”too little, too late(少なすぎ、遅すぎ)”と非難され、クウェート政府が米国の主要英字紙に掲載した感謝国30カ国の中から、日本の国名が除外されるなど、わが国は屈辱的な扱いを受けました。 その意味で、今回の集団的自衛権の行使容認によって、わが国はようやく、憲法9条という国内法に縛られた枠組みから、国際法に依拠する枠組へと踏み出すことになり、安全保障政策上ようやく、「普通の主権国家」に近づいたと言えます。 すべてを表示する « Previous 1 … 60 61 62 63 64 … 98 Next »