Home/ 外交・国際政治 外交・国際政治 外務省広報外交予算の増加――真の広報外交強化とは 2015.01.21 文/HS政経塾2期卒塾生 服部まさみ ◆広報外交強化に力を入れる安倍政権 外務省は15年度予算案で歴史認識などの問題に対して、戦略的に海外へ発信するための予算を約500億円増やしました。 その中には、広報活動の拠点になる「ジャパン・ハウス」(仮称)を英ロンドン、米ロサンゼルス、ブラジル・サンパウロの3か所に作ることが計画されています。 ジャパン・ハウスは和食やアニメなどを体験するスペースを設け、「親日派」の育成につなげたり、歴史問題などで、日本の正確な主張を伝える場にすることを目的としています。 また、安倍政権が掲げる「地球儀外交」を積極的に進めていくために、モルディブ、ソロモン諸島、バルバドス、タジキスタン、トルクメニスタン、モルドバの6か所に大使館、メキシコのレオン、ドイツのハンブルグの2か所に総領事館を新設し、在外公館の強化や、外交活動経費に約794億円が計上されました。 他国に比べ対外発信の予算が少なかった日本としては、広報外交に力を入れる安倍政権の下で大きく前進したと言えるのかもしれません。しかし、外務省や安倍政権が本当にこの国に必要な広報外交の強化を行っているとは言えません。 ◆疑問が残る在外公館の新設と中国のワシントン攻略 果たして、新設された在外公館やジャパン・ハウスは歴史問題で日本の主張を伝える場として効果的な場所なのでしょうか。 アジアの覇権を握る国家戦略を着々と進めている中国は、目標達成のためにワシントンを攻略しています。 ワシントンは、世界最強国である米国の政策決定の場であり、世界銀行やIMFなど強力な国際機関や世界的に影響力のあるマスメディア、大学、シンクタンク、NGOがひしめきあっています。「世界の権力の要」であるワシントンを攻略することは、同時に世界に強い影響力を与えることになるのです。 そのため、中国は早くからワシントンが外交政策の要であることを認識し、莫大な予算と人材を投入し、活動拠点を増やしてきました。 例えば、駐米大使には特殊な訓練を受けたエリート中のエリートで米国専門の優秀な人物を選び、長期に渡って送りこみます。そして、米国で任務を終えた優秀な人材は、中国の要職に就き、その経験や人脈などの外交のノウハウを次の世代に引き継いでいくのです。 それに比べて日本は、伝統的にニューヨークでの活動に重点を置き、特に90年代以降は、ワシントンの予算を減らし、活動の拠点を閉鎖してきました。 また、日本の駐米大使は、就任期間も短く、米国での任務の後はそのまま引退してしまいます。仕事の内容も、日本国内からの要人を迎えることに重点が置かれ、現地の情報収集や情報発信、ロビー活動が弱いことが問題になっています。 その結果、在外公館への予算と人材の重要な資源配分が効果的に行われておらず、アジアのリーダーとしての日本の立場が揺らいでいると言っても過言ではありません。 ◆謝罪外交を繰り返してきた外務省 さらに、外務省のホームページには、日本政府の立場として、河野・村山談話以降、日本がこれまで何度も謝罪してきたという主張が繰り返されるだけで、事実関係の誤りや、誤解に対する反論は一切書かれていません。 これは、日本の駐米大使や総領事などが米国マスコミに対する「反論」として出す内容とほとんど同じです。 朝日新聞が慰安婦問題について事実とは異なる報道をしていたことを認めても、外務省は国際社会に事実に反する日本非難が広がることに対して、国家として当然行うべき反論や説明をしていません。 ◆真の広報外交の強化とは 広報外交においては予算を増やしたり、施設をつくることだけが重要なのではなく、何を発信していくのかが最も重要なのです。 日本の広報外交が強くならない原因は、予算や施設がなかったからではなく、日本政府が謝罪するのみで事実に基づく反論や説明をしてこなかったことにあります。予算を増やし、国益を損なう自虐史観を世界に発信しては全く意味がありません。 外務省が自虐史観に溢れた外交を行うしかない、その根本原因は河野・村山談話の踏襲にあります。 安倍政権が力を入れてなすべき広報外交の強化とは、河野・村山談話を白紙撤回し、新たな談話を発表することです。この問題に真正面から取り組まなければ決して日本の誇りを取り戻すことはできません。 米国大統領の中で最も広報外交に力を入れたジョン・F・ケネディ。その側近だったエドワード・R・マローは次のように述べています。「説得力をもつためには、信憑性がなければならない。信憑性をもつためには、信頼がなければならない。信頼性をもつためには真実を語らなければならない」 戦後70周年を迎えた今、日本はリーダー国家としての信頼を勝ち取るべく、世界に向けて真実を語るべき時がきたのではないでしょうか。 幸福実現党は広報外交に必要な真実の発信と効果的な資源配分、法体制を提言して参ります。 テロに屈する歴史を繰り返してはならない 2015.01.20 文/幸福実現党山形県本部副代表 城取良太 ◆イスラム国による日本人殺害予告 20日、民間軍事会社の経営者、湯川遥菜氏、フリージャーナリストの後藤健二氏と見られる日本人二人に対して、イスラム国による殺害予告とみられる映像がyoutubeに投稿されました。 イスラム国は、エジプト・カイロで行われた安倍首相の演説の「イスラム国と闘う周辺国に2億ドルの支援を行う」という内容に反発し、「72時間以内に、支援額と同規模の身代金2億ドル(240億円)を払わなければ人質を殺害する」と日本政府に要求しています。 それに対し、安倍首相は外遊先のイスラエルにおいて記者会見を行い、「人命を盾に取って脅迫することは許し難いテロ行為だ。二人の日本人に危害を加えないよう、そして直ちに解放するよう、強く要求する。」と述べました。 そして、エジプト・カイロでの演説でも繰り返し述べていた「中庸こそ最善である」という中東地域に広がる格言をもとに「寛容」の大切さを改めて訴えました。 しかし、「身代金を払う考えがあるのか」という外国人記者たちの質問に対しては、「人命第一に全力を尽くす」「断固としてテロに屈しない」と繰り返し、明言は避け、グレーゾーンの回答に留まっています。 ◆今回の事態は事前に想定できなかったのか? まず、今回の発端となったエジプト・カイロでの安倍首相による演説内容を踏まえ、もし今回のような事態が起こることを全く想定出来ていなかったのであれば、日本政府側の見積もりの甘さを指摘せざるを得ません。 なぜなら、今回人質となった二人は長らく安否不明でしたが、イスラム国に拘束され、生存している可能性はあったことがまず挙げられます。 もう一つの理由としては、イスラム国をはじめとする武装勢力にとって、人質の転売や、人質交渉を隠れ蓑に周辺国のスポンサーからの資金援助を受けるなど、彼らにとっては人質が極めて貴重な商品であるという事実です。 と同時に、断固として交渉に応じない英米に対しては、公開処刑することで国際世論の非難を向けさせるなど、人質を最大限に活用する傾向があるといえます。 少し厳しい見方をするならば、安倍首相の演説内容は、付け込む機会を待っていた「イスラム国」にとっては格好の材料になってしまったのかもしれません。 ◆テロに屈する歴史を二度と繰り返してはならない では、日本政府はどのような対応を取るべきなのでしょうか。 1977年9月、ダッカで起こった日本赤軍によるハイジャック事件による弱腰の対応が、その後どのような事態を引き起こしたかを、今一度振り返る必要があります。 当時の福田赳夫首相は「人命は地球よりも重い」という言葉と共に、テロリストに屈し、日本赤軍の活動家6人を「超法規的措置」により解放し、600万ドル(当時で16億円)を支払いました。 テロリストの要求に応じてしまった日本で、その後何が起こったでしょうか。 ダッカ事件の1カ月半後には、横田めぐみさんが北朝鮮に拉致され、その後は大勢の日本人が北朝鮮に連れていかれて、40年近く経つ今でも、多くの拉致被害者は戻らず、解決の糸口はつかめていない状況にあるのです。 もちろん、今回人質となり、拘束されているお二人が感じている苦痛、そしてご家族・知人の皆様の大きな苦しみと悲しみは筆舌に尽くし難いはずでしょう。 しかし、北朝鮮と同様、テロリスト(疑似)国家であるイスラム国に対しては、「テロには絶対に屈しない」という姿勢で望まない限り、結局、更に多くの人々を苦しめる結果となってしまうのです。 ◆今回の人質事件から「中庸」とは何かを考えるべき 冒頭でも述べた通り、中東と日本が共有する「中庸が最善である」という伝統的な智慧を、今回の中東歴訪で安倍首相は強調しておりますが、まさに今、この智慧の発揮を日本政府は突き付けられていると言えましょう。 「正義を貫くこと」と「人命を救うこと」。 この二つを両立させる解があるとしたら、「防衛法制の抜本的改正」によって、自衛隊の特殊部隊による邦人救出が実行できる体制、法整備を速やかに行うことでありましょう。 是非とも安倍首相におかれましては、今回の人質交渉への対応ではもちろん、今月末に開会する通常国会においても、あるべき安全保障法制について、批判を恐れずに正しさを追求して頂きたいと切に願います。 【参考文献】 「イスラム国 テロリストが国家をつくる時」 ロレッタ・ナポリオーニ著 戦後70年――天皇陛下「異例のお言葉」の意味 2015.01.18 文/幸福実現党外務局長 及川幸久 ◆中国は怒涛のごとく歴史問題を仕掛けてくる 今年は中国政府が「戦後70年の節目の年」を利用して、日本に対して怒涛のごとく歴史問題を仕掛けてきます。 すでに昨年6月、中国政府はユネスコ記憶遺産に南京大虐殺、従軍慰安婦の資料を登録申請しました。今年9月には、アメリカ・サンフランシスコに南京事件の資料等を展示する記念館がオープンします。 さらには、南京事件の生き残りで被害者を自称する中国人たちが日本に対して賠償金を求める訴訟が次々と日本で行われる可能性があります。この件は、今後このニュースファイルで詳しくお伝えする予定です。 ◆元日の天皇陛下のお言葉 そんな本年の元日、天皇陛下が新年恒例の「ご感想」の中で、「異例のお言葉」を述べられました。 まず、昨年の大雪、大雨、御嶽山の噴火でご家族をなくされた方々へのお見舞い、東日本大震災で今も仮設住宅で冬を過ごされている方々へのお言葉があり、ここまでは例年と同様の内容でした。 ところが、このあとに「本年は終戦から70年という節目の年」として、先の戦争について具体的に触れられ、次のお言葉がありました。 「この機会に,満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり方を考えていくことが,今,極めて大切なことだと思っています。」 「満州事変」以来、という具体的な表現で、先の戦争に踏み込んだ内容は、おそらく初めてではないかと思われます。 朝日新聞は、早速、天皇は「戦争を肯定する動き」を心配している、歴史認識を見直す動きを警戒していると論じました。はたしてそうでしょうか。 私は逆だと思います。陛下のお言葉を素直に読めば、戦争の歴史を学び直して、歴史認識を見直すべきという姿勢を示唆されていると考えます。 その理由は、今上天皇の「守護霊の霊言」にあります。 ◆「今上天皇守護霊霊言」の歴史的意義 幸福実現党・大川隆法総裁が行っている霊言による歴史の探究の中に、『今上天皇・元首の本心』という「守護霊の霊言」があります。2012年8月に行われたものです。 『今上天皇・元首の本心 守護霊メッセージ』幸福の科学出版/大川隆法著 http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=810 この中で、陛下の守護霊は、「竹島、尖閣諸島は日本領である」と明言され、「中国に台湾との国交断絶をさせられた屈辱」を語られ、当時の「民主党政権の危うさ」を憂いていらっしゃいました。 この霊言の歴史的意義は、「日本国民の歴史認識の見直しを願われている」元首としての本音が明らかになったことです。 この霊言の収録後に大川総裁はご自身の感想として、「(陛下は)何とか国家の権威を取り戻してもらいたいものだ、と感じておられるのではないでしょうか」と述べられています。 このように、この霊言と今年の陛下のお言葉は一致しているのです。 ◆南京大虐殺の真相 中国がユネスコ記憶遺産で人類史に永遠に残そうとしているのが、南京大虐殺です。 大川総裁の歴史霊言の中で、「東條英機の霊言」(『東條英機、「大東亜戦争の真実」を語る』)では、東條英機首相が、中国の歴史の手口を次のように断じています。 『東條英機、「大東亜戦争の真実」を語る』幸福の科学出版/大川隆法著 http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=955 「中国は口先一つで真実をねじ曲げてくる国。自分たちがやったことを日本軍がやったと仕掛けてくる。」 確かに、日本軍による南京戦の時に、南京の民間人が残虐なやり方で殺害され、婦女が強姦された事件の証言、証拠写真、フィルムは存在ます。しかし、その真犯人は日本軍ではありません。 中国国民党軍が自国民に対して行ったのです。これが南京大虐殺といわれるものの正体です。 ◆ユネスコ記憶遺産反対署名運動で中国の嘘を訴えよう 昨年から幸福の科学グループ、幸福実現党は、ユネスコ記憶遺産への南京大虐殺登録反対の署名運動を行っています。そして、この署名運動は、中国の嘘を日本国民の皆さんに訴える絶好の機会でもあります。 今年3月末までに、30万筆の署名を集めることが目標です。 天皇陛下の今年のお言葉を受けて、多くの皆様にこの運動にご参加いただけますよう、お願いいたします。 ■中国による「南京大虐殺」「従軍慰安婦」のユネスコ記憶遺産への申請に抗議し 日本政府に万全の措置を求める署名 http://info.hr-party.jp/2014/3159/ 【署名活動期間】 ※最終締切が年3月24日(党本部必着)に変更になりました。 【署名送付先】〒107-0052 東京都港区赤坂2-10-8-6F 幸福実現党本部 TEL:03-6441-0754 【署名用紙】http://info.hr-party.jp/files/2014/06/MpiuQvKg.pdf 世界に広がる「中国離れ」――平和国家・日本は誇りある外交を! 2015.01.15 文/HS政経塾スタッフ:遠藤明成 ◆アジアと中米で起きた象徴的な出来事 昨年の終わり頃から本年初めに世界で中国離れの進展を予感させる出来事が起きています。 中国は、スリランカ前大統領の地元であるハンバントタの港湾開発を支援し、インド包囲網を進めてきましたが、1月9日の同国大統領選では親中外交の見直しを訴えたシリセナ氏が当選しました。(スリランカはインド、日本との関係強化を進めるとの憶測が各紙で報道されている) また、メキシコでは昨年11月に中国から受注した首都と工業都市を結ぶ210キロの高速鉄道プロジェクトを白紙撤回しています。 昨年12月に着工した約5000億円の大きな契約が受注3日後に撤回され、その代替案が日本の新幹線をも含めて再検討されているのです。 ◆外務省の調査で判明した、米国世論の「日中逆転」 また、昨年11月、中国でのAPEC開催前に外務省はアメリカで行なった世論調査の結果を発表しました。 この調査は昨年夏に行なわれましたが、アメリカの有識者と国民に「アジアで最も重要なパートナーはどこか」と問いかけたところ、有識者と国民の双方で、中国よりも日本を挙げる人が上回ったのです。(外務省HP「米国における対日世論調査」2014/11/7) ≪一般国民の部≫(約1000人) 「日本」と答えた割合は46% (前年35%)。 「中国」と答えた割合は26% (前年39%)。 ≪有識者の部≫(約200人) 「日本」と答えた割合は58% (前年39%)。 「中国」と答えた割合は24% (前年43%)。 昨年と比べると「日中逆転」し、09年以来、はじめて「日本」が一般と有識者の双方で1位となりました。4年連続で米国の「有識者」が日本よりも中国を「重要なパートナー」と見なしてきた趨勢が変わったのです。 そして、日米安全保障条約は「維持すべき」との回答が、一般の部で81%(前年67%)、有識者の部で85%(前年77%)へと増えています。 結局、中国の反日外交は、米国世論の「親日度向上」という予期せぬ”成果”を生みました。 ◆歴史観においても日本は正論を貫くべき 良識あるアメリカ人は過去だけを見ているわけではありません。中国が東シナ海や南シナ海で繰り返した「現在の蛮行」に厳しい判定を下しています。 また、歴史観についても米記者のマイケル・ヨン氏と産経記者らが「ナチス戦争犯罪と日本帝国政府の記録の各省庁作業班(IWG)米国議会あて最終報告」を調査し、日本関連の約14万2千ページの文献の中に軍が慰安婦を強制連行した証拠がないことを明らかにしました。 ようやくこの分野でも米国世論が変わる兆候が出てきたのです。 しかし、安倍政権は年頭記者会見で「村山談話を含めた、歴史認識に関しての歴代内閣の立場を継承する」と明言しています。これでは日本は自虐史観の見直しを海外に発信できません。 産経新聞のインタビュー記事(12/31)では、米グレンデール市の慰安婦像撤去訴訟の原告となった目良浩一氏が「朝日新聞が誤報を認めたと記事にしても米国人で朝日を読んでいる人が果たして何人いるか。いないに等しい」と述べていました。 やはり、こうした海外の日本人の努力と期待に応えるためにも、安倍政権は河野談話、村山談話を破棄すべきです。 ◆平和国家として正論を貫き、仲間となる国を増やすべき 日本は、平和国家としての「現在の行動」に誇りを持ち、「敵を減らし、味方を増やす外交」を進めなければなりません。 朝日新聞や毎日新聞、東京新聞などの報道を見ると、まるで中国と韓国だけが世界の世論であるかのような書きぶりですが、台湾やインド、バングラデシュ、トルコ、ブラジルなど、世界各地に多くの親日国があります。 日本は昨年にフィリピンへ巡視艇を10隻(ODAの円借款を活用)、ベトナムへ巡視船に転用可能な中古船6隻(ODAとして無償供与)の供与を決めました。 現在、ODAの範囲拡大に向けて議論が進められていますが、日本は、欧米諸国が行っている「対外援助協力」(Foreign Aid)を参考とし、人道支援、経済援助、軍事援助などを多角的に構成し、親日国を支援すべきです。 (※「対外援助協力」は民生分野が中心のODAとは異なり、安全保障分野にまで踏み込んだ援助を行なうことに適している) 世界の警察の衰退とイスラム国の台頭 2015.01.11 文/幸福実現党・岐阜県本部政調会長 加納有輝彦 ◆イスラム過激派のテロ 今月7日、ムハンマドの名誉が汚された事への報復として、フランスの風刺週刊誌の本社が襲撃され、編集者等12名が殺害された事件は、イラクやシリアでイスラム過激派の掃討を進める欧米社会を震撼させ、さらなるテロへの警戒が強化されることは必至の状況となりました。 現在、イスラム過激派の中で、世界の耳目を最も集めているのがイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」です。 現在イスラム国掃討のため、アメリカを中心とする有志連合によりイラク北部への空爆が行われていますが、フランスは空爆参加国の一つであります。 ◆イスラム国台頭の端緒 さて、イスラム国はいかなる経緯で出現したのでしょうか。 オバマ大統領は2011年12月14日にイラク戦争の終結を宣言し、その4日後、イラクから全ての米軍部隊が撤退しました。 同月ワシントンを訪問したイラクのマリキ首相(当時)は、オバマ大統領と共に、米軍の撤退をイラクの自立とアメリカの勝利と呼びました。 しかし、マリキ首相の訪米を機に、イラクの混迷はさらに深まりました。オバマ大統領と会談中に、バグダッドからある情報がマリキ首相に寄せられました。 当時マリキ政権は、イスラム教シーア派が主導権を握っていました。その情報とは、スンニ派のハシミ副大統領(当時)が政権幹部に対するテロ計画に関与しているという内容でした。 マリキ首相は、オバマ大統領にその内容を報告すると、オバマ大統領は国にはそれぞれの法律があり、法の支配を尊重するようにと返答したと言われています。 マリキ首相は、その返答を今後のあらゆる行動を容認すると受け止めました。スンニ派に対して何をやっても構わない、アメリカは邪魔をしないと受け取ったのです。イラクの内政問題だという言質を取ったことになります。 ◆スンニ派への大弾圧 マリキ首相は、帰国後、米軍の撤退が完了したその翌日、ハスミ副大統領の逮捕を命じ、アメリカから自立した事を内外に示しました。 これがマリキ首相のスンニ派への大弾圧の始まりとなりました。大弾圧によりシーア派とスンニ派は完全に分断され、敵対関係となり内戦状態になりました。 その間、イラク駐在のアメリカ大使は何度もマリキ首相を押さえ込む必要があるとホワイトハウスに警告しました。 しかし、オバマ大統領は、イラク戦争は間違っていた、だから戦争を終わらせるだけでいいという考えで いかなる制裁を科すこともありませんでした。 アメリカの不干渉とイラクの内戦による統治の空白、そして隣国シリアの内戦による統治の空白が、当時壊滅状態にあったイラクのアルカイーダの息を吹き返させることになりました。 好戦的なアルカイーダの戦闘員、痛めつけられたスンニ派の部族、権力奪還を狙うバース党員が核となって イラク、シリアの統治空白地帯に勢力を拡大していきました。 ◆イスラム国の誕生 2013年3月には、アルカイーダの黒い旗が現れました。この頃から彼らは、自らをイラクとシリアのイスラム国(ISIS アイシス)と呼ぶようになりました。 アイシスは当初はサウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦等の湾岸諸国に住むスンニ派富裕層の資金援助を頼っていましたが、次第に油田を制圧し資金的にも自立していきました。 そして2014年6月アイシスは、指導者のバグダディーをカリフ(イスラム共同体の最高権威)とし、既存の国境を認めないイスラム国家の樹立を宣言しました。 スンニ派の厳格な一派、サラフィー主義は、ムハンマドの後継者であるカリフには忠誠を誓うことになっています。 7月には、制圧したモスルのモスクの説教壇でバグダディーが説教しました。これはビンラディンも、アルカイーダの指導者ザワヒリも行ったことがない事でした。 この説教の模様はメディアを通じて世界に発信され、新たに数千人の戦闘員が集まりました。 しかし、イスラム国の戦闘員の実態は、カリフ制の維持より、殺人を主要な仕事とする「殺人鬼」の様相を呈しています。 ◆アメリカの介入 8月、イスラム国は、有望な油田地帯のクルド人自治区へ侵攻し、中心部のアルビルに迫りました。アルビルはアメリカと結び付きの強い都市です。 アルビルに脅威が及び、ついにアメリカ政府は介入を決定し空爆を実行しました。同時にマリキ首相が辞任しなければ、次の軍事支援は行わないとし、空爆開始後一週間で、マリキ首相は辞任。アメリカは空爆を強化し、20カ国以上に軍事支援を呼びかけました。 その後、有志連合による空爆が実施され、カリフ、バグダディーが重傷を負ったという情報もあります。 イスラム国の壊滅のためには、デンプシーアメリカ統合参謀本部議長は、地上部隊の派遣の可能性を否定していません。しかし、オバマ大統領は、地上部隊の派遣はしないとの立場を崩していません。 以上、イスラム国に関する経緯を簡単に振り返りましたが、歴代の駐イラク、アメリカ大使等高官は、はっきりとオバマ大統領の不介入の政策は間違いであったと述べています。 2013年9月、シリア問題に関するテレビ演説で、オバマ大統領は「アメリカは世界の警察官ではない」と述べましたが、世界の警察の撤退と、イスラム国の台頭を見るとき、「正義」を掲げ、世界の警察官たる気概を持つ大国の存在の必要性を認識します。 本年、有志連合の支援のもと、イラク政府軍の大攻勢が計画されていると言われますが、引き続きイラク情勢を注視していかなければなりません。 日本の海上防衛を考える(4)――中国の海洋戦略 2015.01.10 文/幸福実現党・政務調査会 佐々木勝浩 前回まで小笠原諸島・伊豆諸島周辺海域に現れた中国漁船が九州にも現れていること、そして日本ばかりでなく韓国やパラオにまで現れていることを紹介してきました。 今回は、中国漁船は南シナ海では1970年代から現れており、その後南シナ海はどうなったのかについて明らかにします。 南シナ海ですでに起こっていることは、今後東シナ海で起こることでもあるので、それを知っていれば、中国から日本の近海の近海をどのように守っていけばいいかがわかります。 ◆密漁天国の日本近海 日本という国は、違法操業して捕まっても簡単に釈放してくれ、万が一、海上保安庁の船に捕まっても食事つきで飛行機に乗せて中国に帰してくれる――そうした前例を民主党政権時につくってしまいました。 中国漁民からすれば日本は、密漁しても最悪であっても罰金を払えば釈放してくれる国です。 サンゴで大儲けができるとなれば、日本の領海であろうが構わずに違法操業して、まったく罪の意識さえありません。まさに中国にとって日本近海は密漁天国です。 しかし中国政府自体は、さらにその先のことを考えています。中国の最終的な目的は、東シナ海、西太平洋を中国の海にすることです。 中国は海洋戦略として南シナ海と東シナ海、西太平洋を2020年までに中国の海にする戦略を持っています。 その中国の戦略が一歩先に進んでいるのが南シナ海です。ですから南シナ海で起こったことをみれば、今後東シナ海と西太平洋で起こることが予測できます。 南シナ海で起こったことが、今後日本の近海でも起こるでしょう。 ◆南シナ海は如何に中国の海になったのか すでに南シナ海では、ベトナム近海やフィリピン近海は中国の海になっています。 中国も頭が良いですから、始めから軍艦を出してその海域を支配することはしません。 1970年代、ベトナム戦争が終わって米軍が南シナ海から引き揚げると、中国はそれまでベトナムが領有を主張してきた南シナ海の西沙諸島海域に中国漁船を出すようになりました。 中国は毛沢東時代から農民や漁民を兵隊として訓練し国防を強化してきました。ですから中国の漁民もただの漁民ではなく軍事訓練を受けた「海上民兵」が含まれています。 ベトナムやフィリピンが領有していた海域に中国漁船が現れるとベトナムは中国漁船にベトナム海域から立ち去るよう警告を出しました。 もちろん中国漁船が立ち去ることはありません。そこでベトナムの船と中国漁船とぶつかり合いが起きました。 その段階で中国は中国漁民を守るという名目で軍艦を出しました。こうしてそれまでベトナムが領有していた海域を力で支配し、さらには島や岩礁を埋め立て軍事基地化していきました。 また島でない満潮時には海面から沈んでしまう岩礁までコンクリートで固め、島だとして200海里まで主張し始めたのです。もちろんこれは国際海洋法違反です。 ◆フィリピン海域まで中国の海に 同じような方法で、1980年代に入ると、フィリピンから米軍基地が撤退すると、それまで南シナ海の中沙諸島、南沙諸島に中国漁船が現れ、岩礁を占拠し、その後軍事基地化していきます。 小島や岩礁に砂を運んで島にしてコンクリートで固め軍事滑走路までつくる中国の暴挙は、昨年の2014年でも続いています。 もちろんフィリピンも海軍を派遣して抵抗していますが、力に任せて中国はまったくテーブルの交渉でも聞く耳も持ちません。 ちなみにフィリピンの米軍基地撤退運動で一定の活動を展開したのはフィリピンに住む中華系住民とも言われています。 ここまで見ていくと、沖縄から米軍が撤退した場合、尖閣諸島や沖縄がどうなるかはお分かりになるでしょう。だから日米同盟を強化し沖縄県から米軍基地撤退させてはいけないのです。 しかし沖縄のマスコミは、米軍の犯罪を大きく取り上げ反米感情を煽る報道を続けています。このうらには沖縄県民と米軍を離反させる工作が働いているのです。 沖縄県民が反米感情をもって「米軍出て行け」という声が高まればどこの国が喜ぶか、ここまで書けば分かるでしょう。 ◆南シナ海を一方的に「三沙市」にした中国 南シナ海は、中国が支配する海になり、現在中国は、ベトナムとフィリピンの主張も無視して勝手に南シナ海の西沙諸島、中沙諸島、南沙諸島(南シナ海のほぼ全域)に「三沙市」と名付けて自分の海にしまいました。 同じような手法で中国は現在、東シナ海や西太平洋を中国の海にしようとする手を打っています。この点について次回詳しく見ていきたいと思います。(つづく) なぜ日本は情報機関が弱いのか 2015.01.09 文/静岡県本部副代表 江頭俊満 ◆日本の情報能力を概観してみる 「特定秘密保護法」が昨年12月10日に施行されました。これは、安全保障に関し、特に秘匿が必要な情報を「特定秘密」に指定し、漏えいした公務員らに最高で懲役10年を科すものです。 「特定秘密」は、安全に関する情報で(1)防衛(2)外交(3)スパイ行為など特定有害活動の防止(4)テロリズムの防止-に関わるもののうち、特段の秘匿の必要性があるものが該当します。 「特定秘密」を指定できるのは、防衛省や外務省など19の行政機関の長で、このうち警察庁と海上保安庁は、同26日、合わせて30件余りの情報を特定秘密に指定しました。 今回は、日本の情報能力を概観してみたいと思います。 ◆外交や軍事の戦略を策定するために必要なこと 日本が独自の外交と軍事の政策を策定し、この二つの分野で行動をするためには、その前提となる独自の情報が必要となります。 しかし、この外交と軍事の政策を米国依存で済ませるなら、日本独自の情報機関は不要となります。 外交や軍事の戦略を策定するにあたっては、「目標を明確にすること」、「目標実現の道筋を明らかにすること」、そして「相手の動きに応じて柔軟に対処できるようにいくつもの選択肢を用意すること」が求められます。 その際にまず必要とされるのが、「外部環境の把握」「自己の能力の把握」です。 この二点について、いかに客観的で正確な情報を手に入れるかがきわめて重要となります。これは「インテリジェンス」と言われる情報です。 ニュースで受動的に見聞きする情報「インフォメーション」ではなく、外交や軍事面での行動を前提として能動的に集められる情報「インテリジェンス」が求められます。 「インテリジェンス」は言い換えれば、「対外的に最善の行動をとるための情報」と言えます。 ◆日本の情報分野は世界から遅れたものとなっている 2005年10月、日米は「日米同盟:未来のための変革と再編」に合意し、日米が「共通の戦略」で行動することを決めています。 この中で、情報については「共通の情勢認識が鍵である」「部隊戦術レベルから国家戦略レベルまで情報の共有を向上させる」「秘密情報を保護する追加的措置をとる」とされています。 ここでは、米国が与えたものが共通の情報となり、「情報の保護」が強調されています。このことから、日米の情報が一本化される動きが進展していると見てよいでしょう。 しかし、米国は、「インフォメーション」の提供は約束しているが、「インテリジェンス」の提供は約束していないことを知らなくてはなりません。 「わが国独自の国益があるか」―この認識が、国家の情報部門を必要とするか否かの判断要件となります。情報機能を有効に働かせるためには、日本独自の外交を考え、その基となる「日本の国益とは何か」を認識しておく必要があります。 戦後、わが国は「他国に脅威を与えなければ、それでよい」といった考え方で、米国に国家の安全保障を依存してきました。こういう対外政策のままで、日本の情報分野は世界から遅れたものとなっているのが現状でしょう。 ◆安全保障において「日本は一本立ちできない」 敗戦後のGHQ占領下、米国が最も重視した政策は、「日本が二度と軍国化しないこと」でした。この影響により、現在でも日本の大学において、一般には軍事や安全保障に特化した講座はありません。 ここで、考えなくてはならないことは、「(自衛隊に対して、シビリアン・コントロールがなされていますが、)大学で系統立てて安全保障や軍事に関する教育を受けておらず、国際水準に達する安全保障の知識のないシビリアンがどうして国家戦略を立てることができるか」ということです。 このことは、「いかに自衛隊が、中国やその他の国の軍隊より優れていたとしても、米国から離れて日本だけで作戦を立てるには根本的な欠陥があり、実際の行動はできない」ということなのです。 幸い、現段階では、日米同盟が有効に機能しているので問題はありませんが、「日本は一本立ちできない」ようになっているのが現状です。 ◆日本の「情報機関」を強化すべき時期が来ている 1997年の「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の見直し」では「自衛隊および米軍は、弾道ミサイル攻撃に対応するために緊密に協力し調整する」としています。 しかし、米国は、日本が独自のミサイル配備状況を知る必要性を認めておらず、米軍と自衛隊が一体となって動くことを望んでいます。 日本において、戦後解体されて復興しないものに「情報機関」があります。国際化が進む中で、明確な国家戦略を持つ国は、必ず「強固な情報機関」を保持しています。 国際社会での「米国の優位性の後退」は避けがたい潮流となっています。これに反して、中国の力は上昇しつつあります。 こうした状況においては、当然「日本独自の情報能力」が問われてきます。今、まさに日本の「情報機関」を強化すべき時期が来ていると言えましょう。 ロシアにとってのウクライナ、米国にとってのキューバ、日本にとっての台湾 2014.12.31 文/HS政経塾3期生 森國 英和 新年明けましておめでとうございます。昨年末は、衆議院選挙がありましたが多くの皆様にご支援を頂きましたことに心より感謝申し上げます。 残念ながら当選者を出すまでには至りませんでしたが、国民の幸福を実現し、素晴らしい日本の国づくりを実現するため、今まで以上に努力精進を重ねて参ります。今後とも皆様のご支援よろしくお願い申し上げます。 さて、2015年の始めにあたり、昨年のロシア、アメリカの国際情勢を振り返りながら、日本のあり方についても考えてみたいと思います。 ◆ウクライナ問題でのプーチン大統領の行動の誤解 2014年、最も世界に衝撃を与えた国際的な出来事は、ウクライナ問題です。 2月22日にウクライナ国内で、親露派のヤヌコビッチ大統領(当時)に対するクーデターが発生しました(ヤヌコビッチ氏はウクライナから脱出)。 それに対してロシアは3月下旬、ウクライナからの独立を宣言したクリミア(クリミア共和国)を編入し、ウクライナにおけるロシアのプレゼンス維持を図りました。 これに対して米英を中心とする欧米諸国は、ロシアの行動に対する不満を募らせ、経済制裁を加えました。 そしてその怒りは、7月17日に、ウクライナ東部の上空を飛行中のマレーシア航空の旅客機をロシア派武装集団がミサイルで撃墜したことで爆発し、「新たな冷戦」の様相を呈していると論じられるまでロシアとの関係を悪化させました。 年初以降のウクライナ問題、及びプーチン露大統領の行動への評価は、年末になっても定まっていませんが、「欧米が、ロシアの危機感を理解することなく、その“裏庭”にまで手を出した」ことが、ウクライナ問題がエスカレートした最大の理由です。 表題の通り、ロシアにとってのウクライナが、米国にとってのキューバ、日本にとっての台湾に相当すると考えれば、その地域での仮想敵国の動きに、国防上の危機として反応せざるを得ません。 また、冷戦終結の際に、ウクライナを含む東欧について、米国とソ連の間で意見が交わされ、ソ連が東西ドイツの統合と旧東独からのソ連軍の引き揚げを認める代わりに、欧米はNATOを東方に拡大させないとの“約束”がなされていたとの分析もあります(ジョシュア・R・I・シフリンソン『フォーリン・アフェアーズ・リポート』14年12月号)。 にもかかわらず、冷戦終結から20余年の歳月が経ち、欧米側が冷戦終結当時の前提を反故にしているのであれば、「一方的」との誹りを免れることはできません。 米英を中心に、「プーチンと将来のロシアの指導者がリベラルな理念を受け入れれば、世界はより良い状態になる」という前提で話が進められ、プーチン批判が“かさ増し”されていますが、ロシアの国家感情をむげにしていては無用な衝突が生じるのみです。 ◆中国のカリブ海荒らしに対応する米国のリアリズム 一方の米国も、ロシアのウクライナに対する行動と同じような動きを見せています。オバマ米大統領は12月17日、50年以上国交を断絶していたキューバとの国交正常化交渉を直ちに開始させると発表しました。 今回のキューバとの交渉開始の背景には、残り2年の大統領任期で歴史に名を遺そうとするオバマ氏の思惑、ローマ法王・フランシスコの仲介があったと指摘されています。しかし、最も重要な要因は、カリブ海地域に近年、中国の手が伸びていたことでしょう。 中国の習近平・国家主席は14年7月15日から23日にかけて、中南米4か国を訪問し、キューバにも訪れています。習氏は米国の“裏庭”である中南米のうち、左翼的・反米的な政治指導者と個人的な信頼関係を築こうとしていると指摘されていました。 さらに最近、中米のニカラグアでの新運河建設事業を、中国系企業が受注したと発表されました。「(パナマ運河の)代替となる別の運河を確保できれば、米国をけん制できる」との指摘もあります(日経電子版14年12月25日)。 このような中国の“裏庭”荒らしに、米国がキューバとの国交正常化交渉開始という形で応戦したのです。これはケネディ大統領が62年に海上封鎖した動きと、同じような国家の衝動であり、同じような文脈でウクライナに対するロシアの対応を考慮すべきです。 ◆日本にとっての“裏庭”は台湾 ロシアや米国が上記のように振る舞っていますが、日本にとっての“裏庭”は、台湾や東シナ海・南シナ海です。 14年6月、故・岡崎久彦氏からお話を伺う機会がありました(月刊「ザ・リバティ」14年8月号)が、岡崎氏は、「集団的自衛権が一段落したら、台湾問題に取り組まなければならない」と述べていました。 海洋国家・日本の防衛、シーレーンの確保を考えれば、日本にとっての“裏庭”は、台湾とそれを挟む東シナ海・南シナ海。それが中国に脅かされているのは由々しき事態です。 このような危急存亡の時、1890年の第1回帝国議会が思い出されます。当時の内閣総理大臣・山県有朋は、その施政方針演説において「主権線」(国境)のみならず「利益線」(緩衝地帯)の確保が必要であると述べました。 当時の「利益線」は朝鮮半島のことですが、今に置き換えれば、台湾や東シナ海・南シナ海の安危を監視し、いざというときに対応できる体制を整えるべきということです。 それを想起すると、15年1月の安倍首相の施政方針演説がどのような内容か、注目されます。激動の2015年を乗り切るために、自衛隊法等の改正や戦後70年の歴史問題への対応、防衛費の増額、9条改正について言及すべきです。 そしてできるなら、日本の国防にとっても重要な台湾についても踏み込む一年にしたいものです。 日本の海上防衛を考える(3)――韓国とパラオに現れた中国漁船 2014.12.29 文/幸福実現党・政務調査会 佐々木勝浩 前回のニュースファイルでは、中国船は小笠原諸島や伊豆諸島だけではなく、鹿児島や、長崎県五島列島にも現れていることを述べました。 日本の海上防衛を考える(2)――中国漁船は九州でも http://hrp-newsfile.jp/2014/1920/ 今回は韓国やパラオにも現れた中国船の例を紹介し、特に軍隊も持たないパラオが中国という大国に対して取った毅然たる態度を紹介致します。 ◆韓国近海に現れた海賊レベルの中国漁船 お隣の韓国では、2011年11月に同国の排他的経済水域で違法に操業していた中国漁船を約30隻近く拿捕し、その際に韓国側に負傷者も出ています。 中国漁船は韓国国旗などで国籍を偽装し、韓国海洋警察が取り調べをしようとすると、鉄パイプや斧などで抵抗、韓国紙「ソウル新聞」は、「わが海域で違法操業をする中国漁船は海賊と同じレベル」と批判しました。 同年の12月には中国漁船員が韓国海洋官を殺害する事件も起きています。追って説明しますが、中国の漁民には、軍事訓練を受けている「海上民兵」がいます。つまりただの漁民ではないのです。 他にも12月に韓国が中国漁船3隻を拿捕し罰金を徴収して、いずれも釈放しています。 今年2014年、10月にも韓国海洋警察が違法操業をしていた中国漁船の船員らと乱闘になり、その際には中国漁船の船長が死亡しました。 ◆中国漁船の違法操業に決然と対応したパラオ 日本や韓国と違い、横暴な中国に対して毅然とした態度を取ったのは人口がたった2万人で、しかも軍隊も持っていないパラオという国です。 ちなみにパラオは、国旗を日本の日の丸をモデルにつくるほど親日国家です。親日である理由は、先の大戦で日本が命を懸けて米軍と戦ってくれたことに感謝しているからです。 さて2012年3月、パラオが排他的経済水域に設けているサメ保護区で違法操業をしていた中国漁船と取り締まりのパラオ警察の間で「激烈な争い」が発生しました。(2012/4/4サーチナ) その際、発砲により流れ弾に当たった中国漁船の乗組員1人が死亡、残りの5人を逮捕しました。最終的には死亡した1人を除き、25人が「御用」となったのです。その際にパラオ側にも行方不明者が出ています。 中国人漁民25人は同年4月に起訴され、パラオ警察は「中国人漁民は複数の罪に問われている」「裁判の結果、処分が決まる」と言明、中国漁民に対して毅然として司法行為を進める決意しました。(2012/5/28産経) パラオは台湾を国家として遇しており、中国を正統国家として認めていません。従って、中国は大使館を置くミクロネシアから外交官が特別の手続きを踏んだ上で入国し、パラオ側と交渉せざるを得ませんでした。 「中国外交官は非常に傲慢だった」と、パラオ・トリビオン大統領は当時の様子を地元メディアに語っています。中国の外交官は、漁船乗組員を即時釈放することと、中国人漁船員一人一人と立会いなしで面会を求めてきたといいます。 パラオは、中国に対して遺族への丁重な弔意を示したものの、即時釈放を断り乗組員全員有罪とし、罰金を1千ドルずつ払わせました。中国人船員の拘留は17日間に及び、パラオはあくまでも国際法、国内法に則って立場を貫いたのです。 そして釈放されると中国はチャーター機を自ら用意して全員を連れ帰りました。 中国の圧力に屈しなかったことについて大統領は、「はっきりしているのは、ここはパラオの領海だ」との趣旨を、地元メディアに語っています。 (参考【月刊WiLL2011年10月号】 総力大特集 図に乗るな中国!) ◆中国船衝突に対する民主党政権の対応 軍隊も持たないパラオの毅然とした姿勢と比べて、1億人の人口を誇り自衛隊も持っている日本はどうでしょうか? 民主党政権は、2010年9月、尖閣諸島で領海侵犯し海上保安庁の巡視船に体当たりした中国漁船船長を、あくまで沖縄の地方検事の判断だとして釈放を許し、国家としての国防の責任を放棄しました。 しかも、船長を迎えに来日した中国政府高官のために夜中に石垣空港を開港させ、日本の立会いなしで漁船船長との面会を許し、最後は日本側がわざわざチャーター機を用意し食事付きで漁船の乗組員を中国まで送り届けたのです。 当時の菅首相は、口をつぐんだまま、中国に何も発言しませんでした。 こうして中国の無法漁船を事実上、無罪放免したことが今日の中国のサンゴ密漁を許すことになり、日本の漁民のみなさんを危険に晒していることにつながっているのです。 パラオが独立国として自国の主権を守るために大国中国に取った毅然とした態度を日本は学ぶべきです。 (補足)パラオは、1994年独立した時に米国と「自由連合盟約」を締結。期限付きで全軍事権と、外交権の内、軍事権に関係する部分を米国に委ねています。盟約に基づき、国民の一部は米国軍人として入営しています。 中国もパラオとの交渉が決裂すれば、米軍が出てくることになるので、下手なことはできません。ここからも日米同盟の重要さが分ります。 次回、中国漁船を戦略的に動かし、南シナ海を「中国の海に」してきた戦略を明らかにします。それと同じ方法で今度は東シナ海、西太平洋まで「中国の海」にしようとしているのです。 (つづく) サイバー防衛に日本はどう立ち向かうのか 2014.12.24 文/HS政経塾2期卒塾生 服部まさみ ◆看過できない北朝鮮のサイバー攻撃 サイバー攻撃とテロ予告によりソニーの米子会社の新作上映が中止に追い込まれました。 (※その後、上映は行うと報道されました。) 金正恩第一書記の暗殺計画を描いた映画で、6月には、北朝鮮外務省が「無慈悲な対応を取る」との声明を出していました。 サイバー攻撃が発覚したのは11月で、個人や社内情報が盗まれ、ネット上に小出しに流出させることで脅威を増大させていきました。 その後、上映予定の映画館にテロ予告が行なわれた為、17日に上映中止が決定し、19日にFBIが北朝鮮による攻撃と認定しました。 オバマ大統領は、北朝鮮に対し対抗措置をとる方針を示し、テロ支援国家に再認定することを検討していると発表しました。 北朝鮮によるサイバー攻撃は昨年3月に韓国でも起きています。 また、09年7月4日に、北朝鮮は7発のミサイルを発射するのと同時に、ミサイルが迎撃されないように米韓の中枢部に対して、数日間に渡り、16カ国をも経由してサイバー攻撃を行っているのです。 このようなサイバー攻撃は、歴然たるテロ行為であり、決して許されるべきではなく、その責任は拉致問題などの人権侵害と同時に厳しく追及されるべきです。 ◆北朝鮮のサイバー攻撃部隊は世界トップクラス 北朝鮮は、20年以上前からサイバーテロ能力を高めており、中露やイランといった協力国と手を組んで、攻撃力を強めてきました。 特に金正恩体制は、サイバー戦について重視し、12年にサイバー攻撃の専門部隊を「偵察総局」の中に新設し、1700人規模のハッカー部隊が所属しています。 その他にソフトウェア開発機関に所属するエンジニアが4200人おり、有事の際は約6000人がサイバー攻撃に動員される態勢になっています。 優秀な子どもは年間500時間の「英才教育」を受け、専門の大学で養成のための特別講義を受けた、選び抜かれた優秀な人材が訓練に参加しています。 北朝鮮のハッカー部隊は、中露や東南アジアの国々に拠点を置いて、現地のハッカーとも連携しています。海外の支援組織が北朝鮮の部隊の代わりに動くこともあるといいます。 北朝鮮のインターネット回線は中国の通信大手、中国連合通信(チャイナ・ユニコム)を経由しているため、今回のサイバー攻撃に関して、米国が中国に協力を要請したとみられています。 国境を越えたサイバー攻撃に一国だけで対応するのは無理で、国際的な協力関係を築いていく必要があります。 ◆日本のサイバー防衛の現状 日本も決して他人事ではありません。日本の政府機関へのサイバー攻撃は、昨年度で580万件と前年度の5倍に増えており、約6秒に1回の割合で攻撃を受けているといいます。その9割が海外からのものです。 政府は、積極的にサイバー防衛に取り組んでおり、米国やオーストラリア、英国、NATO、シンガポールなどの国際社会と協力体制を築いています。 先月には「サイバーセキュリティ基本法」が制定され、内閣にサイバーセキュリティ戦略本部が設立されました。現行の国家安全保障会議(NSC)及び、IT総合戦略本部と緊密に連携しながら、各省庁をまとめる司令塔の役割を持った態勢が出来上がりました。 ◆日本に必要な強化策 このように日本も少しずつ、防衛体制が作られていますが、深刻さを増すサイバー攻撃に、更なる強化策が求められています。 今後、日本に必要な強化策として、次の3点が考えられます。 (1)予算の見直し 米国のサイバー関連予算は13年の39億ドル(約4680億円)から14年には47億ドルに増加しています。 また、英国も10億ドル(1000億円)という予算を優先的にサイバー防衛に当てています。それに比べて日本のサイバー防衛予算は585億円(14年度)と少ないのが現状です。 (2)専門家の育成 サイバー防衛強化には、特に、専門部隊の育成がカギを握ります。いくらシステムや制度が充実していても運営する人材がいなければ意味がありません。 日本においてサイバー防衛の人材は人数として約8万人不足しているという試算があります。 米国は現行のサイバー司令部に、6200人規模の防衛・攻撃能力を持つ専門部隊を整備する計画を立てています。日本も今後、大学や企業と協力しながら専門家を集め、育成していくことが必要不可欠です。 (3)憲法9条改正 サイバー攻撃への対応は、国家安全保障上の重要な課題です。国家安全保障のためには、国際的な協力が必要であり、現行の日本国憲法では、自国を守ることも、国際社会との十分な協力体制を築いていくこともできません。 自国民の安全と国際社会の平和のためにも一日でも早く憲法改正を目指すべきです。 サイバー防衛協力も明記された日米防衛指針の改定を、国民の安全より公明党に配慮して、選挙に勝つことを理由に延期することなどあってはならないことではないでしょうか。 サイバー防衛には、国を守るために情報を管理する義務と同時に、個人の自由を担保しなければならない難しい問題があります。自由を守りながらどこまで政府が介入するべきなのかというジレンマを常に抱えています。 独裁国家がそのジレンマを嘲笑うかのように揺さぶりをかけています。しかし、この脅威に屈することなく、自由の大国を目指し、平和と繁栄を築いていくことが私たちの使命です。 すべてを表示する « Previous 1 … 56 57 58 59 60 … 98 Next »