Home/ 外交・国際政治 外交・国際政治 【日露交渉】右手に「対露制裁」、左手に「平和条約」で進むわけがない 2019.06.29 【日露交渉】右手に「対露制裁」、左手に「平和条約」で進むわけがない HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆日露首脳会談 何が成果? 6月29日の日露首脳会談では、大きな進展がありませんでした。 今回、合意に至ったのは、以下の項目だと報じられています。 ・日ソ共同宣言を基礎にした交渉加速を継続 ・2023年までに相互訪問者を少なくとも20万人、計40万人に ・北極圏での液化天然ガス(LNG)生産事業や医療分野での協力拡大 ・北方四島での共同経済活動を秋に試行(観光やごみ処理等) ・航空機での北方領土元島民の墓参りの実施 (※北極圏でのLNG生産事業では、三井物産とロシアガス大手ノバテクが協力する) 内容をみると、特に、これといった大きな成果が見当たりません。 ◆新しい一手がなかった安倍政権 そもそも、今回は、6月22日の時点でプーチン大統領が、国営テレビのインタビューで領土返還の「計画はない」とあらかじめ述べていました。 南クリル諸島(北方領土)のインフラ建設を進めるとも発言しており、島の施設から「ロシア国旗を下ろすことはあるか」と訊かれた際には、「そうした計画はない」と答えていたのです。 今回は、今までと同じ議論を続けても、らちがあかないことは明らかでしたが、安倍首相に新しい一手はなかったのです。 日ロ首脳会談は26回目となりましたが、結局、平和条約と領土交渉は一向に進展していません。 ◆「外交の成果」を政策パンフに書けない自民党 今回の会談も含めて、安倍首相の「外交」は、PRが目立つわりには、十分な成果があがっていません。 それは、自民党の政策パンフレットを見れば分かります。 経済政策では、若者の就職内定率が過去最高であるとか、企業の倒産が減ったとか、具体的に並べる内容があるのですが、外交・安保政策には、それがないのです。 そのかわりに、安倍首相の「写真」で紙面が埋められています。 トランプ大統領とゴルフしたり、モディ首相やマクロン大統領、プーチン大統領などと一緒に映っている写真が「成果」のかわりに並べられているのです。 ◆たいして進展がない「外交・安保政策」 自民党の外交・安保政策には、「ゆるぎない防衛力を整備する」(米豪印等と)「自由で開かれたインド洋を実現」「北朝鮮の核・ミサイル放棄」「拉致被害者全員の帰国」などといった項目が並んでいます。 どれも大事ですが、これらの政策は政権ができた頃から主張してきたものです。 そのため、もはや「成果があったのかどうか」が問われるべき時が来ています。 対露外交については「領土問題を解決し、日露平和条約の締結を目指します」と書かれていました。 しかし、26回も首脳会談をし、プーチン大統領が2回訪日したのに、議論はたいして進んでいません。 そして、進んでいないのは、他の項目も同じなのです。 「防衛費が増えた」といいますが、微増にすぎません。 また、北朝鮮の核ミサイル放棄や拉致被害者の帰国は一向にめどがたちません。 「自由で開かれたインド洋の実現」は、中国に対抗する米国の「インド・太平洋戦略」との連携を意味しますが、今の日本は、中国のご機嫌取りに終始しています。 ◆日本は、右手で制裁しながら、左手で「平和条約と領土返還」を求めている。 日露交渉に関して言えば、そもそも、「ロシア制裁を続けながら領土返還を求める」という日本のスタンスに矛盾があります。 これは、2016年12月に、プーチン大統領が初めて訪日した時と全然、変わっていません。 当時は、オバマ大統領の任期が残り1ヶ月しかなく、トランプ政権のロシア政策も固まっていなかったので、制裁解除のチャンスだったのですが、安倍首相は決断できませんでした。 プーチン大統領にとっては、日本がひたすら米国に追随しているようにしか見えず、その後、領土返還について態度を硬化させています。 実際に、返還後の北方領土に米軍基地がつくられる可能性を危険視し、「日本がこの問題でどの程度主権を持っているのか分からない」と指摘しています。 制裁解除もできない国が、米軍の意に反して基地の建設を止められるとは信じがたいからです。 プーチン大統領には、右手で制裁しながら、左手で平和条約と領土返還を求める奇妙な外交に見えたに違いありません。 ◆日露交渉を進展させるために やはり、日露交渉を進展させたいのなら、日本は、態度を明確にしなければいけません。 まずは「ロシアは敵ではない」ということを示す必要があります。 対露制裁を解除し、ロシアのG8復帰を促すなど、日本は独立国として主体的に動くべきです。 ロシアを敵国扱いすることを終わらせなければ、平和条約の締結や領土返還交渉が進まないのは当然です。 我が国は、日露関係を強化することでロシアが中国寄りになることを防がなければなりません。 日米同盟があるので、米国の理解を得るのは大変ではありますが、これは、それだけの労力を費やすに値する政治課題です。 自民党の「対米追随」外交だけで、日本の未来を拓くことはできません。 幸福実現党は、対露外交に新たな一手を打ち、日露平和条約を早期に締結すべきことを訴えてまいります。 【参照】 ・自民党「令和元年政策パンフレット」 ・朝日デジタル「プーチン氏『日本の決定権に疑問』 北方領土と米軍基地」(2018/12/21) 香港デモは、中国の”国内問題”ではなく、国際問題だ 2019.06.28 香港デモは、中国の”国内問題”ではなく、国際問題だ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆G20を前にして、香港のデモ隊が各国領事館に陳情書を提出 G20首脳会談の前日に、香港のデモ隊は各国の領事館まで行進し、「逃亡犯条例」改正の完全撤回への支援を訴えました。 デモ隊は陳情書を領事館に提出し、この条例をG20の議題とすることを求めています。 「香港に自由を、いまこそ民主主義を」 「トランプ大統領、香港を解放してください」 そう訴えているのは、条例案の審議が止まっただけでは、まだ不十分だからです。 香港政府は、条例案が来年7月に廃案になることを受け入れると表明しましたが、議会は親中派が多数なので、実際は、あとで審議を再開できます。 そのため、デモ隊は香港政府が自ら案を完全撤回するまで妥協せず、各国政府に支援を呼びかけました。 香港政府は北京の言いなりなので、中国に主要国が抗議し、圧力をかけなければ、また改正案が蒸し返される恐れがあるからです。 ◆香港をめぐる米中高官のそれぞれの主張 29日には、米中首脳会談が開催されますので、両国の事前の動きを整理しておきます。 まず、6月17日に、ポンペオ国務長官は、香港デモについての見解を問われ、「トランプ大統領は常に熱心な人権の擁護者だ」「(香港問題が)会談の議題に含まれると確信している」と述べています(FOXニュースのインタビュー)。 これに対して、中国の張軍・外務次官補は24日に「香港の問題は純粋に中国の内政問題であり、いかなる諸外国にも干渉する権利はない」と反発。 G20が、世界の経済協議の場であることを理由に、香港について議論することは認められないと主張しました。 しかし、それは、適切な主張ではありません。 確かに、G20は、もとは国際経済会議でしたが、G7を拡大し、新興国にまで参加枠を広げたのは、急成長する国に応分の責任を求める意図があったからです。 そのため、香港の民主主義を維持するという、返還時の約束を守ることを各国が要求するのは当然です。 また、「逃亡犯条例」改正で、市民や外国人が当局の意のままに中国本土に引き渡されるようになれば、香港の信用が失墜し、「国際金融都市」としての機能が失われます。 香港が中国本土と同じになれば、香港から他のアジア諸国(シンガポールなど)に事務所を移転する企業が増えますし、香港への投資が減るので、結局、国際経済にも影響が出るのです。 つまり、ポンペオ国務長官が述べたように、これがG20の議題に入るのは、当然のことです。 「議論を認めない」と主張する中国は、G20が自国内の会議ではなく、「国際会議」であることを忘れてしまったのでしょう。 諸外国の首脳の言論の自由を奪う権利が、中国にあるはずがありません。 ◆香港デモの影響で、台湾の蔡英文総統と国民党候補者との支持率が逆転 香港デモに関しては、同じく中国の脅威を前にした台湾人が注目しています。 世論調査では、台湾人の7割(70.8%)が「香港人のデモを支持する」と答えており、中国への反感が高まっています。 中国は、香港と同時に、台湾の民主主義を脅かしているからです。 その結果、「中国との関係を改善し、景気回復を図る」という国民党の主張は、前よりも台湾人の心に響かなくなりました。 むしろ、中国への対決路線に切り替えた蔡英文総統の支持率が上がっています。 「蔡氏の支持率は47・7%(前月43・1%)、不支持率は43・6(前月46・8%)」 「17年11月から続いていた支持が不支持を下回る状態を抜け出した」(朝日6/25) 野党候補者のトップ3を見ると、香港デモについて「よく知らない」と答えた国民党の韓国瑜(高雄市長)は、首位から二位に下がりました。 現在は、郭台銘(テリー・ゴウ鳴海会長、7月1日に退任)が首位です。 第三位は、朱立倫元主席で、3人の支持率は拮抗しています。 (5/19⇒6/24、台湾民意基金会が野党候補者の支持率を調査) ・郭台銘:21.8%⇒29% ・韓国瑜:23.8%⇒26.4% ・朱立倫:18.3%⇒26.7% 郭氏が首位ですが、経済よりも「民主主義の危機」が懸念され、現在では、どの野党候補よりも蔡氏のほうが支持率が高くなっています。 「大手テレビ局TVBSが今月24日に公表した調査では、蔡氏に初めて逆転され、それぞれ8~15ポイント差を付けられている」(産経6/26) 香港市民が立ち上がったことで、アジアの政治の風向きが変わり始めています。| ◆G20議長国の日本が、率先して香港デモへの支援を打ち出すべき しかし、G20の議長国である日本の政治家は、中国のご機嫌伺いのため、香港デモへの明確な支持を打ち出せないでいます。 菅長官が6月13日に行った記者会見でも、まるで他人事のような発言がなされています。 ・「邦人保護の観点を含め、日本政府としても引き続き大きな関心を持って注視している」 ・「民主的なプロセスの下、十分議論が行われ、『一国二制度』の下で香港の自由や安定などが維持されることを強く期待している」 ・「今後とも香港当局とは必要に応じ意思疎通を続けていきたい」 ・「平和的な話し合いを通じて事態が早期に収拾されることを期待する」 そして、今の日本では、台湾の韓候補のように、香港デモに冷淡でも、支持率が急落することもありません。 日本では、水や空気があるのと同じように「平和」や「普通選挙」があるのは当然だと思われているので、香港デモが、中国の脅威に直面する自分たちにとっても大事な問題だとは、十分に受け止められていないのです。 幸福実現党は、こうした風潮を打破すべく、「沖縄・台湾・香港の自由を守ろう!」デモを開催し、香港デモの支持などを訴えました。 6月16日には、沖縄県本部が開催。410人が参加しています。 26日には、東京都新宿区でもデモを実施し、炎天下のなか、約950人が参加しました。 トランプ大統領が、香港デモを支持するのかもしれませんが、米国だけが言っても、他の主要国が賛同しなければ、中国への圧力は半減してしまいます。 日本は本年、G20の議長国なのですから、米国とともに香港デモへの支持を打ち出し、他の自由民主国を先導すべきです。 こうした大事な時期であるからこそ、幸福実現党は、香港の民主化勢力を支援するとともに、平和ボケの日本を目覚めさせるために、力を尽くしてまいります。 【参照】 ・米国務省HP”Secretary of State Michael R. Pompeo With Chris Wallace of Fox News Sunday”(2019.6.16)該当の発言は以下の通り。 “The President has always been vigorous defender of human rights. ” ” I’m sure this will be among the issues that they discuss. ” ・AFP通信「G20で香港に関する議論『認めない』中国政府」(2019.6.24) ・朝日デジタル「香港デモ、注視する台湾 一国二制度の『怖さ気づいた』」(2019.6.25) ・聯合新聞網「台灣民意基金會民調:韓國瑜大輸清14.5%」(2019.5.19) ・中国評論新聞網「流冷掉了?游盈隆:角色期望不同」(2019.6.24) ・産経ニュース「台湾野党、総統選で討論会 香港デモ影響で精彩欠く」(2019.6.26) ・産経ニュース「菅長官、香港デモを注視『民主的プロセスの下、自由の維持を』」(2019.6.17) ・日経電子版「官房長官『話し合いで収拾を』」(2019.6.13) トランプ大統領選出馬表明 マスコミが無視した大事なメッセージ 2019.06.26 トランプ大統領選出馬表明 マスコミが無視した大事なメッセージ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆トランプ大統領 次の標語は「キープ・アメリカ・グレイト」 トランプ大統領は、6月18日に2020年大統領選への出馬を正式表明しました。 フロリダ州オーランドでの支持者集会では「米国を偉大なままに(Keep America Great)」という標語を掲げました。 そして、左傾化が進む民主党に対して「アメリカは決して社会主義者の国にはならない」「我々は自由を信じている」と宣言しています。 その演説では、政権があげた成果と好景気を強調。 民主党のバイデン候補の批判やロシア疑惑が魔女狩りにすぎないことなどを訴えました。 ◆トランプ演説の要旨 その内容の要点をあげてみます。 ・「我々はともに、腐敗し衰弱した政治的な既得権益層をにらみ倒し、人民の、人民による、人民のための政治を復活させた」 ・「我々の経済は世界の羨望の的だ」 ・「600万人もの新たな雇用を生み、51年間で最も低い失業率を保っている」 ・「TPPとパリ条約から脱退し、NAFTAをUSMCA(米国・カナダ・メキシコ協定)に置き換えた」 ・(規制廃止などで)「米国は今や原油と天然ガスの世界一の生産国だ」 ・「軍事費は削減されてきたが、我々はそれを昨年に7000億ドル、今年に7160億ドルに増やし、軍を再建した。宇宙軍も創設している」 ・「ロシア疑惑は魔女狩りだ」「民主党はこの魔女狩りに400万ドルを用いたが、共謀も司法妨害もなかった」 ・(民主党が勝ったら)「彼らは自由な言論を奪い、反対者を罰するために法の力を使う」 (※「政治的正しさ」を理由にした言葉狩りや、ロシア疑惑等での捜査権の拡大などを批判している) ・(対中関税で)「中国が米国から雇用を奪い、米国企業からアイデアや富を奪う時代は終わった」「オバマやバイデンは彼らのカモになっていたのだ」 ◆2020年大統領選は、米国における「社会主義との戦い」 「候補者が誰であろうとも、2020年に民主党に投票するのは、過激な社会主義者の台頭とアメリカンドリームの崩壊に投票するのと同じことだ」 これは、民主党内に社会主義が浸透していることを批判した発言です。 現在、民主党で最も支持率が高いバイデン元副大統領は中道左派の政治家ですが、2位のバーニー・サンダース候補は社会主義者を自認し、120人の議員の支持を集めています。 バイデン氏は社会主義者ではありませんが、議員だけでなく、民主党支持者の57%が社会主義に肯定的なので、今後の民主党がオバマ政権以上に左傾化することは避けられません(2018年、ギャラップ社調査)。 トランプ大統領が、最近、各地の演説で「社会主義との戦い」を強調しているのは、そのためです。 また、2018年の調査(ギャラップ社)では、米国の18歳から29歳の若者の51%が社会主義に肯定的だという結果が判明しています。 現在、社会主義国(中国や北朝鮮等)と戦い続けるトランプ大統領は、こうした「冷戦を知らない世代」の増加に便乗し、民主党が勝った場合は、アメリカが自由の国ではなくなってしまうと警告しているわけです。 ◆マスコミが伝えなかった重要なメッセージ 主要紙では、今回の出馬宣言について、「功績を自賛」「目新しい政策がなかった」「他党批判ばかり」などといった評価が目立っています。 その多くは、残念ながら、トランプ大統領が最後に強調したメッセージを省いていました。 「我々は、本当のアメリカらしさは信仰と家庭にあり、政府や官僚機構にあるのではないと信じている」 「我々は、子供たちは、アメリカという国家を愛し、歴史を誇りとし、偉大なる国旗を常に尊び、『我々は神を信じる』という米国の標語の下に生きることを教えられるべきだと信じている」 こうした価値観を中心に国を運営することが、オバマ政権からの大転換でした。 オバマ氏が神を信じる者も信じない者も国のために力を尽くそうというスタンスだったのとは大きな違いです。 (※就任演説でオバマ氏は「我々の国はキリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒、ヒンズー教徒、そして無宗教の人々で構成されている」と発言) トランプ氏は「これらの価値観によって、私たちは2年半前に勝利を勝ち取った」と述べ、その運動が、米国の保守勢力の勝利でもあったことを強調しています。 ◆「愛国心」や「国益」、「信仰」を語れない日本の民主主義 こうしたメッセージは、今の日本の政界では語られることがありません。 「政教分離」が、政治の世界から宗教を追放するために悪用されているからです。 民主主義の基盤である「個人の尊厳」が「創造主によって、生命と自由、そして幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」(アメリカ独立宣言)ことに由来することも、忘れ去られています。 また、日本の政治家は「右翼」「国粋主義」等とレッテルをはられることを恐れ、トランプ氏のように「国益」を政治の中心に据えることができないでいます。 大川隆法総裁は1992年に「政治家が国益を語れないほどの不幸はない」と発言していますが(『理想国家日本の条件』)、27年たっても未だ日本は変わっていないのです。 安倍首相は保守政治家だと言われていますが、本人がもともと目指していた「戦後体制の脱却」という志を忘れかけています。 河野談話や村山談話を継承し、憲法改正に関しても、九条に「自衛隊」の条文を付け足せれば十分と考えているようです。 しかし、それでは、日本を立て直すことはできません。 幸福実現党は、日本の民主主義を立て直すためにも、「欲望の自由」や「堕落の自由」ではなく、「神に与えられた自由」を用いて、社会や国家、世界の繁栄に貢献することの大切さを訴えてまいります。 そして、北朝鮮や香港や中国などにひるまず、「国益」を守る毅然たる外交を推し進めてまいります。 【参照】 ・C-SPAN “President Trump Announces Second Term Run”(2019/6/18) ・ギャラップ社 “Democrats More Positive About Socialism Than Capitalism”(FRANK NEWPORT、2018/8/13) ・「◆マスコミが伝えなかった重要なメッセージ」のトランプ演説の英文は以下の通り。 “We believe that faith and family, not government and bureaucracy, are the true American way.” “We believe that children should be taught to love our country, honor our history, and always respect our great American flag, and we will live by the… G20で、日本は「拘束された日本人の解放」を中国に要求すべき 2019.06.25 G20で、日本は「拘束された日本人の解放」を中国に要求すべき HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆中国に拘束されたカナダ人解放で米国とカナダが連携 6月28~29日に大阪で開催されるG20首脳会談を前にして、各国の首脳は様々な「戦略」を練っています。 例えば、日本と同じく、米国の同盟国であるカナダは、米国と連携して、G20で中国に拘束されたカナダ人の解放を要求する方針を決めました。 トルドー首相は、6月20日の米加会談において、この件でトランプ大統領の合意を引き出しています。 「カナダを助けるためにできることは何でもやる」(トランプ大統領) 拘束されたカナダ人に関しては、ファーウェイ幹部の逮捕への見せしめとして、すでに死刑判決が言い渡されているので、米加首脳の双方が、何とかして取り返そうとしているのです。 ◆「拘束された日本人」を放置している日本政府 しかし、何度もトランプ大統領と会談した安倍首相には「中国で拘束された日本人を、日米で連携して解放を求める」という構想がないようです。 北朝鮮の拉致問題で米国に力添えを頼んでいることは、たびたび報道されていますが、こちらに関しては、なしのつぶてに近い状態です。 5月20日には、拘束された日本人に対して懲役15年の判決が出されましたが、菅官房長官は「邦人保護の観点から、できる限りの支援を行っていきたい」としか述べませんでした。 本当に罪を犯したかどうかも明らかにされないまま、日本人が15年も刑務所に入れられているのに、はっきりと抗議していないのです。 ◆相次ぐ「中国政府による日本人拘束」と実刑判決 近年、中国政府にスパイと疑われた日本人の拘束が相次いでいます。 2015年に5月20日には、温泉開発の調査をしていた50代の日本人男性に対して、中国の地方裁判所(海南省第1中級人民法院)が、懲役15年と10万元(約160万円)の財産没収の判決を言い渡しています。 この男性は、千葉県船橋市にある「日本地下探査」(地質調査を行う)の協力会社(※)の関係者で、17年3月、海南省で温泉開発の調査を試みた際に、拘束されました。 (※産経報道によれば遼寧省大連市にある「大連和源温泉開発公司」の社員) 「国家機密を窃取し、国外に違法に提供した罪」が適用され、男性のパソコンなどから地図を含む大量の資料が発見されたとのことですが、具体的に、何が「国家機密」の窃取にあたるのかは、定かではありません。 この会社に関しては、他にも取締りが行われ、山東省で温泉探査をしていた社員も拘束されています。 17日には同省の中級人民法院が、その日本人社員に対して、懲役5年6カ月と財産3万元(約48万円)没収の判決を言い渡しました。 また、北京市では、5月21日に、日中青年交流協会の鈴木英司理事長に、スパイ罪で懲役6年の実刑判決を言い渡しています(5万元の財産没収を伴う)。 さらには、18年2月には、伊藤忠商事の40代の男性社員が広州市で拘束され、公判が行われています。 2015年以降、9人の日本人が国家機密を盗んだ罪などで起訴され、8人に実刑判決が出されているのです。 ◆安倍首相 日中関係は「完全に正常な軌道へと戻った」 そんな馬鹿な・・・。 これらの日本人に重刑が科されるまでの事実関係は、明らかにされていません。 そうした状態で懲役刑などの重刑が科されるのは、まともな自由民主国ではありえないことです。 中国では「共産党」が議会も行政も司法もすべて指導することになっているので、政権の意図から離れた裁判が期待できません。 そんなところで、日本国民が囚われ、重刑を課せられているのを無視することは、国家としての責任放棄です。 人間には、まともな裁判を受ける権利があるのですから、これは人権侵害を黙認しているのと同じことです。 4月15日の日中外相会談で、河野外相は、中国が拘束した日本人9人の早期帰国を要請しましたが、中国側は「国内法令に基づいて適切に対応する」と述べただけで終わり、結局は、重刑判決で終わったのです。 安倍首相は、3月6日に「完全に正常な軌道へと戻った日中関係を新たな段階へと押し上げていく」と述べましたが、実際には、異常な出来事が起きています。 「昨年秋の訪中で習近平国家主席と互いに脅威とならないことを確認した」はずなのに、日本人が人質のように囚われ続けています。 (※首相発言は参院予算委での発言) ◆G20で日本人拘束を抗議し、早期帰国を中国に要求すべき 日本は、6月末のG20で、日本人の拘束と実刑判決に抗議し、早期帰国を中国に要求すべきです。 こんなことをする中国の国家主席を国賓待遇でもてなすのは、馬鹿げています。 国民の声明と安全と財産を守るのが、国家の役割なのですから、日本人の拘束解除がなされ、帰国の道筋が立たなければ、国賓待遇を取り消すぐらいのことができなければ、日本は、国家とは言えません。 日本は明確に香港デモを支援すべきですが、そもそも、自国民の拘束に対して抗議ができない現状を改めるべきです。 それができないのは、選挙対策のために「日中友好」という人気取りの看板を掲げているからなのではないでしょうか。 既存の政党は、この問題をまともに取り上げていませんが、幸福実現党は、国民の生命と安全と財産を守るために力を尽くしてまいります。 そのために、拘束された日本人の解放を訴えてまいります。 【参照】 ・日経電子版「トランプ氏、カナダ人拘束問題を提起へ 米中会談で」(2019.6.21) ・産経ニュース「『邦人保護の観点からできる限り支援』 菅氏、中国で実刑判決の日本人」(2019.5.21) ・AFP通信「日中交流団体役員に懲役6年=スパイ罪で、日本人今月4人目」(2019.5.21) ・時事ドットコム「邦人に懲役15年=50代男性、国家機密入手・提供-中国海南省」(2019.5.20) ・産経ニュース「東シナ海、中国に自制要請 拘束邦人の帰国も 日中外相会談で河野氏」(2019.4.16) ・産経ニュース「首相、日中関係『完全に正常な軌道に戻った』 参院予算委で」(2019.3.6) 逡巡するトランプに、日本はイラン攻撃反対を伝えるべき【後編】 2019.06.23 逡巡するトランプに、日本はイラン攻撃反対を伝えるべき【後編】 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆米国は、また「神を信じる人々」を殺すのか 前回、述べたように、イランの体制は、結局、北朝鮮や中国のような、唯物思想の人権弾圧国家とは違います。 「時代相応に自由化も必要だ」とは言えますが、他国が武力で変革を迫らなければいけないような、悪しき独裁国家ではありません。 イランを「悪」とみなして、その国を滅ぼせば、大義もないままに、神を信じる人々を戦火に巻き込むだけです。 (※「9.11」以降、「テロとの戦い」により、イラクやアフガン、パキスタンで発生した暴力による死者は約50万人ともいわれている) また、アメリカは、1億5000万人を超えるシーア派のイスラム教徒を敵に回すので、さらなる「テロとの戦い」を強いられます。 イランはイラクの4倍近い面積があり、人口は2倍いるのですから、勝利しても、その後の統治は困難を極めます。 地域が不安定化し、エネルギー供給も危機にさらされるので、何もよいことはありません。 ◆同じ「造物主」を信じる者が争うという愚 そして、最も大事なことは、キリスト教とイスラム教は、もともとは同じ「造物主」を信じる宗教だということです。 それが認められず、延々と戦いが続いていることが、最大の問題です。 ムハンマドは、自分を導く神は、旧約聖書、新約聖書に出てくる神でもあると考えましたが、ユダヤ教徒やキリスト教徒は、今に至るまで、彼を預言者とは認めていません。 これは、愛を説いて死んだイエスと、兵を率いたムハンマドとでは生き方が違いすぎるので、両者の教えが同じ神から来たとは思えないということなのかもしれません。 しかし、ムハンマドが、実際に目指していたのは、イエスと同じく、人々が愛し合う世界をつくることでした。 その理想は、最後にメッカ入城を果たした時に、明らかになりました。 彼は、捕虜となった民に「おまえたちには、いかなる責を問うこともしない」「さあ、立ち去れ、おまえたちは自由である」と述べたからです。 彼が、今なお、人々に尊敬されているのは、勝利の後に復讐を禁じ、敵を許すことを人々に教えたためです。 自分を迫害した部族を許した彼の姿をみて、メッカの民は、彼が本当の預言者だと信じるようになりました。 そこには、イエスが説いた「神の愛」と同じものが流れています。 結局、キリスト教においても(※)、イスラム教においても、戦争は、自衛のための最後の手段でしかありません。 大義名分が立たない戦いを起こし、無駄に命を奪うことは、相手が異教徒であったとしても、イエスやムハンマドの教えにかなう行為ではありません。 (※キリスト教の戦争観の例をあげると、トマス・アクィナスの『神学大全』では、避けられない自衛の戦いは「正戦」という論法になっている) ◆日本が戦争を調停できる国となるために 今回、安倍首相は米・イラン関係の改善を図ろうとしましたが、その試みは「タンカー攻撃」という、残念な結末になっています。 「石油のバイヤー」でしかない日本の首相が、出ていっても、「アメリカの犬、帰れ」という厳しい反応で終わったわけです。 これは「エコノミック・アニマル」の限界だとも言えます。 日本が、本当に、戦争を調停できるようになるためには、少なくとも、世界から尊敬される国でなければなりません。 こうした日本の限界については、今から25年前に、幸福実現党・大川隆法総裁が、すでに指摘していました。 「宗教から遠ざかりさえすれば、第二次大戦のような惨禍は避けられるものと、ひたすら無宗教化をすすめてきた。その結果得られた、世界からの評価は、色・金・欲にまみれた経済奴隷としての日本人の姿に象徴される」(『信仰告白の時代』) これを脱却するためには、まず、民主主義の基礎である「個人の尊厳」は、人間が神によって造られ、自由を与えられたことに由来する、という真実を思い出すことが大事です。 日本は、経済大国になった後、次の目標を見失いましたが、これからは、その自由を用いて世界の繁栄に貢献し、後世に残るような「精神の高み」をつくることを目指すべきです。 日本が国の根本にあるべき「宗教的な価値観」を取り戻し、「徳ある国家」をつくることができたならば、争いを続ける国々も「日本の首相の話を聞いてみたい」と思うようになり、キリスト教国とイスラム教国との対立を仲裁できるようになるはずです。 そのためには、まず、戦後体制から脱却し、「自分の国は自分で守る」誇り高い国家を取り戻すべきですし、その上に、世界を感化できるだけの精神的主柱が必要になります。 そうした理想を抱き、幸福実現党は、真の民主主義と徳ある国家を建設すべく、力を尽くしてまいります。 【参照】 ・AFP通信「米『テロとの戦い』の死者、約50万人に 調査報告」(2018.11.9) 50万人という数字の出所は「米ブラウン大学 ワトソン国際公共問題研究所」 ・ビルジル・ゲオルギウ(中谷和男訳)『マホメットの生涯』河出書房 ・大川隆法著『信仰告白の時代』 逡巡するトランプに、日本はイラン攻撃反対を伝えるべき【前編】 2019.06.22 逡巡するトランプに、日本はイラン攻撃反対を伝えるべき【前編】 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆トランプ大統領がイラン攻撃承認を撤回 6月20日にイランが米国の無人機を撃墜したことを発表し、トランプ大統領は、イラン攻撃をひとたびは承認しました。 しかし、その後、攻撃開始の10分前に撤回命令を出しています。 「攻撃への許可を出して30分以内に150人の死者が出る。それは好ましくない」 「(無人機撃墜と)釣り合いが取れていない」 21日のNBCインタビューでは、理性的に思い直したことを明かし、「私は戦争を望んでいない」と述べています。 ただ、同時に、戦争となれば、「(イランは)完全に破滅する」とも警告しているので、イラン攻撃については、予断を許さない状況が続いています。 ◆イランのハメネイ師が米国との対話に応じない理由 トランプ氏は外交ルートを通じてイランとの対話も模索していますが、ハメネイ師は応じていません。 イラン側は、「いかなる攻撃も地域的、国際的に重大な結果を招く」と返答しています。 こうした険しい姿勢となったことには、十分な理由があります。 米国は対外的な合意(イラン核合意)を「政権が変わったから」という国内の事情で破談にし、制裁まで課しているからです。 イスラエルの核を黙認しながら、イランの核を「悪」とみなす米国の矛盾に我慢して合意したのに、それを破棄されたハメネイ師は「面目丸つぶれ」です。 イラン側から見れば、とても、最高指導者が話し合いに応じられるような状況ではありません。 ◆イランは「ならずもの国家」? トランプ政権は、2017年に出した「国家安全保障戦略」で、イランを北朝鮮とともに「ならずもの国家」(the rogue states)と批判しました。 そして、2018年に就任した大統領補佐官(安全保障担当)のボルトン氏は、イランを「悪の枢軸」と呼んだブッシュ政権の頃の国連大使です。 現政権においてもイランは悪しき独裁国家にカウントされており、強硬派の閣僚は、攻撃の機会を伺っています。 ◆イランの最高指導者と、北朝鮮の金一族とは何が違う しかし、イランと北朝鮮の体制には、大きな違いがあります。 まず、北朝鮮では、金日成はスターリンや毛沢東の支援を得て、軍を編成しました。 そして、領土を奪い、人々に、社会主義と金一族を崇めるイデオロギー(主体思想)を強制しました。 これは、反対者が強制収容所に入れられる、スターリン型の独裁体制です。 ところが、イランの体制は、その成り立ちが違います。 イランでは、欧米の傀儡となり、イスラムを軽んじた皇帝(パフレヴィー2世)に徒手空拳の信徒が戦いを挑み、民族の伝統と宗教に根ざした国をつくりました。 この「イラン革命」の指導者がホメイニ師であり、今のハメネイ師は、後継者にあたります。 イスラムの場合、教えを解釈する高位の法学者は、生き方だけでなく、政治の指針を示します。 (イスラム教の場合、僧侶や牧師ではなく、教えを解釈する「法学者」が信徒の指導役となる) ハメネイ師が、ロウハニ大統領のように国民投票で選ばれないのは、その体制が、彼らの信じるシーア派イスラム教に基づいているからです。 これは、ローマ法王をキリスト教圏の住民投票で選ぶわけにはいかないのと同じことです。 その正統性は、彼らが、自分たちの信じる教えに基づいて国を立てたことに由来しています。 結局、イランでは、人々の支持を得た宗教運動の結果、国ができたのであり、金日成のように、軍隊によって人々を力づくで従わせたわけではありません。 また、北朝鮮に比べると、大統領選や議会選で国民が政治家を選べることも、大きな違いになっています。 イランの体制には、北朝鮮に比べると、十分な正統性があるのです。 ※シーア派イスラム教とイランの政治体制 シーア派では、ムハンマドの従弟のアリーが殺された後、教えの解釈を担う後継者(イマーム)が12代目まで続いたが、12代目が「お隠れ」してしまい、いつの日か「マフディー」(救世主)として帰ってくると信じられている。その救い主が帰ってくるまで、人々を導き、政治にも指針を示す役割を担うのが「法学者」。ホメイニ師やハメネイ師は、その法学者の最高位にあたる。 ◆イランの体制は抑圧的か イランの体制は、シーア派イスラムの教えのもとで、可能な限り、近代の政治制度を取り込んだものです。 これは、欧米から見れば「異質」な体制ですが、それだけで「悪」と決めつけるべきではありません。 また、イランの体制については、人権抑圧的だという批判が繰り返されています。 例えば、米国務省は、毎年、イランは信教の自由を迫害していると批判しています。 ただ、英米はもともと宗教弾圧を行ったパフレヴィー朝を支援していたのですから、これは、あまり説得力のない話です。 イランは女性の人権を抑圧しているとも、よく批判されますが、同国の大学は、男性よりも女性の学生のほうが多く、女性の社会進出は意外と進んでいます。 ロウハニ政権では、2013年8月に発足した時、11人の副大統領(大臣に相当)のうち、3人の女性が任命されました。 同国では、女性の政治家や経営者、スポーツ選手なども数多く活躍しています。 サウジアラビアで女性の運転が解禁されたのは、つい最近ですが、イランでは1940年代から女性の運転が認められていました。 人権面では、改善すべき点も残っていますが、「イラン女性が虐げられている」というイメージには、誤解も含まれているようです。 【参照】 ・産経ニュース「『戦争ならイラン破滅』トランプ氏がテレビインタビューで発言」(2019.6.22) ・同上「【中東見聞録】ハメネイ師、安倍首相への『伝言なき』メッセージ」(2019.6.22) ・鵜塚健『イランの野望 浮上する「シーア派大国」集英社新書 【ASEAN首脳会議】TPPがあればRCEPに力を注ぐ必要なし 2019.06.20 【ASEAN首脳会議】TPPがあればRCEPに力を注ぐ必要なし HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆ASEAN首脳会議 RCEPが主な議題か 6月20日から23日まで、タイのバンコクで、ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議が開催されています。 そして、22日の財相会議では、日本や中国、インドなどのアジア諸国が交渉を続けているRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の年内合意に向けた話し合いが行われます。 (※RCEPは、Regional Comprehensive Economic Partnershipの略) このRCEPは、日本と中国、韓国、インドとオーストラリア、ニュージーランドにASEANの10か国を足した16カ国でつくる経済連携協定です。 この広域FTAは、TPPに対抗したい中国と、TPPに参加できなかったインド等の思惑から生まれましたが、それが実現すれば、GDPと貿易総額で世界の3割を占める経済圏が生まれます。 それは、TPP11に匹敵する規模です。 しかし、このRCEPを主導しているのは、貿易の自由化が進んでおらず、TPPへの参加要件を満たせなかった中国とインドです。 そのため、RCEPは、TPPのように大きく関税を削減する協定ではないのですが、日本は、その規模の大きさに惹かれ、長らく交渉を続けてきました。 ◆広域FTAにおいても野心を露わにする中国 RCEPの交渉は、もともと18年内の妥結を目指していましたが、交渉は難航し、議論が19年にまで延長しています。 そして、最近は、中国がインド抜きのRCEP案を主張し始めました。 それだけでなく、19年4月には、ラオスで開かれた「ASEAN+日中韓」の会合で、インドとオーストラリア、ニュージーランドを除いた13か国で「東アジア経済コミュニティー」(EAEC)を推し進める構想を明かしました。 その折に提示された文書には、EAECの主要な協力分野に「FTAの構築を含む」と明記されていると日経が報じています。 (※EAECは、マレーシアのマハティール首相が1990年に打ち出した「ASEAN+3」の枠組み) 中国がこの時期に「ASEAN+3」を強調してきたのは、米国の「インド太平洋戦略」に協力する「印・豪・NZ」を排除し、中国主導の広域経済圏を目指すためだと考えるべきでしょう。 ◆TPP11があるのに、RCEPが本当に必要なのか? インドはもともと、大幅な関税削減には消極的なので、RCEPの交渉はなかなか進みません。 そして、中国は、インドを抜きにして、中国主導の経済圏をつくりたがっています。 そこで、問題となるのは、このRCEPに参加する意義が、どれだけあるのか、ということです。 ◆貿易交渉の専門家が評価した「RCEP」の中身 この問題について、元農水官僚の山下一仁氏は〈「中国」に惑わされず、RCEPよりTPP拡大を」〉と題した記事を公開しています。 (※山下氏は、GATTのウルグアイ・ラウンドでの交渉等を過去に担当した農政と貿易の専門家) その要旨は以下のとおりです。 ・RCEPは基準が緩く、ほとんど関税を削減せず、WTO以上のルールや規律も設定しないFTAなので、貿易の現状を大きく変えるものではない。 ・東南アジア諸国でTPP11とRCEPの参加国が重複するので、2つの関税、ルール、規則が錯綜して貿易が混乱する ・RCEPよりも貿易の自由度やルール面でレベルの高いTPPでアジア太平洋地域の経済を統合すべき ・質の高いFTAにならないRCEP交渉に貴重な人的資源を割くよりも、TPPの拡大に傾注すべき この記事には〈参加国のGDP規模を重視する日本政府。大事なのは「規模」より「規律」だ〉という副題がつけられていました。 これは、極めて理にかなった主張です。 すでにTPPがあるのに、それを生かさず、中国の影響が強い経済連携に入ることに力を浪費するのは、筋が通らないからです。 ◆RCEP交渉には「見切り」をつけよう RCEP交渉は2012年に始まりましたが、いまだに終わりが見えません。 しかし、すでにTPPは成立しているので、日本は、RCEP交渉よりも、こちらを活かしたほうが懸命です。 TPPに入っていないASEAN諸国に参加を促し、インドのような難しい国とは別個に交渉すればよいわけです。 日本には、日米貿易交渉や日露平和条約の締結、台湾との関係強化といった、重要な懸案事項が数多くあります。 RCEP交渉にいつまでも力を費やさず、こちらには見切りをつけるべきです。 幸福実現党は、主要政策において「中国主導の経済連携への参加は支持しません」と主張してきました。 今後も、米国との関係を重視しながら、アジアの自由主義国との貿易拡大を図り、日本経済とインド太平洋地域の発展を目指してまいります。 【参照】 ・日経電子版「インド外しRCEP、中国が提案 交渉停滞受け」(2019/6/18) ・山下一仁「中国」に惑わされず、RCEPよりTPP拡大を -参加国のGDP規模を重視する日本政府。大事なのは「規模」より「規律」だ-」(2018.07.11、キャノングローバル戦略研究所HP) 【米・イラン対立(後編)】安倍外交の失敗と日本がやるべき三つのこと 2019.06.19 【米・イラン対立(後編)】安倍外交の失敗と日本がやるべき三つのこと HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆イランは、米国がいうほど「悪い国」なのか? 昔、ブッシュ政権が「悪の枢軸」と呼んだように、米国は、長らくイランを敵国とみなしてきました。 確かに、米国と抗う中で、イランがミサイル開発などで北朝鮮や中国とのつながりを深めたのは事実です。 しかし、この両者には、決定的な違いがあります。 イランは、北朝鮮や中国とは違い、神を信じる人々が集う国です。 人権面では問題もありますが、選挙が行われ、一定の範囲で民意が政治に反映され、大統領は選挙で選ばれます。 このあたりは、北朝鮮や中国との大きな違いです。 イランの体制は、国民の大多数が信じるイスラム教シーア派に根差しています。 彼らが自分たちの宗教に根差した体制をつくることは、ごく自然な動きであり、それを「欧米と違うから」というだけで、悪だと決めつけることはできません。 ◆「アメリカの正義」には何が足りないのか イランでは「ホメイニ革命」の頃、多くの民衆が米国の傀儡政権を拒絶し、イスラムに基づいた独自の国を建てる道を選びました。 そのため、米国がイランの現政権を打倒し、武力で新政権を立てた場合、イランの民には、昔の傀儡政権の時代への逆戻りにしか見えません。 その場合は、イラク以上に激しい抵抗運動が起きることが予想されます。 イランの体制にも、多々問題はありますが、だからといって、それで米国がイランに傀儡政権を立てる正統性が生まれるわけではありません。 なぜかと言えば、国家は、単なるメカニズムではなく、歴史と伝統、宗教に根ざした共同体だからです。 人々が価値観を共にし、力を合わせ、それを実現しようとする中で国家が生まれ、それが世代を超えて継承されます。 だからこそ、米国が勝手に持ち込んだ価値観を受け入れる義理はないし、それを子供の代にまで受け継ぐいわれもないのです。 これが分からないアメリカは、「民主主義」という美しい言葉を並べて政権をつくり、イラク戦争やアフガン戦争の「統治」に甚大な犠牲を払いました。 結局、武力のみで自国に都合の良い政権を立てられるという発想には、根本的な欠陥があります。 それは、歴史の浅い国が陥りがちな間違いなのかもしれません。 ◆成果のない安倍首相のイラン訪問 今回、安倍首相がイランを訪問し、米国とイランとの間を取り持とうと試みました。 しかし、その結果、二隻の日本のタンカーが攻撃を受けました。 このパターンは、2015年に安倍首相が中東を訪問した後に、日本人がイスラム国に人質に取られた事件と似ています。 安倍政権はイラン訪問で日本の存在感を高められると見たのですが、結局、2015年の時と同じく、イスラム勢からの「返答」は厳しいものでした。 そうなったのは、政治・経済的な利害関係よりも上位にある価値観がなかったからです。 米・イラン対立の奥には、イスラム教とキリスト教を中心とした二大文明の衝突がありますが、そこに「石油のバイヤー」でしかない日本の首相が「トランプのお友達」としてノコノコと出ていった結果、「アメリカの犬、帰れ」という厳しい反応が返ってきました。 日本に、二つの宗教の相克を超える高度な価値観がない限り、仲裁などできるはずがありません。 ◆日本がやるべき三つのこと 最後に、今回のタンカー攻撃が日本に示唆することを整理してみます。 まず、第一に、幸福実現党が主張してきた原発再稼働の必要性が明らかになりました。 戦争などでホルムズ海峡から原油を送ることが無理になれば、日本のエネルギー供給も危険になるため、原発の必要性が高まります。 そうしたリスクがあるのに、原発を止めてきた政府の方針には間違いがあるわけです。 大川総裁は、2010年6月に日本のタンカーが攻撃される可能性に警告を発したことがあります(大川隆法著『アダム・スミス霊言による新・国富論』P20)。 幸福実現党は、立党時からシーレーン防衛の重要性を訴えてきたのですが、民主党政権が止めた原発は、いまだに再稼働がままならない有様です。 第二は、イラン攻撃には反対すべきだということです。 トランプ政権内に、それを望むかのような動きもありますが、日本政府ははっきりと反対すべきでしょう。 (※限定攻撃であっても、エスカレートすれば大規模化の可能性は残る) 前述のように、米国のイラン攻撃には十分な大義もなく、規模が拡大すれば米国に甚大な負担をもたらすからです。 幸福実現党・大川隆法総裁は、6月14日の講演会(「されど不惜身命!」)において(※)、イランへの「攻撃が結果的に非常に大きな被害を生むし、日本のエネルギー供給も危険になる」と警告しました。 また、アメリカとの同盟関係を大切にしつつも、日本が、独立国家として言うべきことは言う国家にならないといけないと提言しています。 この「独立国家」となるということが、三番目にやらなければいけないことです。 結局、日本はイランのことをあれこれ言う前に、マッカーサー憲法に基づいた体制を立て直さなければいけません。 幸福実現党は、立党時に、綱領において「大国日本の使命」を果たすことをうたいました。 「日本は宗教的寛容の精神の下、宗教が共存共栄し、人々が幸福を享受した歴史を有しています。こうした自由と寛容の精神に基づく平和を世界レベルで実現していくことこそ、『大国日本の使命』です」 この綱領の通り、戦後体制を脱却し、日本に新たな精神的主柱を立てるべく、力を尽くしてまいります。 ※幸福実現党・大川隆法総裁の講演については「幸福実現NEWS 特別号 6月15日『香港の危機は他人ごとではない 「正義」を世界に発信できる日本へ』を参照 https://info.hr-party.jp/files/2019/06/17114027/fk3ylfc2.pdf 【米・イラン対立(前編)】米軍のイラン攻撃はあるのか? 2019.06.18 【米・イラン対立(前編)】米軍のイラン攻撃はあるのか? HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「タンカー攻撃」その後 中東のホルムズ海峡付近で日本と台湾のタンカーが攻撃され、米国とイランの間で緊張が高まっています。 トランプ大統領やボルトン補佐官、ポンペオ国務長官らが「イランの犯行だ」と主張するなかで、イランは攻撃への関与を否定。 事実や状況に基づいた証拠がないと米国に反論しました。 イランを警戒する米国は空母打撃群とB52爆撃機を中東に送っており、米軍1000人の増派も決まったので、今後の動向が注目されています。 ただ、この問題の結論を先に述べれば、日本は、イラン攻撃には反対すべきです。 イラン攻撃は、戦火の拡大を招く危険性がありますし、米国側の正当性も怪しいからです。 この攻撃には「『アメリカの犬』アベ帰れ!」という意図が含まれていたとみるべきだと考えます。 ◆本当にイランが犯人なのか? ポンペオ国務長官は、イランを犯人と断定した際には、以下の四点を主張しました。 ・機密情報(※原則非公開) ・使用された兵器や攻撃に必要な専門知識の程度 ・最近のイランによる類似したタンカー船攻撃 ・これほど高度な攻撃を実行できる勢力はほかにない ただ、これは、推測の域を超えていません。 米国側は、イラン海軍がタンカーから機雷を外す画像などを公開し、証拠隠滅をはかったとも述べました。 その通りなら、イランは首脳会談をしながら日本のタンカーを攻撃し、その後に自国の海軍で消火し、救助したことになります。 しかし、イランに、そこまで周到に日本をだまし撃ちしなければいけない理由があったのでしょうか。 日本はイランと深刻な対立関係にあるわけではありません。 その意味では、米国の主張には、大きな疑問点が残っています。 イラン海軍が、救援活動の延長として危険物を処理しただけなのかもしれないからです。 ◆米国とイランの大規模戦争はあるのか この案件で気になるのは、米国とイランとの間で武力紛争などが起きるかどうかです。 しかし、両国の軍事力の差や近年の中東情勢を考えると、これだけで大きな戦争を起こすのは、それなりに困難です。 米国にも、イランにも、それぞれ、大戦争をしがたい理由があるからです。 ◆イランと米国の戦力差は歴然 まず、イランが米国と大規模な戦争ができないのは、軍事力の差が大きすぎるからです。 そもそも、核兵器のないイランは核大国の米国には勝てません。 彼らの弾道ミサイルは中距離弾(シャハブ)でも中東全域と欧州の一部にしか届かないので、狙えるのは、イスラエルや中東の米軍基地などにとどまります。 イランがミサイルを撃っても、米国は多数の機動部隊を集めれば、千発以上のトマホークと爆撃でイランの要所を攻撃できます。 (※イラク戦争では空母6隻を中心に機動部隊が展開した) 開戦となれば、サイバー攻撃やミサイルで空港や通信施設が破壊されます。 イランにはホメイニ革命前に米国が売った戦闘機(F14やF4)やソ連製戦闘機(MiG29やSu24等)やソ連製防空システム(S300)があり、それなりの戦力ですが、これで、今の米空軍に対抗することはできません。 米国のステルス戦闘機(F22)や高度な情報ネットワークを備えた戦闘機部隊(空母はF18を運用)には勝てず、制空権は米国のものになります。 (※米空軍はデータリンクを用いて飛行隊の全機が敵情報を共有して戦うが、イラン軍は個々の戦闘機がそれぞれ敵を見て戦うだけ) イラクより時間はかかりそうですが、結局、米国は爆撃で陸上戦力を滅ぼしながら、陸上部隊を展開することができます。 本当にイラン打倒を図ったら、米軍が戦闘機や攻撃ヘリでイラクの戦車を狩っていったのと同じ光景が繰り返されるでしょう。 イラン海軍は潜水艦で奇襲し、駆逐艦やミサイル艇でペルシャ湾を荒らすことはできますが、規模が小さいので、その後に米軍に一掃されます。 イラン軍は、米国を核で威嚇することも、通常戦力で勝つこともできないのです。 ◆米国はイランに勝てても「治める」ことはできない しかし、だからといって、米国は安易にイランと戦争できません。 米国には、イラク戦争の手痛い体験があります。 米軍はイランを打倒できますが、戦後統治には重大な痛みが伴うことが、イラクやアフガニスタンで実証されました。 米国はフセインを打倒後、統治を楽観視しましたが、イラクは日本とは違い、天皇のような秩序の中心もなく、議会政治をきちんと運営してきた歴史もありませんでした。 そのため、戦後は統治不全地域となり、宗教紛争や反米闘争が相次ぎます。 約4500人の米軍人が死に、統治まで含めた国費は300兆円以上にのぼりました。 (※米経済学者スティグリッツ氏はその戦費を3兆ドルと試算) 「独裁者から解放されれば、民衆は喜んでついてくる」という幻想は無残に打ち砕かれ、ブッシュが率いた共和党政権は多くの国民の支持を失ったのです。 ◆米・イラン対立 ありそうなのは「限定攻撃」か? 結局、イランには米国と戦える戦力はありません。 また、米国はイランに勝てても、そのあとに「治める」ことができません。 イラク統治の崩壊の結果、生まれたものは「イスラム国」でした。 その繰返しを防ぐ方法を持たないまま、アメリカがイランに大きな戦争をしかければ、ブッシュ政権の二の舞になります。 トランプ大統領が「イランとの戦争は望まない」と言っているのは、そうした経緯があるからです。 そのため、今回の米国とイランの緊張関係は、まずは政治闘争の次元で進んでいくはずです。 トランプ政権が動いた場合、まずは、巡航ミサイルで基地を狙うといった限定攻撃がなされる可能性が高いといえます。 ◆紛争拡大の危険性があるので、日本はイラン攻撃に反対すべき しかし、限定攻撃であろうとも、エスカレートの危険性はあります。 武力衝突は、事態が制御不能になるリスクを伴うので、日本はイラン攻撃に反対すべきです。 攻撃がなされれば、その応酬として、イランが原油の輸送ルートであるホルムズ海峡を狙う危険性が高まります。 また、イランは宿敵イスラエルとの戦いや、イスラムの盟主を巡るサウジアラビアとの戦いを続けていることにも注意が必要です。 (※ペルシャ民族の雄であるイランとアラブ民族(諸国)との戦いも数千年の歴史がある。ペルシャ帝国の頃から両者の関係は険悪) イスラエルもサウジも自国の戦いに米国を巻き込みたがっているからです。 火に油を注ぐ危険性があるので、大局を見るならば、日本は、タンカー攻撃が仮にイラン軍だったとしても、米国のイラン攻撃には反対すべきです。 雨傘革命と同じように、日本は香港を見捨てるのか 2019.06.16 雨傘革命と同じように、日本は香港を見捨てるのか HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆雨傘革命のリーダーが来日 6月10日に香港の雨傘革命のリーダーだった周庭(アグネス・チョウ)さんが東京で記者会見を行いました。 この会見で、周庭さんは、中国本土への容疑者引渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案を「香港返還後、最も危険な法案だ」と批判。 9日に香港で103万人(主催者発表)がデモに参加したことを取り上げ、改正案の撤回を訴え、国際社会に支援を呼びかけました。 ◆「逃亡犯条例」改正 どこまで影響が及ぶ? 「逃亡犯条例」の改正案は、香港が犯罪人引渡し協定を締結していない国や地域に対して、要請に基づいた容疑者の引渡しを可能にします。 香港は米国などの20カ国と引渡し協定を結んでいますが、中国本土やマカオ、台湾との間には結ばれていないので、立法会(議会)に改革案が提出されました。 しかし、市民の多くは、北京政府寄りの政治が続く現状では、通常の刑法犯だけでなく、民主活動家らが「容疑者」として中国に引き渡されてしまうと危機感をつのらせました。 周庭さんは、会見で、条例改正を「香港が返還されてから最も危険な法案だと思います」と批判。その影響は、香港訪問者にまで及ぶことを指摘しました。 (容疑者とされた)「香港人と香港訪問者、観光客や記者などが行政長官の当為のもと、中国に引き渡されることになります」 ◆香港が、今まで、中国に容疑者を引き渡さなかったのはなぜ? もともと香港が中国への犯罪者引き渡し協定を結んでいなかったのは、共産党が国を支配し、三権分立もない独裁国家では、容疑者の人権が守られない可能性が高いからです。 周さんは、会見で、この部分を強調しています。 「中国の司法制度はもともと香港と全然違います。中国は法治社会ではなく、公平・透明な裁判がある国ではありません。中国では恣意的な拘束、逮捕、拷問が常にあります」 「中国共産党政権が気に入らない人を、特に人権状況の改善を求める活動家や人権弁護士がしばしば国家政権転覆罪などで逮捕されたり収監されたりしています」 「中国で逮捕された人たちは家族や弁護士に会えないことや、虐待されることも少なくありません」 「中国に司法の独立と三権分立もありません。中国の司法機関は、中国政府と中国共産党政権の政治的道具だと言っても過言ではないのです」 ◆香港の「一国二制度」崩壊の危機 ここ数年、北京政府の圧力は強まり続けているので、今回の抗議デモは、香港の自由を守るための最後のチャンスになるかもしれません。 2014年の雨傘革命の後、中国政府は香港への統制を強め、2017年にはキャリー・ラム新行政長官が就任。 新長官が推進する「愛国教育」の強化に対する反対運動が起きました。 18年3月に周庭さんは議会の補欠選挙に出ようとしたのですが、政府は「香港は中国の不可分の領土」と定めた香港基本法違反を理由に、立候補を認めませんでした。 さらに、19年4月には、雨傘デモの発起人である戴耀廷・香港大学准教授ら9人に対して道路占拠などを共謀・扇動した罪で有罪判決が言い渡されています。 こうした自由の圧迫が進む中で、周庭さんは、逃亡犯条例だけでなく、今後、香港基本法23条に基づいて国家安全条例がつくられる危険性があることを指摘しました。 (将来に)「香港人は国家安全法に違反したとして大陸に引き渡され、裁判を受けることになる可能性がある。そうなれば、政権により露骨に政府に対する反対意見を完全に消し去ることができる。香港は完全に中国になってしまうのです」 ◆雨傘革命の時と同じく、日本は日和見なのか 「香港は私たちの家です。香港人は今、自分の家を守るために一生懸命抵抗しています。それは私達自身のためだけではなく、これから外国から来る人たちのためにもです」 周庭さんはそう述べ、各国に支援を呼びかけましたが、香港の状況は悪化しています。 6月13日にはデモ隊の一部と警官隊が衝突。警官隊がゴム弾などで鎮圧に乗り出し、70名以上が負傷したと報じられました。 行政長官は「組織的な暴動」とデモを非難し、自由主義国政府の指導者は相次いで自由の擁護を表明しました。 「市民や国際社会の友人たちの懸念に耳を傾け、立ち止まってこの議論を呼んでいる改正について熟慮する」(ジェレミー・ハント英外相) 「欧州各国は香港市民たちの懸念を共有している」「平和的な集会と意見表明の自由は尊重されるべきだ」(フェデリカ・モゲリーニ EU外務・安全保障政策上級代表) 「台湾や世界中の志を同じくする友人たちが支持していることを覚えていてください」(蔡英文・台湾総統) 日本では、河野太郎外相が「平和的な話合いを通じて、事態が早期に収拾され、香港の自由と民主が維持されることを強く期待します」と述べています。 しかし、日本が他人事のように「期待」したところで、もっと主要国が力強く支援しない限り、当局がデモ隊の要望を聞き、条例案を取り下げることなど、あろうはずもありません。 ◆幸福実現党は香港の自由を支持する G20を控えた安倍政権は、日中友好を掲げているために、香港市民の抗議活動を支援できません。 これは、2014年の雨傘革命の時と同じです。 しかし、過去に日本や主要国が十分な支援をしなかった結果、北京政府の統制が強まり、香港の自由は重大な危機にさらされました。 そのため、幸福実現党は、6月13日に党声明において、香港の自由を守る運動への支援を表明しました。 「日本政府は“八方美人外交”を改め、中国による覇権主義を抑止するという立場を明確にしながら、米国、英国などと連携し、香港の自由を守るべく国際世論の形成に尽力すべきです」 今後、日本政府や各党の議員などの政治関係者、国民の皆様に、香港の自由を求める運動を支援すべきことを訴え続けてまいります 【参照】 ・日本記者クラブ「アグネス・チョウ(周庭)香港デモシストメンバー 会見」(2019.6.10) https://www.youtube.com/watch?v=U8qpLjbKjEg ・BBC JAPAN「香港デモ72人負傷 行政長官は『組織的な暴動』と非難」(2019.6.13) ・幸福実現党「香港での大規模デモをめぐって(党声明)」(2019.6.13) https://info.hr-party.jp/press-release/2019/9181/ すべてを表示する « Previous 1 … 24 25 26 27 28 … 98 Next »