Home/ やない 筆勝 やない 筆勝 執筆者:やない 筆勝 幸福実現党総務会長兼出版局長 東日本大地震から3年――被災地の復興事業と課題 連載第1回 2014.03.16 文/幸福実現党 総務会長兼出版局長 矢内筆勝 《復旧から復興へ》 東日本大震災から3月11日でちょうど3年になりました。3月9日から12日までの3日間、岩手、宮城県、福島県の被災地を視察してきましたので、何回かに分けて、その報告をさせて頂きます。 この震災で亡くなった方は、1万5884人、行方不明が2633人、そして震災後に亡くなられた方(震災関連死)は実に2916人に及びます。また、福島原発の事故の影響もあって、実に現在でも26万7419人の方が故郷を離れて、今でも避難生活を強いられています。 震災で亡くなられた方々とご遺族に、心よりの哀悼の意を捧げさせて頂くと共に、困難な生活を送っておられる方々が、1日も早く普通の生活を取り戻すことができるよう、今後も幸福実現党一同、精一杯努力して参る所存です。 ◆復旧から復興へ さて、私が最初に被災地に入ったのは、ちょうど3年前、震災の約1か月後でした。当時はまだ東京から被災地に入るルートがなく、秋田空港からレンタカーを借りて、岩手県の三陸沿岸、そして宮城県の石巻市に入りました。 津波の被災地はまだ電気もガスも水道もなく、被災された方々が小学校の体育館などで、救援物資による避難生活を送り、自衛隊が懸命に遺体の捜索活動をしていた時です。 津波の破壊力はすさまじく、一体は文字通りの「瓦礫の山」で、辛うじて被災地への主要な道路の瓦礫が取り除かれ、車が走れるようになっている段階でした。 今回改めて、岩手、宮城、福島県の被災地を視察して実感したのは、「瓦礫の撤去作業は概ね進んでいる」ということです(しかしながら、例外として福島県がありますが、そのことは次回、ご報告します)。 ◆現在の被災地の風景 被災地を車で走ると、いたるところに一面草の生えた原野で、その中に建物の残骸や鉄骨だけが残っている風景が広がっています。そこは大抵、以前の住宅地や市街地です。つまり、3年目にしてようやく、津波によって完全に破壊された地域の「瓦礫の片づけがひと段落した」というのが、被災地の現状です。 岩手県大船渡市 http://box.c.yimg.jp/res/box-s-pvff6c7is323i4sfpz4llswnvi-1001?uid=071f4796-e607-4473-8dba-c7b1fda51009&etag=51934860139473086088212 岩手県陸前高田市 http://box.c.yimg.jp/res/box-s-pvff6c7is323i4sfpz4llswnvi-1001?uid=a6016618-526d-4da7-b7b8-09cae700d24b&etag=123f388f139475157675738 福島県南相馬市 http://box.c.yimg.jp/res/box-s-pvff6c7is323i4sfpz4llswnvi-1001?uid=b68a3be0-0ada-49c2-8090-b9d0f515b267&etag=56155f67139443004784610 ◆これから『復興』に取り組む段階 NPO法人HUGが発刊する『3years 復興の現場から、希望と愛を込めて』によれば(2014年1月の復興庁発表のデータから)、主な被災3県(岩手、宮城、福島)の復興の状況は以下の通りです(http://p.tl/saV3)。 瓦礫の処理=91%、病院=93%、介護施設=83%、道路99%、学校94%、鉄道89%。 そうしたインフラの復旧とは対照的に、仮説住宅に暮らす人=10万2650人、復興住宅=2%、中小企業の売上=37% 特に、震災で避難された(させられた)方々は、震災直後の約47万人から、約26万人と約半数になったものの、うち48%が民間住宅で、今なお37%が仮設住宅での暮らしを余儀なくされています。 少し荒削りな表現になってしまいますが、これらの数字や現地を見る限り、被災地は3年目にしてようやく、「最低限の『復旧』がようやく終わりに近づき、これから『復興』に取り組む段階に近づいた」状況にあると言って良いでしょう。 そのあまりに遅い復興の原因や理由、今後の対策などについて、これから何回かに分けて探って行きたいと思います。 (つづきは次号) 「海洋大国・日本」―新たな国家ビジョンと安全保障【連載第10回】(最終回) 2014.02.28 文/幸福実現党総務会長兼出版局長 矢内筆勝 《日本よ、誇りを取り戻し、新文明創造の気概を持て!》 ◆日本の国防 今回の論考では、日本がいかに膨大なエネルギーと鉱物、食料資源に恵まれた夢のような国家であるのかを紹介しました。 そして、その「宝の山」を、隣国中国が凄まじい勢いで軍事力を増強させ、奪取せんとしている事実を明らかにし、如何にすれば、その国家的な危機から、日本が国家と、国民の生命、財産、安全を守れるのかを述べてきました。 結論として述べておきたいのは、21世紀のアジアと世界の平和と安全、自由と民主主義を守るために、日本人は今こそ、本来の自信と誇りを取り戻し、自らの使命と責任を果たさなければならない、ということです。 ◆日本の誇りを取り戻せ! 戦後日本人は、アメリカの占領政策の一環として、日本は戦前アジアを侵略した悪い国家であるという「自虐史観」を植え込まれてきました。 その結果、日本はかつての自信と誇りを失い、安全保障すら他国に委ねて経済的な繁栄のみを追い求めるという、属国的な「商人国家」の道を歩んできたのです。 しかし、そうした「日本悪玉説」は、占領国や日本を憎む一部の周辺諸国のプロパガンダに過ぎません。かつて世界は、16世紀から500年もの長きにわたって、白人列強の人種差別と植民地政策によって蹂躙されていた歴史があります。 白人優位説のもと、有色人種は人間として扱われず、まるで牛馬のように使役され、奴隷にされ、虐殺され、収奪されていました。 そうした暗黒の時代を打ち破るべく、立ち上がった誇り高き国家、国民こそ、日本でした。そのために先の大戦では実に300万人もの国民の尊い命が失われましたが、その結果、東南アジアの植民地は欧米の植民地から独立できたのです。 これを機に世界は人種差別を撤廃へ舵を切り始めました。人間が人種を問わず平等に扱われるという理想が実現したのです。 ◆日本人の使命 この「人類の平等」という日本人の確信は、数千年の歴史の中で培われた仏神への信仰と、人間がその仏神によって創られたという、「仏の子」「神の子」であることへの、確信から生まれたものです。 日本人は、そうした仏神への信仰と、そこから生じる普遍的価値を実現するために、武士道精神を持って、身を挺して戦い、新しい時代を拓いたのが、明治維新以降の日本の真実の歴史です。 そして今、世界の覇権大国であったアメリカが財政・国内問題によって、世界の警察を止め、その影響力を急速に失いつつある今、時代は再び、日本がアジアの自由と繁栄の擁護者、盟主として、新しい使命を果たすことを求めています。 その「使命」が如何に大きなものであり、仏神の意を受けたものであるか--それは、この時期に合わせたように、国連海洋法条約が制定され、日本の排他的経済水域内に、他国から見れば垂涎の的以外の何ものでもない、膨大なエネルギー資源の存在が明らかになってきたのです。 ◆太陽の昇る国、日本 そうした日本の歴史的使命の観点に立って考えれば、眼前に迫る中国の脅威も、日本が独立国家として目覚め、国家としての気概と武士道精神を取り戻すために立ち現れた「砥石」に過ぎません。日本を「本物のリーダー国家」たらしめるために、天が与えた試練であると捉えることができます。 日本はいよいよ、戦後に捏造された自虐的で捻じ曲げられた歴史観を払拭し、真実の国家と民族の誇りと自信を取り戻さねばなりません。 そして一国平和主義ではなく、アジアと世界のために貢献するという本来の使命を自覚して、雄雄しく立ち上がらなければならない秋(とき)を迎えているのです。 「この国に再び日を昇らせて、世界の太陽とせん」(『 天照の御教えを伝える 』 大川隆法著 幸福の科学出版) 日本が再び「太陽の昇る国」として、光輝く時代を創るために、必要なエネルギーや資源も、国際政治の舞台も、そして方法論もすでに与えられています。 あとは、「やるか、やらないか」――私たち日本人一人ひとりの意識と自覚、そして行動にかかっているのです! 「海洋大国・日本」―新たな国家ビジョンと安全保障【連載第9回】 2014.02.23 文/幸福実現党総務会長兼出版局長 矢内筆勝 《海洋開発と「太平洋自由連合」構想》 前回は、国防の面で、中国のミサイルから日本を守るためには、具体的にどのような「抑止力」が必要か論じましたが、今回は外交の側面から「海洋開発」を見据えた「太平洋自由連合」構想について紹介します。 ◆海洋開発と「太平洋自由連合」構想 まずは、日本は早急に日本の領海、排他的経済水域内の資源とエネルギーの調査・開発を、国家プロジェクトとして、総力を挙げて推進することです。 日本はこれらの海底に眠るエネルギー・資源を世界に先駆けて開発し、新産業としての海洋資源産業を立ち上げ、「資源大国日本」へと変貌を遂げなければなりません。 日本は海洋資源調査船や地球深部探査船、海中ロボットなどにおいては、世界屈指の高い技術力も有しているものの、これまで資源を海外から輸入に依存していたために海洋資源開発技術において、欧米に大きく水をあけられています。 そこで今回は、技術開発や安全保障強化の観点から、日本の領海、排他的経済水域内と太平洋での、日本とアメリカを中心とした環太平洋諸国との共同開発プロジェクトを提案します。 日本単独の開発だけでなく、広く日本の海洋権益が及ぶ海域での海洋開発に、アメリカやオーストラリア、ASEAN諸国の外国企業に事業への参加と投資を呼び掛け、「自由主義先進国との共同プロジェクト」とすることです。 ◆南満州鉄道の教訓 かつて日露戦争直後に、満州の権益をめぐって、アメリカの鉄道王ハリマンが、日本に南満州鉄道の日米共同経営を提案してきました。 一旦は、首相・桂太郎、元老・井上馨、同じく伊藤博文、財界の渋沢栄一らが協同経営の予備協定まで結びましたが、当時の外相・小村寿太郎が猛烈に反対し、同協定は破棄されました。 これが、アメリカの怒りを買って、日米の亀裂を生み、その後の排日運動や日英同盟の破棄、日米戦争へとつながっていったのです。 上智大学名誉教授の渡部昇一氏は、このハリマン事件について、「もし、『ハリマン構想』がそのまま実現していたら、その後の日本の運命は大きく変わっていたであろう」と述べています。 (『まさしく歴史は繰りかえす―今こそ「歴史の鉄則」に学ぶとき』 渡部昇一著 クレスト社) 日露戦争でロシアに勝ったとはいえ、中国大陸からロシアの勢力が消えたわけではなく、ロシア軍はなお北満州に展開し、南下の機会を狙っていました。 この状況的をみても、日本一国で南満州鉄道を維持するのは、軍事的にも財政的にも大きな負担がかかります。もし、ロシアが南満州を狙って南下しようとすれば、アメリカはロシアに圧力をかけるでしょう。つまり日米合弁で鉄道経営をすることは日本の「安全保障」にもつながるのです。 アメリカにとっても『ハリマン構想』は意義あるものでした。なぜなら当時、シナ大陸に進出していたのはイギリス、フランス、ドイツ、日本といった国々であり、アメリカは大陸に利権を有していなかったからです。 『ハリマン構想』を日本が受け入れた場合、賛成外交面からみても、アメリカは日本との友好関係を重視せざるを得ません。 ◆環太平洋自由主義諸国との「防衛と繁栄のための共栄圏」構想 当時の「満州」を「南シナ海、東シナ海、西太平洋」に、当時の「ロシア」を「中国」に置き換えれば、状況は現代も同じです。 中国の狙う「資源の宝庫」を、可能な限り、日米とアジア諸国が共同参加する開発プロジェクトにすることで、一帯を、アメリカを引き込んだアジアと環太平洋自由主義諸国との「防衛と繁栄のための共栄圏」とすることが可能となります。 次回最終回では、これまで論じてきたことを踏まえて「日本よ、誇りを取り戻し、新文明創造の気概を持て!」と題してお送りします。 「海洋大国・日本」―新たな国家ビジョンと安全保障【連載第8回】 2014.02.14 文/幸福実現党総務会長兼出版局長 矢内筆勝 《海洋国家日本の国家戦略と安全保障》 ◆「報復的攻撃能力」の具体策 前回は、日本に向けられた中国のミサイルから、日本を守るために必要なものが「抑止力」であることを述べました。 その中でも最も確実なものは、中国が日本を攻撃すれば、それ以上の損害を与えることができる「報復的攻撃能力」であることを明らかにしましたが、今回は、その「報復的攻撃能力」について具体的に論じます。 前回ご紹介した社会科学者の北村淳氏は、中国のミサイルから日本を守るために必要なものは、「中国の戦略要地をピンポイント攻撃できる長射程ミサイル(中距離弾道ミサイル・長距離巡航ミサイル)の配備である」と提言しています。 「具体的には、アメリカから各種トマホーク巡航ミサイルを必要数購入すれば、それらを海上自衛隊艦艇に配備した瞬間から、強力な報復攻撃力すなわち抑止力を、自衛隊が独自に保有することになる」 日本がもし独自に巡航ミサイルを開発するには膨大な時間と予算がかかりますが、「トマホークミサイル」なら、現有の日本の艦船や潜水艦への装着が可能です。 すでにイギリス海軍がアメリカから輸入しているため、日本も調達は可能であり、国内外の理解も得やすいからです。 日本は中国の長射程ミサイルへの抑止力強化のため、まずトマホークを米国から数十基程度購入し、ミサイル駆逐艦や潜水艦に配備すべきです。 価格は一基200万ドル(約2億円)程度で、射程も1250キロから最大3000キロと、日本を狙う中国の基地を攻撃するのに十分です。 それによって、時間を稼ぎ、その後、国産の弾道ミサイルや長距離巡航ミサイルを開発し、合わせて原子力潜水艦や空母の建造を進め、より強固な抑止力と防衛体制の強化を進めればよいのです。 特に、日本近海や東シナ海には、水深1万メートルもの深い海溝があります。 長期間、燃料補給なしで稼動できる原子力潜水艦を3隻程度所有し、そこにトマホークを積んで潜航させておくだけで、中国への強力な抑止力となります。原子力潜水艦だけなら一隻1500億円程度で配備できるのです。 ◆「核保有」の国民的議論を さらに日本が最も警戒しなければならないのは、中国が数百発から数千発保有しているとされる核兵器を背景に、日本を恫喝するシナリオです。 今の中国共産党や中国軍の幹部の中には、長年の反日教育によって、「日本に対する核攻撃を躊躇しない」という空気すら確実に存在しています。 日本は今、中国の核攻撃への抑止力を真剣に考えなければならない時を迎えていると言わざるを得ません。その選択肢の一つとして、私は、日本も「核保有」を真剣に議論すべきであると考えます。 日本が「核保有」に関する国民的議論を喚起するために、わが国が選択可能な核抑止力の選択肢を、3つ提示してみましょう。 (1)非核三原則の撤廃 この原則は日本の「国是」のように受け止められているが、そもそも国会答弁に基づく政策方針にすぎず、現行憲法も核保有を禁ずるものではありません。この非核三原則を撤廃すれば、日米同盟が強固であれば、それは自動的に、米軍による在日米軍基地への核持ち込みが「潜在化」します。 これは、日本への核攻撃がすなわち、米軍への核攻撃となり得るがために、アメリカとの全面核戦争を望んでいない中国にとって、大きな核抑止力として機能するでしょう。 (2)核(ニュークリア)シェアリング すでに北大西洋条約機構(NATO)加盟国のベルギー、ドイツ、イタリア、オランダが、アメリカとの間で行っているもので、平時はその国に駐留するアメリカ軍が保管している核兵器を、有事の際に必要に応じて配備国へ譲渡し、使用権限を与えるというものです。 (3)核の独自開発 国内世論に加え、国際的にも国連の核不拡散条約に加盟しているため、現在ではハードルが高いといわざるを得ません。しかし、第一と、第二の方策を選択した上で、常に核の独自開発の可能性と選択肢を残しておくことが、国家戦略上有効です。 その意味で、2013年9月 国産ロケットは「イプシロン・ロケット」(宇宙航空研究開発機構が開発)の打ち上げ成功は、安全保障上も大きな成果と言えるでしょう。 衛星ロケットの打ち上げ技術と弾道ミサイルの技術は、ほぼ同じであり、これによって日本は一基わずか38億円のコストと一週間の時間で(イプシロンのコストと組み立て日数)打ち上げられる、いつでも弾道ミサイルに転用が可能な技術を手に入れたことになります。 以上、日本の国防面を論じましたが、次回は、外交面から海洋開発と「太平洋自由連合」構想について紹介します。 「海洋大国・日本」―新たな国家ビジョンと安全保障【連載第7回】 2014.02.07 文/幸福実現党総務会長兼出版局長 矢内筆勝 《海洋国家日本の国家戦略と安全保障》 今回と次回二回にわたり、迫りくる中国の軍事的な脅威に対して、日本はどのように防衛予算を使い、防衛力を強化すればいいのか――具体的政策について提案致します。 ◆日本に向けられた中国の長距離ミサイル群 ズバリ、日本防衛の核心は、「中国の『長射程ミサイル』への抑止力強化」にあります。 なぜなら、中国軍の日本に対する「核心的戦力」は、戦闘機などの通常の戦力ではなく、実は人民解放軍第二砲兵部隊(ミサイル部隊)と、海軍、空軍の中距離(核)弾道ミサイル、そして長距離巡航ミサイルであるからです。 つまり、もし中国が日本と本格的な軍事衝突に突入する意思を固めた場合、中国は戦闘機や潜水艦、軍艦などの従来の兵器を使った戦闘よりも、「(核兵器を含む)長距離射程ミサイルによる攻撃」によって日本を恫喝、または実際に攻撃する可能性が極めて高いからです。 その状況を、軍事戦略コンサルタントとして、アメリカ海軍等へのアドバイザーなどを務める社会科学者の北村淳氏は、日本のマスコミはほとんど報道しない、極めて重要な分析を次のように分析しています。 「中国軍は、日本全土を射程圏に収める中距離弾道ミサイルと長射程巡航ミサイルが(2012年時点で)少なくとも合計600~700基以上あり、日々、保有数は増加し続けている」 「長射程ミサイルは、中国本土の陸上からでも、上陸や海上や海中からでも、日本各地の戦略目標(たとえば原子力発電所、火力発電所、変電所、石油精製所、石油・天然ガス貯蔵施設、空港、港湾など)を破壊する攻撃能力を持っている」 「もちろん、中国の長射程ミサイルがすべて核弾頭を搭載した、いわゆる核ミサイルなら、実際に日本に向けて発射する際のハードルは極めて高いだろう」 「しかし、対日攻撃用の中距離弾道ミサイルには、核弾頭だけでなく非核弾頭も搭載されるし、各種長距離巡航ミサイルの主流は、非核弾頭搭載となっている。だから、こうした長射程ミサイルによる対日攻撃のハードルは、核ミサイルとは比べ物にならないくらい低い」 「さらに、長射程ミサイルによる対日攻撃では、東シナ海を舞台に軍艦同士がミサイルや魚雷などで撃ち合う艦隊決戦や、尖閣諸島上陸奪還戦といった水陸両用強襲上陸戦のように敵味方が正面衝突する」 「伝統的な戦闘とは違って、どんなに接近したとしても1000キロメートル以上の遠方から、通常は2000キロメートル前後あるいはそれ以上離れた地点から、日本各地の戦略目標を攻撃して破壊できる」 ◆自衛隊の兵器装備の課題 「現在の自衛隊は、訓練が行き届いた隊員を擁し、高性能な正面装備(潜水艦、駆逐艦、フリゲート艦、戦闘機、戦車、重砲など)を保有していても、中国本土の軍事目標に対して反撃を加える能力はまったくといってよいほど持ち合わせていない」 「したがって、中国軍が仮に日本各地の戦略目標を狙って弾道ミサイルや長距離巡航ミサイルで攻撃したとしても、中国本土が自衛隊による攻撃や反撃を受ける恐れはまったくない」 「このように、中国軍の長射程ミサイルによる対日攻撃は、中国軍側の損害ゼロとなる一方的攻撃ということになる」 このように、日本における中国の軍事的脅威の核心は、通常兵器ではなく、核弾道ミサイルを含めた長射程ミサイル群(中距離弾道ミサイルと長距離巡航ミサイル)であることを、踏まえなければなりません。 であるならば、日本がとるべき国防政策は、中国が核及び長射程ミサイルで日本を攻撃できなくなるような、「抑止力」を持つことです。 「抑止力」の中でも最も確実なものは、中国が日本を攻撃すれば、それ以上の損害を与えることができるのが「報復的攻撃能力」です。 以上、次回は、中国の長距離ミサイル群から日本を守るための、この「報復的攻撃能力」について具体的に論じます。 「海洋大国・日本」―新たな国家ビジョンと安全保障【連載第6回】 2014.02.02 文/幸福実現党総務会長兼出版局長 矢内筆勝 《海洋国家日本の国家戦略と安全保障》 前回まで「海洋大国・日本」に眠る海洋資源、それを狙う中国の軍事力と海洋戦略、そして日本のシーレーンの重要性を述べてきました。 今回より、そのような情勢を踏まえ、日本は21世紀以降の未来に向けて、どのような国家戦略を持たねばならないのかについて、安全保障、外交、経済の観点からその方向性を論じたいと考えます。 ◆アメリカが「世界の警察」を放棄する可能性 日本の防衛戦略の要が「日米同盟」であることは論を待ちません。しかし、その同盟関係が今、アメリカの国内問題によって大きく変化しつつあります。 2013年3月から始まった政府の歳出強制削減によって、アメリカは向こう10年間で3兆9000億ドル、日本円にして390兆円の歳出削減を迫られ、それに伴って国防予算は大きく削減されることになります。 その額は実に10年間で約5000億ドル(約50兆円)、一年間で日本の防衛予算(平成25年度4・68兆円)に匹敵する規模です。 これによって、アメリカは「世界の警察」であることを放棄し、アジア太平洋地域における戦力や運用も、縮小せざるを得ない事態に追い込まれているのです。 ゆえに日本は今後、自らの力で中国の軍事的脅威と対峙できる体制を構築すべく、全力を尽くさなければなりません。 ◆防衛費の倍増と、自主防衛体制の確立 すなわち「自分の国は自分で守る」――「自主防衛体制」の確立です。それは明治維新以降、日本が一貫して歩んできた道でもあり、独立国家としては当然の姿勢です。 しかし、そのためにはそれ相応の防衛予算が必要で、最低でも日本は防衛予算を現在の5兆円弱から10兆円規模に「倍増」すべきであると考えます。 出来うるならば、中国が海洋戦略の完成を目指している2040年までは、「3倍」にまで増やすのが望ましいと考えています。 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI) が発表した2010年の世界の主要国の軍事費のGDP比ランキングによると、日本は最低の1%に過ぎません。 サウジアラビアが、10・1%と突出していますが、イスラエル6・5%、米国4・8%、ロシア3・9%あり、韓国とインドが2・7%で並び、イギリス、トルコ、フランスが2%台で続いています。 世界のGDPに占める国防費の割合の世界平均は約2%。中国も、表向きに発表している数字ではありますが、ほぼこの数値となっています。 世界の平均である国防費のGDP比2%は、独立国が国民の生命と安全を守るための「必要最低限の経費」と、日本国民は理解しなければなりません。 いくら国民の福祉のためといって社会保障費を増やしても、国が滅んでしまっては、元も子もないのです。 そうした意味で現在中国は本気で、日本の海洋権益を奪い、あわよくば日本を属国化したいと考えています。そうした国家存亡と民族消滅の危機に直面する今、出来うるならばGDP比3%のコストは必要であろうと考えます。 次回は、日本に向けられた中国のミサイルについて明らかにし、それに対してどう対処していけばよいのかについて論じます。 「海洋大国・日本」―新たな国家ビジョンと安全保障【連載第5回】 2014.01.31 文/幸福実現党総務会長兼出版局長 矢内筆勝 《日本の安全保障の要となるシーレーン防衛》 前回は、中国の海洋進出と軍事的脅威の一端を概観してきましたが、今回は、日本のシーレーン防衛の重要性についてお送りいたします。 ◆「中華民族の偉大な復興」と「海洋強国」 トウ小平政権時代の改革開放による中国の経済的発展の目的は、軍事力の増大と強化にありました。その理由は、中国共産党による独裁体制の維持と強化にあります。 人民解放軍は中国共産党の軍隊であり、国家や国民の軍隊ではない。経済発展の富を使って、権力と軍事力を強化し、さらに多くの富を独占して特権と権益拡大を図る、そうした「中国共産党の権力と欲望の無限連鎖的拡大」こそが、現代の「中華帝国」の本質です。 その過程で制定されたのが、国連海洋法条約です。 この国連海洋法条約によって確定した日本の領海と排他的経済水域の面積は、4.479.358平方キロ で世界6位の広さを持っています。それに対して中国の領海と排他的経済水域の面積は、日本のわずか19.6%、877.019平方キロで、世界15位に過ぎません。中国の「自国の海洋」は、日本のわずか5分の1で、一人あたりの面積は約50分の1しかないのです。 つまり、その中国が謳う「中華民族の偉大な復興」のための「海洋強国」と「海洋進出」とは、日本を含む周辺国の領海及び排他的経済水域への「軍事的な進出」以外のなにものでもありません。 ◆シーレーンの重要性 日本は資源やエネルギーの大部分を海外からの輸入に頼っています。「シーレーン」の安全を確保することは、日本にとっては死活問題です。 中でも、日本にとって最も重要なシーレーンが、日本本土から沖縄、台湾とフィリピンの間のバシー海峡、台湾海峡、南シナ海を経て、マラッカ海峡、インド洋、中東に抜けるルートです。このシーレーンが日本の石油輸入、アジア貿易、中東貿易、アフリカ貿易、ヨーロッパ貿易の全てを担っています。 もし中国が、前回紹介した「接近阻止・領域拒否戦略(A2/AD)によって、第2列島線内の制空権、制海権を握り、空母や原潜を自在に就航させる事態となれば、日本のシーレーンは中国の軍事的な管理下となり、「日本の生命線」が中国に握られることになります。 それは、日本がチベットやウイグルのような中国の属国や植民地となることを意味しています。 つまり、中国の「接近阻止・領域拒否戦略(A2/AD)は、中国による南シナ海、東シナ海、西太平洋の覇権戦略であると同時に、日本のシーレーンを支配する、「日本属国化戦略」であると見なければなりません。 日本が先の大東亜戦争で、アメリカ、欧米列強と戦火を交えることになった理由も、また日本がその戦争で敗れた原因も、この生命線を止められ、その攻防に破れたからに他なりません。シーレーンこそが、島国・日本の命綱であり、アキレス腱でもあるのです。 シーレーン防衛の観点抜きに、経済活動も、国民の生活も、自由も人権も存在し得ないということを、私たちは知らなくてはならないのです。 以上、【連載第1回】より「海洋大国・日本」に眠る海洋資源、それを狙う中国の軍事力と海洋戦略、そして今回は日本のシーレーンの重要性を述べてきました。 それでは、中国の軍事的脅威からこの日本をいかに守るべきか、その具体策として、次回より「海洋国家日本の国家戦略と安全保障」をテーマにお送りいたします。 (つづく) 「海洋大国・日本」―新たな国家ビジョンと安全保障【連載第4回】 2014.01.24 文/幸福実現党総務会長兼出版局長 矢内筆勝 ◆中国の海洋戦略の骨格 前回は、中国の建国以来の海洋戦略の流れの中で、2010年10月、尖閣諸島沖での「漁船衝突事件」が起きたというところまで述べました。この事件は、これから始まる侵略行動の「前哨戦」に過ぎないのです。 ここで、中国の海洋戦略の概略、骨格を見ておきます。2013年4月に海洋政策研究財団の川中敬一氏が発表した 『中国の海洋進出』(海洋政策研究財団)――「海洋をめぐる中国の戦略的構造」によれば、中国の海洋進出の戦略的な方向性と目標が見えてきます。 2013年段階で中国海軍は、「戦略目標」において、「第1列島線内制海権掌握」の時期であり、すでにDDG、AWACS、DD、FFなど、欧米に比肩する近代的な戦艦群が登場しているものの、それもまだ「開発段階」に過ぎません。 (注) DD――駆逐艦 DDG――艦対空ミサイルを搭載した駆逐艦 FF――対空・対潜・対水上などの兵装を備えたフリゲート(護衛艦) AWACS――空中目標をレーダーにより探知・分析して航空管制や指揮を執る早期警戒管制機 SSBN――潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載した原子力潜水艦 SLBM――潜水艦発射弾道ミサイル この計画では中国海軍は、2030年から大型空母戦闘群を開発し、2040年代の「完成」を目指すとしていますが、それらの計画は、かなり前倒しされている可能性があります。 空母建造に関しては、ウクライナから購入した未完成の空母「ワリヤーグ」を改装して、2012年9月に「遼寧」として就航させています。 現在、国産空母を建造中とされ、2016年には2隻体制、2020年には、4隻の国産空母機動部隊を建造予定とも言われています。 ◆「接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略」 その過程で現在中国軍が実行している軍事戦略が、「接近阻止・領域拒否戦略(A2/AD Anti-Access/Area Denial)と呼ばれているものです。 その目的は、台湾や南シナ海、東シナ海で軍事行動を起こす際に、第1列島線は当然のこと、米軍を第2列島線内から排除し、その行動と関与を封じることです。 その主たる作戦目標は米空母で、具体的には、第1、第2列島線内への、大陸から発射される弾道ミサイルや航空機からの巡航ミサイル、原子力潜水艦、軍艦などによる攻撃が準備されています。 さらに、日米の主要作戦基地や作戦支援設備への直接攻撃も含まれていると見られています。 ◆日本の主要都市に照準が定められている「東風21」 A2/AD戦略の切り札として、中国軍が開発を進めているのが、中距離弾道ミサイル「東風21」(DF-21)を対艦誘導ミサイルに改良した、DF-21Dです。 「東風21」はすでに、核を搭載した多弾頭中距離弾道核ミサイルとして実戦配備されており、日本のほぼ全ての主要都市に照準が定められているとされています。 改良型のDF-21Dの射程は約1500~2000キロメートルで、第2列島線内(西太平洋)をその射程内に収めています。 中距離弾道ミサイルを移動する空母に命中させる技術は、欧米では未だ開発されていません。中国がもし開発に成功したならば、米国の空母機動部隊にとって、極めて大きな脅威となることは必須です。 このように、中国軍の日本に対する核心的な戦力は、戦闘機などの通常の戦力だけはなく、その背後に存在する、人民解放軍第二砲兵部隊と海軍、空軍の中距離(核)弾道ミサイル、そして長距離巡航ミサイルであることを、私たち日本人は知らなければなりません。 つまり、もし中国が日本と本格的な軍事衝突に突入する意思を固めた場合、中国は戦闘機や潜水艦、軍艦などの従来の兵器を使った戦闘よりも「(核兵器を含む)長距離射程ミサイルによる攻撃」によって日本を恫喝、または実際に攻撃する可能性が極めて高いのです。 しかも、中国はすでに数百~数千発もの核弾頭を有する「核大国」であり、すでに日本の全ての主要都市に対して、「東風21」を中心とした核弾頭を搭載した中距離弾道ミサイルの照準を定めているとされています。 中国の、こうした核弾道ミサイルを含めた長射程ミサイル群(中距離弾道ミサイルと長距離巡航ミサイル)こそ、北朝鮮の核ミサイルとは比較にならない、我が国が直面する最大の脅威であるのです。 そのことを日本人は自覚し、早急にそれらに対する防衛体制を構築し、有効な抑止力を持たなければなりません。 次回は、「日本の安全保障の要となるシーレーン防衛」についてお送りします。 (つづく) 「海洋大国・日本」―新たな国家ビジョンと安全保障【連載第3回】 2014.01.19 文/幸福実現党総務会長兼出版局長 矢内筆勝 前回は、日本海に眠る海洋資源を紹介しました。今回の3回目は、その日本の資源を狙う中国について言及致します。 《中国の海軍戦略と海洋進出》 前回で触れた「宝の海」とも言える、我が国の海洋領域を強奪し、奪取しようとする国家が台頭しています。それが「海洋強国」を国家戦略として掲げ、海洋進出を始めた隣国、中国です。 ◆中国の帝国主義と海洋戦略 中国は、1978年の鄧小平による改革開放路線によって、それまでの社会主義経済を捨て、市場経済体制に移行しました。 その経済成長は目覚ましく、この20年にGDPの成長率は10%前後で伸び続け、GDPはすでに日本を抜いて世界第2位の経済大国になったことはすでに報道されているとおりです。 中国はその経済力をバックに、驚異的なスピードで軍事力を強大化させ続け、アジア最大の軍事大国へと変貌しました。その目的は、「大中華帝国の再興」であり、日本併呑まで視野に入れた、覇権国家の実現です。 2012年の共産党大会で、党総書記、中央軍事委員会主席に就任した習近平は、国家としての大方針として、「中華民族の偉大な復興」を打ち出しました。 「中華民族の偉大な復興」とは、「漢民族中心の国家建設」と「富強(富民強国)大国の建設」であり、中国共産党創設100周年に当たる2021年を中間目標とし、最終目標は中華人民共和国創建100周年に当たる2049年としています。 そうした「中華民族の偉大な復興」という“中国の夢”を実現するための国家戦略が「海洋強国」です。 同大会では、それを「海洋資源開発能力を向上させ、海洋経済を発展させ、海洋生態環境を保護し、国家海洋権益を断固として守り、海洋強国を建設する」と提起しています。 地政学的には「大陸国家」に分類され、1949年の建国以来、その拡大(侵略)の矛先を陸続きの隣国に向けてきた中国が、「海洋強国」として海に向け始めたのです。 その直接的な国家権益の拡大として目をつけているのが、中国の眼前に広がり、資源とエネルギー、そして食料の宝庫としての南シナ海、東シナ海、西太平洋なのです。 ◆中国の海洋戦略の沿革 中国の建国以来の海洋戦略の沿革を、財団法人・日本国際問題研究所の金田秀昭客員研究員は、三段階に分けています。 〔第1段階〕1949年の建国~60年代 1960年代の中ソ対立によって、対外貿易活動をソ連との陸運から西側諸国との海運に切り替える必要性が生じ、海運重視の道を選択。64年には国務院直属機関としての国家海洋局を創設し、海洋調査活動を活発化。 〔第2段階〕 1970年代~80年代 1974年、鄧小平が国連特別総会での演説で、中国を発展途上国と第3世界の盟主として位置付け、国連海洋法会議を意識した資源ナショナリズムを主張。 80年代には、人民解放軍の海軍司令員・劉華清が、台湾の武力統一と自国防衛、天然資源確保のための「第1列島防衛線」を設定し、日本列島と南西諸島、台湾、フィリピン、ボルネオを結ぶを絶対海上防衛線とする「近海防御」戦略を策定。 さらに鄧小平の改革・開放路線によって経済成長が現実化すると、成長維持のために、エネルギーと天然資源の確保の必要が生じ、外洋行動力を持った強大な海軍力の必要性を認識。 〔第3段階〕1991年の冷戦終結~現在 冷戦が終結し、旧ソ連との国境線沿いの膨大な軍事力が不要となったことで、国家資源を海軍力の増強に振り向けることが可能となりました。 国防費が連続して2桁(2010年のみ9.8%)の伸びを示す中で、その軍事力の力点を海軍に置き、近代的な原潜や通常潜水艦、駆逐艦、さらに米空母を主目標とする対艦弾道ミサイル、航空母艦の建造を推進。2007年には、胡錦濤主席が「遠海防衛」を提起。 そうした流れの中で、2010年10月、尖閣諸島沖での「漁船衝突事件」が起きました。しかし、この事件は、これから始まる侵略行動の「前哨戦」に過ぎません。 次回は、その中国の戦略について詳しく分析いたします。 (つづく) 「海洋大国・日本」―新たな国家ビジョンと安全保障【連載第2回】 2014.01.17 文/幸福実現党総務会長兼出版局長 矢内筆勝 《日本海域に眠る莫大な海洋資源》 前回、総論として、日本は「国連海洋法条約」の成立によって、広大な海域を持つ「海洋大国」としての権益を手にしたことを明らかにしました。今回の2回目は、日本海などに眠る海洋資源を詳しく紹介します。 ◆尖閣諸島周辺の海底油田 この日本の領海及び排他的経済水域内には、海底油田などの膨大な天然資源が存在しています。よく知られているのが、尖閣諸島周辺の海底油田の存在の可能性です。 1969年に国連アジア極東経済委員会は、沖縄県の尖閣諸島近海の海底に、膨大な石油が埋蔵されている可能性を報告しました。その推定埋蔵量はイラクやクエートの石油埋蔵量に匹敵する約1000億バレルを超えると試算されています。 現在の原油価格の1バレルで100ドル前後で計算すれば、埋蔵量は10兆ドル分、現在の1ドル100円換算では1000兆円となります。 また、東シナ海の中国や韓国の延長線上の大陸棚にも、サウジアラビアの10倍近い天然ガスと石油が埋蔵されているという報告もあります。 ◆海底に眠る「第四のエネルギー」と「鉱物資源」 近年は、「人類の第四のエネルギー」といわれるメタンハイドレート、レアメタルやレアアースなどの希少資源の宝庫である「海底熱水鉱床」や「コバルト・リッチ・クラスト」、「レアアース資源泥」の発見が相次ぎ、脚光を浴びています。 メタンハイドレートとは、主成分が天然ガスと同じメタンであり、海底の圧力と冷温によって氷状になったものです。日本近海には世界有数のメタンハイドレートが埋蔵され、四国、九州、西日本地方の南側の南海トラフ、北海道周辺と新潟県沖、南西諸島沖などに存在しています。 通商産業省の試算によると、メタンハイドレートは日本の排他的経済水域や大陸棚の海底には約7兆3500億立方メートル、日本の天然ガス使用量の約100年分のメタンハイドレートが存在するといいます。 メタンハイドレートは、燃焼によって生じる二酸化炭素が、石炭や石油、天然ガスと比較して少なく、環境に負担が少ない第四のエネルギーとして注目を集めています。 現在、日本においては2001年に設立された官民学共同の「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム」(通称:MH21) が中心となって、メタンハイドレートの調査、発掘技術の開発が進められています。 ◆漁業資源の宝庫 さらに日本の周辺水域が含まれる太平洋北西部の海域は、「世界三大漁場」の一つであり、世界の漁業生産量の2割を占める約2000万トンが漁獲されている極めて豊かな海です。 水産庁によると、特に日本の排他的経済水域内の海域は、世界の海の中でも生物の多様性が極めて高い漁業資源の宝庫です。 現在、日本の漁業は、漁獲量の減少、漁業従事者の高齢化と後継者不足、消費者の魚離れ等で“衰退”が指摘されて久しくなります。 しかし、ノルウェーやニュージーランド、アイスランドなどでは、徹底した資源管理が行われており、その結果、漁獲高が増え、持続可能で生産性の高い漁業が実現しています。 三重大学生物資源学部の勝川俊雄准教授は、「魚や貝などの生物資源は、子を産んで再生産するので、十分な親魚を残しておけば、半永久的に利用できる」「(日本がノルウェーなどのように)国がやるべき漁獲規制をすれば、日本の漁業は必ず復活する。」と断言しています。 ※『惨憺たる日本の漁業 実は先進国では成長産業』 勝川俊雄 三重大学生物資源学部准教授 WEDGEInfinity(2013年8月19日) 今後世界は人口100億人時代に向けて、いよいよ食料問題が本格化していくでしょう。しかし世界有数の豊かな漁業資源を誇る海を日本は持っています。戦略的に活用し、育むことで、国内の食料を賄うだけでなく、海外に輸出する新産業へと発展させることも、十分可能であると言えます。 次回3回目は、その日本の資源を狙う中国について言及します。 すべてを表示する « Previous 1 2 3 4 … 8 Next »