Home/ 遠藤 明成 遠藤 明成 執筆者:遠藤 明成 HS政経塾 自民も公明も連合の「お仲間」 今や企業に「賃上げ」を求める政党ばかり【後編】 2022.05.25 http://hrp-newsfile.jp/2022/4274/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆最低賃金が上がり続ければ、企業は雇用を抑制し、社員を解雇する 政治家は人気取りのために、最低賃金の引上げに熱心です。 しかし、この制度には、もともと欠陥があります。 最低賃金を強制的に高値で固定すると企業は雇用増に尻込みします。この場合、賃金の水準を市場にまかせた時には就職できた人の中で、不採用になる人が出てくるのです。 日商と東商の調査でも、最低賃金の引上げが「経営に影響あり」と答えた企業の対応策には、採用の抑制と社員の削減があげられていました。 例えば、40円の引上げがなされた場合、2割の企業が正社員の削減と採用の抑制を行うと答えました。非正規社員の削減と採用の抑制を行うと答えた企業は3割にのぼります。 業績が伸びない中で「最低賃金の引上げ」に対応した場合、社員を解雇したり、採用を減らさなければいけなくなるのは、当然のことです。 (※解雇と採用抑制を行うと答えた企業の割合) ・30円引き上げの場合:正規社員の削減と採用の抑制を行う企業が15%/非正規社員の削減と採用の抑制を行う企業が27% ・40円引き上げの場合:正規社員の削減と採用の抑制を行う企業が23%/非正規社員の削減と採用の抑制を行う企業が30% ◆デメリットが多すぎるので、最低賃金の引上げは「ぬか喜び」政策にすぎない 雇用の抑制のほかにも、企業には、最低賃金の引上げへの対策があります。 しかし、それは、どれも、誰かの痛みを伴います。 「設備投資の抑制」を行えば、企業の未来の発展が犠牲になります。 「製品・サービス価格の値上げ」を行えば、消費者の負担が増えます。 「正社員の残業時間の削減」を行えば、今いる社員が稼げるお金が減ります。 結局、最低賃金の引上げで給料が増えても、他のデメリットが大きいので、メリットは相殺されてしまうのです。 人件費で経営が圧迫され、倒産する企業が増えれば、むしろマイナスのほうが大きくなっていきます。 ◆企業経営に介入したがる「社会主義政策」にNOを! 大川隆法党総裁は、自民党の賃上げ路線に対して、企業に「賃上げをさせると、企業は赤字になり、倒産していく」と批判しました(『資本主義の未来』幸福の科学出版)。 また、政府が消費税を増税しながら企業に賃上げを要請したことについて、「そんなことができるのであれば、国民が全員、国家公務員になっているという状態でしょう」と指摘していました。(企業は)「最低賃金を上げたら、できるだけ少ない人数で働かせるようにする」とも述べていたのです(『忍耐の時代の経営戦略』幸福の科学出版)。 「最低賃金」の引き上げを通して政治が市場経済に介入してくると、企業経営の自由が奪われていきます。 その路線を推し進めていくと、倒産が増え、社会主義経済に近づいていくのです。 労働組合の「お仲間」になった既成の政党の経済政策には、社会主義的な考え方が入り込んでいます。 しかし、幸福実現党は、長らく経済界への賃上げ要請や最低賃金の引き上げなど、政府による企業経営への介入に反対してきました。 「国の介入、あるいは地方自治体の介入は最小限にとどめるべきです」(大川隆法著『人の温もりの経済学』) 今の日本では「賃上げ」を公約し、国民の歓心を買う政治家と、賃上げの負担を担う経営者の間に、埋めがたい落差が生まれています。 政治家の人気取り政策のために、日本の民間雇用の7割を担う中小企業を押しつぶしてはなりません。 幸福実現党は、神の見えざる手を機能させる経済を目指し、労働者と経営者の双方の幸福のために、適正な賃金が実現する雇用政策の実現を目指してまいります。 【参照】 ・大川隆法著『人の温もりの経済学』幸福の科学出版 ・大川隆法著『資本主義の未来』幸福の科学出版 ・大川隆法著『忍耐の時代の経営戦略』幸福の科学出版 ・厚生労働省「令和3年度地域別最低賃金改定状況」 ・日本・東京商工会議所「『最低賃金引上げの影響および中小企業の賃上げに関する調査』調査結果」 自民も公明も連合の「お仲間」 今や企業に「賃上げ」を求める政党ばかり【前編】 2022.05.24 http://hrp-newsfile.jp/2022/4273/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆自民も公明も連合の「お仲間」 4月から5月にかけて、労働組合と政党との交流が盛んになっています。 4月18日には、労働組合の中央組織である「連合」の芳野友子会長が、自民党本部の政策会合に出席し、「ぜひ自民党にも力を貸していただきたい」と訴えました。 5月13日には、公明党の竹内政調会長と連合の清水秀行事務局長が会談。竹内氏は「賃金を持続的にあげられる構造にもっていかないといけない」と述べています。 近年、自民党は賃上げに熱心なので、ながらく野党を支持してきた連合の会長が自民党本部の会合に参加できるようになりました。 公明党に対しても、連合は、昨年の衆院選では東京12区の公明党候補を支援しています。 連合は、もともと立憲民主党や国民民主党などを支援してきましたが、最近は、与党にも積極的に働きかけています。 今や、自民党や公明党も、連合の「お仲間」なのです。 ◆与野党のほとんどが「賃上げ」を公約 実際に、自民党の麻生副総裁は、「連合の話を一番聞いているのは自民だ。賃上げを経団連や経営者に一番言っているのも自民だ」(3/27)と言っています。 野党よりも労働組合の声を聴いていると自慢しているわけです。 今や与党と野党が入り乱れて、「賃上げ」を競うようになったので、ほとんどの政党が労働組合の「お仲間」になりました。 賃金の水準は、市場における需要と供給と、企業経営の状況に応じて決まるものなのに、政治家がしゃしゃり出て、「私たちが賃金を上げる」と大きな声を上げています。 法律を使い、企業経営の状況にお構いなく、人気取りのために最低賃金を引き上げるのですから、経営者から見れば、迷惑な話です。 現時点(5月下旬)で、自民、公明、立民、国民民主、共産の5党が考える最低賃金についてのプランを見ると、時給1000円と時給1500円で二分されています。 【時給1000円】 ・自民党:早期で1000円以上の実現(全国加重平均)、2020年代に全ての都道府県で最低賃金1000円に挑戦する(自民党雇用問題調査会が5/10に緊急提言) ・公明党:年率3%以上をメドに引き上げ、2020年代前半には全国で1000円超の実現(加重平均)、2020年代半ばには47都道府県の半数以上で1000円以上へと引き上げる(2021衆院選公約) ・国民民主:全国どこでも時給1000円以上を早期に実現(2021衆院選公約) 【時給1500円】 ・立憲民主:最低賃金時給1500円を将来的な目標に(2021衆院選公約) ・共産党:時間額1500円の全国一律最低賃金の実現(全労連の評議員会が1/26に提言) 各党は賃上げを前回の参院選でも公約し、2019年に901円だった全国平均の最低賃金額は、現在、930円にまで引き上げられています(*加重平均額) (※維新の党は最低賃金という仕組みに賛同していないので賃上げ公約がない。れいわ新選組は全国一律最低賃金1500円) ◆中小企業の多くは経営に苦しみながら賃上げに対応している 立憲民主党と共産党は最低賃金1500円を掲げました。 これは、今の1.6倍以上なので、あまりにも高すぎる数字です。 中小企業の負担にお構いなく、強制的な賃上げを一気に進めれば、人件費の負担増で企業の倒産が増えるでしょう。 自民党、公明党、国民民主党は早期に1000円を実現しようとしています。 これは、現在の賃上げ路線を加速しようとする動きです。 しかし、賃上げを推進する前に、最近の最低賃金引上げが、中小企業にどのように受け止められているかを知る必要があります。 全企業数のうち中小企業が占める割合は99%以上を占めているからです。 ここで、日商と東商の調査を見てみましょう。 (*日本・東京商工会議所「『最低賃金引上げの影響および中小企業の賃上げに関する調査』調査結果」2022/4/5 を参照。小数点以下の数字は四捨五入) そこでは、「最低賃金は近年3%台の大幅な引上げが続き、多くの中小企業・小規模事業者から、経営実態を十分に考慮した審議が行われていない」という企業からの苦情が紹介されていました。 この調査では、以下の4点が明らかになっています。 (1)今の最低賃金が「負担になっている」(*)と答えた企業の割合は7割近く(65%)にのぼりました。特に、コロナで被害を受けた「宿泊・飲食業」では9割(91%)がそう答えています。(※「負担になっている」=「大いに負担になっている」と「多少は負担になっている」の合計) (2)前回(21年10月)の最低賃金引上げの後、4割(40%)の企業が強制的に賃金を上げざるをえなくなりました。 (3)(賃上げなどで)人件費が増えても対策がとれない企業は4割(42%)にのぼります。 (4)2022年度に「賃上げを実施予定」と回答した企業の割合は5割に迫る勢い(46%)。「賃上げを実施予定」と答えた企業のうち、7割(69%)が、業績の改善がないことを認めています。 要するに、法律で最低賃金が引き上げられた結果、多くの中小企業は、経営に苦しみながら、賃上げに対応しなければいけなくなったのです。 (後編につづく) 「シルバー民主主義」が奪う若者の未来 2019.07.20 「シルバー民主主義」が奪う若者の未来 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆低投票率が見込まれる「亥(い)年選挙」 7月18日に、時事通信社は「『亥年選挙』で低投票率か」と題した記事を公表。 2019年は統一地方選と参院選が重なる12年に1度の「亥年選挙」なので「投票率が落ち込む」ことを見込んでいます。 「『選挙疲れ』が指摘される亥年は下落が顕著」で、1995年に最低の44.5%を刻むなど、投票率が「軒並み落ち込んだ」歴史があるからです。 (※07年の58.6%は例外的に前後の年よりも高かった) 同社は、政府関係者が「今回は50%くらい」と予測しているとも報じていました。 ◆過去の参院選投票率の推移 総務省のデータをみると、近年の投票率は落ち込んでいます。 【参院選投票率】(地方区・選挙区) ・16年:54.7% ・13年:52.6% ・10年:57.9% ・07年:58.6% ・04年:56.6% ・01年:56.4% ・98年:58.8% ・95年:44.5% ・92年:50.7% ・89年:65% それ以前は投票率が7割台となる年もあったので、最近は、「つまらない選挙」が続いているのでしょう。 ・86年:71.4% ・83年:57% ・80年:74.5% ※07年と95年、83年が「亥年選挙」 ◆世代別投票率はどうなっている? もう一つ、重要なのは世代別に見た投票率です。 2016年のデータをみると、高齢者の投票率の高さが目立ちます。 ・10歳代:40.5% ・20歳代:33.9% ・30歳代:44.8% ・40歳代:53.5% ・50歳代:63.3% ・60歳代:72% ・70歳代以上:60.9% 20代から60代にかけて、年代が一つ上がるごとに投票率が約1割ほど上がる構図が見て取れます。 ◆「シルバー民主主義」の3つの特徴 日本の選挙には「低投票率で、高齢者の投票率が高い」という傾向が強まっています。 これは「シルバー民主主義」とも呼ばれますが、そこには、3つの特徴があります。 (※以下、八代尚宏著『シルバー民主主義』中公新書) (1)世代間格差の広がり 「社会保障制度や企業の雇用慣行において、若年者よりも高齢者を優先する」 (2)放漫財政 「政府を通じた画一的な所得移転を重視し、借金に依存した日本の社会保障の現状を放置する近視眼的な政策」 (3)改革に消極的で「先送り志向」が強まる 「過去の日本経済の成功体験に縛られ、経済社会の変化に対応した新たな制度・慣行へ改革することに対する消極的な姿勢と先送り志向の強まり」 ◆19年参院選も、典型的な「シルバー民主主義」 この傾向は、今回の選挙でも目立っています。 (1)の典型は、今の高齢者への「払いすぎ」を減らし、将来の世代に積立金を残す「マクロ財政スライド」をなくそうとした共産党です。 積立金からの支出を増やし「減らない年金」にしようという共産党の訴えは、将来世代を犠牲にして今の高齢者への給付を増やすものです。 そこまで言わなかった他党も、現役世代への負担増を考えず、高齢者への手厚い社会保障を訴えるケースが目立ちました。 (2)は、子供のない世帯や結婚できない低所得層から取り立てた消費税増額分を子供のいる家庭に配る「教育無償化」が典型的です。 また、既成政党は、どこも「税金で公的年金を支える」ことの問題点は言えません。 保険の原則は、保険料の範囲で老齢や病気、障害などに備えることですが、税を投入すれば「給付を減らさないために増税」が行われます。 将来のために給付を減らすのではなく、今の高齢者への高い給付を維持するために、現役世代から税を取り立てる傾向が強まるのです。 (3)は、既得権益の擁護です。 例えば、国民民主党はタクシー業者やバス業者への公費での支援(乗り合いタクシー・バス等の実施)を訴えています。 人口が減りすぎた地域では、そうした政策が要ることもありえましょうが、こうしたルールは、それを必要としない地域にまで適用されかねません。 すでに、現政権はタクシー業界を規制で保護していますが、この政策が実現すれば、さらにライドシェア事業への参入障壁が強まります。 米国では本年にウーバーやリフトが上場しましたが、日本では、政治がライドシェアの広がりに抵抗しています。 日本では、既存業界の保護が強すぎて、新産業の芽が摘まれているのです。 ◆政治参加しなければ、若者の未来は失われる 前掲の3つのパターンの政策は、将来世代の犠牲の上に成り立っています。 公的年金はその典型で、これは現役世代が払った保険料が今の高齢者に給付されています(「賦課方式」)。 しかし、日本では、年金を「もらう側」の投票率は6割以上なのに、「負担する」側の20代は3割、30代は4割しかありません。 そのため、年金の大盤振る舞いが続いています。 若い人がそれを避けたいなら、投票するか、立候補して抗議するしかありません。 ところが、今の日本の政党は、どこも若者よりも高齢者向けの政策に力を入れています。 そのため、若者が「こんな年金は嫌だ」と思っても、その受け皿となる政党が見当たりません。 それで棄権すると、「世代間の不公平」がさらに加速してしまいます。 幸福実現党は、そうした風潮の中で、唯一、将来のために、年金の大盤振る舞いの原因となる「税と社会保障の一体化」に反対してきました。 そうしなければ、若者の負担が増える一方だからです(入ってくる保険料の範囲での給付にすると、今の大盤振る舞いはできなくなる)。 既成政党の言う通りにしていたら、日本は、巨大な養老院になってしまいます。 そうした不幸な未来を避けるために戦う責任政党が必要です。 幸福実現党は、世の潮流に抗し、未来のために正論を訴え続けてまいります。 【参照】 ・時事ドットコム「『亥年選挙』で低投票率か=立憲、国民民主に危機感【19参院選】」(2019年7月18日)・総務省HP「国政選挙の投票率の推移について」(平成30年1月) ・総務省HP「国政選挙の年代別投票率の推移について」(平成30年1月)・八代尚宏著『シルバー民主主義』中公新書 防衛予算倍増で同盟強化と自主防衛の推進を 2019.07.19 防衛予算倍増で同盟強化と自主防衛の推進を HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆対中抑止に前向きな米陸軍長官が次の国防長官代行に 7月中旬に入り、米国の安全保障について、2つほど重要なニュースが流れています。 その一つは、次期国防長官に指名されたマーク・エスパー氏(当時は陸軍長官)が、7月16日に上院で公聴会を行ったことです。 エスパー氏は1986年に陸軍士官学校を卒業した後、91年に空挺師団の一員として湾岸戦争に参加。 10年間の軍役を務め、国境警備隊等でも11年務めた後、2007年に陸軍から引退しました。 その後、米防衛大手レイセオン社で7年ほど、政府との交渉を担う重職を担っています。 同氏は、トランプ政権発足後、防衛長官を支えてきたのですが、前任者のシャナハン氏の辞任に伴い、後任に指名されました。 エスパー氏は、ロイター通信の取材で、90年代から中国の軍拡をウォッチングし続けてきたことを明かしています。 「中国との競争、中国の能力といったことは私にとって新しい話題ではない。私はこの進展を20年以上見続けてきた」 同氏は、上院の公聴会では、今後、米軍が中距離ミサイル等を配備することを明かしました。 8月2日には、米露間で「INF全廃条約」が失効しますが、トランプ政権は、米露が射程500~5500kmのミサイル開発と配備を禁止している間に短・中距離ミサイルを増やしてきた中国を抑止しようとしているのです。 こうした、中国の軍拡に対して強い警戒感を持ったリーダーが米軍を率いることは、日本の安全保障にとってはプラス要因になります。 ◆米国防予算案 民主党が下院を制しても7000億ドル台 2つ目の重要なニュースは、7月12日に、米下院で「国防権限法」が可決され、2020年度の軍事費が7300億ドル以上になることが決まったことです。 19年度は7160億ドルなので、民主党が下院を制しても、防衛費の増額は止まりませんでした。 上院では軍事費を7500億ドルにする法案が可決されているので、今後、両院の交渉で金額が決まる見込みです。 民主党が主導した下院でも軍事費が減らないのは、米国には「国防は大事」「国益を守るためには強い軍隊が必要」という共通認識があるからです。 中国の軍拡を見ても、防衛費をたいして増やさない自民党や、防衛費を下げようとする野党とは、大きな違いがあるようです。 (※トランプ大統領は、今後、「メキシコの壁」建設費も含めて、最終案の内容を上院案に近づけるべく、拒否権などを用いる可能性がある) ◆増え続ける中国の軍事費 20年で11倍 トランプ政権に入り、米国の軍事費は3年連続で増え続けています。 それは、中国の軍拡に対抗するために、米軍の再建が必要だからです。 中国の公表軍事費は、20年間で約11倍になりました。 1999年に1047億元だった軍事費は、2019年に1兆1899億元(=約20兆円)にまで増えたのです。 中国はGDP比1.3%しか軍事費を使っていないと主張していますが、米国防省は、その発表を信じていません。 そこには「研究開発や外国からの兵器調達などの重要な支出項目」が入っておらず、軍事支出は「公表国防費の1.25倍以上」あるとみているのです(※これは、米国防省議会報告書(2017年6月)をもとにした防衛省の見解) 中国の軍事費は透明性が低く、中国軍事研究家の平松茂雄氏は「国家財政支出のなかの国防費は、人件費、部隊の日常運用費、兵器・技術の取得費などの消耗性の支出であり、兵器・装備を研究・開発・生産する費用は含まれていない」(『中国の軍事力』)とも指摘していました。 これは、実額が公表値をはるかに上回る不透明な軍事費なのです。 ◆同盟国にも「防衛費増額」を求めるトランプ政権 そして、トランプ政権は、NATO(北大西洋条約機構)加盟国に「GDP比で2%の防衛費負担」を求めています。 これは、大統領だけではなく、閣僚が訪欧するたびに訴え続けてきた重要議題です。 今まで、日本はこれを他人事のように見てきましたが、米中対立が本格化する中では、日本にも、その程度の防衛費の拠出が求められるでしょう。 GDPを増やすとともに、GDP比に占める割合を2%台にまで上げなければ、とうてい、中国の軍拡には対処できないからです。 ◆世界では「GDP比2%」の防衛費を使う国は珍しくない 実際、GDP比で2%程度の防衛費を使っている国は、かなりあります。 (以下、ストックホルム国際平和研究所の調査〔2018年の比率〕) ・イギリス、台湾:1.8% ・豪州:1.9% ・フランスとベトナム:2.3% ・インド:2.4% ・韓国:2.6% ・シンガポール:3.1% ・アメリカ:3.2% ・ロシア:3.9% 世界で、GDP比2%の防衛費を用いる国は、珍しくありません。 ◆安倍政権でも、日本の防衛費はたいして伸びていない 左派陣営は安倍政権が防衛費を増やしていることを批判しますが、実際は微増にすぎません。 同時に物価も上がっているので、実質で見ると、年1%程度にすぎないからです。 2014年から2018年までの防衛関係費(米軍・SACO関連経費を含む)は、名目値で3063億円増(伸び率は約6.3%) しかし、同時期の物価は約2.1%上がっているので、実質伸び率は4年間で4.2%。 年間では1%程度になるからです。 ◆防衛予算が増えない中で、米国兵器を買い続ける日本 日本の防衛予算は、3分の2以上が維持費で消え、3分の1で研究開発や装備の更新、新兵器の導入等を行っています。 【平成30年度の防衛予算の内訳】 ・人件/糧食費:44.2% ・維持費等:23% ・装備品等購入費:16.6% ・基地対策経費:9% ・施設整備費:3.5% ・研究開発費:2.6% ・その他:1.2% この中で、安倍首相はトランプ政権に対して、米兵器の購入額の増加を約束しました。 ◆主権国家には自国内の防衛産業が必要 確かに、F35は必要ですが、今のお金の使い方には問題があります。 その一つは、予算が増えない中で米国兵器ばかりを買うと、防需を担う日本企業に払うお金が減り、防衛の生産基盤を維持できなくなるということです。 F2戦闘機の生産は止まっているため、新たな戦闘機の開発を軌道に載せなければ、F35を買っている間に国内の技術者が離散し、日本は「戦闘機の作れない国」になってしまう危険性があります。 また、国際政治アナリストの伊藤貫氏は、米国の兵器は「ブラックボックス」で管理されているので、もし、将来の大統領が「中国とは戦わない」と決めたならば、日本に売った兵器をすべて止めることが可能だとも指摘していました。 こうした現実があるので、フランスやスウェーデンは、米国と連携しながらも、長年、国産戦闘機の開発を続けてきました。 新型戦闘機の開発には「兆」の単位のお金がかかります。 そのためには、防衛予算の倍増が必要なのです。 ◆防衛予算の倍増を訴えているのは、幸福実現党のみ 防衛予算の倍増は、日米同盟を維持するためにも必要です。 また、主権国家としての防衛体制を築くためにも必要です。 「防衛費を減らして福祉に回せ」と語る野党や、防衛予算の倍増を打ち出せない自民党は、こうした、日本の存亡をかけた問題から目を背けています。 幸福実現党は、真剣に日本を憂う人々の選択肢となるべく、妥協だらけの自民党では言えない正論を訴えてきました。 今後も、日本国民の生命と安全と財産を守るべく、幸福実現党は責任政党としての役割を果たしてまいります。 【参照】 ・ロイター通信「アングル:次の米国防長官代行、中国脅威論者エスパー氏の横顔」(2019/6/20) ・日経電子版「米次期国防長官『中距離ミサイル開発を推進』INF失効にらみ」(2019/7/17) ・朝日新聞デジタル「米下院、国防権限法案を可決 共和党議員の賛成ゼロ」(2019/7/13) ・読売オンライン「米国防予算79兆円…権限法成立、中露に厳しく」(2018/8/14) ・SIPRI “Military expenditure by country as percentage of gross domestic product, 1988-2018” ・田村重信著『防衛政策の真実』(育鵬社) ・時事ドットコム「【図解・国際】中国国防費の推移」 ・平松茂雄著『中国の軍事力』(文春新書) ・防衛白書(平成30年版) ・総務省「2015年基準 消費者物価指数 全国)(2019年(令和元年)5月分) ・防衛省「中国情勢(東シナ海・太平洋・日本海)」(2018年2月2日) ・チャンネル桜「【平成30年 年末特別対談】伊藤貫氏に聞く」(2018/12/30) 【憲法世論調査】安倍改憲案では「世論の壁」を破れない 2019.07.18 【憲法世論調査】安倍改憲案では「世論の壁」を破れない HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆参院選投票日前に各社が世論調査を実施 投票日が近づく中で、メディアは憲法に関する世論調査を行っています。 各社の調査を見ると、おおむね4割程度の方が改憲に賛成しており、この議論をタブー視する風潮は薄れてきました。 ◆改憲に賛成する国民は4割程度 各社の結果の概要を整理します。 ▽時事通信社(7/5~8実施。対象者は18歳以上の男女2000人) ・(憲法改正について)「選挙後に議論を進めること」への賛否を問うた。 ・「賛成」41.2%/「反対」26.3% ・「どちらとも言えない・分からない」32.6% ▽日本経済新聞社+テレビ東京(6月末実施) ・自衛隊の存在を明記する憲法改正について、「賛成」と「反対」はともに38% ・この改憲案に自民支持層の59%、公明党支持層の40%が「賛成」 ・立憲民主党支持層の77%、共産党支持層の76%が「反対」 ※年齢層別に見た賛否は以下の通り。 ・18~39歳:「賛成」46%/「反対」30% ・40~50歳代:「賛成」41%/「反対」37% ・60歳以上:「反対」44%/「賛成」32% ▽朝日新聞社(7月13~14日、調査対象は1000人) ・「与党と、憲法改正に前向きな日本維新の会などが、参議院の3分の2以上を占めた方がよいと思いますか。占めない方がよいと思いますか」と質問 ・「占めた方がよい」が37%。「占めない方がよい」が40%、「その他・答えない」が23% ▽産経+FNN合同世論調査(7/14、15実施) ・「憲法改正に前向きな勢力が国会の改憲発議に必要な3分の2以上を占めた方がいいと思うか」を質問 ・「思う」が42.8%、「思わない」が38.8% ▽ANN世論調査(7/13、14実施) ・「憲法改正を進めたい政党が発議に必要な3分の2を確保した方が良いか」を質問 ・「良いと思う」40%、「思わない」37% ・9条改正は「賛成」33%、「反対」59% ◆高齢世代は護憲に傾き、若年世代は改憲寄り? 各社の調査にはばらつきがありますが、30数%から40%程度の国民は九条の改憲に肯定的です。 近年、北朝鮮の核開発の進展や中国の覇権拡大の野心が明らかになり、日本国民の中でも、改憲に賛成する人が増えてきたことが伺えます。 ただ、ここでいう改憲案は、安倍政権の「自衛隊の根拠を明文化」するプランが想定されているので、他の改憲案だと、数字が変わりそうです。 この中で、特に注意が必要なのは、日経が行った世代別の調査です。 護憲派が強い影響力を持っていた頃に学校教育を受けた高齢世代が改憲に否定的なのに対して、冷戦の終わり頃から平成初期に生まれた世代では、改憲への賛成派が上回っています。 世代交代もあって、改憲派は護憲派にひけを取らなくなってきましたが、全体的に見れば、まだ、九条改正を実現するには十分な数字ではありません。 ◆皮肉にも、日本国民よりも米国民のほうが日本の国防強化に肯定的 各社の調査を見ると、まだ、日本の世論は9条改正や国防強化に強い支持を与えていないことがわかります。 しかし、日本の国防強化に関しては、海外の国民は違った目で見ています。 特に、同盟国であるアメリカ国民は、日本の国防強化を強く支持しているのです。 その数字を、平成30年度の「海外対日世論調査」(2019/5/22発表)で見てみましょう。 「日本は防衛力を増強すべきと考えるか」という設問への賛否は以下の%で推移しています。 (2017年⇒2018年) ▽一般国民の返答 ・「増強すべき」:46%⇒43% ・「そうは思わない」:14%⇒19% ・「わからない・回答拒否」:40%⇒38% ▽有識者の返答 ・「増強すべき」:67%⇒69% ・「そうは思わない」:24%⇒24% ・「わからない・回答拒否」:9%⇒8% 一般国民でも有識者でも、日本は防衛力を増強すべきだと考えている人のほうが多くなっています。 「増強すべき」と答えた人の数は、「そうは思わない」と答える人の2倍以上です。 皮肉な話ですが、日本国民よりも、米国民のほうが、日本の国防強化に肯定的なのです。 ◆安倍政権の論理で国民に「改憲」を納得させることはできない 日本でも、憲法改正の議論ができるようになりましたが、改憲を実現するには、もう一段の意識変革が必要です。 そして、自民党のように、自衛隊と交戦権を否定する9条の矛盾に目をつぶっていては、国民の側も「なぜ、改憲が必要なのか」という理由が分かりません。 安倍首相は、改憲しても「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」と述べていますが、そう聞いた国民が「だったら、改憲する必要はない」と考えるのは当然だからです。 「今の条文でも自衛隊を運用でき、書き込んでも何も変わらない。しかし、改憲が必要だ」という論理には、無理があります。 改憲が必要なのは、日本国憲法ができたばかりの頃のように、米国に安全保障を任せ切ることができなくなったからです。 中国の軍拡や北朝鮮の核開発が進み、日米同盟は不公平だと主張するトランプ大統領は、さらなる防衛努力を日本に求めています。 もっと日本は自国を守る努力をすべきだという考えが米国内に根強くあることは、前掲の世論調査でも明らかです。 今後の日本は、軍隊と交戦権を否定し、「自衛隊は盾。米軍は矛です。戦いは米国にお任せします」と逃げ続けることはできません。 日本が主体的に戦わない限り、米国軍人が日本を守るために戦ってくれることはありません。 だからこそ、改憲が必要になるのです。 こうした、当然の説明から逃げているのが自民党です。 ジャーナリストの田原総一朗氏は「自民党議員はみんな憲法から逃げている。議員が憲法から逃げて、国民がOKするわけないじゃないか!」と言っていますが、これは正鵠を射た発言です。 幸福実現党は、憲法九条の根本改正から逃げず、1項と2項を含めた根本改正を訴えてまいります。 自衛隊を「軍隊」とし、民主主義のもとで軍を統制し、国民の声明と安全と財産を守らなければならないからです。 【参照】 ・時事ドットコム「内閣支持微減43%=改憲議論「賛成」4割-時事世論調査」(2019年7月12日) ・日経電子版「内閣支持率49% 憲法改正は賛成・反対とも38%」(2019/7/14) ・朝日新聞デジタル「世論調査―質問と回答〈7月13、14日〉」(2019年7月14日) ・産経ニュース「【産経FNN合同調査】参院選最重視は社会保障42%」(2019.7.16) ・tv asahi GO「世論調査 2019年7月調査」 ・外務省HP「平成30年度海外対日世論調査」(令和元年5月22日) ・ITmedia「田原総一朗が憲法9条で安倍首相を斬る――『“改憲した総理”になりたいだけ』」(服部良祐, 今野大一,2019.6.25) 「改憲」の中身を失った自民党 交戦権なき自衛隊は使命を果たせず 2019.07.17 「改憲」の中身を失った自民党 交戦権なき自衛隊は使命を果たせず HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆安倍首相は「改憲した首相」になりたいだけ? ジャーナリストの田原総一朗氏が、春頃から、安倍首相への批判を強めています。 6月下旬には、安倍首相は「『戦後初めて憲法改正した総理大臣』になりたい」だけで、改憲の「中身は関係ない!」とまで断じていました。 そう語気を強めるのは、安倍改憲案は「憲法と自衛隊の存在」が「明らかに矛盾している」ことを無視しているからです。 「交戦権」を否定した条文(9条2項)を残したまま、3項に「自衛隊」を足すと、自衛権を発動した時に、2つの条文が矛盾してしまいます。 「自衛隊はあっても交戦権はない」というおかしな憲法になるので、この案を「インチキだ」と批判しているのです。 (※田原氏は憲法改正そのものに反対しているわけではなく、内容を問題視している) ◆本音では、安倍首相は、もう改憲には関心がない? 田原氏は、安倍首相が、こんな案でも納得できるのは、「内容」への関心を失い、戦後初の「憲法改正した総理大臣」になりたいとしか思っていないからだ、と見ています。 その例として、前回(2016年)の参院選の後に、田原氏が「いよいよ憲法改正だね」と言った時、首相が言った言葉を取り上げていました。 ・「大きな声では言えないけれど、(略)憲法改正をする必要は全く無くなった」 ・「集団的自衛権の行使を認めるまでは、アメリカがやんややんやとうるさかった。『日米同盟はこのままでは続けられない』と言うまでうるさかった。集団的自衛権の行使を(安倍内閣で)認めたら、何も言わなくなった。だから憲法改正をする必要はない」 要するに、安倍改憲は「自分の国を自分で守る」ためではなく、米国の要望に答え、批判を封じるための条文改正にすぎないわけです。 防衛が強化されたように見えればよいので、実際の「内容のよしあし」はどうでもよいのです。 ◆「改憲」の中身を問えない自民党のイエスマン議員団 自民党で安倍案に異を唱えたのは石破茂氏ですが、他の議員は、同じように扱われるのを恐れて、今の改憲案に追随しています。 小選挙区制だと、執行部から公認をもらえるかどうかが死活問題になるため、議員はみなイエスマンになりました。 そして、憲法改正を真っ向から訴えても、国民から得られる票が少ないと見て、選挙で年金問題ばかりを語っています。 結局、「自民党議員はみんな憲法から逃げている」(田原氏)わけです。 ◆残念な改憲案で自民党が「終わる」までの経緯 憲法から逃げてきたのは、自民党の歴代政権も同じです。 田原氏は、自民党は「憲法を逆手にとってアメリカの戦争に一切巻き込まれず、平和や安全保障はアメリカに責任を持たせ」てきたと指摘しています。 その典型は、ベトナム戦争における佐藤栄作首相の外交です。 当時、米国に「ベトナムで一緒に戦おう」と言われた時、佐藤首相は「一緒に戦いたい。しかし、あなたの国がこんな難しい憲法を押し付けたから、戦いに行けないじゃないか」という論理で切り抜けたのでした。 また、田原氏が、自衛隊について「こんな戦えない軍隊でいいのか」と竹下登首相に聞いた時、竹下氏は「戦えないからいいんだ。戦っちゃうと大東亜戦争(太平洋戦争)だ、負けるに決まっている。戦わないから日本は平和なんだ」と言ったそうです。 まったく、安全保障の責任者とは思えない発言です。 結局、自民党政権は安全保障を米国に依存してきました。 主権国家・日本を取り戻そうとしたのは、岸信介ぐらいまでで、改憲の党是は、限りなく形骸化していきました。 その最終形が、今の自民党の改憲案だとも言えます。 ◆現場に行かない政治家は、不合理な改憲案でも、何も困らない 結局、政治家がいい加減な改憲案をつくった場合、その負担は、すべて自衛隊に押し付けられます。 今の自衛隊は「軍隊」ではありません。 自衛隊は、消防隊や徴税職員などと同じ行政機関の一つ(「執行機関」)なので、根拠法令のある範囲でしか動けません。 例えば、自衛隊は2000年代にインド洋で米軍への給油活動をしていましたが、その時も、日本のタンカーの防衛は多国籍軍に依存していました。 2007年にソマリア沖のアデン湾で日本企業が保有するタンカーが海賊に乗っ取られた時、救援にあたったのは米駆逐艦やドイツのフリゲート艦などです。 近海にあたる北部インド洋にいた日本の護衛艦は、法令の根拠がなかったので、タンカー防護に動けませんでした。 (※当時、「テロ特措法」に基づいて給油活動をしていたが、この法律には「海賊の追跡や監視、あるいは海賊被害を受けた日本船に対する救援活動は何も任務に含まれていない」ため、海自は動けなかった) そして、米軍がインド洋で自衛隊の給油活動を切望しても、2010年に法律が期限切れとなると、海自の艦艇は帰国するしかありませんでした。 結局、今の体制は、法令でがんじがらめなので、融通がききません。 さらに、憲法9条から生まれる「専守防衛」の原則は、自衛隊に後手に回ることを強いるので、ミサイルなどで先に攻撃された部隊が壊滅する危険性もあります。 九条1項や2項も含めて根本改正し、自衛隊を「軍隊」として認めないと、自衛隊は「国民の生命と安全と財産を守る」という使命を果たせません。 有事に日本の領土や領海を守れず、海外の活動では、諸外国の信頼を失う恐れがつきまといます。 自衛隊の根拠条文を追加するだけでは、こうした問題は解決できません。 ◆自民党案では、結局、何も変わらない 結局、自民党がいう「自衛隊を合憲化すること」と「自衛隊を軍隊と認めること」は、別の問題です。 この有名無実化した「改憲案」に替わるべきなのが、憲法9条の1項、2項を含めた全面改正です。 自衛隊を「軍隊」と認め、自衛のために交戦は起こり得るものだという現実を直視し、民主国にふさわしい軍のコントロールを確立しなければいけません。 そして、国民の生命と安全と財産を守るために、自衛隊が国際法に則って、機動的に動ける体制をつくります。 これを日本で今、訴えている政党は、幸福実現党だけです。 改憲の中身を見失った自民党ではなく、今こそ、根本的な九条改正を訴える勢力が必要とされているのです。 【参照】 ・ITmedia「田原総一朗が憲法9条で安倍首相を斬る――『“改憲した総理”になりたいだけ』」(服部良祐, 今野大一,2019.6.25) ・週刊朝日「田原総一朗『安倍改憲案への石破氏の異論は正論である』」(「ギロン堂」2018.2.8) ・北村淳著『米軍が見た自衛隊の実力』(宝島社) 「れいわ新選組」に「ゆりかごから墓場まで」送られたいですか? 2019.07.16 「れいわ新選組」に「ゆりかごから墓場まで」送られたいですか? HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆過激政策で人を集める「れいわ新選組」 れいわ新選組を立ち上げた山本太郎氏は過激な政策で一目を集めています。 ひたすらに政府がお金を使い、配る政策を並べ、そのために国債を発行することを主張しています。 それで「暮らしがよくなる」と思う方もいらっしゃるようですが、この政策には、以下の3つの問題点があります。 ◆ 問題点(1):「政府が国民を養う」という「親方日の丸」的な発想 その典型は、一人あたり3万円の「デフレ脱却給付金」や「生活保護基準の引上げ」(年収200万円以下世帯をゼロに)、「戸別所得補償」(自給率100%。第一次産業につけば政府が安定した生活を保障)などです。 何もしなくても200万円が手に入り、家庭の頭数だけで給付金が増えるのなら、働くこと自体が馬鹿らしくなります。 農林水産業者の生活を国が保障するというのは、事実上の国営化と同じです。 この場合、毛沢東時代の中国や旧ソ連のように、生産性が低い体質の中で、不当に高い農産物ばかりが供給されます。 (国が農産物を買い支え、安く売っても、その費用は国民が負担した税金などで賄うことになる) また、「全国一律の最低賃金1500円を政府が補償する」と主張していますが、これは今の最低賃金の7割増しにあたります。 地域によっては、いきなり二倍になるのです。 そんな費用は中小企業にないし、それを国が負担するのなら、企業経営の自主性が脅かされます。 最低賃金は支払いを義務付けられているのに、企業にそのお金がないのなら、政府にお金を出してもらうしかありません。 この場合、企業は人件費を負担する政府に頭が上がらなくなるのです。 こんなバカげた体制の下では起業家を目指す人がいなくなり、みなが公務員を目指すようになります。 ◆問題点(2):民間でできることを政府がやるという無駄 これは「公的住宅の拡大」や「公務員の増加」(介護や保育などの福祉分野)、「奨学金チャラ」(555万人への奨学金徳政令)などです。 住宅建設は民間でもできます。 公的住宅を拡大する必要はありません。 保育や介護などは、規制緩和などで民間の役割を拡大すべきです。 その従事者を公務員化する必要もありません。 また、「奨学金チャラ」で低所得層の教育支援を続ける場合、国が奨学金を負担する以外の道は考えられません。 つまり、大規模な教育無償化と解釈できますが、この場合、私学まで含めて授業料を国が負担することになります。 授業料を通じて私学までが国で賄われ、国から独立した自由な教育を目指すという私学の意義がなくなるでしょう。 私学の自由を貫いた福沢諭吉のような教育人が二度と出てこない社会になるのです。 ◆問題点(3):「無限に国債を刷れる」という錯覚 「れいわ」は、財源は国債発行が中心だと言っています。 しかし、国債は、政府に税金や社会保険料といったお金を集める力があることを根拠にしています。 税金や社会保険料を無限に取れない以上、刷れる国債にも限りがあります。 「れいわ」のバラマキ政策にはいくらお金がかかるのかさえわかりません。 正しいかどうかは別として、共産党でも、お金の見積もりは出すのに、れいわには何の見積もりもありません。 「れいわの政策をすべて実施するのに、いくらお金がかかり、そのためにどれだけの国債が必要なのか。そして、物価がどれだけ上がるのか」という見積もりがないのなら、国債で財源を賄えるという主張は、空約束と同じです。 ◆れいわ新選組の目指すものは「親方日の丸社会」の建設 「れいわ」は景気対策の公共投資も掲げているので、ケインズ政策に福祉拡大を合わせたような案になっています。 ケインズ政策に福祉を組み合わせ、「ゆりかごから墓場まで」という標語を掲げたのは第二次世界大戦後のイギリスでした。 その結末は「英国病」といわれる慢性的な経済の斜陽化でした。 れいわの政策が実施されれば「日本病」が延々と続き、日本経済そのものが「墓場」に送られてしまうでしょう。 その行き着く先は、国民のほとんどが政府に養われる「親方日の丸」社会です。 その中身は「社会主義経済」の実現と大差なく、昔の英国のように、企業は活力を失い、優れた国民は海外に逃亡する未来が待っています。 要するに、ストライキばかりしていた国鉄のような状態が日本各地に実現するということです。 ◆なぜ、幸福実現党は「消費税廃止」から「5%の維持」に転換したのか 山本氏がいう「消費税廃止」に関しては、09年に幸福実現党も訴えたことがあります。 しかし、民主党政権の成立後、政府が構造不況を長引かせ、財政赤字を増やす路線を採ったので、経済の根幹が破壊されると見て、消費税廃止に替わるプランを打ち出しました。 その経緯は、大川隆法党総裁の『危機に立つ日本』に書かれています。 「二〇〇九年夏の段階であれば、消費税の廃止によって消費景気を起こし、景気の浮揚、拡大に入れるチャンスがありました。しかし、公共投資をあれだけ中止していけば、確実にゼネコン不況が始まります」 (民主党政権は)「銀行不況を引き起こしかねないような金融モラトリアム法を制定しようとしました(最終的には、罰則を伴わない内容の「中小企業金融円滑化法」が制定された)。 「経済の根幹の部分がどんどん詰まってくるので、大きな構造不況が起こり、消費税を廃止するぐらいでは救えないレベルまで突入する」 その結果、経済の基盤を立て直すために政府が力を発揮しなければいけなくなるので、幸福実現党は、財源として消費税は5%は維持する路線に転換しました。 「積極的な、あらゆる策を講じないかぎり、いったん沈んだ“タイタニック”を引き揚げることは至難の業」だという認識のもとに、現在の経済政策が出てきたわけです。 ◆幸福実現党とれいわ新選組の前提は違う 経済の根幹が破壊される政策と同時に、消費税廃止を並べることはできません。 れいわ新選組の言う通りにすれば、日本全体が「親方日の丸」社会となり、企業の競争力は損なわれていきます。 その結果、日本経済が凋落し、税収が下がり、国債を担保することもできなくなるでしょう。 その先にあるものは、国家の破たんです。 「れいわ」は「大企業は悪。内部留保を貯め込むだけで国民に還元しない」と言っていますが、日本の競争力を高め、自由の大国を築くためのプランがないのです。 パイを切って配ることには関心があるのですが、経済のパイそのものを大きくするための戦略がありません。 ◆安全保障は完全崩壊 「れいわ」は、安全保障に関して「辺野古基地建設の中止」や「普天間基地の即時運用停止」、「在沖海兵隊にはカリフォルニア等への移転」等を掲げています。 これは、鳩山内閣で「県外移設」に失敗したことから何も学んでいません。 そして、「対等な同盟関係」を築くと言っていますが、自衛隊が米軍を代替するプランなしに、一方的な要求を並べても「NO」という返事しか返ってくるはずがないのです。 これは、融通が利く国内政策とは違い、同盟は、日本が自由にできない主権国家を相手にしていることを無視した政策にすぎません。 それが分からなかったのが、民主党政権の限界でした。 「れいわ」は「原発即時禁止」を打ち出し、「エネルギーの主力は火力」(自然エネも拡大)と言っていますが、そもそも原発をつくったのは、中東有事や台湾有事などで燃料断絶が起きるリスクへの備えでした。 ホルムズ海峡で緊張が高まる中で、火力依存でよいと言うのは、国民に対して無責任です。 その通りにすれば、日本をエネルギー断絶のリスクにさらすことになります。 ◆まともな減税政党は幸福実現党のみ 既成政党は「増税中止」は言えても、消費税5%への減税は言えません。 れいわの消費税廃止は、日本の「親方日の丸化」がセットなので、破綻しています。 現時点では、やはり、消費税5%への減税を唱える幸福実現党以外に、まともな減税政党はないのです。 【参照】 ・大川隆法著『危機に立つ日本』(幸福の科学出版) ・れいわ新選組HP 【家計調査の実態】国民は「アベノミクスの恩恵」など実感していない 2019.07.15 【家計調査の実態】国民は「アベノミクスの恩恵」など実感していない HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「家計消費」から一世帯の収支を見たら・・・ 自民党は、経済政策の成果として、可処分所得が増えたことをあげています。 (公約パンフレット等:約293兆円〔2012年〕⇒302兆円〔2017年〕) アベノミクスで暮らしが良くなったと訴えているわけですが、この累計の値をみても、家計の実態は今ひとつ、よくわかりません。 その主張の真贋は、一世帯あたりの所得や消費の推移を見なければ、わからないからです。 そのため、本記事では、総務省が実施する「家計調査」を用いて、その実態に迫ってみます。 ◆安倍政権で、一世帯あたりの可処分所得はどうなった? 家計調査には、項目別に収入や支出、消費の増減がわかるというメリットがあります。 「可処分所得」は、給与やボーナスなどの個人所得から税金や社会保険料などを引いた「手取り収入」なので、当然、この調査にも含まれています。 2012年から18年までの一世帯あたりの実収入と税+保険料、可処分所得は以下のように変化しています。 この数値は、どれも、一ヶ月あたりの年間平均です。 ▽二人以上の世帯のうち勤労者世帯 (以下、2012年⇒2018年 100円以下の単位は四捨五入) ―――――― ①実収入:51万8500円⇒55万8700円(約4万円増) ②税+社会保険料:9万3500円⇒10万3600円(約1万円増) ③可処分所得:42万5000円⇒455100円(約3万円増) ―――――― 一世帯あたりの可処分所得は3万円増(7%増)でした。 ただ、この数字は名目値なので、同時期に増えた物価を計算に入れなければいけません。 2015年を「100」とした消費者物価指数(※)でみると、2012年は「96.7」。 2018年は「101」なので「4.3」ポイント上がっています。 「%」に換算すると「4.4%増」なので、実質的には、8年間で2.6%しか増えていないことになります。 額面の値に比べるとわずかな伸び率です。 さらに付け加えれば、調査対象の世帯の平均年齢は、2012年が47.8歳、2018年が49.6歳なので、若い世帯には、実感のない数字だとも言えます。 (※この指数は「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」の値) ◆1家計あたり平均でみても、消費はさえない さらに、消費の推移をみると、意外な数字が出てきます。 可処分所得が増えているわりには、消費支出が伸びていないのです。 (以下、2012年⇒2018年 100円以下の単位は四捨五入) (1)消費支出:31万3900円⇒31万5300円(1600円増) そして、貯蓄は4万6000円増えています。 (2)預貯金純増:5万6500円⇒10万2600円(46100円増) 家計は将来の不安に備えて、暮らしを切り詰めているわけです。 もうすぐ50歳を迎える世帯が、老後のために貯蓄に励んでいる姿が見えてきます。 寂しいことに「こずかい」という項目は、約4000円ほど減っていました。 (3)こずかい:15800円⇒11900円(3900円減) 「こずかい」と「消費支出」の減り具合は近い数字となり、奇妙な符合を見せています。 ◆国民が「アベノミクス」の恩恵を実感しているとは思えない 家計調査はあくまでも平均値なので、「中の上」以上の世帯の数字が加算されます。 そのため、大部分の人が集まる収入階層よりも高めの生活レベルになります。 (※本当のミドル層は「中央値」の近辺の数字になる) だいたい、正社員で勤続年数25年以上の世帯の数字だと見るべきでしょう。 しかし、それでも、この統計から、国民がアベノミクスの恩恵を実感している姿を思い描くことは困難です。 むしろ、金融庁の「2000万円報告書」に出てくる「老後に月5万円足りなくなる」世帯のように見えてきます。 (「2000万円報告書」の世帯も「平均値」での試算なので、今の家計調査の世帯がそのまま老後を迎えた姿に近い) だからこそ、貯蓄の増え幅が大きくなっているのではないでしょうか。 結局、金融庁の報告書を作成した方々のほうが、アベノミクスの成果をPRする政治家よりも、国民の生活の実態をよくわかっていました。 消費が盛り上がらない中で、消費税を増税するのは愚策です。 幸福実現党は、消費税を5%に戻し、国民が豊かさを実感できる経済の復活を目指してまいります。 【参照】 ・総務省「家計調査(家計収支編) 時系列データ(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)」 ・総務省「2015年基準消費者物価指数 長期時系列データ 中分類指数(1970年~最新年)」 世界は減税 日本は増税→没落? 理不尽な未来は拒否したい 2019.07.14 世界は減税 日本は増税→没落? 理不尽な未来は拒否したい HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「福祉のために増税」は当然ではない 米中貿易戦争だけでなく、10月の英国のEU離脱などを見込み、世界では厳しい見通しのもとに減税を進める国が増えています。 安倍政権は増税を進め、日本は「社会保障のために増税」という論調が根強いのですが、違う路線を取る国も多いのです。 例えば、福祉国家のスウェーデンでも減税は行われています。 同国は今でも高税率ですが、近年は、金の卵を産むガチョウを殺さないように、企業や富裕層への課税を緩める措置が取られました。 ◆スウェーデンが減税 揺らぐ福祉国家 スウェーデンでは、社会民主労働党政権が19年4月に「高所得者層向けの減税」を打ち出しました。 約780万円相当(70万スウェーデンクローナ)以上の所得層にかかる「富裕税」が廃止されます。 通常の所得税に上乗せする5%の追加課税が廃止され、高齢者介護や海外援助の削減などが行われるのです。 スウェーデンは、2004年に富裕層の海外への資産移転を止めるために相続税廃止も行っています。 (※訂正:以前のHRPニュースで07年と書いたのは間違い。正しくは04年) ◆福祉を重視する欧州でも減税 米国よりも福祉を重視する欧州は税率が高めですが、近年、減税を進める国が増えています。 (本記事の為替計算は、19年は直近為替、17年と18年は年平均で換算。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの数値を用いています。GDPは世界銀行の2017年の数値を活用) 【フランス】 18年9月にフランスは3.2兆円相当(248億ユーロ)の減税案を発表しました。 具体的には法人税や住民税などを減税し、公務員を12万人減らします。 法人税33.3%を段階的に25%まで下げ、企業向けには2.4兆円(188億ユーロ)を減税。 個人向けには住民税などを0.8兆円(60億ユーロ)減税します(18年為替で計算)。 同時に、国防費を1.5倍に増やすプランを立てています(18年の342億ユーロから500億ユーロへと段階的に増やす)。 フランスのGDPは日本の半分よりもやや多い程度なので、もし、マクロン政権のプランをわが国で実践したら、6兆円が減税され、7兆円台に防衛費が増えます。 安倍首相は保守だと思われていますが、実際は、マクロン大統領よりも「左」の財政政策です。 日本の保守層は、マクロンよりも左派寄りの政治家に未来を託しているのかもしれないのです。 【オーストリア】 オーストリアは、本年5月に、2023年までに年間8000億円相当(65億ユーロ)を減税する方針を決めました。 法人税を25%から21%へと段階的に下げ、年間所得11000~31000ユーロの所得にかかる税率を5%下げるなどの措置を取ります。 ・11000~18000ユーロ:25%→20% ・18000~31000ユーロ:35%→30% ・31000~60000ユーロ:42%→40% オーストリアのGDPは日本の9分の1ぐらいなので、わが国のGDPに合わせると、65億ユーロ減税は7兆円減税と同じぐらいのインパクトです。 【イタリア】 19年6月にイタリアのディマイオ副首相(「五つ星運動」党首)は「減税の確約を尊重する」と表明。 サルビーニ副首相(「同盟」党首)は「100億ユーロ以下の減税は本格的な減税ではない」とし、「それをさせてもらえないのなら、グッバイと言って去る」と述べています。 100億ユーロは1.2兆円。 イタリアのGDPは日本の4割程度なので、我が国で言えば「財務大臣が3兆円以下の減税など、減税ではない」と言ったようなものです。 麻生大臣が、サルビーニ氏のようなことを言う姿はまったく想像できません。 日本とは真逆の路線です。 なお、コンテ伊首相は、減税については、サルビーニ氏以上に「野心的」だとも報じられています。 ◆英国、豪州も減税 【英国】 英国では、メイ政権下で19%の法人税が20年4月以降は17%になることが決まっています。 今後の英国では、保守党党首選でEU離脱派のジョンソン前外相が勝っても、対抗馬であるハント外相が勝っても、減税が行われる見込みです。 ジョンソン氏は税率40%がかかる所得区分を5万ポンドから8万ポンドに上げ、年約96億ポンド(約1.3兆円)を減税すると述べています。 同氏は、16年の国民投票でEU離脱が決まった日に、消費税に相当する付加価値税について「英国経済の必要に応じて法律を通し、税率を決められるようになる」とも述べていました。 EU加盟国は、付加価値税の税率を自由に決めることができないからです。 また、ハント外相のほうは、法人税率を17%から12.5%に下げると述べています。 【豪州】 オーストラリアでは19年7月、保守連合が10年間で1580億豪ドル(約12兆円)の減税法案を成立させました。 約1000万人の低・中所得者層が「法案成立後1週間以内に最大1080豪ドル相当(※約8万円)の払い戻しを受ける」とも報じられています。 豪州のGDPは日本の27%程度なので、これは、わが国の経済規模にあわせると、1年あたり4.4兆円の減税を10年間続けるようなものです。 豪州は、他国と比べると大がかりなプランになっています。 ◆インドも減税 インドでは、モディ首相が19年2月に所得税控除枠の倍増を打ち出しました。 ・控除枠を年25万ルピー(39.5万円)から50万ルピー(79万円)に増額 ・2軒目の家の購入にかかる税金を免除 ・1億2000万世帯の低所得農家に年6000ルピーの所得補助 低所得者から中間層への支援を打ち出しています。 ◆最大の減税国は中国 そして、アジア最大の減税国は中国になろうとしています。 景気が減速・悪化する中国では3年連続での減税が進んでいます。 ・17年:1兆元(約16兆3000億円 ・18年:1兆3000万元(約21兆3000億円) そして、19年の「政府活動報告」によれば企業税と社会保険料負担が約2兆元(約31兆円)減ります。 米国の減税は1年あたり16~17兆円程度なので、ここ3年の減税規模は米国を上回っています。 上海財経大学・胡怡建院長は、2兆元減税のうち増値税減税は約8000億元(約12兆4000億円)を占めると見積もりました。 減税の四割が消費税にあたる税金なのです。 この「増値税」が製造業などで16%から13%に下がり、交通・運輸業、建築業などでは10%から9%になります。 中国のGDPは日本の2.5倍なので、この増値税減税は、自民公約の増税分(5~6兆円程度)を減税するようなものです。 中国の2兆元減税は、日本のGDPに合わせると、消費税増税をやめて、法人税(12兆円)の半分を減税するような政策に近いと言えます。 (※社会保険の企業負担率も、都市部従業員の基本養老保険が19%から16%に下げられる) ◆「日本だけが増税→没落」という理不尽な結末を避けよう 各国の減税プランは、日本の消費税増税と同規模か、それ以上のものも少なくありません。 仮に、日本が増税したのと同じ規模だけ減税した国があれば、その差は二倍になります。 景気対策をした国と増税した日本とでは、成長率に差が出るわけです。 その先にあるものは、日本経済の凋落と競争力の低下にほかなりません。 幸福実現党は、そうした理不尽な未来を避けるべく、消費税の5%への減税と法人税の1割台への減税を訴えてきました。 日本経済の発展がなければ、年金の未来もありません。 増税ではなく、減税が日本には必要なのです。 【参照】 ・三菱UFJリサーチ&コンサルティング「外国為替情報 前年の年末・年間平均」 ・同上「外国為替相場一覧表」 ・ロイター「焦点:揺らぐスウェーデンの平等社会、富裕層減税で格差拡大へ」(Simon Johnson 2019/04/11) ・日経電子版「仏3兆円減税 成長促す 予算案 失業率改善へ法人税下げ」(2018/9/26) ・JETRO「政府、法人税、所得税の引き下げを柱とした大型減税を発表(オーストリア)」(2019/5/13) ・ブルームバーグ「ジョンソン前外相、英首相選出なら法人・所得税を減税も-テレグラフ」(Sarah Kopit、2019/6/10) ・ロイター「英首相候補ハント氏の減税・歳出案、費用は年360億ポンド」(2019/6/27) ・朝日新聞デジタル「英国の「消費税」どうなる? EU離脱で減税説と増税説」(寺西和男 2016年/6/27) ・同上「豪上院、1100億米ドル規模の減税法案を可決 経済押し上げに向け」(2019/7/4) ・日経電子版「モディ政権、所得減税を公約 支持率挽回狙う」(2019/2/1) ・AFP通信「中国の2兆元の減税と費用削減 どのように行うのか?」(2019/3/18 東方通信の転載記事) 安倍政権の「実感なき景気回復」 その原因は何? 2019.07.13 安倍政権の「実感なき景気回復」 その原因は何? HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「家計消費」を語らない自民党 安倍首相は政見放送で、経済政策について、雇用の増加や賃上げなどの成果を強調しました。 自民党の公約をみても、国民総所得や可処分所得の増加などの「よい数字」が並べられています。 しかし、政見放送でも、公約でも、なぜか取り上げられない統計があります。 それは、家計消費です。 国民が景気のよさを実感しているかどうかは消費に反映されますし、参院選は、消費税10%の是非が問われる最後の機会でもあるので、この問題を無視して経済を語ることはできません。 ◆実は、家計消費は横ばいに近い 自民党の公約パンフレットでは「消費」ではなく「所得」が増えたことがPRされていました。 ・国民総所得:506.8兆円(12年9~12月)⇒573.4兆円(19年1~3月) ・可処分所得:292.7兆円(2012年)⇒302.1兆円(2017年) 伸び率を見ると、国民総所得は13%。可処分所得は3%。 しかし、消費まで見ないと、経済の実態は分かりません。 2012年度から18年度までの消費の伸び率は、所得よりも低いからです。 統計上の家計消費は6000億円ほど増えており(5957億円)、伸び率は2%程度。 これは、GDP統計の中にある「家計最終消費支出」の数字ですが、ここには「帰属家賃」という「みなし」の数字が含まれているので、実態とは違います。 (帰属家賃は、持ち家のある家計が「家賃を自らに支払う」と仮定する。実際のお金は動いていない) これを引いた「除く持ち家の帰属家賃」での家計消費を見ると、2012年度から18年度までで2000億円程度(2130億円)しか増えていません。 6年間で1%の伸び率なので、ほとんど横ばいに近いのです。 ◆近年のGDP統計の傾向 さらに、2012年度から18年度のGDP統計には、以下の傾向があります。 (1)正味での家計消費の伸びが少ない (2)政府の消費が伸びている (3)公共投資は増えていない (4)民間の設備投資が伸びている(※16年度のGDP基準改定での底上げに助けられた) (5)「輸出ー輸入」の赤字幅が減った このうち、3つは望ましい傾向とは言えません。 (4)はよい傾向ではありますが、やや上増しの可能性があり、(5)に関しては、単体でよしあしを論じられません。 国内消費が旺盛であれば、米国のように、輸入超過でもGDPは伸びるからです。 ◆安倍政権下で、GDPの各項目はどのように増減した? まず、2012~18年度の実質GDPをみると、50兆円から53.5兆円に増えています。 その6割を占めるのは、家計消費です。 ・家計消費:28.6兆円⇒29.2兆円 ・家計消費(除く持ち家の帰属家賃):23.6兆円⇒23.8兆円 そして、政府が払う公務員の給料や物品・サービスの購入費などを示す「政府最終消費支出」は、正味の家計消費(約2000億円)の三倍の増額となっています。 ・政府消費:10.1兆円⇒10.7兆円 将来のための「公共投資」は500億円しか増えないのに、政府の消費は、その12倍も増えているのです。 ・公的資本形成:2.45兆円⇒2.5兆円 民間企業の設備投資は1.5兆円増えました。 ・民間設備投資:7.2兆円⇒8.7兆円 そのほか、金融緩和による円安などもあって「純輸出(輸出ー輸入)」の項目は6000億円ほど赤字が減っています。 ・純輸出:-8000億円⇒-2000億円 (※その他、民間住宅や在庫などは数百億円程度の変動なので略) ◆やはり、「実感なき景気回復」なのか? いちばん増えたのは、民間企業の設備投資です。 これは、日本企業が国際競争に取り遅れまいと努力しているためです。 その増加は、金融緩和で金利が下がったことにも助けられています。 また、GDPを国際基準に改定し、近年、増え続ける研究開発費を設備投資に計上したことで、増加分が大きくなりました。 この改定自体に善悪はありませんが、研究開発は実りを生むまでに時間がかかるので、この増加分は、すぐに国民に恩恵が感じられるようなものではありません。 設備投資の増加は将来の成長につながるので、プラスに捉えるべきですが、政府のあり方と家計消費には注意が必要です。 政府消費が伸びても、民間企業で働く国民は豊かさを実感できません。 また、公共投資が増えないことは、国民が使うインフラがよくならないことを意味しています。 ◆国民が豊かさを実感できる「景気回復」とは? 現在、安倍首相が訴える、雇用の改善などの「成果」は金融緩和に伴うものが目立っています。 しかし、幸福実現党が09年に金融緩和を訴えた時は、同時に減税を訴えていました。 そうしなければ、国民に恩恵が行き渡らないからです。 金融緩和をすれば、モノに対するお金の量が増え、円安になりますが、その場合、原材料費が上がるので、必需品の値段も上がります。 そこに消費税が上乗せされれば、財布のひもが閉じるのは当たり前です。 円安になれば輸出企業の勢いは増しますが、国内を中心に活動する中小企業がコストアップで苦しむケースが増えます。 やはり、金融緩和だけでは足りません。 そのため、幸福実現党は、同時に消費税5%への減税を目指し、さらなる日本の景気の底上げをはかってまいります。 【参照】 ・内閣府HP「国民経済計算(GDP統計)年次GDP実額(実質)時系列データ」 すべてを表示する « Previous 1 2 3 4 … 11 Next »