Home/ 2022年 June 2022年 June インフレにどう立ち向かうか【前編】 2022.06.30 http://hrp-newsfile.jp/2022/4307/ HS政経塾スタッフ 赤塚一範 ◆物価高に苦しむ家計 物価の上昇によって、国民生活はダメージを受けています。「家計の値上げ許容度が高まっている」との最近の黒田総裁の発言に対する批判の厳しさからも、それは明らかです。 しかし、そもそもデフレ脱却、インフレ率2%の達成というのは、2012年末に安倍政権が誕生して以来の目標だったはずです。 統計では2022年4月、物価上昇率は悲願の2%を超え(5月は2.1%)、完全失業率も2.5%まで減少しほぼ完全雇用状態です。 ですが、国民生活は苦しくなるばかりです。今回のインフレの何が悪かったのでしょうか。 このインフレの苦しみの原因として、企業が賃上げをしないから、コロナやウクライナでの戦争でサプライチェーンが混乱したから、日銀が金融緩和を止めないから等々が言われています。 実際、今回の悪性インフレにはそれら要因もからんでいるでしょう。日本はこのインフレとどう向き合い、どのような手を打つべきなのでしょうか。 ◆バラマキばかりの政策 今回の参院選では、各政党の物価対策が争点となっています。各政党の経済政策をまとめると、次のようになります。 (1)消費税やガソリン税等の減税(立民、維新、れいわ、国民民主、共産) (2)特定分野、家計への補助金(自民、公明、立民、維新、れいわ、国民民主、共産) (3)賃上げのための制度づくり(自民、公明、立民、れいわ、国民民主、共産) これらは、物価上昇で困窮する家計を財政的に支援する政策ですが、基本的にバラマキといって良いでしょう。 現在の日本の状況を踏まえると、これら政策は瞬間的に家計を助けることになっても、結局はより大きなマイナスを生み出してしまう麻薬のような政策なのです。 今必要な政策は、この逆で、バラマキを縮小し、消費を抑制すると同時に、貯蓄を増加させ、社会資本を強化していくことなのです。 ◆バラマキは日本の病気を悪化させる 現在の日本を例えると、病気の痛みに耐えきれず、麻薬を打ち過ぎて精神が壊れかけている人間のような状態です。麻薬は、手術の痛みを緩和するなど、上手に使えば、身体を健康にするでしょう。 しかし、病気の根本を解決せず、麻薬だけに頼っていれば、病気は悪化しますし、麻薬依存症となり心も壊れてしまうでしょう。 現在の日本に必要なのは、先に述べた(1)(2)(3)のような麻薬政策を打ち続ける「一時的な痛み止め」ではなく、根本的な治療です。 もしそれをしないなら、日本は、より重い病気、つまり更なるインフレになってしまうかもしれないのです。 ◆物価上昇の意味 「価格は情報伝達のシグナルである」これは、ノーベル経済学賞を受賞した自由主義経済学者フリードリヒ・ハイエクの言葉です。 彼によれば、価格の上昇とは、その財は貴重であり、その財は節約され効率的に使用されなければならないというシグナルです。 例えば、銅の価格が上がっているとすれば、それは銅が貴重になっており、今ある使用法から銅を引き抜き、より消費者のニーズがあり効率的に使用される分野に銅が使われなければならないのです。 では、物価上昇は何を意味するのでしょうか。物価とは、経済にある商品の価格を集計し、指数化したものです。 物価とは、マクロ経済学的概念であり、ハイエクのいうミクロ的な意味での価格とはやや違いますが、次のようなことが言えるでしょう。 物価上昇とは、需要に対して、商品全体が不足している、供給力が弱っているということを意味します。 また、他方で、今ある日本の貴重な資源が効率的に使用されておらず、その使用方法から資源を引き抜き別の場所で使用されなければならないというシグナルでもあります。 つまり、インフレの要因とは、供給力の低下であり、資源の無駄遣いなのです。これが日本の根本的病気なのです。もちろん、海外が原因によるインフレも、不要な投資拡大やコロナ対策、戦争も資源の浪費です。 (後編につづく) 給付金は「資本主義の精神」を破壊する――守るべきは、近代日本を築いた「勤勉の哲学」【後編】 2022.06.29 http://hrp-newsfile.jp/2022/4304/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆経産省がスポーツ賭博の解禁を検討? 現政権のいう「資本主義」の中身の疑わしさは、他の例をみてもよくわかります。 6月7日、読売新聞が朝刊一面で「スポーツ賭博の解禁案、経産省議論へ」と題した記事を掲載しました(※読売の独自取材)。 そこでは、「経済産業省が、スポーツの試合結果やプレー内容を賭けの対象とする「スポーツベッティング(賭け)」の解禁に向けて取りまとめた素案が判明した」と報じられています。 同紙によれば、素案には、野球やサッカーなどのスポーツを見ながらスマホなどで試合の勝敗などを賭ける「スポーツ賭博」を解禁し、賭けを運営する業者からお金を取れば、スポーツ業界の収益増につながる、という構想が書かれているそうです。 しかし、それが解禁されれば、ギャンブル依存症患者の増加が懸念されます。 最近は、「試合中に選手が次にどんなプレーをするか」ということも賭けの対象になっているので、それが選手の八百長行為を招きかねません。 そのため、読売は「八百長やギャンブル依存を招きかねないスポーツ賭博には反対論が強く、スポーツ界はじめ各界の猛反発は必至だ」と結んでいました。 こうした政策もまた、資本主義の精神に反しています。 富というものは、「勤勉の上に築かれなければならない」からです(大川隆法著『釈迦の本心――政治編』宗教法人・幸福の科学)。 これは、安倍政権の頃から続く、「公営ギャンブル」の範囲を広げるプランです。 自公政権は、刑法では賭博が禁じられているのに、特別な法律で例外的に認められる競馬や競輪などの「公営ギャンブル」を増やし、経済を活性化させようとしてきました。 2018年には、カジノを含んだ統合型リゾート(IR)施設を整備する「IR推進法」が成立しています。 これに対して、大川隆法党総裁は、次のように批判しました。 「個人の罪のほうを放置して、公のほうがそれを推進するのは、バランスを欠いているのではないでしょうか」 (カジノを)「『違法ではない』とするだけの根拠がありません。公がカジノをしたとしても、個人の破滅につながる恐れがあることでは同じだからです」(大川隆法著『繁栄への決断』幸福の科学出版)。 今回の経産省の「スポーツ賭博の解禁案」も、同じ問題を抱えています。 「お金が儲かり、税収増につながるから、それでいい」というのでは、経済倫理は成り立ちません。 ◆「資本主義の精神」があってこそ、経済政策は意味を持つ 岸田首相は「新しい資本主義」を目指し、「分配なくして次の成長なし」と訴えました。 自民党は、給付金の「分配」に力を入れています。 公明党も、立憲民主党も、国民民主党も、共産党も、れいわ新選組も、負けじと分配を叫んでいます。 しかし、資本主義の根本には「勤勉の哲学」がなければなりません。 大川隆法・幸福実現党総裁は、岸田首相が分配のことばかりを考えていることに警鐘を鳴らしています。 前任者(菅首相)は、まだ「自助・共助・公助」と言っていましたが、岸田首相からは「勤勉に働く」という言葉が、まったく出てこないからです。 そして、「勤勉の哲学」を体現した二宮尊徳の生き方のなかにこそ、「資本主義の精神」があると指摘しました。 (以下、大川隆法著『減量の経済学』幸福の科学出版より引用) (尊徳は)「荒れ地を開墾して菜種を植えて、油を採って、それをまた売ってお金に換えて、自分でゼロから価値を生み出しています。 そして、とうとう背中に薪を背負って、本を読みながら歩いている、小学校によく立っていた二宮尊徳像、あれが「資本主義の精神」なのです。 だから、質素倹約をするところでは質素倹約をしながら、「勤勉の哲学」を失わずに自分の時間密度を高めていく。それから、人間的活動としての付加価値を増やしていく。これが全体の潮流になってくれば、国としては発展して富んでいくことになるわけです」 (引用終わり) 今の日本では、与党も野党も、給付金の分配を公約し、国民の「勤勉さ」を失わせるような経済政策を掲げています。 これは、ひとときのバラマキで票を稼ぎ、国民の未来を奪う、亡国の道です。 我われは、「地獄への道は善意で舗装されている」という格言を忘れてはなりません。 本来、資本主義の根源にあるものは、「時は金なり」という格言を体現したベンジャミン・フランクリンのような勤勉な生き方だからです。 二宮尊徳のように、「質素倹約をしながら、『勤勉の哲学』を失わずに自分の時間密度を高めていく」生き方です。 日本が明治以降、栄えてきたのは、そうした「勤勉の哲学」をもった偉人が数多く出てきたからです。 「天は自ら助くる者を助く」と訴えたサミュエル・スマイルズの『自助論』が翻訳され、ベストセラーになったころ、豊田佐吉は産業報国の志を立て、今のトヨタグループの源流を築きました。 我われが今、豊かな国で生きているのは、当時の人々が、志を立て、刻苦勉励する生き方を、後世の人たちのために残してくれたからです。 そうした伝統を破壊し、分配ばかりを欲しがる人を増やすような経済政策は間違っています。 バラマキ政策が主流になれば、「再配分システムのなかにおいて、個人個人がやる気をなくしていって、真面目に働いた者がバカを見るというような社会」がやってきます。 そうした暗黒の未来を阻止し、日本の未来を拓くためにも、幸福実現党は、小さな政府と安い税金、勤勉革命の実現を訴えてまいります。 【参照】 ・大川隆法著『減量の経済学』幸福の科学出版 ・大川隆法著『繁栄への決断』幸福の科学出版 ・大川隆法著『釈迦の本心――政治編』宗教法人・幸福の科学 ・朝日デジタル「コロナ給付金詐欺容疑者、20代以下68% SNSで『安易に加担』」編集委員・吉田伸八 2022年6月15日 ・読売オンライン「【独自】スポーツ賭博の解禁案、経産省が議論へ…八百長や依存症懸念で猛反発は必至」2022/06/07 給付金は「資本主義の精神」を破壊する――守るべきは、近代日本を築いた「勤勉の哲学」【前編】 2022.06.28 http://hrp-newsfile.jp/2022/4303/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆バラマキ政策が並ぶ各党参院選の公約 参院選に向けて、多くの政党が、票を求めて様々な交付金を公約しています。 自民党、公明党、立憲民主党だけを見ても、補助金や交付金、手当といった言葉が目白押しです。 自民党は「1兆円の地方創生臨時交付金」や「赤字でも賃上げする企業に対する補助金」「事業再構築補助金、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金」「出産育児一時金の引上げ」「大胆な児童手当や育休給付の拡充」などを公約。 公明党は「中小企業の賃上げを支援する補助金の拡充」「ものづくり、事業再構築、持続化補助金等」における「グリーン枠」の拡充、結婚と出産から保育、高等教育までの無償化をはかる「子育て応援トータルプラン」の策定、「基礎年金の再配分機能の強化」などを掲げました。 立憲民主党は「燃料等の購入費補助」「事業復活支援金の支給上限額倍増」「年金生活者支援給付金」「給付付き税額控除」「高校の授業料無償化や児童手当の所得制限撤廃」「児童手当などの延長・増額」で対抗したので、結局、どちらが多くのお金を配るか、という競争になってきています。 まるで打ち出の小槌があるかのように、大盤振る舞いのメニューが並んでいます。 配る金額の規模は、自民党よりも公明党のほうが大きく、立憲民主党や国民民主党よりも共産党のほうが大きいのですが、どの政党も、目指しているところは同じです。 それは、バラマキにほかなりません。 「身を切る改革」を掲げる維新の会は違うのではないか、と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらも、基本政策に「ベーシックインカム」を掲げ、全国民にお金を配ろうとしているので、結局、目指すところは同じです。 今の日本で、「小さな政府」と「減量」を訴えているのは、幸福実現党だけだと言えるでしょう。 ◆お金を配ってインフレに対抗? そんな馬鹿な・・・ コロナショック以降、給付金が大量に配られましたが、最近では、それが「物価高対策としてお金を配るべきだ」という政策に変わりつつあります。 4月26日には、政府が、地方創生臨時交付金を拡充し、1兆円の「コロナ禍における原油価格・物価高騰対応分」という枠を創設。 国会では、5月31日に、物価高騰対策を盛り込んだ2.7兆円の補正予算が成立し、そのうち、1.7兆円が原油高対策の補助金とされています(石油元売り会社への補助金)。 これに対して、立憲民主党をはじめとする野党は「岸田インフレ」と戦うために、もっと多くのお金を配ろうとしているのです。 しかし、これらの政策には、根本的な間違いがあります。 今のインフレは、コロナ対策で日銀が大量のお金を刷り、政府が大量のお金を使ったことで引き起こされました。 インフレの原因である「お金を配る」政策で、インフレ対策をすることはできません。 なぜ、インフレが進むのかというと、物やサービスの総量はたいして変わっていないのに、お金だけが大量に増えているからです。 物やサービスの総量が変わらない中で、お金の量が増えれば、1円あたりの価値が下がるのは当然です。 さらに、米国やヨーロッパが市場に流すお金を減らす中で、日本だけがお金をたくさん刷り続けているのですから、ドルやユーロに対して円は安くなっていきます。 日本は、食料や燃料、資源を外国から輸入しなければ経済が回らないので、円安になると、今までと同じ値段で製品がつくれなくなります。 そうなると、今まで110円で変えたものが120円、130円と値上がりし、生活が苦しくなっていきます。 そして、「物価高で生活が苦しい」という声が大きくなると、政治家はお金を配ることを約束しますが、それは、未来の物価高を生み出すので、何も問題は解決しません。 のどが渇いた人が塩水を飲み、もっとのどが渇くのと同じことです。 結局、バラマキをやめ、幸福実現党が訴える「減量の経済学」を実践しないと、物価高対策はうまくいきません。 政府の無駄な仕事を減量し、無駄に使われているお金や、見通しなく配られているお金を減らさないと、「また値段が上がった」と嘆く毎日を、延々と過ごさなければいけなくなります。 今回の物価高は、ロシアとウクライナの戦いの影響を受けていますが、本当の原因は日本国内にあるということを忘れてはなりません。 ◆給付金によって壊れる「経済倫理」 給付金には、それ以外にも、危険な一面があります。 それは、努力なくお金をもらえることをきっかけにして、悪の道に転落する人が出てくる、ということです。 例えば、最近、朝日新聞で、コロナ給付金詐欺の容疑者は、20代以下が7割を占めているということが報じられていました。 警察庁によれば、給付金詐欺で、昨年7月から今年の5月末までに摘発された3770人のうち10代と20代が68%を占めました。 (朝日デジタル「コロナ給付金詐欺容疑者、20代以下68% SNSで『安易に加担』」編集委員・吉田伸八 2022年6月15日) 警察庁幹部は、その人たちについて「申請名義人として使われたケースが多いと思われる」「若者がSNSなどを通じて、安易に犯罪に加担している状況がうかがえる」などと指摘しています。 若者が多いのは、日本の給与体系では若い人の年収が少ない、という背景もあるのでしょう。 しかし、「給付金」が悪の誘惑を生み出していることは見逃せません。 「努力をしなくてもお金をもらえる」という仕組みが、倫理の元になる「縁起の理法」に反しているからです。 努力なくして豊かさを望むのではなく、やはり「善因善果、悪因悪果」という掟に従い、経済倫理のもとに「豊かさ」を求めることが大事です。 ヨーロッパで資本主義ができたのは、宗教改革の後にできたキリスト教徒(プロテスタント)の倫理があったからだと言われています。 神の栄光を地上に著すために、人との契約を守り、勤勉に努力し、時間あたりの効率を上げていく人たちが、豊かな社会をつくり出してきました。 岸田総理は「新しい資本主義」を訴えているのに、こうした「倫理」の大切さを忘れています。 給付金が、人の勤勉の精神を奪い、転落の道にいざなっている事実からは目をつぶっているのです。 (後編につづく) 「もうロシアとケンカしたくない!」が世界の本音? 【後編】 2022.06.27 https://youtu.be/aJS-Y8Bg52E 幸福実現党党首 釈量子 ◆アジア・アフリカで広がるロシア擁護の動き 実際、トルコから見た東方世界、中東・アジアに目を向ければ、「極悪な侵略者ロシア、可哀そうなウクライナを助ける欧米諸国」という日本のメディアにありがちなステレオタイプとは、全く異なった見方がされています。 例えば、ドバイを抱えるアラブ首長国連邦UAE、サウジアラビアといった伝統的な親米国が、トランプ政権からバイデン政権になってから、急速に距離を取りつつあります。 UAEに至っては、3月初旬に行われた国連安保理の「ロシアへの非難決議」で棄権票を投じ、ここまでアメリカ離れが進んでいるのかと、世界に衝撃を与えました。 UAEが誇る中東随一の経済都市ドバイは、経済制裁で苦しむロシア企業や富裕層にとって、うってつけの海外拠点となりつつあります。なんとドバイの不動産市場では「ロシア人マーケットがいま最も盛況」と言われています。 UAEの旧宗主国は英国なのですが、欧米諸国の対ロシア制裁に同調しないという姿勢をはっきりとさせています。(WSJ) ようやく原油増産に応じたサウジアラビアも、米バイデン政権から再三の懇願は無視し続け、電話も出ないという状況で、ロシアと歩調を合わせてきました。 3月には、サウジアラビアと中国の間で、原油取引の一部を米ドルから中国元で決済するという取り決めの可能性が報じられました。 石油のドル決済こそ、ドル覇権の力の源泉なので、大きな流れです。米国から中露へのシフトが顕著です。 また、アフリカ諸国も、ロシアやウクライナに食料を依存している地域ですが、欧米側の肩を明確に持つ国はあまりないのが実情です。 6月3日、アフリカ連合の議長国セネガルのサル大統領がプーチン大統領とソチで会談を行い、「欧米の対ロ制裁でロシア産の穀物がアフリカに届かなくなっており、制裁が状況を悪化させた」と訴えています。 それに対してプーチン大統領は「ロシアは常にアフリカの側にあり、植民地主義との戦いでアフリカを支援してきた」と語っています。 更にインドは、安保理決議ではUAEと同じく棄権票を投じましたが、ロシアとは軍事装備上、切っても切れない関係があり、明確に欧米側に付くことは考え難いと言えます。 ◆欧米諸国の中から噴出する「ロシアとケンカしたくない!」の声 最近になって、欧米諸国の内部からも、長引くウクライナ戦争や対ロ制裁について、「かえって自分たちの首を絞めかねない」と否定的な意見も多くなってきました。 ハンガリーは、EU加盟国ですが、NATOが5月4日にロシア産原油の輸入禁止を柱とした追加制裁を発動すると、これに強く反発しました。ロシア正教トップの総主教キリル1世への制裁もハンガリーの反対で見送られています。 ハンガリーはロシア産の原油がないと国が立ち行かなくなるので、制裁案を飲むなんてことは、「ハンガリー経済にとって核爆弾だ」というくらいの大打撃になるのは間違いありません。 ハンガリーのオルバン首相も、エルドアン大統領同様、プーチン大統領との個人的な信頼関係が強く、また宗教的・民族的な価値観など、EUという「外形的な枠組み」よりも、更に深いところでつながっているようです。 このように、欧米諸国も一枚岩ではありません。 停戦交渉についても、ドイツ、イタリア、フランスはロシアとの対話による和平を重視する一方、ロシア嫌いの英国やポーランド、エストニアなどバルト3国は「ウクライナの軍事的勝利が解決」と強硬路線を採り、EUに大きな亀裂が走っています。 米国では、対ロ制裁によるエネルギー価格の上昇などインフレ傾向が加速し、選挙には悪影響、もはや完全に逆効果になりつつあるようです。 米国が考える和平案の中には、ウクライナ保全の見返りに、NATOに対するウクライナ中立化や、クリミアやドンバスなどに関する対ロ交渉も議論の枠組みに、もう含まれていることが報道されてきました。 ◆「欧米追従」を貫く日本、いつの間にか肩透かしを食らうかも 世界大戦にエスカレーションするか否か、緊迫する世界情勢の中で、「機を見るに敏」で立ち回る国際社会の中で、日本政府の「欧米追従」の姿勢は変わる気配を見せません。 バイデン政権がアフガンにおいて、20年間で8兆ドルも投じたのに手のひらを返して撤退してしまったように、いつの間にか肩透かしを食らい、割を食うのは日本だけ、という事態にもなりかねません。 地政学的に見ても、ロシアを敵に回して最も危険度が高いのは欧州のどの国よりも、中国・北朝鮮・ロシアの3ヵ国に囲まれた日本かもしれません。 日本が本来担うべきは、トルコのように東西文明の懸け橋にならんとする、もっと大きな役割であるべきです。 そのためにも、世界の行く末をよき方向にリードしていこうとする積極的でダイナミックな立ち回りこそ、日本に求められているのではないでしょうか。 「もうロシアとケンカしたくない!」が世界の本音? 【中編】 2022.06.26 https://youtu.be/aJS-Y8Bg52E 幸福実現党党首 釈量子 ◆トルコが実質的に「世界大戦」化を防いでいる? もう一つ、別の視点から見て、世界大戦に広がりかねない火種を、結果的にトルコが抑えているのが現状です。それがスウェーデンとフィンランドのNATO加盟への反対です。 5月29日、トルコのエルドアン大統領はこの両国のNATO加盟は「認められない」との認識を改めて示しました。 1か月以上、両国との協議を進めてきましたが、現時点ではトルコにとって「期待したレベルに達していない」と判断した模様です。 その一つの判断材料となるのが、5月下旬にトルコからスウェーデンに示されてきた「条件リスト」の中身です。 基本的には、スウェーデンが、テロ組織の隠れ蓑となって、武器支援や財政的支援を行っていることへの強い不満が表明されています。 特に、トルコではクルド人勢力の問題があります。 クルド人というのは、トルコやシリア、イラク、イランなど国を超えて住んでいる民族で、約3000万人いると言われます。このクルド人は自分たちの国を持ったことがなく、「国を持たない最大の民族」と呼ばれています。 1980年代に、トルコでは「クルド人など存在しない」と主張して、国内にいる少数のクルド人を弾圧しました。すると、クルド労働者党(PKK)がトルコ国内で武装闘争を開始し、死者が4万人を超えてしまいました。 しかし、クルド人は独立を果たすことができず、トルコにとっては「テロ組織」と危険視しています。 一方、シリアやイラクに横断して住んでいるクルド人たちが、アメリカや欧米から支援を受けてIS(イスラム国)に対して、勝利しました。その見返りに、クルド人たちはシリア北部で自治区を作って独立を果たそうとします。 これにはトルコが警戒し、2019年シリア北部に侵攻して、クルド人20万人ぐらいが家を失ったとされます。 非常に複雑な歴史があり、トルコは「条件リスト」で、スウェーデンがクルド系組織を支援していると指摘して抵抗しているわけです。 ただ、トルコのこの動きが、結果的に、戦争の拡大を防いでいると言っても過言ではありません。 万が一、ロシアと国境を接するフィンランド、そしてスウェーデンがNATOに加盟したら、プーチン大統領にとってはウクライナ同様、レッドラインを超えたと見做すはずです。 実際に、5月下旬、フィンランド国境にロシア軍部隊を増強しています。 そういう意味からみれば、結果的にトルコの反対が世界大戦への波及を防いでいることは確かです。 ◆プーチンとエルドアンの不思議な絆 歴史的には、トルコは、クリミア戦争などで象徴されるように、隣国ロシアの南下政策には苦しめられてきた経緯があります。 現在進行形でシリアやリビアでは、ロシアと対立関係にもありますし、ウクライナにはトルコ製のドローン兵器を輸出してロシア軍と対峙したりもしています。 ところが、トルコ中東問題の専門家によると、「長年それぞれ国のトップを張り続けた、プーチン大統領とエルドアン大統領の間には、特別な絆、定期的に対話を重ねる信頼関係がある」と言われています。 エルドアン大統領に関する「指導者」としての評価は横に置きつつも、いま、核戦争につながりかねない世界大戦を未然に防いだほうがいい、という判断をしているのは注目されます。 (後編につづく) 「もうロシアとケンカしたくない!」が世界の本音? 【前編】 2022.06.25 https://youtu.be/aJS-Y8Bg52E 幸福実現党党首 釈量子 ◆ウクライナの「停戦仲介」に名乗りを挙げたトルコ ウクライナ戦争が開戦から4ヶ月半が経過しましたが、いま停戦の「仲介役」として本格的に名乗りを挙げ、世界から動向を注目されている国があります。 それが、東洋と西洋の狭間に位置する国トルコです。 3月から両国に停戦交渉の場を提供してきたトルコですが、5月30日、トルコのエルドアン大統領は改めて、ロシアのプーチン大統領、またウクライナのゼレンスキー大統領と電話協議し、両国の仲介に意欲を示しています。 それに合わせて、プーチン大統領にとって開戦後、初の外遊となるトルコ訪問について、ロシア大統領府は「準備している」ことを明らかにしました。 特に世界を危機に陥れている食料や肥料等の供給網の復旧、要するに、穀物、ヒマワリ油や肥料類などの輸出ルートが確保できるかどうか、という点が注目されています。 ◆ロシアではなく、ウクライナ?黒海封鎖の真犯人とは 欧米側のスタンスとしては、侵略者ロシア・プーチン大統領が、ウクライナ産の穀物が輸出されないように、黒海に面した港湾を封鎖、「世界に深刻な食料不足を引き起こした」という一面的な批判を展開しています。 一方、プーチン大統領の言い分は真っ向から異なります。 今回の食料危機は「誤った欧米の経済制裁」が原因であり、港湾の封鎖についてはウクライナ側が「港の入り口に機雷をしかけた」と訴えています。これについてもウクライナ側は「ロシアの仕業」だと言っています。 戦場となり、交通インフラが極めて不安定なウクライナは難しいとしても、ロシアとしては国内で収穫された食料の輸出は開戦後も行いたかったはずです。 実際に、ロシア産小麦や大麦、ヒマワリ油などの生産地域は、コーカサス地方やロシア南部など、ウクライナ周辺地域に集中しているため、輸出の主力となる海上ルートは黒海経由となるのが、妥当でしょう。 そういう意味から、機雷によって自国の輸出ルートを自ら潰すとは考え難く、ロシアを悪役にするウクライナ(または西側)側の策略とも考えられます。 そんな中、ロシアと共同しながら、黒海に敷設された機雷の除去という大きな役割を担っているのが、トルコなのです。 ロシアのラブロフ外相は6月1日、サウジアラビアでの会見で「(トルコの)エルドアン大統領と会談した結果、発展途上国にとって必要不可欠な食料物資等(貨物)とウクライナの港の機雷除去を進める手助けをするという合意に達した」とトルコの貢献を、国際社会に報じています。 このように、ロシアと対立関係にあるNATOの一員として、黒海の交通管理という国際的に承認された役割を担いつつ、ロシアとの独自外交で、停戦仲介のメインプレーヤーを演じるトルコが存在感を放っています。 また、6月3日、プーチン大統領はウクライナ産の穀物に関しては、同盟国ベラルーシ経由でバルト海から海上輸送する案が「一番簡単で安価だ」と述べ、条件としてベラルーシの制裁解除を挙げました。 ベラルーシのルカシェンコ大統領も、バルト海の港から自国製品の輸出が出来るようになれば、ウクライナ産の穀物も運ぶ用意があると認めております。 欧米側の制裁が解除されれば、世界を苦しめている食料危機が、実質的に大きく軽減される未来が容易にイメージできます。 (中編につづく) 「日本を守り抜く決意」街宣映像 2022.06.24 ■参院選2022≫「日本を守り抜く決意」 党幹事長、江夏正敏が福岡選挙区に立候補 (6.22初日街宣・博多駅前) https://youtu.be/uczfQQrL0IU ■≪参院選2022≫兵庫選挙区に立候補。 党政調会長・里村英一候補の第一声の街頭演説 https://youtu.be/chCJGH7cp9A ■≪参院選2022 ≫釈量子、第一声後の街頭演説ダイジェスト 神奈川県選挙区のいき愛子候補、埼玉県選挙区のみなと侑子候補の応援へ https://youtu.be/VEb3kJaFJQQ ■国家存亡の危機――この国に「精神的主柱」を 2つの理念と7つの柱 https://hr-party.jp/policy/class/2022/ ■参議院選挙2022特設サイト・候補予定者紹介ページ https://hr-party.jp/ 度重なる増税・バラマキ・・・このままいくとどうなる? 2022.06.23 ■度重なる増税・バラマキ・・・このままいくとどうなる? 【近未来ミニドラマ】「日本倒産」 https://youtu.be/UiLOqLZqBG8 ■参議院選挙2022特設サイト・候補予定者紹介ページ https://hr-party.jp/ ニッポンの防衛費――米国兵器依存から日の丸防衛産業の復活を【後編】 2022.06.19 https://youtu.be/wzo_UbLxDXE 幸福実現党党首 釈量子 ◆日本が見習うべき、ドイツ・ショルツ政権の特別防衛基金 日本にとって大きな参考になるのが、ドイツ・ショルツ政権が決断した防衛費に関する新たなイノベーションです。 日本は「財務省主導型」、いわゆる従来の「予算要求型」で、防衛省が財務省に予算を下さいとお願いする形では、機動的で、十分な防衛配備はできません。 こうした限界を超えるために、例えばドイツ・ショルツ政権は、ロシアによるウクライナ侵攻が欧州に及ぶ危機に対応する形で、「GDP比2%程度」の防衛予算と共に、特別防衛基金として「13兆円規模」のファンド創設を決断しています。 このように、「財務省主導型」から「防衛省(連邦国防省)主導型」に移行することで、より柔軟で機動的な防衛体制の構築につながることは間違いなさそうです。 ◆兵器の米国依存脱却、「日の丸」軍事産業を立ち上げろ! 現在の混迷を深める極東情勢において、中国による台湾や尖閣諸島・沖縄への侵略行為や、北朝鮮によるミサイル攻撃、ロシアによる北海道侵攻など、いつ何時、日本が攻撃される事態が起こってもおかしくない状況になりつつあります。 幸福実現党は、「日本の未来を本当に守り抜くためには」という命題に対して「国防費」についても考えていきたいと思っております。 また、日米首脳会談によって、「防衛費の相当な増額」がなされたといっても、結局、日本の血税は、「相互運用」というアメリカとの「お約束」によって、すべて米国の軍事産業に流れていくのも不都合な真実でしょう。 実際に、海上自衛隊の装備も、ほぼ米国製だともいわれています。 今後、日本では、「防衛産業」を日本の基幹産業として立ち上げていく必要があると我々は考えております。 例えば、北海道の室蘭は「鉄の街」と言われ、日本製鉄や日本製鋼がありますが、その周辺にも、加工技術に優れた中小企業が数多く存在しています。 地元の室蘭工業大学にも航空宇宙工学を研究する学部があり、宇宙開発の研究も盛んに行われているという特徴を備えています。 ロケット発射技術は、電波で誘導すれば軍事で転用できます。日本の地方都市でも大きなポテンシャルがあると言えます。 ◆兵器の米国依存の脱却、「日の丸」軍事産業の立ち上げを しかし、最後にボトルネックがあります。それが「憲法九条」です。「国を護る」のは、予算があって、武器があればいいというものではありません。 いわゆる「平和憲法」の呪縛が、この国の手足を縛り、国防論議もされない中において、「防衛費の相当な増額」を大きな成果だと考える現政権に、はたして国を護り抜くことができるのでしょうか。 更に言えば、日本では大学で軍事に関する研究すらできません。どの国でも大学は国益に資する研究を競って行っています。 軍事研究によって革新的な技術が生まれてきた事例としては、コンピューター、人工衛星、GPS、インターネットなどがあります。アメリカでは大学の軍事研究が国に大きく関わっています。 今の日本は、未だかつてない国防上の危機に立たされています。自国で軍事研究を行うことは、国家の自助努力として欠かすことはできません。 軍事転用できる技術というのは、他国が常に狙っているため、「軍事研究するな」という規制を廃し、防衛力強化につなげていかなくてはならないはずです。 ◆政府がやらなくてはならない仕事 幸福実現党は次の参議院選挙においては「減量の経済学」を掲げております。 デジタル庁や子ども家庭庁や、また新設予定の「健康危機管理庁(仮称)」など、無駄な省庁や役人を減量し、「政府はやらなくてよい仕事はするな」と訴えています。 しかし、「政府がやらなくてはならない仕事」、それが国民の生命・安全・財産を護る「国防」という仕事です。防衛費の拡大と、バラマキや政府の無駄仕事などと、同じにしては断じてなりません。 ウクライナ支援のために、6億ドルを拠出する岸田政権ですが、であるならば、ノーガードの北海道防衛や、いつ何時起こってもおかしくない、中国による尖閣・沖縄など南西諸島侵攻に万全の備えを構築することこそ、必要なのではないでしょうか。 ニッポンの防衛費――米国兵器依存から日の丸防衛産業の復活を【前編】 2022.06.18 https://youtu.be/wzo_UbLxDXE 幸福実現党党首 釈量子 ◆「防衛費の相当な増額」、それは日本の防衛に本当に足りるのか? 5月23日、日米首脳会談の後、岸田首相は「防衛費の相当な増額を確保する決意」について、アメリカの支持を得たことを明かしました。 ここでの「相当な増額」について、安倍元首相は「6兆円の後半という意味ではないか」とコメントしましたが、現時点でははっきりしていません。 2021年度の当初予算は約5.3兆円でしたが、その後、防衛費6兆円を初めて超す予算の補正が加えられました。 安倍元首相が言った「6兆円の後半」が本当であれば、昨年に続いて大幅アップとなることは間違いありません。 しかし、いま日本を取り巻く周辺国の「脅威」からみて、「その防衛費は、はたして妥当なのか」「日本を守り抜くことが出来るのか」、そうした議論が尽くされた上で算出されたものとも言えません。 適正な防衛費を図る一つの指標である、「防衛費GDP比」から見ても、日本は「GDP比1%」の枠から上回ることもなく、ここ50年以上、国際情勢などの激変は無視するかのように、ほぼ横ばいで推移しています。 この「GDP比1%」をその他の主要国と比較してみると、シンガポール約3%(2.98%)、韓国2.78%、英国は2.2%。 他にも、米国3.74%、インド2.88%、ロシア4.26%、イギリス2.25%、サウジ8.45%、ドイツ1.4%、フランス2%など、他国との差は歴然。日本は極めて低水準であると言えます。 ◆横這い日本とは比較にならない軍拡をとげる中国 日本が「GDP比1%」の呪縛に囚われ続けてきた中、急ピッチで軍事費を拡大し続けたのは、お隣の中国です。 実際に、中国政府が2022年に公表した軍事費は約26兆3000億円と、日本の4倍以上ですが、実際はもっと多いとみられています。 その根拠が、アメリカが2021年度に作成した報告書によると、「中国が公表する軍事費はいくつかの主要な項目を省いている。公的な研究機関によれば実際は公表値(26兆3000億円)の1.1~2倍になる可能性がある。」と述べています。 この事実を鑑みるに、4倍どころか5倍~8倍の軍事費を使っていると言えます。 それに比べると、日本の防衛費の内訳を見ると実に貧弱と言わざるを得ません。人件・糧食費が約4割(42.8%)、維持費が約2割(22.7%)、基地対策経費が約1割(9%)なので、現状維持のために実に予算の「4分の3」が費やされています。 残りの「4分の1」、昨年度でいえば「1兆5千億円強」で新たな防衛力をつくるための資金を捻出している、苦しい懐事情にあるのが実態です。 ◆GDP5%程度なければ、今の日本は到底守り抜けない!? では「いまの日本にはどの程度の防衛費が本当は妥当なのか」これまでとは違う視点で考えてみたいと思います。 自衛隊元西部方面総監の用田和仁氏によると、「本当に日本を守り抜くには今さら『倍増』では到底間に合わない。『5倍増』のGDP5%程度が妥当だ」といいます。 そして、用田氏は、最優先事項として次の項目を指摘しています。 (1)サイバーや電磁波領域の装備増強 例えば、中国は軍用無人機の開発に非常に力を入れてきました。 日本の防空識別圏に中国の無人偵察機が侵入していますが、今後、おびただしい数の攻撃型ドローンなどが、我が国の領土を襲来する可能性も指摘されています。 そのような時に、電子機器を攪乱したり、焼き切ったりするのが、電磁波領域の装備です。 また、自衛隊の人員を簡単には増やせない点を補うための「無人潜水艇」などを、海・空における無人化・ロボット化などの技術開発は促進すべきだとも指摘されておりました。 (2)次に、中国のような軍事大国に対しては「空母や軍艦を出すならそれを対艦ミサイルで沈める」といった非対称戦的な戦い方を重視し、予算を投下することです。 (3)もちろん、ミサイル防衛の整備や、水中での作戦を有利に進めるべく、攻撃型原潜等の配備の重要性も言及されていました。 (後編につづく) すべてを表示する 1 2 Next »