Home/ エネルギー政策 エネルギー政策 ウクライナ侵攻で原油価格高騰、エネルギー安全保障への影響【後編】 2022.03.19 https://youtu.be/4rtIRpJVTcc 幸福実現党党首 釈量子 ◆中国を利する日本のシベリア事業の引き上げ 日本は、現在投資しているロシア極東の資源開発事業の「サハリン1」と「サハリン2」などからの投資を引き揚げすべきかどうかをめぐって経済界が二分されています。 3日の記者会見で、日本商工会議所の三村明夫会頭は、こうした資源開発事業から日本が撤退しても「LNGは中国に行くのではないか。ロシアを困らすことにはならず、日本のユーザーが大変なことになる」と述べました。 日本がロシアから引き揚げたとしても中国資本が入るだけで、味をしめるのは中国です。海外にエネルギーを頼る日本にとって、日本企業の権益で資源開発ができることは非常に重要です。 ですから、政府は、ロシアでの権益を維持する方針のようですが、ロシアでの燃料事業から撤退すべきでないという方針を明確に打ち出すべきです。 また、米エクソンや英シェルが撤退するなら、その権益は中国でなく日本が譲り受けるよう、国として動くべきです。 ◆脱炭素政策を撤回し原発再稼働を そして、政府は、2050年カーボンニュートラル、2030年46%削減などの脱炭素政策も、ドイツと同様に、安全保障を理由に、政策の見直しを進めるべきです。 まず、石炭火力の廃止の見直し、海外での資源開発の投資を継続すべきです。さらに、止まっている「原発を即時再稼働」させれば、現在ただ今の危機に一定の対応はできます。 ロシア軍のウクライナ侵攻で、チェルノブイリ原発の電源喪失が大きくクローズアップされましたが、国際原子力機関IAEAは、現時点で「安全性への致命的な影響はない」とする見解を示しています。 原子力委員会の元委員長代理である鈴木達治郎教授もNHKの取材に対して、次のように答えています。 「廃炉となって長時間経過していることから使用済み核燃料から出る熱の量は低く、電力が復旧できないとしてもすぐに大事故につながるとは考えにくい」 (チェルノブイリ原発 電源喪失 IAEA「安全性に致命的影響なし」) https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220309/k10013523381000.html ウクライナ側に立ち、エキセントリックに煽るような報道ばかりですが、ここは冷静にならないといけないと思います。 そもそもロシアにとって、ウクライナは黒海にアクセスする重要なルートであり、そこを汚染することはメリットがないことです。 ですから、ロシアの目的は原発への攻撃ではなく、制圧であることは明らかです。 原発は、使用済み核燃料から放射性物質を取り出せば、核兵器は作れなくても、「核テロ」を行うことができるので、これを防ぐため、原発を制圧するのは定石通りです。 ゼレンスキ―大統領もNATOや日本を巻き込んで、戦争をさせてロシアをつぶそうとしていますが、これはやりすぎであり、分を過ぎています。 ウクライナのために「世界大戦」を起こすわけにはいきません。ウクライナにはロシアとEUの中立化に向けて、落としどころを模索すべきです。 いずれにせよ、現時点で、日本にとって電力を安定して供給でき、しかも南シナ海や台湾有事に強い原発の必要性を検討すべきなのではないでしょうか。 エネルギー問題に限らず、中国の脅威を考えれば、ロシアとの友好関係をとった方が、日本の国益は大きなものとなります。 また、日本としては、ウクライナの戦争を止めるためにも、ロシアと話し合って、ウクライナが、ロシアとEUと中立の立場で、存続できる道を模索するべきではないでしょうか。 ウクライナ侵攻で原油価格高騰、エネルギー安全保障への影響【前編】 2022.03.18 https://youtu.be/4rtIRpJVTcc 幸福実現党党首 釈量子 ◆原油価格の高騰 現在世界では、ウクライナ危機の影響もあって、ガソリンや天然ガスの値段が高騰しています。 経済産業省「石油製品価格調査」によると、日本では3月7日時点で、レギュラーガソリンの値段が9週連続の値上がりし、全国平均1リットルあたり174円60銭になっています。 これは、2008年のリーマン直前の高騰以来、約13年半ぶりの高値で、これも補助金で抑えた価格であり、実際は180円を超えていると思います。 ヨーロッパの状況はもっとひどく、ロシアへの依存度が高い天然ガス相場が、ロシアのウクライナ侵攻前後で2倍以上になったという話もあります。 こうした状況から、世界は、「やっぱり、エネルギー安全保障は重要である」という方向に向きつつあります。 ◆エネルギー政策を転換したドイツ ドイツでは、昨年9月の総選挙で政権交代が起き、環境保護を掲げる「緑の党」が政権与党入りしました。 連立政権は、2030年までに石炭火力発電を全廃することを検討していましたが、これを棚上げし、さらに、年末で廃止予定だった3基の原子力発電所の延命まで検討しています。 ドイツは、気候変動対策の急先鋒の国でしたが、なぜ、こうした動きになったかと言えば、ドイツのエネルギー供給があまりにもロシアに依存していたからです。 2020年の統計では、ドイツの天然ガスの55.2%、石炭の48.5%、石油の33.9%がロシア産です。 シュルツ首相は、2月27日の声明で「責任ある、将来を見据えたエネルギー政策が、我々の経済や気候だけでなく、安全保障にとっても極めて重要」と述べました。 ◆アメリカも「脱炭素政策」を見直しへ アメリカでも今回のウクライナ侵攻を受けて、「脱炭素政策」を見直すべきだという声が高まっています。 3月8日、バイデン政権は、発足以来消極的だった、国内での原油や天然ガスの増産を容認する方向へと舵を切りました。 同日、全米商工会議所は、声明でバイデン政権が規制している政府管理地の開発禁止措置を撤回するよう求めました。 バイデン政権は、ロシアからの原油や天然ガスなどのエネルギー資源の輸入を禁止する大統領令に署名し、即日発効しましたが、これも同じく3月8日の出来事です。 アメリカがロシア産エネルギー資源の輸入を禁じることができるのも、自国内で十分な資源を賄えるからです。 いずれにしても、各国は、今回のウクライナ侵攻を受け、自国の安全保障を考えてエネルギー政策の見直しを始めています。 ◆日本もエネルギー政策の見直しを 日本では9日、岸田文雄総理が、アメリカの原油や天然ガスへの禁輸措置に関して「安定供給と安全保障を国益としてG7をはじめとする国際社会と連携し、しっかり取り組んでいきたい」と述べ、アメリカの追加制裁にただちに追随することはしませんでした。 これ自体は正しい判断かと思います。 エネルギー安全保障でいうと、ヨーロッパのエネルギーはロシア依存で、日本の場合、石油は中東依存です。 LNGの調達先はある程度分散しているものの、大部分の燃料が日本の海上輸送の大動脈である南シナ海を通って来ます。 ロシアからエネルギー資源を禁輸してしまうと、日本が輸入している1割程度のエネルギー資源がロシアから入ってこなくなり、裏を返せば、南シナ海ルートへの依存度が高まります。 つまり、中国の脅威を抱える日本にとっては、南シナ海や台湾近海の有事に備え、ロシアからの輸入を増やすことが、リスク低減になります。 ですから、簡単にロシアからのエネルギー資源の輸入を禁止しなかったことは正しかったと思います。しかし、これだけでは十分ではありません。 後編では、日本が投資しているロシア極東の資源開発事業から見て参ります。 (後編につづく) 太陽光パネルの乱開発で進む国土破壊と経済崩壊【後編】 2021.10.16 https://youtu.be/yGWfp0XW0IQ 幸福実現党党首 釈量子 ◆メガソーラー乱開発の実態 皆様の地元でも、知らないうちに驚くような乱開発が進んでいる可能性もあります。 例えば、幸福実現党の高橋敬子・岩手県紫波町議は、7月3日の熱海市の土砂災害をきっかけに、町内5か所のメガソーラーに足を運び、防災マップと照らし合わせながら危険個所を確認し、9月議会で取り上げました。 高橋議員によると5か所のうち4つが、いずれも急峻な山肌に設置され、除草剤に撒かれているのか赤土の表土が露出、法面は何の処理も施されておらず、側溝もないので雨が降れば土砂を伴った水が流れ出たる状態でした。 特に一か所は「土砂災害特別警戒区域」の極めて近くに隣接し、非常に危険な状態で、行政に対応を求めました。なお、発電事業者には中国系企業もあったということです。 茨城県笠間市のように、東京ドーム4.7個分の土地の山林がダイナマイトで粉砕されて丸裸になり、住民が慌てて反対の声を上げたものの工事が強行された事例もあり、こちらも中国企業がらみでした。 長崎県佐世保市のように、地元議員と悪徳業者がグルになり、地元市議がメガソーラー建設の許認可権限を持つ市長に現金100万円を送ろうとして贈賄罪で逮捕されています。 ◆日本企業を縛る「グレタ教」 今はFITにおける太陽光発電の調達価格は2017年度から入札で決められており、事業者が導入当初のように法外な利益を得ることは難しくなっています。 しかし、メガソーラーの開発が進むもう一つの大きな理由は、欧米の政府、NGO、グローバル金融機関などが日本に持ち込んだグリーンな価値基準によって、日本の企業が再エネを購入しないと事業活動ができなくなっていることにあります。 日本の法律で義務化されているわけではないのに、いわば「グレタ教」に従わないと事業活動ができなくなりつつあるという、非常に深刻な問題があるのです。 例えば、「RE100」という、イギリスのNPOが提唱する「全ての電気を再エネに変えよう」という活動があります。 これに加盟している日本企業は使用する電気を全て再エネにしなければならないため、火力・再エネ・原子力が混ざった通常の電気を買うことができません。 価格が高くても再エネだけを選んだメニューから購入します。 また、欧米のグローバル金融機関は、「グレタ教」に基づいて、石炭を使う事業からは投融資を引き揚げ、再エネには金利を優遇してお金を貸し付けたりしています。 最近では日本のメガバンクも欧米と同じ価値観で投融資を行っており、日本の企業はこれに従わないと資金調達ができません。このため、少し高くても再エネを調達することになります。 最近ではグローバルなアクティビスト投資家、つまり「ものを言う株主」が、日本の企業が気候変動対策に努力しているかどうかを監視し、努力が足りないと認めれば経営方針を変えるように議決権を行使しています。 企業は詳細な情報開示を求められ、再エネの購入にどれだけ努力をしたかといった、「気候変動対策への貢献度」を測られ、それによって格付けをされています。 このように、現在の日本の企業は欧米の企業と同様に、「気候変動対策」に否応なく巻き込まれ、監視され、その努力が足りなければ糾弾されるという、過去にはなかった重大な問題に直面しています。 このようにグローバリズムと「グレタ教」が席巻する中で企業が生き残るために、経営者は気候変動問題へのコミットを高らかに宣言し、そのためのコストを払わなければならないのです。 そのような中で、企業は再エネの購入や投資を増やさざるを得ないのですが、水力などは開発に長期間がかかるため、手っ取り早く導入できる太陽光発電に対するニーズがますます高まっているのです。 「グレタ教」に洗脳されたNGOやグローバル金融機関がルールを作り、それに則って日本企業は太陽光などの再エネを買わされる。そしてそのお金は生産地の中国に流れていく。 非常に巧妙な金儲けの仕組みがグローバルに出来上がりつつあるのです。 「グレタ教」をこのままにしておけば、日本の国富が中国に奪い取られ、高いエネルギーコストで日本の生産性はますます低下し、「失われた30年」どころか2050年までの「失われた60年」となってしまいます。 日本経済はナイアガラの滝の如く落ち込み、日本中が中国製の太陽光パネルで埋め尽くされ、全国で自然破壊が起こる。そんな未来は、断じて許してはなりません。 太陽光パネルの乱開発で進む国土破壊と経済崩壊【前編】 2021.10.15 https://youtu.be/yGWfp0XW0IQ 幸福実現党党首 釈量子 ◆「CO2温暖化説」を後押しするノーベル物理学賞 今年のノーベル物理学賞に愛媛県出身でアメリカ国籍の真鍋淑郎氏が、コンピューターシミュレーションで地球の気候を予測する「気候モデル」の手法を確立した業績で選ばれました。 真鍋氏自身は「気候モデルで昔予想したことがそのまま今起こっていて、大問題だ」と発言する一方、「複雑な自然のすべてを完全に計算することはできない」とも語っています。 気候モデルには宇宙線の増減や太陽活動などが考慮されておらず、気候変動のメカニズムはまだ分からないことだらけであり、それを無視した政策が加速するのは非常に危険です。 ◆メガソーラーによる国土破壊 日本は国土面積に占める森林の割合は約7割の2,500万haに及び、森林を伐採し、丸裸となった地面にパネルが敷き詰めれば、景観破壊はもちろん、地面の保水性を失い、土砂災害などの原因になります。 ちなみに、太陽光発電で原発と同じ電気を発電するには、なんと100倍以上の面積が必要で、どちらが大規模な自然破壊につながるかは明らかです。 今年7月3日に発生した静岡県熱海市伊豆山の大規模土石流では、26人が死亡、行方不明者1人という悲惨な災害となりました。被災された方には心よりお悔やみ申し上げます。 9月28日には、崩落地点に基準を超える盛り土が造成されるという違法行為があったとして、遺族らが盛り土部分の土地の現旧所有者を相手取って、約32億6800万円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁沼津支部に起こしています。 この盛土の付近にはメガソーラーがあったことから、災害との関連に懸念が集まりました。 静岡県と林野庁の調査では、太陽光発電は土石流の直接的な原因ではないと判断したとのことです。 しかし、付近一帯が「土砂災害警戒区域」に指定され、そこにメガソーラーが建設され、山の開発が進められたことは確かです。 過去には、神戸市須磨区の山陽新幹線のトンネル出口付近で、線路沿いの斜面に設置された太陽光パネルが崩落し、太陽光パネル約1300枚が山の中腹から崩れ落ちたという事故がありました。 ◆太陽光発電を「爆増」させる計画 政府は、今年7月「エネルギー基本計画」の素案をまとめました。10月末からイギリスのグラスゴーで行われるCOP26に先立って、最終版を閣議決定することになっています。 それによると2030年度の電源構成として再生可能エネルギーの割合を「36%から38%以上」にするとのことです。 その方針を受け、太陽光発電をこれまで以上に「爆増」させる必要があります。今後、各地で進むメガソーラーの設置拡大が、土石流の増加につながる可能性は大いにあるでしょう。 ◆メガソーラーを爆増させたFIT こうしたメガソーラーの乱開発が日本各地で進んでしまっている理由の一つは、不当に高い利益が保証されていたからです。 2012年民主党の菅直人政権の時に導入された再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)によって、「20年間の買い取り保証」がなされました。 それによって、利益を大幅に上乗せした売電収入が確実に入ることから、売り手のつかない山間地などが「低リスク高利回り」の投資となりました。 菅直人政権は、太陽光パネルの設置基準を示さず、建築基準法が適用されない「電気工作物」扱いとなったために煩わしい建築手続きが必要なかったことから、安易な事業参入、乱開発が広がりました。 売電収入は、「再エネ賦課金」です。つまり多くの国民の負担の上に、「悪質業者」、さらには「中国資本」の付け入る隙ができてしまったのです。 北海道在住の方に、見ず知らずの太陽光発電業者から「あなたの土地を買いたい」という手紙が送られてきて、自分の所有する土地の謄本、公図、航空写真が添付されてきたので、驚いたといいます。 赤字で「名義変更、相続登記等の書類作成全般にかかわる手数料や測量、整地党の費用の負担、煩わしい手続きはすべて弊社が行います」と、至れり尽くせりのサービスが謳われています。 業者としては余っている土地を安く手に入れることができたら、FITで儲けることができるというメリットがあります。 しかし、土地の所有者側は、台風でパネルが飛んで人的被害が出たり、土石流等が起きたら責任を負わされる可能性もあります。 固定資産税に悩む方や、跡継ぎのいない農地を持つ高齢者などにとっては「温暖化対策」という大義名分もあり、余っている土地を生かせるのであればと、あまり考えないで話を進めるケースも多いわけです。 (後編につづく) 【連載第3回】「温室効果ガス46%削減」 政府の「中国化」政策をストップせよ 2021.07.11 【連載第3回】「温室効果ガス46%削減」 政府の「中国化」政策をストップせよ 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆「46%削減」なら、再エネで嘘をつくしかない政府 現在、経済産業省が「46%削減」に合わせて新しいエネルギー政策を策定中です。一部の報道によれば、7月21日に素案が審議会に提示され、8月に政府原案を決定。9月中旬にパブリックコメントを開始し、10月までの閣議決定を目指すとされています(※1)。 第2回で述べたように、報道等で示された電源構成(火力比率40%)をもとにこれを推定すると、仮に政府が2030年度の発電量を現行の長期エネルギー需給見通しの発電量(10,650億kWh)よりも1割抑制すると考えれば、火力による発電量は約3,800億kWh、2割抑制する場合には約3,400億kWhと推定されます。 この場合の「電力由来CO2排出量」は、計算上それぞれ2.3億トン、2億トンまで減ることになります。 しかし、発電量のうち残りの60%を原発と再生可能エネルギー等のゼロエミッション電源で発電することには、非常に大きな困難を伴います。 まず、自公連立政権は幸福実現党と違って「原発推進・新増設」を言えません。 このため、検討中のエネルギー基本計画の骨子案では、「原発は必要規模を持続的に」という非常にあいまいな表現にとどまり、新増設や建て替え(リプレース)の記載は見送っています(※2)。その結果、原発比率は現行見通しの水準(20~22%)を維持することになっています。 もっとも、日本では原発の廃炉が世界最速で進み、再稼働が遅々として進まない状況です。2030年まで9年もない現時点においては、仮に新増設を計画に盛り込んだところでほとんど違いはなく、2割程度の原発比率を維持することさえ非常に厳しいといえます。 このような理由により、「46%削減」と辻褄を合わせてエネルギー政策を策定するには、わずか9年で太陽光発電を中心とする再エネが「爆増」するという、荒唐無稽な計画を立てるしかないのです。 ◆日本中が中国製の太陽光パネルで埋め尽くされる 政府は「46%削減」に合わせて2030年度にゼロエミッション電源比率を60%とし、再エネ比率を30%台後半まで高めることを検討しています(※3)。 しかし、再エネといっても、僅か9年で水力や地熱を大量に開発することはほぼ不可能であるため、信じられないほど非現実的な量の太陽光発電を導入することによって、再エネを大量導入する絵姿を描くことになります。 小泉進次郎環境大臣は4月に、「住宅への太陽光パネル設置の義務化も視野に入れる」と発言し(※4)批判を受けましたが、住宅への義務化は見送られたものの、あらゆる公共建築物に原則として太陽光パネルを設置する方針となりました(※5)。 環境省は7月、2030年度の太陽光発電の導入目標を、現在の導入見通しの約88GW(8,800万kW)から20GW積み増すことを表明しました(※6)。 現行見通しにおける2030年度の太陽光発電の導入量は64GWですが、政府の強力な支援により太陽光発電は当初想定よりも急速に増加し、2030年には約88GWに達する見込みです(※7)。 環境省はさらに20GWを積み増し108GW程度とする方針で、2019年度末の導入実績(約56GW)から倍増することになります。 もしこれが実現すれば、日本中の屋根に中国製の太陽光パネルが設置され、斜面からは樹木が剥ぎ取られて中国製の太陽光パネルが敷き詰められるという、おぞましい光景が広がることになります。 保水機能(水を貯える力)を持つ森林がことごとく破壊され、土石流などの深刻な水害が全国で多発する可能性もあります。 一部の太陽光発電業者やその工事請負業者は儲かるかもしれませんが、大多数の国民はこんな未来を望んでいないはずです。 ◆莫大な国富が中国に吸い取られるが、それでも「46%削減」は無理 これらの太陽光パネルが日本製品であれば、まだ一定の経済効果が期待できます。 しかし、太陽光パネルの約8割は中国製であり、現在のサプライチェーン(供給網)のままなら、これらの投資の大部分が中国に流れ、政府の言う「グリーン成長」どころか、莫大な国富の流出になり、日本のGDPの増加はほとんど期待できません。 また、仮に国民が莫大なコストを負担して108GWの太陽光発電を導入できたとしても、その発電量は1,200億kWh余り(※8)で、政府が30%台後半を再エネで賄うという2030年度の電源構成のうち僅か10~15%程度に過ぎません。 太陽光発電は昼間の明るい時間にしか発電できないため、現在の技術では設備利用率(稼働率)が13~15%程度にとどまることが理由です。 マスコミは上記の環境省による「太陽光発電20GW積み増し」を、「原発20基分相当」と報じましたが、これは誤りです。原発は設備利用率85~90%で安定運転が可能で、同じ出力の太陽光発電の7倍近い電気を発電することができます。 したがって、「46%削減」の辻褄を合わせるためには、並行して洋上風力発電の大量導入なども検討されているものの、適地が限られていることから、さらに太陽光発電を100GW規模で積み増すくらいしか方法がありません。 政府内でも「46%削減」の目途は全く立っておらず、「各省とも、もん絶しながら施策を出している」との報道もあります(※9)。 官邸や小泉進次郎環境大臣は、直ちに「46%削減」の誤りを認め、各省に荒唐無稽な辻褄合わせをやめさせるべきです。 ◆屋根を見上げれば「ジェノサイド」 太陽光発電は、日本がその開発で先頭を走っていた頃から、「クリーン」で「グリーン」なイメージがつくられてきました。しかし、中国製品が大部分となった今、その化けの皮は剥がれつつあります。 太陽光発電にはさまざまな方式がありますが、現在最も安価で大量に普及しているのは「多結晶シリコン方式」です。太陽光パネルの心臓部である「多結晶シリコン」の約8割は中国製で、その半分以上は新疆ウイグル自治区で生産されているため、世界に占める新疆ウイグル自治区のシェアは45%に達すると推計されています(※10)。 今年の初めに米コンサルタント会社のホライズン・アドバイサリーが、中国における太陽光パネルの生産に新彊ウイグル自治区の強制労働が関わっている可能性を指摘しました(※11)。 この問題は英語圏のメディアがすぐに報道し、米国太陽光発電協会は2月に、太陽光パネルのサプライチェーンで強制労働を排除することを表明しました(※12)。 日本の有識者ではキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志氏が、いち早くこの問題の重大さを訴えました(※13)。しかし、ザ・リバティを除く日本のメディアはなかなか報道せず、4月頃にようやく産経新聞が採り上げました。 そして6月23日には、米国の商務省が、新疆ウイグル自治区にある太陽光パネル関係企業5社を、「ウイグル族らへの強制労働や恣意的拘束などの人権侵害に関与した」として、輸出禁止措置の対象に指定しました(※14)。 この一連の強制労働を排除する動きの結果、太陽光パネルの主原料である多結晶シリコンの価格は、5倍に高騰しています(※15)。太陽光発電は本当に安かったわけではなく、「強制労働だから安かった」ともいえます。 中国共産党による新疆ウイグル自治区における人権弾圧は、強制労働、強制収容所への拘束、移植用の臓器の強制摘出、組織的なレイプ、強制不妊手術など広範囲に及ぶことが指摘されており、米国はトランプ政権もバイデン政権も、これらを「ジェノサイド(集団殺戮)」と認定しています。 日本中が中国製の太陽光パネルで埋め尽くされ、国民が知らずしらずに新疆ウイグル自治区での強制労働に加担しているとしたら、どうでしょうか。この事実を知っても、見て見ぬ振りをできるでしょうか。 屋根を見上げれば、「ジェノサイド」の悲痛な叫びが思い起こされる――そんな日本にしてはいけません。 ◆温暖化よりも「中国化」を恐れよ これまでに述べてきたように、政府が進めている「46%削減」のための新しいエネルギー政策が決まってしまえば、日本の経済・安全保障は壊滅し、日本中が中国製の太陽光パネルで埋め尽くされ、政府の「グリーン成長戦略」という名の莫大な国民負担をしても、そのお金は中国に吸い取られてしまいます。「グリーン成長戦略」の本質は、日本の「中国化」政策にほかなりません。 しかし、幸いにも、まだエネルギー政策の決定までに時間があります。 6月にスイスでは、CO2削減に向けた方策が盛り込まれた法律が国民投票で否決されました(※16)。わずかなCO2削減のために莫大なコストをかけ、炭素税や航空券への課税強化を行うことに過半数の国民が反対しましたが、これによって、スイスのパリ協定での削減目標は達成が困難になるとみられています。これでよいのです。我が国も見習うべきです。 国民の皆さんは党派を超えて、幸福実現党とともに、この「百害あって一利なし」の政府の無謀なエネルギー政策に、反対の声を上げていただきたいと思います。 私たちも頑張ります。 まずは、「46%削減」に合わせたエネルギー政策の検討をストップし、莫大なコスト負担や「中国化」の問題について、ありのままの事実を国民に説明することを求めます。 参考 ※1 「原発『必要規模を持続的に』 エネ基骨子案判明」 2021年7月6日 産経新聞 https://www.sankei.com/article/20210706-ZQBRWGADEVNBZJSLJ3EXPLUDTE/ ※2 「原発政策あいまい エネ計画骨子案 脱炭素へ活用不可欠」 2021年7月6日 産経新聞 https://www.sankei.com/article/20210706-X5SE5IQ42BLV5PG5XHFBQX5JKI/ ※3 「電源構成とは」 2021年5月25日 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2459Z0U1A520C2000000/ ※4 「住宅の太陽光義務化『視野』 温暖化ガス目標強化に意欲―小泉環境相」 2021年4月17日 時事通信 https://www.jiji.com/jc/article?k=2021041601209&g=soc ※5 「太陽光パネル、公共建築物は原則設置 住宅は義務化せず 政府が脱炭素に向け素案」 2021年6月3日 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA022QH0S1A600C2000000/ ※6 「太陽光発電の目標上積み、原発20基分相当…環境省」 2021年7月6日 読売新聞 https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210706-OYT1T50052/ ※7 総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第40回会合)資料2 「2030年に向けたエネルギー政策の在り方」 2021年4月13日 資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2021/040/040_005.pdf ※8 設備利用率を13%とすると、108GW×8,760時間×13% = 1,230億kWh ※9 「46%削減へ再エネ上積み、難行苦行/各省『追加策、これ以上ない…』」 2021年7月9日 電気新聞 https://www.denkishimbun.com/archives/133815 ※10 『「脱炭素」は嘘だらけ』 杉山大志 産経新聞出版 ISBN978-4-8191-1399-1 ※11 「太陽光パネルもウイグルの強制労働によって作られていた!? 米コンサルタントが報告」 2021年2月12日 The Liberty Web https://the-liberty.com/article/18073/ ※12 Solar Companies Unite to Prevent Forced Labor in the Solar Supply Chain 2021年2月4日 Solar Energy Industries Association (SEIA) https://www.seia.org/news/solar-companies-unite-prevent-forced-labor-solar-supply-chain ※13 「『太陽光発電』推進はウイグル人権侵害への加担か」 杉山大志 2021年2月22日 Daily WiLL Online https://web-willmagazine.com/energy-environment/8Rhc7 ※14 「米、ウイグル強制労働で中国の太陽光パネル企業に制裁」 2021年6月24日 サンケイビズ https://www.sankeibiz.jp/business/news/210624/cpc2106241055003-n1.htm ※15 「ウイグル問題、太陽光発電に影 パネル主原料5倍に高騰」 2021年7月4日 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC21EG30R20C21A5000000/ ※16 「スイス、CO2削減法を否決 パリ協定の目標達成困難に」 2021年6月14日 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB1333L0T10C21A6000000/ 【連載第2回】「温室効果ガス46%削減」 日本は鉄を捨て、自ら兵糧攻めを選ぶのか 2021.07.09 http://hrp-newsfile.jp/2021/4101/ 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆政府は「46%削減」のための政策を策定中 菅首相が表明した温室効果ガス(GHG)の「2030年度に2013年度比46%削減」は、具体的にはどんなことを意味するのでしょうか。 現在、「46%削減」に合わせて、経済産業省がこれを実現するための新しいエネルギー政策を策定中です。 これらの具体的な中身は、経産省の審議会である総合資源エネルギー調査会傘下の基本政策分科会などで議論され、資料が公開されています(※1)。 一部の報道によれば(※2)、新しいエネルギー政策の素案は7月21日に審議会に提示され、8月に政府原案を決定し、10月までの閣議決定を目指すとされています。 しかし、この内容はきわめて厳しいもので、もし本当にこのような政策を実行した場合には、莫大な国民負担によって日本経済は破壊され、エネルギーの安定供給が不可能になり、中国など全体主義国家の侵略に対して日本はなすすべもないという、恐怖の未来像が浮かび上がってきます。 本来、日本のエネルギーを守るはずの経産省が、官邸に忖度し、日本の破滅を招きかねない恐るべき政策を策定しているという現実に対して、国民はもっと反対の声を上げていかなければなりません。 「敵」はグレタ・トゥーンベリ氏(スウェーデンの環境活動家)だけではありません。我が国政府の政策そのものに、日本を自滅させる罠が潜んでいるといっても過言ではありません。 では、その中身を見ていきましょう。 ◆鉄は日本で作れなくなる? 製鉄はそのプロセスで大量のCO2を排出するため、経済産業省の審議会では、日本の粗鋼生産量を2030年度に約9,000万トンまで減らすことを検討しています(※3)。 現行の「長期エネルギー需給見通し」では2030年度に約1億2,000万トンの粗鋼生産量を見込んでいるため、現行計画のなんと4分の1をカットする計算です。 2020年度にはコロナの影響で粗鋼生産量は約8,300万トンまで落ち込んでいますので、ここからできるだけ回復させず、日本での製鉄を落ち込んだまま維持すれば、国内のCO2排出を減らすことができます。 しかし、鉄鋼生産は国内の自動車や建設など他の産業と深く結びついているため、これらの生産活動に必要な鉄鋼を国内で供給できず、輸入で補うことになり、やがて自動車産業などは鉄鋼を十分に供給できる中国などに丸ごと持っていかれてしまう可能性があります。 1990年代半ばまで日本の粗鋼生産量は世界第1位で、「鉄は国家なり」とも言われました。その後日本は中国に抜かれ、2020年の中国の粗鋼生産量は10億5,300万トン、第2位のインドの10倍を超えます(※4)。 鉄鋼は軍艦、戦車、兵器などの材料でもあること考えれば、自国で製鉄をやめることが安全保障上、どれほど大きな問題であるかがわかります。 国内のCO2の排出を減らすために国内の鉄鋼生産を減らすなど愚の骨頂で、むしろ国内の規制や税金などのコストを減らして鉄鋼生産を国内に戻し、日本の製鉄業を強化していく政策こそが、日本の繁栄と安全を守るためにとても重要です。 鉄鋼だけでなく、石油化学、セメント、自動車、電機などの産業にも同様のことが言えます。国内のCO2の排出を増やしてでも、日本にこれらの製造業を回帰すべきです。 ◆石炭もLNGも半分しか使えなくなる 日本のGHG総排出量(CO2換算)を2030年度に2013年度比で46%削減すると、7.60億トンになります。 第1回で述べたとおり、総排出量にはエネルギーの使用に伴って排出されるCO2以外からのGHG排出や、森林による吸収なども含まれているため、実質的には2013年度の「エネルギー起源CO2排出量」約12.35億トンを、2030年度に約6.45億トンまで、48%減らすことが目標となります。(※5) エネルギー起源CO2は「電力由来CO2」と「非電力由来CO2」に分かれますが、本稿執筆時点では「電力由来CO2排出量」と「非電力由来CO2排出量」の比率が示されていないため、報道等で示された電源構成をもとにこれを推定してみましょう。 一部の報道(※6、※7)によれば、検討中の電源構成は火力発電が40%、原子力、再生可能エネルギー、水素・アンモニア発電を合わせたゼロエミッション電源が60%とされています。 現行の2030年度の電源構成の考え方(予備力の石油は3%、石炭はLNGよりも1%下げる)を踏襲して火力発電の内訳を石油3%、LNG 19%、石炭18%と置き、2030年度の発電量を現行見通し(10,650億kWh)よりも1割程度抑制すると考えると、LNGによる発電量は約1,800億kWh、石炭による発電量は1,700億kWh程度まで減らすことになり、2019年度実績(石炭3,267億kWh、LNG3,802億kWh)(※8)と比べて半減することになります。 これを燃料消費量に置き換えると、2019年度実績はそれぞれ、LNG約5,400万トン、石炭約1億1,000万トンですが、日本は2030年度にはLNG約2,700万トン、石炭約5,900万トンしか使えなくなることを意味します。日本はまさに、自ら「兵糧攻め」を選ぶことになります。 一方で、隣の中国では2030年頃まで石炭火力・LNG火力とも「爆増」し、毎年日本の総排出量1年分くらいのCO2を増やし続ける計画です(※9)。日本の政府は国内のCO2を減らすために、国家としての自殺行為をするつもりだとしか言いようがありません。 なお、この仮定に基づいて2030年度の「電力由来CO2排出量」を推定すると、約2.3億トンまで減少しますが、「非電力由来CO2排出量」の削減が困難であることを考慮すると、この水準でもおそらく総排出量の「46%削減」には届かず、さらに石炭火力を厳しく規制してCO2排出量を減らすことになる可能性があります。 石炭の減少分を再エネに置き換えることは難しいため、結局は石炭火力を止めてLNG火力を多く運転することになり、現在のLNGへの過度の依存がますます顕著になるでしょう。 中国のLNG輸入量は「爆増」しており、2021年には日本のLNG輸入量を超えるとみられています(※10)。 このような中で日本が石炭の使用をやめてLNG依存を高めれば、LNGは中国と取り合いになり、需要が競合する厳冬期などには必要な火力発電の燃料を確保することもできなくなります。 CO2を減らすことを主目的にして電源構成を決めることが、いかにエネルギーの安定供給を脅かし国家の安全保障を危機に晒すかが、お分かりいただけたと思います。 次回は、「46%削減」の辻褄を合わせるために、日本中が中国製の太陽光パネルで埋め尽くされるというお話をします。 参考 ※1 総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/ ※2 「原発『必要規模を持続的に』 エネ基骨子案判明」 2021年7月6日 産経新聞 https://www.sankei.com/article/20210706-ZQBRWGADEVNBZJSLJ3EXPLUDTE/ ※3 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会(第33回) 事務局資料(2) 「2030年エネルギーミックスにおける省エネ対策の見直しに関する経過報告」 2021年4月30日 資源エネルギー庁 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/pdf/033_02_00.pdf ※4 「世界粗鋼生産、20年0.9%減 中国10億トン超え」 2021年1月27日 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ273JI0X20C21A1000000/ ※5 地球温暖化対策計画 2016年5月13日閣議決定 https://www.env.go.jp/earth/ondanka/keikaku/taisaku.html ※6 「脱炭素電源、6割視野に 原発は30年度2割維持」 2021年5月13日 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA133S30T10C21A5000000/ ※7 「電源構成とは」 2021年5月25日 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2459Z0U1A520C2000000/ ※8 総合エネルギー統計 集計結果又は推計結果 資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/results.html ※9 『「脱炭素」は嘘だらけ』 杉山大志 産経新聞出版 ISBN978-4-8191-1399-1 ※10 「LNGも日中逆転 需要縮小が問うエネルギー安全保障」 2021年7月1日 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA3027F0Q1A630C2000000/ 【連載第1回】「温室効果ガス46%削減」 撤回しなければ日本が壊滅する 2021.07.08 http://hrp-newsfile.jp/2021/4099/ 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆「46%削減」に根拠なし 4月に米バイデン政権の主催で行われた気候変動サミットで、菅義偉首相は温室効果ガス(GHG)削減目標を大幅に強化し、「2030年度に2013年度比46%削減」とする方針を打ち出しました(※1)。 現行のパリ協定における日本の削減目標(同26%削減)を20%も積み増すもので、先進国が相次いで削減目標を大幅に引き上げ、中国に目標強化を迫る米国の狙いがあったといわれています。 しかし、結果は米国の完敗。中国からは一切の妥協を引き出すことができず、中国は2030年までGHGを増やし続ける目標を変えていません。 菅首相が46%削減を打ち出した背景には小泉進次郎環境大臣の影響も取り沙汰されていますが、TBS系のニュース番組に出演した小泉氏は、46%が「おぼろげながら浮かんできた」と発言し、算出根拠が不明確だと批判されました。 なかでも電力中央研究所の論文(※2)では、どのように数字を積み上げても「46%削減」の達成は不可能であることを指摘しています。 ◆「おぼろげな数字」が必達目標にすり替わる日本 米国がバイデン政権に代わった今、百歩譲って「46%削減」の表明は外交上の理由でやむを得なかったとしても、パリ協定では目標の達成自体に法的義務はないため、自国の経済や安全保障を犠牲にしてまで達成する必要はないのです。 強かな外交戦術を持つ米国やEUは、高い削減目標を掲げて気候変動問題へのコミットを演出しても、実際にそれを達成するための十分な政策はありません。 特に米国では、議会の半分を占める共和党が気候危機説は「フェイク」だと考えており、目標を達成するための法律を通すことは非常に難しく、政権交代すれば目標は白紙になるため、日本が米国に合わせても「梯子を外される」ことはほぼ確実です(※3)。 しかし、憲法前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」と定める日本は、お人好しでとても生真面目な国ですから、菅首相が「46%削減」と表明したからには徹底してこれを実現しようと努力し、目標を確実に達成するための緻密な国内政策(法律や規制)を策定します。 この生真面目さが日本の経済や安全保障を骨まで蝕み、国民を苦しめるとしたら、どうでしょうか。 ◆現行の「26%削減」目標の根拠 まず、現行の日本の削減目標「2030年度に2013年度比26%減」について見ていきましょう。 2013年度の日本のGHG総排出量(CO2換算)は約14.08億トンで、これを約10.42億トンまで、26%減らすことが目標です。 しかし、総排出量にはエネルギーの使用に伴って排出されるCO2以外からのGHG排出や、森林による吸収なども含まれているため、このうち2013年度の「エネルギー起源CO2排出量」約12.35億トンを、2030年度に約9.27億トンに、25%減らすことが実質的な目標です。 エネルギー起源CO2は「電力由来CO2」と「非電力由来CO2」に分かれ、2030年度にはそれぞれ約3.60億トン、約5.67億トンに減らすことになっています。(※4) これらの目標を達成するため、政府は2015年に「長期エネルギー需給見通し」(※5)を発表し、この見通しをもとにさまざまな規制を導入しています。 例えば、電力由来CO2の削減は電源構成によって実現し、原発と再生可能エネルギーを合わせたゼロエミッション電源比率を44%、LNG・石炭・石油を合わせた火力発電比率を56%とすること、特に火力発電は石炭を26%に抑制し、LNGを27%にすることなどが決まっています。 また、非電力由来CO2については、徹底した省エネを進め、エネルギー使用の総量を抑制することによって実現します。 ◆現行の削減目標は日本経済の停滞で達成できる? では、これらの政策や規制によって、本当にエネルギー起源CO2は25%も減り、日本の削減目標を達成できるのでしょうか。 実は、この目標を決定した2015年当時は、2030年度まで原発の再稼働が順調に進まず、再エネの大量導入にも莫大なコストがかかるため、削減目標の達成は非常に厳しいと言われていました。しかし、現在では「26%削減」の目標は達成できてしまうのではないかとの分析もあります。 電力中央研究所の試算(※6)によれば、2030年度のエネルギー起源CO2排出量は約8.74億トン(約29%減)まで減り、現行の「26%削減」目標を達成できる可能性があると分析しています。 そのカラクリは以下のようなものです。 一つは、政府の強力な支援により、太陽光発電が当初想定の64GWから既に大幅に増加し、2030年には約88GWに達する見通しであることです(※7)。 これには、民主党政権が導入した再エネ固定価格買取制度(FIT)による莫大な国民負担(2019年度の賦課金総額は2.4兆円で、2030年度には4.5兆円に達するとの予測もある)によって、おもに中国製の太陽光パネルを大量に輸入しているという、大きな代償があることを忘れてはいけません。 また、より本質的な原因は、現行の長期エネルギー需給見通しでは、内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」(2015年2月)に従って、実質経済成長率を1.7%と想定していたところ、コロナ以前からの日本経済の停滞とコロナによるマイナス成長、コロナ後の低成長により、2030年度までの経済成長率が平均0.5%程度に落ち込む見通しであることです。 自民党政権の経済政策では経済成長は期待できず、それによってCO2排出量が減少することは当然といえましょう。 ただし、上記の分析では原発の再稼働は比較的順調に進むことを想定しており、現在のように原発の再稼働が遅々として進まない状況では、やはり「26%削減」は難しいと考えられます。 次回は、7月中旬に審議会で素案を提示、8月に政府原案を決定し、10月末の閣議決定を目指して検討を進めているとされる(※8)、「46%削減」に向けた恐るべきエネルギー政策についてお伝えします。 参考 ※1 地球温暖化対策推進本部 2021年4月22日 https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202104/22ondanka.html ※2 「2030年温室効果ガス46%削減目標の達成は可能か?」 電力中央研究所 間瀬貴之、朝野賢司、永井雄宇 2021年5月14日 https://criepi.denken.or.jp/jp/serc/discussion/21001.html ※3 『「脱炭素」は嘘だらけ』 杉山大志 産経新聞出版 ISBN978-4-8191-1399-1 ※4 地球温暖化対策計画 2016年5月13日閣議決定 https://www.env.go.jp/earth/ondanka/keikaku/taisaku.html ※5 長期エネルギー需給見通し関連資料 2015年7月 資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/pdf/report_02.pdf ※6 「2030年度までの日本経済・産業・エネルギー需給構造の検討」 電力中央研究所 間瀬貴之、朝野賢司、永井雄宇、星野優子 2021年3月 https://criepi.denken.or.jp/jp/serc/source/Y20506.html ※7 総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第40回会合)資料2 「2030年に向けたエネルギー政策の在り方」 2021年4月13日 資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2021/040/040_005.pdf 温室効果ガス排出削減目標の大幅引き上げは、国家破滅への道そのもの 2021.04.24 http://hrp-newsfile.jp/2021/4069/ 幸福実現党政調会エネルギー部会長 壹岐愛子 ■温室効果ガス排出削減目標の大幅引き上げ 4月 22〜23日、気候変動に関する首脳会合(気候変動サミット)が開催されました。 この中で菅義偉首相は、2030年度のCO2等の温室効果ガスの排出削減目標(NDC)について、現行の「26%減」から、「46%減」への大幅引き上げを表明しています。 菅首相はさらに、「50%の高みに向けて挑戦を続ける」とも強調していますが、NDCの引き上げなど脱炭素化の動きというのは、結論から言えば「国家破滅への道」にほかならず、大いに問題があると言わざるをえません。 ■NDC引き上げの弊害 NDCを引き上げた今、「脱炭素」に向けて具体的なアクションを取れば、日本にはどのような弊害が生じると考えられるでしょうか。 例えば、「太陽光や風力発電、電気自動車の導入を急拡大すれば、日本の製造業は、レアアース含めた鉱物資源を多く有する中国への依存を高めることになる」といった指摘もなされています。 グリーン投資(環境に配慮した経済活動への投資)を日本国内で進めるとしても、再エネを導入する資金は中国に流れて同国を大きく利する形となり、かたや日本の経済成長にはほとんど寄与しないというのが実際のところでしょう。 また、今回のNDC引き上げにより、今後、環境規制の一環として、「炭素税」の本格導入など含め、環境分野における課税強化がなされることも想定されます。 しかし、こうした増税など行えば、製造業の生産コストをむやみに高めることになり、場合によっては、厳しい環境規制にさらされていない国に生産拠点が移り、日本は「産業の空洞化」を経験することにもなりかねません。 いずれにしても、日本の産業界はエネルギーコストの上昇に直面する可能性が高く、経済活動は大きく阻害されることが懸念されるのです。 ■環境規制は行うべきではない 以上を踏まえて、今回のNDCの引き上げは、国富を中国に流出させることになるほか、エネルギーの供給体制を脆弱にして日本の安全保障をも脅かすことになることから、「百害あって一利なし」と言えます。 そもそも、CO2などの温室効果ガスが地球温暖化に影響を及ぼしているということは、仮説の域を超えていないのが実際のところです。この考えをもとに環境規制を強化することなど、本来あってはならないことのはずです。「炭素税」なども国民の財産権を不当に侵害する手段として用いられかねず、絶対に導入すべきではありません。 NDCの引き上げや「カーボンニュートラル宣言」は、外交関係を踏まえれば、ある程度やむを得ない部分はあったという見方もできるでしょう。 しかし、そもそも「CO2温暖化」は「フェイク」と言え、脱炭素はやればやるほど中国にお金が流れ、軍事費となって日本の脅威として跳ね返ってくるというのが事実ではないでしょうか。 (参考) 杉山 大志「CO2ゼロで高まる日本の中国依存とサイバー攻撃の脅威」(キャノングローバル戦略研究所, 2020年11月16日) 日米両国の繁栄をもとに、断固として中国の覇権を止めるべき(党声明) 2021.04.19 https://info.hr-party.jp/press-release/2021/11688/ 4月18日、下記声明を発信いたしましたのでお知らせいたします。 ■日米両国の繁栄をもとに、断固として中国の覇権を止めるべき(党声明) 2021年4月18日 幸福実現党 日本時間の17日に開催された日米首脳会談で、アジア太平洋地域の平和に向けて、日米同盟の重要性が改めて確認されました。 今回の会談では、香港や新疆ウイグル自治区で激しい人権弾圧行為を繰り広げる中国に対して、強くけん制する姿勢が示されました。 会談を受けて発表された共同声明では、「台湾海峡の安定」にも言及しています。日米両国が「人権弾圧を許さない」とする立場を明らかにするとともに、台湾の自由を守るとの意思を示した点は、一定の評価ができます。 しかし、米国をはじめとする各国が、人権弾圧を理由とする経済制裁を行っているなか、日本は、法整備が進んでいないこともあって、各国の動きに歩調を合わせることができていない状況です。 日本政府は今後、「人権の蹂躙は断固として許さない」との姿勢を、行動力を伴う形で示すべきです。 さらに今回は、米国の対日防衛義務を定めた、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることも確認されました。 とはいえ、日本が自国の領土を守る姿勢を見せなければ、米国が一方的に守ることはありません。現状、日本政府は尖閣諸島沖への侵入を繰り返す中国船に対し、効果的な手が打てていません。 このままでは尖閣は危ういと言わざるをえません。日米の連携を強化しつつも、自らの国は自らで守る体制整備を行っていかなければなりません。 また、脱炭素を強力に進めようとする菅・バイデン両氏が、今回の会談で、「日米が世界の脱炭素をリードしていく」との考えを、改めて示しました。 両国がコロナ禍においてバラマキ・増税路線を進めながら、脱炭素社会の構築を目指すことは、「世界大恐慌」への道につながりかねないと危惧するものです。 二酸化炭素などの温室効果ガスが地球温暖化に影響を及ぼしているということは、仮説の域を超えておりません。 「脱炭素」のための環境規制などは、経済を冷え込ませ、ひいては文明を破壊しないとも限らず、断固としてやめるべきです。日本としても、菅首相が唱える「カーボンニュートラル」という政策目標を撤回すべきです。 「自由・民主・信仰」という普遍的価値観を共有できる日米の両国が強力な紐帯を築き上げ、世界に対して正しい方向性を打ち出すことは、極めて重要です。 中国の覇権主義を押しとどめるために、日本がしかるべき使命を果たし、日米が連携して世界をリードできるよう、幸福実現党は今後も活動を続けてまいります。 以上 記録的寒波、逼迫する電力不足の真相とは。 2021.02.05 https://youtu.be/p4oW03YhCME (1月15日収録) 幸福実現党党首 釈量子 ◆電力の需給逼迫の原因 昨年12月、記録的な寒波の到来で北陸地方では電力不足で停電が起き、暖房をはじめ電化製品が全く使えない状況が起きました。 今回の電力の需給逼迫の原因は、記録的寒波とコロナの影響で「巣ごもり」が増え、暖房需要が急増したこと、さらに大量に導入された太陽光発電が、悪天候でほとんど発電できなかったことです。 しかし、今回の直接的な電力の需給が逼迫した原因は、火力発電の主な燃料となっているLNG(液化天然ガス)の供給が、次のような原因で滞ったからです。 (1)中国・韓国など東アジアにおけるLNG需要の急増 (2)カタール等、LNGの供給国における設備の故障 (3)コロナの影響によってパナマ運河で渋滞が発生しており、LNG船の運航の遅れにより、米国産LNGが入ってこない状況 全国の電力会社は、今回のLNG不足を石炭火力発電所のフル稼働、高価な石油火力のフル稼働、さらに災害時などに応援のために使う「非常用電源車」も駆けつけて、辛うじて電力需要を支えているのです。 政府が進める「脱石炭火力」がもし実現していたら、すでに停電が起きていた可能性もあります。 日本のLNGの調達はオーストラリアや中東、東南アジアなどからの輸入に頼っています。 もし今後、中国にシーレーンを抑えられ、LNGや石油が日本に入ってこなくなった場合には、今以上に危機的な状況が起こります。 ◆燃料の補給が追い付かない状況 今回の電力需給の逼迫は、これまでのピーク時に発電所の能力が足りなくなるという問題ではなく、燃料の補給が追い付かず、発電量が足りなくなるという点で、より深刻だと言えるのです。 つまり、発電所が足りているのに、燃料の輸入が追い付かないという、いわば「兵糧攻め」の状態です。 日本でこうした状況を、まさに大東亜戦争で経験したため、戦後のエネルギー政策では、化石燃料への依存を減らし、原子力発電などで自給率を高めることを目指してきました。 しかし、2011年3月の福島第一原子力発電所の事故以降、全国のほとんどの原子力発電所が停止し、火力発電、特にLNGによる火力発電に大きく偏った供給体制となりました。 とりわけ、最近は地球温暖化対策を理由として石炭火力の段階的廃止が求められ、ますますLNGへの依存が高まっています。 また、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の導入で太陽光発電が爆発的に増加し、電力自由化の影響もあって、経営が難しくなった火力発電所が撤退することも非常時の電源の確保を難しくしています。 ◆バランスの良い電源構成の構築が必要 東日本大震災前、2010年度の電源別発電電力量の割合は、LNGが29%、石炭が28%、原子力が25%、石油等が9%、水力が7%、地熱および新エネルギーが2%となっていました。 2017年度には、LNGが40%、石炭が32%、原子力が3%、石油等が9%、水力が8%、地熱および新エネルギーが8%となっています。 LNGの割合は現在、約40%にまで高まっていますが、LNGは石油や石炭のような長期の備蓄ができず、今回のようにサプライチェーンに支障があれば、供給不足に直結します。 これは、エネルギーの安定供給が、コロナの影響や国際情勢によって大きく影響を受けることを意味しています。 ◆政府はエネルギー政策の見直しを 寒さが続く1~2月、LNGの供給が追い付かなければ発電ができなくなりかねません。 こうした事態を受け、電力会社や電気事業連合会が「電気の効率的な使用のお願い」を必死に呼びかけていますが、政府は「現時点で節電は想定していない」と言っています。 しかし、エネルギーが逼迫しているのは、脱原発や脱炭素など今までの政府のエネルギー政策が招いた結果にほかなりません。 突然の停電が起きれば、非常用の発電機が動かず、人工呼吸器や人工心肺装置などの運用に支障が出るのではないか、との指摘も出ています。 こうした危機的な状況を招いたのは、これまでの「エネルギー政策」の失敗にほかなりません。 日本は今後の不測の事態において、エネルギーの自給体制構築を進め、安定的に電力を供給できる体制をつくるべく、バランスの良い電源構成を構築する必要があります。 同時に、真冬に「計画停電」が起きないよう最悪の事態を回避するために政府には責任を持った対応を求めたいと思います。 ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ 幸福実現党の最新情報が届く「機関紙愛読者(党友)」にも、ぜひお申込み下さい!! https://hr-party.jp/newspaper/application/ ※配信頻度:毎月2回程度 すべてを表示する « 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