Home/ 2016年 October 2016年 October 小さな政府の使命を再度問う 2016.10.30 幸福実現党・岐阜県本部副代表 加納有輝彦 ◆中古住宅やエコリフォームに対する支援の開始 麻生政権時、省エネ性能の高い家電を購入した国民に、他の商品と交換できるエコポイントを付与する家電エコポイント制が導入され、総額約6900億円の補助金が投入されました。 CO2対策、経済の活性化、地上デジ対応テレビの普及を図るのが目的で、環境省、経済産業省、総務省が中心となって取り組まれてきましたが、その後、国土交通省でも省エネ住宅の新築やエコリフォームの普及を図る住宅ポイント制度も実施されてまいりました。 去る10月11日、平成28年度第2次補正予算が成立し、「住宅ストック循環支援事業」(国土交通省)として中古住宅やエコリフォームに対する支援が実施されることになりました。 ※住宅ストック循環支援事業について http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000121.html 全国9つのエリアで、国土交通省主催の住宅リフォーム等に関する支援制度説明会が順次開催されました。 中部エリアでも10月26日に名古屋市公会堂大ホール(1990人定員)で開催され、多くの事業者が参加し関心の高さ、期待の大きさを示しています。 主な補助内容は、 (1)住宅のエコリフォームに最大30万円/戸 (2)40歳未満の者がマイホームとして中古住宅を取得する際に、インスペクション(建物状況調査)+エコリフォーム費用に対して50万円/戸 (3)耐震性のあるエコ住宅に建替えるに際し、50万円/戸 (1)(2)については、耐震性を持たせる場合、それぞれ15万円上乗せされます。 新築住宅の着工件数が減少しつつあるなか、特に地方においてリフォーム工事への補助金は、工務店等の建設事業者にとって仕事を頂くための「必要不可欠」なインセンティブ(誘導)となりつつあります。 地方における建設業界の仕事の創造は、国の補助金に期待するところ大であり、今回の国土交通省主催の住宅リフォーム等に関する支援制度説明会に多くの事業者が参加したことは、期待の大きさを示すものと考えます。 ◆消費税増税と補助金 エコポイント等の補助金を必要とする理由として、そもそもお客様の財布の紐が固くしまっており、大きな値引きが「消費を喚起する」「消費を誘引する」そのことに尽きます。 国は一方で、消費税の増税で消費者の財布の紐を締め上げ、一方で補助金で緩める、マッチポンプ(マッチで自ら火事を起こして煽り、それを自らポンプで消す)と揶揄される所以です。 地方の事業者が、補助金制度を利用して仕事を頂くことは、当然の行為です。 しかしながら、事業者の仕事を国の補助金が創造するという姿は、本来の姿とは思えません。国が、税金を吸い上げ、税金を使って仕事を創造する、この方向は「大きな政府」へと真っ直ぐに繋がっています。 私たちは、現行の制度を利用して仕事を創造しつつ、マクロの目を持たなければならないと思います。エコポイント制度から始まったエコ住宅への補助金の原資は、「税金」です。 ◆大きな政府と小さな政府 わが国が立ち戻る原点は、2009年8月21日に放送された幸福実現党大川隆法総裁の政見放送です。この内容に、立ち戻るべき原点が凝縮されています。 税金に関しては、「皆様方の選択は二つに一つです。『大きな政府』を選ぶか、『小さな政府』を選ぶか、どっちかです。」 小さな政府を明確に訴えているのは幸福実現党のみであり、小さな政府とは、国民の生命安全財産を守るための必要最小限の機能を国が担い、それ以外は、企業や各人の創意工夫によって未来を切り開いていける国がよいとされました。 大きな政府は、多額の税金を国民から取って、ばらまく。民主主義の最大の欠点。ばらまいて票を頂くことであると喝破されています。 最後は、「少ない予算の中で、国民の生命安全財産を守りきるために闘う。」これが小さな政府の使命であると結ばれました。 本来、企業や各人の創意工夫によって未来を切り開いていくべきものが、国のばらまき政策である「エコポイント」という補助金にぶら下がることは、一事業者・個人としては現状やむを得ないものの、その方向性は限りなく肥大していく大きな政府であるということをしっかりと認識しておく必要があると思います。 幸福実現党は、小さな政府を明確に訴えている唯一の政党として、「少ない予算の中で、国民の生命安全財産を守りきるために闘う。」を使命として精進してまいります。 生活保護制度について考える 2016.10.29 幸福実現党 大阪府本部副代表 数森圭吾 ◆生活保護制度とは 生活保護制度とは社会福祉六法の一つである生活保護法に基づいて施行される福祉制度の一つです。 生活保護法の目的は、「日本国憲法第25条(生存権)に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長すること」(第1条)とされています。 つまり生活保護とは「一時の」最低限度の生活を保障しながら自立を促すための制度であり、また障害を抱える方など働きたくても働くことのできない方々の生活を保障するためにも、現状において重要な制度であるといえます。 しかし他方、この制度が抱える様々な問題をみていくと、この制度が人の弱さを助長している側面があるということも明らかになってきます。 ◆生活保護受給率 平成26年の厚生労働省発表データによると、都道府県別に見た生活保護受給率は以下の通りとなっており、受給率の最も高い大阪府と最も低い富山県の差は10倍以上となっています。 大阪市の発表によると、大阪府がトップとなっている背景には「失業率」「離婚率」「高齢者の割合」が高水準になっていることや、全国最大の日雇い労働者のまちへの多亜府県からの流入が多いことなどがあげられていますが、他方で行政側の審査の甘さなども指摘されています。 1 大阪府 3.35% 2 北海道 3.11% 3 高知県 2.79% 4 福岡県 2.56% 5 沖縄県 2.41% 6 京都府 2.31% 7 青森県 2.28% 8 長崎県 2.20% 9 東京都 2.16% 10 鹿児島県 1.93% 47 富山県 0.32% ◆生活保護制度が抱える問題点 2015年度生活保護費の予算は約3兆円。今後も増加していくとみられており、制度が抱える数多くの問題も議論の対象となっています。 ・外国人への保護費支給問題 外国人への生活保護費の支給です。2010年のデータで総世帯数と被保護世帯数の割合を比較すると、日本国籍世帯の受給率は2.6%であるのに対して外国籍世帯の受給率は3.6%となっています。 特に韓国・朝鮮籍世帯の受給率は14.2%と非常に高くなっています。また外国人受給者の場合、海外に資産を持っていても、調査に限界があるという点も問題となっています。 実際に資産や所得を海外に隠して生活保護を不定受給していたという事件も起こっています。 ・貧困の連鎖 生活保護世帯で育った子供が、大人になって再び生活保護を受けることを「貧困の連鎖」といいます。 関西国際大学の教授が行った実態調査によると、貧困の連鎖の発生率は25.1%というデータも出ています。この実態をみると自立を助ける制度として生活保護が役立っているのか疑問に感じざるをえません。 ・国民年金とのバランス問題 また、生活保護で給付される金額が、国民年金の老齢基礎年金よりも多い事が指摘されています。 都市部で支給される生活保護費と国民年金(満額)を比較すると倍以上のひらきが存在します。これは国民年金をコツコツと納めてきた国民にとっては納得しがたい状況であるのも理解できます。 ・医療扶助の不適切受給問題 医療扶助は年間約1.5兆円で、生活保護費のおよそ半分を占めています。これは投薬回数や診察回数に関わらず、受給者なら本来の自己負担分はすべて公費負担となるからです。 医療扶助を利用し、不必要な検査や注射を繰り返したり、医薬品を過剰処方することで医療費の増大につながっているという指摘もあります。 このように多くの問題を抱える生活保護制度。制度の理想と実態の乖離や日本の現在の厳しい財政状況から考えると制度の見直しが必要となるのはまちがいないでしょう。 ◆福祉が実現すべきは「楽」?「幸せ」? セーフティーネットとしての福祉制度は非常に重要なものです。しかしそこには落とし穴も存在しており、制度が人間を堕落させてしまう恐れがあることも知らなければならないと思います。 「楽」をしたいという思いがでる、安きに流れるのが人情だと思います。しかし、ただ楽なことが本当に「幸せ」なのでしょうか。何もせずとも楽に生きられる毎日がずっと続いた場合、人間はそれを幸せだと思えるのでしょうか。 人間が人間らしく生きるため、生存権だけでなく憲法13条の幸福追求権を守るためにも、人間の幸福とは何かを深く考え、制度に生かしていかなければなりません。 人間の幸せには「努力」というものが密接に関係するように思います。努力を重ねる先に、心から感じることのできる幸福もあるのではないでしょうか。 もしそれを福祉制度が阻害していしまっているのであれば、それは本来の意味からして福祉と呼べるものではありません。 最低限の生活を守る福祉制度は非常に大切です。 しかし同時に多くの人びとがセーフティーネットを必要とする状況から脱し、努力の先に一つでも多くの成功をつかみ取ることのできる環境をつくることこそ大切な福祉であり、政治が実現すべき重要な仕事であると感じます。 日本に、迫りくる南シナ海危機への対策はあるのか 2016.10.27 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆ドゥテルテ氏の反米外交で、領土喪失の歴史が繰り返される? 先般、訪日したフィリピンのドゥテルテ大統領は、東京都内の講演で、「2年以内に、私の国から外国の軍部隊がいなくなってほしい」「行政協定の見直しや破棄が必要ならば、そうするつもりだ」と述べました(ドゥテルテ比大統領、米軍は「2年以内に撤退を」AFP通信、2016/10/26)。 そして、ドゥテルテ大統領に同行したヤサイ外相も記者会見でアメリカとフィリピン両軍の定期合同軍事演習が「中国側の疑念を高めることにつながりかねない」と述べ、現政権による中止の可能性をほのめかしています。 フィリピンの新政権は、南シナ海進出を目指す中国の野心を止めるために米国や近隣諸国と連携するのではなく、この問題を中比間の「話し合い」で解決しようとしています。ヤサイ外相は、米比軍事演習がその妨げになると見ているわけです。 ドゥテルテ大統領もヤサイ外相もアメリカとの同盟(米比相互防衛条約)を維持すると述べましたが、南沙諸島の問題は米比同盟の対象外としました。もし、今後、フィリピンが「米軍」を国外に追い出したら、90年代前半の米軍撤退後にミスチーフ礁を中国軍に奪われた時と同じ事態が繰り返されかねません。 米軍を抜きにしたフィリピン軍は旧式の駆逐艦や旧世代の戦闘機が主力なので、中国海軍の近代化された護衛艦や潜水艦、戦闘機等には、とうてい、対抗できないからです。 ◆「人権問題」でそりが合わないドゥテルテ政権とオバマ政権 フィリピンではドゥテルテ氏が大統領に就任してから2カ月余りで1000人以上もの麻薬取引の容疑者が警察官に殺されたとも言われています。これを問題視したオバマ米大統領に対して、ドゥテルテ比大統領は「我々に敬意を持たなければならない」と憤り、フィリピン国内記者会でオバマ大統領を罵倒しました。 ドゥテルテ氏は、植民地の統治者のように上から目線で説教をしてくる米大統領が我慢ならないのですが、9月5日にラオスを訪問したオバマ氏は、その暴言を聞き、翌日に予定した米比首脳会談を取りやめました。 そして、米比関係が冷え切るなかで、ドゥテルテ氏は10月に訪中します。そして、南シナ海を巡る中国の領有権主張を違法と断じた国際仲裁裁判の判決を棚上げまでして、ドゥテルテ氏は中国のインフラ投資を国内に呼び込もうとしたのです。 親中外交はインフラ投資を呼び込むためのポーズなのかもしれませんが、結局、米比関係は修復が難しくなったので、日比首脳会談では、同盟国の日本を通してフィリピンを日米側に取り込むための布石が打たれました。 現状では、フィリピンが日米寄りに一歩近づきましたが、11月以降、人権問題を重視するヒラリー・クリントン氏が大統領となれば、「暴言大統領」が政治を司るフィリピンとアメリカとの関係は、うまくいかなくなりそうです。 ◆高まりつつある南シナ海での地域紛争勃発の危険性 26日の日比首脳会談後の共同声明では「両国の種々の友好関係および同盟関係のネットワークが、地域の平和と安定、海洋安全保障を促進する」とうたわれました。基本的に、今の日本は「外交」で紛争を抑止することを目指しています。 しかし、フィリピンの新政権は「頼みの綱」である米軍追い出しに肯定的ですし、米大統領選でヒラリー氏が当選した場合は、人権問題を巡って米比関係が険悪になる可能性が極めて高いのです。 アメリカとフィリピンとの同盟関係にひびが入れば、中国にとってまたとないチャンスなので、今後、南シナ海では地域紛争が起きる危険性が高まっていくでしょう。 ◆日本に、南沙諸島をめぐる地域紛争への対策はあるのか しかし、今の日本では、その有事に対応する準備はできていません。 南沙諸島近辺を通る海上交通路(シーレーン)は、日本とアジアの米軍にとって重要な物資の運搬経路ですが、この防衛のために日本がどこまで動けるのかは、いまだにはっきりしません。 集団的自衛権の行使の要件の中には、「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」と記されていますが、果たして、南シナ海のシーレーンの防衛というのは、前掲の「明白な危険」の中に含まれているのでしょうか。 フィリピンという国は、「わが国と密接な関係にある他国」の中に含まれているのでしょうか。 今の日本では次の選挙のための国内政策の議論が盛んですが、南シナ海の情勢が変わりつつある今こそ、有事に適切な判断を下すための準備を進めなければなりません。 そのため、集団的自衛権や防衛法制に関する議論を国防強化に結びつけるべく、幸福実現党は今後も力を尽くしてまいります。 規制緩和で医療を輸出産業に 2016.10.25 HS政経塾 第6期生 野村昌央 ◆問われるこれからの社会保障制度 21日に行われた経済財政諮問会議で、安倍首相は「医療費抑制の改革の具体化に向けた検討を加速する」よう、塩崎恭久厚生労働相に指示しました。(10月22日付・日経新聞より) 増加する社会保障費のなかでも医療費の伸びは著しく、平成27年度の医療費は41.5兆円となっており、前年度に比べ1兆5000億円増となりました。医療費の抑制策としては、最近では高額がん治療薬のオプジーボが緊急的に薬価を引き下げる方針となったことが話題となりました。 医療制度改革はこれまでにも行われていますが、その中身は給付額の削減や、保険料や医療機関窓口での自己負担の増加といった、今ある制度の枠組みの中での対応策であり、今後、安倍首相がどこまで医療改革を断行できるかが注目されます。 ◆日本の医療産業は規制だらけ 日本の医療は国民皆保険とフリーアクセスを特徴とし、全ての国民が等しく、どこでも医療を受けられる制度となっています。 どの医療を保険の効くものとするかは、中央社会保険医療協議会(中医協)によって定められ、保険収載を認められた医療行為が保険医療機関(病院等)で医療サービスとして受けられるようになっています。 また、一つひとつの医療行為に対する診療報酬(保険会社から医療機関へ支払われる保険給付)や薬の価格(薬価)も、中医協の議論を踏まえて厚生労働大臣が決定する制度が採られています。 様々な規制があるため、例えば混合診療の禁止(保険の効く医療サービスと、保険の効かない医療サービスを一緒に受けた場合、保険が効く医療サービスも全額自己負担となる)などから、海外では既に実用化されている先進医療を受けたくても、それを受けるためには様々な障壁があるのが現状です。 医療には高度に専門的な知識や技術が必要であるため、医療提供者と患者の間に医療に関する知識の差(情報の非対称性)が生じます。そのため、自由競争に任せると、本当は必要でない医療サービスであったとしても、それが不必要なのかどうかが患者にはわからないまま、医師の勧める医療サービスを受ける(モラルハザード)などの問題が起きる可能性があります。 これらの問題を防ぐことを目的として、日本の医療産業には様々な規制があるのです。 ◆医療制度改革で医療を成長産業へ しかし、平等に医療を受けられる社会を守るという目的のためとはいえ、採算のとりようがない今の枠組みのままでは、増税と国債発行による社会保障費の補填に頼り、将来世代にツケを回すだけです。 また、規制にがんじがらめでは医療資源の効率配分も難しく、ムダが生じます。このままでは、最短5年で医療制度は破綻するとする専門家もいます。「医療費抑制」という考え方のままでは、結局は医療保険の適用範囲の縮小などが行われることになると考えられます。 ただ制度の縮小を待つのではなく、「どうすれば医療産業が活性化するか」という視点を持ち、個人の選択の幅が広がり、より質の高い医療サービスを受けられるようになり、世界の人達が日本の医療を受けに来られるような輸出産業にしていく方向にシフトしていくべきではないでしょうか。 そうした改革に向けて、動き出している自治体もあります。愛知県では「国家戦略特区」への提案として「あいち医療イノベーション推進特区」というものがあります。 これは、名古屋大学医学部付属病院を国際医療拠点として「病床規制の特例」「外国人医療従事者の受け入れ」「保険外併用療養の拡充(混合診療の推進)」「医療機器分野への新規参入の促進」などの提案をするものです。 これらの規制緩和によって、愛知県は医療を国際競争に耐えうるものとし、優れた医療や医療機器の新たな市場を創造する「医療イノベーション」を推進しようとしています。 医療費抑制を目的とした今までの枠組みの中での医療改革ではもはや対応しきれなくなってきていることをしっかりと認識する必要があります。愛知県の医療イノベーションの提案のように、医療産業を成長産業としていく道を拓いていくことが、日本の医療を守ることにもつながっていくのです。 「いじめ」は解決できる!【3】 2016.10.23 幸福実現党・政務調査会 佐々木勝浩 ◆いじめ解決のステップ 「いじめ解決のステップ」で最初に大切なことは、保護者が子供を守る覚悟を固めることです。 そして担任に相談。担任に指導力があれば解決しますが、解決しない場合は、学年主任⇒校長⇒教育委員会、最後は第三者機関等の順で申し入れを行うことです。 今回は、お母さんの知り合いに元児童相談員の役職を務めた方がおり、その方が校長にいじめを解決するよう話しに行ってくれるとメールがありました。 私は、その結果を待つことにしました。 ◆校長への要望書提出 しかしその結果は、皮肉なものでした。校長先生の返答は「その件は、担任に任せている」だったのです。 私にとっては、それも想定内だったので、次の「いじめ解決のステップ」に入ることにしました。 お母さんの覚悟も決まったし、母に対するA君の信頼も出来てきたので、第三者機関からの「学校への要望書」を出す判断をしました。 お母さんには、A君が「いじめを受けた経過」をまとめてもらっていたので、私の方で校長宛に、お母さんの要望を反映させて「教育者として、いじめを解決してほしいというお願いと、学校に対する具体的要望」を書き上げました。 学校への要望書提出の際には、私も同行しようと思っていましたが、お母さんが自らが一人で面会し、3月18日に校長先生に提出しました。 校長先生は、いろいろ話を聞いてくださったようですが、後で要望書も読んでおくとの解答でした。 翌日、校長先生は再度事情を聴く場を設けてくださり、いじめた生徒に謝罪を設ける場をつくること、再発しない具体的な処置もしてくれることになったのです。 当初、「謝ってもらわなくてもよい」と相手方に伝えてしまっているので、お母さんも、そこをどう言ったらいいかという相談もありました。 私は、暴力で登校拒否寸前になっていることや、相手から自宅に電話があったり、訪ねてきたりしている状況が続いているので、謝罪はしてもらわないと解決しないとアドバイスしました。 最後に、一つだけ不安だったのは、謝罪の場が、話し合いの場になってしまい、「いじめられた側も悪い」と相手側が言ってこないかということです。 要望書には、そうならないように、「暴力と脅しの事実」に対して謝罪してもらうことを加えました。 いじめ解決のノウハウを持つ「いじめから子供を守ろうネットワーク」からの協力もいただいたことで、当日は相手側も謝罪し、スムーズに終わることができたとお母さんから報告がありました。 「学校に来ないと殴る」とA君を脅していたC君は、B君から言われてやったことで悪気はなかったと語ったそうです。 C君にとっても、これでいじめに加担させられるしがらみから解放されることになったのではないかと思います。 学校側は、指導力のある先生を担任にすること、いじめた生徒と階を別にすること、同じマンションの面倒見の良い子を紹介して登下校できるようにすることなど、再発防策を打ってくれることになりました。 いじめた側からの謝罪を受けることで、お子さんも笑顔が戻り元気に部活にも出るようになったそうです。ただ3ケ月、半年は、注意してくださいとお母さんに伝えました。 こうして1月初めに相談を受け、3月25日、解決することできたのです。 ◆いじめた側の生徒の指導 いじめを扇動していたB君は、孤独で友達がなく自分の子分を持つこと、暴力の力でしかコミュニケーションを図れないということです。 おそらくは親子関係にも何らかの問題を抱えているはずです。B君に関しても誰かがしっかりと相談に乗り、指導してあげなければならなかったのです。 最後に、担任や校長への批判めいた話も書きましたが、決して学校を責める気持ちはありません。なぜなら、私自身も教壇に立っていた立場で、思うようにいじめを解決できなかったからです。 アメリカには、「いじめを解決するプログラム」などもありますが、日本の学校にはそうした指導が遅れています。学校にも、「いじめを解決するプログラム」が必要なのです。 私がいじめ解決が出来たのは、下記の団体からのアドバイスがあったからです。 ■いじめ解決率9割!「いじめから子供を守ろうネットワーク」とは!? http://thefact.jp/2016/1427/ 「いじめ」は解決できる!【2】 2016.10.22 幸福実現党・政務調査会 佐々木勝浩 ◆クラス担任の対応 A君が暴力を受けてケガをした日の夕方、お母さんは担任の先生に電話を入れました。 すぐに担任の先生は自宅に訪ねてきて、翌日A君を休ませましたが、翌々日の朝から担任の先生が自ら迎えに来るようになったそうです。 私はそれを聞いて、担任の先生はいじめを解決しようとしているのかと思ったのです。ところがよくお母さんから話を聞いてみるとそうではありませんでした。 担任はA君の登校の時間をずらして、自分のクラスではなく特別教室で自習させていました。おまけに休み時間もずらして取らせていたのです。 つまり、「いじめているB君とC君」が「いじめられているA君」が会わないように、A君を特別教室に隔離したのです。 お母さんに尋ねてみるとA君の他にも特別教室には10名の生徒がいることもわかりました。 結局、学校のいじめ対策は、「いじめられている生徒を隔離する」という方法だったのです。 いじめを受けている生徒を隔離して、いじめている側の生徒に適切な指導がなければ、この学校からいじめがなくなることはありません。 そして、明らかにいじめを受けている側の生徒の授業を受ける権利を奪っています。 ◆解決へ進展したと思ったが・・・ 1月初めに私が相談を受けた時、お母さんの希望は、A君を特別教室ではなく「自分のクラスで授業を受けられるようにしてあげたい」というものでした。 2月に入って少し状況が落ち着いたころ、お母さんから「担任との話で子供が好きな教科だけ授業に戻るということになった」との連絡がありました。 その際、担任は、お母さんにこう言ったそうです。 「いじめた生徒もかわいそうだから、他の人にその生徒の名前を話さないようにしてください。」 これを聞いた時、「担任の先生は本気でいじめを解決しようとはしていない」と確信しました。 担任は、いじめが外に知られないように、お母さんとA君にいじめを受けていることを話さないよう口封じをしただけです。 ◆転機 その直後、事件は起きました。 A君が、B君に、自分が授業に出る際、「自分と接触しないでくれ」と直接、電話を入れたのです。 これに激怒した担任の先生が、「なぜ、いじめていた生徒と接触したのか」とすごい剣幕でA君を叱りました。 担任の先生は、お母さんにも電話を入れこう言いました。 「いじめた生徒と会わないように努力をしているのに、A君自身が相手に電話をして接触するとは何事ですか!だったら全授業、出ればいいじゃないですか!」 ピンチはチャンスです。この事件が、逆にお母さんとA君の絆を深めるチャンスになると私は思いました。 私はお母さんに、こうアドバイスしました。 「A君は、B君の方から自分に接触してくるので、『授業の時にのぞきに来ないでね』(いじめたB君は別クラス)と電話を入れたのです。相手に接しようとしたどころか、接してこないように勇気を出して電話したのだから、担任から責められる理由はありません。逆に、電話した勇気を褒めてあげてください。」 「むしろいじめた側が、お子さんに電話をしてきたり、自宅に訪ねてきたりしているのだから、担任は、いじめた側を指導しなくてはならないのです。」 さらに大切なこととして私はお母さんに重ねてアドバイスしました。 「クラスに戻ることを優先して、無理に授業に戻したらお子さんを追いつめることになります。無理はさせないでください。」 もしお母さんも担任に言われるままに、A君を責めてしまったら、A君は居場所がなくなります。 その後、お母さんから「あなたは間違っていない、よく相手に勇気を出して電話したねと話してあげたことで息子はだいぶ楽になったようだ」と電話がありました。 これがきっかけで、A君に「母が自分を守ってくれる」という信頼が生まれ、お母さんにいろんなことを相談するようになりました。 (つづく) 「いじめ」は解決できる!【1】 2016.10.21 幸福実現党・政務調査会 佐々木勝浩 先日のニュースファイルで、「いじめの問題」を取り上げました。 いじめは絶対に許さない! http://hrp-newsfile.jp/2016/2924/ 「いじめ」をこの世からなくすため、子供達や保護者の希望になることを願い、私がいじめ問題に取り組んだ時の体験をご紹介いたします。 ◆私の苦い体験 私が、いじめ問題に取り組んだきっかけは、苦い体験があったからです。 10年前の話ですが、2006年当時、私が勤めていた会社の社長から、「中2の娘がいじめで不登校になっており、何か解決できないか」という相談を受けたことがありました。 私は大学を卒業してから中学校の常勤講師の経験があったので、社長は私に相談してきたのです。 講師の時、生徒からいじめの相談を受けたことはありましたが、その時は思うように解決することは出来ませんでした。 そのため社長には、「地域でいじめ問題に取り組んでいるところがあるでしょうから、そこに相談するのが良いと思います」と答えたのです。 結局、社長は、お嬢さんを転校させることで解決を図ろうとしましたが、不登校は改善しませんでした。 転校した学校は真摯に対応したそうですが、しばらくして大変な事件が起きました。社長の奥さんが思い余って、お嬢さんの首を絞めてしまったのです。 事件が起きてから会社の外ではマスコミが社長にインタビューしようと構えており、大変な騒ぎになってしまったのです。 私が相談を受けた時に、しっかりと対応していれば、お嬢さんが命を落とす事件にはならなかったかもしれません。 ◆いじめで子供を亡くした母の悲しみ 私をいじめ問題に取り組ませたもう一つの体験があります。 私は社長のお嬢さんの事件かあってから、いじめ問題を調べるようになり、高1の男子生徒をいじめでなくしたお母さんに、群馬県まで足を運んで直接話をお聞きました。 お母さん自身はショックで外出もできない状態でしたが、母のなんともやるせない悲しみを感じました。しかし、どんなに私が話を聞いても、失われた子供の命はもう戻って来ません。これが現実です。 ◆いじめの相談を受ける しばらくして3学期が始まったころ、私のブログを見た中学生のお子さん(仮にA君とします)を持つお母さんからいじめの相談を受けました。 相談は、A君が仲良くなった2人(B君とC君)から下校時に暴行を受け「学校に来ないとなぐる」という脅しを受けているというものでした。 お母さんの話では、A君は殴られケガをして病院にも行きましたが、リーダー格のB君を恐れ、「謝って貰わなくても良い」と先生に伝えていたのです。 私は、お母さんに「学校にどうしてもらいたいか」を聞くと、A君は、特別クラスで自習をしているので、「普通にクラスで授業を受けられるようにしてあげたい」ということでした。 (詳しくは、次回説明) 私は、この時「絶対にいじめを解決する」と強い覚悟を決めました。 当時、私は福島県に住んでおり、相談者はA県です。足を運ぶ余裕はありません。最後の最後、学校と交渉するときは足を運ばなくてはと考えていましたが、結局すべて電話とメールで相談に応じました。 私は、いじめを解決した経験を持つ方からアドバイスをもらいながら相談に応じましたが、そうしたパイプがあったことは私にとって大変心強かったのです。 これがなければ、「解決する覚悟」だけがあっても解決することは困難です。 ◆いじめを解決するために一番大切なことは何か いじめを解決するために一番大切なことは、「親が子供を守る覚悟を決めること」です。それが定まらなければ、こちらがいくら助けてあげようと思っても、なかなか解決できません。 実際にA君もお母さんに話をしない状況が続いていて、親子の絆が結ばれるまで1ケ月半かかりました。 とにかくお母さんには、「子供を守る覚悟を決める」ことと、子供にも「絶対にお母さんがあなたを守る」という思いを伝えることが大切だと言い続けました。 その間、A君をいじめていたC君から自宅に電話がかかってきたり、自宅に訪ねてきたりしており、A君は外出を怖がり、家に閉じこもりの状態が続きました。 (つづく) 日露関係の正念場――求められる「交渉力」とは 2016.10.18 HS政経塾5期生 水野善丈 ◆ロシアと繋がる日本のメリット 近年、北朝鮮の核ミサイル実験や中国の領海侵犯も頻繁に行われる中、国防上の危機がより一層迫ってきています。 幸福実現党は、立党当初の2009年より北朝鮮・中国の脅威を訴え、地理的にも北朝鮮・中国の背後にあるロシアと友好関係を結ぶことは安全保障上、有効な戦略であると訴えてきました。 また、原発が全国的に停止される中、エネルギー自給率も6.1%(2013年)の日本にとって、ロシアのシベリアやサハリンにあるエネルギー資源の共同開発は、大きなメリットになります。 安倍政権は、ロシアに対して、クリミア併合から欧米諸国と足並みをそろえ、伊勢志摩サミットもロシアを外したG7で行うなどの対応をとっていました。 しかし、ここ最近になり、ロシアへの協調路線を進めようとしています。 ◆日露関係改善に重要な2つの会談 安倍首相は、プーチン大統領と11月のAPEC首脳会議や12月15日の山口県長門市で首脳会談することに成功しました。 狙いとして、プーチン大統領来日で北方領土問題を含む平和条約締結交渉の進展をもっており、「8項目の経済協力プラン」や「北方領土の共同統治案」を検討しロシアとの関係改善を進めようと考えています。 また、会談が行われる12月は、米大統領選も終わりオバマ大統領も任期最後の状態であるので、米国にも口出しをされにくく、今回の日露交渉の時期としては絶好のチャンスといえます。 ◆北方領土の位置づけとは 今まで日本は、ロシアと北方領土問題を中心に考え、ロシアとの関係を深めることに力を入れてきませんでした。 ロシアから見れば、平和条約を結んでいるわけでもなく、いきなり「北方領土を返せ!!」と言われても手順が違うと感じていたのではないかと推測されます。 現在ロシアは、クリミア半島の併合による欧米諸国からの経済制裁や近年の原油安の影響により、ここ数年でGDPを半分近く落としており、経済的に衰退しています。 そんな中、今回の日本の経済支援によって、北方領土返還に心が動きそうですが、実際はそうはなりません。 何故なら、お金で領土を易々と手放してしまうと、歴史的にも他の国の領土をたくさん取ってきたロシアにとって、北方領土の返還が契機となり、各地で独立運動が起きてしまいかねないからです。 プーチン大統領が、今年5月に北方領土問題に関連して「一つとして(島は日本に)売らない」と意地でも述べる背景にはこうしたものがあります。 ◆優先すべきは「安全保障重視」の日露交渉 では、ロシアとの交渉においてどのような手順を踏めばいいのでしょうか。交渉は、大小をみて、「大」の方を先に取る必要があります。 優先順位として、ロシアとの「平和条約」を結び、さらに通商条約など「経済協力」の関係を深めることが大切です。 これは、北方領土問題に関しては、いったん脇に置いてでも、日本とロシアとの関係の強化に集中する必要があります。 ◆ロシアとの友好関係を深め中国・北朝鮮の包囲網をつくる 今後、日本は、日米同盟は基軸としながらも、自主防衛体制を構築していかねばなりません。そして、アジアの安定を守るためにも、ロシアなどの大国とも平和条約を結び、手を取り合わねばいけません。 12月15日のプーチン大統領との首脳会談をきっかけに日露関係がより良い方向へ進むことを願ってやみません。 <参考文献> 「国家の気概」 大川隆法 「プーチン 日本の政治を叱る」大川隆法 国防の危機を訴えない沖縄県翁長知事――党沖縄県本部が要請文を提出! 2016.10.16 幸福実現党・政務調査会チーフ 小鮒将人 ◆国民に知られていない尖閣諸島周辺の危機 幸福実現党は立党以来、中国の覇権主義の危険性を訴え続けて参りましたが、中国の習近平政権の下、国防の危機が進行しています。 特に沖縄県・尖閣諸島の領有を中国側が一方的に宣言していることは、看過できない状態であり、幸福実現党は幾度となく警鐘を鳴らしてきました。 民主党政権から自民党政権になっても事態が深刻化している事については、あまり知られていないのではないでしょうか。 一部のマスコミでは報道されていますが、最近の尖閣周辺は、以下のような状況になっています。 ・8月1日に中国の最高裁に当たる最高人民法院が中国の「管轄海域」で違法漁労や領海侵入をした場合に刑事責任を追及できるとする「規定」を定めた。中国は尖閣諸島周辺も自国領海と主張しており、同海域において、我が国の漁船に対し中国公船が厳格な法執行を行う恐れがある。 ・連日、大量の中国「漁船」の航行が確認されているが、専門家によると中国「漁船」は1隻に30人以上乗船可能な大型船で、搭乗員の多くは海上民兵だという。その証拠に8月11日、ギリシャ船と衝突、沈没して救助された中国漁船の船長、甲板長、機関長の3人は、中国の海軍軍人であることが判明している。 ・我が国の経済水域内であるにも関わらず、沖縄県の漁業者は尖閣諸島周辺で漁をすることを断念せざるを得なく、大変な経済的損失を受けている。勇気を出して漁に出ても、万が一にも中国の公船と接触するようなことでもあれば、中国に捉えられる恐れも出ているからだ。 ・9月25日、中国空軍の戦闘機とみられる航空機など計8機が沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を通過した。中国は西太平洋上で遠洋訓練を行ったものと思われる。 ◆なぜ翁長知事は危機を訴えないのか 自民党安倍政権も、噂されている解散・総選挙に備えて高支持率を維持するためか「憲法9条改正」の発信を曖昧なままにしており、本気になって国防に取り組むには至っていないのが現状です。 沖縄県民の生命の保護を大きな使命としているはずの翁長県知事からも、全く発信がなされていません。 翁長氏は沖縄県知事に就任以来、普天間飛行場の移設問題を始め、一貫して在沖米軍基地の早期撤退を主張し続け、沖縄には国防の危機が存在しないかのような発信を続けてきました。 以前の当ニュースファイルでもお伝えしましたとおり、フィリピンのドゥテルテ大統領が明確な反米・嫌米路線を標榜し始め、南シナ海にも中国の領土拡張の可能性が高まっています。 沖縄県知事として本当にこの嫌米・親中路線を変更しなくてよいのか、大きな疑問が高まります。 ◆党沖縄県本部が知事に要請書を提出! 上記のとおり、翁長知事が知事としての責務を果たしていない現状に危機を感じた幸福実現党沖縄県本部(山内晃本部長、金城タツロー副本部長)が翁長知事あてに以下の要請文を作成し10月14日(金)、沖縄県庁知事公室の運天参事に対し手渡しました。 1、沖縄周辺における中国による挑発的な行動に対し、どのような対処が必要・可能であるのか、連絡会議を設置し、対応策を講じること。 2、政府に対し、尖閣諸島周辺海域の安全を要請してもおられるが、日米安全保障条約第5条に基づき、日米が協調して不測の事態に備えるよう、更に強く要請をすること。 3、石垣島、宮古島における政府による自衛隊配備着手への受け入れを表明し、中国政府に県民保護のメッセージを示すこと。 党沖縄県本部はこれらの要請について、知事に10月28日までに回答を求めました。 そして要請文の提出は、琉球新報や八重山日報などの地元のマスコミにも取り上げられました。 ◆具体的な活動で国の危機を食い止める幸福実現党 今、「日本の外交」といえば年末に控えているプーチン大統領の訪日の際に予想される「北方領土返還」が大きく取り上げられていますが、こと沖縄について言えば事態が改善しているかというと、ほとんど進展がないのが現状です。 そうした意味では、今回の党沖縄県本部による要請文提出は、改めて日本の国益のため、沖縄へ目を向けさせる大きなきっかけとなることが期待されます。 我が党は、今回の要請文の提出をはじめとして、国の危機を食い止める具体的な活動を全国各地で展開しております。皆さまのご理解、ご支援を心よりお願いいたします。 地方活性化に向けて(2)――岩手県紫波町「公民連携(PPP)による街再生」の例 2016.10.15 HS政経塾4期卒塾生 西邑拓真(にしむら たくま) ◆駅前の未整備地区の開発に成功する「オガールプロジェクト」 岩手県盛岡市と花巻市の間に位置し、人口約33,000人を抱える同県紫波町に2012年、複合施設「オガールプラザ」がオープンしています。 「オガールプラザ」は、紫波町が取り組む都市開発事業「オガールプロジェクト」の中核施設となっており、図書館、民営の産直販売所、カフェ、医院などを備えています。 同事業が対象とする地区は、JR紫波中央駅前にある11.7ヘクタールの町有地です。この地区は、財政難により整備できない状態が続き、10年以上、未利用のまま塩漬け状態となっていました。 この状況を打破しようと、PPP(公民連携)を念頭に、当プロジェクトが2009年に開始されます。 「オガール」とは、「成長する」という意味の方言「おがる」と、フランス語で「駅」を意味する「ガール」をかけ合わせた造語を意味します。 同事業は「オガールプラザ」を核に、バレーボール専用体育館やホテルを有する「オガールベース」、紫波町が造成・分譲する住宅地である「オガールタウン」、日本サッカー協会公認グラウンド「岩手県フットボールセンター」などから成ります。 事業開始から7年が経ち、今や、町の人口の25倍に相当する、年間90万人近くが、同地区を訪れるような状況にまで発展しています。 ◆成功の「カギ」となったPPPの活用 このプロジェクトの成功の「カギ」となったのは、PPPです。 PPP (Public Private Partnership)とは、「官」と「民」が連携して公共サービスの提供を行うスキームで、事業の企画段階より民間事業者が携わる仕組みとなっています。 PPPを活用することによって、インフラ整備の際の財政負担を軽減することができるというメリットがあります。 オガールプロジェクトにおいても、東北銀行から融資を受けるなど、民間資金が十分に活用されています。 「PPPといえども、これは民間事業。金融機関がカネを出してくれなくては成立しない」という意識からも、オガールプラザの建設時には、大枠の施設の規模や建設費用が先に決められ、また、コストを極力抑制する建造設計がなされるなどしました。 その結果、オガールプラザの工事費は10億円余りと、公共建築としては極めて低コストに抑えることに成功しています。 また、「甘い見込みでテナントが埋まらないような駅前施設」にはしないために、設計前に見込みテナントが固められるなど、健全な経営感覚に基づいた判断がなされています。 さらには、「来館者同士の交流を促進させ、活気を生み出す」というコンセプトの下、民間の知恵も大いに活用されました。 図書館の新設や産直所に関しては、住民の強い声を拾い上げた結果として、設置されたものとなっています。 このように、民間の資金と知恵を活かすPPPをうまく機能させたことが、同プロジェクトを成功へと導いたというわけです。 ◆民間活力を最大限活用することこそ、地方活性化の道! 大幅な人口減少と、深刻な財政難を抱える地方自治体は多く、確固たる「地方活性化策」の推進が今、急がれています。 しかし、国から、「危機」の中にある「地方」にお金を委譲して、それを使わせることだけが、必ずしも地方を活性化させるための最善策であるとは限りません。 やはり、地方活性化のためには、「民間のアイデアや資金を最大限活用する」という発想を持つ必要があるでしょう。 岩手県紫波町の「オガールプロジェクト」は、健全で発展的な「まちづくり策」の良い例を示していると言えるのではないでしょうか。 参考文献 竹本昌史 『地方創生まちづくり大事典』, 国書刊行会, 2016. 日経アーキテクチュア2012年7月10日号「オガールプラザ 産直、カフェ、図書館が一堂に−コストを抑えた木造施設に、エリア全体で集客」 日本経済新聞(地方経済面東北版)2014年2月15日付「塩漬けの土地街の顔に」 すべてを表示する 1 2 Next »