Home/ 2014年 September 2014年 September 「地方創生」本部発足――政府は哲学とビジョンを持て 2014.09.09 文/HS政経塾第2期卒塾生 川辺賢一 ◆政治術としての「地方創生」 今月3日、安倍首相は第2次政権発足後初の内閣改造を行い、なかでも石破茂氏の地方創生担当大臣への就任が注目を集めました。安倍首相自らが「地方創生本部」の本部長となり、アベノミクスの重点課題として「地方重視」が位置付けられました。 そこで「地方創生」の意義について、考えてまいりたいと思います。 都市と地方を巡る問題は歴史的にも国際的にも政治的に非常に重要なテーマとされており、日本だけでなく世界各国において、単なる政策論争を超えて、ときに根深い政治対立を生む原因となっております。 例えば日本においても、戦後政治史上、最大の派閥闘争とされる田中角栄氏と福田赳夫氏との政治闘争、「角福戦争」の背景にも都市と地方を巡る問題がありました。 「裏日本」と言われた日本海側地域の国土開発等、「日本列島改造論」「国土の均衡ある発展」をスローガンに掲げた田中氏に対して、福田氏は政府支出が肥大化しすぎだとして対抗しました。 ところで安倍首相の所属派閥は福田赳夫氏が創設した清和会(現・町村派)です。最近では地方分権改革を掲げた小泉純一郎元首相に象徴されるように、清和会の底流には公共事業費や地方への補助金等を削減して均衡財政主義を採る傾向があるといえます。 一方の石破氏は田中角栄氏の薫陶を受けて育った政治家であり、「おまえが親父の後に出ろ」と田中氏に言われたことが、石破氏が政治への道を歩むきっかけとなったとされます。 通常、大都市優先と地方重視とで政策は両立せず、主張の対立から政権が不安定化し、振り子が右から左へ振れるように政府がつくりかえられるわけですが、今回の内閣改造で安倍政権は田中角栄氏の流れを組む石破氏を地方創生担当相として取り込んでしまいました。 こうした背景を踏まえるならば、内閣改造で重点課題となった「地方創生」は政権の長期安定化を狙った政治術の一環であるといえるでしょう。 ◆経済政策としての「地方創生」 それでは「地方創生」に政治術以上の合理的な意義はあるのでしょうか。 地方分権改革を掲げた小泉政権は「ない」という結論を出したのだといえるでしょう。都市への人口集中が本当に問題のあるレベルに達したならば、自然と地方に人口が逆流すると考えたからです。 もしも政治が介入し、高い利益や所得獲得を目指して都市に移ろうとする企業や人口を地方にとどめようとするならば、国民全体の平均的な所得水準の向上を抑えることになってしまう。こうした論法からです。 そもそも近代以降の資本主義経済の発展は土地に縛られない、土地を必要としない経済への移行でした。農地や米が貨幣価値の源泉、基準であった農本主義の時代は土地の所有自体が価値のあることだと考えられましたが、いまや土地は将来収益を生むための数ある資源の一つにすぎません。 経済の成長に伴って「人・もの・金・情報」の集まる都市に企業や人口が流入するのは自然な流れであり、経済的な論理だけで考えるならば、政治が介入にして地方に企業や人口をとどめる意義を見出すのは困難です。 ◆「地方創生」の意義は何か では「地方創生」の合理的意義はどこにあるのでしょうか。 まず第1に国防上の観点からです。かつて尖閣諸島・魚釣島にも250人程度の日本人が生活し、仕事をしておりました。もし、現在も同じ状況であったらならば、尖閣諸島が日本の領土であることなど説明不要の自明の理とされたはずです。 尖閣諸島は特殊な例ですが、地方の過疎化によって地価が下がり、外国人による購入が進めば、国防上の危機が高まります。やがて破たん直前の地方債が外国に買われるようになれば、日本は財政的に分断されます。 第2に快適な暮らしという観点です。 例えば日本の人口はフランスの2倍ですが、日本の国土面積はフランスの1/2、くわえて日本の国土の約2/3は山間部で人が住めません。地方の土地を有効利用できていないことと重なって、日本の地価は異常に高く、サラリーマンは平均1時間半の通期時間を満員電車のなかですごさなければならないのです。 国土の狭い日本では陸海空のインフラ交通網の整備を通じて、国全体を一つの都市圏・経済圏として統合して国土の有効利用を進めていくべきですし、「日本をアジアの首都」として、世界中から人口が集まってくる国を目指すべきです。 ◆「地方創生」のカギは「一貫した国土計画」と「単年度予算の廃止」 このように「地方創生」進める上でも、単にお金を地方自治体にばらまけば良いものではなく、国家防衛や国土計画の全体観に調和したものでなければなりません。 そのために政府は一貫した国土計画を持ち、単年度で財政の均衡を図ろうとするのではなく、長期での回収、長期で均衡していくことを目指した財政政策が求められます。 政府はなぜ「地方創生」が必要なのか、その哲学を持つと同時に、一貫したビジョンを持って行っていく必要があります。 日本外交のツボ、インドとロシア 2014.09.08 文/HS政経塾3期生 たなべ雄治 ◆安倍首相の地球儀外交 第二次政権の安倍首相の歴訪国数は49カ国となり、過去最多を記録しました。 その外交は、アジアのみならずアフリカや中南米にも及び、ODAやトップセールスなどで成果が出ています。 ◆モディ首相来日 さらに、外国首脳の招待でも成功しています。モディ首相は、主要国への単独訪問のトップバッターとして日本を選びました。その来日では、インフラ投資や企業進出など、良好な日印関係が強調されました。 反面、日印首脳会談の共同声明の内容からは、今後の課題が見えてきます。 課題の一つは、原子力協力です。日印原子力協力協定への進展が見られませんでした。 インドは慢性的な電力不足に悩んでおり、世界でも屈指の技術力を誇る日本の原発に大きな期待を寄せています。ところが日本は、インドがNPTに加盟していないことなどを理由に、原子力関連の協力を渋っています。 安倍政権は、反原発の日本の世論を懸念しているのでしょう。自衛隊法が決着していない中で日印の原子力協力まで踏み込むことは、国内世論の現状においては望めないでしょう。 しかしインドがNPTに加盟しないのは、中国に対する核抑止力の確保という不可欠の事情があるからです。日本の、とりわけマスコミは、この事情を理解しなければなりません。 インドは、米印原子力協力協定をはじめとして、日本以外の国との原子力協力協定は着実に進めています。日本一国のみが協定を結ばないことに意味はありませんし、インドとの協力関係への阻害要因にしかなりません。感情論に陥らない原子力政策の議論が必要です。 もう一つの課題は、安全保障協力です。今回の首脳会談で、日印の閣僚級2プラス2が決定されるのではないかと期待されましたが、結局見送られました。 これにはインドの国内事情が関連していると思われます。インドの今の最大の課題は、経済問題です。貿易額一位の中国を下手に刺激したくないのがインドの本音であり、今回の先送りは中国への遠慮でしょう。 しかし、モディ首相は心情的に大変な親日家であることが分かります。今回の訪日でモディ首相は、日本と大きな縁があるパール判事とチャンドラ・ボースの名前を幾度も口にしています。 講演の中でも、チャンドラ・ボースを再評価する映像を作りたいと表明されていました。日本としては、このメッセージを受け止めるべきでしょう。 インドは、歴史的にも地政学的にも重要な国です。特別な関係を築いて行く必要があります。 ◆ウクライナ問題への日本の役割 ウクライナ東部の紛争についても、この週末に動きがありました。 ウクライナ政府と親ロシア武装勢力との和平の覚書の詳細が公表されました。東部2州に強い自治権が認められるなど、ウクライナ政府の妥協が見て取れます。 これは妥当な落としどころでしょう。ロシア系住民も比較的多い地域です。ウクライナに代わって東部の自治地域が緩衝国としての役割を果たすのであれば、ロシアとしても納得できるのではないでしょうか。 ロシアの孤立化に伴い、仲が悪かった中露の関係が親密化してきました。中国への牽制要因が一つ減るわけですから、日本にとって悪い状況です。欧米とは逆に、ロシアの孤立化を防ぎたいところです。 ウクライナ停戦に関しては、自治のレベルが未解決で和平交渉の難航も予想されます。ここでも一つ、日本の外交が役割を果たすべきです。 北朝鮮の拉致問題でも見られたように、独自外交も安倍外交の特徴の一つです。日本が、ロシアと欧米とを仲裁することができれば、大きな成果です。安部外交に期待したいと思います。 ◆日本が果たすべき新たな役割 中国が香港での普通選挙を認めない方針を打ち出し、香港では抗議デモが続いています。 先進諸国に対しては巨大市場を、途上国に対しては巨額の経済支援、といったアメ玉を駆使して中国は影響力を強めています。 ところが、あからさまな人権弾圧、ハイペースの軍事費膨張を見れば、全体主義の拡張の危険はまさにアジアに迫っているといえるでしょう。 インドとロシアは歴史的にも友好的です。日印露の友好関係は、アジアの安定に大きな力を発揮するでしょう。 自由や人権、法の支配といった、中国がちらつかせる経済的メリットを超える価値を打ち出して、世界をリードすることができるか。日本外交が新たな役割を果たすべき時がきています。 オスプレイ佐賀空港配備に賛成するデモ――県民意識と報道姿勢の変化 2014.09.07 文/佐賀県本部副代表 中島 徹 ◆自衛隊のオスプレイ佐賀空港配備計画の意味 今年7月22日に武田良太前防衛副大臣、8月25日には小野寺五典前防衛大臣がそれぞれ古川康佐賀県知事を訪ね、陸上自衛隊が導入するオスプレイ17機の佐賀空港配備の申し入れが行われました。 防衛省が佐賀空港に配備を計画する理由は、第一に中国の軍事的脅威に直面している尖閣諸島など離島防衛のため佐世保市を拠点に創設が進められている水陸機動団の輸送手段とすることがあげられます。 そのほかにも離島や山地が多い九州地方の人命救助、また今後想定される朝鮮半島有事の際、邦人救助においても重要な役割が期待されます。 ◆オスプレイ配備に見る国民と報道の変化の兆し 幸福実現党佐賀県本部では、国防上、重要な意味を持つ配備計画に賛成する立場から、古川康佐賀県知事宛に計画の受け入れを求める署名活動を展開致しました。 8月27日には約100名が参加者し『オスプレイ賛成デモ』を開催、約3週間程度で集められた3,452筆の署名を、古川知事宛に提出しました。デモでは飛び込みで参加されるビジネスマンや、参加者に向かって手を振られる沿道の方の姿も多く見られました。 【8/27オスプレイの佐賀空港配備に賛成するデモ行進(佐賀県本部)※写真あり】 http://info.hr-party.jp/2014/3374/ 報道ではほとんど反対派ばかりが取り上げられる中、地元民放テレビ局や新聞社は異例とも思われる取材に駆けつけ、夕方のニュース(サガテレビ8/27)や翌日の新聞(毎日新聞、佐賀新聞8/28)にも一部写真入りで掲載されました。 ちなみに武田前副大臣の来庁時には、県庁前で反対派の約120名・賛成派約20名がそれぞれの立場から意見を訴えていましたが、報道されたのは反対派だけだったことから考えると、明らかな変化です。 また、署名活動では、最近の中国の対日姿勢に対し憤りを覚える方や国防の危機を感じている方、配備が地元経済にもたらす経済効果に期待をされ署名してくださる経営者の方など、水面下でオスプレイ配備に賛成の声が広がっている事を筆者自身、実感しました。 それは日頃、反対の立場からの記事が多く目立つ地元紙の県民世論調査でも、半数を越える58%の方が自衛隊のオスプレイ佐賀空港配備を容認している点からも伺われます。(佐賀新聞8/31) ◆自らを窮地に追い込むNHKの報道姿勢 そんな中、国民から受信料を受け取り国民が正しい判断をするための判断材料を提供すべき立場にある地元NHK佐賀放送局が、オスプレイ賛成派の取材に来られなかったことに対し、翌日に局に赴き、抗議を行いました。 対応された職員は限られた人材で対応しているため取材できなかった、偏向報道している訳ではないと反論がありましたが、30日には反対派の決起集会、デモ行進を報道、再度、電話にて厳重抗議を行いました。 やり取りの中で判明した、末端のNHK職員にまで染みついた独特の思考形態があります。それは、NHKとしては「中立」な報道と考えている、その「中立」が、既に完全に「左」に寄ってしまっている事実です。 抗議の中で、政府が配備の申し出をしている事に対し、反対派と賛成派の両方の意見を報道するのが、公正中立な報道ではないかとただすと、防衛大臣が来県した報道自体がオスプレイ配備を推進する後押しになっているから、反対派を報道することでバランスを取っているという見解が披露されました。 従軍慰安婦を巡る虚偽報道とその後の無責任な対応で窮地に立つ朝日新聞の例を挙げるまでもなく、国民に不利益をもたらす独りよがりの偏向報道をするマスコミは、報道姿勢を改めその本来の職業的使命を果たさなければ、自身をも滅ぼしてしまうことを知らねばなりません。 ◆「葉隠」の武士道精神でオスプレイ佐賀空港配備受け入れを! 幸福実現党佐賀県本部は、国益に資するオスプレイ佐賀空港配備受け入れを実現すべく、引き続き活動を行って参ります。 それは地元のためだけでなく、日本全体、ひいては東アジアの安定のために必要なことであり、佐賀県が大局を見て配備を受入れる事が、再び明治維新のように「葉隠」の武士道精神が、日本の誇りを取り戻す事に繋がっていくからです。 ※「葉隠」(はがくれ)は、江戸時代中期(1716年ごろ)に出された書物。肥前国佐賀鍋島藩藩士・山本常朝の武士としての心得についての見解を「武士道」という用語で説明した言葉を田代陣基(つらもと)が筆録した記録である。(『Wikipedia』より) 「地方創生」をただの選挙対策で終わらせないために 2014.09.06 文/幸福実現党山形県本部副代表 城取良太 ◆安倍政権が発信する「地方創生」は選挙対策か? 「政権の最大の課題は豊かで明るい地方をつくることだ。大切なのは現場主義で霞が関の常識を忘れて、地域にどんどん出てほしい」 安倍首相は5日、地方創生の司令塔となる「まち・ひと・しごと創生本部」の看板掛けに立ち会い、このように職員たちに訓示し、地方創生相に就任した石破氏も「日本の消滅という事態を避けるための処方箋を出さないとこの国はなくなる」と危機感を露わにしました。 各省から出ている予算案を見ても、地域経済を支える企業の支援、地方部でのベンチャー企業の育成や若者の就職支援など、「地方の活性化」を現政権として最重要課題の一つとして取り組んでいく姿勢が見て取れます。 しかし一方で、来年春に全国で行われる統一地方選を見据えた「選挙対策」ではないかという声も根強く、「地方の味方であり、地域のことを誰よりも理解している。(高橋はるみ北海道知事)」と地方で大人気の石破元幹事長の地方創生相起用もその疑念をより一層強くさせます。 地方の活性化が日本を明るくすることは間違いありませんが、同時に地方部の過疎という問題は、今始まったことではなく、数十年といった長いスパンで継続しているトレンドであるということをまず受け止めることです。 その上で、メッセージ先行型や予算バラマキ型ではなく、長期的視点に立った実効性のある政策にじっくりととりくんでいく姿勢が必要であります。 ◆地方創生のためには「移民政策」から目を背けてはいけない 地方創生という視点に立って、行うべき必要な政策は多岐に渡りますが、最も重要だと考える2つに絞って述べると、まずは「人口自体を維持し、増やしていく」という視点が重要だということです。 いまの出生率1.4%前後では、2060年に日本の人口は現在の3分の2にあたる8700万人にまで減少し、2040年には私が住んでいる東北地方を筆頭に、全国で896の地方自治体が消滅すると言われています。(東北では青森35、岩手27、秋田24、山形28、宮城23の合計137が消滅) これに対し、政権側では「2060年に人口1億人維持」という目標を掲げていますが、そのためにはここ十数年で出生率が2%以上にまで回復しなければならず、今までの政策の実効性から見ると考え難い数値だと言えます。 こうした点から、地方創生のみならず、日本の未来を守っていくためにも、真剣に「移民導入」を検討すべき時期に来ていると考えますが、現政権の支持基盤である保守層からも「移民政策」への嫌悪感が根強いために腰が引けている状態でしょう。 確かに、今のシリア・イラクで勢力拡張を続ける「イスラム国」の中に、ヨーロッパで育ったイスラム教徒たちが多数参加しているという事実や、社会に溶け込めない移民が犯罪を犯しているという事例がヨーロッパでは多数あり、「移民は怖い」という先入観があることは否めません。 しかし逆を返せば、移民たちが社会に溶け込めない要因は「言葉や文化」と「仕事」の問題が大半であり、これらに対する教育支援を徹底して行っていくことで解決は可能であると考えるべきです。 指を咥えながら日本の人口崩壊をただ見届けるだけでなく、彼ら外国人たちが我々日本人と共に、先人たちから受け継がれた伝統や文化、言葉などをそれぞれの地域で「守り保ってくれる」パートナーになってもらう未来図を信じ、努力を行うことで、地方創生は動き始めていくと考えます。 ◆地方創生と消費増税はまさに「水と油」の関係 また、野党からは「消費増税内閣」と揶揄されているそうですが、もう一つの重要な点は、「地方創生と消費増税は全く両立しない」という点です。 それは消費税には、低所得者ほど負担比率が高くなる「逆進性」という特質があることから明らかです。 2012年の都道府県別の年収を見ると、1位の東京(582万円)と下位の沖縄、東北各県(350万円前後)のように、個人所得で200万以上もの開きがあります。 消費税が10%に更に上がるとなると、逆進性という性質上、まるで指先やつま先から冷えが始まっていくように、「地方創生」という掛け声むなしく、所得が低い地域から景気の冷え込みが始まっていくはずです。 このように国家の観点から、真に「地方創生」を成し遂げる前提条件として、今の政権が踏み込めずにいる「移民政策」と「消費増税の撤廃」に解がある気がしてなりません。 ◆地方創生にとって必要なマインドとは 最後に、地方創生にとって最も重要なことは、何より各地方自治体の自助努力でありましょう。 ケネディ大統領が就任演説で述べた「国があなたに何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何が出来るかを考えよ」という言葉こそ、地方側が持つべき必要なマインドなのではないでしょうか。 今の人口動態が続いていくならば、残念ながら限界集落化する自治体は後を絶たないでしょう。 しかしながら、自助努力の精神をしっかりと持った市民がおり、新しい価値を生み出そうとする若い起業家たちを惹きつけ、違った価値観を持つ外国人たちを受け入れる寛容さを持った自治体は、その個性を最大限に開花させ、未来を切り拓いていくはずです。 そうした面白い自治体が全国で名乗りを挙げ、百花繚乱の地方創生が成し遂げられていくことを心待ちにしたいと思います。 ※お知らせ Factで中東問題を扱う番組が始まりました。是非ともご覧下さい! 世界の原子力安全の向上に貢献するのは日本の責務 2014.09.05 文/福井県本部副代表 白川 康之 ◆福井地裁の不合理な判決 今年5月21日、福井地裁は、関西電力大飯発電3、4号機の再稼働を認めない判決を言い渡しました。それは「ゼロリスク」を求めた、あまりにも不合理な判決だと言わざるをえません。 そもそも「100%の絶対安全」などあり得ません。原子力規制委員会が定めた原発の新規制基準も全く考慮せず、科学的検討もない、原子力の素人が下した無見識なものでした。 1992年の伊方原発の安全審査を巡る訴訟の判決で、最高裁は「極めて高度で最新の科学的、技術的、総合的な判断が必要で、行政側の合理的な判断に委ねられている」との見解を示し、原発の審査に関しては、司法の役割は抑制的であるべきとしました。 極めて妥当な判決です。各地で起こされた原発関連訴訟の判決には、この最高裁の考え方が反映されてきたにもかかわらず、福井地裁の判決は最高裁の判決に反するものであり、「脱原発ありき」の判断だったのではないでしょうか。 さらに判決は、原発の運転停止によって多額の貿易赤字がでるとしても「国富の流出や喪失というべきでない」とし、国富を「豊かな国土に国民が根を下ろして生活していること」と定義し、それを取り戻せなくなることが「国富の喪失だ」という現実を無視した環境左翼的な実に無責任な私見に基づくものでもありました。 ◆原発の再稼働は不可欠 現在わが国は、原発はあるが使えない「原発稼働ゼロ」という異常事態の中にあります。東日本大震災後、火力発電の燃料輸入費が増大し、毎日百億円という国富がムダに垂れ流されていることは厳然たる事実です。 結果、平均的な電気料金は家庭用で2割、産業用で3割も上がっています。家計の負担増だけでなく、産業界も値上げで悲鳴を上げているのが現実です。国民生活と産業の基盤である電力を安価で安定的に供給するためには、安全性を確認した原発の早期再稼働が不可欠です。 ◆世界は原発を必要としている 今の日本の世論は、原発についても「一国平和主義」の中にあるのではないでしょうか。 今や、国防は一国のみにてできる時代ではありません。そうした現実から、政府は集団的自衛権の行使容認を決定しました。ましてや、エネルギー自給率が6%のわが国においては、エネルギー安全保障についても一国にてできるものではありません。 他国から資源を輸入するだけでなく、エネルギーの面においても日本が世界に貢献してこそ、エネルギーの安全保障が成り立つといえます。 世界人口が100億に向かう中、食糧増産のためにも大きなエネルギーが必要となります。安価で安定した電力の需要は増すばかりであり、世界が原発を必要としているのです。 世界の原子力発電所については、運転中が426基(内、日本は運休中48基)、建設中が81基、計画中100基であり、建設、計画中については、中国、韓国やインド等のアジア諸国が約5割を占めています。 「エネルギー基本計画」においても、国際的な原子力利用は、特にアジアにおいて拡大を続ける見込みとしており、そうした世界のニーズに応えるためにも、わが国は原子力利用先進国として、原発の建設、運転、保守管理、廃止措置(原発の廃炉は世界共通の課題)をセットに高いレベルの原子力技術、人材を維持、発展させることが必要とされているのです。 福島第一原子力発電所事故の経験と教訓に基づいた、安全性を高めた原子力技術を世界に提供し、世界の原子力安全の向上に貢献していくことは日本の責務であり、成長戦略、国際協力の観点からも意義のあることなのです。 改造内閣も消費税増税内閣となるか 2014.09.04 文/HS政経塾1期卒塾生 伊藤のぞみ ◆改造内閣と自民党役員人事 9月3日、安倍晋三首相は新しい内閣の閣僚を発表しました。 女性閣僚が歴代最多の5人であったことや、経済産業大臣に歴代最年少の小渕優子氏の入閣が大きく報じられています。 また、自民党役員人事の発表も同日に行われ、谷垣禎一氏が幹事長に就任したことで、安部首相と政策的に距離のある勢力を取り込んだ形になったといわれています。 一説には、今回の内閣改造、役員人事は消費税を増税するために自民党内をかためる目的があって行われたという指摘もあります。 ◆8%への増税を決めたGDP速報値 前回の消費税増税では、都合のいいタイミングで、都合のいいGDP速報値が発表されました。 5%から8%の消費税増税の際は、安部首相は7‐9月期のGDPが2%増加に届かなかった場合には増税を見直すという発言もありましたが、1.9%という速報値が出たために、増税が確定しました。 しかし、その後確定値発表され、GDP成長率は実際にはたったの1.1%だったことが明らかになりました。目標の2%にまったく届かない数値です。 2%という目標を本気で気にかけていたのであれば、確定値が発表された12月にでも、増税をストップしていたはずです。 ◆増税の影響が現れた-6.8%の経済成長率 先月8月には、4‐7月期のGDP成長率が発表され、年率換算で-6.8%という衝撃的な数値が発表されました。 主な原因は家電製品や自動車、パソコンなどの耐久品や住宅の販売が大幅に減少したためで、予想通り消費税増税の影響が如実に出ています。 内閣官房参与である本田悦朗静岡県立大学教授は、景気後退は想定以上だとして、消費税増税は1年半先送りするべきだと主張しています。 参考:内閣参与「消費税10%は、1年半先送りを」http://toyokeizai.net/articles/-/46850 ◆政府支出でも調整できるGDP成長率 GDPは個人が使ったお金、企業が使ったお金、政府が使ったお金、さらに輸出から輸入を引いたお金の合計です。ですから、個人や企業が使ったお金が減っても、それ以上に政府がお金を使えばGDPは増えます。 4-7月期のGDPは個人と企業が使ったお金は減りましたが、政府が使ったお金は増えました。にもかかわらず、-6.8%という数値が出たのは、それだけ個人と企業の消費が冷え込んだからです。 先ほど、2013年にGDP速報値が実際よりも大きく出たことで、増税が確定したという話をしましたが、政府はその気になれば、「景気対策」と銘打って使うお金を増やしGDPを強引に増やすこともできるのです。 ◆景気対策は潜在的に民間需要のある範囲にとどめるべき すでに、消費税増税の景気後退を打ち消すために、大規模な景気対策をすべきであるという意見が出ています。 しかし、政府支出を増やし、GDP成長率を大きくし、消費税を増税して景気を悪化させるのであれば、本末転倒です。 さらに、企業の側からすると新しい顧客を獲得しながら、固定客を作っていくことが事業を継続するために必要であり、継続的な契約につながらない政府の景気対策は、事業の継続性という観点から考えると理想的ではありません。 実際、小泉内閣で公共事業を削ったために、建設業界、土木業界は現在人手不足に陥っています。だからといって、恒常的に政府がお金を出すようになれば、補助金漬けとなり、業界の競争力は落ち、財政の負担は増していきます。 景気対策は、景気後退で一時的に需要が落ち込んでいる分野にとどめるべきであり、景気が回復しても民間需要が戻ってこないようなボリュームを大きく超えて行うべきではありません。 ◆経済成長は民需主導で実現すべき 経済成長の目的は国民一人ひとりが豊かになることであり、経済成長そのものが目的ではありません。国家の財政は補助的なものであり、主役はあくまでも民間です。 せっかく民間主導の景気回復が実現しつつあったものを、消費税増税でつぶしてしまったことの影響はこれからさらに明らかになるでしょう。 景気対策で政府支出を増やし、高いGDP速報値を発表することで景気回復を演出し、消費税を10%にするという茶番だけは絶対にやめるべきです。 学問の領域に潜む黒い影――中国孔子学院の実態 2014.09.03 文/HS政経塾2期卒塾生 服部まさみ ◆中国「孔子学院」の実態 日本の学問の領域に静かに忍びよる黒い影があります。中国の文化教育・宣伝機関である「孔子学院」の存在です。 中国政府が03年から「中国語を世界語に」とのスローガンのもと、中国語・中国文化を世界に広げる国家プロジェクトが推進されました。 この国家プロジェクトの趣旨は、「世界に中国語を広め、世界各国の中国に対する理解と有効を深め、世界における中国の影響力を拡大すること」とし、その目標を達成するための中心政策が孔子学院なのです。 04年にソウルで一校目が設置された後、14年7月までに、全世界で約400、米国では90数カ所に開設され、日本でも立命館大学、早稲田大学、桜美林大学など約20大学に開かれています。 世界各国に設立されている孔子学院は、中国の政府機関と海外の教育機関との共同設置・運営を行っています。 限られた予算の中で授業を行わなければならない多くの教育機関にとって、中国側が初期投資の費用を提供してくれる孔子学院は魅力的であり、中国側にとっても提携機関のインフラを利用することで設備投資を軽減出来るメリットがあります。こうしたフランチャイズ方式が急速な拡大を可能にしたのです。 また、中国当局の訓練を受けた教師が中国から派遣され、教科書やプログラムなども中国当局が作成したものが使われています。しかし、相手国の教育機関のニーズをもとに作られているため中国のプロパガンダとは一見分からないようになっているのです。 大学などの教育機関の内部に設置され、教師の給料などの費用も中国政府が支給し、採算を度外視していることが特徴的です。 政府主導で自国の言葉や文化を広める英国のブリティッシュ・カウンシルや、ドイツのゲーテ・インスティテュートなど他国の組織は独立した語学学校という形を取っています。 孔子学院は、一般国民からは、中国語と中国文化を教える学校にしか見えませんが、中国教育省の高官は、「我が国の外交と対外宣伝工作の重要な一部だ」と強調しているほど、その実態は中国共産党のプロパガンダ的要素が強いのです。 ◆米国の教育機関を侵食する孔子学院 中国政府は、米国における中国語教育・中国文化の普及を大変重要視しているため、米国内の100近い大学に孔子学院が設置され、世界最多となっています。 しかし、今年の6月に、米国大学教授会は、「孔子学院は中国国家の一機関として機能し、学問の自由を無視する行動を取ることが多い。一方、米国の大学は学問の誠実性を犠牲にするようなパートナーシップを外部機関と結ぶことがしばしばある。孔子学院の開設を学内に許してきた米国の大学は、孔子学院との関係を再検討する必要がある」との公式声明を発表しています。 この公式声明が発表された背景には、米国の大学内にダライ・ラマの肖像画を飾ることを禁止したり、法輪功に加わったカナダ人教員に脱退を求めたり、中国政府に弾圧された民主化運動家の陳氏に対して圧力をかけ大学からの退去を求めたり、事実上、中国政府のコントロール下にあることに対して、市民の反対の声が大きくなってきたことにあります。 6月14日付のワシントンポスト紙の社説でも米国の大学が中国に管理されつつあることに警告を発しています。 果たして、米国のこの声明が中国の宣伝工作に対して歯止めをかけることができるでしょうか。 ◆中国の戦略的な手法 中国は、2020年までに世界の500の都市に孔子学院を設置することを目標にしています。今後は、さらに、初等教育や中等教育における中国語の普及により一層、重点を置くと考えられています。 米国の小・中・高等学校の教育課程において中国語教育の普及を広めるために、中国政府は毎年、米国から小・中・高等学校の校長、教育委員会から約2000名を中国に招聘して、豪華な中国旅行でもてなしています。その結果、中国語科目を提供する学校が以前より4倍に増加しています。 また、孔子学院を設置する州も中国との貿易が活発な州や、政府機関が多いワシントンD.C.近郊の州にターゲットを絞り、他の国の孔子学院の3倍の資金を投入するなど極めて戦略的です。 ◆日本は新たな「占領」を許すな 孔子学院の問題は、米国だけではなく、日本の教育機関に関わる大きな問題です。 大学設置審議会においては、孔子学院に代表される学問の領域への中国の宣伝工作の是非がしっかりと審議されるべきではないでしょうか。 未だ、GHQの占領政策による深い闇から抜け出せない日本において、新たな「占領」を許すわけにはいきません。幸福実現党は、日本と世界の平和のために自由の革命を起こして参ります。 「南京大虐殺」の虚構――なぜ宣教師はウソの証言したのか 2014.09.02 文/幸福実現党政務調査会 佐々木勝浩 ◆聖職者がウソの証言をした理由 東京裁判では宣教師が日本軍の虐殺や、強姦があったことを証言しました。裁判では、その証言が検証されないまま採用され判決が下されています。 では中立の立場であるべき、神に仕えるアメリカの聖職者である宣教師の証言は、本当に信用できるものだったのでしょうか? その証言はあまりにも信憑性に欠けるものでした。 その理由の一つは、アメリカの宣教師にとって、4億人の人口と近代化が遅れている中国は最大の布教地だったからです。歴史的経過として南京大学や鼓楼病院をつくるため、アメリカのキリスト教関係者はアメリカで募金を集めてきました。 それは明治の終わりから始まって、大正までずっと続いてきましたが、信者が思うように増えませんでした。それで昭和に入る頃には、もう中国大陸への伝道をやめようじゃないかという声がアメリカで起こったわけです。 宣教師の中には帰国命令を受けた人もいます。宣教師としては、大陸伝道を何とか頑張ろうと、布教活動をアメリカに認めさせる必要があったのです。そのために日本を悪者にする必要がありました。 つまり「中国人は本当にかわいそうだ。それは日本人のせいだ」とアメリカへの報告書で強調し、日本から受けた市民の被害を針小棒大に書いて、「だから布教をやめてはならない」とアメリカを説得しました。 これが宣教師のウソの証言につながっています。 ◆中国を愛するアメリカ人たちの証言 また南京にいたアメリカの宣教師たちは、日本軍が攻めている中を、よく生き残ったのですが、10年前(1920年代)以下のようなことがありました。 その頃、南京では軍閥が占領しており、そこに蒋介石が攻めてきました。蒋介石軍が攻めようが、そのときも南京大学や鼓楼病院も無事で宣教師たちも生き残ったのです。 例えばこのときに生き残ったウィルソンという鼓楼病院の医師は、中国で生まれています。他にもYMCAの理事をやっていたフィッチも中国で生まれています。彼らにとって中国は自分の国のようなものです。 また宣教師のベイツやマギーはアメリカで生まれていますが、20代に南京に渡ってきており、アメリカ以上に南京の生活が長く大陸に非常に愛着を持っています。 こうしてアメリカの宣教師は、明治の終わり頃から施設もない南京に大学や病院を建て30年、40年支援を続けてきました。 宣教師は最初の頃は病院や大学をつくって布教できましたが、なかなかそれが通用しなくなり、こうした時期に戦争が起き医療、薬が必要になったのです。 アグネス・メドレーの「戦争は彼らにとって神からの贈り物だ」という言葉もありますが、宣教師たちは、戦争を布教のチャンスととらえたのです。 ◆マギー証言――「私が見たのはたった一人です」 こうして大陸で伝道をしていくための論拠として宣教師たちの日本軍に対する証言が針小棒大になっていきました。牧師のマギーとベイツが中心に東京裁判で日本軍による南京虐殺を証言したのです。 マギーは、東京裁判で「日本軍が来ると市民から時計から何から全部奪った。それから至るところで次々と殺していった。強姦もたくさんやった」と、日本兵のやった残虐な行為を2日間に亘って証言しました。 こうした証言の最後に日本の弁護士が反対尋問したのですが、そのやり取りが以下です。 弁護人「マギー証人、それではただいまお話になった不法行為、もしくは殺人行為というものの現行犯を、あなたご自身、いくらくらいご覧になりましたか?」 マギー「私は自分の中にはっきりと申してあると思いますが、ただわずか一人の事件だけは自分で目撃しました」 2日に亘って「日本軍がいたるところでやった殺人や殺戮」を証言したのにも関わらず、マギーは、自分が目撃したのは「たった一人です」と答えているのです。 また強姦に関する証言でも、弁護人が問い詰めるとマギーが見たのは「たった一件だけ」でした。聖職者がまさかウソを言うはずはないと思うわけですが、実際には噂、伝聞の証言をしました。 こうして見てもいない、検証もされない証言がそのまま採用され東京裁判で「日本軍は20万人の市民を虐殺した」という判決が下されました。松井石根大将はこうして汚名を着せられたまま死刑になったのです。 それが現在でも日本の教科書では、「南京大虐殺」として教えられているのです。中国から謝罪しろと言わたら、本当の真実も知らずに「すいませんでした」と謝罪してきたのです。 戦後70年、そろそろ日本人は本当の歴史を世界に説明し、その汚名を晴らさなければ、私たちの子孫もまた世界から「いじめ」を受けることでしょう。その汚名を晴らす役目は、いま生きている私たちの世代の役目でもあります。 次回、「戦争で勝って宣伝戦で敗けた日本」と題して、お送り致します。 「自立した農業」実現へ――北海道・浜中町『高品質牛乳』の成功 2014.09.01 文/HS政経塾4期生・鹿児島県本部 副代表 松澤 力 ◆年末にかけ「農協改革の攻防激化」 政府は、年内に具体的な農協改革案をまとめ、来年の通常国会に関連法案を提出する方針となっています。 今回の農協改革の大きな狙いの一つとして、一律的な経営指導に批判の多いJA全中の影響力を弱め、全国約700の地域農協の創意工夫が引き出されることが期待されています。 ただ、JA全中の万歳会長は、政府の抜本的な農協改革の動きに対して、「改革案はJA自らが決めたい」と自己改革を訴えています。 先日、万歳会長が行った記者会見の中でも、「自己改革はスピード感を徹底した議論を進めていくとともに、国民のみなさまにご理解いただけるよう検討していく」と改めて強調しました。(8/8 SankeiBiz) 今後、あくまでも自己改革を目指すJA全中と、JA全中を頂点とする中央会制度の「廃止」も含めて検討する抜本改革を目指す安倍政権との攻防が、年末かけて激化していく可能性が高まっています。 ◆ハーゲンダッツも認めた「浜中町の高品質牛乳」 日本農業が再生するための一つのカギとなる、地域農協と農業者の方々の創意工夫によって「自立した農業」を実現しているのが、北海道の酪農の町『浜中町』です。 JA浜中は、酪農専門の農業地帯にある農協で、生産組合員戸数は184戸と小規模ながら、年間生産額が約100億円という高い生産性を実現しています。 浜中町の酪農によって生産されている牛乳は、乳脂肪分が4.0と高く、一般のスーパーでは手に入らない高級牛乳です。実は「乳脂肪分4.0」という濃厚牛乳を、一年通じて生産できているのは、現在 日本で浜中町だけです。 全国で生産されている牛乳の中でも、特に品質が高いとして、あの高級アイスクリームを製造するハーゲンダッツも、1984年に日本進出して以来30年間、浜中町の牛乳をアイスクリームの原料としています。 現在、JA浜中の成功に学ぼうと、多くの地域農協・農業関係者が浜中町へ視察に訪れています。また先日は、テレビ番組「カンブリア宮殿(テレビ東京)」で特集されるなど、その取り組みには大きな注目が集まっています。 ◆奇跡を起こした「トップの信念」 これまでの浜中町 酪農の成功には欠かせない人物がいます。それが、浜中町農協の石橋組合長です。 全国トップクラスの高品質牛乳を支えているのが、30年以上も前から全国に先駆けて浜中町農協が造った「酪農技術センター」です。 酪農技術センターでは、2日に1回、浜中町の各牧場が生産する牛乳の成分や雑菌のチェックを行うほか、牧草の栄養や土壌の状態まで全てをデータ分析し、その結果を酪農に活用することで、牛乳の品質を徹底的に高めてきました。石橋組合長は、この技術センター建設を主導してきました。 ただ、今でこそ高品質牛乳の生産に欠かせない「酪農技術センター」も、建設当時は行政や農協上部組織が猛反対。反対理由は「農協がやる仕事ではない」というものでした。 しかし、石橋組合長には、農協の使命は「組合員である農家のサポートだ!」という信念があり、分析機械代だけで約2億7千万円の費用を投じ、酪農技術センター建設に踏み切りました。この決断が、現在の浜中町 酪農の成功の大きな礎となりました。 その後も、石橋組合長は、安い消毒液を海外から直接輸入することや1年中休みのない酪農家が休みを取れるようヘルパー制度の導入、新規就農者が3年で一人前の酪農家となれるように支援・指導する「就農者研修牧場」の設立など、行政や農協上部組織の反対を受けながらも、「組合員のため」と信じて様々な酪農改革を進めてきました。 様々な改革の結果、農家の後継者問題では、「後継者がいる」農家は全国で4割といわれる中、浜中町では7割に上る農家で後継者を確保しています。また、全国で年々増えている「耕作放棄地」も浜中町には存在せず、約15,000ヘクタールもの広大な農地が有効活用されています。 石橋組合長の信念と浜中町 酪農家の方々の絶え間の無い努力の積み重ねによって、浜中町では奇跡の酪農が実現しました。 ◆地域で「創意工夫」できる農協改革を! 農業は地域ごとに事情が異なり、全国一律の政策は取りづらいのが現実です。浜中町の成功事例からも、日本農業復活のカギは、各地域の事情に合わせたやる気ある農業者・地域農協の方々の主体的な「創意工夫」にあると思います。 その大きな一歩として、一律的な経営指導に批判の多いJA全中の影響力を弱め、全国約700の地域農協の創意工夫が引き出されることを目指す農協改革は非常に重要だと考えます。 補助金に頼る農業を終わらせ、各地域の新たな取り組みによる「自立した農業」を実現していくため、農業者・地域農協の方々の自由な発想を発揮できる制度が強く求められます。 すべてを表示する « Previous 1 2 3