Home/ 財政・税制 財政・税制 なぜ日本は負けたのか?――戦史に学ぶ、未来への舵取りと提言 《第1回》 2014.03.11 文/岐阜県本部副代表 河田成治 先の大戦において、日本人は大和魂を誇りとし、厳格な規律と、稀に見る勇敢さで、アジアの植民地を解放・独立へと導きました。日本は悪い国だったという自虐史観を一日も早く払拭し、正しく歴史を伝えたいと思います。 この歴史に心よりの敬意を払いつつも、しかし、「なぜ日本は負けたのか?」を考えていきたいと思います。日本軍の欠点や短所を分析し、そこから教訓を学ぶことは、未来への航路を決めるのに極めて重要だからです。 今回は10回に渡って、大東亜戦争(太平洋戦争)の教訓を抽出し、未来への舵取りはどうあるべきか提言させていただきたいと思います。 ◆概論 日本が敗戦した理由は、専門家によって各方面から研究されてきました。 たとえば、 (1)数々の戦闘における失敗、弱点が次の戦いにフィードバックされず、「失敗から学ぶ」ことができなかったこと。 (2)兵員を消耗品として扱い、捕虜になるくらいなら自死を強要したことで、貴重なベテラン戦力をなくしたこと。 (3)インパール作戦やガダルカナルのような補給概念の欠如。 (4)陸海軍の意思疎通の悪さ。 (5)科学的・合理的思考の軽視 (6)情報戦の軽視 (7)人事の失敗などです。 (1)の日本軍の「失敗から学ぶ」、つまり失敗学の研究が十分でないのは、現代でも当てはまります。特に「大東亜戦争の敗因」そのものが、学校教育をはじめ、一般人の教養として、また政治家等の知識となっていないことは、残念なことです。 また、失敗を分析しない傾向性そのものは、いまでも散見されます。一例を挙げれば、消費税の失敗です。 我が国が消費税を導入(1989年に3%)したあと、大不況に陥りました。また、5%に増税(1997年)されると、せっかく上向きかけた景気が再び、不況に逆戻りしてしまいました。 消費税と景気の関係の研究を怠り、再び8%へと増税しようとしています。前回までの教訓からは、今回の消費増税が、再び不況を招くことを示唆しています。 政府は様々な経済対策を打ち出していますが、これこそ「消費税による不況」を恐れている証拠で、一方、政府が進める経済対策が有効かどうかの保証はまったくありません。 同様に、なぜバブルとまで言われた空前の大好況が崩壊したのか?その分析、研究が十分ではなく、経済を冷え込ませないための教訓が得られているように思えません。 (4)の陸海軍の仲の悪さは、致命的でした。太平洋方面の島を守るべき兵員は、わずかしか投入されなかったにもかかわらず、中国大陸には100万もの使われない陸軍兵力が残されたままでした。 また陸軍は、海軍に頼るくらいなら…と、陸軍製潜水艦を設計・建造しましたが、素人丸出しの潜水艦は水漏れが止まらず、使い物になりませんでした。日本の極めて少ない貴重な資源、予算を裂いてもメンツにこだわり、終戦まで陸海軍の仲は改善しませんでした。 現代の自衛隊では、陸海空の「統合運用」を目指していますが、かけ声だけの年月が長く続いています。 昨年のフィリピン台風の際には、海上自衛隊の輸送船(おおすみ)に陸上自衛隊の輸送ヘリを搭載しましたが、もともと陸自ヘリを乗せる設計ではないため、ヘリのローターを取り外さなければ格納できないという苦労を乗り越えて、フィリピンまで海上輸送しています。 陸海空の統合運用が、今後、本格的に進展することを期待しています。 以上、第1回目は、簡単に述べました。次回からは、既出の歴史研究を紹介するというよりも、それらを踏まえた上で、ややオリジナルな観点で「敗戦から学ぶ」べき事を論じてみたいと思います。 今こそ日本は「円国際化」の国家目標を掲げよ! 2014.03.03 文/HS政経塾2期生 川辺賢一 ◆「金融版CIA」米財務省の活躍 3月2日の日経朝刊には、イランで米欧と対話を望むロウハニ大統領を誕生させ、同国を交渉の場に引きずり出した影の立役者として、「金融版CIA」というべき米財務省の活躍に焦点を当てたコラムが載せられています。 当記事の要点としては、(1)05年北朝鮮への金融制裁は予想外の効果を発揮し、イラン制裁の雛形になったこと、(2)基軸通貨ドルによる国際決済網によって米財務省はドル決済に関わる不審な取引を次々と暴くことができること、(3)金融制裁の効力は対象となった国だけでなく、世界中の銀行もドル決済が出来なくなることを恐れるため、波及的に広がることです。 このように基軸通貨ドルによる国際決済網は米国最大の情報源の一つであり、外交評論家の岡崎久彦氏も指摘するように、基軸通貨国による金融制裁は国際政治の中で使える軍事力以外の有効な手段です。 参照:「金融制裁の効果」岡崎久彦氏 http://blog.canpan.info/okazaki-inst/archive/166 ◆矛盾を抱えつつ国際化を目指す中国人民元 さて中国では2011年、中国全土での元建て貿易決済が解禁され、2013年1~6月の人民元建貿易決済額は前年度比で64%も増加しています。さらに先月21日、上海自由貿易試験区が始動し、試験区内での資本取引の自由化が解禁されました。 このように中国は人民元の取引規制を段階的に緩和し、ドルやユーロ、円、ポンドに並ぶ人民元の国際化を推し進めていく戦略です。 一方で中国は急速な資金流入による元高を恐れ、先月26日には大幅な元売りドル買介入に乗り出しました。中国は試験区内で外国から資金を受け入れつつ、別のところで資金を吐き出す、矛盾した政策をとっていると言えるでしょう。 つまり上海自由貿易試験区での資本取引解禁といえども、人民元の為替レートを政府が人為的にコントロールできる範囲の自由化であり、人民元の本格的な国際化にはさらなる中国経済の成熟が不可欠であるということです。 しかし中国は矛盾を経済成長で解消してしまおうという戦略です。私たちは中国の人民元国際化戦略を軽視すべきではありません。 もしもアジアが人民元の海になってしまえば、アジアの国々は貿易決済をするにも元が必要になり、文字どおり中国に生殺与奪の権を握られてしまいます。さらに米国の金融制裁にも抜け穴ができてしまいます。 ◆元襲来を打破し、日本は「円国際化」の国家目標を掲げよ! さて米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は先月11日の議会証言で米国内景気の後退のみが金融政策の方向性を左右すると述べ、新興国の通貨不安やインフレについて配慮する姿勢を示しませんでした。 現在アジア地域の貿易や投資においてはドル建ての取引が圧倒的なウェイトを占めており、何らかのショックや米国の政策転換によって世界でドルへの需要が高まると、アジア新興国では輸入代金支払いや借入金返済のためのドル資金がひっ迫し、危機へとつながります。 今回の量的緩和縮小が示すように「過度なドル依存」はアジア新興国経済に危機を呼び込みます。アジア地域と緊密な関係にある日本経済にとっても、アジア新興国の「過度なドル依存」問題は他人事ではありません。 アジア新興国経済の安定化のためにも、日銀は米連銀に代わって追加金融緩和を打ち出し、日本政府はアジア地域での円建ての国際決済を増やしていくべく「円国際化」の国家目標を掲げるべきです。 既述の通り、中国は矛盾を抱えながらも着々と人民元の国際化に向けた取り組みを進めております。 今こそ日本政府は元襲来の危機に備え、円でアジア太平洋地域を一つにしていく、21世紀の対外経済戦略を構築していくべきです。 「出ずるを制して入るを量る」国家財政の実行を! 2014.02.27 文/HS政経塾1期生 伊藤のぞみ ◆法人税率引き下げと税収増を両立した独・英・韓 先週20日、政府の経済財政諮問会議の民間議員は、法人税を減税しながら税収が増えた英国、ドイツ、韓国の事例について報告書を発表しました。 1995年から2012年にかけて実効税率を24.9%下げたドイツは5.6%、9%下げた英国は年平均4.8%、2000年から12年までに6.6%引き下げた韓国では9.4%法人税の税収が増加しています。 税率を下げ税収を増やすことに成功し、モデルとなっているのがアメリカのレーガン政権二期目の法人税改革です。 当時46%だった法人税率を34%まで引き下げながら、重厚長大産業に対する特別措置を廃止することで課税ベースを増やし、法人税収を増やしました。 今回の分析を受けて、報告書では「アベノミクスの成果による税収増の還元などによって、(法人税率をアジア主要国並の)25%の水準に引き下げていくべきだ」と提言をまとめています。 ◆減税による税収増のポイントはデフレ脱却と景気回復 ただし、単純に法人税率を下げれば税収が増えるわけではありません。減税による税収増を実現するためには、景気回復とデフレ脱却が必須です。 日本においては、1999年と2004年の2回にわたり、法人税の実効税率を49.98%から39.54%に10.4%減税しましたが、残念ながらデフレによる景気悪化の影響で、法人税収は1.7%減少しています。 昨年から続く金融緩和でデフレ脱却の期待がありますが、4月からの消費税増税で、景気回復、デフレ脱却ともに難しくなります。 消費税の増税が景気を悪化させるのは、説明するまでもありませんが、補足すると、2013年10月から12月期の経済成長率の速報値は年率換算で1.0%と前期から落ち込んでいます。 甘利経済産業大臣は「民間需要を中心に景気が着実に上向いている」(2月17日)と発言していますが、消費税増税前の駆け込み需要であり、増税後の消費の冷え込みを楽観することはできません。 消費税増税は景気を後退させるだけでなく、デフレも悪化させます。デフレは需要の不足、供給の過剰によって発生します。 消費税の増税は企業の投資と個人消費を減らし、経済全体の需要を引き下げるので、デフレは長期化します。法人税減税で税収増を実現したいのであれば、デフレ脱却、景気回復は必須であり、消費税は増税すべきではありません。 ◆減税のために必要な社会保障改革 もうひとつ、減税の議論が出るたびに、問題となるのが増えていく一方の社会保障給付費です。国民医療費(公的保険が適用される医療費の総額)は2011年度で38.5兆円と過去最高を更新し、13年度には40兆円を突破する見込みです。 また、介護保険に関しても、2012年の8兆円から2025年には20兆円に増加すると予測されています。2012年度末、53兆円を超えた年金の給付も、2025年には60兆円を突破し、社会保障給付の総額は149兆円に上ると言われています。(厚生労働省試算) 「増え続ける社会保障費にいかに対応するか」 政府の回答は以下のような形です。 ・年金からの収入が年280万円を超える高齢者と、所得から経費を引いた年収が160万円以上ある自営業の高齢者が介護を受けるさいの負担を1割から2割に ・40歳から64歳が負担する毎月の介護保険料が4972円から5273円に ・国民年金の保険料が7%引き上げ(新規加入者に関して) 「給付をいかに増やさないか」ではなく、「負担を増やす」変更が目白押しです。 こういった「改革」で介護保険給付費を年1430億円抑制できると厚生労働省は試算していますが、8兆円から20兆円に増加する介護保険給付費にとっては焼け石に水です。 経営の基本として、「出ずるを制して入るを量る」ということが言われています。まだ入ってきていない収入を期待して、支出を決めるのではなく、まず出ていくお金を最小限に抑え、収入を増やす工夫をすることです。 国家財政の経営を見ると、全く「出ずるを制して」いません。現在の国家財政にとって必要なことは、この「出ずるを制す」仕組みです。 ◆生涯現役―日本モデルの高齢社会を発信せよ 昨年、65歳以上の就業者数が41万人増加し636万人となり、就業者全体のうちの1割に達したという発表がありました。 ※『高齢者が働く人の1割に』日経新聞電子版 http://www.nikkei.com/article/DGXNZO66980330Y4A210C1MM8000/ そして、増えたうちの6万人が建設業に就職しています。高齢の就業者に似つかわしくないと思える業種ですが、2020年の東京五輪開催に向けて、技術に信頼のおける高齢者を即戦力として積極的に採用したいと考える企業もあるようです。 年齢に関係なく働けることは、健康の維持にもなり、働いている人が多い地域は、一人当たりの医療・介護費が低いともいわれています。 社会保障において「出ずるを制す」もっとも根本的な政策は、年齢に関係なく健康で働くことができる社会をつくっていくことです。そして年金に頼るのではなく、生涯現役で活躍できる日本モデルの老後を世界に発信するべきときです。 参考文献 大川隆法『未来創造のマネジメント』(第二章デフレ時代の経営戦略) 起業大国・日本の挑戦――シリコンバレーを超えるベンチャー創造国家へ 2014.02.17 文/HS政経塾二期生 鈴木純一郎 ◆日本復活の鍵は“ベンチャースピリット” 日本は90年代から「失われた20年」とも言われる長きにわたる経済低迷に襲われました。慢性的なデフレ状態の下、経済成長のない世界というものを経験したのです。 現在、アベノミクスという形でこの失われた20年にピリオドを打つ試みがなされていますが、今年来年と続く消費増税の悪影響が懸念されるなど、まだまだその行き先には不透明感が漂っています。 日本がこれから経済的に復活し、世界を牽引できる未来産業国家になるためには、大胆な金融緩和や財政政策などのマクロ政策が必要なことは言わずもがなですが、それ以上に大切なことは、日本人の内に眠るベンチャースピリット・起業家精神を呼び覚まし、新しい価値を創造する起業家を数多く輩出することではないでしょうか。 ◆シリコンバレー成功の秘密―スタンフォード大学 90年代、バブル崩壊に沈んでいた日本とは対照的に、当時のアメリカは80年代の経済的苦境を脱出して空前の繁栄を謳歌していました。 その大きな原動力となったのが、シリコンバレーに代表される地域から生まれた新進気鋭の起業家群、ベンチャー企業群の台頭です。 Google、Yahoo、マイクロソフト、インテルなど世界有数の企業の活躍が90年代以降のアメリカ経済の成長を牽引しました。90年代以降、日本における会社の廃業率は開業率を上回り続けていますが、その一方でアメリカからは次々と野心的な起業家が誕生したのです。 シリコンバレーはアメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコ南部のサンタクララ郡を中心とした地域の俗称です。なぜこの地域が上で挙げたような世界企業を生み出し、今も“イノベーションの聖地”と言われているのでしょうか。 軍需の存在、頭脳移民の力、フリーウェイなどの発達した交通インフラの存在など数多くの理由がありますが、ここで取り上げたいのは、シリコンバレーの中心に存在するスタンフォード大学の役割です。 このスタンフォード大学から数多くの優秀な起業家が輩出され、この大学の周辺地域に産業が集積し、シリコンバレーが形成されてきたという歴史があるからです。ヒューレット・パッカード、YahooやGoogle、ナイキなどの創始者もスタンフォード大学出身者で、皆在学中に起業しています。 アメリカには、シリコンバレー以外にも様々な産業クラスター(産業集積地)が存在しますが、その中心には、必ずスタンフォード大学のような「知識と技術と人材の創造の主体としての大学」の存在があります。 「新たな知と技術シーズ、優秀な起業家の創造の供給拠点としての大学が中心となって、その周辺地域に企業・産業が育成されていく」というセオリーがありました。 その下に、大学への研究開発資金の大胆な投下、大学から民間への技術移転の促進、ベンチャー企業育成のためのリスクマネーの供給システム(ベンチャーキャピタルなど)の整備などを行い、産学連携の成功モデルを創りだしたことがアメリカ経済の成功の秘訣でした。 日本においても大学改革こそが産業発展の道であると考えられます。 ◆起業大国・日本への道 昨年、安倍首相が打ち出した成長戦略においては、スタートアップを支援する方針が出され、現在5%程度の日本の開業率を英米並みの10%に引き上げることや、ベンチャーキャピタル投資への税制優遇、大学発ベンチャー支援なども打ち出されています。 しかし、開業率に関して言えば、経済成長率(実質GDP成長率)と正の相関関係があることがわかっており、二段階にわたる消費増税によって経済成長率が低下すれば、開業率にも悪影響であると考えられます。 ベンチャーキャピタル投資についても同じで、株式市場が活況を呈していなければ、本当の意味でベンチャー投資にお金は回らないでしょう。 増税ではない正しい金融財政政策でマクロ経済環境を安定的に発展させつつ、日本の大学改革を含めたイノベーション政策、産学官連携を押し進めることが重要です。 そして何より大事なことは、ホリエモン事件に見られるような資本主義精神への攻撃を是とするような風潮を脱却することです。シリコンバレーの成功の最大の理由は、「起業は偉いことであるという信仰」が存在することとも言われています。 新しい雇用と価値を創造し、国家社会を豊かにする起業家を尊敬し応援する価値観を広く共有することこそが、起業大国・日本への道ではないでしょうか。 【参考文献】 『改革の経済学』 若田部昌澄 『産業クラスター政策の展開』 西山太一郎 日本経済の本格的な冬到来は4月から 2014.02.15 HS政経塾1期生 城取良太 ◆盛り上がる「安倍春闘」と経営現場の実態 各業界の労働組合から久方ぶりとなるベースアップ(ベア)要求が経営陣に対して提出され、春季労使交渉が本格的にスタートしました。 13日には電機各社の労働組合は足並みを揃え、2014年の春季労使交渉の要求書を経営側に提出し、トヨタ自動車と同水準の月額4000円のベアを5年ぶりに要求しました。 また、年間一時金(賞与など)についても、業績連動方式の企業を除いて、「最低4か月分」が統一基準となっております。 その背景にあるのは、昨年初頭から繰り返し述べてきた安倍首相のデフレ脱却を名目とした強い賃上げ要請、経団連のベア容認発言であり、今年は「安倍春闘」とも揶揄される位、賃上げ機運は高まっております。 これに対するサラリーマンたちの反応は上々なようで、新聞社の新橋駅前の街頭インタビューなどでも「今年の春闘にかなり期待している」「最近覚えた単語は『ベア』」「給料が増えたら貯金して家を買いたい」などと賃上げに期待する声が多いようです。 しかし一方で、日本生産性本部系の団体が1月下旬に公表した経営者アンケートによると、今回「ベアを行う」と答えた経営者は200人弱の3割にとどまっております。 全体的に好調にみえても、個別にみるとばらつきがあり、リストラなどを続けて経営環境が厳しい企業も少なくなく、特に中小企業の多くでは、自社の経営状態を立て直すのに精一杯だというのが実際の経営の現場だと考えられます。 ◆国の経済政策を成功させるための賃上げ干渉はアリか? そうした経営の現場感覚を軽んじ、アベノミクスを成功させるために、国家が民間企業の賃上げに介入しようという現政権の姿勢には疑義を挟まざるを得ません。 なぜなら、従業員のベースアップによって内部留保を取り崩さなくてはならず、企業によっては新規工場建設などの設備投資、将来の飯の種を創造するような研究開発費を削減する必要が発生するからです。 企業の手元資金をどのように活用するかは、企業の経営戦略の中核部分であり、民間企業においては企業経営の自由を与えられているはずです。 しかしながら、昨年10月に経済産業省が個別企業の賃上げ状況を監視し、賃金アップにつなげていく方針を示している通り、現政権は企業に与えられた自由を明らかに制限しようとしているのです。 ◆政府の賃上げ干渉の「ツケ」は従業員に返ってくる また、アベノミクスの成否とは別に、この現政権による賃上げへの干渉は、サラリーマンへのバラマキ政策のように見えてなりません。 日本における平成24年度の雇用者(役員を除く)は5,154万人に上り(内訳は正規雇用が3340万人、非正規雇用が1,813万人)、日本の半数近くに達します。 彼らの期待感を高めることで政権の支持基盤の安定度を高める意図があるかどうかは分かりませんが、反面でベースアップを行えない企業に対する従業員たちの不信感や不満を政府が間接的に募らせてしまうという事実があることをキチンと見据えるべきです。 しかしながら、賃上げのツケは従業員に戻ってくるとも言えるでしょう。 実際に、銀行側がコスト上昇となる賃上げを含む事業資金には貸し渋りをする事例がでており、賃上げ企業が事業資金調達を行いづらくなることで、経営環境が悪化してしまうことも予測できます。 更に、賃上げを享受する従業員が出る一方、企業のリストラが更に進行し、失業率が上昇してしまうという矛盾も発生する可能性があるのです。 ◆同時に待ち受ける4月からの「消費税増税」 企業にとって4月に待ち受けるのは「ベア」だけでなく、「消費税増税」もあります。 消費税増税によって家計が苦しくなるのは一目瞭然ですが、企業にとっても「売り上げを落としても今の利益率を守るためにサービス価格を引き上げるか」、または「売り上げ死守のため利益を圧縮してもサービス価格を据え置くか」といった苦しい判断を迫られることになります。 苦しくなる企業にとって唯一の朗報は「法人税減税」だと言えます。 現在の法人実効税率35%強を25%程度まで減税すると踏み込んでおりますが、現在行われている政府税調での議論の焦点は早くも「10%引き下げによる5兆円の税収減をどう補填するか」という内容に終始し、財務省主導の財政規律主義がまかり通っている現状で、先行きは暗いと言わざるを得ません。 ◆「企業の自由こそが富の源泉」という哲学が必要だ 安倍政権においては、「河野談話」を初めとする歴史認識についての踏み込みが足りないところがあるものの、外交・安全保障の領域においては安倍首相のリーダーシップによって大きな成果を挙げていると言えます。 しかし、反面で経済政策においては、過度な賃上げ干渉によって社会主義化への道を歩みながら、消費税増税によって更に企業と個人を苦しめようとしております。 皮肉なことに、春を迎える4月から日本の企業にとっては本格的な「冬」が到来するのです。 そして忘れてはならないのが、企業にとっての「冬」は、私たちにとってもいずれ「冬」になるという事実で、決して短期的利益のみを見て、賃上げを肯定するべきではありません。 幸福実現党は立党当初より、消費税増税に反対し、「安い税金」を党是として訴えて参りました。 また、国家のあるべき経済政策には、まず起業家精神の発揮を推奨し、企業の自由な行動こそが国を富ませ、強くするという哲学が必要です。 そして、企業経営にとって最適な環境を整え、企業の活力を引き出すことで、新しい価値の創造、雇用の増大、ひいては賃金の上昇につながっていくものだと確信します。 今の安倍政権は経済面において左翼政党と同じ穴のムジナだと言わざるを得ません。 是非とも、財務省の論理に負けず、企業の自由を死守して頂きたいと思います。 選択の自由が広がる社会保障制度を 2014.02.06 文/HS政経塾1期生 伊藤のぞみ ◆深刻化する人手不足 高齢化が進むなか、介護サービスの担い手をいかに確保するかが社会的な問題となっています。 現在、約150万人の方が介護分野で仕事をしており、今後十数年で、さらに100万人が増えるといわれています。 2012年度の「介護実態調査」によると、離職率は17.0%。施設長をのぞく介護従事者の平均賃金は21万1900円となっており、43.3%が「仕事内容の割に賃金が低い」と回答しています。 介護従事者の賃金を引き上げるためには、介護保険料を増やさなければなりません。すでに、2000年の導入時には、平均2911円だった毎月の介護保険料が、4972円に増加しています。 重くなる保険料負担は、年金の減額以上に高齢者の方々の生活を圧迫します。 ◆人手不足に対し、「徴介護制」導入を唱える人も こういった介護事業の状況にたいして、「徴兵制」ならぬ、「徴介護制」を唱える人も出てきました。国民に対し、介護事業に従事する期間を設け、介護問題に対する意識を高めてもらおうという考えです。 この考えを提唱した古閑比佐志氏は、ドイツに留学していた1998年から2000年当時、軍役の代わりに病院や高齢者福祉施設などで働くことができる「良心的兵役拒否」という制度から、「徴介護制」の構想を考えたそうです。 ※参考:日経ビジネスオンライン「『徴介護制度』が問いかけるもの http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140204/259278/?P=2&ST=smart ただ、「例外を除く、ほぼすべての国民に、一定期間の介護ボランティアへの参加を課す」制度は、国民にさらなる負担を課し、国全体の生産性を下げることを指摘しなければなりません。 例えば、年間で5000万円を売り上げられるような営業マンが、営業の仕事をするのではなく、介護の仕事をしなければならないということになれば、本人や企業に与えるダメージは甚大です。 ◆自由な社会における介護保険制度を 「徴介護制」はトータルで考えると、かえって社会の負担を増やす施策となる可能性が高いのです。 多くの人に介護について意識をもってほしいということであれば、介護保険料の納入を現金でなく、勤労で支払えるようにするということも一つの手です。 年金の受給を受けているなかで、時間はあるけれどもお金がない、という人に対して、ホームヘルパーの仕事をしてもらうことで、保険料を免除するのです。 少し、突飛なアイデアのように思えますが、実は、私たちはすでに、日々の生活のなかで、こういった選択をしています。 コンビニでお弁当を買うのか、家で作ったお弁当を持っていくのか。子供を保育園に預けるのか、会社を辞めて自分で育児をするのか。限られた時間とお金のなかで、「良い」と思う選択を、私たちは行っています。 そして、何が「良い」選択かは、その人が持つ価値観によって変わるため、政府が一律に決定できないのです。 幸福実現党は、介護や福祉について厳しいと思われていますが、それは選択の自由を守るためであり、それが個人の幸福につながると考えているからです。 今後とも、選択の自由を広げる方向で、社会保障制度について、それを解決する政策を探求し実現するために努力精進して参ります。 安倍総理の施政方針演説――キーワードは「2020年」 2014.01.29 文/政務調査会チーフ 小鮒将人 ◆「集団的自衛権」容認 去る1月24日、安倍総理の施政方針演説が行なわれました。 これは、通常国会の冒頭にあたり、首相が今年一年の方針について述べるもので、最重要な位置づけがなされています。この演説では、安倍総理の今年にかける大きな意気込みを感じました。 まず、第一に「集団的自衛権」容認への意欲を示しました。集団的自衛権とは、ある国が武力攻撃を受けた場合に直接に攻撃を受けていない第三国が協力して共同で防衛を行う権利です。 現在の日米安保体制では、日本に対する武力攻撃があった場合、日米両国が共同して対処することを定めていますが、もしわが国を守る米軍が他国から武力攻撃を受けても、自衛隊は一緒に戦うことができないのです。 これは、日米同盟の中で大きな課題とされてきました。日本を守る米軍の立場からすると、なぜ、自分たちだけが犠牲を払わなくてはならないのか、理解できないはずです。 集団的安全保障を認めることになると、日米同盟が共に戦う仲間となり、さらには「憲法9条改正」の実現に向けても大きく前進する事になります。 ◆「好循環実現国会」 一方、経済については今国会を「好循環実現国会」と名づけ、昨年来のアベノミクスによる株価の上昇を推し進め、景気回復の実感を届けることを訴えています。 「実現」という言葉を使用したことは大いに評価するのですが、残念ながら消費増税のことについては『万全の転嫁対策を講ずることに加え、経済対策により持続的な経済成長を確保してまいります』と述べるにとどまり、どのような効果が期待できるのか、不安の残る状況となっています。 また「増税分はすべて社会保障に使う」と述べていますが、目的税化されているわけではなく、このことを検証することは出来ません。かつての復興税が流用されていたこともあり、細川内閣で言われた「社会福祉税」の如き、実に官僚的な政策という印象を否めません。 安倍総理の実績とされてきた「株価の上昇」も今年に入ってから下落の一途をたどっています。 米国の金融緩和が縮小される事によって、世界的な株安傾向が始まっていると共に、国内では増税が始まるということで、日本経済にとって、今年は「忍耐の一年」になりかねません。 報道では、トヨタも4月以降の自動車生産台数を10%程度縮小するとの事で大きな消費の落ち込みが予想されています。 このまま行くと、安部総理の主張とは反対に、増税→消費落込み→企業業績悪化→給料ダウン→消費の冷え込みの「悪循環」が実現することになりかねません。 やはり、消費増税を中止することが、安倍総理の今国会の大きな使命の一つであるといえます。 ◆五輪成功への意気込み 安倍総理は、日本の大きな繁栄への希望を持っていることもこの演説で表明しました。今回の演説ではキーワードとして「2020年」を強調していることがわかります。数えてみると、全部で12回言及していました。 言うまでもなく、2020年は東京五輪開催の年です。幸福実現党もこの年に向けて日本が繁栄へのロードマップを作成することを訴えておりますが、安倍総理も理解を示しているかのようです。 現在、東京都知事選挙が行われています。今回選出される新しい知事の下でインフラ整備などの様々な動きが出てくると思われます。 都民だけでなく、国民挙げて五輪の大成功を目指すことが大切です。今回の演説を通して、安倍総理の繁栄へ向けてのビジョンは伝わってきました。 ◆GDP世界第2位奪還を 今回の施政方針演説では、安倍総理の元々の思いとして「集団的自衛権」「東京五輪成功」についての意欲が表明されたものの、消費増税については官僚側の主張を受け入れた結果になっています。 本来は、施政方針演説は日本の繁栄に向けて大きな目標を提示すべきよい機会になったはずです。安倍総理は、消費増税によって税収増を目指すことを表明しています。 しかし、一方で成長目標については具体的な数字を打ち出すことが出来ないでいます。日銀も黒田総裁の下、一時は2%成長への自信を見せていたものの、最新の予想では、1.4%とその数値予想を引き下げています。 日本は、「失われた20年」を速やかに取り戻さなければなりません。潜在力は、いまの10倍程度はあるにも関わらず、誤った経済・財政・金融政策によって足踏みを強いられてきました。 安倍総理も、年初に「強い経済を取り戻す」と決意を表明しています。考え方は難しいことではありません。まずは繁栄ということを実際に政策に示すことです。 そのためには、消費増税を中止することと、成長目標を国民に提示することです。中国のGDPは、近年低下の傾向があるものの、8%を一つの指標としています。このままでは、日中間の格差も開いていく一方になり、国防上の危機にもつながります。 本当は、日本には、大きなチャンスがあるのです。この時に政府として、大きな目標を掲げ、国民が元気になることを訴えることは必要です。そこで、安倍総理には今国会において「2020年東京五輪の大成功」と共に「GDP世界第2位の奪還」を掲げることを勧めたいと思います。 日本は素晴らしい国家です。この国の持つ、自由で勤勉な価値観は世界に広げるべきものです。幸福実現党としても、2020年、東京五輪開催を一つの目標として、新しい繁栄へのグランドデザインを掲げることを推進してまいります。 空の交通革命――国内開発力の向上へ 2014.01.27 文/HS政経塾3期生 瀬戸優一 ◆躍進する日本企業 先日の日経新聞に、東レが炭素繊維複合材の生産設備を増設し、主にボーイング向けの炭素複合材の供給能力を上げる旨の記事が掲載されていました。(1/26日経「東レ、米生産3割増強」) この背景には、米ボーイング社が開発し、最新技術が盛り込まれている機体として注目されているボーイング787型機の生産拡大があります。 現在の月産10機から、2016年には月産12機、さらに14~16機と、増産していくことから、供給体制の拡大が必要と判断されたためであると言えます。 このボーイング787型機には、従来の航空機に使用されていた金属よりも軽く、強度も強い炭素複合材が、構造体の全重量中50%採用されています。そして、その炭素複合材を供給しているのが、日本企業である東レであるのです。 このボーイング787型機には、他にも幾つものパーツで日本企業が生産を担当しており、その比率は過去最大と言われる約35%です。 日本にはこうした面からも、航空機を製造するための技術力が着実に上がってきており、信頼を得ているとも言えるのではないでしょうか。 ◆日本の未来を拓く技術力 我が党では、交通革命、未来産業投資、交通インフラ投資という政策に共通して、航空分野を今後さらに発展させていくことを掲げています。今後、その発展を実現させていくには、航空機の開発・製造を国内で行っていく必要があると言えるのです。 現在日本において国産で開発が進んでいる機体は幾つか存在します。例えば民間機の分野では三菱航空機のMRJ、自衛隊機の分野では次期哨戒機P1などです。このうちP1については、エンジンも機体も全て国内開発されています。 このように、日本には産業としての伸びが期待でき、より日本及び世界を身近にしていくためのインフラを構築するための技術があると言えます。 ◆国内開発の課題 しかし、開発にあたり幾つかの課題も存在します。1つは、機体及びエンジンの開発には莫大な費用、そして時間がかかる点です。数千億円から1兆円を超える開発費がかかるだけでなく、開発期間も平均5年程度かかることから、民間の企業だけで簡単に開発に踏み切ることができないのが実情でもあります。 2つめに、確実な投資の回収が見込めるわけではないという点です。今後世界的な航空機の需要が見込まれていますが、その需要を確実に取り込める保証がないことから、莫大な費用をかけて開発を行うリスクが高いというのも難点です。 さらに3つめは、開発後には安全性を確かめるための様々な試験設備が必要となり、この設備投資が巨額になってしまうという点です。 幾つもの機体を開発し続ければ、その設備も稼働しますが、ほとんど稼働させることがない状況での設備投資は大きな負担にもなります。その他の点については、紙幅の都合上割愛させていただきます。 ◆幸福実現党の未来ビジョン こうした問題点に対し、多くの皆様の幸福を実現していくためにも、交通インフラ投資、未来産業投資を積極的に行っていくことで、民間企業だけに負担をさせず、国家として空の利便性の向上を図ることが必要であると言えます。 現在、日本では超音速機や乱気流を検知する装置の研究なども進んでおり、国家として投資するに値する領域であり、民間機だけではなく、防衛力を高めるためにも、航空機の技術力向上、及び国内での開発・製造は必要です。 他国に依存するだけではなく、自国での航空機開発を推進することで防衛力も高まり、また日本の先進的な技術を駆使することで、より空の交通が便利になります。 世界的な航空機の需要増の予測からも、自国での開発は今後のさらなる経済成長の可能性を大いに秘めていると言えるでしょう。 幸福実現党は、日本を経済的にも技術的にも世界ナンバーワン国家へと導いてまいります。 雇用・労働分野に蔓延る岩盤を切り崩せ――努力する個人と企業に資する労働市場を 2014.01.25 文/HS政経塾第1期生 城取良太 ◆法人税削減に動き出した自民党政権 安倍首相が世界経済フォーラム(ダボス会議)の基調講演において、法人税改革に着手することを表明し、本格的に法人税減税へと舵を切り始めました。 現在、日本の法人税実効税率は35.64%(2013年)と国際社会(特に法人減税の流れが強いヨーロッパ、アジア諸国)と比較するとひときわ高い状況にあり、政府は国際水準といわれる中国、韓国並みの25%程度への引き下げを視野に入れております。 こうした法人税の減税に対して、財政規律志向の財務省は「税収減を招き、代替財源の確保が必要」「国内企業の7割が法人税を払っていない現状での税率引き下げは効果が大きくない」と主張しております。 正しくは「今までの法人税が高すぎたために、7割の企業は法人税を支払うことができなかった(あえて支払えなくした)」ことが事実であります。 海外からの直接投資や日系企業のマネー還流を促し、経済の要である「企業」を元気にするためにも、法人税減税は絶対に必要であります。 安倍政権は是非とも財務省と党内の抵抗に負けず、法人税減税を断固推進して頂きたいと思います。 ◆「岩盤中の岩盤」といえる雇用・労働分野の法規制 法人税減税と同時に、20日に行われた産業競争力会議において、成長の期待される医療、農業分野の規制緩和などを今後3年間で成長戦略を具体化する実行計画も決定し、特区制度を糸口としながら、関連法案を国会に提出するという道筋が見えてきました。 反面で、雇用・労働分野の規制緩和に関しては女性や外国人の就業環境整備などに焦点を当てるに留まり、踏み込みが弱い感は否めません。 確かに、働く女性を増やし、外国人の受け入れをすすめることは、潜在的な労働力人口の増加に繋がるため、少子高齢化が進むこれからの日本にとって必要不可欠なのは言うまでもありません。 しかし、企業に厳しすぎる解雇規定を若干緩和させる形としての「解雇の金銭解決(裁判で解雇の無効を勝ち取った労働者が、職場に戻る代わりに金銭を受け取る)」や、一部の専門職・管理職に関して、労働基準法で定められた労働時間規制を外す「ホワイトカラー・エグゼンプション」といった「雇用と労働」の根幹に当たる法規制の緩和については、まだまだ反発が根強く、安倍政権も二の足を踏んでいる状況です。 実際に、雇用規制の緩和が議論に上ってきた昨年、厚生労働省は憲法が定める基本的人権を侵害する可能性があるとして断固抵抗した経緯もあり、雇用・労働分野こそ、文字通りの「岩盤中の岩盤」と言っても過言ではありません。 ◆日本の労働市場の現場から垣間見た2つの現実 私は20代の7年間、人材派遣・紹介事業といった人材・労働市場に身を置き、労働者保護の強すぎる日本の労働法や、社会保障制度が「企業にとって正規雇用を進める上で、いかに障壁となるか」を2つの点から垣間見て参りました。 第一に、企業にとって「厳しすぎる解雇基準」が企業の正社員雇用を潜在的に減らしているという現実です。 労働契約法第16条で定められている日本の解雇ルールのポイントは、「客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でない場合には、権利濫用として無効となる」という点です。 例えば、能力が不足しているために解雇を行おうとすると、一般の正社員ではまず認められず、能力不足の原因は企業側の育成責任となり、その解雇は無効となってしまいます。 その結果、企業は正社員の採用には慎重になり、求人数は減少します。その代わりに、契約単位で弾力的に人員調整を行いやすい非正規雇用(アルバイト、派遣社員など)の需要が高くなるのです。 第二に、「高すぎる社会保障負担」が企業の正社員雇用を潜在的に減らしているという現実です。 企業は正社員を採用すると、基本的には社会保険への加入が義務付けられており、給与の約14%超を事業者の負担分として国に納めなくてはなりません。 2008年の統計では、経団連に参加する38の企業グループの従業員105万人、給与総額8兆1000億円に対し、社会保険の事業者負担額は実に1兆600億円にのぼります。 そうした高すぎる社会保険負担を嫌い、加入義務を負わないパートや派遣社員(派遣元で加入)などに周辺業務を委託し、正社員採用を最小限に控えるといった企業が数多くあったのが実務を通じての実感です。 ◆左翼陣営の大いなる矛盾を打破し、労働分野の岩盤を打ち崩せ こうした背景があって、派遣といった雇用形態へのニーズが双方から高まり、非正規雇用の比率が高まってきた歴史があるにもかかわらず、共産党や社民党を中心とした左翼勢力は「労働法制の死守」と共に、「非正規社員の正社員化」「派遣労働の拡大防止」などを並び立てています。 しかしながら、「企業軽視の現行労働法」と「正規雇用の増大」は絶対に両立しないというのが真実です。 左翼陣営は大いなる矛盾の上に美辞麗句を並び立てる前に、派遣やパートなどといった形態を通じて、自身のキャリアアップや生活の充実など、幸福を享受している人々が実際には少なからずいるという事実に目を向け、派遣を中心とした「非正規雇用=悪」という安易な枠組みから脱却すべきです。 その上で「正規雇用の拡大」を本気で進めたいならば、死守しようとしている現行の労働法体系を、労働契約法16条の解雇規定や労働基準法で定められた労働時間規制などを中心に、企業が正規雇用を進めやすい方向に規制緩和する必要があると認めるべきです。 是非とも、安倍政権におかれましては、現在議論が出ている雇用規制の緩和からしっかり前に進め、岩盤のような労働法体系を打ち崩して頂きたいと願います。 これからの日本の新しい経済的・社会的な発展には、自助努力する個人が報われて企業の成長に資するような、公平で柔軟性・多様性に富んだ労働市場の創設こそが、必要不可欠だと考えるからです。 日本の繁栄へ向け、それでも「ストップ!消費増税」を訴える! 2014.01.22 ◆「2014年の年末までに消費増税10%を決めたい」 文/政務調査会チーフ 小鮒将人 昨年の日本経済は、日銀による大胆な金融緩和の影響で株価も年初の1万円から16,000円にまで上昇し、さらに2020年の東京五輪開催も決定したことで、好況への期待が高まりました。 このような状況で2014年を迎えることになりましたが、麻生財務大臣が1月8日の閣議後の記者会見において「消費増税を年末までに10%にすることを決めたい」という主旨を述べました。法律で定められているわけではありませんが、2015年の予算編成をおこなうために必要であるというわけです。 さらに、1月19日にNHKで放送された番組で、安倍総理も「消費増税の判断は、今年中に決断したい」との発言がありました。二人の発言を聞く限り、昨年同様、今年も10月から11月にかけてさらなる消費増税の可否について判断がなされるようです。 また、報道では安倍総理は、19日に開催された自民党大会で「企業の賃金上昇も主導する」と、かねてからの主張を改めて訴えています。 確かに一人一人の賃金が上昇することは望ましいのですが、幸福実現党としては本来、経済成長によって企業業績が良くなることで、賃金の上昇が行なわれることが望ましいと考えております。 そうした意味では皮肉なことに、民主党を破った自民党政権の下で社会主義化が進められているかのように見えます。 例えば、昨年、国民一人一人に番号を割り振って所得や納税実績、社会保障に関する個人情報を1つの番号で管理することを定めた法律「マイナンバー法」が成立しました。 一見、事務手続きが簡素化されるための法律に見えますが、やはりこれも国家が一人一人の資産を管理するための一つの道筋でもあるのです。 ◆なぜ増税にこだわるのか 財務省は、消費増税の理由として「持続的な社会保障制度の確立」を挙げています。 確かに統計を見る限りでは、消費税は「安定的、持続的」な税収で、税率3%の時には、約5兆円、5%になると約10兆円のレベルを維持しています。 一方、所得税や法人税は景気の影響を受けることが多く、1990年代以降、10兆円から20兆円の間を上下しています。景気がよいときはよいが、悪くなると見込みがなくなる、官僚はここに不安があるという事のようです。 しかし逆に「失われた20年」の間にも、それだけの税収があったと見ることは出来るはずで、なぜ、経済成長による税収増を考えないのでしょうか。アメリカは、この20年間で、GDPがおよそ倍増に近いレベルに達しています。 一方日本は、20年間ほぼゼロ成長。本来の日本経済の力を考えると、そろそろ「通常のレベル」に戻るべきで、政府が掲げている2%程度の目標は最低レベルと考えるべきです。 そうした意味で、昨年の好景気による税収増が、7兆円という事は注目すべきです。一方、2014年の消費増税による税収増は、5.1兆円といわれています。 この数字自体、1997年の消費増税の時のように、一気に消費が冷え込むことで不景気となり、達成できるかどうか、大きな疑問があります。 ◆誤ったデータによる消費税導入決定 特に、昨年の消費増税導入の際、決定的な指標と言われたGDP速報値「1.9%」について、昨年12月9日の報道によると、この数字が最終的に「1.1%」へ修正されたことが分かりました。 政府は「約2%」という数字を見て、消費増税を決めたはずなのですが、実際はおよそ半分の数字であったということで、あえて言うと「誤ったデータ」によって増税が決まっているのです。安倍総理は、今から消費増税撤回を主張しても遅くないのです。 日本の株式市場の動向は、昨年末に16,000円超えを果たしたものの、今年に入ってからは下落の傾向が続いています。 本来は、2020年の東京五輪が決まり、株価は上昇すべきところなのですが、やや反対の状況になっており、4月に消費増税が決まっていることの影響と見ることができます。 消費増税の影響がでると思われるのは、まずは中小企業です。中小企業は、激烈な競争の中で製品の価格を上げることができません。 また小売業においても、値段を据え置くか値上げになるか、いずれにしても今後、利益の減少を免れることはできず、大きな不安を抱えることになりました。 ◆日本の大繁栄に向けてGDP倍増を目指そう! 日本経済の潜在力を現実のものとするためには、「減税」や、「規制緩和」で企業の自由な経済活動を促す必要があります。 そして世界のリーダー国家になるために、2020年東京五輪のこの大成功を目指し、経済的な繁栄を実現するための政策を実行に移していくべきです。 年率2%以下の成長率でも7兆円の増収が見込める以上、それ以上の成長ができれば間違いなく消費増税以上の税収が見込めます。 今年は消費税の8%への増税が4月に施行され、10%への更なる税率アップへの判断がなされますが、文字通り日本の大繁栄への大きな試金石となる一年になります。幸福実現党は「ストップ!消費増税」に向けて、更なる活動を展開して参ります。 すべてを表示する « Previous 1 … 16 17 18 19 20 … 33 Next »