Home/ 財政・税制 財政・税制 約1800億円増えた年金予算 年金制度維持のため国民の生活は破綻? 2021.04.08 http://hrp-newsfile.jp/2021/4058/ 幸福実現党政務調査会長代理 小川佳世子 ◆過去最大の社会保障費を盛り込んだ令和3年度予算 一般会計の総額が106兆円を超える、令和3年度予算が成立しました。 これは当初予算(補正予算を含まない予算)としては過去最大の規模です。 昨年度はコロナ対策のため、補正予算を含んだ予算総額が175兆以上と過去最大に膨らみました。 今年度の予算には、すでに5兆円のコロナ対策予備費が含まれていますが、今後さらに補正予算が組まれると見込まれます。 補正予算の内容や是非については、また改めて意見を発信していきたいと考えていますが、今回は、令和3年度予算で最も大きな割合を占める社会保障関係費に注目します。 令和3年度予算の社会保障関係費は35兆8421億円。昨年度比1507億円増となり、過去最大です。 内訳を見てみると、「年金」が昨年度比1773億円増の12.7兆円。「介護」が824億円増の3.5兆円。少子化対策や雇用保険、生活保護等が含まれる「福祉」の項目が784億円増の7.6兆円となっています。 「医療」は、コロナ感染を恐れた人々が病院に行かなくなる「受診控え」が起き、医療費が減ると見込まれた結果、1875億円減の12.1兆円となりました。 ◆「ステルス値上げ」される保険料 社会保障に多額の税金がつぎ込まれれば、将来の増税につながってしまいます。 政府は「少子高齢化による自然増加分に納めました」として、必要な社会保障を行いつつも国民負担を増やさないようにすることをアピールしています。 しかし、社会保障は35.8兆円の一般会計予算だけで賄われているわけではありません。 年金、医療、介護については、各自の収入に合わせて「社会保険料」が徴収されています。 さらに、医療や介護には各地方自治体の公費(地方税など)も使われています。 年金の負担について見てみると、サラリーマンや公務員などが加入する「厚生年金保険」の場合、給与に応じて決まる「標準報酬月額」に18.3%を掛けた額を毎月払います。 半分は会社など雇用主が払ってくれますが、たいていの人は給与の1割弱を天引きされることになるわけで、かなりの負担です。 この保険料率は2004年は13.93%でしたが年々上昇し、2017年には18.3%まで上がりました。 今のところ18.3%で固定し、足りない分は国家予算(税金)で補うルールになっているのですが、少子高齢化によって保険料を負担する人は減り、年金関連の予算は増える一方です。 そこで、目立たないような形で負担を増やしています。 昨年9月には、年収約800万円台以上の人の厚生年金保険料負担が増えました。 さらに昨年成立した「年金改革法」によって、パート・アルバイトなどの短時間労働者が、より多く厚生年金加入の対象になることが決まりました。 現在、短時間労働者は従業員501人以上の企業に勤めている場合のみ厚生年金加入の対象となっていますが、2022年10月から従業員101以上の企業、2024年10月からは従業員が51人以上の企業に勤めている短時間労働者も厚生年金の対象となります。 「将来もらえる年金が増える」とアピールしていますが、これは小さな企業にとっては非常に大きな負担増になります。短時間労働者にとっても目先の手取りが減ることになります。 要は、保険料が足りないので「ステルス値上げ」をしているのです。 このように年金制度を維持するという名目で負担を増やしていけば、現役世代の生活が破綻してしまうでしょう。 ◆支給される年金は減っていく このように、国税や地方税や社会保険料等などのかたちで負担は増える一方、もらえる年金は減っていきます。 小泉内閣のもとで行われた2004年の年金改革では、約20年間で2割程度、支給される年金をカットする方針が決まりました。 ただ、これは高齢の有権者の反発を恐れて、さまざまなカットの条件を付けた結果、当初の想定通りに進んではいません。 そこで、昨年成立した「年金改革法」では、年金受け取り開始の年齢を少しでも遅らせるようにしました。 2022年4月から、受け取り開始年齢を遅らせると年金月額が増えるようにして、受け取り開始の年齢を60歳から75歳の範囲で選べるようにしたのです(現在は60歳~70歳の範囲)。 75歳から受け取る場合の年金月額は、65歳から受け取り始める人と比べて最大84%増えることになります。 例えば毎月15万円の年金をもらえる人が、75歳から受け取り始めた場合、毎月27万6千円の年金を受け取れます。 ただし、87歳まで生きなければ、受け取る年金の総額は65歳から受け取り開始した場合と比べて減ります。 日本人の平均寿命は84.21歳なので、受け取り開始年齢を遅らせることで年金支給額を少しでも減らそうという意図が垣間見える施策といえます。 ◆大増税の前に方向転換を こうしてみると、負担は増える一方、もらえる年金額は徐々に減らされていく未来がやってくることは明らかでしょう。 「年金制度」を維持するために、増税や年金保険料のアップが繰り返されれば、生活破綻がやってきます。「国民滅びて年金制度あり」となれば、何のための社会保障なのか分かりません。 社会保障の財源は、誰かが負担しているということを忘れてはならないのです。 こうした未来を避けるためには、自助と共助が基本です。すなわち、75歳前後まで元気に働ける社会を目指しつつ、働けなくなった場合は家族で助け合うという社会保障の原点に返ることです。 もちろん、万が一の場合のセーフティネットとして、最低限の公的社会保障は整備する必要があると考えます。 そうでなければ、老後に最低限度の生活を送るために、現役世代から重税や社会保障負担に苦しむ社会になるしかありません。 どちらの社会もあり得ますが、既成政党は、年金維持のため、若い時から大増税に苦しむ社会という選択肢しか示していません。 働いて得た収入はなるべく個人が自由に使えるようにし、人生の最後まで生きがいを持って働き、家族の絆を大事にする社会を目指しているのは、幸福実現党ただ一つなのです。 ~・~・~・~・~・~・~ 幸福実現党の最新情報が届く「機関紙愛読者(党友)」にも、ぜひお申込み下さい!! https://hr-party.jp/newspaper/application/ ※配信頻度:毎月2回程度 中国経済崩壊へのカウントダウン 2020.01.15 本日は、「中国経済崩壊へのカウントダウン」をお送りいたします。 (広報本部) 中国経済崩壊へのカウントダウン https://www.youtube.com/watch?v=z9Fe4Zg8JB0&t=9s 幸福実現党党首 釈量子 ※下記は要約したものです。詳しくは上記の映像をご覧下さい。 ◆中国企業の過剰債務問題 いよいよ「中国経済崩壊へのカウントダウン」が始まりました。今回は中国経済の行方についてお話しいたします。 2020年、世界経済は厳しいものになりそうな兆しがはっきりとしてきました。 様々な要因はありますが、その一つが「中国企業の過剰債務」の問題です。中国企業がものすごい借金漬けになっているのです。 2008年末の中国企業の債務残高は、約31兆元(日本円で約500兆円)でしたが、2019年第2四半期時点では、なんと約144兆元、(日本円で約2300兆円)にまで増えています。 何と約10年間で「4倍以上」に膨れ上がりました。 ただその間、中国は景気がよくてGDP、つまり経済規模が増えたのだから借金が増えてもおかしくはありません。そこでGDPと比べた場合の借金の比率を見てみましょう。 2008年末の98%から2019年には155%、1.5倍に上がっています。 新聞によると、2019年の社債の債務不履行額は、1600億元(日本円で2兆5千億円)と過去最高を更新し、2018年の年間記録(1220億元)を上回り、過去最高になりました。 中国では首の回らなくなった企業が溢れかえっているわけです。 ◆国家社会主義による経済運営の限界 では、なぜこんなに借金が膨れ上がってしまったのでしょうか。 大きな要因として指摘されるのが、10年前、リーマンショックの後に、中国政府が、ケインズも真っ青の景気対策を行ったことです。 なんと約4兆元、日本円で約52兆円にも及びました。 さらに中国の地方都市では、地方政府が出資する投資会社を使って、これまた大規模な融資を行いました。 その額なんと約20兆元、日本円で約320兆円です。 地方政府の指示で、マンション建設の計画を立てる。投資家は、不動産価格の値上がりを期待して、マンションを買う。地方政府もこれはいけると思って、またマンションを建てる。 その結果、入居者がいないマンションがあちこちに出来、壮大なゴーストタウンが出現しました。 日本のバブルの時もそうでしたが、マンションを高値で転売できるうちはいいのですが、値崩れすると、購入資金の借金が返せなくなり、その借金をあてに回している会社も倒産しました。 不動産価格を下げてはいけない、しかしバブルもいけないということで、日本やアメリカではマーケットがする機能を、中国では政府が必死に皿回しをしている状態です。 それ以外でも、政府は、肝いりの鉄鋼やアルミニウム、セメントなどの分野に、積極的に「設備投資」をしました。 しかし、必要のない工場を数多く建てた結果、今度は「過剰生産設備」が大きな問題になっています。 ソ連が、崩壊したのと同じように、社会主義の計画経済を限界が来ています。 ◆トランプ関税が中国共産党の「経済成長神話」を崩壊させる こうした中国の企業債務の問題は、これまでも取りざたされていましたが、ついに表面化する引き金を引いたのが、トランプ大統領の制裁関税です。 中国経済を牽引してきた製造業が、輸出でダメージを負ったことで、のっぴきならぬ状態に陥ったわけです。 さらに、力を入れようとしたハイテク分野でも、「アメリカ側に立つか、中国側に立つか」の踏み絵が迫る「ディカップリング」つまり「切り離し」で、米中が分断される時代に入れば、中国経済はさらに厳しいことになるでしょう。 まさに、トランプ関税は、中国共産党の「経済成長神話」を崩壊させています。 中国の経済成長率はかつての10%から6%程度まで下がってきました。今後は5%台に下がっていくでしょう。 このまま減速が続くなら、これまでのように借金を重ねることは出来なくなり、積みあがった債務は、必ず何らかの形で調整されるはずです。 中国初の世界恐慌のようになってしまうのか。いずれにしてもその時は近づいています。 ◆中国経済崩壊に備えを 日本にも大きな影響が出るでしょう。まず中国に輸出している企業の経営が厳しくなるでしょう。日本の輸出は、アメリカと中国がほぼ同じ割合で約20%あります。 中国人観光客も減ります。インバウンドは減速していきます。 中国経済崩壊へのカウントダウンが始まっています。日本は共倒れにならないように、今から対策を考える必要があります。 例えば、中国進出企業の国内回帰を促すための「法人税などの減税」。これはアメリカだけでなく、台湾の蔡英文政権が台湾回帰を政策にして成功しています。 また、「地方消費税」の減税などで、疲弊する地方経済を活性化させるなどの手を早めに打つべきではないかと思います。 幸福実現党が目指す「清潔で勇断できる政治」 2017.09.21 幸福実現党が目指す「清潔で勇断できる政治」 幸福実現党 小鮒将人 ◆安倍総理の衆院解散報道 安倍総理が10月22日投開票で衆議院解散の決意を固めたとの報道が出ており、すでに各政党でも選挙戦に向けての準備が進められています。 みなさんご存じのとおり、日本は国難の最中にいます。私たち幸福実現党が立党した2009年より、残念ながら日本の危機が続いております。 まず、幸福実現党の直接の立党のきっかけとなったのが、北朝鮮のミサイル問題でした。そしてそれ以来8年間、この問題は進展なく、危機だけが拡大してきました。 ◆「非核三原則」の撤廃を推進 私たち幸福実現党は、この北朝鮮の核ミサイル問題に対しては、まず抑止力強化の観点から、「非核三原則の撤廃」及び、核保有の可能性について、議論を始めることが大切であると考えています。 ◆防衛予算の倍増を目指す また、国防力を強化するため、さらなる防衛費の増額が必要です。 幸福実現党は、まずは、現在の防衛予算GDP1%である5兆円の倍の金額である約10兆円程度の予算増を目指すべきだと主張しています。 ◆「自立した日米同盟」を堅持 また、北朝鮮は日米同盟を崩し、両国を離れさせるための動きを見せていますが、こうした動きに決して同調せず、我が国としての主体を持ち自立した関係を保ちつつ、同盟を堅持させることが、北朝鮮だけでなく、中国の脅威から日本を守ることにつながります。 ◆憲法改正について 一方、安倍総理は5月の憲法記念日に、憲法9条の改正案を発表しました。 それによると、第1項の「戦争放棄」、第2項の「戦力を持たない」、という項目に続く第3項として「自衛隊の存在」を明記する、としています。 そして、この改正案が、今回の選挙の争点の一つになるとも言われています。 第1項及び第2項を残すということになると、「自衛隊は存在するが戦力ではない」と、矛盾した憲法になってしまいます。 幸福実現党は、自衛隊を軍と位置づけ、国民の生命・安全・財産を守り抜く体制を整備すべきだと訴えています。 ◆「アベノミクス」は失敗 自民党は「アベノミクス」は成功した、と主張していますが、実際は「デフレ脱却」もできていないように、失敗したと言わざるを得ません。 安倍政権発足直後に行った金融緩和によって、日本の景気は一時、良くなりましたが、その後、2014年に行われた消費増税によって、景気が腰折れし、低迷に入ってしまいました。 幸福実現党は、消費減税による景気回復を主張し、現在は、消費税を5%への減税を訴えています。 しかし逆に安倍総理は、一旦延期した消費税10%への増税を表明し、今回の選挙に臨もうとしています。 これは、現在のデフレ脱却が出来ていない日本経済の状況を見る限り、さらなる景気の低迷、失業率の増加につながる可能性があり、目的としていた税収も減少することが予想されます。 ◆自民党のバラマキ政治で借金1000兆円 いわゆる「失われた20年」の間に、国の財政赤字は、巨大なものとなってしまいました。20年前、国の赤字は、およそ100兆円でした。 それが、現在は1000兆円にまで膨らんだのです。なぜ、こうした事態になってしまったのでしょうか。 それは、自民党政権が、バラマキを行ってきたからにほかなりません。 今回も選挙直前になって突如、消費増税分を「教育無償化」のために使う意向を示しましたが、これもバラマキ以外の何物でもありません。 こうしたバラマキを自民党はこの20年以上もの間、続けてきたのです。 ◆「教育無償化」は質の低下を招く 「教育無償化」について、この厳しい景気の中で、教育費が抑えられる事は、経済的に楽になることは事実ですが、教育の質の低下を招くおそれがあります。 本当に支援の必要な学生には、奨学金の拡大などで、個別に対応すればよいだけの話で、一律に無償化にする必要はありません。 これも選挙目当てのバラマキ政策の一つで、ますます国の借金は膨れ上がってしまいます。 ◆マイナス金利は資本主義の精神を失わせる 日銀が採用しているマイナス金利政策もその一つです。 借金をする側が国の利子を払わずに「預かり料」をもらい、預金をした人が損をする形となります。 これでは「資本主義の精神」を傷付け、国の健全な発展を妨げることになりかねません。幸福実現党はマイナス金利政策を速やかに中止することを訴えています。 ◆「清潔で勇断できる政治」を 今の日本の政治は、経験を重ねた政治家同士で、現状維持のなれ合いの政治、バラマキによって国民、そして次の世代の若者、子どもたちにツケを負わせる政治が公然と行われています。 多くの国民の皆さまが、この現状に大きな不満を持っておられ、「清潔で勇断できる政治」が必要だとお感じになっていないでしょうか。 私たち幸福実現党は、自民党でもなく民進党でもない、新しい選択として清潔で勇断できる政治を進めてまいります。 アベノミクスの「成果」に疑問を呈す 2017.09.07 アベノミクスの「成果」に疑問を呈す 幸福実現党政務調査会・成長戦略部会部会長・HS政経塾4期卒塾生 西邑拓真 ◆2017年4-6月期GDPの発表 内閣府は8月14日に2017年4-6月期の総生産(GDP)を発表し、実質成長率が前期(1-3月)比で1.0%増えて6四半期連続のプラス成長になったことを明らかにしました。 しかし、アベノミクスによる「景気回復」に「実感」が伴っていないというのも実際のところです。当稿では、アベノミクスの「成果」について疑問を呈して参ります。 ◆リーマン・ショック前の水準に戻ったに過ぎない、名目GDPの水準 今回、「6四半期連続のプラス成長」となりましたが、この間の成長率は極めて低い水準に留まっています。 第2次安倍内閣時において、確かに回復基調を示してはいますが、その速度は極めて緩やかで、GDPもようやくリーマン・ショック前の水準に戻ったにすぎません。 安倍内閣は4年半かけて、ゆっくり「回復」させたにすぎず、「経済成長」を達成しているわけではないのです。 2014年の5%から8%への消費増税などにより、景気回復が「人為的」に遅れたことを問題視すべきではないでしょうか。 また、この度の4-6月期のGDP速報(1次速報値)では、実質GDPの成長率は前期比1.0%増(年率換算4.0%増)を記録したものの、今回の数値に寄与した個人消費の伸びについては、リーマン・ショックの後に景気対策として打ち出された家電エコ・ポイント制度によって購入された白物家電の買い替え需要による影響や、前年度補正予算の執行による効果が大きいとされています。 したがって、今回発表された比較的高い成長率が、今後も持続するとは限りません(*2)。 さらに、有効求人倍率は、43年5カ月ぶりの高水準(2012年12月0.83倍⇒2017年7月1.52倍)にあるとされていますが、その理由として、団塊世代の大量退職に伴い、構造的な人手不足が続いていることが指摘できます(*3)。 パートやアルバイトなど非正規雇用の賃金は上昇しているものの、正規雇用含め、就業者全体の賃金は上昇トレンドにあるとは言い難い現状にあります(*4)。 *1 デフレ期には、統計的に加工された「実質GDP」ではなく、所得の実額を反映している「名目GDP」が生活者の「実感」に近い。ゆえに、「デフレ脱却」を議論する際には「名目GDP」の水準がどれだけ上昇したかに注目しなければならない。 *2 茂木敏充経済再生担当大臣は、8月14日の記者会見で「消費が完全に回復したかというと、力強さに欠けている面も残っている」との認識を示している。 *3 ブルームバーグ2017年5月30日付「有効求人倍率43年ぶり高水準、株式市場で小売り株期待の声―総賃金伸び」より *4 ニューズウィーク日本版2017年8月17日付「雇用が回復しても賃金が上がらない理由」より ◆デフレ脱却はなお道半ば 日銀は2%の物価上昇率目標を掲げ、マイナス金利を含めた金融緩和政策を実施しています。 安倍政権として、金融政策や財政政策、成長戦略の政策パッケージでデフレ脱却を目指しているものの、(第二次)政権発足後4年半たった今もなお、道半ばです。 消費者物価指数の値(*5)を見ると、2014年には2%以上を記録していますが、これは単に消費税の増税分の物価上昇に過ぎません。その後、2015年に急落し、2016年には総合指数、生鮮食品を除く総合指数でマイナスを記録しています。 また、月次ベースで見ると、2017年7月に、0.5%以下の値をとっています。 尚、消費者物価指数は、実際の値より、1%ほど上振れる傾向にあるとする指摘もあります。したがって、1%未満のインフレ率が観察されたとしても、実際にはデフレ脱却が果たされたとは言い切れないでしょう。 そして、イオン(*6)やセブン・イレブン(*7)などプライス・リーダーシップを持つ企業が軒並み値下げを行っており、その他にも家具大手のイケア(*8)なども値下げを敢行しています。 デフレとは、物価が下がっていく中、所得が減少していき、「国民が貧しくなっていく現象」のことを言います。物価の低下が企業収益の減少を招いて賃金は減少。そして国民の所得の低下により消費が抑えられ、さらにモノの値段が低下していきます(デフレ・スパイラル)。 安倍政権は「アベノミクスの成果」を強調していますが、デフレからの脱却は果たされておらず、その行き詰まりは明らかです。 *5 総務省統計局HP(http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.htm)より *6 日本経済新聞2017年8月23日付「イオンまた値下げ『インフレ目標で価格決めない』」より *7 朝日新聞デジタル 2017年3月29日付「セブンイレブン、日用雑貨61品値下げ 最大20%オフ」より *8 日本経済新聞2017年8月24日付「イケア、890品を2割値下げ」より ◆明確な「国家ビジョン」や確かな「成長戦略」に欠けるアベノミクス 経済水準が、リーマン・ショック前のピーク時に回復後、どれほど伸びるかが重要ですが、現政権には「国家ビジョン」に当たるものが必ずしも明確ではなく、今後、「力強さ」のある成長を十分に期待することができません。 デフレからの脱却、長期的な成長を実現するためにも、消費減税や法人減税などにより需要喚起を行うと共に、「国家百年の計」として、リニア新幹線、宇宙、防衛産業など未来産業に対する重点的な投資を国として行うべきです。企業による技術革新を推し進める上でも、研究開発促進税制の拡充も図っていくべきでしょう。 また、若者は、「生涯所得が少なくなることへの不安が根強い(*9)」と言われています。幸福実現党は、明確な「国家ビジョン」を描いて長期にわたる経済成長を実現して経済的不安を払しょくし、将来に希望を持てるような政策パッケージを提示して参ります。 *9 東京新聞2017年8月15日付「GDP年4.0%増なのに景気実感 なぜ薄い? 正社員の賃金低迷 若者に将来不安強く」より オバマケアと医療保険 2017.07.08 オバマケアと医療保険 幸福実現党・岡山県本部代表 たなべ雄治 ◆オバマケアの廃止は決まらず アメリカでは、医療保険制度改革法(オバマケア)廃止に向けての共和党の代替法案が話題となっています。 オバマケアの廃止は、トランプ大統領の公約の目玉の一つでした。 5月に、オバマケアの代替法案は僅差で米下院を通過しました。 ところが先月末、上院での過半数獲得が見込めず採決が延期となりました。 今、アメリカの医療サービスに何が起きているのでしょうか。 ◆アメリカの医療制度 アメリカでは、医療保険制度の大部分を民間に任せています。先進国では例外的です。 公的医療保険制度もあります。高齢者・障害者向けの「メディケア」と、低所得者向けの「メディケイド」で、人口の3分の1の方がこの制度に加入しています。 上記以外は民間保険であり、多くの米国民は雇用先を通じて民間医療保険に加入しています。 ところがアメリカの医療費が非常に高いこともあって、民間医療保険の保険料も高額になっています。 保険料が払えない中低所得者などを中心に無保険者は10%を超えており、医療費の支払いに起因する破産などの問題がおきていました。 オバマケアとは、上述の問題を解決すべく、国民皆保険を目指して2014年から導入された医療保険制度です。 国民には医療保険への加入を義務付けて、民間保険会社には国民の保険加入を断れないなどの規制を設け、財政支援も加えました。併せて、メディケイドの条件を広げ、加入しやすくしました。 こうすれば、確かに無保険者は減っていくはずです。 ◆オバマケアの評価 では、オバマケアは成功したのでしょうか。 確かに、医療保険の加入率は上がりました。 一方で、保険料が平均25%も値上がりし、オバマケアを提供する保険会社が相次いで撤退するなど、見通しの明るいものではありません。 その原因は、公営の社会保険ではなく、民間保険だからです。 民間保険の場合、リスクの高い人には高い保険料を求めますし、場合によっては加入を断ることもできます。 ところがオバマケアの規制により、リスクの高い国民の加入も断れなくなったため、保険給付が増え、その分を保険料の引き上げで補う必要が出てきたわけです。 さらに、収益を見込めない保険会社が撤退し始めました。 2018年には全米の約半数の州で、オバマケアの保険商品を提供する保険会社が1社以下になるという予想も出ています。 1社だと競争原理が働かず、保険料のさらなる値上がりも懸念されます。 オバマケアは成功とは言えません。 ◆オバマケアの代替法案 対して、共和党によるオバマケア代替法案とは、以下のようなものです。 ・国民への加入の義務付けを外す。 ・保険会社は、リスクの高い人の加入を断ることができる。保険内容に関する規制も緩和する。 ・拡大したメディケイドは、段階的に元に戻していく。 完全にオバマケア以前に戻すわけではありませんが、かなりの部分で規制が緩和されることになりそうです。 しかしこの代替法案が可決されると、再び無保険者が増加していくという分析があります。 上院では共和党の中にも代替法案に反対する議員が現れ、冒頭で述べた採決延期につながりました。 ◆医療保険のあり方 多くの先進諸国で、医療を含む社会保障が財政を圧迫しています。 医療のように、自由化して市場原理に任せればよいと単純には言えない分野が存在します。 まだどの国も、医療保険のあるべき姿を見つけ切れていないのではないでしょうか。 これからも様々な社会実験をしていくことになるでしょうが、方向性を示すことは可能だと思います。 それは、「公共の資源を食いつぶさない」という「インセンティブ(動機)」を与えることです。 日本では安くて高品質な医療サービスがいつでも受けられます。 しかし、私たちが窓口で支払う診察料の2倍以上の額が、国民の税金から支払われていることを忘れてはなりません。(自己負担3割) 「保険診療を無駄遣いしない」という「インセンティブ」が望まれます。 その一例として、岡山県総社市の「総社市国民健康保険 健康推進奨励金制度(総社市国保「健康で 1万円キャッシュバック」)」を挙げます。 一年間保険診療を使わず、かつ健康診断を受けている世帯に対して、1万円を還付するという制度です。 また、夕張市のような事例もあります。 http://hrp-newsfile.jp/2017/3209/ あるいは、保険診療の利用額が少ない人に、年金給付を増額して還付する方法も考えられます。これらは、生活習慣改善へのインセンティブにもなることでしょう。 正しいインセンティブを与えつつ、効率化は市場原理にゆだねる。これが医療保険のあるべき姿だと考えます。 「坂の上の雲」を超えた国家ビジョンを目指せ 2017.07.04 「坂の上の雲」を超えた国家ビジョンを目指せ HS政経塾第6期生 坂本麻貴 ◆国の税収が減収 日本経済がリーマンショックの影響を受けた2009年から、今年で8年がたちますが、国の2016年の税収が前年度を下回り、55兆5千億円程度となりました。 これは7年ぶりの前年割れで、所得税、消費税、法人税といった税収全体の8割を占める「基幹3税」がそろって減収となっています。 さらに消費税収は2015年度の1兆4千億円を数千億円下回り、これは2014年4月の消費税率引き上げが絡んでおり、経済成長頼みの財政運営は転機をむかえているといいます。(6月30日付日本経済新聞) ◆社会保障の充実を名目に引き上げられた消費税 2014年に消費税率は8%へ引き上げられました。その少し前の民主党政権かで、社会保障の財源のために消費税率をあげるという法案を通し、それをベースに引き上げられ、また2019年からは10%まで引き上げられます。 しかし、高齢化が進む日本において、消費税の税収を社会保障にあてても、今以上に充実していくことは極めて難しいと言わざるを得ません。 そもそも、消費税制を始めて日本に導入した際、当時の竹下登首相は、「景気が回復し、国の借金を返すまでの間導入する」と私たちに約束しています。その年の税収は60兆円ほどでした。 しかし、その後景気はいっこうに回復せず、27年間、一度もこの60兆円の税収を超えたことがないのです。 1997年には5%へ引き上げ、これによってさらに景気は悪化。その後8%に上げたことの影響が、今になって現れてきたといえます。 消費税の増税では、景気は回復しないということがいよいよ明確になってきました。 ◆鍵を握る企業の国内回帰 今回の減収の要因の一つとして、企業のグローバル化についても指摘されています。 日本企業が海外に進出し現地で雇用したりすることで、日本に法人税や所得税が入らず減収したということです。 ここから、海外に進出している企業が、再び日本国内に立地していく必要があり、そのためには大幅な法人税の減税が必要です。 また、企業が魅力に思う人材を教育によってつくっていくことも重要です。 ◆坂の上の雲を超えた国家ビジョン 戦後日本は坂の上の雲を目指して経済成長してきました。それがここ30年は坂を登りきり、下り始めたかのようになってきています。 日本では、経産省を筆頭に日本の技術力に注目し、「モノづくり」を推進してきました。 戦略を階層で考えるというものがありますが、技術力というのは最下層にあたります。 「技術」→「作戦」→「戦略」→「大戦略」→「政策」→「理念・世界観」(奥山真司氏講義より所収)と進むにつれ上の階層になっていきますが、下の階層でどんなに素晴らしくても、より上の階層が強い方が勝ってしまいます。 今、日本には、世界の中でどのような存在なのかという理念や、世界の中でどういうビジョンを持ち、どの方向へ舵を切るのかという世界観が必要です。 幸福実現党のもつ、「より多くの人を幸福にする」という理念や「世界をリードする日本」といったビジョンが必要なのではないでしょうか。 森友学園・国有地売却問題について考える 2017.04.01 兵庫県本部代表 みなと 侑子 ◆迷走する政治、衆愚制に持ち込みたいマスコミ 連日、森友学園問題が取りざたされています。 理事長の個性が強烈であることと、安倍総理からの100万円寄付問題が実際にあったかどうか、説明できないことが面白くワイドショーを賑わしています。 ちなみに安倍総理が仮に寄付していたとしても、自身の選挙区外での寄付なので、法律的には問題ではなく、この問題が解決に導かれるわけではありません。 問題の本質は、9億円余りする国有地が、8億円以上値引きされて売られたことに妥当性はあったのか、ということでしょう。 ◆森友学園 土地取得問題の整理 状況を整理します。 今回の森友学園用地8770平方メートルは、2016年6月に1億3400万円で国から売却されました。 この土地は2013年6月~9月に一度売却先を公募しましたが買い手が決まらず、2016年6月に公共随意契約を結んで売買されました。 土地の評価額は9億5600万円でした。 購入金額は1億3400万円ですので、実質8億2200万円の値引きであり、評価額の7分の1での買い取りです。 『元国有地の土壌がごみなどで汚染されていたため、不動産鑑定による撤去費用約8億2200億円を差し引いた』のが値引きの理由とされています。 ちなみに、森友学園立接地の国有地9492平方メートルは、防災公園として豊中市に14億2300万円で2010年に売却されております。 (ただしこの公園用地の購入支援のため、国から豊中市に7.1億円の補助金と6.9億円の交付金がでており、実際の豊中市の支払負担は2千万となっています。) この二つの国有地の売却額の差は約13億円です。 大きさが約700平方メートル違うこと、購入時期に6年間の差があり、平方メートル当たりの土地価格が若干異なっていることを踏まえても、あまりにもかけ離れた額となっており、首をひねらざるを得ません。 ◆契約方法や評価方法は正しかったのか 一つの問題は、今回の契約方法にあります。 森友学園用地の契約は競争入札ではなく、任意で決定した相手と契約を締結する、随意契約という方法がとられました。 元財務官僚の高橋洋一氏は、『会計法では原則競争入札と定められており、随意契約の場合は人命にかかわるなどの緊急性に限定している』と述べ、ここに問題があると指摘しています。 本来であれば、少しでも高く売るために競争入札という方法がとられるべきで、競争入札をとっていれば、ここまで値段が下がることもなく、また追及されることもなかったはずです。 しかし随意契約がとられたため、恣意性や政治の関与があるのではないかと疑われることになったのです。 また、地中のゴミに関しては、鑑定評価額から財務局の判断で差し引くのではなく、第三者の鑑定機関に任せるべきであったのではないでしょうか。 先述した隣接地においても埋設物の撤去が必要になりましたが、その場合は先に買受側が費用負担し、その後に売主に費用を請求する形がとられました。 今回のように、大幅な値引きが行われ、その根拠が薄いとなると、やはり透明性の面からも問題があります。 ここに政治家の関与があるのか、それとも財務省の出先機関である近畿財務局による国有財産売却のずさんな体制なのか、はっきりはしていません。 しかし大切な国有財産が、一部の人たちの思惑によって、相場よりもずっと安い値段で売られている…この事実に私たち国民は怒らなければならないと思います。 ◆国の資産を安く売り、増税を正当化する財務省の矛盾 国には資産があるにはあるが、それらはすぐに売りさばけるものではない。 そのため、日本の1000兆円以上の借金返済は難しく、国民から税金を更に取っていく以外に方法はない、財務官僚はいつもこのような論理を使っては、政治家を動かし、またマスコミに宣伝させ、増税を正当化させます。 もしも本当に借金が深刻であり、売りさばける資産が少ないのであれば、今回のような国有財産は大変貴重なものであるので、適正価格で売り、少しでも国の借金を減らすべきでした。 にもかかわらず政治家または官僚の判断や裁量で割り引き、そして国民には税負担を押し付けてくる。何かおかしいのではないでしょうか。 この点、透明性を担保するためにきちんとした説明を求めなければなりません。 ◆一刻も早く森友学園問題を解決し、外の世界に目を 日本を取り巻く国々は、日々に変化しています。 香港では新たな親中の行政長官が誕生し、今後の混乱が考えられます。 韓国大統領選が5月に行われますが、新大統領は誰になったとしても、親北・超反日政権が誕生するでしょう。 北朝鮮は「在日米軍」を標的とし、ミサイルを同時に正確に飛ばすことができる技術を備えつつあり、新たなる核実験を近いうちに行うとされています。韓半島全体が日本の大きな脅威となりつつあります。 このような中、国会で水掛け論を繰り返している時間はありません。 日本の政治家たちは一日も早く目を開き、外の世界の変化に気づき、対応していただきたいと心から願います。 参考:夕刊フジ「これでいいのか?予算審議 森友問題の政治関与は不発 国の資産売却の議論を進めよ」2017.3.4高橋洋一 現代ビジネス「官僚にこんなに裁量があっていいのか?」高橋洋一 相続税と遺留分制度の廃止で日本を元気に! 2017.03.23 HS政経塾 第6期生 野村昌央 ◆改めて見る、相続税改正 平成27年から相続税法が改正されました。 改正された内容のうち、基礎控除については、「5000万円+(1000万円×法定相続人数)」から「3000万円+(600万円×法定相続人数)」に改正されています。 これによって、相続税が適用される人が増え、課税対象者は全人口の4%程度から8%になりました。実質的な増税です。 日本における相続税の税収は、平成5年度の2兆9000億円をピークとして、平成27年度には約1兆5000億円と減少が続いていました。 平成27年に相続税が改正され、平成28年度の相続税収は約1兆9680億円と増加しています。 しかし、相続税収は全体の税収に対して約2%しかありません。それに比べ、相続税があることの弊害は大きなものがあります。 ◆相続税のもとにある思想 平等の面を強調すれば、相続税を100%にすることで誰もが平等な人生のスタートを切ることができると考える方がいますが、そのような考えは行き過ぎた個人主義ではないかと筆者は考えます。 人間は家族を持ち、社会を形成して、互いの自由と権利を脅かさないために法律というルールを設けて生活を営んでいます。 家族に対して、有形無形にかかわらず、自分自身が人生で得てきた財産を残していきたい、引き継いでいきたいというのはごく自然な考えではないでしょうか。 もし、相続税を100%にして、そうした家族や近しい人での助け合い(互助・共助)を否定してしまうのであれば、ゼロから始める自助と、公助しかない社会になってしまいます。 そしてそれは、マルクスの言った社会主義思想に他なりません。 そうではなく、私有財産を認め、チャレンジして成功する人を称えることのできる社会でなくてはなりません。 他の人が成功できるということは、もちろん自分自身も成功することができる社会だからです。 そして、公的な支援に頼るのではなく、騎士道精神をもってよりよいコミュニティを築いていくことができる社会を目指さなくてはなりません。 また、相続税や贈与税は、所得再分配の思想をもとにしています。格差を否定し、努力し、チャレンジして成功することをも否定することにつながってはいけません。 ◆遺留分制度で家族の絆が奪われる なにより、相続税のために、子供が親の面倒を見ることが少なくなっている面があることを政府はしっかりと考えなければなりません。 例えば、遺留分制度があるために、親の面倒をみなくても、つながりがなくても、その財産を相続する権利があります。 どのように家族と交流を持とうが、社会福祉で生活することができ、相続も変わらないのであれば、子供は安心して親と別居します。 また、相続税があるために、家や土地を売らざるを得ず、お金で配分するということもあります。これでは家を持つ、家族で支え合って生きるということができない社会と言えます。 ◆家族の絆を深め、機会平等の社会を 生きて働いている時に所得税などの税金を納めてきたにも関わらず、死んでからもまた税金を取ることに、正当性があるのでしょうか。 憲法29条には「財産権は、これを侵してはならない」とあります。相続税は憲法に明記されている権利を侵している可能性があります。 この根底には、「お金は個人が持つのではなく、国が管理して、みんなのためにと考えたことに使うのが正しい」という社会主義思想の価値観が入り込んでいると言っていいでしょう。 遺留分制度が存在し、相続税がとられるということは、長い目で見れば日本には伝統的で文化的な価値のある家屋や資産は残りません。 家を大切にすることも、家族のつながりを大切にすることも無くなる、ということになりかねないのです。このような、国家が家庭の文化を破壊する相続税を廃止し、家族の絆と文化を守りながら、すべての人にチャンスが開かれる社会にしていかなくてはなりません。 矛盾する主張を止め、豊洲移転を進めるべき 2017.03.16 幸福実現党 政務調査会 都市計画インフラ部会 HS政経塾第2期卒塾生 曽我周作 ◆混乱招く小池都知事の無責任 昨年の東京都知事選以降、築地市場の豊洲への移転が延期され、移転の目途がたたない状況が続いています。 小池都知事は移転を延期させる理由として以下の三点を挙げています。 1.安全性への懸念 2.巨額かつ不透明な費用の増加 3.情報公開の不足 確かに都民としても、一点目の「安全性」の問題については関心が高いと思います。 では、築地と豊洲の一体どちらが「安全」なのでしょうか?このことが議論されなければなりません。 例えば豊洲の新市場の土壌汚染問題について小池都知事は「消費者が地上と地下を分けて合理的に考えてくれるのか。ガス工場だったことに変わりない」と言います。 これは専門家会議(正式名称:豊洲市場における土壌汚染対策等に関する専門家会議)における議論がベースになった発言だと考えられます。 今年1月14日に開催された専門家会議においても、「地上部分と地下の部分は別に分けて考えたほうがいいんじゃないか」(平田座長発言)と述べられた上で、地上部分については「安全」であるが、地下の問題については「安心」が担保されていないと繰り返し指摘されています。 つまり、豊洲の新市場は「安全」である。しかし、「安心」は与えられていない、というわけです。 ならば、本来は知事が「豊洲は安全です。だから安心してください」と言わなければなりません。そして、市場関係者や都民等に安心を与えるように発信しなければならないのではないでしょうか。 最終的に、移転の判断を行うのは都知事の政治判断によります。責任は専門家会議ではなく都知事にあるはずです。この点、小池都知事が逃げているようにみえてなりません。 産経新聞の報道では、小池都知事が主宰する政治塾で移転問題について「私が結論を出すわけではない。こういったことは都民の皆様によく知っていただいて、時には判断に参加していただく」と発言し、この問題の住民投票実施を「感じさせる」発言をしたと言われています。 これは都知事としての責務放棄ではないでしょうか。何のために都民から選ばれた都知事なのでしょうか。 そもそも、地下の環境基準を上回るベンゼンなどが検出されているものの、それが飲用水として使われるわけでもなく、市場内で利用されるものでもなく、地上にいる私たちが影響を受ける心配もないということを、なぜ都知事が率先して発信しないのでしょうか。大いに問題があると考えます。 ◆築地の安全問題からは目を背ける、正直さのない対応 一方、築地市場には様々な問題があります。 開場から80年ほどが経過し、老朽化も進んでいます。耐震性の問題を抱えた建物もあります。開放型の施設で、ネズミがいることも確認されています。 そしてさらに、築地の地下もいわゆる土壌汚染があり、ヒ素が環境基準の2.4倍を検出しました。 それに対して小池都知事は「コンクリートなどで覆われ、法令上問題なく健康に影響を与えることはない」と言います。 それならば、豊洲新市場も同様の理由で安全であることは明らかです。土壌汚染対策では法令上の基準もクリアしています。もちろん耐震性の基準も満たしています。 しかし、築地市場に対しては「さまざまな課題を抱えているが安全と考えている。長年にわたって勝ち得た築地ブランドという安心もある」と言いながら、豊洲新市場に対しての安全宣言は口にしません。 判断基準にまったく一貫性が感じられません。 「さまざまな課題」を抱えた築地市場に対して、都知事の発言一つで「安心」が与えられるのならば、一体なぜ豊洲については安全だと言わないのか、と言わざるを得ません。 1月の専門家会議の場で豊洲の子どもが嫌がらせを受けていることが指摘されました。福島の問題に極めて似た事が起きています。 結局、マスコミや都知事等が風評被害を作り上げているとしか言いようがありません。その責任は重いのではないでしょうか。 ◆小池都知事は東京都の責任者として適格なのか? さらに今百条委員会を設置し、豊洲への移転に至る経緯の部分を問題にしています。 しかし、これは「既に完成している豊洲新市場」への移転を行うかどうかとは別の問題のはずです。 土地売買の経緯などに、たとえ何か政治的な問題があっても、6000億程の費用をかけて完成した施設を「使わない」理由にはなるとは思えません。問題を混同するべきではありません。問題は、豊洲の新市場が安全で使える施設なのかどうかです。 毎日、豊洲の新市場は施設維持に500万円ほどの費用がかかっています。移転をするからと、必要な設備を入れた業者の方もいます。多くの人が豊洲への移転を前提に、準備などを進めていたわけです。 都知事個人としては自分の懐が痛むわけではないのでしょうが、いたずらに移転を先延ばしにした結果垂れ流される経費などのツケは一体誰が払うことになるのでしょうか。小池劇場のツケは高くつくことになります。 築地と豊洲における問題については、判断に一貫性持ち、豊洲への移転を早期に進めるべきだと思います。 その上で、オリンピック開催に向けて、重要な施設整備などを推進して、レガシーを残すべきです。 道路整備も必要です。これについては、目先の経費削減のパフォーマンスに終始せずに、本当に使える施設、使い続けられるものを残していただきたいと思います。 税金を決して無駄なものとせずに、大切に将来に残るものに使っていただきたいと思います。 「空き家」活用による地域活性化について 2017.03.14 HS政経塾 5期生 水野善丈 ◆「3戸に1戸」が空き家になる日 現在、日本の新築住宅数は年々積みあがっていく一方で、全国で空き家も一貫して増えています。2013年度「住宅・土地統計調査」によると、空き家の総数は全国で820万戸にのぼっています。 さらに野村総合研究所の調査によると、このまま住宅の除去や住宅用途以外への有効活用が進まなければ、2033年には約2015万戸、空き家率は30.2%になると予測され、3戸に1戸が空き家になるとまで言われています。 ◆なぜ、空き家が増えるのか? ここまで空き家が増えてきたのには、いくつか理由があります。 ひとつは、人口減少が進む中で、国の施策による住宅建設の推進です。 住宅建設の経済波及効果は、最終的に投資した額の倍以上の消費に繋がるので、「住宅ローン控除」や「住宅取得資金贈与の特例」など住宅投資への誘導政策により、新築建設が進められてきました。 また、2015年に相続税の最高税率が上がったように、民間では相続税対策による実需に合わない賃貸住宅の増産も進んでいます。そのため、空き家総数の52%を賃貸住宅が占めている状況です。 その一方で、日本の住宅市場の特殊な事情もあります。 新築住宅が増えるのはいいのですが、もともと建っていた敷地に住宅が建てられる再建築率はたった10%しかなく、中古住宅流通シェアが約14.7%(米:90.3%、英:85.3、仏:64%)しかないように、中古住宅の市場が日本では醸成されていません。 そのため日本では、本来、財産になるはずの不動産が、20年経つとほとんど価値がなくなってしまい、次の世代へ相続・売却をするころには「負動産」となり、活用が難しくなっているのです。 ◆「空き家」を地域活性化へ繋げる取り組み 「空き家」について政府が解決するのは不可能に近いです。なぜなら、地域によって事情も異なり、空き家解決策は様々であり、解決には空き家の需給のマッチングがカギを握るからです。 そこで、現在、全国の各地域では、増える「空き家」を地域の活性化策につなげようと、地域のコミュニティに繋がっている自治体やNPOなどが中心となって、様々な取り組みが行なわれて、実際に地域に移住者や雇用を増やしている事例があります。 その成功事例が、広島県尾道市の「認定NPO法人 空き家再生プロジェクト」の取り組みです。 これまでに再生した物件は20件近くに及んでおり、運営する「空き家バンク」の登録者数は700名を超えていて、事業をはじめて数年で、新規借り手80件以上、移住者150名以上の実績をだし、地域活性化に寄与しています。 成功要因は、面倒見の良いNPOに加え、さまざまなイベント、取り組みがあるため、参加しやすく、必要な人たちをうまく巻き込んでいるところです。 また、移住には仕事の問題も大きいですが、空き家を再生した「あなごのねどこ」というカフェが雇用を生み出しており、15名近く雇っています。 空き家を再生、活用することで地域に仕事が生まれ、経済が活性化し、それが地域の魅力をアップさせ、また移住者が増える。こうした循環の中心にいるのは、行政や自治体でもなく、民間の力であるNPOでありました。 ◆国民が主体となる国家設計へ 空き家は、一見みると、不安要素しかなく活用に困ります。しかし、地域の人たちの繋がり、考え、アイディア次第では、地域のブランド力を高める材料・財産にも生まれ変わるのです。 今回取り上げた、例は一部で、NPOだけでなく、自治体が中心となって空き家を地域活性化へと結びつけて成功している例はたくさんあります。 今までの日本では、問題が起きれば、政府が税金をかけて、規制を強いて何でもやるような、大きな政府の政策が行なわれてきました。 しかし、社会に多様性ができ、様々な社会問題が生じてくる中で、政府がすべてやろうとすればするほど、成果がでず、税金がかかる一方です。 多様な社会であるからこそ、発想を逆転させ、民間の力で解決できることは解決する方向へ舵を切らねばならないと思います。 今回の空き家で考えるならば、税収の数%しかない、相続税・贈与税を撤廃することで、空き家が必要なところに循環することにより、新たな市場が生まれ地域活性化へより前進していくと考えられます。 また、旧くなっている建築基準法も、リノベーションがより進み中古住宅市場が活性化するように、民間からの声も吸い上げて変更すべきところは変更していく必要があります。 地方創生の一番重要である「民間の力」を引き出す政策をこれから具体的に作りだしていきたいと思います。 <参考資料> 「解決!空き家問題」 中川寛子 「老いる家 崩れる街 -住宅過剰社会の末路-」 野澤千絵 すべてを表示する 1 2 3 … 33 Next »