Home/ エネルギー政策 エネルギー政策 エネルギー安全保障強化の要諦は「多様化」にあり 2015.01.31 文/幸福実現党・福井県本部副代表 白川 康之 ◆電気は「インフラ中のインフラ」 前回は、原発が賄ってきた電力を老朽火力発電所でカバーしていることから、電力の予備率の面において、大規模停電になる可能性がある現状は、エネルギー安全保障上、重大な問題であることを指摘しました。 【前回】エネルギー安全保障強化のための原発再稼働 http://hrp-newsfile.jp/2015/1988/ 電気は「インフラ中のインフラ」です。水道、ガス、通信、交通など、私達日本国民の生活の基盤となっている各インフラストラクチャーも、電気によって管理されているからです。万が一、電力供給がストップしたならば、それらを維持できなくなるばかりではなく、防衛関連のシステムも、全面的な運用は不可能になってしまいます。 また、電力の供給が不安定になると、国内の製造業も稼働が不可能になります。特に半導体をはじめとする最先端の製造業は、またたく間に操業停止に陥ります。 工場は国外に移され、国内から雇用の場が失われていくことになります。日常、当たり前のように使っている電気ですが、安定した供給がいかに重要であるかを痛感せずにはいられません。 ◆原発再稼働で電気料金は下がる 現在、日本は原発を再稼働しないために、鉱物性燃料を中心に輸入が増え続け、貿易赤字が拡大しています。しかしなぜ、為替レートが円安に動いたにもかかわらず、輸出が拡大しないのでしょうか。 現在の日本は、リーマンショック後の工場などの流出により、すでに「構造的」に貿易赤字体質になっている可能性が高いといわれています。 為替レートが円安に振れたことで、外国に流出した工場が日本国内に回帰する可能性はあるものの、現状のまま、原油や、天然ガスなどの輸入が増え続け、電気料金が値上がりしていくと、円安効果は打ち消されてしまいます。 原発を再稼働すれば確実に、電気料金は下がるのです。 ◆エネルギー安全保障にとって重要なのは「多様化」 現在、我が国の発電電力量に占める火力発電の割合は88.3%にも達し、過去最高の水準になっています。 そのため、原油やLNG(液化天然ガス)の輸入が増大しているわけですが、このことは、エネルギー安全保障にとって最も危険な状況であると言わざるをえません。 何故ならば、エネルギー安全保障にとって重要なのは「多様化」にあるからです。 日本は、戦後の焼け跡から高度経済成長を経て世界に冠たる経済大国に駆け上がりました。しかし、約20年にわたった高度成長は突然、終わりを迎えます。1973年、イスラエルとアラブ諸国の戦争が勃発、原油価格が急騰したのです。オイルショックです。 安い原油を使って成長を謳歌してきた日本経済は、この直撃で年率20%超のインフレを記録し、戦後初のマイナス成長に陥ったのです。 狂乱物価といわれ、店頭からトイレットペーパーがなくなり、夜の街ではネオンが消えました。このパニックを貴重な教訓に日本は「脱石油」「脱中東」のエネルギー戦略を進め、その柱として原子力発電が位置付けられたのです。 国産電源として活用できる原発の発電比率は30%に高まり、電源の「多様化」が進んでいたのですが、東日本大震災に伴う、福島第一原発の事故により、その後全国全ての原発が止められています。 結果、発電比率において火力発電が9割弱となり、「脱中東」どころか、以前にも増して中東に依存せざるおえない状況になってしまったのです。 ◆政府は主導力を示せ エネルギー供給源やエネルギー供給国は多様化すればするほど、わが国のエネルギー安全保障は強化されます。今やれる最善の策は原発の再稼働なのです。 しかし、未だに将来の具体的な電源比率は示されていないのが現状です。将来的に「何」が起きるかわかりません。そうした非常時を想定し、エネルギー安全保障を強化するための様々な対策を打つ必要があります。 エネルギー安全保障は、政府主導で進めなければならない大切な政策でありべきです。 エネルギー安全保障強化のための原発再稼働 2015.01.24 文/幸福実現党・福井県本部副代表 白川 康之 ◆安全保障 安全保障というと軍事力等の国防のことが先ず思い浮かびますが、ほかにも自国のエネルギーを自国で賄う「エネルギー安全保障」、自国民の食を自国で賄う「食糧安全保障」、自国民を自然災害から守る「防災安全保障」などがあります。 どれをとっても国民の生命と安全と財産を守るために必要な最重要課題であり、国政として常に最善なものにするべく対策を練り、ビジョンを描いていなくてはなりません。ここでは「エネルギーの安全保障」を考えたいと思います。 ◆ 現代は電力文明の時代 現代は電力文明の時代です。電力こそが、あらゆる経済活動の基盤となっています。現在、日本の一次エネルギー総供給のうち、電気をつくるために投入される割合は4割を超えるまでになっています。 電力がない場合、人々の日常的な暮らしはもちろんのこと、企業の生産活動、水やガス、通信など「電力以外のインフラ」の維持、さらには国家防衛すら成り立ちません。 国家そのものの存続が、電力というエネルギーが、安定的に供給されるか否かにかかっていると言っても過言ではないのが、現代という時代です。 現実問題として、エネルギー安全保障を疎かにした結果、大規模停電が発生すると、入院患者などの死亡事件が起きることもあるのではないでしょうか。 たとえば、2003年8月14日に北米北東部、中西部において、送電事業者の管理不備により大規模停電が発生しました。 停電の影響はアメリカの8州、さらにはカナダの一部まで及び、総計5000万人が被害を受けたのです。結果火災が60件発生、4名の死者が出てしまったのです。 ◆電力予備率3%とは 2014年、日本はおよそ半世紀ぶりに「原発ゼロの夏」を経験しました。昨年も多くの方が熱中症で病院に搬送されましたが、大規模停電が起きることもなく、なんとか乗り切ることができました。 「原発がなくても何も起きなかったではないか、だから原発は稼働させるべきではない。」 そのような声が聞こえてきそうです。 しかし、現実はきわめて危険な水域にあったということです。14年夏、すべての電力会社の予備率が一桁に低下するという異常事態の状態であったのです。 特に、関西電力と九州電力の予備率は、何と3%にまで落ち込んでしまったのです。予備率3%とは、一つ何かがあるだけで、ブラックアウトが発生しかねない危険な水域であったのだということを、私たちは知っておくべきです。 また、ひとたびブラックアウトが発生すると、復旧は簡単ではありません。電力サービスは「需要」と「供給」が一致しなければ、周波数が乱れて使い物にならないという、難しいサービスなのです。 ◆原発再稼働の決断は政治家の仕事 福島第一原発の事故前の電力サービスの目標予備率は15%でした。それがいまや、予備率4%、5%の「非常事態」に直面し続けているのです。現在、老朽化した火力発電所を中心に故障が増えてきています。 現在の日本の電力サービスは、築40年超えの「老朽火力発電所」たちが、最後の砦として辛うじて支えているのが実態であり、まさに、「非常事態」としか表現のしようがないのです。安全保障という面から考えると「極めて危険な状況」ということです。 結局のところ、日本の電力サービスを「非常事態」から「平時」に戻すためには、原発の再稼働しかないのです。 政府が原発再稼働の判断を明確化した場合、政権の支持率は下がる可能性は高いでしょう。それでも、「国家の安全保障」を考え、政治的な決断を下すのが政治家の仕事なのです。 参考文献 三橋貴明著 「原発再稼働で日本は大復活する」 KADOKAWA 持続的発展が可能なエネルギー政策を!―「固定価格買い取り制度」の欠陥 2014.12.22 文/HS政経塾4期生・鹿児島県本部 副代表 松澤 力 ◆見直しを迫られる「固定価格買い取り制度」 太陽光など再生可能エネルギーで発電した電気を、大手電力会社が政府の決めた値段で買い取る「固定価格買い取り制度」に対して見直し策が検討されています。 「再生可能エネルギー普及の起爆剤」として民主党政権時に導入された制度でしたが、方向転換をせざるを得ない状況です。 制度導入時を振り返りますと、2011年3月の東京電力・福島第一原子力発電所事故によって根本的に見直されることになった日本のエネルギー政策において、再生可能エネルギーを重視すべきという声が高まりました。 その状況の中で、太陽光発電や風力発電の普及の切り札になることを期待され、2011年8月に成立したのが再生可能エネルギー特別措置法でした。 この法律によって、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT=Feed-in Tariff)が導入されました。 固定価格買い取り制度では、太陽光などの再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を、20年間等の長期に「固定した価格」で電力会社が「全量」買い取ることを義務付けています。 電力会社が買い取りに要した費用は、使用電力に比例した賦課金(サーチャージ)という形で回収されますが、賦課金は電気料金に含まれるため、結局、企業や家庭などの電力利用者が負担することになる制度になっています。この制度は2012年7月から実施されました。 ◆太陽光発電の“急増”で中断された電力買取 制度がスタートすると、太陽光発電は設備の設置が比較的容易で、買い取り価格が優遇されていたため、参入する事業者が急増しました。 その後2014年9月24日、九州電力が再生可能エネルギーの「固定価格買い取り制度」(FIT)を通じた買い取り申請への回答を、翌日から数カ月間「保留する」と発表。“契約中断”は、北海道、東北、四国、沖縄電力にも連鎖し、再生可能エネルギーの買い取りが中断されていきました。 九州電力の説明では、2014年3月だけで、FITの買い取り単価引き下げ直前の駆け込みもあり、従来の1年分に匹敵する、約7万件の太陽光の接続契約申し込みが殺到したのです。 詳細を確認した結果、2014年7月末までの申し込みの全量が接続された場合、総量は九州電力管内の春・秋の昼間の電力需要約800万キロワットを上回ることが分かりました。 さらに、契約申し込み前の設備認定分も合わせると、夏のピーク需要約1600万キロワットをも超える可能性があることも明らかになったのです。 電力を安定供給するには需要と供給を常時一致させる必要があります。仮に、太陽光を含む発電の供給が需要を大きく上回れば、周波数が上昇し、場合によっては自動的に発電機が停止して大規模停電が発生する恐れがあります。 今後、経済産業省は、太陽光と風力発電のうち、電力会社が出力を制御できる対象の範囲を現行の「500kW以上」の設備から、「500kW未満」に拡大することや、補償なしで出力を抑制できる日数を、これまでの「30日」から「時間単位」で管理できるようにするなど、この他の見直し案も取りまとめ、2015年1月中旬に新たな制度を施行する予定です。(12/18 fnn-news.com) ◆ドイツでも「固定価格買い取り制度」に苦心 固定価格買い取り制度の先駆者であるドイツでも、国民負担が想定以上に膨らみ、その運用に苦心しています。 その要因は、太陽光発電の導入実績が目標を大幅に超過するバブルともいうべき導入ラッシュが発生し続けたためです。 導入ラッシュにドイツが投じた固定価格買い取り制度の負担額は、2011年だけで総額136億ユーロ(当時で約1兆3600億円)、1世帯あたりの月額負担額は10.3ユーロ(当時で約1000円)と推計され、これは月額電気料金の2割近い金額です。 この負担額の半分以上が太陽光発電に費やされてきましたが、その発電量は総発電量比3%に過ぎません。独シュピーゲル誌も「太陽光発電は、ドイツ環境政策の歴史で最も高価な誤りになりうる」と批判しています。(WEDGE Infinity) ◆持続的発展が可能なエネルギー政策を! 「固定価格買い取り制度」(FIT)は、震災後のムードの中、“脱原発”のためには再生可能エネルギー拡大に伴う多少の国民負担はやむを得ないという雰囲気の中で、民主党・菅政権下で導入されていきました。 電気料金に含まれる賦課金により、累積的に積み上がる国民負担の構造や、太陽光優遇に偏重した買い取り価格の付け方に対しては、国民に十分理解されていない中で進められていった結果、今回のように関連する事業者・国民を巻き込んだ混乱に拡大してしまいました。 FITは、再生可能エネルギー事業へのリスクのない投資を推進し、普及拡大につながる効果がある一方、事業者が努力してコスト削減を行うモチベーションを持ちにくい側面があります。 やはり、事業の持続的発展を促進するには、市場原理の導入により企業努力を喚起し、消費者に付加価値を提供する企業が発展していく制度づくりが必要です。 そのために、再生可能エネルギーの買い取り枠を固定し、競争入札など、効率的に安いコストで売電できる企業を伸ばしていく制度が求められます。 最後に、改めて太陽光などの再生可能エネルギーによる発電のリスクも、再認識することが重要だと考えます。今年の天候のように、大雨や大雪などの日が多い場合、太陽光発電による発電量は大きく減少します。 再生可能エネルギーによる発電の普及は大切ですが、偏重すれば、電力の安定供給の面で大きなリスクを抱えることも忘れてはならないことです。 資源の少ない日本におきましては、原子力発電も含め、様々な発電技術を活用したエネルギー政策により、国民の生活と産業を支えていくことが強く求められます。 日本では報道されないドイツの脱原発事情(2) 2014.11.10 文/政務調査会チーフ 小鮒将人 ◆FIT制度がドイツ国民に及ぼす深刻な影響 さらに、ドイツの国民にとって、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)が深刻な影響を与えています。 FIT制度は、原発停止に伴い不足するエネルギーを、再生可能エネルギーに求めるためのものです。電力会社は、国家の決定した価格での再生可能エネルギーの購入を義務付けると共に、それによる値上がり分については、ユーザーである国民が負担する制度です。 当然、この固定価格は、市場価格より高いもので、その結果ドイツ国民の負担は大きくなっており、FIT制度のために電力料金は、年間一人あたり4万円の負担増となっています。 ドイツでは1世帯平均2人というデータがありますので、単純に計算すると、1世帯で年間8万円の負担増になっている事になり、国民に深刻な影響を与えています。 これに関して、2013年9月19日付け「ヘラルド・トリビューン」紙(現在「インターナショナル・ニューヨークタイムス」に名称変更)には、ショッキングなレポートが掲載されています。 それによると、 ○「電気を節約するため、夜はキッチンの5ワット電球だけを頼りにする」ドイツ国民の姿 ○ベルリン市内には、電気料金支払いが困難な市民を救済する機関がある。 ○2011年、公式データによると、電力料金を支払えない31万2千世帯の電力を止めた。 ○政府の補助があるにもかかわらず、アメリカの3倍の料金に値上がりしており、国外からの投資意欲が大きく損なわれている。 この制度は、日本でもすでに施行されており、その影響については、すでに当ニュースファイルでも論じております。 日本経済を奈落の底に沈める「原発ゼロ」と電力の「固定価格買い取り制度」 http://hrp-newsfile.jp/2012/554/ 「市場原理に立脚しない再生エネルギー固定価格買取制度(FIT)のほころび」 http://hrp-newsfile.jp/2014/1747/ ◆東ドイツ出身のメルケル首相に繁栄のビジョンは見えるか ドイルのメルケル首相は、国民の人気も高く、優秀な政治家でありますが、社会主義の東ドイツ出身で、しかもキリスト教民主同盟のコール政権下では、4年にわたり「環境・自然保護・原子力安全担当大臣」をつとめており、一貫して規制を進める立場を取っています。 このような経歴を見ると、メルケル首相には、元々、脱原発に向けての強い考えを持つ一方、経済繁栄に対しての考えが不足しているのかもしれません。 当初、好意的な見方もされてきたドイツの「エネルギー革命」は、国民の負担が莫大なものなると共に、風力発電の最大手である「プロコン」社が今年1月に倒産し、供給側に課題があることも現実となりました。本当にこの政策が正しいものであるのか、ドイツ内外で大きな疑問が投げかけられています。 ◆日独両国の発展が世界大繁栄のカギ 現在のEUは、ギリシャ危機のあと、スペイン、ポルトガル、イタリアなどカトリック諸国で経済問題が続いています。その中で、ドイツは、さらなる繁栄のビジョンを掲げ、ドイツが圧倒的な経済力をもって、今後もEU立て直しの主役となって強い存在感を示していくことが求められます。 このように、本来、欧州のリーダーとなるべき役割があるにも関わらず、「ヒットラー」や「ナチズム」の反省による自虐史観と、エネルギー政策の失敗によって、ドイツ経済の発展は、足踏みを強いられています。 アメリカが世界の警察官を放棄しつつあり、世界は混とんとしていく中、欧州においては、ドイツが、日本と同様に「ドイツの誇りを取り戻し」、さらなる繁栄を目指す時が来ています。 そして、我が日本においても、今回お伝えしたように、ドイツでの教訓を生かし、当面は原子力発電を基礎にしたエネルギー政策を進め、安定的なエネルギー供給を確保することが大切です。 このように、日独両国が、自虐史観を払しょくし、世界的な役割を強く認識し、力強い発展繁栄を目指していくことが必要です。 幸福実現党も、日本において自虐史観を払しょくし、世界のリーダーをめざし、さらなる繁栄を目指して参ります。ご理解をいただきますよう、よろしくお願いいたします。 日本では報道されないドイツの脱原発事情(1) 2014.11.09 文/政務調査会チーフ 小鮒将人 ◆「原発推進派」に対するマスコミの風当たりは強い 安倍改造内閣の目玉の一人であった小渕経産大臣が政治団体の不透明な収支を巡る問題で、辞任しました。内容を聞く限り、大臣失格は当然であります。 しかし、その一方、小渕前大臣は、「原発推進」を明言し、九州の川内原発などの再稼働を念頭に置いていたと言われています。 報道によると、さる11/8(土)、鹿児島県の伊藤知事は、震災以降初めて、原発の立地県として川内原発の再稼働に同意しました。 さて、2012年10月に行われた衆院鹿児島3区補選では、幸福実現党公認の松澤力候補だけが、川内原発再稼働を訴えました。当時は自民党候補ですら再稼働の主張ができなかった事を考えると、この先見性には大きな評価を受けるべきではないでしょうか。 マスコミでは、まだ原発推進派と目される政治勢力に対する風当たりは強いものの、現実は政府も再稼働への方向をはっきりと示しています。 そうした意味では、日本のさらなる繁栄の為に、今回の小渕前経産大臣のスキャンダルで、原発推進の動きが止まってしまうことを懸念するものです。 ◆日本で誤解されているドイツの「エネルギー革命」 よく、「脱原発派」が引き合いに出すのが、ドイツの原発政策です。元々ドイツでは、チェルノブイリの原発事故以来、放射線に対する恐怖が強く、自然エネルギーの研究も進んでいた地域ではありました。 2000年代のシュレーダー政権の時から、脱原発の方向は示されていましたが、2011年の福島原発事故をきっかけとして、メルケル首相が「エネルギー革命」と称する脱原発政策を打ち出すことになりました。概要は以下の通りです。 1、独国内17基の原発のうち、老朽化した8基を停止すると共に、残りの9基についても順次停止していき、2022年までに全廃を目指す。 2、その代替エネルギーとして、太陽光・風力など再生可能エネルギーを推進し、2050年には完全移行を目指す。 3、電力会社に対して、再生可能エネルギーを一定の固定価格で買い取ることを義務付けるFIT制度を導入する。 これらの政策は、当初、環境保全推進の立場から、好意的な反応があり、「日本もドイツに学べ」という論調が強まりました。 しかし、日本で誤解されている事は、ドイツでの原子力発電は暫時減らしていくという事で、現在も稼働しているという事です。 また、エネルギー政策の柱として掲げた、再生可能エネルギーは安定的な供給ができず、ドイツ政府は、石炭を中心とする火力発電を中心に行うことになり、現在はドイツの数か所で新規に「火力発電所」の建設が急ピッチで進んでいるのです。 以上の結果、2013年のドイツにおけるエネルギー割合の暫定値は、以下のようになっています。 原子力 15% 石炭 20% 褐炭 25% 再生可能エネ 24% 天然ガス 10% その他 6% 少なくとも、ドイツは、まだ原発稼働中で、日本の即時停止とした対応が、いかに極端なものであるかが分かります。 次回、ドイツの電力事情にもう少しメスを入れ、日本が学ぶべき教訓を明らかにします。(次回は、明日配信) これ以上、消費税をあげてはならない 2014.10.08 文/千葉県本部 副代表 古川裕三 ◆2回目の消費税上げを目論む政府 国会では、10月7日から参議院予算委員会で質疑が始まり、安倍首相は来年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げを見送った場合、子育て支援などの社会保障の充実に充てる予算が減ることになると〝脅し“をかけました。 ただ、客観的に現状の日本の経済環境を分析すると、とても消費税を上げられる状況にはありません。 四月から始まった消費税率8%の影響で4~6月期の実質GDPは、増税前の駆け込み需要の反動減もあって年率換算でマイナス7.1%でしたが、これに加えて今は円安による原材料費の高騰による物価上昇、さらには、原発が十分に再稼働していないがために電力料金も値上げされ、「値上げのトリプルパンチ」が企業、家計を圧迫しています。 こうした状況であるにも関わらず、政府は、賃上げを企業に要求しています。この厳しい環境下で賃上げするには、従業員を減らすしか生き残る方法はなくなります。これは政府が決めることではなく、個々の企業が決めることですから、統制経済に入っているといえます。 ◆日本はもう「輸出立国」ではない 円安であれば当然輸出産業は儲かるわけですが、昔と違い、GDPに占める輸出の割合は全体の1割程度であり、全体の6割が消費であることをみれば、日本はかつての高度成長期のような輸出で稼ぐ国家ではありません。 日本経済のカギは、国内における個人の消費をいかに活発化させるかにかかっています。 しかしながら現状は、述べてきたように輸入品の値上げ、消費増税による値上げ、電気料金の値上げ、そして給料は上がらないということで、私たちの生活実感はますます厳しいものになっています。 ◆政府主導の「補助金漬けバラマキ経済」は計画経済 先月、第二次安倍改造内閣が発足し、新たに、地方創生本部をおきましが、復興庁との整合はとれるのでしょうか。 結局は選挙対策のバラマキを行うようになるのではないかと予想されます。予算をどこがいくらどのように使うかという役所型の経済は本質的には計画経済と同義であり、一時しのぎにしかなりません。 ◆これ以上、消費税をあげてはならない 持てる者から多くとり、再分配するという政府主導の経済ではなく、民間企業の活性化と消費の活発化を促すためには、民間の活力を削いでいる阻害要因を体系的に廃棄することから始めなければなりません。 それには、まず、景気の先行きを暗くしている最大要因である消費税について、「もう上げない」と宣言して国民に安心感を与え、プラスのアナウンス効果を出すことですし、すみやかに原発を再稼働させて電力供給の安定化させること、そして、海外に逃げている工場を日本に取り戻し、「日本人の雇用を取り戻す」ことが大事です。 消費増税によるこれ以上の景気後退は食い止めなければなりません。 参考文献:『希望の経済学入門』大川隆法著 日露パイプラインで、エネルギー安全保障を盤石にせよ 2014.10.06 文/HS政経塾3期生 幸福実現党新潟県本部副代表 横井 基至 ◆インド洋が中国の海に 中国のエネルギー戦略として、中東やアフリカ方面から原油や天然ガスを供給するために、インド洋のシーレーンを確保しようとする動きが活発化しています。 先月9月22日にアデン湾の海賊活動に参加している中国海軍ミサイル駆逐艦「長春」とミサイルフリゲート「常州」が、イランのバンダル・アッバース軍港に初めて寄港し、両国が友好関係ならびに両海軍の協力関係の進展を強調していることから、利益を共有している両国による対米戦略での「布石」と報じられています。(ロイター電子版 2014.9.24) さかのぼること2011年12月、インド洋上の島国セーシェルによる、中国海軍基地の誘致は現在も継続中で、中国も前向きな姿勢を示しており、実現されれば中国にとっては初の公式な海外軍事基地としてインド洋での足場が誕生することになります。 また、日本人にも海外旅行先として人気が高いモルジブについては、インド海軍が潜水艦基地をモルジブに建設しようと政府間で交渉中でしたが、先月中旬に中国が割り込むかたちで、習近平国家主席がモルジブを訪問し、モルジブ大統領と首脳会談を行い、空港や港湾等の整備や観光産業の振興などを中心とする大々的な支援を約束しました。 以上の計画が実現すれば、インド洋周辺の中国海軍拠点はなんと8個も存在することとなり、それに対しての米海軍の拠点は3か所と、中国海軍の存在感は高まる一方です。 出典:JBPRESS 中国海軍艦艇がイランに初寄港、インド洋沿岸に着々と戦略拠点を確保 米海軍もはや対処できず(北村淳) ◆エネルギー輸入のリスク分散を 中国はシーレーンを手中に収めるのみならず、イラン、パキスタン、ミャンマーから地上パイプラインによってエネルギー安全保障を強化しています。 しかし、日本には、海上輸送だけが唯一の「生命線」となっているため、インド洋、南シナ海のシーレーンを中国に抑えられてしまったら、日本は中国に対し白旗を上げざるをえないのが現状です。 アメリカ海軍に依存したシーレーン防衛から、自国のエネルギーは自ら守る精神のもと、関係各国と協力してシーレーン防衛を行うと同時に、エネルギー安全保障の転換として石油・ガスパイプラインによる分散供給が不可欠です。 ◆ 日露パイプライン建設を急げ サハリンガス田から天然ガスパイプラインを敷く計画があり、それはサハリン南端から北海道の北端まで、わずか43キロメートルの海底の工事で済み、あとは関東圏まで地上にパイプライン施設するという計画です。このパイプラインで、年間輸送量は200万立方メートル、国内天然ガス需要の17%をまかなえます。 また、ウラジオストクから新潟を経由して仙台と関東圏に天然ガスを供給する計画もあります。すでに国内の両方のパイプラインは稼働していることから、ウラジオストクから新潟にパイプラインを施設することで、船舶輸送によるLNGの輸入額高騰に悩まされることなく安く輸入することができます。 日本海側の各県には同様の計画があり、まさにパイプライン誘致合戦が繰り広げられています。 プーチン大統領は「パイプラインなどの輸送インフラを高度に発達させることにより、広大な地域に広がるロシアの特殊性を逆に競争力へ転換させ得る」とし、現在稼働している東シベリアパイプラインについても「ロシア極東のインフラが持つ可能性を飛躍的に高める」としてアジア市場の獲得という明確な戦略を掲げ、同時に極東地域に対する日本からの投資を積極的に呼び込んでいます。 ◆国としてエネルギー安全保障戦略を明確にせよ パイプラインの施設の問題点に漁業補償の問題があります。技術的な解決を追求すると同時に、国家のエネルギー事情に関わる問題ですので、国富流出阻止のためにも政府の主導が必要です。 同時に、民間企業から資金と技術を呼び込むことで、日本経済の成長戦略の一つとして目玉事業になることは間違いありません。 日本政府は早急にロシアとの関係を回復させ、信頼関係を築き、「エネルギーを政治利用しない」意思を再確認し、早急に日露パイプラインの建設を開始するべきであると考えます。 市場原理に立脚しない再生エネルギー固定価格買取制度(FIT)のほころび 2014.10.05 文/幸福実現党岐阜県本部政調会長 加納有輝彦 ◆全量買い取りが困難となった電力各社 太陽光など再生可能エネルギーでつくった電気について、電力会社が買い取りを中断する動きが広がっています。 九州電力が9月下旬から、発電事業者との新規契約を保留しているほか、北海道、東北、四国、沖縄電力4社も当面保留すると発表しました。 電力会社は保留の理由として、申請通り受け入れると安定供給に支障をきたすと説明しています。 太陽光は天候に左右され、晴れた日の昼間に発電量がピークになります。これをすべて受け入れると各社の送電網の容量を超え、周波数が変動して工場の操業などに悪影響が出る恐れがあるとしています。(日経10/3) 九州電力の瓜生道明社長は9月30日の記者会見で、「安定供給のためには、保留(制限)せざるを得ない。苦渋の決断だ」と述べました。 ただし、一般家庭からの買い取りは沖縄電力を除き従来通り継続します。 2012年に施行された再生可能エネルギー特措法は、電力会社に全量の買い取りを義務付けているのに、なぜ中断できるのでしょうか。 それは当該法律に「電気の円滑な供給の確保に支障が生じるおそれがあるとき」は受け入れを中止できると例外規定あり、各社はこれを断る理由にしています。 ◆再生エネルギー買い取り負担額が4倍以上に 経産省は30日に開いた審議会で、電力各社の受け入れ可能量を検証する有識者会議を10月中に設置することを決めました。年内にも各社の受け入れ可能量を算定し、余力がある場合は新規受け入れを要請します。(毎日9/30) また、再生可能エネルギーを用いる発電設備がすべて運転を始めると、FITに基づく電力利用者の負担額が一般家庭で現状の月額225円から935円と現在の4倍以上に増える試算を公表しました。(日刊工業10/1) 経産省は再生エネルギー設備の認定量に上限を設ける総量規制や、買い取り価格の算定方法の見直しなどを行う方向で検討に入りました。 ◆このような事態になることは分かっていたこと 太陽光など再生可能エネルギーによる電力の受け入れを制限している九州電力は30日、制限を発表した9月24日から26日までの3日間に、送電線接続の申請をしている再エネ事業者らから計約6000件の問い合わせがあったことを明らかにしました。制限内容のほか、自社が対象になるかどうかの確認が多かったといいます。(読売10/1) このように多くの民間事業者が事業計画の変更を余儀なくされる事態に、経産省、電力会社の責任を問う声も一部マスコミ等から上がってまいりました。 一方で、このような事態になることは、容易に想定できたとする専門家も少なくありません。 ◆震災後の空気の中で全ては決定された・・・ 菅首相(当時)は、東日本大震災、福島第一原発の事故を経て、自らの責任を反省する事より、反原発・脱原発を政権延命のための千載一遇の旗印としました。 一国の総理というより、まるで一市民活動家の風体で喜々として推進した菅首相(当時)のFIT構想、それを計画性なしに大賛成した一部マスコミが、今になって経産省、電力会社の責任を問う事は許されないと思います。 一部の参入事業者が巨額の利益を得る一方で、一般家庭で4倍以上に跳ね上がる可能性のあるFITに関る電気料金負担は、消費増税、円安と相まって、家計を圧迫し消費活動を鈍らせる要因となります。 また、中小企業にとってもこれ以上の電気料金負担増は、企業存亡に関る事態になってまいります。 一刻も早く、政府は、FITに関る電気料金負担を減額し、安全と認められた原発の再稼働を主導し、電気料金の安定化を図るべきです。 東電悪玉論を検証する 2014.09.21 文/岐阜県本部政調会長 加納有輝彦 ◆朝日新聞の化けの皮? 朝日新聞の誤報記事の撤回、謝罪に端を発し、喧々囂々たる非難が渦巻いています。 朝日新聞側は言い訳に終始し、あたり障りのないチェック体制の甘さ等に原因を求めていますが、大方の批判の論調は、朝日が日本をおとしめるために、ある事実は取り上げ、ある事実は捨象し、恣意的に事実を捻じ曲げ、捏造したのだと見ています。 とりわけ、福島第一原発吉田昌郎所長(故人)の命令に違反し、9割の所員が現場から撤退したという「吉田調書スクープ」に関しては、後に公開された「吉田調書」を精読した上で、あのような記事が書けるという事は、意図的に「日本をおとしめる」という目的なくしてあり得ないと識者は口を揃えます。 NHK経営委員の百田尚樹氏は、九州「正論」懇話会(9/20)の席上、「(朝日新聞が)『検証した結果、誤っていた』という説明は大嘘で、政府が吉田調書の公開に踏み切らなければ、絶対に黙っていた。公開されたら嘘がばれるので、慌てて謝った」との見方を示しました。 ◆東電悪玉論という空気 特に、福島第一原発事故発生後、東電責任論が追及され、その他の電力会社に対しても厳しい視線が向けられることになりました。 東電悪玉論の空気が日本に醸成されていたと言っても過言ではありません。このような空気の中で、政治家からも感情的な発言もしばしば見られました。 例えば、自民党河野太郎衆議院議員は、昨年末自身のブログで「経産省によるボッタクリ」と題して、2012年から始まった再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度で、私たち消費者の電気料金に上乗せされている再エネ賦課金のうち1000億円以上が、そのまま電力会社の懐に入っている!すなわちボッタクリと批判しました。 これに関し、識者は電力事業者が私腹を肥やしているわけでもなんでもないと理論的に反論しています。 (再エネ全量固定価格買取制度の回避可能費用をめぐる迷走http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4206) この議論の中で注目すべきは、電力会社が、原価が上昇すれば電気料金上昇につながると指摘した事に関し、河野氏は、以下のように指摘します。 例えば「トヨタが、原価が上がったから当然に自動車の販売価格が上がります、というだろうか。モノの値段が市場価格で決まっているマーケットでは、原価が上昇したからといって、当然には価格は上がらない。電力会社は、まず、水膨れしたコストを削らなくてはならない」と電力会社のさらなる経営努力を要求していることです。 ◆河野太郎氏の矛盾 河野氏がこれを言うのであれば、消費増税により仕入れ価格が上昇し、原価が上昇したので小売価格を上げますという企業に対しても、消費増税も価格に転嫁せず経営努力で吸収せよ、と主張しなければ辻褄が合いません。 なぜなら、電力会社は、再生エネルギーに関しては、全量固定価格で買い取ることが法律で義務付けられており、在庫調整できる消費税より厳しい条件となっているからです。仕入れを減らすということも出来ないわけです。 消費税に関しては、政府は、「転嫁対策特別措置法」を成立させ、消費税の転嫁、すなわち値上げを推奨サポートしているのです。 消費税よりある意味強制力の強い、「再生エネルギー特別措置法」においても、電力会社に対して、原価上昇に見合った電気代値上げを推奨する立場になければ辻褄が合いません。 そこには、東電悪玉論という空気の中で、河野氏の「ボッタクリ」発言になっている面も否めないと思います。この他、河野氏は東電に対し、「東電の嫌がらせ」「東電の暴挙」という言葉を使って批判を続けています。 ◆空気に支配されないための勇気 電力会社に対する一定の批判の正当性を全て否定するものではありません。しかし、東電悪玉論が支配していた中で、幸福実現党大川隆法総裁は、「東電こそ東日本大震災の最大の被害者であるとも言える」と一定の文脈の中で発言されました。 多くの優秀な人材が東電を離れていった中で、この大川総裁の言葉に支えられ、東電に踏みとどまっている方も実際に存じ上げております。 日本をおとしめることを目的とした朝日新聞が、また東電悪玉論の発信源の一つであったことを振り返れば、私たちは空気に支配されない「勇気」を持つことが大事であると認識されます。 どうなる?スコットランド独立を問う住民投票~日本は何を学ぶべきか 2014.09.18 文/HS政経塾部長 兼 政務本部部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ ◆本日発表、スコットランド住民投票の結果 スコットランドの独立を問う住民投票が始まっています。開票結果は、本日の午後3時頃までに判明する予定です。果たしてどのような結果となるのでしょうか? 8月以降、独立賛成側が支持を伸ばし続け、今や世界中がその結果に注目しています。スコットランドの主要な三つの世論調査(16日時点)では、反対が4ポイントリードしていますが、約1割の態度未定者があり、依然として賛成と反対が拮抗しています(9/18東京、9/18毎日)。 スコットランドの独立側が勝った場合、2016年3月までに独立への具体的なプランを協議していくことになりますが、確かな見通しはあるのでしょうか。 ◆スコットランドの独立の厳しい見通し 独立を選択した場合、その道は険しいものとなりそうです。4つのポイントを挙げたいと思います。 1)使用する通貨が決まっていない 独立した場合に、どの通貨を使用するのかが決まっていません。独立推進派は、ポンドを使用できる通貨同盟を提案していますが、今のところイギリス政府は反対しています。したがって、独自通貨にするか、ユーロを使用するかの選択をすることになりますが、いずれも道のりは簡単ではありません。 ◇独自通貨導入の場合 通貨の信用を保つことは簡単なことではありません。当面は十分な外貨準備が不可欠ですが、スコットランドが独立を決めた場合、大手の金融機関は、本社をイギリスに移すことを宣言しており、大規模な資金流出が予想されます。 ちなみに、大規模な資金流出によって、通貨が下落してあっという間に国の財政破綻に陥ったことは、かつてアルゼンチンやアイルランドでも起きたことです。 ◇ユーロ導入の場合 ユーロを使用するとした場合は、自分で金融政策をおこなうことができません。 北海油田の収入に頼ろうとしていることからも、これといって経済を牽引する産業がスコットランドにはないので、厳しい財政規律を課せられて、経済が停滞する可能性は高いといえます。 2)債務の利率が上がる 財政面では、政府債務をイギリスとスコットランドで分け合うことになると言われています(9/18毎日8面)。独立したスコットランドへの信用が高まることは考えにくく、債務の利率が上がり、利払い費が上がり、想定よりも社会保障に資金が回らない可能性もあります。 3)当てにしすぎるのは危ない北海油田の収入 北海油田の収入を、財政再建に当てようと考えているようですが、「油田埋蔵量を大幅に水増しして見積もっている」という指摘もあります。 仮に油田埋蔵量が豊富にあったとしても、シェールガスの台頭や、メタンハイドレードの開発も進んでおり、将来的に油田収入がどうなるかは不透明です。 資源国からの収入への過度な依存から脱却しようとしているのがトレンドでもあるので、この点から見ても、油田への過度な期待は危険ではないでしょうか。 4)安全保障上の不透明な見通し スコットランドには、イギリス海軍の核戦力が配備されており、独立側は2020年までに撤去すると主張しています。 これはイギリスだけの問題ではなく、北大西洋条約機構(NATO)の安全保障にも影響を与える議論となります。独立派は、NATOへの加盟を想定していますが、加盟そのものがスムーズに進まない可能性があります。 ◆日本にとっての影響は? 当然のことながら、イギリスは経済面でも安全保障面でも日本にとって大切な国です。 2012年4月の日英の共同声明では、日本の安保理常任理事国入りを支持することを表明していますし、今年の5月の安倍首相の訪英でも防衛装備品の共同開発の推進や、安全保障の協力推進などを確認しています。 日本がとやかく言うべきことではないかもしれませんが、スコットランドが独立することで、イギリスの国際的なプレゼンスは下がることは、日本にとっては望ましいとはいえないと思います。 ◇イギリスにも、経済活性化への大胆な構想が不可欠 スコットランドは、伝統的に労働党の支持基盤であり、北欧型の高福祉社会を志向する傾向がありましたが、不満が高まっているのも、経済が停滞している点に原因があります。 キャメロン首相は、独立をしない場合は、スコットランドに対して大幅な権限移譲をすることを提案していますが、それだけではなく、イギリス全体の経済成長を促進する構想が必要ではないでしょうか。少なくとも、金融サービス以外の産業を育てることを早急に検討するべきです。 スコットランドは、経済学の祖アダム・スミスを輩出している地でもあります。 イギリスが、ピンチをチャンスに変えて、21世紀の国富論を実現する方向へと舵を切ることを期待したいと思います。 日本としては、イギリスの苦しみを教訓として、新産業の構想や法人税を大幅減税(小出しではなく)するなどの経済成長政策を推し進めるべきではないでしょうか。 すべてを表示する « Previous 1 … 7 8 9 10 11 … 17 Next »