Home/ 経済 経済 消費税は「不安定財源」――「欠陥」消費税増税法案を廃案にせよ! 2012.08.03 野田首相は8月3日、消費増税法案について10日の参院採決を目指すよう指示しました。お盆前採決を求める自民党側に配慮した形です。(8/3 読売「消費増税:参院採決10日を指示 首相、輿石幹事長と会談」) 政局の都合によって、参議院での十分な審議もなされないまま、国家の衰退をもたらす消費税増税を早期採決することは言語道断です。 そもそも、消費税増税法案の正式名称は「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案」ですが、本当に消費税は「安定財源」と言えるのでしょうか? 財務省や財務省と一体となったマスコミが「安定財源」と称賛してやまない消費税がいかに「不安定財源」であるか。あるデータが発表されました。 7月30日、今年3月までの1年間で、国税の滞納額は6073億円となったことを国税庁が発表しましたが、内、消費税は3220億円と全体の53%を占め、これまでで最高の割合になりました。(7/30 NHK「国税滞納 消費税が50%超に」) 消費税の国税に占める割合は23.0%(平成24年度予算)にもかかわらず、新規滞納額が国税全体の半分を超えており、極めて異常です。 なぜ、他の税金と比べて、消費税の滞納が、これ程までも突出しているのでしょうか? それは「消費税」という納税システム自体に根本的な欠陥があるからです。 消費税は、商品を販売した業者が、商品の代金と一緒に消費税をいったん預かり、年度末にまとめて国に納める仕組みです。 国税庁は、経営の苦しい業者が結果として預かった消費税を運転資金に回すなどして、滞納するケースが増えたためではないかと分析しています(同上)。しかし、それだけが原因ではありません。 立場の弱い中小・零細小売店が、厳しい価格競争にさらされ、消費税分を売値に上乗せできない場合が多くあります。その場合、中小・零細小売店は「もらってもいない消費税」が課され、自腹を割いて納税しています。 東京・新橋のある居酒屋経営者は、大手チェーンとの激しい競争にさらされ、消費税分を価格に反映できず、「毎回かろうじて消費税を払っている状況で、今後、税率が引き上げられるようなことがあっても価格に上乗せできず、経営が続けられないかもしれない。厳しいのひと言だ」と苦悩を語っています。(同上) 中小企業庁が2002年に実施した調査によると、売上げ規模が小さくなればなるほど、「価格に消費税を転嫁できない」と答える事業者の比率が高くなっています(売上高1000万円以下で「完全な転嫁はできない」57.3%)。 その結果、消費税分を自らの資金から補填すべく、資金繰りに苦しんだり、泣く泣く滞納する業者が増えています。実際、東京商工リサーチによると、消費税率の引き上げ時期に、倒産件数が目立って増えています。 1996年に14,834件だった倒産が、消費税を増税した1997年には16,464件、1998年には歴代5位の18,988件に急増しており、現在、「消費税増税倒産」の増加が懸念されています。(6/27 東京新聞「消費税は取りはぐれないか?延滞額は不動の1位」) また、倒産の増加は失業者の増大、そして自殺者の増大を招きます。消費税増税後の1998年の自殺者数は31,755人となり、前年の23,494人の35.2%も増加し、史上初めて3万人を上回りました。 わずか2%の消費増税でも、日本社会はこれだけのダメージを受けたのです。ましてや消費税5%アップの暴挙は壊滅的ダメージをもたらします。 消費税を増税しても、結果として滞納が増えるのみであり、その結果、倒産、失業、自殺者を激増させ、「不幸の拡大総生産」を生み出すことを野田首相は知るべきです。 幸福実現党は、国民を不幸にする「消費税増税法案」成立を断固阻止すべく、全国各地で正論を訴え続けております!皆さまのご指導ご支援、何卒よろしくお願い申し上げます。(文責・黒川白雲) ヒッグス粒子の夢――未来科学を牽引する国際学術研究都市建設を東北に! 2012.07.30 今年7月4日、自然科学の研究者たちを歓喜させるニュースが流れました。 現代素粒子物理学で最大の謎と言われていた「ヒッグス粒子」とみられる新粒子が発見されたと、欧州合同原子核研究機構(CERN)が発表したことです。 「ヒッグス粒子」とは、現代素粒子物理学の「標準理論」で考えられた17種の粒子の内、未発見だった最後の一つで、他の粒子に質量を与える働きをします。 宇宙の始まりであるビッグバン直後に発生した素粒子に質量を持たせ、それから物質が成立し、星や生命が生まれたと考えられており、通称「神の粒子」と呼ばれています。 今回の発見については、今後、更に研究データを検証して年内にも結論が出る見通しですが、これにより現代物理の「標準理論」が完成、物理学の歴史に残る大発見になると言われています。 今回、新粒子発見に用いられたのは、スイス・ジュネーブ郊外のCERNにある世界最強の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)です。 こうした加速器と呼ばれる実験機器で、粒子を光速に近い速さまで加速し、衝突させることで生まれる様々な素粒子を観測するものです。 実は、こうした素粒子発見の歴史は「いかに巨大な加速器を作って実験するか」という競争でもありました。 今回のヒッグス粒子らしき新粒子発見は、次の科学の発展を約束する大発見ですが、同時に、新しい科学の進歩の出発点ともなります。 なぜなら、この「ヒッグス粒子」で完成する「標準理論」によって解明できるのは、この宇宙全体の物質のわずか4%で、残り96%は依然としてよくわからないからです。 その意味で、今後は次世代の加速器建設(国際リニアコライダー)をどこが誘致して作るのかが世界中の物理学者の重大な関心事になっています。 実は被災地・東北の人達も、次世代の加速器建設について期待を持って受け止めています。 数年前から東北の岩手県を中心に、国際リニアコライダー(ILC)を誘致しようという動きがあります。(7/5 岩手日報「ILC本県誘致に光 ヒッグス粒子発見」⇒http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20120705_2) そもそも、2009年より、東北経済連合会、東北大など産学官31団体が「東北加速器基礎科学研究会」を発足し、次世代加速器建設誘致を推進しようとしていました。 昨年の震災後、こうした施設を中心にして、岩手・東北に国際的な学術研究都市を創り、「復興の象徴」としようという動きが活発化しました。 実際、こうした誘致が成功した場合、野村総研の試算によれば、経済効果は5兆円規模とも試算され、ILC建設段階から運用段階に至る30年間で、約25万人分の雇用機会が創出される予測が立てられています(ILCプロジェクト・ホームページより)。 また、ILC周辺には長期的に関連産業の企業立地が促進され、先端科学技術産業の集積が加速、日本の再生に向けた次世代の未来産業の土台作りにもなります。 さらには、アジア地域にこうした国際研究所が建設されることは、中国、韓国、インドやベトナム、フィリピンをはじめとしたアジアの若い研究者にとって大きな飛躍の機会となりますし、宗教や人種を超えて世界中の人が集う世界的な科学拠点となります。 まさに東北の復興の象徴としても新たな文明発信の地になります。 現在は地元での誘致運動が活性化してきておりますが、まだ国として正式な誘致判断がなされていません。東北の復興はもちろん、日本全体として世界をリードする科学技術や未来産業振興のためにも、積極的に取り組むべきだと考えます。 幸福実現党は、日本の繁栄は日本のためだけでなく、世界の繁栄のためでもあると考え、世界をリードする科学技術の発展を積極的に推進して参ります。 東北復興の視点も取り入れつつ、基礎科学の分野においても、未来産業の基盤づくりに取り組んで参ります。(文責・宮城県本部第4区支部長 村上よしあき) 新財源創出を図る地方自治体――国家は景気回復で支援せよ 2012.07.28 参議院において「社会保障と税の一体改革」の審議がされ、ただひたすら「増税」だけが押し進められています。 しかし、消費増税だけが押し進められたとしても、無駄の削減をすることも無く、経済成長を目指すことも無く、社会保障の拡充もできず、財政再建の道が開かれることはありません。 一方、地方自治体においては、厳しい財政状況の中で、「歳出削減策」に加えて、「新たな財源創出」に取り組むためのの努力が重ねられています。 公益財団法人・東京市町村自治調査会は4月2日、『新財源創出策ハンドブック~新たな財源の創出に関する事例調査~』を発刊し、自治体経営の智慧の共有を支援しています。⇒http://www.tama-100.or.jp/contents_detail.php?co=ser&frmId=69 ハンドブックでは「新たな財源創出策」の内、(1)広告収入、(2)使用料の見直し、(3)寄付、(4)資産の処分・利活用、(5)知的財産の活用の5項目に着目し、調査・分析しています。 国政では「財源を増やす=増税」となっていますが、地方自治体では「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」などの限られたの経営資源を活用して、少しでも新しい価値を創造する挑戦が行われており、増税によらない新財源創出努力が始まっています。 新財源創出で先行する横浜市はホームページのバナー広告や、タイヤホイール広告、封筒類への広告掲載、職員給与明細書の裏面への広告など様々な広告事業で新財源創出努力を図り、広告料収入が年間約7.3億円、広告掲載による経費節減効果が年間約5200万円となっています(横浜市平成21年度決算)。 また、地方自治の新財源として知られているものに「命名権(ネーミングライツ)」があります。 有名なものとして、横浜市が「横浜国際総合競技場」の命名権を日産自動車と契約し、「日産スタジアム」として使用することで、2010年から2012年まで4億5千万円(単年1億5千万円)の「広告収入」を得ており、同競技場の大きな財源となっています。 横浜市は2004年に日産自動車と5年間で総額23億5,000万円の条件で同競技場の命名権を売却し、年間4億円にのぼる維持費を解消することができました。 その後、2010年の新規契約において、日産自動車は「厳しい経営環境により、現在の契約金額では、契約を更新できない」と発表。締切りまでに応募した団体・企業がなかった為、年間1億5千万円に引き下げて、日産自動車の命名権が更新される結果となりました。 このように、長引く不況の影響により、費用対効果を重視する企業から自治体の各施策は厳しい選別にさらされ、ネーミングライツへの公募急減や契約の非更新に見られるように、「新財源の創出」の実現へのハードルは高まっています。 根本的には景気回復なくしては、地方自治体レベルでの新財源創出も不安定になることが分かります。 川端達夫総務相が7月24日の閣議に報告した「平成24年度普通交付税大綱」にも、このことを裏付ける事実が記されています。⇒http://www.soumu.go.jp/main_content/000169060.pdf それによると、2012年度は地方交付税を受け取らなくても財政運営できる「不交付団体」は東京都ほか54市町村と、前年度より4団体減っています。 「不交付団体」は国に頼らなくても自前で財政を運営できる「優等生」ですが、景気の低迷によって「不交付団体」は5年連続減少しています。 「不交付団体」はピークだった1988年度の193自治体から3分の1以下に減少。都道府県と市町村を合わせた12年度の不交付団体は、78年度の48自治体に次いで過去2番目に少なく、全国自治体のわずか3%に過ぎません。(7/24 日経) こうした中、唯一、山梨県忍野村だけは、産業用ロボットメーカー(ファナック)の業績好調を受けて法人関係税収が増えたため、「不交付団体」に転じ、一企業の業績によって地方交付税を必要としない自立した自治体となっております。 幸福実現党は「新産業の育成が、結果として税収を増やす」ことを主張して来ておりますが、象徴的な事例です。 税収の確保は、「民」の力を弱らせる増税では無く、経済成長による税収増しかありません。 社会保障と並んで、自治体の赤字を埋める地方交付税(2012年度の配分総額は約16.4兆円)を圧縮することが財政再建の鍵となっていますが、景気回復は地方自治体レベルでは十分にできません。 国政レベルで、明確に「経済規模を2倍」にすることを掲げ、幸福実現党が示す未来産業振興、交通・都市インフラ投資、金融緩和、減税、規制緩和、行政の効率化等、着実な景気回復と経済成長政策に着手すれば、財政の黒字化は絶対に可能です。 日本には「不屈の力」があります。日本は「国内総生産1000兆円」を目指して、新産業を次々と興し、日本再建を進め、世界経済を牽引する使命を果たすべきです。(文責・小川俊介) 「日の丸半導体」の凋落――「科学技術立国・日本」復活への道 2012.07.27 7月27日、富士通は半導体を生産する主力の三重工場を台湾企業に売却する方向で交渉を始めました。(7/27 日経「富士通、半導体の三重工場を売却 台湾社と交渉 」) 富士通は半導体製造部門を切り離し、ルネサスエレクトロニクス、パナソニックとシステムLSI事業を統合。統合新会社は半導体の設計開発に特化し、生産は外部企業に委託する予定です。 また、7月2日には、アメリカの半導体大手マイクロン・テクノロジーが、日本の半導体大手で、今年2月に会社更生法の適用を申請した「エルピーダメモリ」を買収すると発表しました。 その結果、世界のDRAM(記憶用半導体)業界は、業界首位の韓国のサムスン電子、2位の韓国のSKハイニックス、米マイクロンという3大メーカーが9割を占める状況となりました。(7/4 ロイター) 「エルピーダメモリ」は、経産省が旗振り役となった「国策企業」で、1999年に日立とNECの半導体製造部門が統合され、2003年に三菱電機の当該部門を吸収した日本唯一のDRAM専業メーカーでしたが、今年2月、業績不振を理由に会社更生法を申請していました。 政府は2009年に産活法を初適用してエルピーダに公的資金を投入しましたが、結局、再建に失敗。国費を投入した「日の丸半導体」企業が外資に買収されることは、日本国民として内心忸怩たるものがあります。 同じく7月2日、経営不振に陥っている日本の半導体大手「ルネサスエレクトロニクス」は、国内19半導体工場のうち、11カ所を3年以内に閉鎖や売却して整理する方針を発表。一部工場は世界最大手の台湾TSMCに売却する方針です。(7/2 ロイター) 「ルネサスエレクトロニクス」はNEC、日立製作所、三菱電機の半導体事業を設立母体とし、各地に分散している3社の工場をそのまま引き継ぎ、十分な整理統合を進めて来ませんでした。 1980年代、「日の丸半導体」は世界市場で80%のシェアを席巻し、「世界の工場」と謳われ、世界の半導体市場を制覇した「黄金期」を迎えていました。 1990年、半導体売上高の世界シェアは、NEC、東芝、モトローラ、日立製作所の順で、日本のトップ3社で、世界シェアの約3割を占めていましたが、90年代半ばから、韓国と台湾のメーカーの急速な追い上げを受けました。 現在の半導体トップ3社は、インテル、サムスン電子、テキサスインスツルメントで、この3社で、世界シェアの約3割を占めています。(2011/12/6 EE Times Japan「2011年の世界半導体売上高ランキング」) 政府は1996年から5年毎に「科学技術基本計画」を策定。第一期(1996年~)では政府研究開発投資は5年間で17兆円、第二期(2001年~)では同24兆円、第三期(2006年~)では同25兆円を投下。第四期(2011年~)では同25兆円を投資予定です。⇒http://www.jst.go.jp/tt/pamph/tt20120202-2.pdf 自民党政権時代から、政府は「科学立国・日本」の復活をかけ、1996年から15年間で計66兆円の政府研究開発投資を行って来ました。 年間では防衛費と同じく、GDP1%相当の投資がなされ、半導体分野にも多額の投資がなされて来ましたが、成果は必ずしも出ていません。政府は研究開発の投資対象を再検討すべきです。 2011年に閣議決定された「第4期科学技術基本計画」では「震災からの復興、再生の実現」「グリーンイノベーションの推進」「ライフイノベーションの推進」「科学技術イノベーションの推進に向けたシステム改革 」が柱として掲げられています。⇒http://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/4honbun.pdf しかし、今計画で力点が置かれている「再生可能エネルギー」は、例えば、太陽光パネルでは、安値で世界市場を席巻する中国系企業に太刀打ちすることは容易ではありません。既にドイツやアメリカでも太陽光パネルメーカーが相次いで破産、撤退しています。 グローバル社会の競争の中で日本が生き残る道は、今後とも「科学技術立国」しかありません。 科学技術分野への投資は今後とも積極的に推進すべきですが、投資対象分野は、日本の生き残りを懸け、戦略的重点化(投資対象分野の選択と集中)を図るべきです。 幸福実現党は、交通革命、航空・宇宙産業、防衛産業、ロボット産業等の科学技術で世界をリードする政策を掲げています。 政府も「科学技術イノベーション」を掲げるのであれば、新興国とコスト競争を行なっているような分野にではなく、21世紀の潮流を予測し、「新時代のフロントランナー」となり得る未来産業分野に思い切った戦略的投資をなすべきです。(文責・黒川白雲) 法人税半減と規制緩和で日本の国際競争力を高めよ 2012.07.26 東京都が、外資を誘致する為に総合特区を始動させようとしています。(東京都「国際戦略総合特区 アジアヘッドクォーター特区」) 昨今、日本の国際競争力の低下が非常に懸念されています。ゆえに、この特区構想は早急に実現させるべきだと考えます。 2010年の外国企業による日本投資残高はGDP比で3.9%となっており、先進国平均の30.8%に比べ極めて低く、「投資対象」としての日本の地位の低さが見てとれます。 また、今年の3月に発表された『エコノミスト』誌による都市ランキングを見ると、東京は6位という結果になっています(1位:ニューヨーク、2位:ロンドン、3位:シンガポール、4位:香港・パリ、6位:東京)。 問題は、同じアジア経済圏のシンガポールや香港に、東京が負けているところにあり、国際競争力の強化は差し迫った課題です。(エコノミスト誌「Benchmarking global city competitiveness」) 今回の計画では、都は5年間で外国企業500社を誘致する目標を掲げており、「アジアヘッドクォーター特区」構想と名付けています。 総合特区として指定された対象区域は、六本木周辺、東京駅周辺、日本橋周辺などの計8か所です。これらの区域に、グローバル企業のアジアを統括する本部や研究開発拠点を誘致するというのが基本戦略です。 アジア圏のような高い成長が見込まれている市場には、全世界の企業の注目を集めており、多くの企業が成長機会を求めてこの市場を目指しています。 一般的に、より地域に密着した方が成功の可能性が高くなると考えられており、それぞれの企業はアジア本部や研究・開発拠点をどこかの都市に置こうとしています。 それが「金融・経済センター」と呼ばれる中心都市となっていくため、戦略としては理に適っています。 次に、都の提案や取組について見ると、(1)ビジネス支援、(2)生活環境整備、(3)都市インフラ整備、(4)誘致・ビジネス交流の促進の4点が中心となっています。 (1)ビジネス支援 入国・再入国申請審査等の規制緩和や、法人税の優遇措置です。特に、日本の法人税率は38%と高く、外資誘致に向けて大きな関門となっています。(cf.シンガポール:17%、香港:16.5%) (2)生活環境整備 外国人家族がストレスなく暮らせるためのサポート、教育、医療等の生活インフラの確立です。最も基本的な点としては、「英語」の問題です。 英語教育の充実は勿論必要な課題ですが、英語が普及するまで待つわけにはいかないので、都市政策としての取組も必要です。 例えばシンガポールでは、民間デベロッパー主導で、インターナショナルスクールを核とした街づくりがなされています。 (3)都市インフラ整備 高い防災対応力の実現や、コジェネレーションシステム等による自立・分散型エネルギーネットワークの整備により、安定した企業活動を保証するというものです。 (4)誘致・ビジネス交流の促進 海外への継続的な企業誘致活動や、MICE開催(会議・招待・学会・展示会)によるビジネス交流の促進です。 例えばロンドンでは、来る五輪開催に合わせて、各国の閣僚や企業の最高経営責任者ら約200人が参加する世界投資会議の開催や、外国企業と英国企業の商談会を3500件予定するなど、官民挙げて外資を呼び込む姿勢を徹底しています。 以上のことを実現するためには国の協力も必要なのですが、ここに「霞が関の壁」と呼ばれる高い壁があります。 都は、誘致に必要な30項目の規制緩和を国に求めています。このうち20項目について国の実務者間で協議した結果、要求が受け入れられたのは、羽田空港にビジネスジェットを連続駐機できる日数の延長など4項目のみでした。 さらに、法人税引き下げについても難航しています。 現在、東京の都市ランキングは6位となっており、シンガポールや香港に抜かれています。加えて、ソウル(20位)、台北(37位)、北京(39位)、上海(43位)が後に控えています。順位はそう高くないように感じるかもしれませんが、大阪(47位)、名古屋(50位)と日本の2大都市が後塵を拝しています。 日本の国際競争力強化は差し迫った課題です。 都が掲げる「アジアヘッドクォーター特区」構想が実現し、500社の外国企業を誘致できれば、雇用創出などにより全国で約2兆3000億円の経済波及効果があると試算されています。 幸福実現党は日本国内に企業を誘致し、国際競争力を高めていくためにも、法人税は速やかに諸外国並みの20%程度に半減すべきだと提言していますが、政治の強力なリーダーシップで減税や規制緩和を断行すべきです。 日本は必ず復活出来ます。敵は国外にもいますが、国内にもいます。一つずつ打ち破っていかねばなりません。 ノーベル経済学者スティグリッツの提言が日本経済に及ぼす影響 2012.07.25 HRPニュースファイルの中でも何度か紹介したことがあるコロンビア大学教授であり、2001年のノーベル経済学者のJ・スティグリッツが最新刊『世界の99%を貧困にする経済』(http://amzn.to/OVkTD8)を発刊しました。 近年話題となったウォールストリート占拠の根源となった「1%」の富裕層と「99%」の貧困層という現象は、同教授の見解に基づいているとも言われています。 同教授は、左翼ではありません。「情報の経済学」と呼ばれる新しい分析手法を開発したケインズ派に分類される学者ですし、市場経済における問題がなければ自由主義はメリットをもたらすことを肯定しています。 その意味で、共和党の保守系やTea Partyのようなリバタリアン=自由主義者とは距離感があるのは事実です。 上記の書籍を含めて、スティグリッツは米国内の所得不平等とグローバリゼーションに対する批判を主に展開しており、米国内に大きな影響を与えています。 同時に、スティグリッツの支持者は全世界にもいるため、彼の提言が全世界に与える効果も無視できません。では、どのような影響力を及ぼすのか。以下のようにまとめてみました。 (1)格差是正とグローバリゼーション批判派を勢いづかせる 同教授は、クリントン政権では大統領経済諮問委員会委員長を務めた後、世界銀行で上級副総裁、主席経済学者として活躍しましたが、米財務省やIMF(国際通貨基金)を痛烈に批判したため、世界銀行の上級副総裁を辞任しています。 同教授が執筆したGlobalization and Its Discontents(邦題:世界不幸にするグローバリズムの正体)では、米国主導の政策提言(緊縮財政や貿易自由化など)がもたらす問題点を指摘しています。 学者であると同時に実際の政策現場での体験だけに、スティグリッツの「告白」は、IMFや世界銀行、米財務省に動揺を与えました。 スティグリッツによれば、先進国と途上国の格差が開いているのは、ワシントンによる一部エリートに原因があるとします。 また、ウォールストリートの金融マンによる法外な報酬は社会正義として許容範囲を超えており、米国は格差是正をするべきであるとします。 08年にノーベル賞を受賞したP・クルーグマンやスティグリッツの同僚で国際的にも知名度の高いJ・サックス教授も同様の批判を展開しています。 このような流れはオバマ大統領と米民主党にとっては追い風になるでしょうが、前回の中間選挙で共和党が躍進して保守勢力が復活していますので、米国内で氏の意見がどこまで反映されるかは定かではありません。 (2)日本への影響とは 同氏の政策提言を日本で応用するに当たって注意が必要なのは以下の二点です。 例えば第一に、日本でも最近は貧困問題が注目されており、所得税の最高税率や相続税率の引き上げが提言されています。 また、資産課税を通じて所得の再分配強化も議論にあがっています。そこで、特に注目に値するのが次の論点です。 スティグリッツは、『世界の99%を貧困にする経済』の中で富裕層の減税は間違いであると論じています。 教授は「トリクルダウン説」を否定します。つまり、富裕層が豊かであれば、そのおこぼれが中間層や低所得層へ滴り落ちる(トリクルダウン)するという考えです。 これは、共和党の中に根強く存在する考え方であり、近年ではTea Partyが強く主張するロジックです。 しかし、同氏はむしろ、公共投資や社会保障関係を手厚くすることによって低所得層や中間層を底上げすることを主張します。 税制面では所得税と法人税の累進性強化、実効性の高い相続税の導入を提案していることを見ても分かる通り、伝統的な米国の自由主義に対するアンチテーゼです。 こうした論点が、日本でも幅を利かす可能性は高く、財務省をはじめとする増税派の理論的根拠になることでしょう。 第二に、米国主導によるグローバリゼーションへの批判は、TPP反対派と通じるものがあります。 実際に、米国による理不尽な要求があるのは事実ですが、それを抑止するためにTPPは参加国全部の合意を取り付ける制度です。 スティグリッツは、グローバリゼーションのメリットを十分に把握しているとはいえ、効率的な資源配分を阻害する原因が、ワシントンのエリートあるとしており、彼らに対する不信感は相当なものです。 ここ数十年のスティグリッツには、過激な体制批判の傾向があります。上記で紹介したメッセージは極めて政治性の強いものです。 日本ではスティグリッツファンが多いだけに、安易に同氏の政策提言が実行される可能性があります(具体的には、増税とTPP反対に使わる可能性が高い)。注) しかしながら、日本には、長年のゼロ成長から脱するためのマクロ経済政策こそ優先的に取り組むべきです。 日本は、日本としてやるべき政策を実行するのみです。同氏の意見は、あくまでも参考意見として研究するのがよいでしょう。(文責:中野雄太) 注)スティグリッツは消費税増税には否定的です。この点は我が党と同じスタンス。 小学生のような答弁を繰り返す安住財務大臣――日本財政はギリシャ化しない! 2012.07.20 18日から参議院の社会保障と税の一体改革特別委員会で、消費税増税について厳しい追及が始まっています。 19日、消費税をめぐる参院の審議で、安住淳財務大臣が新聞の社説を根拠に増税の必要性を訴えました。(7/20 J-CAST 安住財務相「主要新聞社の社説がみんな『消費税上げろ』と言っている」⇒http://www.j-cast.com/2012/07/20140133.html) 野党議員が「現場の為替ディーラーが『今、消費税を上げる必要はない』と言っている。そのことが、なぜ軽んじられるのか」と安住氏を追及したのに対して、 安住大臣は「じゃあ逆に、日本の主要新聞社の社説を含めて論評は、なぜみんな『消費税上げろ』と言うのか。そういう世論は大きいのではないか」 「新聞社だって、商売を考えたら反対(主張)でやった方が売れるかも知れないのに、しっかりそこは消費税上げて(民主、自民、公明)3党でやるべきだという社説がある」と反論しました。 結局、安住大臣は「新聞の社説に書いてあるから」という小学生のような回答しかできませんでした。「無能大臣、ここに極まれり」です。 財務大臣自身が、財務省と癒着している大新聞の社説を信じて増税しようとしているのですから、全てが「茶番」だと言えます。 また、安住大臣は「今回の消費税率の引き上げは第一歩だ。その後、歳出の削減と税収を上げる努力をしていくが、それでも足らない分は、税の負担をどうお願いするか、設計を示さないといけない」と述べ、更なる消費税増税を目論んでいることを漏らしました。(7/20 NHK「財務相“消費税 再増税の検討も”」) 安住大臣は、もはや「財務官僚の言いなりのロボット」であることを自白したようなものです。 安住氏の持論は「(国の借金は)1000兆円を超える。このまま積み上げていけばギリシャのように生活や経済を直撃する」(1/12 記者会見)ですが、これは菅直人氏や野田首相が財務相時代に財務官僚に洗脳されたのと同じロジックです。 実際には、ギリシャ危機は付加価値税(日本の消費税に相当)増税とバラマキ政策が元凶です。(6/21 フジサンケイビジネスアイ「ギリシャ化の始まりを告げる『消費増税採決』」⇒http://utun.jp/HG8) ギリシャは、付加価値税率を引き上げては年金など社会保障支出を増やし、バラマキ政策を行ってきました。その結果、2006年の増税以降、プラスだった経済成長率がマイナスに転じ、対外債務を増やしています。 また、イタリアが昨年9月に付加価値税の税率を引き上げて以降、同税の受取額は減少。4月末までの1年間の徴収額は2006年以降で最低に落ち込みました。(6/13 ブルームバーグ「イタリアの増税が裏目に、付加価値税収減少」) 結局、「消費税増税しなければギリシャ化する」のではなく、「消費税増税がギリシャ化を招く」のです。 また、野田首相や安住財務相や財務官僚が言う「財政破綻の危機」も完全な嘘であり、増税のためのロジックに過ぎません。 債券ファンド世界最大手、米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は、日本が将来的に財政破綻する「確率はゼロに近い」とみています。(6/29 ブルームバーグ「PIMCO:財政破綻リスクほぼゼロ、円債に魅力」) ピムコジャパンの正直知哉氏は「政府は徴税権を持っているので、民間部門のバランスシート(資産・負債状況)も合わせて考えるべきだ」と指摘。日本には長年の経常黒字で積み上げた世界最大の対外純資産があるため、「将来的に経常赤字基調になってもバッファーがある」と説明しています。(同上) 世界的なベストセラーとなった『国家は破綻する』(ラインハート・ロゴフ著、日経BP社、2011年)によれば、いわゆる「デフォルト」や「ソブリンリスク」は「対外債務(外国に対する(多くは)外貨建ての借金)」が原因となって起こることが示されています。 日本は「財政赤字(大半が対内債務)」はあっても「対外債務国」ではなく、むしろ日本は21年連続で世界最大の対外純資産を持つ「債権大国」です。(5/22 読売「日本の対外純資産21年連続世界一」) 一方、ギリシャの対外債務は約4000億ユーロ(約41兆円)で、同国政府や銀行、企業が返済できるのはその一部のみです。(5/16 ブルームバーグ) すなわち、「財政赤字」ではなく、「対外債務」がギリシャ問題の本質であるにもかかわらず、「財政赤字はギリシャ化を招く。早急に増税すべき」と主張している政府やマスコミのロジックは間違っています。 日本の財政は改善の必要はありますが、危機的状況からは遠く、早急にギリシャ化することはあり得ません。今は増税ではなく、デフレ脱却、景気回復を優先すべきです。 デフレを深刻化させ、景気をどん底に突き落とす消費税増税は、ギリシャやイタリアのように、より一層、財政赤字を深刻化させる「最悪の選択」です。共に、消費税増税法案を廃案に追い込んで参りましょう!(文責・黒川白雲) 日米の「財政危機」に対する意識の違い――増税ではなく景気回復を! 2012.07.19 アメリカでは連邦政府の赤字と並んで、州政府の赤字も問題となっております。ただし、財政赤字の問題の取り扱われ方が日本とアメリカでは全く異なります。 アメリカでは財政危機の問題として挙げられているのが、年金と医療です。 7月18日付のフィナンシャル・タイムズ3面では、年金で約3兆ドル(約240兆円)、退職者向けの医療費で約1兆ドル(約80兆円)の赤字が発生していると出ています。 また、景気後退によって税収が減っていることが財政赤字の原因であると指摘しています。(tax revenues fell sharply as a result of the economic slump.) 日本でも、年金の積立金不足は450兆円、年金の支給額は2009年以降50兆円を超え、医療費も30兆円を超えていますが、年金や医療が財政を悪化させているという指摘をマスコミが行うことはあまりありません。 また、「そもそも何故、税収そのものが下がっているのか」ということを問題にする報道機関も皆無です。ほとんどのマスコミが「財政危機だから増税すべき」という単純な論調です。 しかし、日本でも、経済成長によって増税しなくても税収が増えていた時期があったことを忘れてはいけません。実際、過去の税収の推移をみれば、景気の動向と連動していることは一目瞭然です。 まず、景気回復が税収増につながった2003年から2007年の四年間を見てみましょう。2003年から2007年までの四年間、政府の税収は43.3兆円から51兆円にまで緩やかに回復しています。この四年間の経済成長率を見ると1.3%~2%のプラス成長が続いていました。 しかし、2008年のリーマンショックの影響で、GDP成長率はマイナス1%成長を記録。2008年度の税収は前の年から5兆円近く減少しました。 さらに翌年の2009年はGDP成長率がマイナス5%となり、税収はさらに5.4兆円減少し、38兆円にまで落ち込みました。(税収の推移⇒http://utun.jp/HG3、実質経済成長率の推移⇒http://utun.jp/HGm) 2007年に51兆円あった税収が、たった2年間で38兆円にまで減少してしまったのです。このような経過を見れば、税収を増やすためには景気の回復が一番であることが分かります。 しかし、政府は景気回復にはまったく取り組まず、増税ばかりを議論しています。それに対して、幸福実現党の政策は、まず初めに景気回復を取り上げています。 それでは、どのような政策で景気回復を実現すれば良いのでしょうか?経済学では当たり前のことですが、「金融緩和」と「公共投資」です。 金融緩和により、長年続いたデフレから脱却し、政府の投資によってGDPを増やしていくことが重要です。 デフレから脱却すれば、物の値段も上がりますが、給与も増えます。今年よりも来年、来年よりも再来年給与が増えていくことが分かれば、安心してお金を使うことができます。 さらに、デフレから脱却をするためには日本銀行が国債の買い入れを増やす必要があります。政府は日銀から調達した資金で老朽化したインフラを整備し、地震や津波などの災害対策に投資をしていくことができます。 政府がインフラ整備にお金を使えば、道路や橋の補修をした人たちの給与が増え、さらにお金が使われます。政府が投資をすることによって、投資した額以上に国民所得が増えることを「乗数効果」と言います。 最近の実証研究では、戦後の公共投資の乗数は1から1.4程度と言われていますが、筑波大学名誉教授の宍戸俊太郎氏のように、10年間で250兆円規模の公共投資を行った場合、GDPは874兆円に増加するという推計を出している学者もいます。(藤井聡『救国のレジリエンス』p.165) 経済の語源は「経世済民」「国を治め、民を救う」です。 現在、政府が行っている経済政策は「経済」政策の名に値しません。本来の「経済」政策に立ち戻るためにも、増税ではなく景気回復に真正面から取り組むべきです。(文責・HS政経塾一期生 伊藤希望) デフレ脱却だけでは不十分?増税とエネルギー問題が日本経済に及ぼす影響 2012.07.18 今回は、増税とエネルギー問題を題材にしながら、デフレ脱却を再考します。 学習院大学の岩田規久男教授の著書『インフレとデフレ』に従えば、日本経済の1980年から1990年までの10年間の平均インフレ率は2.6%、91年から01年は0.7%、02年から07年は-0.2%、08年から11年は-0.3%となっています。 アメリカやイギリスなどの主要先進国でも1980年代以降はインフレ率の低下=ディスインフレ傾向ですが、日本の水準は際立っていることが分かります。 特に、岩田教授が主張している論点は、08年のリーマンショック以降、先進国でデフレなのは日本だけだということ。 ショックの震源地であるアメリカは、08年から11年までの平均インフレ率は2%です。つまり、日本のデフレは政策に問題があるということです。 物価水準の操作は、基本的に日本銀行(以後日銀)が担当します。2月に事実上のインフレ目標導入を決定した日銀が発表した「中長期的な物価安定の目途について」にも、「物価の安定を図ることを通じて、国民経済の健全な発展に資すること」を基本理念とすることが書かれています。⇒http://goo.gl/gZ3ld 日銀は、消費者物価指数の上昇率を当面は1%を目途としており、長期国債購入基金の積み増しを行いました。 過去の日銀の姿勢からは半歩前進とはいえ、まだまだ本格的なデフレ脱却からは遠い点を、私の論考の中でも数回紹介しています。⇒日銀の金融政策「据え置き」では不十分 そこで、最近話題になっている増税とエネルギー問題を絡め、これまで考慮されていない「デフレの脱却」の論点をあげておきましょう。 基本路線は、日銀の金融政策と財政出動によるポリシーミックス(政策の組み合わせ)です。経済が順調に拡大し、物価も少しずつ上がっていく限り問題はありません。雇用が創出され、成長率が高まれば、デフレ脱却と成長の実現により、国民の生活は楽になります。 しかしながら、一般物価指数は政策以外の要因によっても変動します。 例えば、資源価格高騰がインフレにつながるケースです。 わが国では、1970年代に二度のオイルショックがありました。中東の産油国で形成されるOPEC(石油輸出国機構)が石油の輸出を全面的に停止したことが原因で起こったインフレは、庶民の生活に大きな影響を与えました。 その後、産油国の意図的な原油価格つり上げは起こりにくくなりましたが、中東では紛争や戦争が起こる可能性が高いのは否定できません。 仮にホルムズ海峡で問題が起きた場合、わが国は石油の輸入に四苦八苦することになるでしょう。その結果、原油価格高騰による電気代負担の上昇だけではなく一般物価水準も上昇する可能性があります。 資源を輸入に頼っているわが国は、資源価格の変動に脆弱であるということを再認識するべきです。 さらに問題なのは、インフレが不況時に起こるケースです。最悪の場合、インフレと不況が同時に襲うスタグフレーションが再来する可能性があること。 その結果としてデフレが脱却できたとしても、失業率の増大や成長率の低下という高い代償を払わなければなりません。 もう一つが、野田首相が政治生命をかけて取り組んでいる消費税増税問題です。 増税をすることで、短期的には物価が上昇します。例えば、2014年に8%へ、2015年には10%へと上がることによって、一般物価も1%以上上昇したならば、日銀は労せず中長期的な目途を達成したことになります(あくまでも仮定の話)。 ただし、この議論に足りないのは、増税による消費や投資の落ち込みによる成長率の低下によって、再びデフレとなることを想定していないことです。 1997年4月に消費税が3%から5%に上がった後に何が起きたかを考えれば、増税がもたらす効果は明らかでしょう。 「デフレの脱却」だけでは、論点はいくらでもとれるので、やはり、高い成長と雇用の創出を最優先し、その結果としてデフレ脱却ができるとした方がよいでしょう。 さもなければ、予期せぬ短期的なインフレが生じた場合、「インフレを抑制するために増税をして財政再建をするべき」という論点が出てくる可能さえあるからです。 日銀は、インフレ懸念があるだけでも金融引き締めに入ります。そうすれば、日本経済は一層冷え込むことになります。 幸福実現党は、日本経済がさらなる長期不況に突入しないためにも、増税ストップと原発の再稼働などを通じてエネルギーの安定供給を継続して主張していきたいと考えます。(文責・中野雄太) 国家戦略室「日本再生戦略(案)」を検証する 2012.07.14 消費増税関連法が7月11日より参議院での審議が開始され、同日、消費増税導入の最終判断を決する「景気条項」への対処として「日本再生戦略(案)」が政府で審議され、月内にも閣議決定され、予算編成に反映される見通しです。⇒http://www.npu.go.jp/policy/policy04/pdf/20120711/shiryo4.pdf 「日本再生戦略(案)」では、100兆円の新規市場と480万人の雇用創出を目指し、2020年度までの経済成長率を名目3%、実質2%に高めることを謳っています。 これが実現すれば、日本経済は上向きますが、「日本再生戦略(案)」は果たして本物と言えるでしょうか? 産経新聞は「再生戦略は、22年6月に菅直人内閣が策定した『新成長戦略』を焼き直した項目も多い。新成長戦略自体、376項目のうち、成果の出ていない政策が約9割に上っている」と酷評しています。(7/10 産経) それでは「日本再生戦略(案)」について、主要な3論点について見てみたいと思います。 (1) グリーン成長戦略 同戦略では「グリーン成長戦略」として、2020年までの目標として、50兆円超の環境関連新規市場、140万人の環境分野の新規雇用を掲げています。 その中でも、「政策資源を総動員して国民の省エネルギー、再生可能エネルギーの導入を力強く支援していく」と、再生可能エネルギー分野の振興を目指しています。 しかし、再生可能エネルギー分野においては、我が国の産業は競争優位を有していません。 例えば、再生可能エネルギーの中核となる太陽電池パネルは「日本のお家芸」のように思われていますが、実際には、2010年の太陽電池セル生産では、シャープは世界シェアの7%、京セラは6%に過ぎません。 一方、2010年の太陽電池セル生産では中国勢4社は合計51%、台湾を含めると65%ものシェアを占めており、技術競争の時代が終わり、熾烈なコスト競争の時代に入っています。日本が競争優位を得ることは難しい分野です。 むしろ、安全保障の観点も含めて、イラクに匹敵する石油埋蔵量を持つ尖閣諸島の油田開発を実現することで、国内における年間石油消費量10兆円規模となる石油を採掘し、国の収益とするような大胆なエネルギー政策を打ち出すべきです。 (2) ライフ成長戦略 次に、同戦略では「ライフ成長戦略」として、2020年までの目標として、医療・介護・健康関連サービスの需要に見合った産業育成と雇用の創出として、新市場約50兆円、新規雇用284万人を掲げています。 しかし、学習院大学・鈴木亘教授は「医療・介護産業は、多額の公費投入による価格ディスカウントでかろうじて支えられている産業であり、自律的な成長が期待できる分野ではない。 医療・介護費を増やせば自動的に多額の財政支出増となることを考えれば、これは成長戦略というより、一時的な財政政策に近いものと見るべき。」(『社会保障の不都合な真実』P.207~)と指摘しています。 社会保障に関連して、日本再生戦略を実現していく財源として、年金積立金管理運用独立行政法人等の公的マネー(H23年度末時点で、運用資産額:約113兆円、収益額:約2兆6千億円)が出て来ています。しかし、国民資産を運用して財源とするならば、復興増税や消費増税もすべきではありまえん。 鈴木亘教授が指摘するように「多額の公費投入が必要」で、「自律的な成長」が期待できない分野への資金投入は非効率を生み出すのみです。 但し、高齢化は今後とも進展していくため、幸福実現党が提言しているように、医療・介護・健康関連における参入規制の緩和・撤廃、市場原理の導入と競争の促進、価格の自由化、民営化の促進等の構造改革を進めるならば、成長産業になる可能性はあります。 (3) アジア太平洋経済戦略 「アジア太平洋経済戦略」として、2020年までの目標として、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築、ヒト・モノ・カネの流れ倍増、EPAカバー率80%程度、パッケージ型インフラ海外展開による市場規模19.7兆円を掲げています。 しかし、経済連携協定の拡大を見ても、締結国との貿易割合を80%まで引き上げるのは、TPPを実行しないと達成できない数値です。しかし、TPPは交渉参加表明で他国に出遅れ、民主党内の反対意見も根強くあります。 ベトナムのカーン首席交渉官は「8月末までに意思決定できれば、メキシコ、カナダに遅れることなく交渉参加が可能」と日本に判断を迫っています(7/11 時事)が、未だに政府の決断は不透明です。 また、「食農再生戦略」には、TPPへの戦略が無く、農家戸別保証や青年就農給付金などのバラマキ等のみで、イノベーションの意識は薄く、農業の輸出産業化に向けた熱意は見られません。 TPPについては即刻参加を表明し、TPP交渉でリーダーシップを発揮すると共に、農業分野においては、幸福実現党が提言しているように、参入の自由化、農業の大規模化・効率化、農地の自由売買等の構造改革を進めるべきです。 また、「パッケージ型インフラ輸出」は有望な分野ですが、韓国やフランスの大統領による原発のトップセールスのように、政府首脳が経済界のリーダーを多数引率して相手国にセールスする政治力が必要ですが、日本政府は苦手としており、日本企業もバラバラに行動しています。 以上、主要な3論点についての危惧を述べましたが、更に共通して欠落している点を一つ挙げるならば、「安全保障」の観点が欠けていることです。 中国の覇権主義を抑止できる自主防衛力の確立が無く、対等な外交交渉はじめ、領土や海洋資源を保持し、安心した経済活動を行うことは出来ません。また、経済成長の要となる新技術の開発は「防衛産業」にあります。 結局のところ、「日本再生戦略(案)」は、日本が置かれている厳しい国難を打破するための「戦略的発想」に欠けており、「消費増税導入のための数字作り」に過ぎないと言えます。 これでは、次期衆院選の選挙対策としての「バラマキマニフェスト」や「官僚の利権拡大戦略」と言わざるを得ません。 政府は、国家のサバイバルをかけて、日本を真に再生させる戦略を立て、断行していくことが求められます。(文責・小川俊介) すべてを表示する « Previous 1 … 71 72 73 74 75 … 78 Next »