Home/ 外交・国際政治 外交・国際政治 国際平和を脅かす中国とイランの不気味な連携 2011.11.18 今、核兵器開発が国際的に大きな問題となっているイランと中国との経済的・軍事的結びつきが国際的な問題となっています。 11月16日、『大紀元日本』が「中国、イランを中東の軍事基地へと構築=米外交誌が警告」と題し、「中国政府はイランを中東における軍事基地として構築し、米国との対立陣営の重要なパートナーとして位置づけている。14日付の米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」(電子版)が指摘し、米政府の警戒を呼びかけた」と報じています。 ⇒http://www.epochtimes.jp/jp/2011/11/html/d42930.html 記事では、イランと中国の協力関係は石油や天然ガスといったエネルギー面だけに止まらず、中国政府はあらゆるルートでイランへの戦略・軍備的支援を行い、イランの核関連開発に助力し、巡航ミサイルと弾道ミサイルの技術も提供していたことが指摘されています。 中国がイランとの軍事的結びつきを深めている理由として、以下の3点を挙げたいと思います。 (1)中国の「シーレーン防衛」のため 中国は13億人という莫大な人口と急成長を遂げる経済活動を支えるため、エネルギー確保に必死になっています。 中国が尖閣諸島周辺のイラク並の石油埋蔵量を誇る油田を狙っているのも、このためです。 そのため、中国にとっても「シーレーン」(国々の経済活動を維持する大動脈である海上交通路)を守ることが国家の生命線になっています。 中国の「シーレーン」は日本と同様、ペルシャ湾とホルムズ海峡が重要な戦略拠点となっています。 特に、ホルムズ海峡は、中国にとってはイランの原油を中国本土に運ぶため、日本にとってはアラビア原油を日本本土に運び出すために必ず通らなければならない「チョークポイント」(関所)の一つです。 シーレーンとチョークポイントを守るために、中国はペルシャ湾に面する国であるイランとの関係強化を図っていることは明らかです。 (2)中国のエネルギー拠点としてのイランを守るため 中国はイランから石油を輸入し、自国の膨大な需要の一部を賄っています。 英紙フィナンシャル・タイムズ紙によると、イランから中国への石油輸入は増加の一方にあり、昨年1年間の輸入総量は293億ドルに達しており、2009年度比40%増となっており、イランとの蜜月関係がうかがわれます。 米国によるイランへの金融制裁により、ドルなどの通貨で石油購入代金の決済ができないため、中国とイラン両国は物々交換の貿易システムを編み出し、国際的制裁の網をくぐり抜けています。 中国は人権や倫理感を行動理念の基盤においておらず、石油資源を確保するためなら独裁国家や独裁者との付き合いも辞さないのが常です。 このことは、中国がカダフィ政権と良好な関係を築いてきたことからも明白です。(カダフィ大佐死亡後は、中国外務省の盧沙野アフリカ局長が「(カダフィ大佐は)中国の友人ではない」と語り、露骨な変わり身に国際的批判を浴びています。) 同記事には、米有力上院議員チャールズ・シューマー氏の言葉として、「彼らは常に自分の利益を一番に考えている。たとえそれが世界危機につながることを意味しても、まったくおかまいなしだ」という言葉を紹介しています。 イスラエルとの対立から、世界最終戦争に繋がりかねないイランの核開発に密かに肩入れをする中国に対して、世界から批判が高まっています。 (3)中東に展開するアメリカ軍を牽制するため ペルシャ湾、アラビア海周辺にはアメリカ海軍の第5艦隊が展開しており、中東の有事に対して原子力空母と空母艦載機を即座に展開できる能力を有しています。 中国がイランに軍事拠点を作ることは、アメリカを牽制することに繋がります。 しかし、おおっぴらに軍事的な協力関係を結ぶことはアメリカの疑念を呼ぶため、秘密裏に行われています。 中国が、アメリカとの対決姿勢を強めようとしていることは、中東でも太平洋・南シナ海・東シナ海にいても同様です。 米海兵隊が豪北部への駐留が決定したことからも明白なように、アメリカは、すでに中国との対決姿勢をアジア・太平洋において強めようとしています。 日本は、自国だけの平和に浸ることなく、自国の発展と繁栄を守るために、世界情勢の構図をいち早く理解し、日米同盟を基軸としつつ、中国の覇権主義に備えていく必要があります。(文責・矢内筆勝) TPP:「智恵による立国」を成し遂げよ! 2011.11.13 今、TPP交渉参加問題は国民的な議論を呼んでおり、TPPに参加すべきか否かについて、国民世論を二分しています。 民主党政権は菅前首相からその決断を先延ばしにし、野田首相になって、切羽詰まってTPPに参加をせざるを得ない状況に追い込まれてしまいました。 私は、今回の野田首相のTPP交渉参加の決断は、日本の「国益」を考えた「国家戦略」から決断したものではないと考えます。 本来、野田首相は、日本の国家戦略を確定した上で、早期に参加して有利な条件を提示し、強い外交交渉をなすべきでした。 昨年11月の閣議決定で、TPPについて「国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始する」としておきながら、今回の交渉開始は余りにも遅きに失し、交渉条件としては不利なものとなってしまいました。 昨日、幸福実現党のついき秀学党首は、声明「野田首相のTPP交渉参加表明を受けて」において、「政府には、TPPへの国内環境をいち早く整備し、国益をしっかりと見据えながらその交渉を進めるよう要望」しています。 今後、自由貿易の潮流の中で、日本が生き残るのみならず、日本が世界のリーダーシップを取っていくためには、世界最先端技術をさらに高度化したり、農産物の高付加価値化を進めるなど、「高付加価値産業へのパラダイムシフト」が必要です。 しかし、そのためには、民主党政権には具体的な「国家観」が無く、「国益」の視点が欠如していることが問題点として挙げられます。 民主党政権においては、鳩山・菅両氏が首相就任後、一年も経たずに国民を大きく失望させました。そして、三番手として野田首相が登場しました。 野田氏はミスを出さないよう、慎重に泥沼に潜ってはいるものの、「『国家観』無き民主党政権」は三度、失敗すると断言できます。 民主党の「基本理念」(http://www.dpj.or.jp/about/dpj/principles)や「基本政策」(http://www.dpj.or.jp/about/dpj/policy)を見ても、民主党政権の「国家観」は見えて来ません。 例えば、「地域主権改革」などの国家主権の相対化、東アジア共同体、(国民ではなく)地球市民、外国人参政権、「新しい公共」、「下からの民主主義」(「国家中心」から「市民中心」へ)など、国家を解体し、「自立した個人」の集合体にしようとする哲学が伺えます。 幸福実現党は、民主党の「地域主権」政策が根本的に間違っていることを指摘しています。 民主党の結党時の「基本政策」には「地域主権」の説明として「いま求められる分権改革は、官官分権ではなく、地域の自己決定と市民自治のための分権でなくてはならない」とあります。 基礎自治体における「住民自治」と、国家の「統治機構」とは本来、原理も考え方も根本的に違いますが、両者の混同が見られ、「国家否定」の姿勢が明確になっています。 そこに見えてくるのは、国家を解体して「市民」の集合体となった「国家なき市民社会」の姿であります。 日本が世界の「リーダー国家」になっていくためには、確かな「国家観」の上に、世界のリーダーとなるための「国家戦略」を構築していくことが必要です。 そして、TPPにおいても、強固なリーダーシップと力強い交渉力で、世界が納得する先手を打ったルールを世界に示すべきです。 日本は既に「大国」であり、かつて米国が役割を担って来たように、大国の「ノブレス・オブリージュ(高貴なるものの義務)」として、開国の重みに耐え、自国の繁栄のみならず、他国の危機を救ったり、新興国を育てていく責務があると考えます。 そのためには、日本経済は、もう一段の付加価値を高め、今こそ、「智恵による立国」を成し遂げるべきであります。(文責・佐々木勝浩) TPP:日本は国家戦略を描き、イノベーションを成し遂げよ! 2011.11.12 11日、野田首相が記者会見を行い「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と表明、ハワイで開かれているAPEC閣僚会議で、日本はTPP参加方針を表明しました。 これを受けて、幸福実現党はついき秀学党首より「野田首相のTPP交渉参加表明を受けて」という声明を発表致しました。 ⇒http://www.hr-party.jp/new/2011/14151.html 国内からは「TPP参加表明」は「見切り発射」だと批判され、民主党内における意見集約も不十分、国会における承認も無く、国民の理解も得られぬまま、戦略無き方針が発表されたと言えます。 ついき党首の声明にも、「我が党はTPP交渉参加を是とするものだが、閣僚の中には首相の会見を参加表明ではないとの認識を示す者もいるなど、政権内で合意形成が十分になされておらず、交渉参加に向けた政府・与党の態勢作りには疑念を抱かざるを得ない」と懸念を表明しています。 TPP交渉参加が「亡国への道」に至るのか、さらなる「繁栄への道」を切り拓く導きとなるのか。結局のところ、今後の政府の「交渉力」「外交力」にかかっていると言えます。 【国家戦略を描き、政官民一体となって実現せよ!】 外交文書を紐解くと、1994年「APECボゴール宣言」で「APEC経済間の経済発展段階の違いを考慮に入れ、先進工業経済は遅くとも2010年までに、また、開発途上経済は遅くとも2020年までに自由で開かれた貿易及び投資という目標を達成する」(外務省HP)との合意をしています。 しかし、「ボゴール宣言」より既に17年が経過しておりながら、自由貿易に向けた日本の経済戦略や国際戦略はどうだったのでしょうか?全く機能していない国会、政治家の不作為が浮かび上がってきます。 また、世界各国は「政・官・民」が一致して世界シェア獲得のために鎬を削っていますが、日本は各企業の孤軍奮闘で厳しい努力が続いています。 例えば、リニア新幹線はJR東海だけで行っているプロジェクトですが、政官民一体となれば新産業を育成することになり、社会インフラとして輸出産業とすることが出来ます。貿易自由化の中で、もっと創造的な政治判断が求められることになります。 さらに、TPPは単なる通商条約としての経済連携ではなく、社会基盤となる医療や訴訟等も含める法的枠組みを提供し、国家的・社会的に強固な関係となる条約である以上、国家戦略が不可欠です。 TPP反対派が言うように、確かにTPPは食品安全基準や公的医療制度への影響など、問題点も多々見受けられます。これらも、政府がどのように交渉を進めていくか、そして、国内政策による中和をいかにして成し遂げるか、政府の交渉力と構想力が試されます。 今後、自由貿易の流れの中で、世界的分業における日本が果たすべき役割は、世界最先端技術をさらに高度化する挑戦であり、創造開発することにあります。 「TPPは国内の雇用を失わせる」という批判も根強くありますが、そうならないためにも、発展途上国の労働者との差別化を図るべく、国内雇用者の付加価値と生産性を高めるための高等・大学教育の改革も急務です。 また、新産業の技術開発における要となる航空・宇宙・軍需産業の育成、前提となる「武器輸出禁止三原則の撤廃」など、自由貿易における繁栄実現への体制づくりが必要となるでしょう。防衛産業なども自由貿易が進めば、成長産業の一つとなることは間違いありません。 国益を実現するのであれば、単なる交渉参加では終わることなく、日本が繁栄するための「国家戦略」を打ち立て、その実現に向けた大きな社会変革を伴うイノベーションを断行していくべきです。 そのような構想力無くして、自由貿易の時代に国富を増やしていくことは出来ないでしょう。 【国民の意識変革とイノベーション】 そして、最後に申し上げたいことはTPP交渉参加に伴い、日本人に求められる意識変革です。 日本は押しも押されもせぬ「大国」であり、「他国を救う力」があるにもかかわらず、私たち日本人には未だ「発展途上国意識」が残っていると言わざるを得ません。 中国や発展途上国の追い上げにより、フローの統計の相対的地位は下がっても、日本が「経済大国」であり、ストックとして巨大な国力を有していることに何ら変わりません。 2010年末までの日本の企業や政府、個人投資家が海外に持つ資産から負債を差し引いた対外純資産は、円高などの影響を受け、前年比5.5%減の251兆4950億円となり、2010年末の時点で、日本は20年連続で「世界一の債権国」となっています。 幸福実現党は「日本はギリシャの経済危機を救うべき」と提言していますが、ギリシャのGDPは、現在の為替レートで23兆円程度に過ぎません。東京都のGDP(約90兆円)は言うに及ばず、大阪府(約39兆円)や愛知県(約35兆円)のGDPをも下回っています。 日本は一都市が一国を上回る程の「巨体」となっており、「他国を救う力」を既に有しているのです。 また、超円高が続くトレンドも変わらないでしょう。日本は超円高を好機として、往年のアメリカのように、世界中からもっと輸入し、世界の経済危機を救うと共に、下位国のためにも、もっとモノを買って上げて、世界経済を牽引すべきです。 それが「世界のリーダー国家」としての役割であり、使命でもあります。 「保護貿易」は発展途上国の国家戦略であり、「一国平和主義」の経済版に過ぎません。いつまでも「保護貿易」「輸出依存」では、世界の「リーダー国家」にはなれません。 日本は「大国」として、「開国の重み」に耐え抜き、これを好機として、国民の総力によって、もう一段の高付加価値産業へのシフトを成し遂げ、今こそ、「世界のリーダー国家」に向けたイノベーションをなしていくべきです。(文責・小川俊介) 「日米安保破棄」の危機!? 2011.11.10 「日米安保破棄を真剣に検討し始めた米国」――そんなショッキングなタイトルの分析記事が「JBpress」というWEBメディアに11/8に掲載されましたので、今回はそのポイントを紹介致します。 ※興味のある方は全文をお読みください⇒http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/27869 記事はまず、ヒラリー・クリントン米国務長官がアメリカの代表専門誌“Foreign Policy”誌(10月11日号)に発表した論文の要旨として、以下の4点を掲載しています。 (1)米軍は経済力減退に伴い引き続き「世界の警察官」を全うするに足る戦力を維持することができない。従って、今後は、重点戦域を定め、一部からは思い切って撤退し、特定戦域に戦力を集中して配備する必要がある。 (2)しからば、重点的に米軍を配備する正面はどこにするか。それは中国が台頭し、米国の経済的利益も大きいアジア太平洋にほかならない。 (3)アジアにおける冷戦後の重点配備は、日本と韓国であった(合計で5万人強の米軍を配備)が、これを見直す。 (4)新たな配備の方向性として、特に南アジア、インド洋での米軍プレゼンスを強化する。豪州は南アジア、インド洋をコントロールするうえで、戦略的な重要国家。 つまり、クリントン国務長官は、アメリカは今後、経済的な事情から、世界の警察官の任務を放棄せざるを得ない。しかし、台頭する中国と対峙してアジアの利権を守るために、特定の重点地域に戦略を集中する。それは従来の日本や韓国ではなく、オーストラリアだというのです。 そして、近い将来米国は日本の戦略的価値を「要石」などと持ち上げなくなるだろう。その帰結として、次の通りのシナリオが考えられるとしています。 第1のシナリオ:米国は、日米安保を維持するものの、その信頼性は空洞化する。 第2のシナリオ:米国は、一方的に日米安保を破棄する。 第3のシナリオ:米国は、日米安保条約を双務条約に改定することを迫る。 本記事は「戦後、60年以上にわたり、我が国の平和と繁栄の基盤になってきた、日米安保体制が今重大な岐路に差しかかっていることを銘記すべきだろう。日本は、戦後レジームのコペルニクス的な転換の時期を迎えるかもしれない。(中略) 半世紀以上続いた戦後レジームをどのように変えればよいのだろうか。日本国民は、生存(安全保障)と繁栄の道――生き残りの道――について、真剣な議論をしなければならない重大な時期にあるものと思う」と結んでいます。 この記事の執筆者は、陸上自衛隊の元陸将の福山隆氏です。実際に陸上自衛隊の最高位を務めた人物の分析だけに、その結論の意味は極めて重いと言えるでしょう。 福山氏はアメリカは近い将来、日本との同盟関係を大幅に見直し、場合によっては、米軍は日本から撤退し、中国と対峙するために、オーストラリアを戦略拠点とする戦略に切り替える可能性があると分析しています。 これは、米軍の補完的な位置付けとしての自衛隊しか持たない日本にとって、まさに死活的な事態です。 この背景には、民主党政権が普天間基地の移設問題を長引かせたことによって起きた米国の日本に対する不信感が、米国の将来の安全保障戦略を変更させるだけの大きなインパクトがあったとことが推測されます。 「日本国民は、生存(安全保障)と繁栄の道――生き残りの道――について、真剣な議論をしなければならない」とありますが、迫り来る中国の脅威に対抗し、日本が生き残るためには以下の3点の実行が不可欠です。 (1)普天間基地移設問題を日米合意に基づいた方向で解決し、早急に関係を修復し、日米同盟の維持・強化を図る。 (2)外交的にはインドや東南アジア、ロシア、EU等との連携を強め、中国包囲網を形成し、グローバルな視点から勢力均衡を図る。 (3)憲法9条改正、並びに海軍力強化をはじめとする自主防衛強化、日本独自の防衛産業の振興を図る。 「自分の国は自分で守る」――今こそ、私たちが立党以来、訴えて来た幸福実現党の政策の実行が求められているのです。(文責・矢内筆勝) 「ギリシャ危機」を救い、EUとの関係を強化せよ! 2011.11.05 混乱を増す「ギリシャ危機」の中で開催されたG20―野田首相にとって初の国際会議の場となりましたが、厳しい国際政治において日本の「国益」を賭けて舵取りをする外交力や国際政治の見識はどうだったでしょうか? 今回のG20で報道された主な野田首相の発言としては「円高に対する単独介入」に関して各国の理解を求めたことと、「財政再建の具体策として消費税増税を10%まで引き上げること」の二点が挙げられます。 しかし、いずれの発言も、国内政治の延長線上に過ぎず、あまりにも内向きです。野田首相は「ギリシャ危機」の真っ只中のEUにおりながら、世界経済については全く目が向いていません。 野田首相の「円高に対する単独介入」の説明に関して、各国からは何の反応もなかったことを見ても、日本政府の関心事は、国際政治から見て、いかに的外れであったかが分かります。 また、野田首相が「目玉」としていた「消費税増税の国際公約」も海外メディアでは扱われず、日本国内だけで空騒ぎをしています。「消費税増税」は、国際会議の場で取り上げるべき「国際貢献」ではなく、「財務省貢献」でしかありません。 一方、日本とは対照的に、中国の胡錦濤国家主席は、世界経済の減速を食い止めるために「われわれは新興国や発展途上国の潜在力を掘り起こして経済を発展させ、世界的な内需拡大に取り組むべきだ」と強調。 さらに、期待されているEUへの具体的な支援策については「中国はリーマンショックのあと先進国の国債を買い増すなどしてきた」と述べて、これまでに行った中国の貢献を主張しました。 更に、中国はG20に合わせて、3日、「ギリシャからの輸入を拡大し、ギリシャのインフラ整備への中国企業の参加を支援する」との声明を発表しました。 EUは、まさに今、藁(わら)をもつかむ思い「チャイナマネー」に頼ろうとしているのです。中国は豊富な資金と外交力を駆使して、「ギリシャ危機」を好機として、欧州での存在感を飛躍的に高めています。 EUのキャサリン・アシュトン外交安保上級代表(EU外相)は「EUは中国との強固で建設的な関係を望んでいる。中国の主張に耳を傾けることに前向きであることが重要だ」と述べ、対中武器禁輸措置の解除の可能性を示唆。「ギリシャ危機」における中国の積極的支援を求めました。 中国は「対中武器禁輸の解除」「ハイテク製品の対中輸出制限の緩和」等の国益を獲得しようと必死です。 野田首相も「財務省の代理人」ではなく、「先進国の首脳」として「世界経済をどのようにしていくのか」という構想やビジョンを提起すべきでした。 日本は「EU危機を救う力」を持っています。EU各国は小規模の国が多いので、日本の各都市レベルの行政規模として見ることで、もっと大胆な支援策を検討し、提言できたはずです。 政府・日銀は8月と10月末に計12兆円の円高対策の為替介入を行いましたが、その効果は一時的なものに過ぎず、しかも、その原資は政府短期証券の発行であり、政府の借金を増やしたに過ぎません。 「付け焼き刃」の円高介入で12兆円もの税金を霧散させるくらいなら、円資金10兆円程度をギリシャに直接貸し付け、債務危機救済に貢献して世界経済の危機を救ったならば、日本の「国際信用力」を大きく高めることができたはずです。 また、EU側が消極的姿勢を見せている、日本とEUの経済連携協定(EPA)の締結を後押しできたはずです。、 「まさかの友は真の友」です。日本がEUに「貸し」をつくって、EUとの絆が深まれば、民主主義国家との連携が深まり、「遠交近攻」戦略によって、中国の脅威に対する包囲網が形成され、日本の安全保障は強化されると共に、EUの「対中武器禁輸措置の解除」も防げたはずです。 2012年問題が危惧され、大きく変動する恐れのある国際政治の中にあって、日本政府がこのような「外交の失敗」を続けていれば、日本の「国益」を守るどころか、国民の生命・財産・安全を脅かすことになりかねません。 国際政治の舞台では、野田首相の得意とする「パフォーマンス」は全く通用しないことを知るべきです。(文責・小川俊介) 中国の地方議会選挙の実態――中国共産党の「詐盗争私汚(さとうしお)」 2011.11.03 11月1日付の産経新聞に、中国で5年に一度行われる「地方議会選挙」に関して興味深い記事が載っています。 「前回の(地方議会選挙)と比べて急増した、共産党や政府系団体の支援を受けない『独立系候補』が当局から激しい選挙妨害を受け、事前の資格審査で失格していた」という記事です。少し引用しましょう。 「選挙管理当局は1日、北京市各区の議会(8日投票)の候補者名簿を発表したが、立候補の意向を示している独立系候補の名前はそこになかった。 立ち退き問題などで当局と対立する同市の韓頴氏(37)ら13人の市民が9月に『当局の不正をただしたい』として複数の選挙区から立候補を表明し、合同で選挙活動などを行ったが、全員が失格となったという。 また、韓氏と同じように合同で選挙活動を行っている別の14人のグループも全員失格した。人権活動を行っている女性弁護士や、憲法学者の大学教授らの名前も当局の候補者名簿に載っていなかった。 中国の選挙法では、市民10人の推薦があれば、誰でも立候補できる。しかし、当局は独立系候補の推薦人とその家族を呼びつけて降りるよう圧力を加えるほか、記入した書類の筆跡が不明瞭との理由をつけて受け取りを拒否して活動を阻む。 ある女性候補は地元の選挙管理委員会から『(立候補の)届け出用紙がなくなった』といわれて書類を期限までに出せずに失格した。 中国の地方選挙問題の専門家で、『世界と中国研究所』の李凡所長は独立系候補が選挙妨害を受けていることについて『選挙を通じて市民の不満を政治に反映させる貴重な機会なのに、政府がそれを自ら放棄したことは大変残念だ。これでは社会矛盾をますます深刻化させるだけだ』」と語っている。」 ―以上、引用― 共産党による「一党独裁」の中国では、当たり前といえば当たり前ですが、選挙においても徹底的に「国民の自由と権利」の剥奪と抑圧が当然のこととして行われていることが、よくわかる記事です。 中国の選挙制度は、県や区といった「地方議会」レベルでは直接選挙が行われます。そして、その上部組織(省、直轄市等)は、下部組織の代表による間接選挙で選ばれ、日本の国会議員にあたる全国人民代表も、省、直轄市の代表によって選出されます。 そうした制度だけ見ると、一見、「民主的」な感じがしますが、記事にあるように、実際に立候補できる人は100%が共産党員か、共産党によって「選ばれた」候補者であり、共産党政府の基本方針から逸脱する主張や思想を持った人は絶対に候補者にはなれません。 このように選挙制度一つを見ても、中国は表向きは普通選挙をうたいながらも、巧妙なシステムと圧政によって、7000万人の「特権階級」(共産党員)が、13億人の人民を支配し、自由と権利を剥奪し、富を独占する実態が浮かび上がって来ます。 中国は時間が経てば「民主化する」という評論家もありますが、実際には、中国という国は、時が経てば経つほど、「専制国家」の度合いを強化しているのが実態です。 中国の情勢に詳しい評論家の黄文雄(こう・ぶんゆう)氏は、中国文化の本質をシンプルに分かりやすく、「詐盗争私汚(さとう・しお)」の五文字で表現されています。 「詐」とはウソ、「盗」とは盗み、「争」とは争い、「私」とは私欲、「汚」とは汚職……。 そうした視点で、中国の様々な事象を観たとき、これまで見えなかった真実が見えてくるのかもしれません。(文責・矢内筆勝) 中国が喧伝する「日本の脅威」 2011.10.29 日本にいると分かりませんが、最近、中国は盛んに「日本の脅威」を喧伝しています。 私が先月・中国の大連を視察したときも、テレビの中国国営放送「CCTV」では、論説やニュースで、毎日のように「日本の軍拡」「日本の脅威」を盛んに報道していました。今日はその一端をご紹介させて頂きます。 下の記事は、中国の国営新華社通信が10月21日に報じた「日本はなぜ頻繁に『外部脅威論』を煽り立てるのか」と題した論説です。少し長くなりますが、そのまま全文を引用しますので、ぜひご一読下さい。 「10月16日、野田佳彦首相は自衛隊の航空観閲式で『中国と北朝鮮は日本の脅威』と名指しした。どうやらまた、『外部脅威論』を煽り立てるという『発作』を起こしたようだ。 時々このような『発作』を起こすという奇妙な現象が長く続いているが、今の日本は本当に深刻な『外的脅威』にさらされているのだろうか?彼らはなぜ頻繁に『発作』を起こすのか? 第2次大戦以降、日本の安全保障環境はずっと良好だ。領有権問題はあるものの、日本の本土が外部からの武力脅威にさらされることもない。それなのに、『外部脅威論』を煽り立てる頻度はどんどん増加。しかも、賢いやり方ではない。 北朝鮮のミサイルが日本上空を通過したと非難したこともあったが、通過したのは日本列島上空の大気圏外だ。国際法上、何ら問題はないし、日本の衛星もほぼ毎日他国の上空を通過している。全くつじつまが合っていない。 同じように、中国海軍の艦艇が沖縄と宮古島の間の『宮古水道』を通り抜け、太平洋で軍事演習をしたと責め立てたことも滑稽としか言いようがない。これも国際法上、何の問題もない行為だ。 全く稚拙なやり方だが、一方で最近、南シナ海の紛争に積極的に首を突っ込み、航空自衛隊の主力戦闘機をグレードアップさせようとしている。米国の同意を得て、『武器輸出三原則』を見直すことも考えているようだ。 日本が『外部脅威論』を煽り立てる時は、何か目的がある時のようだ。日本の長期戦略目標は自らを『正常な国』にすること。 では、その障害となっているのは何か?それが米国であることは明らかだ。 現代史を紐解くと日本と米国の深い恨みはかなり深刻。長く閉ざしていた日本の門戸を開いたのは米国だし、2発の原爆で日本を焼け野原にしたのも米国だ。日本の政治、経済、外交、軍事は長い間、米国にコントロールされてきたのである。 実は今回の『外部脅威論』は日本の戦略決定者が米国に向けて発したもの。米国が経済危機で弱っている今こそ千載一遇のチャンスだと思ったのだ。 だが、国際的な影響力が大きい日本がこうした言行が一致しないやり方で目的を達成できるとは限らない。しかも、こうしたやり方がアジア・太平洋地域全体の安全保障環境を悪化させ、緊張状態を作り出しているのである。」 いかがでしたでしょうか……。 あえて解説は省きます。 中国が日本をどのように見ているのか……否、中国共産党が13億人の国民に対して、どのように日本を「悪玉」として伝え、世界に発信しているのか(新華社は国際通信社です)が、よくわかると思います。 そして、まさに中国こそが「外部脅威論を煽り立てる」ことで、自らの侵略的かつ強圧的な行動の正当性を構築していく。そうした共産党が最も得意とするプロパガンダの手法の一端を垣間見ることができます。 日本は、既にこのような狡猾でしたたかな中国との「外交戦・情報戦」に入っています。 しかも、日本のマスコミは大きく歪んでおり、「中国の脅威」「増税による不況到来」等は一切報道せず、「放射能の恐怖」は風評被害をもたらすほど報道しています。マスコミによる情報の歪みこそが国難を招いているのです。 この「HRPニュースファイル」は、そうした国難に打ち勝つための、日本人のための「正しき情報源たらん!」との志を持って、毎日発刊致しております。 ぜひ、多くのお友達や知人の方にHRPニュースファイルを転送・ご紹介頂き、購読者の輪を広げて頂ければ幸いです。毎日毎日の「HRPニュース・ファイル」が「拡散希望!」です。(文責・矢内筆勝) 楽観視できないカダフィ後のリビア 2011.10.21 「私は殉教者として死ぬ」と支持者たちの前で叫んだカダフィ大佐は20日、体制派と反体制派の戦闘に巻き込まれて死亡しました。「アフリカの王の中の王」と呼ばれた独裁者は生まれ故郷のシルトで最後を迎えました。 カダフィ大佐は1969年の革命以来、42年間に渡ってリビアの独裁者として君臨して来ました。カダフィ大佐が死亡したことは、リビアに自由と民主主義をもたらす希望と同時に、情勢次第によっては今後、リビアの混乱が更に継続することも考えられます。 カダフィ大佐の死亡によって、反体制派のリビア国民評議会は今日、明日にも全土解放宣言を行う予定ですが、リビアはカダフィの死亡によって簡単には安定化しないと考えられます。 リチャード・ハース米外交問題評議会会長は「カダフィの死はリビア情勢を部分的に変化させるかもしれないが、それを抜本的に変化させることはない。…当面、国内で戦闘が続く可能性もある」と述べています。(FOREIGN AFFAIRS REPORT 2011/10) リビアの不安定要因の第一は、政治勢力として各地域に根差した部族間の動向にあります。 元々、リビア国内は3つの地域(ベンガジを中心としたキレナイカ地方、トリポリを中心としたトリポリタニア、リビア西部のフェザーン地方)に分かれており、その中でも、キレナイカ地方は今後の安定化のカギを握る地域です。 1969年のカダフィ大佐による革命前は、国王が主権を握る王制であり、国王イドリース1世の出身地域はキレナイカ地方でした。カダフィが実権を握った後は、キレナイカ出身の人間は出世などにおいて冷遇されてきたことが指摘されています。 反体制派が掲げる国旗は王制時代のリビア国旗であり、国民評議会は新生リビアの政治権力をどのように調整し、各地域間をコントロールするか、難しい舵取りが予想されます。 リビアの不安定要因の第二は、今後、どの勢力が新生リビアでリーダーとなるのかが未だ混沌としていることにあります。 現時点で国際的に承認を受けた勢力はリビア国民評議会だけですが、国内には別の勢力もカダフィ体制打倒に貢献しています。特に、トリポリ軍事委員会は国民評議会も無視することができない勢力を保っています。 両者の意見調整が出来なかった場合、トリポリとベンガジを中心とした勢力間で内戦が行われる可能性も捨てきれません。 リビアの不安定要因の第三は、リビア内戦によって落ち込んだ石油生産の回復についてです。 リビアの今後の石油生産で焦点となる地域としてフェザーン地方の油田を指摘できます。同地方は全石油生産量の五分の一を占めており、この地域は遊牧系の武装勢力が標的として石油施設を狙う可能性があります。 カダフィ派の残存勢力がこの地域でゲリラ活動に動いた場合、治安が不安定化することは避けられません。 これら三つの要因によって、今後もリビアは不安定な状態が続くことが予想されます。 ヨーロッパは、リビア内戦への介入を主導してきましたが、カダフィ後の体制づくりには、手助けしようにも、欧州債務危機が足を引っ張り、対応が困難な状況にあります。 カダフィ後のリビアが、こうした多くの難題を克服し、自由と民主主義、希望と繁栄に満ちた国家を築くべく、日本を含めた国際社会は広範な支援を進めていく必要があります。(文責・黒川白雲) 揺れる欧州。次は銀行危機。 2011.10.05 ギリシャの債務危機がクローズアップされていますが、ここにきて銀行危機も表面化しています。 10月4日に開催された欧州財務相理事会では、ギリシャ支援は見送られ、代わりに銀行支援策が合意に達しました。 フランス・ベルギー系の金融機関であるデクシアは、ギリシャに対する莫大な投融資残残高を有し、今回のギリシャ危機によって経営危機が表面化しました。実は、2008年のリーマンショックの際には、64億ユーロ(約6400億円)にのぼる政府支援を受けており、経営状態は綱渡り状態が続いていたことが各種報道によって明らかとなっています。 デクシアに対しては、フランスとベルギーが救済をいち早く表明しましたが、不良資産は関連銀行に移譲され、健全部門まで売却を余儀なくされているため、事実上解体されたことになります。 欧州市場では、ギリシャ支援が11月まで先送りされたことと、デクシアの経営危機によって欧州銀行株指数は4%も下落しました。ギリシャの債務危機の最中に、銀行危機が襲い、さらに悪いことに、米格付け会社のムーディーズ・インベスターズがイタリア国債を三段階引き下げました。格付けの見通しも「ネガティブ(弱含み)」としている以上、さらなる引き下げもありえます。 こうした一連の流れの中で、欧州の主要メディアも悲観論に陥っています。英ファイナンシャル・タイムズ紙は、すべての銀行が抱える損失を公表し、慢性的な経営危機を残存させるよりも「ショック療法」的な厳しい措置を求めています。銀行部門が信用危機となれば、倒産だけでなく、国際金融市場や債券市場からの資金調達が困難となります。ただでさえ、緊縮財政と増税によって不況に陥いる可能性の高い欧州で、資金調達までダメになるのは大きな痛手です。 ただ、欧州危機の根本的原因は、共通通貨ユーロによる足かせであることは間違いありません。共通通貨ユーロを維持するために設定している財政基準のため、ユーロ圏各国が緊縮財政を余儀なくされています。 また、金融政策は欧州中央銀行にしか権限がありません。そのため、簡単に金融政策が発動できないのです。特に、ギリシャでは緊縮財政と増税を進めなければならないことが影響して、11年度の経済成長率はマイナス5.5%になると予想されています。問題となっている財政赤字の対GDP比は8.5%にのぼり、国際通貨基金(IMF)等と合意した7.6%を上回ることになります。 その意味で、共通通貨ユーロは、経済的な理由よりも政治的な理由によってすすめられていると言えましょう。実際、欧州がやっていることを見れば、景気対策をせずに緊縮財政と増税です。経済成長を犠牲にしてでも、ユーロを維持する信念は固いと見えます。 今のまま、欧州が政治姿勢を崩さないならば、第二のリーマンショックとなる可能性すらあります。アメリカと日本の景気は弱いままですが、相応の資金を提供することも有り得るでしょう。 欧州市場から目を話してはなりません。「対岸の家事として見てはいけない」というのは事実ですが、日本が緊縮財政と増税を真似る必要はありません。 これを機に統一市場と共通通貨の難しさを学ぶべきです。そして、世界不況とならないために、国内と国際的な対策をしっかり練るべきです。 (文責:中野雄太) 財政危機で揺れる欧州 2011.09.28 苦肉の策としての不動産特別税導入の可決 欧州がギリシャの財政危機によって揺れています。 デフォルト(債務不履行)の懸念もあるギリシャに対して、欧州では「トロイカ」体制と呼ばれる資金援助体制を形成しています。 トロイカの内訳は、欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の主要機関です。 そして、ギリシャ政府との間で赤字削減目標や増税をはじめとした緊縮財政案を協議しているところですが、実はトロイカ体制は既に窮地に追い込まれています。というのも、9月上旬に、トロイカとギリシャ政府との間で意見が食い違い、協議が中断しているからです。 また、ギリシャ政府は、赤字削減策の一環として、不動産特別税の導入を可決しました。 様々な記事に解説があるように、ギリシャがなんらかの赤字削減策の具体策を打ち出さないと、国際金融支援が得られないことが裏事情としてあります。ギリシャの与党である全ギリシャ社会主義運動(PASOK)も増税案も承認せざるを得ず、最終的に可決に至ったことが報道されています。まさに、苦渋の決断だと言えましょう。 ただ、ギリシャ国内では、昨年から政府の緊縮財政に対して暴動やストライキが頻発しており、国内の治安は悪化の一途をたどっています。 27日も、地下鉄とバスの運転手によるストライキが起きたことからもわかる通り、政府の思惑とギリシャ国民の間には深い溝が存在します。 今後は、年金支給額の引き下げや公務員削減を進めなければならないため、暴動やストライキは止まる気配がありません。観光地であるギリシャは、今安心して観光を楽しめる状況になく、大事な収入源を失おうとしています。 ユーロ圏に拡大する景気後退の足音 さらに悪いことに、債務危機の悪影響はユーロ圏に広がりつつあります。 欧州委員会が発表した統計によれば、ユーロ圏17か国の消費者信頼感指数(速報値)によれば、マイナス18.9となり、三カ月連続の対前月比の低下を記録しました。欧州最大の経済国であるドイツでも、緊縮財政の波が押し寄せ、景気の悪化を示すPMI(総合購買担当者景気指数)は、この2年余りで最低の水準を記録しています。 欧州には、共通通貨を維持するためには独特の基準が設けられています。 例えば、財政赤字対GDP比率は3%以内とすること。長期債務対GDP 比率は60%以内に収めることなどがあります。 経済学的には全く意味を持たない数字ですが、ユーロを維持するために必要な数値として政治的に導入されました。 今では、この基準が足を引っ張っていると言えるでしょう。 同時に、共通通貨導入による弊害も存在します。 例えば、ギリシャが債務危機で景気が悪化していても、独自に通貨を刷って景気回復をはかる金融政策が打てません。 これは、他のユーロ加盟国についても同じです。そのため、一国の危機がユーロ圏全体に波及する脆弱性を秘めています。 いくら、域内では資本と労働の移動が自由でも、通貨政策や金融政策は欧州中央銀行が決めなければ何もできません。 このままでは、欧州は景気後退を余儀なくされることでしょう。 債務危機の可能性は、ポルトガルやイタリヤも秘めています。よって、ギリシャ危機を回避したとしても、まだまだ予断を許さない状況なのです。 日本にはあてはめてはならない 私が懸念をしているのは、欧州の債務危機の対処法を日本経済にあてはめることです。さすがに、今年に入ってからは「日本のギリシャ化」を叫ぶ方は少なくなりましたが、依然として「欧州債務危機は対岸の火事としてみてはいけない」「財政再建を急ぐべきだ」「復興支援と財政再建を考慮して増税もやむ得ない」等の議論が横行する危険性は十分にあり得ます。 ユーロ圏経済と日本経済は、制度自体が違うわけですから、単純な比較は避けるべきです。参考にするくらいならよいとしても、「欧州もやっているのだから、日本も見習うべきだ」となると、日本経済のデフレ不況はさらに深刻化します。 政府が欧州債務危機と同じ路線に入るなら、今年の後半は世界経済にとっても厳しい現実が訪れかねません。 今やるべきは、緊縮財政ではなく景気回復であり、復興支援です。くれぐれも順番を間違ってはいけません。(文責・中野雄太) すべてを表示する « Previous 1 … 95 96 97 98 Next »