Home/ 国防・安全保障 国防・安全保障 米国が警戒する中国共産党のデジタル・レーニズムとは?【前編】 2019.10.10 本日は、9月末に収録された釈量子党首と渡瀬裕哉氏(パシフィックアライアンス総研所長)の対談「米国が警戒する中国共産党のデジタル・レーニズムとは?」をご紹介します。 ※下記は上記映像を要約したものです。詳しくは映像をご覧下さい。 (広報本部) ■米国が警戒する中国共産党のデジタル・レーニズムとは?【前編】 https://www.youtube.com/watch?time_continue=5&v=j8HueuQd0UY 【対談】釈量子党首×渡瀬裕哉氏(パシフィックアライアンス総研所長) ◆香港を巡るアメリカと中国の価値観のぶつかり合い 釈:今、アメリカで「香港人権・民主主義法案」の動きがありますが、このあたりを教えていただけますか。(※9月26日、米上下両院の外交委員会において「香港人権・民主主義法案」を全会一致で可決) 渡瀬:アメリカが、香港をどうとらえているかが、最大のポイントになると思います。 つい最近までアメリカは、中国が経済成長していくと最終的には民主化すると思っていました。香港が民主主義のモデルのようになって、これが広がっていくというイメージだったのです。 今起きていることは香港の民主主義がやられていることと、もう一つはHUAWEI(ファーウェイ)の問題です。 アメリカがHUAWEIを制裁している理由は、国民を監視するシステムが、海外に輸出されていくと、その国が中国共産党と同じ政治体制になるということを問題視しているからです。 釈:これは踏み込んだ見方ですね。ファーウェイは、それで儲けているだけでなく、いわゆる「14億人完全監視社会」をつくる仕組み自体を輸出している。 渡瀬:それを「デジタル・レーニズム」と言います。言わばアメリカは「自由・民主主義」を輸出している国なので、その「価値観」がアメリカと競合するのです。 アメリカにとって中国は、かつてのソビエトと同じ不倶戴天の敵だという認識に切り替わってきている。その変化が現れているということです。 釈:その変化というのは、まさに今回、香港でかなり象徴的に出てきたということですね。 この価値観の戦い、国の体制としての戦いの中に、やはり日本がどのような形で加わっていけるのか。どちら側を支援するのか。これははっきりさせなければいけないと思います。 渡瀬:日本は基本的にアメリカの同盟国ですから、アメリカと一緒にやっていく形をとることになると思います。 釈:なんですけれども、来年の春、習近平主席を国賓待遇することになっていますので、ある意味で戦略的沈黙を……。 渡瀬:日本はちょっとぬるいですね。この香港の話にしても、何を言うにしても。 釈:アメリカの政治判断の根源にあるのが、まさに「建国の理念」。「アメリカ合衆国憲法」などをもとに考えています。 渡瀬:「政治理念」が大事ということですね。 釈:LibertyとFreedomという言葉、必ず、そこから考える。もう一つはトランプ大統領が言う「アメリカ・ファースト」。「国益」で国の舵取りを考えているところが強いですね。日本はそういうところがまったくありません。 渡瀬:日本はその都度、場を見ながら、あっちへ行ったりこっちへ行ったりという感じで、海外からは信用されないです。 釈:幸福実現党は、どちらかというとトランプ政権と考え方が近く、ある意味、はっきりと、どちらへ行くべきかを考えているところがあります。 こういう動きに関して、私たちも注目しているのが、アメリカのペンス副大統領の動きです。 ◆ペンス副大統領の影響力 渡瀬:昨年10月のペンス副大統領の演説は、国防総省や保守系の方々が集まっている「ハドソン研究所」で行われ、いわば身内向けに、中国に対しての考え方について演説したものです。 今年6月に予定されていた演説は、中国共産党が政治体制として悪く、それが輸出されているという内容で、しかも「ウィルソン・センター」という外交や安全保障を超党派で考える場所でやるという話で、これは身内の会というよりは、国論になる可能性があります。 まだ中国との貿易交渉をやっているので、その交渉結果が10月半ばぐらいにははっきりするわけで、それまでペンス副大統領の演説を延期している感じだと思います。 釈:ペンス副大統領とトランプ大統領の関係は、どのような関係ですか? 渡瀬:私の理解では、トランプ政権は「ペンス政権」なのです。ペンス副大統領が主導権を持っていて、最初の組閣も全部、ペンス副大統領主導のはずです。 なぜかというと、閣僚を見ると、ペンス副大統領は共和党の保守派という派閥に属しているのですが、保守派がずらっと並んでいました。 トランプ大統領というのは人をクビにする時、Titterとかですごくののしるのですが、自分を脅かす可能性がある人は、一度も批判したことがないのです。 ペンス副大統領のことも、トランプ大統領は一度も批判したことがありません。 アメリカの仕組みでは、副大統領が本気を出して閣僚をまとめ上げると、大統領をクビにすることもできるので、ペンス副大統領の実質的な政権における影響力は、かなり大きいと思います。 この人は、政権の中で宗教関係の代表者です。共和党は宗教関係の力が非常に強いので、演説を読むとわかりますが、ペンス副大統領が言うことは基本的にすべて計算されています。 ペンス副大統領が言ったことは、基本的にやる。トランプ大統領が言ったことは、あとで覆ることもある。そんな感じです。 ですから、ペンス副大統領に注目することは、トランプ政権を理解する上で重要です。 (つづく) ※後編では、今後、次期米大統領選の行方を中心にお送りします。 「逃亡犯条例」改正案の「撤回」発言は真実か? 2019.09.04 「逃亡犯条例」改正案の「撤回」発言は真実か? 幸福実現党 政調会外交部会副部会長 彦川太志 9月4日、香港特別行政府のキャリー・ラム長官が「逃亡犯条例」改正案の完全撤回を表明し、大きなニュースとなりました。 現状では香港の民主活動家勢力が掲げていた「五大要求」の一部が実現する形に見える事から、「これでデモは鎮静化するのでは」と期待する見方も出てきておりますが、それほど楽観的に捉えるべきではないと考えます。 ◆「『逃亡犯条例』改正案は生きている」南華早報が専門家の意見を引用(※1) 事実、「逃亡犯条例」改正案の撤回について報じたサウスチャイナ・モーニングポスト紙の記事には、政府筋や議会手続きに関する専門家の意見として、「(「逃亡犯条例」改正案は)技術的に生きており、理論的には政府から立法評議会議長への直接通知によって再導入できる」との指摘※が掲載されています。 ※香港立法議会(国会に相当)の任期である2020年7月までは立法議題として存続しているという内容。 つまり、香港政府にとって「逃亡犯条例」改正案はすでに7月上旬の段階で「死んだ」のであり、今回の撤回発言は10月1日の中国建国記念日に向けた「見せかけの譲歩」に過ぎず、本質は何も変化していない。と捉えることが出来ます。 私たちは引き続き、香港の自由を守るために声を上げ続ける必要があるのです。 ◆今後、中国はどう出る?――民主派「分断」工作の可能性(※2) 一方の中国政府はどのような動きに出るのでしょうか。それを考えるに当たり、中国政府の香港・マカオ弁公室の楊光報道官の発言を紹介したいと思います。 楊光報道官は、「逃亡犯条例」改正案の撤回に先立つ9月3日、香港デモについて「一部の暴徒が正常なデモや集会を過激なものとした」と批判し、「彼らの目的は逃亡犯条例の改正とは全く無関係であり、外国勢力や反中国、香港の混乱を目的とする勢力の尖兵となることを厭わない」と主張しました。 さらに「一部の暴徒」の目的は、「一国二制度」に挑戦し、有名無実化することにあると指摘し、「暴力犯罪の背後で策動している者、主催者や指揮者は徹底して追求し、手を緩めてはならない」と述べているのです。 こうした論調を見れば、「逃亡犯条例」改正案の撤回で事態が鎮静化する、と言った見方をすることはできないでしょう。 今後、中国や香港政府は香港デモの中心的メンバーを「外国勢力と結託し、一国二制度に挑戦する暴徒」として扱い、民主活動グループの分断を図ってくる可能性があると考えられます。 「中国政府も譲歩したのだ。だからデモ隊も過激な抗議は控えたらどうか―」そのような見方に同調してしまったら、香港の自由を守ることはできません。 今立ち上がらなければ、手遅れになってしまう。そうした危機感があるからこそ、香港デモはあれだけの広がりを見せたのです。 ◆「一国二制度」は成立しない。中国に「自由・民主・信仰」の思想を打ち込もう そもそも、事の元凶は「返還以降、50年間は香港の高度な自治を守る」とした約束を中国政府が「反故」にし、民主活動家の弾圧を可能とするような条例改正を押し進めようとしたことにあります。 今回、香港の若者が立ち上がったことで、香港の「自由と民主主義」と中国政府の「全体主義」と両立することはできないと言う事が、誰の目にも明らかとなりました。 中国政府が全体主義の体制を続ける限り、「一国二制度」は成立不可能なのです。 たとえ一時期、譲歩したように見えても、中国政府は香港の自由を奪う野心を一ミリも後退させることはありません。 そうであるならば、中国政府が自由、民主、そして信仰の価値を認めるところまで、私たちは活動を進めるべきだと考えます。 香港のデモ活動を率いたアグネス・チョウ氏やジョシュア・ウォン氏も、「改正案の完全撤回」のほか、「警察と政府の、市民活動を『暴動』とする見解の撤回」「デモ参加者の逮捕、起訴の中止」「警察の暴力的制圧の責任追及と外部調査実施」「林鄭月娥の辞任と民主的選挙の実現」の5つの要求が実現するまで戦い続ける覚悟を訴えています。 香港の自由を守り、台湾やアジア諸国の平和を守るためにも、幸福実現党は引き続き、「幸福実現NEWS特別版」(※3)の配布を始めとした活動を展開して参ります。 多くの皆様のご支援、ご賛同を賜りますことを心よりお願い申し上げます。 (※1)SCMP 2019/9/4 Hong Kong leader Carrie Lam announces formal withdrawal of the extradition bill and sets up a platform to look into key causes of protest crisis (※2)新華網 2019/9/3 国務院港澳弁:已到維護“一国両制”原則底線和香港繁栄穏定重要関頭 (※3)「幸福実現NEWS特別版」 https://info.hr-party.jp/files/2019/08/27170229/g7r389ol.pdf 今こそ、憲法九条改正! 2019.07.25 今こそ、憲法九条改正! 幸福実現党 政調会外交部会副部会長 彦川太志 ◆自民党の加憲案では日本を守れない 参議院選挙から一夜明けて、安倍総理は「令和の時代にふさわしい憲法改正案の策定に向かって、我が党は強いリーダーシップを発揮していく」と憲法改正に向けて意欲を語りました。 しかし自民党が主張する憲法九条の「加憲」で、本当にこの国の安全を守ることはできるのでしょうか? 「戦力の不保持、交戦権の否認」を規定した第二項を残したまま、「第三項で自衛隊の存在」を位置づけたところで、実質的に日本の防衛体制に変化があるわけではありません。 つまり、自民党の「加憲」案では、「中国の覇権主義や中東からのシーレーンの問題など、安全保障上の危機をどうするのか」という、一番大事な問題を解決することができないのです。 「改憲議論」の中身が、まるで言葉遊びのような「加憲」の是非を問うというのであるならば、これは右も左も取り込もうという「党利党略」のための政策であると言わざるを得ません。 ◆加憲では、自衛隊は「不測の事態」に対処できない 6月に起きたタンカー攻撃事件などについて、「海上警備行動で対応できるのだから、憲法を改正しなくても個別的自衛権で十分対応可能ではないか」との意見もあるかと思います。 しかし、今のままでは自衛隊は、「法律に列挙されている行動しかできず」、「法律に書かれていない行動はできない」というのが現実です。 これは、警察と同じ、出来ることを定める「ポジティブリスト型」で自衛隊の行動が決められているために生じている問題であり、「事前に想定されていない事態に自衛隊は対応できない」ことを意味しています。 しかし、「事前に完全に想定できる脅威」などあるはずがありません。 例えば、米ソ冷戦が終結してから以降の「北朝鮮の弾道ミサイル」や「海賊対処」、「在外邦人の保護」などについては、後から自衛隊法の改正によって自衛隊の任務として追加されていったというのが実態です。 このような状況では、現在自衛隊法でまったく想定されていない事態、例えば、尖閣諸島に国籍不明の船員が突如上陸を開始し、9.11テロのように民間機を用いたテロ攻撃が行われた場合、自衛隊は法律上対処できないことを意味しています。 これらの問題は、自衛隊を「軍隊」として憲法に規定していないことに原因があります。 幸福実現党は、自衛隊をきっちりと「戦力」として規定し、国民の生命・安全・財産を守る「国防軍」として位置づけなければならないと考えています。 中国の覇権主義によって緊迫化するアジア情勢に対応するためにも、ポジティブリスト型で自衛隊の作戦レベルの行動まで縛るべきではなく、国際標準のやってはいけないことだけを定めるネガティブ・リストに改め、自衛隊の対応能力を高めて行くよう、憲法を改正するべきです。 ◆加憲では、本当に必要な装備の開発ができない また、現行憲法では「専守防衛」の考え方の下、自衛隊は本当に抑止力になる装備を開発・保有することができません。 例えば、北朝鮮や中国の弾道ミサイルを抑止するためには、弾道ミサイルや長距離巡航ミサイルなど、敵基地攻撃能力を保有しなければなりません。 しかしながら、憲法九条を改正し、自衛隊を「国防軍」と位置づけなければ、自衛隊は攻撃型装備の開発をすることすらできません。 高い技術力と経済力を持つ日本が本格的に防衛装備の開発を行うことができれば、高い抑止力を持った装備品を開発することができます。自衛隊の抑止力を「装備」という面から高めて行くためにも、憲法改正が必要です。 ◆憲法九条は「自虐史観」の象徴 しかしながら、野党は憲法改正の議論に加わることすら拒絶しております。野党の姿勢は、「国民の生命・安全・財産を守る」という政治の基本的な責任を放棄するものと言わざるを得ません。 九条を全面的に改正して、自衛隊を国防軍と位置づけることを主張しているのは、幸福実現党だけです。 政府に「国民の生命・安全・財産を守ろう」という気概があるのであれば、堂々と憲法九条を全面改正し、国防軍の設置を明記すべきではないでしょうか。 私たち幸福実現党は、憲法九条は「自虐史観」の象徴だと考えています。 自虐史観とは、「先の大戦で日本はさんざん悪さをして迷惑をかけたのだから、軍隊など持ってはいけないのだ」という考え方です。 憲法改正の議論すら拒絶する野党も、改憲を正面から主張しない自民党も、共に「自虐史観」によって「永遠の現状維持」から脱却できていないことは明らかです。 ◆日本の「自虐史観」が、中国の軍拡を野放しにした 日本が「自虐史観」に染まっている間に、お隣の中国はすっかり恐ろしい国に変貌してしまいました。 海を隔てたお隣の国で、近年、ウイグル人に対する恐ろしい人権弾圧の実態が明るみに出ています。100万人から200万人のウイグル人が強制収容所に入れられ、自分たちの信仰や文化を捨てるよう、弾圧を受けているのです。 香港のデモも、その中国に飲み込まれて自由を失うことを拒否し、自由を守るために若者たちが立ち上がっています。 また、中国は核ミサイルを保有し、急速な軍拡によって台湾の独立や南シナ海の国々の主権を軍事的に脅かしています。台湾も必死に抵抗しようとしています。 マッカーサーが押し付けた占領憲法と自虐史観を70年以上も墨守してきたことが、かえって中国の覇権主義を助長してしまったことは否めません。 日本国憲法が成立したころと比べて、国際環境は大きく変わりました。今こそ「自分の国は自分で守る」決意を固め、憲法九条の全面改正に取り組むべきではないでしょうか。 中国のように、覇権拡大のために軍事力を行使することを躊躇しない国に対しては、日本も憲法九条を改正し、真っ当な抑止力を持たなければなりません。 そして、米国と歩調を合わせて台湾との関係を強化し、「中国に武力紛争を起こさせない」国際的な連携を強めていくべきだと考えています。 幸福実現党は宗教政党として、「自由・民主・信仰」の哲学に基づき、日本が世界の大国としての使命を果たせるよう、今後も活動を続けてまいります。 防衛予算倍増で同盟強化と自主防衛の推進を 2019.07.19 防衛予算倍増で同盟強化と自主防衛の推進を HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆対中抑止に前向きな米陸軍長官が次の国防長官代行に 7月中旬に入り、米国の安全保障について、2つほど重要なニュースが流れています。 その一つは、次期国防長官に指名されたマーク・エスパー氏(当時は陸軍長官)が、7月16日に上院で公聴会を行ったことです。 エスパー氏は1986年に陸軍士官学校を卒業した後、91年に空挺師団の一員として湾岸戦争に参加。 10年間の軍役を務め、国境警備隊等でも11年務めた後、2007年に陸軍から引退しました。 その後、米防衛大手レイセオン社で7年ほど、政府との交渉を担う重職を担っています。 同氏は、トランプ政権発足後、防衛長官を支えてきたのですが、前任者のシャナハン氏の辞任に伴い、後任に指名されました。 エスパー氏は、ロイター通信の取材で、90年代から中国の軍拡をウォッチングし続けてきたことを明かしています。 「中国との競争、中国の能力といったことは私にとって新しい話題ではない。私はこの進展を20年以上見続けてきた」 同氏は、上院の公聴会では、今後、米軍が中距離ミサイル等を配備することを明かしました。 8月2日には、米露間で「INF全廃条約」が失効しますが、トランプ政権は、米露が射程500~5500kmのミサイル開発と配備を禁止している間に短・中距離ミサイルを増やしてきた中国を抑止しようとしているのです。 こうした、中国の軍拡に対して強い警戒感を持ったリーダーが米軍を率いることは、日本の安全保障にとってはプラス要因になります。 ◆米国防予算案 民主党が下院を制しても7000億ドル台 2つ目の重要なニュースは、7月12日に、米下院で「国防権限法」が可決され、2020年度の軍事費が7300億ドル以上になることが決まったことです。 19年度は7160億ドルなので、民主党が下院を制しても、防衛費の増額は止まりませんでした。 上院では軍事費を7500億ドルにする法案が可決されているので、今後、両院の交渉で金額が決まる見込みです。 民主党が主導した下院でも軍事費が減らないのは、米国には「国防は大事」「国益を守るためには強い軍隊が必要」という共通認識があるからです。 中国の軍拡を見ても、防衛費をたいして増やさない自民党や、防衛費を下げようとする野党とは、大きな違いがあるようです。 (※トランプ大統領は、今後、「メキシコの壁」建設費も含めて、最終案の内容を上院案に近づけるべく、拒否権などを用いる可能性がある) ◆増え続ける中国の軍事費 20年で11倍 トランプ政権に入り、米国の軍事費は3年連続で増え続けています。 それは、中国の軍拡に対抗するために、米軍の再建が必要だからです。 中国の公表軍事費は、20年間で約11倍になりました。 1999年に1047億元だった軍事費は、2019年に1兆1899億元(=約20兆円)にまで増えたのです。 中国はGDP比1.3%しか軍事費を使っていないと主張していますが、米国防省は、その発表を信じていません。 そこには「研究開発や外国からの兵器調達などの重要な支出項目」が入っておらず、軍事支出は「公表国防費の1.25倍以上」あるとみているのです(※これは、米国防省議会報告書(2017年6月)をもとにした防衛省の見解) 中国の軍事費は透明性が低く、中国軍事研究家の平松茂雄氏は「国家財政支出のなかの国防費は、人件費、部隊の日常運用費、兵器・技術の取得費などの消耗性の支出であり、兵器・装備を研究・開発・生産する費用は含まれていない」(『中国の軍事力』)とも指摘していました。 これは、実額が公表値をはるかに上回る不透明な軍事費なのです。 ◆同盟国にも「防衛費増額」を求めるトランプ政権 そして、トランプ政権は、NATO(北大西洋条約機構)加盟国に「GDP比で2%の防衛費負担」を求めています。 これは、大統領だけではなく、閣僚が訪欧するたびに訴え続けてきた重要議題です。 今まで、日本はこれを他人事のように見てきましたが、米中対立が本格化する中では、日本にも、その程度の防衛費の拠出が求められるでしょう。 GDPを増やすとともに、GDP比に占める割合を2%台にまで上げなければ、とうてい、中国の軍拡には対処できないからです。 ◆世界では「GDP比2%」の防衛費を使う国は珍しくない 実際、GDP比で2%程度の防衛費を使っている国は、かなりあります。 (以下、ストックホルム国際平和研究所の調査〔2018年の比率〕) ・イギリス、台湾:1.8% ・豪州:1.9% ・フランスとベトナム:2.3% ・インド:2.4% ・韓国:2.6% ・シンガポール:3.1% ・アメリカ:3.2% ・ロシア:3.9% 世界で、GDP比2%の防衛費を用いる国は、珍しくありません。 ◆安倍政権でも、日本の防衛費はたいして伸びていない 左派陣営は安倍政権が防衛費を増やしていることを批判しますが、実際は微増にすぎません。 同時に物価も上がっているので、実質で見ると、年1%程度にすぎないからです。 2014年から2018年までの防衛関係費(米軍・SACO関連経費を含む)は、名目値で3063億円増(伸び率は約6.3%) しかし、同時期の物価は約2.1%上がっているので、実質伸び率は4年間で4.2%。 年間では1%程度になるからです。 ◆防衛予算が増えない中で、米国兵器を買い続ける日本 日本の防衛予算は、3分の2以上が維持費で消え、3分の1で研究開発や装備の更新、新兵器の導入等を行っています。 【平成30年度の防衛予算の内訳】 ・人件/糧食費:44.2% ・維持費等:23% ・装備品等購入費:16.6% ・基地対策経費:9% ・施設整備費:3.5% ・研究開発費:2.6% ・その他:1.2% この中で、安倍首相はトランプ政権に対して、米兵器の購入額の増加を約束しました。 ◆主権国家には自国内の防衛産業が必要 確かに、F35は必要ですが、今のお金の使い方には問題があります。 その一つは、予算が増えない中で米国兵器ばかりを買うと、防需を担う日本企業に払うお金が減り、防衛の生産基盤を維持できなくなるということです。 F2戦闘機の生産は止まっているため、新たな戦闘機の開発を軌道に載せなければ、F35を買っている間に国内の技術者が離散し、日本は「戦闘機の作れない国」になってしまう危険性があります。 また、国際政治アナリストの伊藤貫氏は、米国の兵器は「ブラックボックス」で管理されているので、もし、将来の大統領が「中国とは戦わない」と決めたならば、日本に売った兵器をすべて止めることが可能だとも指摘していました。 こうした現実があるので、フランスやスウェーデンは、米国と連携しながらも、長年、国産戦闘機の開発を続けてきました。 新型戦闘機の開発には「兆」の単位のお金がかかります。 そのためには、防衛予算の倍増が必要なのです。 ◆防衛予算の倍増を訴えているのは、幸福実現党のみ 防衛予算の倍増は、日米同盟を維持するためにも必要です。 また、主権国家としての防衛体制を築くためにも必要です。 「防衛費を減らして福祉に回せ」と語る野党や、防衛予算の倍増を打ち出せない自民党は、こうした、日本の存亡をかけた問題から目を背けています。 幸福実現党は、真剣に日本を憂う人々の選択肢となるべく、妥協だらけの自民党では言えない正論を訴えてきました。 今後も、日本国民の生命と安全と財産を守るべく、幸福実現党は責任政党としての役割を果たしてまいります。 【参照】 ・ロイター通信「アングル:次の米国防長官代行、中国脅威論者エスパー氏の横顔」(2019/6/20) ・日経電子版「米次期国防長官『中距離ミサイル開発を推進』INF失効にらみ」(2019/7/17) ・朝日新聞デジタル「米下院、国防権限法案を可決 共和党議員の賛成ゼロ」(2019/7/13) ・読売オンライン「米国防予算79兆円…権限法成立、中露に厳しく」(2018/8/14) ・SIPRI “Military expenditure by country as percentage of gross domestic product, 1988-2018” ・田村重信著『防衛政策の真実』(育鵬社) ・時事ドットコム「【図解・国際】中国国防費の推移」 ・平松茂雄著『中国の軍事力』(文春新書) ・防衛白書(平成30年版) ・総務省「2015年基準 消費者物価指数 全国)(2019年(令和元年)5月分) ・防衛省「中国情勢(東シナ海・太平洋・日本海)」(2018年2月2日) ・チャンネル桜「【平成30年 年末特別対談】伊藤貫氏に聞く」(2018/12/30) 【憲法世論調査】安倍改憲案では「世論の壁」を破れない 2019.07.18 【憲法世論調査】安倍改憲案では「世論の壁」を破れない HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆参院選投票日前に各社が世論調査を実施 投票日が近づく中で、メディアは憲法に関する世論調査を行っています。 各社の調査を見ると、おおむね4割程度の方が改憲に賛成しており、この議論をタブー視する風潮は薄れてきました。 ◆改憲に賛成する国民は4割程度 各社の結果の概要を整理します。 ▽時事通信社(7/5~8実施。対象者は18歳以上の男女2000人) ・(憲法改正について)「選挙後に議論を進めること」への賛否を問うた。 ・「賛成」41.2%/「反対」26.3% ・「どちらとも言えない・分からない」32.6% ▽日本経済新聞社+テレビ東京(6月末実施) ・自衛隊の存在を明記する憲法改正について、「賛成」と「反対」はともに38% ・この改憲案に自民支持層の59%、公明党支持層の40%が「賛成」 ・立憲民主党支持層の77%、共産党支持層の76%が「反対」 ※年齢層別に見た賛否は以下の通り。 ・18~39歳:「賛成」46%/「反対」30% ・40~50歳代:「賛成」41%/「反対」37% ・60歳以上:「反対」44%/「賛成」32% ▽朝日新聞社(7月13~14日、調査対象は1000人) ・「与党と、憲法改正に前向きな日本維新の会などが、参議院の3分の2以上を占めた方がよいと思いますか。占めない方がよいと思いますか」と質問 ・「占めた方がよい」が37%。「占めない方がよい」が40%、「その他・答えない」が23% ▽産経+FNN合同世論調査(7/14、15実施) ・「憲法改正に前向きな勢力が国会の改憲発議に必要な3分の2以上を占めた方がいいと思うか」を質問 ・「思う」が42.8%、「思わない」が38.8% ▽ANN世論調査(7/13、14実施) ・「憲法改正を進めたい政党が発議に必要な3分の2を確保した方が良いか」を質問 ・「良いと思う」40%、「思わない」37% ・9条改正は「賛成」33%、「反対」59% ◆高齢世代は護憲に傾き、若年世代は改憲寄り? 各社の調査にはばらつきがありますが、30数%から40%程度の国民は九条の改憲に肯定的です。 近年、北朝鮮の核開発の進展や中国の覇権拡大の野心が明らかになり、日本国民の中でも、改憲に賛成する人が増えてきたことが伺えます。 ただ、ここでいう改憲案は、安倍政権の「自衛隊の根拠を明文化」するプランが想定されているので、他の改憲案だと、数字が変わりそうです。 この中で、特に注意が必要なのは、日経が行った世代別の調査です。 護憲派が強い影響力を持っていた頃に学校教育を受けた高齢世代が改憲に否定的なのに対して、冷戦の終わり頃から平成初期に生まれた世代では、改憲への賛成派が上回っています。 世代交代もあって、改憲派は護憲派にひけを取らなくなってきましたが、全体的に見れば、まだ、九条改正を実現するには十分な数字ではありません。 ◆皮肉にも、日本国民よりも米国民のほうが日本の国防強化に肯定的 各社の調査を見ると、まだ、日本の世論は9条改正や国防強化に強い支持を与えていないことがわかります。 しかし、日本の国防強化に関しては、海外の国民は違った目で見ています。 特に、同盟国であるアメリカ国民は、日本の国防強化を強く支持しているのです。 その数字を、平成30年度の「海外対日世論調査」(2019/5/22発表)で見てみましょう。 「日本は防衛力を増強すべきと考えるか」という設問への賛否は以下の%で推移しています。 (2017年⇒2018年) ▽一般国民の返答 ・「増強すべき」:46%⇒43% ・「そうは思わない」:14%⇒19% ・「わからない・回答拒否」:40%⇒38% ▽有識者の返答 ・「増強すべき」:67%⇒69% ・「そうは思わない」:24%⇒24% ・「わからない・回答拒否」:9%⇒8% 一般国民でも有識者でも、日本は防衛力を増強すべきだと考えている人のほうが多くなっています。 「増強すべき」と答えた人の数は、「そうは思わない」と答える人の2倍以上です。 皮肉な話ですが、日本国民よりも、米国民のほうが、日本の国防強化に肯定的なのです。 ◆安倍政権の論理で国民に「改憲」を納得させることはできない 日本でも、憲法改正の議論ができるようになりましたが、改憲を実現するには、もう一段の意識変革が必要です。 そして、自民党のように、自衛隊と交戦権を否定する9条の矛盾に目をつぶっていては、国民の側も「なぜ、改憲が必要なのか」という理由が分かりません。 安倍首相は、改憲しても「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」と述べていますが、そう聞いた国民が「だったら、改憲する必要はない」と考えるのは当然だからです。 「今の条文でも自衛隊を運用でき、書き込んでも何も変わらない。しかし、改憲が必要だ」という論理には、無理があります。 改憲が必要なのは、日本国憲法ができたばかりの頃のように、米国に安全保障を任せ切ることができなくなったからです。 中国の軍拡や北朝鮮の核開発が進み、日米同盟は不公平だと主張するトランプ大統領は、さらなる防衛努力を日本に求めています。 もっと日本は自国を守る努力をすべきだという考えが米国内に根強くあることは、前掲の世論調査でも明らかです。 今後の日本は、軍隊と交戦権を否定し、「自衛隊は盾。米軍は矛です。戦いは米国にお任せします」と逃げ続けることはできません。 日本が主体的に戦わない限り、米国軍人が日本を守るために戦ってくれることはありません。 だからこそ、改憲が必要になるのです。 こうした、当然の説明から逃げているのが自民党です。 ジャーナリストの田原総一朗氏は「自民党議員はみんな憲法から逃げている。議員が憲法から逃げて、国民がOKするわけないじゃないか!」と言っていますが、これは正鵠を射た発言です。 幸福実現党は、憲法九条の根本改正から逃げず、1項と2項を含めた根本改正を訴えてまいります。 自衛隊を「軍隊」とし、民主主義のもとで軍を統制し、国民の声明と安全と財産を守らなければならないからです。 【参照】 ・時事ドットコム「内閣支持微減43%=改憲議論「賛成」4割-時事世論調査」(2019年7月12日) ・日経電子版「内閣支持率49% 憲法改正は賛成・反対とも38%」(2019/7/14) ・朝日新聞デジタル「世論調査―質問と回答〈7月13、14日〉」(2019年7月14日) ・産経ニュース「【産経FNN合同調査】参院選最重視は社会保障42%」(2019.7.16) ・tv asahi GO「世論調査 2019年7月調査」 ・外務省HP「平成30年度海外対日世論調査」(令和元年5月22日) ・ITmedia「田原総一朗が憲法9条で安倍首相を斬る――『“改憲した総理”になりたいだけ』」(服部良祐, 今野大一,2019.6.25) 「改憲」の中身を失った自民党 交戦権なき自衛隊は使命を果たせず 2019.07.17 「改憲」の中身を失った自民党 交戦権なき自衛隊は使命を果たせず HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆安倍首相は「改憲した首相」になりたいだけ? ジャーナリストの田原総一朗氏が、春頃から、安倍首相への批判を強めています。 6月下旬には、安倍首相は「『戦後初めて憲法改正した総理大臣』になりたい」だけで、改憲の「中身は関係ない!」とまで断じていました。 そう語気を強めるのは、安倍改憲案は「憲法と自衛隊の存在」が「明らかに矛盾している」ことを無視しているからです。 「交戦権」を否定した条文(9条2項)を残したまま、3項に「自衛隊」を足すと、自衛権を発動した時に、2つの条文が矛盾してしまいます。 「自衛隊はあっても交戦権はない」というおかしな憲法になるので、この案を「インチキだ」と批判しているのです。 (※田原氏は憲法改正そのものに反対しているわけではなく、内容を問題視している) ◆本音では、安倍首相は、もう改憲には関心がない? 田原氏は、安倍首相が、こんな案でも納得できるのは、「内容」への関心を失い、戦後初の「憲法改正した総理大臣」になりたいとしか思っていないからだ、と見ています。 その例として、前回(2016年)の参院選の後に、田原氏が「いよいよ憲法改正だね」と言った時、首相が言った言葉を取り上げていました。 ・「大きな声では言えないけれど、(略)憲法改正をする必要は全く無くなった」 ・「集団的自衛権の行使を認めるまでは、アメリカがやんややんやとうるさかった。『日米同盟はこのままでは続けられない』と言うまでうるさかった。集団的自衛権の行使を(安倍内閣で)認めたら、何も言わなくなった。だから憲法改正をする必要はない」 要するに、安倍改憲は「自分の国を自分で守る」ためではなく、米国の要望に答え、批判を封じるための条文改正にすぎないわけです。 防衛が強化されたように見えればよいので、実際の「内容のよしあし」はどうでもよいのです。 ◆「改憲」の中身を問えない自民党のイエスマン議員団 自民党で安倍案に異を唱えたのは石破茂氏ですが、他の議員は、同じように扱われるのを恐れて、今の改憲案に追随しています。 小選挙区制だと、執行部から公認をもらえるかどうかが死活問題になるため、議員はみなイエスマンになりました。 そして、憲法改正を真っ向から訴えても、国民から得られる票が少ないと見て、選挙で年金問題ばかりを語っています。 結局、「自民党議員はみんな憲法から逃げている」(田原氏)わけです。 ◆残念な改憲案で自民党が「終わる」までの経緯 憲法から逃げてきたのは、自民党の歴代政権も同じです。 田原氏は、自民党は「憲法を逆手にとってアメリカの戦争に一切巻き込まれず、平和や安全保障はアメリカに責任を持たせ」てきたと指摘しています。 その典型は、ベトナム戦争における佐藤栄作首相の外交です。 当時、米国に「ベトナムで一緒に戦おう」と言われた時、佐藤首相は「一緒に戦いたい。しかし、あなたの国がこんな難しい憲法を押し付けたから、戦いに行けないじゃないか」という論理で切り抜けたのでした。 また、田原氏が、自衛隊について「こんな戦えない軍隊でいいのか」と竹下登首相に聞いた時、竹下氏は「戦えないからいいんだ。戦っちゃうと大東亜戦争(太平洋戦争)だ、負けるに決まっている。戦わないから日本は平和なんだ」と言ったそうです。 まったく、安全保障の責任者とは思えない発言です。 結局、自民党政権は安全保障を米国に依存してきました。 主権国家・日本を取り戻そうとしたのは、岸信介ぐらいまでで、改憲の党是は、限りなく形骸化していきました。 その最終形が、今の自民党の改憲案だとも言えます。 ◆現場に行かない政治家は、不合理な改憲案でも、何も困らない 結局、政治家がいい加減な改憲案をつくった場合、その負担は、すべて自衛隊に押し付けられます。 今の自衛隊は「軍隊」ではありません。 自衛隊は、消防隊や徴税職員などと同じ行政機関の一つ(「執行機関」)なので、根拠法令のある範囲でしか動けません。 例えば、自衛隊は2000年代にインド洋で米軍への給油活動をしていましたが、その時も、日本のタンカーの防衛は多国籍軍に依存していました。 2007年にソマリア沖のアデン湾で日本企業が保有するタンカーが海賊に乗っ取られた時、救援にあたったのは米駆逐艦やドイツのフリゲート艦などです。 近海にあたる北部インド洋にいた日本の護衛艦は、法令の根拠がなかったので、タンカー防護に動けませんでした。 (※当時、「テロ特措法」に基づいて給油活動をしていたが、この法律には「海賊の追跡や監視、あるいは海賊被害を受けた日本船に対する救援活動は何も任務に含まれていない」ため、海自は動けなかった) そして、米軍がインド洋で自衛隊の給油活動を切望しても、2010年に法律が期限切れとなると、海自の艦艇は帰国するしかありませんでした。 結局、今の体制は、法令でがんじがらめなので、融通がききません。 さらに、憲法9条から生まれる「専守防衛」の原則は、自衛隊に後手に回ることを強いるので、ミサイルなどで先に攻撃された部隊が壊滅する危険性もあります。 九条1項や2項も含めて根本改正し、自衛隊を「軍隊」として認めないと、自衛隊は「国民の生命と安全と財産を守る」という使命を果たせません。 有事に日本の領土や領海を守れず、海外の活動では、諸外国の信頼を失う恐れがつきまといます。 自衛隊の根拠条文を追加するだけでは、こうした問題は解決できません。 ◆自民党案では、結局、何も変わらない 結局、自民党がいう「自衛隊を合憲化すること」と「自衛隊を軍隊と認めること」は、別の問題です。 この有名無実化した「改憲案」に替わるべきなのが、憲法9条の1項、2項を含めた全面改正です。 自衛隊を「軍隊」と認め、自衛のために交戦は起こり得るものだという現実を直視し、民主国にふさわしい軍のコントロールを確立しなければいけません。 そして、国民の生命と安全と財産を守るために、自衛隊が国際法に則って、機動的に動ける体制をつくります。 これを日本で今、訴えている政党は、幸福実現党だけです。 改憲の中身を見失った自民党ではなく、今こそ、根本的な九条改正を訴える勢力が必要とされているのです。 【参照】 ・ITmedia「田原総一朗が憲法9条で安倍首相を斬る――『“改憲した総理”になりたいだけ』」(服部良祐, 今野大一,2019.6.25) ・週刊朝日「田原総一朗『安倍改憲案への石破氏の異論は正論である』」(「ギロン堂」2018.2.8) ・北村淳著『米軍が見た自衛隊の実力』(宝島社) 米国が台湾に新型戦車を売却 日本は何もしないのか 2019.07.12 米国が台湾に新型戦車を売却 日本は何もしないのか HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆議会での立法に基づいた台湾支援 トランプ政権は、7月8日に、戦車や地対空ミサイルなどを含む22億ドル(約2400億円)の兵器について、台湾への売却を承認しました。 主な兵器は、イラク戦争などで活躍したM1A2エイブラムス戦車108両と、携帯式地対空ミサイル(スティンガー)です。 これは、台湾への武器売却促進などを定めた「アジア再保証推進法」(18年末成立)に基づいた措置です。 ◆次は戦闘機の売却か 台湾は、中国の軍拡に対抗するために、米国から最新型のF16戦闘機(C/D)やエイブラムス戦車の導入を目指してきました。 戦車は中国軍の上陸を阻止するための装備ですが、空の守りを固める戦闘機がなければ、それを有効に使えません。 そのため、次は、戦闘機の売却が焦点となります。 オバマ政権はF16の売却を拒んだので、トランプ政権が戦闘機売却に踏み込むかどうかが注目されているのです。 ◆拡大する中国空軍との戦力差 中国と台湾の空軍力を比べる時は、普通、近代化された戦闘機(第四世代型以降の戦闘機)の数を比較します。 この基準でみると、852機を持つ中国軍に対して、台湾軍は327機しかないので、大幅な差がついています(※1)『平成30年度 防衛白書』の数値)。 中国軍は旧型機も含めると1500機の戦闘機を持っており、中国東部と南部には600機が配置されているので(※2)、327機の台湾空軍では応戦しきれません。 中台で戦争となれば、1000発以上の短距離弾道ミサイルで基地や空港等が狙われ、他の戦区の戦闘機も応援にかけつけるので、台湾軍は不利な戦いを強いられます。 (※米国防総省の報告書によれば、中国は750~1500発の短距離弾道ミサイルを保有。旧型機でも、複数機で一機を攻めたり、敵機のミサイルを消耗させたりできるので、軽視はできない) ◆中国空軍は次々と新型機を投入 台湾空軍の主力は、冷戦後期に運用が始まった戦闘機が中心です。 (具体的には、F16の旧型版(A/B)144機、と国産戦闘機「蒋経国」128機、フランス製の「ミラージュ2000」55機 ※1) しかし、中国軍は、ロシアからそれ以降の新型機(Su30やSu35)を大量に買い、国産戦闘機(J10やJ15、J16)も開発しています。 オバマ政権の頃から台湾軍は劣勢でしたが、中国との関係を重視し、米国は台湾に新型戦闘機を売りませんでした。 ◆戦車だけではダメ。どうしても新型戦闘機は必要 中国軍が台湾を攻める時には、「足が早い」ものから順に攻撃を開始します。 まず、サイバー攻撃が仕掛けられ、その後に、1000発以上の短距離弾道ミサイルを撃ち込みます。 レーダー等の通信機能を麻痺させ、空港から飛び立つ前に戦闘機の破壊を試みます。 そして、次に制空権を巡る戦いが起きます。 前述の新型戦闘機は、ここで台湾軍が持ちこたえるために、どうしても必要な装備です。 制空権がなければ、いくら戦車があっても、イラク戦争のように、空からの攻撃で破壊されることは避けられないからです。 (※中国軍が制空権を得た場合、「対地攻撃や制海権の確保」⇒「海上封鎖」⇒「上陸作戦」を展開する) ◆冷戦期から激変した台湾情勢 これから、トランプ政権が台湾支援に踏み込むかどうかは、我が国にとっても、重大な意味を持っています。 台湾が中国の支配下に落ちれば、日本の海上交通路(シーレーン)が脅かされるからです。 クリントン政権以来、中国の「巨大市場」を重視してきた米国が対中抑止に転じた今、日本も、今後の対策を考えなければなりません。 そのためには、米国や日本が中国と国交を結んだ頃とは、地域の情勢が大きく変わっていることをよく理解する必要があります。 当時、米国は、以下の条件のもとに「経済関係を促進しても大丈夫だ」と判断しましたが、それがもう成り立たなくなったからです。 (※3:以下、平松茂雄著『台湾問題』を参照) ①1970年代の中国軍は台湾を攻撃できず、台湾には中国軍の侵攻を阻止する力があった ⇒今は真逆 ②当時の中ソは軍事的に対立し、「北の脅威」があったため、台湾侵攻の余力はない ⇒今の中露関係は良好 ③中国近代化のために日本や欧米との関係強化が不可欠 ⇒今の中国は自国技術での発展が可能になりつつある 今の中台関係を維持するためには、むしろ、中国に強硬路線を取り、台湾を支援しなければいけなくなりました。 ◆日本版「台湾関係法」が必要 米国には、米中国交回復に対して、台湾を見捨てないために、議会が「台湾関係法」を制定しました。 これは、台湾軍を維持するための米国からの武器売却や、台湾有事での米軍出動の根拠となる法律です。 しかし、日本に、こうした法律は何もありません。 そのため、日本政府は「日本台湾交流協会」を通じてビザの発効を行い、人や船、飛行機の出入、経済関係の処理などを行っています。 しかし、これは民間機関であるため、安全保障に関わる案件は何もできません。 安全保障のために日台が情報を共有するなど、有事に必要な措置を取ることはできないのです。 そのため、幸福実現党は「日本版台湾関係法の制定」を訴えています。 日本と台湾が正式に外交を行うための根拠をつくり、そこには、FTA等で経済連携を強化することや、平和的ではない手段で台湾を支配しようとする試みに反対することを明記する必要があります。 そして、同盟国として米国の台湾支援に連携し、日本が自ら台湾との安全保障上の関係を強化することを盛り込むべきです。 米国は「一つの中国」を「認識」しながらも「台湾関係法」をつくったわけですから、日本がこうした法律をつくってはいけない理由はありません。 むしろ、40数年間も、台湾のために何も立法しなかった外交無策を反省しなければなりません。 【参照】 ※1:防衛省『防衛白書 平成30年版』 ※2:米国防総省 “Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2019” ※3:平松茂雄著『台湾問題』(勁草書房) 【公明党の問題点(1)】外交・安保の本音は旧民主党とたいして変わらない 2019.07.07 【公明党の問題点(1)】外交・安保の本音は旧民主党とたいして変わらない HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「改憲」に賛成する公明議員はわずか17% 7月3日、朝日新聞(朝刊)は、1面記事で、憲法改正に賛成する公明党議員は17%しかいないと報じました。 これは、朝日新聞社と東大の谷口将紀研究室の共同調査の結果です。 「賛成」と答えた割合を見ると、自民党が93%、日本維新の会が100%、全政党候補者の平均が45%なので、公明党の数字の低さが目立ちます。 公明党は「自民党の暴走を止めるブレーキ役になっている」と言うのかもしれませんが、それは野党で間に合っているので、むしろ、政策の違う政党が連立しているほうが問題だといえます。 立民党や国民民主党、共産党といった野党が政策の違いを無視して連携したことを、自民党は「野合だ」と批判しますが、結局、自分たちも同じ道に入り込んでいるわけです。 ◆各党の「改憲」への賛成・反対の比率は? 前掲の調査によれば、「改憲」に対する各政党議員の賛成・反対の比率は以下の通りです。 (以下、政党別に「賛成/反対」の比率を表記。足して100%にならない場合、残りが「どちらでもない=中立」) 自民党:93%(残りは、ほぼ「中立」) 公明党:17%/9%(中立74%) 維新の会:100% 立憲民主党:8%/78%(中立14%) 国民民主党:25%/43%(中立32%) 共産党:全員反対 社民党:全員反対 れいわ新撰組:1人が反対、1人が中立 「賛成」と答えた公明党議員の比率は国民民主党よりも低くなっています。 「中立が7割」なので、公明党議員の多くは、世の中の風向きを見て、この問題について態度を決めようとしています。 調査に対する山口なつお代表の返答もブレており、13年は「どちらかと言えば賛成」と回答したのに、19年は「どちらかと言えば変える必要がない」に変わっていました。 結局、憲法に関して、公明党は確たる信念がないわけです。 ◆公明党の公約のなかで「外交・安保」は後回しの項目 本年の公明党公約でも、「外交・安保政策」のやる気のなさは際立っています。 日米同盟を基軸にする自民党に追随するのみで、自衛隊強化の具体策は何もありません。 42ページの冊子の中で、35ページまでは福祉と経済の項目が並び、わずか3ページが外交・安保政策(P36~38)。 そして、気候変動対策と国会・行財政改革で3ページを埋め、最後に憲法についての曖昧なコメントで終わりという構成です。 自民党の9条への加憲案について、「多くの国民は現在の自衛隊の活動を理解し、支持しており、違憲の存在とは考えていません」と書いています。 しかし、それならば、「現実と合わない条文は変えるべきだ」という主張も成り立つので、公明党のスタンスははっきりしません。 結局、この文章は「慎重に議論されるべき」という結論で終わっています。 これでは、憲法に関して、何を主張したいのかがわかりません。 ◆公明党は「日米同盟」と「日中関係」のどちらが大事なのか? そのほかにも、公明党の外交・安保政策には問題点があります。 「日米同盟の強化」をうたい、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、米国に協力すると書きながらも「日中関係は、最も重要な二国間関係の一つ」としています。 トランプ政権が打ち出した「インド太平洋戦略」は、米豪日印で連携し、中国の覇権拡大に対抗するプランなので、公明党が大好きな「日中友好」とは、両立しません。 しかし、公明党は日中関係を「最も重要な二国間関係の一つ」と位置付けているので、同党にとって、最も重要な二国間関係は「もう一つ」あることになります。 つまり、公明党は、日米関係と日中関係を「最も重要な二国間関係」として、同じレベルで並べているわけです。 この発想は、民主党が09年に政権交代する際に唱えた「日米中正三角形論」と変わりません。 それは、日本と米国、日本と中国が同じ距離を取れば「正三角形」になるという考え方です。 これに関しては、生前に岡崎久彦氏が厳しく批判していました(※岡崎研究所HPから引用)。 ———- 「米国とは同じ同盟関係にあり、中国とはそうではない」 「つまり現時点で日米中が等距離の『正三角形』になるなどあり得ない」 「『米国とも中国とも仲良くしましょうよ』と言いたいだけなら、そんなものは外交論ではない」 ———– 二つの大国を天秤にかける外交は、両者から「どちらを取るのか」と詰め寄られた時に、矛盾が露呈してしまいます。 これはその場しのぎの発想にすぎず、最後には、米国と中国の双方から見放されてしまうでしょう。 ◆公明党の外交・安保政策は自民党よりも野党に近い 結局、公明党は、改憲賛成の議員の割合が旧民主党系の政党と大差なく、外交論も旧民主党の「日米中正三角形論」と似たような主張です。 要するに、野党と大差ない外交・安保政策を掲げながら、自民党と連立を組んでいるわけです。 この政策を掲げるのなら、与党として政権に入るべきではありません。 公明党は「小さな声を、聴く力」という標語を掲げていますが、小さな声を聴きすぎて、大きな国策の判断を間違えてしまったのでしょう。 しかし、幸福実現党は、もっと大局観を大事にしています。 トランプ政権の対中抑止策に協力し、インドやオーストラリアなどの国々とともに中国包囲網をつくることを掲げています。 また、台湾との関係を強化し、現政権が出した中国の「一帯一路」構想への協力方針を撤回しようとしています。 米中を天秤にかけるのではなく、旗幟を明らかにすることで、日本という国が生き残る道を拓いてまいります。 【参照】 ・朝日新聞 2019年7月1日付(朝刊1面) ・「公明党政策集 Manifest2019」 ・岡崎研究所HP「国連中心主義も日米中正三角形論もさっぱりわからない」(岡崎久彦、2010年2月10日) 中国が南シナ海でミサイル実験 日本は自主防衛の気概を 2019.07.06 中国が南シナ海でミサイル実験 日本は自主防衛の気概を HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆中国が南シナ海で対艦弾道ミサイルを発射 米国防総省は、7月2日に、中国が6月30日に南シナ海の南沙諸島で対艦弾道ミサイルの発射実験を行ったことを批判しました。 CNBCから、この件について問われた国防総省のイーストバーン報道官は、以下のように答えています。 「国防総省は、南沙諸島(スプラトリー諸島)近辺の人工島からのミサイル発射を知っていた」 「この行為は、2015年に習主席が米国やアジア太平洋諸国、世界に約束した『人工島を軍事基地化しない』という声明に反している」 G20で、米国が中国に追加関税をかけるのを延期し、貿易交渉が再開されることになった矢先にミサイル発射が行われたので、今後の展開が注目を集めています。 ◆「航行の自由作戦」への対抗措置 今回のミサイル発射は、中国が領有権を主張する南シナ海で米軍が駆逐艦等を航行させていること(「航行の自由作戦」)への対抗措置と見られます。 5月6日には駆逐艦2隻が南沙諸島のジョンソン南礁とガベン礁の12カイリ内を通り、19日にも駆逐艦1隻がスカボロー礁の12カイリ内を通過しました。 5月8日には米海軍のイージス駆逐艦と海上自衛隊、インド海軍、フィリピン海軍が国際海域で合同訓練を行っています。 また、19年に、米軍は毎月、台湾海峡で艦艇を通過させており、そこに英国やフランス、カナダなども参加するようになったので、中国は、この問題で妥協できないと判断したと思われます。 日本人的な感覚では「貿易交渉中に、なぜ?」と思いがちですが、中国の国家戦略では、南シナ海を中国の海とすることは死活的な国益に相当する重要課題とされています。 米国が交渉で一歩後ろに引き、大統領が訪朝時に対話路線を出したのを見て、中国は「どこまで自国の主張を米国に呑ませられるか」を読むために、際どい手を打つことを躊躇しませんでした。 これは、「貿易交渉がどうなろうが、南シナ海の覇権は譲ることができない」というメッセージだとも言えます。 ◆毎月のように続く、南シナ海での米中の応酬 6月1日にシャナハン米国防長官代行(当時)が「アジア安全保障会議」で「中国は他国の主権を侵害し、不信を抱かせる行動をやめるべきだ」と批判した後も、中国はミサイル発射実験を行っています。 米国側が容認できない活動として「紛争地域を軍事化し、先進兵器を配備すること」をあげた後に、「環球時報」が新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を報道していました(6/5英語版)。 つまり、毎月のように、米中の応酬が続いており、今回のミサイルは中国側の「7月の行事」だったのかもしれません。 ◆南シナ海が「中国の海」になったら、日本も台湾も危うい 既成政党の党首たちは、討論会でも第一声でも「米中の覇権競争が続く中で、日本はどう動くべきか」という重大な問題をまったく議論しませんでした。 「そんなことは票にならない」というのが本音なのでしょう。 しかし、この問題に対して、日本は「他人事」のような態度を取ることはできません。 なぜならば、南シナ海は日本に資源を運ぶシーレーンだからです。 中国の潜水艦が遠浅の東シナ海を航行する際には、浮き上がった時に発見されやすいのですが、台湾の東側には世界で最も深い海域があるので、ここを潜水艦が押さえれば、日本に物資を運ぶタンカーや輸送船などをいくらでも脅せるようになります。 また、中国が南シナ海を制すれば、台湾を中国軍が海から包囲できるようになります。そうなれば、台湾が中国の支配下に落ちるのは、時間の問題になるのです。 もう、南シナ海は、我が国の「専守防衛」の範囲を越えているとは言っていられません。 ◆潜水艦発射の核ミサイルで中国が米国を威嚇したら・・・ さらに、米国本土に届く核ミサイルを積んだ原子力潜水艦を、南シナ海に展開すれば、米国を核兵器で威嚇する時の「威力」が増します。 現在、中国がもつ4隻の原子力潜水艦(「普」級)は、中国近海からアラスカにまで届く核ミサイルを12発(射程7200km)ほど搭載しています。 これを南シナ海から太平洋へと展開すれば、計48発の核ミサイルで米国全土を狙えるようになるからです。 このミサイルは3個の核弾頭を積めるので、144発の核弾頭で米国全土を威嚇できます。 発見が困難な潜水艦に載せた長距離の核ミサイルは、先制攻撃にも反撃にも有利な最強兵器です。 中国は、これで米国全土を脅せる体制をつくり、アジアから米軍を追い出そうとしているのです。 (※この潜水艦搭載の長距離弾道ミサイルは「巨浪2」〔JL-2〕と呼ばれる) ◆中国は20世紀から覇権確立を構想していた 中国は、アジア支配の野望を抱き、20世紀から計画を実行してきました。 南シナ海の西沙諸島を軍事支配したのは1974年。 1980年には南太平洋のフィジー諸島沖合に向けて大陸間弾道ミサイルの発射実験に成功しました。 この時、弾頭を回収するために駆逐艦を含む18隻の船団が航行し、80年代以降に中国海軍が外洋に進出していきました。 この核実験から39年を経て、南シナ海を我が物にする構想を具体化してきています。 ◆中国の野心に対抗できるだけの「国家戦略」が必要 しかし、今の日本は、米国に依存する以外に、中国に対抗する策がありません。 中国の核には、米軍の核抑止力で対応することになっています。 しかし、中国が潜水艦からの核で米国全土を狙えるようになれば、米国にとって「日本を守るリスク」は大幅に上がります。 弱気な大統領であれば、「日米同盟を放棄して、中国と話し合ったほうがよい」という発想が出てきかねないわけです。 中国が核抑止力を完成させた時、もはや、米国の核に頼るだけでは不十分になります。 冷戦期の欧州は、ソ連の巨大な核に対して「英仏の核」(+NATO軍の核)と米国の核という二段構えで自衛する戦略を固め、安全を保障してきました。 英国とフランスに核ミサイルがあれば、ソ連が欧州に核攻撃した場合、英仏の反撃でソ連の戦力も破壊されます。この場合、同盟で参戦する米国と次の核戦争はできないので、ソ連は攻撃を思いとどまり、「核による抑止」が成り立つのです。 (NATO軍の核は実質的に米軍の統制下にある。これは独自核ではなく、核シェアリング) 幸福実現党が、日米同盟だけに頼る体制が不十分だと主張しているのは、今後の東アジアは、同じようなプランが必要になるぐらい厳しくなると見ているからです。 7月2日の産経(6面)の公約比較では、他政党が福祉や消費税についての訴えを並べる中で、幸福実現党だけが「自衛目的の核装備推進」を訴えていました。 これをみて驚かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、「核装備」は、どうしても必要な「国家戦略」なのです。 幸福実現党は、世に媚びず、責任政党として正論を貫き、日本を守るために力を尽くしてまいります。 【参照】 ・CNBC “Pentagon condemns ‘truly disturbing’ Chinese missile tests in South China Sea” (2019/7/3、Amanda Macias) ・平松茂雄著『中国、核ミサイルの標的』(角川ONEテーマ新書) ・米国防総省 “Annual Report on Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China”(2019/5/2) ※「巨浪2号」の性能は中国軍事研究家の平松茂雄氏と米国防総省の報告書を参照。 【党首第一声】筋が通らない野党 VS 使い古された自民党 2019.07.05 【党首第一声】筋が通らない野党 VS 使い古された自民党 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 4日に発された各党の党首第一声では、憲法や消費税、年金についての主張が目立っていました。 ただ、内容は、3日の討論会ともかなり重なるので、この新たな発言を取り上げつつ、前回とは違う切り口を考えてみます。 結論を先に述べれば、野党の主張は筋が通らず、与党はもはや「使い古されてしまった」という印象でした。 (以下、各党首の発言はみな第一声より引用) ◆護憲の旗を掲げる共産党:日本国憲法成立には反対だったのに 第一声で、安倍首相は「憲法審査会では1年間で衆院で2時間あまり、参院ではなんと3分しか議論されていない」と指摘し、憲法についての議論を拒否する野党を批判しています。 いっぽう、野党で憲法を特に強調した共産党の志位委員長は、自民党の憲法9条の改定案を批判。 (一項・二項の後に)「前条の規定は自衛の措置をとることを妨げない」と書かれていることを取り上げ、これでは「9条2項の制約が自衛隊に及ばなくなってしまうじゃありませんか」と主張しました。 そして、米国の戦争に巻き込まれると煽りましたが、正当防衛にあたる「自衛の措置」を制約するのは、まともな発想ではありません。 自衛権は国連憲章でも認められています。 また、共産党が昭和21年に自民党主導の日本国憲法制定に反対した時は、自衛権が失われることを理由にあげていました。 当時、共産党の野坂参三氏は国会で(憲法案は)「我が国の自衛権を放棄して民族の独立を危くする危険がある、それゆえに我が党は民族独立のためにこの憲法に反対しなければならない」と主張したのです。 その頃、共産党が公表した「日本人民共和国憲法」(案)は「すべての平和愛好諸国と緊密に協力し、民主主義的国際平和機構に参加し、どんな侵略戦争をも支持せず、またこれに参加しない」と掲げていました。 この憲法案からみると、今の共産党の路線は真逆です。 ◆立民党の消費税増税反対:理屈が幸福実現党のパクリ 立憲民主党の枝野代表は「日本の経済にとって、一番大事な6割を占めている消費が冷え込み続けていて、結局は社会の活力がどんどん失われている」として、10%の増税に反対しました。 その認識が間違っているわけではありません。 しかし、消費の冷え込みの原因をつくったのは、民主党でした。 民主党は、与党だった頃、自民党と公明党とともに3党で増税法案を成立させています。 本来ならば、「私達が日本の消費不況の元凶です」と頭を下げて国民に謝らなければいけません。 党首討論で「あの判断は間違っていた」と認めたわけですから、同じことを第一声で謝らないのは不誠実です。 そして、前掲の主張は、幸福実現党が2009年から言っていたことです。 立憲民主党は、ろくに反省もせずに、他党の主張をタダ取りしています。 なお、国民民主党の玉木代表にいたっては、自分たちが増税法案を成立させたことの反省の弁は一言もありません。 ◆年金:共産党はあとさき考えず/維新はマイナンバーによる徴収強化 安倍首相は、雇用が増え、年金運用で成果が出ていることをあげ、年金はこれからも維持できることを強調しました。 これに対して、共産党は「マクロ経済スライド」の廃止を主張。 「減らない年金」を訴え、「年金積立金」を運用ではなく、給付にばらまくことを呼びかけています。 「年金積立金を株価のつり上げに使うんじゃなくて年金の給付に計画的に使わせようじゃありませんか」 今の世代と将来世代との給付のバランスを取るためのマクロ経済スライドを廃止するだけでなく、将来のために必要な積立金を今の世代にバラまくという、恐ろしい提言をしました。 現役世代の年金保険料は今の高齢者への給付金に使われているのに(賦課方式)、積立金まで配ってしまったら、将来の世代には何も残りません。 「高額所得者優遇の保険料の仕組みを正すことで、1兆円の保険料収入を増やしてまいります」と述べましたが、厚生年金と国民年金を足した毎年の歳出は50兆円程度なので、これで大盤振る舞いの穴を埋めるのは困難です。 なお、維新の会の松井代表は年金制度の大盤振る舞いを見直すことを提唱。 その主張には当たっているところもありますが、「マイナンバーカードというカードも普及させて、本当に必要な人に年金が届く、こういうシステムを皆さんと一緒に作り上げていきたい」と主張しました。 これは国民の財産を政府が監視する社会をつくる結果になりかねません。 ◆幸福実現党の「九条改正」と「5%への消費税減税」が日本を救う 既成政党の第一声の訴えは、「おかしい」ものと「物足りない」ものばかりです。 憲法論においては、幸福実現党のように九条の一項・二項を含めた根本改正を訴えている政党はありませんでした。 「自分の国は自分で守る、この方向に向けて、私たち幸福実現党は憲法9条の根本改正いたします」(釈党首) また、既成政党で消費税5%への減税を訴えている政党もありません。 「消費税を5%に下げたい。これが私たち幸福実現党のいの一番、日本経済復活のファーストポイントでございます」(同上) 山本太郎のれいわ新選組は、幸福実現党の立党時の「消費税廃止」を真似ていますが、「れいわ」はバラマキ政策とセットなので、そのプランを実施した場合は、昔の民主党のように、財政の計算がつかなくなり、「減税は無理でした。やはり増税します」と、有権者を裏切らなければいけなくなります。 「小さな政府・安い税金」とセットでなければ、消費税減税は裏付けのない主張になってしまいます。 また、年金に関しては、少子高齢化の中では先細りが見えているので、共産党のような「虫の良い話」は成り立ちません。 与党の年金維持論も、本当に必要な「給付と負担の適正化」に関しては口をつぐんでいます。 年金に関しては、まずは「小さな政府」の発想で、今の大盤振る舞いを正さなければいけません。 経済成長策や人口増政策(少子化対策と移民)も必要ですが、そうした難題をわかりやすく語るのは困難なので、選挙戦では耳障りがよい言葉だけが飛び交っています。 消費税減税による景気振興や、未来産業への投資、リニア新幹線による交通革命といった経済成長策や移民政策は、幸福実現党が立党以来、訴え続けてきた政策です。 これらの経済戦略なしに、年金論だけを単体で論じても「パイの取り合い」で終わってしまいます。 幸福実現党は、今後も、国防強化と、経済成長による日本の復活を成し遂げるべく、戦い続けてまいります。 【参照】 ・産経ニュース「参院選第一声詳報 安倍晋三首相、自民党総裁 憲法『審議を全くしない政党を選ぶのか』」(2019.7.4) ・同上「参院選第一声詳報 立憲民主党・枝野幸男代表『生活を防衛する夏の戦いに』」(2019.7.4) ・同上「参院選第一声詳報 共産党・志位和夫委員長『安倍政治サヨナラの審判を』」(2019.7.4) ・同上「参院選第一声詳報 日本維新の会・松井一郎代表『徹底的改革で消費税上げずに教育無償化実現』」(2019.7.4) すべてを表示する « Previous 1 … 23 24 25 26 27 … 101 Next »