Home/ webstaff webstaff 執筆者:webstaff 「103万円の壁」について考える 2024.11.30 幸福実現党政務調査会ニューズレター No.37 https://info.hr-party.jp/2024/14648/ ◆「103万円の壁」問題とは 2024年10月27日投開票の第50回衆院選で、自民・公明合わせた与党が過半数を割りこむ結果となり、第2次石破茂内閣は、野党との政策ごとの交渉を余儀なくされています。そこで焦点となっているのが、「103万円の壁」問題です。 「103万円の壁」とは、アルバイトやパートで働く労働者が、年収103万円を超えると所得税の納税が発生するため働き控えを行うようになるという問題です(注1)。 この壁が「103万円」であるのは、基礎控除額(48万円)と給与所得控除額(最低額55万円)の合計が103万円であることによります。 与党と政策協議を行っている国民民主党は、基礎控除額を引き上げることで、所得税の納税が発生するのを「103万円」から「178万円」にすべきだと提言しています。 20日、自民・公明両党と国民民主党は、103万円の壁を「引き上げる」との内容を盛り込んだ新たな経済対策について合意し、22日には、政府はこの経済対策を閣議決定しました。 今後は、控除額をどう設定するかなど具体策が議論されることになります。 ◆「103万円の壁」問題をどう考えるべきか 「103万円の壁」の引き上げは、パート・アルバイトの働き控えを抑え、労働力不足を抑制する効果を期待することができます。同時に、基礎控除が拡大するため、家族などの扶養者をはじめ、一般の労働者に対して幅広く減税措置が取られることになります。減税で国民負担が軽減される点は評価すべきでしょう。 一方で、政府は、壁を「103万円」から「178万円」に引き上げた場合、国と地方自治体の税収は併せて7兆円〜8兆円程度減収すると試算しています。 壁の引き上げと同時に歳出カットを行わなければ、赤字国債の発行額増など財政悪化やさらなる物価高につながることが懸念されます。物価高や将来的な増税など、実質的な意味で国民負担を軽減するためには、壁の引き上げと同時に「政府の仕事の減量」を併せて行うべきです。 ◆「年収の壁」問題の根本解決に向けて 国民民主党は、壁を「178万円」に引き上げるべきとする根拠として、「103万円の壁」の水準が定められた1995年から現在までの最低賃金額の伸び率を挙げています。一方、壁の引き上げ額は、1995年を基準にした物価上昇分を考慮した「120万円程度」で良いのではないか、とする意見もあります。 英国の基礎控除額(約239万円)や、ドイツの基礎控除額と給与所得者に対する控除とを併せた額(約169万円)などといった例を見ても、178万円まで引き上げることは諸外国と比べても遜色ないと考えられます。 しかし、178万円分よりももっと働きたい人や、物価高の影響による名目上の収入増の傾向を考えると、本来、「壁」自体を解消すべきではないでしょうか。 そこで、所得税制においてフラット税制を導入すれば、労働量や収入に関わりなく税率が一定であることから、「年収の壁」は根本的に解消されることになります。 労働供給を増やすインセンティブが高まって労働力不足が解消されるとともに、労働者の手取りが増える方向となります。 将来構想として、段階的にフラットタックスを導入することを検討すべきです。尚、その場合は、低所得者への増税につながらないよう、社会保険料負担の見直し、逆進性が指摘される消費税廃止と同時に進めるなどといった配慮を行う必要があります。 フラットタックスを導入する前段階としては、できるだけシンプルな税制を敷いて広く浅く税をとる仕組みを目指すべきです。所得税率の低下と累進性の緩和を行いながら、税を複雑にしている様々な控除はできるだけ無くしていくべきです(注2)。 ◆問題は「103万円の壁」だけではない 「年収の壁」は「103万円の壁」だけではありません。たとえば、パートで働く妻のケースを考えると、住民税が発生する100万円、一定の条件(従業員51人以上の企業で働くなど)で社会保険料が発生する106万円、基本的に無条件で社会保険料が発生する130万円、夫の配偶者特別控除が減り始める150万円、夫が配偶者特別控除を受けられなくなる201万円に、それぞれ壁が存在しています。 所得税に関する103万円の壁については、非課税(税率0%)から税率5%が課せられるに過ぎないので、それほど大きく手取りが減るというわけではありません。 より大きな問題は、社会保険料(厚生年金保険と健康保険)が発生する106万円の壁や、130万円の壁であり、社会保険料の加入義務が発生することで、手取りは大きく減ることになります。 厚生労働省は社会保険料の壁について、年収条件や企業規模の条件を撤廃し、週20時間以上働けば、社会保険料の負担が発生する仕組みとする方針を示しています。しかし、これは社会保険料負担の対象を拡大させる措置であり、企業と労働者にとっては事実上の増税となります。 また、厚労省は、企業と労働者で保険料を折半する今のルールを見直し、労使間で合意が取れていれば、労働者の負担割合を減らせる案も示しています。 しかし、労働者の社会保険料負担を軽減したところで、企業にその分の負担が上乗せされることになれば、企業は賃上げをためらうか、労働者を雇うことに消極的になって、失業者が増えることが懸念されます。 そのほか、高齢者が「働き損」となる「50万円の壁」も存在しています。これは、「在職老齢年金」制度によるもので、65歳以上の働く高齢者の収入が、賃金と厚生年金を合わせて月額50万を超える場合、50万円を上回った年金部分の半分が減額されるという仕組みです。 厚生労働省は現在の制度を見直し、基準を引き上げるほか、将来的に廃止する案を提示しています。 現行制度は高齢者の労働意欲を削ぎ、生涯現役社会の実現に逆行するものと言えます。将来、年金を多くもらうことを希望する人に限って負担を増やしたり、在職老齢年金の廃止を含め、制度の見直しを早期に進めるべきです。 総じて、事実上の税金といえる社会保険料の壁を根本的に解決するには、公的年金をはじめとする社会保障の根本的な見直しが必要ですが、これは今からでも議論をはじめなければ、国民の負担は重くなる一方です。 (注1)アルバイトやパートが家族の扶養に入っている場合、給与収入が103万円を超えると、税制上の扶養から外れるため、扶養者の所得税、住民税が増えることにもつながります。 (注2)所得税について、現在、様々な控除が存在することにより、収入約270兆円のうち課税対象となる所得は約120兆円に過ぎません。見直すべき控除の一例として、年金に関する控除があります。社会保険料を納める際の「社会保険料控除」がある一方、年金による収入が入った際の「公的年金控除」も存在しており、こうした二重控除の仕組みは見直しを図るべきとの声も挙がっています。 公平な税制に向けては、「シンプルで安い税金」を追求すべき 2023.07.18 https://info.hr-party.jp/2023/13413/ 幸福実現党政務調査会ニューズレター No.33 先月末、政府税制調査会は、働き方の多様化など昨今の経済構造の変化を踏まえた、中長期的な税制のあり方を示す「中期答申」をまとめ、岸田文雄首相に提出しました。 幸福実現党政務調査会としての見解は、下記の通りです。 ◆今、議論すべきは、「歳出に見合った税収の確保」ではなく、「税収に見合った歳出のあり方」 政府税制調査会 による今回の答申 では、「世代間不公平」を是正すべきとの観点から見て、歳出に見合った「十分な税収」を確保することが重要だと強調されています。 確かに、今のように政府が税収で賄えない歳出を行い続け、国債を乱発していけば、政府の「借金」ツケは、若者世代や、将来世代に回され、「世代間不公平」は拡大していくことになります。 このため、今の財政構造を改める必要があることは論をまちません。 しかし、国民所得のうち、税と社会保険料の負担分の割合を示す「国民負担率」は48.1%(2021年度実績値)に達しており、現段階で既に「五公五民」という状態になっていることからも、これ以上の増税余地はないと言えます。 仮に増税を実施するとすれば、結果として、「増税後の世界」を長く生きる若者世代に、負担を押し付けることになってしまいます。 「歳出に見合った十分な税収を確保するために増税すべき」というのではなく、今必要な視点は、「税収に見合った歳出とするために、政府の無駄な仕事を「減量」するということではないでしょうか。 政府財政の最大の歳出項目となっているのは、社会保障です。少子高齢化が今後一層進むと想定されるなか、年金、医療保険が賦課方式 で運用され続けるならば、消費税をはじめ、増税圧力は高まり続けることになります。 本来、年金、医療は保険料の範囲で運用を行うべきにもかかわらず、再分配的な要素や必要以上の給付を行っていることもあって税投入を余儀なくされている状態です。 歳出構造を大きく変えて、消費税をはじめ減税の余地を作るためにも、社会保障の抜本的な制度改革に向けて、早急に議論を開始すべきです。 1.政府税制調査会は、首相の諮問機関である。その役割は、中期的な税制のあり方を提示することとされる。一年ごとの税制改正は与党の税制調査会が担当している。 2.政府税調の「中期答申」は、中期的な税制のあり方をまとめた報告書としての位置付けとなる。 3.賦課方式は、年金、医療保険の給付の原資を、その時の現役世代の保険料で賄う財政方式。 ◆「結果平等」へ向かう税制は、経済停滞を招くのみ。シンプルで安い税体系こそ必要 今回の答申では、年間所得が1億円を超えると税負担率が下がる「1億円の壁」について言及されています。 岸田首相は「成長と分配の好循環」をコンセプトとする「新しい資本主義」を謳っており、今後、金融所得課税の強化に向けた議論が加熱することも懸念されるところです。 マイナンバーと預貯金口座などとの紐付けが進み、政府が国民の金融資産を把握できるようになれば、将来的に貯金税が導入されると危惧されます。 政府が国民の資産に手を突っ込むことは「財産権の侵害」に他なりません。 答申では、金融所得課税を強化するとの方針が明示された訳ではないものの、今後の動向を注視する必要があります。 さらに、今回の答申では、財源調達機能と所得再分配機能を発揮する上で、所得税の累進性の重要性が記述されており、今後、中・高所得者層を狙い撃ちにした所得増税をすべきとの議論が出かねません。 所得税の累進性を強化することは、すなわち、「結果平等の世界」に近づくことを意味しています。 「努力や勤勉の精神を発揮して所得を上げる」という原則を否定すれば、日本経済が「沈没」して税収は増えるどころか、大幅にダウンすることも考えられます。 そもそも、「成長と分配の好循環」とは矛盾を孕んだ考え方であり、「分配」を強めれば「成長」はできなくなり、ゆくゆくは「分配」する原資すら無くなってしまうのです。 税収をアップさせるには本来、増税ではなく、いかに経済活動を活発にするかということに主眼を置くべきです。 累進性と様々な控除制度で税体系を複雑にさせていることが、経済活動の妨げとなっており、納税意欲の低下を誘引しています。 幸福実現党は、シンプルで安い税制を整備することが、経済成長を促進させ、税収増につながると考えるものです。 所得税は低い税率を設定しながら各控除を見直しつつ、中長期的には、税率10%程度のフラットタックスを実現すべきとの考えです。 ◆企業の経済活動を活発にする税制を 政府は脱炭素社会に向けて、GX(グリーントランスフォーメーション)を推進するとの方針を掲げています。 5月に成立したGX推進法により、2028年度より、化石燃料の輸入業者に対して輸入する化石燃料に由来するCO2の量に応じて化石燃料付加金を課すとともに、2033年度より、発電事業者に対して、二酸化炭素の排出枠を割り当てて、その量に応じた特定事業者負担金を徴収するとされています。 さらに今後、カーボンプライシングの一環として、炭素税の導入に向けて、具体的な議論が進む可能性もあります。 炭素税が導入されれば、特に日本の製造業はコスト高に見舞われ、炭素税がない国やそれが低い国に対して、競争力を低下させることにつながります。 日本経済を奈落の底へと沈めないために、炭素税は絶対に導入すべきではありません。 税収増を図るためには、企業活動を阻害するのではなく、いかに活性化させるかという観点が必要です。 現在、日本の法人実効税率は29.74%となっており、今なお、英国(19%)のほか、アジア圏内では韓国(27.50%)やシンガポール(17%)と比べて、日本の法人税率は依然として高水準となっています。 法人税は企業にとってコストそのものであり、高い法人税は日本企業の国際競争力を失わせるほか、国外企業の日本進出を阻む大きな要因となっています。 法人税を安くすることは、日本企業の国際競争力アップを図って成長力を底上げするだけでなく、日本企業の国内回帰や海外企業の日本進出を促すことから、経済安全保障上も有益です。法人税率を10%台に引き下げるなど、より大胆な法人減税が必要です。 経済成長の実現に向けては、人材の適材適所や産業の新陳代謝を促すといった観点から、労働の流動性を高めることも必要です。 しかしながら、政府は「労働の流動性を高める」ことを理由に、一つの会社で長く働くほど退職金の税負担が軽くなる仕組みを見直し、実質的な「退職金増税」を実施することを示唆しています。 公平で、働き方の選択に中立な税制を敷き、転職を行う人も、終身雇用で働く人も「安い税金」が享受できるよう制度設計をすべきと考えます。 同時に、人材の流動化を促すためには、企業、労働者いずれの申し立てでも解雇時の金銭解決ができるよう法整備を進めるべきです。 さらに、税制は多様な働き方に対応するべきとして、転職や非正規雇用、フリーランスなどの働き方が多様化していることを踏まえて、会社員に手厚いとされる所得控除のあり方を見直すべきとも言及されています。 これはつまり、サラリーマンへの実質的な増税となります。これは「社会情勢の変化」を、増税を行うための理由づけにしているに過ぎません。 いずれにしても、公平性を担保するにあたっては、さらなる増税措置は絶対に行うべきではありません。勤続年数や働き方にかかわらず「安い税金」となるようにすべきです。 また、10月に導入が予定されているインボイス制度については、企業・事業者に対して煩雑な事務手続き等の負担を強いるとともに、小規模事業者やフリーランス等にとっては実質的な増税措置となる場合もあり、物価高など経済状況が芳しくない中でこうした事業者に対してさらなる負担を強いることは避けるべきことから、同制度の導入は見直すべきです。 神の正義なき「法の支配」では、国際秩序は作れない 2023.05.22 https://info.hr-party.jp/2023/13328/ 幸福実現党政務調査会 ニュースレター ◆G7によるウクライナ支援の継続で「戦争のさらなる長期化」が必至に ロシアーウクライナ戦争の最中、ゼレンスキー大統領は電撃的に訪日してサミットに出席し、ウクライナへの支援の継続と強化を訴えました。 それに対し、G7は「ウクライナに外交、財政、人道、軍事支援を必要な限り提供する」ことで一致しました。 首脳声明では、NATOの東方不拡大の約束を反故にされたロシアの立場を考慮せず、ウクライナ支援を表明すると共に、ロシアを侵略国家と断罪しています。 このように、戦争当事国の一方に肩入れする限り、戦争は一向に終わることはありません。 G7の外交姿勢がロシアと中国の接近を促し、「国際協調」はおろか、世界の「分断」を招いているのです。 そもそも、米国がデフォルト危機に陥っていることをはじめ、各国の財政状況を見ても、ウクライナ支援を行うことは「持続可能」ではありません。 広島が平和の地であるならば、本来、今回のサミットでは、ウクライナに対し過度に肩入れする外交方針を改めるべきであり、また、紛争をいかに一刻も早く停戦に向かわせるかについて議論すべきだったのではないでしょうか。 ◆「核使用の危機」を乗り越えるために 19日には、サミットでは初となる核軍縮に特化した文書として、「広島ビジョン」が発出されました。 「核兵器のない世界」を「究極の目標」と位置付けつつ、中国などが核戦力を増強していることを念頭において、現実性にも配慮した内容となっています。 しかし、被爆国・日本に対して、中国や北朝鮮が核兵器で威嚇しているという現実を直視すべきであり、今求められるのは、「核兵器のない世界」に向けた「核軍縮」ではなく、「核兵器を使わせない世界」に向けた議論です。 広島・長崎の惨劇を防ぐには、核不拡散や核兵器の透明性を高めることを各国に呼びかけるだけでは不十分であり、核抑止力強化は避けて通ることはできません。 今後、日本として自由・民主・信仰の価値観を共有する核保有国との連携を強化するとともに、独自の核装備の可能性を念頭におきながら、核の抑止体制のあり方を、国際社会に提起していくべきです。 ◆唯物論・無神論国家である中国を抑止するために 今回のサミットでは、覇権拡大を進める中国を抑止するとの方向が示されたものの、サミット直前にフランス・マクロン大統領が「G7を『反中G7』にすべきではない」と述べるなど、対中抑止について各国で足並みが揃っていないことは明らかです。 秒読み段階となっている中国による台湾侵攻についても、「台湾海峡の平和と安定」を目指すことで一致したというだけで、具体的な手立てが講じられる道筋が立ったとは言えず、不安が残る形となっています。 米国をはじめG7の相対的な地位が低下する中で、中国は、グローバルサウスと呼ばれる新興国に対し、経済的利益を盾に関係強化を図る動きを見せています。 日本は今後、国際的なリーダーシップを発揮して戦略的外交を展開し、自由・民主・信仰の価値観を押し広げなければなりません。 尚、共同声明では、中国が自国にとって、不利となる外交姿勢をとった国に対して、重要物資の供給を止めたり、不買運動を行ったりして圧力をかける「経済的威圧」に対し、「抑止し、対抗する」との方針が示されました。 日本としても今後、各国との協力関係と自給体制を構築して、経済の中国依存からの脱却を急ぐべきです。 ◆「脱炭素」は西側先進国を没落させる 気候変動、エネルギーに関するセッションでは、2050年の脱炭素社会の実現に向けて取り組みを加速させることで一致し、首脳声明では、温室効果ガスの削減対策がとられていない化石燃料を段階的に廃止することが盛り込まれるなどしました。 脱炭素社会の到来に向けて先進国が一層の環境規制を行えば、経済成長を大きく阻害させ、G7の経済的な地位が今後、一層低下することは避けられません。 また、先進国が軒並み行っている脱炭素への大規模投資は、太陽光発電設備やEV車の原材料の供給などで優位性をもつ中国に経済的利益が流れることになってしまいます。 そもそも、CO2が温暖化や気候変動に影響を与えるという説はフェイクに過ぎないと私たちは考えています。 先進国の繁栄を守るためには、脱炭素に関する取り組みを根本的に見直すべきです。 ◆信仰ある国で結束を 今回の首脳声明では、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化」が掲げられました。 しかし、その「法」に神の正義が根底になければ、形式上「法の支配」を掲げている中国の覇権拡大を押しとどめることはできないはずです。 やはり、大切なのは、キリスト教、イスラム教を問わず信仰があることであり、今回のサミットでは、信仰ある国で結束を強めていくという方向を確認し合うべきではなかったでしょうか。 幸福実現党政調会は、唯物論・無神論国家である中国を抑止するべく、神の正義に基づいた政治が展開されるよう、今後も政策発信に邁進していく所存です。 大インフレか大恐慌か。究極の2択になる前に、減量を。 2022.07.08 http://hrp-newsfile.jp/2022/4323/ HS政経塾スタッフ 赤塚一範 ◆日本もいつかは利上げを迫られる アメリカ合衆国の中央銀行である、FRB、連邦準備制度理事会は、高いインフレ(5月前年比8.6%)に対処するため、利上げを強行しています。 FRBは、今年3月に0.25%、5月に0.5%、6月に0.75%の金利を引き上げ、今後も更なる利上げを予定しています。他方で、利上げは、景気に悪影響を与えます。 FRBのパウエル議長も、6月22日に上院銀行委員会の公聴会で、景気後退の可能性に言及しており、実際、アメリカでは、株価や仮想通貨の下落、住宅販売の低迷等々、その影響が表れています。 つまり、FRBは、不況になってでもインフレと戦うことを決意したのです。 日本でも、5月の消費者物価指数が2.1%とデフレからインフレに向かいつつあり、インフレが今以上に深刻化してきた場合、日銀は金利を引き上げざるを得ない時期が来るでしょう。 ◆利子操作の反動 本来、利子とは市場で決定されるものであり、政府や中央銀行が操作できるものではありません。 これは、自然利子とか中立利子と呼ばれるもので、貯蓄と投資が一致するように市場で決定されます。 他方で、20世紀の大経済学者ケインズは、貨幣量を増加させることで、短期的に政府や中央銀行は、貨幣利子率を操作できるという理論がつくりあげました。これが「流動性選好論」です。 ケインズの理論とは、本来、市場で決まるはずの利子率なのに、多量に貨幣を供給することで、無理やり低利子にし、企業や個人がお金を借りやすくすることで、経済を良くするという理論なのです。 市場で決まる利子率よりも、無理やり低くするのが低金利政策ですから、長く続ければ、当然その反動がやってきます。その反動が、バブル景気と、その後のインフレや不況なのです。 これは、酒飲みに例えられます。酒を飲めば、気持ちが良くなりますが、翌日二日酔いで頭痛になります。酒が貨幣であり、酔いがバブル景気です。そして、二日酔いの頭痛がインフレや不況なのです。 ◆バラマキがバブルを生み出した 2020年初頭から世界でコロナが流行、経済に混乱が生じ、世界各国の政府と中央銀行は、政府支出を増やし、それを支えるために貨幣の量も増やしました。その結果、バブルが生じました。 たとえば、2020年、日本では、国民一人当たり10万円が配られ、要件を満たせば、中小企業には最大200万円、個人事業主には最大100万円の持続化給付金が配られました。 また、コロナで苦しむ企業に対しコロナ融資(いわゆる無担保・無利子で貸し出すゼロゼロ融資)がなされ、その実行額は40兆円を超えると言われています。 このバラマキの結果が、日本ではコロナ禍にもかかわらず、一時、日経平均株価が3万円を超え、ビットコインは700万円を超えるという現象なのです。 貨幣量を増やしばら撒いた結果、その貨幣が、株やビットコインに流れて、バブルを生み出したのです。 ◆バブルはバラマキ続けないと維持できない このような、バラマキの問題点は、バラマキがなければ成り立たないような経済構造を生み出してしまい、それが更なるバラマキを生み出すということです。 例えば、バラマキによって上昇した、株価やビットコインの価格は金融緩和をやり続けなければ維持できません。 実際、アメリカの株価やビットコインは、FRBが金融緩和を止めた途端、値段が下がっています。 日本株も、何とか株価を維持していますが、それはまだ日銀が金融緩和を継続しているからで、緩和は永遠に続くものではありません。 岸田首相も国民に「貯蓄から投資」と盛んに言っておりますが、これは株価を維持したいからでしょう。 また、最近問題となっているのが2022年夏ごろから徐々に本格化するコロナ融資の返済です。 これによって多くの企業が倒産の危機に瀕しておりますが、今後、場合によっては返済の猶予、減免措置等も検討されるかもしれません。 これはさらなるバラマキであり、結局のところ、バラマキによって生み出された仕事は、バラマキがなければ維持できないのです。 ◆最後は、ハイパーインフレか大恐慌かの2択となる インフレにバラマキで対処するというのは、二日酔いに対して、更に酒を飲むことで対処するようなものなのです。 バラマキは、一部でバブルを生み出し、別の場所ではそれがなければ維持できない雇用を生み出します。 当然、バラマキを止めれば、この問題は解消しますが、それには一時的な不況や失業が生じてしまうため、政治家はさらなるバラマキで対処しようとするのです。 この結果がインフレーションです。 つまり、インフレーションとは、「経済が病気である。これ以上バラマキはいけない」というシグナルであり、不況とは、「歪んだ経済構造が元に戻る市場の自浄作用」なのです。 政府はバラマキ続けることで、不況という自浄作用を阻止しようとしますが、それはインフレの加速を招きます。 政府は、インフレにバラマキで対応しますが、経済構造はさらに歪み、インフレはもっと加速します。 結局のところ行き着く先はハイパーインフレです。インフレが加速してから、バラマキを止めたなら、歪みに歪んだ経済構造はそれに耐えきれず倒壊してしまうでしょう。 これが、大恐慌です。インフレが加速してから止めたのでは遅いのです。 ◆日本は今すぐ減量を 現在の日本のインフレ率は、まだ致命的ではないので、現時点で止めなければなりません。 その為には、現在のインフレにバラマキ(歳出カットのない消費減税、給付金、補助金)で対応するのではなく、政府支出の減量で臨むしかないのです。もちろん、減量には痛みが伴います。 従って、急激な減量ではなく、まずは増量を止めるところから始めるべきでしょう。 また、原発の再稼働により電力価格を抑えたり、脱炭素規制を撤廃したり等、企業負担を軽くする必要もあるでしょう。 しかし、繰り返しになりますが、現在のインフレに、バラマキで対応してはいけません。それは、ハイパーインフレか、大恐慌かの究極の2択へと進む、地獄への道なのです。 消費経済の限界。今こそ勤倹貯蓄、勤勉型経済を。 2022.07.05 消費経済の限界。今こそ勤倹貯蓄、勤勉型経済を。 HS政経塾スタッフ 赤塚一範 ◆「消費は経済を回す」は本当か? 消費が経済を回すという理論(有効需要の理論)を作り上げた20世紀の大経済学者ジョン・メイナード・ケインズに関して、次のようなエピソードが残っています。(参照:Ludwig von Mises, Marxism Unmasked) ある時、ケインズは友人と共にホテルに泊まった際、トイレにあるタオルをすべて汚しました。 友人がなぜそんなことをするのかと理由を尋ねると、ケインズはタオルを汚すことで、ホテル従業員の仕事を作ってやっていると言ってのけたのです。 これがケインズの理論なのです。 さらに、ここから、戦争は経済を回すという理論も生まれます。戦争は究極の消費だからです。 しかし、本当に消費は経済を向上させるのでしょうか?戦争ばかりしていて経済は良くなるのでしょうか? ◆消費で失われるもの 確かに、人間が生きる上で必要最低限の消費や楽しみというものは存在するし、消費で雇用が生まれるのも事実でしょう。 しかし、消費によって失われるものも確かに存在するのです。上記の例で考えてみましょう。 もしホテルに泊まった客の全員が、必要以上にタオルを汚したならば、確かにホテル従業員の雇用は増加します。 しかし、その雇用はホテルの宿泊客が品行方正であれば、必要なかった雇用であり、別の場所でもっと有効な仕事を生み出したかもしれない人たちなのです。 たとえば、彼らは、作物を作ったかもしれませんし、道路を作ったかもしれないのです。 ケインズのような消費が経済を拡大させるという理論が有効であるのは、あくまで供給過剰が存在し、そのような過剰を一時的に埋める場合だけなのです。 つまり、不況期における時限的理論に過ぎません。このような理論では、資本蓄積は生じませんし、長期的な発展は望めないのです。 ◆過剰な消費は国を亡ぼす 19世紀後半、大英帝国は栄光を誇っていました。 しかし、そのわずか50年後、同国家はアメリカの経済援助がなくては、維持できなくなってしまいました。なぜでしょうか。 それは、過剰に消費したからです。二つの世界大戦という究極の消費がイギリスを没落させたのです。 19世紀末、イギリスは世界各地にたくさんの資本を保有していました。産業革命で生産力を拡大し、輸出を拡大し、多額の資金を蓄えたイギリスは、世界各国に投資を行いました。 たとえば、当時のアメリカやアルゼンチンの鉄道会社の多くはイギリスが所有していたのです。 このようにイギリスは、勤勉に働き、働いたことで得た富を再投資することで資本を蓄積し、最強国となったのです。 しかし、この富は戦争による消費で失われてしまいました。イギリスは、戦争の経費を賄うために、それまで蓄えた資本を外国に売り払ったのです。 つまり、資本を消費に変えたのです。 ◆日本の危機的状況と勤勉、勤倹貯蓄型経済の復活 翻って日本ではどうでしょうか。 戦後の日本は、勤勉に働き、貯蓄を奨励し、その貯蓄でもって社会インフラや生産設備を整え、高度成長を実現しました。 現在の豊かさがあるのは、戦後の日本人の勤勉な労働と資本蓄積のおかげなのです。しかし、現在の日本は、急速な「少子高齢社会」という危機にさらされています。 なぜなら、「少子」というのは、労働力人口の減少、つまり生産力の減退を意味する一方で、「高齢」というのは消費をしないと生きていけない人の増加を意味するからです。 原則として、生産する以上に消費できないということを忘れてはなりません。もし生産以上に消費するならば、かつて蓄えた資本を取り崩すしかありません。 具体的に言うとするなら、日本に蓄えられた外貨で輸入をするか、日本が所有する生産設備を外国に売り払いそれで輸入をすれば、当面の消費を賄うことはできるでしょう。 しかし、長い目で見れば、これは日本の衰退であり、結局消費できなくなるのです。 これを食い止めるためには、勤勉に働き、消費を抑え、貯蓄を推進し、資本を蓄えるしかないのです。 だからこそ、今の日本には必要なのは、勤勉性の復活、勤倹貯蓄型経済の復活であり、生涯現役社会の確立なのです。 国富を増やしていくには 2022.07.02 http://hrp-newsfile.jp/2022/4311/ HS政経塾スタッフ 赤塚一範 ◆実物資産と金融資産 家計の金融資産が2,000兆円を突破したと報道されています。 これを受けて、岸田総理が掲げる「所得倍増プラン」では「貯蓄から投資へ」つまり、NISAやiDeCo等の国民に株を買わせる政策を拡充しようとしています。 また、日銀の黒田総裁も、家計の金融資産の増加により、家計はインフレに耐えられると発言し、国民の非難を浴びました。 本当に家計の資産は増加しており、国民はインフレに耐えられ、株を買うことが出来るのでしょうか? ここで理解すべきことは、富には大きく実物資産と金融資産の2種類あり、金融資産だけ増えたとしても何の意味もないということです。 実物資産とは、現実の世界を生きている国民の生活を豊かにし、外国や自然の脅威から国民を守るための具体的に実体を持った資産のことをいい、その中でも特に固定資本が日本の国富の中心を構成しています。 固定資本とは、住宅、工場、機械設備、道路、ダム、港湾、知的財産等のことですが、日本には2020年末、1,986兆円存在しています。 他方で、同年の現預金、債券、株式等からなる金融資産は8,582兆円となっており、固定資産の約4倍も存在しています。 ◆金融資産は国富ではない 次のことに気を付けなければなりません。それは、金融資産とは、貨幣の貸借でいくらでも増やすことのできる資産であり、実物の財の裏付けがなければ、まやかしに過ぎないということです。 たとえば、日本国民が日本の国債を1兆円購入したとしましょう。この場合、国民は1兆円の金融資産を得ると同時に、日本政府は1兆円の負債を負ったことになるのです。 更に日本政府が日本国民にこの1兆円をばら撒き、日本国民がその1兆円で日本国債を購入するなら、さらに1兆円分の金融資産と負債が増加するのです。 アベノミクス第一の矢「異次元の金融緩和」によって、国全体の金融資産と負債は劇的に増加しました。2012年末の金融資産は6,018兆円でしたが、2020年末には8,582兆円となっています。 つまり8年間で金融資産は2,564兆円も増加したのです(当然ですが負債もほぼ同額増加しています)。 問題なのは、この金融資産の増加と比べて、国富の重要な要素である実物資産が増加していないことです。2012年末の固定資産は実質値で1,865兆円、2020年末は1,905兆円です。 なんと、8年で46兆円しか増えていないのです。金融資産が8年で2,564兆円増えたのと比べると驚きですが、これはバブルと言ってもよいでしょう。 かなりざっくり言うと、2,564兆円も貨幣的なものが増えたのに、その貨幣で買うことのできる実物資産は、46兆円しかないのです。 ◆日本は借金で飲み食い(消費)している これが意味するのは、アベノミクスの8年間で政府は、借金で、実物資産を作る(投資)のではなく、飲み食い(消費)していたということなのです。 今の日本は、将来の生産のための元手である資本を現在の生活のために食いつぶしているような状況です。 簡単に言えば、来年植える種イモを現在の生活のために食いつぶしている状態であり、これでは将来のイモが取れなくなってしまい、やがて困窮してしまうのです。 皆さんは21世紀が思ったより進歩していない、例えば、なぜドラえもんやアトムのような空中に道路があり、ロボットが仕事をし、宇宙旅行に行ける未来世界になっていないかをお考えになったことがあるでしょうか。 その大きな原因一つが資源の浪費です。日本経済全体で考えてみましょう。日本では、2020年度に535兆円の生産が行われました。 このうち、固定資産の形成に使われた金額は、135兆円で、残りの大部分(約400兆)は家計や政府によって消費されてしまったのです。135兆円もの投資があるなら、未来社会がやって来ると思う人もいるかもしれません。 しかし、毎年、同じ規模(2020年度は135兆円)で固定資産は摩耗、劣化していくのです。従って、固定資本が壊れる以上に投資をしないと実物資産は増加せず、アニメのような世界にはならないのです。 ◆国富を増やすには では、固定資産を増やし、国富を増加させるためには、どうしたら良いのでしょうか。 将来のイモの収穫を増やすには、現在の消費を抑えて種イモを多くのこし、来季に向けて畑を耕し、肥料を作り、用水路を整えることです。これを行うには、現在の消費を抑え、貯蓄を増やすしかないのです。 今回の参院選挙では、れいわ新撰組をはじめいくつかの政党で、即時の消費減税が言われています。しかし、もし、この減税と同等額の、政府支出のカットがなされなければ、インフレは加速してしまいます。 令和4年度の消費税の歳入見込みは21.5兆円です。 もし、21.5兆円分の歳出をカットすることなく、すなわち国債発行と日銀の買い取りで乗り切った場合、消費需要は純粋に21兆円分し拡大し、また同時に日本円も21兆円増加し、円安は進行するでしょう。その結果は、インフレの加速です。 インフレの加速は、更なる消費の増大を招き、資本の蓄積を妨げます。なぜなら、インフレ時には貯蓄は不利となり、直ぐにお金を財に変えてしまった方が得だからです。 実際、インフレの激しい、アルゼンチンでは、給料をもらうとすぐに使ってしまう国民が多いと聞きます。 また、インフレ時は消費財産業が活性化しやすいと言われていますが、これも国内の資本蓄積を妨げます。 人手不足、資源不足が叫ばれる現在、資本財産業を活性化させるには、国内の物的、人的資源を、現在の消費財産業から引き抜き、投資財産業や防衛産業で利用されなければならないのです。 日本における戦後のインフレを乗り切るために、貯蓄の推進が行われていたことを忘れてはいけないのです。 インフレにどう立ち向かうか【後編】 2022.07.01 http://hrp-newsfile.jp/2022/4309/ HS政経塾スタッフ 赤塚一範 ◆消費減税、補助金、賃上げだけでは、さらなるインフレを招く 前編で指摘したような病気を根本治療することなく、消費減税、補助金、賃上げという麻薬を用いて、物価上昇を和らげた場合、結論は更なるインフレです。 たとえば、今夏、電力不足が懸念されています。電力供給を強化することなしに、電力に対して消費減税をかけたり、補助金を出したりしたところで、電気を多量に生産できるわけではありません。 むしろ、電力需要が拡大してしまい、大停電になってしまうかもしれません。また、賃上げは、企業にとって単なる負担に過ぎず、投資不足、雇用減少を招き供給力低下に拍車をかけます。 他方で、賃金上昇によって消費者の需要を拡大させてしまうので、インフレが加速してしまうのです。もちろん、現金給付なども、勤労の精神を失わせ供給を弱らせるので、これもインフレ要因です。 日銀の金融緩和がインフレを引き起こしているという議論もあります。確かにそれもあるでしょう。しかし、日銀が国債を購入し、紙幣を市場に流すのは、政府支出を支えるためでもあるのです。 これら支出の大半は、年金や社会保障等のバラマキとして国民の消費を支えていますが、これも資源を浪費し、国民の勤労意欲を阻害するのでインフレ要因となります。 ◆減量と勤倹貯蓄による投資がインフレの治療薬である インフレの根本治療薬とは、(1)効率的生産部門へ労働を含む資源を集中、投資すること、そして、(2)不要な消費を抑え減量し、貯蓄を推進することです。 不必要な投資の例として、今回の参院選でも自民、公明、立民、維新、れいわ、国民民主、共産等が重要な政策とする「脱炭素に向けた投資の促進」があげられます。 かつて、毛沢東は、「大躍進政策」で中国の工業化を主導しました。鉄を国家の重要な資源と定め、農民に、農業を止め、それぞれ小規模な溶鉱炉を作るよう命令しました。 その結果が、大飢饉と、役に立たない粗悪品の鉄くずでした。毛沢東は、国の大切な資源を浪費したのです。 脱炭素に向けた国家主導の政策は、毛沢東を彷彿とさせます。日本には、火力発電所、原子力発電所がありますが、現在その多くが使われないか、まだ再投資すれば使えるにもかかわらず破棄されています。 そして、風力・太陽光といった非効率な再生エネルギーに投資されているのです。これらを止め、もう一度、火力、原子力に資源を投入すべきでしょう。 他方で、日本は、中国や北朝鮮といった軍事国家に囲まれており、いざという時のためのサプライチェーンの構築が急務です。 また、岸田首相は防衛費の増額を打ち出しています。これは必要な政策でしょう。 しかし、サプライチェーンを構築しなおし、軍事費を増額させるためにも、消費を抑える必要があるのです。 例えば、現在、JR東日本なども、半導体不足から一部の新規の車体製造を延期したと報道されるように、半導体が不足しています。 このようなときには、ゲーム機に使う半導体とミサイルに使う半導体は競合関係となり、ゲーム機に使う半導体を節約しなくては、ミサイルを作ることはできないのです。 サプライチェーンの構築も同様です。 例えば、ショベルカー等重機を動かすにはガソリンが必要ですが、ガソリンが不足する場合、ディスコやカジノを作ることと、国内の古びたインフラを再構築することとは競合関係となるのです。 勿論、これら資源の配分を市場統制によって行うわけにはいきません。これを自発的に行うには、消費者側の節約マインド、そして実のある産業を大きくしていこうとする勤労の精神が欠かせないのです。 そして、政府の社会保障や年金も縮小しなければなりません。これらは、消費を促進し、国家の資源を浪費するからです。 国民が消費を抑え、貯蓄をし、その貯蓄によって、サプライチェーンの再構築や軍事費が賄われなければなりません。 もし、貯蓄なしでこれらを行なおうとすれば、それは国債発行による貨幣の増発を用いて行うこととなり、インフレを加速させてしまうのです。 実際のところ、私達は、ある程度はこのインフレを受け入れなければなりません。それは、もう既に資源が浪費されてしまっているからです。 これを克服するためには、今一度本当に必要な商品とは何なのか、日本が安全であるためには何が必要なのかを消費者自身が考え、無駄な消費を抑え、必要なものに再投資していくという資本主義の精神の復活が望まれるのです。 インフレにどう立ち向かうか【前編】 2022.06.30 http://hrp-newsfile.jp/2022/4307/ HS政経塾スタッフ 赤塚一範 ◆物価高に苦しむ家計 物価の上昇によって、国民生活はダメージを受けています。「家計の値上げ許容度が高まっている」との最近の黒田総裁の発言に対する批判の厳しさからも、それは明らかです。 しかし、そもそもデフレ脱却、インフレ率2%の達成というのは、2012年末に安倍政権が誕生して以来の目標だったはずです。 統計では2022年4月、物価上昇率は悲願の2%を超え(5月は2.1%)、完全失業率も2.5%まで減少しほぼ完全雇用状態です。 ですが、国民生活は苦しくなるばかりです。今回のインフレの何が悪かったのでしょうか。 このインフレの苦しみの原因として、企業が賃上げをしないから、コロナやウクライナでの戦争でサプライチェーンが混乱したから、日銀が金融緩和を止めないから等々が言われています。 実際、今回の悪性インフレにはそれら要因もからんでいるでしょう。日本はこのインフレとどう向き合い、どのような手を打つべきなのでしょうか。 ◆バラマキばかりの政策 今回の参院選では、各政党の物価対策が争点となっています。各政党の経済政策をまとめると、次のようになります。 (1)消費税やガソリン税等の減税(立民、維新、れいわ、国民民主、共産) (2)特定分野、家計への補助金(自民、公明、立民、維新、れいわ、国民民主、共産) (3)賃上げのための制度づくり(自民、公明、立民、れいわ、国民民主、共産) これらは、物価上昇で困窮する家計を財政的に支援する政策ですが、基本的にバラマキといって良いでしょう。 現在の日本の状況を踏まえると、これら政策は瞬間的に家計を助けることになっても、結局はより大きなマイナスを生み出してしまう麻薬のような政策なのです。 今必要な政策は、この逆で、バラマキを縮小し、消費を抑制すると同時に、貯蓄を増加させ、社会資本を強化していくことなのです。 ◆バラマキは日本の病気を悪化させる 現在の日本を例えると、病気の痛みに耐えきれず、麻薬を打ち過ぎて精神が壊れかけている人間のような状態です。麻薬は、手術の痛みを緩和するなど、上手に使えば、身体を健康にするでしょう。 しかし、病気の根本を解決せず、麻薬だけに頼っていれば、病気は悪化しますし、麻薬依存症となり心も壊れてしまうでしょう。 現在の日本に必要なのは、先に述べた(1)(2)(3)のような麻薬政策を打ち続ける「一時的な痛み止め」ではなく、根本的な治療です。 もしそれをしないなら、日本は、より重い病気、つまり更なるインフレになってしまうかもしれないのです。 ◆物価上昇の意味 「価格は情報伝達のシグナルである」これは、ノーベル経済学賞を受賞した自由主義経済学者フリードリヒ・ハイエクの言葉です。 彼によれば、価格の上昇とは、その財は貴重であり、その財は節約され効率的に使用されなければならないというシグナルです。 例えば、銅の価格が上がっているとすれば、それは銅が貴重になっており、今ある使用法から銅を引き抜き、より消費者のニーズがあり効率的に使用される分野に銅が使われなければならないのです。 では、物価上昇は何を意味するのでしょうか。物価とは、経済にある商品の価格を集計し、指数化したものです。 物価とは、マクロ経済学的概念であり、ハイエクのいうミクロ的な意味での価格とはやや違いますが、次のようなことが言えるでしょう。 物価上昇とは、需要に対して、商品全体が不足している、供給力が弱っているということを意味します。 また、他方で、今ある日本の貴重な資源が効率的に使用されておらず、その使用方法から資源を引き抜き別の場所で使用されなければならないというシグナルでもあります。 つまり、インフレの要因とは、供給力の低下であり、資源の無駄遣いなのです。これが日本の根本的病気なのです。もちろん、海外が原因によるインフレも、不要な投資拡大やコロナ対策、戦争も資源の浪費です。 (後編につづく) 「日本を守り抜く決意」街宣映像 2022.06.24 ■参院選2022≫「日本を守り抜く決意」 党幹事長、江夏正敏が福岡選挙区に立候補 (6.22初日街宣・博多駅前) https://youtu.be/uczfQQrL0IU ■≪参院選2022≫兵庫選挙区に立候補。 党政調会長・里村英一候補の第一声の街頭演説 https://youtu.be/chCJGH7cp9A ■≪参院選2022 ≫釈量子、第一声後の街頭演説ダイジェスト 神奈川県選挙区のいき愛子候補、埼玉県選挙区のみなと侑子候補の応援へ https://youtu.be/VEb3kJaFJQQ ■国家存亡の危機――この国に「精神的主柱」を 2つの理念と7つの柱 https://hr-party.jp/policy/class/2022/ ■参議院選挙2022特設サイト・候補予定者紹介ページ https://hr-party.jp/ 度重なる増税・バラマキ・・・このままいくとどうなる? 2022.06.23 ■度重なる増税・バラマキ・・・このままいくとどうなる? 【近未来ミニドラマ】「日本倒産」 https://youtu.be/UiLOqLZqBG8 ■参議院選挙2022特設サイト・候補予定者紹介ページ https://hr-party.jp/ すべてを表示する 1 2 3 … 16 Next »