Home/ 遠藤 明成 遠藤 明成 執筆者:遠藤 明成 HS政経塾 米国が台湾に新型戦車を売却 日本は何もしないのか 2019.07.12 米国が台湾に新型戦車を売却 日本は何もしないのか HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆議会での立法に基づいた台湾支援 トランプ政権は、7月8日に、戦車や地対空ミサイルなどを含む22億ドル(約2400億円)の兵器について、台湾への売却を承認しました。 主な兵器は、イラク戦争などで活躍したM1A2エイブラムス戦車108両と、携帯式地対空ミサイル(スティンガー)です。 これは、台湾への武器売却促進などを定めた「アジア再保証推進法」(18年末成立)に基づいた措置です。 ◆次は戦闘機の売却か 台湾は、中国の軍拡に対抗するために、米国から最新型のF16戦闘機(C/D)やエイブラムス戦車の導入を目指してきました。 戦車は中国軍の上陸を阻止するための装備ですが、空の守りを固める戦闘機がなければ、それを有効に使えません。 そのため、次は、戦闘機の売却が焦点となります。 オバマ政権はF16の売却を拒んだので、トランプ政権が戦闘機売却に踏み込むかどうかが注目されているのです。 ◆拡大する中国空軍との戦力差 中国と台湾の空軍力を比べる時は、普通、近代化された戦闘機(第四世代型以降の戦闘機)の数を比較します。 この基準でみると、852機を持つ中国軍に対して、台湾軍は327機しかないので、大幅な差がついています(※1)『平成30年度 防衛白書』の数値)。 中国軍は旧型機も含めると1500機の戦闘機を持っており、中国東部と南部には600機が配置されているので(※2)、327機の台湾空軍では応戦しきれません。 中台で戦争となれば、1000発以上の短距離弾道ミサイルで基地や空港等が狙われ、他の戦区の戦闘機も応援にかけつけるので、台湾軍は不利な戦いを強いられます。 (※米国防総省の報告書によれば、中国は750~1500発の短距離弾道ミサイルを保有。旧型機でも、複数機で一機を攻めたり、敵機のミサイルを消耗させたりできるので、軽視はできない) ◆中国空軍は次々と新型機を投入 台湾空軍の主力は、冷戦後期に運用が始まった戦闘機が中心です。 (具体的には、F16の旧型版(A/B)144機、と国産戦闘機「蒋経国」128機、フランス製の「ミラージュ2000」55機 ※1) しかし、中国軍は、ロシアからそれ以降の新型機(Su30やSu35)を大量に買い、国産戦闘機(J10やJ15、J16)も開発しています。 オバマ政権の頃から台湾軍は劣勢でしたが、中国との関係を重視し、米国は台湾に新型戦闘機を売りませんでした。 ◆戦車だけではダメ。どうしても新型戦闘機は必要 中国軍が台湾を攻める時には、「足が早い」ものから順に攻撃を開始します。 まず、サイバー攻撃が仕掛けられ、その後に、1000発以上の短距離弾道ミサイルを撃ち込みます。 レーダー等の通信機能を麻痺させ、空港から飛び立つ前に戦闘機の破壊を試みます。 そして、次に制空権を巡る戦いが起きます。 前述の新型戦闘機は、ここで台湾軍が持ちこたえるために、どうしても必要な装備です。 制空権がなければ、いくら戦車があっても、イラク戦争のように、空からの攻撃で破壊されることは避けられないからです。 (※中国軍が制空権を得た場合、「対地攻撃や制海権の確保」⇒「海上封鎖」⇒「上陸作戦」を展開する) ◆冷戦期から激変した台湾情勢 これから、トランプ政権が台湾支援に踏み込むかどうかは、我が国にとっても、重大な意味を持っています。 台湾が中国の支配下に落ちれば、日本の海上交通路(シーレーン)が脅かされるからです。 クリントン政権以来、中国の「巨大市場」を重視してきた米国が対中抑止に転じた今、日本も、今後の対策を考えなければなりません。 そのためには、米国や日本が中国と国交を結んだ頃とは、地域の情勢が大きく変わっていることをよく理解する必要があります。 当時、米国は、以下の条件のもとに「経済関係を促進しても大丈夫だ」と判断しましたが、それがもう成り立たなくなったからです。 (※3:以下、平松茂雄著『台湾問題』を参照) ①1970年代の中国軍は台湾を攻撃できず、台湾には中国軍の侵攻を阻止する力があった ⇒今は真逆 ②当時の中ソは軍事的に対立し、「北の脅威」があったため、台湾侵攻の余力はない ⇒今の中露関係は良好 ③中国近代化のために日本や欧米との関係強化が不可欠 ⇒今の中国は自国技術での発展が可能になりつつある 今の中台関係を維持するためには、むしろ、中国に強硬路線を取り、台湾を支援しなければいけなくなりました。 ◆日本版「台湾関係法」が必要 米国には、米中国交回復に対して、台湾を見捨てないために、議会が「台湾関係法」を制定しました。 これは、台湾軍を維持するための米国からの武器売却や、台湾有事での米軍出動の根拠となる法律です。 しかし、日本に、こうした法律は何もありません。 そのため、日本政府は「日本台湾交流協会」を通じてビザの発効を行い、人や船、飛行機の出入、経済関係の処理などを行っています。 しかし、これは民間機関であるため、安全保障に関わる案件は何もできません。 安全保障のために日台が情報を共有するなど、有事に必要な措置を取ることはできないのです。 そのため、幸福実現党は「日本版台湾関係法の制定」を訴えています。 日本と台湾が正式に外交を行うための根拠をつくり、そこには、FTA等で経済連携を強化することや、平和的ではない手段で台湾を支配しようとする試みに反対することを明記する必要があります。 そして、同盟国として米国の台湾支援に連携し、日本が自ら台湾との安全保障上の関係を強化することを盛り込むべきです。 米国は「一つの中国」を「認識」しながらも「台湾関係法」をつくったわけですから、日本がこうした法律をつくってはいけない理由はありません。 むしろ、40数年間も、台湾のために何も立法しなかった外交無策を反省しなければなりません。 【参照】 ※1:防衛省『防衛白書 平成30年版』 ※2:米国防総省 “Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2019” ※3:平松茂雄著『台湾問題』(勁草書房) 【相続税廃止】日本はいつまで「お金持ちが逃げ出す国」を続けるのか 2019.07.11 【相続税廃止】日本はいつまで「お金持ちが逃げ出す国」を続けるのか HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆既存の政党は「相続税の強化」ばかり 幸福実現党は相続税廃止を訴えていますが、既存の政党は資産課税の強化を進めています。 共産党や立憲民主党、国民民主党といった野党は「福祉の財源は、お金持ちから取ればいい」という考え方です。 また、安倍政権の下で、2015年には相続税の最高税率が50%から55%にまで上がりました。 その結果、課税対象者が増え、「中の上」ぐらいの生活レベルの人たちも相続税に怯える世の中になったのです。 ◆現在の相続税の仕組み 相続税は、15年から制度が変わり、その年度の課税件数は、前年の8割増しとなりました。 14年度に課税されたのは5万6千人でしたが、15年度には10万3千人まで増えたのです(※1)。 そうなったのは、基礎控除が減り、相続税がかかる財産の水準が下がったからです。 【基礎控除の変更】 ・14年12月まで:「5000万円+1000万円×法定相続人の数」 ・15年1月以降:「3000万円+600万円×法定相続人の数」 (この場合、相続財産が8000万円で相続人が2人いる場合、基礎控除は4200万円なので、課税所得は3800万円になる) そして、課税所得にかかる税率は、以下の8段階になりました。 ・1000万円以下:10% ・3000万円以下:15% ・5000万円以下:20% ・1億円以下:30% ・2億円以下:40% ・3億円以下:45% ・6億円以下:50% ・6億円超:55% ◆日本の相続税の最高税率は世界最高 さらに、今の税率を各国と比較してみます(※2)。 ・日本:10%/55%(3000万円+〔相続人×600万円〕) ・米国:18%/40%(約12億円) ・英国:40%/40%(約4400万円) ・ドイツ:7%/30%(配偶者が約9200億円、子が約4900万円) ・フランス:5%/45%(約1200万円) 欧米の主要国と比べても、最高税率の高さは際立っています。 〔※財務省資料をもとに最低税率/最高税率 控除額を「円相当」で表記。資料に掲載された各国通貨での金額を、7/11の為替で換算) ◆世界には相続税がない国もある しかし、世界には、相続税がない国もあります。 シンガポール、マレーシア、インド、中国、ニュージーランド(NZ)、オーストラリア、カナダ、スウェーデンなどには相続税がありません。 スイスの場合、シュヴィーツ州という相続税のない州があります。 他の州には相続税がありますが、「全州で配偶者間の相続と贈与を非課税にしており、多くの州は親子間の相続も非課税」なので、日本とはずいぶんと違う制度です(※3)。 ◆資産家は日本を見捨てる 日本の最高税率は高いので、富裕層の中では海外移住を選ぶ方も増えています。 そのため、財務省は国外資産への課税強化を進めました。 まず、2014年に5000万円超の国外資産を持つ人に情報開示が義務付けられました。 15年には国外に出る際に有価証券などが1億円以上ある場合、含み益に所得税を課税されることになりました。 18年には、国外資産に相続税を免除する条件として、海外に在住する年数が「5年超」から「10年超」へと延ばされました。 外務省によれば、2007年に76万人いた長期滞在者は、17年に87万人(17年)に増加。 同じ期間で、海外の永住者は36万人(07年)から48万人(17年)に増えています(※4)。 この中に富裕層も数多く含まれていることが推測されています。 ◆所得税と相続税、資産課税の比較 これに関しては、所得税と相続税の最高税率、証券税制を比べると、実情が見えてきます。 (以下、所得税/相続税/証券税制の税率。プレジデント記事※5を参照) ・日本: 45%/55%/20% ・米国: 39.6%/40%/20%+州税 ・NZ: 33%/0%/0% ・シンガポール: 22%/0%/0% ・マレーシア: 28%/0%/0% 米国の最高税率は40%。基礎控除は12億円なので、日本よりも負担が軽くなっています。 今後、米国やシンガポール、ニュージーランド、マレーシアへと資産家が逃げていけば、我が国は富を生む人材を失い、衰退への道をたどりかねません。 ◆スウェーデンはなぜ相続税を廃止したのか 日本は格差是正のために相続税を強化しましたが、福祉を重視する国が、みな同じ考え方を採ったわけではありません。 福祉国家のスウェーデンは、2007年に相続税を廃止しました(※6 朝日記事を参照)。 その理由は「高額所得者が国外に出てしまえば、国の競争力が落ちる」からです。 (これは朝日新聞が現地のスウェーデン人に取材した声) 実際に、家具で有名なイケア社の創業家はスウェーデンからスイスに逃げてしまいました。 現地の方は、「税金が理由で移転したのだろう。相続税は経済活動にブレーキをかける」と述べています。 そして、07年に廃止に踏み切った時の財務相は「中小企業では負担が重く、事業を引き継げない場合が多かった」と指摘しています。 同国では、相続税と贈与税が国の税収に占める割合は約0.2%なので、廃止が可能と判断したのです。 ◆相続税廃止は企業経営者の支援のために重要 社会保障を重視するスウェーデンでも、企業や創業者が海外逃亡しないよう、相続税を廃止しました。 それ以外にも、相続税には公平性において問題があると見られています。 元国税庁長官の渡辺裕泰・早稲田大教授は「大金持ちは専門家に頼んで、把握が難しい金融資産に変えたり、国外に逃げ出したりする。払うのは大都市に土地を持つような中産階級や小金持ちだけ」(※6)とも述べていました。 さらに、相続税は、中小企業の事業継承の妨げにもなります。 これが原因で企業を畳まなければいけないケースも多いのです。 事業承継の負担を減らす例外措置も始まりましたが、その場合、5年間、雇用の8割を維持し続けなければいけません。 これは、かなり厳しい基準です。 また、中小企業者は、事業を有能な子供や親類、見込んだ後継者に譲りたいのですが、相続税は均分相続であり、遺留分があるので、それはかないません。 贈与をしても、「贈与税」がかかります。 ◆相続税廃止とフラット・タックスで、日本は「お金持ちが来る国」に変わる 結局、相続税を強化すると「金の卵を生むガチョウを殺す」結果になりかねません。 そのため、幸福実現党は相続税の廃止を訴えてきました。 また、日本に、お金を稼ぐ優れた人材を招き入れるべく、所得税の一律化(10%程度)や証券課税の廃止をあわせて提唱しています。 そうすれば、日本は米国やニュージーランド、シンガポール、マレーシアよりも富裕層に有利になるので、海外移住の必要はありません。 それどころか、海外から日本に向けて富裕層がやってきます。 そうなれば、消費が増えるだけでなく、新規事業への投資や、慈善事業への寄付などが増えるからです。 幸福実現党は、相続税を廃止し、日本を「お金持ちが逃げる国」から、「お金持ちが集まる国」に変えてまいります。 【参照】 ※1:財務省「相続税・贈与税に係る基本的計数に関する資料」 ※2:財務省「税調第18回総会 資料2-2 我が国と諸外国の相続・贈与に関する税制の比較」(2018.10.16) ※3:SWITZERLAND GLOBAL ENTERPRISE「スイス税制の概要」 ※4:外務省「海外在留邦人数調査統計(平成30年要約版)」2017.10.1) ※5:プレジデントHP「日本の超富裕層が次々に米国移住するワケ」(2019.1.12) ※6:朝日新聞デジタル「〈カオスの深淵〉立ちすくむ税金:2_2」(2012年7月) 【政策比較:教育】幸福実現党は、なぜ無償化に反対するのか 2019.07.10 【政策比較:教育】幸福実現党は、なぜ無償化に反対するのか HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆政策比較:教育無償化を巡る主張 まず、高校・大学教育の無償化に関する各党の公約を比較してみます。 与党と野党の違いは「所得制限」の有無です。 そして、野党のほうが、大学の学費減免の規模が大きいのが特徴です。 (以下、消費税増税賛成は「賛」、反対は「反」で表記) ・自民党「賛」:年収590万円未満の世帯で私立まで含めた実質無償化。低所得者向け奨学金拡充。 ・公明党「賛」:同上+大学の学費減免の促進、所得連動返還型奨学金の拡充。 ・日本維新の会「反」:教育完全無償化(幼児教育~大学) ・立憲民主党「反」:国公立校の学費半減。私学助成の拡大。給付型奨学金と無利子奨学金の拡充 ・国民民主党「反」:大学の学費減免拡大。所得連動返還型無利子奨学金の拡充。 ・共産党「反」:高校以下の完全無償化、大学学費半額、奨学金無利子化、給付型奨学金の拡充 (※自公政権は無償化の対象を現行の年収380万円未満から590万円にまで広げる案) 現在、教育無償化に反対しているのは、幸福実現党だけです。 幸福実現党は、所得水準に応じて、無利子や給付型なども含めた「奨学金制度の拡充」は掲げていますが、その枠を超えた「無償化」に反対しています。 ◆無償化反対から推進に転じた自民党 教育無償化で注意すべきなのは、現在、無償化を推進する安倍政権は、旧民主党政権の教育無償化や子供手当てなどを「バラマキ政策だ」と批判していたということです。 17年5月に、安倍首相が憲法改正案に無償化を入れることを提言したのは、「日本維新の会」を取り込むための戦略でした。 維新の会は改憲案(※)で教育無償化の拡充を掲げているので、そうすれば「改憲」への支持が取り付けられると見込んだわけです。 (※「法律に定める学校における教育」はすべて「公の性質」を有するとして幼児教育から高等教育までを無償化するとした〕 ◆「大学無償化」の現状 そして、本年5月10日に、衆院選で自公政権が公約した「無償化」が法案として成立しました。 この「無償化」というのは、消費税の増収分を財源に、政府が就学支援金を出し、保護者の負担を「ゼロ」にする仕組みです。 来年4月から、年収約270万円未満の世帯(住民税非課税世帯)は上限額まで教育費を支援され、年収270万~380万円未満の世帯は段階的に支援されることが見込まれています。 ★学費減免の上限額 (以下、入学金/授業料) ・国公立大:約28万円/約54万円 ・私立大:約26万円/約70万円 ★給付型奨学金の上限額 (以下、自宅通学/自宅外通学) ・国公立大:約35万円/約80万円 ・私大:約46万円/約91万円 旧民主党とは、所得制限などの違いがありますが、結局、「お金を配る」という行為である点は同じです。 ◆教育無償化で無視された論点 安倍首相は、2017年に「貧困の連鎖を断ち切り、家庭の経済事情にかかわらず、子どもたちが夢に向かって頑張ることができる日本」をつくるという名目で、無償化推進に転じました。 教育のチャンスの拡大が、その大義名分となっています。 また、教育費低減が少子化対策につながることや、高齢者よりも若年層へのほうが投資効果が高いことなどが挙げられています。 しかし、そこには抜けている論点があります。 その一つは、日本では、公立校が受験指導能力を失い、子供たちが塾通いを余儀なくされた結果、高い教育費が必要になっているということです。 「公立校の学力向上を抜きにして、お金を配ることで格差是正を図る」という考え方は、問題の根本解決をなおざりにしています。 そのため、無償化を訴える各党は、公教育関係者の票を失わないために、公立校の学力再建にはまともに論じていません。 ◆教育無償化が生む「三つの問題」 (1)無償化によって、教育の質が下がる 無償化すれば、当然、高校や大学の入学者は増えます。 そして、学校の収入が底上げされた結果、自由競争の中ではつぶれる学校も生き延びられるようになります。 これは、裏を返せば国の経費で入学者を増やし、学費を負担し、本来、市場から退出する学校をつぶさないため政策でもあるわけです。 また、学ぶ意欲がない学生が「タダだから」という理由で進学するという問題もあります。 その結果、学校の教育レベルが下がります。 (2)私学の自由の形骸化 また、教育無償化は生徒の奨学金負担という形で、間接的に私学を支援するので、政府の私学への介入が強まる危険性があります。 日本の教育行政は「金を出す時は口も出す」というやり方になっているからです。 私学は、自由な教育のためにありますが、政府のお金が流れるようになると、それが形骸化する危険性があります。 (3)財源負担が公平ではない その財源が消費税であるため、結果的に、教育無償化は、子供のいない世帯から集めたお金を子供のある世帯に移転させる政策になっています。 消費税を無償化の財源とした場合、中卒や高卒で働いている現役世代(経済統計では生涯年収が低いとされる)の人たちが払った消費税で、次世代の大学生の学費を賄うという矛盾も生まれます。 これで大卒の人が有利な会社に就職できるのならば、前世代と次世代の間での不公平が実現するわけです。 ◆教育無償化に反対。公立校の立て直しが必要 既成政党は、無償化がいかに有意義な政策かを語っていますが、その問題点は無視されています。 そのため、幸福実現党は、そのデメリットは無視できないと考え、無償化に反対しています。 所得水準に応じた、無利子や給付型などの「奨学金制度の拡充」は掲げていますが、それは「実質無償化」となるほどの規模ではなく、学費そのものの減免などはうたっていないわけです。 奨学金による低所得者層への支援は想定していますが、最重要課題は「公立校の立て直し」にあると考えています。 塾に行けなければ不利になるのなら、お金のある家庭が自動的に受験に有利になるからです。 本来は、公立校の立て直しこそが、貧富の差に関係なく、夢を追える社会をつくるために必要です。 幸福実現党は、世の流れにこびず、正論を貫き通してまいります。 【参照】 ・各党公約は、各党HPを参照 ・時事ドットコム「高等教育無償化法が成立=来年4月施行、低所得世帯向け」(2019/5/10) 劣化するアベノミクス 消費税を下げないと後がない 2019.07.09 劣化するアベノミクス 消費税を下げないと後がない HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「10%の消費税増税」をうたう自民党は「お上の政治」 自民党が宣伝するアベノミクスは、近年、その中身が劣化しています。 当初は、日銀が大量の国債やETF等を買って資金を市場に流し、政府は公共投資を行うことで、経済成長を目指していました。 しかし、2014年に消費税が8%に上がり、消費は失速。 増税前の2013年には月あたり31.9万円あった家計の平均消費(※二人以上の勤労者世帯)が31.5万円(2018年)に戻るのに4年かかりました。 一度、落ち込んだ消費が回復するまでには時間がかかるのに、安倍首相はまた消費税を10%に上げようとしています。 経済成長という当初の目的から離れ、経済の成長分を取り立てることに血道をあげているわけです。 このことから、自民党は「お上」の政治でしかないことが再確認されました。 ◆増税反対のブレーンが二人も辞職 アベノミクスは、ブレーンの諫言を無視するたびに劣化しています。 2013年に浜田宏一氏(イェール大名誉教授)に景気失速のリスクを指摘されても、増税を決めた安倍首相は、その後も、同じ過ちを繰り返しています。 19年に入り、増税反対の代表的な二人の識者が内閣を去りました。 まず、京大大学院教授の藤井聡氏が昨年末に「内閣官房参与」をやめました。 この方は、本年初から「自由な立場」で消費増税に反対しています。 そして、4月には、アベノミクスを支えたブレーンの代表格だった本田悦朗氏が内閣官房参与を辞職。 増税路線に変わった後、2016年にスイス大使に任命され、経済政策から遠ざけられていましたが、増税10%が決まる2ヶ月前に内閣を去ったのです。 ◆安倍首相は本田悦朗氏の諫言を聞かなかった 本田氏は、首相に諫言するために大使の職をなげうって帰国しましたが、効果はありませんでした。 (米中貿易戦争による世界の景気悪化などの)「リスクが山積みする中、日本にリーマン級のショックをもたらしかねない消費増税は凍結すべきだ」(毎日5/22) 本田氏は、5月には、その持論をマスコミにも訴えています。 しかし、6月に発表された自民公約は「消費税10%」を明記。 日本経済を救うために集まった経済学者の期待は裏切られ、安倍政権は財務官僚が喜ぶ増税路線をまっしぐらに進んでいます。 18年3月に日銀副総裁を退任した岩田規久男氏が、現在、水を得た魚のように消費増税の延期を訴えている姿は、安倍政権の体質をわかりやすく教えてくれます。 ◆安倍政権は「右手で街にお金を流し、左手で減らしている」 岩田氏は、ロイターのインタビュー(2/19)で、今の日本経済を「デフレ脱却の過程にある。しかし、いつ崩れるか分からないくらい弱々しい」と評しました。 そして、消費税増税に対しては「とんでもない」と強く反対しています。 なぜかと言えば、消費の伸びはまだ足りず、十分な経済成長が定着していないからです。 しかし、安倍政権は「お上」体質なので、景気が回復したら、すぐに税金を取ろうとします。 こうした矛盾について、米公共銀行制度研究所会長のエレン・ブラウン氏は「安倍政権は右手で街に出回るお金の量を増やし、左手で減らしているようです」と批判していました。 結局、ブレーンの諫言を無視した結果、アベノミクスは「アベコベな政策」に劣化したのです。 ◆「正論を言うとクビ」なのは年金報告書も同じ。 こうした正論を拒む体質は、年金「2000万円報告書」の時にも露呈しました。 7月1日には、モデル世代で「月5万円、3年間で2000万円」の収入が不足すると書いた報告書の責任者である三井秀範氏(金融庁企画市場局長)は退任に追い込まれています。 同じ試算は厚生労働省でも用いられているのに、この人だけが退任を迫られるのは理不尽です。 ◆幸福実現党の減税で「民間が主役」の自由主義経済が復活 安倍首相は、経済政策の元をつくったブレーンの諫言に耳を傾けなくなりました。 しかし、幸福実現党は、消費税を5%に減税し、財政政策と金融政策を同じ景気回復の方向に向けることで、経済を本来の成長軌道に戻したいと考えています。 それは、今まで無視され続けてきた増税反対派の方々の意見を政治に具体化する行為です。 また、日本経済を財務省から国民の手に取り返すことでもあります。 経済の主役は「政府」ではなく、「民間」です。 増税路線の安倍政権は政府が主役になりたがっています。 しかし、幸福実現党は、減税を進めることで「民間が主役」となる健全な自由主義経済を復活させてまいります。 【参照】 ・総務省統計局「家計調査(家計収支編) 時系列データ(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)」 ・毎日新聞 2019年5月22日付(朝刊5面) ・ロイター「インタビュー:脱デフレへ財政・金融協調を、増税撤回は不可欠=岩田前日銀副総裁」(2019/2/18) ・週刊ダイヤモンド「独占インタビュー エレン・ブラウン米公共銀行制度研究所会長」(2019年7月号) 【公明党の問題点(2)】軽減税率で小売負担は激増 バラマキの財源はどこから? 2019.07.08 【公明党の問題点(2)】軽減税率で小売負担は激増 バラマキの財源はどこから? HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆政策比較:消費税を巡る主張 まず、各党の公約を比較してみます。 ・自民党:10%へ増税。用途は教育無償化等 ・公明党:同上+軽減税率8%の導入 ・維新の会:増税反対。身を切る改革で教育無償化費用を捻出 ・立憲民主党:増税反対(民主党時代の増税法案は間違った判断と認めた) ・国民民主党:増税反対(民主党時代の増税への釈明なし) ・共産党:増税反対 ・社民党:増税反対 ・れいわ新選組:消費税廃止 10%増税への賛成・反対で分かれていますが、公明党はその間に入ることで支持層の獲得を狙っています。 れいわの「消費税廃止」は、一見、09年の幸福実現党の主張に見えますが、政策全般がバラマキ型なので、目指しているものが違います。 政府補助による最低賃金1500円、公的住宅の拡大、奨学金返済不要、公務員の拡大、戸別所得補償、公共投資拡大、デフレ脱却給付金など、共産党も青ざめるような「親方日の丸」社会の建設(ほぼ社会主義経済)を公約しているからです。 比較してみると、幸福実現党の消費税5%への減税以外に、まともな減税政党がない現実に驚かされます。 ◆公明党の「軽減税率」とは 公明党が訴えた飲食物などへの「軽減税率8%」はすでに法制化されています。 そして、同党は、飲食料品などの消費税率を低くすれば、負担は軽くなると主張しています。 しかし、それが本年10月に実施されたら、どうなるのでしょうか。 (※標準税率は10%〔消費税率 7.8%、地方消費税率2.2%〕/軽減税率は8%〔消費税率 6.24%、地方消費税率1.76%〕) ◆飲食にかかる軽減税率 国税庁によれば、軽減税率の対象は「酒類・外食を除く飲食料品」が中心です。 (*その中に新聞が入っている。これは、政治家によるマスコミ懐柔の意図を疑うべき) ここで、何を「飲食料品」とみなすかの解釈は、かなり複雑です。 それを「消費税の軽減税率制度に関するQ&A」で見てみます。 (以下、出所は「制度概要編」と「個別事例編」) ◆飲食料品への税率:何が8%? 何が10% 「飲食料品」とは、食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除く)のことです。 これは「人の飲用又は食用に供されるもの」が対象なので、工業用の塩などは、範囲に入りません。 同じ「塩」でも「飲用・食用」は8%の消費税ですが、工業用だったら10%の税率です。 また、コンビニやスーパーで売っている「ミネラルウォーター」は税率8%ですが、家庭用の水道水は税率10%です。 ライフラインの水道水が税率10%なのは理不尽ですが、これは「生活用水」を兼ねているため、対象外になるのです。 そして、氷においても似たような神学論争が続きます。 「かき氷」などの食用の氷は8%ですが、保冷用の氷は10%。 さらには、お酒は「酒税法」の基準で税率が分かれます。 たとえば、ノンアルコールビールなら8%、普通のビールなら10%の税率です。 そのほか、添加物は軽減税率の対象となります。 ◆「肉用牛」に軽減税率はかかるのか? 食品のうち「肉類」に関しては、複雑な問題が発生します。 「肉用牛」「食用豚」「食鳥」等の生きた家畜を販売した場合、その時点で食用にはならないので、畜産業者が肉用牛を販売しても、「軽減税率8%」は適用されません。 肉用牛が解体され、「肉」としてスーパーなどで並んだ時に8%の税率が適用されます。 畜産業者が聞いたら怒りそうですが、軽減税率の基準は役所が決めるので、幅広いジャンルの取引に、こうしたお役所的な判断が加えられるのです。 なお、牛や豚等の家畜の飼料は「食品」に該当せず、10%の税率というルールになっています。 ◆栄養ドリンクやサプリは「医薬品等」に含まれるのか 不思議なことに「医薬品等」は軽減税率の対象になりません。 そのため、栄養ドリンクは成分を調べて「医薬品等」に該当したら税率10%、しなければ「飲食料品」なので8%、という区分けをしなければいけません。 これは栄養サプリメント等でも同じです。 この場合、リポビタンDの税率はどちらになるかという問題が浮上します。 サプリメントを扱うファンケル等も大変です。 その判断一つで製品の売上が左右されてしまうからです。 ◆「店内」と「テイクアウト」の区別 今の制度だと、ファストフードなどで「テイクアウト」の場合は、軽減税率の対象になります。 店内で食べたら10%、家に持ち帰ったら8%になります。 最近ではコンビニでも店内で食べられるので、食べ物を買うたびに「店内ですか? お持ち帰りですか?」という確認が必須になるのです。 昼休みのコンビニの待ち行列はもっと長くなります。 税率8%のテイクアウトが増えれば、持ち運びに便利な「軽いもの」が好まれるので、一食あたりの「食べる量」が減り、結局、売上高が減ることになりそうです。 ◆「包装材料等」はどうなる そのほか、飲食物の包装品も軽減税率の範囲に含まれます。 普通のビニールや紙等で包装している場合は税率8%です。 しかし、贈答用の包装など、包装材料等につき別途対価を定めている場合は、税率10%です。 包装品自体が単独で商品価値を持つような場合は話が違ってくるようです。 ◆1兆円の「負担軽減」の代価は大きい ここまで見れば、売り子の負担を激増させる制度だということがわかります。 商品の数が多い、コンビニやスーパー等では、その判断が大変です。 軽減税率で1兆円程度の税負担が減るとも言われていますが、これが全国にもたらす事務負担は膨大な規模になります。 また、軽減税率が認められる商品が有利になるので、どの業界も政府に軽減税率の適用を求めるようになります。 そして、役所がそれを認めるかで企業の存亡が左右されます。 その結果、役所の権限が大きくなり、口ききする政治家に、企業は頭を下げなければいけなくなるのではないでしょうか。 ◆労働者が「買い手」であると同時に「売り手」となりうることを忘れた制度設計 買い手の側からみると、税率が8%のままだったら助かるのは事実です。 しかし、国民の多くは企業で働いているので、「買い手」であると同時に「売り手」でもあります。 コンビニやスーパー等で、自分が小売の現場に立った時には、大変なことになります。 売る時に、いちいち、8%なのか10%なのかを確認しなければなりません。 自分が売り手として働く時のことを考えると、軽減税率は、負担を倍増させる仕組みにみえてきます。 事務負担の費用が企業にかかり、円滑な商売が難しくなります。 その負担を迫られた時、とても、税率が軽減された気はしないでしょう。 ◆軽減税率と大判振る舞いのマニフェストの矛盾 さらに、公明党は軽減税率を掲げながら、バラマキ型の福祉政策を並べています。 ・0歳から5歳までの幼児教育無償化の実現 ・年収590万円未満の私立高校授業料の実質無償化 ・所得の少ない低年金者に最大月額5000円(年6万円)を上乗せ ・介護保険料の軽減 公明党の幼児教育無償化は、保育所と幼稚園の違いを無視し、その全部を無料化します。 そうなれば、保育園や幼稚園を利用したい人が増えます。 しかし、現状では保育所が足りないので、さらに政府がお金を出して保育施設を拡大しなければなりません。 こうした福祉を拡大しながら軽減税率を進めた場合は、どこかで「さらなる増税をお願いします」と言わなければいけなくなるのではないでしょうか。 ◆正攻法は「消費税5%への減税」 制度の全体像を見ると、軽減税率のデメリットは、かなり大きいことがわかります。 税率軽減と同時に企業の事務負担は倍増。 買い手が楽になっても売り手の負担が増します。 さらには、軽減税率の許認可を握る役所の権限が拡大し、企業はそれを忖度しなければいけません。 こうしたデメリットまで含めて見た時、軽減税率には、とても賛成できません。 そのネーミングは、制度の実態を隠し、国民をあざむいています。 やはり、正攻法が大事です。 幸福実現党は「小さな政府、安い税金」を目指し、消費税5%への減税で国民負担を軽減することを目指します。 【参照】 ・国税庁「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)」 ・国税庁「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」 ・「公明党政策集 Manifest2019」 ※軽減税率に伴う消費税の減収計算例 (小黒一正「混迷する軽減税率の制度設計」世界経済評論IMPACT、2015.11.24)。 この論文での試算によれば、「酒を除く飲食料品」に軽減税率をかけると、税収増は4.1兆円(=5.4兆円-1.3兆円)に減る。著者は、24%税収が減るので、同じ5.4兆円の消費税 収を得るためには,消費税率を10.6%(=8%+2%÷(1-0.24))まで引き上げる必要があると指摘している。 【公明党の問題点(1)】外交・安保の本音は旧民主党とたいして変わらない 2019.07.07 【公明党の問題点(1)】外交・安保の本音は旧民主党とたいして変わらない HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「改憲」に賛成する公明議員はわずか17% 7月3日、朝日新聞(朝刊)は、1面記事で、憲法改正に賛成する公明党議員は17%しかいないと報じました。 これは、朝日新聞社と東大の谷口将紀研究室の共同調査の結果です。 「賛成」と答えた割合を見ると、自民党が93%、日本維新の会が100%、全政党候補者の平均が45%なので、公明党の数字の低さが目立ちます。 公明党は「自民党の暴走を止めるブレーキ役になっている」と言うのかもしれませんが、それは野党で間に合っているので、むしろ、政策の違う政党が連立しているほうが問題だといえます。 立民党や国民民主党、共産党といった野党が政策の違いを無視して連携したことを、自民党は「野合だ」と批判しますが、結局、自分たちも同じ道に入り込んでいるわけです。 ◆各党の「改憲」への賛成・反対の比率は? 前掲の調査によれば、「改憲」に対する各政党議員の賛成・反対の比率は以下の通りです。 (以下、政党別に「賛成/反対」の比率を表記。足して100%にならない場合、残りが「どちらでもない=中立」) 自民党:93%(残りは、ほぼ「中立」) 公明党:17%/9%(中立74%) 維新の会:100% 立憲民主党:8%/78%(中立14%) 国民民主党:25%/43%(中立32%) 共産党:全員反対 社民党:全員反対 れいわ新撰組:1人が反対、1人が中立 「賛成」と答えた公明党議員の比率は国民民主党よりも低くなっています。 「中立が7割」なので、公明党議員の多くは、世の中の風向きを見て、この問題について態度を決めようとしています。 調査に対する山口なつお代表の返答もブレており、13年は「どちらかと言えば賛成」と回答したのに、19年は「どちらかと言えば変える必要がない」に変わっていました。 結局、憲法に関して、公明党は確たる信念がないわけです。 ◆公明党の公約のなかで「外交・安保」は後回しの項目 本年の公明党公約でも、「外交・安保政策」のやる気のなさは際立っています。 日米同盟を基軸にする自民党に追随するのみで、自衛隊強化の具体策は何もありません。 42ページの冊子の中で、35ページまでは福祉と経済の項目が並び、わずか3ページが外交・安保政策(P36~38)。 そして、気候変動対策と国会・行財政改革で3ページを埋め、最後に憲法についての曖昧なコメントで終わりという構成です。 自民党の9条への加憲案について、「多くの国民は現在の自衛隊の活動を理解し、支持しており、違憲の存在とは考えていません」と書いています。 しかし、それならば、「現実と合わない条文は変えるべきだ」という主張も成り立つので、公明党のスタンスははっきりしません。 結局、この文章は「慎重に議論されるべき」という結論で終わっています。 これでは、憲法に関して、何を主張したいのかがわかりません。 ◆公明党は「日米同盟」と「日中関係」のどちらが大事なのか? そのほかにも、公明党の外交・安保政策には問題点があります。 「日米同盟の強化」をうたい、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、米国に協力すると書きながらも「日中関係は、最も重要な二国間関係の一つ」としています。 トランプ政権が打ち出した「インド太平洋戦略」は、米豪日印で連携し、中国の覇権拡大に対抗するプランなので、公明党が大好きな「日中友好」とは、両立しません。 しかし、公明党は日中関係を「最も重要な二国間関係の一つ」と位置付けているので、同党にとって、最も重要な二国間関係は「もう一つ」あることになります。 つまり、公明党は、日米関係と日中関係を「最も重要な二国間関係」として、同じレベルで並べているわけです。 この発想は、民主党が09年に政権交代する際に唱えた「日米中正三角形論」と変わりません。 それは、日本と米国、日本と中国が同じ距離を取れば「正三角形」になるという考え方です。 これに関しては、生前に岡崎久彦氏が厳しく批判していました(※岡崎研究所HPから引用)。 ———- 「米国とは同じ同盟関係にあり、中国とはそうではない」 「つまり現時点で日米中が等距離の『正三角形』になるなどあり得ない」 「『米国とも中国とも仲良くしましょうよ』と言いたいだけなら、そんなものは外交論ではない」 ———– 二つの大国を天秤にかける外交は、両者から「どちらを取るのか」と詰め寄られた時に、矛盾が露呈してしまいます。 これはその場しのぎの発想にすぎず、最後には、米国と中国の双方から見放されてしまうでしょう。 ◆公明党の外交・安保政策は自民党よりも野党に近い 結局、公明党は、改憲賛成の議員の割合が旧民主党系の政党と大差なく、外交論も旧民主党の「日米中正三角形論」と似たような主張です。 要するに、野党と大差ない外交・安保政策を掲げながら、自民党と連立を組んでいるわけです。 この政策を掲げるのなら、与党として政権に入るべきではありません。 公明党は「小さな声を、聴く力」という標語を掲げていますが、小さな声を聴きすぎて、大きな国策の判断を間違えてしまったのでしょう。 しかし、幸福実現党は、もっと大局観を大事にしています。 トランプ政権の対中抑止策に協力し、インドやオーストラリアなどの国々とともに中国包囲網をつくることを掲げています。 また、台湾との関係を強化し、現政権が出した中国の「一帯一路」構想への協力方針を撤回しようとしています。 米中を天秤にかけるのではなく、旗幟を明らかにすることで、日本という国が生き残る道を拓いてまいります。 【参照】 ・朝日新聞 2019年7月1日付(朝刊1面) ・「公明党政策集 Manifest2019」 ・岡崎研究所HP「国連中心主義も日米中正三角形論もさっぱりわからない」(岡崎久彦、2010年2月10日) 中国が南シナ海でミサイル実験 日本は自主防衛の気概を 2019.07.06 中国が南シナ海でミサイル実験 日本は自主防衛の気概を HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆中国が南シナ海で対艦弾道ミサイルを発射 米国防総省は、7月2日に、中国が6月30日に南シナ海の南沙諸島で対艦弾道ミサイルの発射実験を行ったことを批判しました。 CNBCから、この件について問われた国防総省のイーストバーン報道官は、以下のように答えています。 「国防総省は、南沙諸島(スプラトリー諸島)近辺の人工島からのミサイル発射を知っていた」 「この行為は、2015年に習主席が米国やアジア太平洋諸国、世界に約束した『人工島を軍事基地化しない』という声明に反している」 G20で、米国が中国に追加関税をかけるのを延期し、貿易交渉が再開されることになった矢先にミサイル発射が行われたので、今後の展開が注目を集めています。 ◆「航行の自由作戦」への対抗措置 今回のミサイル発射は、中国が領有権を主張する南シナ海で米軍が駆逐艦等を航行させていること(「航行の自由作戦」)への対抗措置と見られます。 5月6日には駆逐艦2隻が南沙諸島のジョンソン南礁とガベン礁の12カイリ内を通り、19日にも駆逐艦1隻がスカボロー礁の12カイリ内を通過しました。 5月8日には米海軍のイージス駆逐艦と海上自衛隊、インド海軍、フィリピン海軍が国際海域で合同訓練を行っています。 また、19年に、米軍は毎月、台湾海峡で艦艇を通過させており、そこに英国やフランス、カナダなども参加するようになったので、中国は、この問題で妥協できないと判断したと思われます。 日本人的な感覚では「貿易交渉中に、なぜ?」と思いがちですが、中国の国家戦略では、南シナ海を中国の海とすることは死活的な国益に相当する重要課題とされています。 米国が交渉で一歩後ろに引き、大統領が訪朝時に対話路線を出したのを見て、中国は「どこまで自国の主張を米国に呑ませられるか」を読むために、際どい手を打つことを躊躇しませんでした。 これは、「貿易交渉がどうなろうが、南シナ海の覇権は譲ることができない」というメッセージだとも言えます。 ◆毎月のように続く、南シナ海での米中の応酬 6月1日にシャナハン米国防長官代行(当時)が「アジア安全保障会議」で「中国は他国の主権を侵害し、不信を抱かせる行動をやめるべきだ」と批判した後も、中国はミサイル発射実験を行っています。 米国側が容認できない活動として「紛争地域を軍事化し、先進兵器を配備すること」をあげた後に、「環球時報」が新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を報道していました(6/5英語版)。 つまり、毎月のように、米中の応酬が続いており、今回のミサイルは中国側の「7月の行事」だったのかもしれません。 ◆南シナ海が「中国の海」になったら、日本も台湾も危うい 既成政党の党首たちは、討論会でも第一声でも「米中の覇権競争が続く中で、日本はどう動くべきか」という重大な問題をまったく議論しませんでした。 「そんなことは票にならない」というのが本音なのでしょう。 しかし、この問題に対して、日本は「他人事」のような態度を取ることはできません。 なぜならば、南シナ海は日本に資源を運ぶシーレーンだからです。 中国の潜水艦が遠浅の東シナ海を航行する際には、浮き上がった時に発見されやすいのですが、台湾の東側には世界で最も深い海域があるので、ここを潜水艦が押さえれば、日本に物資を運ぶタンカーや輸送船などをいくらでも脅せるようになります。 また、中国が南シナ海を制すれば、台湾を中国軍が海から包囲できるようになります。そうなれば、台湾が中国の支配下に落ちるのは、時間の問題になるのです。 もう、南シナ海は、我が国の「専守防衛」の範囲を越えているとは言っていられません。 ◆潜水艦発射の核ミサイルで中国が米国を威嚇したら・・・ さらに、米国本土に届く核ミサイルを積んだ原子力潜水艦を、南シナ海に展開すれば、米国を核兵器で威嚇する時の「威力」が増します。 現在、中国がもつ4隻の原子力潜水艦(「普」級)は、中国近海からアラスカにまで届く核ミサイルを12発(射程7200km)ほど搭載しています。 これを南シナ海から太平洋へと展開すれば、計48発の核ミサイルで米国全土を狙えるようになるからです。 このミサイルは3個の核弾頭を積めるので、144発の核弾頭で米国全土を威嚇できます。 発見が困難な潜水艦に載せた長距離の核ミサイルは、先制攻撃にも反撃にも有利な最強兵器です。 中国は、これで米国全土を脅せる体制をつくり、アジアから米軍を追い出そうとしているのです。 (※この潜水艦搭載の長距離弾道ミサイルは「巨浪2」〔JL-2〕と呼ばれる) ◆中国は20世紀から覇権確立を構想していた 中国は、アジア支配の野望を抱き、20世紀から計画を実行してきました。 南シナ海の西沙諸島を軍事支配したのは1974年。 1980年には南太平洋のフィジー諸島沖合に向けて大陸間弾道ミサイルの発射実験に成功しました。 この時、弾頭を回収するために駆逐艦を含む18隻の船団が航行し、80年代以降に中国海軍が外洋に進出していきました。 この核実験から39年を経て、南シナ海を我が物にする構想を具体化してきています。 ◆中国の野心に対抗できるだけの「国家戦略」が必要 しかし、今の日本は、米国に依存する以外に、中国に対抗する策がありません。 中国の核には、米軍の核抑止力で対応することになっています。 しかし、中国が潜水艦からの核で米国全土を狙えるようになれば、米国にとって「日本を守るリスク」は大幅に上がります。 弱気な大統領であれば、「日米同盟を放棄して、中国と話し合ったほうがよい」という発想が出てきかねないわけです。 中国が核抑止力を完成させた時、もはや、米国の核に頼るだけでは不十分になります。 冷戦期の欧州は、ソ連の巨大な核に対して「英仏の核」(+NATO軍の核)と米国の核という二段構えで自衛する戦略を固め、安全を保障してきました。 英国とフランスに核ミサイルがあれば、ソ連が欧州に核攻撃した場合、英仏の反撃でソ連の戦力も破壊されます。この場合、同盟で参戦する米国と次の核戦争はできないので、ソ連は攻撃を思いとどまり、「核による抑止」が成り立つのです。 (NATO軍の核は実質的に米軍の統制下にある。これは独自核ではなく、核シェアリング) 幸福実現党が、日米同盟だけに頼る体制が不十分だと主張しているのは、今後の東アジアは、同じようなプランが必要になるぐらい厳しくなると見ているからです。 7月2日の産経(6面)の公約比較では、他政党が福祉や消費税についての訴えを並べる中で、幸福実現党だけが「自衛目的の核装備推進」を訴えていました。 これをみて驚かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、「核装備」は、どうしても必要な「国家戦略」なのです。 幸福実現党は、世に媚びず、責任政党として正論を貫き、日本を守るために力を尽くしてまいります。 【参照】 ・CNBC “Pentagon condemns ‘truly disturbing’ Chinese missile tests in South China Sea” (2019/7/3、Amanda Macias) ・平松茂雄著『中国、核ミサイルの標的』(角川ONEテーマ新書) ・米国防総省 “Annual Report on Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China”(2019/5/2) ※「巨浪2号」の性能は中国軍事研究家の平松茂雄氏と米国防総省の報告書を参照。 【党首第一声】筋が通らない野党 VS 使い古された自民党 2019.07.05 【党首第一声】筋が通らない野党 VS 使い古された自民党 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 4日に発された各党の党首第一声では、憲法や消費税、年金についての主張が目立っていました。 ただ、内容は、3日の討論会ともかなり重なるので、この新たな発言を取り上げつつ、前回とは違う切り口を考えてみます。 結論を先に述べれば、野党の主張は筋が通らず、与党はもはや「使い古されてしまった」という印象でした。 (以下、各党首の発言はみな第一声より引用) ◆護憲の旗を掲げる共産党:日本国憲法成立には反対だったのに 第一声で、安倍首相は「憲法審査会では1年間で衆院で2時間あまり、参院ではなんと3分しか議論されていない」と指摘し、憲法についての議論を拒否する野党を批判しています。 いっぽう、野党で憲法を特に強調した共産党の志位委員長は、自民党の憲法9条の改定案を批判。 (一項・二項の後に)「前条の規定は自衛の措置をとることを妨げない」と書かれていることを取り上げ、これでは「9条2項の制約が自衛隊に及ばなくなってしまうじゃありませんか」と主張しました。 そして、米国の戦争に巻き込まれると煽りましたが、正当防衛にあたる「自衛の措置」を制約するのは、まともな発想ではありません。 自衛権は国連憲章でも認められています。 また、共産党が昭和21年に自民党主導の日本国憲法制定に反対した時は、自衛権が失われることを理由にあげていました。 当時、共産党の野坂参三氏は国会で(憲法案は)「我が国の自衛権を放棄して民族の独立を危くする危険がある、それゆえに我が党は民族独立のためにこの憲法に反対しなければならない」と主張したのです。 その頃、共産党が公表した「日本人民共和国憲法」(案)は「すべての平和愛好諸国と緊密に協力し、民主主義的国際平和機構に参加し、どんな侵略戦争をも支持せず、またこれに参加しない」と掲げていました。 この憲法案からみると、今の共産党の路線は真逆です。 ◆立民党の消費税増税反対:理屈が幸福実現党のパクリ 立憲民主党の枝野代表は「日本の経済にとって、一番大事な6割を占めている消費が冷え込み続けていて、結局は社会の活力がどんどん失われている」として、10%の増税に反対しました。 その認識が間違っているわけではありません。 しかし、消費の冷え込みの原因をつくったのは、民主党でした。 民主党は、与党だった頃、自民党と公明党とともに3党で増税法案を成立させています。 本来ならば、「私達が日本の消費不況の元凶です」と頭を下げて国民に謝らなければいけません。 党首討論で「あの判断は間違っていた」と認めたわけですから、同じことを第一声で謝らないのは不誠実です。 そして、前掲の主張は、幸福実現党が2009年から言っていたことです。 立憲民主党は、ろくに反省もせずに、他党の主張をタダ取りしています。 なお、国民民主党の玉木代表にいたっては、自分たちが増税法案を成立させたことの反省の弁は一言もありません。 ◆年金:共産党はあとさき考えず/維新はマイナンバーによる徴収強化 安倍首相は、雇用が増え、年金運用で成果が出ていることをあげ、年金はこれからも維持できることを強調しました。 これに対して、共産党は「マクロ経済スライド」の廃止を主張。 「減らない年金」を訴え、「年金積立金」を運用ではなく、給付にばらまくことを呼びかけています。 「年金積立金を株価のつり上げに使うんじゃなくて年金の給付に計画的に使わせようじゃありませんか」 今の世代と将来世代との給付のバランスを取るためのマクロ経済スライドを廃止するだけでなく、将来のために必要な積立金を今の世代にバラまくという、恐ろしい提言をしました。 現役世代の年金保険料は今の高齢者への給付金に使われているのに(賦課方式)、積立金まで配ってしまったら、将来の世代には何も残りません。 「高額所得者優遇の保険料の仕組みを正すことで、1兆円の保険料収入を増やしてまいります」と述べましたが、厚生年金と国民年金を足した毎年の歳出は50兆円程度なので、これで大盤振る舞いの穴を埋めるのは困難です。 なお、維新の会の松井代表は年金制度の大盤振る舞いを見直すことを提唱。 その主張には当たっているところもありますが、「マイナンバーカードというカードも普及させて、本当に必要な人に年金が届く、こういうシステムを皆さんと一緒に作り上げていきたい」と主張しました。 これは国民の財産を政府が監視する社会をつくる結果になりかねません。 ◆幸福実現党の「九条改正」と「5%への消費税減税」が日本を救う 既成政党の第一声の訴えは、「おかしい」ものと「物足りない」ものばかりです。 憲法論においては、幸福実現党のように九条の一項・二項を含めた根本改正を訴えている政党はありませんでした。 「自分の国は自分で守る、この方向に向けて、私たち幸福実現党は憲法9条の根本改正いたします」(釈党首) また、既成政党で消費税5%への減税を訴えている政党もありません。 「消費税を5%に下げたい。これが私たち幸福実現党のいの一番、日本経済復活のファーストポイントでございます」(同上) 山本太郎のれいわ新選組は、幸福実現党の立党時の「消費税廃止」を真似ていますが、「れいわ」はバラマキ政策とセットなので、そのプランを実施した場合は、昔の民主党のように、財政の計算がつかなくなり、「減税は無理でした。やはり増税します」と、有権者を裏切らなければいけなくなります。 「小さな政府・安い税金」とセットでなければ、消費税減税は裏付けのない主張になってしまいます。 また、年金に関しては、少子高齢化の中では先細りが見えているので、共産党のような「虫の良い話」は成り立ちません。 与党の年金維持論も、本当に必要な「給付と負担の適正化」に関しては口をつぐんでいます。 年金に関しては、まずは「小さな政府」の発想で、今の大盤振る舞いを正さなければいけません。 経済成長策や人口増政策(少子化対策と移民)も必要ですが、そうした難題をわかりやすく語るのは困難なので、選挙戦では耳障りがよい言葉だけが飛び交っています。 消費税減税による景気振興や、未来産業への投資、リニア新幹線による交通革命といった経済成長策や移民政策は、幸福実現党が立党以来、訴え続けてきた政策です。 これらの経済戦略なしに、年金論だけを単体で論じても「パイの取り合い」で終わってしまいます。 幸福実現党は、今後も、国防強化と、経済成長による日本の復活を成し遂げるべく、戦い続けてまいります。 【参照】 ・産経ニュース「参院選第一声詳報 安倍晋三首相、自民党総裁 憲法『審議を全くしない政党を選ぶのか』」(2019.7.4) ・同上「参院選第一声詳報 立憲民主党・枝野幸男代表『生活を防衛する夏の戦いに』」(2019.7.4) ・同上「参院選第一声詳報 共産党・志位和夫委員長『安倍政治サヨナラの審判を』」(2019.7.4) ・同上「参院選第一声詳報 日本維新の会・松井一郎代表『徹底的改革で消費税上げずに教育無償化実現』」(2019.7.4) 【党首討論】主な発言とその問題点 2019.07.04 【党首討論】主な発言とその問題点 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 7月3日には、日本記者クラブで党首討論が行われました。 与野党7党の党首が議論したのですが、今までと同じく、減税や自主防衛の強化など、日本に本当に必要な政策は語られませんでした。 しかし、それでも、各党の主張と問題点がよくわかる機会ではあるので、主な発言を紹介してみます。 ◆自民党:増税路線の固定化 安倍首相は、消費税の10%への増税後の財政を問われ、「今後10年くらいの間は必要ない」と答えました。 当面の間、10%の税率を維持し、その後、次の増税の可能性をほのめかしています。 つまり、過去の増税を間違いだとは認めず、現状の増税路線を維持することを決めたわけです。 ◆立憲民主党:ついに消費税増税の間違いを認めた いっぽう、枝野代表は、民主党政権の頃、三党合意で消費税増税を進めたことについて「結果的にあの判断は間違っていた」と発言。 意外にも「間違い」を認めました。 しかし、消費税に関する公約は増税凍結にとどまっているので、ほんとうの意味では反省できていません。 本当に間違いを認めたなら、8%の税率も撤回し、5%に戻すことを訴えなければいけないはずです。 ◆公明党:憲法論から逃げて票を盗みたい 山口なつお代表は、記者との質疑で「公明党の本心は安倍さんの憲法改正は迷惑だと思っているのではないか」と問われました。 この質問は的を射ています。 山口代表は、自民党の改憲議論を「政党の立場」として認め、「もっと与野党の枠を超えて議論をしっかりと深めて国民の認識を広めることは大事だ」答えたのですが、これでは、公明党の立場がよく分かりません。 党としての主張は「改憲」「護憲」などの「中身」が必要なのに、公明党は「議論しよう」としか言っていないからです。 結局、支持母体の創価学会は護憲なのに、公明党は改憲派の自民党と連立しているという、矛盾を隠すための答弁に終始しています。 憲法論で立場を明確にしないまま、バラマキ政策で票を集めて逃げ切ろうという意図が伺えます。 ◆野党連合の矛盾①:自衛隊の「合憲/違憲」、日米同盟の「維持/破棄」 安倍首相は、この討論で野党連合の政策の矛盾を強調しています。 「共産党は自衛隊は憲法違反だというのが明確な立場だ。枝野さんは合憲ということだろうが、もし枝野さんが福井県民だったら、この候補に一票入れるのか」 野党連合を見ると、現在、立民党と国民民主党は自衛隊を「合憲」、共産党は「違憲」としています。 (社民党は村山政権の頃、自衛隊を合憲としたが、現在、党HPにて「現状、明らかに違憲状態にある自衛隊は縮小を図り」と記載。態度は転々としている) また、日米同盟に関しても、立民党と国民民主党は「維持」、共産党は「破棄」なので、立場が一致しません。 (社民党公約は「日米安保条約は、将来的に経済や文化面での協力を中心にした平和友好条約への転換をめざします」という謎の主張を記載) 討論で、枝野代表は「立憲民主党は明確に日米同盟堅持」とも強調していたので、立憲民主党が共産党と共闘しているのはおかしいのです。 結局、野党連合は「反安保法制」だけで結託しており、まとまった安全保障政策がありません。 こうした政党が政権を取ったところで「国民の生命と安全と財産を守る」という政治の責任を果たせるはずがないといえます。 ◆野党連合の矛盾②:年金政策が不一致なのに年金不安をなくせる? 安倍首相と野党の論戦では、年金が大きな争点になりました。 「志位さんはマクロ経済スライドを廃止すると言っている。枝野さんは民主党政権時代も維持してきたから、維持するという考えなのだろう。もし基本政策が統一されていないのであれば、非常に不誠実だ」 その際に、年金における野党政策の不一致もやり玉にあがりました。 将来世代のために物価・給料水準に応じて今の高齢者への給付を減らす「マクロ経済スライド」に関しては、国民民主党も否定的な発言をしています。 「マクロ経済スライドを適用して世代間の公平を図ろうとすると、どうしても削らざるを得ない」(玉木代表) 国民民主党は、年金で所得の最低保障を行いたがっているので、この制度がその妨げになると見ているようです。 元民主党議員がつくった政党なので、昔に自分たちが維持した制度について「廃止」とは言えないのですが、国民民主党の年金政策は、かなり共産党寄りになってきています。 ◆共産党:「減らない年金」? 共産党の志位委員長は「マクロ経済スライドは廃止し、減らない年金にすべきだ」と主張。 これに対して、安倍首相は「(その場合)今40歳の方が、もらう段階になって年金の積立金は枯渇する」と反論しました。 これは、安倍首相のほうに理があります。 年金は、今の高齢者に多めに給付されており、年を減るに従って給付額が次第に減るように設計されていますが、マクロ経済スライドは、物価や賃金の変動に応じて、直近の世代に払いすぎにならないよう、給付額を削減する仕組みだからです。 これを廃止した場合、今の世代は後の世代に比べると「もらいすぎ」になってしまい、「世代間不平等」が拡大します。 高齢者がどんどん増え、高齢者1人あたりの現役世代の数が減っていくわけですから、給付金が減っていくこと自体は避けがたいものがあります。 志位委員長の主張には無理があり、結局、今の高齢者のために年金の積立金をばらまくだけで終わってしまうでしょう。 ◆日本維新の会:「身を切る改革」は何のため? 維新の会の松井代表は「身を切る改革」を提唱。 「大阪府と大阪市で行革をすることで教育無償化の財源を生み出した」 その結果、「教育無償化」の財源ができたと自慢し、これを全国に広げるべきだと主張しました。 維新に関しては「お金の使いみち」が妥当かどうかという問題があります。 今の教育無償化は、(消費税などで)全世帯から集めたお金を子供のある世帯に配る行為なので、必ずしも公平な政策ではありません。 子供のいない世帯からお金を集め、そのお金を子供のある世帯に移転させているからです。 国の予算を浮かせることができたならば、その分だけ減税するか、全国民に恩恵がある政策(例えば防衛費など)に回すのが筋です。 維新に対しては「何のために身を切るのか」という問題があります。 ◆社民党:自己責任の否定=社会主義 社民党は党首が体調不良で欠席し、吉川幹事長が出席という体たらくでした。 吉川幹事長は「かたくなに憲法を守る」と従来の方針を表明。 特に注意を要するのは「国民に自己責任を問うのは政治の責任放棄」という発言です。 自己責任を否定した政治の行きつく先は、国が親方日の丸で企業や個人を養う社会主義の世界だからです。 政治は「最低限のセーフティネット」で苦しんでいる人を助けるべきですが、それは自己責任を否定することと同じではありません。 ◆「減税と安全」の幸福実現党が今こそ必要 結局、党首討論では、本当に必要な「消費税5%への減税」や「自主防衛の強化」についての議論はありませんでした。 17年の北朝鮮のミサイル危機、18年以降の米中対立の本格化、19年のトランプ「同盟不公平」発言など、日本への警告とも取れる出来事が続いているのですが、それでも「自分の国は自分で守る」という議論は、議員から出てこないのです。 憲法9条の1項・2項を含めた全面改正の議論は、どこかへ雲散霧消しています。 また、米国も中国もイギリスもフランスも減税にかじを切っているのに、日本だけはなぜか増税路線です。 これでは、景気の先行きが思いやられます。 しかし、既存の政治家が動かないからこそ、新しい選択を訴える勢力が出てこなければいけません。 幸福実現党は、憲法9条の根本改正や、消費税5%への減税といった、本当に必要な政策の実現を訴えてまいります。 【参照】 ・産経新聞 2019年7月4日付 ・読売新聞 2019年7月4日付(朝刊) ・朝日新聞 2019年7月4日付(朝刊) ・毎日新聞 2019年7月4日付(朝刊) 【トランプ訪朝】米国任せではノドンミサイルから日本を守れない 2019.07.03 ttp://hrp-newsfile.jp/2019/3632/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆米大統領が初めて北朝鮮に足を踏み入れた トランプ大統領は、6月30日に南北朝鮮の軍事境界線上にある非武装地域を訪問し、板門店で金正恩委員長と会談しました。 朝鮮戦争の休戦協定が結ばれた板門店で握手し、共に北朝鮮側に入った後に韓国に戻る映像がニュースに流れ、トランプ大統領が金委員長をホワイトハウスに招待したことなどが報道されました。 物別れに終わった2月の会談後の関係修復がはかられたのですが、この時に、トランプ大統領が、日本にとって注目を要する発言をしています。 ◆「我々は長距離弾道ミサイルについて議論をしている」 記者会見の終わり際に、最近、北朝鮮が行ったミサイル発射をついての見解を問われ、トランプ大統領は、(それは)「とても小さい。それらのミサイル実験はどの国もやっている」と答えていました。 「我々は、それらをミサイル実験とは見なしていない」 「我々は長距離弾道ミサイルについて議論をしている。彼らは今、それを発射していない」 「最も重要なのは、核実験が行われていないことだ」 そして、北朝鮮への「制裁を外せる日を楽しみにしている」とも述べていたのです。 ◆米朝交渉の中心は「米国にとっての脅威の除去」とみられる 今回の訪朝で、トランプ氏は「長距離弾道ミサイル」と「核」に焦点を絞ってきています。 つまり、核開発を止めさせ、米国の脅威となる長距離弾道ミサイルを廃棄させることを優先しているのです。 韓国にとっては「短距離」のミサイルが大きな問題を占めるのですが、それは問題には挙げられませんでした。 日本の脅威となるのは、九州や中国地方に届くスカッドR(短距離弾道ミサイル)や全国に届くノドン(準中距離弾道ミサイル)ですが、これらの扱いも不明なままです。 ◆日本を守るのは、やはり、日本自身の力 もし、北朝鮮の核兵器の全てが除去されるのなら、それをノドンやスカッドに積めなくなるので、日本の安全につながります。 しかし、北朝鮮の全域を捜索し、核兵器の全てを破棄させるのは、簡単なことではありません。 米国が1年交渉しても、いまだ核兵器を一つも廃棄できず、大統領が「核実験が止まった」ことを成果とせざるをえないのが現状です。 米朝交渉で、短距離や中距離のミサイルも廃棄対象になることを期待する方もいますが、今回、それは、主な議題ではないことが明らかになりました。 結局、日本は防衛力を強化し、「ミサイルを撃たせない体制」をつくらなければならないわけです。 ◆「ミサイルを撃たせない」ための二つの道 日本には「ミサイル防衛システム」がありますが、北朝鮮は100発以上の弾道ミサイルで日本を狙えるため、これで落とせるのは一部に限られます。 北朝鮮のミサイルに対抗するには、核兵器を持った米軍の部隊を日本に展開させるか、攻撃を踏みとどまらせる「抑止力」を持つかしかありません 前者は、非核三原則の「持ち込ませず」をなくし、米軍の核部隊や核搭載の艦艇などが公然と日本に滞在できる体制をつくることです。 しかし、オスプレイだけで大騒ぎになる日本で、これを実現するのは、困難をきわめます。 また、もともと沖縄返還時に、そこにいた核部隊を引き揚げた米国に、いまさらこのプランを求めることにも、政策的な矛盾があります。 「『核抜き・本土並み』の返還を求めたのは、日本ではないか」と言われることは避けられないでしょう。 (冷戦期には核抑止力が必要だったが、非核三原則があるので、日本は、結局、ながらく核持ち込みを容認する「密約」を結んでいた) ◆ミサイルを撃たせないための「ミサイル導入」 こうした事情を踏まえ、日本でも実現可能な策として、米国からの「巡航ミサイル」の導入を提言する人もいます。 米シンクタンクで海軍アドバイザー等を務める北村淳氏は、約1000億円で自衛隊艦艇には800発程度のトマホークミサイルを搭載可能だとも指摘しています。 (今のミサイル防衛システムを拡大し、北朝鮮のミサイル群への迎撃体制を完備させる場合は、新装備も含めて約2兆円が必要になると試算。なお、トマホークは、トランプ大統領が習主席を初めて米国に招いた時に、シリアに撃って見せた巡航ミサイル) 安倍首相も、2018年にやっと北朝鮮が数百基のノドンミサイルを配備していることを公の場で語りましたが(18/2/14衆院予算委)、結局、これを「撃たせない」ためには、日本も反撃できる体制をつくり、攻撃を思いとどまらせるしかありません。 前防衛大臣の小野田氏はこの政策に前向きだったので、政府も「巡航ミサイル導入」の議論を進めようとしていました。 しかし、現在は、もはや忘れ去られています。 今のままでは、安倍首相の「脅威の認識」と日本に必要な抑止力のレベルがつりあわないのですが、自民党の議員は、その矛盾に口をつぐんでいるようです。 (※18年防衛白書も北朝鮮が「スカッド用のTEL(移動式発射台)を最大100両、ノドン用のTELを最大50両、IRBM(ムスダン)用のTELを最大50両」もっているとの米軍の分析を紹介しているが、その対策は不明) ◆日本を攻撃させないためにも「自衛隊の強化」が必要 生前、渡部昇一氏は、武の語源は、矛をもって矛を止めることだと言っていました。 つまり、ミサイルを持つことで、北朝鮮にミサイルを撃たせなくすることが大事です。 幸福実現党が、立党以来、北朝鮮への「抑止力」強化を訴えてきたのは、戦争がしたいからではなく、戦争が起きるのを防ぐためです。 巡航ミサイルの導入に関しては、自民党よりも前から必要だと主張しています。 (※「巡航ミサイルを備えた潜水艦隊を充実(2010主要政策)」「巡航ミサイルなどの敵基地攻撃能力を保有(2013主要政策)」など) 2017年に北朝鮮危機が本格化してから「巡航ミサイルの保有」を検討した国会議員は、18年に米朝交渉が始まったのをいいことに、全てを米国任せにし、この問題に口をつぐんでしまいました。 しかし、このたびのトランプ訪朝で、短距離・中距離弾道ミサイルに対しては、日本自らが「撃たせない」だけの抑止力を持つべきことがはっきりしたのです。 幸福実現党は、今後も、日本を攻撃させないためにも、平和を守る「抑止力」の必要性を、訴え続けてまいります。 【参照】 ・ARIRANG NEWS(アリランテレビ):LIVE: [S.Korea-U.S. Summit] MOON, KIM, TRUMP HOLD HISTORIC THREE-WAY TALKS ON SOUTH KOREAN SOIL 本文に引用した発言は以下の通り。 “These are missiles that practically every country tests” “We don’t consider that a missile test actually it wasn’t a test” “But we’re talking about ballistic missiles, long-range ballistic missiles, and [North Korea] hasn’t even come close to testing” “And most importantly, there were no… すべてを表示する « Previous 1 2 3 4 5 … 11 Next »