Home/ 2023年 June 2023年 June 改正マイナンバー法で監視社会に突き進む日本。4つの「抵抗権」で声を!【後編】 2023.06.25 https://youtu.be/SqsKVSOeSII 幸福実現党党首 釈量子 ◆マイナンバーの危険性 マイナンバーの危険性は、前編で指摘したセキュリティーの問題にとどまりません。 (1)貯金税 政府は今、1200兆円以上の借金を抱え、税金を取る手段を血眼になって探しています。 物価も上昇し、金融緩和の修正も迫られる中、「異次元の少子化対策」なるバラマキを続けるなら、企業の内部留保や個人の貯金等に目が行くわけです。 個人の「所得」のみならず「資産」まで把握して、その量に応じて税金を取るため、資産把握にマイナンバーを使うであろうことを、大川隆法党総裁は、警鐘を鳴らしてきました。 4月25日、経済界や学会の有志がつくる「令和国民会議(令和臨調)」は、社会保障制度の改革を促す政府への提言及びその後の記者会見の中で、マイナンバーで国民の所得を把握できるようにすべきとしました。 令和臨調で三菱UFJ銀行特別顧問の平野信行氏は「現在のマイナンバーは用途が狭すぎる」「資産や所得の把握に一番欠けているのは銀行口座への登録で、これは義務化すべきだ」との見解を示しました。 令和臨調は子育て支援策の財源として、「税を軸に安定的な財源を確保すること」と求めていて、政府財務省の意向にそった発信をしているのは間違いありません。 また、死亡後に残った遺産に課税する「死亡消費税」の導入もあります。死んだ後に税金を取る国などありません。 (2)AI等による監視主義は「人間の家畜化」につながる 「私有財産」も国民の自由権の一つであり、国民の行動から財産状態から職業などを一元管理できるようになれば、行きつく先は今の中国のような監視社会です。 経済的自由が制限されると、あらゆる自由が根こそぎ奪われます。 ◆「全体主義」に対しては抵抗を! 日本人は、「賢い人たちがやってくれる」と呑気に思いがちですが、全体主義的傾向には、「抵抗権」を盾に声を上げなくてはなりません。 (1)具体的には、マイナンバー制度の見直し 法律が成立したからもう遅いと考えるのはまだ早いのであって、見直しは可能です。 6月7日に読売新聞が社説で「1980年に納税者番号の一つ、グリーンカード制度を導入する法律が成立した後、政財界から批判が噴出したため、5年後に廃止した」として、見直しを訴え、話題になりました。 (2)現金、紙の保険証などアナログの要素を残すべき なんでもデジタルにすればいいという発想はやめて、「紙の健康保険証」も残したい人の選択肢を尊重すべきです。 すでに日本の病院は、ロシアや北朝鮮などサイバー攻撃の対象になり、電子カルテ化した医療情報を身代金に取られ、診療が止まった事例もありました。 災害による停電も常時念頭に置くべきです。デジタル化が遅れてアナログのままであるほど安全と言えるわけです。 政府は「誰一人取り残されないデジタル社会」などと言いますが、カードを持たないと不便な社会を作り出すのは断固拒否していきたいと思います。 (3)マイナカードで、国民や自治体の「欲」を釣るな 岡山県備前市では、給食費及び学用品費を無償化とする条件として、マイナンバーカードの取得を求めるとしました。 子供たちの給食と引き換えにする市の姿勢は、本来取得が自由なはずのカード有無で、行政のサービスを差別することになります。 マイナンバーの理念である「公平・公正な社会の実現のため」どころか、カードの有無で「差別」を付けるなど許されません。 (4)デジタル庁廃止 職員約730人のうち民間出身者は約250人、そのうち約9割が民間企業とも兼業できる非常勤職員です(2022年4月時点)。これはほとんど「ザル」です。 スパイ天国の日本でどんな情報も抜かれる可能性をはらんでいるのではないでしょうか。 ◆「全体主義」には抵抗を 国家が暴走して個人の「自由」を踏みにじるのが「全体主義」ですが、「カードを持つと便利になる」「お金が振り込まれる」という政府の言葉に簡単に踊らされてはなりません。 こうした教訓を学ぶことなく、突き進む政府の傲慢さの根源は、中国と同じく、神仏の目を意識しない精神性の低さにあります。 簡単に自由を奪い、人間を家畜化する政治に警鐘を鳴らすことは、「自由・民主・信仰」を政治的信念とする幸福実現党の使命だと考えています。 改正マイナンバー法で監視社会に突き進む日本。4つの「抵抗権」で声を!【前編】 2023.06.24 https://youtu.be/SqsKVSOeSII 幸福実現党党首 釈量子 ◆改正マイナンバー法が成立 6月2日、「改正マイナンバー法」が成立しました。 今、トラブルが起きていますが、まだ序の口で、今後日本の国民はさらに大きな問題に直面すると思われます。 まず、今回の法改正のポイントを見てみましょう。 (1) 現行の保険証を廃止、マイナ保険証に一本化 マイナンバーカードをつくるかは「任意」ですが、国民皆保険の日本では、健康保険証を持っているので、事実上、マイナンバーカード取得が義務付けられました。 カードを持たない人には、申請によって「資格確認書」を発行します。有効期限は1年で、無料です。 高齢者などを念頭に代理申請もでき、カードと確認書両方の申請がない場合は、医療や保険機関の判断で確認書を発行する方向です。 (2) 公金受取口座との紐づけ 次に、本人が不同意の意思を示さない限り、公金受け取り口座がマイナンバーと紐づけされます。 今後、行政から文書で尋ねられた時に「同意しない」という意思表示をしないと、勝手に紐づけされます。 しかし、マイナンバーに関するトラブルは絶えず、他人の年金記録が閲覧できたとか、誤登録も多発しています。 昨年12月には、奈良市のマイナカード窓口担当職員がマイナポイントを不正に取得して窃盗容疑で逮捕される事件もありました。 大手新聞の社説で「保険証の廃止 見直しは今からでも遅くない」など、政府に対する不満も溢れ、「返納したい」という人も出ています。 しかし、政府は見直しどころか、6月9日に「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定し、2026年中に「新しい次期マイナンバーカードの導入を目指す」としています。 「運転免許証」など一体化を更に進め、スマホ搭載型マイナカードも検討、「民間との連携も含めた利用拡大」に向けて突き進んでいます。 ◆海外のIDカードの教訓 諸外国ではマイナンバーに当たるIDカード体制は失敗しています。 イギリスでは、第二次世界大戦中に「非常時下」であることを理由にIDカードが導入されました。 しかし、1951年、警官に身分証明書の提示を求められて、その提示を拒んで有罪となった事件を機に「個人の身元を証明する行為は強制されるべきではない」という世論がわきあがり、1953年に国民登録法及びID カードが廃止となりました。 その後、2000年代に入って不法移民やテロ対策、給付金詐欺を検出するための手段としてID カードシステム導入の議論が再び起き、2006年労働党政権の時に、虹彩など生体認証データを含んだIDカードを導入しました。 しかし、13年ぶりに、保守党・自由民主党の連立政権への交代とともに廃止されました。 代わりに公共サービスの共通認証、及びポータルサイトが導入されましたが、取得は任意で、2020年時点で全人口の約10.7%にとどまっています。 アメリカでは、1943年に9ケタの社会保障番号(ソーシャル・セキュリティ・ナンバー)が導入され、身分証明書として利用されてきました。 しかし、「漏洩した番号で勝手にクレジットカードなどをつくられ、買い物をされる、なりすまし詐欺」が多発しました。 人口3億1千億人に対して、21年の被害者は4200万人、「なりすまし」の詐欺被害は年間総額5兆円、日本の防衛費にも相当します。 見直されたのは、陸軍です。 米軍では「ドッグタグ」という、戦死した時に個人を識別できるタグに、社会保障番号が打ち込まれているのです。 2015年、陸軍では社会保障番号の記載を廃止して、国防省の独自のIDナンバーが使用されるようになりました。 紛失したIDタグがあれば名前、社会保障番号、血液型や宗教までわかってしまい、兵士に危害を加えられる危険もあるからです。 ちなみにドイツは、共通番号はナチスの再来を想起させるという理由で税務分野の番号に限定しています。 一元化はリスクが跳ね上がるので、分散管理の方が安全であるという大きな教訓です。 ◆海外の教訓から「逆走」する日本 ところが政府の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」はまさに、海外の教訓から「逆走」しています。 特に、自衛隊員は、どこで何をしたかが丸裸になれば、船の位置や作戦行動などが丸見えになってしまいます。 国会で、「警察庁、防衛庁、公安調査庁などの治安官庁」が出した、2015年11月6日付「国家公務員身分証の個人番号カード一元化における問題点等について」の公文書が存在していることが、明らかになりました。 同公文書では、「情報が流出するおそれが飛躍的に増大」して、「職員やその関係者に対する危害・妨害の危険性も高まる」ので、「個人番号カード一元化の適用除外」を求めています。 (後編につづく) 世界有数の政治学者が徹底分析。終わらないウクライナ戦争――消耗戦を決める三要因【後編】 2023.06.22 幸福実現党党首 釈量子 前編からの続きで、シカゴ大学のミアシャイマー教授の見解の続きを紹介します。 【2】和平合意の可能性 ミアシャイマー教授は、和平合意の可能性について分析し「両国が合意することは難しい」と結論づけています。根拠として三つあげています。 まず、「領土の問題」です。 「ゼレンスキー大統領はウクライナの領土を取り戻すことなしに、停戦合意はあり得ないと言っている。一方で、ロシアは併合した四州とクリミアを絶対に手放さない。」 「次に、「中立化の問題」がある。ゼレンスキー大統領はNATOに加盟したいが、加盟させてもらえない。しかし何らかの安全保障の枠組みを米国やNATOに求めている。」 「一方で、ロシアは開戦当初よりウクライナの中立化を求めている。ロシアはウクライナに中立化の意思がないならば、ウクライナという国家を機能不全に陥れることを考えている」というわけです。 ちなみに6月2日、ゼレンスキー大統領はエストニアのカリス大統領との共同記者会見で、「戦争が続いている間はNATO加盟国になれない。加盟を望んでも不可能だからだ」と発言しています。 さらに、ミアシャイマー教授は「信用の問題」を指摘しました。 「2015年に締結したミンスク合意について、西側のリーダーはプーチンにウソをついた。ミンスク合意には、ドンバスの紛争を終了させるという内容が含まれていた。」 「当時のドイツのメルケル大統領、フランスのオランド大統領、ウクライナのポロシェンコ大統領、ロシアのプーチン大統領の間で約束していた。」 「しかし当時の西側リーダーたちはミンスク合意を機能させることに関心がなかった。彼らはロシアと戦うためにウクライナを強化するための時間かせぎを考えていた。なので、プーチンは西側を信用していない。」 以上のことから結論として、ミアシャイマー教授は、ウクライナ戦争が停戦合意に至ることは難しいので、いわゆる「凍結された戦争」になるだろうと主張します。 これは、朝鮮戦争の際に38度線で結ばれた休戦協定のイメージです。韓国と北朝鮮はあくまで休戦状態であり、戦争が終結しているわけではありません。 講演の終盤でミアシャイマー教授は、「米国には『NATOの東方拡大が大きな災いをもたらす』と主張している人が数多くいて、これは驚くべきことだ」と話しました。 さらに興味深いのは、「プーチン大統領はミンスク合意を大事にしていたので、ドンバスに侵攻するつもりはなかった。2021年12月に解決策を提示したが、バイデンは聞く耳を持たなかった。」 ミアシャイマー教授は、一貫して「NATOの東方拡大に問題があり、プーチンにウクライナ侵略の意図はなかった」と主張しています。 最後に、「ロシアが勝利すると思っているが、ロシアが万一負けそうになれば、核兵器を使用する可能性がある」と警告しました。 ◆日本が果たすべき役割 ウクライナ戦争における日本の立ち位置は完全にNATO側です。 最近も、6月2日、米軍が砲弾を増産するために日本企業に「火薬」の生産を依頼しているという報道がありました。 サプライチェーンに組み入れられると日本はいよいよ弾薬の支援をすることになります。しかし日本のこれ以上の肩入れは、日本を危機に晒すことにもなるので無用だと思います。 NATOの連絡事務所を日本に設置するという話も出ていますが、これにも反対です。日本はEUの一員でも、NATOの一員でもないからです。 ちなみに、世界がウクライナを見ている間に、中国軍は揚陸訓練を実施し、戦闘機が台湾海峡を脅かすなど、活発になっています。 日本の報道では、未だにゼレンスキー大統領を英雄視する見方が大半です。 しかし、ゼレンスキー大統領は、究極の事態を予想せず、撤退戦を知りません。このままでは国を滅ぼす最悪の大統領になる可能性があります。 幸福実現党は、ウクライナの国民を守るためにも、ウクライナの中立化によって国民の命を守るとともに、世界大戦に拡大することを避けるべきだと主張してきました。 ウクライナの側も国民を守るため、EUとロシアと中立の関係で存続への道を模索する方が、必要なのではないでしょうか。 ブラジルやインドネシアなどは停戦を呼びかけていますが、日本こそ、停戦の仲介に力を尽くすべきではないかと考えています。 世界有数の政治学者が徹底分析。終わらないウクライナ戦争――消耗戦を決める三要因【前編】 2023.06.21 https://youtu.be/d8-hZEiHRWk 幸福実現党党首 釈量子 ◆ウクライナの反転攻勢 ウクライナの反転攻勢が始まりました。 6月4日時点のウクライナ戦争の状況を地図に表した「戦争研究所の地図」をみると5月21日頃、ウクライナ戦争の激戦地バフムトが陥落し、ロシアの支配下になりました。 戦争研究所の戦況地図 https://storymaps.arcgis.com/stories/36a7f6a6f5a9448496de641cf64bd375 5月22日、ウクライナの兵士が国境を越えて、ロシア国内のベルゴルド州を襲撃しましたが、その後ロシア軍に鎮圧されています。 さらに6月4日頃、ウクライナ軍がバフムトやザポリージャ州の南部で反転攻勢を開始しましたが、6月6日には、ウクライナ東部のカホフカ水力発電所のダムが爆破されました。 ウクライナはロシアがやったと言っていますが、ロシア側にも塹壕が流され甚大な被害が出ましたので、欧米側も事故ではないかという報道も出ています。 ウクライナ軍の反転攻勢は、ロシアとクリミア半島を分断することを狙っており、ザポリージャ州南部のロシアの防衛線を突破して、マリウポリやベルジャンスクまで進軍することを目指しています。 ◆ロシアの野戦要塞を突破できないウクライナ軍 ウクライナ軍は7つの集落を奪還していますが、国境線に沿ってロシアが広範囲に渡って防衛線を展開しているため、ウクライナ軍は前線を突破できていません。 しかも、ロシア軍の攻撃によって西側が提供した戦車や兵器に大きな被害が出ています。 6月12日のCNNによると、米国はこれまで109台のブラッドレーをウクライナに提供してきましたが、そのうち15%が、ロシア軍によって破壊されたと報じています。 また、ゼレンスキー大統領は、「ゲームチェンジャー」になると話していた、フィンランドが供与した地雷を除去しながら、部隊を前線に安全に運ぶことができる戦車レオパルト2は、ロシア軍によって6台のうち3台が爆破されました。 6月13日、プーチン大統領は「欧米が提供した兵器の25~30%を失わせた」「ウクライナは戦車160両、装甲車360両以上を失ったが、ロシアが失った戦車は54両」「ロシアの損害はウクライナの10分の1」と指摘しました。 ゼレンスキー大統領にとっては、武器さえあれば反転攻勢が成功するということを示したいところですが、予定通りには進んでいません。 ◆ミアシャイマー氏の見解 戦況は今後も変化していくと思いますが、今後の戦況について、シカゴ大学のミアシャイマー教授の見解を紹介したいと思います。 日本では、昨年5月に「文藝春秋」に特集記事が掲載されたので、ご存知の方もいらっしゃると思います。 【1】 ロシアが戦争に勝利する ミアシャイマー教授は5月22日、「ウクライナ戦争は今後どうなるのか」という演題で講演し次のように言っています。 「ウクライナ戦争は、第一次世界大戦に似た「消耗戦」であり、消耗戦では、(1)決意、(2)人口、(3)弾薬量、の三つのバランスを見る必要がある。」 これらの点を総合すると、ミアシャイマー教授はロシアが戦争に勝利するだろうと見ています 「決意のバランスについては、ウクライナ軍は領土を奪還するために戦っている一方で、ロシア軍は特別軍事作戦の目的を果たすために戦っている。どちらも確固たる決意が備わっており、甲乙つけがたい。」 続いて、ミアシャイマー教授は次のように分析しています。 「人口のバランスについては、人口バランスで見ると、ウクライナ人1人に対してロシア人3.5人だったが、現時点でウクライナ人1人に対してロシア人5人になった。」 「弾薬量のバランスについては、おそらく、ロシア5:ウクライナ1、もしくは、ロシア10:ウクライナ1だろう。」 「ウクライナはすでに総力戦になっており、75歳の兵士も数多く参戦している。訓練も十分になされていない、が、ロシアは正規軍に加えて、新たに30万人を動員している。」 「バフムトの戦いでは、ウクライナの最高の部隊が追い出されたが、ロシア軍の本流にある正規軍はまだ本格的に投入されていない。(5月22日の講演当時)」 (後編につづく) 中国「スパイ摘発」強化。相次ぐ日本人拘束。中国の人質外交に警戒を!【後編】 2023.06.18 https://youtu.be/HKp9hlzAjVQ 幸福実現党党首 釈量子 ◆邦人拘束に対する対応 前編で、中国による邦人拘束を取り上げましたが、どうすべきでしょうか。 現実的な対応としては、日本企業も、中国の生産拠点を日本に戻す「国内回帰」を加速させるのが最良です。 これは以前から幸福実現党も訴えてきたことで、コスト面で難しい場合は、アジアにシフトすることも検討すべきと思います。 例えば、アップルは、中国依存を減らすために、数年前からiPhoneの生産拠点をインドに移しています。 今年4月には、アップルのiPhoneを受託生産している台湾のフォックスコンが、インド南部カルナタカ州で7億ドル(約950億円)を投資する新工場建設を発表しました。 アップルはインドの生産量を世界全体の25%まで増やす予定です。 ◆政治哲学に基づく正論を! 「反スパイ法」を機に企業も個人も中国リスクを考え、国としても、甘い考えを捨て、中国と根本的な違いを知って対処しなければなりません。 米国コンサルティング会社に中国警察の立ち入り検査があった際、中国の報道官は、次のように滔々と語りました。 「私たちは市場原理、法の支配、世界標準のビジネス環境を促進することに取り組んでいる。全ての企業は中国の法に従うべきである。」 しかし、中国の言う「法の支配」は、欧米とはまったく違います。欧米でいう「法の支配」は、「人の支配」に対置される考え方です。 17世紀前半、イギリスで国王と議会が対立していた時に、「王権であっても法によって制限される」という考え方が出てきました。 映画「ブレイブハート」でも、暴君として描かれるジェームズ一世が「王権神授説」を掲げて議会と対立しました。 王は演説で「王は地上において神にも類する権力を行使しているのだから、神と呼ばれてもよい」という現人神のような強硬な姿勢を取りました。 それに対し、エドワード・コークが「国王といえども神と法の下にある」という(ブラクトンの)法諺を引用して諫めたというのが残っています。 まずイギリスで、「国王と雖も一般的な慣習法として続いている法を尊重し、それに従うべきであるという「コモン・ローの理念」が出てきました。 その後、アメリカ独立戦争を経て、「憲法」によって国家権力を縛り、国民の財産や人権を守るようになりました。 このように「法の支配」は、英米法の中で発展してきたもので、個人の私的領域への国家権力の介入を排除し、個人の自由を保障する「自由権」を確立するのに、清教徒ピューリタンたちの努力があったことを忘れてはいけません。 彼らが神の子として信教の自由を確立するために立ち上がった結果、米国の独立宣言には「すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」と明記されるに至りました。 合衆国憲法には「いかなる国家権力であっても創造主から与えられた自由を侵すことはできない」という考え方が根底に流れています。 こうした観点を理解しないと、「法の支配」といっても形だけになってしまいます。 ◆中国がいう「法の支配」とは 中国がいう「法の支配」というのは、こうした基本的人権とは全く違う意味で使っています。 本質的には、始皇帝の時代の「法家思想」から変わらず、皇帝が性悪説に基づいて人民を統治するための道具だという考えは変わっていません。 中華人民共和国憲法の序章には「国家は中国共産党の指導(領導)を仰ぐ」と書かれ、習近平国家主席の意向が如何様にでも反映される独裁体制です。 都合の良い法律を制定し、人々を支配するための道具として「法」を利用しています。 習政権発足以降、ウイグルやチベット、香港における人権弾圧を正当化するために、幾つも法律を作り、法律によって、人権の中の人権と言われる信教の自由が侵害されてしまっています。 中国では、法律の運用も、非常に恣意的です。 これに関しては、自由の哲学で有名なハイエクが著書「隷属への道」の中で、こう言っています。 「法の支配とは、政府が行うすべての活動は、明確に決定され前もって公表されているルールに規制される、ということを意味する。」 つまり、本来の「法の支配」というのは、政府が個人の活動を場当たり的な行動によって圧殺することは防止するためのものであり、誰もが知っているルールの範囲内なら自由が守られ、政治権力が意図的にその活動を妨げるようなことはないことを意味するわけです。 今回の中国の「改正反スパイ法」などは「国家の安全と利益」の定義が曖昧で、当局はいつでもだれでも恣意的に拘束できるとなると、経済活動どころか、自由は根こそぎ奪われます。 当局の都合の良い理由で拘束されるなどという不条理は、耐え難いものです。 中国の言う「法の支配」とは名ばかりであることを、中国に進出している企業やビジネスパーソンは理解して、今後の行動を考えるべきです。 「法の支配」の成立過程を見てもわかるとおり、そのバックボーンにはキリスト教的精神がありますが、日本も、善悪や正義の根源にある宗教的精神をないがしろにしています。 幸福実現党は「正しさとは何か」を、神の心宗教や哲学の面から考えます。大川隆法党総裁は次にように指摘しています。 「『法の支配』といっても、『やはりそのもとには、法哲学がなければいけない。憲法の上に法哲学があって、法哲学や政治哲学の上に、やはり神の正義がある』と思っていて、その観点で、『正しさとは何か』ということをずっと考え続けていたので、『間違っているものは間違っている』」(小説「内面への道」余話) 自己中心的な政治指導者の国の、侵略主義に対処するには、政治哲学や政治思想が必要です。 日本の政治家も、確固たる政治哲学や信仰心を持って、中国に対して正論を言うべきではないでしょうか。 幸福実現党は「自由・民主・信仰」の普遍的価値観を掲げ、国防や外交を進めるべきだと考えていますし、中国の民主化を促すべく、人権擁護の働きかけも続けていきます。 中国「スパイ摘発」強化。相次ぐ日本人拘束。中国の人質外交に警戒を!【前編】 2023.06.17 https://youtu.be/HKp9hlzAjVQ 幸福実現党党首 釈量子 ◆反スパイ法改正、7月1日から施行 4月26日、中国は2014年に制定した「反スパイ法」を改正し、摘発対象を拡大し、今年7月1日から施行されます。 中国でビジネスをしている方は戦々恐々で、今後さらに神経をすり減らすことになりそうです。 2014年11月1日施行の従来の「反スパイ法」では、取り締まりの対象となるスパイ行為とは「国家機密」を提供することと定義していました。 今回の改正法では「国家の安全と利益に関わる文書、データ、資料、物品」を提供や窃取(盗み取ること)、買い集めにも広げました。 困るのは、「国家の安全と利益」とは何か、定義を明らかにしていないため、中国当局による恣意的な運用がなされる可能性があります。 米中が対立している半導体、先端技術は当然のこと、当局が「国家の利益」に関わると見なせば何でもありです。 また、「スパイ行為」の定義も拡大され、例えば、レアアースなど資源に関わる場所を「撮影」、政府や国有企業関係者の「接待」、台湾や香港、中国共産党等に関する「雑談」レベル、ウイグルやチベットに旅行し現地の人との「会話」もスパイ行為と見なされる可能性があります。 国家組織や重要な情報インフラに対するサイバー攻撃も含まれるようになりました。 また、国家安全を担う部署の権限も強まり、スパイ行為の疑いのある人の手荷物や電子機器を、強制的に調査ができるようにしました。 さらには、スパイ行為を発見した個人や組織に「通報義務」を課しました。 「いかなる公民・組織も、スパイ行為を発見した場合、速やかに国家安全機関に通報しなければならない」として、黙っていると罪になります。 逆に、反スパイ法に貢献した個人らは表彰されるということです。 ◆「密告」を奨励 思い起こすのは、中国で1966年から76年まで行われた「文化大革命」です。 政治闘争のなか、中国では友達や同僚、家族の間でお互いの監視と密告が数多く行われて、「自分の母親を密告したら2か月後に銃殺刑に処せられた」というようなこともありました。 習近平政権が「密告」を奨励して、学生が教授の講義内容を監視し、告発するケースもすでに起きています。 「反スパイ法」に伴い、当局は密告のための電話番号やメールを公開し、整備しています。企業内の会話や、知人との食事中の会話も監視され、通報される可能性はさらに高くなりました。 ◆外国企業の摘発 7月の改正法施行前に増えているのが、欧米の外国企業の摘発です。特にコンサルティング会社や調査会社の摘発が目立ちます。 「デューデリジェンス」(Due Diligence)と言われますが、投資を行うにあたっては、投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどを調べないといけません。 特に、中国に進出している外国企業は、相手先企業のバックグラウンドとして、財務面を確認するのは当然ですが、 例えば、ウイグルの強制労働によって作られた製品は米国の制裁対象になるため、取引先がウイグルの強制労働に関わっていないことを確認する必要があります。 企業にとってこれらの確認作業は大きな負担となっていましたが、今後さらに「反スパイ法」への対応が加わります。 そもそも中国政府は、ウイグルの人権問題を国家の利益に関わる情報だと見なしているため、外国企業のこのような調査・確認作業自体が「スパイ行為」と見なされる可能性もあります。 すでに外国企業は一段とこうしたリスクに直面しています。 3月、米国の信用調査会社ミンツ・グループの北京事務所で働く中国人が拘束。 4月、米国のコンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーの上海事務所で従業員が取り調べを受け、さらに 5月初め、米国のコンサルティング会社キャップビジョンの拠点を、スパイ行為で一斉調査しました。 報道によると同社は、外国企業を含む1000社以上の顧客を持つコンサルティング会社で、従業員が人民解放軍関係企業の人物と頻繁に接触し、専門家という名目で高額の報酬を渡して「重要なデータ」を取得していたとのことです。 中国当局は、米国が、コンサル会社を利用して機密情報を得ている、と見なして摘発を強化しています。 中国の言う「重要なデータ」とは、欧米諸国では、ごくありふれた民間データだったりします。 例えば、ある地域のコロナの死者数を調査するだけで、国家の安全に関わる情報を不正に入手しようとしたと見なされるかもしれません。 ◆相次ぐ邦人拘束 日本企業や日本人の拘束リスクも非常に高まっています。 中国に進出している日系企業の数は、3万2887拠点で第一位。二位のアメリカ8959拠点を大きく上回ります。 今年3月、アステラス製薬に務める50代の男性社員が、反スパイ法の疑いで拘束されました。 通常業務の一環として、政府関係者や業界関係者との交流を行っていたことが拘束の理由だと報じられています。 ただし、これは表面的な理由であって、日本が米国に足並みを揃えて、「半導体製造装置の輸出規制」を強化したことを受け、中国が「外交カード」として、日本人を拘束した可能性があると指摘されています。 昨年、釈放された鈴木英司さんは、スパイ容疑で6年3か月拘束されました。鈴木さんがスパイ容疑をかけられたのは、友人である中国政府の外交官と会食した際の何気ない会話です。 当時、日本ですでに報道されていた北朝鮮の張成沢氏の側近の処刑と本人の動向疑いについて「どうなのですか?」と聞いたら、相手は「知りません」と答えたということです。 これが罪だとされ、24時間監視付きの時計もない、テレビもない、太陽も見ることができない部屋に監禁されて取り調べを受け、有罪判決を受け、昨年22年10月、やっと帰国しています。 これまで、中国に拘束された邦人17名の中には、札幌市の男性のように日本の土を踏むことなく亡くなった方もいますし、今もなお、服役している方もいます。 残念ながら、各種の証言をみると、日本の外務省が釈放に向けて力を貸してくれることはあまり期待できないし、親中派の与党・公明党に近いと言っても、効果がないようです。 今後、「台湾有事」が起きれば、日本は日米同盟のもと中国と敵対関係になるので、中国駐在の日本人ビジネスマンは人質に取られたのも同然です。 (後編につづく) 世界大戦の新たな火種に。インドvs中国、ミャンマー離島にスパイ基地。【後編】 2023.06.15 https://youtu.be/2ewvekji7K4 幸福実現党党首 釈量子 ◆大ココ島が新たな火種に 前編で見てきたように、インドと中国の両国とも国境問題について譲歩するつもりはないため、いつ戦争が始まってもおかしくない状況です。 これに加えて、今問題になっているのは、中国の海洋進出がインド洋に迫り、中印紛争の新たな火種になりつつあるという話です。 インド洋のベンガル湾にミャンマーが領有している大ココ島があります。 今年3月末、英国のシンクタンクが「中国がこの島にスパイ基地を建設している」というレポートを発表しました。 衛星写真を見ると、滑走路がハッキリと写っています。以前は1300メートルしかなかったそうですが、現在2300メートルまで伸びています。レーダー基地もあります。 滑走路に隣接される形で、二つの航空機の格納庫が写っています。 英国のシンクタンクの分析によれば、ミャンマーは中国と連携しており、中国は大ココ島を海洋監視の拠点として利用し、将来的に空軍基地にする可能性があるため、インドの大きな脅威になるだろう、ということです。 大ココ島からわずか55キロメートルの場所には、インドの海洋戦略上、重要な基地があるアンダマン・ニコバル諸島があります。 もしインドと中国が対立した場合、インドはアンダマン・ニコバル諸島を利用して、中国の商船を規制し、中東から原油を輸入するルートを封鎖することができます。 中国はこうした事態を想定し、「中国・ミャンマー経済回廊」を建設し、陸路で原油を輸入できるように対策しています。 この構想は、雲南省の昆明とミャンマー最大都市ヤンゴンやベンガル湾に面するチャオピュー約1700 kmの区間を高速道路と鉄道で結ぶものです。 ウクライナ戦争の陰で中国は着々と、東シナ海、南シナ海、そして、インド洋まで覇権を広げようとしています。 中国は、原油の確保を確実なものにするために、ミャンマーに経済回廊をつくり、大ココ島に軍事基地を構えようとしており、大ココ島が中印戦争の新たな火種になりつつあるのです。 中印対立は世界大戦の火種と言われており、中東から原油を大量に輸入している日本にとっても他人事では済みません。 ◆インドとの友好関係の促進を このように、インドは経済発展のポテンシャルを持ちながらも、常に中国の脅威に曝されています。 だからこそ、インドは中国を牽制するためにロシアとの関係を維持しています。 インドが置かれた安全保障上の環境は日本も似ています。 しかし、インドがすでに核保有国であることを考えると、日本は憲法9条を改正することもできず、自衛のための核保有の議論すら始めることが出来ないのは情けないと言わざるを得ません。 さらに、外交面では、まるでNATOの一員だと錯覚しているかのように、ウクライナ戦争に積極的に協力し、ロシアと敵対関係になりました。 その結果、中国と北朝鮮、ロシアの核保有三カ国と対峙するという、戦後最大の国防上の危機を迎えています。 インドは英国の植民地だったこともあり、欧米諸国の傲慢さを肌身で感じています。 だからこそ、インドの外交方針は欧米諸国に巻き込まれないための中立だったのです。 一方で、グローバルサウスと呼ばれる国々の声を代表していると言う自負もあります。 日本はそうしたインドの立場を理解しうる立場にあるとともに、仏教的精神を共有する国です。 日本は精神的にも、経済的にも、軍事的にも、インドとの関係を深め、アジアの国々をリードすべきだと思います。 日印関係の更なる強化を目指すことが、中国の覇権を抑止し、アジアの平和、そして、世界の平和につながると考えます。 世界大戦の新たな火種に。インドvs中国、ミャンマー離島にスパイ基地。【前編】 2023.06.14 https://youtu.be/2ewvekji7K4 幸福実現党党首 釈量子 ◆存在感を増すインド ここにきて、インドが存在感を増しています。日本の将来を考えれば、インドとの関係強化は避けられないと思います。 今回は、インドの存在感が高まった背景を見ながら、第三次世界大戦の火種の一つ、中印対立に注目したいと思います。 (1)インドの人口が世界一に 先月、インドの人口は14億2860万人を超え、中国を抜いて世界一になりました。中国は1750年以降、ずっと世界一の人口でしたが、インドに抜かれました。 インドの人口は今後も増え続け、2050年までに16億6800万人に達すると言われています。 ちなみに、中国の人口はすでに縮小段階に入っており、2050年までに約13億1700万人に減る見込みです。 しかも、インドは人口の半分が30歳未満という若い国です。30年前の中国に似ていると思いますが、若い労働力がどんどん供給されるため、経済成長は間違いと思います。 インドのGDPはすでに英国を抜いて世界5位ですが、いずれ上に上がるでしょう。 【参考】2022年GDPランキング上位5カ国 1位(米国)2位(中国)3位(日本)4位(ドイツ)5位(インド) (2)世界の工場はインドへ インドにとってさらに追い風であることは、米中対立のもとで企業の「脱中国」が進んでいることです。 アップルはすでに生産拠点をインドにシフトしており、2025年までにiPhone生産の25%をインドで行う予定です。 インドでのiPhoneの販売も増えており、今後、生産拠点だけではなく、市場としての魅力も増していくのではないかと思います。 中国共産党の一党独裁が続く以上、世界の工場が中国からインドにシフトしていく流れは止められないのではないでしょうか。 日本企業の本格的なインド進出が始まることを期待したいと思います。 また、報道によると、インドが輸入する原油に占めるロシア産原油の割合は、2021年には2%だったが、2022年にはほぼ20%に達し、10倍に増えました。 その結果、インドは昨年の会計年度で約50億ドル(約6700億円)を節約することができました。 安いエネルギーを輸入できることは、インドが工業国家へと押し上げることにつながると思います。 (3)ウクライナ戦争のキャスティングボード 経済面だけではなく、外交面でもインドの存在感が増しています。 ウクライナ戦争では米国とロシア、中国の対立が激化するなか、インドは中立の立場を保っています。 このことが、インドの存在感を高めています。インドがどちらの側につくかで世界の方向性が決まるという、キャスティングボードを握っています。 G7広島サミットでは、グローバルサウスの代表国としてインドも招待され、6月にはバイデン大統領がモディ首相を国賓として招待します。 こうした事実がインドの存在感が高まっていることを物語っています。 ◆カシミール地方を巡る中印の衝突 しかし、インドにとって悩みの種は、中国の存在です。 最近、インドは中国やパキスタンとの係争地になっているカシミール地方でG20の会合を開催しました。 これに対して、中国はG20の会合をボイコットして反対しました。 カシミール地方を巡っては、中印両軍はこれまでも衝突を繰り返しています。2020年には中印両軍が衝突し、少なくとも24名が死亡しました。 今年3月、インド陸軍のマノジ・パンデ参謀長は、次のように述べています。 「中国政府は年を追うごとにかなりの部隊増強をしており、実効支配線(LAC)沿いで飛行場や兵舎など軍事インフラを整備している。中国という全体主義国家は、多方面からの戦略を用いてアメリカを追い落とし、世界に君臨する超大国になろうとしている。」 インドは北部国境沿いにおいて、軍事インフラの整備も強化し、カシミール地方の東部にあたるラダックに通じるトンネルを建設しています。 この地域はヒマラヤ山脈で、冬場は氷点下40度になるそうです。トンネルの長さは8.8キロで、アジア最大規模と言われています。 現在、トンネルが一部開通し、ラダッカに物資を送れる状況にあり、今後、全面開通すれば、インド軍の兵士を大量に移送できるようになります。 インドはウクライナ戦争を教訓に「戦争が起きれば数年単位の戦争になる」と見て準備を進めています。 (後編につづく) マスコミが報じないウクライナ戦争。ウ軍の反撃は成功するのか?【後編】 2023.06.11 https://youtu.be/t9CJXxydZHE 幸福実現党党首 釈量子 ◆一か月で1万機撃墜されたウクライナのドローン 前編で紹介したイギリスの英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のレポートの中で注目すべきは、ロシアの電子戦システム(EW:Electric Warfare)は圧倒的優位を保っており、ウクライナの無人機(UAV:unmanned aerial vehicles)、いわゆるドローンを徹底的に破壊している、ということです。 ロシアは、戦闘を行っている前線では10キロメートル毎に配備し、1か月に1万機に上るウクライナの無人機を撃墜しており、驚くべき数字です。 このようにロシアの電子戦はかなり強力で、ウクライナが前線を突破するには、こうした電子戦にも勝利しなくてはなりません。 ただ、ウクライナのドローン攻撃は、ロシア領内の、中枢部を狙い始めています。 5月3日、ロシア大統領府があるクレムリンが狙われたのに続き、5月30日、モスクワ市内へのドローン攻撃があり、モスクワ南西部の2つのアパートが被害を受けました。 攻撃には10機以上のドローンが使われ、ドローンはモスクワ郊外から飛ばされたなどという説もあります。 ◆ウクライナ軍の失地回復はあるのか 間もなくウクライナの反撃が始まると報道されていますが、そう簡単に失地回復がなされると考えるのは、希望的観測の域を出ないといえそうです。 実際、アメリカの政府機関から流出した極秘文書では、ウクライナの戦力が著しく不足しているので、反攻作戦は中途半端でささやかな領土しか回復できないのではないかと疑っており、バイデン政権の公式見解とはだいぶ違っています。 例えば、元陸軍大佐で、元国防総省顧問だったマクレガー氏は保守系メディアの寄稿文の中でバフムトの戦いについて、次のように語っています。 「ゼレンスキー大統領はバフムトの戦いをロシア軍への抵抗を示す象徴的な戦いとして重要視していたが、ロシアはウクライナの戦力を削ぐための機会として利用した」 実際にバフムトの戦いでは、ウクライナの反撃が成功したとの報道が数多くありましたが、ウクライナ軍の戦死者は5万人に上ったと言われています。 日本のマスコミ報道は、ゼレンスキー大統領の言葉通りに「武器さえ支援すれば、ウクライナが勝利する」という楽観的なメッセージばかりを発信しています。 しかし、戦線は膠着しており、双方の犠牲者が増えるばかりです。 プーチン大統領としては、兄弟国であり、ロシア正教の聖地でもあるウクライナに核を落とそうとは思っていないと思います。 しかし、今後、欧米がウクライナを引き続き強力に支援し、ロシアの心臓部を狙ったり、クリミアなどのロシアにとって死活的に重要な地域を奪還すれば、「核兵器」の引き金を引かねないことを、多くの専門家が懸念しています。 ◆日本はウクライナ戦争の仲介役を! 大川隆法総裁は、戦争が始まった直後に「中立化しか解決はない」と、世界に先駆けて断言し、巨大な霊能力で、各国の指導者の潜在意識にアクセスし、その本心を読み取っています。 『ウクライナ発世界経済とアジアの危機』の「あとがき」で、次のように述べています。 「ゼレンスキー氏は、究極の事態を予想せず、『撤退戦』を知らない。政治家の資質をどうはかるかは難しいが、国を亡ぼす大統領は最悪である。」 本来、戦争の調停役を果たすべき米国のバイデン大統領はロシア憎しで、ウクライナで代理戦争を行っていることが、世界にとっても大きな問題です。 アメリカは米大統領次第では、アフガニスタンのように、最終的にウクライナ支援を打ち切る可能性もあります。 こうしている間に、中国問題は置き去りにされ、北朝鮮もミサイルを連射するなど、中国、ロシア、北朝鮮の核保有国に囲まれた日本の安全保障環境は、危うい状況になっています。 こうした状況のなか、本来であれば、NATOに入っていない「日本」が、ウクライナとロシアの仲介役を担うべきではないでしょうか。 一日も早い停戦と、平和の実現を願いたいと思います。 マスコミが報じないウクライナ戦争。ウ軍の反撃は成功するのか?【前編】 2023.06.10 https://youtu.be/t9CJXxydZHE 幸福実現党党首 釈量子 ◆マスコミが報じないウクライナ戦争 ウクライナ戦争が始まってから1年3ヵ月が経ちました。 日本のマスコミ報道を見ると、「西側諸国がウクライナの支援をしっかり行えば、ロシアへの反撃は成功し、ロシアの支配地域を今度こそ奪還できる」という内容がほとんどかと思います。 両軍が重要視していた、東部バフムトの戦いでも、「ウクライナがロシアの支配地域を一部奪還」という報道が繰り返し行われました。 結局どうなったかと言えば、広島サミットの最中に陥落し、今はロシアがバフムトの全域を支配しています。 戦争は情報戦の面もあるので、日本はウクライナ側に立っているから仕方がないという意見もあるかもしれません。 しかし一方的な偏向報道ばかりというのは、問題です。戦況の見通し次第で、国の立ち位置や停戦のあり方も変わってくると思うからです。 そこで、今回はウクライナ戦争に関して、報道とは違った見方を紹介したいと思います。 ◆ウクライナの砲弾不足 今年2月17日、CNNで、「ウクライナは米国やNATOの製造能力以上に砲弾を使い果たしている」という衝撃の内容が報道されました。 「ウクライナは米国やNATOの製造能力以上に弾薬を使い果たしている」(CNN) https://edition.cnn.com/2023/02/17/politics/us-weapons-factories-ukraine-ammunition/index.html 同報道では、「アメリカ・ペンシルバニア州のスクラントンにある兵器工場を取り上げ、一か月に11000発の砲弾を製造しているが、ウクライナはわずか2日か3日で使い果たしてしまう」と紹介しています。 兵器があっても弾が無ければ使えません。「ウクライナの弾薬不足がボトルネックだ」ということは、4月上旬にリークされ、米軍および情報機関の極秘文書でも裏付けられました。 文書には、ウクライナの防空ミサイルが不足しているので、ロシアが制空権を獲得する可能性があると書かれていました。 ウクライナは、ソ連時代のS-300とBuk air defenseの防空ミサイルを主に使用しています。 このミサイルの在庫が5月までに完全に無くなると予測されたほどであり、アメリカがパトリオットを送るなどして、何とか防空体制を維持しているのではないか、と考えられます。 ゼレンスキー大統領はウクライナの制空権を守るためにF16戦闘機がほしい、弾薬が足りないと繰り返し訴えていました。 こうした事実が明らかになってみると、日本のマスコミ報道では、ロシアが制裁を受けて間もなく弾薬が不足すると言い続けていたのは本当だったのだろうかと思います。 ロシアは、ウクライナの重要インフラなどへのドローンやミサイル攻撃を強化することで、ウクライナの迎撃用ミサイルを消耗させて、実質的に、ウクライナの防空能力を無力化している可能性が高いです。 ◆壮絶な戦場 日本ではウクライナがロシアにドローン攻撃をしかけたことしか報道されません。 5月19日、イギリスの英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)というシンクタンクの軍事専門家が、ロシアの軍事作戦に関するレポートを発表しました。 Meatgrinder:Russian Tactics in the Second Year of its Invasion of Ukraine 標題のMeatgrinderとはソーセージやハムを作るときに使う「肉挽き器」のことです。 ワグネルの創設者プリゴジン氏は、ウクライナ東部のバフムトで、ワグネル部隊の約2万人が戦死したと明かし、一方、ウクライナの戦死者は5万人と話しました。 どこまで正確かはわかりませんが、「肉挽き機」とはこうした壮絶な状況を表した表現だと思います。 (後編につづく) すべてを表示する 1 2 Next »