Home/ 油井哲史 油井哲史 執筆者:油井哲史 幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生 国家管理型の農政から脱却し、攻めの農業で市場開拓を! 2016.10.04 幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生 油井哲史(ゆい てつし) ◆農家の「収入保険制度」に向けた議論を開始 政府・与党は、環太平洋連携協定(TPP)対策の一環として、農家向けの「収入保険制度」に関する議論を開始しました。TPPが発効すれば、安い輸入農産物に押されて農産品の値下がりが懸念されます。 価格下落に伴う農家の収入減少を保険で補う仕組みの検討を進め、2017年の通常国会に関連法案を提出します。 農林水産省が示した収入保険制度は、年収が過去5年間の平均より1割以上、下回った場合、下回った分の9割を保険金などで補償するものです。 現在、自然災害による収穫量の減少に伴う農家の補償制度は存在しますが、今回の特徴として自然災害に加えて市況の変動による値下がりで収入が減った場合も対象としています。 ◆国家管理型の農政が農業衰退の原因 このような農家を保護する政策は、日本の農業を弱らせ、政府が掲げる「攻めの農業」に逆行する選択です。これまでの国家管理型の農業政策が日本農業の衰退を招いてきました。 国家主導の保護政策として輸入調整措置が行われています。TPPでも農林水産物の多くの関税が撤廃に向け合意されましたが、国内への影響が大きい5項目(コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の原料)では594品目のうち71%に当たる424品目が関税撤廃の対象外として守られました。 例えば、日本の農業を代表するコメについては、キログラムあたりの関税は341円で、国産米価の200円をはるかに上回っています。関税を通して、安いコメの流入を阻止し、農家を守っています。 また、減反政策を通して、日本のコメの生産量は国家に管理されています。 国がコメの供給量を決めて、都道府県へ生産数量を配分し、各農家に作付面積を割り当てます。この制度に従うと農家は様々なメリットが得られ、補助金も支給されます。自由競争を避けて、生産調整を通じてコメの価格をコントロールしており、市場原理が働いていません。 さらに、構造政策として農地法により、農業への新規参入を阻み、農家を守ってきました。 農地はその耕作者自らが所有することが最適であるという自作農主義の理念に立脚し、耕作者の地位の安定と農業生産力の増進を図ることを目的として、農地の所有や利用関係の仕組みを定めました。 これが農地の流動性を著しく妨げ、農業の世襲制度を固定化させました。1952年に制定され、その後、規制緩和の流れを受け、2000年に改正農地法が成立。一定の条件で株式会社の農業参加の道は開いたが、多くの規制がいまだに残っています。 国家管理の農政は、非効率な農業を招き、農業を衰退させました。 農業経営体の耕地面積でみると1ヘクタール未満の農業経営体は93万体で全体の56%です。 さらに、規模も小さいために年間の販売金額が100万円にも満たない経営体が全体の59%にも及んでいます(農林水産省/2010年農林業センサスより)。農業従事者の減少と高齢化も深刻な問題です。 ◆守りの農業で日本は低輸出国に 国家主導の日本農業は、世界の潮流とは違う選択をして、「攻め」と「守り」の判断を誤り、国益を損ねてきました。 1970年前後、先進国は農産物過剰の問題に直面していました。 肥料の投入や農業機械の導入によって生産技術が向上し、日本国内ではコメの生産性が飛躍的に伸びるとともに、食事の欧風化によってコメ離れが進んでいきました。 本格的にコメの生産調整(減反)を始めたのも、この頃です。世界はそれらの問題に対し、開発途上国への援助や輸出を進め、市場開拓という判断をしました。 日本は「余ったら生産調整」、先進国は「余ったら市場開拓」。この結果は農産物輸出量としてはっきり表れており、現在、先進国の多くは輸出大国となり、日本は世界57位の低輸出国です。 ◆国家管理型の農政からの転換を 日本の農業は時代の変化の中で大きな岐路にあります。 衰退の一途をたどる一方で、農業をビジネスとして捉えて「攻めの農業」を牽引している農業経営者は増加しています。 彼らは国の保護に頼らずに、農業を流通やサービス業にまでビジネスの幅を広げて、未来の農業モデルを示しています。 国家は、これまでの管理型の農政ではなく、農業経営者とともに新しい農業政策のあり方を提示するべきです。そのために農業の自由性を阻む要因を取り除いていくことです。 減反の廃止や農業への参入障壁の撤廃、農業振興を目指す農協改革を通して、魅力あふれる日本の農業を構築していくことが求められています。 尖閣諸島を守るため、日本はリーダーシップを発揮せよ! 2016.08.09 文/幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生 油井哲史(ゆい てつし) ◆中国船の尖閣海域航行、新局面へ 中国海警局の公船6隻が8月6日午前、尖閣諸島周辺の接続海域を運行しました。公船周辺では中国漁船約230隻が操業しています。 同日午後には公船1隻が加わり、公船7隻が同時に接続水域に入ることは異例であり、中国漁船の一部も接続水域内に入りました。 これを受け、外務省は在日中国大使館の公使へ2度にわたり、公船の即時退去を求め、厳重に抗議しました。 7日には、中国の公船が午前に2隻、午後には計5隻が領海に侵入(朝日8/8)、過去最多13隻の公船が接族水域を航行し、その周りには400隻の漁船が航行していたとの情報もあります。(読売8/8) さらに8日には、15隻の中国公船が接続水域を航行し、うち3隻が領海に侵入、公船のうち6隻は「武器のようなものを搭載している」と稲田防衛相は述べています。 公船の領海侵入に対する中国への抗議は、結局4日連続となり、中国船の尖閣海域航行は、新局面を迎えています。 ◆中国が狙う尖閣諸島の占拠 近頃、尖閣諸島をめぐる中国の圧力がますます強まっています。6月上旬には尖閣諸島周辺の接続水域で初めて中国軍艦の航海が確認されました。 さらに、6月中旬には中国海軍の情報収集艦が鹿児島県の口永良部島近くの日本領海に進入し、翌日にも情報収集艦が沖縄県の北大東島の接続水域に侵入しました。 軍艦が登場したことにより完全にステージが上がっています。 危惧されるのは尖閣接続水域航行の常態化です。次に軍艦が領海侵犯し、知らないうちに尖閣諸島が占拠されるという事態です。 中国のねらいは、その実現に向け、確実に計画を遂行しています。まさに予断を許さない状態が続いているのです。 日本側がいくら抗議してもこの流れが収まる気配はありません。日本の国防は待ったなしです。中国の暴走を食い止めるためには、日本が「毅然とした対応」を取り、見える形で行動を示していかねばなりません。 ◆日本が尖閣諸島を守るために必要なこと いま尖閣諸島の周辺に海上自衛隊の艦船を2隻配備しており、日本の海を侵犯しないように監視活動を続けていますが、この監視と抑止の構えをしっかりと維持し、強化することが求められます。 そのために同じ価値観を共有する国々が連携し、対応していくことが必要であり、他国の海軍との共同パトロールが考えられます。 日米韓、日米豪、日米印、さらにはアジアの国々とも連携し、共同監視活動を行うことで断固たる態度を示すことです。共同「行動」を通して、一体化した「力」を見せつけるのです。 さらには、海上警備行動を事前に伝達し、抑止力を強化させることです。 海上警備行動とは防衛大臣が海上における人命や財産の保護、または治安の維持のため特別に必要があると判断した場合に命ぜられる、自衛隊の部隊による海上における必要な行動をいいます。 これによって、自衛隊の艦艇はさまざまな制約があるものの「武器の使用」ができるようになり、不正な侵害への対処行動になります。 ◆日本は「平和のリーダーシップ」を発揮せよ 近年、東シナ海や南シナ海で膨張しようとする中国に対し、アジア諸国における警戒感が非常に高まっています。中国を抑止するためにアジアの国々は、日本に大きな期待を寄せています。 同盟国のアメリカは、一国平和主義が強まる傾向にあり、内向きの時代に入っています。これまでのような全面的に頼れる相手ではなくなっています。 日本が自分たちの平和を守るための自覚を強め、アジアのリーダーとして「平和のリーダーシップ」を発揮しなければなりません。 自由と民主主義、国際法の遵守といった共通の価値観を共有し連帯を強めることで、多くのアジアの国々と手を携えて、中国包囲網を形成することが重要です。 日本は、アジア諸国を牽引していくという使命を担っていくべきです。 日本国憲法はGHQによるコピペ?――日本人の手で憲法をつくり直そう! 2016.05.03 文/幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生 油井哲史(ゆい てつし) ◆日本国憲法に盗用・転用の疑惑? 2020年東京五輪・パラリンピックの新エンブレムが決まりました。 当初のエンブレムは海外のデザイナーが手がけたロゴに酷似しているとの指摘が相次ぎ、盗用や転用が疑われて使用中止となっていました。 そして、再選考を経て、デザイナーの野老朝雄氏による「組市松紋」が選定されました。 話は変わりますが、もし日本の国家形態、統治組織、統治作用を規定している日本国憲法に盗用・転用があるとしたら、どうでしょうか? ◆日本国憲法の前文は歴史的な文書の壮大なコピペ(盗用) 駒沢大学名誉教授西修氏の指摘によれば、日本国憲法の前文は、「歴史的な文書の壮大なコピペ(盗用)である」といいます。 アメリカ合衆国憲法、テヘラン宣言(米英ソ首脳がテヘランで開いた会談で発表された宣言)、大西洋憲章(米英首脳により発せられた共同宣言)と日本国憲法を比較すると、その中で「自由のもたらす恵沢」「専制と隷従、圧迫と偏狭」「恐怖と欠乏から免かれ」などまったく同一の英文が見られます。 その理由は2つあります。 1つは、日本国憲法の原案の作成期間が1週間程度と、とても短期間であったからです。 国の最高法規である憲法を1週間ほどで作成することは非常に困難です。よって、手元にある文書の中から文章をつぎはぎすることとなりました。 2つ目として、前文については、折衝過程において、日本側とほとんど議論されなかったからです。 連合国軍総司令部から憲法案が出され、日本側で天皇の地位や権能、人権、国会の構成など激論を交わしましたが、前文は総司令部の案がそのままの文面で復活しました。 その後は表現が微調整されただけで、詰めた議論がなされたとは言いがたいのです。 憲法の前文は、憲法全体のエッセンスを凝縮し、理念を発信する意義と役割を担っています。 つまり、国家像や国家と国民の関係をわかりやすく説明し、そのメッセージを世界に対しても発信する役割を有しているものです。 だからこそ、日本はどのような歴史や文化によって成り立ってきたのか、そしてどのような国を築いていこうとするのか、日本国、日本人としてのオリジナリティーやアイデンティティーを打ち出していかねばなりません。 それが欠如しているのが、日本国憲法の最大かつ本質的な欠陥です。日本国民の手で、憲法をつくり直し、日本を真に平和と繁栄の国にしなければなりません。 ◆安倍首相の憲法改正は本心か? 産経新聞とFNNの合同調査で、憲法改正を夏の参院選の争点ととらえる人が多数を占めていることがわかりました。 憲法改正議論に関心 改憲勢力、非改憲勢力問わず(4/26 産経 電子版) http://www.sankei.com/politics/news/160425/plt1604250062-n1.html しかし、衆院憲法審査会は昨年9月以来、開かれておらず、与党は今国会中も開催しない方針です。これでは憲法改正論議が深まるとはいえません。 今年3月、安倍首相は憲法改正について「私の在任中に成し遂げたいと考えている」と述べました。これは本心から語ったことでしょうか・・・?議論を避ける与野党の姿勢と有権者との意識に溝ができています。 ◆今こそ、日本人の手で憲法をつくるとき! 核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮や、南シナ海にミサイル基地をつくっている中国を見ても日本を取り巻く安全保障環境は悪化しています。 憲法は国の最高法規ですが、国民を犠牲にしてまで残さなければいけないものではありません。 今の憲法自体が憲法違反です。憲法9条を素直に読むと、紛争解決のための戦力を持てないことになり、主権者である国民が防衛をしようとしてもできないことになります。 憲法の根本原則である「国民主権」に反します。さらに、安全保障環境が脅かされているのに、対抗手段がない状態では、憲法13条にある、幸福を目指して生きる日本人の権利(幸福追求権)も守られません。 国民の主権を守るためにも、国際標準の防衛力を持つ必要があります。 今こそ日本人自らの手で、矛盾のない新たなる憲法をつくることを真剣に考えていかなければなりません。 原発停止は、日本に危機を及ぼす―経済成長とエネルギー安全保障を支える政策を! 2016.03.22 文/幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生 油井哲史(ゆい てつし) ◆高浜原発運転差し止めの仮処分を大津地裁が決定 大津地裁は9日、滋賀県の住民29人が福井県の関西電力高浜原子力発電所3、4号機の運転差し止めを求めた仮処分申請で、差し止めを命じる決定を出しました。 関西電力は大津地裁の決定を受けて、原発の運転を停止。運転差し止めの理由として、重大事故や津波の対策、事故時の避難計画の策定などについて、「関電側が主張や説明を尽くしていない」ということをあげています。 関西電力は14日、「当社の主張や立証を客観的に検討して判断したとは考えられない不当な決定だ。極めて遺憾であり、到底承服できない」として、大津地裁に異議を申し立てました。 ◆現場では不満と戸惑い、国民は半数以上が「支持しない」 大津地裁の判断を受けて、現地の行政や経済界からは不満と戸惑いの声が上がっています。 福井県の西川知事は、「(原発が)何度も止まったり動いたりする状況を繰り返すのは遺憾」とし、高浜原発のある高浜町の野瀬町長は「地裁ごとに判断がばらつき、立地自治体として翻弄されるというか、もてあそばれているような状況にある。」と不満を表明しました。 関西経済連合会の角副会長は「なぜ一地裁の裁判長によって国のエネルギー政策に支障を及ぼすことが起こるのか。可及的速やかに法律改正せねばならない」と持論を述べました。 なお、日本経済新聞社のWEB調査(クイックVote)によると、原発を止めた大津地裁の決定を「支持しない」が60%を占めています。 原発止めた地裁決定「支持しない」60% (3/17日経 電子版) http://www.nikkei.com/article/DGXMZO98497020W6A310C1000000/ ◆原発停止は日本に危機を及ぼす選択 これまで高度な専門性が求められる原発の安全性の判断は、「行政側の合理的な判断に委ねられる」とし、司法は抑制的であるべきだとする判例が踏襲されてきましたが、それを逸脱しています。 さらに、今回の決定は大局的に見て日本に危機を及ぼす選択です。 ◆エネルギー安全保障は外交の重要な課題 日本のエネルギー自給率はわずか6%です。国際問題などの外的環境の変化や経済的なコスト面、供給の安定性から考えて原発再稼働は現実的な選択です。 【参考】平成25年度エネルギー⽩書概要(平成26年6月『資源エネルギー庁』) 「我が国の一次エネルギー自給率は、震災前(2010年:19.9%)に比べて大幅に低下し、2012年時点で6.0%。これは、OECD34か国中、2番目に艇い水準」 http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2014gaiyou/whitepaper2014pdf_h25_nenji.pdf 日本の発電の大部分は火力発電ですが、原料となる原油は8割以上が政情不安定な中東からの輸入です。そのため、今後の国際情勢の悪化で、原油価格の高騰や原油の供給が滞る恐れがあります。 また、日本への原油輸送ルートは中国の軍事基地建設で揉める南シナ海を通るため、もしその海上輸送ルート(シーレーン)が封鎖されれば、供給路が断たれ、原料が入ってこなくなるというリスクを抱えます。 資源、エネルギーなど海外依存度の高い日本にとって、海上交通路の安全確保は安全保障上の重要な要です。 エネルギー供給の危機に瀕した例としては、1970年代のオイルショックがあります。中東情勢の悪化によって、原油価格が高騰し、経済的混乱が起こり、トイレットペーパーや洗剤などの買い占め騒動がありました。 このままでは、同じような混乱が起こる恐れがあります。オイルショックの反省から海外からの石油燃料に対する依存度を低減するために、自国でエネルギーを安定的にまかなえる原子力が国家のエネルギー戦略として推進されてきた経緯があります。 ◆原発停止による日本経済への破壊力 原発停止に伴う日本経済への打撃も問題です。 火力発電にまかなう燃料費の増加は、2014年度で約3.4兆円。1日あたり90億円以上の国富が海外に流出しています。そして電力料金は、家庭用が約25%、産業用が約40%上昇しています。 【参考】エネルギーコストの状況 『資源エネルギー庁』 http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2015html/1-3-1.html 関西電力は、高浜原発3、4号機が再稼働すれば、電気料金の値下げを表明していましたが、運転差し止め命令を受け、値下げを見送ることを明らかにしました。 関西経済連合会の大竹副会長は、「各企業の節電施策はほぼ出尽くしたところで期待していた値下げ長くなり、企業が持ちこたえるには苦しい局面だ」と現状を述べました。 ◆求めるのはゼロリスクではなく、合理的な着地点 さらに問題なのは、原発にゼロリスクを求める姿勢がみられるということです。 原発事故を受け、その反省や国内外からの指摘を踏まえて世界最高水準の安全レベルを目指した新規制基準を定めましたが、大津地裁の判決は、規制委員会の策定手法に対して「非常に不安を覚える」と独自の見解を示しました。 絶対的な安全を求めて原発の再稼働を許さないのであれば、墜落する可能性がある飛行機は飛んではならず、事故を起こす可能性のある自動車を運転してはならないということになります。 最高水準の安全を求めながらも、どこに合理的な着地点を求めるかという姿勢が必要です。 安価で安定的な電力供給を確保し、日本の経済成長とエネルギー安全保障を支える政策という立脚点に立って、この国の未来をしっかりと見据えた判断を求めるものです。 日本は拉致問題を国際問題として提起し、国際世論を喚起せよ! 2016.01.26 文/幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生 油井哲史(ゆい てつし) ◆拉致問題と核問題をともに解決するために 1月6日、北朝鮮は突如、核実験を行い、世界を騒がせました。世界各国の首脳は、一斉に非難声明を発表し、国連安全保障理事会で制裁決議案の作成を進めています。 今回の核実験を受けて、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会全国協議会)が政府に向けて緊急声明を出しました。 拉致問題と核問題をともに解決するために北朝鮮へ更なる圧力をかけるように求めています。 ◆全く進展がない日本人拉致問題 2002年、当時の小泉元首相が北朝鮮の平壌を訪問し、国防委員会委員長・金正日と日朝首脳会談を行い、北朝鮮は日本人を拉致したことを認めました。 そして、5人の拉致被害者が帰国しましたが、その後、進展がありません。現在、17名が政府によって拉致被害者として認定されていますが、救う会によると100名以上が拉致されていると想定されています。 2014年5月、北朝鮮と拉致被害者を含むすべての日本人を対象に全面的な調査を行うことを約束したストックホルム合意をしましたが、拉致問題解決に向けて動き出す気配は見られません。 逆に北朝鮮は、2014年12月に国連総会で採決された「北朝鮮人権非難決議」や朝鮮総連のビル売却に関わる「朝鮮総連問題」を上げて、「拉致を解決する意志がないのは日本当局である」と強く反発しています。 人さらいという国家的犯罪を行い、さらには核実験を行い、野放し状態になっている北朝鮮。その悪の拡散を押しとどめなければなりません。 これまで繰り返されてきた北朝鮮の悪行と制裁、北朝鮮の歩み寄りと制裁の緩和。今こそ、この連鎖を断ち切るべきです。 ◆拉致問題をどのように解決に導くか 拉致問題解決の条件には2つの方向性があります。(1)世論を背景に政府が全被害者を救うこと。(2)制裁と国際連携の圧力で北朝鮮を困らせ、日本に接近せざるを得ない状況をつくることです。 第一の世論を背景にするには、北朝鮮による拉致問題を国際的な問題として喚起をすることです。 北朝鮮による拉致被害者は日本のみならず、韓国では8万人以上、EU諸国(フランス人、イタリア人、オランダ人、ルーマニア人)には9名の拉致被害者がいます。 さらに、アメリカにおいても拉致の疑いが濃厚な人もいます。北朝鮮の拉致問題を国際問題として取り上げ、諸外国への広報活動を通じて国際世論を喚起することが北朝鮮へ強い圧力となります。 第二の制裁と国際連携の圧力に関しては、北朝鮮制裁に関して日本政府として、自民党拉致問題対策本部が昨年6月にまとめた提言を参考に検討を進める考えを示しています。 この内容は人的往来、送金や現金の持ち出し、交通や貿易に対する制裁の強化など13の具体策から成ります。 この内容は評価できるので、それを効果的に実行させるため、体制を整えることです。 国際連携として米国との協力が必要不可欠ですが、オバマ大統領は今月12日、任期最後の一般教書演説を行いましたが「北朝鮮」を名指ししての具体的な言及はありませんでした。 拉致や人権に関して問題意識を共有し、2008年に解除した北朝鮮への「テロ支援国家」の再指定へ働きかけを強化していくべきです。 国民の生命、財産、自由を守るという国家の責務を果たし、拉致問題で各国をリードしていくことを望みます。 冷戦時代、東西ドイツでも拉致問題がありました。西ドイツは、東ドイツによって拉致された被害者を救うために国内関係省を設置し、東ドイツ体制対策を講じて、一歩も譲歩しませんでした。 是非、日本政府もこれを見習い、絶対に拉致被害者を全員取り戻すということを言葉で、行動で、明確に示さなければなりません。そして、自分の国は自分で守れる現実的な対応を講じていくべきです。 日本は南シナ海の安定の要、日米同盟の強化で中国包囲網をつくれ! 2015.12.01 文/幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生 油井哲史(ゆい てつし) 東南アジア諸国連合(ASEAN)は11月23日、ASEAN首脳会議の議長声明を発表しました。 この中で初めて、中国の人工島造成を念頭に「軍事化」の動きに言及し、「複数の首脳が示した懸念を共有した」と明記しました。 当初、声明の草案には、「南シナ海」や「懸念」という文言は盛り込まれていませんでしたが、中国を直接名指しすることは避けつつも、人工島が軍事利用されることを警戒するフィリピンやベトナムに配慮して中国をけん制する内容となりました。 ◆日米同盟の深化が中国包囲網の形成を加速 この成果として、二つの理由が挙げられます。 まず、日米両国が、南シナ海での軍事拠点化を図る中国に対して連携して対応することを確認できたこと。そして、その成果をASEAN各国と共有し、海洋安全保障を促進させたことです。 ASEAN首脳会議に先立って、まず安倍首相とオバマ大統領が会談しました。 米軍による「航行の自由作戦」への支持を表明。中国が人工島造成を進める南シナ海問題で連携を強化するとともに、南シナ海への自衛隊の派遣について「日本の安全保障に与える影響を注視しつつ検討する」と伝達しました。 それを受けて安倍首相はインドのモディ首相と会談。南シナ海での人工島造成の軍事拠点化など中国の海洋進出に懸念を共有し、日本、インド、米国の3カ国で海洋安全保障協力を進めることで一致しました。 その具体化として、インド洋で行われる米印共同訓練に、海上自衛隊を定期的に参加させることで合意しています。 つまり、日米同盟の強化が、軍事拡張を続ける中国をけん制し、中国包囲網の形成を加速させたのです。 ◆中国包囲網の結束は、まだ弱い ASEAN諸国が連携し、南シナ海問題における中国包囲網が構築されていることは歓迎すべきことですが、その結束は必ずしも強固なわけではありません。 ASEAN諸国は経済関係において中国との結びつきが強く、様々な経済協力を受けて政治的な発言力を強めて、それに依存する関係にあります。 例えば、ASEAN首脳との会合で、中国の李克強首相がASEAN諸国のインフラ設備に対し、積極的に関わっていく方針を示し、100億ドル(約1兆2千億円)の融資を行うことを表明しました。 最近では中国の国有企業で原子力大手の中国広核集団(CGN)は、経営が悪化しているマレーシアの国営投資会社1MDBの火力発電関連会社の全株式を買収することが決定しています。 日米と中国が南シナ海における問題でけん制し合う中でASEAN諸国は板挟みとなり、首脳会議の序盤は、積極的に南シナ海の問題に言及する国は多くありませんでした。 また、日米同盟の強化を確認した米国も、本気で南シナ海を守る気概があるか疑問です。ここに至るまで南シナ海への派遣に消極的でした。 米国防相と米軍当局者たちは、数か月間、艦船を派遣する準備を整えていましたが、米中の交流を重視し、ホワイトハウスと国務省が不必要に派遣を先延ばししていました。 加えて、パリで同時多発テロが発生。イスラム国が次の標的をワシントンと警告したことで、米国国内とシリアへ意識が偏ることが予想されます。長期的に南シナ海に米軍のプレゼンスが存在し続けるかは不透明です。 ◆中国包囲網の要としての日本の役割 今回、日米関係の強化でアジアの安全保障強化を促進させ、共同してASEAN諸国への融資、技術移転などを表明。日米とアジアによる対中国包囲網を形成しました。 その過程で積極的に日本が外交し、説得する姿勢が伺えました。日本は今後、アジアの安定と発展のために中国包囲網の要としての自覚を強く持ち、環太平洋経済連携協定(TPP)に未加盟のASEAN諸国を取り組んでいくことが必要です。 これまでの日本は正邪を分け、正しさを推し進めること、説得し、牽引していくことが弱いと言われてきました。この機会に、毅然とした態度を示す国家となっていくことを望みます。 農業経営者の「儲かる農業」に学ぶ! 2015.10.13 文/幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生 油井哲史(ゆい てつし) ここ最近、農業における大きなトピックが2つありました。 1つ目は、全国農業協同組合中央会(JA全中)の権限縮小などを盛り込んだ改正農協法が成立したことです。これは農協組織における約60年ぶりの抜本改革になります。 地域農協の自由な経済活動を図るため、経営指導などの役割を担ってきたJA全中を2019年3月までに一般社団法人へ移行させ、監査機能を分離させます。 これまで品質にかかわらず同一条件で農産物を販売し、割高な農機具や肥料の購入を迫る問題が指摘され、農業の自由を奪い、発展を妨げる要因になっているとも言われてきました。 2つ目は、環太平洋経済連携協定(TPP)が大筋で合意されたことです。アジア太平洋地域に世界経済を牽引する新たな貿易・枠組みが誕生しました。 これが発効されると400を超える農林水産物の関税が順次、引き下げ・撤廃されます。安い外国産品の輸入が増え、消費者は恩恵を受ける一方、国内農家に影響が及ぶとみられます。 日本農業がますますグローバル競争の中にさらされることを意味しますが、ピンチをチャンスととらえ日本農業の国際競争力を高め、成長産業化させる機会として積極的に捉えていきたいと考えています。 ◆農業の「稼ぐ力」の強化へ とはいえ、日本農業は苦境の中にあり、衰退の傾向にあります。1960年から最近までの半世紀の推移を見ると、農業就業人口は1454万人から227万人、農家戸数は606万戸から253万戸へと減少しています。 耕作放棄地は現在40万ヘクタール、東京の面積の1.8倍、埼玉県や滋賀県の面積に匹敵する数値となっています。1960年当時、2割だった60歳以上の高齢農家の比率は現在7割を超えました。 TPPの大筋合意により、米や麦、牛・豚肉など重要5分野を含めて、農畜産業や漁業関係者に不安があるのは理解できます。日本人の主食を支える「米」は、価格の低下を防ぐため田んぼを減らし米の生産調整を行う「減反」を実施しています。 このように政府や農協に守られ、保護されてきました。しかし、米農家は全農家戸数の6割以上を占めますが、農産物全体の2割の生産しか行っていないという非効率な状況です。 生産や流通に制約が多く、弱まっていた「稼ぐ力」を農地の集約やブランド化を進めて生産性や競争力の高い経営体質へ強化していかねばなりません。 ◆「儲かる農業」の事例 / 和郷園、トップリバー 農業全体が衰退する中、2010年に農産物販売額が1億円を超えている経営体が5577ありますが、全体的に経営体が減少している中において、この階層は5年前より約1割増加しています。 こうした成功を収めている農家はビジネスとして農業を捉えている企業的農家です。また、積極的に輸出をしている農家もいます。日本の農業は大きなポテンシャルを秘めており、実際に活動し、成果を収めている農家も多数います。 「必要なのは、農業経営者だ」と語る「和郷園」代表理事の木内氏。彼が仲間と共に5人でスーパーに直接販売を始めたのが始まりです。「儲からない農業を変えたい」という強い信念から様々な挑戦をしました。 今では作った野菜を提供するカフェを経営し、加工や冷凍などの工場も自前で所有。さらに野菜工場の研究・開発にも関わり、農業にかかわることなら何でも取り組んでいます。 和郷園は、主に千葉県にある92軒の農家からなる農事組合法人で、グループの売上は60億円です。 「儲かる農業」を掲げ、それを実践する農業生産法人・トップリバー。経営者の嶋崎氏が脱サラ、妻の実家が営んでいた青果出荷協同組合を受け継ぐ形で2000年に設立しました。 初年度を除き黒字決算を続けており、「契約栽培」というモデルを取っています。外食産業、スーパーなどの求めに応じ、決まったときに決まった数量を提供します。 農業をビジネスとして一般企業と同じ感覚でとらえていくことが大切であるとし、成功の秘訣の一つに「営業に力を入れること」を挙げているのが印象的です。 営業と販売はアイデア次第で他社にいくらでも差をつけることができるという。元サラリーマンなどの若者を積極的に採用し、農業経営者として育てる育成方法は注目されています。売上高は11億円まで伸びたといいます。 ◆政府は農業のビジネス化、農業経営者輩出の後押しを! 安倍首相が「TPPを『攻めの農業』に切り替えるチャンスにする」と述べたことは評価できますが、政府が備蓄米の買い上げ量を積み増して、米農家への支援策を手厚くしようとしているのが気になります。これでは相変わらず「守りの農業」です。 農業をビジネスとして捉え、企業家マインドを持ち、成功を収める企業が出ています。全国の農家が出荷した米や野菜などの農産物の内、農協の手数料を避けるためにインターネット販売や小売と契約を結んで出荷する「脱農協」の流れが進んでいます。 2012年度の農協経由の農産物出荷が50%割れしたことからも、農業のビジネス化、農業経営者が増えていることが分かります。政府はこの流れを後押しする必要があります。 それを妨げている農地取得や企業参入などの規制を取り除き、日本農業の潜在力を開放することが必要です。改正農協法やTPPの大筋合意は、まさに農業が大きな過渡期にあることを予感させます。 自助努力の精神、経営マインドを農業に取り入れ、自由性の拡大を通して農業の国際競争力が高まり、成長産業化させると考えます。 日本はサイバー攻撃に対しても毅然とした対応を! 2015.08.11 文/幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生 油井 哲史(ゆい・てつし) 日本年金機構の個人情報集出事件で、101万人以上の個人情報流出が確認されています。手口は、標的型攻撃メールでした。 不特定多数の対象にばらまかれる通常の迷惑メールとは異なり、対象の組織から重要な情報を盗むことなどを目的として、組織の担当者が業務に関係するメールだと信じて開封してしまうように巧妙に作り込まれたウイルス付きメールのことです。 一連の攻撃には、中国語に堪能な組織が関与したと見られており、日本は確実に標的となっています。 なお、2010年尖閣諸島をめぐる情勢等と関連したとみられるサイバー攻撃においても、ウェブサイト改善事案の捜査を通じて把握したIPアドレスを分析した結果、全て海外所在(約94%が中国)のものでした。 ◆悪を抑止させる姿勢が鮮明な米国 米国が受けたサイバー攻撃も中国の関与が指摘されています。 米連邦政府の人事管理局は2150万人分の連邦政府職員らの個人情報が不正アクセスを受け、流出したと発表。ジェームズ・クラッパー米国家情報長官は、中国のハッカーに侵入された可能性が高いことを明かしました。 ニューヨークタイムズの報道によると、従来の防諜体制による通常の戦い方ではハッカー攻撃の規模に対応できないため、中国へ報復的サイバー攻撃を検討しているといいます。 実際に、米国は北朝鮮に対しサイバー攻撃の報復で制裁を行っています。 2014年11月、ソニーの100%子会社である映画大手の米ソニーピクチャーエンタテイメントは北朝鮮首脳を風刺したコメディ映画「The Interview」の劇場公開の妨害のため、大規模なサイバー攻撃を北朝鮮から受けました。 公開映像のファイルや最高幹部の電子メールなど大量の情報が流出。さらに、映画の上映予定の映画館に脅迫メールが送られました。 これを受け、オバマ大統領はCNNのインタビューで「とても大きな損失を伴う、高くつく『サイバー破壊行為』だと非難し、相応の対抗処置をとる」と述べました。 ジョン・マケイン上院議員は、今回は間違いなく戦争行為と断定。経済組織を破壊し、世界に、特にアメリカに検閲を課すことができるなら、それは破壊行為以上のものだとし、新たな戦争の形態であり、力強く対応する必要があるとしました。 これらの対抗処置でオバマ大統領は、金融制裁を科す大統領令に署名。米財務省は北朝鮮の3つの政府関連組織と10人の個人を制裁対象に指名し、米国内の資金を凍結。また、米国の人々に対しこれら制裁対象との取引を禁じました。 米国はサイバー攻撃を受け、国益を損ねたならば、その悪を押しとどめるための行動を起こしたのです。 ◆弱腰な対応で、国益を損なう日本 残念ながら、サイバー攻撃に関して日本政府は弱腰で曖昧な対応です。 2010年尖閣諸島をめぐる情勢等と関連したとみられるサイバー攻撃では、官房長官が「サイバー攻撃への対処は、国家の危機管理上重要な課題であって、政府として情報セキュリティ対策の一層の充実・強化を図る必要がある」と述べました。 しかし、サイバーセキュリティを強化する取り組みは成されましたが、攻撃に対する明確な対応はぼやけました。 また、日本企業への攻撃に際して日本政府の動きは鈍いと言わざるを得ません。 ソニーピクチャーエンタテイメントの一件は、日本資本の企業へのサイバー攻撃であり、当然ながら日本にも影響を及ぼす可能性のあることでありましたが、一部の閣僚らが、北朝鮮を批判する発言をするにとどまりました。 自分の国への影響をそこまで考えておらず、サイバーセキュリティへの認識が弱いと思われます。 日米両国はサイバー空間における脅威に対応するために、日米安保・防衛協力において連携を強め、共同して取り組みや計画における協力を推進していくことになっています。日米安保の関係をさらに強める機会を逃したとも言えるでしょう。 ◆日本は「止悪」の観点から毅然とした対応を! 軍事的に膨張する中国、核ミサイル保有を急ぐ北朝鮮など物理的な脅威として、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しています。 国家の国益や国民を守り抜くにも、国防強化に取り組まなければなりませんが、サイバーセキュリティにおいても体制を整えるとともに、毅然とした態度で意見を述べ、さらには「制裁」やサイバー攻撃を可能とするための整備が必要であると考えます。 東南アジアへのサイバー攻撃において、中国がハッカー集団を支援していると米国セキュリティ会社が発表しており、背景には南シナ海紛争があると言われています。 不当な軍事攻撃や侵略、サイバー攻撃を企む国に対しては、「止悪」の観点から毅然とした対応をしなければなりません。日米は協力して、その役割を担うべきです。世界の国々も、正義の実現を求めています。 ネット空間が戦場?―サイバーセキュリティを強化せよ! 2015.06.16 文/幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生 油井哲史(ゆい てつし) 日本年金機構に続き、東京商工会議所がサイバー攻撃を受け、個人情報が流出する事件が発生しました。 サイバー攻撃は、「サイバー犯罪」「サイバーテロ」「サイバー戦争」に分類されますが、それぞれ重なり合っており、境界が非常に曖昧です。 サイバー戦争となると、水道・ガス・電力などのライフライン、防衛システム、金融システム、通信システムなどを麻痺・停止させ、国家を窮地に陥れるほどの威力を持ちます。 IT化された社会は、サイバー攻撃によって崩壊する危険性があるのです。 サイバー空間における脅威の深刻化、拡散、グローバル化が急速に進展している中、サイバーセキュリティの確保は、社会経済システムを健全に機能させ、国家に安全且つ豊かな日常生活をもたらすだけでなく、経済の好循環を支え、持続的な経済成長を実現させるのに不可欠です。 ◆私たちはサイバー空間という戦場の中で生活をしている ブルース・ウィルス主演の「ダイハード4.0」ではサイバーテロの恐ろしさを見事に表現しておりますが、これはフィクションではなく、現実の世界です。 米国を例に挙げれば、1998年に米国軍部のコンピューターが攻撃され、軍事や原子力に関するデータ盗難の被害にあいました。 さらに2003年、NASAや国立研究所など多くの機関がサイバー攻撃を受け、コンピューター・ネットワークへアクセス侵入されています。 サイバーセキュリティは2011年7月14日、時代の転換点が訪れます。 米国防総省が今後のサイバー攻撃に対する基本姿勢となる「サイバー空間作戦戦略」を公表しました。 その戦略の中で、サイバー空間を陸、海、空、宇宙に次ぐ「第五の作戦領域」として定義し、サイバー攻撃にもミサイルなどの通常兵器による報復攻撃を辞さないと明言したのです。 つまり、コンピューターやスマートフォンなどネット空間・サイバー空間は私たちの生活の場として定着していますが、そこは戦場にもなっているということです。 ◆日本を取り巻くサイバー事件 実際に日本も狙われています。 2011年、三菱重工の防衛・原発関連の拠点にて他国からサイバー攻撃を受け、国家の安全保障の根幹にかかわる事件と報道されました。同年、衆議院および参議院の公務用PCやサーバーがサイバー攻撃を受けました。 また、2012年には尖閣諸島情勢と関連したとみられるサイバー攻撃を受け、裁判所や重要インフラ事業者などのウェブサイトが改ざんされる被害を受けました。 国家は社会経済システムを安定的に機能させ、国民の安心・安全を守り、経済の更なる発展、文化の繁栄に寄与しなければなりません。 そして、人々を真なる幸福の実現へと導き、この国に生まれ、この時代に生まれてよかったと、人々が心の底から喜べるような国造りをすべきです。 ◆サイバーセキュリティで遅れをとっている日本と今後の対策 日本はサイバーセキュリティに遅れを取っていると言わざるを得ません。人材と予算において米国と比較をしてみたいと思います。 米国はシリコンバレーを拠点に民間企業の協力を得てサイバー攻撃を防ぎ、軍のサイバー軍を2016年までに6,200名へ増強する計画を立てています。官民の専門化が常駐し、協力してサイバー対策技術の開発や人材確保など手がけています。 これに対し、日本は今年1月に内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を立ち上げましたが、人員は約80名。増員する方針ですが「100名以上」にとどまっています。 昨年3月に発足した自衛隊のサイバー防衛隊も約90名。原発など重要インフラの対策はNICSや所管省庁が担い、サイバー防衛隊は防衛省・自衛隊を対象にしたサイバー対処が主任務となります。 双方を合わせても200名に届かず、人材不足が課題です。 さらに、予算規模も開きがあり、米国はサイバーセキュリティ強化に向けて2016年度予算案に140億ドル(約1兆7,276億円)を割り当てています。 それに対し、日本では2015年度の情報セキュリティ関連の予算概算要求額は367億円。国家規模の違いを考慮に入れたとしても、遅れをとっている状況を鑑みて、もう少し力を入れても良いと考えます。 今後の対策としては、サイバーセキュリティを確保するための人材確保と育成強化。産学官民が一体となりサイバー脅威への対処能力を培うための啓発活動の促進。 サイバーセキュリティにおける国際パートナーシップの強化。サイバー攻撃があった際に反撃を可能とするなど毅然とした対応が出来るよう法的整備を促進することが考えられます。サイバーセキュリティの面においても、国防意識の強化を促していかねばなりません。 実体経済を伴った株価上昇を目指せ! 2015.04.20 文/幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生 油井哲史(ゆい てつし) 「景気のバロメーター」といわれる日経平均株価が高値で推移しています。4月10日には、「ITバブル」に沸いていた2000年4月以来、約15年ぶりに2万円に届きました。 うれしいニュースではありますが、これは今の日本の経済状況を正しく反映しているのでしょうか? ◆株価上昇の要因とは? この株価の上昇にはいくつか要因があります。 第一に外国人投資家の存在があります。外国人の株式保有比率は2013年度に初めて3割超になっており、アベノミクスによる株価上昇を受けて、海外投資家が積極的に日本株を買い増しています。 第二に円安や景気の回復傾向によって、大手企業を中心に業績が回復していることです。自動車などの主力輸出企業は円安傾向を受けて、追い風を受けています。 第三に積極的に量的緩和政策を取ったことです。金融市場に大量に資金供給を行ったことで、日銀が供給する潤沢な資金の一部が株式市場に流れ込み、株価を押し上げることになりました。 第四に公的資金によって多額の株式を購入したことです。公的年金資産を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)や郵便貯金や簡易保険の多額の資金が株式投資に向かっています。 主にこれらの要因によって株価が上昇したと言われています。 ◆「人工的」な株価上昇 しかし、国民や中小企業、地方からは依然として、景気回復の実感がしないという声が聞こえてきます。 この株価上昇は実体経済の成長を反映しているよりは、政府主導による「人工的」なものが作用しているといえます。このような状況に「お上が株式市場をコントロールしているようで官制相場の様相だ」という声も出ているようです。 金融相場で金余りによって株価上昇の期待が先行気味であることを示しており、このリスクを抱えながら、株式市場が推移することになります。その期待に実際の企業業績が追い付けない場合は、株価を下押しする可能性が高いです。 この状態を是正するためにも、日本経済を再生させ、一般国民にそれが広く波及するよう経済全体の底上げを図る、実体を伴うものにしなければなりません。 ◆日本はそれほど豊かな国とは言えない! 日本国内で年間に新しく生み出された生産物やサービスの金額の総和を国民の人数で割った一人あたりのGDPはOECD加盟国の34カ国中、日本は19位です。 失われた20年によって日本経済は長期低迷しており、ほとんどGDPの成長が止まっていました。その間、中国に抜かれて、世界第3位の経済国となりました。 もともと日本の一人あたりのGDPは世界のトップレベルでしたが、日本の低成長とその他の国の安定成長によって、日本は相対的にそれほど豊かな国でなくなったといえます。 しかし、日本は未来を切り拓き、再び高度経済成長を実現するポテンシャルを多分に秘めています。 ◆日本が秘めている未来を拓く力 「JFEがミャンマーで水道施設の建設事業に参入」「カンボジアの高速道・鉄道を日本の支援で整備」「川崎重工、米国で地下鉄車両を受注」など日本企業による社会基盤(インフラ)技術の海外展開についてのトピックがあります。 日本のインフラ技術は世界一の技術ポテンシャルを持っており、世界から高い評価を得ています。 また、航空機産業においては、航空各社が経営の効率化を急ぎ、燃費向上につながる航空機の軽量化や耐久性などを実現するために、先端技術を持つ日本企業の活躍が期待されています。 ボーイング社最新鋭機「787型機」では日本企業の製造分担比率は35%となっています。このように日本の資産である世界に誇る技術力を生かし、経済成長を図ることができます。 さらに幸福実現党では交通インフラ整備を進め、ヒトとモノの移動をさらに活発化させる「交通革命」を提言していますが、北陸新幹線の開業で早速、効果が表れているようです。 乗客が2.7倍に増え、観光地の入場者も増えるなど観光を後押ししており、沿線は新幹線効果でにぎわっています。 また、宇宙分野では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が日本発の月面着陸機を2018年に打ち上げる方針を固めました。このように経済成長を実現させる施策が、身の回りには多数溢れていることがわかります。 官制相場が息切れする前に、実体経済を改善していくことが必要不可欠です。そのために政府が打ち出す成長戦略を効果的なものとしなければなりません。 政府の縛りを緩め、規制緩和を促進し、民間にもっと自由を与えること、そして国民の自助努力、企業家精神の発揮を促すこと、未来産業への大胆な投資をすることによって日本の力を最大限に発揮させることができ、実体経済を伴った株価上昇を果たすことができると考えます。 すべてを表示する « Previous 1 2 3 Next »