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【憲法世論調査】安倍改憲案では「世論の壁」を破れない

http://hrp-newsfile.jp/2019/3665/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆参院選投票日前に各社が世論調査を実施

投票日が近づく中で、メディアは憲法に関する世論調査を行っています。

各社の調査を見ると、おおむね4割程度の方が改憲に賛成しており、この議論をタブー視する風潮は薄れてきました。

◆改憲に賛成する国民は4割程度

各社の結果の概要を整理します。

▽時事通信社(7/5~8実施。対象者は18歳以上の男女2000人)

・(憲法改正について)「選挙後に議論を進めること」への賛否を問うた。
・「賛成」41.2%/「反対」26.3%
・「どちらとも言えない・分からない」32.6%

▽日本経済新聞社+テレビ東京(6月末実施)

・自衛隊の存在を明記する憲法改正について、「賛成」と「反対」はともに38%
・この改憲案に自民支持層の59%、公明党支持層の40%が「賛成」
・立憲民主党支持層の77%、共産党支持層の76%が「反対」

※年齢層別に見た賛否は以下の通り。
・18~39歳:「賛成」46%/「反対」30%
・40~50歳代:「賛成」41%/「反対」37%
・60歳以上:「反対」44%/「賛成」32%

▽朝日新聞社(7月13~14日、調査対象は1000人)

・「与党と、憲法改正に前向きな日本維新の会などが、参議院の3分の2以上を占めた方がよいと思いますか。占めない方がよいと思いますか」と質問
・「占めた方がよい」が37%。「占めない方がよい」が40%、「その他・答えない」が23%

▽産経+FNN合同世論調査(7/14、15実施)

・「憲法改正に前向きな勢力が国会の改憲発議に必要な3分の2以上を占めた方がいいと思うか」を質問
・「思う」が42.8%、「思わない」が38.8%

▽ANN世論調査(7/13、14実施)

・「憲法改正を進めたい政党が発議に必要な3分の2を確保した方が良いか」を質問
・「良いと思う」40%、「思わない」37%
・9条改正は「賛成」33%、「反対」59%

◆高齢世代は護憲に傾き、若年世代は改憲寄り?

各社の調査にはばらつきがありますが、30数%から40%程度の国民は九条の改憲に肯定的です。

近年、北朝鮮の核開発の進展や中国の覇権拡大の野心が明らかになり、日本国民の中でも、改憲に賛成する人が増えてきたことが伺えます。

ただ、ここでいう改憲案は、安倍政権の「自衛隊の根拠を明文化」するプランが想定されているので、他の改憲案だと、数字が変わりそうです。

この中で、特に注意が必要なのは、日経が行った世代別の調査です。

護憲派が強い影響力を持っていた頃に学校教育を受けた高齢世代が改憲に否定的なのに対して、冷戦の終わり頃から平成初期に生まれた世代では、改憲への賛成派が上回っています。

世代交代もあって、改憲派は護憲派にひけを取らなくなってきましたが、全体的に見れば、まだ、九条改正を実現するには十分な数字ではありません。

◆皮肉にも、日本国民よりも米国民のほうが日本の国防強化に肯定的

各社の調査を見ると、まだ、日本の世論は9条改正や国防強化に強い支持を与えていないことがわかります。

しかし、日本の国防強化に関しては、海外の国民は違った目で見ています。

特に、同盟国であるアメリカ国民は、日本の国防強化を強く支持しているのです。

その数字を、平成30年度の「海外対日世論調査」(2019/5/22発表)で見てみましょう。

「日本は防衛力を増強すべきと考えるか」という設問への賛否は以下の%で推移しています。

(2017年⇒2018年)

▽一般国民の返答

・「増強すべき」:46%⇒43%
・「そうは思わない」:14%⇒19%
・「わからない・回答拒否」:40%⇒38%

▽有識者の返答

・「増強すべき」:67%⇒69%
・「そうは思わない」:24%⇒24%
・「わからない・回答拒否」:9%⇒8%

一般国民でも有識者でも、日本は防衛力を増強すべきだと考えている人のほうが多くなっています。

「増強すべき」と答えた人の数は、「そうは思わない」と答える人の2倍以上です。

皮肉な話ですが、日本国民よりも、米国民のほうが、日本の国防強化に肯定的なのです。

◆安倍政権の論理で国民に「改憲」を納得させることはできない

日本でも、憲法改正の議論ができるようになりましたが、改憲を実現するには、もう一段の意識変革が必要です。

そして、自民党のように、自衛隊と交戦権を否定する9条の矛盾に目をつぶっていては、国民の側も「なぜ、改憲が必要なのか」という理由が分かりません。

安倍首相は、改憲しても「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」と述べていますが、そう聞いた国民が「だったら、改憲する必要はない」と考えるのは当然だからです。

「今の条文でも自衛隊を運用でき、書き込んでも何も変わらない。しかし、改憲が必要だ」という論理には、無理があります。

改憲が必要なのは、日本国憲法ができたばかりの頃のように、米国に安全保障を任せ切ることができなくなったからです。

中国の軍拡や北朝鮮の核開発が進み、日米同盟は不公平だと主張するトランプ大統領は、さらなる防衛努力を日本に求めています。

もっと日本は自国を守る努力をすべきだという考えが米国内に根強くあることは、前掲の世論調査でも明らかです。

今後の日本は、軍隊と交戦権を否定し、「自衛隊は盾。米軍は矛です。戦いは米国にお任せします」と逃げ続けることはできません。

日本が主体的に戦わない限り、米国軍人が日本を守るために戦ってくれることはありません。

だからこそ、改憲が必要になるのです。

こうした、当然の説明から逃げているのが自民党です。

ジャーナリストの田原総一朗氏は「自民党議員はみんな憲法から逃げている。議員が憲法から逃げて、国民がOKするわけないじゃないか!」と言っていますが、これは正鵠を射た発言です。

幸福実現党は、憲法九条の根本改正から逃げず、1項と2項を含めた根本改正を訴えてまいります。

自衛隊を「軍隊」とし、民主主義のもとで軍を統制し、国民の声明と安全と財産を守らなければならないからです。

【参照】

・時事ドットコム「内閣支持微減43%=改憲議論「賛成」4割-時事世論調査」(2019年7月12日)
・日経電子版「内閣支持率49% 憲法改正は賛成・反対とも38%」(2019/7/14)
・朝日新聞デジタル「世論調査―質問と回答〈7月13、14日〉」(2019年7月14日)
・産経ニュース「【産経FNN合同調査】参院選最重視は社会保障42%」(2019.7.16)
・tv asahi GO「世論調査 2019年7月調査」
・外務省HP「平成30年度海外対日世論調査」(令和元年5月22日)
・ITmedia「田原総一朗が憲法9条で安倍首相を斬る――『“改憲した総理”になりたいだけ』」(服部良祐, 今野大一,2019.6.25)

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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