日本の海上防衛を考える(5)――中国に支配された南シナ海
文/幸福実現党・政務調査会 佐々木勝浩
◆中国の海洋戦略
前回、中国が海洋戦略として南シナ海と東シナ海、西太平洋を2020年までに中国の海にする戦略を持っていると指摘しました。今回は、その戦略をもう少し詳細に分析してみましょう。
【前回】日本の海上防衛を考える(4)――中国の海洋戦略
http://hrp-newsfile.jp/2015/1959/
海洋国家である日本が防衛を考える際に、中国の海洋戦略がどのようなものかを知ることは大変重要なことです。何故ならそれが分かっていれば日本の海洋防衛の対策も立てることができるからです。
中国の海洋戦略は、1997年に発表された「海軍発展戦略」に表れています。過去のニュースファイルでも紹介しましたが、これが分かれば、中国が今後どのような手を打ってくるかがすべて分かります。
【第一段階】2000~10年――「第一列島線」(鹿児島~沖縄~尖閣諸島~台湾~フィリピン~ボルネオを結ぶ線)の内部の制海権確保。つまり「南シナ海、東シナ海」を支配する。
【第二段階】2010~20年――「第二列島線」(伊豆諸島~小笠原諸島~グアム・サイパン~パプアニューギニアを結ぶ線)の内部の制海権確保。つまり「西太平洋」を支配する。
【第三段階】2020~40年――太平洋、インド洋で米軍と制海権を競う。つまり、南シナ海、東シナ海、そして西太平洋を段階的に「中国の海」にする。
【第一段階】は、計画から少し遅れている感はありますが、【第二段階】は、2006年から西太平洋の沖ノ鳥島近海で海洋軍訓練が行われ前倒しで進行しています。
そして西太平洋での海洋軍事訓練は、毎年回数を増やし、規模も大きくなっています。昨年の小笠原諸島での中国漁船のサンゴ密漁も中国当局の指示によるものです。
◆南シナ海の支配は最終段階へ
話は戻りますが【第一段階】は少し遅れているようですが、南シナ海の支配は最終段階へ入りました。
昨年5月フィリピンは、自国が領有を主張していたスプラトリー諸島(南沙諸島)で7つの岩礁のうち6つの岩礁を中国が埋め立て軍事拠点化していると発表しました。
さらに中国は永暑島に人工島をつくり飛行場や軍艦の受け入れが可能な港も建設中であると米国防当局が分析しています。(11/23世界日報)
今年に入って2月4日には、フィリピン外務省が同国の排他的経済水域スカボロー礁(黄岩島)で、中国当局の船がフィリピンの漁船に意図的に衝突したとして中国に抗議しました。(2/5産経)
◆中国の軍事支配の手口
まず漁船を出して相手を挑発して、今度は軍艦を出して力で抑え込んで島を支配する、岩礁の場合は埋め立てで人工島を造って軍事基地化する、これが中国のいつもの手です。
一方でベトナムが領有を主張する南シナ海のパラセル諸島(西沙諸島)では、昨年5月~7月に中国が一方的に石油掘削を行いました。
8月には中国の『環球時報』が、パラセル諸島のウッディ―島(永興島)に航空滑走路の拡大工事を完成させたと報じました。「この滑走路は爆撃が飛び立てる」ことができ力による実効支配が進んでいます。(10/9産経)
9月23日には『中国中央テレビ』が、中国の海・空軍、第二砲兵(戦略ミサイル部隊)が合同で、南シナ海で大規模な合同軍事訓練の模様を報じました。
その際に中国軍関係者は「フィリピンやベトナムを威嚇するのが狙い。南シナ海の軍事基地建設に向け、拠点確保は早い者勝ちだ」と述べています。
パラセル諸島やスプラトリー諸島は、「三沙市」として中国当局が移住を推進し、「島民」には、1日40元(800円)の『駐島手当』が支給され、スーパー建設など生活支援なども着々と進めています。(1/7日読売)
フィリピンは、中国への対抗策として仲裁裁判所に提訴し国際社会にアピール、昨年4月には中国に対抗するため米国と新軍事協定を結びました。
フィリピンにとって、軍事力にものを言わせて話し合いが成立しない中国に対する一番の対策は米国との軍事協定だったのです。
こうして中国の【第一段階】南シナ海の支配は最終段階に入っていますが、東シナ海についても、すでにその支配は進んでいます。今後、東シナ海では南シナ海で起こったことと同じことが起こるでしょう。
次回、東シナ海と西太平洋で何が起こっているのか、また今後何が起こるのかを見ていきたいと思います。
(つづく)