Home/ 2016年 April 2016年 April 日本防衛戦略「核抑止編」【第2回】―アメリカの核戦略の変遷と教訓 2016.04.30 ◆『大量報復戦略』 【第1回】では、「核兵器の種類、核兵器の特性、抑止戦略の種類」について述べましたが、今回の【第2回】では、「アメリカの核戦略の変遷と教訓」について論じます。 アイゼンハワー政権の核戦略のキャッチフレーズで、中欧でのソ連の大規模通常攻撃に対する抑止戦略として立案されましたが、核兵器を万能薬と考え、世界各地で頻発する局地戦までも核兵器の大量報復の脅しで抑止しようとしました。 この戦略は、次のような激しい批判を巻き起こしました。 〈1〉局地紛争が起こった場合、一挙に全面核戦争へエスカレートさせてしまう。 〈2〉相手に脅しを信じさせるのに無理があり、抑止効果に信憑性(信頼性)がおけない。 事実、その後も局地紛争は頻発しました。万能薬は効かなかったのです。 ◆『段階的抑止戦略』 そのため「段階的抑止戦略」が打ち出されました。一挙には戦略核兵器の撃ち合いにエスカレートしないよう「戦術核兵器」を使用する「中間段階」が組み込まれたのです。 この戦略にも、次のような批判が出ました。 〈1〉「戦略核兵器」の優勢がなければ、相手の「戦略核兵器」による報復にエスカレートする危険がある。 〈2〉「戦術核兵器」の優勢もいずれ消える。 ◆『柔軟反応戦略』 ケネディー・ジョンソン政権の核戦略と通常戦略を総称して「柔軟反応戦略」と呼びます。通常戦争には通常戦力で、という振り出しに戻りました。 この政権間に、核戦略のキャッチフレーズは、「損害限定」「確証破壊」「相互確証破壊」と変化しましたのです。 頻発する局地紛争の抑止・対処は通常戦力に依存させ、核抑止の対象は、米国及び同盟国への核攻撃とNATOへの大規模通常攻撃へと縮小しました。 ◆『損害限定戦略』 1962年に登場した構想で、敵の第一撃(先制攻撃)を吸収したあと、まず敵の戦略核戦力に対し報復を行って、敵の第二次攻撃力を破壊し、米国の被る損害を限定します。 この際、敵の都市に対する攻撃をひとまず控え、これを人質として戦争の終結交渉を行います。 戦争の終結交渉が進展しない場合、敵の都市、工業地帯に対し、慎重にコントロールされた核攻撃を行って、交渉の圧力を増加しようとするものであり、「優勢勝ち」を狙うものでした。 ◆『確証破壊戦略』 米国の核攻撃力増強も制限する必要があると考え、「確証破壊」=「敵が十分に計画された奇襲攻撃をわが部隊に加えてきたあとでも、その侵略国が社会として、生活できないようにする破壊力」という量的基準を設けました。 具体的には、ソ連の工業力の70%を破壊し、効果がほぼ頭打ちとなる核弾頭数は、200~400発と分かりました。この数を「最小限抑止力」といい、今日でも通用します。 「損害限定プラス確証破壊」という構想で、米国の核抑止戦略は1960年代半ばに確立したかに見えました。 ◆『相互確証破壊戦略』(MAD) ところが、1967年、抑止の重点は「損害限定」よりも「確証破壊」にあるとされ、1968年には、「相互確証破壊」(互いに破壊を防ぎ得ない無能力さ)が、「双方にとって戦略核戦争を避けようとする最大かつ可能な動機」になるとの戦略が推進されるようになりました。 アメリカの実業家、政治家で、1961年から1968年までケネディ、ジョンソン大統領の下で国防長官を務めたマクナマラは、「恐怖の均衡」の安定化(戦略的安定性=軍拡競争の防止)へ、ソ連と軍備管理交渉を始め、軍拡競争の防止は、ソ連に受け入れられたと判断しました。 しかし、ニクソン政権は、「相互確証破壊戦略」の問題に気づきます。 〈1〉抑止が破れれば、確証破壊に匹敵する大損害を被る恐れがある。 〈2〉これに怖気づけば降伏するしかない。 即ち、対応策が事実上「オール・オア・ナッシング」という問題です。 〈3〉また、同盟国に対する核攻撃があった場合、米国はソ連の再報復によって米本土も大損害を被ることを恐れて報復に踏み切れないのではないか、という疑問が生じました。 ◆『シュレジンジャー・ドクトリン』(『限定核オプション』、『選択反応戦略』) 1973年、「全面核戦争に至らない侵略(限定核攻撃)に対し、攻撃規模に応じた核反撃を行う」という「シュレンジャー・ドクトリン」が出されました。 「損害限定戦略」が「核優勢」を背景に、相手の残存核戦略を撃破して「優勢勝ち」を収めることを企図したのに対して、「シュレンジャー・ドクトリン」は、「核均衡」を背景に、戦闘の低いレベルで核の撃ち合いを止めることに相違がありました。 核均衡下においても、米国は核攻撃に対して何もしないでは終わらせない、という決意表明であり、 「核攻撃の規模に応じた核反撃」を同盟国に約束することで、「核の傘」(拡大抑止)の保障を与えるものでした。 「攻撃の規模に応じた反撃」という基本構想は、冷戦終了まで継続されました。 ◆『相殺戦略』 デタント(緊張緩和)は、蜃気楼であり、米国の一人相撲でした。 ソ連共産党政治局が「相互確証破壊」を受け入れても、ソ連参謀本部は受け入れていなかったのです。 ソ連参謀本部は、「集中的な先制核攻撃で米国の核戦力を壊滅するとともに、政治経済中枢を破壊する」先制攻撃論を維持し、核戦争の長期化さえ考えていました。 ソ連は核戦力を増強し続け、先制攻撃で米国の全ICBM戦力を壊滅できる重ミサイルを配備し、「恐怖の不均衡」が出来上がりました。 カーター政権は、「恐怖の不均衡」を知って、「相殺戦略」を名づけた対抗策を取り、ソ連の重ミサイルに匹敵し、「緊急自動目標変更能力」を持つ核ミサイルの生産・配備を決定しました。 配備される1986年までの期間は、「脆弱性の窓」と呼ばれました。 特筆すべき点は、「目標設定」にクレムリンへの射撃を導入し、「政治中枢の破壊(断頭攻撃)」によるソ連の国家としての一体性の破壊を狙ったことです。 ◆『SDI(戦略防衛構想)』 レーガン政権は、1983年3月、SDI(核攻撃の拒否型抑止)を提言しました。 SDIは、ソ連の弾道ミサイルに対し、レーザー兵器やレールガン等で防衛網を構成し、弾道ミサイルを無力化しようとするもので、究極の目的は「核廃絶」でした。 莫大な経費と技術力を要するSDIは、圧倒的にソ連に不利であったため、ソ連は軍備管理交渉に応じるようになり、ゴルバチョフの「ペレストロイカ(改革)」「グラスノスチ(情報公開)」の下、1991年、崩壊しました。 ◆教訓 〈1〉核戦力で「局地侵略」を抑止することはできない。 〈2〉脅しは強いが、実際に使えそうもない戦略を立ててはならない。 〈3〉一面が優れていても他面に欠陥を持つ戦略を採用してはならない。 〈4〉我の合理的判断を敵も共有できると即断してはならない。 〈5〉「オール・オア・ナッシング」の選択しかできない戦略ではいけない。 〈6〉軍拡競争は、悪いものとされやすいが、そうでない場合もある。 〈7〉技術力と、それを支える経済力で、優位に立たねばならない。 以上、「アメリカの核戦略の変遷と教訓」を論じて参りましたが、【第3回】は、私案として「核装備プラス日本版SDI」を提案いたします。 日本防衛戦略「核抑止編」【第1回】―「危機に立つ日本」を護る核装備 2016.04.29 文/幸福実現党・茨城県本部副代表 中村幸樹 ◆危機に立つ日本 「水爆」実験や長距離弾道ミサイル発射で、核ミサイル保有を進める北朝鮮ですが、28日にも午前と午後に、中距離弾道ミサイル「ムスダン」を一発ずつ発射しました。 韓国軍は、いずれも「発射直後、数秒以内に墜落した」と分析しています。ちなみに「ムスダン」は、射程3000~4000キロメートルのミサイルです。 また軍事的に膨張する中国(2016年度の中国国防費は、公表分だけで約16.7兆円、28年間で約44倍)、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しています。 朝鮮半島、尖閣諸島・沖縄、台湾海峡、ベトナムやフィリピン近海等は、紛争の発火点として、いつ起きておかしくない状態にあります。 幸福実現党は、日本を護り抜き、「世界の正義」を推し進めるために、以下を取り組みます。 〈1〉「言論・思想戦」 〈2〉「外交戦」=「日米同盟」を強化(「米中同盟」を阻止)し、インド、ロシア、台湾、オーストラリア、モンゴル、東南アジア諸国、島嶼国などと友好を促進、経済・安保両面で連携強化を図り、中国や北朝鮮の民主化・自由化を促すための外交 〈3〉「強靭な防衛力」の構築 ◆正当防衛としての核装備 中国や北朝鮮からの「核を使っての恫喝や侵略」を思い止まらせる抑止力強化へ、正当防衛としての核装備も進めます。 核兵器の最大の効能は、「他の核兵器保有国に核兵器を使わせない」ということです。 「中国や北朝鮮が核兵器を使った場合には、日本からも核兵器を使われる可能性がある」ということが最大の抑止力になるわけです。 以下、核抑止の理解を深め、日本の核抑止戦略、防衛戦略を考察するために、3回に分けてと論を進めて参ります。 第1回は、核兵器の種類、核兵器の特性、抑止戦略の種類 第2回は、アメリカの核戦略の変遷と教訓 第3回は、核装備プラス日本版SDI(私案) ◆核兵器の種類 核兵器の種類には大別して「戦略核兵器」と「戦術核兵器」があります。中間に「戦域核戦力」(後に「中距離核戦力」)と改称)はありますが、詳述は省きます。 「戦略核兵器」は、敵国の戦略核戦力や政治・経済中枢に対する攻撃に用いられ、戦争の決をつける核兵器であるため、「戦略」の名が冠せられます。 対ソ冷戦期の米国の「戦略核戦力」の態勢は、同時に一挙に破壊されないよう(「抗堪性(こうたんせい)」の保持)、次の「三本柱」で成り立っていました。 〈1〉「大陸間弾道ミサイル(ICBM)」 〈2〉「潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)」 〈3〉「戦略爆撃機」 「戦略爆撃機」は、空中待機から命令を受けて目標に向かい、途中で呼び戻すことが可能という特性があります。「ICBM(大陸間弾道ミサイル)」は、発射すれば呼び戻せません。 「SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)」は、核戦争の最終段階まで温存が可能で、終結交渉の後ろ盾や最後の一撃を担えるという特性があります。 「戦術核兵器」は、彼我接近した戦場で用いられる核兵器です。 「戦術核兵器」は、登場時には、破壊力と使用効果が戦場に限定できる、使用可能な兵器と考えられ、1949年に創設されたNATOの防衛には、通常戦力の不足を補うため、多くの戦術核兵器が配備されました。 しかし、後に、「核兵器の特性」から、戦闘力として戦術核兵器を考えることは難しく、「戦術核戦争」と「戦略核戦争」の線引きは困難と考えられるようになりました。 ソ連軍事ドクトリンには「戦勝に必要な最大限の軍事力行使」がうたわれ、どんな形の核使用でもNATO軍が核を使用すれば、核の全面的な反撃をもって応じる方針があったのです。 ◆核兵器の特性 核兵器のもっとも顕著な特性は、きわめて大きな「瞬時の大破壊力」です。 広島、長崎の惨状をみれば、その威力は一目瞭然です。 北朝鮮が、原爆の数百倍から数千倍も威力を持つ水爆を東京に落とした場合、一千万人から三千万人ぐらいの被害を出す可能性があります。 さらに、特性として超高温の熱、衝撃波や爆風、放射線、電磁パルスがあげられます。 電磁パルスは、強度や機器の遮断程度によっては、電子機器に重大な影響を与え、戦争遂行に重大な支障を来します。これは今日のハイテク兵器の大きな弱点です。 「瞬時の大破壊力」という特性から、核兵器が「実戦に使える決戦打撃兵力(対処力)」なのか、「敵国の先制核攻撃を抑止する」だけの兵器なのか、よく論争の的になってきました。 しかし日本に2つの原爆が落とされた以降の歴史において、核兵器は使われていないという現実があります。 ◆抑止戦略の種類 抑止戦略には、「戦勝戦略による抑止」と「抑止戦略による抑止」があります。 前者は、戦えば我が勝つことを敵に事前に認識させて、侵略を思い止まらせるものです。 主として通常戦争の抑止に使われますが、ソ連は、核戦略においてもこの戦略を採りました。 後者は、戦って我が勝つことまでは目指さないが、敵に侵略目的の達成が不確実か、侵略に伴う損失が利益を上回ることを事前に認識させて、侵略を思い止まらせるものです。 主として核戦争の抑止に使われます。 米国は、冷戦終末期に、ソ連の「戦勝戦略」から生まれた先制攻撃の脅威を抑止するため、核戦争遂行能力が必要と考え、ソ連に似た戦略への転換を図りましたが、冷戦期の大部分は、後者の戦略でした。 核抑止は、核兵器を撃たれたら報復として撃ち返す「報復型抑止」(懲罰的抑止)が中心ですが、飛んでくる弾道ミサイルを撃ち落とす等の「拒否型抑止」もあります。 核の傘(拡大抑止)という同盟国への抑止力提供は、信頼性は疑問としても「報復型抑止」です。 スタンダードミサイル(SM-3)、パトリオットミサイル(PAC-3)、サード(THAAD)ミサイルなどのミサイル防衛(MD)は、「拒否型抑止」です。 「報復型抑止」が効果を発揮するには、「抑止の三原則」を満たす必要があります。 「抑止の三原則」 〈1〉(敵にとって耐え難い)報復を行う「実力」(能力)があること 〈2〉報復を行う「意志」があること 〈3〉我の実力と意志を平時から敵が「認識」していること 抑止には、戦争の生起を押し止めることだけではなく、いったん戦争が起こっても、戦争のエスカレーションを押し止める抑止=「交戦間の抑止」もあります。 以上、今回は【第1回】として、「核兵器の種類、核兵器の特性、抑止戦略の種類」について述べて参りました。 【第2回】では、「アメリカの核戦略の変遷と教訓」について論じます。 (つづく) 熊本の迅速な復興と首都の災害対策の強化を! 2016.04.28 文/HS政経塾第2期卒塾生 曽我周作 ◆今回の熊本地震 4月14日以降に発生した熊本・大分における震災において亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。 また被災地の迅速な復興と、被災された方々の生活が一日も早く再建されますよう心よりお祈り申し上げます。 幸福実現党では「平成28年熊本地震 被災者支援募金」を募っております。被災地復興にむけ、皆様のご協力を賜れれば幸いです。(http://info.hr-party.jp/2016/5455/) 今回発生した地震のうち、震度6弱以上を記録した地震は、なんと7回も起きております。 27日に確認された時点で、49人の方が亡くなられ、1人が行方不明、怪我をされた方は重軽傷併せて約1450人となっています。 また家屋の被害は熊本県内で、全壊が2102棟、半壊が2297棟、一部破損が7731棟に上ります。 現在避難されている方は熊本県で約3万6800人、大分県で224人と報道されています。16日の地震の発生後には約20万人近くの避難者が発生していました。 ◆もし首都圏で同じ規模の地震が起きたら 今後、もし首都圏で今回のような規模の直下型地震が発生した場合、その被害は甚大なものになります。 中央防災会議の首都直下地震対策検討ワーキンググループが作成した『首都直下地震の被害想定と対策について』の最終報告はつぎのようなものです。 ・揺れによる全壊家屋 約175,000棟 ・建物倒壊による死者 最大約 11,000人 ・揺れによる建物被害に伴う要救助者 最大 約72,000人 ・地震火災による焼失 最大 約412,000棟、 倒壊等と合わせ最大 約610,000棟 ・火災による死者 最大 約16,000人、 建物倒壊等と合わせ最大 約23,000人 など、おびただしい数の人と建物の被害想定がなされています。 また、避難者数もおびただしい数に上り、避難所は収容能力を超えることも予想されています。 今後、政府は民間とも協力して、今回の地震から教訓を得て、備えを進めるべきだと思いますし、いざという時には民間企業等の手助けも、とても重要になるものと考えられます。 ◆災害対策上も重要な原発再稼働 このような大きな地震が起きた時に、電気・ガス・水道のインフラへの被害を少なくし、いち早く復旧する事は当然大切なことになります。 ただし、例えば、送電線の設備が普及しても、もし電力供給そのものが不足していた場合、東日本大震災で経験したような「計画停電」を余儀なくされる可能性があります。 前述の報告書によると、「多くの火力発電所が強い地震動で緊急停止したり被災した場合、充分な電力供給が確保できなくなることから、電力使用の自粛要請が行われるが、被災量が大きい場合、計画停電を実施せざるを得ない可能性がある」と指摘されています。 被災直後は約2,700 万kWまで供給能力が落ち込み、夏場のピーク時の51%程度の供給能力まで落ち込む可能性があります。 直下型地震で大きな被害を受けながら、さらに計画停電が実施されるとなると、その影響は計り知れません。 大災害時の電力供給の不足を防止するためにも、やはり、柏崎刈羽原発の再稼働を早く進めるべきではないでしょうか。 今回の地震に際しても、ネット上ではデマや嘘が出回っていると言われていますが、原発関連の情報について、政府やマスコミが積極的に正確な情報発信を行う姿勢が大切だと思います。 ◆空の交通網を活かせるように また、地震発生後には「深刻な道路交通麻痺が発生し、消火活動、救命・救助活動、ライフライン等の応急復旧、物資輸送等に著しい支障等が生じる可能性がある」ことが指摘されており、そういう事態に陥った場合、ヘリコプターなどの空の交通に大きく依存せざるを得ない状況になるものと考えられます。 今回の地震においては輸送支援にオスプレイが利用されており、それに対して批判の声も上がっているものの、被災地の方に迅速に必要な物資を届けたり、人員の輸送をするうえで有利であるならば、オスプレイも含めて積極的に活用すべきではないでしょうか。 それを、政治問題にして不安を煽り、政府批判をするのはお門違いであると思います。 いずれにしても、いざという時に使用できるように、ヘリの離着陸ができる場所を確保することなど、政府や東京都等の自治体は協力して、空を使った輸送を積極的に活用できるための備えを進めるべきだと思います。 オバマ大統領広島訪問を歴史の転換点に 2016.04.27 文/HS政経塾2期卒塾生服部まさみ ◆オバマ大統領は広島訪問で何を語るのか 米国のオバマ大統領が、G7、伊勢志摩サミットが閉幕する5月27日に、広島を訪問する方針を固めました。 このニュースが流れたのと同じ4月23日に、オバマ政権でイランの核問題を担当した前国務次官(国務省のナンバー3にあたる人物)のウェンディー・シャーマン氏が、CNNテレビで、オバマ大統領の広島訪問について次のように発言しました。 「米国が過去を進んで認め、未来に焦点を当てる姿勢を地域の同盟国に示すことが米国の国益にかなう。」 また「原爆で終戦が早まり、多くの命が救われたという米国の公式見解は誤りではない」としながらも、「多くの民間人を殺害した原爆の残虐性は否定できない。」とも述べています。(4月26日読売新聞) 現在のアメリカ世論は、多くの民間人が犠牲になった広島・長崎への原爆投下を「正当化しない」という見方が60%と半数を超えています。 しかし、「正しかった」とする意見も根強い中、元政府高官として踏み込んだ発言をするのは異例のことだといいます。 広島訪問を決定する際には、ケリー国務長官が事前に、広島を訪問したように、現在、オバマ政権は大統領が広島訪問で何を語るかについて、世論の反応をみているとも考えられます。 アメリカ世論が形成される過程は、まず、研究者や評論家の書籍や論文に現れ、次に、要人の演説や発言に出てくるようになります。そして、新聞の社説やマスコミに影響してきて、世論が出来上がっていきます。 「原爆投下は間違いだった」という研究者の論文などはすでに多く発表されていますので、CNNテレビでシャーロット氏が原爆の残虐性を否定できないと発言したことは、世論を形成する大きな一歩であり、オバマ大統領が広島を訪問した際にも同じような内容を話すのではないかと予想します。 ◆恐怖心によるプロパガンダと歴史の修正 国益を左右する歴史認識は難しい問題ですが、米国が行った原爆投下は非人道的な行為であり、その元にあった人種差別の考え方は誤りです。 日本は、大東亜戦争で帝国主義と植民地主義と人種差別に終止符をうつために戦いました。 日本軍の戦いによって、白人による植民地支配に苦しめられたアジアの人々が歓喜し、喜んでいるということを知った米国は、その事実を捻じ曲げて、「日本軍がアジア人に対して、ありとあらゆる『残虐行為』に及んでいる」というプロパガンダ(宣伝)を行いました。 なぜなら、日本軍が白人に対して、戦いを挑み、苦しめていると報告すると、かえって「アジア人のために戦う日本」というイメージが広がってしまうからです。 日本の戦いによって白人優位の人種差別を土台にして築いた植民地支配の構造が崩れていくことを恐れ、白人は自分たちが今まで有色人種に対して犯してきた罪によって、奴隷にされるのではないかと怯えたのです。 その恐怖心からか、米国は人種差別を行ってきた歴史を認めずに、歴史を修正して正当化し、東京裁判での南京虐殺などを作り上げ、プロパガンダで誤魔化してきました。 そして、人種差別をこの世界からなくそうとした日本を自滅させるために、100年計画でGHQ占領政策を実行し手足をもぎとってしまいました。 ◆歴史に真正面から向き合う 米国の白人優位の構造が逆転する恐怖は、現代でも続いているのかもしれません。人種差別が原因の銃撃事件が相次いでいますが、それを一生懸命、銃規制の問題にすり替えています。 初の黒人大統領が誕生し、20ドル札に初の黒人女性を印刷しただけでは、国際社会にPRできても本当は何も変わっていないのかもしれません。 今こそ、米国は人種差別を行ってきた歴史に真正面から向き合うべき時です。その問題から逃げて、偽物の歴史を生きている限り、米国の発展、繁栄はありません。 黒人初の大統領であるオバマ氏だからこそ、人種差別の歴史に終止符を打つ転換点に立つべき使命があります。米国が行った原爆投下は非人道的な行為であり、その元にあった人種差別の考え方は誤りです。 日本は、第二次世界大戦で帝国主義と植民地主義と人種差別に終止符を打つために戦いました。 その日本を誇りに思い、真の同盟国として、友人として、世界の平和のためにこれからの未来を共に歩んでいきたい」と世界に向けてメッセージを発信することができると思います。 日本政府は、オバマ大統領の広島訪問を7月の参院選挙で左翼票を増やす絶好の機会だと考えて、ここぞとばかりに謝罪を繰り返すのではなく、同盟国として、日本の方からこのようなフェアな考え方が必要ではないかと導けるようにならなければなりません。 日本も米国も勇気を持って自国の歴史認識と向き合うことで、共に、世界を平和と発展・繁栄に導くリーダー国家としての使命と責任を果たしていけると信じています。 AIIBから透けて見える中国覇権の危険性 2016.04.26 文/HS政経塾6期生 須藤有紀 ◆「台湾の主権は中国にある」?台湾、猛反発 4月13日の産経新聞に「台湾 インフラ銀不参加」と題した記事が掲載されました。台湾のAIIBへの加盟交渉が、事実上決裂したことを報じたものです。 御存じの方も多いと思いますが、AIIBとは、中国が主導するアジア太平洋地域のインフラ整備を支援する国際金融機関のことです。 アジア太平洋地域には、深刻な投資資金不足からインフラ整備の遅れに悩む国が多いため、AIIBの創設メンバーはアジア太平洋地域だけでも25カ国に及んでいます(現在57カ国が加盟)。 そのAIIBには申請者が主権国家でない場合、「その国際関係に責任を負う加盟国」が同意するか、申請手続きを代行する必要があるという規定があります。 これに基づいてAIIB総裁、金立群(ジン・リーチュン)氏が、「台湾の主権は中国にある」としたうえで、台湾はAIIBに直接申請するのではなく、「中国財政省を通じた申請が必要だ」と明言しました。 「台湾に主権はない」「台湾は中国の一部である」。そう言われたのも同然の出来事に、「台湾の尊厳を損ねる」と台湾財政部は猛反発し、交渉は決裂しました。 ◆台湾の反発はもっともです そもそも台湾と中国の問題は、1949年、共産党と国民党の内戦が終わり、国民党が台湾に敗走したことから始まります。 台湾に渡ってきた国民党(外省人)は、独裁政権を敷き、台湾人(本省人)を迫害しました(白色テロ)。 台湾は国民党独裁政権下にありましたが、1991年に元台湾総統の李登輝氏が「動員戡乱時期臨時条款」を廃止したことにより、憲政が回復し、その後に民主化します。 こうしてやっと民主化に成功した台湾が、今さら中国共産党一党独裁体制の下に入ることなど容認できるはずがありません。 「台湾の主権は中国にある」という中国側のスタンスに反発するのはもっともなことです。 ◆AIIBの隠れた意図 ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、AIIBは融資基準が不明確なうえに、中国が30.34%の融資比率(議決権の26.06%)を有することを受けて、次のように、その危険性を指摘しています。 「(AIIBの運営では)中国共産党政権の利益のための融資が行われる危険性が高い」 「AIIBを中国はまず何よりも自国の経済強化のために活用し、それによって共産党の求心力を維持しようとする」 参考:月刊正論 2015年6月号記事『中国AIIBと対峙する日米の「剣」』 http://ironna.jp/article/1432?p=1 中国によるAIIBの恣意的運営は、台湾と香港の扱いからも覗えます。 AIIBは主権国家としての台湾の正式加盟は認めず、香港の正式加盟は「非主権国としての申請なら問題ない」として承認する方向です。 台湾を、香港と同様に中華人民共和国の中の一地域とみなしているのです。 ◆台湾は国家だ! しかし、アメリカが台湾関係法において台湾を国家に準ずる扱いをしていることや、台湾がWTO(世界貿易機関)、ADB(アジア開発銀行)に正式加盟をしていることなどを見ても、台湾には明らかに独立国家としての実体があります。 一行政特区であるかのように台湾を扱い、主権国家としての台湾のAIIB加盟を退けたのは、中国の政治的思惑が背景にあるためです。 中国は、近い将来台湾を併合しようと考えており、AIIBを利用してその布石を打とうと画策しているのです。 国際金融機関であるはずのAIIBが、そうした中国の覇権主義に基づいた運営をするのであれば、信頼性は大きく失われます。 軍事拡張だけでなく、経済的にも覇権を握ろうとする中国を、何としても食い止めなくてはなりません。 ◆日本が今なすべきこと AIIBは、投資資金額の大きさと比較的簡単に融資が行われることを強調しています。 日本は、日米主導のADB(アジア開発銀行)の融資条件を緩和するなど、AIIBを通じた中国の経済的な覇権主義の拡張を抑えねばなりません。また、軍事面での覇権拡大阻止も重要です。 そのためには、地政学的に重要な位置にある台湾との協力を強化する必要があります。 日本は台湾を主権国家として認めなければなりません。 その道筋をつけるために、台湾にTPP加盟をすすめたり、日台の経済関係を強化したりするなど、協力関係を強化していくことが大切です。 「移民」受け入れの考え方 2016.04.23 文/幸福実現党 富山県本部 副代表 吉田かをる ◆日本人が無関心な「難民」と「移民」 欧米では「難民」問題が大きな社会問題となり、それぞれの国家を揺るがす影響を与えています。 日本人にとっては「難民」も「移民」も日本には関係ないという雰囲気があり、しかも議論さえできない抵抗感が感じられます。 しかしながら、リアルな目で見ると、きな臭い朝鮮半島で有事があれば、日本海側に「朝鮮難民」が押し寄せてくるのは予想できます。 その際に、日本はどうするのかという議論さえ出てきません。 1年ほど前に、内閣府が「15年以降に移民を毎年20万人受け入れ、出生率も回復すれば100年後も人口は1億人を保つことができる」という試算を発表しました。 しかしそれ以降、話題にされる気配がありません。また、出生率回復の効果的な具体的政策も打ち出してはいません。 ◆日本の安定的な発展に不可欠な「移民」 少子化で人口減が問題となっている日本にとって、「人口を増大させるか、あるいは、人口を縮小させながら均衡した国家社会をつくるか」という2つの選択肢があります。 世界のリーダーをめざす日本にとっては、人口を増やす議論をしなくてはなりません。それには「出生率増加政策」に加え、「移民」の受け入れも不可欠なのです。 人口が増えることは経済発展や社会の活力の源泉です。 ◆スポーツ界などでの活躍 最近は高校野球やバスケット、バレーボールなどで、肌の色の違う人たちの素晴らしい活躍が目立ってきました。 「日本語しか話せません!」と笑う褐色の肌のスポーツ男子と女子の姿に、「能力があり、ガッツがあり、チャンスが平等にあれば夢を掴むことができる」ことの証明を見せられます。 国際舞台でも「日本人」として活躍してほしいと期待が膨らみます。 ◆「見た目」「純血」「肉体」ではなく「日本の精神」「日本の心根」を伝え残すこと 移民を「良き日本人」とする教育は不可欠で、質の高いレベルの教育が必要です。いろいろな法整備も急がねばなりません。 そして、「日本の精神」を学ぶ人に「日本人」になってもらえばよいのです。日本人より日本を深く理解し愛している外国人もいます。 肉体としての純血の日本人だけを「日本人」とするのではなく、「日本の精神」「日本の心根」を愛し、それを勉強しようと志す人を「日本人」として迎えることを考えなければなりません。 ◆現実的にみると、「日本のサービス業」がつぶれる 「移民」というと、まずは「高度な能力を持った知識層」や「富裕層」を受け入れることが大切ですが、外国人労働を無視すると、日本のGDPが減ります。 知識層をどんどん呼び入れ、未来産業を発展させなければなりませんが、日本のGDPの6割は「消費」です。 この消費行動を支えるのが「サービス業」です。現在サービス業は外国人労働なくしては成り立たないのです。 どこもかも慢性的な人手不足で、このままだとサービスの低下がおこり、「消費行動」が鈍くなります。 「増税」もGDPの消費を減らしますが、「人手不足によるサービス低下」も消費を押さえてしまいます。 ホテル・百貨店・コンビニ・スーパー・介護職・販売職・飲食業などのあらゆるサービス業で人手不足が起こっています。 地方では、居酒屋でアルバイトが集まらず閉店に追い込まれるとか、介護施設を増床したが、募集しても職員が集まらず稼働できないという事例がたくさんあります。 ◆感情論ではなく、現実的で真剣な議論を! 「移民は嫌、怖い」という感情論ではなく、「日本の精神」を持つ者が「日本人」という観点に立ち、この「日本人」を増やすためにはどうするかの議論をしなければなりません。 人口を今の3倍にすれば、ジャパニーズドリームは現実となり、社会保障の問題などもあっという間に解決します。 精神的な「鎖国」はもう終わりにしなければなりません。 国家安全保障体制の整備を急げ! 2016.04.22 文/HS政経塾3期卒塾生 幸福実現党・新潟県本部副代表 横井もとゆき 幸福実現党では、国家安全保障に関する法律の整備を提言しています。 参照:幸福実現党政務調査会政策提言集2016 Ⅱ外交防衛 http://publications.hr-party.jp/files/policy/2016/002/origin/all.pdf ◆国家安全保障法とは 国家安全保障法とは、国家安全保障に関する基本理念や基本方針など定めるものです。 この法律は、平時からのわが国の安全保障体制を盤石にして、国民の生命・安全・財産を守るのはもちろんのこと、国土・領海・領空を守り、日本の国益を守り増大させるのが狙いです。 現在は内閣に国家安全保障会議(NSC)を置いています。 現在掲げられている国家安全保障の目標は、次のように定められています。 「我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために、必要な抑止力を強化し、我が国に直接脅威が及ぶことを防止するとともに、万が一脅威が及ぶ場合には、これを排除し、かつ被害を最小化すること。」 つまり、抑止力強化と脅威の排除を謳い国防は盤石化と思いきや、例えば北朝鮮のミサイル対処も、あくまでも攻撃された場合、または攻撃が予測された場合にしか対処できないのが現状です。 ◆高まるミサイル危機 少し前まで北朝鮮のミサイルは5分~数分で東京に着弾すると計算されていました。 しかし現在は、以前よりもっと高高度(宇宙空間)まで打ち上げてからの着弾が予想されており、東京への着弾まで約10分とされています。 これは北朝鮮のミサイル技術が進歩しており、日本のミサイルで撃ち落とす「ミサイル防衛」がさらに難しくなったと言えるでしょう。 ◆国家理念の欠如が国民を危険にさらす なぜ、我々は北朝鮮のミサイルが飛ぶまで待たなければならないのでしょうか。 憲法9条を「改正」、または「適用除外」にして、自衛の範囲内で敵基地攻撃能力が持てるように法改正をするべきです。 そもそも他国への打撃力を持たない日本のような「専守防衛」では、抑止力は生まれないとされているのが世界の通説です。 さらには現在進行形で進む北朝鮮の水爆実験と最新の大陸間弾道ミサイル「KN08」開発は日本の防衛にとって重要な日米安保をも揺るがそうとしています。 本来ならば、日本からミサイルの部品や技術、資金が流れないように、国際基準をさらに引き締め、北朝鮮やイランと日本との間での人や物や金の移動をストップすることも必要だったはずです。 しかし日本に国家安全保障の理念がない状態では抜け道ができてしまいます。 ◆国の守りを固めずして繁栄はなし 日本は国家を総動員させて安全保障を考えることを避けてきたため、東アジアの軍事的状況の悪化を数十年間放置してきました。 ミサイルから日本を守るのは、防衛省自衛隊だけではありません。各省庁や民、学が国家安全保障の理念のもと、一致団結しなければ、現代のから日本を守ることはできません。 そこで、今後の日本は、国を守るための各省庁にまたがる法律を制定する、国家安全保障の体制づくりが必要となります。 この法律は、各省庁、自治体に対して国益の増大と国家存続をいかに行うかという考え方を、平時から有事まで持たせることが可能になり、国民の国を守る義務も明記するべきです。 国全体の危機管理意識を高めることが、国家の存続と国益増進、そして平和を維持してゆきます。 ◆さらに平時の自衛権行使 現在は有事の際しか持つことができない自衛権を、平時から使用できる、平時の自衛権の行使も必要となります。 これにより武器の使用基準を緩和し領海・領空侵犯対処能力を強化し、領域警備・グレーゾーン対処を可能とします。 現在は日本の領海や領空に入ってきても、相手が武器を使うか犯罪を犯すまで、こちらは武器を使用できません。 しかし国境警備にあたる法執行活動従事者が、平時の自衛権を行使できるようにすることで、警察権の延長により、中国の公船や軍艦に手出しできない現在の状況を打開してゆきます。 自衛隊が平時の自衛権行使により活動の幅が広がってはおりますが、すぐに自衛隊を投入しては相手にも相手国の軍隊を出動させる口実をつくってしまいます。 ですから衝突から戦争を避けるためは、海上においては海上保安庁が、陸においては警察が、空においては航空自衛隊がはじめは法を執行し、必要ならば自衛権の行使を行います。 今までより一つ次元が上がった領域警備を可能とすることで、ある一線を越えてきた場合、段階的に武器を使用して侵入を阻止できます。 こうして国境を守るために主権国家として当然制定されるべき国内法を、ようやく日本も持つことができるようになります。 中小企業の悲鳴「首相、このままじゃ会社つぶれますよ!」【後編】 2016.04.21 文/兵庫県第12選挙区支部長 和田みな ◆安倍政権は民間介入の強化・国家社会主義 中小企業に対する負担増は、【前編】で述べた「消費増税」「事業承継税」「マイナンバー制度」「外形標準課税」、これだけに留まりません。 参院選の年である本年、政府はアベノミクスの成果を急ぐあまり、民間介入を強めてきています。 安倍首相は再三にわたる企業への賃上げ要請を行い、「同一労働同一賃金」の実現に向け労働契約法などの改正を検討することまで表明しました。 政府はこれを5月に取りまとめる「ニッポン1億総活躍プラン」の目玉とする方針です。 ◆「同一労働同一賃金」が中小企業に与える負担 この政策に対して野党からは「選挙の争点潰し」との批判が上がっていますが、そもそも我が党は「同一労働同一賃金」の法制化には反対です。 前述のような厳しい経済情勢を考えると、人件費の上昇は見込めません。このような状況の中で、同一労働同一賃金とそれに伴う非正規社員への保障の拡充による負担増は、企業側には大きな問題です。 実際、この政策が進めば経営を維持するために、従業員を減らさざるを得なくなるというのが本音のようです。そうなれば、雇用環境の悪化は避けられません。 一方で、前出の「中小企業同友会」速報では、「人材確保」が大きな課題となっています。 また、「中小企業白書2015」においても、近年中小企業で従業員の不足感が大きくなっており、賃上げをした中小企業の約76%が「従業員の定着・確保」が主な理由であると回答しています。 このように、企業が優秀な人材の確保に懸命な努力をしている中、安倍政権が介入を強めていることは、悪影響を与えるはずです。 そればかりか、明らかな自由の侵害であり、安倍政権の経済政策は国家社会主義への道そのものです。 幸福実現党は、立党以来「小さな政府」による自由の創設を訴えてまいりました。 今年の夏の参議院選挙において、与党も野党も「大きな政府」路線の政策を進める中、「このままでは会社がつぶれる!」という多くの経営者のお声を国政に届けるために、私たちは黙ってられません。 幸福実現党の経済政策をしっかりと訴え、中小企業の活力発揮を促し、日本の経済を元気にしてまいります。 中小企業の悲鳴「首相、このままじゃ会社つぶれますよ!」【前編】 2016.04.20 文/兵庫県第12選挙区支部長 和田みな ◆日本経済を支えている中小企業を取り巻く厳しい現状 日本の中小企業数は約38.5万社に上り、全企業数の99.7%を占めています。さらに、これらの企業が日本の雇用の約70%を担い、企業の売上高の約50%を担っています。 日本経済を支えている中小企業ですが、アベノミクスの下で厳しい経営状況に陥っていることが明らかになってきました。 先日発表された「中小企業同友会」の四半期速報では、「中小企業、第2次アベノミクス下で景気失速」、「(業況は)ほぼ全面的に悪化しており中小企業景気は失速している」と政府の失策と経営の厳しい現状が報告されました。 また、特に厳しい状況にあるのが関東以外の地域であることも述べられており、安倍政権の推進する「地方創生」が厳しい状況にあることも示されました。 ◆消費税の増税は間違い この速報では、景況の腰折れの原因として、「消費増税と物価上昇、税や保険料支出の増加がもたらした消費低迷」があったことが述べられております。 「こうした中での消費税10%再増税は中小企業に深刻な事態を招来しかねない」と、与野党が進めている消費増税についての再検討も提言されています。 このようなお声が、多くの経営者の本音ではないでしょうか。 消費税の増税に関しては、安倍首相や自民党議員の中からも慎重論が出始め、また、この度の熊本地震の発生により延期論も大きくなっています。 一方で、自民党の稲田朋美政調会長は日経新聞のインタビュー記事(4月20日付)において、「14年4月に消費税率をいきなり3%引き上げたのは問題だったという声は多い。1%をまず上げる考え方もあるし、2%上げても大丈夫という判断もある」と述べています。 実際に、私がお聞きした経営者のお声では「97年の3%から5%への増税時よりも、去年の5%から8%への増税は倍以上の負担感があったのに、すぐにまた2%上がるのは厳しい」というものが多く、経営者にとっては「たったの3%」ではないことを感じます。 しかし、景気への影響を考えているからといって、稲田氏が言うように1%ずつの増税を繰り返すことは、かえって企業の事務負担を増やし、経営には悪影響を与えることになりかねません。 そもそも、稲田氏も述べている、経済に悪影響を与えず財政再建を可能とする「増税」は可能なのでしょうか。 幸福実現党が一貫して訴えているように、まずは景気を本格的な回復軌道にのせ、経済成長を実現することで、自然増収による財政再建の道を目指すべきです。 ◆中小企業を苦しめている政策にメスを 消費税の増税の他にも、中小企業の経営を苦しめている政策は沢山あります。 我が党は、本稿でも何度か触れている「マイナンバー制度」の廃止や事業承継税制の抜本的な見直しはもちろん、政府が進めようとしている「外形標準課税」の拡大に反対します。 マイナンバー制度を企業の立場から考えると、導入や管理のコスト増と、情報漏洩に対する罰則という負担がのしかかっています。 行政の利便性の向上や国の徴税システムの強化のために、民間に負担を押し付け経営を圧迫しているといえます。 また、近年、急激な日本社会の高齢化に比例して社長の平均年齢も上昇しています。それに伴って、社長交代率も3.88%と3年連続で前年を上回りました。 これから、どのように事業を次の世代に引き継いでいくかが大きな課題となっている中で、中小企業の事業承継を困難にしているのが事業承継税です。 高齢化社会に対応していくためにも、非上場株式への相続税、贈与税を撤廃する税制改革が必要です。 さらに、資本金が1億円以上の企業が対象であった「外形標準課税」についても、5000万円、3000万円へと引き下げ、適用範囲を拡大していくことが検討されています。 これが進めば、業績や売り上げに関係なく、会社の規模によって税金を納めなければならなくなり、多くの企業にとって増税となります。 政府は法人税の引き下げを打ち出しながら、景気に関係なく税金が取れるシステムの構築を進めているのです。 そもそも景気の悪化は政府の失策が原因です。それにも関わらず、税金だけを納めさせようとする考え方は「大きな政府」そのものです。 (つづく) タックスヘイヴン――富裕層が逃げ出さない日本であるには 2016.04.19 文/HS政経塾6期生 山本慈(やまもと・めぐみ) ◆「タックスヘイヴン」とは 「タックスヘイヴン(租税回避地)」という言葉が新聞の一面を賑わせております。この言葉を初めて耳にした方も多かったのではないでしょうか。 そこで、今回はタックスヘイヴンについて簡単な説明と対応策について、お伝えさせていただきます。 タックスヘイヴンとは、小国が自国の存亡をかけて、税率ゼロもしくは低い税率によって、高富裕層や企業の資産を自国に誘致する政策を行っている地域や国のことを指します。 そこに外国企業が架空の子会社や金融口座をつくることによって、母国から架空子会社へ支出としてお金を送ることが可能となります。 ◆「パナマ文書」で明るみになった租税回避 「パナマ文書」によって、アップル社やアマゾンをはじめ、世界をリードするベンチャー企業などの租税回避が判明しました。企業だけでなく習近平ら国家指導者なども、タックスヘイヴンで資産運用していたことが判明している状況です。 先進国政府からしてみれば、タックスヘイヴンの存在により、自国に収まるはずの税金が海外へ流出してしまうため、それを防ぐために、法人税などの税金引下げを余儀なくされています。 しかし、法人税は年々減税傾向にありますが、その税率を引き下げた分、他のところで増税され、ヨーロッパでは付加価値税、日本では消費税などが増税されています。税率が格段に下がったわけでもないので、タックスヘイヴンへの資産運用は今後も続くことでしょう。 今回判明したタックスヘイヴンで資産運用していた日本企業の多くは日本でも有名な大企業やベンチャー企業でした。タックスヘイヴンにある子会社にお金をプールすることで、利益額を下げ、日本に本来払うべき額より安い税金を納めていたことが明らかになりました。 ◆G20が早くも、解決をはかる 4月14日にG20は財務相・中央銀行総裁会議で租税回避の防止策について協議しました。 このたびの情報交換協定が発効されれば、日本の国税庁は日本人がタックスヘイヴンで持つ預金、証券などの金融口座や金融の取引明細を各国当局から自動的に共有されるようになります。 またそれらの情報と実態を把握した後に企業、個人への課税を行う予定としています。 ◆増税すれば資本家が海外へ逃げていくだけ 租税回避をさせない点では一理ありますが、そもそも租税回避の原因となる問題が解決されたわけではありません。 節税という観点から見れば、企業は頭を使って企業の存続を目指しているとも言えます。 資本家、富裕層が海外へ資本をうつすのは、税金が高いか、経済への不安があるからでしょう。 ただ単にタックスヘイヴンへの資産運用を禁止し、課税を強化するだけではなく、減税政策も行うべきではないでしょうか。 また5%から8%へ増税された消費税など国民の生活を圧迫する税金を減税していくべきです。幸福実現党は消費税8%から5%への引き下げ、2割代への法人税減税を訴えています。 ぜひ、財務省には増税ではなく減税政策に向けて動き出していただきたいものです。 すべてを表示する 1 2 3 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