Home/ 2011年 November 2011年 November 野田首相訪中と「東シナ海ガス田開発交渉」――日本は毅然とした態度を示せ! 2011.11.20 野田首相が12月12、13日に中国を訪問し、胡錦濤国家主席と会談する方向で調整に入りました。 会談では、来年の日中国交正常化40周年に向けた取り組みや東シナ海での「ガス田開発」の条約交渉の再開が話し合われると報じられています。 この点について政治家として知っておかなくてはならない重要なポイントを2点、指摘しておきます。 1点目は、「12月13日」がいかなる意味を持った日であるかということです。 昭和12年12月13日は、日本軍が「南京」に入城した日にあたります。 なぜこの日に会談が設定されたのか、日本政府は推して知るべきです。 日本の対中ODA(発展途上国への政府開発援助)は、1979年からこれまで過去20年間で6兆円にのぼります。 内訳は、円借款(有償資金協力)が約3兆2079億円、無償援助1472億円、技術協力が1505億円。さらには、すでに廃止された「資源開発ローン」が3兆円弱になっています。ちなみに外務省の中国ODAの数値は、関与する公的な援助だけで「資源開発ローン」をカウントされていません。(数値は『SAPIO』2010年11月10日号より) 「対中ODAは既に終了した」との誤解がありますが、終わったのは円借款(08年度で終了)であり、驚くべきことに、残りの無償援助と技術協力は、今なお続いているのです。 中国は、既に日本のGDPを追い抜き、世界第二位の経済大国となっています。とても「発展途上国」とは呼べません。その中国に、なぜ日本はODAを続けているのでしょうか? その糸口は、江沢民前国家主席の国家戦略にあります。 江沢民氏は在任中の1998年8月、在外大使ら外交当局者を一堂に集めた会議の席上でこのように述べています。「日本に対しては歴史問題を永遠に言い続けなければならない」(江沢民著『江沢民文選』より) つまり、江沢民氏は、お金を日本から引き出す外交圧力カードとして「歴史問題」を位置付けたのです。それは胡錦濤国家主席にも受け継がれています。 来月、野田首相が訪中した際、中国側から「今日は何の日か知っているか?」と恫喝され、「南京大虐殺」の謝罪を迫られることは間違いありません。その後に待っていることは、多額の補償です。 「事実に基づいた正しい歴史観」と、それを武器として中国に言い返せるだけの気概を日本の政治家が持っていないがために、今まで私たち国民の血税が中国にまんまと吸い取られてきたのです。 2点目として、首相の訪中の前後には、必ず中国は圧力をかけ来ます。これを指摘しておきます。 過去には、2007年12月、当時福田首相が、ガス田開発交渉の解決を中国に持ちかけようと訪中した最中、中国は軍機をガス田上空に2日間に渡って40回超、集中飛来させました。まさに「ガス田開発交渉を口に出したらタダではおかないぞ」という脅しをかけたのです。 また、2009年10月の北京での日中韓首脳会談に出席した当時鳩山首相は、胡錦涛国家主席に「東シナ海を友愛の海にしよう」と語りかけたことは記憶に新しいことです。 しかし、中国が行ったことは、翌12月、共同開発で合意した東シナ海のガス田 「白樺」で、中国は一方的に天然ガスの掘削施設を完成させたことでした。 中国にとっては、東シナ海は「友愛の海」でもなんでもなく「中国の海」でしかないのです。 また、昨年2010年9月には、菅首相の訪中は実現しませんでしたが、ガス田「白樺」で中国が洋上施設に掘削用と見られる機材を搬入したことを重視し、自制を求めていく方針を明らかに際にも、中国は海軍艦艇をガス田付近に展開させたことを付け加えておきます。 このように過去の経過を見ても、日中ガス田開発交渉の話が持ち上がった際、中国は何らかの圧力を加えていていることが分かります。 来月の野田首相訪中の際も中国は軍事的、外交的圧力を加えてくる可能性は高いということです。 野田首相には、日本の国益を預かる日本の代表として「日本の国益を守る気概はあるのか?」――自らに問いかけていただきたいと思います。 また、野田首相が気安く「増税」し、私たち国民の「血税」を惜しみなく中国に注ぐことを、日本国民は黙って見ていてはならないと思います。(文責・佐々木勝浩) 「国会版事業仕分け」の可能性~不要な法律を廃止する「廃法府」機能を拡充せよ~ 2011.11.19 11月16日~17日、「衆院決算行政監視委員会」において、4事業(スーパーコンピューター、レセプト審査事務、公務員宿舎建設費、原子力関連法人)について、「国会版事業仕分け」が行われました。 【行政刷新会議が行うパフォーマンス政治】 「事業仕分け」と言えば、民主党政権がスタートしてより、過去3回、「行政刷新会議」が行って来ました。 「行政刷新会議」は、民主党が掲げる「政治主導」を実現するために設置されましたが、法的根拠が無く、「朝霞公務員宿舎問題」に象徴されるように、廃止や見直しをして削減されたものが再び復活するなど、実効性を伴わないパフォーマンス政治に終始しています。 民主党は、2009年衆院選マニフェストにおいて公約した「バラマキ政策」の財源確保のために、事業仕分けにおいて、「2位じゃダメなんですか」「スーパー堤防はスーパー無駄遣いなので廃止にします」など、「廃止」「見直し」を連発しました。 このような一方的で強引な政治手法が、吊し上げや公開処刑のようだと、国民の不評を買うことになりました。 実際に、スーパーコンピューターが「世界一」の2連覇を達成したり、3.11を通してコンクリートや堤防の必要性が実証されることで、「経費としての無駄」と「未来への投資」を見極める政策上の価値判断が欠落した「事業仕分けの愚かさ」を突きつけることとなりました。 「行政刷新会議」は新たに「提言型政策仕分け」を11月20日~23日に行う予定ですが、政府関係者は「増税への国民の不満を和らげるため、歳出を見直していることをアピールすることが目的だ」と政策仕分けの真の狙いを明かしています(産経11/17)。 「政策仕分け」が増税を納得させるためのパフォーマンスであるならば、「行政刷新会議」とは名ばかりで、「増税推進会議」であることを見抜き、国民はパフォーマンス政治に騙されないようにしていく必要があります。 【国会こそが国家経営の意思決定を行い、イノベーションを主導するべき】 今回の「国会版事業仕分け」は、国会が行政を監視する機能を強化する試みとなります。 「衆院決算行政監視委員会」が行うことで、衆議院規則に基づく「決議」または「勧告」があり、明確な権限を有するもので、藤村官房長官も「評価結果が出た時は、十分に重く受け止めなければならない」とコメントしており、政府は仕分けの結論に従う姿勢を見せています。 法的な拘束力までは持たないため、実効性を疑問視する声もあります。しかし、国会における決議や勧告が実効性を持たないならば、唯一の立法機関であるとされる国会の存在理由が無いと言わざるを得ません。 国会は、立法府としての機能を果たすために、数多くの予算や法律を成立させて来ましたが、その予算や法律が、効果があったのかどうかを検証することは十分になされて来てはいません。 また、予算の単年度制により、年度末という時間的圧力から予算獲得・予算成立が最優先され、その後どうなったのかは十分な検証も無く、乱暴に言えばやりっ放し状態であります。 一つの政策には、予算が生じ、それが「利権」となり、「既得権益」を構築するとも言われます。決算行政監視委員会の役割が強化されて来た経緯はそこにあります。 通常の会社経営であれば、PLAN(構想・計画)⇒DO(実行)⇒CHECK(検査・確認)⇒ACION(改善・イノベーション)というプロセスは、一社員のレベルでも当然なされる仕事・実務の基本です。 政策や予算の効果実績を精査して、反省に立って教訓をつかみ、大胆に構想を練り直し、「イノベーション」(体系的廃棄)を行うことが、未来を創造する政治のダイナミズムです。 立法行為を続けて数多くの法律が山積して、時代に適合しない法律や規制が多く、行政の肥大化により、国民の自由を阻害され、経済活動の足枷となっています。 例えば、国家社会主義の政治体制である大政翼賛会によって、戦費調達するために導入された「源泉徴収」が現在の日本の国家財政の基盤であったり、戦時下の食糧調整を行った農業政策が今も基本となっています。 国会は、立法や予算に追われるだけではなく、ゼロベースで政治のあるべき姿を構想し、枝葉末節を捨て去る「廃法府」としての役割も重要です。 参議院の不要論も出ていますが、衆議院が立法の役割を果たすことで、中長期的な視点で検証出来ないのであれば、任期が6年ある参議院を「廃法府」として、一定期間の施行された法律を見直し、廃止していく役割を持てば、参議院の存在意義も出てくるのではないでしょうか。 国会こそが、国家経営の意思決定を行い、イノベーションを主導する場とならなければなりません。 TPPを基点とする新たな体制づくりや3.11を踏まえた危機管理対応など、より機能的で、機動力のある国会運営への改革が求められています。 衆院決算行政監視委員会における国会版事業仕分けを一時的な試みに終わらせず、「廃法府」としての機能拡充を行い、「新しい国づくり」を推し進めることが必要です。 (文責・小川俊介) 国際平和を脅かす中国とイランの不気味な連携 2011.11.18 今、核兵器開発が国際的に大きな問題となっているイランと中国との経済的・軍事的結びつきが国際的な問題となっています。 11月16日、『大紀元日本』が「中国、イランを中東の軍事基地へと構築=米外交誌が警告」と題し、「中国政府はイランを中東における軍事基地として構築し、米国との対立陣営の重要なパートナーとして位置づけている。14日付の米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」(電子版)が指摘し、米政府の警戒を呼びかけた」と報じています。 ⇒http://www.epochtimes.jp/jp/2011/11/html/d42930.html 記事では、イランと中国の協力関係は石油や天然ガスといったエネルギー面だけに止まらず、中国政府はあらゆるルートでイランへの戦略・軍備的支援を行い、イランの核関連開発に助力し、巡航ミサイルと弾道ミサイルの技術も提供していたことが指摘されています。 中国がイランとの軍事的結びつきを深めている理由として、以下の3点を挙げたいと思います。 (1)中国の「シーレーン防衛」のため 中国は13億人という莫大な人口と急成長を遂げる経済活動を支えるため、エネルギー確保に必死になっています。 中国が尖閣諸島周辺のイラク並の石油埋蔵量を誇る油田を狙っているのも、このためです。 そのため、中国にとっても「シーレーン」(国々の経済活動を維持する大動脈である海上交通路)を守ることが国家の生命線になっています。 中国の「シーレーン」は日本と同様、ペルシャ湾とホルムズ海峡が重要な戦略拠点となっています。 特に、ホルムズ海峡は、中国にとってはイランの原油を中国本土に運ぶため、日本にとってはアラビア原油を日本本土に運び出すために必ず通らなければならない「チョークポイント」(関所)の一つです。 シーレーンとチョークポイントを守るために、中国はペルシャ湾に面する国であるイランとの関係強化を図っていることは明らかです。 (2)中国のエネルギー拠点としてのイランを守るため 中国はイランから石油を輸入し、自国の膨大な需要の一部を賄っています。 英紙フィナンシャル・タイムズ紙によると、イランから中国への石油輸入は増加の一方にあり、昨年1年間の輸入総量は293億ドルに達しており、2009年度比40%増となっており、イランとの蜜月関係がうかがわれます。 米国によるイランへの金融制裁により、ドルなどの通貨で石油購入代金の決済ができないため、中国とイラン両国は物々交換の貿易システムを編み出し、国際的制裁の網をくぐり抜けています。 中国は人権や倫理感を行動理念の基盤においておらず、石油資源を確保するためなら独裁国家や独裁者との付き合いも辞さないのが常です。 このことは、中国がカダフィ政権と良好な関係を築いてきたことからも明白です。(カダフィ大佐死亡後は、中国外務省の盧沙野アフリカ局長が「(カダフィ大佐は)中国の友人ではない」と語り、露骨な変わり身に国際的批判を浴びています。) 同記事には、米有力上院議員チャールズ・シューマー氏の言葉として、「彼らは常に自分の利益を一番に考えている。たとえそれが世界危機につながることを意味しても、まったくおかまいなしだ」という言葉を紹介しています。 イスラエルとの対立から、世界最終戦争に繋がりかねないイランの核開発に密かに肩入れをする中国に対して、世界から批判が高まっています。 (3)中東に展開するアメリカ軍を牽制するため ペルシャ湾、アラビア海周辺にはアメリカ海軍の第5艦隊が展開しており、中東の有事に対して原子力空母と空母艦載機を即座に展開できる能力を有しています。 中国がイランに軍事拠点を作ることは、アメリカを牽制することに繋がります。 しかし、おおっぴらに軍事的な協力関係を結ぶことはアメリカの疑念を呼ぶため、秘密裏に行われています。 中国が、アメリカとの対決姿勢を強めようとしていることは、中東でも太平洋・南シナ海・東シナ海にいても同様です。 米海兵隊が豪北部への駐留が決定したことからも明白なように、アメリカは、すでに中国との対決姿勢をアジア・太平洋において強めようとしています。 日本は、自国だけの平和に浸ることなく、自国の発展と繁栄を守るために、世界情勢の構図をいち早く理解し、日米同盟を基軸としつつ、中国の覇権主義に備えていく必要があります。(文責・矢内筆勝) 米海兵隊のオーストラリア駐留と日米同盟の未来 2011.11.17 11月16日、オバマ米大統領が就任後初めてオーストラリアを訪問。オーストラリアとの軍事協力関係を拡大すると共に、アジア太平洋地域において米国のプレゼンスを高める方針を発表しました。 今回の訪問によって、米海兵隊をダーウィンとオーストラリア北部地域に駐留させ、軍事演習や訓練を実施することが決まりました。 海兵隊の規模は当初最大250人程度を予定し、今後数年間で2500人の駐留を目指すということです。 最前線で戦闘任務を受け持つ海兵隊を置くことで、南シナ海で海洋権益拡大を狙う中国を牽制する狙いがあるとされています。 これに伴って、日本政府内では「アジア・太平洋地域における米軍の配置が抜本的に見直される可能性もあるのではないか」という懸念も出ており、新聞各紙とも、在沖縄海兵隊の移転計画について関心が集中しています。 毎日新聞(11/14)は「<在日米軍再編>米海兵隊、『司令』と『戦闘』分散 一極集中の危険を回避」と題し、以下のように述べています。 「欧州などに比べ、アジア太平洋には政治的に不安定な地域が多い。クリントン米国務長官は外交誌『フォーリン・ポリシー』(11月号)で、アジア太平洋の米軍が今後、 (1)地理的に配置を分散する (2)作戦面での弾力性を高める (3)駐留国などの『政治的な持続可能性』に配慮する の3原則に基づいて再編されるとの見通しを示している。 背景には、中国軍が弾道ミサイルの精度を高め、海軍力、空軍力を増強している事情がある。グアムに海兵隊の一大拠点を設けて『一極集中』すれば、弾道ミサイルの格好の標的となる。海兵隊の司令部や拠点を分散すれば、攻撃される危険性を減じ、万が一、攻撃された場合にも反撃能力を温存できる。」(引用終わり) このように、米海兵隊が中国のA2/AD戦略の影響下にある日本から、影響外にあるオーストラリアに分散、若しくは移設され、日米同盟は破棄されるとする見方(例:JBpress「日米安保破棄を真剣に検討し始めた米国」⇒http://goo.gl/VBPhF)も出ていますが、現状では、日本から海兵隊がすぐに撤退することは考えられません。 なぜなら、地理的に見て、オーストラリアは海兵隊の作戦基地としては遠過ぎるからです。 オーストラリアから南シナ海に展開するには距離的に有利ですが、想定される中国の台湾侵攻や朝鮮半島有事に即応するためには、余りにも距離が遠過ぎます。 また、オーストラリアは、地理的に大規模な部隊を動かすにはあまり適しておらず、1万数千人と言われる在沖海兵隊を代替するには規模も施設・設備も違い過ぎます。 したがって、現在想定される米軍の対中国戦略から見て、オーストラリアが日本に代わって、アジア太平洋における米海兵隊の中核の拠点となることは考えにくいと言えます。 今回のオーストラリアへのアメリカ海兵隊駐留は、締結六十周年を迎えた「太平洋安全保障条約」(オーストラリア・ニュージーランド・合衆国の間で結ばれた軍事同盟)の同盟強化が目的であると考える方が自然でしょう。 今のところ、海兵隊にとって最も必要な条件は「良好な環境にある部隊集結地」です。海兵隊の航空・海上・地上部隊を集結させ、戦闘能力維持のために訓練を施す、そのための良好な環境としては、現状では「沖縄」が最適な地です。 普天間基地の移設予定先である辺野古のキャンプ・シュワブは、海兵隊の戦闘強襲大隊や訓練場、弾薬庫などが集中しており、「海兵隊の足」の役割を担う普天間飛行場の海兵隊航空部隊が移設されれば集結効果は高まります。 しかし、普天間基地の移設問題がこじれ、沖縄の左翼勢力や仲井真知事が強く主張している「普天間基地の県外移設」に追い込まれれば、海兵隊部隊が分散・離散され、「沖縄が最適の地」とは言えなくなります。 その意味で、国内の米軍基地問題にも決着をつけることができない日本政府の失態が、アメリカ政府当局の判断に影響を与えていることも事実です。 今回のオーストラリアの海兵隊駐留は、即座に米海兵隊の日本撤退を意味するものではありませんが、このまま、何も決められない民主党政権が続き、普天間基地問題が暗礁に乗り上げれば、日米同盟の先行きが不透明になることは明らかです。 中国の脅威が日に日に迫る今こそ、「日米同盟」を基軸としつつ、「自分の国は自分で守る」自主防衛体制を構築する、そうした外交・国防の鉄則を掲げる幸福実現党の政策実現が求められているのです。(文責・黒川白雲) 改めて問う!成長なくして財政再建はできない 2011.11.16 政府与党は、相変わらず増税路線を崩していません。 野田佳彦首相は、消費税増税は来年の通常国会で審議して通過させる意図を表明しています。 G20では、ギリシャ発の財政危機をいかに回避するかが主要テーマであるにも関わらず、あえて増税を公約した意図はどこにあるのでしょうか。 おそらく、野田首相は財政規律を重視したと考えられます。言い換えれば、「日本が増税をすることによって財政再建に本格的に取り組む」という意思表示をしたということです。 野田首相の国際公約を振付けていたのは財務省であることは間違いありません。財務省は「増税や緊縮財政によって財政再建は世界的トレンドである」ということを主張し、財政再建が国際的信用につながると考ればつじつまが合います。 世界を見渡せば、ギリシャに続いてイタリアまでも財政危機が表面化。今後は、ポルトガルやスペインも財政危機の噂があります。 ユーロを維持するための収斂条件として、財政赤字対GDP比3%以内、長期債務残高対GDP比60%以内が課せられているユーロ圏では、景気悪化をとめるための財政出動が、収斂条件によって制約されています。 金融政策は、欧州中央銀行(ECB)の判断にかかっており、各国で金融緩和を実施することはできません。その意味では、欧州には制度的な制約があるため、今後も財政危機が一層表面化する可能性は高いと言えましょう。 アメリカでは、デフォルト危機直前までいき、ティーパーティーをはじめとした共和党が政府の歳出削減を主張しています。増税は主張されていませんが、オバマ政権が進める公的医療制度によって政府が肥大化し、財政赤字が悪化することをけん制しているわけです。 さらに、FRBのバーナンキ議長が金融緩和第三弾(QE3)を実施できないのは、共和党からの反対が強いことも原因です。また、連邦銀行理事の中にもさらなる金融緩和を疑問視する意見も出ていることも輪をかけています。 もし、アメリカで歳出削減圧力が高まり、金融緩和が不十分だった場合、景気停滞から不況となる可能性があります。 このように見ると、確かに債務が大きい主要国が増税や緊縮財政をしているのはトレンドのように見えなくもありません。 しかしながら、日本は欧米諸国のように制度や法律によって債務が規制されているわけではありません。 金融政策は、日本銀行の意思によっていくらでも実施できます。政府の債務が大きいといっても、政府資産は650兆円もあります。対外純資産は250兆円を超えており、世界一の金貸し国です。 あと足りないのは、適切なマクロ経済政策です。 幸福実現党は、震災前後でも財政出動と金融緩和をはじめとしたマクロ経済政策を実施して、デフレの脱却と景気回復、震災復興を主張し続けてきました。「千年に一度の大震災」とも呼ばれる非常事態なので、国債の日銀引受という切り札まで提言しています。 成長率を高めていくことにより、政府債務残高対GDP比を圧縮することができます。 国債の利払い費などを除いた基礎的財政収支を見ても、名目GDPが上昇すれば改善しています。嘉悦大学の高橋洋一教授や学習院大学の岩田規久男教授の研究でも、名目GDPが上昇で基礎的財政収支の改善は大部分説明ができるとされています。 こうした一連の条件を一つにまとめたのが「ドーマー条件」です。詳細は、拙著『日本経済再建宣言』第三章の190pから192pに譲りますが、要点は、長期金利を上回る名目成長率であること。そして、名目成長率が高まれば、基礎的財政収支と債務残高の対GDPが小さくなります。 その結果、債務は発散しないということです。ドーマー条件は、国家の債務管理の目安としては極めて有用です。 幸福実現党が示している通り、名目成長率を高める方法論を様々にありますが、政治家が真剣に政策を実践する勇気と気概がなければ絵に描いた餅にしかすぎません。 内閣総理大臣をはじめ、経済政策を担当する大臣には、いかにして日本が震災復興を成し遂げ、再び成長を実現できるかを追求するのが最低限必要です。増税しか提言できない政治家は、悪徳役人の域を出ません。 やはり、デフレ不況時の財政再建は、成長なくしてはあり得ません。(文責:中野雄太) 1位でなければ意味がない!――スパコン「京」が世界最速!日本は「科学技術立国」を目指せ! 2011.11.15 「理化学研究所」と「富士通」が共同開発を進めてきたスーパーコンピューター「京(けい)」が、スーパーコンピューターの最新の世界ランキングで1位に輝き、世界最速の座を守りました。 スパコン「京」は、6月の発表に続いて1位になり、2期連続で世界一に輝きました。 1秒間に1京(1兆の1万倍)回を超える計算速度が評価されたもので、この速度は2位の中国のスーパーコンピューターの約4倍で、ダントツの性能を誇っています。 スパコン「京」のプロジェクトについては、2009年の「事業仕分け」で蓮舫(れんほう)参議院議員が、鬼の首をとったかのように真顔で「2位じゃダメなんですか!」と追及、国民の間でも大変な注目を浴びました。 スパコン「京」のプロジェクトの関係者は、この蓮舫参議院議員の「発言」がバネになったと語っています。 早速、富士通は11月14日、東京大学情報基盤センターの新たなスーパーコンピュータシステムとして、商用スパコン「PRIMEHPC FX10」が採用されたと発表しました。「PRIMEHPC FX10」は、スパコン「京」の技術を応用した製品です。 このように、スパコンなど科学技術が「1位でないと意味がない」理由はここにあります。 日本のプロジェクトであるから日本の技術を採用したとも言えるかもしれませんが、もし、今回中国が1位であったら、中国の技術が採用される可能もあります。 今回、ダントツの1位に輝いたことで、スパコン「京」は、世界で注目され、採用されるでしょう。それが「2位ではダメな理由」です。 今回、日本技術者の優秀さが証明されたわけですが、このように優秀な技術者の育成と、それによって開発された技術は世界の発展繁栄を促進します。そしてそれによって多くの雇用も生まれるのです。 蓮舫氏等が中心になって進めて来た民主党の「事業仕分け」は、国の財政のムダを削減する目的で行われました。 しかし、事業仕分けの欠陥は、「浪費」と「投資」の違いが全く分かっていないことにあります。 民主党は、科学技術開発を削ったお金で「子ども手当」などのバラマキを行いました。しかし、本当に、科学技術投資を削って、「子ども手当」に配分することが、子供たちの未来のためになるのでしょうか? 科学技術への「投資」は、世界最先端の産業技術に結実し、世界に貢献すると共に、未来産業と新たな雇用を生み出します。 「理化学研究所」と「富士通」が共同開発を進めてきた技術者の気概は、大変すばらしいものがあります。 今回の「世界一」をきっかけに、こうした優秀な人材を育成するための投資の重要性を、政府は認めるべきです。未来への投資を削るべきではありません。 東日本大震災もありましたが、今なお世界は、日本の原子力技術を欲しがっています。その理由は、日本の技術が世界で一番信用があるからです。 日本は唯一の被爆国でありながら、科学者の努力によってそれを乗り越え、世界一の原子力技術を開発してきました。 他にも新幹線やリニアモーターカー技術、小惑星探査機「はやぶさ」等、優秀な技術者によって日本の発展は支えられているのです。 「日本よ!科学技術立国を目指せ!」――日本の最大の財産は「人材」です。日本はバラマキ予算を削ってでも、より一層の科学技術投資を推し進め、未来産業創出へのイノベーションを果たすべきです。(文責・佐々木勝浩) 高性能で安全な次世代原子力発電の開発を! 2011.11.14 12日、福島第一原子力発電所の敷地内が事故後、初めて報道陣に公開され、各紙がカラーの写真を大きく掲載しました。 激しく崩れ落ちた原子炉建屋、大津波で破損した設備など、8か月が経過した今も、生々しい爪痕をさらけだしました。事故の完全な収束と廃炉作業は、原発の信頼回復に欠かせません。 収束に向けて確実な遂行を目指すべきですが、息を飲む光景を写真公開することで、人々の恐怖心だけが増大するようなことがあってはなりません。 廃炉作業が最終工程まで「30年以上」の長丁場だとすると、継続して担う人材の質と規模が作業の成否の鍵を握ります。 そのためにも、菅前首相の場当たり的な「脱原発」とはキッパリと決別し、高性能で安全な次世代原発の研究に取り組むべきです。 経産省前では「9条改憲阻止の会」という左翼団体が経産省前の公共領域にテントを設置し、2ヶ月以上に渡って違法な座り込み活動を続け、「原発廃止運動」を起こしています。 しかし、これまで幸福実現党が主張して来た通り、ヨーロッパと違い、日本の地理的条件や地政学的リスクに鑑みるに、化石燃料にのみ頼るエネルギー政策は危険であります。 現時点で、日本が原子力エネルギーを捨てる選択をすることは、国家の安全保障を揺るがします。 反原発団体は「今夏、原発が減っても、計画停電は起こらなかった」「原発が無くてもやっていけるじゃないか」と主張しています。 しかし、計画停電を回避することができたのは、企業や家庭の献身的な節電の協力があってこそです。 この影響で、復興が遅れたことは否めません。東京電力と東北電力の管内大口需要家に対する「電力使用制限令」(前年比15%節電)が実施された7月以降、生産の回復は突然失速しています。 対象となった工場では稼働時間を短縮したり、休日を変更して、土日に生産をするなど、必死の努力が行われました。 経産省が発表している鉱工業指数(対前月比)を見てみると、3月に-15.3%と落ち込みますが、4月に1.0%、5月に5.7%、6月に3.9%と3ヶ月連続の急回復が見られましたが、7月は0.6%、8月は0.8%と急に回復が頭打ちになっています。 また、今夏の電力危機を乗り越えた背景には、火力発電所を猛烈なスピードで復旧・稼働させた電力会社やメーカーの努力がありました。 しかし、今夏は老朽化した火力発電所を無理矢理、動かしてきたため、故障やトラブルが相次いでおり、今冬も供給不安は続いています。 原子力エネルギーは、恐怖心を拡大する方向ではなく、防災対策を強化すべきです。 すなわち、「もう一段、大きな震災や、外部からの攻撃に対してどれだけの安全性を高められるか」についての研究が必要です。 今回、福島第一原子力発電所の吉田所長は「事故一週間は『死ぬだろう』と思うことが数度あった」と語っていますが、「原発そのものが悪い」のではなく、問題は「地震も津波も規模の小さなものしか想定していなかった」という甘さです。 原子炉の技術自体というよりも、地震や津波の想定が低すぎたという、「低い想定」の設定自体に問題があったのです。 原子炉自体は安全であっても、原子力発電所全体での災害対策強化は不可欠です。電源システムや配管の強化など、大きな地震や津波に耐えうる設計にすることは現在の技術でも十分対応可能であり、費用を惜しむべきではありません。 また、万一、日本が軍事的な攻撃を受ける場合、原発は最初に狙われる可能性が高く、ミサイルなどの攻撃を受けても問題が生じないように対策すべきです。 例えば、緊急時のシェルター構造をもう一回り外側につくり、少なくとも半径数百メートル以内で完全にシャットアウトするなど、考えれば作れるはずであり、こうした研究に政府はお金を惜しむべきではありません。 防災と安全保障は大きく連動しております。「最悪の事態」を想定し、事前に対策しておくことが一番です。「備えあれば憂いなし」です。 今後、原発事故の解明が進んでいきますが、それでもって「脱原発」「反原発」に向かうのではなく、「世界一安全な原発をつくろう」という発展・繁栄の方向を目指してまいりましょう! 人類の文明の進化は、「プロメテウスの火」の神話にあるように、自然災害との戦いの歴史でもあり、また、それを克服、コントロールして来た歴史でもあります。 私たちは決して江戸時代の生活へと「昔帰り」するのではなく、「今まで以上の繁栄を取り戻す!」という決意と覚悟で、新たな道を切り拓いていきたいと思います。 11月25日、幸福実現党発行のブックレット『これが真実(ホント)の放射能の話』(放射能問題研究会著)が発刊されます。是非、合わせてお読みください。 ⇒http://www.irhpress.co.jp/detail/html/P7002.html (文責・竜の口法子) TPP:「智恵による立国」を成し遂げよ! 2011.11.13 今、TPP交渉参加問題は国民的な議論を呼んでおり、TPPに参加すべきか否かについて、国民世論を二分しています。 民主党政権は菅前首相からその決断を先延ばしにし、野田首相になって、切羽詰まってTPPに参加をせざるを得ない状況に追い込まれてしまいました。 私は、今回の野田首相のTPP交渉参加の決断は、日本の「国益」を考えた「国家戦略」から決断したものではないと考えます。 本来、野田首相は、日本の国家戦略を確定した上で、早期に参加して有利な条件を提示し、強い外交交渉をなすべきでした。 昨年11月の閣議決定で、TPPについて「国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始する」としておきながら、今回の交渉開始は余りにも遅きに失し、交渉条件としては不利なものとなってしまいました。 昨日、幸福実現党のついき秀学党首は、声明「野田首相のTPP交渉参加表明を受けて」において、「政府には、TPPへの国内環境をいち早く整備し、国益をしっかりと見据えながらその交渉を進めるよう要望」しています。 今後、自由貿易の潮流の中で、日本が生き残るのみならず、日本が世界のリーダーシップを取っていくためには、世界最先端技術をさらに高度化したり、農産物の高付加価値化を進めるなど、「高付加価値産業へのパラダイムシフト」が必要です。 しかし、そのためには、民主党政権には具体的な「国家観」が無く、「国益」の視点が欠如していることが問題点として挙げられます。 民主党政権においては、鳩山・菅両氏が首相就任後、一年も経たずに国民を大きく失望させました。そして、三番手として野田首相が登場しました。 野田氏はミスを出さないよう、慎重に泥沼に潜ってはいるものの、「『国家観』無き民主党政権」は三度、失敗すると断言できます。 民主党の「基本理念」(http://www.dpj.or.jp/about/dpj/principles)や「基本政策」(http://www.dpj.or.jp/about/dpj/policy)を見ても、民主党政権の「国家観」は見えて来ません。 例えば、「地域主権改革」などの国家主権の相対化、東アジア共同体、(国民ではなく)地球市民、外国人参政権、「新しい公共」、「下からの民主主義」(「国家中心」から「市民中心」へ)など、国家を解体し、「自立した個人」の集合体にしようとする哲学が伺えます。 幸福実現党は、民主党の「地域主権」政策が根本的に間違っていることを指摘しています。 民主党の結党時の「基本政策」には「地域主権」の説明として「いま求められる分権改革は、官官分権ではなく、地域の自己決定と市民自治のための分権でなくてはならない」とあります。 基礎自治体における「住民自治」と、国家の「統治機構」とは本来、原理も考え方も根本的に違いますが、両者の混同が見られ、「国家否定」の姿勢が明確になっています。 そこに見えてくるのは、国家を解体して「市民」の集合体となった「国家なき市民社会」の姿であります。 日本が世界の「リーダー国家」になっていくためには、確かな「国家観」の上に、世界のリーダーとなるための「国家戦略」を構築していくことが必要です。 そして、TPPにおいても、強固なリーダーシップと力強い交渉力で、世界が納得する先手を打ったルールを世界に示すべきです。 日本は既に「大国」であり、かつて米国が役割を担って来たように、大国の「ノブレス・オブリージュ(高貴なるものの義務)」として、開国の重みに耐え、自国の繁栄のみならず、他国の危機を救ったり、新興国を育てていく責務があると考えます。 そのためには、日本経済は、もう一段の付加価値を高め、今こそ、「智恵による立国」を成し遂げるべきであります。(文責・佐々木勝浩) TPP:日本は国家戦略を描き、イノベーションを成し遂げよ! 2011.11.12 11日、野田首相が記者会見を行い「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と表明、ハワイで開かれているAPEC閣僚会議で、日本はTPP参加方針を表明しました。 これを受けて、幸福実現党はついき秀学党首より「野田首相のTPP交渉参加表明を受けて」という声明を発表致しました。 ⇒http://www.hr-party.jp/new/2011/14151.html 国内からは「TPP参加表明」は「見切り発射」だと批判され、民主党内における意見集約も不十分、国会における承認も無く、国民の理解も得られぬまま、戦略無き方針が発表されたと言えます。 ついき党首の声明にも、「我が党はTPP交渉参加を是とするものだが、閣僚の中には首相の会見を参加表明ではないとの認識を示す者もいるなど、政権内で合意形成が十分になされておらず、交渉参加に向けた政府・与党の態勢作りには疑念を抱かざるを得ない」と懸念を表明しています。 TPP交渉参加が「亡国への道」に至るのか、さらなる「繁栄への道」を切り拓く導きとなるのか。結局のところ、今後の政府の「交渉力」「外交力」にかかっていると言えます。 【国家戦略を描き、政官民一体となって実現せよ!】 外交文書を紐解くと、1994年「APECボゴール宣言」で「APEC経済間の経済発展段階の違いを考慮に入れ、先進工業経済は遅くとも2010年までに、また、開発途上経済は遅くとも2020年までに自由で開かれた貿易及び投資という目標を達成する」(外務省HP)との合意をしています。 しかし、「ボゴール宣言」より既に17年が経過しておりながら、自由貿易に向けた日本の経済戦略や国際戦略はどうだったのでしょうか?全く機能していない国会、政治家の不作為が浮かび上がってきます。 また、世界各国は「政・官・民」が一致して世界シェア獲得のために鎬を削っていますが、日本は各企業の孤軍奮闘で厳しい努力が続いています。 例えば、リニア新幹線はJR東海だけで行っているプロジェクトですが、政官民一体となれば新産業を育成することになり、社会インフラとして輸出産業とすることが出来ます。貿易自由化の中で、もっと創造的な政治判断が求められることになります。 さらに、TPPは単なる通商条約としての経済連携ではなく、社会基盤となる医療や訴訟等も含める法的枠組みを提供し、国家的・社会的に強固な関係となる条約である以上、国家戦略が不可欠です。 TPP反対派が言うように、確かにTPPは食品安全基準や公的医療制度への影響など、問題点も多々見受けられます。これらも、政府がどのように交渉を進めていくか、そして、国内政策による中和をいかにして成し遂げるか、政府の交渉力と構想力が試されます。 今後、自由貿易の流れの中で、世界的分業における日本が果たすべき役割は、世界最先端技術をさらに高度化する挑戦であり、創造開発することにあります。 「TPPは国内の雇用を失わせる」という批判も根強くありますが、そうならないためにも、発展途上国の労働者との差別化を図るべく、国内雇用者の付加価値と生産性を高めるための高等・大学教育の改革も急務です。 また、新産業の技術開発における要となる航空・宇宙・軍需産業の育成、前提となる「武器輸出禁止三原則の撤廃」など、自由貿易における繁栄実現への体制づくりが必要となるでしょう。防衛産業なども自由貿易が進めば、成長産業の一つとなることは間違いありません。 国益を実現するのであれば、単なる交渉参加では終わることなく、日本が繁栄するための「国家戦略」を打ち立て、その実現に向けた大きな社会変革を伴うイノベーションを断行していくべきです。 そのような構想力無くして、自由貿易の時代に国富を増やしていくことは出来ないでしょう。 【国民の意識変革とイノベーション】 そして、最後に申し上げたいことはTPP交渉参加に伴い、日本人に求められる意識変革です。 日本は押しも押されもせぬ「大国」であり、「他国を救う力」があるにもかかわらず、私たち日本人には未だ「発展途上国意識」が残っていると言わざるを得ません。 中国や発展途上国の追い上げにより、フローの統計の相対的地位は下がっても、日本が「経済大国」であり、ストックとして巨大な国力を有していることに何ら変わりません。 2010年末までの日本の企業や政府、個人投資家が海外に持つ資産から負債を差し引いた対外純資産は、円高などの影響を受け、前年比5.5%減の251兆4950億円となり、2010年末の時点で、日本は20年連続で「世界一の債権国」となっています。 幸福実現党は「日本はギリシャの経済危機を救うべき」と提言していますが、ギリシャのGDPは、現在の為替レートで23兆円程度に過ぎません。東京都のGDP(約90兆円)は言うに及ばず、大阪府(約39兆円)や愛知県(約35兆円)のGDPをも下回っています。 日本は一都市が一国を上回る程の「巨体」となっており、「他国を救う力」を既に有しているのです。 また、超円高が続くトレンドも変わらないでしょう。日本は超円高を好機として、往年のアメリカのように、世界中からもっと輸入し、世界の経済危機を救うと共に、下位国のためにも、もっとモノを買って上げて、世界経済を牽引すべきです。 それが「世界のリーダー国家」としての役割であり、使命でもあります。 「保護貿易」は発展途上国の国家戦略であり、「一国平和主義」の経済版に過ぎません。いつまでも「保護貿易」「輸出依存」では、世界の「リーダー国家」にはなれません。 日本は「大国」として、「開国の重み」に耐え抜き、これを好機として、国民の総力によって、もう一段の高付加価値産業へのシフトを成し遂げ、今こそ、「世界のリーダー国家」に向けたイノベーションをなしていくべきです。(文責・小川俊介) アメリカの国防戦略の変化を見極めよ! 2011.11.11 昨日のHRPニュースファイルに、矢内筆勝局長の「『日米安保破棄」の危機!?」が掲載されました。極めて重要な問題提起です。 では、果たして、実際に日米同盟は破棄される危険があるのでしょうか?この件について、もう少し考察してみたいと思います。 そもそも、なぜ、今、アメリカはアジア太平洋政策を見直そうとしてるのでしょうか? その理由は「米国防費大幅削減の危機―迫られる日本の『自主防衛』強化」にも書きましたが、米国の財政問題に起因して国防予算が大幅削減される危険があり、その中で、米軍は国家安全保障政策全体を見直さざるを得なくなっているのが主な原因です。 では、国防予算の大幅削減が現実となった場合、日米安保は破棄され、米軍は撤退していくのでしょうか? まず、短期的には日米安全保障条約が破棄されることは無いと考えます。 アメリカのアジア太平洋政策は、海洋戦略上は日本とフィリピンに大きく依存して来ました。これは大型空母が着岸できる整備された良港であり、保有が確立された海軍拠点が横須賀海軍基地とスービック海軍基地の2ヶ所しかないためです。 特に、1991年にフィリピンのスービック海軍基地から米海軍が撤退した後は、アジア太平洋の海軍拠点は日本の横須賀海軍基地のみとなりました。 21世紀初頭から本格的に開始された米軍再編(トランスフォーメーション)に際しても、普天間基地の返還等は予定されていても、基本的な日本の位置付けは変わっていません。 現在、原子力空母は太平洋両岸、つまり日本の横須賀とアメリカのノーフォークを中心として常時2隻以上が配置についています。 太平洋上の危機に対して、横須賀の空母ジョージ・ワシントンが初動を行い、ノーフォークの空母が増援にかかるというのが当面の戦略であり、日米安保が運用の基軸となっています。 では、昨日のHRPニュースファイルにありましたように、アメリカ海軍の基地をオーストラリアに移すべきとする見解はどこから生まれているのでしょうか? これは「撤退」というより、アメリカ軍の対中新戦略である「統合エアシーバトル構想(空海戦闘)」の一環であると考えられます。 この構想は、2010年2月に公表された「4年ごとの国防計画見直し(QDR2010)」に掲げられた取り組みの具体化であり、中国の「接近阻止/領域拒否(A2/AD戦略)」に対抗した戦略です。 これはシンプルに言えば、今までの直接的な戦いから、遠距離での撃ち合いに変化していく構想であり、米軍がトランスフォーメーションにより、部隊編成や基地の配置を変えている一環でもあります。 「QDR2010」にも明記されているように、アメリカが本戦略を展開をしていくためには、有力な同盟国の助けを必要としています。 米国にとって西太平洋は最も重要な戦略地域であり、この地域の覇権争いに中国が台頭している現在、米国にとっては日本は重要なパートナーであり続けます。 むしろ、日米同盟が破綻する可能性があるとすれば、民主党政権による普天間基地移設問題の白紙撤回など、日本政治や外交の迷走が原因となって破裂する可能性を危惧すべきです。 政府には今、日本が置かれている国際的戦略環境を正しく認識して、国防戦略を立案し、強固な日米同盟を構築していく構想力と実行力が求められているのです。(文責・黒川白雲) すべてを表示する « Previous 1 2 3 Next »