Home/ 財政・税制 財政・税制 マイナンバーの「のぞき」政策化に歯止めを 2015.10.22 文/幸福実現党・青年局部長 兼 HS政経塾部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ ◆分かりにくいマイナンバー制度の現状 マイナンバー通知カードが11月末までに、不在宅を除いて全世帯に送付される段取りで動いており、私たちの身近なものとなりつつあります。 マイナンバーを取り上げる番組も増えている一方で、「結局、何が決まっていて、何が決まっていないのか」がさっぱり分からないという声も多いのではないでしょうか。 ◆今、決まっていること まず、現状を整理します。 来年2016年1月からは、税金関係と雇用保険関係の処理にしかマイナンバーは利用されません。 社会保障の分野で使用されるのは、2017年からとなります。徐々にスタートしながら、情報連携の環境を整えていくスケジュールです。 ◆まだ、決まっていないこと 口座情報がいつでも監視されかねない「銀行口座とのマイナンバーのひも付き化」、「医療分野での利用」については、あくまで検討している段階で、まだ決まっていません。 マイナンバーの便利さのみを強調して、「まだ決まっていないこと」を、あたかも既定路線のように説明する報道がありますが、これには注意が必要です。マイナンバーの使用範囲拡大を、知らないうちに進めてしまうことになるからです。 ◆マイナンバーの利用範囲拡大が怖い理由 マイナンバー制度の懸念点は、利用が公的分野に限られる既存の「住基カード」と異なり、金融機関など民間にも拡大する可能性があることです。 要するに、私たちの生活を、国が「のぞける」状態になることです。 「のぞいて」、それから国民生活に「規制」を課すことができるようになります。また、いくら罰則を強めても個人情報は流出したらもう元には戻せません。 脱税を防止するという意味でマイナンバー制度を進めるべきという意見もありますが、国民を信頼しない発想の先にあるのは、コストばかりかかる窮屈な監視社会です。 ちなみに中国では、拡大する軍拡による国防費よりも、治安対策などに充てる公共安全費のほうが上回っています(2013年公表情報。2014年以降は公共安全費の予算総額は未公表)。 ◆一体、誰が得するのか? マイナンバー制度の導入で行政効率化を目指すのであれば、例えば、その分、人件費等の行政コスト削減目標も合わせて国民に説明するべきだと思います。 最近でも、公募したマイナンバー関連事業の受注に、便宜を図る見返りに現金を受け取ったとして、収賄容疑で厚生労働省の職員が逮捕されるという事件が起きています。 税金を使って、どのような恩恵を国民は受けられるのかも不透明です。 ◆もっと前向きな投資を 8パーセントへの消費税増税以降、明らかに景気が腰折れしている中、TPP交渉の大筋合意した内容も明らかになり、日本経済の活性化に期待がかかります。 ただ、日本経済全体から見れば、輸出入の依存度はそれぞれ1割程度で、日本経済全体を元気にするためには、より抜本的な国内経済へのテコ入れが不可欠です。 そもそも論になりますが、行政効率が上がっても国民の個人情報漏えいリスクが上がる事業に数千億円かけるよりも、富を産む方向で民間投資の呼び水となる産業への投資を考える方が、国民への恩恵は大きいのではないでしょうか。 ◆「のぞき」政策化を止めるためにできること マイナンバー制度には「これから決めること」が多いため、私たちにできることがまだ残されています。 まずは、「マイナンバーの民間利用拡大の呼びかけを控えるよう行政側(政府)に求める」ことです。 行政側の呼びかけに応じて、サービスをマイナンバーと絡めて行う民間会社も増えるので、そうした呼びかけをしないように求めること。 そして、「口座情報とマイナンバーのひも付き化の義務化」等に必要な法改正をストップする機運を高め、法改正できない状況を創ることです。 国民を疑う監視社会ではなく、国民を信頼する自由で活力ある日本とするためにも、マイナンバーの「のぞき」政策化には歯止めをかけるべきです。 固定資産税制を考える【その4】 2015.10.07 文:HS政経塾第2期卒塾生 曽我周作 これまで『固定資産税制を考える』として、固定資産税の現状と問題だと考えられる点について述べさせていただきました。 今回は、このテーマの最終回として、固定資産税制度について、減税の方向での提案をさせていただきたいと思います。 ◆固定資産税のあり方を立法上明確にすべき そもそも固定資産税は、その課税根拠等が極めてあいまいであり、担税力も十分には考慮されていないと考えられることなど、見直していくべきだと思います。 現在は、通達によって地価公示価格の7割が課税標準の目途となっていますが、それが地方税法上の「適切な時価かどうか」は、「立法上」明確にされていません。 「わが国の固定資産税についても、この課税標準の明確化を立法上どのようにして達成するかが最大の課題」(『土地と課税』p521)という指摘もされるところであります。 本来これは国としての当然の責務ではないでしょうか。 したがって、まず、課税標準を定めなければなりませんが、そのためには、そもそもこの固定資産税という税金は何に担税力をみて課税するのかをはっきりさせるべきです。 1990年(平成2年)の土地税制基本答申では、「固定資産税については、保有の継続を前提として、資産の使用収益しうる価値に応じて、毎年経常的に負担を求めることから、「土地の使用収益価格(収益還元価格)」をあるべき「適正な時価」」としました。 基本的には土地に対する固定資産税を徴収するならば、それはその土地の「収益力」に担税力を見出すのが適当ではないでしょうか。 全国に公平に適用される課税基準を立法で明確に規定したうえで、固定資産税は地方税ですので、ある程度地方によって税率を自由に設定できるようにしてもよいと思います。 ただし、税収確保のためとして高すぎる税率を設定できるようにすべきではありません。 ◆2020東京オリンピックに向けて その上で、まずは短期的に2020年東京オリンピック開催に向けて、再開発等の投資を促進するためにも「建物固定資産税の減税」と「償却資産にかかる固定資産税の撤廃」、を提案したいと思います。 そもそも、前回指摘したように、立法行為を経ずに実質的な負担割合が引き上げられた固定資産税であるならば、減税を考えるのは当然ではないでしょうか。 その中でも、償却資産に対する課税の減税については経済産業省からも要望が出ています。 「平成24年度税制改正(地方税)要望事項」において「事業用資産に対する課税は国際的にも稀」と指摘しているとおり、そもそも課税される事自体が稀な税であるがゆえに、それが日本の国際競争力を削ぐ原因になっているのではないでしょうか。 経済産業省は「東日本大震災と急激な円高を契機に、産業空洞化とそれによる雇用喪失の懸念が強まっており、国内の企業立地の環境改善が急務。 このため、償却資産に対する固定資産税のあり方を見直し、新規設備投資を促進し、産業空洞化を防止する」と、政策理由をあげた上で、「『機械及び装置』ついて、新規設備投資分を非課税とすること」と「『機械及び装置』について、評価額の最低限度(5%部分)を段階的に廃止すること」を要望としてあげています。 対して、全国知事会は、2013年9月27日の「消費税率引上げに係る経済対策に関する要望・提案」において「償却資産に係る固定資産税については、償却資産の保有と市町村の行政サービスとの受益関係に着目して課するものとして定着しているものである。国の経済対策のために、創意工夫により地域活性化に取り組んでいる市町村の貴重な自主税源を奪うようなことはすべきでなく、現行制度を堅持されたい」として、経済産業省の要望に対して反対しています。 しかし、事業用資産は付加価値創造のための元手にあたるものになります。 したがって、ここに税金をかけることは経済活動を阻害する要因になります。そして、そもそも利益の元手に税金をかけるべきではないと考えます。 そして、全国知事会は「償却資産の保有と市町村の行政サービスとの受益関係」を言いますが、その行政サービスが何にあたるのか、全くはっきりしません。 全国知事会は、もし本当に、この「海外ではほとんど税金がかけられることのない、事業用資産の所有」に、日本だけ税金をかけなければならない理由があるのなら、具体的にあげるべきです。 全国知事会の意見は、税収確保のための言い訳であるとしか考えられないと思います。 私からの提案としては、そもそも事業用資産(償却資産)への課税は、課税根拠が極めて不明確であり、経済成長の阻害要因であると考えられるため、「これを撤廃すべきである」というものです。 そして国際競争力を伸ばし、企業の海外流出を食い止め、国内に生産拠点の回帰を図り、更に海外からの投資、および国内からの投資を促進し、大きく経済成長につなげていくべきであると思います。 ◆消費増税から落ち込んだ景気を減税で立て直し、未来都市建設も進めよう さらに、建物固定資産税は少なくとも思い切った減税をすべきだと思います。2020年オリンピック開催までの建設投資が促進されやすい時期に、思い切った投資促進政策を実施すべきではないかと思います。 特に2014年(平成26年)4月には消費増税も実施されたため、消費も落ち込み、2015年9月8日の内閣府からの発表でも4-6月期のGDPがマイナス成長に落ち込んでいます。 民間の最終消費支出は0.7%のマイナス、民間の設備投資も0.9%のマイナスです。 国外の要因もあるとはいえ、消費増税後に落ち込んだ景気を素早く回復させ、更に伸ばしていくためには、今こそ大胆な減税が必要です。 もちろん、我が党が主張してきたように消費税を5%に戻すことは非常に効果が高いものと考えますし、法人税減税等も議論が進むかもしれません。 ただ、私からはさらに、日本全国の都市の発展、そして2020年に向けて東京をさらに素晴らしく、世界で戦える魅力的な未来都市にしていきたいという観点から、償却資産の固定資産税撤廃、および、建物固定資産税の減税を提案したいと思います。 「自由」から観たマイナンバー制度の考察 2015.10.06 文/HS政経塾5期生 水野善丈 ◆マイナンバーの手続き開始 いよいよ10月よりマイナンバー法が施行され、来年2016年1月よりマイナンバー制度の運用がはじまります。 全ての国民・企業に関わる重要な制度ですが、その内容を理解している人は少ないのが現状です。 今回は、「自由」という観点からマイナンバー制度がどのようなものなのかを考察し、「自由」というものの大切さを改めて感じて頂けたら幸いです。 ◆マイナンバー制度で見込まれる拡大利用 そもそもマイナンバー制度とは、国民一人ひとりに番号を割り当て、個人情報を役所が一元化するもののことを言います。 現在政府は「社会保障」「税」「防災」の目的のもと利用するとしていますが、すでに利用範囲拡大は見込まれています。 例えば、9月に成立した改正法では、2018年から本人の任意のもと「銀行口座」の情報と番号を結びつけることが決められ、さらに2021年を目度に、銀行口座への結びつけを強制する方向も検討しています。 このように政府が国民の私有財産まで把握しようとするところまですでに考えられているのです。 ◆ 「社会保障と税の一体改革」による課税強化の補強のためのマイナンバー制度 その背景にあるのが、政治家や財務省・国税庁が考える「社会保障の財源を確保する為に国民から税金を取れるだけとる」という考え方です。 例えば、今年に入ってからも、国税庁の富裕層への課税取り締まりは強化されており、1月には所得税や相続税の最高税率を引き上げ、7月には有価証券1億円以上の保有者の海外移住による課税逃れを防ぐ「出国税」も導入されました。 しかし、そもそもこうした流れは、国内の富裕層への自由を奪う課税だけでなく、増税という景気を悪化させながらも税収が増えない政策であり、社会保障の財源も得られず、根本的な解決は考えられていないことが分かります。 つまり、「国民からいかに税金を取るか」という視点しかなく「いかに無駄なく税金を使うか」といったところの政府の改善は考えられておらず、ただ国民の負担を求める姿勢が顕著に表れています。 こうした姿勢の中には、国民の血税である税金を当たり前に国民から取れるものと軽んじて考えられているのもうかがえます。 ◆導入コストに対するメリットの低さ〜企業にとっては「労務」という「増税」〜 また、3000億円以上の税金を投入して取り入れるマイナンバー制度でありながら国民へのメリットは「あらゆる手続きの簡易化」しかないのも問題です。 それだけでなく、企業にとってはマイナンバー導入そのものが負担でしかありません。 一番の負担となるのが、情報漏洩による厳しい罰則が企業に課せられており、各企業に従業員のマイナンバーの情報管理が任されているところです。 たとえば、全国に1万点以上ある大手コンビニエンスストアとなると、バイトも含め20万件以上の膨大なデータを管理しなくてはなりません。 こうした状況を見るにつけても、日本の99.7%を占める中小企業にとっては、セキュリティ管理ができず、倒産の危険性をはらんでくる企業も出てくるでしょう。 つまり、マイナンバー制度自体、企業にとっては「労務」という新たな「増税」になっているのです。 ◆マイナンバー制度の本質〜監視管理型社会への道〜 以上のことからも、マイナンバー制度は、「国民の自由」を代償に政府を中心とする国、社会主義的な「監視管理型社会」への一歩が踏み出されたものと見えます。 そのため幸福実現党は、マイナンバー制度を受けて、5つの問題点を発表しています。 「実は危険! 「マイナンバー制度」5つの問題点~情報流出リスクが高く、国家による監視社会を招く~ 」 http://info.hr-party.jp/2015/4709/ ◆自由への選択、そして繁栄へ〜選択の豊富さこそ経済成長への道〜 「自由」は選択の豊富さを与え、それが真の発展・繁栄へと導くものだと信じます。 マイナンバー制度導入により考えられている私有財産の監視・コントロールといったものは、逆にこの国から富を奪い逃すものです。 人それぞれに与えられた天性や仏性というものを、選択の豊富さ、自由の中で成長させていくことこそ、この国がより豊かになっていく道であります。 国民のこうした自由を奪うマイナンバー制度に対しては、動向を見ながら今後とも警鐘を鳴らしていかなければなりません。 この国が真に自由からの繁栄を実現することを止みません。 欺瞞に満ちた「安心の社会保障」 2015.09.30 文/幸福実現党・千葉県本部副代表 古川裕三 ◆支持率回復を狙った「新・三本の矢」 先般、安倍総理は、アベノミクスの第二ステージとして、(1)希望を生み出す強い経済、(2)夢を紡ぐ子育て支援、(3)安心につながる社会保障を謳った「新三本の矢」を発表し、具体的には、(1)GDP600兆円、(2)出生率1.8、(3)介護離職ゼロなどを掲げました。 特に(2)と(3)に社会保障の充実がうたわれていることをみてもわかるとおり、国民の生活重視の路線を強調し、安保法制の成立後の支持率回復と、来年の参院選を意識した内容となっています。 なお、8%→10%への消費増税についても、17年4月の予定通り実施するとしていますが、これは、子育て支援も社会保障も、10%への消費増税が前提であるということであり、逆に言えば、「社会保障」という大義のもと、「人命」を人質に取り、誰も反対できなくさせているわけです。 ◆滞納額ワーストの消費税 ちなみに、国税庁の発表によると平成26年における消費税の新規発生滞納額が、前年度比117.1%の3294億円で、全税目の55.7%を占め、例年同様に税目別滞納額でワーストでした。 消費税率が5%から8%に引き上げられたことで、消費税の新規滞納発生額が480億円も増えました。この結果をみても、例年、滞納額がワーストであるという状況を鑑みても、やはり消費税は減税していくべきではないでしょうか。 8%への増税後、滞納額が新規で増えたということは、事業の存続のために、滞納せざるを得ない中小零細企業が増えたということです。 法人税と違い、消費税は赤字であっても納めなければなりませんから、消費増税によって売り上げが落ちた企業、特に中小零細企業の事業者は自腹を切って納めているのが現状です。 今後の倒産件数や失業者の増加、またそれに伴う自殺者数の増加が懸念されます。 ◆アダム・スミスの徴税の原則 そもそも、国民の資本、生産手段など、経済活動の元手にあたるものに対して税金をかけることは徴税の原則から外れることを経済学の父、アダム・スミスは『国富論』の中で指摘しています。 つまり、木になった果実、その実りの一部を税として納めてもらうことが原則で、元手であるリンゴの木の枝をへし、折って納めてもらったり、木の幹を削ったりしてはならないということです。 元手である木が傷ついてしまったら、果実を生み出す力がなくなってしまうからです。 その意味で、消費税は、消費活動そのものを妨害するマイナス効果しかありません。企業の売り上げ、利益を減らし、果実を生み出す力を削ぎ落していきます。 消費税は、生産者から消費者に商品が届くまでの流通過程の全てに課せられるハードルのようなものであり、このハードルの高さが増税によって上がっているのです。 さらに、消費税は、逆進性が強く、低所得者ほど負担が重いという意味で消費者いじめの税金であり、日本経済を支える中小企業に大打撃を与える税金なのです。 本当の意味で、国民の立場に立って「安心の社会保障」を謳うのであれば、消費減税こそが、有効な政策手段であるはずです。 減税を通じて個人の経済力を上げ、自立した個人を増やしていくことが、膨張し続ける社会保障費を抑えていくことにもなるのです。 ◆欺瞞に満ちた「安心の社会保障」に騙されないために 今回の「新・三本の矢」の政策において、民をいじめる消費増税を表明した一方で「安心の社会保障」を謳うとは、国民を欺いていると言わざるをえません。 日本のGDPの約6割を占める消費を冷え込ませる消費増税を宣言しておきながら、GDP600兆円を目指すとする政策は矛盾しています。消費増税は、GDPを減らすのです。 世界一の経済大国であるアメリカも、逆進性があり、物価を上昇させ、行政上のコストがかかる、などの理由から国家としては付加価値税(消費税)を導入していません。 消費大国であるアメリカは、消費の大敵である消費税の威力をよくわかっている、というべきでしょう。 アメリカのように、個人消費を増やして経済成長を実現していく路線を日本もとるべきであり、その意味で、消費減税が起爆剤となるはずです。 幸福実現党は、国民の経済的自由を守る砦として、消費減税を訴え続けてまいります。 世界経済の安定には「成長産業」が必要! 2015.09.29 文/HS政経塾第5期生 表なつこ ◆原油安で混乱する国際経済情勢 中国の景気減速によって、投資家の真理が冷え込みこれまで需要が見込めると思われていた原油価格が暴落しています。中東のみならず世界の原油産出国の景気も悪化させ始めています。 他方、原油安は日本にとってはメリットがあります。日本は世界第3位の原油消費国、世界最大のLNG輸入国であるため、原油価格の安さは貿易収支の改善などに寄与します。ガソリン代や電気料金の下落にもつながります。 その反面で石油の元売り業など資源ビジネスには苦境となります。 また、短期的にはメリットがあるものの、原油安が長期化すれば、投資の減少によって石油生産量が減ることが考えられます。 石油開発は、探鉱から生産まで3~5年ほどかかるため、開発が停滞すれば5~10年後に供給が不足して、油価が高騰する危険性もあるのです。このように、原油安は世界を混乱させる可能性を含んだものです。 ◆消費が低迷していては国内経済の成長も見込めない 安倍総理は9月24日の記者会見で、GDP(国内総生産)を600兆円に行き上げることを今後の目標に掲げました。ですが、9月8日発表の2015年4~6月木の実質GDPは、3四半期ぶりのマイナス成長となっています。 この原因は、輸出の悪化と個人消費の減少が原因だと言われています。輸出の悪化は、中国経済の成長鈍化という外部要因が強いため、ある意味仕方がないと言えますが、GDPの6割を占めている個人消費が低迷していることは不安材料です。 ここを改善しない限り、GDP600兆円は実現できないでしょう。 GDP公表後に出された各シンクタンクの見通しでは、7~9月のGDPはプラス成長に転じるという予測が主流ですが、日本総合研究所の枩村秀樹氏の観測によると、これは猛暑効果やプレミアム付き商品の使用によるもので、消費の押し上げ効果はわずかであり一過性のものだと指摘されています。 さらに、食品や身の回り品など家計に身近な品目は値上がりしており、内閣府の調査では家計の85%が1年後に物価が上昇すると予測しています(9月26日の日経新聞)。消費税10%への再増税の問題などもあります。 値上がりと合わせて所得も増えているなら問題ありませんが、所得が上がらないなか物価がさらに上昇すると考える人が増えれば、節約志向が強くなり消費が低迷することは明らかです。 アベノミクス開始以降、名目上の所得は上昇していますが、物価の上昇を上回っていないため、実質の所得はまったく増加していません。 先述の枩村氏は、「景気回復の恩恵は家計部門には全く波及しておらず、ここで好循環のメカニズムが途切れてしまっている」と指摘しています。これは、幸福実現党がアベノミクスは失敗すると主張していた通りの内容です。 個人消費を回復させるには、国内産業を活性化させ企業が利益を上げ、それによって雇用者の賃金上昇を実現させる必要があるでしょう。 翻って日本の産業界を見てみると、中小企業の多くが、電気料金が上がってもその値上がり分を価格に転嫁できず、人件費削減などで対応しています。 電気料金は、「燃料費調達制度」で原油などの輸入費用が電気料金に転換される仕組みで、電気の使用者も燃料の輸入代を負担しています。 現時点では原油価格は安くなっており日本にはメリットもありますが、長期的に見ると原油価格は上昇し続けてきたもので、さらに国際情勢の変化に応じて乱高下する不安定なものです。 ◆変動する経済環境に合わせて何が必要か考えよう! 電気料金の安定化には、原発の早期再稼働が有効です。また放射線を無効化する技術や使用済み核燃料を再利用する技術の実用化などは、人類が必要とする成長産業だといえるでしょう。 日本は、国内の可処分所得を増やし、消費拡大によってGDPを成長させ、新たな成長産業を創っていくべきです。 日本の成長産業が新たなパイを創出することによって、世界の経済的混乱も収束させることができるよう、大きな志で成長産業の育成を訴えていきたいと思います。 固定資産税制を考える【その3】 2015.08.26 文:HS政経塾第2期卒塾生 曽我周作 ◆負担の増加した固定資産税 現在の地価公示価格平均は、ほぼ1985年時点の水準と同等です。消費者物価でみると、現在は1985年当時よりも約1割上昇しているため、地価がいかに下落したかがわかります。 ただ、一方固定資産税の税収は1985年(昭和60年)では4.2兆円で、2011年(平成23年)では約8.9兆円になっており倍以上に増えています。 このような地価の下落が目立つ中、固定資産税の税収は2倍以上に上昇するという現象が起きたのは、負担率が上昇したからにほかなりません。 ◆資産デフレに拍車をかけた自治事務次官通達 1990年代前半は、バブル潰しから、さらに資産デフレを悪化させる政策をとり続けた時代でした。 1992年(平成4年)1月22日付で「固定資産評価基準の取扱についての依命通達の一部改正」(自治事務次官通達)が各都道府県知事あてに出されました。 そこで「地価公示価格、都道府県地価調査価格および鑑定評価額を活用することとし、「これらの価格の一定割合(当分のあいだこの割合を7割程度とする)を目途とすること」と明示」されました。 自治大臣書簡【1992年平成4年)11月17日付】では「今回の固定資産税の見直しは、土地評価の均衡化・適正化をはかることが目的であり増税を目的とするものではない」とし、地方団体に対しても「固定資産税の評価替えと税負担」というパンフレットを送付し「平成6年の評価替えは、基本的に評価の均衡化・適正化を図ることが目的であり、これによって増税を図ろうとするものでありません」としていますが、結果的は大増税となりました。 この1994年(平成6年)の評価替えでは「これによる指定市の基準地価格の調整結果は、47指定市の基準値の平均上昇は3.02倍、全国加重平均で3.96倍」になり、「三大都市圏平均で3.272倍、地方圏平均で2.96倍と大都市圏の上昇割合が大きなものとなり、特に東京都の上昇割合は、4.65倍」(『都市と課税』p261)となりました。 1994年(平成6年)ということは、既に地価はみるみる減少し、資産価値の崩壊が起きている中で、結果として大増税を「事務次官通達」で決定してしまいました。 ◆立法を経ない増税は憲法違反では? このような通達で課税標準を変更し、結果的に大幅な増税をすることになったのは、「憲法84条の定める租税法律主義に違反している可能性がある」と学説でも指摘されているところです。 (参考) 日本国憲法 第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。 結局、その後2005年(平成17年)まで地価は下落しつづけました。 大蔵省の通達といい、この自治省の通達といい、国民から選ばれた国会議員による立法を経ることなく重要な国の行方を左右し、結果的に長い大きな不況をつくりだしてしまいました。 このような、一方的で法律の手続きすらも経ない「通達」によって国民負担を増加させ、経済に悪影響を及ぼすようなことをするのは厳に慎むべきであり、本来ならば厳しく責任を問われなければならないのではないでしょうか。 さらに、1994年(平成6年)に通達が出される以前から地価は大幅な下落を示しており、資産価値下落に苦しむ人も多く、景気も明らかに不景気の状態にあり、建設需要も大きく下落する中で税収だけを大幅に引き上げる、実施的な大増税を行ったことは明らかな間違いであったといえるでしょう。 そもそも地価がほぼ同等であった1985年(昭和60年)に比べて固定資産税の税収が倍以上になっている事自体が異常であるといえるのではないでしょうか。 やはり、税金については立法を経て課税の基準が明示され、その課税に変化が生じる場合も立法行為を経たうえで行われるべきであると思います。 このように立法を経ずに行われた増税については、もう一度見直しをかけ、しかるべき手続きを経る必要があると思います。 そして、投資を妨げる税金のあり方を変え、投資をしやすい土地税制を目指していくべきだと思います。 次回は「固定資産税制を考える」の最後として、いかにこの税制を変えていくべきかを考えてみたいと思います。 財務省も知っていた「フラットタックスで税収が増える」 2015.08.07 文/幸福実現党・政務調査会チーフ 小鮒将人 ◆全国で「減税」セミナー開催中! 現在、大川裕太政務本部活動推進参謀の著書である「幸福実現党テーマ別政策集2『減税』」のセミナーを全国各地で開催しています。 幸福実現党テーマ別政策集2「減税」 https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1442 「減税」は、2009年の立党時からの、党の主要政策の一つです。 同セミナーは、「大変わかりやすい」、と好評を頂いています。ご関心のある方は、幸福実現党本部までお問い合わせください。 ◆消費増税は、海外で「アベノミクス失敗」との報道 さて、2014年4月、私たちの訴えとは反対に、自民・民主・公明三党の合意に基づき、消費増税が強行され、結果として、名目GDPが2期(2014年4月~6月、2014年7月~9月)連続マイナス成長という結果となりました。 さらに、今年に入っても厳しい経済状況は続いており、8月17日公表予定の2015年4月~6月期のGDPについても、多くのエコノミストが前期比マイナス成長を予想しております。 当初、政府・財務省は、ここまで厳しい結果になることは予想しておりませんでした。 海外では、2期連続のマイナス成長は、「景気後退」とみなされ、昨年末、「アベノミクス失敗」とはっきり報道されたのです。 国内でも大きな議論になるべきでしたが、衆院解散・総選挙の混乱と、時を同じくして、日銀による更なる金融緩和による株高が重なり、本来行われるべき議論がなされないまま現在に至っています。 ◆「フラットタックス」で税収が増えるのはなぜ? そうした現在であるからこそ、「減税」が必要であるわけですが、上記の「減税セミナー」では、興味深い話を取り上げています。それが「フラットタックス」です。 『段階的な累進課税を廃止し、フラットタックスを導入すると、税収が増え、経済成長率が上がる、ということは実際に証明されています。』(テーマ別政策集「減税」80ページ) 現在、多くの先進国は「累進課税」を採用しています。 これは、所得が高くなるほど税率が上がるものです。最初は「戦費調達のための一時的なもの」として、各国で導入されたものでありますが、第2次大戦戦争終了後にも、日本をはじめとする多くの国家で継続しています。 「累進課税」は、所得の多い人ほど高い「税率」を課されるというもので、我が国では、年間4,000万以上の所得の方で最高税率45%となっております。 高額所得者にとって、およそ半分が税金で取られてしまうというのは、普通は納得ができないはずです。 そこで、多くの富裕層は、節税に走ります。税理士は、そうした節税対策の相談役としても存在しているのです。 この現状について、渡部昇一上智大学名誉教授は、日本の優秀な頭脳がマイナスの方向のために働くことで、無駄なエネルギーを使っていると述べています。 実際、富裕層にとっても、節税対策が業務の何割かを占める事になるのです。実にもったいない話です。 ◆大蔵省(現財務省)高官は「一律7%で充分」と語る 一方、「フラットタックス」は、原則全ての所得税を同じ税率にするものです。当然、富裕層にとっては「減税」、しかも大幅な減税となるのです。 その結果、「節税」を行う必要がなくなり、本来徴収すべき税金を徴集することができるのです。これは、納税者、国家、両者に対してウィンウィンの関係になります。 すでにロシアではプーチン大統領の主導によるフラットタックスを実施しています。従来は12%、20%、30%の累進課税制度であった税制を一律13%としたところ、税収増を達成しました。 また、東欧各国でもロシアの成功を見て続々とフラットタックスを導入しています。 そして、驚く事に財務省は、フラットタックスになると税収が増える事を認識しています。 渡部昇一氏の著書(「歴史の鉄則」208頁)には、大蔵省(現財務省)主税局の高官の話として「フラットタックスになった場合、一律7%で充分」と明記されています。 確かに、今まで45%の税率で税金を納めていたのが7%でよいのならば、節税対策は直ちにやめる事になるでしょう。 そうした事実を知っていながら、政府・財務省は、所得税の累進課税を継続しています。その大きな理由に「所得再配分」という社会主義的な思想があります。 本当に国民の幸福を考えるならば、まずは国家の繁栄を推し進める「減税」という方向を推進するべきであります。 今、消費増税反対の主張をしている共産党・社民党も同様に、社会主義的な考えに基づいて、所得税の累進課税・相続税の増税を推進しており、基本的には増税論者です。 我が幸福実現党のみが、減税による繁栄を求めているのです。 少なくとも、現在の日本にとって、減税はメリットが大きな政策で、税収を上げるには、減税により景気をよくすることが大切です。 幸福実現党は、今後も所得税をはじめとする各種税金の減税を訴え続けていきます。皆さまのご支援を頂きますよう、お願いいたします。 ギリシャ危機は終わらない。――根本解決に必要なこと 2015.07.29 文/幸福実現党埼玉県本部幹事長代理 HS政経塾2期卒塾生 川辺賢一 ◆ギリシャ危機は終わったか 今月23日、ギリシャ議会は増税や年金改革関連法案に加え、銀行の破綻処理手続き等を柱とする財政改革法案を可決。これにより、ギリシャはEUから求められていた金融支援の条件をクリアしました。 「ギリシャ危機の後退」を受け、世界の株式市場は高騰。2万円台を割り込んでいた日経平均株価も2万500円台まで回復しました。 では、これでギリシャ危機は終結に向ったのでしょうか。 確かに、労働人口の4分の1とも言われる公務員を抱え、早くて50代から年金受給が始まるギリシャ経済の現状は持続不可能であり、ドイツを始め、金融支援と引換えにギリシャに改革を求めるEU側の主張にも正当な点はあるでしょう。 しかし、若年層失業率が50%を超え、名目・実質共に一人当たりGDPがピーク時の4分の1も減少している状況で、増税を始め、さらなる緊縮政策が断行されれば、いっそう失業者が増大し、失業者救済のための公共支出が求められることが予想できます。 これでは、たとえEUが求める改革が断行されても、ギリシャ債務問題は深刻さを増すばかりか、EU支援に依存したギリシャはやがて国民の意思による予算決定、すなわち国民による主権行使が何一つできなくなるでしょう。 つまり、ギリシャとEUが現状、向っている未来は、かつて債務国であった東ドイツを債権国の西ドイツが吸収したとの同様、EUという第3者機関を通じた「ドイツのギリシャ吸収」、あるいは「ギリシャのEU直轄領化」です。 むろん、東ドイツと西ドイツの場合と異なり、言語も民族も異なる国家の統合は、常に破局の危機に晒され、その度に、日本も含め、世界経済は迷惑を蒙るでしょう。 では、ギリシャ危機の根本解決には本来、何が必要なのでしょうか。 ◆ギリシャに必要な改革 まず、「50代で退職したギリシャ人の生活を、どうしてドイツ人が税金で面倒を見なければならないのか」という率直なドイツ人の感覚は間違ってないでしょう。 かつて英国病とマーガレット・サッチャーが闘ったように、勤労意欲の低下したギリシャには労働組合の弱体化政策、国有資産の民営化、社会保障費の削減、行政のスリム化等といったドイツが求める改革の断行は一部不可欠であり、ギリシャは鉄の意志を持った指導者を選出しなければなりません。 しかし、同時に不可欠なのは、独自通貨の復活と通貨切り下げを通じたギリシャの国際競争力回復です。 現状、ギリシャは通貨切り下げではなく、デフレによって、つまりギリシャの製品・サービス、そして労働賃金が名目・実質共に、下落していくことを通じて、国際競争力を取り戻そうとしています。 ところが、統計上、あるいは直感的にも、名目上の賃金給与額が低下し続ける社会(デフレ下)で、景気回復や失業率の改善は不可能で、ギリシャは国際競争力の回復、つまり債務返済のために、失業率を増大させなければならないという、矛盾した状況に陥っているのです。 だから独自通貨の復活と通貨切下げが必要なのです。 もしもギリシャが独自通貨ドラクマの復活を決断すれば、通貨の切下げによって、ギリシャは自国の製品・サービス、また賃金給与の名目額を下落させることなく、対外的な競争力を取り戻すことができるのです。 実際、英国病からの脱却にはサッチャーによる改革だけでなく、ポンド危機による通貨切下げが必要でした。また97年通貨危機に見舞われた東アジア諸国においても、通貨の暴落自体が次の成長を後押ししました。 日本政府も世界経済のステークホルダーとして、ギリシャ問題をEUやIMFだけに任せるのではなく、意見を述べるべきです。 例えば日本政府には1兆ドルを超える外貨準備があり、その準備から一部融資することで、ギリシャの債務不履行を防ぐことができます。 日本はその見返りに、日本の改革案をギリシャに履行させ、また円建ての返済を求めることで、欧州における円国際化を進め、ギリシャ進出を足かせに欧州における人民元の国際化を企てる中国を牽制することもできます。 ◆緊縮財政と決別を 緊縮財政ではギリシャ問題の解決は難しいこと、そして根本解決に必要なことを述べて参りましたが、1930年代の大恐慌を経験した世界は、既に緊縮財政の間違いを痛い程、学んでいるはずなのです。 大恐慌以前の世界では、金と自国通貨の価値を連動させること、つまり金本位制がグローバル・スタンダードでした。 供給側に制限のある金を基準に貨幣を刷れば、貨幣の価値暴落はまぬがれ、世界経済は安定すると考えられていたのです。 ところが金本位制の下では、金の流通量、あるいは金の埋蔵量に世界の貨幣供給量が規定されるため、世界経済は成長しようとすればするほどに、デフレ、賃金の下落、景気悪化、結果的としての社会秩序の不安定化が進む構造となっていました。 そこで世界は金本位制と決別し、金ではなく、供給側に制限のない国債やその他債券・証券を担保に貨幣を発行するようになったのです。 金の価値は供給が制限されることで保たれますが、債券には供給側の制限がありません。ところが、たとえ新規債券が発行されても、人々の勤労により、新しい価値が付加されれば、債券の価値は保たれるのです。 緊縮財政の発想が世界経済の成長の足かせとなっています。これを乗り越えるために必要なのは、勤労によって富を増やすことができるという世界観です。 今こそ、私たちは緊縮財政と決別すべきなのです。 「コーポレートガバナンス強化策」の是非と、「長期金融制度」の必要性 2015.07.21 文/HS政経塾4期生 西邑拓真(にしむら・たくま) ◆安倍政権によるコーポレートガバナンス強化策 安倍政権は、アベノミクス「第三の矢」である「民間投資を喚起する成長戦略」の一環として、コーポレートガバナンスの強化を推し進めています。 コーポレートガバナンスとは、企業の法的な所有者である株主の利益が最大限に実現化されることに向け、企業を監査するための仕組みを指します。 この強化策の背景として、これまで、日本はコーポレートガバナンスが低く、経営の透明性が低かったことから、特に外国人投資家が積極的に日本株を購入していなかったことが挙げられます。 企業統治を強化して企業の収益性・生産性を高め、企業価値を向上させることを通じ、株式市場をより活性化させようとするところに、その狙いを求めることができます。 また、今年の6月には、金融庁と東京証券取引所により、コーポレートガバナンス・コードが導入されました。これは、株主の権利や取締役会の役割などといった、上場企業の行動規範を表したもので、上場企業はコードに同意するか、同意しない場合はその理由を投資家に説明することが求められるというものです。 企業統治の強化策としてのコードの導入により、上場企業は、資本効率を向上させることをより強く求められるようになったわけです。 ◆政策の効果 日本企業における「経営の透明性」が低いことの一要因として、長年の「株式持合い」という慣行の存在が挙げられています。 「株式持合い」を行えば、長期的に株式が保有され、相手株主から厳しい口出しがなされない「ぬるま湯的体質」が生じるとされます。持合いが解消し、経営陣が投資家によって厳しく精査されることで、経営効率が改善するだろうということが、この政策の狙いの一つであるとされています。 また、現に、このコーポレートガバナンス強化策を行った成果として、企業が取締役会に対する監督強化を図ることを念頭に、「社外取締役」を選任する上場企業が、昨年12月の72%から、今年の6月には94%以上に増加したとする報告もあります(米 Institutional Shareholder Services社調査)。 ◆外国人投資家 日本の株式市場における売買シェアの約6割を占めるのが、外国人投資家です。 外国人投資家とは、海外を拠点に活動する、ヘッジファンドを含めた短期売買の投資家や、欧米の年金基金・投資信託など長期運用を行う投資家を指します。 この外国人投資家は、企業が資本を使ってどれほど効率的に利益を出しているかを示す「自己資本利益率(ROE)」を重視する傾向にあると言われています。 日本の株価が上昇している一つの背景には、政府がコーポレートガバナンス強化を推進することで、日本企業のROEが上昇し、外国人投資家が日本に株式投資を積極化させていることがあるわけです。 ◆強化策に対する否定的な見方 しかし、そもそも「企業と投資家の交渉は、本来は市場メカニズムによって行われるべき」で、特にコードの導入は「経営者の手足を縛る内政干渉」であり、こうした一連の政策を「官製コーポレートガバナンス」であるとして、それを否定的に捉える向きもあります。 また、中長期的な経営の視点から見れば、例えば、多額で長期的な研究開発費を賄う方策として、株主からの調達に関しては、「ハイリスクな投資に否定的な株主が多い」のが現状であり、「ROEの低下要因である内部留保を使うことが現実的である」とする観点もあります(原丈人著『21世紀の国富論』参照)。 このような視点から見れば、政府によるコーポレートガバナンス強化策が、必ずしも中長期的な経済成長に寄与するとは限らないことがわかります。 ◆長期金融制度の必要性 日本は戦後復興時より、日本長期信用銀行などの長期金融機関が、高度経済成長を金融面でサポートしてきました。 今後、日本が長期的な成長を実現し、ゴールデン・エイジを実現していくにあたっては、株式市場の活性化も必要ですが、それだけではなく、国内での新たな長期金融制度の創設もまた必要であると考えます。 参考文献 小田切宏之著 2010 『企業経済学』 東洋経済新報社 原丈人著 2007『21世紀の国富論』 平凡社 出国税スタート――国家による強すぎる経済介入に要注意 2015.07.18 文/幸福実現党スタッフ 荒武 良子(あらたけ・りょうこ) ◆7月1日出国税スタート 7月1日から、国外転出時課税制度、いわゆる「出国税」が、スタートしました。 この税制度は、1億円以上の株等の有価証券を持ち、かつ、5年以上日本に居住した人が、海外に転出する際、実際に株等を売却していなくても、その株等の売買で得られることになる利益の15%の税金を納めなければいけないというものです。 租税条約上、こうした株等の利益への課税権は、株式等を売却した人が居住する国にあります。株式等保有者は、株等を売買した時に住んでいる国に、その国で決められている税額を納めることになっているのです。 現在、日本国内で、株等を売買した場合には、その利益には、20%の所得税が課税されます。一方、香港やシンガポールでは、日本と違い、株式等の売買に、課税はされていません。 富裕層が、日本から上記のような租税回避地へ移住してから資産を売ると、日本国内で売った場合に課税されるはずだった20%の所得税は課税されないこととなります。 日本で株を売ると利益の20%の税を納めることになりますが、香港やシンガポール等に転居してから売ると、税金を納めなくてよくなるのです。 しかし、この「出国税」は、日本から租税回避地に移住する前の出国の段階で、売買していない株式等のみなしの利益に対して、売買した場合に得られる利益にかかる所得税と同程度の税金がかかることとなります。 ◆過度の累進課税は統制経済につながる 今年1月より、所得税の最高税率は、40%から45%に、相続税も、50%から55%に上がっています。所得税は、所得が多い人ほど、高い税率となる累進課税です。 日本の財政では、所得税等によって高額所得者から多く税金を集め、低所得者へ、医療・年金などの社会保障を行う、所得の再分配が行われています。しかし、過度の累進課税は、結果として、経済の衰退を招きます。 財政における所得の再分配は、個人の私有財産を否定し、国が配給を行うという、共産主義下の経済に類似しています。資本主義を標榜する日本における、隠れた社会主義とも言えます。 実態を伴わない、行き過ぎた投機と、日本国外への過度の資産の流出は、控えるべきですが、強すぎる経済の管理は、国家権力の増大へとつながります。統制経済の代表的なものは、戦時下における配給制であることに留意すべきでしょう。 ◆減税による豊かな国づくりを 今回始まった出国税も、1億円以上の有価証券を持つ富裕層への課税強化であり、所得税等の累進課税と類似しています。 政府の介入による所得の再分配の機能も働いていると言えます。今回の出国税は、例えば、10%程度にしてはどうでしょうか。 また、高すぎる税率は、海外の富裕層が日本に住む機会の損失にもなります。特に大富豪は、税金の高いところから、税金の安いところへ移動していきます。 ユダヤやアラブの大富豪が、日本に住んでいると、世界情勢や戦争の原因になる行為が分かるため、高すぎる税率の回避は、国防上も大切なことです。 私有財産の否定とも取れる、国家の経済介入による管理型の経済は避けるべきです。 幸福実現党は、国家の介入による所得の再分配のための出国税には反対です。 高額の納税を避けるために海外へ移住する富裕層に、さらに出国前に徴税をかけるのではなく、各種税金を安くし、むしろ、海外の富裕層も日本に住めるような国にすべきです。 参考:『政治の理想について』大川隆法著/幸福の科学出版 『幸福実現党テーマ別政策集2 「減税」』大川裕太著/幸福実現党 すべてを表示する « Previous 1 … 5 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