Home/ 生涯現役 生涯現役 老後「月5万赤字」の報告書撤回 年金の現実を直視すべき 2019.06.14 老後「月5万赤字」の報告書撤回 年金の現実を直視すべき HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「2000万円」報告書に揺れる安倍政権 「夫婦の老後資金に30年で2000万円が必要」と記した金融審議会の報告書をめぐって、安倍政権は紛糾しています。 政権の方針と違うという理由で麻生金融相が報告書の受取りを拒否し、与党幹部が審議会に抗議しました。 「話が独り歩きし、不安を招いている」(二階幹事長) 「極めてずさんな内容」(岸田政調会長) 「年金の不安をあおるような言動は罪深い」(公明党・山口代表) その報告書では、無職の高齢夫婦の家計モデルで、支出よりも収入が5万円ほど少ないことや、年金減額の可能性が書かれていたので、「百年安心」をうたった与党の怒りを買ったわけです。 ◆同じ内容が厚生労働省ではOK、金融庁ではNG しかし、このモデルは、2ヶ月前に厚生労働省が出した資料の転載にすぎませんでした(「厚生労働省提出資料(2019/4/12)」 そのため、厚生労働省ではOKだったモデルが、金融庁では認められなかったことになります。 年金減額については、「中長期的に実質的な低下が見込まれている」(5/22時点)と書かれていた箇所が、6月3日に「今後調整されていくことが見込まれている」と修正されました。 ここも、実は、厚生労働省の資料に同じような記述があります。 「給付水準は今後、マクロ経済スライドによって調整されていくことが見込まれている」 結局、同じような論述に対して、安倍政権は「厚生労働省はOK」「財務省はNO」と判断したわけです。 ◆「本当のこと」を書いただけなのに審議会を糾弾 しかし、減額についての記述は、間違っていません。 高齢者が増え、現役世代が減っているので、将来の年金減額は避けられないからです。 さらに、金融緩和で物価が上がれば、年金の給付額が同じでも実質的な価値が減っていきます。 ところが、政府は、選挙前にそれを正直に書いた審議会が許せませんでした。 「選挙に不利だから」というだけの理由で、客観的な分析が拒絶され、糾弾されたのです。 ◆「月5万円不足」「30年で2000万円必要」の中身とは 今回、問題とされたのは、以下の記述です。 「高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円となっている」 「この毎月の赤字額は自身が保有する金融資産より補填することとなる」 この5万円は、年金ぐらしの夫婦の1カ月の収入から支出を引いた額です。 しかし、その支出には教育娯楽費などが含まれているので、この通りに赤字が出ても、生活難になるわけではありません。 26万4000円の支出のうち、教養娯楽費は25000円、その他支出が54000円とされ、かなり余裕のある生活が想定されているからです。 生きていくために必要な支出は18万5000円程度(「食料・住居・光熱・水道・交通・通信・衣料・家具・保険」+「税金」)。 年金などの給付金は19万2000円、その他収入が1万7000円とされているので、審議会は、もともと「年金で生きていけない」という事態を想定していませんでした。 報告書は、余裕のある老後を夫婦で過ごすには30年で2000万円ほど必要だと言って資産運用を薦めただけなので、審議会は、まさか、この記述が世を騒がすとは思わなかったことでしょう。 ◆国民に根強い「年金への不安」 この報告書をめぐって大騒ぎが起きたのは、公的年金さえあれば老後は安泰だとする自公政権の方針とは違う記述が含まれていたからです。 政府の審議会が、公的年金だけでは収入が足りないと言って、民間の年金や株式、債権などでの資産運用を薦めれば、「公的年金は頼りにならないのか?」という疑問を抱く人が出てきます。 そのため、自公政権の幹部は「年金の不安を煽っている」と批判しました。 国民にも、少子高齢化のなかで年金への不安が根強くあるので、今回の報告書は、マスコミにとっても格好の「ネタ」になったのです。 ◆年金をめぐる「正直な議論」を封殺する安倍政権 このやりとりで、政権に都合の悪い言論が封殺される過程が国民の前に明らかになりました。 しかし、大盤振る舞いが続く年金も、今後は、少子高齢化によって減額をよぎなくされます。 現役世代の負担はどんどん増えているからです。 国民年金ができた頃には、1人の高齢者を11人の現役世代で支えていましたが(※1960年。国民年金法は61年施行)、2020年には、1人の高齢者を2人の現役世代で支える事態がやってきます。 また、1960年の日本の平均寿命は、男性が65歳、女性が70歳でしたが、2016年の平均寿命は16歳以上も伸びています(男性81歳、女性87歳)。 報告書に書かれた通り、年金の給付金は「中長期的に実質的な低下が見込まれている」のです。 自公政権は、この問題を正直に認めることを拒み、野党は、それを政争のネタにしようと画策しています。 これでは、国会で、年金をめぐる建設的な議論が行われることは、まったく期待できません。 こうした現状を打破するためにも、国会に新しい勢力が台頭することが必要になっています。 幸福実現党は、社会保障においても真正面から正論を訴え、歳出の適正化や民間の役割拡大などを訴えてまいります。 【参照】 ・毎日新聞「前代未聞の不受理劇 『老後2000万円』 選挙の影」(2019年6月12日 東京朝刊) ・東京新聞「批判噴出で年金表現修正『老後2千万円』報告書」(2019年6月12日) ・金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(令和元年6月3日) ・厚生労働省年金局 企業年金・個人年金課「厚生労働省提出資料 iDeCoを始めとした私的年金の現状と課題」(2019年4月12日) 青森に新しい政治を! 2017.08.03 青森に新しい政治を! 本日は、幸福実現ニュース【青森県特別版vol.1】より、弘前市を中心に活動している「三国ゆうき青森第4選挙区支部長」と「神武桜子副党首」の対談記事を紹介いたします。 ■【政策対談】三国ゆうき(青森第4選挙区支部長) × 神武桜子(幸福実現党副党首) 神武: 三国さんが、政治に関わるきっかけとなったのは、何でしょうか。 三国: 私は、東北地方を中心に、(宗)幸福の科学の支部長を歴任しました。その時、多くの方が抱えている様々な課題を知りました。 例えば、病気、経済的な不安、子育て、介護、またはご親族間での争いなどです。そうした悩み、苦しみの解決に向け、共に寄り添ってきたことを通じ、やはり現在の政治を変えることが近道であると感じたからです。 残念ながら、従来の政治でこれからの高齢社会、そして東北の更なる復興を果たすことには限界が来ています。私は、青森には新しい政治が必要だと思います。その新しい政治の一翼を担うために頑張って参りたいと思います。 神武: そうですね、今、三国さんが実際に取り組んでいる「いじめ対策」などは、やはり政治の課題ですね。 三国: はい。私は弘前で「いじめから子どもをまもろう!」ネットワーク相談員に就任し、地域の皆さま方の声を受け止めながら「いじめ撲滅」に取り組んできました。 浪岡町での「いじめ自殺」は痛ましい事件でした。私は、今後は子どもたちが、のびのびと学校生活を送ることができるよう、政治からのサポートが必要だと考えています。そのために大切なポイントとして、「いじめ隠ぺい」を許さない姿勢が必要だと思います。 私は、先日青森県議会にも陳情書を提出しましたが、現在の「いじめ防止対策推進法」に は「いじめ隠ぺいを行った教師への罰則規定」がありません。 この罰則規定を入れることで、現場の先生方も、いじめの実態を共有されるようになるはずです。まずは、こうした子供たちの未来をまもるための活動を行っています。 神武: また地元青森で活動されてきて、大きなテーマとしてどのようなことが必要だとお考えでしょうか。 三国: そうですね。まず私としては、東北地方の交通網、特にリニア新幹線の推進を一つのテーマとして取り組んでいます。 今の東北新幹線で、新青森~東京間最速でおよそ3時間程度です。しかし、私たち幸福実現党で試算したところでは、最短でおよそ90分で行けることになるのです。 神武: 東北地方がリニア開通で発展することを期待したいですね。 三国: これは、青森が東京の日帰り圏内に入ることを意味し、経済的な発展に向けて大きな起爆剤になると思います。 東京~新青森間の総工費は、およそ8兆円と見積もられており、これは政治の決断があれば実現することが出来ます。私は、東北リニア新幹線の開通にも取り組んでいきたいと考えています。 (リニア新幹線網、図参照下さい) http://hrp-newsfile.jp/files/2017/03/MXSPxjnA.png 神武: ぜひ、三国さんには頑張って頂きたいと思います。そのほかには、どのような政策をお考えですか。 三国: 残念なことに、先日の報道で青森県が男女共に「平均寿命が最も低い県」との報道がありました。 私は、一人でも多くのお年寄りが元気にお過ごしになれるように「予防医療」の普及が大切だと思います。 一つには、生活習慣の改善、そして、食生活の改善、定期的な運動の必要性などが上げられると思います。 これも政治の課題として、県民に対する問題意識の普及活動、または地域の体育館などの利用促進のための補助など、まだまだ進める余地はあります。 私は、地元青森のお年寄りが笑顔でお過ごしになるための政策も研究していきたいと思います。 神武: なるほど。また、ライフワークとして、国防強化の必要性も訴えておられますね。 三国: はい。先日、中国軍艦が津軽海峡で領海侵犯を行ったとの報道がありましたが、その他にも北朝鮮のミサイル問題等、国防が大切な課題となっています。 わが党は立党以来、憲法9条の改正をはじめとする国防強化を訴え続けてきましたが、事態は深刻の度を増しており、国防の強化に真剣に取り組まなければいけない段階に差しかかっています。私も、そのために国政の場で働かせていただきたいです。 神武: ありがとうございます。ぜひ三国さんには、頑張ってほしいですね。最後に一言、国政への決意をお聞かせいただけますでしょうか。 三国: 私は、弘前生まれ弘前育ちの人間として、地元の発展をめざしながら、国政への活動を進めていますが、皆さま方の声をお聞きしていますと、今までの政治はしがらみだらけで、本当に必要な新しい政策があっても、取り組むことができなくなっています。 今、必要なのは、新しい政治です。自民でもなく、民進・共産でもない、新しい選択、若い力がここ青森でも求められていると感じています。 私、「三国ゆうき」は、32歳と経験不足ではありますが、若い力で、青森に新しい政治を創っていく強い志を持っています。 神武: 青森から新しい政治を!期待しています。 夕張市の奇跡――自助の精神が日本を変える 2017.06.20 夕張市の奇跡――自助の精神が日本を変える 幸福実現党・広島第二選挙区支部長 水野善丈 ◆『2025年問題』 皆さんは『2025年問題』をご存知でしょうか。 2025年に日本は、団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という「超・超高齢社会」を迎えます。 これが『2025年問題』と言われるものです。 この「超・高齢化社会に伴い増大しつづけるのが社会保障費であります。 現在、日本政府の歳出の多くを占め、約1000兆円ある政府の借金を増やす要因となっているのもこの社会保障費です。 今後、日本で高齢化社会が進む中で、この問題をどう乗り越えていくのかを世界各国は注目しています。 そして、この問題を解決するヒントを北海道の夕張市からご紹介させて頂きたいと思います。 ◆高齢化率が高い夕張市 夕張市は、札幌から60km近く離れた北海道の中心部に近い市で、人口が8593人(5月末時点)である小さな市です。夕張メロンでも有名ですが、2007年に財政破綻し、財政再建団体となった唯一の市でも知られています。 かつて日本有数の産炭地として栄えた市でしたが、炭鉱の閉山や観光開発の失敗も重なり、人口はピーク時(1960年代)の約12万人から激減し、現在では、1万人をきっています。 しかも、夕張市は全国の市で高齢化率が最も高い市でもあり、8593人のうち65歳以上が4301人で人口の48.86%が高齢者となっています。 こうした中で、夕張市では、財政破綻とともに医療崩壊もおきました。 公営の総合病院は財政破綻の同年2007年に公設民営化され、診療所は171床から19床に縮小、市内の病院にはCTやMRIなどの機器はなくなり、救急病院も無くなったため、病院到着まで倍近くかかるようにもなってしまったのです。 これが、2050年の日本の未来を先取りしているともいわれていました。 ◆医療崩壊からの復活 さて、夕張市に残された高齢者は、医療崩壊のせいで、病気に苦しみ、悲惨な目にあっていたのでしょうか。 実は、全くの逆の現象がおきました。お年寄りは元気になり、寿命も延びてしまったのが実際の状況でした。 例えば、日本人の死因上位三疾患(心疾患、肺炎、ガン)の死亡率が、全国で増えている中で、夕張市は下がっています。 実際に、三疾患の標準化死亡比(SMR)は、胃がんであれば、2006年134.2だったのが、医療崩壊後2010年には91.0まで下がり、肺炎については、125.0(2006年)から96.4(2010年)までに低下しています。(週刊日本医事新報「夕張希望の社の奇跡」参照) また、全国的に一人あたりの医療費は増加しておりますが、夕張市の一人あたりの医療費は、2005年に83.9万円から2010年には73.9万円へと減少しています。 このようなことができたことの要因に、夕張市立診療所の前所長で医師の森田洋之氏は、病院があるから安心ではなく、病院に頼ることなく、予防の意識を市民の皆さん一人ひとりが持ち、地域で支え合う温かい風土ができたことを挙げられています。 参考:「医療崩壊のすすめ」(動画) https://www.youtube.com/watch?v=lL8aJE9Xp3Y ◆夕張市の事例から学べること 今回の夕張市の事例は、財政破綻・医療崩壊もした危機の中で、人間が持っている底力の部分や自立した精神こそ社会や自らを良き方向に導くことを教えてくれたものであると思います。 現在の政治は、社会保障を手厚くする代わりに国民から税金を多く徴収するというスタンスで運営を行っています。 一見、国民にとって楽であるから良いように見えますが、「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉があるように、実際は、財政赤字は膨れ上がる一方で、増税により使えるお金が少なくなり、個人の選択の自由も無くなっていく地獄の道へと繋がっています。 もちろん、社会保障がいらないわけではなく、自助の精神に立脚したうえで、どうしても逃れられない困難に出くわすことも人生にはあるので、その時に社会保障などのセーフティネットを使えることは大切であります。 しかし、過度な社会保障は、国家財政を崩壊へと導くだけでなく、自由や人間の本来持っている力を喪失させ、堕落させる方向へと導いていくので問題であると考えます。 やはり、超・高齢化社会に向けては、「生涯現役」という理念を掲げ、高齢者も生きがいを持って働いていける社会の環境整備を優先すべきであると考えます。 そこには、個人として、人生を選択できる自由があります。 今回の夕張市の事例は、「超・高齢社会」に突入していくこれからの日本の大きな教訓を与えてくれたものであると思います。 「健康・病気予防」と、テーラーメードな医療保険のあり方を考える 2017.01.16 幸福実現党・青年局部長(兼)HS政経塾部長 吉井としみつ ◆かつても「メタボ健診」で医療費削減を目指した 医療政策においても、「予防」に重点を置くことで健康を増進して、「医療費の伸びも抑制」しようという政策が徐々に進められています。 2006年の小泉政権下でも、いわゆるメタボ健診が始まりました。生活習慣病を予防することで、医療費を2兆円抑制することを目指していましたが、これは実現できませんでした。 メタボ検診の受診率が低い場合は、健康保険に対してペナルティを課すことができなかったこと、そして、日本人は肥満率が各国と比較して低いこともあり、「そもそもメタボ検診の指標に妥当性があるのか?」ということで、この改革は進みませんでした。 「何をもって病気の予防とするか」「健康の指標とするか」については、なかなか決めきれないことが現状の課題といえます。 ◆健康維持推進に向けての事例 データ収集と分析をすることで、健康維持に効果的なサポートをしようという取り組みもあります。 例えば、厚生労働省では「予防・健康づくりインセンティブ推進事業」のプロジェクトでは、レセプト・健診データの分析により健康分布図を作成することで、「非肥満だが高リスク者が多いという集団の特徴」を把握して、保険加入者の健康維持に役立てようという事例もあります。 【参照】厚生労働省「予防・健康づくりインセンティブ推進事業」 データヘルス計画推進シンポジウム(http://pari.u-tokyo.ac.jp/event/201603/hpm/1850/report) ◆「これが健康の指標」と決められるのか? 2015年度の法改正を受けて始まった、健康で医療費の利用が少ない人を優遇する「インセンティブ制度」の具体的な成果についてはこれからですが、この方向性は医療費の適正化に向けても必要なことだと思います。 ただ、国として「これが健康の指標」と決めきれるかといえば、様々な健康法が出ている今、極めて難しいのではないでしょうか。 医療保険の適用範囲も広げ続けることはできません。 むしろ、国としてのサポートは最低限に絞り込み、公的医療保険の適用範囲を限定し、追加で、その方のライフプランに応じた民間の医療保健を選ぶ流れを検討するべき時かもしれません。 ◆個人の生き方に応じた医療保険 今のまま医療費を抑制できない状態が続くと、国の財政としてどうしようもなくなり、突然、「医療保健の適用範囲を縮小します」ということにもなりかねません。 これこそ、一番困るパターンです。 公的医療保険の負担は軽くする代わりに、保険適用範囲を狭める。 追加の選択肢として、民間の医療保険を選ぶ。 「病気の予防」や「健康の増進」と合わせて、医療保険制度のあり方にも踏み込んでいくことが、本当に安心して子供たちにもバトンタッチできる医療政策のためにも必要ではないでしょうか。 そして、身体の健康だけではなく、「生きがいのある仕事」など、生涯現役で心身ともに健康で、誰もが生きがいを持てる社会を目指すべきだと考えます。 生涯現役人生――元気なシニアが地方を活性化する 2016.04.15 文/幸福実現党・岩手県本部副代表 石川幹子 はじめに、熊本で大きな地震がありましたが、この場をお借りしてお亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。 また、余震が続く中で避難を余儀なくされている方々にお見舞いを申し上げますともに、一日も早い復旧をお祈り申し上げます。 ◆豊かな岩手県 岩手県は日本で2番目に広い面積で美しい自然と豊かな食材に恵まれた県で、食料自給率は106%で北海道、青森、秋田、山形などと共に自給率100%を超える数少ない県の一つです。 穀物、畜産業などが伝統的に盛んで、水産業は三陸海岸周辺が黒潮による豊かな漁場として知られ、ワカメ、アワビの養殖で生産高全国一位となっております。 ◆「食の匠」とは 岩手県では、郷土食等の優れた技術を有し、食に関する活動を通じ地域活性化につながるような技術を伝承出来る方を「食の匠」として認定しています。 先日、県北を訪ねた時に83歳の現役で蕎麦屋を営んでいる方とお話する機会がありました。 岩手県が認定する「食の匠」のお一人であり店を切り盛りしながら日本の料理に欠かせない味噌、醤油の製法を若い世代に伝え、伝承していきたいと語ってくれました。 「食の匠」は、先人の知恵と技により育まれ受け継がれてきた郷土食や豊かな食材を活かした料理を岩手ならではの食文化として県内外に発信しています。 これまでに237の個人、団体が「食の匠」として認定され地域で活動されています。 岩手県公式ホームページ 「岩手県食の匠」 http://www.pref.iwate.jp/nougyou/takumi/index.html ◆日本の平均寿命 このように「食の匠」で、蕎麦屋を営んでいる方は83歳の現役でお元気に頑張っていらっしゃいます。 2014年の日本人の平均寿命は女性86.83歳、男性80.50歳で、ともに過去最高を更新したと厚生労働省が発表しました。(2015/7/30日経) 戦後、社会情勢、健康、食料事情の安定化により1950年以降から延び21世紀中に平均寿命は百歳ぐらいまで延びるのではないかとも言われています。 我が国は、これからの定年期を迎えた団塊世代中心に高齢者が急増、労働人口の減少は経済社全般の衰退を招くだけでなく年金、医療、福祉などの社会保障が心配されています。 老後の不安を幸福に変えていくには、社会に頼るのではなく自分の道は自分で切り拓く人を増やす事が大事なのではないでしょうか。 ◆生涯現役人生を目指すために 人生計画において定年までの間に年を取ってからも生活できる経済レベル、生活レベルを保つように貯金等の備えをし、知的老後を目指す為に新しいことを学習し定年後に使える知識を備えておく、「老後の人生は自分一人で守る」気概が大事です。 全国を歩いて測量し、日本地図をつくった伊能忠敬は、測量の仕事をするにあたり、数え年で51歳の時に勉強し数学や測量術、天文学などを学び56歳の時に日本全国の測量を始め20年の歳月をかけ日本地図を完成させたと言われています。 当時の平均寿命が40歳ぐらいだった時代に志し困難を乗り越え成しとげた行き方は日本人として誇れる生き方です。 ◆元気なシニア世代が地方を活性化する 老後を出来るだけ社会保障に頼らない生き方にするには、75歳くらいまで働ける雇用増加を実現する必要があります。それが高齢者の健康維持、増進にもつながり、医療、介護費の抑制にもつながっていきます。 そのためには高齢者雇用を進める企業に対して税制優遇を図ることやシニアによる起業を支援する制度も必要です。 岩手県の「食の匠」を見ても、地方の高齢者は生涯現役の先駆者であり、かくしゃくと元気に働いている方が多いと感じました。 今回、出会った「食の匠」、他にも農業されている方、理髪業、木工業と多種にわたり今も現役で活躍されている姿に地方を元気にするヒントが隠されているのではないかと思います。 参考文献 『生涯現役人生』大川隆法著/幸福の科学出版 https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=837 「人生設計」を高等教育で必修に! 2016.04.09 文/幸福実現党・富山県本部副代表 吉田かをる ◆「年金」をあてにしない「老後の設計」が必要 老後の資金は「年金」のみという人が多いのに驚かされます。 いろいろな理由はあるでしょうが、加えて「老後破綻」とか「下流老人」「老後難民」などという四字熟語が飛び交い、なおさらに不安をあおっています。 国民の多くは「年金は自分が積み立てた分がもらえる」と思っているようですが、そうではなく「賦課方式」となっており不公平感があり、将来の信用性がない事は否めません。 ※「賦課方式」とは、現役で働いている世代が払い込んだお金を現在の高齢者に支給する仕組み このあまり正直ではない年金制度は、一度きちんと清算しないといけません。 しかしながら現実に迫っている「老後」の生活資金をどうするか、あてにできない年金がなくてもきちんと生活できるように、自分の老後は自分でデザインする態度が必要となります。 ◆人生の「三大資金」は「住宅」「教育」「老後」の順番 老後の資金にいくらかかるのか、いろいろな算出方法がありますが、平均的に一か月の生活費は夫婦で27万円です。 平均寿命から見ても妻が夫よりも長生きする傾向ですから、妻一人の生活費は19万円と算出されます。退職金や年金なども計算して、それでも足りないと予想される金額は3千万円といわれています。 どんな老後生活を希望するかで不足する金額は違ってきますが、「年金のみ」というのでは、これは厳しい現実が待っています。 実は老後の資金は人生の「三大資金」の三番目に来るもので、老後の前には「住宅」「教育」があります。 昨今の景気状況から、「住宅」と「教育」で息切れして最後の「老後」には手が回らず、やむなく「老後」は年金頼みというのが現実に多いケースです。 また、性格的に何の算段もなく「入ってきたお金はあるだけ使う」というケースも多く、貯金という習慣はないという人もかなりいます。 ◆自分の「人生」をイメージしてその中で「老後の設計」を! よく「年金っていくらぐらいもらえるの?」と聞かれます。「人によって違うけど、ご自分はどんな老後生活を送りたいのですか?」とお尋ねすると「そんなこと考えたこともない!」というのがほとんどです。 快適な老後の4つの条件のいちばん最初に「お金」があげられます。 そして「健康」「生きがい」「地域との良好な関係」と続きます。経済的な問題が解決すれば人生の悩みの8割はなくなるのですから、「人生の設計」=「お金の設計」といえます。 10年後20年後40年後の自分や家族をありありとイメージすることが肝要で、そのイメージ通りの人生が拓けてきます。 ◆「人生設計」を高等教育で必修にしましょう 自分の人生で起こりうるイベントを考え、何を選択するかを決め、それにかかる費用の見積もり予算を立てることで、「自分はどんな人生を送りたいのか」を発見し実現することができます。 高校での家庭科の授業で「人生と家族」というような単元で取り上げることもありますが、必修というわけではありません。 行き当たりばったりで収入は使い果たし、老後は不自由な生活というパターンにならないように、自己責任と自助努力で人生を生き切ることが人間として当然という事をしっかりと教えなくてはなりません。 ◆やるべきことは「減税」「規制緩和」「70歳定年制」で「自由からの発展」を 国民が「老後は政府が面倒見てくれ!」という思いでいると、「福祉充実」の名を借りて増税が始まり、自分の人生を自身でデザインする自由がなくなります。 ここで政府がやるべきことは、減税と徹底した規制緩和で民間の活力を強くすることです。 70歳定年制で生涯現役社会を創ることで、すべての年代が輝くことになります。セイフティネットの構築を万全にして、小さな政府をめざさなくてはなりません。 自分の老後は自分で面倒を見る!という国民一人一人の気概が、国家を間違った全体主義政策から救うことになります。幸福実現党の目指すところはここにあります。 生涯現役――何歳からでも花を咲かせる生き方! 2016.02.27 文/幸福実現党・政務調査会 佐々木勝浩 ◆自分には、まだ成し遂げたいものがある 人生とは、若い時だけが花ではありません。人間は何歳になっても自分の「意志の力」で人生に花を咲かせることができます。 大川隆法総裁は、著書『エイジレス成功法』の中で、次のように述べています。 「自分には、まだ成し遂げたいものがある」と思っている人というのは、まだ燃えている炭火のようなものであり、そう簡単には消えないものです。 「意志の力」と「鍛える力」があれば、いろいろなことが可能になるのです。「もうこれで終わりだ」と思った後から再出発して、それ以前よりも大きな実績をあげることはできるということです。 ◆68歳の社交ダンス愛好家 まさに、この「真理」にぴったりの68歳の社交ダンス愛好家がいます。その名は、アマチュアダンサー前田明さん。先日25日、その前田さんを朝の番組が取り上げていました。 前田さんは、先日2月21日、日本武道館で行われた世界大会「アジアオープンダンス選手権大会」に参加し、プロでも困難な大技である「リフト」を披露し、拍手喝采を受けました。 「リフト」という技は、パートナーの女性を腕で高く持ち上げる技で、若いプロのダンサーでも困難な大技です。 前田さんは、56歳の時に社交ダンスを始め、2013年にアジアオープンに参加し、英国のブラックプールダンスフェスティバルにも招待をされています。 ◆妻の分まで悔いのない人生を生きる 前田は週に3、4回、兵庫県から京都市にあるダンススクールに1時間かけて通い、その練習後にジムで100キロのバーベルで筋トレを行うのです。 社交ダンスを始めたきっかけは、12年前、愛する奥さんを亡くしたことだったそうです。気力を失い沈んでいた時に、「妻の分まで悔いのない人生を生きる」と誓い、社交ダンスを始めたそうです。 社交ダンスを踊る前田さんの腕には、はじめて奥さんからプレゼントされた腕時計がはめられています。 「もう、時計は動いていないんですけどね」と語る前田さんは、踊り始める前に、そっと腕時計を撫でます。きっと前田さんは、奥さんと一緒に踊っているのでしょう。 前田さんが社交ダンスを始めてから、その影響でお嬢さんもダンスを始め、いまではプロダンサーのお嬢さんと世界大会のデモンストレーションに出場しています。 ◆60才からでも成長できることを伝えたい 前田さんは、「70歳でもリフトをしたい」、そのためには「継続と前進が大切であること」、また自分の生き方から「60才からでも成長できることを伝えたい」とも語っています。 前田さんは、事業家でもあり、まさに生涯現役、「何歳からでも花を咲かせる生き方」は、多くのシニアに勇気と希望を与えてくれます。 前田明さんの公式サイト http://akira-maeda.com/wp/wp-content/themes/akira-maeda/gallery/ 体の衰えは、「意志の力」「志」で克服できる! 何歳からでも社会に貢献できる! まだまだ新しい出発はできる! 「チャレンジ精神」とは、若者だけの特権ではなく、シニア層の特権でもあるのです。そんな元気なシニアが日本を救います。 年金にように、「国からいかにもらう」のでなく、前田さんのように「社会貢献」を考えるシニアが増えれば、日本はもっと発展・繁栄することでしょう! シニア世代の皆さん、人からもらう人生ではなく、多くの人に希望を与える人生を生きましょう! それは幸福実現党の願いでもあります! 参考 『エイジレス成功法』――生涯現役9つの秘訣 大川隆法著/ 幸福の科学出版 https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1547 地方創生の柱――生涯現役社会実現 2015.06.19 文/幸福実現党・奈良県本部副代表 田中孝子 ◆地方創生とは 地方創生とは、2014年9月に発足した第二次安倍内閣が掲げる重点政策の一つで、地方人口減少に歯止めをかけ、首都圏への人口集中を是正し地方の自立的な活性化を促すための取り組みを指します。 ◆地方創生の理念 「町、人、仕事と創生」のキーワードで具体化され、国内の各地域、地方がそれぞれの特徴を活かした自立的で持続的な社会を形作ること、魅力あふれる地方のあり方を築くこととあります。 主要な柱として東京一極集中の解消、地域社会の問題解決、地域における就業機会の創出等が捉えられています。 ◆全国市町村に見る高齢者の現況 総務省2011年の全国市町村対象の調査では、過疎地域等における6万4954集落のうち、限界集落と言われる65歳以上の高齢者が半数を超えている集落は、15.5%で、1999年の7.5%の2倍を超えました。 人口50万人未満の集落の割合も06年の24.4%から10年の27.9%へと上昇しています。 ◆奈良県十津川村の地方創生「村内移住」の取り組み 紀伊半島中央部にある奈良県十津川村は、東京23区とほぼ同じ面積ですが、人口は約3600人、65歳以上の高齢化率は42%に達します。 この過疎の村が人口減少に対応した「村内移住」と、雇用来を見越した「林業再生」で地方創生に乗り出しました。そのきっかけは、死者不明者13人を出した2011年秋の大水害でした。 この地域は全国有数の木材生産地でしたが、時代の流れは、林業衰退に歯止めがきかず森の荒廃は、大水害をもたらしました。 そこで地方創生策として産業の少ない奈良県を離れて都会に住む子ども達と高齢者の老後の問題を解決するため戸建の村営住宅を造り、そこへ集住してもらう取り組みを始めたのです。(3/2日経新聞 地域総合面「特集連載『地域で克つ』」) まず水害で仮設住宅に住んでいた高齢者のコミュニティーづくりと互助が始まりました。 ◆林業再生で雇用を生み出し経済活性化促進 次に林業再生を企業と協力したことで、雇用創出や、さらに地元の高校にも土木コースを入れる等によって、県内就業支援となり、地域経済の活性化に繋がっていったのです。 この村営住宅の取り組みは、人口減少に拍車がかかる地方の過疎地問題解決のヒントになります。 成功の要因は、助け合いの精神と、自然からの警鐘を村の再生に繋げた「自助努力」の精神にあると思います。 ◆最後まで村で暮らしたい、村を再生し故郷を守りたい 近年、都会で暮らす子ども達の意向で村外施設に移る高齢者が増えていますが、大部分の方が、最後まで住み慣れた村に暮らしたいと願っています。 泣く泣く村を離れるケースが増える現状を打開しようと、点在する居住を、村中で便利な集落中心部へ住み替えることが「村内移住」です。 ◆この取り組みに学ぶ「生涯現役社会」の理想 よりよく生きる「生涯現役社会」は、そうした努力と智慧の上に築かれると思います。 この事例に学び、政府に頼ることなく、各地域が、各個人がセルプヘルプの精神で、自分として何ができるか考え、一人一人の個性や才能を活かし、各人の助け合いの精神を持つことで、国をも平和と繁栄に導く繁栄主義を、故郷奈良に実現したいと思います。 奈良県では65歳以上の高齢者が人口の24.4%に達します。これは、高齢者だけでなく若い方の心配となり、今後30年「税金が増えるか」「国が潰れるか」の問題となります。 だからこそ、「自分の老後は自分で守るぞ」の精神で明るく、積極的で、建設的な生涯現役人生計画こそ本当の地方創生になるでしょう。 検証――介護保険制度4度目の改正法実施 2015.04.03 文/幸福実現党・栃木県本部副代表 みつはし明美 ◆地域医療・介護総合確保推進法案 昨年6月、「地域医療・介護総合確保推進法案(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案)」が可決されましたが、そこに含まれる介護保険制度もこの4月から順次施行されます。 私事、3月初旬に、福岡県小倉に住んでいた母・透析、父・心不全と痴呆を熊本県の老人施設に入居させるため一週間ほど滞在して引っ越しと一連の煩雑な手続きを経験しました。 その時に、国民保険、介護保険、後期高齢者保険、老人医療、更生医療、デイケアサービスケアマネジャー、老人ホーム様々な保険制度と事業者(保険者)と関わりましたが、この度の改正で利用しやすくなったのか否か?検証してみましょう。 ◆2015年4月改正でどうかわるのか? A) サービス提供体制 ・保険給付で行われていた訪問介護と通所介護が地域支援事業に移行されるので、市町村ごとの独自予算、判断の事業になります。 ・居宅介護支援事業所は国の基準に基づき都道府県が指定、監督、指導を行っていたがそれも市町村に権限移譲(2018年4月までの移行期有)されます。 ・特別養護老人ホームの入所待機者50万人超えのため 入所資格を要介護3以上の重度者に限定されることになります。 B)費用負担 利用者所得の区分を細分化しますが、結局のところ高所得者には負担増、低所得者には軽減されるようになります。 この軽減部分に必要な公費が推定1300億円で、ここに消費税増税分が充てがわれることになっています。 また、年金額280万以上の人は自己負担が2割になり、個人単位での査定になるので夫婦や同世帯でも一人は1割負担でももう一人は2割負担となる場合も出てきます。 C)在宅医療と介護の連携強化 医療保険財源と看護職員適正な配置などの課題から2014年4月の診療報酬改定の際に「地域包括ケア病棟」が創設されました。これは在宅復帰を重視し、在宅の急患を受け入れる機能を持ち合わせます。 改正はまだまだたくさんありますが、高齢者、利用者として関わるのは大きくは上記3点にしぼられます。 ◆今後の課題と懸念される点 まだまだ複雑で範囲が拡大した介護サービスを整理し適正に活用するにはケアマネジャーの資質向上が求められます。 私の周りにもケアマネジャーを職とする人が数人おりますが、みな利用者のために心より良いプランづくり、環境づくりに努めています。 しかし、そのような人材はまだまだ少ないように思えます。両親を担当してくださったケアマネジャーの方は、マネジャーというより、「介護保険の点数計算と案内」にとどまり、病院、介護施設、高齢利用者のパイプ役は務めていただけませんでした。 ◆もう一つ重大な問題点は やはり市町村の裁量によるところが大きいため、サービス内容、価格、質に格差が生まれ、財源が乏しくなればサービス打ち切りの権限も有するので、改正の大目的である包括的継続的介護で自立を目指すのが果たされていかないのではないかと思われます。 10年、20年先を見据えて先細りする財源を確保のための制度改正と共に、国民の意識改革を起こしていくことも急務であると感じます。 これから高齢者が増える時代に消費増税で医療・介護の財源を賄おうとすれば、増税をどこまでも繰り返さなくてはなりません。それでは経済は疲弊し、さらに財源の確保は難しくなります。 財源をどのように確保するかについては、経済成長による税収増の方向性を示す必要があります。 また親の介護問題を抱える私たち世代は、介護保険に全面頼るのでなく親に対する感謝と報恩の意を持つことが大切です。そして本来の使命や社会や家族内で、何らかの役割を担っているという生きがいを見出してもらうことが大切であろうと思います。 私たち自身は、年金や介護制度に頼ることを良しとせず、老後生活にも何らかの生産的活動をし、生涯現役を全うする気概をもって年を重ねていきたいと思うのです。 誰もが直面する高齢者介護の問題も水際対策的な制度改革にとどまらず、家族の絆と人生の目的まで示して社会としての発展に繋げていくのは、宗教政党である幸福実現党の役目であると考えます。 生涯現役人生のモデル、ここにあり!――徳島県上勝町視察を通して 2015.02.10 文/幸福実現党・兵庫県本部副代表 みなと 侑子 ◆「夢は100歳まで現役でこの仕事をすること!」 メディアでよく取り上げられる徳島県上勝町。 おばあちゃんたちが“葉っぱ(つまもの)”を全国に出荷し、それらが高級料亭で使われていることで大変有名です。 今では、日本の「つまもの」のうちの8割が上勝町産となっており、立派なブランドです。 今回、視察に伺い、実際にいろどり事業に従事していらっしゃる方にお話を伺うことができました。その中で、メディアでは感じ取れなかったことを多く学ぶことができました。 上勝町の現在の人口は1749人で841戸。 四国で最も人口が少なく、高齢化率は51.34%で徳島県下一です。 どこにでもある普通のいなかだった上勝町が、男尊女卑、補助金頼み、村社会特有の嫉妬や噂話から抜け出し、一人一人がいろどり事業を通して輝く今に至るまで、30年の年月がかかりました。 いろどり事業に従事していらっしゃるのは、70代、80代の方々ですが、町営の老人ホームは行く人が減ったためにつぶれ、老人一人当たりの医療費は県内最下位になりました。 それだけでなく、最高で1000万円、平均年収が約130万円であるため、税金を納める側にも立たれるようになりました。 一人一人が自分の足で立って生きている、何歳になっても世の中に貢献できる。 「この喜びはね、言葉に表せないよ」 そう目を輝かせておっしゃるおばあちゃん。働くことができる喜びは、お年を取られた方こそ強く感じていらっしゃいます。 ◆おばあちゃんたちは好奇心旺盛で研究熱心、そしてとっても負けず嫌い 皆さん、大変研修熱心です。料理人に来てもらっての勉強会、北新地や京都まで出て料亭で懐石を食べ、自分たちの商品がどのように使われているのかを研究します。 笹の葉でも、そのまま出すのではなく、笹船にするなどひと手間加えることで付加価値がつきます。 それだけでなく、お正月飾りなどは、それぞれのおばあちゃんのセンスが発揮され、自分の名前がついた商品があることにびっくりしました。お互いに作り方を教えあうこともあるそうです。 一方で、一人一人が大変負けず嫌いでもあります。 毎朝8時、10時、11時にそれぞれ農協から送られてくる注文に対して、受注するためにはパソコンを使わなければなりません。 私が訪問したお宅のおばあちゃんは、スマホとパソコンを使いこなした上に、パソコン画面上に黒いマジックでマークをつけておく(受注画面になったときに受注ボタンをすぐに押せるよう、カーソルを早めに移動させるため)という裏技まで使っていらっしゃり、大変驚かされました。 (ただその裏技も、一年前にテレビ取材が入った際に公開されて皆が知ってしまったため、今では受注がなかなか取れないそうです) ご自身が出荷した商品がいくらの値がついたのか、昨日の売り上げはいくらで、今月はいくらだったのか、という数字はすべてパソコンで見ることができます。 同じ商品を出荷したとしても、自分のものが他の人の商品よりも高かったか、安かったかということもわかります。そこでまた、反省からの創意工夫が生まれるようです。 さらに、いろどり従事者内での月別・商品別の順位もパソコンで確認でき、これらがさらに負けず嫌い魂に火をつけています。 この負けん気、向上心こそが若さの秘訣であり、刺激を受けながら生きることが大切なのだと改めて感じました。 ◆いろどり事業を通して得た時間とお金は人生の“いろどり” 今回お伺いしたおばあちゃんにいろどりで稼いだお金の使い道を尋ねたところ、脳こうそくで倒れた旦那様のため、家じゅうをバリアフリーでリフォームされたとおっしゃいました。 ご主人がお元気な間は、北海道から九州までお二人で旅行されたそうです。 まさにいろどり事業によって、人生にいろどりを添えるための時間とお金を手に入れられたのです。 皆さんのお金の使い方は、自分のためよりも家のため、子孫のため。 家の中で最も稼ぎがいいのがおばあちゃん、この家はおばあちゃんのお金で建てた、という家もあるそうです。 子孫に尊敬のまなざしを向けられて毎日働けるなんて、なんて素晴らしいことだろうと思います。 いろどりのおばあちゃんたちはみな生き生きとされています。 上勝町をモデルにつくった映画「人生、いろどり」において、80歳になって映画デビューされた方もいらっしゃいます。 心に目標があり夢があり希望があり、生きがいがあるから輝いているのだと心底感動しました。 政府が今なすべきは、薄っぺらな「地方創生」の掛け声の下で補助金をばらまくのではなく、各地域を活性化させたいと頑張っている企業家を後押しすることだと思います。 上勝町がここまで有名になったのも、横石さんという一人の男性が強い志を持たれ、長い忍耐の時期を経て、いろどり事業を守り育ててこられたからでした。 貴重な知恵と経験をお持ちの方々に更に生きがいを持っていただけるような仕事を作り出すこと、生み出すことこそが、高齢化社会に対して今なすべき最大の福祉であると共に、日本が世界に打って出るための戦略であると強く感じています。 参考書籍:「そうだ、葉っぱを売ろう!」横石 知二著 すべてを表示する 1 2 3 Next »