Home/ 記事配信 記事配信 文科省の大学改革に未来はあるか?――「未来創造の砦」としての大学改革を! 2012.04.07 桜の花がほころぶ中、新学期がスタートしましたが、日本の教育界も新時代の門出に立とうとしています。 東京大学の懇談会は3月29日、学部の秋入学への全面移行を積極的に検討すべきだとする最終報告書をまとめ浜田総長に提出、東大は4月に正式な委員会を発足させ、今後5年をめどに全面移行を目指す(産経3/29)など、国際競争力の低下に危機感を抱く各大学におけるイノベーションが真摯に検討されています。 そのような中、4月3日、文部科学省は「大学改革」に向け、中央教育審議会大学分科会大学教育部会の「審議まとめ」として、「予測困難な時代において生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ」を公表しました。⇒http://goo.gl/9YBFk 今回の「審議まとめ」は、一言で言えば「大学は主体的に学ぶところである」という、当たり前の凡事徹底を促す内容です。 今、日本の大学生の国際的な学力低下が問題視されています。日本の学生の学修時間(授業、授業関連の学修、卒論)は一日4.6時間とのデータもあり、日米を比較をしても、かなり低いことが分かります。 授業に関連する学修の時間(1週間あたり)は、米国が0時間0.3%、1~5時間15.3%、6~10時間26.0%、11~15時間58.4%に対し、日本は0時間9.7%、1~5時間57.1%、6~10時間18.4%、11~15時間14.8%となっています(東京大学大学経営政策研究センター(CRUMP)『全国大学生調査』2007年) 一般に、「アメリカの大学は入学は簡単だが卒業が難しい」と言われているように、アメリカの大学では学問の成果を厳しく求めることで、必然的に自主的自律的に学修する環境が形成されています。 安易に卒業させるのではなく、より学修成果を重視した「単位取得」や「学士取得」にすれば、学修時間の確保も必然的に増えはずです。 「審議まとめ」は「予測困難な時代の中で、どんな状況にも対応できる多様な人材」が求められているとして、「教育環境の変化」に注目していますが、それ以前の教育力の低下を言い訳しているようにしか映りません。 振り返ってみれば、日本の繁栄を築かれて来た先人の方々も、いつの時代も、激しい変化の時代の中で、知恵を編み出して生き抜いて来たはずです。 さらに、「審議まとめ」においては、「質を高める」ことも課題としていますが、学生以上に、教授人材の学術的価値が問われている面もあります。 学生を惹きつける学際的研究成果を発表し続けている教授の下に、熱意ある学生が集まるものです。 やる気のない学生を手取り足取り指導してアベレージを高めることも大切でありますが、教授人材が世界的に影響力を持ち、学生を感化し得る見識と情熱を有していることが求められています。 最高学府において、国家の命運を賭けた新産業開発などを担う「天才教育」を推し進める投資も重要です。 本来、大学教育は「文明の進化」を規定するという意味で、「国家百年の大計」を超えた「新文明創造」に向けた責務があります。 新たな基幹産業、未来産業となり得る分野として、航空・宇宙産業・防衛産業・ロボット産業の創出、海洋開発、新エネルギー開発、食料増産などフロンティアは数多くあります。 世界的な競争に打ち克つ未来ビジョンを描く政治力を基点として、「産・学・官」の力を結集し、経済成長戦略の要となる新産業を生み出す、次世代の技術開発を実現する国家プロジェクトを構築するべきです。 そして、高い志と強い使命感、豊かな教養を備えた有為な人物を養成していくことを「大学の使命」とすべきです。 真の「大学改革」は、繁栄の未来を切り拓こうとする「未来創造の情熱」と、世界を牽引せんとする「国家の気概」から生み出されることを忘れてはなりません。(文責・小川俊介) イラン情勢、脱原発、「環境税」創設の三重苦――燃料価格高騰に全国で悲鳴 2012.04.06 消費税論議の陰で、2012年度税制改正法案が3月30日の参院本会議で可決されました。これにより、二酸化炭素(CO2)排出抑制を目的とする地球温暖化対策税(環境税)創設が成立しました。 原油や液化天然ガス(LNG)にかかる石油石炭税に上乗せ課税し、税収は再生可能エネルギー普及や省エネルギー対策などに充てるというものです。 現行の石油石炭税は1キロリットルあたり2040円が課されていますが、今年10月以降は250円増の2290円に、2014年4月以降は2540円に、2016年4月以降は2800円となり、最終的に760円上乗せになります。 これらは業者に課せれますが、ガソリン価格に転嫁され、消費者の負担増として家計にも直接的に打撃を与えることになります。 既に増税を待つことなく、イラン情勢の緊迫化により、ガソリン全国平均価格は158.3円/リットル[4/2])に高騰し、2月中旬(142.9円/リットル[2/13])より7週間連続値上がりしています。 この値上がり傾向は当面続くと見られており、イラン情勢いかんでは170円、180円程度まで値上がりするとの観測もあります。 さて、158.3円/リットルを例にして、ガソリン価格の内訳を見ると、本体価格94.92円、石油石炭税2.04円(2016年4月以降は2.8円)、ガソリン税53.8円、この合計150.76円に消費税率をかけた7.54円を足すと158.3円となります。(ガソリン税に消費税をかける事に対しては、二重課税との猛反発があります。) ガソリン税53.8円の内訳を見ると、28.7円が本税(揮発油税24.3円、地方道路税4.4円)で、25.1円が暫定税率による上乗せ税(揮発油税24.3円、地方道路税0.8円)となっています。 2009年の民主党マニフェストでは暫定税率を即時廃止すると公約し、政権を取りましたが、その後、一転して民主党政権は財源不足を理由に、暫定税率の廃止を取りやめ、維持することになりました。 政府は2010年1月、揮発油税の特別措置(トリガー条項)として、ガソリン価格が高騰し、3か月連続して1リットル当たり160円を超えた場合、暫定税率相当分(25.1円/リットル)の課税を停止することを決めました。 しかし、昨年4月、復興財源確保を理由に、政府はこのトリガー条項を一時凍結し、現在に至っています。トリガー条項を発動した場合の減収額は4500億円以上に及ぶと見積もられています。(2011/4/18 産経⇒http://goo.gl/HZveM) 現在、ガソリン価格の高騰で国民が悲鳴をあげているにも関わらず、政府は財源確保ができないとして、トリガー条項凍結の解除の動きは見られません。 福島県は観光産業の復興にも力を入れていますが、福島県の観光課によると、旅行者の交通手段は74%が車です。ガソリン価格の高騰は、観光をはじめ、復興に大打撃となります。 また、大豆や菜種の原価高騰により、大手食用油メーカー各社は、今月から食用油の出荷価格の値上げに踏み切りました。小売価格の値上げも時間の問題です。 さらに、燃料価格が高騰する中、政府は「脱原発」という愚策を続けており、東京電力以外でも電気料金の値上げの可能性があります。 デフレ経済下で、ガソリンや食料、光熱費の価格が上がれば、消費者は消費を切り詰める以外に対処する方法はありません。 また、生産者はデフレ基調の中で売り上げ低下を恐れ、原材料の値上げ分を売価に転嫁することは容易ではありません。特に中小企業ほど、価格転嫁は難しく、コスト上昇分は賃金カット等でしのぐしかなく、失業の増大をもたらします。 こうした原油や輸入食料の価格の上昇に伴う物価の上昇は「コストプッシュ・インフレ」と呼ばれ、投資や消費を抑制し、最終的にはデフレ要因となります。 こうしたデフレ圧力だらけの経済環境下で、野田首相が推し進めていることは最大のデフレ圧力となる「消費税増税」であります。 このままでは、野田首相は後世、日本の経済を殺した「史上最悪の首相」として名を残すことになるでしょう。(文責・加納有輝彦) 日本は「世界のリーダー国家」として、エネルギー・情報「インフラ」を整備・輸出せよ! 2012.04.05 電力は日本の「ものづくり」やビジネス活動の根幹です。しかし、現在、国内54基の全原発の停止による電力不足の懸念や、東京電力による電気料金の値上げの問題が、世間を賑わせています。 日本は3.11以前においては想像もしていなかった電力危機に陥っており、政府は「発送電分離」「電力業界のルールの見直し」「風力や太陽光をはじめとする再生可能エネルギーの拡大」「省エネの促進」等を検討しています。 今後の日本の電力事情の大きなトレンドとして、「賢い送電網」という意味の「スマートグリッド(次世代送電網)」が挙げられます。 ただ、間違えてはならないのが、「脱原発」をお題目のように唱える、「環境左翼」思想(「原発不要論」)のためにスマートグリッドを導入すべきではありません。 電力の安定供給のためには、まだまだ原子力発電は必要です。大切なことは「より便利で効率的な新しい街づくり」のインフラとして導入するべきです。 この「スマートグリッド」は「供給・需要側の双方向性を持つ、電力と情報の新しいインフラ」と定義されています。 すなわち、大規模発電(火力、原子力等)や分散型発電(風力、太陽光等)の電力供給側の情報を統合すると共に、「スマートメーター」によって家庭やオフィス等の電力需要側の情報をリアルタイムに掌握することで、きめ細かな発電が可能になります。 その結果、従来のような無駄な発電は不要になり、エネルギーの効率的利用が可能になります。また、スマートメーターを活用して、時間帯に応じた柔軟な料金メニューを設定する事で、料金インセンティブによる需要抑止(ピークカット)やピークシフト効果も期待されています。 この「スマートグリッド」を導入するポイントとしては、下記3点が挙げられます。 第一に「IT技術を利用した電力系統の管理・制御」です。 家やビル全体のエネルギー供給、需要の状況を総合的に把握し、電気機器や設備を集中的に管理することによって、電力の安定性、効率性を高めることにあります。 第二に「再生可能エネルギーの利用の拡大」です。 既存の技術である火力や原子力と、新たな技術である再生可能エネルギーを融合することにあります。 再生可能エネルギーの多くは天候任せのものが多く発電量の予測がしにくいため、既存の集中型電源と同時に利用するには、双方の発電量を正確につかんで、需給バランスを一致させる必要があります。 予測が難しい自然エネルギーの割合が増えると、電気機器の故障や停電恐れが生じ、一定の「電力品質」を保つことが出来なくなります。現在の電力網のままでは、導入限界は全体の10~20%と言われています。 第三に「エネルギー安全保障レベルの向上」です。 国全体のエネルギー効率を上げ、再生可能エネルギーを導入することにより、石油輸入を減らすことにあります。米国や韓国、シンガポール等では、スマートグリッドを導入するプロジェクトは「エネルギー安全保障」の一環として、はっきり位置づけられています。 スマートグリッドは「次世代送電網」とあるので全てが「新しい技術」なのかというとそうではなく、既にこの言葉が登場する以前から研究開発、導入されているものが多くあります。 「新しい」のは、これらを統合し、イノベーションさせた点にあります。既存の技術と新たな技術を最大限に有効活用するための、エネルギー、情報の「インフラ」なのです。 このようなスマートグリッドを地域に導入し、「スマートシティ(環境配慮型都市)」をつくり出そうという動きは既に始まっています。 2010年に経済産業省が、「次世代エネルギー・社会システム実証地域」として、横浜市、愛知県豊田市、京都府けいはんな学研都市、北九州市の4地域を指定し、実証実験がなされています。 他にも、「スマートシティ」を日本再興の原動力にしようと、被災地の6地域を含む全国11か所の環境未来都市でも取り組みがなされています。 また、世界に目を移してみると、中国を中心にしたアジア諸国、中南米や中東・アフリカ諸国等でも、安定した効率の高い系統の構築に向けて、急速にスマートグリッド導入の気運が高まっています。 世界のエネルギー関連企業やシンクタンク等の調査では、年間約100兆円以上の市場規模に成長すると予測されており、中には、500兆円規模まで成長するという意見もあります。今後、スマートグリッドに端を発するトレンドはますます加速していくでしょう。 日本の取るべき道としては、日本発の「スマートシティ」の国際標準をつくり、それを輸出していくべきです。 新興国が「スマートグリッド」を自ら構築することは非常に困難です。日本は、世界の「リーダー国家」として、エネルギー・情報「インフラ」を輸出していく気概を持つ必要があります。 国内外で増税キャンペーンを展開する財務省の実態 2012.04.04 財務省の増税キャンペーンが一層エスカレートしています。 既に、HRPニュースファイル231「マスコミの増税キャンペーン―『アメとムチ』でマスコミを操る財務省」(http://goo.gl/EkGWs)と232『「聖なるもの」の懐に手を突っ込む財務省、マスコミの危険性」(http://goo.gl/j32Ii)が指摘するように、いよいよ宗教法人課税を本格的にちらつかせてきました。 また、増税反対論者のテレビ出演に圧力をかけるなど、最近の増税キャンペーンは行き過ぎた感を否めません。 国民集会をけん制か? さて、3月31日は「増税が国を滅ぼす!国民集会」でしたが、国税庁による朝日新聞による申告漏れ指摘は前日の3月30日でした。私は、ここには、「何らかの政治的意図」を感じざるを得ません。 今回の国民集会は、事前に全マスコミにプレスリリースとマスコミ向けの懇親会(記者会見)まで用意したにも関わらず、主要マスコミの参加はゼロ。デモ集会を報道する記事も結局ありませんでした(前回の11月5日の集会は、主要マスコミでは産経新聞のみが掲載)。 つまり、どちらかと言えば増税キャンペーンに便乗していた朝日新聞をやり玉にあげ、増税に反対するマスコミを黙らせる意図があったとしか思えません。財務省の悪口を書けないマスコミが、増税に反対する国民集会を取材するのは、さぞやリスクの高いものであったのでしょう。日本のメディアは、真のジャーナリスト精神を放棄してしまったのでしょうか。情けない限りです。 御用学者を使って国民を洗脳する 客観的に見ても、財政再建には経済成長や歳出削減という方法があるにも関わらず、主要マスコミが増税一本槍しかないのは異常と言わざるを得ません。経済成長を過小評価し、成長に伴うインフレ路線では財政再建できないという「御用学者」を総動員してまで増税を目論む姿勢には閉口せざるを得ません。 過去のニュースファイルでも指摘してきたとおり、デフレ不況時の増税は「禁じ手」であり、日本経済に大打撃を与えます。 増税による財政再建が失敗しているにも関わらず、あえて増税に踏み込むのは、増税を実現することで「甘い果実」を吸える体制があるからです。予算の差配権を掌握し、政治家やマスコミを牛耳る力がある財務省の権限は、必要以上に大きくなっているのです。(3/29放送 幸福実現TV「増税亡国論」参照⇒http://goo.gl/0dRbI) IMFを通じて増税をしかける狡猾さ 財務省の手口は、海外機関を利用していることにも注目するべきです。現在、IMF(国際通貨基金)の副専務理事には、元財務官僚の篠原尚之氏がいます。日本人として副専務理事に就任しているのは、日本政府がIMFへの出資金が大きいことと比例しています。その関係で、財務省のスタッフも数十人派遣されており、主に日本の経済分析を担当しています。 海外の研究者よりも、日本人の方が日本経済の分析は正確だということもあり、IMF内では、財務省官僚が日本向けのレポートを作成することが多いのです。そのため、最近はIMFからの増税提言が増えているのです。実際、篠原尚之副専務理事は、2月上旬に都内で記者会見を行い、野田総理の消費税増税を「歓迎する」とコメントし、消費税は15%まで引き上げる必要性を主張しています。⇒http://bit.ly/HXrhY5 IMFは性急な財政再建を戒めている しかしながら、増税を歓迎するIMFといっても、必ずしも一枚岩ではありません。 IMFトップのラガルド専務理事は、昨年の8月にフィナンシャル・タイムズのインタビューの中で、「性急な財政再建は景気に悪影響」を及ぼすことを指摘しています。まるで、数週間後に誕生する野田政権をけん制するかのタイミングでした。 現在でも、IMFのチーフエコノミストのオリヴィエ・ブランシャール氏はラガルド専務理事と同じ発言を繰り返し、債務削減は長期戦で取り組むことを主張しています。⇒http://bit.ly/Heq18D 日本国内でも世論は変わってきている ここまで見てきたように、財務省は国内外を通じて消費税増税を含めたあらゆる増税キャンペーンを展開しています。しかしながら、海外ではIMFをはじめとして、2001年のノーベル経済学者のJ・スティグリッツ、2008年のノーベル経済学者のP・クルーグマンを筆頭に日本の増税路線を批判しています。財務省の目論みは、海外では評価されていないのです。 そして、日本国内でも消費税増税に反対する意見が強くなってきました。世論調査では、「増税はしかたない」という意見も多いのですが、少しずつ増税に反対する数字が強くなってきています。このまま国民の承諾がないままに増税路線を突っ走る野田政権は、民主主義のルールを完全に逸脱しています。 財務省の「操り人形」と化したドジョウ総理は、このまま日本経済を泥沼に引きずる愚策を展開していると言わざるを得ません。 幸福実現党は、野田総理の即刻退陣と消費税増税法案の成立を断固として阻止するべく、関連団体とも協力していく次第です。(文責:中野雄太) 「聖なるもの」の懐に手を突っ込む財務省、マスコミの危険性 2012.04.03 昨日のHRPニュースファイル231「マスコミの増税キャンペーン――「アメとムチ」でマスコミを操る財務省」(http://goo.gl/EkGWs)で指摘されているように、3月30日の朝日新聞に「申告漏れ指摘、本社が修正申告」という記事が掲載されました。 翌31日の朝日新聞は社説「税制改革の法案提出―やはり消費増税は必要だ」を掲載し、もはや朝日新聞は財務省や民主党の「増税キャンペーンチラシ」に成り下がっています。戦時の「大本営新聞」の本領を発揮しています。 加えて、朝日新聞は4月3日、「宗教法人 なぜ非課税」と題し、「宗教法人に課税する話は最近耳にしない。やっぱり、聖域なの?」と問題提起し、全面を使って、財務省が目論む宗教法人課税論を展開しています。財務省に対して、「これで許してくれ」と言わんばかりです。 その背景には「不況の中で消費税増税は許されない」という国民の憤りを、税制で優遇されている宗教法人に向けようとする財務省の思惑が透けて見えます。 同紙面で宗教法人課税を強く主張している中村うさぎ氏(作家・エッセイスト)は、「税金を滞納し、督促されていた時期がありました。そのころも、宗教法人が税制で優遇されるのは変だなとは思っていました」と、感情論で宗教法人課税を論じています。 中村氏は宗教法人課税を論じておりながら、そもそも、宗教法人が出版事業などの収益活動の税金を払っていること、僧職者も税金を払っていることなどの基礎知識さえも理解していませんでした。(『ザ・リバティ』2011年10月号⇒http://goo.gl/VWuxW) また、中村氏は宗教法人の非課税を公益性の観点からしか論じていませんが、そもそも、宗教活動は非営利活動であり、課税の対象である「利益」が存在しないこと。そして何よりも、課税とはお金を通じた公権力の行使であり、「信教の自由」の弾圧を意味することを全く理解していません。 こうした「理屈などいい。とにかく宗教に課税せよ」というエモーショナルな議論には大きな危険性があります。 宗教に課税すれば、宗教法人は課税当局の日常的な監視下に置かれます。課税権は警察権と並ぶ、国家の二大権力であり、宗教法人課税は、公権力が宗教活動に介入することを禁ずる「信教の自由」の侵害に繋がります。 中国や北朝鮮など、「信教の自由」が無い国のほとんどが全体主義国家であることからも分かるように、「信教の自由」の弾圧から「隷属への道」が始まっていくのです。 駒澤大学名誉教授の洗健氏は「政教分離の原則を設け、課税という国家権力の発動で国家が宗教に介入できないように配慮している」と述べています。(同上) また、中村うさぎ氏は「葬式や戒名に対するお布施だって、私たちはいわばサービスの対価として払っている」と述べています。 「対価性」については、洗健氏は「お布施は聖職者の『サービス』や『労役』の提供に対して払われる対価ではない」と述べています(同上)。すなわち、布施は信者にとっては純粋な感謝を神仏に捧げる行為であり、「対価」ではないということです。 そもそも、宗教団体が非課税措置を受けているのは、「公益性」を持つ宗教法人の活動を保護するために、国家が非課税措置を講じているためです。 これに対して、中村うさぎ氏は「公共性があるという実感は持てません」と、またもや感情レベルの議論をしています。 宗教の「公益性」としては、直感的に分かりやすいものとしては、学術や芸術の振興、福祉の増進、教育、環境保全などがありますが、宗教の最大の公益性は「目に見えない」公益活動、すなわち、「心の救済活動」「魂の救済活動」にあります。 具体的には、教義の流布、儀式行事の開催、信者の強化育成などがあり、この場合の「公益性」としては、人々を幸福にし、人々の道徳性を陶冶し、社会の安寧に寄与することなどが挙げられます。 更に、高次な宗教の「公益性」として、国家や社会に対して、正しい価値観を提示し、「世直し」の活動を通じて、世の中を善導していくことも挙げられます。 そもそも、増税の責任は、無計画な国家運営を続け、税金や年金積立金を湯水のように無駄に使い続け、経済発展を怠り、財政赤字を拡大して来た政治家や官僚にあります。 政治家や官僚は、その責任を国民に転嫁し、税が取れる余地を求めて、ついには「聖なるもの」の懐にまで手を突っ込むような卑俗な行為はやめ、「経済成長」を実現し、国民の幸福の最大化と税収増を目指すべきです。(文責・黒川白雲) マスコミの増税キャンペーン――「アメとムチ」でマスコミを操る財務省 2012.04.02 政府が消費税増税関連法案を閣議決定した、3月30日の朝日新聞朝刊に「申告漏れ指摘、本社が修正申告」という記事が掲載されました。⇒http://goo.gl/4HptH 朝日新聞社は、東京国税局から2億5200万円の申告漏れを指摘され、修正申告し、法人税約7500万円を納付しました。朝日新聞社広報部は「指摘を真摯に受け止めます」とコメントしています。 そして翌日、3月31日の朝日社説のタイトルは「税制改革の法案提出―やはり消費増税は必要だ」です。大マスコミによる堂々たる「増税キャンペーン」です。 社説の冒頭で「消費増税が必要だ。私たちはそう考える。しかし国会でも国民の間でも異論が絶えない。まずこんな疑念である」と述べ、その後、国民の疑問の声を三つあげて、それに答える、という内容です。 その三つとは、(1)「なぜ増税が必要か、なぜ消費税なのか?」、(2)「増税に頼らなくても財源はあるはずだ」、(3)「低成長が続く中、増税しても大丈夫?」というものです。 これに対し、政府・官僚の視点から都合よくかかれています。しかし、(1)増税によって税収が減少する可能性があること、(2)公務員改革や政府の資産売却、天下り特殊法人の整理等が手つかずのまま放置されていること、(3)増税に伴う不況の到来、経済成長による税収増等の論点は意図的に無視、隠蔽されています。 これでは社説ではなく、朝日新聞は、もはや財務省や民主党の「増税キャンペーンチラシ」に成り下がっていると言えます。 やはり、国税局の査察、申告漏れ指摘という「ムチ」が影響しているのではないかと勘繰りたくなります。 朝日新聞一社に起ったことは、他のマスコミも影響が出ます。こうして、マスコミ各社は財務省主導の増税路線に乗っかり、一斉に「消費増税必要」論調になっているのではないでしょうか。 また、財務省は「新聞業界に対する軽減税率(特定の品目だけに適用される低い税率)の適用」という「アメ」も使ってマスコミを操縦しています。 既に2011年7月12日、大手新聞社など130社以上が加盟する日本新聞協会は、消費税について「軽減税率の適用」の要望書を提出しています。(日本新聞協会HP「税制改正で経産省に要望」⇒http://goo.gl/uV054) 財務省に「軽減税率」という利権が生まれれば、適用する代わりにその業界に「財務省役人の天下り先」を確保できます。 実際、読売新聞では2010年11月に、同年7月まで財務省事務次官の座にあった丹呉泰健氏(財務省顧問)を社外監査役として「天下り」を受け入れています。背景にあるのは「軽減税率の適用」要求だと言われています。 元・大蔵官僚で嘉悦大学教授の高橋洋一氏は「(軽減税率を求めて)各種業界団体が個別に、財務省に陳情にやってくる。財務省は業界団体からの要求を受け入れる代わりに、業界団体に財務官僚を天下りさせる。こうして、財務省は権益を拡大していく」と「財務省の増税利権」を暴露しています。(「消費税増税はなぜダメなのか?高橋洋一 緊急インタビュー」⇒http://goo.gl/op80T) いずれにせよ、マスコミは財務省と大手マスコミは既に「蜜月状態」にあります。「軽減税率」を与える代わりに、財務省の言い分を押し付け、天下り先を確保する。増税に反発するマスコミに対しては、国税局の権力を使って脅せば、容易に財務省の軍門に下ります。 これが「アメ」と「ムチ」を使った財務省の増税手法です。しかし、マスコミは「社会の木鐸」として、真実を伝える使命を忘れないで頂きたいと思います。 朝日新聞に「やはり消費増税は必要だ」が掲載された3月31日には「増税が国を滅ぼす!国民集会」が行われました。⇒http://goo.gl/0aMtP 消費増税が閣議決定された翌日でもあり、関心が高く、全国から約3000人が集まり、日本では稀にみる大規模デモ行進となりましたが、日本のマスコミは一切報道しませんでした。政府や財務省、マスコミには国民の声など聞こえないのでしょう。 しかし、いくら財務省が増税に誘導しようとも、マスコミが「消費増税」を煽ろうとも、、国民の過半数は賢明にも「消費増税にNO!」と言っています。 毎日新聞が3月31日と4月1日に行った全国世論調査によると、消費増税に「反対」は60%を占めました。(4/2 毎日「消費増税、反対依然6割」⇒http://goo.gl/Lvgbl) 「まず増税ありきではない。経済成長あってこそ税収増がある」――この簡単な論理が分かり、実践されたなら日本は浮上できます。幸福実現党は、国民が正しい選択をできるよう、真実を訴え続けて参ります。(文責・竜の口法子) 北朝鮮ミサイル迎撃態勢の問題点――日本は北朝鮮の「核の刀狩り」を目指せ! 2012.04.01 4月に入り、北朝鮮のミサイル発射が近づき、日本の国防体制の緊張が高まっています。 北朝鮮が4月中旬に「人工衛星を打ち上げる」と予告していることを受け、30日、田中防衛大臣は、一部が日本国内に落下する場合に備えてミサイル防衛システムで迎撃する「破壊措置命令」を発令しました。(3/30 NHK「破壊措置命令で自衛隊展開へ」⇒http://goo.gl/FbsCf) 地上配備型の迎撃ミサイルPAC3の部隊は、予告された飛行コースに近い沖縄県内の那覇市と南城市の航空自衛隊の基地と宮古島、石垣島の4か所に展開します。 迎撃ミサイルSM3を搭載したイージス艦3隻が来週以降、日本海や沖縄周辺の東シナ海に展開する計画です。 さらに、首都圏に落下するおそれが出てきた場合に備えて、東京・市ヶ谷の防衛省と朝霞訓練場、習志野分屯基地の3か所にもPAC3を展開します。 今回の破壊措置命令は、2009年4月、北朝鮮が人工衛星の打ち上げと称してミサイルを発射した際と同じように、破片が日本に落下した場合に迎撃するというものです。 この迎撃は、本来、超高速で落下してくる核弾頭を迎撃するというミサイル防衛システムとは異なる使い方をすることになります。 この迎撃における最大の問題点は「破片を打ち砕いても、破片が細かくなるだけで根本的な解決にはならない」ということにあります。 また、PAC3については、射程は上空20キロで、しかも、真上にしか打ち上げられず、専門家は「PAC3の真上から落ちてこないと命中しない」と指摘しています。(4/1 スポニチ「北の『衛星』迎撃準備進むも…確率『0%』!?」⇒http://goo.gl/GlhbQ) なお、日本政府は3月25日、発射情報を自治体に速報する「Jアラート」(全国瞬時警報システム)を活用する方針を固めていますが、これにも課題があります。(3/26 産経「Jアラートで即時通報へ 発射確認後1、2秒で自治体に」⇒http://goo.gl/ikUHn) 落ちてくる破片から身を守るためには、警報が出されてから破片を避けるためには丈夫な建物内に素早く避難する必要がありますが、これに対する日本政府の事前の取り組みは甘いと言わざるを得ません。 日本政府は、このような事態に際して統一した枠組みを定め、沖縄県民に周知徹底させ、事前に訓練を重ねる必要があります。日本は政府も沖縄県庁も「平和ボケ」の極致にあります。 また、先日のソウル核安全保障サミットは、日本側から北朝鮮の核問題に言及する絶好の機会でした。にも関わらず、野田首相は、国民を苦しめる消費税増税に自らの政治生命を賭けるのみで、日本の首相として、現在の日本が置かれている状況を全く理解していません。 野田首相の頭の中は「国民を守ろう」という国防の意志が欠けており、「国民から税金を搾り取ろう」という考えのみが支配しているようです。 民主党政権に真に国民の生命と財産を守るという意志があれば、まずなすべきことがあります。それは消費税増税などでは決してなく、「北朝鮮の核兵器の脅威を取り除く」ことです。 日本は迎撃体制を整えつつも、米国、韓国、ロシア等とも連携し、外交上の圧力を強め、「北朝鮮の核の刀狩り」を実施すべきです。それが、日本国民の生命・安全・財産を守り抜く最後の砦(とりで)となるのです。(文責・佐々木勝浩) 「内憂外患」の日本――そして希望 2012.03.31 国や組織が衰退していく時に見舞われる兆候として「内憂外患」という言葉が使われますが、日本はまさに、その真っ只中にあります。 政府は30日、消費税率を2014年に8%、2015年に10%に引き上げる消費税増税関連法案を閣議決定し、国会に提出しました。それを巡って永田町は混乱を極めています。 もし、消費税増税法案が成立すれば、ただでさえデフレ不況と東日本大震災で大打撃をうけている日本経済は沈没し、二度と立ち上がれなくなります。 野田首相を影で操る勝栄二郎財務事務次官ら官僚勢力は、政治の劣化と国家危機を利用して、自らの権益と利権、既得権益の拡大に奔走しています。――まさに「内憂」です。 そんな日本の政治と行政の劣化を見透かしたように、北朝鮮は、日本の領土である尖閣諸島や沖縄上空をめがけて長距離弾道ミサイルの発射を予告。 そうした危機から国民の生命を守るべき防衛大臣は、かろうじてイージス艦3隻とパトリオットPAC-3を沖縄県内に配備して迎撃態勢を準備するものの、アメリカの国防戦略(エアシーバトル構想)も知らず、PAC-3をP3C(哨戒機)と言い間違えるという「素人」ぶりです。 それと前後して、中国が尖閣諸島の領有と主権の確保=実効支配に向けた、矢継ぎ早の行動を起こしています。 日本政府が、尖閣諸島4島を含む計39島に名前を付けて公表すると、中国政府(国家海洋局と民政省)はこれに激しく対抗して、尖閣諸島の71島すべてが中国領土だと主張し、中国名を付けて発表(3月3日)。 さらに人民解放軍の現役少将が中国のテレビ番組に出演し、「釣魚島附近で軍事演習を行う必要がある」と、武力を背景に日本を恫喝(3月6日)。 そして沖縄・尖閣諸島沖の日本の領海に中国国家海洋局所属の巡視船「海監50」と「海監66」の公船2隻が侵入し、「魚釣島を含むその他の島は中国の領土だ」と公言するという暴挙に出ています(3月16日)。 中国はいよいよ、尖閣諸島の実効支配に向けて本格的に動き始めました――まさに「外患」です。 日本の政治が内部から腐敗し、それが外敵を呼び込み、国家を存亡の危機に直面させているのです。それが「内憂外患」の正体です。 その危機から日本を救う方法は、まず日本の政治に新しい理想と理念を吹き込み、それを実行する新しい政策を打ち立て、私たちの力で実行していくことです。 実は今、日本が闇に沈もうとする中にあって、そうした「希望」の光もまた、輝きを増しています。 その一つが昨日3月31日、東京で開催された「増税が国を滅ぼす!国民集会」です。(開催報告⇒http://goo.gl/0aMtP) あいにくの悪天候にもかかわらず、会場には約3000名が大結集し、過去最大級の集会・デモとなりました!首都圏のみならず、全国各地からも貸し切りバス等でご参加頂き、誠にありがとうございました。 国民集会には「増税に反対し、小さな政府を実現する」という政策に賛同する数多くの市民団体や支援者の方々が全国から駆け付け、財務省のある霞ヶ関一帯や新橋、銀座に、雨天を吹き飛ばす「増税反対」の声が響き渡りました!! また来たる5月3日(木)には、同じく東京日比谷で、幸福実現党主催の「国防強化を求める国民集会&デモ」も開催される予定です。 現在の政治は与党も野党も含め、幕末の幕府のように利権と腐敗、官僚支配の極致にあり、今こそ、大胆な維新が必要です。 今、暗闇に沈もうとする日本にあって、新しい経済政策と新しい国防政策に基づく、新しい政治を実現する国民運動が広がろうとしています。 それが、幸福実現党の存在であり、それを支援する方々の活動の広がりです。 闇が深まれば深まるほど、光もまた強さを増していきます。ここに未来への確かな希望があります。その主役は、私たち一人一人にほかなりません。 「内憂外患」が深まる中、一人でも多くの国民の皆さまが、この「救国の活動」に参加頂くこととを心より願っております。(文責・矢内筆勝) 「国民の承諾なき増税」は民主主義に反する暴挙だ! 2012.03.30 政府は30日午前、消費税増税関連法案を閣議決定しました。閣議決定反対を理由に連立政権からの離脱方針を表明した国民新党の亀井代表は、首相の慰留を拒否しました。 また、民主党の小沢一郎元代表グループの牧義夫厚生労働副大臣ら政務三役4人と、鈴木克昌幹事長代理ら党役職13人が増税に反対して辞表を提出しました。(3/30 東京「消費税政局、小沢系17人が辞表」⇒http://goo.gl/5bsoT) 自民、公明両党も早期の衆院解散・総選挙に向け攻勢を強めており、「消費税政局」は民主党分裂、解散の可能性を強めつつ、決戦本番に突入しました。 小沢氏らは法案採決で造反も辞さない構えで、国民新党の連立離脱問題をめぐる混乱で政権基盤は揺らいでおり、首相は一段と厳しい立場に追い込まれています。 また、民主党執行部は26日、法案の正式名称を「消費税法改正案」から「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案」に変更しました。 「社会保障」という大義名分を前面に押し出し、長く複雑な名称にして国民の理解を攪乱し、「増税の印象を薄めよう」という意図がありありと透けて見える姑息な法案名です。 これは官僚が最も得意とする、「国民の目」を潰すための「煙幕」の一つであり、国民をバカにした愚民化政策そのものです。 また、最近になって、先月2月25日「野田・谷垣密談」は間違いなく行われたと断定する報道が相次いでいます。その中でも特筆すべきは、独立総合研究所青山繁晴所長の発言です。(3/28「アンカー青山繁晴のニュースDEズバリ」) 青山氏によると、密談で、自民党から消費税増税の対案を出させ、野田首相がそれに乗っかるという筋書きが決まりました。自民党の対案に乗っかるとなれば、衆参両院で法案が可決される可能性が高まるというわけです。 しかし、与野党党首の「密談」で、なし崩し的に増税法案が国会で成立するとなれば、これこそ「民主主義の死」を意味します。 1776年のアメリカの独立宣言、1789年のフランス人権宣言には、「税の負担には人民の承諾が必要である」と高らかに謳われています。 現在の日本にあてはめれば、消費税の増税には、主権者である国民の承諾が必要であるということです。(『増税亡国論』p.47 千葉商科大大学院 吉田寛教授 特別寄稿参照⇒http://goo.gl/gvPx2) 万が一、今国会で消費税増税法案が成立するようなことがあれば、「国民の承諾なしに増税が行われた」ということであり、日本の民主主義は、18世紀以前の「専制君主」の時代だということです。 主権者である国民が承諾は選挙によって示されます。それでもなお、野田首相は増税を実行したいならば、正々堂々と即刻解散総選挙を行い、民意を問うべきです。それが民主主義のルールです。 私たち国民は、増税を断固承諾していないことを「増税反対デモ」という形で表明していきたいと思います。 つきましては、本日3月31日、日比谷公園野外音楽堂にて「増税が国を滅ぼす!国民集会」が開催され、幸福実現党も協賛団体として参加致します!⇒http://goo.gl/AAEkQ これは日本の民主主義を守るための戦いでもあります。万象繰り合わせの上、是非とも本日のデモにご参集頂きますよう、お願い申し上げます。(文責・加納有輝彦) 今こそ「エネルギー安全保障」体制の柱を立てよ! 2012.03.29 現在、中国の尖閣侵攻や北朝鮮の「衛星」打ち上げなど、明らかに日本の安全保障は危機に陥っています。 同時に、日本の一次エネルギーの半分以上を賄っている「原子力」と「火力」という主力エネルギーが危機的状況にあり、「エネルギー安全保障体制」も崩壊しかかっています。 「原子力」に関しては、3月26日には柏崎刈羽原発6号機、5月には北海道の泊原発3号機が定期検査に入るため、国内54基すべてが停止する事態が待っています。 また、3月26日に行われたエネルギー計画に関しての経産省の審議会において、2010年に政府が立てた「2030年に原子力を全体の45%の割合にする」という基本計画から、「最高でも35%、最低だと廃止」という流れに変わり、政府内部も着々と「脱原発」に舵を切りつつあるのが見て取れます。 また「火力」に関しては、原子力発電の全面停止によって原油への依存度が更に高まる中、原油を約9%を依存しているイランに対する国際的な制裁措置、そこから生じるホルムズ海峡におけるリスクは、原油の9割近く、天然ガスの約25%を中東に依存する日本のエネルギー事情を直撃しています。 こうした日本が抱えるエネルギーの「二重苦」は何を引き起こすのでしょうか? まず、ガソリンなどの液体燃料や電気価格の高騰が考えられます。実際、「脱原発」により、電力各社が調達する液化天然ガス(LNG)と石油量が急増し、燃料費は前年同期に比べて1兆4000憶円以上増えています。 また、年間を通じて原発を止めることで、燃料費は3~4兆円増加すると言われています。 これに加えて、更に原油価格の高騰が続くと、国内の国民生活や経済活動に大きな支障が出る程、電気やガソリン等の価格が高騰し、更に中東情勢が劇的に悪化した場合、原油の絶対量不足による電力供給が途絶える可能性も十分にあります。 実際に、大震災以降のこの1年間で、ブラックアウト(大規模停電)寸前の事態を含め、深刻な供給不安はすでに「3回」も発生しているという事実を私達は知らなくてはなりません。(『WEDGE』4月号「3度あった停電の危機」橘川武郎(一橋大学大学院教授)) 一方で、地球環境や人間生活に有害性の高いというレッテルを貼られた「原子力」や「火力」から、「再生可能エネルギー」へのシフトがメディアなどでも大々的に謳われています。 確かに「海洋温度差発電」や「洋上風力発電」など、長期的に考えると非常に有望なエネルギー源もありますが、今の自然エネルギー関連の発電や蓄電の技術では、経済活動のコストに見合う電力を得ることは難しいと言われています。 実際に、福島第一原発事故の影響で「脱原発」を法制化したドイツにおいても、風力発電などを中心とした再生可能エネルギーの普及を急いでいますが、環境破壊とコストの観点から建設が遅れており、原発稼働停止によって電力供給の余裕は無くなりつつある有り様です。 私たち日本は「財政規律や増税、脱原発がトレンド」のEUの国々を模倣することなく、長期的視点と短期的視点をしっかりと見極めることが重要です。 そして、長期的には「火力」や「原子力」に頼らなくても良いクリーンな新エネルギーの開発を目指しながらも、短期的には現実的かつ安定的な「エネルギー安全保障体制」を確立することが先決です。 具体的に、この10年に必要な「エネルギー安全保障体制」のポイントを下記4点述べます。 第一に、「原子力発電を全面的に再開すること」です。 そのためには、政府として最善の原発運用体制を整備する共に、「福島の甲状腺被爆量はチェルノブイリの1000分の1以下であり、健康被害は起きない」(『リバティー』札幌医科大学 高田純教授⇒http://goo.gl/mhh7D)という正確な調査結果を世間に浸透させ、感情論による「脱原発」を一刻も早く終わらせることです。 第二に、「原油供給・備蓄体制の見直すこと」です。 具体的には、ホルムズやマラッカなど海峡リスクが生じないアメリカやカナダ、ブラジルやオーストラリア、ロシアといった資源大国への輸入先の多様化を促進し、高すぎる中東依存度を下げることです。同時に、東北大震災など有事の際に全く無力だった原油の政府備蓄体制を、有事に強い備蓄体制に変革していくことです。 第三には、「原油への依存度低下を目指すこと」です。 具体的には、LNGやシェールガスなど、他の化石燃料へのシフトを急ぎ、原油依存度を下げることです。また、何よりも、日本近海でLNG消費量の14年間分の埋蔵が確認されているメタンハイドレートの実用化を一刻も早くさせることが求められます。 何よりも第四には、「日本の外交力を高めること」です。 資源小国・日本のエネルギー安全保障の安定化を担保するものは、まぎれもなく「外交力」であります。にもかかわらず、内政問題に足を取られて、核サミットという重要な外交な場で成果を出せず、日本の国際的なプレゼンスを低下させ続ける野田首相は言後同断です。 今こそ日本の外交力を高め、エネルギー安全保障体制を確立する「強いトップリーダー」の登場が期待されます。(文責・城取良太) すべてを表示する « Previous 1 … 228 229 230 231 232 … 253 Next »