Home/ 記事配信 記事配信 日本の農業とコメ文化を破壊する「減反」を今すぐやめよう【幸福実現党NEW174号解説】 2025.07.17 幸福実現党政務調査会代理 小川佳世子 幸福実現党NEW174号 https://info.hr-party.jp/newspaper/2025/15014/ ◆なぜおコメは高くなったのか? おコメの値上がりが止まりません。 5月7日に発表されたコメ5キロあたりの平均販売価格は4233円で、17週連続の値上がりとなりました。 5月中旬に入って、ようやく前の週から19円だけ値下がりしましたが、依然として1年前の約2倍以上の価格になっていることは変わりません。 自宅で食べるおコメだけでなく、飲食店ではご飯の大盛やおかわりの無料サービスがなくなったり、コンビニのおにぎりが値上げされたりと、おコメの値上がりは家計に大きく響いています。 なぜ、おコメはこれほど高くなってしまったのでしょうか。その原因はズバリ「減反政策」です。減反政策とは、コメを作る田んぼの面積を減らし、コメの生産量を調整することで、おコメの値段を高く維持する政策です。 政府は「2018年に減反政策をやめた」と主張していますが、主食用のコメの代わりに家畜のえさ用のコメを作ると、補助金がたくさんもらえる仕組みが維持されており、主食のコメの生産を計画的に減らし続けている状況は変わりません。 実際、2023年秋に収穫されるおコメの量を、前の年より10万トン減少させるという計画を進めていたのですが、猛暑などの影響でコメの収穫が計画よりさらに30万トン減ってしまいました。 コメは工業製品などとは違い、安ければその分買う量を大幅に増やしたり、逆に高くなったら買うのをやめたりする商品ではありません。 年間を通じて同じくらいの需要があり続け、また1年に一度しか収穫できませんので、全体からすればわずかな生産量の減少であったとしても、供給が減るとすぐ値上がりしてしまうのです。 中国人や転売ヤーといわれる人たちがたくさん隠し持っているわけではなく、おコメの生産量を政府が計画的に減らしたため、コメが不足しているというのが、今回の値上がりの最大の原因です。 しかも、「コメの収穫量が増えれば価格が下がる」ため、単収といって「単位面積当たりのコメ収穫量を増やす」品種改良も日本はやめてしまいました。その結果、同じ農地面積で、アメリカ産のコメの生産性は日本の1.6倍となっており、かつて日本の半分の生産性しかなかった中国にも抜かれてしまいました。 なぜここまでしてコメの生産を減らしているのかといえば、コメの価格を高く維持して、小さな農家の収入を守ろうとしているのです。もちろん、善意からではありません。小さな農家は自民党の票田なので、農家を敵に回せば、自民党は地方の選挙で勝てなくなるからです。 ただ、あまりにコメが高くなり、消費者から批判の声が上がっているので、政府は備蓄米の放出を決めました。備蓄米とは、本来、災害や有事などでコメが足りなくなった時の緊急用に保存しておくべき食糧ですから、本来、価格調整のために出すものではありません。 しかし、備蓄米まで放出しても価格は上がり続けました。なぜなら、ほぼすべての備蓄米は、コメの価格を下げたくない農協に渡ったからです。 ◆コメは一粒たりとも入れないという貿易政策 さらに、日本は、コメの生産を減らすだけでなく、外国産のコメに高い関税をかけて、輸入をしないようにしてきました。輸入が増えれば、当然、コメの価格が下がるからです。 政府の本心としては、コメは一粒たりとも入れたくなかったのですが、自由貿易を推進するWTO(世界貿易機関)の加盟国として、「自動車などは自由に輸出したいけど、コメは一切輸入したくない」というわけにはいかず、「最低限のコメは政府が買うので、コメの自由貿易は勘弁してほしい」ということで、年間約77万トンのコメを輸入しています。 これをミニマムアクセス米と呼んでいます。 しかもこのミニマムアクセス米は主食用としての利用は最大10万トンまでとなっていて、他はあられや味噌などに加工するためのコメか家畜のエサとして安く売られています。その結果、年間700億円近くの赤字が出ているのです。 一方、民間がコメを輸入する時には1キロあたり341円という関税をかけています。 ここ数年のコメの卸売価格は、1キロあたり240円でしたので、1キロ341円の関税がかけるなら、外国産のコメはタダであっても国産米より高くなるため売れず、輸入されないというわけです。 とはいえ、現在では国産のコメの価格が2倍以上になったため、341円の関税がかかっても外国産の方が安く売れるため輸入が増え、アメリカ産や台湾産の米が流通し始めました。 現状では「多少高くても、国産米が食べたい」という人は多いですが、今後、国産のコメがもっと高くなれば、消費者はやむを得ず外国産のコメを買うようになります。 また、大阪府交野市の小中学校では、コメが高くなったため、おコメの給食を週3回から週2回に減らすことにしたと報じられました。 一般の消費者でも「コメが高くなったので、最近はパスタなどを食べています」という声も聴かれるようになりました。 「日本の農業を守る」「コメは日本の文化だ」と言い張っても、市場原理をあまりに無視した政策では、国産のコメ離れを招き、コメ文化を衰退させることになります。 このように減反は、家計だけでなく、日本の文化にも大きなダメージを与えるのです。 ◆日本を危機にさらす「減反政策」 そもそも、高い税金を出して主食であるコメ生産を減らす「減反政策」は、共産主義の中国も真っ青になるような異常な政策です。 減反は、高い税金を払って高いコメを買わされる消費者の負担が増えるだけでなく、食料安全保障を損ないます。 つまり、万が一、台湾有事などが起きて、シーレーンが閉ざされて食料の輸入ができなくなれば、大半の国民が飢えて死んでしまうことになります。 何しろ現在、日本のおコメの生産量は、国民の大半が餓死した終戦後間もなくの時よりも少ないのです。終戦時は900万トンのコメを生産していましたが、現在の主食用のコメ生産量は700万トンを切っています。しかも、日本の人口は終戦時より1.7倍に増えています。 もちろん、現在はお金さえ出せば輸入ができますので、私たちの食事にはおコメ以外にも様々な選択肢があります。 しかし、その輸入が止まってしまったら、コメとイモくらいしか食べるものがなくなります。有事が起きてからコメの生産を増やそうとしても間に合わず、たちまち終戦時より悲惨な食料不足となり、国民の半分以上が飢えてしまいます。 税金を使って主食のコメの生産を減らし、国民を危機に陥れる政策は一刻も早くやめるべきでしょう。 ◆コメの価格を維持しながらコメ農家を守るには? このようにコメの価格が昨年の2倍以上になって家計を苦しめているのに、コメを生産する立場からは「今の値段でも安いくらいだ」という声もあります。 JA会長は「決して高いとは思っていない」「長年にわたり、生産コストをまかなえていないような極めて低い水準だった」と述べています。 しかし、1キロあたり341円の関税がかかっている輸入米が国産米より安く売られているということは、世界的に見て、日本のコメがいかに高いかを示しています。 現状では、国産米よりお値打ちだと感じる程度ですが、関税がかからなければ、輸入米の販売価格は1キロ当たり200円から250円程度となると見込まれています。5キロなら1200円程度になりますので、値上がりする前の日本のコメよりはるかに安いと言えます。 こうしてみると、日本の消費者は異常に高いコメを買わされていることが分かります。 政府がどれだけ農業生産者に支援をしているかを表す「PSE」という指標によれば、アメリカが12%程度、中国が14%なのに対して、日本は41%です。 このPSEは、農家への補助金や、農産物の値段を高く維持して、他国より高いコメを買わされている消費者の負担も含まれるのですが、こうしてみると、日本は相当農家を手厚く保護をしていることが分かります。 ここまでしてコメ農家を保護しているのに、まだ「コメが安いから生産コストがまかなえない」というのは政策が明らかに間違っているのです。 なぜこれだけ政府が保護しても、コメ農家はあまり利益が出ないのでしょうか。 まず挙げられるのは、日本は諸外国では農家と見なされない、小さな農家でも「農家」と見なして、政府の保護の対象にしているということです。 特にコメ生産を行う農家は、兼業農家の割合が92%を超え、家計の主な収入は農業以外で得ています。 日本では「農業は弱い産業だから保護しなくてはいけない」と思わされていますが、いわば副業でやっている小さな農家まで保護の対象になっているというだけのことです。 小さな農家は、農業用の機材を購入したりレンタルしたりしても、たくさんコメを取れないので、生産コストに見合った収入が得られない、いわば生産効率が良くないのです。 一方、大規模な農家であれば、最先端の農業機器を導入しても、その分大量生産ができるので、利益が出るわけです。 しかし、日本ではコメの値段が世界的に見て高く維持されているので、生産効率が悪くても副業と考えればそこそこの収入が入ってきます。さらに、家族や親戚で食べるコメが、お店で買うよりは安く手に入るので、小さな農家もコメづくりを止めないのです。 政府が保護を止め、コメの値段が世界標準レベルに下がれば、小さな農家はコメづくりをやめ、農業で主な収入を得ている大きな農家への農地の集約が進みます。小さな農家にとっても、農地を売ったり貸したりすることでメリットがあるのです。 減反を止めて、日本でおコメをたくさん収穫できるようになれば、価格が世界標準レベルに近づいていき、日本のおいしいおコメを海外に売ることもできます。 「日本米」を一つのブランドとして海外に売り出せば、海外の富裕層にも人気が出るのではないでしょうか。 このように、海外に輸出できるくらいの量のおコメを平時から作っておけば、万が一、食料の輸入が止まった時には日本国内で食べて飢えをしのぐことができるわけです。 とはいえ、穀物の価格は、天候や世界情勢によっても大きく左右されますので、想定外に価格が下がることも考えられます。 そのような場合は、コメ作りで主な収入を得ている大規模農家の人たちの所得を支援すればよいのです。これは「直接支払い制度」と呼ばれ、EUなどでもすでに導入されています。 幸福実現党としては、基本的にはある産業の所得を補償するような政策は望ましくないという立場ですが、日本の食料安全保障強化という観点から、主食の生産を担っているコメ農家が、今後も生産を続けていけるように保護することは、ある程度必要だと考えます。 この「直接支払い制度」は、消費者は適切な市場価格でコメを購入でき、農家も存続できるうえ、食料安全保障の強化にもつながる点で、コメの生産を調整して価格を維持しようとする減反政策よりもはるかに理に適ったやり方といえます。 ◆農業に関する様々な規制を取り除く そして、農業をさらに発展させるために大切なことは、農業に関する不必要な規制を取り除くことです。 例えば、農業の生産性を高めるには、高度な経営ノウハウを持つ食品加工会社などが広い農地を取得し、農産物を生産するようなスタイルもあり得るでしょう。 しかし、現在の農地法では、株式会社が農地を取得する場合、主な事業内容が農業(耕作)である必要があります。また、半数以上の役員が、年間150日以上農業に携わらなくてはいけません。これは現実的ではありません。 ゆえに、大きな食品加工会社の場合は農地が持てず、もし持ちたい場合は、別の会社を設立する必要があるなど、いろいろ面倒なことになります。 また、個人で農地を売買したり、貸し借りしたりする場合でも、市町村に置かれる農業委員会の許可を得なくてはいけません。農業をやりたい若い移住者にとっては、農業委員会とのやり取りも農業を始める上で大きな足かせになります。 また、現在は、農家がコメを直接消費者に売ったり、中食・外食業者に直接販売や契約栽培をしたりすることも増えていますが、主に家庭で消費される主食用のコメの集荷の9割近くは、未だ農協が押さえています。 現在、新しい農協を設立するハードルは高いですが、農協設立の規制を緩和したり、地元の農協以外にも加入できるようにしたりして、新しい経営や流通の担い手が登場しやすくすることで、儲かるコメ農家をたくさん育てることができる可能性が開けます。 例えば、主食用のコメ以外にも、お酒用のコメ、寿司用のコメ、洋食に使うおコメなど、用途に合わせたコメを作って付加価値を生み、新たな販路を開拓することもできるでしょう。 農業政策を見直せば、日本の農業には大きな可能性があります。 大川隆法党総裁は、2010年2月に行われた質疑応答で、以下のように述べています。 「全世界を見ると、日本の農業は間違いなく、世界一進んでいるのです。『この世界一進んでいる農業が、高付加価値産業にならない、大きな付加価値を生めないでいる』ということは、やはり、何かの取り組みに間違いがあると考えなければいけません。 今の政府のやり方は、この世界一進んでいる日本の農業に対して、寝たきり老人のような扱い方をしているのです。『補助金を出して保護すればいい』というような考え方ではなく、もっと創意工夫を生かし、高付加価値のものを売り出していけるようにしていかなければいけません」 そのために、「世界一の技術を生かした高付加価値の商品を作る」ことと「PR戦略と共に安いものを海外に輸出していく」という二つの道を示されました。 コメ農家についていえば、世界一おいしいコメを作って高く売る道と、面積当たりの収穫量を増やす品種改良を進め、安くて安全なコメを世界に売るという二つの道があります。 小さな農家を存続させ、農家から票をもらおうという狭い了見にとらわれることはあまりに寂しい発想です。 そうではなく、日本の農業が優れた生産技術を生かし、日本も世界も豊かにする尊い使命を果たせるような、誇り高き農業政策を推し進めていくべきではないでしょうか。 時代を先取りしてきた幸福実現党大川隆法党総裁の提言【幸福実現党NEW173号解説】 2025.05.08 幸福実現党政務調査会代理 小川佳世子 幸福実現党NEWS173号 https://info.hr-party.jp/newspaper/2025/14956/ 今回は、幸福実現党NEWS173号「大川隆法総裁の政治提言 真なる幸福の実現のために」の解説をいたします。 幸福実現党は本年2025年に立党16周年を迎えます。この間、多くの方々にお支えいただきまして本当にありがとうございました。 支援者の皆さんからは幸福実現党の政策について「ぶれない」「先見性がある」と評価を頂いてきましたが、この背景には、党の創立者である大川隆法党総裁の政治思想と、その先見性に基づく具体的な提言があります。 立党以来、非常に多くの説法と書籍が出されてきましたので、そのすべてを紹介することは到底できませんが、立党16周年の節目にあたり、その一部を幸福実現党NEWSとしてまとめました。 ◆中国と北朝鮮の軍事的脅威に警鐘を鳴らす まず、党総裁が幾度となく警鐘をならしてきたものとして、中国と北朝鮮の軍事的脅威があります。 幸福実現党立党のきっかけの一つに、北朝鮮のミサイル問題があります。 2009年4月に北朝鮮が弾道ミサイルを発射した際、政府やマスコミはこれを「飛翔体」と呼び「遺憾の意」を示すだけで、何ら有効な対策を取りませんでした。 これに大川総裁は強い危機感を抱き、幸福実現党立党に踏み切ったのです。 しかも総裁は今から30年以上前の1994年7月の東京ドームでの講演会においても、北朝鮮の核について言及していました。当時、北朝鮮が核を保有しているのではないかという疑惑が取り沙汰されていたのですが、総裁は「これは疑惑ではなく、北朝鮮はすでに核兵器を保有しています。その数はおそらく六個から八個だと思います」と具体的に数字を挙げて警告を発していたのです。 30年前はまだ、北朝鮮のミサイル技術も未熟で、実際に使えるような段階ではありませんでしたが、現在では、北朝鮮は核の小型化を進め、核ミサイルの実戦配備段階に来ています。 さらに中国の軍拡への警鐘を鳴らし、日本と運命共同体と言える台湾の防衛も訴えてきました。 中国の習近平国家主席が、台湾を呑み込む野心をむき出しにするなか、大川総裁は台湾を護る日本の使命を訴え、2019年3月には、台湾のホテルで講演を行いました。 講演において総裁は「もうすでに、台湾自体が『別の国家』として成長してきています。この国家は別の国家だと思います」と述べ、別の国家なのだから「独立」などする必要はないと力強く述べました。 中国が「台湾は中国の一部だ」と主張しているなか、総裁の発言は台湾の人たちに勇気を与えました。この講演の後、蔡英文総統は「我々はすでに独立主権国家である」と強気の発言をして再選を果たし、昨年5月には中国に毅然とした態度を貫く頼清徳氏が総統に選ばれています。 とはいえ、日本が何の備えもしなければ、中国はまた次の手を打ってきます。 北朝鮮も中国も核を持つ国であり、最近はロシアも敵に回しています。この期に及んで日本はまだ核装備の議論すらできていません。 30年前、せめて16年前の総裁の警告に耳を傾け、現実的に国を守るための有効な一手を打っていたらと思わずにはいられませんが、幸福実現党は今後も日本が「自分の国は自分で守る国となる」ことを訴え続けていきます。 ◆自由と自助努力を引き出す「小さな政府」の大切さを強調 続いて、経済についてです。 幸福実現党は立党時から「小さな政府、安い税金」を訴え、特に2009年の衆院選では「消費税撤廃」を政策に掲げました。 当時、「社会保障のために増税はやむを得ない」という風潮のなか、消費税撤廃という思い切った政策を掲げた党は見当たりませんでした。 今でこそ「消費税減税」という政策を掲げる党も出ており、政府がトランプ関税と物価高を名目に「全国一律の給付金」の施策を打ち出した際も、7割の国民が反対し「お金をバラまくくらいなら減税してくれ」という声が上がりました。 こうした反応は2009年段階では考えられなかったことです。 ただ、「減税」と同時に「小さな政府」を訴えている政党は幸福実現党だけです。 「小さな政府」とは、政府の役割を治安や国防、大規模災害への備えなど、個人ではできないものに絞り、民間の活力を引き出していく政府のあり方のことです。 大幅な減税をする一方で政府の支出を増やし続け、その支出が何も経済的な価値を生まないなら、財政赤字が増え続け、日本の国家財政への信頼が失われていきます。また、インフレが進み、物価高に給料アップが追い付かないという状態が生まれます。 これでは結局国民の生活が苦しくなります。「政府は価値を生まない借金をどれだけ増やし続けても大丈夫」などという都合の良い考え方は成り立たないのです。 その観点から、幸福実現党は、政府の支出が増え続けるなかで思い切った消費税の減税については国防予算確保の観点からも慎重でなければならないと考え、現在では「消費税撤廃」の主張はしていません。 私たちは「小さな政府、安い税金」を同時に進めていきたいと考えています。 大川総裁は2009年に書き下ろされた「新・日本国憲法試案」の解説(『新・日本国憲法試案』)で次のように述べられました。 「小さな政府を目指す」ということは、「国民の裁量に任せる自由の領域を増やす」ということです。それは、「国民に責任を持ってもらいたい」という意味なのです。 「小さな政府、安い税金」とは、国民が政府に頼らず、自らの足で立とうという自助努力の精神が尊重される国を目指すということです。この姿勢こそ、国を豊かにする道なのです。 「小さな政府」の考え方は、日本ではまだ浸透してはいませんが、現在、アメリカのトランプ政権では「政府効率化省」が設置され、省庁や公務員を減らし、政府の支出に思い切ったメスを入れています。 また、アルゼンチンのミレイ大統領は、就任1年で省庁を半分に減らし、政府支出を30%減らして政府財政を黒字化しました。 「大きな政府、高い税金」の国が次々と衰退していく中、「小さな政府、安い税金」の国が今後どのように繁栄していくかを見ることで、今後、ますます大川総裁の先見性は明らかになっていくと思います。 ◆現在の米中対立を予言し、トランプ大統領の本心を見抜く 続いて、国際政治に関する大川総裁の提言に触れていきたいと思います。 現在、「トランプ関税」で世界に激震が走っていますが、これも大川隆法党総裁が明かした、トランプ大統領と中国の習近平国家主席の「本心」「ホンネ」を見れば、今後何が起きるかを見通すことができます。 今回のNEWSでも紹介しましたが、習近平氏の国家主席就任の2年前、就任の見通しが立った2010年の段階で、習主席の霊言を収録し、その危険な傾向を見抜いていました。 『世界皇帝をめざす男 習近平の本心に迫る』において習氏は「すべての黄色人種を中国の支配下に置く」「沖縄はもともと中国のもの」「世界帝国を建設する」などと述べました。 こうした発言から、中国が日本や世界に対して強硬な姿勢に出ることが予想されました。 当時、習氏に関する情報は少なく、日本のマスコミはそのリーダーシップを疑問視し、甘く見ていた面もありましたが、その後の中国の行動を見れば、この見通しが正しかったことは明らかです。 実際、中国は、ウイグルへの人権弾圧行為を強め、周辺諸国を「一帯一路」などで呑み込み、中国に「一国二制度を護る」という約束で返還された香港の自由を奪っていきました。 これに対して大川総裁は、説法を通じて中国の悪事を強く非難し、迫害された人々に救いの手を差し伸べました。 一方、トランプ大統領が2016年に初当選した翌日、大川総裁は『トランプ新大統領で世界はこう動く』という英語説法において、次のように述べていました。 ドナルド・トランプは、「関税制度すなわち輸入にかける税金は、外交上の武器の一つである」と考えているわけです。たとえば、中国の外交政策が気に食わなかったら、中国に高い税率を課すことができます。たとえば、中国がアジアの国を侵略しようとしたら、トランプは中国からの輸入品に対する関税率を変えるでしょう。これは、“熱い戦争”を起こさず、銃弾もミサイルも第七艦隊も使わない“武器の一つ”です。 トランプが中国をどう扱うかは想像がつきます。彼は、「世界経済の公平性やバランス」の観点から考えるはずです。じきに、中国の経済拡大率が尋常でないことに気づくでしょう。 (『トランプ新大統領で世界はこう動く』) さらに、トランプ氏が2020年11月の大統領選に敗れた約3か月後の2021年2月18日に収録された霊言では、「悪の帝国」である中国の繁栄は許さず、世界正義を守るというトランプ氏の熱意は全く失われていないことが明かされました。 そして総裁は、このトランプ氏の霊言を収録した書籍『トランプは死せず』のまえがきで「『トランプは死せず』の声が、年内にも高まってくることだろう」と述べ、トランプの復活を予言したのです。 総裁の霊言や説法を見れば、現在のトランプ関税は「中国包囲網」であり、貿易で得た富を軍事力に回している中国を弱体化させるためのものであることが見えてきます。 ゆえに今後、日本は、「経済面で中国と仲良くし、国防はアメリカに頼る」というどっちつかずの姿勢は許されません。自分の国は自分で守り、アメリカと共に中国を追い込んでいくという道を選ぶ必要があるのです。 ◆ロシア-ウクライナ戦争の先行きをいち早く見通す さらに、大川総裁は2022年2月に始まったロシア-ウクライナ戦争について、開戦まもなくの段階で次のように述べています。 ロシアに対してウクライナが勝つ方法はないと思います。NATOや日本まで巻き込んで戦争させて、ロシアを潰そうとしているけれども、これは、やはり「越権」で「やりすぎ」である。また、ウクライナの取るべき道として、「中立化」を言って、「傀儡」と言われるかもしれないけれども、親ロシア側の方、ロシアと仲良くできる方が大統領になるべきで、彼(ゼレンスキー氏)は失脚すべきだというふうに考えています。(『ゼレンスキー大統領の苦悩と中国の野望』) 総裁はまた、日本や欧米がウクライナを支援してロシア制裁を行えば、戦争をいたずらに長引かせ、ロシアと中国を結び付けて「世界大戦の構図」ができるという最悪の事態をもたらすことを警告し、「日本は停戦の仲介をすべきだ」と呼びかけました。 ところが当時、日本のマスコミは、ウクライナのゼレンスキー大統領を「大国の侵略に立ち向かう英雄」のように持ち上げ、岸田政権は、ウクライナを支援するアメリカバイデン政権に金魚のフンのごとく追随し、安全保障上大切なロシアとの関係を冷え込ませました。 総裁の警告に耳を貸さず、日本はウクライナに国民の税金をバラまいた結果、中国、ロシア、北朝鮮という核を持つ3か国を敵に回すという安全保障上の危機を招きました。 総裁はまた「トランプ大統領をアメリカが選んでいたら、ウクライナの戦火はなかったろう」とも語られていましたが、実際に第二期トランプ政権は、NATOの東方拡大を懸念するロシアの立場を理解しながら、停戦交渉を進めています。 メディアは交渉が難航していると強調していますが、民主党の大統領が誕生していたら、停戦ではなくロシアを追い込む道を選び、事態はより悪化していたでしょう。 いま、改めて開戦まもなくの段階で発された大川総裁の数々の提言と警告を読み直すと、その先見性に驚く人も多いのではないでしょうか。 幸福実現党は、この大川総裁の政治思想や政策提言をもとに、これからも日本と世界の正義ある平和と繁栄のために活動を続けていきます。 製造業こそ国の根幹 「ものづくり大国」日本を取り戻そう【幸福実現党NEW172号解説】 2025.03.22 幸福実現党政務調査会代理 小川佳世子 幸福実現党NEW172号 https://info.hr-party.jp/newspaper/2025/14897/ ◆日本のものづくりが衰退している 日本経済に元気がありません。 昨年、日経平均株価が史上最高値を更新したり、昨年度の賃上げ率が33年ぶりの高水準だったりしたことをもって、政府与党は「わが国の経済には着実に明るい兆しが現れている」などと言っています。 しかし、大半の日本人は、経済がよくなっているという実感を持てないでいるのではないでしょうか。賃上げといっても、電気代やモノの値段の値上がりに追いついていません。 何とか生活はできているけれど、負担ばかりが増えているのが実態ではないでしょうか。 実際、日本の経済成長率は横ばいで、経済規模を示すGDP(国内総生産)は他国に比べて増えていません。その結果、日本のGDPはドイツに抜かれ、今年中にはインドにも抜かれ、世界5位に転落する見込みです。 GDPは、日本国内で生み出されたモノやサービスの付加価値の合計です。 単純に言うと、モノを作ったりサービスを提供したりする時にかかった費用よりも、高いお金を払っても欲しいと多くの人が思うような価値の高いモノやサービスを生み出せたら経済は大きくなるわけです。同時に、私たちの収入も増えて豊かになっていくわけです。 その中でも製造業は、付加価値の金額が大きい産業です。 https://www.stat.go.jp/data/kkj/kekka/pdf/2023youyaku2.pdf かつての日本は、製造業が非常に強く「ものづくり大国」と称されており、「メイド・イン・ジャパン」は高品質の代名詞でした。 しかし現在では、日本の製造業の多くは海外に工場を移し、GDPに占める製造業の割合は減り、今では2割を下回っています。 ◆日本の製造業はなぜ衰退したのか では、なぜ日本の製造業は元気をなくしてしまったのでしょうか。 製造業が海外に生産拠点を移すことは、ある程度は自然なことです。 既存の製品を組み立てるなら、人件費の安い国で作った方が利益は出ますし、為替や関税のことを考えると、例えばアメリカで売る製品はアメリカで作った方が効率はよいからです。 ただ、本当は国内で作りたいのにそれが難しいという事情もあります。 例えば、中国でのものづくりは、重要な技術の漏洩、社員が危険にさらされる、日本に利益を戻せないなどのリスクが顕在化していきました。 そこで、国内に工場を戻そうという動きも出てきたのですが、これにブレーキをかけているのが日本の事情です。 具体的には、高い税金、社会保険料、高い電気代、脱炭素、複雑な規制などです。 まず、企業を苦しめているのは、経営状態が苦しくても払わなければいけない多額の社会保険料です。 昨年10月から、従業員数51人以上の企業で、正社員だけでなく、一定の要件を満たすパートやアルバイトなどの短時間労働者についても社会保険の加入が義務づけられました。 さらに社会保険の加入対象を拡大しようという議論も進んでいます。 この社会保険料は労使折半ですから、従業員だけでなく企業も払わねばなりません。雇用に対する課税のようなもので、人件費を押し上げます。 こうした状況では、中小企業などは新規の雇用を控えるようになり、ものづくりの技術を継承する人材が育たなくなります。 そして特に製造業にとってダメージが大きいのが高い電気代です。 特に鉄鋼業や半導体の製造には大量の電気が必要で、北海道に建てられた半導体製造企業ラピダスの工場で使われる電気は、北海道の電力需要の2割ほどを占めることになると言われています。 電気代が高ければ、ものづくりのコストが押し上げられます。 現在、日本の電気代は世界的なエネルギー価格の高騰と円安のダブルパンチで高くなっており、企業は高い電気代の支払いを余儀なくされています。 原発の再稼働を一日も早く進めていかなくてはいけません。 さらにここに「脱炭素」の取り組みが追い打ちをかけます。大量のエネルギーを使うモノづくりは、結果として大量のCO2を排出します。 そして、来年度から日本では、企業ごとのCO2排出量に「枠」を設け、その排出枠の過不足を企業間で取引する「排出量取引制度」を全国で本格稼働させることになっています。 しかし、前回171号の解説でもお伝えしたように、世界はむしろ、脱炭素の取り組みから離れつつあります。百害あって一利なしの脱炭素政策は、一早く撤回すべきでしょう。 それから、各業界を縛る細かい規制や慣習が山のようにあります。 例えば昨年6月、トヨタ自動車をはじめとする自動車メーカー5社で「型式認証試験の不正があった」と報じられました。 この「型式認証試験」とは、自動車を大量生産する上で必要な、国が定めたルールなのですが、よく調べてみると、国の基準よりも厳しい基準で安全性に関する検査をしていたら「国土交通省の基準にのっとっていないから不正」という指導が入ったということです。 詳細は、「ザ・リバティ」2024年9月号の記事をお読み頂きたいのですが、この件のみならず、複雑なルールを守るために、企業のコストや労力が相当奪われている実態があります。 「ザ・リバティ」2024年9月号 https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=3038 ◆国内での高付加価値のものづくりはなぜ大切か 企業は、このような二重、三重のハンディを背負いながらものをつくっています。 現在は、IT産業も人気が高いのですが、IT産業を成り立たせるためにはコンピューターやスマートフォンが必要です。 また、今はやりのAI、人工知能の開発においても、高性能のコンピューターが必要です。 ものづくりがなければ、私たちの生活は便利で豊かにはならず、IT産業も成立しないわけですから、製造業は非常に大事な産業です。 そして、ものづくりの技術は日本の平和・安全を守る上でも重要です。宇宙産業や防衛産業における技術力の差は、国防力の差となって現れます。 いくら鍛え抜かれた軍隊を持っていても、相手国が性能の高い戦闘機やミサイルなどの武器を持っていたら、そちらに軍配が上がります。 また、サイバー戦争を制するには、高いサイバー技術や情報収集能力が不可欠ですが、コンピューターの処理能力に差があればそれだけでハンディが生じます。 現在の戦争は、ものづくりの技術差で決まる面も大きいわけです。国内で宇宙産業、防衛産業を育てていくことは、安全保障の面からも必要なのです。 ◆「ものづくり大国」を取り戻すために必要なこと では、日本が再び「ものづくり大国」になるためには何が必要でしょうか。 一言でいえば、世界の人が望むような新しい価値を生み出し続ける土壌づくりです。これが、製造業の国際競争力を保つために必要です。 日本の製造業は、安全で燃費がよいクルマ、ソニーのウォークマンのようなまったく新しい製品などを生みました。 現在、「産業のコメ」と言われ、世界情勢にも影響を及ぼす半導体産業においても、日本は1980年代、世界の半導体市場で50%強のシェアを取っていました。 しかし、その後の日本はなかなか新しいものを産み出せていません。 外交力や国際競争戦略の欠如という要因もあったでしょうが、様々な規制や税金、社会保険料などが企業の足を引っ張った面もあります。 安定した安い電力の供給、法人税の減税などで企業の経済活動のコストを下げ、研究開発に割く余裕を生み出すことが大事です。 また、今なら空飛ぶ車や自動運転車などの規制がものづくりのネックになっています。 たとえば、4月から始まる大阪・関西万博においては、ドローン技術を応用した「空飛ぶクルマ」が、来場者を乗せて飛ぶ日本初の商用運航を目指していました。 しかし、安全性を証明する手続きに時間がかかったため、来場者を乗せることができず、デモ飛行のみを行うことになりました。 そして、働き方改革も、新しいものを生み出す足かせになっています。 長時間働けば業績が上がるわけではありませんが、やはりスキルを身に着け、質の高い仕事をするには、まずはある程度の時間、仕事に打ち込まなくてはなりません。 残業時間を規制され、何時までに帰れとうるさく言われれば、新しいものを生み出す研究開発には没頭できないでしょう。 こちらに、日本の年間労働時間とGDPの関係を示したグラフを掲載しています。 日本の高度成長期は、一人当たりの年間労働時間は、ピーク時で2400時間を超えていました。 しかしこれについて、アメリカが「日本は国民に長時間労働を強いて、対外競争力を高めている」と口を挟み、日本国内でも「日本人は働きすぎだ」という世論が高まりました。 そこで政府は1992年、労働者全体の平均労働時間を年間1800時間までにし、完全週休2日制の導入を目指す「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」を制定しました。 このようにして「長時間働くことをやめよう」というメッセージを発した時と、日本経済が停滞し始めた時期は見事に重なっています。 ◆製造業の人材養成を このように、経済をもう一段発展させるには、日本が大切にしてきた「ものづくりの精神」を育てていくことが必要です。 そのためには、教育においては、前例のないことにチャレンジする精神、コツコツと努力する勤勉の精神、また「多くの人に便利さ、豊かさをもたらしたい」という愛の思いなどを育てていくことが大事になります。 そうした思いをもつことで、宗教的に言えば「インスピレーショナブルな頭脳」をつくることになり、この世になかったアイディアを受け止めることができるようになります。 一方、政府の仕事としては、公平な競争環境を整え、中国などに新しい技術やアイディアを盗まれないよう「スパイ防止法」などを整備することに集中し、減税や規制緩和によって企業の仕事の足かせになっているものを取り除くことが必要です。 大川隆法総裁は、著書『創造する頭脳』のあとがきで次のように述べています。 役人の発想は、基本的に、「なぜ、できないのか」「なぜ、ダメなのか」を中心に回っており、それをいかに整然と説明するかに知力を使っているのである。(中略)これは、勇気・責任感・積極性・行動力を中心に形成される経営者マインドの正反対のものである。 いくら税金を投入しても無駄である。むしろ小さな政府を目指して、倒産の恐怖を自分で背負いながらチャレンジしていく民間に任せるべきだ。「創造する頭脳」は未来を積極的に切り拓こうと決断できる勇気の持ち主にこそ与えられるのだ。 (引用終わり) 政府がお金をバラまいて経済が繁栄することはありません。 幸福実現党が言っている「小さな政府、安い税金」の考え方に基づく自由と自助努力の精神が、日本復活の原動力になっていくのです。 日米で力を合わせ、中国の脅威を封じ込めるために【幸福実現党NEW171号解説】 2025.03.01 幸福実現党政務調査会代理 小川佳世子 幸福実現党NEWS(171号) https://info.hr-party.jp/newspaper/2025/14811/ 解説動画 https://youtu.be/FfyiYcvWD94 ◆トランプ政権の外交政策から見えてくる「対中強硬姿勢」 トランプ大統領就任後、世界は大きく動き始めています。 バイデン政権下では、ロシア-ウクライナ戦争が勃発し、中東でイスラエル-ハマスの争いが激しさを増していましたが、トランプ大統領の就任直前、まず中東で動きがありました。 それが、イスラエルとハマスの停戦合意の発表です。トランプ氏は就任前から「大統領就任までに停戦し、人質を解放しなければ、中東に地獄が訪れる」と警告し、双方に圧力をかけていました。 この映像収録時点では、双方が様子を見ながら交渉を続けており、停戦合意が破棄されるかどうか予断を許さない状況ではありますが、何をするか分からないトランプ氏の迫力が、ひとまず停戦をもたらしたことは確かです。 また、3年に渡って続いているロシア-ウクライナ戦争についても、停戦に向けて手を打っています。 トランプ大統領は、ロシアのプーチン大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領と個別に電話会談をし、14日には停戦に向けた協議がドイツのミュンヘンで始まりました。 近々、トランプ大統領とプーチン大統領との首脳会談も行われる見込みです。 ウクライナがNATO加盟を求める一方、ロシア側は緩衝地帯であるウクライナにNATO諸国の影響が及ぶことは受け入れがたく、条件によっては停戦まで時間がかかると思われますが、バイデン政権の時には考えられないほどのスピード感を持って、問題解決の手が打たれています。 このように、トランプ大統領がヨーロッパと中東での戦争を終わらせようとしているのは、現在の世界を見渡した時、中国が最大の脅威であると認識しているからです。 バイデン政権の時は、アメリカはウクライナや中東にも軍事力や資源を投じており、相当消耗していたのですが、二つの戦争を終わらせることによって、アメリカの力をアジアに集中させ、中国をのさばらせないようにしようとしているのです。 ◆パリ協定離脱の狙いとは? この「対中国」という観点を持つと、トランプ大統領が進めようとしていることが理解できます。 例えば、大統領就任初日の1月20日、トランプ氏は幾つかの大統領令を出しましたが、その一つに「パリ協定からの離脱」を命じる大統領令があります。 パリ協定とは、地球温暖化対策のための国際的な取り決めで、5年ごとに参加国に新たな温室効果ガスの削減目標を提出することを求めています。 しかし、このパリ協定は中国にとって極めて有利な取り決めです。 中国は表向き「CO2削減を目指す」としていますが、「我々は人口14億人を抱える途上国なので、急にはCO2を減らせない」と言って石炭火力発電所を建設し、CO2をどんどん排出しています。 さらに、世界的にCO2削減の機運が高まり、再生可能エネルギーが推進されると、太陽光パネルや風力発電設備のシェアが世界一である中国が儲かることになります。 一方、CO2削減の目標を掲げ、真面目に達成しようとする国は非常に不利です。 再生可能エネルギーを推進すれば電気代は高くなりますし、石炭発電は止められ、石油や天然ガスの開発もできなくなります。 そこでトランプ大統領は「パリ協定」を離脱し、バイデン前大統領の時代は禁じられていた新たな石油や天然ガスの開発を推し進め、エネルギー価格を下げて、アメリカ経済を再び強くしようとしているのです。 同時に、脱炭素政策が広がることで中国が得るはずだった利益を減らそうとしています。 こうしたアメリカの動きに対して、世界も反応し始めています。 今年2月10日は、「パリ協定」に基づく温室効果ガス削減目標の提出期限でしたが、目標を提出したのは10数か国に過ぎず、日本を含め9割の国が期限までに提出できていません。 CO2が地球温暖化の原因というのはあくまで仮説にすぎず、むしろ無関係という学説も多く発表されています。 自国の経済に大きなダメージを与えるCO2削減に消極的な参加国が増えているなか、中国に次ぐ第二の排出国であるアメリカがパリ協定からの離脱を決めたことで、世界の流れが変わる可能性も出てきています。 ゆえに日本もこの機会に、脱炭素政策を転換すべきです。 「脱炭素」の取り組みをした企業に補助金や助成金を出す、電気自動車に補助金を出すという施策が動いているので、今さら変えられないというのが政府や一部企業のホンネかもしれませんが、「脱炭素」政策をダラダラと続けることは、電気代を高騰させ、日本のものづくりの首を絞め、中国を喜ばせることになるわけです。 政府も企業も目先の利益に踊らされず、国益のためにスパッとやめるべきでしょう。 なお、脱炭素政策の問題点については、幸福実現党のYouTube番組である「言論チャンネル」の、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・杉山大志氏と釈党首の対談を是非ご覧ください。 ◆国境警備強化と関税強化でアメリカを安全な国に さらにトランプ大統領は、2月4日から中国に10%の追加関税をかけました。今までかけていた関税に加え、中国からのすべての輸入品に10%の関税を上乗せしたのです。 関税の意図としては、幸福実現党NEWS169号の解説でも触れたように、中国の経済力を弱め、最終的に軍事力に回すお金を減らす、すなわち「兵糧攻め」の意味があります。 さらには、カナダやメキシコにも25%の関税を掛けようとしていましたが、両国の関税発動については1か月の猶予期間を設けました。 なぜ、中国だけでなく、カナダやメキシコにも関税をかけようとしたのかといえば、国境を接した両国から不法移民やフェンタニルという麻薬が入ってくるのを止めるためです。 フェンタニルは、医療用としては合法で有効な鎮痛剤ですが、最近ではメキシコなどで密造され、密売人によって違法に売られています。1錠数ドルで手に入り、効き目が強いため薬物中毒になりやすく、またわずかな摂取量で命を落とすこともある恐ろしい麻薬です。 なお、薬物の過剰摂取による死者は2022年、全米で10万8千人近くにのぼるとされます。 アメリカの交通事故による死者数は4万人以上ですので、交通事故による死者数の2倍以上が違法薬物で亡くなっているのです。また、18歳から49歳という現役世代の死因ではトップになっています。 このようにフェンタニルの密輸は、アメリカを混乱、荒廃させる大きな原因となっているため「現代のアヘン戦争」とも呼ばれ、深刻な社会問題となっています。 アメリカ下院の中国共産党に関する特別委員会が昨年4月に出した報告書によれば、中国はフェンタニルの原料となる化学物質の製造に補助金を出して、組織的な輸出を行っているとのことです。 この違法薬物の問題については、バイデン元大統領と中国の習近平国家主席との会談においても、フェンタニルの生産と輸出の抑制に取り組むことで合意したはずなのですが、対策は思うように進んでいません。 そこでトランプ氏は、麻薬の経由地であるカナダやメキシコにも高い関税をちらつかせて、「不法移民や不法な薬物がアメリカに入らないように、しっかり対策をしてくれ」というメッセージを送っているわけです。 アメリカの治安をよくして国民が安心して暮らせるように、麻薬の輸出によってアメリカを混乱させようとする中国の試みは許さない、麻薬を密輸する不法移民も許さないというトランプ大統領の強い姿勢が見てとれます。 ◆中国に毅然とした態度を このように、アメリカが中国への毅然とした姿勢を見せているなか、日本の石破政権は中国寄りの姿勢を崩していません。 特に批判を浴びたのは、昨年末、岩屋毅外務大臣が中国を訪れた際、中国人向けの観光ビザの発行基準を大幅に緩くする方針を発表したことです。 具体的には、富裕層向けに10年間有効な観光ビザを新設する、団体旅行向けのビザで滞在可能な日数を30日に延長する、65歳以上の中国人に限り、これまで求めていた在職証明書の提出を不要にするといった施策です。 これは、中国人観光客によるインバウンド需要を狙ってのことですが、治安の悪化やオーバーツーリズムなどへの懸念の声も出ています。 さらに問題なのは、特定の国、しかも自国民に人権弾圧を行い、日本に対しても軍事的な脅威をちらつかせるような国からの観光客に期待する政府の姿勢です。 中国はこれまでも、他国に観光客を大量に送り込んで経済的に依存させ、これを「外交カード」として利用してきました。 日本がトランプ政権と一緒に厳しい対中姿勢を取らないようにするため、観光客を外交カードとしてちらつかせる可能性は大いにあります。 これは、日本の外交・安全保障にとって大いにマイナスです。 現地時間で7日に日米首脳会談が行われましたが、その際、トランプ大統領は石破首相にかなり気を遣い、顔を潰さないような配慮をしていました。 笑顔で握手はしていましたが、「中国とアメリカ、どちらが大事か分かっているだろうな」という強いメッセージを送っているようにも感じました。 日本としては、「アメリカと中国、どちらについた方が得か」という損得勘定で考えるべきではありません。何が世界的な正義に適うのか、日本として何を目指すのかというビジョンがなければ、簡単に利害で揺さぶられます。 大川隆法党総裁は、『メシアの法』の中で次のように述べています。 総じて、骨太なかたちでの「善悪の価値観体系」を持つべきだと思うし、それを教える「宗教的な原理」というか、「宗教的なメジャーな思想」というのは、本当に今こそ地上に伝えられ、広げられるべきだと思います。(中略) もし、「経済的に利益さえ出ればいい」ということで、日本政府や、あるいは、それにくっついている公明党、創価学会等、日中国交回復を手柄として言っている人たちが、その変化にまだ気がつかないで、政治的行動をしないようにやっているとしたら、それは「悪なる行動である」というように見ざるをえないと思っています。 (引用終わり) トランプ大統領の力強い決断の背景には、宗教的な信念に基づく善悪の価値観があります。日本も、目先の利益ではなく、正義とは何かを追究すべきです。 ◆防衛予算倍増は待ったなし ただ、正義を貫き、中国に毅然とした姿勢を取るためには、「自分の国は自分で守る」国を目指す必要があります。 岸田政権時代、「防衛予算は2027年までにGDP比2%に引き上げる」と述べていました。 しかし、現在のアジアの状況を見た時、今後2年間、日本の安全を脅かすような出来事が何も起きないという保障はありません。 さらに、中国の覇権拡大阻止を訴える国防総省ナンバー3のエルブリッジ・コルビー氏は、「日本は防衛費を今すぐGDP3%程度にするべきだ」と述べています。 それだけアジア情勢は緊迫しているということです。さらに、日本は長らく厳しい武器輸出規制があったことで、国内で防衛産業が十分に育っておらず、アメリカから多くの武器を輸入していますが、現在は円安のため、今までと同じ防衛予算ではそもそも足りません。 こうした状況で、防衛予算を増やすための増税を行うと言っていますが、前回の解説でもお伝えしたように、それは国力を落とす道です。 増税の前に、政府がやるべきでない仕事を思い切って減量する必要があります。 国を強くするためには、国を豊かにしなければいけません。 増税によって日本経済が衰退し、国力が落ちてくると、防衛力に予算を割く余裕もなくなります。ですから、いま、必要なことは政府の仕事を減量して減税することであり、それによって日本経済を立て直すことです。 そのためにも、先ほども述べたように、脱炭素を止めて電気代を安くすること、それから経済の足を引っ張っている「働き方改革」を止めること、個人のみならず企業の負担も増やしている手厚すぎる社会保障を見直すことなどが必要です。 日本とアメリカが力を合わせ、世界に共産主義の精神を輸出しようとしている中国を封じ込めて世界の平和を守るためにも、日本は「神様が望まれる正しさとは何か」を追い求める国へと変わっていかなければならないのです。 税金を重くするばかりでは国民は豊かにならない【幸福実現党NEWS(170号)解説】 2025.01.29 幸福実現党政務調査会代理 小川佳世子 幸福実現党NEWS(170号) https://info.hr-party.jp/newspaper/2025/14707/ 解説動画 https://youtu.be/IaGgQ-oPdY4 ◆税制改正大綱の議論 2025年度からの税金の制度をどうするかという議論が、これから本格化します。税金の制度は一年ごとに変わります。 まず、与党の税制調査会が、各省庁や業界団体からの要望を聞いて議論をし、来年度以降の税金のあり方、どの分野にどのように税金を課すかなどを具体的にまとめていきます。 これを「税制改正大綱」と呼んでいます。 これを年末までに閣議決定し、これに基づいて国税については財務省が、地方税は総務省が改正法案を作成します。 そして、今年は1月24日から始まる通常国会で議論し、3月までに法案を可決、成立させ、4月以降に新しい税金の制度が始まるという流れです。 今回のNEWSは、「税制改正大綱」の内容を踏まえ、政府が来年度以降、どのような税金の仕組みを考えているかについて、今話題になっている「年収103万円の壁」見直しの話を中心にまとめました。 なお、「税制改正大綱」についてもう一段詳しい解説については、幸福実現党のYouTube番組「言論チャンネル」で公開しますので、こちらも是非ご覧ください。 ◆「103万円の壁」の見直しとは? まず、最近話題になっている「103万円の壁」の引き上げについて、見ていきましょう。 今回、税制改正が話題になったのは、昨年の衆院選で国民民主党が「103万円の壁を引き上げ、国民の手取りを増やす」という政策を掲げて躍進したことが一つのきっかけです。 一定の年収を超えるまでは所得税は課税されません。この所得税がかかり始める金額が、年収103万円で、それを「103万円の壁」と呼んでいるのです。 国民民主党は、この壁を178万円まで上げようと主張して注目を浴びています。 一定の時間しか働かないパートやアルバイトの人たちは、なるべく税金を取られて手取りを減らしたくないので、一年間の収入が103万円を超えないように働く時間を調整している人が多くいます。 所得税が取られる年収が178万円まで引き上げられることで、こうした人たちはもう少し働こうかなという気持ちになります。 また、会社からお給料をもらっている人たちや、自営業などで収入を得ている人たちも、現在の収入から178万円が差し引かれた金額に、所得税がかかることになります。 壁が178万円になれば、収入から103万円が差し引かれる場合に比べて、所得税がかけられる金額が減ることになり、それだけ所得税が減税されるというわけです。 例えば、年間600万円の収入を得ている人は、年間14.6万円の減税になるという試算もあります。 しかし、自民党、公明党が作成した与党の案は、123万円までの引き上げにしよう。 しかも、そのうち10万円分は、年間162.5万円以下の給料をもらっている人にのみ恩恵が及ぶような形でお茶を濁そうとしているのです。つまり、大半の人にとっては、113万円までしか差し引かれないということになります。 そうなると、年収600万円の人は、1万円程度しか減税にならないと見込まれています。 現在、自民・公明の与党だけでは衆院で過半数の議席がありません。ですので、与党案はそのまま国会で成立することはなく、1月24日からの通常国会で駆け引きが始まります。 国民民主も、衆院選の公約として掲げた178万円の壁に向けて妥協はしないでしょう。 確かにこの国民民主党案は、年収に関わらず1人当たり4万円という決まった額を減税するという岸田政権の減税策に比べ、働く意欲が増すという点でよい減税策と言えます。 ただし、国民民主党は、膨らみ続けている多額の国家予算を減らすことは考えていないようです。 そうなると、減税分の赤字国債を発行しなければならなくなり、政府の借金が増えることになります。これは、さらに物価高を加速させることにもつながるのです。 また、資産課税など別の増税策も打ち出していますので、国民民主党の案が日本経済を元気にすることにつながるかは、よくよく注意して見ていく必要があります。 ◆防衛を口実にした法人税の増税 また、今回の税制改正大綱の注目ポイントは、岸田政権の時に議論されていた防衛増税の導入が明記されたことです。 私たち幸福実現党は、防衛費の増額は必要だと考えています。 しかしながら、本来、税金というのは、防衛や治安維持、大規模災害対策など、政府にしかできない仕事をしてもらうために納めているものです。 無駄な省庁をたくさんつくった上、バラマキ政策や社会保障の大盤振る舞いをしておきながら、「防衛予算を増やさなくてはいけないから、増税します」というのは筋が通りません。 政府がしなくてもいい仕事を思い切って減らしても、それでも税金が足りないというなら、防衛増税は理解できますが、増税の前にもっと政府の仕事を減量するべきです。 ちなみに、今回の防衛増税の導入で、法人税は約1%分上がる見込みです。決して軽くない負担がのしかかります。 さらに、円安が続いて、海外から兵器を買う時の値段がどんどん上がっています。今後も「防衛予算が足りないから増税します」という流れになりかねません。 しかも、与党がまとめた「税制改正大綱」では、今後の方針として「法人税を引き上げつつターゲットを絞った政策対応を実施するなど、メリハリのある法人税体系を構築していく」と書かれています。 簡単に言うと、「以前、法人税を引き下げたけど、国内投資や賃上げは思うように進まなかったので、これから法人税は増税していきますが、政府の言うことを聞いて投資や賃上げ、子育て支援などをした企業には、ご褒美として法人税を下げてあげます」ということです。 これは企業の経済活動の自由を奪うという意味で、まさに「大きな政府」の発想です。 企業も、本当は頑張っている従業員の給料を上げたいのです。しかし、円安で様々なモノの値段が高くなる、原発が動かず、再エネ賦課金なども取られて電気代は高くなる、働き方改革で人件費が増える、という状態であれば、そんなに簡単に給料を上げられません。 こうした逆風に加えて法人税の増税まで待っているとしたら、経営者たちはやっていられません。 ◆社会保険料の対象となる「106万円の壁」の方が問題 企業の負担はそれだけではありません。社会保険料の増額が待っています。 現在、税制改正の議論と合わせて、社会保険加入範囲の拡大の議論が出ています。 所得税がかかりはじめる103万円の壁を引き上げる話は先ほどお伝えしましたが、次に「106万円の壁」というものがあります。 これは、年収106万円をこえると、社会保険への加入が義務化され、年金などの社会保険料を払わなくてはいけなくなるということです。 この106万円の壁をなくし、2027年10月には、一週間に20時間以上働いた人は社会保険料に加入し、保険料を払ってもらおうという話になっているのです。 これによって、新たに200万人が厚生年金の加入対象になるとのことです。 社会保険料を払うことになるとどうなるか。まず、従業員にとっては手取りが大きく減ることになります。 同時に、企業の負担も増えます。社会保険料は「労使折半」といって、従業員と会社が半分ずつ負担する仕組みです。ですから、企業にとっては人件費が増えることになります。 それでも、スーパーや飲食店など、パートやアルバイトで支えられている仕事では、社会保険料を理由に従業員を減らすわけにはいきません。 実際、年収106万円の壁を意識する従業員がシフトを減らし、働き手が確保できないという悩みを抱えている経営者は多いようです。 そこで政府は、年収156万円未満の人に対しては、従業員の手取りが減らないように、社会保険料を会社側がより多く負担してもいいよ、という仕組みをつくるとのことです。 ただ、会社の側もこれ以上の負担は無理です。裏面のグラフに示されているように、税金と社会保険料の滞納を原因とした倒産は、昨年は前年の2倍近くに増えました。 そこで、従業員の負担分を一部肩代わりしたことによって負担が重くなる会社には、政府が支援をするそうです。 もちろん、この「支援」は税金で行われるわけです。個人や企業の負担を増やしておきながら、「負担が増えたら税金で支援をします」というのは意味が分かりません。 一体、何をやっているのでしょうか。 国民民主は、103万円の所得税の壁については問題意識を持っていますが、この106万円の壁をなくして社会保険料の負担が増える案については「将来、もらえるお金が増えるのだから」ということで、むしろ賛成の立場です。 しかし、それでは社会保険料の負担なら増やしてもいいということになりかねず、国民の手取りは減っていく一方です。 ◆「小さな政府」を目指さなければ国民の負担は減らない 幸福実現党は、公的年金や介護保険などの社会保障も含めて、政府の仕事を思い切って減らすという「小さな政府」の実現を訴えています。 政府の仕事を減らせば、税金や社会保険料など、個人や企業の負担を軽くすることができますし、何より政府が民間の仕事に口を挟むことが無くなるので、自由の範囲が拡大します。 そもそも、年金など、老後の面倒をすべて政府に見てもらうというのは不可能なのです。 大川隆法総裁は、著書『経営者マインドの秘密』のなかで、「政府が大きくなると、無駄な仕事がとても多くなる」と指摘し、さらに次のように述べています。 「『大きな政府』というのは、必ず独裁化するし、強権化する。また、そこからお金を、飴を撒くようにバラまいてもらって生きていく国民が増えれば、必ず、それは奴隷化していくことになるので、堕落するのです」 実際、公的年金制度では、政府は後先のことを考えずに年金を大盤振る舞いしただけでなく、国民から預かったお金を保養施設などの建設に使って大赤字を出し、目減りさせました。 その結果、今の中堅世代以降は、自分が払った年金よりも、将来年金として受け取る額が減ると見込まれています。 そのような失敗を覆い隠すため、政府は一人でも多くの人を年金制度に加入させようとするなど、次から次へと国民の負担を増やす施策を打ち出してくるわけです。 また、国民の側も、「これだけ税金や社会保険料を払っているのだから、年老いた親の面倒は政府が見るべきだ」と考えるようになり、家族の絆が希薄になっています。 こうした悪循環を食い止めるためにも、政府の仕事を思い切って減らす必要があると幸福実現党は考えています。 ◆地方税の導入に反対の声をあげよう そのためにも、「大きな政府」や「重い税金」の動きがあれば、反対の声を上げていかなくてはいけないと思います。 2000年から徐々に地方自治体の課税自主権が強化されたことで、次々と新たな地方税が導入されています。 地方自治体は、地方税法で決められている住民税、固定資産税、事業税などの税金以外に、条例で税金を新しく導入できますが、2000年の法改正により、自治体で使い道を自由に決められる税金を導入するハードルが下がったのです。 代表的なものが宿泊税です。2002年に東京都で導入され、現在では3都府県・7市町で導入されており、千葉県でも導入が検討されています。 例えば京都市は、2018年から宿泊税を導入し、市内のホテルや旅館の宿泊客から税金を徴収しています。現在の最高額は1000円ですが、2026年3月から最高で1泊1万円の税金をとるという方針が発表されました。 これによって、文化財保護や増えつつある観光客の受け入れ環境の整備などに使うと言いますが、税金が重くなると、宿泊客が減るのではないかという懸念も出ています。 また、地方で導入された税が全国に広がるケースもあります。 例えば、森林環境税は2003年に高知県が導入し、その後37府県に広がり、昨年から国税として国民全員に年間1000円が課税されるようになったのです。 また、滋賀県では現在、交通税の導入が議論されていますが、根強い反対の声があります。 自治体が税金を集めて、果たして有効に使われるのか。負担を増やすのではなく、他の自治体の仕事を削る余地はないのか。こうしたことを検討せず、安易に新しい税金を導入すれば、私たちの負担はどんどん重くなります。 幸福実現党は現在、公認地方議員が55人いますが、各地で増税を食い止めるために頑張っています。地方から増税の風穴を開けさせないためにも、幸福実現党の地方議員を是非応援してください。共に増税反対の声をあげていきましょう。 参考 宿泊税 https://www.nhk.or.jp/shutoken/chiba/articles/101/016/38/#:~:text クローズアップ現代 地方税 https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/episode/te/JR8VX44N46/ 総務省(法定外税) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_24.html https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_23.html 「信仰」ある国づくりで、政治に「正しさ」を取り戻そう(幸福実現党NEWSvol.169解説) 2024.12.27 幸福実現党政務調査会代理 小川佳世子 ◆霊的な戦いに勝利したトランプ氏 11月に行われたアメリカ大統領選挙では、皆様ご存知の通り、トランプ前大統領がハリス副大統領に勝利しました。一度落選した大統領経験者が返り咲きを果たすのは、132年ぶりで極めて異例の出来事です。 さらに、トランプ氏が所属するアメリカ共和党は、同時に行われた連邦議会選挙において、上院と下院共に過半数を獲得しました。 日本のメディアは、トランプ氏の歯に衣着せぬ物言いを取り上げ、「なぜこのような人物が勝利したのか分からない」というようなネガティブなトーンの報道が散見されますが、こうした報道は、トランプ氏の本質をまったく捉えていないと言えます。 幸福実現党は、トランプ氏が多くのアメリカ人の心を惹きつけたのは、政府からの自由を求めた精神性、その奥にある宗教的な信念にあると考えています。 トランプ氏の支持者は、熱心なクリスチャンが多いのですが、彼らは今回の大統領選について「Spiritual War」霊的な戦い、宗教的な戦いだと位置づけていました。 バイデン政権やアメリカ民主党からは、「神」という言葉はほとんど聞かれず、LGBTの権利拡大などを推し進め、「神は人間を男女に分けて作られた」という聖書の記述を信じるクリスチャンから批判の声が上がっていました。 一方、トランプ氏のスピーチには、「創造主」や「全知全能の神」という言葉が度々登場します。トランプ氏の「Make America Great Again」(アメリカを再び偉大な国にしよう)というメッセージは日本でも知られるようになりましたが、トランプ氏は同時に「Make America Pray Again」(アメリカを再び祈りの国にしよう)とか、「この国を再び偉大にするのは宗教である」と語っています。 これについて、日本のメディアは、「トランプ氏が宗教的な発言をするのは、アメリカ有権者の4分の1ほどを占めているキリスト教保守派の支持を集めるためだ」などという穿った見方をしていますが、LGBT権利拡大といった、直接聖書の記述に関わる宗教的なテーマ以外にも、トランプ氏とバイデン政権では目指す国家のビジョンに大きな違いがありました。 ◆信仰ある国づくり (1)自由と自助努力からの繁栄 目指すべき国家ビジョンの違いが大きく出たのは、まず経済政策のあり方についてです。 今回、アメリカ民主党が支持者を減らした最大の原因は経済問題です。 新型コロナによる経済ダメージから立ち直ろうとしている時、民主党が行ったのは巨額のバラマキです。 また、気候変動対策として環境規制を強化し、石油・ガスの掘削許可を取り消すなど、経済活動に制限をかけました。 このように、巨額のバラマキを行う一方で、経済活動を制限すれば、行きつく先はインフレ、すなわち物価高です。 これに加えて、ロシアに経済制裁を加えたことで、世界的にエネルギー価格が高騰し、給料はあまり上がらないのにモノやサービスの値段だけがどんどん高くなり、国民生活を苦しめたのです。 その上、法人税の増税や富裕層への課税強化の方針を打ち出しました。 一方、トランプ氏が掲げているのは、政府がやらなくていい仕事を思い切って無くし、それによって税金の負担も大幅に減らそうということです。 テスラ社や、X社などの経営を行っているイーロン・マスク氏らを政府効率化省(DOGE)のトップに任命し、国家予算を少なくとも2兆ドル、日本円にして300兆円ほど削減するという驚きの施策も打ち出しています。これは、アメリカの国家予算の3割弱に当たります。 そのうえで、法人税の更なる引き下げを目指しています。 前回のトランプ政権下で、35%から21%に引き下げた連邦法人税をさらに下げ、特にアメリカ国内でものづくりをする企業の法人税は15%にするという政策を掲げています。 また、根拠のハッキリしない気候変動対策のための温室効果ガス削減はやめて、石油をどんどん掘ろう、もっと自由にビジネスをできるようにしようと訴えています。 これは、幸福実現党が立党以来掲げている「小さな政府、安い税金」の考えと同じです。 なぜここまで思い切ったビジョンを打ち出せるのかといえば、トランプ氏は「自由は政府からではなく神から与えられたものだ」という宗教的信念を持っているからです。 政府が国の経済のあり方を計画的にコントロールできるという考えではなく、神から与えられた自由を守り、自由のなかで自助論の精神を発揮し、発展していくことが大切だと考えているからこそ、こうした思い切った施策を打てるのです。 ◆信仰ある国づくり (2)唯物論国家・中国への強硬姿勢 目指すべき国家ビジョンの違いの二つ目は、外交政策です。 バイデン大統領は、「民主主義国家 対 専制国家」の構図を打ち出して、ロシアを敵視し、中国、北朝鮮、イランなどの「専制国家」と同じ枠組みに入れました。 中国とロシアが結び付けば、軍事的にも経済的にも、欧米諸国と対抗できる勢力となります。その結果、世界の勢力は二分され、世界大戦、そして核戦争の危機が高まったのです。 一方、トランプ氏は、神を信じない共産主義、全体主義国家の中国こそ、アメリカ、そして世界にとって最大の脅威であると認識しており、政権の中枢に、中国に対して厳しい姿勢を貫く人材をそろえました。 さらに、中国に10%の追加関税をかけ、最終的に60%の関税をかけると主張しています。 2009年から2022年まで、アメリカの最大の輸入先は中国でした。アメリカの輸入全体に占める中国の割合は最大21%もあったのです。 前トランプ政権が中国に関税をかけたこともあり、2023年には15年ぶりに中国がアメリカの輸入先トップから転落しました。 それでも輸入全体に占める割合は約14%、金額にして4200億ドル、日本円にして63兆円を超えています。 減ったと言っても、まだまだ中国からたくさんモノを買っているのですが、トランプ氏は今後、さらに関税を引き上げようとしているわけです。 関税を上げれば中国はアメリカにモノを買ってもらえなくなりますので大きなダメージとなりますが、アメリカにとってもこれだけたくさんのものを輸入しているわけですから、物価高につながって国民生活にも影響があります。 それでもなぜ関税を上げるのかといえば、中国の利益を減らし、経済力を弱め、最終的に軍事力に回すお金を減らす、すなわち「兵糧攻め」の意味があります。 トランプ氏は「もし、中国が台湾に侵攻するなら150%から200%の関税を課すつもりだ」とも述べています。 この発言からも分かるように、トランプ氏はアメリカの経済力を武器として、軍事力による中国の覇権拡大を抑止しようとしているのです。 さらにトランプ氏は、ロシア-ウクライナ戦争を終結させ、ロシアとの関係を修復し、中国とロシアが結び付かないよう手を打つと思われます。 トランプ氏の支持者たちの声、またトランプ政権の今後の動きなどについては、幸福実現党のYouTube番組である、言論チャンネルやTruth Zでも取り上げていますので、是非ご覧ください。 ◆日本も「信仰心」を大切にした国づくりを このようにアメリカはトランプ大統領のもと、大きく変わろうとしています。 アメリカの重要なパートナーである日本も、この流れを見誤るべきではありません。 幸福実現党が訴えたいのは、今、日本にとって大切なことは、「何が正しいか」という善悪の判断に責任を持つ政治を行うということです。 善悪の判断を行うためには、人間の欲望や利害を超えた、神仏の考え、神仏の願いというもの、すなわち価値観を教える宗教を尊重することが大事になります。 日本で「宗教」というと、神にお願い事をして御利益を得ること、というイメージがあると思いますが、世界標準の宗教とは、神仏の存在を信じ、神仏の心、価値観を学ぶものです。 アメリカで起きたトランプ氏当選も、有権者が「正しさとは何か」「神の心に適った政治とはどういうものか」を求めた結果だったといえます。 現在、日本では、政府に何をしてもらえるかという「バラマキ政治」が横行し、「働き方改革」という名の残業規制と企業への「賃上げ要求」を行い、「なるべく働かずに給料はしっかりもらいたい」という考え方が良しとされているような状態です。 「御利益」を求める誤った宗教観が、政治の世界にも流れてきているといえます。 しかし、日本経済が強くなったのは、勤勉の精神を大切にし、「しっかり働いて、社会のため、国家のために貢献しよう」という価値観のもと、智慧を絞り、民間企業が付加価値の高いモノやサービスを生み出したからです。 自助論の精神を持つ国民が増えなければ、国が豊かになることはないのです。 幸福実現党の大川隆法総裁は、「鍛錬の光」という法話の中で次のように述べています。 「自分が努力して、偉くなることで周りをもっともっと素晴らしくしよう、立派にしよう、豊かにしよう。そして日本の国力もつけよう。世界に対してもいい影響を与えよう」、こういうふうに思う人を増やす必要があるのだということです。 「信仰」とそういう「自己鍛錬、努力」というのは両立するものだと思っているし、そうでなければ、立派な国や立派な世界には決してなることはないというふうに思っています。 幸福実現党は、日本がかつて尊重してきた、勤勉の精神を取り戻し「小さな政府、安い税金」の国造りをして、日本を立て直していきたいと考えています。 さらに、「武士道の精神」を取り戻して、中国の悪事に対して正々堂々と発言できるような国を目指します。 人権弾圧を繰り返し、台湾を軍事的に威嚇する中国の悪に目をつぶり、経済的にはうまく付き合っていこうという姿勢では、これからのアメリカの信頼は得られません。 そして中国を封じ込めていくためには、ロシアとの関係回復が不可欠です。 大川総裁は、信仰を持つ国同士が連携して唯物論国家を包囲していく必要があるとして、次のように世界戦略を語っています。 (以下引用) バイデンさん的に、「民主主義国家」対「専制国家」と言うだけでは十分ではないと私は思っているのです。やはり、「神仏への信仰心を持っている国家」対「無神論・唯物論国家」という、この対立であれば、勝てる可能性はあるのです。 「完全な無神論・唯物論の国家」というのは数はまだ少なく、そんなにないのです。はっきり言えば、中国と北朝鮮ぐらいしかないのです。あとは、ある程度、みんな信仰心を持っているので、そちらのほうにもうちょっと追い込んでいく必要はあるのではないかと思っています。(『「メシアの法」講義』) (引用終わり) ロシアは旧ソ連の継承国ではありますが、ソ連とは政治体制が違います。何より、ソ連は共産主義の唯物論国家でしたが、ロシアはロシア正教の信仰を大切にするプーチン大統領のもと、信仰を尊重する国です。 この信仰を持つ国ロシアを、いわゆる西側諸国の仲間にしていくことが、日本と世界の安定のために不可欠なのです。 ◆世界宗教を統合する大川総裁の教え このように、正しい政治を行っていくためには、普遍的な政治思想が必要であり、その根底には神仏の心を教える正しい宗教がなくてはなりません。 「自由」や「民主主義」は大切な価値観ですが、各自の欲望に基づく自由、好き勝手に生きる自由を尊重し、自分の人生や家族に責任を持たず、社会の秩序を乱し、挙句の果てには他人に迷惑をかけても自由というのは何かがおかしいのではないでしょうか。 そして、そうした人たちが多数集まって「民主主義」を行ったとしても、国が繁栄することはありません。 やはり、人間の欲を超えた普遍の価値に心を合わせ、その上で各自の自由を発揮して国づくりをする「信仰ある自由」「信仰ある民主主義」が、国民の幸福を実現し、未来の世界を拓くためのカギといえます。 私たち幸福実現党は、宗教心、信仰心を根底に据えた国造り「宗教立国」の実現を目指しています。トランプ政権のあり方をそのヒントにしつつ、あるべき日本と世界の姿をこれからも示してまいります。 「103万円の壁」について考える 2024.11.30 幸福実現党政務調査会ニューズレター No.37 https://info.hr-party.jp/2024/14648/ ◆「103万円の壁」問題とは 2024年10月27日投開票の第50回衆院選で、自民・公明合わせた与党が過半数を割りこむ結果となり、第2次石破茂内閣は、野党との政策ごとの交渉を余儀なくされています。そこで焦点となっているのが、「103万円の壁」問題です。 「103万円の壁」とは、アルバイトやパートで働く労働者が、年収103万円を超えると所得税の納税が発生するため働き控えを行うようになるという問題です(注1)。 この壁が「103万円」であるのは、基礎控除額(48万円)と給与所得控除額(最低額55万円)の合計が103万円であることによります。 与党と政策協議を行っている国民民主党は、基礎控除額を引き上げることで、所得税の納税が発生するのを「103万円」から「178万円」にすべきだと提言しています。 20日、自民・公明両党と国民民主党は、103万円の壁を「引き上げる」との内容を盛り込んだ新たな経済対策について合意し、22日には、政府はこの経済対策を閣議決定しました。 今後は、控除額をどう設定するかなど具体策が議論されることになります。 ◆「103万円の壁」問題をどう考えるべきか 「103万円の壁」の引き上げは、パート・アルバイトの働き控えを抑え、労働力不足を抑制する効果を期待することができます。同時に、基礎控除が拡大するため、家族などの扶養者をはじめ、一般の労働者に対して幅広く減税措置が取られることになります。減税で国民負担が軽減される点は評価すべきでしょう。 一方で、政府は、壁を「103万円」から「178万円」に引き上げた場合、国と地方自治体の税収は併せて7兆円〜8兆円程度減収すると試算しています。 壁の引き上げと同時に歳出カットを行わなければ、赤字国債の発行額増など財政悪化やさらなる物価高につながることが懸念されます。物価高や将来的な増税など、実質的な意味で国民負担を軽減するためには、壁の引き上げと同時に「政府の仕事の減量」を併せて行うべきです。 ◆「年収の壁」問題の根本解決に向けて 国民民主党は、壁を「178万円」に引き上げるべきとする根拠として、「103万円の壁」の水準が定められた1995年から現在までの最低賃金額の伸び率を挙げています。一方、壁の引き上げ額は、1995年を基準にした物価上昇分を考慮した「120万円程度」で良いのではないか、とする意見もあります。 英国の基礎控除額(約239万円)や、ドイツの基礎控除額と給与所得者に対する控除とを併せた額(約169万円)などといった例を見ても、178万円まで引き上げることは諸外国と比べても遜色ないと考えられます。 しかし、178万円分よりももっと働きたい人や、物価高の影響による名目上の収入増の傾向を考えると、本来、「壁」自体を解消すべきではないでしょうか。 そこで、所得税制においてフラット税制を導入すれば、労働量や収入に関わりなく税率が一定であることから、「年収の壁」は根本的に解消されることになります。 労働供給を増やすインセンティブが高まって労働力不足が解消されるとともに、労働者の手取りが増える方向となります。 将来構想として、段階的にフラットタックスを導入することを検討すべきです。尚、その場合は、低所得者への増税につながらないよう、社会保険料負担の見直し、逆進性が指摘される消費税廃止と同時に進めるなどといった配慮を行う必要があります。 フラットタックスを導入する前段階としては、できるだけシンプルな税制を敷いて広く浅く税をとる仕組みを目指すべきです。所得税率の低下と累進性の緩和を行いながら、税を複雑にしている様々な控除はできるだけ無くしていくべきです(注2)。 ◆問題は「103万円の壁」だけではない 「年収の壁」は「103万円の壁」だけではありません。たとえば、パートで働く妻のケースを考えると、住民税が発生する100万円、一定の条件(従業員51人以上の企業で働くなど)で社会保険料が発生する106万円、基本的に無条件で社会保険料が発生する130万円、夫の配偶者特別控除が減り始める150万円、夫が配偶者特別控除を受けられなくなる201万円に、それぞれ壁が存在しています。 所得税に関する103万円の壁については、非課税(税率0%)から税率5%が課せられるに過ぎないので、それほど大きく手取りが減るというわけではありません。 より大きな問題は、社会保険料(厚生年金保険と健康保険)が発生する106万円の壁や、130万円の壁であり、社会保険料の加入義務が発生することで、手取りは大きく減ることになります。 厚生労働省は社会保険料の壁について、年収条件や企業規模の条件を撤廃し、週20時間以上働けば、社会保険料の負担が発生する仕組みとする方針を示しています。しかし、これは社会保険料負担の対象を拡大させる措置であり、企業と労働者にとっては事実上の増税となります。 また、厚労省は、企業と労働者で保険料を折半する今のルールを見直し、労使間で合意が取れていれば、労働者の負担割合を減らせる案も示しています。 しかし、労働者の社会保険料負担を軽減したところで、企業にその分の負担が上乗せされることになれば、企業は賃上げをためらうか、労働者を雇うことに消極的になって、失業者が増えることが懸念されます。 そのほか、高齢者が「働き損」となる「50万円の壁」も存在しています。これは、「在職老齢年金」制度によるもので、65歳以上の働く高齢者の収入が、賃金と厚生年金を合わせて月額50万を超える場合、50万円を上回った年金部分の半分が減額されるという仕組みです。 厚生労働省は現在の制度を見直し、基準を引き上げるほか、将来的に廃止する案を提示しています。 現行制度は高齢者の労働意欲を削ぎ、生涯現役社会の実現に逆行するものと言えます。将来、年金を多くもらうことを希望する人に限って負担を増やしたり、在職老齢年金の廃止を含め、制度の見直しを早期に進めるべきです。 総じて、事実上の税金といえる社会保険料の壁を根本的に解決するには、公的年金をはじめとする社会保障の根本的な見直しが必要ですが、これは今からでも議論をはじめなければ、国民の負担は重くなる一方です。 (注1)アルバイトやパートが家族の扶養に入っている場合、給与収入が103万円を超えると、税制上の扶養から外れるため、扶養者の所得税、住民税が増えることにもつながります。 (注2)所得税について、現在、様々な控除が存在することにより、収入約270兆円のうち課税対象となる所得は約120兆円に過ぎません。見直すべき控除の一例として、年金に関する控除があります。社会保険料を納める際の「社会保険料控除」がある一方、年金による収入が入った際の「公的年金控除」も存在しており、こうした二重控除の仕組みは見直しを図るべきとの声も挙がっています。 「大きな政府」の象徴 デメリットだらけのマイナ保険証を廃止しよう(幸福実現党NEW168号解説) 2024.11.21 https://youtu.be/VssxLGU–x0 幸福実現党政務調査会代理 小川佳世子 ◆12月2日からマイナ保険証に一本化 今回は、幸福実現党NEWS168号「デメリットしかない マイナ保険証一本化は見直しを」の解説をいたします。 今年の12月2日をもって、従来の健康保険証の新規発行がなくなり、「健康保険証の利用登録をしたマイナンバーカード」通称「マイナ保険証」に一本化されます。 これについて、「マイナンバーカードはつくりたくないけど、健康保険証がなくなってしまうんだったら、カードをつくらないといけないのかな」という不安の声も寄せられています。 そこで、まずお伝えしたいことは、現在、お手元にある健康保険証は、有効期限が来るまで、最長1年間利用できます。 それ以降も、「資格確認書」という、従来の健康保険証と同じように使えるプラスチック製のカードが発行されますので、マイナ保険証を持っていないからといって、病院の受診ができなくなることはありませんので、ご安心いただきたいと思います。 むしろ、マイナ保険証を取得するためには、自治体の窓口に申請してマイナンバーカードを手に入れて、保険証の利用手続きを行わないといけないので、結構面倒です。 一方、現在のところ、資格確認書を取得するための手続きは特に必要ありません。 とはいえ、この資格確認書は、マイナ保険証を持っていない人が自ら申請して取得することが原則です。また当初、有効期限は1年ほどになる予定でした。 しかし、「それはつまり、マイナンバーカードの取得を義務化されるのと同じじゃないか」という反発が沸き起こり、政府は「マイナ保険証を持っていない人全員に、資格確認書をお送りします。有効期限は5年とします」と苦し紛れの策を出しました。 ただ、この政府の「申請しなくても資格確認書を送ります」という約束は、ハッキリとした法律の裏付けがあるわけではありません。 今後、「やはり、マイナ保険証を持っていない人は、1年ごとに申請して資格確認書を取得してください」などといって、マイナ保険証を持っていないと困るような状況がつくられる可能性もあります。 ですから、幸福実現党としては、現在の健康保険証を廃止してマイナ保険証に一本化することに、引き続き反対していきます。 そもそも、資格確認書は、従来の健康保険証と色くらいしか変わらないものになる見込みです。それなら、今の保険証をなくす必要はないはずです。 ちなみに、ご自宅に「資格情報のお知らせ」という紙製のシートが送られてきた方も多いのではないかと思います。当初はマイナ保険証を持っている人だけに送られる予定でしたが、全員に送られるようです。 これは、「資格確認書」とは違い、単独では保険診療が受けられません。あくまでもあなたの入っている健康保険や、保険者番号を確認するためのものです。 また、マイナ保険証を持っていても、ネットや機械の不具合で、マイナ保険証のカードリーダーが使えないというトラブルが報告されていますが、そんな時に、マイナ保険証と一緒に、「資格情報のお知らせ」という紙を提示すると、診察が受けられるとのことです。 このように現行の健康保険証を廃止して、無理やりマイナ保険証に一本化しようとしているため、非常に複雑になり、手間もお金もかかっています。 ◆利用率14%の現実 さて、これだけ苦労して普及させようとしているマイナ保険証ですが、9月時点で利用率は14%未満で、利用する人がなかなか増えません。 それはなぜかというと、トラブルが絶えないからです。 全国保険医団体連合会が9月に公表した調査によると、約7割の医療機関がマイナ保険証の「トラブル・不具合があった」と回答しています。 トラブルの内容としては、カードが読み込めないとか、保険証の資格が確認できない、さらには他人の情報が紐づけられていたという深刻なものもありました。 マイナ保険証には、患者さんの入っている健康保険組合や保険者番号などは書かれていません。そのため、カードリーダーでデータを読み込めなければまったく使えないわけです。 トラブルがあった医療機関の約8割が、「健康保険証でトラブルを乗り切った」と答えており、やっぱり現在の健康保険証は便利なので残してほしいという声が絶えません。 その結果、マイナ保険証の利用率は、14%に満たないというわけです。 ちなみに昨年末段階は利用率4.29%だったのですが、マイナ保険証が利用できない医療機関は通報してください、一方で、利用率を上げた医療機関や薬局に対しては最大40万円の補助金を出しますよという、「アメとムチ」の政策でようやく9か月で14%まで利用率を引き上げました。 そもそも、推進側にいるはずの国家公務員がマイナ保険証を使っていないのです。 実は8月時点ではもっと低かったのです。国家公務員全体で利用率は5.47%、防衛省の職員は3.54%、外務省職員は4.5%という利用率でした。 マイナンバー関連の情報漏洩も、昨年度は分かっているだけで300件以上起きており、情報漏洩が心配だということもあるのではないかと思います。 そのように、みんなが使いたがらない欠陥システムを、税金を使って使わせようとするなど、民間企業ではありえないことをやっているわけです。 このような状態に私たちはもっと怒るべきではないでしょうか。 ◆マイナ保険証のメリットは虚構 とはいっても、デメリットよりメリットが大きいならば推進する意味もあるかもしれません。ところが、政府がアピールしていたメリットはどうも怪しいのです。 例えば厚生労働省は「救急搬送時や旅行先ではじめて受診する病院でも、マイナ保険証があれば過去、病院を受診した時のデータや、どんな薬を飲んでいるかが分かるので安心です」などと言っています。 しかし、病院を受診した後1か月ほどたたないと、マイナ保険証を通じて情報を確認することはできないのです。ですから、お薬手帳を持ち歩く、もしくはスマホにお薬手帳アプリをダウンロードした方がよほど便利で安心ということです。 しかも、消防庁が救急活動のシミュレーション訓練において、本人の身元などを確認するのに、従来の保険証とマイナ保険証を使った場合を比べたところ、情報の読み取りに時間がかかり、マイナ保険証を使った方が救急車の出発が6分29秒も遅くなってしまったという、笑えない結果が出ました。 また、マイナ保険証のメリットとして、河野太郎・前デジタル担当大臣が「保険証の不正利用を防げます」と言っていました。 しかし、市町村国民健康保険において不正利用が確認されたのは5年間で50件とのことです。他にも隠れた不正使用があり、これがマイナ保険証で防げたとしても、それ以上にマイナカードを悪用した詐欺被害や情報漏洩事件などが起きたら本末転倒ではないでしょうか。 実際、偽造されたマイナンバーカードが身分証明書として使われ、知らないうちにスマホが乗っ取られ、ネットショッピングで高額の商品が勝手に購入された被害が出ています。 保険証の不正使用対策は、本人確認を徹底することで防げばいいだけで、これをもってマイナ保険証をゴリ押しする理由にはならないのではないでしょうか。 ◆マイナカードをゴリ押ししたい理由とは? では、政府がここまでマイナ保険証にこだわる理由は何でしょうか。 幸福実現党の大川隆法党総裁は、マイナンバー制度について「貯金が銀行にあるのは分かっているので、これを全部マイナンバーと連結してしまえば、各人がどれだけ持っているかが分かるようになります。番号だけ入れれば、全部が一目瞭然で分かるようになるので、『貯金に税金をかけていく』という次の手があるわけです」(『人の温もりの経済学』)と述べています。 実際、この指摘を裏付けるような動きを政府は着々と進めています。 例えば、「改正マイナンバー法」などによって、年金給付を受けている人に対して、書留郵便などで通知した上で、同意を得た場合、または、一定期間内に拒否するという回答がない場合は、年金の給付を受けている口座を政府が自動的に「公金受取口座」としてマイナンバーに紐づけられるようにしました。 なお、こちらはまだ準備を進めている最中とのことです。 政府は「口座を登録しても、預貯金の残高を知られることはありません」「公金受取口座は、政府から国民に給付をするときのみに利用しますから安心してください」などと説明しています。 しかし、財務省の財政制度審議会の議事録などを読むと、「マイナンバーと全銀行口座の紐づけを通じて、その人の収入や財産を把握し、負担能力に応じて税金や社会保険料を負担してもらうようにしましょう」という趣旨のことが堂々と話し合われています。 ただ、この預貯金への課税は、国民がマイナンバーカードを持たなくても可能です。 強引にマイナ保険証を普及させて、国民全員がカードを携帯しないといけないような社会を作ろうとしているのは、あらゆる個人情報と紐づけて、監視社会を完成させようとしているからではないでしょうか。 特にマイナ保険証で健康情報をつかむことができれば「ワクチン接種した人」「特定の病気にかかっていない人」だけ行政サービスを受けられるとか、保険料を下げるなどといった施策も可能になります。 今年5月には、マイナンバーカードの全機能をスマホに搭載できるようにする「改正マイナンバー法」が成立しました。 デジタル庁は、「本人確認が、さまざまな行政手続きだけでなく、民間サービスでも利用できる」と言っていますが、これによってより多くの個人情報が一元管理できる道が開けます。 他国でも共通番号の導入は試みられたことはありますが、国民からの反発やなりすまし被害が多発して、利用拡大に歯止めがかかっています。 当初、税と社会保障と災害対策のみに使うだけです、と言っていたマイナンバーの利用範囲を拡大し、事実上のカード取得の義務化まで進めている日本は、自由主義国の流れには逆行しているといえます。 むしろ日本は中国に近づいているのではないでしょうか。 中国では、身分証明書の携帯が義務付けられ、政府が国民の個人情報、年収や資産、借入状況、さらにはウェブでの行動履歴・購入履歴などを監視し、「信用スコア」をはじき出し、それによって行動や借金の制限がされるという監視システムが成立しています。 大川総裁は、全体主義体制の中国について触れながら「国民をマイナンバーで全部つかめたら、ナンバーだけで全部日本人をつかめるんだったら、あと、侵略するときはしやすいでしょうね」(『「小説 とっちめてやらなくちゃ」余話』)と述べています。 国民を一元管理できるマイナンバーのシステム自体が、中国の全体主義と極めて相性がいいということです。 ◆今必要なのは「小さな政府」の考え方 現在、マイナンバーを推進している自民党は、社会保障の充実や子育て支援などの「大きな政府」を目指しています。 「大きな政府」を目指すと、どうしても国民の財産を監視し、取れるところから税金を取り、所得の再配分を強化するような仕組みが欲しくなります。 現在はマイナンバーやマイナ保険証に反対している、立憲民主党や共産党、れいわ新選組などの野党も、自民党以上に「大きな政府」を目指しています。 そもそも、マイナンバー制度導入の議論が加速したのは、年金保険料をおさめたにもかかわらず、それが正しく記録されていなかった「消えた年金」問題がきっかけでした。 そこで、立憲民主党の前身である民主党が2009年の衆院選公約に「所得把握を確実に行うため、税と社会保障制度共通の番号制度を導入する」との政策を盛り込み、政権を取った後、仕組みづくりに着手したのがマイナンバー制度のはじまりです。 自民党が創った制度に反対している政党も、何らかのかたちでマイナンバーに似たシステムをつくりたいという考え方は共通しているのです。 いくら「国民の利便性を高めるため」といっても、結局は国民の財産を把握し、取れるところから取って、持たざるものに配るというシステムにならざるを得ないのです。 つまり、「ゆりかごから墓場まで」国民の面倒を見る「大きな政府」を志向する限り、マイナンバーの問題は無くなりません。マイナンバーは「大きな政府」の象徴ともいえる仕組みなのです。 幸福実現党は、現在のところ日本で唯一、自助努力の精神をベースにした「小さな政府」を目指している政党です。 一人ひとりの経済的自由、政治的自由を守るためにも、マイナンバー制度の拡大を含む「政府の無駄な仕事」をやめ、「小さな政府」を目指して参ります。 【米大統領選2024】トランプ勝利が日本に与える影響 2024.11.07 https://youtu.be/VeI0YJNyCHE 幸福実現党政務調査会長 里村 英一 ◆米大統領選でトランプ氏が勝利 注目を集めてきたアメリカ大統領選挙は、日本時間11月6日午後4時半の段階でトランプ勝利という報道が流れ、トランプ氏自身も実際に勝利宣言を行いました。 今回のトランプ勝利をどのように見るのか、あるいは、なぜトランプが勝ったのかこれについて考えてみたいと思います。 その答えは簡単です。アメリカ国民は「小さな政府」と「安い税金」を選んだということです。アメリカは景気がいいですが、物価がどんどん上がって生活苦になっています。 その中でアメリカ国民から経済状態を良くしてほしいという声が止まらなくなっていました。これが今回の大統領選の決め手になりました。 アメリカの大統領選挙は、建国以来基本的に「大きな政府」を選ぶか「小さな政府」を選ぶか、言葉を換えれば、政府により大きな力を与えるのか、そうではなく、より大きな力を民間に与えるのかで選ばれてきました。 今回のアメリカ国民の判断は政府に力ではなく、国民に力を与えようと。これが「小さな政府」や「安い税金」によって可能になるわけで、これを国民が選んだということです。 そういう意味においては、本日ニューヨークダウが上がり、あるいは日経平均株価も上がったというのは非常に納得できるところがあります。 果たして今後このトランプが選んだ判断が、どのように日本と世界に影響するのかこれを考えてみたいと思います。 ◆日米関係の行方 1点目は、日米関係の行方についてです。 基本的にトランプ氏と日本の総理大臣に石破氏が首班指名で選ばれた場合に石破氏とトランプ氏は相性が合いそうにない感じがします。 決してトランプは日本の味方というわけではありません。基本的にトランプ氏の外交方針は2つあります。 1つはアメリカの国益で動くということです。2つ目は主権国家の意思を尊重するというところになります。 そういう意味において、日本がいつもの権利にアグラをかくような外交をやっていると、トランプ氏からはそういう日本の外交姿勢は卑怯だと言われて、厳しいものになるかもわかりません。 この辺は今後経済問題、あるいはさまざまな政治問題で出てくると思います。 さらに日米関係を含めたロシアとの関係を見れば、当然アメリカとロシアの関係は修復に向かいます。 すでにプーチン氏はその方向で動き始めて、談話を発表しています。 日本が相変わらずの反ロシア姿勢でいく限り、日本はアメリカあるいは国際社会で置いて行かれかねない。こういう意味で日本の判断は大きく外交方針も変えていかなければなりません。 ◆株価の推移 2点目は、経済の動向です。 基本的にトランプの経済政策は、政府の支出を減らし減税をする。これはインフルなき経済繁栄をつくる方向で間違いないやり方です。 この方向でいく限りアメリカの株価は上がる。日本の株価も当然上がってくる。ただし反作用もないわけではありません。円安です。 ですから、日本は生産性を上げて、日本製品を海外で買ってもらえる。こういう動きがないと円安になり、輸入を中心に物価が上がることになってしまいます。 ◆憲法改正の今後の展望 3点目は、憲法改正の今後の展望です。トランプ氏はアメリカの歴代政権の中で唯一、憲法9条改正について主権国家として、日本の意思に任せるという考え方を持っていた人です。 そういう意味では憲法改正の今後の展望を見たときに、やはりトランプ時代を逃してはならないと思います。 そして、これにつながる論点として、核装備議論はどうなるかということです。 核装備については、トランプ氏は日本に任せるという考えを安倍晋三氏が総理大臣時代に伝えていますので、やはりトランプ時代にやっておかなければならないと思います。 ◆地球温暖化、LGBTQ、宗教 トランプ氏になると、地球温暖化防止にアメリカが必ずしも乗らないということになると、日本も大きく舵取りを変えないといけなくなります。 あるいは、LGBTQあるいは、同性婚の推進もアメリカの保守への回帰の動きがありますが、それに反して日本が多様性を大義名分に何でもやっていいということになれば、アメリカとの間に政治的トラブルを抱え込むことになるかもしれません。 その政治的トラブルというのは、結局のところ人間の素晴らしさとは何か、さらには宗教的な問題にもなってきます。 暗殺未遂事件で改めて分かったように、トランプ氏自身は非常に信仰心が宗教心が篤い方です。 今後の日本の考えた時に宗教を理解するということがないと、日本はアメリカ外交がうまくいかなくなりかねません。 こういうことだけに幸福委実現党は宗教政党として、しっかりと今後も自立した日本としてのアメリカとの付き合い、ロシアとの付き合いを考えながら、日本の平和と繁栄のために努力してまいります。 トランプ時代の今こそ日本が再浮上する復活するチャンスだと思います。 カオスの都知事選をどう見るか。民主主義か、堕落か。 2024.06.30 https://youtu.be/PC9ZEzh9mh4 政務調査会長 里村 英一 ◆カオスの都知事選 皆様もご存知のように、今回の東京都知事選には、史上最大56人の立候補者が出ました。 そして、公設掲示板の掲示をめぐって、やれ、「ほぼヌードだ」あるいは、「風営法違反だ」あるいは、掲示板そのものを販売するかのごとき動きがあって、大変な批判が出ております。 さらに政見放送をめぐっても、何を言っているのか意味が分からないと、大変お怒りの方もいらっしゃいます。 私自身も、実際に東京都内各所にある掲示板を見て、正直その無残さに声が出なかった一人です。 これをめぐって、制限をかけるべきだ。取り締まるべきだ・・・と、いろんな声が聞かれます。 しかし、単純にそのように考えていいのかどうか、これが今回の一番のテーマです。 なぜ、こんなことが起きるのかということを考えると、やはり東京都知事選は日本の選挙の中で、有権者が一番多く1100万を超えています。 しかも、政治経済の中心ということで、マスコミの注目も大きく、ネット上の注目も大きい。それゆえに都知事選に参戦することで、稼げる。あるいは、有名になれる。 場合によっては、元議員のように、うまくすれば当選できるかもしれない。いろんな思いがあり、まるでバカ騒ぎのようなことが起きています。 ◆民主主義とは何か では、これをどう見るか3点に分けて述べたいと思います。 まず1点目は、「民主主義とはこんなものである」という冷めた見方です。 民主主義というのは、誰でも選挙に出ることができる仕組みです。自分の運命を決めることができる選挙に参加できる。これ自体が民主主義の良さです。 当然、その「誰でも」の中には、良識をお持ちの方もおられ、良識の欠片もない方もおられます。 立候補される方を事前に、ふるいにかける。ではそのふるいはどういうものか。昔から取り上げられているのは、1つは財産。1つは学歴。1つは偏差値。あるいは性別。場合によっては体力。 このようなふるいにかけるべきだという意見もあります。しかし、ふるいにかけるという考え方が、始まったらこれは基本的に民主主義ではなくなります。 このような制限選挙というものは、人類が長い時間をかけて獲得してきた民主主義の選挙に反する考え方であり、私たちはこのような誘惑に断じて乗ってはならないと思います。 ◆政治参加の自由を守るには 2点目は、やはり立候補者は良識、あるいは公序良俗に則った考え、話し方、行動をしなければならないという考えもあります。 そうならず乱暴なことが始まってしまうと、そこに容易に警察権力の介入が始まります。場合によっては、公選法改正のような形で法律の改正も始まります。 そうなったときに最も得をするのは、権力を持っている者、権力に預かっている組織です。 逆の言い方をすれば、それによって新しく出ようとする芽が詰まれてしまい、結果的に、不利益を被るのは有権者であると、このような考え方があります。 ですから制限選挙、例えば供託金を増やす。供託金を増やせば、馬鹿なことはできないだろうと、実際そう考えて約100年前に供託金という制度が始まりました。 しかし、この供託金という制度は世界では極めて少数派です。アメリカ、ドイツ、フランスにはありません。 イギリスは、一応供託金はありますが、日本円にして8万円程度です。このように基本的に選挙参加の自由を最大限に認めようというのが、世界の民主主義国の当たり前の姿です。 そういう意味で日本の高い供託金制度や、あるいは公職選挙法の細かすぎる規制の多さは、すでに日本の政治参加の自由が、失われていると言っても過言ではありません。 そのような政治参加の自由を奪うことになりかねない警察権力、あるいは法律改正など呼び込みかねない、馬鹿騒ぎめいた振る舞いは、厳に進まねばならない。これはぜひとも言っておきたいと思います。 ◆民主主義の本質とは では、どうしたらいいのか。これが第3番目になります。結局、民主主義の本質を考えないと見えてこないと思います。 これについて大川隆法党総裁が『宗教立国の精神』という書籍の第1章「天命を信じよ」の中で民主主義について、このように述べています。 『宗教立国の精神』 https://www.amazon.co.jp/dp/4863950381 (引用) 民主主義政治というものは、一種のフィクションによって成り立っているものです。「本来は、神仏から委ねられた人が、神仏の思いを実現し、現実の政治をなしていく」というのが理想の政治ですが、現実には、神仏の声、神仏の考えが分からないがために、その“代用品”として「投票を通して民の声を聴き、多数を占めたものが、神仏の考えと同じであろう」という擬制を用いているわけです。 (引用終わり) つまり民が神仏の心を心とするような理想を目指してこそ、初めて民主主義は素晴らしいものになるというのが、大前提です。 しかし、この民の心が楽をしていきたい。楽をして稼ぎたい。このような方向でいくならば、それによって選ばれた代表者は基本的に、神仏ならぬ泥棒になってしまいます。 その泥棒は国民にバラマキを約束します。皆様のご利益を約束します。その一方で増税をして保険料を上げて国民から巻き上げる。こういうことをやっていきます。 日本の国政面においては、この泥棒の政治が実現し、その一端が最近の裏金づくりという問題になって吹き出したのかもしれません。 この国民の声、心こそが大事になるということ。これが間違うとヒトラーを私たちの民主主義は産んでしまいます。 つまり、ドイツ国民の心が、ユダヤ人さえいなくなれば自分たちの生活は良くなると、このように考えたときにヒトラーという人間が選ばれました。 ◆神仏の理想を実現する民主主義政治 民主主義は、民の声が神仏の心を目指す限りは、神仏の理想の政治が実現する。ユートピアをつくっていくものになります。 一方でおいて民の心が、悪魔の囁きに負ける方向でいくと、この世に地獄をつくるものになります。 その意味では、民主主義はそれだけで素晴らしいものではなく、民主主義を素晴らしいものに保つ努力があってこそ、素晴らしいものとなるということを忘れてはならないと思います。 例えば、チャーチルは「民主主義は、最悪の政治形態」と言い、あるいは、松下幸之助さんは民主主義について、「国民はその程度に応じた政府しかもちえない」と厳しく戒めています。 要するに、国民自らもまた理想を抱き、その理想実現のための、政治家を選ぶためにも、その政治家の人柄、あるいは政治哲学、さらに政策をよく吟味しなければ民主主義というのは保たれないということです。 正直言って面倒な話ですが、これは民主主義のコストであって、これを避けてはならないと思います。 これを避けたときに、私たちの民主主義は簡単に独裁制へと転換していきます。絶対にこの民主主義を独裁制に転換させてはならないと考えています。 幸福実現党もそのような理想を求め、そのような民主主義の実現を求める皆様の声に耐えることができるような政党になれるように努力をしてまいりたいと思います。 すべてを表示する 1 2 3 … 253 Next »