Home/ エネルギー政策 エネルギー政策 世界の原子力安全の向上に貢献するのは日本の責務 2014.09.05 文/福井県本部副代表 白川 康之 ◆福井地裁の不合理な判決 今年5月21日、福井地裁は、関西電力大飯発電3、4号機の再稼働を認めない判決を言い渡しました。それは「ゼロリスク」を求めた、あまりにも不合理な判決だと言わざるをえません。 そもそも「100%の絶対安全」などあり得ません。原子力規制委員会が定めた原発の新規制基準も全く考慮せず、科学的検討もない、原子力の素人が下した無見識なものでした。 1992年の伊方原発の安全審査を巡る訴訟の判決で、最高裁は「極めて高度で最新の科学的、技術的、総合的な判断が必要で、行政側の合理的な判断に委ねられている」との見解を示し、原発の審査に関しては、司法の役割は抑制的であるべきとしました。 極めて妥当な判決です。各地で起こされた原発関連訴訟の判決には、この最高裁の考え方が反映されてきたにもかかわらず、福井地裁の判決は最高裁の判決に反するものであり、「脱原発ありき」の判断だったのではないでしょうか。 さらに判決は、原発の運転停止によって多額の貿易赤字がでるとしても「国富の流出や喪失というべきでない」とし、国富を「豊かな国土に国民が根を下ろして生活していること」と定義し、それを取り戻せなくなることが「国富の喪失だ」という現実を無視した環境左翼的な実に無責任な私見に基づくものでもありました。 ◆原発の再稼働は不可欠 現在わが国は、原発はあるが使えない「原発稼働ゼロ」という異常事態の中にあります。東日本大震災後、火力発電の燃料輸入費が増大し、毎日百億円という国富がムダに垂れ流されていることは厳然たる事実です。 結果、平均的な電気料金は家庭用で2割、産業用で3割も上がっています。家計の負担増だけでなく、産業界も値上げで悲鳴を上げているのが現実です。国民生活と産業の基盤である電力を安価で安定的に供給するためには、安全性を確認した原発の早期再稼働が不可欠です。 ◆世界は原発を必要としている 今の日本の世論は、原発についても「一国平和主義」の中にあるのではないでしょうか。 今や、国防は一国のみにてできる時代ではありません。そうした現実から、政府は集団的自衛権の行使容認を決定しました。ましてや、エネルギー自給率が6%のわが国においては、エネルギー安全保障についても一国にてできるものではありません。 他国から資源を輸入するだけでなく、エネルギーの面においても日本が世界に貢献してこそ、エネルギーの安全保障が成り立つといえます。 世界人口が100億に向かう中、食糧増産のためにも大きなエネルギーが必要となります。安価で安定した電力の需要は増すばかりであり、世界が原発を必要としているのです。 世界の原子力発電所については、運転中が426基(内、日本は運休中48基)、建設中が81基、計画中100基であり、建設、計画中については、中国、韓国やインド等のアジア諸国が約5割を占めています。 「エネルギー基本計画」においても、国際的な原子力利用は、特にアジアにおいて拡大を続ける見込みとしており、そうした世界のニーズに応えるためにも、わが国は原子力利用先進国として、原発の建設、運転、保守管理、廃止措置(原発の廃炉は世界共通の課題)をセットに高いレベルの原子力技術、人材を維持、発展させることが必要とされているのです。 福島第一原子力発電所事故の経験と教訓に基づいた、安全性を高めた原子力技術を世界に提供し、世界の原子力安全の向上に貢献していくことは日本の責務であり、成長戦略、国際協力の観点からも意義のあることなのです。 対ロシア外交に必要な、対外発信と日本国内の理解 2014.06.04 文責/HS政経塾第2期卒塾生 曽我周作 ◆安倍首相の対中国発言 シンガポールで開かれたアジア安全保障会議で安倍首相が「アジアと世界の平和を確かなものとするため、これまでにも増した積極的な役割を果たす」と発言、またアメリカのヘーゲル国防長官も中国を念頭に「米国は見て見ぬふりをしない」と明言するなど、中国に対して包囲網の形成が進みつつあります。 オバマ政権に対しては、アジアへのリバランスの本気度を懸念する声がありますが、この会議の成果はおおむね評価されているようです。 ◆日本とロシアの連携 日本としては、対中包囲網形成の際にロシアとの関係をいかに有効に保つかということは非常に重要であると考えられます。 しかし、特に現在はウクライナ問題もあり、日ロ友好推進をアメリカは快くは思わない状況にあります。また、日本国内においてもロシアとの連携強化が訴えられるのは極めて稀です しかし、情報筋によると「ここ数週、ロシアと中国との間の大規模な武器売却の話題が、にわかに注目を集めている」とのことで、ロシアの軍事技術が中国に流れることは非常に由々しき事態であるといえます。 中国にとって、ロシアの軍事技術はとても獲得したいものでしょう。 結局、孤立を深めた両国が接近しているわけですが、日本としては、この両国があまりに深く結びつくことは、日本のみならず国際社会にとって非常に憂慮すべき事態であることを訴え続ける必要があるでしょう。 ◆日本の対ロシア戦略 幾分トーンダウンしたとはいえ、アメリカの言論はロシアに対して厳しい意見であることは変わりありません。 できれば日本がアメリカとロシアの仲介にたち、両者の対話が実現するよう、G8の枠組みを利用するなど(G8の維持も含め)努力すべきではないでしょうか。 相互不信の中で状況がエスカレートすることが懸念されます。ただ、ロシアと中国は決して蜜月関係にあるわけではありません。 プーチン大統領の本音は日本との関係強化を望んでいるはずです。 「我々は話し合う準備が整っている。日本の用意ができているかどうかはまだ分からない」とプーチン大統領が5月24日発言したかと思えば、またプーチン大統領の側近であるロシアの下院議長が来日し、「北方領土問題を巡って日本側と協議する可能性を示唆」したと報じられています。 (テレビ朝日http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000028093.html) ロシアは今経済が非常に厳しく、ロシアの産業強化には日本の力が必要なのです。 日本にとっても、中ロ接近を防ぎたいということもありますし、ロシアからパイプラインを敷設するなどし、安い値段で天然ガスを輸入することができればとても大きなことであります。 ◆ロシアとの平和条約締結と対中抑止力 さて、ではロシアとの平和条約締結に必要な北方領土問題について、返還は4島同時になるのかというと、それは分かりません。 ロシアのプーチン大統領がいかなる提案をしてくるか予断を許しませんし、今政府はどのラインで妥協できるのかを探っているのかもしれません。 しかし、私は日本国内のロシアに対する理解度が不足しているのではないかと感じます。政府は、日本国民のロシアへの理解を高めるための発信を増やすことが必要です。 またロシアとの友好関係の重要性を政府がしっかりと国民に訴えておかなければ、北方領土問題の解決にあたる交渉において、両国が同意に至ることができないことを懸念します。 対外的に対ロシア関係の重要性を訴えるのと同時に、日本国内においても同様の努力を重ねておくことが、ロシアとの平和条約締結と対中抑止力の向上にとって非常に重要なことであると思います。 台湾の「脱原発」事情 ――日本は原発推進で日台関係を強化せよ! 2014.05.06 文/HS政経塾3期生 森國 英和 ◆台湾で盛り上がる「脱原発」の運動 中台サービス貿易協定の交渉に反対する学生の立法院の占拠で話題になった台湾で、「脱原発」の動きが加速しています。 台湾は、石炭40%、天然ガス30%、原子力18%の発電割合で国民の電力消費を賄う島国。金山・国聖・馬鞍山の3か所6基の原子力発電所を稼働させています。 福島第一原発事故をきっかけに再燃した「脱原発」は現在、国内4か所目となる第4原発「龍門発電所」の是非に焦点を当てている。完成間近の龍門発電所を巡り、建設停止を強く求めています。 今年に入り、3月8日には台北市を中心に、10万人以上(主催者発表)が参加したデモが行われました。また、4月22日からは、民進党の林義雄・元主席が、ハンガーストライキを行って、馬英九政権の原発政策に異を唱えています。 さらには、「原発反対のために立法院に戻るべき」という声が学生の中でも大きくなり、立法院の再包囲に向かう動きも見られたようです。 それに対して、馬英九総統(国民党)は、「龍門発電所が完成するまで、国民投票はしない」として、建設停止を許すまいと踏ん張っています しかし27日、脱原発の世論に押し切られる形で、「国民投票の結果が出るまで、当発電所の建設を停止する」との方針を決定しました。「脱原発」の世論を押し返そうにも、台湾内の政権支持率は10%前後に留まっており、政権の「足場」は不安定なのです。 ◆脱原発に傾けば傾くほど、エネルギー・リスクは高まる 台湾は、日本同様、エネルギーの輸入依存度が非常に高く、エネルギー自給率は1%を切っています。「龍門発電所の建設を中止すれば、台湾はエネルギー不足に陥る」という馬政権の説得は、至極全うな意見です。 台湾政府経済部(日本の経産省)は、先日、「全ての原発が稼働停止になれば、電気料金が約40%上昇する」との予測を発表しています。もし脱原発に傾けば、原発稼働停止後の日本のように、電力価格の度重なる引き上げ、貿易赤字の拡大に直面するでしょう。 さらには、中国海軍によるシーレーン封鎖で「ガス欠」になるリスクも、日に日に増しています。中国・人民解放軍が、今年に入ってから、台湾や日本向けの商船が通過する海域に進出して、軍事演習や周辺諸国への威嚇行為等を行っていたことを思い出すべきです。 ◆日本は台湾の脱原発を説得せよ 台湾の脱原発の盛り上がりには、福島第一原発事故の後の、事故原因や放射能被害の不十分な説明、不適切な避難措置も影響していますが、それ以外にも、日本が台湾の脱原発に拍車をかけた要因があると思われます。 例えば、昨年9月の菅直人・元首相の台湾訪問です。菅元首相は脱原発・反原発イベントに参加し、事故の経過やその後の取り組み、原発の悲惨さについて講演をしました。福島第一原発事故当時の日本のトップからの「脱原発」の訴えは、間違いなく、龍門発電所の即時建設停止の世論に追い風となりました。 また、今年4月11日に安倍内閣が閣議決定した「エネルギー基本計画」。原発再稼働や「もんじゅ」の継続に転換したものの、与党内での審議を通過する中で、「原発推進」の色が薄められてしまいました。 今年の夏場に向けた再稼働も、昨年の申請以来滞ったままです。馬総統としては、「福島の原発事故を経た日本が、再度原発推進に舵を切った」と言いたいところですが、日本国内のこの状況では、台湾内の「脱原発」を押し切る力にはなりにくいと言えます。 やはり日本は、原発の早期再稼働などを通して、台湾の「脱原発」の流れに歯止めをかけるべきです。特に、建設中の龍門発電所の原子炉や発電機は、三菱重工業、日立製作所や東芝が製造しています。日本として、自国の原発技術の信頼を高めることで、台湾住民の説得に寄与することはできるのではないでしょうか。 ◆日本と台湾の「絆」を深めよ 地方選を今年11月末に控える台湾では、国論が割れることを恐れ、原発利用政策に舵を切ることが難しい状況です。 2012年1月の台湾総統選挙の際、世論の流れの影響を受け、現在稼働中の原発の稼働年限の延長を認めず、期間終了と共に廃炉する方針を発表したように、馬政権が、今年もさらに「脱原発」に譲歩することになれば、台湾のエネルギー危機は現実化するでしょう。 同時に中台が、台湾海峡にパイプラインを建設し、天然ガスを中国から輸入するように動いたならば、台湾は中国に、安全保障上の弱みを握られることにもなりかねず、将来的に、中国による台湾併合が起こる可能性も高まると推測されます。そうすれば、日本の国防上の危険も増すことになります。 安倍政権は、国内のエネルギー事情、世論にだけ注視していてはなりません。日本に対して非常に高い好感度を抱いている台湾との間で、「原発推進」を柱として、日台関係を強化することを考えるべきです。 脱原発でエネルギー危機、太陽光・風力は代替エネルギーになりうるか 2014.04.12 文/幸福実現党 宮崎県本部副代表 河野一郎 ◆急な「脱原発」でエネルギー危機の日本 エネルギー自給率4%の日本、「オイルショック」を経験して原子力発電に切り替え、電力総量の30%近くを原発でまかなっていましたが、平成23年の福島原発事故で、一気に脱原発に入り、エネルギー危機の日本となりました。 真夏などの電力ピーク時はギリギリの電力総量で綱渡りのエネルギー事情の日本です。しかもオイルショック以前に逆戻りして火力発電で補っています。そのため旧型の火力発電所もフル活動になっています。 ◆急に脚光を浴びた再生エネルギー 代替エネルギーとして再生エネルギーが脚光を浴びています。様々な再生エネルギーの中で、大規模な電力が可能とされているのが太陽光発電と風力発電です。 再生エネルギーが一気に広がった背景には、再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど)によって発電された電気が買い取り対象となった「固定価格買い取り制度」です。電力会社への高めの買い取りを政府が義務付けたことと申請を受けたときの買い取り価格を20年間保証することです。 「固定価格買い取り制度」は電力会社が再生エネルギーを買い取りますが、最終的には賦課金(広く国民が負担すること)として電気料金アップの形で私たち国民が払うことになります。 ◆太陽光発電の長所と短所 太陽光発電は固定価格買い取り制度により、運営が始まった平成24年7月以降、25年末時点で700万キロワット以上になり、原発7基分に相当しています。2011年末では491万キロワットです。 太陽光発電の長所としては、可動部分がなく機械的故障が少ないこと、規模を問わず発電量が一定のため小規模、分散運用に向くこと、発電時に廃棄物や排水・排気・騒音・振動が発生しないこと、出力ピークが昼間電力需要ピークと重なることがあります。 また、需要地に近接でき、送電コストが節約できること、蓄電池利用ができるため非常用電源ともなること、小型製品もあり運搬・異動が楽、設置制限が少なく、屋根や壁面に設置できることなどがあります。 短所としては、発電電力量当たりのコストが他の発電方法より割高であること、夜間発電ができないこと、昼でも太陽が陰ると発電力が大きく変動すること、規模を拡大してもその発電量はそのパネル面積に対して一定(コストメリットは発生します)のためスケールメリットがありません。(風力発電なら規模が拡大すると発電量も増加できます)。影、汚れ、火山灰、降雪等で太陽光が遮断されると出力が落ちます。 原発1基分を太陽光で補うには、東京の山手線の内側と同じ面積をすべて太陽パネルに変えなければなりません。メガソーラーは広い土地が必要ですが、日本は国土も狭く、平野も少ないため、限られた場所でしかできません。 現在では農地の耕作放棄地に太陽光パネルを設置したり、観光地などにメガソーラーを作る流れもできています。ただ、農地を減らしていいのかという問題、また観光地の景観が変わるため地元の反対なども出ています。 ◆風力発電の長所と短所 再生エネルギーの固定価格買い取り制度では、風力発電の買い取り値段がアップして、風力発電が増えるのでないかといわれていました。平成15年度の風力発電は741基で総電力68万キロワットでしたが、平成25年度には1922基で、266万キロワットで原発約3基分弱の発電をしています。 五島列島では、世界初の洋上浮体式風力発電事業が開始されています。巨大な「浮き」でどんな嵐が来ても「起き上がり子法師」と同じ原理で倒れることがないとのことです。海中では下部から3本の鎖が海底に保留されています。発電量は2000キロワットで、地元住民1800世帯分の電気を発電する計画です。 風力発電の長所としては、発電してもごみや二酸化酸素が出ないこと、比較的発電コストが低く、事業化が容易であること、小規模分散型であるため、離島、山奥などで独立電源として活用できること、事故も分散型になるため、被害影響を最小限に止めることができるなどがあります。 短所としては、設置場所の風況により発電の採算性に大きく影響すること、台風、サイクロンなどの強風には弱いこと、騒音被害があること、現時点ではコスト面で法的助成措置が必要、落雷などで故障、メンテナンスにコストがかかることなどがあります。陸上の風力発電より洋上風力発電はコストが1.5~2.6倍、維持・管理費は3.5~3.8倍かかります。 通産省の平成25年度調査では、約300箇所ある風力発電所のうち、6割近くの175風力発電所で事故や落雷などで何らかのトラブルが生じたと報告がありました。 また、風力発電は、洋上が土地取得や騒音問題がない反面、日本の太平洋側は海が深いため設備投資が掛かることや予想される南海トラフ大地震において耐え切れるかどうかの問題もあります。地元の漁場・漁業権とのかかわりも発生し、簡単にはいかないようです。 風力発電で初期投資を回収するためには、設備利用率20%以上必要とされていますが、経産省資源エネルギー庁の調査では、平均施設利用率20.7%です。半分近くは採算ベースギリギリか採算ベース割れになっているということです。自治体のほとんどが初期投資を回収できずにいます。 ◆現段階では原発の代替エネルギーと成りえない再生エネルギー 現在水力発電を除く再生エネルギーは総電力量の2%弱です。 2020年までの脱原発を掲げて取り組んでいるドイツは、再生エネルギーが国内総エネルギーの2割に達しています。しかし、電気料金は原発を止める前の2倍に跳ね上がっています。国民も不満が高まっています。 政府は法改正をして、固定価格買取制度を修正し、太陽光発電が6200万キロワットに達した時点で買い取り対象から外すそうです。 4月1日から消費税が5%から8%に上がりました。原発を止めたため、その消費税アップ分の1.5%に当たる、3.8兆円が燃料費として海外に消えています。化石燃料を購入するために消費税アップの半分が毎年なくなっていくのです。原発を止めなければ発生しなかった燃料費です。 太陽光発電も風力発電も、自然環境に左右される面とコストが高いため安定的電力になれません。現段階では原発の代替エネルギーには程遠く、電力会社の化石燃料購入費増加と再生エネルギーを広げるほど固定価格買い取り制度により賦課金が増え、更なる電気料金のアップは避けられません。 再生エネルギーでは安定的な電力供給ができないため、もし化石燃料が日本に入らなくなった時は、電力不足により日本経済に大打撃を与える可能性があります。 結論は、ただ一つです。一刻も早く原発再開をすることです。現段階においては再生エネルギーでは原発の替わりになることは不可能です。 中国の「海洋戦略」と日本の「尖閣防御」 2014.04.05 文/幸福実現党政務調査会 佐々木勝浩 ◆海を「面」で見ている中国 4月5日付、『毎日新聞』は、一面で「中国政府が南シナ海の防空識別圏の設定を見送る方針」であることを報じました。中国政府内でも東シナ海での防空識別圏の設定は拙速だったとの批判もあり、南シナ海での防空識別圏の設定を見送った形です。 中国は、東シナ海での防空識別圏の設定の際も、自国が設定した防空識別圏を飛行する際は、中国へ飛行計画を提出することを義務づけ、従わない場合は、航空機へ防御的措置をとると主張していました。 最近の中国は軍事力にものを言わせ、「口先だけ」で他国の領土を奪おうとしています。日本の領土である尖閣諸島の上空に防空識別圏を設定したのも、一発の弾を撃つことなく尖閣諸島を奪おうとした意図があるためです。 しかし国際的には防空識別圏を飛行する際に飛行計画を提出する慣例はなく、中国は日米韓や欧州連合(EU)からも「航空の自由に反する」との批判を受けました。中国の野心を封じるためには、国際世論を味方につけることが一つのカギです。 また、ここで注目すべきは、海域を「面」として支配しようとする中国の海洋戦略です。東シナ海の海洋調査、ガス田開発、中国漁船、中国公船を航行させ海域を「面」で抑えようとする戦略です。まさに防空識別圏の設定も「面」で支配する戦略でした。 ◆海を「点」でしか見ていない日本 ところが、日本は海を「点」でしか見ていません。 2010年9月、尖閣海域で起きた中国漁船衝突事件の際に、日本国民は大きな関心を寄せ、当時石原知事の呼びかけで尖閣諸島を購入するための多額のお金も集まりました。 「喉元過ぎれば熱さ忘れる」ではありませんが、当時の尖閣諸島への国民の関心、危機感は、どこにいってしまったのでしょうか。 その後、野田政権が尖閣諸島を国有化しましたが、日本の漁船が尖閣諸島に近づかないよう監視しています。現在は、増加する中国の公船や中国漁船を海上保安庁の巡視船が追い払っているだけです。日本がやっているのはその場限りの「防御」です。 中国は、前述のように海洋を海洋調査やガス田開発などの「面」で支配しようとしています。さらに中国当局は漁船にGPSを渡し一隻一隻まで管理して、命令一つでいつでも尖閣海域で漁業をさせる体制が出来ています。 これが「面」で支配する中国の「海洋戦略」です。大量の漁船が押し寄せれば、海保の巡視船も対応できなくなり、漁船は民間船であるため自衛隊も手を出すことはできません。その間を縫って尖閣に中国漁船が近づき、上陸される可能性もあります。 現在の日本に「海洋戦略」はなく、あるのは「防御」だけです。自衛隊も「島嶼防衛」として、「島を占領されたらどうやって取り返すか」の訓練はおこなっていますが、本当に考えるべきは、「尖閣諸島を取られないようにする戦略」です。 そのためには尖閣諸島という島をどうやって守るかという「点」の発想ではなく、海洋を「面」としてとらえる発想、すなわち「海洋戦略」が必要です。 ◆「海洋戦略」を持て 具体的には、尖閣諸島に公務員を常駐させ、そこを拠点に尖閣海域の海洋調査や日本漁船の漁業も活発化させ、海保の巡視船を強化、自衛隊との連携をスムーズにして海防を強化することです。つまり海洋資源開発を活発化させることで「面」として海洋を管理するわけです。 つまり、領海に入り込もうとする中国の公船や漁船を追い出すという「点」としての対応からの転換です。そのためには、日本国民自身が「喉元過ぎれば熱さ忘れる」発想ではなく、常に尖閣諸島に関心を示し、国は尖閣で活発な漁業を推進し、海洋資源の開発に乗り出すことが大切です。 「点」の防御から「面」の海洋戦略への発想の転換こそが、真の意味で尖閣防衛につながります。こうした海洋防衛からは、経済効果も生れるのです。 東日本大地震から3年――被災地の復興事業と課題 連載第2回 2014.03.23 文/幸福実現党 総務会長兼出版局長 矢内筆勝 《ゴーストタウンのまま放置されている福島の被災地》 先週に引き続き、東日本大震災から3年目の被災地の現状をご報告いたします。今回は、津波の被害に加えて、福島第一原発の事故が発生した福島県です。 津波で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島の三県の中で、福島県の復興の現状は、他の2県とはかなり違っています。 岩手、宮城県が文字通りの「震災(地震、津波)からの復興」であるのに対して、福島県はそうした震災に加えて、「原発事故からの復興」が大きな課題としてのしかかっているからです。 しかも、「目に見えない放射線への恐怖」と「政府や東京電力への不信」、そして「マスコミによる風評被害」など、原発事故による後遺症が深く、重く、県民と国民に浸透し、復興の流れを押し止めています。 3月10日、私たちは内陸部の福島市から伊達市、そして沿岸部の相馬市、そして放射線の被害が高かったとされる南相馬市、浪江町を車で視察しました。 ◆現在の避難指示区域 それぞれの地域の復興状況は、政府が定めた「避難指示区域」の線引きによって、全く違います。避難指示区域は、放射線レベルが高い地域から、三つに分けられています。 避難指示区域(平成26年4月1日時点) http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/kinkyu.html#shiji (1)「帰還困難区域」:5年間を経過してもなお、年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らないおそれのある、年間積算線量が50ミリシーベルトを超えている地域。 (2)「居住制限区域」:年間積算線量が20ミリシーベルトを超えるおそれがあり、住民の被ばく線量を低減する観点から引き続き避難の継続を求める地域。 (3』「避難指示解除準備区域」:年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることが確実であることが確認された区域。 これらの地域の住人は全員、事故当時の民主党政権によって強制避難させられました。 現在も実に13万5000人もの人たちが、自宅には戻れず、仮設住宅などの避難生活を強いられています(その内4万8000人は県外に避難しています)。 そうした人たちは、自宅への宿泊は禁じられており、家の掃除や修理のために戻れる時間等も、それぞれ厳重に規制されています。 現地を車で走ると、その指定地域によって、風景や復興現状は一変します。 ◆相馬市と南相馬市 福島市、伊達市は避難指示区域外であり、内陸部のため津波の影響もなく、震災の傷跡はほとんどなく、いわゆる「風評被害」を除けば、市民生活は通常に戻っています。(これは今回紹介する「避難指示区域」以外は、福島県の全ての市町村に当てはまります。) 相馬市は、「避難指示区域」外であり、放射線ではなく、津波の被害が甚大だった地域です。津波で家を流された住民以外の市民は自宅で生活しているため、沿岸部の瓦礫撤去や町の整備もかなり進み、相馬港の食堂も営業を再開するなど、ようやく復興に向けた動きが見えてきています。 相馬市 http://www.mapion.co.jp/m/37.802546504690504_140.9193213223777_5/ ただ、原発の汚染水問題によって漁業の操業が禁じられており、たとえ再開しても「風評」によって販売の可能性が閉ざされていることなど、今も続く原発事故と放射線の影響が、地元の人たちの暮らしと仕事、産業の再生を阻んでいます。(この問題については、後日ご報告いたします) そして南相馬市は、南側の三分の一が、放射線の影響による「避難指示解除準備区」に指定されており、海岸沿いの津波の被害が大きかった地域です。 南相馬市 http://www.mapion.co.jp/m/37.6391277_140.9606861_5/ その一帯に入ると、町には住民の姿は全くなく、大部分の家は被災した当時のまま放置され、まさに「ゴーストタウン状態」です。田んぼや畑の瓦礫の処理は始まっていますが、津波に流された車が逆さまになったまま放置されている所も残っています。 要するに、住民の帰宅と居住が許されていない「避難指示区域」に指定されているため、最低限の瓦礫処理がなされただけで、全く復興は始まっていないのです。. http://yanai-hissho.hr-party.jp/files/2014/03/DSC_0141.jpg それは、浪江町や飯館村など、「避難指示区域」に指定された周辺の全ての市町村も同じです。 ◆居住困難地区 さらに南下して、福島第一原発のある双葉町まで近づくと、そこは「居住困難地区」に指定されているため、道路には車の通行を止めるゲート(検問所)が設置され、原発関係者や行政関係者以外、許可がなければ住人であっても、一般人は一切侵入できません。 つまり、政府の指定した三つの種類の広大な「避難指示区域」の中は、復興どころか、「人っ子ひとりいない、ゴーストタウン」のまま、三年間放置されてきたというのが、福島の被災地の現状なのです。 避難指示区域 http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/kinkyu.html#shiji 人がいなければ、復興が進むはずはありません。 それを妨げているのが、福島原発事故で発生した、「多くの人が被ばくし、現在も一帯を汚染し続けている」とされる“放射線汚染”の問題です。次回は、福島県の復興を止めている、放射線問題の現状と実態について、報告します。 <映像レポート> 3.11 復興のつち音~福島~ http://www.youtube.com/watch?v=iYJoQm2OuHo シェールガスの現状及びその打開策について 2014.03.21 文/政務本部部長代理 内山 雅彰 ◆シェールガスに関する最近の報道 米エネルギー省は、2月11日に北米産シェールガスの輸入のための日本勢の3か所4事業を全て承認しました。(2/13日経) 現在計画中の輸入量は、カナダ産と合わせて合計年2500万トンになり、このシェールガスを火力発電の燃料とすれば原発20基以上に相当する発電容量を得られます。またシェールガスはLNGの輸入価格に比べて、2~3割安い価格が期待できるとの見方が有力と報道されました。(2/13日経) 日本では3月14日 、中部電力が経済産業省に申請した家庭用電気料金の引き上げで、料金審査をする専門委員会は、2018年に米国からシェールガスの輸入を始めることにより燃料費を年50億円削減できると見込んでいます。(3/14日経) ◆シェールガスとは 「シェールガス」とは、シェール(頁岩層)に埋蔵される天然ガスのことです。 オバマ大統領が2012年の年頭教書演説で、地下の岩層に水や砂、化学物質を高圧で吹き込み天然ガスを抽出する水圧破砕技術の推進により、2010年代末までに60万人の雇用が創出できると説明し、米国には100年近く持続可能な天然ガスの供給量があると言明しました。(2012 1/25 ブルームバーグ) そのため、シェールガスは、LNGよりも安いコストで輸入ができるため、企業や家計が負担するエネルギー料金の上昇にも歯止めがかかり、個人消費にも好影響を与え、国内での経済活動の余地も広がると、バラ色のイメージが先行しています――しかし思惑通り進むとは限りません。 ◆今起こっていること 大阪ガスは米国で米テキサス州のシェールガス鉱区の開発に失敗したとして、3月決算で、約290億円の特別損失を計上すると発表しました。現在の技術では想定した量を掘削できなかったためです。(2/13 日経速報) 大阪ガスは今年度、天然ガスを約11万トン(液化天 然ガス換算)、原油は1050バレルをそれぞれ取得、販売する計画でしたが、掘削には技術的な問題点が多いことが分かり、開発の中断を決めました。 (2013 12/20産経) ◆シェールガスの問題点は何か シェールガスについては、次の問題点が指摘されています。(1/24東洋経済「なぜシェールガスはカベにぶつかっているのか」) 一つ目は、ガスの生産量の減少が従来型のガス田よりも早いということが明らかになっています。多くのガス田は、ガスの産出が始まって3年経つと、産出量が75%以上減少します。 ガス産出量を維持するためには、次々と新しい井戸を掘り続けなければならず、典型的な自転車操業で、米国全体で2012年に420億ドルものコストがかかったと言われています。 一方、米国全体で産出されるシェールガスの売上高は325億ドルなので、年間100億ドルもの赤字経営を強いられていることになります。 二つ目には、米国の天然ガス価格はシェールガスの急増で値崩れし、2013年を通じ3ドル~4ドルと低迷していますが、シェールガス田の多くはガス価格が8ドルにまで回復しないと採算が合わないといわれています。 2013年には、オクラホマ州でシェールガスなどを生産するGMXリソーシズが破綻しました。この会社は天然ガス価格の値崩れのせいで8期連続の赤字を計上していましたが、過熱する開発ブームで鉱区の権益価格が急騰し、買い手がつかなかったのです。 過去5年間のような急激な生産増の予測が反転すれば、米国内の天然ガス価格が急激に上昇する可能性もあります。そうなれば、バラ色のイメージが崩れてしまうことになります。 ◆現状をどう打開するか このようにシェールガスの先行きが厳しい状況となっている現在、他の方法を模索しなくてはなりません。現在の日本において、輸入天然ガスは100%LNGであり、安定供給のために20年30年といった長期契約で、原油価格連動という極めて不自由で割高な取引条件に縛られています。 他の需要国はパイプラインによる天然ガスと比較し有利な価格を選択することができますが、パイプライン網のない日本はそれができません。 そこで、サハリンからパイプラインを敷設して、ロシアの天然ガスを日本に持ってくる方法が考えられます。(1/24東洋経済「なぜシェールガスはカベにぶつかっているのか」) 実際、2000年代初頭にサハリンから海底パイプラインを敷設して首都圏まで供給する構想が検討されましたが、実現しなかったという経緯があります。(2/18 ロイター) 日本がサハリンから天然ガスをパイプラインで輸入する場合、現在の西欧向けのパイプライン価格で輸入できれば、年間6兆円のLNG輸入額(2012年)を3兆6千億円に縮減できます。(1/31 JBpress「機は熟した、サハリンの天然ガスをパイプライン輸送せよ」) パイプライン敷設のコストは、5000~6000億円程度と想定されるため、初期投資が早期に解消できることは確実です。 そして、ロシアからの天然ガス供給が実現すれば、ロシア以外の国から新規LNGを購入する際の価格引き下げへの効果的な交渉カードとすることができるのです。 また、現在、ウクライナ問題などはありますが、ロシアとの関係を強化することは日本の安全保障上も重要であり、その意味でもこの方法の早期実現を期待します。 「正しい政治」を取り戻すために! 2014.03.19 文/幸福実現党鹿児島県本部副代表 HS政経塾4期生 松澤力 徳洲会の公職選挙法事件で徳田毅氏が議員辞職したことに伴い、衆院鹿児島2区補欠選挙が4月15日(火)告示、4月27日(日)投開票の予定で実施されます。 ◆衆院鹿児島2区補欠選挙の争点は何か 先週13日、原子力規制委員会は、川内原発の安全審査を優先的に進め、審査に合格すれば夏にも再稼働1号となる公算が大きくなりました。 地元の経済を支えるために安定的でコストの安いエネルギーを確保するため、川内原発が稼動の方向に進んでいることを歓迎したいと思います。 ◆「鹿児島の底力」の発揮を阻む消費増税は反対 今回の選挙の争点は二つです。一つは「日本の経済成長を阻む消費増税」です。 消費増税は、日本経済を根本的に蝕むものであり、幸福実現党は立党以来、消費増税には反対の立場を貫いてきましたが、残念ながら4月1日より施行されることになります。 街中をみると、大手の小売業は「4月から増税、今ならお買い得!」という表示が掲示されており、3月には駆け込み需要があるものの、4月以降の数か月、相当厳しい状況が予想されます。 私は、大手コンビニチェーンの経営企画室に勤務していた経験から消費者の心理を敏感に感じてきましたが、そうした立場からも消費税増税ではなく、減税路線による鹿児島の底力を生かした経済発展を目指すべきであると考えます。 ◆鹿児島、沖縄を中心とする島嶼防衛の強化 二つ目の争点として、離島の安全な生活を守るため、島嶼防衛の強化策です。特に、鹿児島の島嶼部は沖縄と隣接しており、国防の最前線に近い地理的環境にあります。 現在、尖閣諸島を含む空域が中国の「防空識別圏」に入るなど、緊張状態が続いています。また、北朝鮮情勢も予断をゆるさない状況にあります。 安倍政権も国防強化の方向性は打ち出しているものの、今国会の目玉であった「集団的自衛権」の容認について先送りの意思が示されています。 国家を守る政治家として、日米同盟強化につながる集団的自衛権の容認は今国会で行うべき最重要事項です。 ◆「正しい政治」を取り戻せ! 以上、今回の選挙の争点は、「消費増税の是非」「防衛力強化」でありますが、その一方で根本的な政治の在り方を問うものでもあります。 今回の鹿児島2区にお住まいの皆様にとっては、「本来の政治の姿を取り戻してほしい」と願っているはずです。 補選では「理想の実現を目指す政治」「しがらみのない政治」を創る必要があります。そうした意味で、今回の鹿児島補選は、新しい政治に向けての極めて重要な選挙と言えます。 幸福実現党も「正しい政治」を取り戻すため益々の精進を重ねてまいります。 なぜ日本は負けたのか?――戦史に学ぶ、未来への舵取りと提言 《第1回》 2014.03.11 文/岐阜県本部副代表 河田成治 先の大戦において、日本人は大和魂を誇りとし、厳格な規律と、稀に見る勇敢さで、アジアの植民地を解放・独立へと導きました。日本は悪い国だったという自虐史観を一日も早く払拭し、正しく歴史を伝えたいと思います。 この歴史に心よりの敬意を払いつつも、しかし、「なぜ日本は負けたのか?」を考えていきたいと思います。日本軍の欠点や短所を分析し、そこから教訓を学ぶことは、未来への航路を決めるのに極めて重要だからです。 今回は10回に渡って、大東亜戦争(太平洋戦争)の教訓を抽出し、未来への舵取りはどうあるべきか提言させていただきたいと思います。 ◆概論 日本が敗戦した理由は、専門家によって各方面から研究されてきました。 たとえば、 (1)数々の戦闘における失敗、弱点が次の戦いにフィードバックされず、「失敗から学ぶ」ことができなかったこと。 (2)兵員を消耗品として扱い、捕虜になるくらいなら自死を強要したことで、貴重なベテラン戦力をなくしたこと。 (3)インパール作戦やガダルカナルのような補給概念の欠如。 (4)陸海軍の意思疎通の悪さ。 (5)科学的・合理的思考の軽視 (6)情報戦の軽視 (7)人事の失敗などです。 (1)の日本軍の「失敗から学ぶ」、つまり失敗学の研究が十分でないのは、現代でも当てはまります。特に「大東亜戦争の敗因」そのものが、学校教育をはじめ、一般人の教養として、また政治家等の知識となっていないことは、残念なことです。 また、失敗を分析しない傾向性そのものは、いまでも散見されます。一例を挙げれば、消費税の失敗です。 我が国が消費税を導入(1989年に3%)したあと、大不況に陥りました。また、5%に増税(1997年)されると、せっかく上向きかけた景気が再び、不況に逆戻りしてしまいました。 消費税と景気の関係の研究を怠り、再び8%へと増税しようとしています。前回までの教訓からは、今回の消費増税が、再び不況を招くことを示唆しています。 政府は様々な経済対策を打ち出していますが、これこそ「消費税による不況」を恐れている証拠で、一方、政府が進める経済対策が有効かどうかの保証はまったくありません。 同様に、なぜバブルとまで言われた空前の大好況が崩壊したのか?その分析、研究が十分ではなく、経済を冷え込ませないための教訓が得られているように思えません。 (4)の陸海軍の仲の悪さは、致命的でした。太平洋方面の島を守るべき兵員は、わずかしか投入されなかったにもかかわらず、中国大陸には100万もの使われない陸軍兵力が残されたままでした。 また陸軍は、海軍に頼るくらいなら…と、陸軍製潜水艦を設計・建造しましたが、素人丸出しの潜水艦は水漏れが止まらず、使い物になりませんでした。日本の極めて少ない貴重な資源、予算を裂いてもメンツにこだわり、終戦まで陸海軍の仲は改善しませんでした。 現代の自衛隊では、陸海空の「統合運用」を目指していますが、かけ声だけの年月が長く続いています。 昨年のフィリピン台風の際には、海上自衛隊の輸送船(おおすみ)に陸上自衛隊の輸送ヘリを搭載しましたが、もともと陸自ヘリを乗せる設計ではないため、ヘリのローターを取り外さなければ格納できないという苦労を乗り越えて、フィリピンまで海上輸送しています。 陸海空の統合運用が、今後、本格的に進展することを期待しています。 以上、第1回目は、簡単に述べました。次回からは、既出の歴史研究を紹介するというよりも、それらを踏まえた上で、ややオリジナルな観点で「敗戦から学ぶ」べき事を論じてみたいと思います。 電力システム改革で本当に電気料金は安くなるのか? 2014.03.04 文/岐阜県本部政調会長 加納有輝彦 ◆改正電気事業法の成立 昨年11月、電力システム改革を3段階で進める「改正電気事業法」が国会で可決、成立しました。 3段階とは、 (1)2015年に全国規模で電力需給を調整する「広域系統運用機関※1」を設立する。 (2)2016年に電力小売りの参入を全面自由化し「地域独占」をなくす。 (3)2018~20年に電力会社の発電と送電部門を別会社にする「発送電分離」を実現する。同時に電気料金規制(総括原価方式※2)を撤廃する。 ※1:広域系統運用とは、現在、沖縄を除いて9社に分かれている一般電気事業者の系統運用範囲を、いくつかに束ねて広域運用を行うこと。 ※2:総括原価方式とは、電力会社が電気の供給に必要な年間費用を事前に見積もり、それを回収できるように料金を決めるしくみ。 ◆戦後電気事業体制の大改革 これは、電力の鬼・松永安左エ門氏が主導しGHQの「ポツダム政令」に基づいて構築された、1951年以来の電気事業体制(地域独占、発送配電一貫、規制料金等)を抜本的に見直す大改革であります。 この電力システム改革は、大手電力会社による地域独占体制に風穴を開け、電力事業への新規参入や電力会社同士の競争を促し、サービスの選択肢を広げ、電気料金をできるだけ安くする狙いがあるとマスコミは報道しています。(日経2013/11/13) ◆総括原価方式の功罪 東日本大震災後、とりわけ東電に対する厳しい眼も手伝い、電気料金規制(総括原価方式)は否定的に語られることが多かったと思います。 ゆえに、この電気料金規制の撤廃により電気料金が安くなるというステレオタイプ(固定観念)を生んでいますが、話はそう単純ではないようです。 現在、高圧(電圧6000V以上)はすでに自由化され、料金は売り手と買い手の交渉で決まります。 一方、低圧(電圧100V200V)50kW未満は規制され、料金は国の認可で決まります。 規制料金は「総括原価方式」で算定されますが、これは長期にわたる電力会社の設備投資の回収を確実にすると共に、需給がひっ迫して価格が高騰するリスクから消費者を守る効果があります。 震災後に原発が停止して電気料金が上昇していますが、この程度の上昇で済んでいるのは「総括原価方式」の効果であり、規制がなければもっと料金は高くなります。 ◆電力自由化で電気料金上昇 このように「総括原価方式」は長期にわたる電気料金収入を安定的に確保する制度で、原子力のような長期の投資を可能にしています。 電気事業の利益率はそう高くなく、料金が完全に自由化されれば間違いなく投資は短期志向になります。自由化すれば原発のような長期投資をする会社はなくなってしまいます。 実際に、電力自由化が行われた欧州では、各社が設備投資を控えるようになり、発電所が不足し、需給の関係で長期的には料金は上昇するという結果が出ています。 欧州ではガスや石炭など域内にエネルギー資源がありますが、日本の場合は化石燃料はすべて輸入です。このような環境では、日本ではほぼ確実に電気料金は上昇するという専門家も少なくありません。 また、現在の電力会社は膨大な送配電資産を保有し、その減価償却による営業キャッシュフロー(≒利益+減価償却)で、膨大な設備投資に伴う投資キャッシュフローを賄っています。 つまり、発送配電一貫で資産を保有するからこそ、原子力のような長期の投資を行うことが可能となっているのです。 しかし、これらの資産を切り離した場合には、誰も原子力には投資を行わなくなってしまいます。英国や、米国の発送電分離を行った州で顕著に見られ、諸外国の事例に明るい人ほど、発送電分離には慎重な意見を持っています。 ◆歴史認識とエネルギー政策は連関している このように電力システム改革により、メリットと共に、電気事業者が長期的視野にたった投資が困難になるというデメリットもあることを、私たち国民は冷静に知っておく必要があると思います。 さらに敷衍しますと原発の新設が不可能になるということであります。安全性をさらに高める為には、新規原発の建設による設備の更新が最も効果的であります。 資源のない日本の安全保障、発展繁栄のためには、新規原発の建設が不可欠であります。フランスは日本と同じく資源小国であり、EUのエネルギー政策に歩調を合わせつつも、原発大国として発電の80%を原発が賄っています。 フランスと日本の違いをあえて言えば、連合国(戦勝国)と敗戦国意識の違いでしょうか。わが国が自虐史観を克服し、正しい歴史認識を持つことができれば、エネルギー政策も自ずと確固たるものになると思います。 歴史認識とエネルギー政策は密接に連関しています。幸福実現党は、エネルギー自給率を高め、日本の安全保障を確固たるものにするべく研究を続けてまいります。 すべてを表示する « Previous 1 … 8 9 10 11 12 … 17 Next 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