Home/ 経済 経済 「吉田ドクトリン」から脱却し、九条改正、国防軍編成、防衛産業の育成を目指す【前編】 2022.07.06 「吉田ドクトリン」から脱却し、九条改正、国防軍編成、防衛産業の育成を目指す【前編】 http://hrp-newsfile.jp/2022/4320/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「脱吉田ドクトリン」のための言論戦 幸福実現党は、参院選の公約で「日本は独立国として、いわゆる『吉田ドクトリン』、軽武装・経済優先の国家方針を転換し、国民の生命・安全・財産を守るための体制整備を急がねばなりません」と訴えました。 そう主張しているのは、この原則が、今後、日本を侵略を守るために、最も大きな障害となるからです。 吉田茂首相は、戦後講和を実現した1951年に、アメリカと安全保障条約を結び、「アメリカに守ってもらって、日本は経済活動に邁進する」という路線を敷きました。 アメリカに安全保障を依存し、軽武装のままで経済復興を最優先したのです。 1950年に朝鮮戦争が起き、アメリカが対日政策を転換した時、憲法改正の要請を断り、吉田茂は、アメリカを「日本の番犬」に見立て、経済成長に専念する体制をつくりました。 その後、日本は世界有数の経済大国になったので、長らく、この「吉田ドクトリン」がよしとされてきました。 しかし、今や中国の軍拡が進み、北朝鮮までが核ミサイルを日本に向けています。 米国が「世界の警察官」をやめた時代には、自分の国を自分で守らなければならないので、幸福実現党は「吉田ドクトリン」の転換を呼びかけています。 「半主権国家」となった日本を立て直そうとしているのです。 ◆「吉田ドクトリン」を愛している岸田首相 これに対して、岸田首相は、その著書で、自分が率いる宏池会こそが「吉田ドクトリン」の後継者だと主張しています。 「吉田茂の経済重視政策は、池田勇人元総理、大平正芳元総理、鈴木善幸元総理や河野洋平元衆議院議長、宮澤喜一元総理ら宏池会の先輩方に引き継がれました。結果からみれば、この方針により奇跡的な経済復興を遂げ、世界第三位の経済大国としての地位を回復することができました」(『岸田ビジョン』) これは、吉田首相がGHQの再軍備の勧めを断り、経済を優先したことが繁栄をもたらした、という歴史観です。 しかし、この考え方は、過去の「成功体験」が、日本を滅ぼしかねないことに目をつぶっています。 日本が「GDP比1%」の呪縛に囚われている間に、中国の公表軍事費は、日本の4倍以上にまで増えました(※円でいえば26兆3000億円程度。米国防総省は、その実態を1.1~2倍程度と見込む)。 また、北朝鮮はすでに700~1000発の弾道ミサイルを保有しています。 (※防衛白書令和3年度版は「『Jane’s Sentinel Security Assessment China and Northeast Asia』によれば、北朝鮮は弾道ミサイルを合計700~1,000発保有しており、そのうち45%がスカッド級、45%がノドン級、残り10%がその他の中・長距離弾道ミサイルであると推定されている」と記述) バイデン政権は、ロシアとウクライナの戦いに際して、他国のために核戦争をしないことを明らかにしました。 日米同盟があっても、防衛費の倍増や非核三原則の撤廃、自前の核装備の検討を、本気で考えなければいけなくなったのです。 ◆「吉田ドクトリン」で日本が失ったもの(1):自主防衛力と独立の気概 この「吉田ドクトリン」に関しては、米国への順応と経済復興だけが重んじられ、憲法改正や自主防衛力という、国の根本にあるべきものが軽視された、という批判があります。 その代表的な論者は「戦後政治の総決算」を掲げた中曽根康弘元首相でした。 中曽根氏は、戦後のかじ取りの難しさを考慮しつつも、「吉田路線で失われたものは無視できない」と考え、「吉田政治からの脱却」を訴えました。 しかし、それは志半ばで終わってしまいました。 安倍首相の「戦後脱却」も、かけ声だけで終わり、いまだ日本は、自主防衛が困難な体制に置かれています。 中国が台頭し、米国がアジア重視にかじを切っても、日本は同盟を強化する政策が実現できなくなっているのです。 国のトップが「自分の国を自分で守る」という理念を捨てたツケが、こうした形で回ってきました。 この問題に関して、大川隆法党総裁は、過去、何度も警鐘を鳴らしてきました。 「日本も、戦後、どこかの時点で、この「吉田ドクトリン」を見直さなければいけなかったのです。ここに大きな間違いがあったと思います」(『平和への決断』第5章 … page.211) 「神は、『クラゲのように漂って生きているだけの国家を許してはいない』」 「戦前がすべて間違っていたわけではありません。吉田茂の考え方のなかに、『日和見的な生き方』と、「責任を取らない考え方」があり、さらに、「神様のいる国としての国家運営という『神国日本』的な考え方が、スポッと抜け落ちていた」ということです。これが、戦後の「無神論国家」、「神様のいない国家」が、経済的にのみ繁栄した理由でもあります。この罪には、やはり、『マルクスに次ぐぐらいの悪さ』があるのではないでしょうか」(大川隆法著『国家繁栄の条件』幸福の科学出版) 《引用終わり》 この「吉田ドクトリン」によって、日本は憲法を改正できず、自主防衛の力を養えないまま、漂流する国となってしまいました。 識者の中には、生前の吉田に再軍備の意志があったという人もいますが、吉田政権の意思決定が、戦後政治に与えた影響は甚大でした。 その意志があろうがなかろうが、後代への影響を考えれば、吉田茂が、その責任を問われるのは当然です。 国会答弁で、「再軍備は未来永劫しないと言っているのではない。現下の状況においてこれを致すことはしない」とは言いましたが、再軍備のチャンスを逃したことが、その後の歴史に大きなツケを遺すことになったのです。 吉田茂に対して、大川隆法党総裁は、憲法改正と再軍備が「『一つの国としての自主権であり、独立国家としてのかたちをつくるためのチャンスである』ということを彼が見抜けなかった」ことに「不明」があったと批判しました。 そして、それが「何十年も祟ることになるとは、おそらく、本人も思ってはいなかったのではないでしょうか」と指摘しています(大川隆法著『国家繁栄の条件』幸福の科学出版) (後編につづく) 消費経済の限界。今こそ勤倹貯蓄、勤勉型経済を。 2022.07.05 消費経済の限界。今こそ勤倹貯蓄、勤勉型経済を。 HS政経塾スタッフ 赤塚一範 ◆「消費は経済を回す」は本当か? 消費が経済を回すという理論(有効需要の理論)を作り上げた20世紀の大経済学者ジョン・メイナード・ケインズに関して、次のようなエピソードが残っています。(参照:Ludwig von Mises, Marxism Unmasked) ある時、ケインズは友人と共にホテルに泊まった際、トイレにあるタオルをすべて汚しました。 友人がなぜそんなことをするのかと理由を尋ねると、ケインズはタオルを汚すことで、ホテル従業員の仕事を作ってやっていると言ってのけたのです。 これがケインズの理論なのです。 さらに、ここから、戦争は経済を回すという理論も生まれます。戦争は究極の消費だからです。 しかし、本当に消費は経済を向上させるのでしょうか?戦争ばかりしていて経済は良くなるのでしょうか? ◆消費で失われるもの 確かに、人間が生きる上で必要最低限の消費や楽しみというものは存在するし、消費で雇用が生まれるのも事実でしょう。 しかし、消費によって失われるものも確かに存在するのです。上記の例で考えてみましょう。 もしホテルに泊まった客の全員が、必要以上にタオルを汚したならば、確かにホテル従業員の雇用は増加します。 しかし、その雇用はホテルの宿泊客が品行方正であれば、必要なかった雇用であり、別の場所でもっと有効な仕事を生み出したかもしれない人たちなのです。 たとえば、彼らは、作物を作ったかもしれませんし、道路を作ったかもしれないのです。 ケインズのような消費が経済を拡大させるという理論が有効であるのは、あくまで供給過剰が存在し、そのような過剰を一時的に埋める場合だけなのです。 つまり、不況期における時限的理論に過ぎません。このような理論では、資本蓄積は生じませんし、長期的な発展は望めないのです。 ◆過剰な消費は国を亡ぼす 19世紀後半、大英帝国は栄光を誇っていました。 しかし、そのわずか50年後、同国家はアメリカの経済援助がなくては、維持できなくなってしまいました。なぜでしょうか。 それは、過剰に消費したからです。二つの世界大戦という究極の消費がイギリスを没落させたのです。 19世紀末、イギリスは世界各地にたくさんの資本を保有していました。産業革命で生産力を拡大し、輸出を拡大し、多額の資金を蓄えたイギリスは、世界各国に投資を行いました。 たとえば、当時のアメリカやアルゼンチンの鉄道会社の多くはイギリスが所有していたのです。 このようにイギリスは、勤勉に働き、働いたことで得た富を再投資することで資本を蓄積し、最強国となったのです。 しかし、この富は戦争による消費で失われてしまいました。イギリスは、戦争の経費を賄うために、それまで蓄えた資本を外国に売り払ったのです。 つまり、資本を消費に変えたのです。 ◆日本の危機的状況と勤勉、勤倹貯蓄型経済の復活 翻って日本ではどうでしょうか。 戦後の日本は、勤勉に働き、貯蓄を奨励し、その貯蓄でもって社会インフラや生産設備を整え、高度成長を実現しました。 現在の豊かさがあるのは、戦後の日本人の勤勉な労働と資本蓄積のおかげなのです。しかし、現在の日本は、急速な「少子高齢社会」という危機にさらされています。 なぜなら、「少子」というのは、労働力人口の減少、つまり生産力の減退を意味する一方で、「高齢」というのは消費をしないと生きていけない人の増加を意味するからです。 原則として、生産する以上に消費できないということを忘れてはなりません。もし生産以上に消費するならば、かつて蓄えた資本を取り崩すしかありません。 具体的に言うとするなら、日本に蓄えられた外貨で輸入をするか、日本が所有する生産設備を外国に売り払いそれで輸入をすれば、当面の消費を賄うことはできるでしょう。 しかし、長い目で見れば、これは日本の衰退であり、結局消費できなくなるのです。 これを食い止めるためには、勤勉に働き、消費を抑え、貯蓄を推進し、資本を蓄えるしかないのです。 だからこそ、今の日本には必要なのは、勤勉性の復活、勤倹貯蓄型経済の復活であり、生涯現役社会の確立なのです。 国富を増やしていくには 2022.07.02 http://hrp-newsfile.jp/2022/4311/ HS政経塾スタッフ 赤塚一範 ◆実物資産と金融資産 家計の金融資産が2,000兆円を突破したと報道されています。 これを受けて、岸田総理が掲げる「所得倍増プラン」では「貯蓄から投資へ」つまり、NISAやiDeCo等の国民に株を買わせる政策を拡充しようとしています。 また、日銀の黒田総裁も、家計の金融資産の増加により、家計はインフレに耐えられると発言し、国民の非難を浴びました。 本当に家計の資産は増加しており、国民はインフレに耐えられ、株を買うことが出来るのでしょうか? ここで理解すべきことは、富には大きく実物資産と金融資産の2種類あり、金融資産だけ増えたとしても何の意味もないということです。 実物資産とは、現実の世界を生きている国民の生活を豊かにし、外国や自然の脅威から国民を守るための具体的に実体を持った資産のことをいい、その中でも特に固定資本が日本の国富の中心を構成しています。 固定資本とは、住宅、工場、機械設備、道路、ダム、港湾、知的財産等のことですが、日本には2020年末、1,986兆円存在しています。 他方で、同年の現預金、債券、株式等からなる金融資産は8,582兆円となっており、固定資産の約4倍も存在しています。 ◆金融資産は国富ではない 次のことに気を付けなければなりません。それは、金融資産とは、貨幣の貸借でいくらでも増やすことのできる資産であり、実物の財の裏付けがなければ、まやかしに過ぎないということです。 たとえば、日本国民が日本の国債を1兆円購入したとしましょう。この場合、国民は1兆円の金融資産を得ると同時に、日本政府は1兆円の負債を負ったことになるのです。 更に日本政府が日本国民にこの1兆円をばら撒き、日本国民がその1兆円で日本国債を購入するなら、さらに1兆円分の金融資産と負債が増加するのです。 アベノミクス第一の矢「異次元の金融緩和」によって、国全体の金融資産と負債は劇的に増加しました。2012年末の金融資産は6,018兆円でしたが、2020年末には8,582兆円となっています。 つまり8年間で金融資産は2,564兆円も増加したのです(当然ですが負債もほぼ同額増加しています)。 問題なのは、この金融資産の増加と比べて、国富の重要な要素である実物資産が増加していないことです。2012年末の固定資産は実質値で1,865兆円、2020年末は1,905兆円です。 なんと、8年で46兆円しか増えていないのです。金融資産が8年で2,564兆円増えたのと比べると驚きですが、これはバブルと言ってもよいでしょう。 かなりざっくり言うと、2,564兆円も貨幣的なものが増えたのに、その貨幣で買うことのできる実物資産は、46兆円しかないのです。 ◆日本は借金で飲み食い(消費)している これが意味するのは、アベノミクスの8年間で政府は、借金で、実物資産を作る(投資)のではなく、飲み食い(消費)していたということなのです。 今の日本は、将来の生産のための元手である資本を現在の生活のために食いつぶしているような状況です。 簡単に言えば、来年植える種イモを現在の生活のために食いつぶしている状態であり、これでは将来のイモが取れなくなってしまい、やがて困窮してしまうのです。 皆さんは21世紀が思ったより進歩していない、例えば、なぜドラえもんやアトムのような空中に道路があり、ロボットが仕事をし、宇宙旅行に行ける未来世界になっていないかをお考えになったことがあるでしょうか。 その大きな原因一つが資源の浪費です。日本経済全体で考えてみましょう。日本では、2020年度に535兆円の生産が行われました。 このうち、固定資産の形成に使われた金額は、135兆円で、残りの大部分(約400兆)は家計や政府によって消費されてしまったのです。135兆円もの投資があるなら、未来社会がやって来ると思う人もいるかもしれません。 しかし、毎年、同じ規模(2020年度は135兆円)で固定資産は摩耗、劣化していくのです。従って、固定資本が壊れる以上に投資をしないと実物資産は増加せず、アニメのような世界にはならないのです。 ◆国富を増やすには では、固定資産を増やし、国富を増加させるためには、どうしたら良いのでしょうか。 将来のイモの収穫を増やすには、現在の消費を抑えて種イモを多くのこし、来季に向けて畑を耕し、肥料を作り、用水路を整えることです。これを行うには、現在の消費を抑え、貯蓄を増やすしかないのです。 今回の参院選挙では、れいわ新撰組をはじめいくつかの政党で、即時の消費減税が言われています。しかし、もし、この減税と同等額の、政府支出のカットがなされなければ、インフレは加速してしまいます。 令和4年度の消費税の歳入見込みは21.5兆円です。 もし、21.5兆円分の歳出をカットすることなく、すなわち国債発行と日銀の買い取りで乗り切った場合、消費需要は純粋に21兆円分し拡大し、また同時に日本円も21兆円増加し、円安は進行するでしょう。その結果は、インフレの加速です。 インフレの加速は、更なる消費の増大を招き、資本の蓄積を妨げます。なぜなら、インフレ時には貯蓄は不利となり、直ぐにお金を財に変えてしまった方が得だからです。 実際、インフレの激しい、アルゼンチンでは、給料をもらうとすぐに使ってしまう国民が多いと聞きます。 また、インフレ時は消費財産業が活性化しやすいと言われていますが、これも国内の資本蓄積を妨げます。 人手不足、資源不足が叫ばれる現在、資本財産業を活性化させるには、国内の物的、人的資源を、現在の消費財産業から引き抜き、投資財産業や防衛産業で利用されなければならないのです。 日本における戦後のインフレを乗り切るために、貯蓄の推進が行われていたことを忘れてはいけないのです。 インフレにどう立ち向かうか【後編】 2022.07.01 http://hrp-newsfile.jp/2022/4309/ HS政経塾スタッフ 赤塚一範 ◆消費減税、補助金、賃上げだけでは、さらなるインフレを招く 前編で指摘したような病気を根本治療することなく、消費減税、補助金、賃上げという麻薬を用いて、物価上昇を和らげた場合、結論は更なるインフレです。 たとえば、今夏、電力不足が懸念されています。電力供給を強化することなしに、電力に対して消費減税をかけたり、補助金を出したりしたところで、電気を多量に生産できるわけではありません。 むしろ、電力需要が拡大してしまい、大停電になってしまうかもしれません。また、賃上げは、企業にとって単なる負担に過ぎず、投資不足、雇用減少を招き供給力低下に拍車をかけます。 他方で、賃金上昇によって消費者の需要を拡大させてしまうので、インフレが加速してしまうのです。もちろん、現金給付なども、勤労の精神を失わせ供給を弱らせるので、これもインフレ要因です。 日銀の金融緩和がインフレを引き起こしているという議論もあります。確かにそれもあるでしょう。しかし、日銀が国債を購入し、紙幣を市場に流すのは、政府支出を支えるためでもあるのです。 これら支出の大半は、年金や社会保障等のバラマキとして国民の消費を支えていますが、これも資源を浪費し、国民の勤労意欲を阻害するのでインフレ要因となります。 ◆減量と勤倹貯蓄による投資がインフレの治療薬である インフレの根本治療薬とは、(1)効率的生産部門へ労働を含む資源を集中、投資すること、そして、(2)不要な消費を抑え減量し、貯蓄を推進することです。 不必要な投資の例として、今回の参院選でも自民、公明、立民、維新、れいわ、国民民主、共産等が重要な政策とする「脱炭素に向けた投資の促進」があげられます。 かつて、毛沢東は、「大躍進政策」で中国の工業化を主導しました。鉄を国家の重要な資源と定め、農民に、農業を止め、それぞれ小規模な溶鉱炉を作るよう命令しました。 その結果が、大飢饉と、役に立たない粗悪品の鉄くずでした。毛沢東は、国の大切な資源を浪費したのです。 脱炭素に向けた国家主導の政策は、毛沢東を彷彿とさせます。日本には、火力発電所、原子力発電所がありますが、現在その多くが使われないか、まだ再投資すれば使えるにもかかわらず破棄されています。 そして、風力・太陽光といった非効率な再生エネルギーに投資されているのです。これらを止め、もう一度、火力、原子力に資源を投入すべきでしょう。 他方で、日本は、中国や北朝鮮といった軍事国家に囲まれており、いざという時のためのサプライチェーンの構築が急務です。 また、岸田首相は防衛費の増額を打ち出しています。これは必要な政策でしょう。 しかし、サプライチェーンを構築しなおし、軍事費を増額させるためにも、消費を抑える必要があるのです。 例えば、現在、JR東日本なども、半導体不足から一部の新規の車体製造を延期したと報道されるように、半導体が不足しています。 このようなときには、ゲーム機に使う半導体とミサイルに使う半導体は競合関係となり、ゲーム機に使う半導体を節約しなくては、ミサイルを作ることはできないのです。 サプライチェーンの構築も同様です。 例えば、ショベルカー等重機を動かすにはガソリンが必要ですが、ガソリンが不足する場合、ディスコやカジノを作ることと、国内の古びたインフラを再構築することとは競合関係となるのです。 勿論、これら資源の配分を市場統制によって行うわけにはいきません。これを自発的に行うには、消費者側の節約マインド、そして実のある産業を大きくしていこうとする勤労の精神が欠かせないのです。 そして、政府の社会保障や年金も縮小しなければなりません。これらは、消費を促進し、国家の資源を浪費するからです。 国民が消費を抑え、貯蓄をし、その貯蓄によって、サプライチェーンの再構築や軍事費が賄われなければなりません。 もし、貯蓄なしでこれらを行なおうとすれば、それは国債発行による貨幣の増発を用いて行うこととなり、インフレを加速させてしまうのです。 実際のところ、私達は、ある程度はこのインフレを受け入れなければなりません。それは、もう既に資源が浪費されてしまっているからです。 これを克服するためには、今一度本当に必要な商品とは何なのか、日本が安全であるためには何が必要なのかを消費者自身が考え、無駄な消費を抑え、必要なものに再投資していくという資本主義の精神の復活が望まれるのです。 インフレにどう立ち向かうか【前編】 2022.06.30 http://hrp-newsfile.jp/2022/4307/ HS政経塾スタッフ 赤塚一範 ◆物価高に苦しむ家計 物価の上昇によって、国民生活はダメージを受けています。「家計の値上げ許容度が高まっている」との最近の黒田総裁の発言に対する批判の厳しさからも、それは明らかです。 しかし、そもそもデフレ脱却、インフレ率2%の達成というのは、2012年末に安倍政権が誕生して以来の目標だったはずです。 統計では2022年4月、物価上昇率は悲願の2%を超え(5月は2.1%)、完全失業率も2.5%まで減少しほぼ完全雇用状態です。 ですが、国民生活は苦しくなるばかりです。今回のインフレの何が悪かったのでしょうか。 このインフレの苦しみの原因として、企業が賃上げをしないから、コロナやウクライナでの戦争でサプライチェーンが混乱したから、日銀が金融緩和を止めないから等々が言われています。 実際、今回の悪性インフレにはそれら要因もからんでいるでしょう。日本はこのインフレとどう向き合い、どのような手を打つべきなのでしょうか。 ◆バラマキばかりの政策 今回の参院選では、各政党の物価対策が争点となっています。各政党の経済政策をまとめると、次のようになります。 (1)消費税やガソリン税等の減税(立民、維新、れいわ、国民民主、共産) (2)特定分野、家計への補助金(自民、公明、立民、維新、れいわ、国民民主、共産) (3)賃上げのための制度づくり(自民、公明、立民、れいわ、国民民主、共産) これらは、物価上昇で困窮する家計を財政的に支援する政策ですが、基本的にバラマキといって良いでしょう。 現在の日本の状況を踏まえると、これら政策は瞬間的に家計を助けることになっても、結局はより大きなマイナスを生み出してしまう麻薬のような政策なのです。 今必要な政策は、この逆で、バラマキを縮小し、消費を抑制すると同時に、貯蓄を増加させ、社会資本を強化していくことなのです。 ◆バラマキは日本の病気を悪化させる 現在の日本を例えると、病気の痛みに耐えきれず、麻薬を打ち過ぎて精神が壊れかけている人間のような状態です。麻薬は、手術の痛みを緩和するなど、上手に使えば、身体を健康にするでしょう。 しかし、病気の根本を解決せず、麻薬だけに頼っていれば、病気は悪化しますし、麻薬依存症となり心も壊れてしまうでしょう。 現在の日本に必要なのは、先に述べた(1)(2)(3)のような麻薬政策を打ち続ける「一時的な痛み止め」ではなく、根本的な治療です。 もしそれをしないなら、日本は、より重い病気、つまり更なるインフレになってしまうかもしれないのです。 ◆物価上昇の意味 「価格は情報伝達のシグナルである」これは、ノーベル経済学賞を受賞した自由主義経済学者フリードリヒ・ハイエクの言葉です。 彼によれば、価格の上昇とは、その財は貴重であり、その財は節約され効率的に使用されなければならないというシグナルです。 例えば、銅の価格が上がっているとすれば、それは銅が貴重になっており、今ある使用法から銅を引き抜き、より消費者のニーズがあり効率的に使用される分野に銅が使われなければならないのです。 では、物価上昇は何を意味するのでしょうか。物価とは、経済にある商品の価格を集計し、指数化したものです。 物価とは、マクロ経済学的概念であり、ハイエクのいうミクロ的な意味での価格とはやや違いますが、次のようなことが言えるでしょう。 物価上昇とは、需要に対して、商品全体が不足している、供給力が弱っているということを意味します。 また、他方で、今ある日本の貴重な資源が効率的に使用されておらず、その使用方法から資源を引き抜き別の場所で使用されなければならないというシグナルでもあります。 つまり、インフレの要因とは、供給力の低下であり、資源の無駄遣いなのです。これが日本の根本的病気なのです。もちろん、海外が原因によるインフレも、不要な投資拡大やコロナ対策、戦争も資源の浪費です。 (後編につづく) 給付金は「資本主義の精神」を破壊する――守るべきは、近代日本を築いた「勤勉の哲学」【後編】 2022.06.29 http://hrp-newsfile.jp/2022/4304/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆経産省がスポーツ賭博の解禁を検討? 現政権のいう「資本主義」の中身の疑わしさは、他の例をみてもよくわかります。 6月7日、読売新聞が朝刊一面で「スポーツ賭博の解禁案、経産省議論へ」と題した記事を掲載しました(※読売の独自取材)。 そこでは、「経済産業省が、スポーツの試合結果やプレー内容を賭けの対象とする「スポーツベッティング(賭け)」の解禁に向けて取りまとめた素案が判明した」と報じられています。 同紙によれば、素案には、野球やサッカーなどのスポーツを見ながらスマホなどで試合の勝敗などを賭ける「スポーツ賭博」を解禁し、賭けを運営する業者からお金を取れば、スポーツ業界の収益増につながる、という構想が書かれているそうです。 しかし、それが解禁されれば、ギャンブル依存症患者の増加が懸念されます。 最近は、「試合中に選手が次にどんなプレーをするか」ということも賭けの対象になっているので、それが選手の八百長行為を招きかねません。 そのため、読売は「八百長やギャンブル依存を招きかねないスポーツ賭博には反対論が強く、スポーツ界はじめ各界の猛反発は必至だ」と結んでいました。 こうした政策もまた、資本主義の精神に反しています。 富というものは、「勤勉の上に築かれなければならない」からです(大川隆法著『釈迦の本心――政治編』宗教法人・幸福の科学)。 これは、安倍政権の頃から続く、「公営ギャンブル」の範囲を広げるプランです。 自公政権は、刑法では賭博が禁じられているのに、特別な法律で例外的に認められる競馬や競輪などの「公営ギャンブル」を増やし、経済を活性化させようとしてきました。 2018年には、カジノを含んだ統合型リゾート(IR)施設を整備する「IR推進法」が成立しています。 これに対して、大川隆法党総裁は、次のように批判しました。 「個人の罪のほうを放置して、公のほうがそれを推進するのは、バランスを欠いているのではないでしょうか」 (カジノを)「『違法ではない』とするだけの根拠がありません。公がカジノをしたとしても、個人の破滅につながる恐れがあることでは同じだからです」(大川隆法著『繁栄への決断』幸福の科学出版)。 今回の経産省の「スポーツ賭博の解禁案」も、同じ問題を抱えています。 「お金が儲かり、税収増につながるから、それでいい」というのでは、経済倫理は成り立ちません。 ◆「資本主義の精神」があってこそ、経済政策は意味を持つ 岸田首相は「新しい資本主義」を目指し、「分配なくして次の成長なし」と訴えました。 自民党は、給付金の「分配」に力を入れています。 公明党も、立憲民主党も、国民民主党も、共産党も、れいわ新選組も、負けじと分配を叫んでいます。 しかし、資本主義の根本には「勤勉の哲学」がなければなりません。 大川隆法・幸福実現党総裁は、岸田首相が分配のことばかりを考えていることに警鐘を鳴らしています。 前任者(菅首相)は、まだ「自助・共助・公助」と言っていましたが、岸田首相からは「勤勉に働く」という言葉が、まったく出てこないからです。 そして、「勤勉の哲学」を体現した二宮尊徳の生き方のなかにこそ、「資本主義の精神」があると指摘しました。 (以下、大川隆法著『減量の経済学』幸福の科学出版より引用) (尊徳は)「荒れ地を開墾して菜種を植えて、油を採って、それをまた売ってお金に換えて、自分でゼロから価値を生み出しています。 そして、とうとう背中に薪を背負って、本を読みながら歩いている、小学校によく立っていた二宮尊徳像、あれが「資本主義の精神」なのです。 だから、質素倹約をするところでは質素倹約をしながら、「勤勉の哲学」を失わずに自分の時間密度を高めていく。それから、人間的活動としての付加価値を増やしていく。これが全体の潮流になってくれば、国としては発展して富んでいくことになるわけです」 (引用終わり) 今の日本では、与党も野党も、給付金の分配を公約し、国民の「勤勉さ」を失わせるような経済政策を掲げています。 これは、ひとときのバラマキで票を稼ぎ、国民の未来を奪う、亡国の道です。 我われは、「地獄への道は善意で舗装されている」という格言を忘れてはなりません。 本来、資本主義の根源にあるものは、「時は金なり」という格言を体現したベンジャミン・フランクリンのような勤勉な生き方だからです。 二宮尊徳のように、「質素倹約をしながら、『勤勉の哲学』を失わずに自分の時間密度を高めていく」生き方です。 日本が明治以降、栄えてきたのは、そうした「勤勉の哲学」をもった偉人が数多く出てきたからです。 「天は自ら助くる者を助く」と訴えたサミュエル・スマイルズの『自助論』が翻訳され、ベストセラーになったころ、豊田佐吉は産業報国の志を立て、今のトヨタグループの源流を築きました。 我われが今、豊かな国で生きているのは、当時の人々が、志を立て、刻苦勉励する生き方を、後世の人たちのために残してくれたからです。 そうした伝統を破壊し、分配ばかりを欲しがる人を増やすような経済政策は間違っています。 バラマキ政策が主流になれば、「再配分システムのなかにおいて、個人個人がやる気をなくしていって、真面目に働いた者がバカを見るというような社会」がやってきます。 そうした暗黒の未来を阻止し、日本の未来を拓くためにも、幸福実現党は、小さな政府と安い税金、勤勉革命の実現を訴えてまいります。 【参照】 ・大川隆法著『減量の経済学』幸福の科学出版 ・大川隆法著『繁栄への決断』幸福の科学出版 ・大川隆法著『釈迦の本心――政治編』宗教法人・幸福の科学 ・朝日デジタル「コロナ給付金詐欺容疑者、20代以下68% SNSで『安易に加担』」編集委員・吉田伸八 2022年6月15日 ・読売オンライン「【独自】スポーツ賭博の解禁案、経産省が議論へ…八百長や依存症懸念で猛反発は必至」2022/06/07 給付金は「資本主義の精神」を破壊する――守るべきは、近代日本を築いた「勤勉の哲学」【前編】 2022.06.28 http://hrp-newsfile.jp/2022/4303/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆バラマキ政策が並ぶ各党参院選の公約 参院選に向けて、多くの政党が、票を求めて様々な交付金を公約しています。 自民党、公明党、立憲民主党だけを見ても、補助金や交付金、手当といった言葉が目白押しです。 自民党は「1兆円の地方創生臨時交付金」や「赤字でも賃上げする企業に対する補助金」「事業再構築補助金、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金」「出産育児一時金の引上げ」「大胆な児童手当や育休給付の拡充」などを公約。 公明党は「中小企業の賃上げを支援する補助金の拡充」「ものづくり、事業再構築、持続化補助金等」における「グリーン枠」の拡充、結婚と出産から保育、高等教育までの無償化をはかる「子育て応援トータルプラン」の策定、「基礎年金の再配分機能の強化」などを掲げました。 立憲民主党は「燃料等の購入費補助」「事業復活支援金の支給上限額倍増」「年金生活者支援給付金」「給付付き税額控除」「高校の授業料無償化や児童手当の所得制限撤廃」「児童手当などの延長・増額」で対抗したので、結局、どちらが多くのお金を配るか、という競争になってきています。 まるで打ち出の小槌があるかのように、大盤振る舞いのメニューが並んでいます。 配る金額の規模は、自民党よりも公明党のほうが大きく、立憲民主党や国民民主党よりも共産党のほうが大きいのですが、どの政党も、目指しているところは同じです。 それは、バラマキにほかなりません。 「身を切る改革」を掲げる維新の会は違うのではないか、と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらも、基本政策に「ベーシックインカム」を掲げ、全国民にお金を配ろうとしているので、結局、目指すところは同じです。 今の日本で、「小さな政府」と「減量」を訴えているのは、幸福実現党だけだと言えるでしょう。 ◆お金を配ってインフレに対抗? そんな馬鹿な・・・ コロナショック以降、給付金が大量に配られましたが、最近では、それが「物価高対策としてお金を配るべきだ」という政策に変わりつつあります。 4月26日には、政府が、地方創生臨時交付金を拡充し、1兆円の「コロナ禍における原油価格・物価高騰対応分」という枠を創設。 国会では、5月31日に、物価高騰対策を盛り込んだ2.7兆円の補正予算が成立し、そのうち、1.7兆円が原油高対策の補助金とされています(石油元売り会社への補助金)。 これに対して、立憲民主党をはじめとする野党は「岸田インフレ」と戦うために、もっと多くのお金を配ろうとしているのです。 しかし、これらの政策には、根本的な間違いがあります。 今のインフレは、コロナ対策で日銀が大量のお金を刷り、政府が大量のお金を使ったことで引き起こされました。 インフレの原因である「お金を配る」政策で、インフレ対策をすることはできません。 なぜ、インフレが進むのかというと、物やサービスの総量はたいして変わっていないのに、お金だけが大量に増えているからです。 物やサービスの総量が変わらない中で、お金の量が増えれば、1円あたりの価値が下がるのは当然です。 さらに、米国やヨーロッパが市場に流すお金を減らす中で、日本だけがお金をたくさん刷り続けているのですから、ドルやユーロに対して円は安くなっていきます。 日本は、食料や燃料、資源を外国から輸入しなければ経済が回らないので、円安になると、今までと同じ値段で製品がつくれなくなります。 そうなると、今まで110円で変えたものが120円、130円と値上がりし、生活が苦しくなっていきます。 そして、「物価高で生活が苦しい」という声が大きくなると、政治家はお金を配ることを約束しますが、それは、未来の物価高を生み出すので、何も問題は解決しません。 のどが渇いた人が塩水を飲み、もっとのどが渇くのと同じことです。 結局、バラマキをやめ、幸福実現党が訴える「減量の経済学」を実践しないと、物価高対策はうまくいきません。 政府の無駄な仕事を減量し、無駄に使われているお金や、見通しなく配られているお金を減らさないと、「また値段が上がった」と嘆く毎日を、延々と過ごさなければいけなくなります。 今回の物価高は、ロシアとウクライナの戦いの影響を受けていますが、本当の原因は日本国内にあるということを忘れてはなりません。 ◆給付金によって壊れる「経済倫理」 給付金には、それ以外にも、危険な一面があります。 それは、努力なくお金をもらえることをきっかけにして、悪の道に転落する人が出てくる、ということです。 例えば、最近、朝日新聞で、コロナ給付金詐欺の容疑者は、20代以下が7割を占めているということが報じられていました。 警察庁によれば、給付金詐欺で、昨年7月から今年の5月末までに摘発された3770人のうち10代と20代が68%を占めました。 (朝日デジタル「コロナ給付金詐欺容疑者、20代以下68% SNSで『安易に加担』」編集委員・吉田伸八 2022年6月15日) 警察庁幹部は、その人たちについて「申請名義人として使われたケースが多いと思われる」「若者がSNSなどを通じて、安易に犯罪に加担している状況がうかがえる」などと指摘しています。 若者が多いのは、日本の給与体系では若い人の年収が少ない、という背景もあるのでしょう。 しかし、「給付金」が悪の誘惑を生み出していることは見逃せません。 「努力をしなくてもお金をもらえる」という仕組みが、倫理の元になる「縁起の理法」に反しているからです。 努力なくして豊かさを望むのではなく、やはり「善因善果、悪因悪果」という掟に従い、経済倫理のもとに「豊かさ」を求めることが大事です。 ヨーロッパで資本主義ができたのは、宗教改革の後にできたキリスト教徒(プロテスタント)の倫理があったからだと言われています。 神の栄光を地上に著すために、人との契約を守り、勤勉に努力し、時間あたりの効率を上げていく人たちが、豊かな社会をつくり出してきました。 岸田総理は「新しい資本主義」を訴えているのに、こうした「倫理」の大切さを忘れています。 給付金が、人の勤勉の精神を奪い、転落の道にいざなっている事実からは目をつぶっているのです。 (後編につづく) 度重なる増税・バラマキ・・・このままいくとどうなる? 2022.06.23 ■度重なる増税・バラマキ・・・このままいくとどうなる? 【近未来ミニドラマ】「日本倒産」 https://youtu.be/UiLOqLZqBG8 ■参議院選挙2022特設サイト・候補予定者紹介ページ https://hr-party.jp/ 新築住宅への「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理【後編】 2022.06.10 新築住宅への「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理【後編】 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆安易に「強制力」を使いたがる政治の危険性 前編では、「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理について指摘してきしました。 結論を言えば、新築住宅への太陽光の発電パネル設置の義務化は、企業活動の自由を圧迫する政策と言わざるをえません。 CO2削減を錦の御旗にして、環境確保条例で、住宅メーカーに負担を上乗せしたがっています。 「CO2を削減しなければ大変なことになる」という論理を使い、経済を権力で統制しようとしているのです。 危機を理由にして、経済統制を行いたがる傾向は、最近の中央政府の政策にもみられます。 5月27日、経産省は、本年の冬に電力需給が逼迫することを想定し、大規模停電の恐れが高まった時、大企業などに「電気使用制限」の発令を検討すると公表しました。 これは、違反した場合は罰金を伴います。 「需給がひっ迫したらしかたがない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、原発の再稼働を進めずに、企業に罰則つきの電力制限を課するのは筋が通りません。 2022年6月9日の時点で、稼働している原発は3基しかありません。 電力の供給が少なくなるというのなら、まず、発電能力を高めるのが先決です。 それをなさずに、足りない電力をいかに「分配」するかだけを考え、企業活動の自由を統制しようとするのは間違っています。 危機を理由に、経済統制を行う傾向は、コロナ対策の頃から強まってきました。 大川隆法党総裁は、2021年に「『緊急事態』と称して全体主義が入ってくるので、気をつけなければいけないところがあると思います」と警鐘を鳴らしました(『コロナ不況にどう立ち向かうか』)。 政府が強制力を駆使する前に、なすべきことがあります。 原発を十分に稼働させずに、無理に太陽光ばかりを推進したり、企業に罰則つきの電力制限を課したりするのは、筋が通りません。 幸福実現党は、こうした現状を打破してまいります。 原発を早く再稼働させ、日本経済が健全に発展する基盤をつくります。 不安定な太陽光発電に比べると、原発には安定電源としての強みがあります。 また、燃料費が高騰している今、火力発電だけに依存するのは望ましくありません。 バランスのとれた電源構成を再構築しなければいけないのです。 【参照】 大川隆法著『コロナ不況にどう立ち向かうか』幸福の科学出版 「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)の改正について~カーボンハーフの実現に向けた実効性ある制度のあり方について~(中間のまとめ)」(2022年5月 東京都環境審議会) 週刊ダイヤモンド「消費者と住宅メーカーが両損 『太陽光発電義務化』の無理筋」2022/6/4 東京新聞(WEB版)「太陽光パネル義務付け条例制定に向けて東京都がパブコメ開始 反対論に小池知事『おかしなことでない』」2022年5月27日 杉山大志「新築住宅への太陽光義務化 見送りは妥当か否か」(2021.8.2) キャノングローバル戦略研究所HP 原子力規制委員会HP「原子力発電所の現在の運転状況」 新築住宅への「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理【前編】 2022.06.09 http://hrp-newsfile.jp/2022/4284/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「新築住宅への太陽光の発電パネル設置の義務化」とは 東京都は、2030年までにCO2を2000年比で半分にする(50%減)という目標を掲げています。 それを実現するための政策の一つとして、全国に先んじて、新築の一戸建てやマンションへの太陽光の発電パネル設置を義務化する方針が出されました。 昨年12月、小池都知事が、新築住宅を対象にして、住宅メーカーに太陽光パネル設置を義務化する方針を打ち出しました。 その半年後、5月に開催された都の有識者検討会(東京都環境審議会)の答申案(※)にも、その内容が盛り込まれました。 ただ、この政策は、まだ、国レベルでは実施されていません。 昨年の6月、政府が公共建築物を新築する場合、原則として太陽光発電設備を設置する方針を決めましたが、負担の重さなどを理由に、新築住宅への設置義務化は見送られたのです。 しかし、この政策が、今後、国や他の自治体に取り入れられる可能性があるので、注意する必要があります。 (※本稿で参照する「答申案」の出典は「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)の改正について~カーボンハーフの実現に向けた実効性ある制度のあり方について~(中間のまとめ)」) ◆「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理(1) パネルを付けた後にビルが建ったらどうする? 新築住宅への太陽光の発電パネル設置の義務化といっても、一応、答申案では「隣接建物による日陰等」と例をあげ、「設置に不向きな場合を考慮する」としています。 (※日当たりが悪い地域では、代替案として他の再生可能エネルギーの設置や再エネ電力購入などを講じる方針) そのうえで、答申案は、85%の住宅がパネル設置に「適」しているとしています。 しかし、そこには、「条件付き」の「適」が含まれています。 (※これは「東京ソーラー屋根台帳」という小平市の「環境部 環境政策課」が作成したWEBマップの数字) 統計や地図上では可能に見えても、現地の「条件」を見たら無理だった、ということがありえるわけです。 太陽光パネルの設置前には、高層ビルの有無や、土地の高低差、近隣の建物の並び方、日射取得率などから発電のシミュレーションを行います。 また、日影規制や斜線制限(建築基準法)、高度地区の高さ制限(都市計画法)といった規制に合わせなければいけません。 一つ一つの案件を見ていかなければならないので、太陽光パネルの設置は、一律の「義務化」にそぐわないところがあります。 さらに言えば、家を建てた時は太陽光発電ができても、その後、近隣にビルが建てば、十分な発電量が確保できなくなります。 住宅が太陽光パネル設置に適していると判定されても、その状態が続くかどうかは限らないわけです。 ◆「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理(2) メーカーの負担増 住宅販売減 もう一つの問題は、太陽光パネルの費用(100万円程度)が住宅価格に上乗せされるということです。 木材などの資材の価格が上がる中で、さらに値上がりするのです。 また、半導体不足で太陽光パネルの供給が遅れているという問題もあります。 その中でパネル設置を義務化すれば、住宅の完成も遅れます。 住宅をつくる際にも、売る際にも、マイナスの影響が出ます。 「太陽光パネル設置の初期費用は、パネルの余剰電力売却金で回収できる」という意見もありますが、家の値段は高いので、消費者の中には「パネル代まで払えない」という人が出てきます。 また、「初期費用を住宅メーカーが負担し、後で、それをパネルの余剰電力売却金から回収する」という方法も考えられています。 しかし、この場合でも、回収が終わるまでの負担がメーカーにのしかかります。 政府が企業や消費者を補助金で支援したとしても、結局、そのお金の出どころは税金か国債です。 やはり、この政策が国民の負担増につながることは否定できません。 ◆「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理(3) 義務目標が未達の場合、事業者名を公表 答申案の内容から「義務化」の対象になるのは、大手住宅メーカー50社程度とみられています。 (「環境審議会がまとめた案では、一戸建てなど中小規模の建物では、建築主ではなく、中小規模の建物の供給量が都内で年間2万平方メートル以上の住宅メーカーに義務が課される。都内で年間に販売される新築住宅の5割強が対象になる見通しだ」東京新聞WEB版 2022年5月27日) 都は住宅メーカーなどに、環境対策についての報告を求め、基準未達成の場合は「都による指導、助言、指示、勧告、氏名公表などを通して、適正履行を促していくべきである」と書かれています。 従わなければ業者名を公表し、国民の前でさらし者にするという、恐怖政治的な手法が取り入れられているのです。 ◆「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理(4) ウィグル自治区でつくられた太陽光パネルでもおとがめなし? この政策は事業者にとっては負担増になるため、コストを切り詰めなければいけなくなります。 この政策が実施されれば、多くの企業が、中国製の安い太陽光パネルを使うことになりそうです。 しかし、キャノングローバル戦略研究所の杉山大志氏によれば、最も安い結晶シリコン方式の中国製パネルのうち、半分近くが新疆ウイグル自治区で生産されているそうです。 「いま最も安価で大量に普及しているのは結晶シリコン方式であり、世界における太陽光発電用結晶シリコンの80%は中国製である。そして、うち半分以上が新疆ウイグル自治区における生産であり、世界に占める新疆ウイグル自治区の生産量のシェアは実に45%に達する。」 (杉山大志「新築住宅への太陽光義務化 見送りは妥当か否か」(2021.8.2) キャノングローバル戦略研究所HP) しかし、都の有識者会議の答申書では、なぜか、この問題は取り上げられていませんでした。 (後編につづく) すべてを表示する « Previous 1 … 3 4 5 6 7 … 78 Next »