Home/ 経済 経済 日本はサイバー攻撃に対しても毅然とした対応を! 2015.08.11 文/幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生 油井 哲史(ゆい・てつし) 日本年金機構の個人情報集出事件で、101万人以上の個人情報流出が確認されています。手口は、標的型攻撃メールでした。 不特定多数の対象にばらまかれる通常の迷惑メールとは異なり、対象の組織から重要な情報を盗むことなどを目的として、組織の担当者が業務に関係するメールだと信じて開封してしまうように巧妙に作り込まれたウイルス付きメールのことです。 一連の攻撃には、中国語に堪能な組織が関与したと見られており、日本は確実に標的となっています。 なお、2010年尖閣諸島をめぐる情勢等と関連したとみられるサイバー攻撃においても、ウェブサイト改善事案の捜査を通じて把握したIPアドレスを分析した結果、全て海外所在(約94%が中国)のものでした。 ◆悪を抑止させる姿勢が鮮明な米国 米国が受けたサイバー攻撃も中国の関与が指摘されています。 米連邦政府の人事管理局は2150万人分の連邦政府職員らの個人情報が不正アクセスを受け、流出したと発表。ジェームズ・クラッパー米国家情報長官は、中国のハッカーに侵入された可能性が高いことを明かしました。 ニューヨークタイムズの報道によると、従来の防諜体制による通常の戦い方ではハッカー攻撃の規模に対応できないため、中国へ報復的サイバー攻撃を検討しているといいます。 実際に、米国は北朝鮮に対しサイバー攻撃の報復で制裁を行っています。 2014年11月、ソニーの100%子会社である映画大手の米ソニーピクチャーエンタテイメントは北朝鮮首脳を風刺したコメディ映画「The Interview」の劇場公開の妨害のため、大規模なサイバー攻撃を北朝鮮から受けました。 公開映像のファイルや最高幹部の電子メールなど大量の情報が流出。さらに、映画の上映予定の映画館に脅迫メールが送られました。 これを受け、オバマ大統領はCNNのインタビューで「とても大きな損失を伴う、高くつく『サイバー破壊行為』だと非難し、相応の対抗処置をとる」と述べました。 ジョン・マケイン上院議員は、今回は間違いなく戦争行為と断定。経済組織を破壊し、世界に、特にアメリカに検閲を課すことができるなら、それは破壊行為以上のものだとし、新たな戦争の形態であり、力強く対応する必要があるとしました。 これらの対抗処置でオバマ大統領は、金融制裁を科す大統領令に署名。米財務省は北朝鮮の3つの政府関連組織と10人の個人を制裁対象に指名し、米国内の資金を凍結。また、米国の人々に対しこれら制裁対象との取引を禁じました。 米国はサイバー攻撃を受け、国益を損ねたならば、その悪を押しとどめるための行動を起こしたのです。 ◆弱腰な対応で、国益を損なう日本 残念ながら、サイバー攻撃に関して日本政府は弱腰で曖昧な対応です。 2010年尖閣諸島をめぐる情勢等と関連したとみられるサイバー攻撃では、官房長官が「サイバー攻撃への対処は、国家の危機管理上重要な課題であって、政府として情報セキュリティ対策の一層の充実・強化を図る必要がある」と述べました。 しかし、サイバーセキュリティを強化する取り組みは成されましたが、攻撃に対する明確な対応はぼやけました。 また、日本企業への攻撃に際して日本政府の動きは鈍いと言わざるを得ません。 ソニーピクチャーエンタテイメントの一件は、日本資本の企業へのサイバー攻撃であり、当然ながら日本にも影響を及ぼす可能性のあることでありましたが、一部の閣僚らが、北朝鮮を批判する発言をするにとどまりました。 自分の国への影響をそこまで考えておらず、サイバーセキュリティへの認識が弱いと思われます。 日米両国はサイバー空間における脅威に対応するために、日米安保・防衛協力において連携を強め、共同して取り組みや計画における協力を推進していくことになっています。日米安保の関係をさらに強める機会を逃したとも言えるでしょう。 ◆日本は「止悪」の観点から毅然とした対応を! 軍事的に膨張する中国、核ミサイル保有を急ぐ北朝鮮など物理的な脅威として、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しています。 国家の国益や国民を守り抜くにも、国防強化に取り組まなければなりませんが、サイバーセキュリティにおいても体制を整えるとともに、毅然とした態度で意見を述べ、さらには「制裁」やサイバー攻撃を可能とするための整備が必要であると考えます。 東南アジアへのサイバー攻撃において、中国がハッカー集団を支援していると米国セキュリティ会社が発表しており、背景には南シナ海紛争があると言われています。 不当な軍事攻撃や侵略、サイバー攻撃を企む国に対しては、「止悪」の観点から毅然とした対応をしなければなりません。日米は協力して、その役割を担うべきです。世界の国々も、正義の実現を求めています。 財務省も知っていた「フラットタックスで税収が増える」 2015.08.07 文/幸福実現党・政務調査会チーフ 小鮒将人 ◆全国で「減税」セミナー開催中! 現在、大川裕太政務本部活動推進参謀の著書である「幸福実現党テーマ別政策集2『減税』」のセミナーを全国各地で開催しています。 幸福実現党テーマ別政策集2「減税」 https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1442 「減税」は、2009年の立党時からの、党の主要政策の一つです。 同セミナーは、「大変わかりやすい」、と好評を頂いています。ご関心のある方は、幸福実現党本部までお問い合わせください。 ◆消費増税は、海外で「アベノミクス失敗」との報道 さて、2014年4月、私たちの訴えとは反対に、自民・民主・公明三党の合意に基づき、消費増税が強行され、結果として、名目GDPが2期(2014年4月~6月、2014年7月~9月)連続マイナス成長という結果となりました。 さらに、今年に入っても厳しい経済状況は続いており、8月17日公表予定の2015年4月~6月期のGDPについても、多くのエコノミストが前期比マイナス成長を予想しております。 当初、政府・財務省は、ここまで厳しい結果になることは予想しておりませんでした。 海外では、2期連続のマイナス成長は、「景気後退」とみなされ、昨年末、「アベノミクス失敗」とはっきり報道されたのです。 国内でも大きな議論になるべきでしたが、衆院解散・総選挙の混乱と、時を同じくして、日銀による更なる金融緩和による株高が重なり、本来行われるべき議論がなされないまま現在に至っています。 ◆「フラットタックス」で税収が増えるのはなぜ? そうした現在であるからこそ、「減税」が必要であるわけですが、上記の「減税セミナー」では、興味深い話を取り上げています。それが「フラットタックス」です。 『段階的な累進課税を廃止し、フラットタックスを導入すると、税収が増え、経済成長率が上がる、ということは実際に証明されています。』(テーマ別政策集「減税」80ページ) 現在、多くの先進国は「累進課税」を採用しています。 これは、所得が高くなるほど税率が上がるものです。最初は「戦費調達のための一時的なもの」として、各国で導入されたものでありますが、第2次大戦戦争終了後にも、日本をはじめとする多くの国家で継続しています。 「累進課税」は、所得の多い人ほど高い「税率」を課されるというもので、我が国では、年間4,000万以上の所得の方で最高税率45%となっております。 高額所得者にとって、およそ半分が税金で取られてしまうというのは、普通は納得ができないはずです。 そこで、多くの富裕層は、節税に走ります。税理士は、そうした節税対策の相談役としても存在しているのです。 この現状について、渡部昇一上智大学名誉教授は、日本の優秀な頭脳がマイナスの方向のために働くことで、無駄なエネルギーを使っていると述べています。 実際、富裕層にとっても、節税対策が業務の何割かを占める事になるのです。実にもったいない話です。 ◆大蔵省(現財務省)高官は「一律7%で充分」と語る 一方、「フラットタックス」は、原則全ての所得税を同じ税率にするものです。当然、富裕層にとっては「減税」、しかも大幅な減税となるのです。 その結果、「節税」を行う必要がなくなり、本来徴収すべき税金を徴集することができるのです。これは、納税者、国家、両者に対してウィンウィンの関係になります。 すでにロシアではプーチン大統領の主導によるフラットタックスを実施しています。従来は12%、20%、30%の累進課税制度であった税制を一律13%としたところ、税収増を達成しました。 また、東欧各国でもロシアの成功を見て続々とフラットタックスを導入しています。 そして、驚く事に財務省は、フラットタックスになると税収が増える事を認識しています。 渡部昇一氏の著書(「歴史の鉄則」208頁)には、大蔵省(現財務省)主税局の高官の話として「フラットタックスになった場合、一律7%で充分」と明記されています。 確かに、今まで45%の税率で税金を納めていたのが7%でよいのならば、節税対策は直ちにやめる事になるでしょう。 そうした事実を知っていながら、政府・財務省は、所得税の累進課税を継続しています。その大きな理由に「所得再配分」という社会主義的な思想があります。 本当に国民の幸福を考えるならば、まずは国家の繁栄を推し進める「減税」という方向を推進するべきであります。 今、消費増税反対の主張をしている共産党・社民党も同様に、社会主義的な考えに基づいて、所得税の累進課税・相続税の増税を推進しており、基本的には増税論者です。 我が幸福実現党のみが、減税による繁栄を求めているのです。 少なくとも、現在の日本にとって、減税はメリットが大きな政策で、税収を上げるには、減税により景気をよくすることが大切です。 幸福実現党は、今後も所得税をはじめとする各種税金の減税を訴え続けていきます。皆さまのご支援を頂きますよう、お願いいたします。 新国立競技場問題の本質 2015.08.06 文/逗子市政を考える会 彦川太志 ◆新国立競技場をめぐる問題の整理 2020年に開幕する東京五輪に向けて、新国立競技場の整備問題が難航しています。問題となった新国立競技場のデザイン案は、2012年にコンペで選ばれたイラク出身のザハ・ハディド氏のプランでした。 日本スポーツ振興センター(JSC)の公式HPによると、収容人数は8万人、開閉式の屋根(後に白紙)、可動式の観客席といった設備を備えるほか、コンサートなど文化事業の開催をも想定したり、附属施設としてジムや商業施設、博物館等が一体となった「日本の文化、経済、科学技術、スポーツを世界中に発信する中枢」(森元首相)としての機能を担うことが期待されていたことがわかります。 しかしながら、当初予算の大幅なオーバーに直面して計画の縮小・変更を重ねるという混乱の中、国と都の予算負担が決裂して下村文科省の責任問題に発展したことが重なり、7月17日、安倍首相から新国立競技場の整備計画を白紙とし、構想をゼロベースで見直すことが発表されました。 その後、7月28日には文科省傘下のスポーツ・青少年局長である久保公人氏が責任を押し付けられる形で事実上の更迭人事が行われ、9月に新整備計画を策定する方針だけが決まっています。 ◆総工費倍増の原因はザハ氏のデザインではなく、そもそもの要求基準 様々な報道記事に接してまず目に付くことは、二本のアーチが特徴的なザハ・ハディド氏のデザインに対する批判が多く、「妙な外国人が奇抜なデザインを持ってきたのが原因だ」とでも言わんばかりの空気が広がっていることです。 しかしながら、ザハ氏のデザインは依頼主であるJSCの要望に応えたから採用されたわけで、そもそもの要求基準に触れずに、建築家を悪者に仕立て上げようとする報道には、憤りを感じざるを得ません。 依頼主の要望とは、「8万人の収容人数、開閉式の屋根、可動式の客席」と言った要求のほか、「博物館や商業施設、ジム」まで入っている“高度な総合施設”を、「2019年のプレオリンピックまでに間に合わせる」ということでした。 ザハ氏のデザインは、このような要望をクリアするために「スタンドの建設と並行して屋根の建設を進めることが可能」で、「重要な建設期間を短縮できる」構造として、二本のアーチ構造(工費230億円)をもつプランを提案したのです。ですから、「アーチ構造をもってきたから、予算が膨らんだ」というJSCの指摘は当たらないと言えます。 ◆火に油を注いで大火にした文科大臣 それでは、新国立競技場問題の核心はどこにあるのでしょうか。新国立競技場の予算増が本格的に政治問題と化してきたのは、2015年5月に行われた、下村文科大臣と舛添都知事の記者会見からでした。 5月18日、新国立競技場の建設費500億の負担依頼に舛添都知事を訪問したわけですが、 その直後から、新国立競技場の建設をめぐってJSCや文科省に対する舛添都知事の批判がヒートアップしています。 詳しい発言は都知事の定例記者会見(5月26日)をご覧いただければと思いますが、ゼネコンの見積もりを元に安易に費用負担を求める下村大臣に対して、「本当にそれで間に合うのかどうか、単に難しい工法だからと言って値段を吊り上げているだけでないのかどうか」を厳しく問い詰めた様子が伺えます。 コストを抑えつつ品質を確保して工期を間に合わせる。そのような当たり前の経営能力を問われた下村大臣は、なんと「建設費の一部を都に負担させる根拠法を作る」という暴論で応酬し、あっさりと論破されています(6月9日)。 ◆国際協約通りザハ氏に再度設計を依頼すべき 結局、この新国立競技場問題の核心とは何だったのでしょうか。 私見ではありますが、舛添都知事に経営能力の無さを露呈され、新国立競技場を政治問題として「炎上」させられてしまった文科大臣が、自分が追求から逃れるためにザハ案を葬ろうとしただけのことではないのでしょうか。 ザハ・ハディド氏は著書の中で、自身の建築プランが実現しない場合は2つしかないと語っていました。 ひとつは「テクノロジーの問題」、二つ目は「政治的問題」です。世界的アーティストが日本にレガシーとなる建築を残すことの意義について、ぜひ多くの方にその価値を知っていただければと思います。 また、安倍首相においては、重要法案の成立と支持率の両睨みを続ける中、野党に攻撃材料は与えたくないものと推察しますが、構想実現のために厳しくある姿勢が、国民の支持を呼ぶこともあると思います。 2020年東京五輪成功に向けて、文科大臣の責任を明確にし、経営センスのあるリーダーを据えていただき、国際協約通りザハ氏に再度新国立競技場を依頼するのが最良の選択肢だと提案させていただきたいと思います。 日本の誇りを取り戻す広報文化外交を 2015.07.31 文/HS政経塾2期卒塾生 服部まさみ ◆「武器なき戦い」はすでに始まっている 8月15日、米国サンフランシスコに「抗日戦争記念館」が開館します。9月には、中国でプーチン大統領らを招いて「抗日戦争勝利記念日」軍事パレード、ユネスコ記憶遺産の登録発表など、日本を貶める「歴史戦争」が次々に仕掛けられています。 国会前で「「戦争反対」と声高に叫ぶ人たちは、日本の誇りと名誉が傷つけられている「武器なき戦い」はすでに始まっていることを知るべきです。「子供たちが戦場に送られる」という妄想ではなく、自虐史観によってたやすく洗脳され、謝罪ばかり続ける精神的奴隷になろうしている現実に向き合うべきです。 米国カリフォルニア州では、新たに中国系の反日団体が慰安婦像を設置しようと市議会に働きかけ、テキサス州の博物館に対して、中国政府関係者が第二次大戦の展示記述を書き換えるように圧力をかけるなど、反日プロパガンダの勢いは増しています。 このような動きに対して、日本はもう一段、国際世論を味方にする積極的なアプローチが必要です。 ◆国際世論を味方にするために普遍的価値のある「メッセージ」を発信せよ 国際世論を味方にするためには普遍的価値のある「メッセージ」を発信していく必要があります。普遍的価値とは、日本は成熟した民主主義国家であり、自由主義社会であり、法の支配や人権の尊重、世界の平和に貢献してきた国家であるということです。 なぜ、普遍的価値のあるメッセージを発信しなければならないのでしょうか。それは、国際世論を味方にするためには「一般市民の琴線に触れる働きかけをすること」と、「戦勝国の論理を打ち破ること」という2つが重要だからです。 現代において、国際世論を左右するのは一部の政治家だけではありません。CNNやBBCなどの国際メディアであり、シンクタンクの研究員であり、それらの意見を見たり、聴いたりする多くの一般市民なのです。 また、国際世論に影響を与えている国際メディアの価値観の基準は、第二次大戦の戦勝史観に基づいています。この価値観を変えない限り、日本は外交でも不利な立場に置かれたままです。 国際世論を味方にするためには、民主主義、自由主義、基本的人権などの普遍的価値に基づき、一般市民が理解しやすく、琴線に触れるもの、さらには戦勝史観を打ち破るメッセージが必要なのです。 ◆ 6つのマトリックスを巧みに操る中国 メッセージを効果的に伝えるためには、6つのマトリックスに分けた働きかけが重要です。ターゲットは自国内、対立国、第三国で、働きかける対象は、エリート層と一般市民に分かれます。これを巧みに行っているのが中国や韓国です。 中国の「上手さ」とは第三国である米国のエリート層に対しては、「米中はお互いに重要な貿易パートナーであり、世界最大の米国債保有国である中国を軽く見たり、刺激したりするのは国益にかなわない」と言い、民衆にはいかに日本が残虐的なことをしてきたかというメッセージを送っています。 最近は、ハリウッド映画界が中国シフトを加速させています。例えば、中国人女優を起用し、ロケ地に中国を入れ、中国企業と連携したり、旧日本軍による重慶爆撃を描いた中国映画のコンサルタントにハリウッドの俳優や映画監督が就任し、有名俳優が出演するなど中国との関係を強めています。 また、メトロポリタン美術館では、年に一度、ファッション界のアカデミー賞ともいわれる「MET GALA(メット・ガラ)」開催され、ハリウッド・スターやスーパーモデル、著名人たちが大集合しますが、今年のテーマが「中国」。中国の著名人が招待されたことが世界中に報道されました。 米国の主要な美術館では近年、中国美術の特別展が開催され、中国がアジアの偉大な国であることをPRしています。このように第三国の一般市民への発信力を強めるために、中国は莫大な資金力で寄附や人材を投入し、映画やファッション、文化まで活用しています。 対立国の日本に対しても、エリート層には中国と付き合っていくことがいかに「利益」にもたらすかを友好的にアピールし、「お上」や「空気」に従う民衆に対しては、直接的な働きかけは行っていません。 中国国内のエリート層には、「反日プロパガンダが中国の国益になる」と言い、民衆に対しては「国民の怒りは我々がぶつけるんだ」というように、6つのマトリックスで内容を変えているのです。 それに比べて、日本は6つのマトリックス全てで同じことを発信してしまっています。 ◆日本が具体的に取り組むべきこと 日本が国際世論を味方にするためになすべきことは何でしょうか。それは、反日プロパガンダを「論破すること」だけではなく、「日本は素晴らしい国なんだ」という感動を与えることです。 (1)日本は世界史の中の奇跡であるという文化的アプローチ 日本には「統一王朝が二千数百年の長きにわたって現在まである」ということや、ギリシャ以前に「神による民主主義」が行われていたことなど国自体が世界遺産そのものです。日本は、第二次世界大戦で敗れてから発展したわけではありません。 日本の本当の素晴らしさを伝えるものは国宝や重要文化財としてきちんとのこっています。海外の主要な博物館や美術館と連携して、特別展を開催したり、シンポジウムを開いたり文化的アプローチを数多く行っていくべきです。 連綿と続く、日本の歴史の真実をみれば、「日本は悪魔の国だ」と思って原爆を落とした米国の論理や、「民主主義国家対全体主義国家の戦いだった」という戦勝国史観も崩れていくはずです。 (2)人材育成 そのためには、自国の文化を海外に対して外国語で十分に説明できる人材を育成していくことが急務です。 また、日本の歴史や文化を正しく伝える書籍なども十分に翻訳されておらず、日本にある「人類史のなかの宝庫」のような部分を世界の人は知らないままです。 日本語の本や雑誌を諸外国の言語に翻訳する機関を立ち上げ、翻訳した本や雑誌を世界中の政府や大学、図書館に送ることも国家プロジェクトとして取り組むべきです。 (3)予算の確保 予算の問題がありますが、現在、脱原発によって全国の原発が停止していることで、一日に100億円の燃量代がかかっています。今年の広報外交予算が約700億円ですので、1週間分の燃料費と同じです。 原発を1日でも早く再稼働させれば、100億円の燃料費の流出を止めることができ、年間3兆6千5百億円を別なところに使うことができるのではないでしょうか。 日本には、国際世論を味方にするための普遍的価値のあるメッセージや誇るべきものを数多く持っています。日本から様々な考え方や意見を世界に発信し、世界の人々に「あるべき姿」や指針を示すことこそ、私たちが目指すべき未来なのです。 ギリシャ危機は終わらない。――根本解決に必要なこと 2015.07.29 文/幸福実現党埼玉県本部幹事長代理 HS政経塾2期卒塾生 川辺賢一 ◆ギリシャ危機は終わったか 今月23日、ギリシャ議会は増税や年金改革関連法案に加え、銀行の破綻処理手続き等を柱とする財政改革法案を可決。これにより、ギリシャはEUから求められていた金融支援の条件をクリアしました。 「ギリシャ危機の後退」を受け、世界の株式市場は高騰。2万円台を割り込んでいた日経平均株価も2万500円台まで回復しました。 では、これでギリシャ危機は終結に向ったのでしょうか。 確かに、労働人口の4分の1とも言われる公務員を抱え、早くて50代から年金受給が始まるギリシャ経済の現状は持続不可能であり、ドイツを始め、金融支援と引換えにギリシャに改革を求めるEU側の主張にも正当な点はあるでしょう。 しかし、若年層失業率が50%を超え、名目・実質共に一人当たりGDPがピーク時の4分の1も減少している状況で、増税を始め、さらなる緊縮政策が断行されれば、いっそう失業者が増大し、失業者救済のための公共支出が求められることが予想できます。 これでは、たとえEUが求める改革が断行されても、ギリシャ債務問題は深刻さを増すばかりか、EU支援に依存したギリシャはやがて国民の意思による予算決定、すなわち国民による主権行使が何一つできなくなるでしょう。 つまり、ギリシャとEUが現状、向っている未来は、かつて債務国であった東ドイツを債権国の西ドイツが吸収したとの同様、EUという第3者機関を通じた「ドイツのギリシャ吸収」、あるいは「ギリシャのEU直轄領化」です。 むろん、東ドイツと西ドイツの場合と異なり、言語も民族も異なる国家の統合は、常に破局の危機に晒され、その度に、日本も含め、世界経済は迷惑を蒙るでしょう。 では、ギリシャ危機の根本解決には本来、何が必要なのでしょうか。 ◆ギリシャに必要な改革 まず、「50代で退職したギリシャ人の生活を、どうしてドイツ人が税金で面倒を見なければならないのか」という率直なドイツ人の感覚は間違ってないでしょう。 かつて英国病とマーガレット・サッチャーが闘ったように、勤労意欲の低下したギリシャには労働組合の弱体化政策、国有資産の民営化、社会保障費の削減、行政のスリム化等といったドイツが求める改革の断行は一部不可欠であり、ギリシャは鉄の意志を持った指導者を選出しなければなりません。 しかし、同時に不可欠なのは、独自通貨の復活と通貨切り下げを通じたギリシャの国際競争力回復です。 現状、ギリシャは通貨切り下げではなく、デフレによって、つまりギリシャの製品・サービス、そして労働賃金が名目・実質共に、下落していくことを通じて、国際競争力を取り戻そうとしています。 ところが、統計上、あるいは直感的にも、名目上の賃金給与額が低下し続ける社会(デフレ下)で、景気回復や失業率の改善は不可能で、ギリシャは国際競争力の回復、つまり債務返済のために、失業率を増大させなければならないという、矛盾した状況に陥っているのです。 だから独自通貨の復活と通貨切下げが必要なのです。 もしもギリシャが独自通貨ドラクマの復活を決断すれば、通貨の切下げによって、ギリシャは自国の製品・サービス、また賃金給与の名目額を下落させることなく、対外的な競争力を取り戻すことができるのです。 実際、英国病からの脱却にはサッチャーによる改革だけでなく、ポンド危機による通貨切下げが必要でした。また97年通貨危機に見舞われた東アジア諸国においても、通貨の暴落自体が次の成長を後押ししました。 日本政府も世界経済のステークホルダーとして、ギリシャ問題をEUやIMFだけに任せるのではなく、意見を述べるべきです。 例えば日本政府には1兆ドルを超える外貨準備があり、その準備から一部融資することで、ギリシャの債務不履行を防ぐことができます。 日本はその見返りに、日本の改革案をギリシャに履行させ、また円建ての返済を求めることで、欧州における円国際化を進め、ギリシャ進出を足かせに欧州における人民元の国際化を企てる中国を牽制することもできます。 ◆緊縮財政と決別を 緊縮財政ではギリシャ問題の解決は難しいこと、そして根本解決に必要なことを述べて参りましたが、1930年代の大恐慌を経験した世界は、既に緊縮財政の間違いを痛い程、学んでいるはずなのです。 大恐慌以前の世界では、金と自国通貨の価値を連動させること、つまり金本位制がグローバル・スタンダードでした。 供給側に制限のある金を基準に貨幣を刷れば、貨幣の価値暴落はまぬがれ、世界経済は安定すると考えられていたのです。 ところが金本位制の下では、金の流通量、あるいは金の埋蔵量に世界の貨幣供給量が規定されるため、世界経済は成長しようとすればするほどに、デフレ、賃金の下落、景気悪化、結果的としての社会秩序の不安定化が進む構造となっていました。 そこで世界は金本位制と決別し、金ではなく、供給側に制限のない国債やその他債券・証券を担保に貨幣を発行するようになったのです。 金の価値は供給が制限されることで保たれますが、債券には供給側の制限がありません。ところが、たとえ新規債券が発行されても、人々の勤労により、新しい価値が付加されれば、債券の価値は保たれるのです。 緊縮財政の発想が世界経済の成長の足かせとなっています。これを乗り越えるために必要なのは、勤労によって富を増やすことができるという世界観です。 今こそ、私たちは緊縮財政と決別すべきなのです。 エネルギー供給の多様化を図り、危機に強い国家をつくろう! 2015.07.28 文/HS政経塾第5期生 表 なつこ ◆先の大戦の開戦の理由は何だった? 本年は戦後70年にあたる節目の年です。 各国戦没者の方々に哀悼の心を捧げ、祖国への愛情を持って戦った方々に感謝を表し、悲しい経験が再び繰り返されないように教訓を学ぶことが、私たちのするべきことだと考えます。 では「そもそも先の大戦がなぜ起こったのか?」という切り口から考えてみると、大きな原因の一つに、エネルギーの危機がありました。 ◆石油を全面禁輸された日本 欧州列強による植民地支配が当たり前だった弱肉強食の当時の国際情勢の中で、日清・日露戦争に勝利した日本は、石油の約75%をアメリカからの輸入に頼っていました。 アメリカ国内では世界に対して力を持ち始めた日本人移民への反感があり絶対的排日移民法が制定されました。 その中で、ヨーロッパでドイツと対戦していたイギリスは、アメリカに加勢してもらうために、「アメリカが日本と戦争すれば、アメリカは日本と同盟関係にあるドイツとも自動的に戦うことになる」というシナリオを考え、対日石油輸出の全面禁止を画策したのです。 国民の生活・経済・国家防衛など国家の運営に必要な石油が入ってこなければ、日本は必ず開戦するだろう、という作戦でした。 75%もの石油をアメリカに頼っていた日本は、なんとか石油禁輸の解除がなされるよう働きかけましたが実現せず、開戦へと向かっていった、という経緯があります。 ◆似通っている当時と今の日本のエネルギー構造 以上の歴史を振り返ると、エネルギーを他国に頼らず自給できていれば…と考えてしまいます。しかし、これは過去の問題ではありません。 日本は今も昔も資源小国であり、エネルギー資源の96%を輸入に頼っています。 当時は石油の75%をアメリカからの輸出に頼っていましたが、現在の日本はエネルギーの90%以上を、中東からの石油・石炭・天然ガスなど化石燃料の輸入で賄っています。 また東日本大震災後、原子力発電所の稼働がストップしてからは、電力の中でもこれらの化石燃料による火力発電の比率がより高まっており、その比率は90%近くにも及びます。 つまり、日本はエネルギーの9割を輸入に頼り、そのうち9割を中東に頼り、そのエネルギーでつくる火力に国内発電の9割を頼っている、という構造になっているのです。 ここに、今も昔も変わらない日本のエネルギー安全保障の脆弱性があると言えるでしょう。 ◆これからの日本のエネルギー安全保障を考える 経済産業省は、2030年時点で実現されることが望ましいとされる原子力や火力、水力などの「電源構成(エネルギーミックス)」を公表しました。 原子力の比率は「20~22%」と東日本大震災前より低く抑えて、太陽光などの再生可能エネルギーを「最大24%」とし原子力を上回る普及を目指しています。 しかし、再生可能エネルギーに大きく依存するエネルギー政策は現時点では効率的とは言えないため、結局、最も効率的で環境上も望ましい自律的エネルギーである原子力エネルギーを拡大させることが重要だと言えるでしょう。 原子力エネルギーを運営管理するに当たっては、福島原発や40年廃炉の問題、放射線廃棄物処理をどうするか―など、問題が山積しているため、2030年時点で20~22%の稼働を実現できるかどうかには疑問符が付きます。 原子力はコストが低く国民経済に与える恩恵は大きく、環境への影響も最小限、高い技術の保有が国際的な競争力を高め、さらにエネルギー自給率も高めてくれるものです。 その運転再開までを埋めるため、当面のうちは化石燃料のうち環境に優しい天然ガスを、安定的に確保・活用することが最適なのではないかと考えます。 イギリスの元首相チャーチルが海軍卿時代に発言したように、「供給の安全は多様化の中のみにある」ということを考えるなら、日本は中東以外に、複数のエネルギーの供給先を確保しておくべきでしょう。 歴史に学び、世界を見つめ、平和と安定のうちに世界が繁栄していくよう、着実な歩みを重ねる日本であるように、私も努力したいと思います。 「コーポレートガバナンス強化策」の是非と、「長期金融制度」の必要性 2015.07.21 文/HS政経塾4期生 西邑拓真(にしむら・たくま) ◆安倍政権によるコーポレートガバナンス強化策 安倍政権は、アベノミクス「第三の矢」である「民間投資を喚起する成長戦略」の一環として、コーポレートガバナンスの強化を推し進めています。 コーポレートガバナンスとは、企業の法的な所有者である株主の利益が最大限に実現化されることに向け、企業を監査するための仕組みを指します。 この強化策の背景として、これまで、日本はコーポレートガバナンスが低く、経営の透明性が低かったことから、特に外国人投資家が積極的に日本株を購入していなかったことが挙げられます。 企業統治を強化して企業の収益性・生産性を高め、企業価値を向上させることを通じ、株式市場をより活性化させようとするところに、その狙いを求めることができます。 また、今年の6月には、金融庁と東京証券取引所により、コーポレートガバナンス・コードが導入されました。これは、株主の権利や取締役会の役割などといった、上場企業の行動規範を表したもので、上場企業はコードに同意するか、同意しない場合はその理由を投資家に説明することが求められるというものです。 企業統治の強化策としてのコードの導入により、上場企業は、資本効率を向上させることをより強く求められるようになったわけです。 ◆政策の効果 日本企業における「経営の透明性」が低いことの一要因として、長年の「株式持合い」という慣行の存在が挙げられています。 「株式持合い」を行えば、長期的に株式が保有され、相手株主から厳しい口出しがなされない「ぬるま湯的体質」が生じるとされます。持合いが解消し、経営陣が投資家によって厳しく精査されることで、経営効率が改善するだろうということが、この政策の狙いの一つであるとされています。 また、現に、このコーポレートガバナンス強化策を行った成果として、企業が取締役会に対する監督強化を図ることを念頭に、「社外取締役」を選任する上場企業が、昨年12月の72%から、今年の6月には94%以上に増加したとする報告もあります(米 Institutional Shareholder Services社調査)。 ◆外国人投資家 日本の株式市場における売買シェアの約6割を占めるのが、外国人投資家です。 外国人投資家とは、海外を拠点に活動する、ヘッジファンドを含めた短期売買の投資家や、欧米の年金基金・投資信託など長期運用を行う投資家を指します。 この外国人投資家は、企業が資本を使ってどれほど効率的に利益を出しているかを示す「自己資本利益率(ROE)」を重視する傾向にあると言われています。 日本の株価が上昇している一つの背景には、政府がコーポレートガバナンス強化を推進することで、日本企業のROEが上昇し、外国人投資家が日本に株式投資を積極化させていることがあるわけです。 ◆強化策に対する否定的な見方 しかし、そもそも「企業と投資家の交渉は、本来は市場メカニズムによって行われるべき」で、特にコードの導入は「経営者の手足を縛る内政干渉」であり、こうした一連の政策を「官製コーポレートガバナンス」であるとして、それを否定的に捉える向きもあります。 また、中長期的な経営の視点から見れば、例えば、多額で長期的な研究開発費を賄う方策として、株主からの調達に関しては、「ハイリスクな投資に否定的な株主が多い」のが現状であり、「ROEの低下要因である内部留保を使うことが現実的である」とする観点もあります(原丈人著『21世紀の国富論』参照)。 このような視点から見れば、政府によるコーポレートガバナンス強化策が、必ずしも中長期的な経済成長に寄与するとは限らないことがわかります。 ◆長期金融制度の必要性 日本は戦後復興時より、日本長期信用銀行などの長期金融機関が、高度経済成長を金融面でサポートしてきました。 今後、日本が長期的な成長を実現し、ゴールデン・エイジを実現していくにあたっては、株式市場の活性化も必要ですが、それだけではなく、国内での新たな長期金融制度の創設もまた必要であると考えます。 参考文献 小田切宏之著 2010 『企業経済学』 東洋経済新報社 原丈人著 2007『21世紀の国富論』 平凡社 出国税スタート――国家による強すぎる経済介入に要注意 2015.07.18 文/幸福実現党スタッフ 荒武 良子(あらたけ・りょうこ) ◆7月1日出国税スタート 7月1日から、国外転出時課税制度、いわゆる「出国税」が、スタートしました。 この税制度は、1億円以上の株等の有価証券を持ち、かつ、5年以上日本に居住した人が、海外に転出する際、実際に株等を売却していなくても、その株等の売買で得られることになる利益の15%の税金を納めなければいけないというものです。 租税条約上、こうした株等の利益への課税権は、株式等を売却した人が居住する国にあります。株式等保有者は、株等を売買した時に住んでいる国に、その国で決められている税額を納めることになっているのです。 現在、日本国内で、株等を売買した場合には、その利益には、20%の所得税が課税されます。一方、香港やシンガポールでは、日本と違い、株式等の売買に、課税はされていません。 富裕層が、日本から上記のような租税回避地へ移住してから資産を売ると、日本国内で売った場合に課税されるはずだった20%の所得税は課税されないこととなります。 日本で株を売ると利益の20%の税を納めることになりますが、香港やシンガポール等に転居してから売ると、税金を納めなくてよくなるのです。 しかし、この「出国税」は、日本から租税回避地に移住する前の出国の段階で、売買していない株式等のみなしの利益に対して、売買した場合に得られる利益にかかる所得税と同程度の税金がかかることとなります。 ◆過度の累進課税は統制経済につながる 今年1月より、所得税の最高税率は、40%から45%に、相続税も、50%から55%に上がっています。所得税は、所得が多い人ほど、高い税率となる累進課税です。 日本の財政では、所得税等によって高額所得者から多く税金を集め、低所得者へ、医療・年金などの社会保障を行う、所得の再分配が行われています。しかし、過度の累進課税は、結果として、経済の衰退を招きます。 財政における所得の再分配は、個人の私有財産を否定し、国が配給を行うという、共産主義下の経済に類似しています。資本主義を標榜する日本における、隠れた社会主義とも言えます。 実態を伴わない、行き過ぎた投機と、日本国外への過度の資産の流出は、控えるべきですが、強すぎる経済の管理は、国家権力の増大へとつながります。統制経済の代表的なものは、戦時下における配給制であることに留意すべきでしょう。 ◆減税による豊かな国づくりを 今回始まった出国税も、1億円以上の有価証券を持つ富裕層への課税強化であり、所得税等の累進課税と類似しています。 政府の介入による所得の再分配の機能も働いていると言えます。今回の出国税は、例えば、10%程度にしてはどうでしょうか。 また、高すぎる税率は、海外の富裕層が日本に住む機会の損失にもなります。特に大富豪は、税金の高いところから、税金の安いところへ移動していきます。 ユダヤやアラブの大富豪が、日本に住んでいると、世界情勢や戦争の原因になる行為が分かるため、高すぎる税率の回避は、国防上も大切なことです。 私有財産の否定とも取れる、国家の経済介入による管理型の経済は避けるべきです。 幸福実現党は、国家の介入による所得の再分配のための出国税には反対です。 高額の納税を避けるために海外へ移住する富裕層に、さらに出国前に徴税をかけるのではなく、各種税金を安くし、むしろ、海外の富裕層も日本に住めるような国にすべきです。 参考:『政治の理想について』大川隆法著/幸福の科学出版 『幸福実現党テーマ別政策集2 「減税」』大川裕太著/幸福実現党 今こそIoT市場の積極的拡大によって経済を活性化せよ! 2015.07.14 文/HS政経塾4期生 窪田真人 ◆IoTとは何か 昨今よく耳にするIoTという言葉、皆様ご存知でしょうか。 IoTとはInternet of Thingsの略語であり、モノのインターネットと言われているものです。 すなわち、私達の身の回りにあるモノにセンサーや制御機器を組み込んで、これをインターネットに繋いでネットワーク化することを意味します。 例えば自動車に搭載されたセンサーは、位置情報で現在位置を把握するだけではなく速度や進行方向、エンジンの回転数や温度、燃費など様々なデータをモニターしており、その情報をインターネットに繋げ監視する体制を築くことで、事前に故障の予兆を検知することができます。 このようにIoTは既に我々の生活に密接に関わり、存在しているのです。 ◆IoTで社会はどう変わるか それではIoTで社会はどう変わるのでしょうか?特に製造業の分野で大きな変革が起こると言われています。 製品設計、マーケティング、製造、アフターサービスなど、それぞれの工程において情報を集め、その情報を活かした活動を行い、加えてそうした活動のために、製品データの解析やセキュリティ確保といった業務活動の必要性が生じるため、バリューチェーン(商品がお客様に届くまでの間、どこでどれだけの価値が生み出されていくか)の在り方が変わります。 さらにはバリューチェーンの最適化が促され、生産性の向上が求められることになります。 その結果、IoTは「新たな産業革命」とまで称され、既存のビジネスモデルを大きく変えることになるのです。 予測として、インターネットに接続される機械やデバイスの数は、2015年で150億台、2020年には500億台を超えると言われており、市場規模は全世界で約365兆円にまで拡大すると言われています。 ◆ドイツのIoT戦略 IoTを自らの成長に取り込もうと、各社、各国は現在様々な取り組みを進めています。 特にドイツは官民一体となり、製造業のイノベーション政策として主導しているプロジェクト「Industrie 4.0」を通して、IoTにおける市場獲得を狙っています。 このプロジェクトは、工場を中心にインターネットを通じてあらゆるモノやサービスを連携することで、「ダイナミックセル生産」という生産方式を可能にすることを目指しています。 「ダイナミックセル生産」とは、生産工程の作業管理を行う生産管理システムをインターネットのネットワーク上に構築し、生産に関わるあらゆる情報にリアルタイムにアクセスできる体制を築くことで、最適な生産を行うものです。 具体的には、生産に必要な情報さえ提供すれば、多くのプレイヤーが生産活動に参加でき、顧客の要望に合わせて、製品ごとに異なる仕様、好みのデザインの商品を欲しいときに欲しい数量だけムダ無く作ることが可能になります。 こうした柔軟な生産体制の構築によって、ドイツは自国の製造業の優位性を担保しようとしているのです。 ただ、その実現のためには、工程管理、製造装置における「標準化」が大変重要なキーワードになります。 設計から生産に至るまでの一貫した生産工程を工程ごとに標準化し、求められる仕様に合わせて組み替えができるように対応する必要があり、柔軟で高度に統合された自律的な生産管理が求められます。 また製造装置は標準化プロセスの要となる要素であり、そのもの自体を世界標準とするために仕組みを提供していかなければなりません。 実際にドイツは工程管理、製造装置における「標準化」を進め、IoTにおける自国企業の競争優位性を担保することを目指しています。 ◆日本の現状ととるべきIoT戦略 こうしたドイツの動きに対し、日本はIoTに関する対応が後手に回っていると言わざるを得ません。 現状では、総務省がデータ活用による事業化について、ビッグデータのキーワードでIoTに取り組むよう、通信/IT業界へ推奨しているだけです。 その一方で、経済産業省はドイツをはじめとする他国のIoTへの取り組みが、自動車やハイテク、機械といった、日本がグローバルで強みを持つ産業競争力を下げる危険性があると考えています。 実際に、2014年12月に開催された『日本の「稼ぐ力」創出研究会(第8回)』(事務局:経済産業省 経済産業政策局 産業再生課)の説明資料には、その懸念として「我が国のAI・ビッグデータ産業は、グローバル・プレーヤーの一員となっていないのではないか」と記されています。 では日本はこれからIoTについてどのような手を打っていくべきなのでしょうか。考えられる戦略は以下の3つです。 (1)ドイツをはじめとする他国の標準化を受け入れ、その中でグローバル市場におけるシェア拡大を狙う (2)日本独自規格を作り、日本+アジアに展開して世界標準を目指す (3)業界・企業独自の技術を磨き上げて「技術と品質」でグローバル市場をリードする この中で私が進めるべきだと考える戦略は、(2)と(3)の融合です。 日本の最大の強みは、やはり自動車をはじめとするモノづくりにあるでしょう。 その優位性を担保するためには、一般化した技術については「標準化」を通し、他国を巻き込んだ生産体制を構築していくこと、その一方で、最先端の技術力、品質を生み出し続けることがグローバル市場における競争の源泉となるはずです。 IoTについて今日本がなすべきことは、自国の利益を確保しつつ、アジア、そして世界のリーダーとしての強い方針を打ち出し、日本独自規格を標準化し多くの国を巻き込んでいくこと、そして巨大な新生産体制を築いていくことなのです。 固定資産税制について考える【その2】 2015.07.08 文/HS政経塾第二期卒塾生 曽我周作 前回は、土地税制のうち固定資産税、特に建物固定資産税のあり方について、「応益税と言えるのか?」「投資を妨げる効果があるのでは?」という問題提起をさせていただきました。 固定資産税制について考える【その1】 http://hrp-newsfile.jp/2015/2223/ ◆担税力が反映されない建物固定資産税 現在、建物に対する固定資産税は「再建築価格」を課税標準としています。しかしこれも非常に問題を多く含んでいます。 まず、これでは「担税力」、つまり「税金を負担する能力」を反映できません。例えば、同じようなオフィスビルが東京都と、かたや田舎にあったとします。 当然、東京にあるオフィスビルの方が賃料も高くなりますので、東京のビルを所有する方が収益力は高く、従って担税力も高いということになります。 しかし、仕様の同じビルを東京と、田舎で建てるコストはそれほど大きな差はありません。当然土地の価格は全く違うでしょうが、建物の建築費用に通常は極端な差は出ないはずです。 単純に言えば、再建築価格が同じであれば、東京にあるビルも、田舎にあるビルも同様の固定資産税を課されることになります。 しかし、これでは収益性が反映できなくなってしまいます。 ◆固定資産税は「役所にとって」都合の良い安定財源 まず、この課税標準を「再建築価格」としていることは、行政サービスと関係しているとは言い難く、建物は行政サービスによって新築時よりも再建築価格の方が高くなることはないのではないでしょうか。 やはり、建物固定資産税を応益税とするのは無理があると思われます。 また、どれだけ景気が悪化するなどして、周辺の地価が下落しても、建物固定資産税は「再建築価格」によって課せられるため、地価の下落に応じて少なくなることもありません。 これは資産を持つ者にとっては不利であり、行政側にとっては有利な制度になります。なぜなら、行政のサービスが悪く地価が上がらない、または、下落したとしても、建物部分の固定資産税は変わらないわけですので、非常に安定した財源になります。 ◆税金をかけてよいのは「果実」の部分 幸福実現党の大川隆法総裁は『幸福維新』の中で、以下のように述べられています。 「今、この国では、『果実』でないものに、たくさん税金をかけています。それが経済活動を阻害しているのです。国を富ませるための根本を知らないからです。経済活動をしようとすると税金がかかるような税制になっています。これは、国を治めている人たちが勉強していないからです。税金をかけてよいのは『果実』だけなのです。」 つまり、経済活動の元手になるものへの税金はかけるべきではないと指摘されています。 特に企業にとって、建物固定資産税は経済活動を行っていく上での元手にかけられる税金であると言えるのではないでしょうか。 ◆償却資産に固定資産税を課税するのは間違いでは? さらに償却資産に対する税金も同様です。 GHQの要請によって1949年にカール・シャウプを団長とする日本税制使節団(シャウプ使節団)が日本の税制に関する報告書まとめました、これが日本の戦後の税制に大きな影響を与えました。 「シャウプ勧告」の第12章で課税標準をそれまでの賃貸価格から資産価格に新ためる勧告がなされ、その理由としては「本税(不動産税)を土地建物に限定しないで減価償却の可能なあらゆる事業資産に拡大するため」というものをあげています。 償却資産に対しても固定資産税が課されており、平成25年度で1.55兆円の課税(見込み額)がなされています。 しかし、この課税についても、単に大きな資産を持つことができるということに「担税力がある」とみなして課税しているにすぎず、建物固定資産税と同様、付加価値の元手に課する税金です。 そもそも、その所得や借入れによって手に入れた元手に税金を課する正当性はなく、本来そこから生み出された果実、つまり利益に対して課税がなされるべきです。 ◆固定資産税のあり方を変えていくべき 固定資産税は地方税の根幹をなすものでありますから、慎重に改革をすすめる必要があると思いますが、経済活動を阻害するような税金は無くしていく方向に進むべきであると思います。 政策研究大学院大学の福井秀夫氏が「建物に固定資産税を掛けると、どうしても投資を抑制してしまうわけです。保有税は、土地に掛けると有効利用のインセンティブになりますが、建物にかけると、建物に投資することが、その分だけ確実に不利になるわけです」と指摘しているように経済活動を阻害し、経済成長を妨げる圧力をかけてしまいます。 さらに、現在のような収益性が反映されない「建物の再建築価格」を課税標準とする税金のあり方にも問題があると言えるのではないでしょうか。 したがって、一定の移行期間を設ける必要があるかもしれませんが、固定資産税制の在り方は、役所にとって都合の良い制度であることを改め、大きく改革をしていかなければならないと思います。 次回は、固定資産税は「法律を作らずに増税されていた」ということを含めて、問題点を見ていきたいと思います。 すべてを表示する « Previous 1 … 40 41 42 43 44 … 78 Next »