Home/ 外交・国際政治 外交・国際政治 シリア問題にみる、米国の影響力低下と、ロシア外交の重要性 2013.09.02 ◆シリアへの軍事介入に見る米英のきしみ 8月27日、ブルネイで米国のヘーゲル国防長官がシリアへの軍事介入について、「われわれの準備は整っている」と述べ、早ければ29日にもミサイル攻撃がなされる可能性が報道されました。 シリアへの軍事攻撃開始は「秒読み段階」と見られ、日本でもマスコミ報道が活発化して来ました。 しかし、軍事行動を共にするとみられていたイギリスでは、8月29日、軍事介入についての是非を議会に諮ったところ、反対が多数となり、キャメロン首相が「国民の意見を反映した議会が、英国の軍事行動を望まないことは明らかだ。政府はこれに従って行動する」と述べ、軍事介入不参加を表明しました。(8/30 朝日夕刊) これに対して、オバマ米大統領が8月31日に軍事介入を決断したことを発表しましたが、これに先立ち、フランスのオランド大統領とは電話会談を行ったのに対して、英国のキャメロン首相は事前に連絡を受けていなかったと言われています。 また、英国キャメロン首相は議会の同意がなくても介入を決断することも可能だっただけに、オバマ大統領とキャメロン首相の信頼関係にも疑問符が残ります。 そもそも、「キャメロン首相は本気で軍事介入に参加する気があったのだろうか」という疑問の残るところであります。 ◆オバマ大統領のシリア攻撃先送りへの批判 しかし、オバマ大統領は8月31日に突如、「軍事介入について決断した」と述べると同時に「議会の承認を求める考え」を示しました。 軍事行動を共にするとみられていたイギリスが不参加を表明し、ロシアが強硬に軍事介入に反対する中、これまで「化学兵器の使用は許さない」と言い続けたオバマ大統領としては、米国のプレゼンス維持のためにも「軍事介入の決断はせざるを得ない」と考えたものと思われます。 しかし、イギリスと同様、軍事介入を行うためには、本来は議会の承認は必要ありませんが、オバマ大統領は、米国世論の半数が軍事介入に反対する中、「議会の承認による後押し」が必要だと考えたのでしょう。 また、化学兵器使用疑惑について調査した国連調査団の報告書が約2週間後に作成される見通しであり、9月5~6日にG20首脳会合がロシアで開催されることもあり、ロシア説得のための時間稼ぎが必要だと考えたのかもしれません。 ロシアは地中海に展開する艦艇を増強する見通しや、情報収集艦1隻を地中海に派遣した事が明らかになるなど、欧米への圧力を強めており、これは米国などに対して非常に大きな「抑止力」になっているものと思われます。 ロシアはシリアのアサド政権に対して対空ミサイルの輸出が指摘されているように、シリアの防空システムの能力向上はロシアの支援で行われてきており、アサド政権とロシアは友好関係にあるため、簡単にアサド政権転覆を許すとは考えられません。 このオバマ大統領の姿勢に対して、1日付シリア政府系紙アッサウラが「米国の歴史的後退の始まりと、世界の指導的立場からの撤退」を意味すると論評するなど、今回のオバマ大統領の決断が、今後の米国の影響力低下を決定的なものにしてしまうかもしれません。(9/1 産経「『米国の歴史的後退』シリア政府系紙が論評」) 米国内でも、オバマ氏の攻撃先送りの決断に対し、共和党のキング下院議員が「軍最高司令官としての責任放棄だ」と非難。民主党関係者も「大統領がこんなにふらふらしてはならない」と述べるなど、非難が高まっています。(9/2 共同「米、シリア攻撃先送り 土壇場の迷走 重圧感じたオバマ氏」) ◆米国の影響力低下を見据えた外交・国防の再構築を! 今後、日本としては、外交・国防を考える上で、オバマ大統領の姿勢と、ロシアの影響力については非常に参考になる事例になると考えられます。 今後、いかなる推移をたどるかは不明ですが、仮に米国議会の承認が得られず、オバマ大統領が軍事介入を断念するような事態になれば、「化学兵器を使用したアサド政権に対しても軍事介入を決断できなかった」ことになり、これはイランや北朝鮮、さらには中国に対するアメリカの「抑止力低下」を意味します。 そもそも、シリアに対しては限定的で短期間のミサイル攻撃が行われるものと見られ、アサド政権を終わらせるための軍事介入は否定されてきました。 これに対して、マケイン米上院議員らが「戦闘の流れを変え、アサド大統領を権力の座から降ろし、この紛争を終わらせるべきだ」という内容の声明を発表し、オバマ大統領の戦略が不十分だと指摘されてきました。 このように、オバマ大統領の「決断力」には非常に大きな懸念を感じざるを得ない状況の中、日本は独自の抑止力強化を急ぐべきです。 また今後、対北朝鮮や、対中国防衛を強化していくにあたり、ロシアが日米の側につくか、それとも中国や北朝鮮と連携するかは、戦略的に非常に大きな影響を及ぼします。 少なくとも「ロシアが日本や米国の敵にはならない」という状況を作っておかなければ、現在のシリア情勢を見る限り、「米国が日本を護ることをためらう」という状況になることが容易に予測されます。 日露外交を活発化し、日露友好を進めていくべきだと考えます。 今後のシリア情勢については、日本の安全保障を考える上でも重要であると考えますが、サリンなどの猛毒の化学兵器などでシリア国民の方々が苦しむ姿が連日報道されております。 一刻も早く、国際社会が団結し、事態が打開されることを願うばかりですが、日本としても、もう一段高い気概を持ち、「地球的正義とは何か」を考え、行動できる国へと成長しなければなりません。(文責・HS政経塾第二期生曽我周作) 進撃の帝国――中国の「戦略的辺疆論」の正体 2013.09.01 ◆「国境」と「辺疆」の違い 世界の国々には、国の境目に「国境線」という概念があります。 しかし、中国はそうした国際ルールを無視した「辺疆」(へんきょう)という概念があります。 「国境」は「境界線(border line)」ですが、中国の「辺疆」は「面(border area)」を意味します。 つまり、国防上、中央から遠く離れた「辺疆」(エリア)を中国の傘下、影響下におくことで、外敵から中央を守る。――これが中華帝国時代から続いて来た伝統的な考え方なのです。 また、「辺疆」の考え方には、国家としての総合力(政治力・経済力・軍事力)が強ければ、どこまでも拡大できるという意味があります。 すなわち、中国のパワーが強大になれば、影響を拡大して「辺疆」を自国の傘下に組み入れても良いと考えているのです。 ですから、中国は自由に国境線を越えて自国のパワーを拡大し、どんどん他国の領土に踏み込んで来ています。 モンゴル自治区、チベット自治区、新疆ウイグル自治区(「新疆」とは、新たに手に入れた「辺疆」という意味)も、この「辺疆」の考え方に基づいて中国のパワーがその地域を支配した結果です。 元防衛研究所研究室長の平松茂雄氏は「毛沢東の中国は、『グレーゾーン』である『辺疆』に居住する非漢民族の地域までも新中国の領土に組み入れて、かつての『中華世界』を再興する意図を建国当時から持っていた」と指摘しています。(平松茂雄著『中国は日本を併合する』講談社インターナショナル) この「辺疆」を海に展開させると、尖閣諸島で起きているように大量の公船を投入し、支配海域を拡張させる行為に繋がっていくのです。 ◆「戦略的辺疆論」とは何か 「辺疆」を現代戦争の戦略として進化させたものが「戦略的辺疆論」です。 これは1987年、三略研究院高級顧問の少将・徐光裕が中国軍機関誌に発表したものです。 「戦略的辺疆論」に基づいて、陸ではなく海に展開したのが下記の「海軍発展戦略」です。 【第一段階】2000~10年:「第一列島線」(鹿児島~沖縄~尖閣諸島~台湾~フィリピン~ボルネオを結ぶ線)の内部の制海権確保。つまり「南シナ海、東シナ海」を支配する。 【第二段階】2010~20年:「第二列島線」(伊豆諸島~小笠原諸島~グアム・サイパン~パプアニューギニアを結ぶ線)の内部の制海権確保。つまり「西太平洋」を支配する。 【第三段階】2020~40年:太平洋、インド洋で米軍と制海権を競う。つまり、南シナ海、東シナ海、そして西太平洋を段階的に「中国の海」にしていく戦略です。 現在、【第二段階】の西太平洋の支配の段階に入っています。 中国は2008年より、西太平洋上の沖ノ鳥島周辺海域で海軍の軍演習を行いましたが、その回数は年々増え、中国は今後、同海域での軍事演習を定例化すると発表しています。 こうして中国は、日本を含めた西太平洋を新たな「辺疆」にしようとしているのです。 こうした戦略を実現するために、数年内に西太平洋で中国空母艦隊の軍事演習が行われることは間違いありません。 これまで中国海軍の西太平洋進出は空母艦隊の陣形を取っていることから容易に予測できます。 ◆「中国艦艇の日本一周航海」の意味 先日のHRPニュースファイル「中国艦艇が日本一周航海――中国海軍の太平洋侵出と日本列島の危機」の中で、7月に中国の海軍艦艇が日本を一周する形で航行したことをお伝え致しました。⇒http://hrp-newsfile.jp/2013/888/ 6月の米中首脳会談で習近平は、オバマ米大統領に「太平洋には米中両大国を受け入れる十分な空間がある」と語りましたが、これは「中国とアメリカとで太平洋を分割して支配しよう」とアメリカに提案した形です。 その行動の手始めとして、中国艦艇が日本一周航海をすることによって、「尖閣・沖縄のみならず、太平洋側を含む日本列島は既に中国の支配ターゲットに入っている」ことを意思表示したわけです。 日本は、これまでも沖縄近海を航行し、西太平洋・沖ノ鳥島海域で行われた中国海軍の軍事演習を「公海上であり、問題がない」として、全く抗議すらしていません。 しかし、中国の「戦略的辺疆論」を知れば、日本が抗議しなければ、日本は暗黙の内に、中国の「辺疆」に組み入れられることを了承したと受け取られかねません。 日本の独立と尊厳を守り抜くためにも、安倍政権は中国の太平洋侵出に抗議すべきです。(文責・政務調査会 佐々木勝浩) 北極海航路開拓への挑戦と北の守りの強化を! 2013.08.31 ◆新たなるフロンティア、北極海航路 北極海の夏季の氷が年々薄くなっています。 アメリカ連邦政府は3~5年後の夏季には、北極海が全く氷結しなくなる可能性があるという予測をしてます。 現在は、北極海航路が利用できるのは7月から10月までの4ヶ月前後というのが定説ですが、古い氷が積み重なった多年氷に代わり、砕きやすい一年氷が増えれば、通年の航行も可能となるとも言われています。 これにより、アジアとヨーロッパを結ぶ最短ルートが注目を集めています。 こうした地政学的変化を受け、各国はロシア沿岸の北極海を横断する「北極海航路」の重要性を位置づけ直し、新たな戦略を作成しています。 ロシアのプーチン大統領は、北極海航路をスエズ運河に比肩する世界の大動脈に発展させる方針を示し、インフラ整備に力を入れるよう、2年前から関係当局に発破をかけています。 さらに、ロシアは原子力潜水艦の建造を急いでいます。北極海の海上アクセスを活用したロシアの北方艦隊強化の動きに警戒が必要です。 また、アメリカは「融氷した北極海における海軍作戦」の立案を急いでいるようです。 ◆日本にとっても重要な北極海航路 8月16日、ナフサ(粗製ガソリン)を積んでノルウェーを出発したタンカーが水島コンビナート(岡山県)に到着しました。実際にナフサタンカーが北極海を航海したのは初めてのことです。 スエズ運河を通る南回り航路では40日かかるところ北極海航路では25日程度で、日程を4割短縮しました。 運航コストにおいて砕氷船のチャーター料金は発生しますが、「スエズ運河の通航料や海賊対策の武装コストと変わらない」(旭化成ケミカルズ)とし、運航日数が短い分、2割程度安くなっています。(8/16 日経「北極海航路資源に『近道』旭化成など、北欧からナフサ 機動的調達可能に」) 現在使われている南回り航路には、不安定要素が数多く存在します。 ソマリア沖の海賊問題をはじめ、エネルギー輸入の大部分を頼る中東の不安定な政治情勢、中国の覇権拡張主義に脅かされる南シナ海、併合へのカウントダウンが始まろうとしている台湾近海などです。 ただ、日本は現在、原発を再稼働できないことから、石油や液化天然ガスなどほぼ全てのエネルギーをタンカーで輸入せざるをえません。 中国によるシーレーン封鎖などに対するリスク分散として、北極海航路の更なる活用は当然であり、ナフサのほか、液化天然ガス輸入も検討されています。 国としては国交省が昨年8月に北極航路の利用に向けた検討会を立ち上げましたが、諸外国と比べてあまりに後れを取っている状態です。 ◆東シナ海、南シナ海に続いて北極海を狙う中国 特に中国は、自国が「北極に近い国」であると称し、北極海での権益確保にかなり積極的に乗り出しています。 北極評議会(米・露・カナダ・デンマーク・ノルウェー・アイスランド・フィンランド・スウェーデンの北極圏に関して直接的な利害を得るとされている8カ国で構成)がOKを出した会議にしか参加できないアド・ホック・オブザーバーの立場であった中国は、オブザーバーの地位を狙って外交を展開。 例えば今年4月アイスランドとFTAを締結し、自国への輸出を前年の40%以上増加させ、友好国を増やす外交を展開。 その結果、今年5月に行われた北極評議会の会合で、カナダやロシアの強い反対にもかかわらず、中国は閣僚級会議以外のすべての会議に参加できるオブザーバーの地位を得ました(日本、韓国も同様)。 現在は、世界最大の砕氷観測船「雲龍」を保有。過去5回にわたり北極観測航海を行っている他、新たな砕氷観測船を建造中です。 また、ノルウェーに観測所を設けており、アイスランドにもオーロラ観測基地をつくる計画があり、相当の先行投資を行っています。 東シナ海、南シナ海に続き、世界の未発見のガスが30%、原油が13%眠るとされる北極海を手に入れるため、着々と計画を進めているのです。 ◆今後、熱くなる北極海航路に伴う守りを十分にせよ 一方で日本には中国、韓国が持っている砕氷船すらまだありません。今後は、砕氷船の建造・取得と共に、北極海航行用船舶の整備や専門技術を持つ船員の育成の課題なども出てきます。 また、北極海航路の利用が増えるにしたがって必要となるハブ港に、中国の大連港や韓国の釜山港が名乗りを上げていますが、本来であれば、北東アジアで一番北極海航路に近い位置の日本の苫小牧港がその役割を果たすべきです。 更には「北のシーレーン」防衛の問題が発生します。中国は20年には海上貨物の最大15%を北極海経由にする計画を持つとされています。 今年7月、中国海軍の艦艇5隻が宗谷海峡を通過したのが初めて確認されましたが、宗谷海峡は中国が海運拠点として有望視する北朝鮮の豆満江(とまんこう)から北極海に向かう「北のシーレーン」上にあります。 「北極海航路の重要性が増すにつれ、日本北方海域での各国海軍の動きはますます活発になる」と日本の防衛省関係者は指摘しています。(8/28 日経「『航路の利用進む北極海』=軍事機密、共通海図阻む=」) 中国は今後日本の宗谷海峡、加えて北極海への最短ルートである津軽海峡を頻繁に通過するようになるでしょう。津軽海峡の真ん中は、現在、公海となっています。 公海を通行しても日本が何もしてこないということを知っている中国が、この海峡を重要かつ脆弱なポイントとして認識していることは明らかです。 日本は今後、これら公海を含む海峡の定義の見直しと管理を強化し、中国を牽制しつつ国防を強化すると共に、新たなフロンティアである北極海航路開拓に向けて、積極的に打って出る必要があります。(文責・湊 侑子) 中国の宇宙・サイバー戦略を分析する 2013.08.29 本日は、中国人民解放軍が発行する「解放軍報」という新聞から、中国の宇宙・サイバー戦略について分析を試みてみたいと思います。 この新聞には軍区における演習の状況や党・軍の重要人物の発言などが掲載されている他、「軍事論壇」という紙面が構成されることがあります。8月は6日、13日、20日、27日付で掲載されました。 一つの国家が将来の軍事力を整備する上では、将来どのような脅威に直面するかを予想しなければなりません。 「軍事論壇」では、中国が将来的に直面すると予想される戦争を「未来戦争」と定義し、そのあり方が議論されています。 解放軍が将来の戦争を想定するにあたって何を参考とし、どのような準備をしているかを知ることは、我が国の国防を考える上でも、大変重要だと考えます。 ◆サイバー空間での軍事的優位を確立するための宇宙進出 まず最初に、宇宙開発を取り上げます。 2013年6月、中国は有人宇宙船神舟10号を打ち上げ、宇宙ステーション「天宮1号」とのドッキングを成功させています。宇宙開発は、中国の軍事戦略において重要な位置を占めています。 8月20日付の「軍事論壇」の記事では、「空・宇宙の情報系統を確保する事が、局地戦争の勝利のカギ」であり、特に「サイバー空間での優位を確保する事は、現実での戦闘を有利に進め、戦場での主導権を握るために極めて重要」といった指摘が見られます。(8/20『解放軍報』「戦法創新的“空間”有多大」) この記事から、中国の宇宙開発が「サイバー空間における優位性の獲得」という軍事戦略と一体となっている事実が伺われます。 さらに同記事では、制海権、制空権という用語と並んで「制天権」という言葉が用いられ、「より上層の空間を制する力を獲得すること」の必要性が説かれています。 このことから、解放軍は「宇宙空間を軍事的に支配する能力」を獲得することをも視野に入れていると見るべきでしょう。 ◆サイバー空間も「辺疆」として定義された 次に、中国のサイバー戦略観です。 宇宙開発によってサイバー優位を実現しようとする解放軍ですが、驚くべきことに、彼らはサイバー空間を「無形の辺疆」として位置付けているのです。(8/6『解放軍報』「無形辺疆重在建」) 「ネットの安全は、既に『辺疆』を形成している」――これは8月6日に発行された「解放軍報」の「軍事論壇」に掲載された記事の冒頭部分です。 「辺疆」とは、国防上、他国からの侵略に対して「緩衝地帯」を形成する重要な地域を指す用語であり、陸地ではチベット、ウイグル、モンゴルが該当し、海洋においては第一列島線・第二列島線の内側が該当します。 中国はこれらの地域における軍事的・政治的な支配力を確保し、その伸長を目指しているのです。 ◆サイバー攻撃と物理的攻撃を同等とみなす解放軍 8/6付の記事では、「サイバー空間の主権意識を強烈に喚起しなければいけない」という記述がみられるほか、「主権国家に対するサイバー攻撃は、ミサイルなどの物理的な攻撃と同じである」との主張が見られ、サイバー攻撃に対しては自衛権を発動する可能性があることを示唆しています。 サイバー空間そのものを国家主権の及ぶ「辺疆」とみなしているという中国の実態について、私たち日本国民は十分な情報を与えられていないのではないでしょうか。 ◆国際政治を理解するためにも、軍事の知識は必要 その一方で、中国はサイバー空間において「公正、民主、透明な国際規制」による「安全、解放、協力の空間秩序」の樹立をも主張しています。 これは一見もっともらしい主張に聞こえますが、これを字義通りに受け取ってはいけません。 あくまで、中国の本心は「辺疆」としてのサイバー空間の支配拡大であり、サイバー空間で強い力を持つ米国に足枷をはめることにあります。 我が国の一部のメディアには、軍事を扱うこと自体を忌避する傾向がありますが、国際政治を理解するためにも、「教養の一部」として、軍事に関わる最低限の情報を知ることは必要であると考えます。(文責・HS政経塾第一期生 彦川太志) 中国が沖縄に仕掛ける「超限戦」の正体 2013.08.26 ◆中国が沖縄に仕掛ける「超限戦」 「超限戦」(ちょうげんせん)とは、1999年に中国軍大佐・喬良と王湘穂が発表した新しい形態の戦争です。 具体的には、弾が飛び交う「通常戦」のみならず、「情報戦」「心理戦」「思想戦」等に重きを置き、戦時と平時との区別がないことが特徴です。 「超限戦」が仕掛ける戦争には25種類にも及ぶ戦闘方法があり、諜報戦、外交戦、法律戦、経済・金融戦から、メディア戦、文化・映画・芸術によるプロパガンダ、対人工作(買収、脅迫、ハニートラップ、スキャンダル等)、サイバー戦、テロに至るまで、あらゆる分野に亘っています。 中国が「歴史認識」で、韓国やアメリカを巻き込んで、日本包囲網を形成しているのも「超限戦」の一種です。 いわば、孫子の兵法「戦わずして勝つ」を地で行く戦い方です。 例えば、左翼マスコミや日教組等を使った「反日・反米・親中」世論誘導や、経済的利益や外交、観光等を通じた、日本の政治家、企業等のコントロールなど、既に日本国民の日常生活レベルに達しています。 今回は、「超限戦」を使った、中国による「沖縄自治区化」の実態を紹介致します。 ◆日本本土と沖縄の分断 「沖縄自治区化」に向けた具体的戦略の第一は、「日本本土と沖縄の分断」です。 中国共産党中央委員会の機関紙『人民日報』の国際版である「環球時報」は、2010年11月、「1945年の終戦間際に日本軍は沖縄県民の皆殺しを命じ、米軍占領の直前に26万人を殺し、虐殺の規模は南京大虐殺に次ぐものとなった」「今沖繩では琉球独立運動が激化し、中国はそれを支援するべきである」と主張。 そして2011年、中国に「琉球自治区設立準備委員会」が設立されました。(2011/3/3 産経「中国画策、沖縄を琉球自治区に」) その流れを汲み、今年5月15日、沖縄に「琉球独立学会」が設立されました。(詳細:HRPニュースファイル「中国が『琉球(沖縄)は中国の属国』と主張」⇒http://hrp-newsfile.jp/2013/720/) また、中国は沖縄マスコミや左翼団体を使って、沖縄県民に「反日」「反米」を植え付け、「沖縄独立」「反米・米軍基地撤去」の県民世論を形成しています。 そして、反日感情を煽って沖縄を日本から切り離し、「道州制」導入後は「沖縄州」として独立させ、「地域主権」によって、米軍基地を追い出そうとしているのです。 そうなれば、チベットのように、中国は軍隊を含む漢民族の大量流入を“友好理に”進め、戦わずして「自治区化」を進めることができます。 ◆沖縄の心理的属国化 さらに、第二には「沖縄の心理的属国化」が進められています。 昨年10月28日、首里城祭で「琉球王国絵巻行列」仮装パレートが那覇市の国際通りで行われました。 そこでは、沖縄県民が「琉球の国王」「琉球の皇后」に扮し、中国皇帝の使者「冊封使」を歓迎する様子が演じられました。(10/29 中国網「沖縄で『首里城祭』開催中国皇帝の使者『冊封使』を歓迎」) この模様は日本全国のテレビでも報道され、観光を通じて、沖縄県民や日本国民に「沖縄は中国の冊封国(属国)であった」ことを刷り込む意図があります。 また現在、那覇市に新たな観光資源として中国王朝のシンボルである15メートルの巨大「龍柱」を2本建立する計画が持ち上がっています。(7/2 琉球新報「『龍柱』設置に2.5億円 那覇市議、効果を疑問視」) これが完成すれば、沖縄に観光に来た旅行者や沖縄県民は「龍柱」を見る度に、「沖縄は中国の一部だった」と洗脳することができます。 「龍柱」の工事は「一括交付金」という日本国民の血税2.5億円を使い、中国に発注され、早ければ今年9月にも着工する予定となっています。 ちなみに那覇市と福州市は、友好都市提携を結んでおり、友好20周年の2001年、那覇市長の翁長雄志氏を団長とする一行約160人が福州市へ訪問、交流祝賀会に参加しています。 翁長雄志氏は、中国・福州市から栄誉市民賞を授与されており、「親中派議員」として知られています。 那覇市の「龍柱」建設計画は、「心理面での属国化計画」の一環として、沖縄の中国属国化の道に繋がるものであり、大量の税金を使った「龍柱」建設計画は見直されるべきです。 沖縄を中国から守るためにも、多くの日本国民、沖縄県民の皆様に、この事実を知って頂きたいと願います。(文責・政務調査会・佐々木勝浩) 戦略的外交で、歴史問題に隠された中国の反日謀略から日本を救え! 2013.08.23 ◆歴史問題で窮地に追い込まれた安倍政権 8月15日の終戦記念日から一週間が過ぎました。 靖国神社参拝を早々に取りやめた安倍首相には本当にがっかりしました。 自民党議員から聞いた話では、安倍首相の靖国参拝中止の背景には、オバマ政権からの圧力があったようです。 韓国からは戦時徴用訴訟を起こされ、中国からは沖縄は中国のものだと言われ、同盟国であるアメリカからも靖国参拝について圧力をかけられる始末です。 「戦後レジームからの脱却を!」と意気込んで出発した安倍首相でしたが、もはや窮地に追い込まれ、しっぽを巻いて逃げ回っている有様です。 ◆「歴史を失った民族は滅ぶ」 歴史問題については、中国や韓国、アメリカが悪いというより、河野・村山談話によって「日本は侵略国家であった」と認めた日本政府と外務省の方針そのものが根本的に間違っていると言えます。 この歴史問題の裏には「日米同盟を破棄させ、アジアの覇権を握ろう」という戦略で、意図的に反日運動を行っている国があるのです。 日本政府は捏造された「歴史」を政治利用され、非難され、謝罪することを繰り返しています。 「歴史を失った民族は滅ぶ」と言われていますが、日本は今、危機に直面しています。この事実にどれだけの国民、政治家が気づいているのでしょうか。 ◆中国による国際的な反日活動 中国共産党は、1994年に江沢民の下で、反日教育を徹底させる「愛国主義教育実施要網」を定めました。 それと同時に、南京事件と慰安婦問題を使って、「日本が他国に侵略し、ホロコースト(大虐殺)をした」という反日キャンペーンを全世界に向けて進めることを決めました。 そして、中国政府は「世界抗日史実維護連合会」(略称、「世界抗日連合」)という国際的な反日活動団体を結成したのです。 「世界抗日連合」は、主要30か国以上の中国系、韓国系、日系団体が結集し、世界中で活動しています。 彼らは「慰安婦問題と南京事件は、日本が起こしたホロコーストであるにもかかわらず、日本は戦後も謝罪せずに隠蔽してきた。だから日本はアジアから信頼されていない。 日本の戦争責任の隠蔽工作に加担したのが、サンフランシスコ講和条約であり、日本に再び謝罪と賠償をさせるために、戦争賠償問題を決着済みにしたサンフランシスコ講和条約体制を全面的に見直すべきだ」と主張しています。 その中国の謀略に、韓国の慰安婦問題グループやロビー団体などが加わり、アメリカでの慰安婦像の設置や、ニューヨーク州下院で「慰安婦制度を非難する決議案」の採択へと繋がっていったのです。 そして、「ホロコーストを隠蔽し、謝罪しない日本は国連常任理事国になる資格はなく、侵略と大虐殺を反省しない日本が軍事力を持てば、軍国主義化し、アジアの平和を脅かすことになる。 だから、絶対に日本に軍事力を持たせてはならないし、憲法9条を永遠に守らせるべきだ」という政治的なメッセージを世界中に発信し続けているのです。 まさに、日米同盟を破棄させ、中国がアジアで覇権を握るための謀略としか言えません。 しかし、「嘘も100回つけば本当になる」という言葉を地でいく中国共産党のプロパガンダを真に受け止める人たちが、アメリカの政権内部、大手シンクタンク、マスコミの中にいるのです。 中国共産党の工作が巧妙なのは、目的のために敵対勢力とも手を結ぶということです。 考え方が近いはずの左翼団体とは手を組まずに、「日本は、ファシズム国家と戦ったアメリカの正義を歪め、原爆投下が戦争の終結を早めたという正しい歴史を覆そうとしている」とし、アメリカの反共勢力や保守派と手を組んだのです。 日本でも、中国共産党が対日工作の最大のターゲットにしたのは、日本共産党や旧社会党でだけではなく、自民党だったのです。 ◆「信念なき外交」の罪 「事なかれ主義」で国益より自分たちの利益を追求するあまり、日本が置かれている立場が見えず、何を為すべきかを決断できない日本の「信念なき外交」を、根本から修復すべきです。 そのために、「敵を減らし、味方を増やす」という外交の鉄則に立ち戻るべきです。 日本は米中韓など、世界中から歴史問題で非難され続けているように見えますが、その本質は、中国共産党が政治的意図を持って、1980年代から始めた反日運動に影響を受け、韓国やアメリカに広がっているのです。 つまり、明確な敵は「中国共産党」であり、日本の「信念なき外交」の弱さなのです。 日本政府が中国の反日攻撃に対抗するためには、「過去」で戦うのではなく、「現在進行形」の人権問題に対して、徹底的な攻撃を行うべきです。 「自由と民主主義の国である日本は、普遍的な人権を重視する立場である。中国が現在、チベットやウイグルで行っていることこそ非人道的なホロコーストであり、侵略行為である。 日本はそれを絶対に見過ごすことはできない」というメッセージを、反日運動に対する反論と共に、世界に向けて発信すべきです。 また、第二次世界大戦において、日本軍の戦いが多くのアジア諸国の独立のきっかけになったという事実を、親日国である台湾やインド等の協力を得ながら、積極的にPRしていく必要があります。 ◆日本政府は「戦略的外交」を展開せよ! 更に多くの国々を味方にするためには、国際社会において、日本の存在感を高める必要があります。 日本の強い発言力と各国からの信頼を得るためにも、経済協力だけでなく、TPP参加を積極的に推し進め、「中国包囲網」を構築すべきです。 そして、何よりも自国の「こういう国でありたい」という信念が最も重要です。 そのために、幸福実現党は、河野・村山談話を無効として自虐史観を排し、TPP参加を積極的に推し進め、日本を世界のリーダー国家へと導いて参ります。(HS政経塾第二期生 服部 聖巳) < 主要参考文献> (1)西岡力、江崎道朗著「反日国際ネットワークの新たなる策略」『正論』2013年5月号 (2)島田洋一著「アメリカにおける日中情報戦の最前線」『正論』2013年5月号 (3)櫻井よしこ著「日本よ、『歴史力』を磨け」文春文庫 (4)金子将史、北野充編著「パブリック・ディプロマシー『世論の時代』の外交戦略」PHP研究所 (5)外務省HP「歴史問題Q&A」 中国共産党の「自由の弾圧」を許すな!(2)――中国の宗教弾圧の実例 2013.08.20 ◆中国の宗教弾圧の実例 アメリカ国務省の昨年の調査によると、中国の人権状況は悪化し続けているとのことです。 「宗教はアヘン」だと喧伝する唯物論国家・中国において、特にひどい人権弾圧は「宗教弾圧」です。 10年ほど前、中国の「法輪功」という宗教と気功を合わせたような団体組織が弾圧された事件がありました。 「法輪功」が急成長し、共産党員以上に人数が増えたため、共産党を揺るがす勢力になるのではないかと恐れた中国政府が大弾圧を行ったからです。 捕まった法輪功信者は数万人に及ぶとされ、沢山の方々が迫害により死亡し、現在は中国国内で「法輪功」は一切禁止されています。 恐ろしいのは、「臓器狩り」の疑いが持たれていることです。 国際人権団体の詳しい調査が行われた結果、「法輪功の学習者から臓器を摘出し、臓器移植に利用している」ことが明らかになりました。 これは『血まみれの臓器狩り(Bloody Harvest: The Killing of Falun Gong for Their Organs)』としてカナダで出版され、世界44カ国で発表されています。 この報告を受けて、国連のマンフレッド・ノーワック国際連合拷問特別調査官が、2005年に中国で調査を行っています。 その報告書には下記の通り、記されています。(2009/8/13 大紀元「国連拷問特別調査官:生体臓器狩り、今も中国で…」より⇒http://www.epochtimes.jp/jp/2009/08/html/d61170.html) ・法輪功学習者たちは、心不全を起こす薬物を注射され、臓器を摘出されている間あるいはその後に殺害される。 ・明らかに、中国国内の病院の臓器移植手術件数は、1999年から急激に上昇している。しかし、その数に相当するドナーや死刑囚は存在しない。 ・強制労働収容所に監禁されている人の大多数は法輪功学習者であり、彼らは裁判を受ける権利も与えられない。 ・法輪功学習者は、拷問被害者の約3分の2を占め、ノーワック氏が中国を出てからも、全く状況は好転していない。 ◆民主的で自由な国へ 習近平体制の下、中国当局は北京や上海の大学に対し、「自由」「人権」「報道の自由」「共産党の歴史的な誤り」など「七つの禁句」を授業で教えてはならないとする指示を出しました。(5/11 共同「中国当局『報道の自由』教えるな 大学に指示」) しかし、抑圧され、弾圧され、苦しむ中国の人々の解放のためにこそ、中国政府は、この「7つのこと」を実行すべきです。 中国13億人の人たちが、言論・報道の自由、表現の自由、信教の自由がないままに置かれているのは、やはりおかしいと思います。 政府の批判を一言も言えないような国、自由な信仰が禁じられている国、知りたい事実を知ることができない国――これは国民にとって不幸です。 中国は「反日教育」を通じて、日本人の非道さを自国民に洗脳することで、中国共産党自身への批判の矛先をかわそうとしています。 そして、「南京大虐殺」を捏造して騒ぎ立てたり、靖国参拝に内政干渉したりしています。 しかし、中国から「戦争中に悪いことをした」「謝罪せよ!」と言われっぱなしではなく、日本は「中国こそ、もっと民主的な国になるべきである」と正論を返すべきです。 ◆日本よ、誇りを取り戻せ! そのためにも、日本人はもっと、日本という国に「自信」と「誇り」を持つべきです。その第一歩が「憲法9条改正」です。 「自分の国は自分で守る」という当たり前のことが、自主自立した国家の条件だからです。そして最終的には「自主憲法制定」までいかねばなりません。 そして、日本は「アジアのリーダー」として立ち上がり、中国の民主化、自由化、繁栄を支援すべきです。(文責・岐阜県本部副代表 河田成治) 韓国、戦時徴用で日本企業に賠償命令――日本政府は日本企業を守れ! 2013.08.19 ◆韓国高裁、戦時徴用で新日鉄住金に賠償命令 7月10日、朝鮮半島の植民地時代に日本の製鉄所で強制労働させられたとする韓国人4人が新日鉄住金に損害賠償を求めた訴訟で、ソウル高裁は請求通り1人当たり1億ウォン(約880万円)を支払うよう命じる原告勝訴の判決を言い渡しました。(7/11 産経) 新日鉄住金側は「国家間の正式な合意である1965年の日韓請求権協定を否定する不当判決で誠に遺憾だ」として、韓国最高裁に上告しましたが、最高裁で判決が覆される可能性は厳しいものと見られています。 最高裁で敗訴が確定した場合、同社側が賠償を拒否すれば、同社の韓国内の資産(同社の保有株式、債権、知的財産権等)の差し押さえがなされる可能性があります。 同社幹部は差し押さえられると、多くの取り引き先に迷惑をかけるため、賠償に応じる意向を示しています。(8/18 産経「新日鉄住金、韓国の戦時徴用訴訟で賠償の意向 敗訴確定時『無視できぬ』」) ◆日韓の戦後補償問題は「完全かつ最終的に解決」されている 日本と韓国との間の戦後補償については、1965年に「日韓基本条約」と共に締結された「日韓請求協定」において、次のように記されています。 ・「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が《中略》完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。」 日本政府は同協定を締結する見返りに、朝鮮に投資した資本及び日本人の個別財産の一切を放棄すると共に、韓国に対して、無償3億ドル、有償2億ドル、民間借款3億ドル以上もの支援を行っています。 この支援は、当時の韓国の国家予算(約3.5億ドル)の数倍に匹敵する規模で、それによって韓国は、朴槿恵 現大統領の父親である朴正煕元大統領時代、「漢江(ハンガン)の奇跡」と呼ばれる驚異的な高度経済成長を成し遂げました。 協定締結後、日韓両政府は、戦後補償について、「完全かつ最終的に解決された」という立場を堅持しています。元徴用工の賠償請求権問題についても、日本政府は一貫して「解決済み」との立場を取って来ました。 今回の判決は「協定」を根底から覆すものであり、新日鉄住金の法務担当者は、ソウル高裁の判決を受けて、「(韓国は)本当に法治国家なのか…」と落胆を隠せない様子です。(8/18 産経「戦時徴用訴訟『韓国は法治国家なのか』 政府静観、苦渋の決断」) 8月18日の産経新聞で、現代史家の秦郁彦氏が「協定上、賠償金を支払う義務は全くない。日本政府は経済政策の中で揺さぶりをかけ、韓国内での問題解決を迫るべきだ」と述べている通り、日韓の間の賠償問題は解決済みであり、仮に個人への賠償を認めるのであれば、韓国政府が「国内問題」として責任を負うべきです。 ◆新日鉄住金は賠償に応じるべきではない! 同社の前身である日本製鉄に「強制動員」された韓国の労働者は名簿上3900人に上っており、内、約180人が提訴の意思を示しています。今回の判決を受け、今後、更に訴訟の動きが活発化することは避けられません。(7/22 夕刊フジ「虫が良すぎる韓国!戦時徴用で日本企業に賠償支払い命令 一方で投資呼びかけ」) 現在、新日鉄住金の他、三菱重工業や不二越鋼材工業等、5社に対しても同様の訴訟が起こされており、更に、三菱、三井、住友など旧財閥系をはじめとした約200社の日本企業も訴訟対象として名前が上がっています。(同上) 新日鉄住金が「事なかれ主義」で安易に賠償に応じれば、それが「悪しき前例」となって、協定を無視して、在韓の日本企業が次々と標的にされるのみならず、中国の日本企業に対しても同種の賠償請求が飛び火する恐れもあります。 ジャーナリストの室谷克実氏は「新日鉄住金としては賠償金の約3500万円は大した金額ではないだろうが、日本の外交方針に完全に反する。暴力団にみかじめ料を払う商店と同じ」だと警告しています。国際ルールを無視する韓国政府に対して、断じて妥協すべきではありません。(8/19 夕刊フジ「新日鉄住金、無法国家・韓国に苦悩 賠償金支払いならみかじめ料と同じ」) ◆日本政府は毅然として、日本企業を守れ! この件について、日本政府は「『賠償の必要はない』という認識で国と企業は一致していると考えている。訴訟は係属中で、判決確定や資産差し押さえ後の対応について、仮定の話はできない」と「静観」の構えを示しています。 しかし、これは単なる個人対企業の訴訟問題ではなく、「日韓請求権協定」を反故するに等しい、重大かつ悪質な「外交問題」です。 日本政府は訴訟の対応を一企業に丸投げするのではなく、協定を踏みにじる韓国政府に対して、毅然たる抗議と外交交渉を行い、日本企業を守り抜くべきです。 万が一、韓国が「日韓請求権協定」を破棄する行為を選択するのであれば、日本政府は「日韓請求権協定」に伴って行った無償供与3億ドルの返還、並びに、同協定に伴って放棄した日本人の在韓資産の返還を要求すべきです。(文責・政務調査会 黒川白雲) 慰安婦問題のアメリカの現状と韓国側の戦略 2013.08.11 ◆慰安婦問題のアメリカでの現状 幸福実現党外務局長の及川幸久です。いわゆる「従軍慰安婦問題」は、日韓問題ではなく、広く国際問題として展開しています。 7月30日、米カリフォルニア州グレンデール市で慰安婦像の除幕式が行われたことは、日本でも報道されました。(7/31 産経「慰安婦記念像、米グレンデール市で設置 日系市民の反対の声届かず」) 現地では、ロサンゼルス・タイムスが一面トップ記事として扱いました。 それまで小さな地方紙の記事にしかならなかったアメリカで、この問題がアメリカ第四の大新聞によって、一気に知られるようになりました。 そして、その論調は明らかに韓国側を支援するものになっています。 「慰安婦の碑」がアメリカに最初に建てられたのは、2010年にニュージャージー州パリセイズ・パーク市のものです。二つ目の石碑は、2012年、ニューヨーク州ナッソー郡に建てられました。 グレンデール市の銅像に続いて、現在筆者が確認できている限り、カリフォルニア州ブエナパーク市とアーバイン市で同様の像設置が市議会で議論されています。 ◆なぜ今、アメリカで慰安婦像設置なのか? アメリカで慰安婦像設置が広がる原因となった事件がありました。 最初の「慰安婦の碑」がニュージャージー州に設置された後、在ニューヨーク日本総領事館の廣木重之・総領事が突如、現地市長と面会し、日本から桜の木の寄贈や図書館への本の寄付などを提示し、その見返りに「慰安婦の碑」の撤去を求めたのです。 お金で解決するという日本の外務省のやり方が、在米韓国人社会の怒りを買い、今や全米での慰安婦像の設置運動になったのです。 つまり、火をつけたのは日本政府でした。 そもそもアメリカの公共施設に韓国の慰安婦像が建つのは異例であり、地元自治体の認可を取るのは困難のはずです。ところが、地元の市議会が賛成側に廻ったことで実現しています。 その背景には、慰安婦像ができた市はどこも韓国系人口が急増していて、地元政治家が選挙のための新たな票田として利用する目的があるのが明らかです。 人口20万のグレンデール市で韓国系は1万人、最初の慰安婦の碑ができたパリセイズ市は実に人口の半分が韓国系です。市議会議員、市長に韓国系がいるところもあります。 ◆韓国系の戦略とは? かつて中国の江沢民主席は、「日本を歴史認識の問題で永遠に封じ込める」と語りました。 この中国の基本戦略に韓国が乗っかっている形です。 筆者が今年6月にニューヨーク州の慰安婦の碑を建てた韓国系団体KAPACの代表、デビッド・リー氏と会談した際に、日本政府による慰安婦の強制連行の証拠はないことを主張しました。 ところが、リー氏は「あなたが言うような日本政府による強制連行があったかどうかの議論は既に終わっている。日本政府の罪を認めたのは、韓国でも中国でもなく、日本政府自身が『河野談話』ではないか」と指摘しました。 1993年に外務省が慰安婦問題の調査を行い、その結果を河野洋平官房長官(当時)が語った「河野談話」は、日本政府による強制連行の証拠がなかったにもかかわらず、その罪を認め、謝罪しています。 また、2007年にアメリカ下院議会で、この問題による「対日謝罪要求決議」が決まっていますが、その根拠も「河野談話」だったのです。 ニューヨーク州でもカリフォルニア州でも韓国系団体は、強制連行の証拠の議論は避け、必ず「河野談話」を持ち出します。ここに韓国側の戦略が明らかに見えてきます。 デビッド・リー氏は、「我々はイスラエル・ロビーから支援を受けている」と漏らしていました。 イスラエルは、先の大戦でドイツ政府をナチスドイツによるユダヤ人大量虐殺、ホロコーストの罪で謝罪に追い込んだ実績があります。 そのノウハウを今度は、慰安婦問題で日本に当てはめようとしているのです。 グレンデール市での慰安婦像除幕式で、安倍総理の写真にナチスの鍵十字のマークをつけた写真を掲げていたのは、この問題を「もう一つのホロコースト」として、人類の歴史に永遠に刻み込むためです。 それだけではなく、アメリカの学校教科書にこの問題を載せて、人類史に永遠に残そうとしています。事態は江沢民が描いた戦略通りに進んでいます。 ◆即刻、「河野談話」を破棄せよ 全ての証拠と論拠が「河野談話」にあるのであれば、まず、「河野談話」、そして「村山談話」を日本政府が自ら破棄する必要があります。 現在、「河野談話」は外務省のホームページに日本政府の公式見解として日本語と英語で掲載されています。(外務省「Statement by the Chief Cabinet Secretary Yohei Kono on the result of the study on the issue of comfort women」) 一国の政府が公式に認めたものはそう簡単に覆せないのは国際社会の常識です。日本政府、総理大臣が勇気を持って白紙撤回することが、この問題解決の絶対条件です。 さらに、日本は歴史の真実をアメリカ、そして全世界に正しく発信しなければなりません。韓国側の発信量に比べて、日本からの主張はほとんどありません。 国際社会では何も言わないのは認めたことになります。しかし、「河野談話」を掲げている外務省には期待できません。 官民問わず、真実によって国際社会を納得させる活動を展開するべきです。 その際に、絶対に「謝罪」をしてはいけません。「謝罪」ではなく、「真実を語る勇気」を持つことが、世界の中で「日本の誇り」を取り戻す道に通じるのです。(幸福実現党外務局長 及川幸久) 高まる集団的自衛権「行使容認」への期待――「国防強化」待ったなし! 2013.08.09 ◆内閣法制局長官に、集団的自衛権の行使容認派を登用 今月8日、次期内閣法制局長官に、集団的自衛権の行使容認に積極的な姿勢を持つ小松一郎駐仏大使を登用する人事が閣議で了承されました。 内閣を補佐する「法の番人」に、集団的自衛権の行使容認派を登用することで、従来より幅の広い防衛協力を米国等と結ぶ可能性が開けてきたと言えます。 小松氏が内閣法制局長官に登用されることで、この国の国防はどのような方向に強化されようとしているのでしょうか? 首相官邸HPで公開されている政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」の議事要旨(2/8付)を読むと、政府の目指す方向性が見えてきます。 ◆従来より幅広い防衛協力を提言する安保法制懇 (1)集団的自衛権の行使容認 安保法制懇の議事要旨によれば、「憲法の弾力的解釈を可能にすべき」として集団的自衛権の行使容認が提言されるだけでなく、さらに踏み込んで、自衛隊が自国民だけでなく、「他国民の生命・身体」をも守ることができるよう、政府答弁を変更すべきだという意見も飛び出ています。 さらに、米国のみならず、その他の国に対しても「集団的自衛権」を行使できるよう求める意見も出ています。 (2)対中防衛を睨んだ自衛権発動パターンの検討 また、自衛権を発動する要件として、従来の4類型(※)に加えて、(1)シーレーン防衛、(2)サイバー防衛、(3)宇宙分野といった新しい類型が提示されています。 これら3つの新類型は、そのまま中国が行っている「海洋、サイバー空間、宇宙」での軍事拡張に対応するものであることがわかります。 これらの事実から、固有名詞こそ登場しないものの、安保法制懇の提言は、中国の軍拡に対して「対中包囲網」を敷くための布石であると考えることができます。 事実、安保法制懇は提言で示す類型で自衛権を発動できるようにするためにも、集団的自衛権の行使容認を求めています。 ※従来の4類型:(1)公海上の米艦防護、(2)米国向けの可能性がある弾道ミサイルの迎撃、(3)PKOなどでの駆けつけ警護、(4)海外での後方支援活動の拡大 ◆頼みとなる米軍の台所事情は厳しい このように「行使容認」の機運が盛り上がる集団的自衛権ですが、その盛り上がりと裏腹に、相手となる米軍の台所事情は極めて厳しいと言わざるを得ません。 米軍は向こう10年間で約5000億ドルの国防予算の強制削減が予定されておりますが、ヘーゲル米国防長官は、この強制削減が続いた場合、将来的に11ある空母艦隊を8から9に削減しなければならず、それは「米国の国益に反する戦略上の大きな誤り」であると指摘しました。(8/1日経「米国防長官『空母3隻減も』」) ◆米軍は東南アジアでも「引っ張りだこ」 オバマ大統領は、西太平洋の戦力を削減し、アジアに艦隊の6割を配置する戦略を打ち出していますが、だからと言って安心することはできません。 米軍のプレゼンスと抑止力に規定しているのは、日本だけではないからです。例えば、フィリピンも中国の海洋進出の脅威を前にして、米軍の抑止力強化に向けた動きを進めています。(8/8 Defense News:「Philippines To Start Talks With US on Greater Military Presence」) ◆米軍の弱体化で動き出す、中ロ海軍 さらに懸念を呼んでいるのは、中国のみならず、ロシアの動向です。 米軍が国防予算の強制削減に直面しているのと対照的に、ロシア海軍は地中海への進出を強めています。 地中海への進出に関して、ロシア紙は往時のソ連海軍のような大海軍の再建を目指すのではないとしつつも「ロシアの観点からすれば不公平な制裁を受けている国々への貨物納入を確保すること」を目的とすると語っています。(4/8 ロシアNOW:ヴェドモスチ紙「ロシア海軍を世界に再展開する意義は」) シリア内戦において、ロシアが政府側に武器の供与を行っている事実を考慮すれば、軍事費の強制削減に伴う米海軍の弱体化によって、米国はさまざまな「挑戦」に直面することとなるはずです。 ◆もう米国頼みはできない。安倍首相は憲法九条改正に踏み込め! 以上の要素をみれば、集団的自衛権の行使容認は、それ自体重要ではあっても、日本を守る「伝家の宝刀」ではないことが明らかです。 むしろ、世界中で混乱に直面する米国から、地域の安定に関わるミッションに、自衛隊の積極的関与を求められる可能性が高いと言えます。 集団的自衛権は、国防強化への一里塚にすぎません。 安倍首相は、集団的自衛権問題を片づけるのみならず、早期に「憲法九条改正」に向けて「勇気ある一歩」を進めるべきです。 終戦記念日が近づく今、国防強化を実現しようとする安倍首相には、山のような非難が積まれる可能性がありますが、ぜひ、踏みとどまって、「アジアの柱」である日本の誇りを取り戻して頂きたいと思います。(文責・幸福実現党神奈川4区支部長 彦川太志) すべてを表示する « Previous 1 … 77 78 79 80 81 … 98 Next »