Home/ 外交・国際政治 外交・国際政治 これ以上の中国の虚言と人権弾圧は許さない! 2014.03.31 文/HS政経塾2期生 小松 由佳 ◆習近平のドイツでの発言 ドイツ歴訪中の習近平中国国家主席は、3月28日、ベルリン市内で講演し、「日本の侵略戦争で中国人3500万人が死傷した」、「日本軍は南京に侵略し、30万人以上もの中国人を殺す残虐な行為を行った」などと日本を批判しました。中国の国家主席が公の場で日本を批判するのは極めて異例です。 一方、習氏は、中国の軍事費増大についての質問には、「中国は列強に植民地にされた歴史の悲劇を繰り返すわけにはいかない。自衛のための国防力は必要だ」と、軍事拡大を正当化しました。 また、「中国人は自分にされたくないことを他人にしてはならないとの信念を持っている」とも述べましたが、現在進行形で、国内での人権弾圧や自治区での虐殺を行っていながら、よくも言えたものです。 ◆中国の虚言と世界の反応 このような中国の虚言は、既に国際社会に通じなくなっています。 ドイツ政府は習氏のホロコースト記念碑訪問を拒否し、メルケル首相は習氏との会談で、「言論の自由は社会に創造性をもたらす極めて重要な要素だ」として中国の人権状況の改善を求め、ガウク大統領も、「自由な意志表明が訴追対象になる」中国の状況に懸念を表明しました。 習氏が言及した「3500万人」「30万人」といった数字は、日本の歴史研究者はもちろん、中国の改革派の歴史学者の間でも疑問視されていますが、江沢民元国家主席が日本を批判する際に、よく言及した数字でした。 その江沢民氏はといえば、在任中のチベット族へのジェノサイド(民族・集団の計画的抹殺)の疑いで、昨年11月にスペイン裁判所から逮捕状が出され、今年2月には、同裁判所から国際刑事警察機構(ICPO)に国際手配が要請されました。 これらは、スペインが国内法で、国外の人道犯罪を国内裁判所でも裁けるとする「普遍的管轄権」を定めていることから、可能となったものでした。 ◆他国の罪をでっち上げ、自国の罪は揉み消す中国 しかし、スペイン下院は2月27日、この国内法を制限する改正案を、与党国民党の賛成多数で可決してしまいました。国民党は、上院でも過半数の議席を確保しているため、改正案の成立は確実と見られ、これまでの捜査が事実上、無効となる可能性があります。 これについて、ネット番組THE FACT第9回(https://www.youtube.com/user/theFACTtvChannel)では、告訴の当事者にインタビューし、中国からスペイン政府に対する圧力があったことを報じています。 また、3月28日には、第25回国連人権委員会にて、日本とEUが共同提出した、北朝鮮の人権侵害についての非難決議が、賛成多数で採択されましたが、中国は、パキスタンやベネズエラなど5カ国と共に反対しました。 他国の罪をでっちあげながら、自国の罪は揉み消し続ける、そうした中国の暴挙は、これ以上許せません。日本は、過去に行ってもいない罪を否定すると共に、現在中国が行っている罪を止めなくてはなりません。 ◆国際社会の「保護する責任」と「責任ある主権」 近年、国際社会では、「保護する責任」という概念が提示されています。 これは、「国家は、ジェノサイド、戦争犯罪、民族浄化、人道に対する罪から、当該国家の人々を保護すると共に、これらの事態を予防する責任を負う」というもので、「介入と国家主権に関する国際委員会」(ICISS)の2001年報告書で初めて提示され、05年の世界サミットで採択された成果文書にも明記されました。 同文書には、国際社会が、国家が上記の4つの罪から「自国民を保護することに明らかに失敗している場合には、時宜にかなった断固とした方法で、安全保障理事会を通じ、第7章を含む国連憲章に従って、個別の状況に応じ、適切であれば関係する地域的機構とも協力しつつ、集団的行動をとる用意がある」とも明記されています。 しかし、中国政府は、「国家主権」と「不干渉原則」を強調し、保護する責任に基づく人道的介入に、否定的な態度を示してきました。2011年、リビアのカダフィ政権による人民弾圧に対し、安保理が追加制裁決議を採択し、保護する責任に基づく初の武力行使が容認された際も、中国は棄権しました。その後、シリアでの民衆弾圧に対しても、中国の反対もあって十分な介入ができていません。 「国家主権」は極めて重要ですが、その濫用は許されません。国家主権の絶対性のみを強調することは、今日の国際社会の相互依存的関係において必ずしも妥当ではなく、「責任ある主権」という概念も示されています。 つまり、主権は責任を伴うものであり、主権が正当性を認められるためには、最低限、その管轄下にある住民に対してベーシック・ヒューマン・ニーズを提供する責任を果たす必要があり、国内避難民が大量に発生しているような状態の国家については、主権の正当性に疑問が生じており、国際社会からの人道支援や人道的介入を拒む理由として主権を援用することはできない、というものです。 こうした比較的新しい概念について、中国以外からも賛否両論はあり、具体的な実現方法も確立していませんし、安保理に中国が入っている以上、今後も国連によっては十分に実現し得ないことは明らかです。 ◆日本は国際社会でイニシアティブを示す時 しかし、こうした理念自体は普遍的で、一定のコンセンサスがあるので、これらを大義名分として活かしつつ、有志の国々で具体的行動を想定し、準備を進めることが大切だと考えます。 北朝鮮、中国、シリア、こうした国々で続いている人権弾圧に対し、国際社会は具体的行動をとる必要があります。米国が行動できないならば、日本が普遍的正義に基づいて、イニシアティブをとれるようになるべきです。 日本軍が先の大戦において、中国大陸に入っていったのも、一つの人道的介入だったと言えます。今、大陸で再び民衆が苦しんでいるならば、今度こそ、共産主義と侵略主義の払拭を成し遂げるため、勇気ある介入を行う必要があります。 そのためには集団的自衛権の行使容認も必要です。他国と協力し、一刻も早く、過去の罪の亡霊と共に、現在只今犯され続けている罪を、断固粉砕するべきです。 【参考文献】 3月30日付産経・読売新聞 日本国際連合学会編『新たな地球規範と国連』2010年国際書院発行 日本国際連合学会編『日本と国連』2012年国際書院発行 なぜ日本は負けたのか?――戦史に学ぶ、未来への舵取りと提言 《第3回》 2014.03.30 文/岐阜県本部副代表 河田成治 前回では、日本の「情報の軽視」について述べました。 ◆圧倒的な情報源としての「霊言」 日本は今、奇跡とも言えるたいへん幸福な状態にあります。幸福の科学グループの大川隆法総裁による、「霊言」を通して異次元情報が収集可能になっているからです。 世間の常識からすれば、「霊言」というものが胡散臭く見えたり、根拠のないオカルトのように捉える人もいます。しかし、後で詳しく述べますが、大川隆法総裁の「霊言」が、今、各界で注目され、日本政府や世界に大きな影響を与えています。 そして幸福実現党の政策には、大川隆法総裁の「霊言」を外すことはできません。この「霊言」が、CIA活動によっても知り得ない、極めて貴重な情報源であるとするならば、これ以上に国益に資するものはないからです。 これは日本の外交政策上、起死回生の秘策に等しいもので、まだ、国民の多くはその空前絶後の効果に気づいていませんが、やがて誰も目にも明らかになると思います。 ◆戦争という策略に引きずり込まれた日本 例えば、なぜ、日本は大東亜戦争(太平洋戦争)に引きずり込まれたのか?これも情報の不足でした。当時のルーズベルト大統領は、アメリカ国民から、戦争をしないことを公約として当選した大統領で、選挙中に婦人からの「あなたは戦争をやるつもりか?」という質問においても「重ねて、重ねて、重ねて、何度でも繰り返して誓うが、貴女がたの息子を戦場に送ることはない」(大森実「人物現代史4 チャーチル」)と答えています。 国民の大多数は、ドイツや日本との戦争を望んでいませんでした。(戦争反対67.4%、ドイツとの開戦を望んだ国民は2.5%。小室直樹著「日本の敗因」) しかし、ドイツとの戦いで敗北寸前であったイギリスは、アメリカの参戦を強く望んでいました。またアメリカとしても、もしドイツがヨーロッパの覇者となれば、アメリカの孤立を招き、どうしてもドイツを叩いておかなければならなかったのです。 ルーズベルト大統領は、イギリスを助けるためにどうしても参戦する必要がありましたが、選挙公約の手前、絶対に戦争はできないというのが当時の状況でした。 そこで日本の側から攻撃させ、アメリカは仕方なく戦争に巻き込まれるという状況をつくり出すことを考えます。 日本と戦争になれば、同盟国であるドイツとも戦争になるからです。そこで、日本に戦争を始めさせるために、石油や鉄屑の禁輸等で日本をギリギリまで追い詰めていきました。 つまり、ルーズベルト大統領の本音は、「いかなる手段を使っても、日本を戦争に引きずり込む」ことであって、日本がいかに和平工作と外交努力を重ねても、日本の譲歩に乗ることはないということは、アメリカの決定事項であったのです。 ちなみに開戦前、日本の政治家でアメリカとの戦争に賛成していた政治家はなく、対米戦争に反対した日本海軍軍人も多数おり(小室直樹著「日本の敗因」)、開戦のギリギリ、8日前の11月30日まで最後まで諦めることなく和平交渉を続けていました。 日本は、あくまでも戦争反対の立場だったのです。これはどうしても知っておかねばなりません。 しかし11月26日、今までの譲歩をすべてぶち壊す、「ハルノート」といわれるアメリカの要求が出されるに至って、交渉は決裂、日米開戦へと突入しました。 ◆悪意に満ちた「ハルノート」 「ハルノート」の要求は、悪意に満ちたものでした。 東京裁判でのパール判事は、「この文書を他国に送れば非力なモナコ公国やルクセンブルク公国でさえ必ずアメリカに対して武力をもって立ちあがっただろう」と言いました。 「ハルノート」を書いたのは、ホワイト財務次官補という人で、この人の原案がもとになりましたが、ハルノートの名前となった、当のハル国務長官でさえ、その非道な内容を見て驚き「こんなことを言ったら日本は戦争するしかないだろう」と発言しています。 ちなみに「ハルノート」を知っていたのは、ルーズベルト大統領をはじめトップ4人のみで、ルーズベルト大統領(民主党)の政敵であった、フィッシュ共和党党首は、自分が外交委員であるにもかかわらず、ハルノ-トを日本に通告していることを全く知らされておりませんでした。戦後事実を知って、彼もまた「あんなものを通告されたら、日本は戦争をするしかないだろう」と書いています。(ハミルトン・フィッシュ著「日米開戦の悲劇」) 「ハルノート」は、石油を止められていた日本に、唯一の石油の頼みのインドシナ(ベトナム方面)からも全面撤退を要求したもので、事実上の兵糧攻めでした。これを守れば、何もしなくても2年後には日本が滅亡する要求であったのです。 戦争にあくまでも反対し、対米交渉の先頭に立っていた東郷外相は「目もくらむばかりの失望に打たれた」と、米国の対応に落胆しています。(次回につづく) 「日本を救うもう一つの中国包囲網」~アメリカと中国の新しい関係に備えて~ 2014.03.29 文/幸福実現党山形県本部副代表 城取良太 ◆アメリカと中国における「通貨同盟」 アメリカ・ワシントン情勢に詳しい日高義樹氏の新著『アメリカの大変化を知らない日本人(PHP研究所)』第1章において「アメリカと中国の間に通貨同盟が成立した」と日本人にとって驚くべき事実が明らかになっております。 要するに、人民元が安いレートでドルとペッグされ、人民元がドルによって国際通貨としての価値を保証されたことで、天然資源等を海外から大量に輸入している中国にとって望ましい状況が到来したと言えます。 この背景には、巨額の財政赤字に苦しむアメリカの姿があり、ドルを基軸通貨として維持するために中国に対してとったぎりぎりの妥協策であったようです。 一方、ドルも人民元の持つ将来性によって保障されたことや、新しい予算削減法などによって急速に財政赤字が減ったことで、ドルは完全に復権し、景気の回復や株価及び債権の値上がりを呼び込み、アメリカにおいて新しい経済環境が出来つつあると日高氏は見ております。 ◆アメリカの極東外交における「複眼思考」 実質的な米中の通貨同盟の成立によって、「日米安保体制」VS「中国の覇権主義」という一面的な見方は出来なくなり、日本にとって大きな変化を迎えつつあることが予想されます。 また、こうした通貨同盟を背景に、中国は人民元安という状況を維持し、安い製品をアメリカや日本、東南アジアへと売り込める体制を手にしたことで、本来は「経済的中国包囲網」であったはずのTPP(環太平洋パートナーシップ)が有名無実化する恐れも出てきたともいえます。 もちろん、軍事的にはアメリカと中国は対峙関係にあり、現時点で日米安保体制を破棄するなどということは今までの日米関係から考え難いことではあります。 しかし、アメリカはこの極東情勢において「日本との軍事同盟」、そして「中国との通貨同盟」という複眼思考で臨みつつあることは確かです。 そして、現在のアメリカの経済状況からすれば、通貨同盟に力を入れざるを得ず、これからの情勢次第では日本の安全保障体制の舵取りは極めて難しくなってくると考えられます。 ◆中国の海洋進出によって脅かされる日本のエネルギー安全保障 現に、2015年から本格的に動き出す沖縄海兵隊のグアム移転、また在韓米軍も2015年12月には削減される見込みで、「アジア重視」を堅持する国防戦略を採りながらも、アメリカは極東から軍事力を引き始めることになります。 その際、安全保障上日本にとって最も大きな懸念としてまず生じるのは、中国海軍によるシーレーン封鎖によるエネルギー確保の問題であります。 日本は長年、原油の大半をシーレーンリスクを負う中東に依存してきた経緯があり、最近では輸入先の多様化により比率は下がっているものの、原発稼働ゼロの影響で中東への絶対的な依存度は高まっているといえます。 戦前の歴史を振り返っても、日本が石油の重要性を見抜けなかった一方、アメリカによる石油の対日禁輸、そして第2次大戦が始まってからは「タンカーを沈めることを潜水艦の最優先目標とせよ」という命令があったくらい、アメリカによって徹底的に石油の輸入を封じられ、エネルギー資源の軽視によって敗北したといっても過言ではありません。 今こそエネルギーの自活は国家存続の肝であるという前提に立ち、日本にとって唯一の自活できるエネルギー資源と言ってもよい原子力発電の再稼働を急ぎ、海外へのエネルギー依存度を減らすことです。 また、クリミア併合によってアメリカやEUから経済制裁を受けているロシアに対しても、欧米諸国との歩調を合わせつつも、近年関係を深めてきたロシアと資源分野での連携を更に強め、シーレーンリスクを負わないエネルギー確保を目指すべきです。 ◆日本が考えるべき「第二の中国包囲網」 またロシア同様、日本が更なる関係の深化を図るべき国の一つとしてインドが挙げられます。 昨年、日本の天皇皇后両陛下が53年ぶりとなるインドへの歴史的訪問を果たしたことは記憶に新しいですが、この10年のシン政権において、インドと日本は緊密な戦略的連携を築いてきました。 この背景にはアジアにおける両国の最大のライバルである中国が、経済的にも軍事的にも力を増してきた事実があり、特に海洋安全保障における協力体制の更なる深化が検討されています。 冒頭で紹介した「米中通貨同盟」の成立など、これからの国際社会はより複雑化する様相を呈しております。 日本外交も「複眼思考」を持ち、TPPによるアメリカ主導の「中国包囲網」とは一線を画した、日印露による「第2の中国包囲網」を機能させ、日本のエネルギー安保、海洋安保をより強化するべきです。 北朝鮮の人権弾圧を終わらせるための覚悟を 2014.03.27 文/HS政経塾1期生 伊藤のぞみ ◆日米韓首脳会談が実現 日米韓国首脳会談が25日、オランダのハーグで実現しました。 日本メディアの中には、朴槿恵大統領が安倍首相と目線を合わせず、握手を拒否したことを揶揄するような報道もありましたが、三カ国首脳会談が開かれたことだけでも重要な一歩です。 今回の会談に反発するかのように、北朝鮮は日本海側に向けて中距離弾道ミサイル「ノドン」を発射しており、例え形だけであったとしても、三カ国の首脳会談が北朝鮮への圧力になると証明されました。 日本としては、さらに三カ国の連携を深め、東アジア有事に対応できるよう努力すべきでしょう。 ◆韓国では意外と知られていない北朝鮮の人権侵害 北朝鮮については人権状況に関して、先月17日に、国連の人権委員会に報告書が提出されました。 表現・思想の自由がないこと、政治犯収容所行なわれている拷問や公開処刑、さらに外国人に対する拉致などについて人道に対する罪に当たると指摘しています。 強制収容所における労働や拷問などによって、過去50年で数十万人が死亡。 現在も8万人以上が収容されていると報告書は伝えています。 同様に、拉致については子どもを含む外国人20万人以上が犠牲になったとされています。 特に、強制収容所における人権侵害は目を覆うものがあります。 北朝鮮の強制収容所12号を抜け出した女性脱北者は次のように語っています。 「遺体から出てきたうじ虫を、周りの人は捕まえて食べていました。 私は、体に悪いのではないかとも心配しましたが、生き延びるために、私も食べるようになるのではと想像しました。 (収容所では)ねずみを生で食べていました。口が血で真っ赤なのを覚えています。 収容所ではたくさんの人が殺されます。1か月に3人も殺されていました。」 (参照:http://www.nhk.or.jp/worldwave/marugoto/2014/03/0317m.html) しかし、韓国国内では、北朝鮮で目を覆いたくなるような人権侵害が行なわれていることは、それほど知られていません。 北朝鮮でのキリスト教徒への迫害を描いた『神が送った人』という映画が公開されていますが、これを見た観客は「北朝鮮の現実についてあまりに無知だった」と感想を述べています。(2月25日付朝鮮日報) また、日本では強制収容所の悲惨な実態を描いた映画『北朝鮮強制収容所に生まれて』が公開されていますが、韓国では親北の国会議員の反対で上映される予定はありません。 韓国では、北朝鮮の人権侵害を伝える脱北者に対し、親北の議員が「裏切り者」「変節者」「ゴミ情報を量産している」と攻撃することもめずらしくなく、本来であれば一番同情すべき韓国人が北朝鮮問題に関して一致団結して解決に当たることができていません。 ◆封殺される親日派の声 それに対し、親日的な言動については、強硬な統制が行なわれています。 昨年7月に、韓国出身の呉善花(オ・ソンファ)氏が韓国への入国を拒否されたことは有名です。 韓国政府は入国拒否の理由を明らかにしていませんが、呉善花氏の言論活動が親日的であるとみなされ、そのために入国できないのではないかと考えられています。 『親日派のための弁明』の著者である金完燮(キム・ワンソプ)氏は朝鮮半島の日本統治を肯定的に評価したため、本書は有害図書に指定され、金完燮氏は名誉毀損と外患扇動罪で逮捕されています。 同様に、日本による統治が韓国の近代化につながったという論文を発表している李栄薫(イ・ヨンフン)氏もソウル大学の教授を辞職するように圧力を受けました。 残念ながら、韓国では親日的ととられる言論は攻撃され、学問の自由も保障されていない状況にあります。 その結果、世論は「親北反日」に偏っていく一方です。 ◆今こそ行動を起こす時 こういった世論を考慮すると、日本と協力関係を築き、北朝鮮と対抗していく困難が理解できます。 その中でも、日米韓の首脳会談が開けたことは大きな一歩です。3ヶ国は北朝鮮の人権問題の理解をさらに深めるとともに、拉致被害者が出ているヨーロッパ各国にも協力を要請し、この問題を一日でも早く解決できるよう連携を深めるべきです。 ただ、韓国国内世論と朴大統領の今までの言動を見ていると、どれだけ信頼関係を構築できるか楽観できません。 また、アメリカが外交よりも国内問題を優先する孤立主義の時代に入りつつあります。 最終的には日本単独でも北朝鮮に対処する気概が必要です。 北朝鮮の人権状況について報告書をまとめたカービー委員長は、証言の多くに涙を流さずにはいられなかった、と述べ、次のように訴えました。 「これまで国連は報告を受けても行動をおこさなかった。今こそ行動を起こす時です。」 21世紀、最悪の人権弾圧を終わらせる覚悟が必要です。 中国から祖国を守る台湾学生の勇気! 2014.03.26 文/幸福実現党政務調査会 佐々木勝浩 ◆台湾の学生が、中台協定に反発 中台間で昨年締結された「サービス貿易協定」の撤回を要求する台湾の学生らが、23日に立法院(国会)を占拠し、数百メートル離れた行政院(内閣)にも突入、警察に強制排除される事態に発展しました。(読売3/25) 朝日新聞では、「台湾の警察が24日未明に、行政院に突入した学生や市民らを約5時間かけて強制排除、警官隊がこん棒や盾で市民らを殴る場面もあり、現場は混乱。市民や警官に100人余りのけが人が出た」と報じました。 さらに「行政院への突入は立法院の周辺にいた学生が独自に呼びかけたもので、立法院の議場内の学生は占拠を続けている。台湾大学などの学生会は警察の強制排除を『暴力による鎮圧』と批判し、授業をボイコットするよう呼びかけた」と報じています。 朝日新聞を読む限りでは、学生が暴徒のように報じられ、なぜこのような行動に出たのかの詳しい情報が抜け落ちています。 ◆学生の反発の理由 学生の「貿易協定」反対の不満が爆発し、立法院議場を占拠した理由は、3月17日、立法院で「貿易協定」の議論が白熱し、「3カ月審議して立法院として反対の結論を出せなかった場合には審議終了として、行政院(政府)が当初提案の通りに手続きを進めることができる」という規定のもとに「審議終了」を宣言したからです。 (サーチナ3・24 http://news.searchina.net/id/1527741) 読売新聞では、学生の反発の理由を以下のように報じています。 「学生らが法を犯して実力行使に訴える背景には、域内総生産(GDP)の7割を占める台湾のサービス産業が規制緩和されることで、台湾が経済的に中国にのみ込まれるとの不安感が高まったからだ」(読売3/25) そして学生は、「警察が動かなければ、我々も動かないぞ」「民主主義を守り、サービス貿易を撤回しろ」と訴えていると報じています。 ついに学生の占拠から一週間たった3月25日、馬英九総統が学生の代表を総統府に招き対話をする考えを示しました。今後の動向に注視したいと思います。 一方で中国政府は、台湾側に立法院の占拠問題が「適切な解決」を得られない場合は、中国の対台湾政策トップの訪台を無期限に延長すると伝えています。(読売3/26) では、中国はどんな意図を持って台湾に接近しているのでしょうか。 ◆中国による台湾自治区化 中国軍事専門家・平松茂雄氏は、「中国は、2020年めどの『台湾統一』へ向けて着実に動いている。2021年は中国共産党結党100周年だから、その記念の祝杯を、台北で挙げようというのが当面の目的である」と指摘しています。(産経2011/6/24) 中国も武力による台湾併合は、国際社会からの非難を受けるとわかっています。最終的に武力による併合も否定はできませんが、しかし経済面からの台湾併合は、国際社会も容易に非難できません。それが中国の台湾併合の戦略です。 2008年に馬英九政権は、対中融和路線を掲げ、経済を中心に急速に中国との交流を拡大し、今年2月11日には、1949年の分断後、初めて中国と台湾当局による閣僚級の経済協力等を協議する会談が南京で開催されました。こうして着実に中国による台湾自治区化への道が進行していたのです。 ◆台湾は日本の生命線 今回の「貿易協定」反対派の主張には、台湾側の印刷出版業を大陸資本に開放する内容が盛り込まれているので、「言論の自由が損なわれる」との意見もあります。(サーチナ3/19 http://news.searchina.net/id/1527356) 近年、台湾は親中派が増え、このまま中国に飲み込まれてしまうのだろうかと危惧していましたが、今回の勇気ある学生の行動に、台湾を力で飲み込もうとする共産国家中国の野心から自国の独立を守ろうとする若い力が台湾にあることを知りました。 日本にとって台湾は運命共同体です。なぜなら台湾が中国の手中に落ちれば、日本のシーレーンは中国に簡単に脅かされるようになり、日本の経済は干上がってしまうからです。 日本のマスコミも、ほとんど関心を示していませんが、台湾は日本の生命線です。是非、今回の報道を機に、日本の国民は台湾に関心を持ち、民主主義を愛する台湾の学生と連帯すべきではないでしょうか。 なぜ日本は負けたのか?――戦史に学ぶ、未来への舵取りと提言 《第2回》 2014.03.25 文/岐阜県本部副代表 河田成治 今回から、敗因を掘り下げて考察し、幸福実現党の政策について考えてみたいと思います。 ◆情報戦略 (1)情報戦で負けた日本軍 たいへん悔しく思うのは、太平洋戦争の直前から敗戦に至るまで、ずっと日本の暗号がアメリカに筒抜けであったことです。 (正確には、戦争直前は日本の暗号のおおよそが解読でき、ワシントン駐在の日本人大使と東京外務省の暗号電文が解読され、日本が戦争を決意したという極秘情報も、ルーズベルト大統領はキャッチしていた。) しかし日本は、暗号技術に絶大な自信を持っていて、敗戦まで解読されていたことに気がつかなかったようです。 太平洋戦争の帰趨を分けたミッドウェー海戦、山本五十六長官の戦死、東京大空襲を許すこととなったマリアナ沖海戦、日本の敗戦が決定的となったレイテ沖海戦、これらすべてで、日本の作戦は筒抜けで、日本が情報戦で負けたことが、敗戦の原因であったといっても過言ではありません。 (2)現代でさらに重要になる情報収集能力 従って、現代でも、外交や国防政策においては、情報戦が最重要の鍵を握っています。 たとえばアメリカは、CIA(中央情報局)やNSA(国家安全保障局)など情報機関に、年間で約7兆円(産経2009.9.16)もの予算をかけています。これは、日本の防衛予算の1.5倍にもなる金額で、アメリカは情報部門だけで、これだけのお金をかけているのです。 またエシュロンと呼ばれる電波傍受施設を、アメリカは世界中に持っていますが、これは、史上最強の盗聴機関といわれ、軍事無線は当然のこと、携帯電話、ファクス、電子メールなど、おおよその通信が盗聴されていると言われています。 このエシュロンは、日本の青森(米軍三沢基地)にも存在するようで、つまり、日本やアジア近隣諸国の情報は筒抜けになっています。 このように、アメリカの情報収集と分析にかける労力は桁外れです。 また当然、中国も政府の管轄する国家安全部、軍が持つ総参謀第二部などの情報機関を持ち、情報収集のほか、スパイ活動などを行っていますが、詳細は不明です。 一方、日本はCIAにあたる組織は持っていません。あえて言えば内閣情報調査室がそれにあたりますが、その職員数は170名で、CIAの2~3万人(推定)に比べ、予算も規模も比較になりません。 自衛隊も情報本部(2400名。予算約500億円。防衛省HPより)等を持ち、外国の軍事情報を収集、分析していますが、やはり非常に限定的な組織です。 ちなみに、情報収集活動の中には、友好国からもたらされる重要な情報源もありますが、「特定秘密保護法」ができたことで、相手国もより安心して秘密情報を日本に提供できるようになったといいます。 (それまでは日本に情報提供すると、簡単に情報漏洩してしまうので、危なくて提供できないと言われていた。) このように日本も情報の重要性を認識し、法律の整備等も行うところですが、他国とは太刀打ちできない差が開いていることも事実です。(次回につづく) シェールガスの現状及びその打開策について 2014.03.21 文/政務本部部長代理 内山 雅彰 ◆シェールガスに関する最近の報道 米エネルギー省は、2月11日に北米産シェールガスの輸入のための日本勢の3か所4事業を全て承認しました。(2/13日経) 現在計画中の輸入量は、カナダ産と合わせて合計年2500万トンになり、このシェールガスを火力発電の燃料とすれば原発20基以上に相当する発電容量を得られます。またシェールガスはLNGの輸入価格に比べて、2~3割安い価格が期待できるとの見方が有力と報道されました。(2/13日経) 日本では3月14日 、中部電力が経済産業省に申請した家庭用電気料金の引き上げで、料金審査をする専門委員会は、2018年に米国からシェールガスの輸入を始めることにより燃料費を年50億円削減できると見込んでいます。(3/14日経) ◆シェールガスとは 「シェールガス」とは、シェール(頁岩層)に埋蔵される天然ガスのことです。 オバマ大統領が2012年の年頭教書演説で、地下の岩層に水や砂、化学物質を高圧で吹き込み天然ガスを抽出する水圧破砕技術の推進により、2010年代末までに60万人の雇用が創出できると説明し、米国には100年近く持続可能な天然ガスの供給量があると言明しました。(2012 1/25 ブルームバーグ) そのため、シェールガスは、LNGよりも安いコストで輸入ができるため、企業や家計が負担するエネルギー料金の上昇にも歯止めがかかり、個人消費にも好影響を与え、国内での経済活動の余地も広がると、バラ色のイメージが先行しています――しかし思惑通り進むとは限りません。 ◆今起こっていること 大阪ガスは米国で米テキサス州のシェールガス鉱区の開発に失敗したとして、3月決算で、約290億円の特別損失を計上すると発表しました。現在の技術では想定した量を掘削できなかったためです。(2/13 日経速報) 大阪ガスは今年度、天然ガスを約11万トン(液化天 然ガス換算)、原油は1050バレルをそれぞれ取得、販売する計画でしたが、掘削には技術的な問題点が多いことが分かり、開発の中断を決めました。 (2013 12/20産経) ◆シェールガスの問題点は何か シェールガスについては、次の問題点が指摘されています。(1/24東洋経済「なぜシェールガスはカベにぶつかっているのか」) 一つ目は、ガスの生産量の減少が従来型のガス田よりも早いということが明らかになっています。多くのガス田は、ガスの産出が始まって3年経つと、産出量が75%以上減少します。 ガス産出量を維持するためには、次々と新しい井戸を掘り続けなければならず、典型的な自転車操業で、米国全体で2012年に420億ドルものコストがかかったと言われています。 一方、米国全体で産出されるシェールガスの売上高は325億ドルなので、年間100億ドルもの赤字経営を強いられていることになります。 二つ目には、米国の天然ガス価格はシェールガスの急増で値崩れし、2013年を通じ3ドル~4ドルと低迷していますが、シェールガス田の多くはガス価格が8ドルにまで回復しないと採算が合わないといわれています。 2013年には、オクラホマ州でシェールガスなどを生産するGMXリソーシズが破綻しました。この会社は天然ガス価格の値崩れのせいで8期連続の赤字を計上していましたが、過熱する開発ブームで鉱区の権益価格が急騰し、買い手がつかなかったのです。 過去5年間のような急激な生産増の予測が反転すれば、米国内の天然ガス価格が急激に上昇する可能性もあります。そうなれば、バラ色のイメージが崩れてしまうことになります。 ◆現状をどう打開するか このようにシェールガスの先行きが厳しい状況となっている現在、他の方法を模索しなくてはなりません。現在の日本において、輸入天然ガスは100%LNGであり、安定供給のために20年30年といった長期契約で、原油価格連動という極めて不自由で割高な取引条件に縛られています。 他の需要国はパイプラインによる天然ガスと比較し有利な価格を選択することができますが、パイプライン網のない日本はそれができません。 そこで、サハリンからパイプラインを敷設して、ロシアの天然ガスを日本に持ってくる方法が考えられます。(1/24東洋経済「なぜシェールガスはカベにぶつかっているのか」) 実際、2000年代初頭にサハリンから海底パイプラインを敷設して首都圏まで供給する構想が検討されましたが、実現しなかったという経緯があります。(2/18 ロイター) 日本がサハリンから天然ガスをパイプラインで輸入する場合、現在の西欧向けのパイプライン価格で輸入できれば、年間6兆円のLNG輸入額(2012年)を3兆6千億円に縮減できます。(1/31 JBpress「機は熟した、サハリンの天然ガスをパイプライン輸送せよ」) パイプライン敷設のコストは、5000~6000億円程度と想定されるため、初期投資が早期に解消できることは確実です。 そして、ロシアからの天然ガス供給が実現すれば、ロシア以外の国から新規LNGを購入する際の価格引き下げへの効果的な交渉カードとすることができるのです。 また、現在、ウクライナ問題などはありますが、ロシアとの関係を強化することは日本の安全保障上も重要であり、その意味でもこの方法の早期実現を期待します。 対ロシア包囲網ではなく、対中包囲網の形成を! 2014.03.20 文/HS政経塾スタッフ・遠藤明成 ◆ロシア包囲網づくりを進める欧米主要国 プーチン大統領がクリミア併合を決めた日(3/18)に、アメリカはオランダ・ハーグにて24日に開催される核保安サミットに合わせて、ロシアを除いた日英仏など6ヶ国(G7)を首脳会談に招待すると発表しました。(朝日朝刊3/20) 通常、G8首脳会談には、アメリカ、日本、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、ロシアの首脳が集まりますが、米国は、ロシアを除外した「G7」会談開催を意図しており、イギリスのキャメロン首相も「ロシアがこれ以上の措置を取ればG8永久追放を議論すべき」と発言しました。 欧米主要国は、対ロシア包囲網をつくり始めているのです。 ◆冷戦期の戦争と「ウクライナ危機」の違い ウクライナ危機に関する報道では、「第二の冷戦の始まり」とよく言われますが、必ずしも、こうした見方は専門家たちに共有されていません。 読売新聞のインタビューで、アメリカのブルッキングス研究所・米欧センターのフィオナ・ヒル氏は、プーチン大統領が、西側とは「非常に異なる価値観を持っている」ことを認めつつも、現在の危機を「イデオロギー対立」と見る情勢判断を否定し、ロシアは、「周辺国を掌握し続け、国家再興を果たすこと」を目指していると答えていました。(読売朝刊3/19) 冷戦期には、朝鮮戦争やベトナム戦争、キューバ危機など、イデオロギーを背景にした戦争が「全世界各地」で起きましたが、今回の戦いは「ロシアと周辺国」との地域紛争なのです。(今のロシアが獲得を目指しているのは地域覇権であり、世界の覇権ではない) ◆欧米とロシアの間にある現在の日本の立ち位置とは 菅官房長官は、18日に、「G7のなかの一つとして足並みをそろえしっかり対応する」と述べ、ロシアに対して、「ビザ緩和協議の停止や、新投資協定や宇宙協定など」の締結交渉の開始凍結の意を表明しました。(ロイター通信3/18) 世界の主要国の動きを見ると、アメリカやEU諸国はロシア政府関係者の資産凍結等の制裁を打ち出し(ロイター通信3/18)、中国はロシア擁護の側に回り、インドは中立の立場を守っています。(産経3/20) アメリカとの同盟関係がある日本はインドのように中立の立場を取り難いのですが、かといって中国に加えてロシアまで敵に回すのは賢明ではありません。 そのため、現在の安倍政権は、北方領土返還交渉等も念頭に置き、「弱い制裁」の段階に止めているわけです。 ◆日本に必要なのは、長期的な対ロシア外交戦略 G7首脳会談では日本に制裁強化が要請される見込みですが、この判断には長期的な視野が必要です。 今後、短期的には欧米諸国が主導する対露制裁の強化が一つのトレンドになるでしょうが、過去の経済制裁の歴史を見る限り、それが長く続くとは考えにくいからです。 ▽例1:米国はインドが98年に核実験をした後の経済制裁を01年に解除 (9.11以降の国際情勢の変化のため。05年には米印原子力協定が成立) ▽例2:米国は天安門事件(89年)後に中国へ経済制裁。しかし94年に元安・ドル高政策で緩和路線に転向。(公式には01年に制裁終了) 今後、プーチン大統領が再選されれば2024年まで政権が続きますが(二期12年)、経済制裁は同政権の寿命の半分も続かないかもしれません。日本は、こうした視野を持って、欧米の政権が全て交替した後も存続するプーチン政権との付き合い方を考えなければならないのです。 ◆必要なのは、対露包囲網ではなく、対中包囲網 3月16日に発刊された『「忍耐の時代」の外交戦略 チャーチルの霊言』(幸福の科学出版刊)では、日本はロシアよりも中国の覇権主義を警戒すべきであり、対中包囲網の一環として、日露の協力関係が必要だと説かれています。(http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1126) 現在はロシアが危険視されていますが、チベットやウィグル、南モンゴルへの侵略の後、人権弾圧、核戦力強化と不透明な軍拡を続ける中国に対して、何も制裁措置を取らない欧米諸国の判断はバランスを欠いています。 G7首脳会談で日本は制裁強化を要請されるでしょうが、対ロシア制裁は、欧米諸国への「付き合い」として、軽度な段階に止めておき、日露関係が長く停止するレベルにまで強化することは避けるべきでしょう。 そして、欧米の対露制裁と親中外交の不均衡の是正と、歴史認識問題への対抗策を兼ねて、今後、日本は国際社会に向けて、「天安門事件」に対する中国政府の説明責任の存在を訴えるべきです。(ロシアに比べて、中国の暗部は欧米圏に周知されていないため) 日本は西側諸国の一員であり続けなければいけませんが、その中で、長期的な視野の下に、日露関係も含めた対中包囲網を形成するための布石を打つ必要があるからです。 ウクライナ危機は対岸の火事にあらず 2014.03.15 文/HS政経塾第1期生 城取良太 ◆ロシアはなぜクリミアにこだわるのか? ロシアとEUの綱引きにより生じたウクライナの政変は、結果としてロシアによるクリミア併合へと緊迫した状況を迎えております。 ロシアがクリミアにこだわる最大の理由は、ロシア黒海艦隊の軍事施設の存在であり、半島全体がロシア軍の拠点であるといっても過言ではありません。 ロシアにとっては黒海の制海権確保のために必要不可欠な拠点であり、もし他国の海軍が展開してくるような事態に進展すれば、モスクワなどロシアの主要都市が巡航ミサイルの射程範囲に入ることになり、ロシアにとって大きな脅威となるのです。 このような背景から、クリミアにおけるロシア通貨ルーブルの早期導入やメディア規制、ロシア型社会保障制度への移行など、実質的な「脱ウクライナ化」が急速に進んでいるのです。 実際に、今月9、10日に行われた現地の世論調査ではロシア編入に賛成は79.7%で、住民投票を前にクリミア住民の「民意」もほぼ決していると言えます。 ◆本格的にリーダーの座から降りつつあるアメリカ 一方、米政府はクリミアの独立は「ウクライナ憲法に違反している」という見解を示し、ロシアの見解と真っ向から対立しております。 いつもは外交面で「弱腰」と国内外から批判を受けるオバマ大統領も、批判を避けるためか、議会の承認が必要ない大統領令による制裁発動に踏み切りました。 しかし、制裁の対象はロシア政府高官や軍関係者、前ウクライナ政権の一部関係者に限られ、制裁の効果は疑問視されており、議会や米民間シンクタンクからは、より強硬な経済制裁や黒海への艦船派遣などを求める声が上がっており、やはりオバマ政権の対応は「腰が入っていない」と批判されています。 オバマ政権が強気になれない最大の要因は、世論において厭戦気分が高まり、内向き志向が強まっていることが言えるでしょう。 昨年12月に発表された世論調査では国民の8割が「国内の問題に集中すべきだ」と答え、過半数以上が「世界のリーダーの役割を担う力は落ちた」と答えております。 オバマ政権はそうした世論に迎合し、イラクやアフガニスタンから撤退し、シリア、イランに対して、介入よりも対話路線を採っておりますが、こうした中東問題への弱気な対応がロシアの強硬的なクリミア介入を招いたといえるでしょう。 政権維持のために、民意に迎合しやすい民主国家の弱点を露呈していると言えます。 ◆中東などで存在感を高めるロシアや中国 中東でアメリカの影響力が低下する中、そこで存在感を発揮しつつあるのは、まぎれもないロシアや中国であります。 例えば、約40年間に亘って「親米国」であり続けたエジプトとアメリカの関係が冷え込んだ間隙を突いて、ロシアがエジプトに急速に接近しており、武器輸出や軍事技術などで協力関係を築き、外務・防衛閣僚協議(2プラス2)も重ねております。 アメリカが撤退しているアフガニスタンやイラクへは、原油の安定供給を狙う中国が結びつきを強めており、アメリカが抜けた後の国家再建に向けての政治経済両面からの協力を約束しております。 更に今回の震源地、ウクライナへの権益を虎視眈々と狙う中国の姿も浮き彫りとなっております。 欧米とロシアの仲介をするような姿勢を見せている中国ですが、ヤヌコビッチ前大統領在任中から軍事的な協力関係を強化し、「核の傘」の提供まで約束していた経緯や、ウクライナ東部においては、300万ha(日本の農地合計は約450万ha)といった膨大な農地を租借する方向で進んでおり、中国最大の海外農場をウクライナに建設しようとしている現実があります。 ◆ウクライナで起こったことは極東の安全保障につながる いずれにしても、アメリカが世界の警察官の座から降りつつあることで、その「空白地」を狙った各国の国益を睨んだ現実主義的な外交が加速することは間違いありません。 その先頭を走るのは皮肉なことに、民意に対して強いリーダーシップで強権的な対応が採れる独裁「的」国家としての中国やロシアであるのです。 そして、ウクライナで起こっていることは日本にとっても対岸の火事ではなく、今後の極東の安全保障を占うためにも目が離せません。 アメリカの対応が弱腰なら、中国の軍事的拡大を勢いづかせることにもつながり、一方でアメリカがロシアと真っ向から対峙すれば、更なる関与が必要となるため、アジア重視政策は有名無実化し、中国の独走を許すことになりかねません。 また、ロシアにしても、当面は中国どころではなくなり、どちらにしてもこの混沌とした情勢は中国にとって極めて「漁夫の利」を得やすいといえるでしょう。 もちろん、日本としては表立ってロシアの対応を肯定はできませんが、こうした国際情勢の中で倫理的・道義的観点のみでロシアを批判すべきではなく、国益をしっかりと見据えた上でロシアへの対応を冷静に考えるべきであると思います。 ◆緊迫する国際情勢の中で日本はどうするべきか 一つは、ロシアは日本における対中国対策において不可欠なパートナーであり、関係強化は引き続いて必要であるということです。 ロシアは資源依存型経済からの脱却に苦しんでいる上、頼みの天然ガスも「脱ロシア化」が進行している中、彼らにとって日本の産業力、技術力、天然資源の購買力は大きな魅力であるため、彼らのアジア・太平洋重視政策の期待に応え、良き経済的パートナーになるべきです。 同時に、アメリカとの同盟関係も堅持しながらも、ロシアとアメリカの間を取り持ち、国際的なプレゼンスを高めていくような巧みな外交戦略が必要だと言えます。 世界の民主主義に新しい希望を灯すために、幸福実現党は確固たる信念を持って、世論に迎合せずに国を正しく導ける力となって参ります。 ウクライナ情勢を日露関係前進のテコとせよ 2014.03.13 文責:HS政経塾部長(兼)政務本部部長 幸福実現党東京第9選挙区支部長 吉井としみつ 今、世界中がロシアの動向に注目しており、ウクライナ南部のクリミア半島の行方を巡り、アメリカ・EU諸国とロシアの駆け引きが激化しています。 ◆クリミア半島の情勢 ウクライナ南部のクリミア自治共和国は、16日にロシア領になるか否かを決める住民投票を行う予定です。 クリミア自治共和国の人口の58%はロシア人であることもあり、ロシアへの親和性が強く、多数の賛成によりロシアへの編入賛成することが予想されています。 ロシア側も、クリミア共和国を併合するための手続きを簡素化する法案の審議が進んでいます。 ◆アメリカ・EU諸国の対応 こうした動きを牽制するために、12日に、日米欧の主要7カ国と欧州連合(EU)の首脳が、ロシアによるクリミア自治共和国の編入に向けた動きに対して、停止を求める共同声明を発表しました。 ロシア側の行動が、沈静化しない限り、ロシアに対する資産凍結や渡航禁止の制裁措置を課すことや、6月に予定されているソチでのG8首脳会議を中止に追い込むことを検討しています。 ◆米欧諸国の抱えるジレンマ しかし、米欧諸国とも、ロシアに対する経済措置に対しての足並みは揃っているとは言えません。 EU諸国は、ロシアとの経済的な結び付きも強く、ロシアへの経済制裁は自国の経済にとっても打撃を受けることになるのです。 またEU最大の経済規模を持つドイツがロシアへの経済制裁に対して慎重であることも、ロシアへの経済制裁に足並みが揃わない大きな理由と言えるでしょう。 14日にアメリカのケリー国防長官とロシアのラブロフ外相が、ロンドンで会談することになっていますが、ロシアは米欧の抱えるジレンマを踏まえて交渉すると考えられるため、妥協点を見つけられるかは依然不透明な情勢です。 ◆日本はいかなる対処をするべきか 3/11のFinancial Timesには「ウクライナ情勢は、アメリカのパワーへの試しである」(Ukraine is a test case for American power)というタイトルの論説では、アメリカのロシアへの対応は、今後台頭してくる中国にどう対応するかにも関わってくることが論じられています。 つまり、ウクライナを巡る一連の動きは、一見、日本に無関係に見えるかもしれませんが、日本の安全保障を考える上でも重要で、これからの日露関係に大きく関わっています。 中国が軍事力を高めていくなか、日本がロシアとの関係を強めておくことは、日本の安全保障上、極めて重要です。 欧米諸国は、ロシア国内で同性愛の宣伝を禁止する法律への反発から、ソチ五輪の開会式に欠席しましたが、安倍首相は開会式に出席するなど、就任以来、五度のプーチン大統領との会談を通じて、信頼関係を深めています。 今年の秋もプーチン大統領は来日することが決まっており、今後良好な関係が続けば、長年の懸案である北方領土問題についても、前進する可能性もあります。 アメリカとEU諸国は、ロシアに対する制裁を議論していますが、日本はロシアへの経済制裁についての態度を明確にしていません。 ◆日本に求められるしたたかさ アメリカが先頭になって、ロシアを批判するなか、露骨なロシア擁護を日本はやりにくい状況にあるのは確かです。 ただ、だからといって、せっかく良好になっている日露関係をみすみす悪化させるわけにもいきません。 国家安全保障局の谷内局長が、ロシアのラブロフ外相と12日に会談しており、「いかなる状況でも、日ロ間ではしっかりとした対話と意見交換を持ち続けることが大切だ」(3/13読売2面)という谷内氏のコメントもあり、布石は打っているようにも見えます。 日米同盟に配慮しながら、ロシアとの結び付きを強めていく一手を捻り出さねばなりません。 積極的平和主義には、したたかさも必要なのです。 すべてを表示する « Previous 1 … 67 68 69 70 71 … 98 Next »