Home/ 外交・国際政治 外交・国際政治 集団的自衛権とは何か【前篇】 2014.05.23 文/岐阜県本部副代表 河田成治 集団的自衛権について、多角的な視点から、前篇・後編、2回に分けて検討を加えてみたいと思います。 ◆集団的自衛権の定義 まず「集団的自衛権」の定義を一言でいえば、「攻撃を受けた国家への、他国からの援助」となります。従って、個別的自衛権とは明確に区別されるものであり、両者を混同する政党の発言には違和感を覚えます。 さらには、個別的自衛権とならんで独立国が持つ固有の自然権が、集団的自衛権です。 ◆集団的自衛権の目的 日本の立場での集団的自衛権の行使には、以下の目的があります。 (1)日米同盟の維持――米軍を見殺しにすれば、日米同盟破棄につながる。 (2)日米共同作戦の具現化――そもそも日本の防衛力は、米軍とセットでつくられている。 (3)周辺事態への対応――シーレーンの確保や朝鮮半島の安定など、国際的な安全保障問題も日本の安全保障と不可分。 (4)国際的責任――正義に基づいた国際協力。厳密には自衛権とは区別される。 ◆集団的自衛権の歴史的経緯 以上のように、日本にとって重要な意味を持つ集団的自衛権ですが、歴史的経緯を確認しておきたいと思います。 【日本の集団的自衛権の歴史】 ◆はじめは日本も認めていた! 日本の集団的自衛権は、1951年のサン・フランシスコ平和条約で、連合国によりその保有が承認されました。 ※サンフランシスコ平和条約 第五条(c) 「連合国としては、日本国が主権国として国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する。」 また、1960年(昭和35年)に締結された現行の日米安全保障条約(前文)において、「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、…」とあります。 当初は日本もその保有を確認しており、この規定が特に問題視されることはありませんでした。これは重要なポイントです。 ◆変遷する政府解釈 しかし、その後の政府見解によって変質し、1972年に至って「国際法上保有するが、その行使は憲法上許されない」との現行解釈に行きつきました。 つまり、日本は当初から集団的自衛権を否定していたとは考えにくいのです。 世間には、法解釈だけで容認するのは、憲法に対する冒涜であるとの意見も散見されますが、歴史的経緯から見れば逆で、法解釈により制限してきたことがお分かりかと思います。 従って「解釈改憲は憲法ハイジャック:慶応大学の小林節名誉教授」(日刊ゲンダイ)というような発言は、正しくありません。 例えば、防衛大学校安全保障学研究会は、集団的自衛権について、以下のようにと述べています。(「安全保障学入門」より) 「もし仮に、当初から憲法上行使できないのであったとすれば、憲法上行使できない権利をなぜ国際条約類(サン・フランシスコ平和条約や日米安全保障条約)でうたったのかとの疑問に、説得力のある答えを見いだせない」 さらに「個別的自衛権と集団的自衛権の差は、国際的には直接的な「自衛」か「他衛」かの差(河田注:単なる防衛手段の違い)とみなされているのに対して、わが国では、自国防衛のための「必要最小限度の範囲」を超えるか超えないかの差 (量的な差)と理解されている。この点も、解釈として特異である」 以上が、「日本の集団的自衛権の歴史」ですが、日本だけが集団的自衛権を、ことさら難しくしているのです。 後編では、「国際的な集団的自衛権の経緯」から見てみましょう。 集団的自衛権とロシア外交で、「アジア安保」のイニシアチブ獲得を! 2014.05.22 文/HS経塾一期生 彦川太志 ◆集団的自衛権の行使容認が、「戦争の危機」を遠ざける 5月21日付けの産経新聞で、安倍政権の安保政策「安倍ドクトリン」の骨子が固まったことが報道されました。 その内容としては、ASEANの防衛体制を「日米共同で支援する」するものと報道されており、集団的自衛権の行使容認によって開かれる「アジア安保」安定化の第一歩といえます。 中国と緊張の続くベトナムやフィリピンなど、日本企業も数多く進出している東南アジア諸国を「戦火の危機」から守る努力は、わが国にとって決して無意味なものとはならないでしょう。 ◆中国が進める、独自の「アジア安保構想」に備えよ このように、安倍政権が日米同盟を機軸として新しい「アジア安保」を進める一方、中国も独自の「アジア安保」構想を進めています。 「安倍ドクトリン」発表とほぼ時を同じくして公表された、「アジア新安保観」です。これは21日まで開催されていた、「アジア信頼醸成措置会議(CICA)」で発表されました。 参照→HRPニュースファイル1007「中国のアジア新安全保障観」からアジアを救え http://hrp-newsfile.jp/2014/1460/ この「アジア新安保観」は1991年より約10年ごとの発展段階を経て、現在では第三段階にある※ようですが、本質的には「米国中心の軍事同盟の解体」を目的としており、米国を排除した中国中心の軍事的支配を確立する試みに他なりません。 ※(『解放軍報』2014年5月22日「亜州安全観助推命運共同体建設」) 習主席は、この「新安保観」を発表する中で、「中国は国家の領土主権と海洋権益の争いについて、平和的方式による処理を一貫している」と主張していますが、5月8日に世界的ニュースとなった「油田掘削作業に警告するベトナム船への体当たり」のように、「武器を使わない実力行使」がその実態です。 「力による現状変更を許さない」とする日米の立場をしっかりと堅持するためにも、国会にて集団的自衛権の行使容認を速やかに進めていくべきです。 ◆中ロ接近をどう観るか 中国の「新安保観」に加えてもう一つ、わが国の大きな懸念となっているのが、同じくCICAで見られた中ロ接近です。 巨額のガス供給契約や海軍の合同演習、さらには第二次世界大戦の「歴史認識」に対する共闘姿勢の表明など、プーチン大統領は習近平主席の要求に対して“満額回答”で応えていることが報道されています。 特に海軍の合同演習は、尖閣諸島に近い海域で行われることが報じられています。歴史認識を軸とした「中ロ共闘」は、果たして現実のものとなるのでしょうか。 ◆同床異夢の中ロ関係 しかし、中ロ両国のメディアを読み比べると、両国の報道に微妙なズレを感じる点があります。 中国側は今回の中ロ接近について、戦略的パートナーシップの進化について中心的に成果を報じる(※1)一方、ロシア国内の主要紙「プラウダ」(※2)では、今回のプーチン・習会談の「中心的テーマ」は、大型航空機の開発と、中国国内でのMi-26大型輸送ヘリの生産・改良といった航空分野の契約に関する点にあったと報じています。 ※1(新華社通信、2014年5月19日「中露関係再顕“頂層設計”作用」) ※2(『Pravda(英語版)』2014年5月19日「In China, Putin to sign a package of ‘fantastic agreements’」) そうしてみると、プーチン大統領は中国寄りの姿勢をみせることで米国に「牽制球」を投げ、中国に対しては「ロシアがサポートしなければ、国際社会で影響力を発揮できない」ことを露呈させ、存在感を示したと見ることもできそうです。わが国に対しては「反応を伺っている」とみるべきでしょう。 ◆防衛体制の確立と共に、ロシアとの関係強化を そのような見方に立てば、わが国の取るべき外交方針は明確となります。「中ロ関係を“経済”で切り放す」ことです。 報道によれば、今回中ロ間で最も大きな取引となる天然ガスの供給契約については、「30年間で4000億ドル(約40兆円)」と指摘されていますから、年間に直せば約1.3兆円です。この額は、本年2月に日本郵政グループが表明した、今後3年間の投資規模と合致します。 外交戦略を背景とした政府投資であるならば、1.3兆円の投資は決して「雲を掴む話」ではありません。極東ロシアの開発について中国の年間投資を上回る規模の投資プロジェクトを打診し、日露ウィン-ウィンの関係構築を目指していくべきでしょう。(ロイター2014年 02月 26日「訂正:日本郵政3年で1.3兆円投資」) 集団的自衛権の行使容認によって防衛体制を強化し、そのうえでコンテイニング・チャイナを考えていくべきです。 中国の「アジア新安全保障観」からアジアを救え 2014.05.19 文/HS政経塾 第3期生 和田みな ◆中国が提唱する「新安全保障観」 今月20、21日の両日、アジア信頼醸成措置会議(CICA) が中国・上海で開催されます。 この会議には、ロシアのプーチン大統領をはじめ、15ヶ国の首脳や国連の潘基文事務総長も出席し、議長国である習近平国家主席との首脳会談も予定されています。このCICAで習近平が提唱しようとしているのが「アジア新安全保障観」です。 中国による「新安全保障観」は1997年に初めて提唱されたものです。それが、先月開かれた「中国・中央国家安全委員会」の第1回会議において、「中国の特色ある国家安全保障を提示し、それに向かって歩み出す」と習近平国家主席が述べたことで、再び注目を集めています。習氏のこの発言は、オバマ大統領の来日直前のことでした。 ◆「新安全保障観」の内容 中国が提唱する「新安全保障観」を簡単に要約すると以下のような要旨になります。 ・中国の安全の夢は、世界の安全の夢と同義である ・米国型の第三国を排斥し、仮想敵に的を合わせるような、二国間同盟体制を乗り越えるものである ・「アジアの安全保障・経済は米国頼み」というパラドックスを乗り越えるものである 中国はこの「新安全保障観」をアジア各国に広めることで、「アジアのことはアジアで十分解決できる。アメリカに代わって、アジアを支配するのは中国で、それがアジアの安全を守るものだ」ということを示すとともに、アメリカ・日本の日米同盟を軸としたこれまでのアジアの安全保障体制を牽制する意図があるのです。 ◆全世界に影響を与える中国の新安全保障観 中国共産党の機関紙「人民日報」の日本語版サイトは4月17日付けで「全世界に影響を与える中国の新安全保障観」と題する論説を掲載しました。この「新安全保障観」がどのように世界に影響を与えるというのでしょうか。 前述したCICAにおいて中国は2016年まで議長国を務めます。また、今年の秋にはAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議が北京で開催される予定です。中国は、この2つのアジア会議を最大限に活用し、中国主導の「新安全保障観」をアジアに広めるつもりなのです。 中国の外交部は、3月16日の記者会見でも「CICAの最大の大義は『アジアの問題はアジア主導で解決すべきであり、アジアの安全保障もまずアジア諸国自身の協力強化を通じて実現するべきだし、それは完全に可能だ』との声を共同で世界に発することを望んでいるということだ」と述べました。 中国は自身の「新安全保障観」をまず示すことで、各国にも「新安全保障観」の確立を推進し、「アジアの安全保障の協力と新しいメカニズムを積極的に検討することを望んでいる」と発信しています。 この「新安全保障観」は、アメリカのリバランス政策の一環である日米によるTPP推進、安全保障での協力強化などの、対中圧力に対抗するものです。 中国は、アメリカ型の安全保障観の欠点を指摘し、アジアの安全保障は中国主導で行うという強い意思表示を示しました。これからアジア各国は、地域の安全保障について中国主導か日米主導かを迫られることになるでしょう。 ◆中国主導の安全保障体制の危険 今月、南シナ海で起きた中国の公船とベトナム船の衝突は、この中国の「新安全保障観」の危険性を露わにしました。アジアにおいて、中国主導の安全保障体制が強まれば強まるほど、中国による強硬な領土・領海侵略が行われる可能性が高まることを世界に示すことになったのです。 このような中、東南アジア諸国連合(ASEAN)は11日、ミャンマーの首都ネピドーで首脳会議を開き、南シナ海情勢などについて協議し、関係国に自制と武力の不使用を求めることを盛り込んだ「ネピドー宣言」を採択しました。 しかし、ここでも中国を直接非難することは出来ず、議長国のミャンマーを含め、中国と緊密な関係を持つ多くの加盟国に配慮したものになってしまいました。 ◆日本に求められるリーダー国家としての「公の精神」と具体的な行動 このように、国際社会は中国の野望に対して有効な手を打てないでいます。これまで実質的にアジアの盟主であったアメリカも財政難から国防予算を減らさざるを得ない状況が続き、中国がこれに代わろうと具体的に行動を始めているのです。 昨年10月、ASEAN首脳と安倍首相との会談で安倍首相が、中国の強引な海洋進出を批判しつつ、日本として集団的自衛権の政府解釈見直しや国家安全保障会議(日本版NSC)の創設などの取り組みを紹介したところ、参加国から「日本が世界の平和のために貢献することを支持し、期待する」との声が上がりました。 アジア各国は中国に対抗するために、日本に対して具体的な行動を期待しているのです。 日本には、日米同盟を堅持しながらも、責任を持って地域の安全を守れるだけの早急な法整備や外交戦略が求められていますが、日本の政治家やマスコミの多くには、「世界の平和に貢献しよう」というリーダー国家としての「公の精神」が全くありません。 しかし、私たちは、国際社会の状況や要請を踏まえて、一国平和主義、利己的平和主義で満足するのではなく、集団的自衛権の行使、憲法9条の改正の問題に取り組むべきです。 また、中国の軍事力の脅威からアジアの平和を守ることなしに、日本一国の平和を守ることなどできないことを一人ひとりが自覚しなければなりません。 ◆日本の行動が世界を救う 更に日本には、中国の「新安全保障観」に対して、「より多くの国々の自由を守り、共に発展できるアジアをつくる安全保障観」のビジョンをアジア各国に提示していく必要もあるでしょう。 私たち幸福実現党は宗教政党です。「国民を護り、世界の平和に寄与する」という精神を大切にし、「悪を押しとどめ、善を推し進める」という宗教的正義において、国防強化の重要性を訴えています。 日本人がこの精神を理解し、世界の平和と発展のために具体的に行動を開始した時、戦後失ってしまった「日本の誇り」を取り戻すことができるでしょう。そのような日本人の行動が世界を救うことになるのです。 集団的自衛権行使の本質を問う 2014.05.18 岐阜県本部政調会長 加納有輝彦 ◆20年前の警告が今現実に 今を遡ること20年前、朝鮮民主主義人民共和国を建国した金日成の死去(1994.7.8)より4日後の7.12に東京ドームで開催された講演会「異次元旅行~仏法真理のもとに地球を一つに~」にて幸福の科学グループ・大川隆法総裁は、北朝鮮の核保有疑惑に関し、「これは疑惑ではなく、北朝鮮はすでに核兵器を保有しております。」と警鐘を鳴らされました。 また、中国の軍事的拡張主義、覇権主義の脅威にも言及され「このあとに来る軍事的拡張主義が恐ろしい。」「ベトナム沖の油田、その他、経済的利権になる所に対し、触手をのばすことが危険である。」と同じく警鐘を鳴らされました。 今、その警鐘が現実のものとなりました。 大川総裁より警鐘が鳴らされた20年前より我が国が対北朝鮮、中国の軍事的拡張主義に対し、しっかり対応していれば、「集団的自衛権」に関し議論が紛糾して喧々諤々たる現在の国内状況はなかったのではないかと悔やまれます。 事実は、当時の村山政権から時代が逆回転をし、阪神大震災、オウム事件、民主党政権の迷走、東日本大震災、自虐史観の蔓延等々、20年の停滞を経験し、未だ脱出していない状況が続いています。 ◆南シナ海の危機的状況 ここにきて南シナ海における中国とベトナム、フィリピンの衝突がにわかに頻発し、ベトナムでは反中デモが開かれ、中国人の死者が出るなど事態は緊迫しています。 中国のベトナム、フィリピンへの挑発行動は、先月4月のオバマ大統領の日本を含めたアジア4か国訪問の直後に起こっています。 オバマ大統領は、同盟・友好国にアジア重視の政策は不変であり、安心して欲しいと保障するためアジア4か国を訪れました。 しかし、行く先々で「我々の目標は中国に対抗することではない。中国を包囲することでもない。」と中国を気遣う姿は、尋常なものでなかったと田久保忠衛氏(杏林大学名誉教授)が産經新聞の正論(5/16)で述べておられます。 大川総裁は5月17日、静岡県浜松市にある中部正心館で行った法話「愛が時代を動かす」の中で、中国はアメリカが何もできないところを世界に見せて、この海域を実効支配できるところをPRしていると分析しました。 月刊ザ・リバティ 大川隆法総裁 法話レポート http://the-liberty.com/article.php?item_id=7844 そして中国とベトナム、中国とフィリピンの戦争が差し迫っている、いつ戦争が始まっても不思議でないと警告を発されました。 ◆戦争勃発の危機 これに関しては、同日夜のTBS「新・情報7daysニュースキャスター」に出演した藤原帰一東大教授も、中国とベトナム、フィリピンの間に戦争の危険が高まっているとコメントしていました。現役東大教授のコメントとしては踏み込んだもので、それだけ危機的状況にあることが分かります。 また、15日に官邸で行われた安倍首相の集団的自衛権行使に関する記者会見を受け、翌日の東京新聞が朝刊で『「戦地に国民」へ道 』と赤旗新聞顔負けの大見出しを一面に打ちました。 しかし行使反対を鮮明にした東京新聞の長谷川幸洋論説副主幹も、18日に関西の人気民放番組に出演し、集団的自衛権に関して、日米同盟それ自体が集団的自衛権の発動であると、その必要性を認識していると発言し、東京新聞の論説と一定の距離を示していました。 このように中国とベトナム、中国とフィリピンの戦争の危機が現実となった今、個別的自衛権では対処できない集団的自衛権の必要性が認識されてきます。15日の安倍首相の記者会見の説明は、邦人保護の説明が中心であり、必ずしも集団的自衛権の必要性を説明できていないと容認派、反対派双方から批判が出ています。 ◆集団的自衛権問題の本質 問題の本質は、例えば、中国とベトナムが戦争状態になった時、日系企業も多いベトナムの「助けて下さい」という要請を全く無視し、アメリカまかせで済むかという事です。 植民地を解放してくれたと未だにアジアの人々から尊敬されている日本が、果たして「無視」「見殺し」にできるのか。私たちの先輩が命をかけて勝ち得た「尊敬」を、私たち子孫が反故にしてしまってもよいのでしょうか。 17日の講演で大川総裁は「全体主義とは、人々を愛する神仏の心を無視した国家の暴走」と定義付けられました。 さすれば、集団的自衛権を戦争に巻き込まれると忌避し、己の安全のみを考え、第三国の紛争に知らぬ存ぜぬを貫くことは、これまた人々を愛する神仏の心を無視した利己主義という横暴に他ならないのではないでしょうか。 時の政権の解釈で憲法が変わってしまうとすれば、「立憲主義」を破壊するものであると手続き論でいろいろ批判されていますが、こうした批判について、大川総裁は「法律のために人間があるのではなく、人間のために法律がある」と指摘されました。 憲法の遵守や、その改正手続きにこだわって、日本人の生命、安全やアジアの平和を危機に陥れてしまえば、元も子もありません。現状は、憲法改正の手続きを踏んでいては間に合わないほど緊迫した状況にあります。 大川総裁は、結語として「『国民を護り、世界の平和に寄与する』という一点を貫くべき」であり、「愛の行為が、同時に神仏の願う正義とも一致していくよう、努力すべき」と主張しました。 厳格な法律論・手続き論に拘泥し、国民の生命を危機に陥れることのないよう幸福実現党は、引続き、安倍首相が公明党に遠慮して言えない正論を訴え続けてまいります。 国民の生命を守る政治家の気概とは 2014.05.17 文/幸福実現党政務調査会 佐々木勝浩 ◆戦争に巻き込もうとしているのは日本ではない 5月15日、安倍首相は、記者会見で「集団的自衛権」の行使を容認する憲法解釈変更の検討を表明しました。 朝日新聞は、「近づく戦争できる国」と、「安倍首相が示した方針が現実になれば自衛隊が他国の戦争に加わり相手を殺すこともある」(朝日5/16)と述べ、すぐにでも日本が外国人を殺す戦争が始まるような報道をしています。 しかし戦争に巻き込もうとしている国は、今年になっても複数回ミサイルを日本海などに打ち込んでいる北朝鮮や、南シナ海で勝手に資源を掘削しはじめベトナム船に自分から衝突させておきながら、ベトナムが先にぶつけたと主張している中国の方ではないでしょうか。 さらに中国は、2012年からフィリピンの排他的経済水域にある暗礁を勝手に埋め立て滑走路建設工事を始め、話し合いのテーブルの席に着くこともなく、力でフィリピンの権益を侵し暗礁を自国に組み入れようとしているのです。 ◆政治家としての責任 南シナ海は、日本のシーレーンでもあり、日本の経済にも影響を与えます。一国平和主義で、日本のことだけ考え他国がどうなろうと関係ないという態度ではベトナムやフィリピンからの信用も失ってしまうでしょう。 ベトナムやフィリピンには、たくさんの日本企業があり、邦人が住んでいます。もしベトナムやフィリピンが紛争や戦争に巻き込まれた場合、現在の日本は自衛隊も派遣できません。 朝日新聞では「偶発的に引きずられるのが戦争」(朝日5・16)と述べていますが、外国の紛争地に残された邦人をどうやって救出するのか、何の解決策も示していません。 「人を殺す暴力装置の自衛隊を海外に派遣するな」という意見もありますが、では在アルジェリア邦人に対するテロ事件と同じことが起こった場合はどうするのでしょうか。 「日本は戦争をしない」と言うことは簡単です。自衛隊は派遣できないというなら、誰が救出に向かうのでしょう?他国に救出をお願いすることもできない、だから在アルジェリア邦人の悲劇は起きたのではないでしょうか。 この問題について国民の生命を守るために真剣に考えているのが政治家の立場です。真の政治家であるなら、邦人が命の危険に晒されているのを黙ってみているわけにはいかないのです。 この国民の命を預かる政治家の責任の重さを考えたことがあるでしょうか。アルジェリアで仕事をしていた邦人を救えなかった安倍首相は、それを真剣に考えたからこそ、いま「集団的自衛権」の行使を容認する憲法解釈変更を検討しているのです。 邦人を救うために、自衛隊が暴力装置だからと言って丸腰の国民にお願いして救出に向かわせるわけには行きません。自衛隊にお願いする以外にないではありませんか。 政治家という立場は、自分の命令で自衛隊員を命の危険に晒すことになるかもしれません。それでも邦人を見殺しにすることは出来ないのです。あえて自衛隊員に救出の命令を出さねばならない時もあるのです。 ◆憲法を守って国民を守らず 外国で命の危険に晒されている方の家族に対して、「日本の憲法は、自衛隊の海外派遣を禁止しています。自衛隊は戦後一人も外国人を殺したことはありません。自衛隊がテロの犯人を殺すことになるかもしれませんから、あなたの家族が死んでも自衛隊は派遣できません」――とでも説明するのでしょうか。 心ある政治家であれば、法を守って国民の生命を危険に晒すわけには断じていきません。だから国民の生命を守るために法を改正、もしくは解釈して緊迫する情勢に間に合わせようとするわけです。 また国民の生命を守るためには、自国のみではなく米国などの協力も必要です。そのための集団的自衛権容認が必要なのです。一国のみならず、複数国の軍事力の結集は、中国への抑止にもなります。自分より強ければ中国も簡単に手を出すことはできません。 以上、政治家として国民の生命.を守る立場を真剣に考えているからこそ、幸福実現党は、「集団的自衛権」の行使を容認する憲法解釈変更に賛成します! ■集団的自衛権の行使容認に向けた安倍首相会見を受けて(党声明) http://info.hr-party.jp/press-release/2014/3055/ 中韓の情報戦に対抗するために 2014.05.14 文/HS政経塾2期生 服部まさみ ◆米国首都圏で起こっている慰安婦像“設置ラッシュ” 米国で韓国系団体などが、新たにワシントンDC近郊(バージニア州北部が有力)に「慰安婦」碑を、ミシガン州(8月に除幕式)に「慰安婦」像を設置する計画が明らかになりました。(5月5日付産経新聞) 米国ではカリフォルニア州、ニュージャージー州、ニューヨーク州にすでに「慰安婦」像、「慰安婦」碑が設置されています。新たに、ワシントンDC近郊、ミシガン州に設置されれば、合計6基の慰安婦像や碑が米国に存在することになります。 韓国系団体のバックには中国の強力な支援があるといわれています。中韓が仕掛ける米国での“設置ラッシュ”をいかに阻止するか、日本の対応が改めて問われているのです。 ◆中韓の「情報戦」の強み 歴史認識や尖閣諸島、竹島の問題で中国と韓国が真実を捻じ曲げたプロパガンダを世界中に広めていますが、中韓の「情報戦」の強みとその特徴は、官民一体となったいくつもの層を持っていることにあります。また、国家戦略を達成するために、長期的な戦略で攻めてきます。 例えば、米国に対しても、政府の指令を受けた民間団体や(民間といっても中韓の場合、政府と非常に強いつながりがあるが)個人などが票やお金を武器にホワイトハウスや議会など政治の中枢、司法、シンクタンクや大学、大手メディアなどの各層ごとに徹底的なロビー活動を行ないます。 注目すべきところは、それぞれの層の有力な人物にターゲットを明確に絞ってくることにあります。 例えば、従軍慰安婦問題で、2007年に日本を非難する決議案を可決するように動いたマイク・ホンダという下院議員がいますが、この人物に対しても、まだ下積み時代から中国は目を付けて、「抗日連合会」という反日団体を使って動かしていました。 ◆中国のしたたかな手口 特に、中国は昨今、政治家だけでなく、海外メディアやシンクタンクを通じて情報戦を繰り広げています。有識者層の論調は各国の政策決定に直接影響力をもつとともに、世論を一定の方向に誘導する力を持っています。 そのため、中国は莫大な資金を使って欧米のシンクタンクや有識者に働きかけているのです。 海外の研究者やジャーナリストを中国に招待し、豪華な食事や贅沢な中国旅行、美しい女性でこれでもかというほどもてなします。そこで“おいしい”思いをしたジャーナリストや研究者は中国の悪口を書けなくなるという構図が出来上がってしまっているのです。 さらに、中国が徹底しているところは、現地の人をうまく使って、「中国色」を薄めることです。 例えば、中国の国際放送の内容は、北京政府から派遣された幹部が決めるので、プロパガンダと分かるのですが、それを放送するキャスターに元BBC、FOXニュース、CNNの売れっ子を引き抜いて使ったりするのです。 米国のトップ・ジャーナリストを引き抜いて雇い入れることは、米国世論に影響を与える層の中に中国の味方をつくりやすくしています。 また、一般の視聴者にとっても親しみがわきやすく、嘘のプロパガンダだとしても、あまりなじみのない国際問題であれば中国政府の主張をいつのまにか事実として受け入れてしまう可能性が高いのです。 中国政府が国際放送に充てている予算は、2700億円~6100億円以上ともいわれており、米国の580億円、イギリスの322億円、日本の130億円と比較しても圧倒的な違いがあります。 ◆日本は官民の連携強化を それでは、このような中韓のしかける情報戦に対して、日本はどのような対応をしていけばよいのでしょうか。 安倍政権は、中韓が仕掛ける情報戦に対抗するため、「広報の強化」に平成26年度予算を25年度の44億円から65億円に大幅に増額しました。また、官邸内の国際広報室、外務省内の広報文化外交戦略課には一級の人材が投入されました。 しかし、ほとんど中韓の情報戦に追いつかないのが現状です。中国は一党独裁なので、人もお金も政府の思い通りに動かすことができます。 日本のような民主主義が成熟した国家では、政府がどれだけ情報やイメージをコントロールしようとしてももはやできない状況にありますし、プロパガンダ的なものを使うことで相手国の国民の印象を悪くし、信頼を失うというリスクがあります。 政府自身の発信も強化されるべきですが、重要なのは、民間をベースとして、研究者や有識者、NPO、NGOなどが正論を国内外にはっきりと発信し、世論を盛り上げていくことで、政府が動きやすい環境をつくることです。 日本の大学やシンクタンクといった非政府機関からの客観的な発信が必要であり、政府としてその発信を最大限に活用することが重要です。 また、外国の有識者やジャーナリストを日本に招待し、自由に研究や取材ができる環境を増やすことが先決です。元々、親日的な人たちはもちろんのこと、特に、反日的な感情をもっている人たちに等身大の日本を知ってもらうことが重要です。 ◆日本は今、世界のリーダー国家として真実を語る時 しかし、問題なのが等身大の日本の中には、「自虐史観」というくせものがいます。日本に来た有識者やジャーナリストが自虐史観のもとになっている、間違った歴史観を吸収し、自分の国で広げられてしまったら意味がありません。 また、日本近現代史の分野では、自虐史観を批判する教授は、大学で職を得ることができず、学術誌に論文が載せられないのが現状です。そのため、間違った歴史認識をつくり出している「論拠」を見直し、正しいものに変えていかなければなりません。 さらに、英語での発信や、海外の有識者の研究や記事の情報源になるものがきちんと英語に翻訳されている必要があります。 政府として、歴史問題の有識者会議や委員会を立ち上げ慰安婦問題の調査や検証を率先して行なうことが先決であり、国の未来のために良い研究をしている機関への財政面での支援を積極的に行なうことが重要です。 ジョン・F・ケネディ大統領の下、米国広報・文化交流庁の長官を務めたエドワード・R・マローは、次のような言葉を残しています。「説得力をもつためには、信憑性がなければならない。信憑性を持つためには、信頼性がなければならない。信頼性を持つためには、真実を語らなければならない」。 日本は今、世界のリーダー国家としての信頼を得るために真実を語るべき時がきているのではないでしょうか。 変わりつつある香港の自由~アジアの平和を守れ~ 2014.05.13 文/HS政経塾1期生 兵庫県本部副代表 湊 侑子 ◆香港の自由は本物か 1997年にイギリスから中国に香港が返還されてから、今年で18年目。 「返還後、50年間は資本主義制度を変更しない」という一国二制度の下に、香港特別行政区の設置と高度な自治権による経済の自由を謳歌しているように見える香港。 香港の不動産王と呼ばれ、香港ボンド・グループ総帥のアンソン・チャン氏は2006年「The Liberty」の取材に対して、「香港と中国は一体化している」「自社の中国本土への投資は10年前の数億ドルの10倍に増えている」「北京政府に反対することは賢明ではない」と答えていました。(The Liberty 2006.6 「民主派は香港経済を脅かしている」) 規制の少なさとスピード感、安い税金を売り物にして、中国返還後も多くの投資を集めて来た香港と、中国大陸に大きな投資をしてきた香港企業ですが、ここにきて自由と発展に影が差し始めています。 アジアの大富豪で香港の有力企業家である李嘉誠氏は上海のオフィスビルを1163億円で売却するなどして、中国大陸の資産を次々と処分し、「中国から逃げ出す」動きをしています。 この理由に関して、時事評論家は「香港特別行政府および中国共産党政権への失望」、また李氏本人は「香港は『人治』になってはいけない」と政府への不満を示唆しています。(大紀元日本 12月16日) つまり、今まで存在していた経済における自由がここにきて制限され始めているのです。 更に、明らかなる自由の制限が始まっています。それが言論の自由への圧迫です。 ◆ジャーナリスト問題 今年2月、民主派のTV局の新規免許申請を拒否した香港行政政府を批判した「明報」の編集長劉進図氏は編集長の職を追われた上に、暴漢に肉切り包丁で襲われて重傷を負いました。 この後の編集長は、中国政府寄りの人物がついています。香港メディアによれば、劉氏を襲ったのはマフィア組織の構成員で、一人約1300万円の報酬で雇われていたことが明らかになりました。(2014.3.21 AFP通信) また、日刊紙「香港晨報」の幹部2人は覆面の男4人組に鉄パイプで襲われました。 同紙は、中国本土の干渉を受けないために、発行資金を地元で集めると声明を発表していました。また、「香港の人々を代弁するために力を尽くす」「今の香港には、バランスのとれた信頼性の高い新聞が必要」と宣言していたのです。 行政長官が中国寄りでなければ立候補できないことを見てもわかりますが、普通選挙が行われない香港において、実際に自由を守っているのは政治家ではなくジャーナリストであるとの意見があります。 香港におけるジャーナリストの発言は、日本のものとは比べられないほど重いのです。その彼らの言論が抹殺されたという事実は、社会に大きな衝撃を与えました。これが中国共産党から香港市民への明確なメッセージなのです。 ◆6月4日 天安門記念日に向けて 今年は天安門事件から25年目です。 民主派の有志が記念館建設を目指して募金を集め始めたところ、市民から約1億3千万円(976万香港ドル)が集まりました。これらの寄付により、4月26日に天安門事件記念館(64紀念館)がオープンしています。 場所は、香港市内の繁華街にあるビルの5階。香港にあるこの記念館が、中国統治下での唯一の記念館です。 しかし、このビルのオーナーが記念館の開設に反対して訴訟を起こす動きを見せたり、開館に反対する抗議活動がみられたりと、圧力が多いのです。もちろん中国共産党政府からの圧力です。結局、記念館は6月10日までの期間限定開催となりました。 自由の象徴ともいえる法輪功の活動も、最近香港ではあまり見られないと地元住民は証言しています。法輪功をなくすための組織が作られ、法輪功狩りが始まっているからです。 香港の自由は、中国共産党によって徐々に、しかし明らかに狭まっています。 いま、香港では6月4日の天安門記念日に向けて、自由を求める活動は活発になっています。 一説によれば、香港を自由にさせておくのは、台湾を一国二制度にもっていくためであるということですが、そうであるならば、香港―台湾―日本の安全保障は一体でなければなりません。 南シナ海においても、中国の横暴さは目に余るものがあります。国内問題だけに目を向けておけばよい時代は既に過ぎ去りました。 私たち日本人は、広い視野と未来を見通す目を持ち、世界の平和のため、まずはアジアの平和に責任を持つべき時代に入ったことを知らなければなりません。 中国の国防費は日本の五倍以上――今こそ防衛予算を倍増せよ! 2014.05.09 文/HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆安倍NATO演説とその後の中国 安倍首相は5月6日に、ベルギーのブリュッセルにて、中国が不透明な軍事費を26年間で40倍に拡大させ、近隣の国々を脅かしていることを批判しました。(NATO〔北大西洋条約機構〕本部での演説) この数字は、防衛省が本年に初めて一般公開した資料と一致しますが、その資料では14年度の中国の公表国防費を約12.9兆円(日本の約2.7倍)と見積もり、「中国の公表する国防費には、外国からの兵器調達等の費用が含まれておらず、実際の国防費は公表額の約1.3~2倍との指摘(米国国防省報告書)がある」と述べられています。(「中国の2014年度国防予算について」) 中国側は、「日本の指導者は、外部の脅威を宣伝することで、日本を軍事大国にしようとしている」(産経ネット版5/7)と安倍首相に反論しましたが、その当日(7日)に、80隻以上の中国艦船を油田掘削のためにベトナムのEEZ(排他的経済水域)内に送り込み、ベトナム艦船との衝突事件を起こしました。 中国側の主張は、自国の蛮行を棚に上げた言いがかりだと言わざるをえません。 ◆不透明な中国軍事費の実態とは? 共同通信社は2010年に「中国軍事費は公表の1・5倍 軍幹部、初めて認める」と題した記事を配信しています。(7月8日付。以下、要約) ・中国軍幹部が09年秋にまとめた内部報告書の数字では、本当の「軍事費」は公表の「国防費」の約1.5倍 ・その報告書は「軍事費」が「10年後にほぼ倍増し、20年後には3倍増となる」と予測している ・当時の中国の表向きの「国防費」はGDPの1.4%程度だが、その報告書は、真の「軍事費」をGDPの約2.5%と見積もっていた。 これは「中国筋」の話ですが、国際政治アナリストの伊藤貫氏は、西側の軍事専門家は中国の真の軍事予算は公表値の2.5倍程度で見積もっていると述べています。 伊藤氏は、その中に、「人民解放軍の衣食住コスト」「人民武装警察部隊コスト」「ミサイル戦力コスト」「軍と武装警察の医療費コスト」「輸入兵器の金額」「軍経営の企業予算の軍転用分」「宇宙戦争予算」等が含まれていないことを危険視しているのです。(『中国の核戦力に日本は屈服する』P147~151) ◆今こそ、防衛予算の倍増を 中国の本当の軍事予算が実際の2倍だと仮定すると、本年度に、中国は日本の5.4倍の軍事予算を使えることになります。(公表値が日本の2.7倍のため) 「自衛隊の装備や練度のレベルは中国よりも高い」と言われますが、毎年、中国が5倍以上の軍事予算を使えるならば、戦力比で見た時に、日本が年を追うごとに不利になることは避けられません。 やはり、今こそ、幸福実現党が主張する「防衛予算の倍増」が必要なのです。 日本の防衛予算はGDP比の約1%ですが、アメリカの同盟国や友好国を見ると、2013年のGDP比で見た防衛費は、「イギリス:2.3%、フランス:2.2%、韓国:2.8%、インド:2.5%」となっています。(“SIPRI Fact Sheet April 2014”) そして、アメリカはウクライナ危機の後、NATO加盟国に国防費増額を要請しました。(読売朝刊5/4) 米国で国防予算の削減が始まった以上、今後は同盟国や友好国が防衛費の負担を増やさざるをえません。日本は、今こそ、財政難のアメリカに替わり、アジアの自由を守る責任を果たすべく、防衛予算倍増に向けて勇気ある決断を下すべきなのです。 ※「年間1ミリシーベルト以下」を目指した除染事業など、無駄な事業を廃止し、その予算を国防のために使うべきでしょう。例えば、SAPIO(2014年4月号)記事は、そのための除染予算は2459億円(11年度)→4924億円(14年度)と増加し、「これまでの総額は1兆8899億円」となっており、「専門家の間では1ミリシーベルトにするにはさらなる期限の延長が必要との見方もあり、産業技術総合研究所のグループは除染にかかる総額を5兆円以上と試算した」とその膨張ぶりを批判しています。 戦勝国史観という壁を破るために必要な努力 2014.05.08 文/HS政経塾第2期卒塾生 曽我周作 ◆日米首脳会談の成果 先日、日米首脳会談が行われました。その会談で尖閣諸島についても日米安全保障条約が適用されることがオバマ大統領自身から明言されました。これについては日本国内外から賞賛の声が多く上がっています。安全保障の問題に関しては、非常に大きな成果を上げた会談であったと思います。 日米関係の強化が東アジアの安全保障にとって必要であり、アメリカ国内の言論等にも会談を評価し、日米のパートナーシップの重要性を強調するものも目にします。 ◆日本の「自虐的歴史観」と欧米の「戦勝国史観」 ただ、アメリカやイギリスの言論の中で気になるのは、安倍首相について「修正主義的歴史観を持つ」とか、「国粋主義」などのレッテルを貼る言論もやはり見受けられることです。 また、いわゆる「従軍」慰安婦の問題について、河野談話作成の過程を検証するということについて非常に強い批判があり、安倍首相が「河野談話を見直さない」としたことについて評価の声が上がるといった状況があります。 日本に「自虐的歴史観」が蔓延しているのと同時に、欧米の戦勝国には「戦勝国史観」というべきものが厳然として存在し続けています。 「どうして、日本だけが欧米の植民地を侵略したことを、謝罪しなければならないのか。東京裁判では、『世界で侵略戦争をしたのは、どちらだったか』いうことに目を瞑って、日本を裁いた。それは侵略戦争が悪いからではなく、「有色人種が白人様の領地を侵略した。」 「白人が有色人種を侵略するのは『文明化』で、劣っている有色人種が白人を侵略するのは『犯罪』であり、神の意向に逆らう『罪』であると、正当化した。」 これは元フィナンシャル・タイムズの東京支局長等を歴任したヘンリー・ストークス氏が著書『英国人記者が見た 連合国戦勝史観の虚妄』の中で語られている、西洋の戦勝国がもつ歴史観です。 私たちにすれば、彼らこそ極端で誤った歴史観をもっていると感じざるを得ません。 ◆「戦勝国史観」を教える日本の教育 しかし、例えば現在私が住む世田谷区内の中学校で使用されている教科書にも、「日本の敗戦は、第二次世界大戦における反ファシズム勢力である連合国側の最終的な勝利」(清水書院 『新中学校 歴史 日本の歴史と世界』)だったと記載されているなど、戦勝国史観そのままを子どもたちに教え込んでいる状況が続いており、日本の子どもたちから祖国に対する誇りを奪い続けていますし、先人達の誇りを傷つけ続けています。 つまり、日本は「戦勝国史観」と戦わなければなりませんが、同時に日本国内との「自虐史観」の払拭という大きな課題もあります。 ◆日本の大義を主張すべき 確かに歴史観というものは、全ての国で同様のものを持てるものではないでしょう。しかし、少なくとも日本国として主張すべきは主張しなければなりません。 先の大戦における日本の大義は何であったのかを主張し、西洋諸国の問題点も指摘すべきだと思います。 また、特に、現在問題になっている「河野談話」の問題点については、しっかりと検証し、「真実」を白日の下にさらすべきです。河野洋平氏の国会招致も含めて政府・与党は対応すべきですし、日本国民がいわれのない罪を着せられ続けた汚名、先人たちの無念を晴らさなければなりません。 たとえ「歴史観」は違えども、真実は真実であり、「歴史認識」云々以前の問題であります。 ◆しかし日米関係の悪化は避けよ ただ、だからといって日本にとって一番重要な同盟関係である、アメリカとの関係を悪化させるべきではありません。非常に粘り強い努力や智慧が必要ですし、本当に大変な仕事になるでしょう。 だからこそ、広報外交や民間レベルでの広報活動等が非常に重要になると思います。 中国や韓国などは反日的な外交姿勢を続け、諸外国において日本を執拗に非難し、事実に基づかない一方的な主張を繰り返しています。これに対して適切な反論を粘り強く日本側からも発信し続けなければなりません。 反論しなければ、それは国際社会では事実であると認めたことになります。 今こそ日本は戦後レジームを脱して、自らの国の誇りを守るため、そして自らの国の安全・平和を守るために立ち上がらなければなりません。 そして、アメリカが誤った歴史観の元で中国・韓国と組み、日本包囲網を築くというような最悪のシナリオをなんとしても回避し、「自由」や「神のもとの正義」を大切にする国同士の同盟関係として、世界の平和と繁栄を作る「世界の希望」になれる日米両国関係を築いていくべきであると思います。 台湾の「脱原発」事情 ――日本は原発推進で日台関係を強化せよ! 2014.05.06 文/HS政経塾3期生 森國 英和 ◆台湾で盛り上がる「脱原発」の運動 中台サービス貿易協定の交渉に反対する学生の立法院の占拠で話題になった台湾で、「脱原発」の動きが加速しています。 台湾は、石炭40%、天然ガス30%、原子力18%の発電割合で国民の電力消費を賄う島国。金山・国聖・馬鞍山の3か所6基の原子力発電所を稼働させています。 福島第一原発事故をきっかけに再燃した「脱原発」は現在、国内4か所目となる第4原発「龍門発電所」の是非に焦点を当てている。完成間近の龍門発電所を巡り、建設停止を強く求めています。 今年に入り、3月8日には台北市を中心に、10万人以上(主催者発表)が参加したデモが行われました。また、4月22日からは、民進党の林義雄・元主席が、ハンガーストライキを行って、馬英九政権の原発政策に異を唱えています。 さらには、「原発反対のために立法院に戻るべき」という声が学生の中でも大きくなり、立法院の再包囲に向かう動きも見られたようです。 それに対して、馬英九総統(国民党)は、「龍門発電所が完成するまで、国民投票はしない」として、建設停止を許すまいと踏ん張っています しかし27日、脱原発の世論に押し切られる形で、「国民投票の結果が出るまで、当発電所の建設を停止する」との方針を決定しました。「脱原発」の世論を押し返そうにも、台湾内の政権支持率は10%前後に留まっており、政権の「足場」は不安定なのです。 ◆脱原発に傾けば傾くほど、エネルギー・リスクは高まる 台湾は、日本同様、エネルギーの輸入依存度が非常に高く、エネルギー自給率は1%を切っています。「龍門発電所の建設を中止すれば、台湾はエネルギー不足に陥る」という馬政権の説得は、至極全うな意見です。 台湾政府経済部(日本の経産省)は、先日、「全ての原発が稼働停止になれば、電気料金が約40%上昇する」との予測を発表しています。もし脱原発に傾けば、原発稼働停止後の日本のように、電力価格の度重なる引き上げ、貿易赤字の拡大に直面するでしょう。 さらには、中国海軍によるシーレーン封鎖で「ガス欠」になるリスクも、日に日に増しています。中国・人民解放軍が、今年に入ってから、台湾や日本向けの商船が通過する海域に進出して、軍事演習や周辺諸国への威嚇行為等を行っていたことを思い出すべきです。 ◆日本は台湾の脱原発を説得せよ 台湾の脱原発の盛り上がりには、福島第一原発事故の後の、事故原因や放射能被害の不十分な説明、不適切な避難措置も影響していますが、それ以外にも、日本が台湾の脱原発に拍車をかけた要因があると思われます。 例えば、昨年9月の菅直人・元首相の台湾訪問です。菅元首相は脱原発・反原発イベントに参加し、事故の経過やその後の取り組み、原発の悲惨さについて講演をしました。福島第一原発事故当時の日本のトップからの「脱原発」の訴えは、間違いなく、龍門発電所の即時建設停止の世論に追い風となりました。 また、今年4月11日に安倍内閣が閣議決定した「エネルギー基本計画」。原発再稼働や「もんじゅ」の継続に転換したものの、与党内での審議を通過する中で、「原発推進」の色が薄められてしまいました。 今年の夏場に向けた再稼働も、昨年の申請以来滞ったままです。馬総統としては、「福島の原発事故を経た日本が、再度原発推進に舵を切った」と言いたいところですが、日本国内のこの状況では、台湾内の「脱原発」を押し切る力にはなりにくいと言えます。 やはり日本は、原発の早期再稼働などを通して、台湾の「脱原発」の流れに歯止めをかけるべきです。特に、建設中の龍門発電所の原子炉や発電機は、三菱重工業、日立製作所や東芝が製造しています。日本として、自国の原発技術の信頼を高めることで、台湾住民の説得に寄与することはできるのではないでしょうか。 ◆日本と台湾の「絆」を深めよ 地方選を今年11月末に控える台湾では、国論が割れることを恐れ、原発利用政策に舵を切ることが難しい状況です。 2012年1月の台湾総統選挙の際、世論の流れの影響を受け、現在稼働中の原発の稼働年限の延長を認めず、期間終了と共に廃炉する方針を発表したように、馬政権が、今年もさらに「脱原発」に譲歩することになれば、台湾のエネルギー危機は現実化するでしょう。 同時に中台が、台湾海峡にパイプラインを建設し、天然ガスを中国から輸入するように動いたならば、台湾は中国に、安全保障上の弱みを握られることにもなりかねず、将来的に、中国による台湾併合が起こる可能性も高まると推測されます。そうすれば、日本の国防上の危険も増すことになります。 安倍政権は、国内のエネルギー事情、世論にだけ注視していてはなりません。日本に対して非常に高い好感度を抱いている台湾との間で、「原発推進」を柱として、日台関係を強化することを考えるべきです。 すべてを表示する « Previous 1 … 64 65 66 67 68 … 98 Next »