Home/ 外交・国際政治 外交・国際政治 習近平独裁で台湾・インド侵攻加速。なぜ胡錦濤強制退場?軍人事に注目【後編】 2022.11.04 https://youtu.be/55gMzfu4Reg 幸福実現党党首 釈量子 現在、中国の不動産バブルが崩壊し、これまでのような高い経済成長を見込めなくなっています。 国民の不満は相当溜まっています。北京では、習近平氏に一人で抗議する「ブリッジマン」が現れました。10月13日、北京市内の橋に習氏を独裁者と非難する横断幕が張られました。 「ロックダウンではなく自由を、嘘ではなく尊厳を、文革ではなく改革を、PCR検査ではなく食料を」「独裁者習近平を辞めさせろ」などと書かれていました。 横断幕を張った男性はすぐに拘束されましたが、多くの市民が同じような不満を持っています。中国は「第二の天安門事件」を恐れています。 インドから見ると、こうした状況が続けば、中国は外敵を作るために、台湾侵攻だけではなく、インド侵攻も早めるのではないかと警戒しているわけです。 その場合、中国はパキスタンを利用し、インド国内のイスラム過激派による騒乱を起こすことも考えられます。 中国人民解放軍の海軍は2025年までに空母打撃群をインド太平洋に派遣することを目指しています。習氏の軍事的野望には、台湾侵攻に止まらず、インド攻略も含まれているのは間違いありません。 ◆日本は自国防衛の覚悟を 中国の軍拡が本格化しようとするなか、世界は中国の覇権主義を抑える方向に動かなくてはなりません。 しかしここで問題となるのが、ロシア―ウクライナ戦争が長期化していることです。西側諸国が欧州戦線に軸足を置けば、中国は必ずその隙を突いてきます。 ウクライナ戦争の泥沼化は台湾侵攻の可能性を高め、ウクライナを支援した結果、日台が危機に陥るという皮肉な逆説が起きかねないのです。 その意味で台湾有事に備えるためにも、戦争を早期に停戦させ、中国に戦力を集中させることが強く望まれます。 10月20日付の英紙フィナンシャル・タイムズは、米海軍作戦部長のギルデイ大将が「アメリカは2024年までに台湾に侵攻する事態に備えるべき」「23年の可能性も考慮すべき」と述べたと報じました。 2024年は1月に台湾総統選、11月に米大統領選が行われる年。中国が、バイデン大統領のうちに台湾問題を片付けておこうと考えていてもおかしくはなく、猶予はあまり残されていません。 台湾侵攻の際には、日本も同時に巻き込まれるのは間違いありません。 中国軍が台湾の東側に部隊を上陸させた場合、側背に位置する与那国島も押さえようとするでしょう。 また、台湾軍が沖縄の米軍基地に避難してきたら、日本は介入するか否かの選択も迫られます。 台湾の味方をすれば中国からの報復があり、見捨てれば日本のシーレーンは中国の支配下に置かれ、大半を輸入に頼る食料やエネルギーが途絶えてしまいます。 今のアメリカが日本を守る保障はなく、国連も機能停止に陥っています。国を守る気概のない国は滅びるしかありません。憲法9条改正はもちろんですが、実際に自国を守るための備えを急ぐべきです。 現代の戦争は軍事技術の差が勝敗を大きく左右します。無人機の開発、電磁波領域の研究、サイバー技術の向上など、抑止力を高める軍事研究を進めなくてはなりません。 国民の血税をバラマキに使う余裕があるなら、国民の生命と財産を守るための防衛予算を倍増すべきです。 唯物論国家の中国が本性をむき出しにする前に、日本は正義に目覚め、自国を守り抜く覚悟を固めるべきです。 習近平独裁で台湾・インド侵攻加速。なぜ胡錦濤強制退場?軍人事に注目【前編】 2022.11.03 https://youtu.be/55gMzfu4Reg 幸福実現党党首 釈量子 ◆独裁政権を確立した習近平 中国共産党の習近平総書記の続投が決まりました。最長2期まで、68歳以上は引退という慣習を破っての、異例の3期目に突入です。 習氏の独裁体制が一段と強化されるとの懸念が広がっていますが、それを象徴するのが、胡錦涛前国家主席が党大会を退席させられた光景です。 党規約改正案の採択直前のタイミングだったことから、反対票を投じる可能性のある胡氏を排除したと見るべきでしょう。 米国のFOXニュースに出演した中国問題専門家のゴードン・チャン氏は、次のように指摘しています。 「今回の件は、胡氏に屈辱を与え、習近平氏による完全な統制下にあることを示すために、意図的に準備されたものだ。習氏が危険で、残虐なことを目指していることを考えると、身も凍るようなメッセージだ。」 中国共産党系のメディアは、胡氏の健康問題を退席の理由に挙げていますが、海外メディアを前に、そして、中国共産党員9600万人に明確なメッセージを送るために、意図的に準備されたと見るべきです。 ◆台湾侵攻の危機 その後発表された、党の最高指導部を構成する政治局常務委員、いわゆるチャイナ・セブンの面々も、胡氏と師弟関係にある李克強氏が外され、かつての部下など腹心で固められました。 中国は毛沢東の死後に採用してきた集団指導体制から習近平氏の独裁体制に移ったと見るべきだと思います。 強引なコロナ対策で国内経済は落ち込み、水害などで食料不足もささやかれるなか、習氏としては実績がほしい――。 そこで考えられるのが「台湾侵攻」です。党規約にも「台湾独立に断固として反対して抑え込む」との文言が入りました。 習氏の目論みは、中国共産党中央軍事委員会の人事にも反映されています。党中央軍事委員会は習氏をトップに7人の幹部で構成されています。 台湾の武力統一や核弾頭を搭載する弾道ミサイルの発射といった軍事的な意思決定を行います。台湾問題を中心としたアジアの情勢に大きな影響を与えます。 今回注目すべきは、習氏が党中央軍事委員会のナンバー2のポストにある副主席に何衛東氏を抜擢したことです。 何衛東副主席は直前まで、台湾や沖縄県・尖閣諸島方面の東部戦区司令官を務めていましたが、今回初めて中央軍事委員会に入りました。 台湾と向き合う福建省の出身で台湾情勢を熟知している方です。 ナンシーペロシ米下院議長が台湾を訪問した際に、中国が大規模演習を行いましたが、それに関わっていたと言われています。 習氏は反対派を排除し、周りにイエスマンを揃えるとともに、台湾侵攻に向けて軍事面での布石を打っています。 ◆インド侵攻の危機も? 習氏が党中央軍事委員会副主席に何氏を任命したことは、インドの警戒心を今まで以上に強めています。 なぜなら、可氏は2016年7月~2019年12月の期間、人民解放軍西部戦区(WTC)の司令官を務めていたからです。 西部戦区は人民解放軍の中で最大規模の軍隊を擁していて、管轄も非常に広範囲です。この西部戦区に、中国とインドの係争地域が含まれています。 インドとの係争地でいうと、ヒマラヤ山脈に位置するラダックから、インド東部のアルナーチャル・プラデーシュ州まで含まれるのですが、何氏は、2017年7月~8月にかけて中国とインドが衝突した時の西部戦区の責任者でした。 また、インドで中国への警戒感が高まっている背景には、中国とインドの歴史的な経緯も影響しています。 それが、1962年の「中印戦争」の記憶です。中国の毛沢東は1958年~1962年に大躍進政策を展開しましたが、数千万人の餓死者を出すという歴史に残る大失敗に終わりました。 その結果、毛沢東は責任を取り、国家主席を辞任することになりました。 ところが毛沢東は、外敵を作ることによって国を統一し、権力を取り戻そうとしました。 ちょうどインドは1959年、中国軍の制圧から逃れた、ダライ・ラマの亡命を受け入れていたこともあり、中国はインドを敵対視して、1962年インドに侵攻しました。 これが「中印国境戦争」です。インドはこの戦争で敗北しますが、この時の教訓が、自国防衛のための核保有を促したと言われています。 (後編につづく) プーチンの核使用に欧米警戒、終末兵器「ポセイドン」とは【後編】 2022.10.27 https://youtu.be/zg6jipGtxJM 幸福実現党党首 釈量子 ◆高さ500mの津波を起こす「ポセンドン」 まず、核魚雷「ポセイドン」を搭載している原子力潜水艦「ベルゴロド(K-329 Belgorod)」の特徴は、長さ184m、幅15m、米海軍の原子力潜水艦オハイオより大きく世界最大で、120日間潜水可能です。 「ポセイドン」は、2018年にプーチン大統領が「敵の武器」として披露した武器の中に入っていました。 「ポセイドン」は、長さ24m、直径2mで、動力が何と魚雷の常識を覆す原子力推進です。ほぼ無限の動力を持つため、射程距離が長く、まさに「海の大陸間弾道ミサイル」です。 速さは、時速約130キロ(70knot)でそれほど速くないのですが、最深1000mまで潜って海底の地形に合わせて進むことができます。 通常の潜水艦が潜れる深さをはるかに超え、ソナーでも探知できません。電波も届かないので、現在のNATOでは迎撃はほぼ無理だと言われています。 「ポセイドン」に搭載されている核弾頭は2メガトンで、広島に落ちた原爆の130倍以上です。 敵国の海岸で核弾頭を爆発させた場合、高さ500m(1600フィート)のジェット津波を引き起し、沿岸部の都市は壊滅的な打撃を受けます。 街は放射能汚染水で覆われ、廃墟と化します。これが終末兵器と呼ばれる理由です。「ポセイドン」は元々、米国との関係悪化を機にロシアが米国東海岸を攻撃することを想定して開発されました。 これまでは「包括的核実験禁止条約」に従って、ロシアは実験を行っていませんでした。 しかし、ウクライナ東部でロシアが劣勢になればなるほど、形勢を逆転させるために、プーチン大統領がウクライナ近くの黒海で「ポセイドン」の実験を行う可能性があるのではないかと言われています。 ◆日本はインドと共に停戦の仲介を 今、世界は核戦争寸前にあるような危機的状況にあり、一日も早い停戦を望む方が多くなっています。 そういう中でインドの動きは注目に値すると思います。 インドは日米豪印のクアッドで米国と強い関係を持つ一方で、中立の立場を維持し、欧米によるロシアへの制裁には参加していません。 現在も、ロシアから安価な原油を輸入しています。インドにとっては、国境付近で紛争状態にある中国を牽制するためにも、ロシアとの関係を維持したいという国益重視の外交を行っています。 10月4日には、モディ首相はゼレンスキー大統領と電話会談し、「軍事的解決はあり得ない」という見方を伝え、停戦に向けて貢献する用意があると伝えています。 インドと置かれた状況が似ている日本も、世界の平和のために積極的に努力すべきだと思います。 本来、唯物論国家・中国共産党こそ世界の脅威のはずです。 ところが12日に発表された米国の「国家安全保障戦略」では、ロシアを「差し迫った脅威」とし、中国を「最も重大な挑戦」と位置付けています。習近平国家主席の高笑いが聞こえてきそうです。 北朝鮮がミサイル発射を続けていますが、中国と北朝鮮、ロシアという核を保有する三カ国は連携した動きを取っていると見るべきです。 そして、日本はこの三カ国に同時に対峙することはできないという現実に目を向けるべきです。 岸田政権はウクライナに防弾チョッキを送ることから始まり、制裁を強化し続け、敵対姿勢を鮮明にしてきましたが、戦争が長引き物価高の影響も、日本に押し寄せています。 日本人の命を守るためにも、日本人の生活を守るためにも、日本は独自外交を展開し、インドとともにウクライナとロシアの停戦の仲介に力を尽くすべきではないでしょうか。 プーチンの核使用に欧米警戒、終末兵器「ポセイドン」とは【前編】 2022.10.26 https://youtu.be/zg6jipGtxJM 幸福実現党党首 釈量子 ◆世界核戦争の危機 ウクライナとロシアの戦争は世界核戦争に拡大するかもしれない、という危機的状況になってきました。 ウクライナ軍が東部のロシア支配地域に攻勢をかけていましたが、9月30日、プーチン大統領はウクライナ東南部四州の併合を宣言しました。 そして、10月1日の演説の中で「ロシアの領土を守るためにあらゆる手段を講じる」「第二次世界大戦で米国が日本に対して核兵器を使用したことが前例をつくった」と発言しました。 このプーチン大統領の発言は、言い換えると、「ウクライナ東南部四州はロシアの領土になったのだから、これ以上攻撃してきたら核兵器を使用するぞ。第二次大戦では米国も同じように日本の抵抗を抑えるために原爆を落としただろう」ということです。 この発言を、米国はかなり真剣に受け止め、バイデン大統領は10月6日、「プーチン大統領が冗談を言っているわけではない」「核兵器によるアルマゲドン(世界最終戦争)のリスクは1962年のキューバ危機以来、最も高くなっている」と話しています。 ◆「キューバ危機」とは 1962年、米国のケネディ大統領と、ソ連のフルシチョフ大統領の時代に、ソ連がキューバに核兵器を配備しようとしました。 アメリカの「前庭」のようなところにソ連のミサイルが置かれたら、アメリカのほぼ全土が射程に入ります。 結局、ケネディが、キューバをアメリカ海軍で海上封鎖して「ソ連がミサイル基地を撤去しなければ、ソ連との戦争に入る」と強気に出たところ、ソ連はミサイル基地を引き上げ、かろうじて核戦争の危機は回避されました。 第二次大戦で広島・長崎に核を落とされて以降、核戦争の危機が最も高まったのがこの「キューバ危機」と言われます。現在の状況は、そのキューバ危機と同じだ、ということです。 ◆対立構図の変化 10月8日、ウクライナ南部にあるクリミアとロシアを結ぶクリミア橋で爆発が起きました。ロシアはこれをウクライナによるテロだとして報復攻撃し、ウクライナ全土にミサイル攻撃しました。 北大西洋条約機構(NATO)は、ロシアの報復攻撃を厳しく批判し、NATO高官に至っては「ロシアが核兵器を使用すれば、ほぼ確実にNATO加盟国が『物理的な対応』を行う」という踏み込んだ発言をしています。 これは、抑止力を高めるための発言だとは思いますが、ロシアとの直接対決を避けるというこれまでの基本路線が徐々に曖昧になっているのは危険な兆候です。 「ウクライナvsロシア」から、「ウクライナとNATO vsロシア」の対立構図に変わり、アルマゲドン(世界最終戦争)が現実のものになる可能性が高まっています。 ◆ロシアの終末兵器「ポセイドン」とは こうした状況の中、10月2日、イタリア最大の日刊新聞「ラ・レプッブリカ(la Repubblica)」で次のような報道がありました。 「NATOの情報機関が、ロシアの原子力潜水艦ベルゴロド(K-329 Belgorod)が北極圏の白海(White Sea)にある基地を出発し、カラ海(Kara Sea)に向かっている。そこで、ロシアが『ポセイドン』の実験を行うかもしれないと、同盟国に向けて警告を出した。」 この報道をきっかけに、「ポセイドン」という言葉が世界中に広がりました。日本でも報道が出始めています。 「ポセイドン」とは、ギリシャ神話に出てくる海と地震を司る神様の名前でが、NATOが恐れている「ポセイドン」とはどのような兵器なのでしょうか?その実体を見ていきたいと思います。 後編では、核魚雷「ポセイドン」の特徴から見て参ります。 (後編に続く) 北朝鮮ミサイル発射を助ける中露。次に来る核の脅威と日本の打つべき手とは。【後編】 2022.10.19 https://youtu.be/hJVj6B-UXAI (9月7日収録) 幸福実現党党首 釈量子 ◆北朝鮮ミサイル発射のロシアの利点 ロシアは9月30日、ウクライナ東・南部の4州の併合を宣言し、これに対してアメリカのバイデン政権は、ロシアへの経済制裁を拡大したところです。 この時期に、北朝鮮がアメリカへの強い牽制を含んだミサイル発射を繰り返したことについて、アメリカのシンクタンク、CSIS(戦略国際問題研究所)は、次のように指摘しています。 「ロシアのプーチン、中国の習近平の問題で手いっぱいのバイデン政権にさらなる負荷をかけることに利点を見出している」 実際、ロシアにとって北朝鮮のミサイル発射は、アメリカの関心を北朝鮮に向けさせるメリットがあるわけです。 アメリカは、韓国の装備品を買い上げて、ウクライナに送る計画を進めています。北朝鮮にミサイルを発射してもらうことで、ロシアは、この動きを封じようとしているのかもしれません。 特に北朝鮮ミサイルが急速に技術を向上させている背景にロシアの力があるとされます。 9月25日に発射されたミサイルは、「北朝鮮版イスカンデル」と呼ばれ、尾翼を動かして上下に軌道を変化させられるロシアのミサイル「イスカンデル」を改良したと指摘されています。 変則軌道は迎撃が難しいわけです。 ◆北朝鮮の核実験の兆候 今後、さらに懸念されるのは7度目となる核実験です。 今年の3月ごろから、衛星画像による分析などで、北朝鮮が「18年に完全に廃棄した」としていた豊渓里(プンゲリ)の核実験場で、坑道を掘削するなど、核実験再開の準備がなされ、指導者の決断があればいつでもできる状態だとされてきました。 既に北朝鮮は今までの核実験で、大きなロケットに核弾頭を積める程度に小型化することに成功しています。 もう一段の小型化を目指し、核ミサイルの精度を高めるために7回目の核実験を行うことは十分に考えられます。 CSISは、実験が行われるタイミングとして、10月16日に開幕する中国の共産党大会から、アメリカの中間選挙が行われる11月8日の間だろうと予想していますが、中国やアメリカが国内問題で手いっぱいのタイミングで行うかもしれません。 ◆日本としてどんな手を打つか 度重なるミサイル発射について、日本政府は「北朝鮮に抗議し、最も強い言葉で非難した」とお決まりのセリフを繰り返すばかりです。 ミサイル発射が繰り返されているのは、中国、ロシアとの連携があってのことであり、西側諸国がロシアを追い込み続けた場合、3つの核保有国が今後、想定外の事態を起こしかねず、もはや一刻の猶予も残されていません。 具体的な施策としては、核装備への着手です。 中露北の3つの核保有国に対峙するには、日本も「いざとなったら核を使える」という状況をつくらなくては、核の使用を思いとどまらせることはできないのです。 同盟国であるアメリカも北朝鮮のみならず中国やロシアから報復を受けるリスクを負いながら日本に核の傘を提供してくれる保障はありません。 もう一つは、外交の鉄則である「敵を減らす外交」を展開すること。具体的には中国や北朝鮮の背後に位置するロシアとの友好の道を残しておくことです。 日本はアメリカに追随してロシアを非難し、ロシアを中国側に追い込んでいます。 しかし、アメリカは中国とロシアを同時に敵に回す余裕などありません。中国、ロシア、北朝鮮を同時に敵に回してしまう恐ろしさに気付くべきです。 トランプ政権時代のアメリカは北朝鮮と直接交渉し、中国と北朝鮮の関係を引き離すと共に、ロシアのプーチン大統領と友好関係を結び、中国を孤立させようとしました。 バイデン政権はこの真逆の政策を取り、北朝鮮との交渉を断ち、ロシアを挑発して西側と対立させ、中国、ロシア、北朝鮮を結び付けることになりました。 こうして、世界大戦の構図ができてしまい、最悪のシナリオで進んでいます。 アメリカは今後も、ロシア制裁をさらに強めていくでしょうが、日本は大局的視点に立ち、最大の脅威である唯物論国家の中国を包囲しつつ、中国、ロシア、北朝鮮の仲を分断する外交を展開していかないといけないはずです。 繰り返しますが、日本を守るため、もはや猶予はあまり残されていません。生き延びようとする意欲のない国は、滅びていきます。 政府は、言葉による非難だけではなく、現状の危機を正しく認識し、国民を守るための具体的な一手を打つべきだと思います。 北朝鮮ミサイル発射を助ける中露。次に来る核の脅威と日本の打つべき手とは。【前編】 2022.10.18 (9月7日収録) 幸福実現党党首 釈量子 ◆北朝鮮のミサイル発射 9月下旬から10月上旬にかけて北朝鮮が次々にミサイルを発射しています。 特に10月4日に発射された弾道ミサイルは、青森県の上空を飛び超えて太平洋に落下しました。 日本の上空を通過したのは2017年9月以来、5年ぶりで、飛行距離は4600キロに達し、過去最長です。 これは北鮮から約3400キロの距離にあるグアムが射程圏内に入ったということであり、「いつでもグアムに撃てる」というアメリカに対する強烈なメッセージと言えます。 さらに、この2日後の10月6日にも、午前6時過ぎに弾道ミサイル2発が発射され、北朝鮮東岸付近と日本海に落下しました。(その後、北朝鮮は、9日未明に2発、14日未明に1発のミサイルを発射) いずれも日本のEEZ(排他的経済水域)の外側に落下したとのことですが、日本にとって脅威が高まっていることは間違いありません。 ◆北朝鮮ミサイル発射の背景 ここで強調しておきたいのは、日本の安全保障にとっての脅威は、北朝鮮のミサイル発射という単体の問題だけではないということです。 もはや北朝鮮のミサイルに対する対処だけを考えているのでは、問題の本質は見えません。 つまり、繰り返しミサイルを発射する北朝鮮の背後に、中国とロシアがいて、3つの核保有国が連携するかのような動きを取っています。 これにより、日本は中露北の、 」@―えいわゆる「三正面」を強いられる形になりつつあります。 日本は、台湾・沖縄の危機が目前だということで、中国の脅威には備えようとしてきました。 しかし、今年2月にウクライナで戦争がはじまり、日本はロシアと北朝鮮も同時に相手にしなければならなくなりました。 ところが、日本の政府もマスコミも「見たくない現実」をみない雰囲気になっています。 9月26日~30日まで、アメリカの原子力空母「ロナルド・レーガン」が参加する米韓合同軍事演習が行われ、30日には日本も加わりました。 これは北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の対応などを想定した演習で、アメリカの空母が参加する演習は2017年以来、5年ぶりでした。 そして北朝鮮は、この軍事演習のタイミングに合わせて、25日、28日、29日にミサイルを発射しました。 ◆北朝鮮が強気になれる理由 これまでも軍事演習に対するけん制とみられるミサイル発射はありましたが、演習の前後に少し日にちを外して行われてきました。 ところが今回、米韓軍事演習の真っただ中の29日、アメリカのハリス副大統領が韓国を訪れ、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領との会談で北朝鮮を非難し、さらに南北の軍事境界線を挟む非武装地帯も視察もするタイミングにぶつけてミサイルを発射しました。 以前には考えられないことで、アメリカがどれほど舐められているかが分かります。 そして、10月4日はグアムを射程圏内に入れていることをアピールするかのように、弾道ミサイルを通常軌道で発射しています。 北朝鮮がアメリカに対して、かつてないほど挑発的な態度に出ています。これは中国とロシアと示し合わせて行っている恐れがあります。 象徴的だったのは、5日の日本上空を飛び越えた中距離弾の発射に対して、国連安全保障理事会(15カ国)が緊急会合を開き、北朝鮮に対する「報道声明」を出そうとした動きに対して、中国とロシアが強く反対しています。 ちなみに、中国の外務省は北朝鮮のミサイルについて、米韓合同軍事演習などを行ったアメリカを非難するコメントを出しています。 (後編につづく) 日本企業で進む「脱中国」3つの理由【後編】 2022.10.05 https://youtu.be/yQ0bqUImVno 幸福実現党党首 釈量子 前編では、日本の製造業の「チャイナリスク」として(1)ゼロコロナ政策、(2)経済安全保障をあげました。 「チャイナリスク」の三つ目は、台湾有事です。 (3)台湾有事 今年秋の党大会では習近平氏が異例の3期目に入り、「偉大な領袖」と呼ばれた毛沢東に並ぶ「領袖」が公式に復活し、「人民の領袖」と呼ばれるのではないかと言われています。 習近平氏は一貫して「台湾再統一に際して、武力統一を排除しない」と明言しています。 米国下院議長のナンシー・ペロシ氏が訪台してから、人民解放軍による台湾海峡の中間線を超える挑発は常態化しています。 もし台湾有事が起きれば、日本は中国とは敵対関係になり、中国に進出している日本企業とその社員は人質に取られることも想定されます。 何年も積み上げてきた事業が台無しになるかもしれず、言いがかりをつけて、日本企業の社員が不当に逮捕されることも十分あり得ます。 中国経済の低迷が台湾有事を引き起こす可能性もあります。 中国のGDPは不動産市場が3割を占めます。しかし現在、不動産の売れ行きが減り、不動産価格も下落しています。 中国では7月以降、物件の引き渡しが遅れていることに抗議して、数千人規模で、マンション購入者が住宅ローンの返済を拒否しています。 日本と異なり、中国では購入契約を結んだ時点で頭金を支払い、物件の受け渡し前にローンの返済が始まります。 専門家の中には「中国経済はすでにマイナス成長に陥っている」と指摘する方もいます。 中国経済が著しく低迷し、成長の見込みがなくなれば、中国共産党による統治の正当性が揺らぎます。 そのような場合には、党の正当性を証明するために、台湾の武力統一に動く可能性が高まります。 いずれにせよ、台湾有事は「あるか、ないか」ではなく、「いつあるのか」と考えるべきです。日本企業が脱中国に動き、不測の事態に備えるのは賢明な判断だと思います。 ◆日本企業は国内回帰を! このように中国での事業リスクを感じて、中国から撤退しコストの安いインドやベトナム、マレーシアに生産拠点を移す企業が増えています。 例えば、アップルはすでにインドでiPhoneを生産し、今年6月にはベトナムでiPadを生産すると発表しています。 日本にとっては、日本企業の国内回帰を促したいところです。 特に、中国に生産を大きく依存している製品のうち、付加価値の高いものは日本に移転してほしいと思います。 資生堂やマツダなどの工場が日本に帰ってくれば、日本の地方経済が活性化するのは間違いありません。 ちなみに、米国では、トランプ政権の時に企業の国内回帰を促しましたが、バイデン政権も踏襲し、米国の雇用を創出しています。 つまり、共和党、民主党ともに国内回帰を推し進めています。 米国への国内回帰や直接投資によって、雇用は2019年以降右肩上がりになり、2022年には約35万人の雇用を生んでいます。 日本政府も日本経済をもっと良くするために、国内投資を増やすために努力しなくてはなりません。 今後も新型コロナの感染拡大や戦争のリスクがあることを考えると、地方経済をインバウンドのみに頼るのは危険です。 企業が地方で工場を建設し、社員を採用し、社員が生活すれば、立派な経済圏が誕生します。地方経済の基盤はもっと強いものになります。 ◆企業の国内回帰の課題 しかし日本企業の国内回帰を促すにあたって、大きなボトルネックがあります。それは、アジアの諸外国に比べて、日本の電力料金が高いということです。 日本企業の国内回帰を推し進めるためには、電力料金を抑え、安定した電力供給を確保しなくてはなりません。 そのために安全基準を満たした原発を再稼働させることが必要です。国内回帰をする企業の法人税を安くするという政策もあります。 円安が進んでいることも日本企業の国内回帰を促す理由になります。他にも考え得る対策を打って、このチャンスを生かすべきではないでしょうか。 日本企業で進む「脱中国」3つの理由【前編】 2022.10.04 https://youtu.be/yQ0bqUImVno 幸福実現党党首 釈量子 ◆脱中国の動き 韓国や米国に比べて対中依存度が高い日本ですが、いよいよ日本企業の脱中国の動きが強くなってきました。 自動車メーカーのホンダは、現在、二輪、四輪、エンジン工場などホンダの生産拠点は日本や中国、米国、カナダなど24カ国に及びます。 今後、上海のロックダウンで生産に影響が出たことを受けて、中国からの部品供給を東南アジアやインドなどにシフトできるか検討すると言われています。 また、マツダは上海のロックダウンや半導体不足の影響で、4~6月期の販売台数が前年同期比で34%も減少しました。 今後、国内での部品生産を増やし、日本国内で安定した生産活動を行う予定です。 他にも、資生堂はこの3年間で国内工場を6か所に倍増させました。「SHISEIDO」「エリクシール」といった主力商品は、ほぼ全てが国内生産になると言います。 資生堂は、品質の高さを重要視し、信頼の高い「メイド・イン・ジャパン」を売りにするつもりで、こうした企業が相次いでいます。 ◆中国撤退を決めた三つの理由 以前、尖閣諸島を国有化した際に、激しい反日デモや不買運動が起きました。 これを中国特有の「チャイナリスク」と呼びました。しかしここにきて中国の新たなリスクが顕在化しています。 (1)ゼロコロナ政策 一点目は、ゼロコロナ政策です。中国の習近平氏は、「ゼロコロナ政策」を採用し、新型コロナを完全に封じ込めるため、私権を無視し、隔離を強行しました。 中国の上海では3月末から約2ヶ月間、新型コロナ拡大によるロックダウンが行われ、日本企業の生産活動を制約し、大きな損害を与えました。 企業経営に大きな影響を与える政策が、強権のもとでいとも簡単に行われたのを見て、日本企業は中国リスクを実感したわけです。 ちなみに現在も、四川省の成都など、中国人口3億人をカバーする地域でロックダウンが行われています。 中国の電力不足も影響し、今年夏、中国は記録的な猛暑によって電力需要が増大するとともに、雨不足で水力発電量が減少しました。 中国政府は対策として、電力使用量が多い工場に生産の一時停止を通知しました。8月中旬、四川省にあるトヨタ自動車の工場の生産も一時停止しました。 (2)経済安全保障 二点目は、経済安全保障です。現在、米中対立が激しさを増す中、日本でも経済安全保障の観点から技術流出に対する意識が高まっています。 特に、先端技術を持つ日本企業にとっては、経済安全保障は重要な課題です。なぜなら、技術・データの流出が日本企業の優位性や日本の安全保障に与える影響が大きいからです。 そんな中、中国政府は昨年9月、中国でのデータの取り扱いを規制する「データ安全法」を施行しました。 これは、企業が持つデータの管理を強化するものです。同法では対象とするデータの具体例として工業、通信、交通、金融、資源、ヘルスケア、教育、技術などを挙げており、これらが主な監視対象となります。 日本企業は経済安全保障の観点から、技術流出や機密情報が漏えいすることを警戒しているわけです。 また、中国政府は、ハイテク製品の開発や設計などの全工程を中国国内で行うことを事実上強制する新たな規制を導入することを検討しています。 現在、複合機やプリンターといった事務機器を対象としていますが、今後は半導体などのハイテク製品まで範囲を広げることを検討しています。 この規制が導入されれば、日本で商品開発を行い、中国で組み立てるような企業は、中国で販売できなくなります。 (後編につづく) 海上封鎖で食料断絶?台湾情勢の緊迫化で迫る日本の食料危機【後編】 2022.08.29 https://youtu.be/ugpWvLgFYns 幸福実現党党首 釈量子 ◆危機の時代に求められる農政のイノベーションを! 安倍政権で掲げられた成長戦略の1つの柱でもあった農業分野ですが、改革は遅々として進んでいないのが実情でしょう。 2020年度版の「食料・農業・農村基本計画」においては、それまでの「主業農家や法人を中心に大規模化していく」という方針を撤回し、「担い手の多様化」という言葉でまとめられ農政改革は「後退」を始めていると考えられます。 また、2018年には建前上廃止となった減反政策ですが、コメ農業が盛んな地域ほど、未だに減反がまかり通っているのが現状です。その中心となるのが、食用の米から飼料米、エサ米への転作です。 飼料自給率も低い日本にとって、「国産化」と最もらしいことを掲げていますが、コメは飼料にするには高コストで向かないと考えるのが世界基準です。 現に、人間が食べるようなコシヒカリを豚用の飼料米として生産しているケースもあると言われています。 そしてこれ全部、国民の税金です。同等の金額(約950億円)で、6倍以上の飼料用トウモロコシを輸入できるほどの高コストぶりです。 危機の時代に自給体制は必要ではありますが、コスト感覚のなさは相変わらずです。では、日本農政のイノベーションに何が必要なのでしょうか? ◆日本農政のイノベーション (1)コメの増産 まず一刻も早く求められるのは、コメの生産調整の完全撤廃です。失われた水田を可能な限り、少しずつ取り戻し、思い切りコメの増産に舵を切るべきです。 また、海外向けにどんどん輸出すべきです。このように国内需要を大きく超えた生産余力を有することが、危機の時代には国民の命を救う備蓄の役割を果たすことになるのです。 畑作では同じ農作物を作り続けると、収量の減少や病害虫の発生など「連作障害」が起こりますが、稲作では「連作障害」は起きません。 また、小麦などと異なり、食べるのに加工する必要もありません。食料安全保障上、安定性が高く、危機の時代に最適な穀物こそコメだと言えます。 また、ただでさえ穀物市場は生産量に比べ、取引量が少なく「薄い市場」ですが、コメ取引は小麦の4分の1と、極めて「薄い」商品です。 コメの生産潜在力を多分に持つ日本は、有事において国際社会で大きな影響力を発揮することも可能です。 (2)戦略的な穀物備蓄 またコメ増産と共に、急がれるのは戦略的な食糧(穀物)備蓄体制の構築でしょう。 現時点で、コメについては約100万トンが政府備蓄、約270~280万トンは民間が抱える在庫と言われています。 しかし、もって半年、全国民がコメしか食べられない状況と仮定すれば、2~3か月程度分しかありません。 少なくとも年単位の兵糧攻めに耐えられるだけの備蓄体制は必要ではないでしょうか。同時に、小麦(現状2.3か月分)、大豆、トウモロコシなど(現状は飼料向け100万トン)を大量に輸入して備蓄しておく必要があります。特に、たんぱく質の供給源として大豆の備蓄は必須だと言えるでしょう。 仮に、減反政策に投じられる財源(3500億円)が活用できるならば、約2,000億円を備蓄設備とコメ以外の小麦や大豆、トウモロコシの輸入拡大に振り分ける方がはるかに効果的でしょう。 同時に、天候不順による不作などで経営が苦しくなる主業農家に限定して、EUが行っているような直接支払いなどのセーフティーネットを構築することで、日本の安全保障を食料面で支えてくれている農家を本当の意味で守ることが出来ます。 これは約1,500億円で実現できると、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁氏が試算されています。 最後に付け加えるならば、食料生産に不可欠な肥料の確保です。 前回の動画同様、肥料自給率ほぼゼロ%の日本はその多くをロシアや中国、ベラルーシなどに依存しており、ロシアを敵性国に回したことで肥料の確保が大変厳しい状況です。 堆肥を最大限活用しようと努力する自治体が早くも出始めていますが、国を挙げての食料増産となれば、化学肥料は必要不可欠です。 肥料の自国生産が困難ならば、何とかロシアからの輸入再開の糸口を見つける外交努力を行うべきです。 また、シーレーンリスクを負わないロシアとの関係改善を果たせれば、肥料のみならず、大豆やとうもろこしなど、不足が見込まれる穀物の確保にもつながるかもしれません。 ◆今こそ農政の転換を図る時 冒頭でも申し上げましたが、いつ何時、日本が有事のど真ん中に立たされてもおかしくない状況がすぐそこまできています。 そんな中、軍事防衛においても、エネルギー・食料など兵站面においても、不安が山積なのが日本という国です。 現時点で本当に食料輸入が途絶すると、終戦直後の食料事情よりも、酷い状況になるとも言われており、先ほどの山下一仁氏によれば、餓死者は国民の半数にあたる6000万人に上るという試算が出ているくらいです。 この危機の時代に一刻も早く、一部の既得権益を守るだけの世界でも異常な農政から、日本国民の豊かさと生命を守り抜く、あるべき農政への転換を図るところから始めるべきではないでしょうか。 海上封鎖で食料断絶?台湾情勢の緊迫化で迫る日本の食料危機【中編】 2022.08.28 https://youtu.be/ugpWvLgFYns 幸福実現党党首 釈量子 ◆失った水田面積は四国一つ分!?コメの生産調整(減反)の驚くべき実態 終戦直後の900万トンから一時は1400万トンを超えるまでコメの生産力を拡大した日本でしたが、1970年頃から価格維持を目的としたコメの減反が始まり、なんと今では700万トンまで半減しています。 減反に応じ、他の作物に転作するコメ農家に、補助金を支払うことで生産量の調整を図っていきました。が、莫大な財政支出を伴って、自国の主力の穀物生産を減少させた事例は日本以外に見つけることは難しいと言えます。 実際に、米国や中国、インドといった生産国を中心に、この半世紀でコメ生産は3倍規模まで増産、世界全体では3.5倍以上も増産しています。 一方で日本は半減、あまりにも逆行しています。(グラフ)これはコメだけではありません。この半世紀で小麦、トウモロコシなど、他の穀物においても減産している国はほぼ皆無です。 【参考】この国の食糧安保を危うくしたのは誰か https:/cigs.canon/article/20220602_6800.html 【参考】「武力攻撃より食料不足で壊滅」米の生産を減らし続ける日本が抱える本当の危機 https://www.gentosha.jp/article/21521/ また半世紀続いた減反政策によって、失われたものは少なくありません。 まず、農業にとって最も大事な資源である「農地」です。1970年には350万haあった水田のうち、200万haが水田として活用されなくなっています。 200万ha(20,000㎢)は、四国4県分(18,297㎢)よりも広いと考えれば、半世紀で失われてしまった水田は空前絶後の規模だと分かります。 これを取り戻すことは容易なことではありません。 また、「智慧」の喪失です。「たくさん作るな」という指令に等しい減反によって、特に、それまで精力的に取り組んできたコメを沢山作る技術(単収増加)がタブーとなり、失われていきました。 そして、農村からコメ農業への「情熱」「やる気」を失わせた点が、最も大きいでしょう。 コメ作りで生計を立てる主業農家ではなく、会社勤めをしながら、週末に片手間でコメを作るような零細(兼業)農家に補助金を支払うといった、極めて不公平で社会主義的な仕組みを作ったことで、農村から「勤勉の精神」が失われました。 そして、補助金と高い米価、また農地の転用期待、要するに「将来、持っている農地が高く売れるかもしれない」といった期待感などを甘いエサとして、農業を本業とするつもりがない零細(兼業)農家を、大量に農業に引き留めてしまいました。 これこそ農地集約化、大規模化などを阻害し、農業改革が一向に進まない真なる要因だと言えるでしょう。では、なぜこのような不合理極まりない政策が、半世紀もの間、続いてしまったのでしょうか。 それはひとえに、零細・中小農家へのバラマキによる見返りとして、農村に堅固な票田が出来るという農林族議員の利得や金融機能(JAバンク)を柱に経済基盤を拡大し続けた農協組織のお互いの「既得権益」を守りあうという強固な結束があったからです。 ◆もう一つの異常なコメ農政 ~高すぎる関税障壁とその犠牲~ 以上のように、コメの生産調整(減反)によって、莫大な財政支出を行いながらコメの生産量を減らし、高い米価を維持してきました。 いわば国民に対して「税金」と「商品価格」の二重の負担を強制しつつ、自国の食料安全保障を脆弱化するという、国際的には異常すぎる政策が罷り通っています。 しかし、コメ農政の異常さはこれで終わりません。 それが「高すぎる関税」です。コメにかかる関税は従量税で1㎏あたり341円ですが、国内米価となる約240円を100円以上も上回っているわけです。 要するに、輸入される米価が仮に0円/kgでも、341円となるため、誰も買いません。このように、高すぎる関税障壁を築くことで、海外から実質的に輸入されない仕組みを作っています。 関税交渉の時、コメの高い関税を死守するために、バーターとしてほかの物品の完全を下げるなどしているわけですが、この数十年の差し出した犠牲はあまりに多く、莫大な経済的利益が失われたと言っても言い過ぎではないと思います。 ここで、国の農業保護の度合いを観てみたいと思います。 よく日本はアメリカよりも低いと言われていて、フードスタンプなど食糧費の補助をしていますが、OECDの指標でPSE(Producer Support Estimate:生産者支持推定量)という指標があります。 これは財政支出における「納税者負担」と、関税も含めた国内外の価格差から算出する「消費者負担」の合計から算出したものです。 それをみると、2020年時点で日本は40.9%と、アメリカ11.0%、EU19.3%と比べて際立って高く、主要国で3本の指に入る農業保護国となっています。 (https://cigs.canon/article/20220104_6468.html) ただ、日本の場合、農業保護といっても、(主業)農家が守られるのではなく、農協組織と農林系議員の間の「既得権益」が守られるという真実は、何度繰り返してもいい足りないくらいです。 (後編につづく) すべてを表示する « Previous 1 … 3 4 5 6 7 … 98 Next »