Home/ 外交・国際政治 外交・国際政治 ウクライナ侵攻で迫る第3次世界大戦、日本も戦場に【第1回】 2022.03.11 https://youtu.be/OoVkNQZ7kpo 幸福実現党党首 釈量子 ◆迫る第三次世界大戦 今回は、3回に分けて、ウクライナ情勢が世界に与える影響について考えてみたいと思います。 (1)欧米の対ロ制裁 米国はロシアに対して次々と経済制裁を行っており、その中でも「SWIFT(国際銀行間通信協会)からの排除」は核爆弾級の制裁だと言われています。 SWIFTは、国をまたいで送金する際に利用するインフラですが、ロシアの銀行がこれを利用できなくなることは、「世界経済からの排除」を意味します。 ただ、ドイツやフランスはロシアから天然ガスを輸入しているので、天然ガスの支払いができるロシアの銀行は対象外にはしていますが、厳しい状況に変わりはありません。 また、アメリカは、ロシア中央銀行の外貨資産を凍結し、日本も追随しました。 ロシアは、2014年のクリミア紛争の教訓で外貨を減らしてきていましたが、現在ロシアの通貨ルーブルは20%以上下落しています。 本来なら、ロシアの中央銀行は下落を止めるために、外貨を売って、ルーブルを買い支えなくてはなりません。しかし、外貨資産の凍結により、買い支えることができません。 ロシアの中央銀行は仕方なく、金利を9.5%から20%に引き上げて買ってもらいやすくしているわけですが、これも厳しい状況です。 他にも、プーチン氏やラブロフ外相の個人資産も凍結しています。 こうした欧米の制裁に対して、プーチン大統領は3月5日、「欧米の対ロ制裁は宣戦布告に等しい」と述べています。 但し、「神のご加護で、まだその事態には至っていない」と付け加え、米欧との戦争状態ではないと主張しました。 こうした経過で頭に浮かぶのが戦前の日本です。ABCD包囲網を敷かれて、原油の輸入ルートを閉ざされ、開戦に踏み切った状況に似ているような気がします。 つまり、今回の米欧の金融制裁、経済制裁がきっかけで、世界大戦に突入する可能性も出てきているわけです。 (2)飛行禁止区域の設定 ウクライナのゼレンスキー大統領はNATOに「ウクライナ上空に飛行禁止区域を設けてほしい」と要望しました。 飛行禁止区域を設けるということは、ロシアの戦闘機がウクライナの領空内に入ってきたら、NATOが撃ち落とすことになります。 これはNATOの参戦をウクライナが要求するのと一緒で、米国を含むNATOはそれはできないと即座に拒否しています。 プーチン大統領も「ウクライナに飛行禁止区域を設けることは、破滅的な結末をもたらす」と牽制しました。 (3)核恫喝 さらに心配なのが、核戦争の危機が高まっていることです。 2月27日、プーチン大統領は核戦力を運用する部隊に「任務遂行のための高度な警戒態勢」に入るように指示を出しました。 これは、ウクライナを支援する米欧に対して、核兵器の使用もあり得ると警告するものです。いわゆる核恫喝です。 そしてロシアの隣国ベラルーシは、「ロシアの核兵器受け入れ」を行うために、憲法を改正しました。 ◆冷戦時代に逆戻り 現在、NATOの核保有国はアメリカとイギリスとフランスで、ドイツ、ベルギー、イタリア、オランダ、トルコの5か国は自国に米国の核兵器を受け入れ、共同運用(核シェアリング)しています。 ベラルーシが核配備することになれば、米国やNATOに対して核配備の増強を促すことになり、核軍縮どころか、お互いが核で抑止するという冷戦時代の方向に逆戻りします。 さらに、これまでNATOに加盟していなかった北欧のフィンランドとスウェーデンでは、NATOに加盟しようとする動きが出てきました。 EUには所属していてもNATOに入っていなかった国もありますが、ロシアのウクライナ侵攻を見て、NATOに加盟していなければ武器を与えられるだけで、実際に部隊を派遣してくれないことがはっきりしたからです。 ロシアの外務省は「もしスウェーデンとフィンランドがNATOに加盟すれば、軍事・政治面で深刻な結果になる」と警告しています。 ◆バイデンの二つの選択肢 ロシアはNATO不拡大を要求していましたが、NATO加盟が加熱して、分断がどんどん進んでしまっています。こうした状況の中、アメリカもやることはあまりありません。 バイデン大統領は、ウクライナ侵攻に対する対応について「選択肢は二つ。ロシアとの戦争に突入し、第3次世界大戦を始めるか、代償を払わせるかだ」と答えています。 しかしバイデン大統領が言う代償とは、前述の経済制裁のことです。 これに対して、ロシアのラブロフ外相はアルジャジーラの取材で「第3次大戦の瀬戸際にあるのか」と質問され、「バイデン氏に聞くしかない。第3次大戦は、核戦争以外にない」と警告しました。 この様に、ロシアと米欧の関係を見ましたが、対立は最高度に高まっています。 (第2回につづく) ウクライナ紛争が日本に飛び火?大炎上「憲法9条で国は守れるのか?」論議【後編】 2022.03.06 https://youtu.be/gGpWqFruBAA 幸福実現党党首 釈量子 ◆日本復興の鍵を握る2つの証言 前編では、現代政治の元凶でもある吉田茂の問題点を指摘してきました。さらに具体的に見て参ります。 1949年に毛沢東の中華人民共和国が建国され、その後、北朝鮮が中国軍と一緒になって韓国に攻め込んできました。これが1950年の「朝鮮戦争」です。 この時、共産主義の脅威を感じたマッカーサーは考えを変えたのです。 1951年5月3日に、アメリカ上院軍事・外交合同委員会でのマッカーサーは、「彼ら(日本)が戦争に飛び込んでいった動機は、大部分が安全保障の必要に迫られてのことだった」と証言しました。 また、東条英機も「事、ここに至っては自存自衛上開戦止むを得ず」と、真珠湾攻撃に至った当時の状況を東京裁判で証言しています。 生前、渡部昇一氏は、この「マッカーサーの証言」と「東条英機の証言」が広く知られるようになれば、日本人の精神が復興していくに違いないと述べられています。 そして、「戦場で倒れ亡くなった人たちも、彼らの死はけっして無駄ではなかった。日本を守るために戦ってくれたと、もっと誇りに思ったのではないか」と指摘しています。 ◆再軍備より金儲けを選んだ戦後日本 そのマッカーサーが日本に「再軍備」を促した時に、それ否定したのが時の首相、吉田茂です。吉田茂は、「アメリカを番犬として飼っていると思えばいい」と考えました。 この「非武装中立」「われ関せず」の考えが現在まで尾を引いてしまっています。 吉田茂が退陣した後、1960年代に入ると、その薫陶を受けた、池田勇人首相が「所得倍増計画」を打ち出して「高度経済成長」を実現しました。 この成功体験があだとなって、「日本が発展できたのは、吉田路線のおかげだ」と吉田茂は「神話化」されていきました。 こうして「安全保障はアメリカに任せて、日本は金儲けしていればいい」という考えが、日本にしみついていったわけです。 ついには、そうした考えが「吉田ドクトリン」となって、「憲法9条の守護神」となってしまっています。 しかし、軍隊無き国家には外交もなく、政治もありません。 ◆「吉田ドクトリン」の代償 現在のウクライナ問題も、反射的にアメリカに追随しているだけで、独自の判断で外交ができているとは言えません。 また、欧米の先進国が中国のウイグル・ジェノサイドを批判する中、日本は名指しで中国の批判もできません。 1989年の天安門事件のときには、当時の海部俊樹首相が西側諸国の対中包囲網をいち早く破って制裁を解除したことで、中国を太らせてしまいました。 大川隆法総裁は、「吉田ドクトリン」に関して、「この罪には、やはり、『マルクスに次ぐぐらいの悪さ』があるのではないでしょうか」と指摘しています。(大川隆法著『国家繁栄の条件』より) このままだと、経済的利益のみを考えて中国の悪を正すということがバカバカしく、見えてしまいます。 また、国連もあてにならず、中国と戦争になるくらいなら属国になるほうがマシだという意見も出かねません。 これらは「吉田ドクトリン」の毒を国民の大多数が飲まされ続けてきた代償だと言えます。 ◆いまこそ憲法改正を いまウクライナを見て、日本も憲法改正まではできなくても、できることを進めなくてはならないという声も上がっています。 この国を死滅させようとしている「マッカーサー憲法」と、「吉田茂ドクトリン」に基づく、戦後日本の奴隷根性を払拭しなければなりません。 「正義と平和、独立自尊が国際関係の基本」です。 アフガンに続き、ウクライナのバイデン大統領の大失態を見て、「考えることができる人」をつくっていかなければなりません。 神仏の守りたる、この日本の国が、悪魔の支配下にはいることは、断じて許すことはできないのです。 戦後の平和主義の代償というものを考えた時に、今こそ「吉田茂の洗脳」から脱するときではないでしょうか。 ウクライナ紛争が日本に飛び火?大炎上「憲法9条で国は守れるのか?」論議【前編】 2022.03.05 https://youtu.be/gGpWqFruBAA 幸福実現党党首 釈量子 ◆ウクライナ紛争で「憲法9条」が炎上 2月24日、ロシアがウクライナを侵攻し、世界は騒然としています。 特に「米軍はウクライナでの紛争に関与しない。ウクライナでは戦わない」という「バイデン発言」が軍事侵攻を招いてしまったことに批判も集まっています。 ウクライナがそうなら、台湾危機が起きた場合、アメリカは台湾を守ってくれないのではないかという懸念も生まれています。 日本では、このウクライナ情勢がいわゆる「Wake up call」となり、安全保障に関する踏み込んだ議論が高まっています。 たとえば、安倍元首相が「核シェアリング」に言及したり、非核三原則の「核を持ち込ませず」を変えるべきだというような議論がなされています。 一方、共産党の志位委員長はツイッターで、「仮にプーチン氏のようなリーダーが選ばれても、他国に侵略させないための条項が憲法9条なのです」と主張し、これが炎上して、保守系の識者や政治家から反論があがっています。 日本維新の会の松井代表は「志位さん、共産党はこれまで9条で他国から侵略されないと仰っていたのでは?」とツイッターでつぶやきました。 また、自民党の細野豪志氏は「志位委員長のロジックでは他国のための憲法9条になってしまう」と指摘しています。 志位さんは「日本にプーチンのような独裁者が出ても大丈夫だ!」というわけで、「日本が一番危険なんだ。日本さえ牙を抜けば世界は平和だ」という考えが骨の髄まで染み込んでいるからです。 しかし「日本の伝統的な戦後の価値観を引きずった自虐史観に基づいて、日本さえ爪を切っておれば、牙を抜いておけば、世界平和になる」という思想は、戦後の日本の政治そのものに根深くあります。 北朝鮮にいくらミサイルを発射されても「遺憾です」しか言えない政治の根源はどこかを直視しなければ、この問題は解決がつきません。 ◆こんな日本にだれがした では、こんな日本にだれがしたのか。その現代政治の元凶は、はっきりと言ってしまえば、吉田茂首相なのです。 吉田首相は、「吉田学校」と呼ばれるように、池田勇人や佐藤栄作などの人材が輩出され、自民党の保守本流をつくり上げたと言われています。 現在の岸田首相が所属する「宏池会系」も吉田首相からの流れです。しかし、歴史を見てみると、本当に保守と言えるのかその流れを見て参ります。 1945年、先の大戦に負けた日本に、進駐したGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は、日本の非軍事化と武装解除を進めます。 同時に、日本を弱体化するために、日本の強みの根源である「宗教」を取り上げました。 憲法においても「政教分離」が定められると、「政治と教育から宗教を遠ざけたら日本を弱くできる」と考えました。 そして、「宗教は政治に関わってはいけない」「公立校で宗教教育をしてはいけない」という考え方が、私たちの「常識」として深く根付いてしまいました。 結果、背骨が抜かれた日本は、クラゲのような軟体動物になり、自分で立つこともできず、漂流していきました。 それによって、自分の国を自分で守るということができなくなってしまったのです。 (後編につづく) 米大統領選2024 トランプ復活の兆し【後編】 2022.02.27 https://youtu.be/K3fnikz6Vio 幸福実現党党首 釈量子 【前編】で、トランプのバイデン批判として「(1)アフガニスタン撤退の大失敗」を取り上げましたが、その続きからです。 ◆トランプのバイデン批判 (2)パリ協定に復帰し、インフレ招く 二点目は、バイデン政権がパリ協定に復帰し、インフレを招いたことです。 パリ協定というのは、地球の温暖化に関する取り決めですが、トランプ政権の時代に、大胆な規制緩和を行って、シェールオイルの大増産を可能にし、米国は原油の輸出国になりました。 しかし、バイデン政権になり、環境規制が強くなって、現在、シェールオイルの新規採掘ができない状況にあります。 原油が高いのだから、もっとシェールオイルを増産すればいいのにと思うのですが、自縄自縛になっているわけです。 これも、トランプがバイデンを無能だと評価する理由の一つとして次のように述べています。 「(バイデン大統領が)パリ協定に復帰したことで、1年間でガス料金が2倍以上になってしまった。そして、OPECに増産をお願いする羽目になった」 個別にみると、ガソリンが40%増、食料品が7%増。家賃が3.8%増となっており、発電、輸送など、あらゆる生活コストを上げ、コストプッシュ型のインフレが進んでいます。 インフレが進むと生活がどんどん苦しくなっていきます。これも、バイデン支持率が下がっている原因です。 (3)2024年にホワイトハウスを奪還する 他にも、トランプは、「女性の陸上競技に男性が参加することを禁止する」とハッキリ言いました。 米国では、いわゆる女性を自認する男性が女性用トイレを利用したり、女性用サウナに入ったりすることが認められている州があります。 最近では、女性の陸上競技に男性が参加して優勝し、女性のアスリートから訴えられる事件も起きています。 そして、「我々はコロナを解き放った中国に責任を取らせるつもりだ。中国が引き起こした数十兆ドルの損害賠償責任を負わせるつもりだ」とハッキリ主張しました。 我々、幸福実現党も1月の記者会見で訴えましたが、現在、世界の首脳でこれを言える人は一人もいません。 さらに、今年の秋には中間選挙を控えていますが、トランプ氏は、次のように訴え大歓声で会場は満たされました。 「今年は下院議会と上院議会を取り戻し、本来のアメリカを取り戻す年にしたい。2024年には、我らが愛する美しい、美しいホワイトハウスを取り戻したい」 ◆トランプの宗教的価値観 トランプ大統領の主張は一見破天荒なように見えますが、そのバックボーンには、建国の父たちが大事にしていたユダヤ・キリスト教の宗教的価値観があります。 日本では殆ど報道はありませんでしたが、2月13日韓国ソウルで「世界サミット」が開催され、元首脳や現職の首脳が参加しました。トランプ氏もネットで参加し、演説を行いました。 トランプ氏はその演説の中で、トランプ自身の宗教的価値観を明確に述べています。 それは、「すべての人が政府ではなく、全能の神の手によって与えられる権利、自由、尊厳を享受している」とした上で、「信教の自由はすべての自由の基礎だ」というものです。 これは、米国の建国の父たちが起草した独立宣言「すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」と同じ価値観です。 自由というものは、政府から与えられるものではない。全能の神から与えられるものなのだ。これは大事な考え方です。 政府の役割は神から与えられた自由を制限しないように、規制緩和や減税をすることであり、「小さな政府」を目指すべきです。 また、トランプが中国と真っ向から戦うことができた最大の理由は、神の正義を実現せんとする宗教的価値観があります。 トランプ氏は公式には2024年大統領選出馬を表明していませんが、着実にその方向に向かって進んでいます。 今後も、トランプ氏の動きには注目していきたいと思います。 米大統領選2024 トランプ復活の兆し【前編】 2022.02.26 https://youtu.be/K3fnikz6Vio 幸福実現党党首 釈量子 ◆米国でトランプの存在感高まる アメリカのバイデン政権が誕生してから1年経ちましたが、支持率が急落しています。 世論調査のギャラップが米国の民主党と共和党の政党支持率の調査によると、1年前にバイデン政権が誕生した頃は、民主党の支持率49%、共和党の支持率40%でした。 しかし、昨年下半期に共和党が民主党の支持率を上回り、2021年末の段階で、共和党47%、民主党42%になりました。 バイデン政権就任からわずか1年余りで、共和党が民主党を5ポイントリードしています。 その共和党の中で、誰が2024年の大統領選に出てくるでしょうか。圧倒的に可能性が高いのが、トランプ前大統領です。 先月、米国の著名な政治サイト「The Hill」で紹介された共和党内の支持率調査によると、1位はトランプ57%で断トツです。2位はデサンティス12%、3位はペンス11%でした。 2位のデサンティス氏はフロリダ州知事で、トランプ氏の熱心な支持者でもあります。 昨年、サンティス知事は「個人の自由を制限する」という理由で、「ワクチンパスポート」の導入を禁止する行政命令を出し、トランプ氏と非常に近い政治思想を持っています。 3位のペンス氏はトランプ政権の副大統領です。 この調査では、もう一歩踏み込んで、「トランプがいなかったら、誰を支持するか」という共和党内の支持率調査をしています。 これを見ると、1位デサンティス30%、2位ペンス24%、3位クルーズです。 3位のテッド・クルーズ氏は、共和党上院議員で、対中強硬派の代表格です。トランプ氏とも考え方が近いとされます。 このような顔ぶれが出ているわけですが、やはり、何といっても圧倒的な存在感を持つのはトランプ氏です。 今年1月に入り、15日にアリゾナ州で、29日にテキサス州で支持者集会を開き、熱狂的な支持を集めました。 その中で、トランプ氏はバイデン政権の外交や内政について、実に率直に批判しています。 トランプ氏の政治的な考え方は、実に幸福実現党の見方、考え方に近いものです。 ◆トランプのバイデン批判 (1)アフガニスタン撤退の大失敗 一点目は、バイデン政権のアフガニスタン撤退の大失敗です。 トランプは、アフガニスタンからの撤退をめぐる大混乱は米国のイメージを変えてしまうくらいの致命的な失敗だったと強調します。 https://youtu.be/K3fnikz6Vio (※3:35~トランプ氏の演説) 「米国民は無能な大統領を持った。私が大統領なら、プーチンは決して軍隊を送るようなことはなかっただろう。私と習氏の間で、台湾占領なんて一度も話に上らなかった」 「アフガン撤退失敗は米国の歴史上最も恥ずかしい瞬間だった。米国人の人質を残したまま、軍隊が立ち去ってしまった。彼らは死の恐怖に直面した」 このように、トランプは、アフガンの失敗が強いアメリカというイメージを変えてしまい、弱いアメリカのイメージを与えてしまった。 アメリカは、世界から一目置かれる国ではなくなり、中国やロシア、それから北朝鮮の挑発を受けるようになってしまったと指摘しているわけです。 また、アフガン撤退について重要な点を、次のように指摘しています。 「アフガンには850億ドルに及ぶ装備品を残してきてしまった。7万台のトラック、70万丁のマシンガンやライフル、ナイトマスク、ヘリコプター。アフガニスタンが必要なのはこれらの20分の1程度で、後は売りさばく。中国が最新鋭の戦闘機や武器を入手し、再設計し、利用するだろう」 さらに、「米国は25年前に巨額のお金を使って、バグラム空軍基地を作ったのには理由があった。それは、アフガニスタンだからではなく、中国が核兵器を製造している工場から僅か1時間の距離にあったからだ。それが今や、中国がバグラム空軍基地を支配してしまった。これが、バイデン政権が無能な政権だと言うことだ」 その結果、「バイデンの弱さと無能さによって、第三次世界大戦のリスクを増大させてしまった」と批判しました。 (後編につづく) 毛沢東「一つの中国」要求で裏切らなかった米国、見捨てた日本【後編】 2022.02.18 https://youtu.be/FWRjyoFs5Xk 幸福実現党外務局長 及川幸久 ◆台湾を裏切った日中国交回復 前編では、米中国交正常化にあたり、7年間かけて「台湾関係法」として台湾との関係をつくったことを述べました。 では、日本はどうだったのでしょうか。アメリカと比較してみます。 日本では、田中角栄がニクソン訪中の7か月後の1972年9月に訪中しました。台湾との関係についても、毛沢東からアメリカと同じ要求をされます。 「中国と国交回復は結構です。そのためには条件がある。台湾と断交してください。一つの中国を受け入れてください」と。 アメリカは断固拒否しました。そして7年間かけて「台湾関係法」を考えたわけです。しかし、日本は台湾との国交断絶をあっさりと承知しました。 ですから日中国交回復は1972年です。アメリカはその7年後です。日中国交回復の本質は、日本の台湾に対する裏切りです。 日本は台湾に対する裏切りと同時に、アメリカより先に日本企業が巨大な中国市場への進出を勝ち取りました。 このようにアメリカと日本の対中国の姿勢は全然違っていたのです。 ◆さらに台湾を守る法律をつくったアメリカ それから約40年経って2018年、トランプ政権の時にアメリカはさらに重要な法律をつくりました。 それが「台湾旅行法」で、アメリカと台湾の政府高官が相互に自由に行き来して会談ができる法律です。 その後、実際に台湾とアメリカの政府高官の会談が始まりました。 2020年8月、トランプ政権の時のエイザー厚生長官が、ちょうどパンデミックに対し世界で最も成功した台湾に出向きました。 同年9月には、外交関係やっているのが国務省ですが、一番最高位のクラック米国務次官が台湾を訪問しました。 ここから議会の議員が台湾に行くようになっています。 昨年21年6月、アメリカ上院議員団の訪問を皮切りに3回ぐらい行われていますが、同年11月にはアメリカの下院議員団が台湾を訪れて蔡英文総統との会談をやっています。 そういう流れができると、今度はヨーロッパの国々が台湾に行くようになりました。21年8月には、チェコの議員団が台湾を訪問し、代表が台湾議会で演説をしました。 その後もバルト三国のリトアニアが台湾を応援し、それによって中国から圧力を受けています。 それがきっかけとなって、11月にリトアニアをはじめバルト三国の議員団が台湾に訪問しています。その後にはヨーロッパ議会の議員団が台湾に行っているのです。 このようにアメリカが「台湾旅行法」をつくったら、怒涛のごとくアメリカやヨーロッパの政府、議員が台湾に行っています。 そして、アメリカはもう一つ台湾関係で重要な法律である、「アジア再保証イニシアティブ法」をつくっています。2018年の末にトランプ大統領が署名してできた法律です。 その中身はインド太平洋地域における台湾の重要性を再確認し、台湾への防衛装備品の売却をさらに一層推進すべきだという内容です。 以上をまとめると1979年に「台湾関係法」、2018年には「台湾旅行法」、アジア再保証イニシアティブ法」と、3つの重要な法律をつくって、アメリカは台湾を守ろうとしているわけです。 そんな中で、日本が台湾のために何をしてきたでしょうか。 ◆台湾に対して日本がなすべきこと 日本がやったのは50年前に、日中国交回復で大騒ぎしたわけですが、その一方で台湾を切り捨て何もしてきませんでした。 中国が世界中から批判されているときに、今年は日中国交回復50周年だと言って日本はお祝いをするのでしょうか。 そうではなくて今日本がやるべきことは、遅まきながら日本版「台湾関係法」を日本がつくるべきではないでしょうか。 もちろんこれをつくるとなったら中国は激怒するでしょう。中国大陸に進出している日本企業がボイコット運動を受けたりするかもしれません。 それを恐れて、中国の顔色を伺って台湾を無視し続けるのでしょうか。やっぱりアメリカの動きをあらためて日本が学ばなければならないものがあると思うのです。 幸福実現党としては、日本版「台湾関係法」をまずは国会の中で議論すべきであると提案いたします。 毛沢東「一つの中国」要求で裏切らなかった米国、見捨てた日本【前編】 2022.02.17 https://youtu.be/FWRjyoFs5Xk 幸福実現党外務局長 及川幸久 ◆これまでの振り返り 前回と前々回に続いて台湾と日本との関係について考えて参ります。 今、台湾が中国の軍事的圧力にさらされていていますが、「台湾のために日本がすべきこと」を考えてみたいと思います。 前々回では、「日本には台湾を守る責任がある」ということを取り上げました。 ■日本には台湾を守る責任があるこれだけの理由 https://youtu.be/ERutq13kyco そして前回では、台湾を守るための方法として「台湾地位未定論」から考えてみました。 ■台湾の未来を変える方法を考える https://youtu.be/VH4glK1yFfY 台湾地位未定論とは、台湾は、中華人民共和国の領土でも、中華民国の領土ではなく、戦後の混乱期の中で台湾の主権が、どこにあるのか国際法的には未定であるという考え方です。 この考え方に基づけば「台湾の帰属は台湾人が決定すべきである」ということです。 その中で、台湾を中国共産党から守るためにどんなことができるのか、アメリカの法律である「台湾関係法」という法律を例に考えてみます。 ◆ニクソン訪中の二つの目的 アメリカも日本も、現時点では中国と国交を正式に結んでおり、台湾、中華民国とは国交を結んでいません。アメリカは台湾と断交して中国と国交正常化しましたが、しかし台湾を切り捨てたわけではありませんでした。 1972年2月、ニクソン訪中は世界に衝撃を与えました。当時は米ソ冷戦時代でしたが、本来なら同じ共産圏の側であったソ連と中国も対立し始めていました。 そこでアメリカとしては、対ソ戦略として中ソを離間させ、中国を西側に引き込もうとしたわけです。これがニクソン訪中の目的です。 ニクソン訪中のもう一つの目的は、大統領選挙で公約したベトナム戦争の終結です。そのためには北ベトナムを支援し強い影響力を持っていた中国との国交がどうしても必要だったのです。 ◆アメリカ版「台湾関係法」の背景 ニクソン訪中を受け入れた中国側の毛沢東は要求を出してきました。それが一つの中国です。 当時は、中国共産党による中華人民共和国と台湾にある中華民国の2つの中国がありました。台湾はあくまでも中国の一部だと要求してきたわけです。 これに対してニクソン政権は、台湾を切り捨てるわけにはいかないと拒否しました。自由と民主主義というアメリカと同じ価値観を共有している台湾を切り捨てるわけにはいかなかったわけです。 当時、国務長官をやっていたヘンリー・キッシンジャーは、「一つの中国」という毛沢東の要求に対して、「認識(Acknowledge)」します。ただそれを100%受け入れる訳ではありませんでした。 中国と国交を結ぶためには台湾と国交を絶たなければいけない。それをする代わりに台湾との関係はアメリカの国内法で定めるという、まさに苦肉の策をキッシンジャーは進めました。 ヘンリー・キッシンジャーが国務長官をやっていたのは、1972年から1977年までですが、これが最終的に実現したのが1979年のカーター政権の時です。 その時にできた法律が「台湾関係法」です。この時1979年にアメリカは中国との国交回復を実現するわけですが、ニクソン訪中からなんと7年かかっているのです。 アメリカは、最終的に「台湾関係法」によって、台湾との関係も切らずに維持しているわけです。 「台湾関係法」では、台湾との正式な国交はないが、国家に準ずる存在とすること。アメリカが台湾、中華民国と過去を結んだ条約はすべて維持すること。そして重要なことは台湾の安全は引き続きアメリカが守るため、防衛のための兵器をアメリカが台湾に輸出すると定めています。 7年間かけて中国と交渉し台湾との話を進めて、アメリカは今の台湾関係をつくったわけです。 (後編につづく) プーチンは侵略者なのか?マスコミが報じないウクライナ危機の真相【第3回】 2022.02.15 https://youtu.be/A4E221cNSRY (2月8日収録) 幸福実現党党首 釈量子 ◆バイデン外交の問題点 では日本はどうすべきでしょうか。ここで注目したいのは、トランプ大統領との違いです。 ロシアに融和的だと国内で批判されていたトランプ大統領の時代には、ウクライナ危機が起こらずに、バイデン政権になって起きている、ということです。 トランプ大統領は、プーチン大統領と個人的な信頼関係を築きながら、ロシアとあまり敵対しないように配慮していました。 同じことは、北朝鮮にも言えます。金正恩氏と歴史的な会談を行ってから、北朝鮮のミサイルはピタリと止みました。これは、中国を牽制することにもつながっていました。 しかし、バイデン大統領になってから「民主主義国家」対「権威主義国家」の対立軸を打ち出し、中国や北朝鮮に加え、ロシア、そしてイランへの圧力を強めています。 バイデン氏になってから、世界の分断は進み、戦争のリスクが高まっています。 バイデン氏は就任後、ロシアに対しては、大統領選への介入を理由に金融制裁を行ったり、ロシアの外交官を国外退去しました。 さらに、ウクライナとの共同軍事演習を行うなど、米ソ冷戦時代のような外交を展開しています。 そして気が付けば、ロシアをどんどん中国側に追いやってしまっているわけです。日本は、こうした構図を理解する必要があります。 中露はいわば「偽装結婚」であり、ロシアは戦いたくない、ヨーロッパも紛争を抑止したい、ウクライナのゼレンスキー大統領でさえ、バイデンのパニック的な対応に迷惑し、「煽っている」と言っています。 日本が見抜かなければいけないのは、プーチン・ロシアの本質です。 ロシア正教を復活させた信仰者であり、無神論国家中国の習近平氏とは精神性が全く違います。 そして、2月8日にマクロン氏に伝えたようにプーチン大統領は、「ロシアは欧州の一部だ」といって、敵ではないと、仲間入りしたいわけです。 ◆日本は日露平和条約を締結すべき 幸福実現党は、日本政府がアメリカに対して、中国に焦点を絞るべきであり、アメリカの「中露二正面作戦」を改めるよう、提案すべきだと思います。 大川隆法党総裁は、1月9日の講話で、バイデン外交の売りである「民主主義国家」対「専制主義国家」の対立軸では限界があり、ロシアを味方に引き入れて信仰ある国々が手をつなげば、無神論国家・中国に勝てる可能性が出てくる、と指摘しています。 プーチン氏は、中国には、極東地域への侵略や、北極圏に影響力を伸ばそうとしていることなどについて今でも警戒をしています。 できれば、日本との関係を強化し、経済的な結びつきや安全保障上の結びつきを強めたいと考え、交渉の余地を残し続けていることに注目すべきでしょう。 日本は大局を見て、軽々に、バイデン外交政策に追随すると、今度は日本も、南西方面で中国と対峙しつつ、北方領土にミサイルを配備しているロシアも相手にせざるを得なくなり、中露「二正面作戦」を取らざるを得なくなってしまいます。 下手をすれば日本が戦場になる可能性もあります。逆に、ロシアと手を組めば、北朝鮮を抑えることも可能となります。 幸福実現党としては、北方領土問題を棚上げしても、ロシアと平和条約を締結すべきだと考えています。それは、「第三次世界大戦」にもつながりかねない構図ができるのを止めるためです。 またロシアをG8に入れるよう動き、西側の仲間にすべきです。日本にできることはそれほどありませんが、これは大きな貢献になります。 日本が、ロシアとの関係を再構築し、中露「分断」の方向に舵を切るべきだと考えます。 プーチンは侵略者なのか?マスコミが報じないウクライナ危機の真相【第2回】 2022.02.14 https://youtu.be/A4E221cNSRY (2月8日収録) 幸福実現党党首 釈量子 (2)プーチンの主張:「ミンスク合意の履行」 ◆プーチン論文の主張 プーチン大統領の主張の2点目は、プーチン大統領が2月1日にも強調していますが、2014年の「ロシアによるクリミア併合」の翌年、ウクライナとの間で締結した「ミンスク合意」を履行するよう強く求めています。 「ミンスク停戦合意」とも言われますが、「停戦」にとどまらないということを説明します。 プーチン大統領がウクライナについてどう考えているのか、一番良くわかるのは、昨年7月に発表されたプーチン大統領の論文「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」です。 ロシア大統領府公式サイト「プーチン論文」 http://www.kremlin.ru/events/president/news/66181 この中で、「元々、ロシア人とウクライナ人は異なる民族ではなかったが、共産主義だったソ連の民族政策によって、大ロシア人、小ロシア人、白ロシア人(ベラルーシ)からなる三位一体のロシア民族が解体され、ソ連崩壊後に、ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人という三つの個別のスラブ民族が国家レベルとして固定されたのである」と主張しています。 つまり、プーチンは「ソ連」の前のロシアを念頭に置いているのか、地政学的な安全保障の問題に加え、歴史的民族的さらには宗教的に、同じスラブ民族の「兄弟国家」だった地域を破壊されることに強い抵抗感を持っているわけです。 続けて、「ロシアは1991年から2013年に、天然ガスの値引きだけでも、820億ドル以上の値引きを行って、ウクライナを経済的にも巨額の支援を行ってきた」と述べています。 さらに「ウクライナは欧米によって危険な地政学的ゲームに引き込まれていった。その目的はウクライナをヨーロッパとロシアを隔てる障壁にし、またロシアに対する橋頭保にすることだ」と述べています。 欧州にとっても、ウクライナを市場にしたいことに加え、天然ガスのパイプラインも通っているのでエネルギーの観点からも確保したいわけです。 対するロシアは、ベラルーシやカザフスタンと結ぶ「関税同盟」に、ウクライナを引き込みたいという綱引き状態があったわけです。 プーチン論文の主張は、ロシア国民のみならず、ウクライナ東部やクリミア半島に住むロシア系住民の心に響きました。 ◆一枚岩ではないウクライナ 一方で、ウクライナの首都キエフや西部のウクライナ人は、プーチン論文に反感を持ちました。 ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアとウクライナの関係は真なる兄弟ではなく、「カインとアベルの関係を思わせる」と指摘しています。 旧約聖書では、兄のカインが弟のアベルを殺してしまい、これが人類初の殺人であり、さらに、ヤハウェにアベルの行方を問われたカインは「知りません」と答えて、これが人類初の嘘だったとされています。 このように、ウクライナは1991年のソ連崩壊後、国家として独立しましたが、国内は決して一枚岩ではありません。 ◆プーチンの大義 こうした中、2014年初めに、ウクライナでクーデターが起こり、親欧米で反ロシアの政権が誕生したのをきっかけに、ロシアはクリミアの人々を守るためにクリミアを併合に踏み切ったわけです。 同時に、ロシア系住民が数多く住んでいるウクライナ東部のドンバスで、分離独立運動が始まり、ロシアは軍事的に支援し、戦闘状態が続きました。 プーチンにとっては、本来同じスラブ民族のウクライナで、ロシア文化やロシア語を排除する動きは看過できなかったわけです。 この内戦状態を収拾するために、2015年2月に、ドイツやフランス、ウクライナ、ロシアなどが結んだ休戦協定が「ミンスク合意」です。 当時のメルケル首相の働きで激しい戦闘は回避されましたが、小さな紛争は続いています。 問題は、プーチン氏が繰り返し「ミンスク合意」の履行を求めているのに対して、ウクライナは否定的な態度を採っていることです。 実際に、昨年10月には、「ミンソク合意」を破って、ウクライナ軍がウクライナ東部をドローン攻撃しました。 日本では報道もされませんが、「ミンスク合意」は、単なる休戦協定だけではなく、「ドンバス地域の強い自治権」を認めることや、「首長選挙」を行うことなどの、政治的条項が含まれていることです。 プーチン氏は、これを求めているわけです。 プーチン氏の論文からも伺えるように、ロシア文化圏に生きる人々を守ると言う大義のもと、ドンバスの自治権を守ることは「譲れない一線」だと考えています。 こうした経緯を見れば、プーチン氏が、欧米に対して「ミンスク合意」の履行を強く求めるのは、筋が通っているわけです。 こういう立場を理解することが、あるべき落としどころを模索するためには必要です。 (第3回に、つづく) プーチンは侵略者なのか?マスコミが報じないウクライナ危機の真相【第1回】 2022.02.13 https://youtu.be/A4E221cNSRY (2月8日収録) 幸福実現党党首 釈量子 緊迫化しているウクライナ情勢をきっかけに、いま米露対立の危機は、冷戦以降、最高に高まっています。 今回は、日本の安全保障にも係わる非常に重要なテーマと考え、マスコミも報じないウクライナ情勢を紐解きながら、その上で日本はどうすべきかについて、3回に分けて論じて参ります。 ◆米露対立の危機 ロシアがウクライナとの国境付近に10万人とも12万人とも言われる軍隊を駐留させましたが、アメリカは、「もしウクライナが攻撃された場合には「前例のない」制裁を科す」とロシアに通告し、バイデン大統領の指示で、東欧に3000人規模の軍隊を派遣することを決めました。 日本のメディアは欧米メディアを後追いしてか、もっぱらプーチン氏を「侵略者」のように報道しています。 今回は、プーチン大統領の言い分には正当性があるのかないのか、バイデン氏の判断に乗ってしまうことはどうなのかを考えます。 ◆プーチン大統領「軍事作戦を取りたくはない」 まず、事実関係を見ておきます。 昨年10月ごろから、ロシアがウクライナ国境沿いに軍隊を終結していました。 プーチン大統領は、年末恒例の記者会見で、ウクライナを侵攻に関する記者の質問に対して、「向こう(西側)が我々の国境に迫ったのだ!」と激しく否定しました。 プーチン大統領は、「アメリカやイギリスの国境に(ロシアが)迫っているのではない」そして、1990年代以降、相次ぐ「東方拡大」がロシアに脅威を与えてきた」のだと批判したわけです。 プーチン大統領は「ボールはコートのそちら側(NATOの側)にある」「何らかの返答を行うべきだ」と話しています。そしてプーチン大統領は、「軍事作戦を取りたくはない」とも発言しました。 しかし、ホワイトハウスは、ロシアが提示したNATOへの要求への返答を拒否し、プーチン大統領は「ロシアの主要な懸念は無視された」と、強い不満を述べました。 そこで、プーチン大統領の主張を見てみましょう。 (1)プーチンの主張:「NATOの東方不拡大」 ◆大戦後、NATO加盟国が東方に拡大 一点目は、プーチン氏の「NATOの東方不拡大」を求める主張です。 NATOとは「北大西洋条約機構」の略称であり、現在、北米や欧州諸国の30カ国が加盟しています。 第二次大戦後、ソ連や東側諸国を仮想敵国として創設された「軍事同盟」であり、加盟国が攻撃されたら、他の加盟国には参戦する義務が発生します。 1949年の創設時、加盟国は12カ国でしたが、米ソ冷戦中には、ギリシャ、トルコ、西ドイツ、スペインが加盟し、16カ国になりました。 1989年にベルリンの壁が崩壊して、1990年に統一ドイツがNATOに加盟します。 その後、東欧の国々が民主化を果たし、1991年の「ワルシャワ条約機構」解体、ソビエト連邦の崩壊もあって、一気に加盟国が増加しました。 これを、「NATOの東方拡大」と言います。 ◆「NATOは東方に拡大しない」という約束 これに対して、プーチン氏が「NATOの東方不拡大」を主張しているのには、根拠があります。 冷戦後、東西ドイツが統一されるにあたり、東西両陣営の間で「NATOは東方に拡大しない」という約束をしたというのです。 「にもかかわらず、一方的に反故にされた」と、これをプーチン氏は繰り返し主張しています。ベルリンの壁に変わる、新たな分断線を作っているのはNATOだという話です。 このプーチン氏の主張を裏付けるのが、1990年2月、ソ連のゴルバチョフソ連書記長と、アメリカのベーカー国務長官との会談です。 当時、西ドイツはNATOの加盟国でしたが、東ドイツは加盟していませんでした。 ベーカー国務長官や西ドイツのコール首相は「東西ドイツを併せた『統一ドイツ』がNATO加盟国として止まれるなら、NATO軍は1インチたりとも東方に拡大することはないとゴルバチョフ氏に話しています。 これがプーチン氏の主張の根拠になっています。 ◆NATOの言い分 これに対して、NATOの言い分は違います。 2014年4月に「当時の東方とは、東ドイツを意味しているのであって、東欧諸国にNATO加盟国を拡大するかどうかを議論した覚えはない」と発表し、ロシアの主張を否定しました。 現在のアメリカのスタンスは、この公式発表を踏襲しています。 このように、両者の見解が分かれていますが、東西ドイツ統一の偉業を成し遂げるために、ソ連の了承を得るために、ゴルバチョフ氏と「口約束」をした可能性は否定できません。 ゴルバチョフ氏は「約束があった」と言い、プーチン大統領は、ゴルバチョフ氏が、この時の約束を文書化しなかったことを今でも大変後悔しています。 なお、ドイツの『シュピーゲル』誌は、詳細な調査を踏まえ、事実上約束があったとの見解を出しています。 また、1993年エリツィン大統領と、アメリカのクリストファー国務長官会談の際に、クリストファー長官が「東欧諸国のNATO加盟は認めない」と言って、翌年、クリントン大統領が手のひらを返して「NATO拡大」の考えをエリツィンに伝えてきたことがありました。 ◆ロシアがウクライナを譲れない理由 エリツィンは「NATO加盟国をロシアの国境まで広げることは重大な間違い」と強く主張し、NATO加盟国との間に緩衝地帯を確保することは「譲れない一線」だとしました。 こういうところも、今に続くロシアの不信感につながっているところです。 ロシアの歴史の中で、ナポレオンやヒトラーがロシアに攻めてきた時、豪雪と凍結をもたらす「冬将軍」が敵国から守ったのは有名な話ですが、勝てたのはウクライナという緩衝地帯があったからです。 ウクライナはNATO加盟国であるポーランドやルーマニアとロシアの間に位置しています。 もしウクライナがNATOに加盟したら、モスクワからわずか870キロのキエフに敵軍が布陣することが可能になり、戦車でも片道10日ほどで到着でき、容易にモスクワを攻撃できるようになります。 ◆ウクライナのNATO加盟は「レッドライン」 緩衝地帯と不凍港を持つことは、ロシアの安全保障にとっては死活的なのだということを理解するべきでしょう。 昨年12月、プーチン大統領は「ウクライナにNATOのミサイルが配備されたら、モスクワを数分以内に攻撃できるので、これは容認できない。ウクライナはロシアへの玄関口だ」と話しています。 ロシアは安全保障上、ウクライナのNATO加盟を「レッドライン」と見て、警戒しているわけです。 そもそもソ連が崩壊したので、ロシアはもはやNATOの敵ではありません。それなのになぜロシアを排除した政治軍事同盟が必要なのか?と問うているわけです。 こうした過去の経緯を見ると、プーチン大統領が「NATOの東方不拡大」を主張し、拘束力を持った正式な条約を文書として残したいと固執することは、理解はできます。 (第2回に、つづく) すべてを表示する « Previous 1 … 8 9 10 11 12 … 98 Next »