Home/ 国防・安全保障 国防・安全保障 真なる「積極的平和主義」の実現を! 2013.09.28 国連総会出席などのために米国とカナダを訪れていた安倍晋三首相は28日夕方、政府専用機で羽田空港に到着しました。 今回の安倍首相のアメリカ国内での講演は、2020年の東京オリンピック開催の決定や、アベノミクスによる経済成長が続いていることなどから来る自信を感じさせる内容でしたので、一部を紹介します。 ◆Japan is back 日本時間26日の未明、ニューヨーク証券取引所で行った演説では、日本経済復活の可能性から始まり、リニアの売り込みと原発の安全技術の再確認、そして規制改革と減税を断言しました。 最近の安倍首相の英語演説では、短い言葉で印象づけるフレーズがよく登場します。 この日は、日本は20年近くデフレに苦しみ、経済は低迷してきたが、「日本がもう一度儲かる国になる。Japan is back(日本は戻ってきた)ということを話すためにやってきた」と始めました。 そして、日本が本来持つポテンシャルを発揮すれば復活できること、日本に帰ったら投資を喚起するため、大胆な減税を断行すると発言しました。 ◆世界経済回復のためには3語で十分 Buy my Abenomics! 更に、講演の最後には、世界経済回復のためには「Buy my Abenomics!(アベノミクスは『買い』だ)」と言い、2020年の東京五輪招致成功で日本は7年後に向け大いなる高揚感にあり、投資は今がチャンスだ、ということを強調しました。 この演説に関して、米国では好感する反応が多く、米ブルームバーグ通信は「首相が日本が世界経済を引っ張る存在になることを約束した」と伝えたようです。(9/27読売「『安倍カラー』米で全開」) 安倍首相の語った日本経済の可能性、リニアと原発の売り込み、規制改革と減税の推進、そしてアベノミクスのアイデアの元は、全て幸福実現党が経済政策において主張し続けてきたことばかりです。 ただし、これらは消費税増税はしてはならないことが前提です。 景気の腰折れを起こさせ、経済を芯から冷え込ませる消費税の増税は決して行ってはなりません。 ◆もし右翼と呼びたいのならどうぞ 同日、講演を行ったハドソン研究所では「集団的自衛権」を巡る解釈見直しの意義を説明し、理解を求めました。 防衛費に関しては、日本の今年の防衛費の伸び率は11年ぶりのプラス0.8%。それに対し、「すぐそばの隣国」は「毎年10%以上の伸びを20年以上続けた」と言い、中国の脅威を強調しました。 米左翼新聞や中国・韓国が安倍首相を「戦争の道を目指す右翼」と批判していることの矛盾を暗に指摘し、反論。これには会場から拍手が起きたようです。 これらを踏まえ、それでも「みなさまが私を右翼の軍国主義者と呼びたいのならそう呼んでもらいたい」と発言し、日本の首相として気概をみせたように思います。 ◆「積極的平和主義」のネック ただ一方で、国連の演説においては、明言をすれば「国際公約」になってしまうということで、公明党に配慮し、表現が抑制されたものとなっていました。 特に「集団的自衛権」に関しては踏み込みませんでした。公明党が「集団的自衛権」の解釈変更に慎重姿勢を示しているためです。 首相周辺は「公明党を怒らせたら元も子もない」と語り、連立内のねじれに頭を悩ませています。(9/27 読売「国連演説は表現抑制」) ◆経済繁栄と世界の平和は表裏一体 安倍首相は、ハドソン研究所の演説の最後で「私に与えられた歴史的使命は、日本に再び活力を与えることによって、『積極的平和主義』の旗の誇らしい担い手となるよう促していくこと」と述べました。 経済的な繁栄と自国を含めた世界の平和を守ることは表裏一体です。 日本が没落したら、「やはり、資本主義、自由主義の未来は没落しかない」と、中国や北朝鮮は必ず考えるので、日本は絶対に繁栄しなければなりません。 そのネックが、消費税増税であり、連立与党の公明党です。 安倍首相にはなんとか消費税増税を思いとどまって頂くと共に、「真なる保守連立政党」を実現すべく、幸福実現党は今後とも努力精進してまいりたいと思います。(文責・HS政経塾1期生 湊侑子) 中国人民解放軍の大規模な軍事演習「使命行動-2013A」を分析する 2013.09.26 2013年9月11日から、中国人民解放軍の「使命行動-2013A」という大規模な軍事演習が始まりました。 今回は、この演習について、中国軍の機関紙「解放軍報」から分析を試みます。 ◆演習の全体像と、中心となる軍区について 「使命行動-2013」演習は、A、B、Cの三段階に分けて実施される、大規模な演習です。 今回の「2013A」演習では、南京軍区の陸軍第31集団17,000名以上を中心として、海軍の東海艦隊と南海艦隊、そして南京軍区に属する空軍が主要な兵力として参加しています。 南京軍区は安徽省、江蘇省、上海直轄市、浙江省、江西省、福建省の6つの行政区を管轄する軍区です。 今回の演習の主役とされる陸軍第31集団は、南京軍区の中でも台湾の対岸にある福建省に司令部を置いており、その前身は金門島砲撃事件に参加した部隊としても有名な部隊です。 演習参加者は南京軍区、広州軍区の陸空軍を中心に、総計4万人以上となることが見込まれています。(9/10 解放軍報「我軍将挙行 使命行動-2013演習」、9/11 同「使命行動-2013跨区戦役演習拉開序幕」) ◆過去にも実施されている「跨区演習」 中国軍は現在、このような既存の軍区を超えた演習に力を注いでいます。 2009年には瀋陽軍区、蘭州軍区、済南軍区、広州軍区が参加する「跨越-2009」という「実兵系列演習」が実施され、2010年には北京軍区、蘭州軍区、成都軍区が参加する「使命行動-2010」という「集団軍跨区機動演習」が実施されています。 今年の「使命行動-2013」は「戦区戦役演習」とも呼ばれ、上陸演習の実施を含む、より実戦を意識した訓練が行われた可能性があります。 ◆演習の狙いと、その実態について この演習の狙いは、どこにあるのでしょうか? 演習が始まる前日の9/10付の解放軍報によれば、「多次元の立体輸送・情報火力運用・共同動作組織・軍と地方政府の連合保障など」を「重点的に研究する」と報道されています。これについて解説していきたいと思います。 (1)戦力投射能力の獲得 本演習の目的の一つには、陸路、海路、空路などのあらゆる輸送手段を動員し、内陸部の陸軍部隊を軍区を跨いで沿岸部に集中投入する体制を整えることがあったと考えられます。 戦地から遠い部隊を前線に投入する能力は、一般に「パワープロジェクション能力」と呼ばれ、中国軍は本格的構築に取り組んでいるものと考えられます。 ちなみに、9月16日付『解放軍報』の1面には、厦門航空の民間機に陸軍部隊が乗り込む写真が掲載されています。 戦時には民間航空会社も解放軍の指揮下に入り、後方支援に従事する事を端的に示していると言えます。 (2)陸海空軍の統合運用能力の獲得 さらに二点目の目的として、陸海空軍で共同作戦を行う能力の獲得が挙げられます。 戦闘において陸軍、海軍、空軍という全く性質の異なる組織を指揮し、運用できることは、現代の戦闘に欠かせない条件ですが、これを実現するには非常に高度な情報通信能力が必要となります。 この点について、『解放軍報』は「連合決策、連合作業、連合指揮を実施する、新しい連合作戦体系を構築した」と報じていることから、中国軍は三軍の統合運用能力を高めていると考えられます。 この「統合運用能力」の獲得については、我が国でも以前から議論が進められてはいるものの、議論が一向にまとまらない状態にあります。安倍首相のリーダーシップ発揮を望みます。(9/16 産経「自衛隊で内紛勃発 対中有事めぐり四分五裂」) (3)精密攻撃能力の獲得 最後に挙げられるのが、米軍のトマホークミサイルのような精密攻撃を可能とする攻撃兵器の獲得です。 中国軍がこうした兵器を獲得する事ができたのも、国を挙げて実施した宇宙開発の結果であるということを忘れてはなりません。 三軍の統合運用能力も、精密攻撃能力も、全て織り込み済みで、中国は宇宙開発を加速させているのです。(9/18 解放軍報「近千名指揮員接受大考」,9/19 同「立体突撃、多維力量握指成拳」) ◆政治家には「教養としての軍事知識」が必要 以上、3点に絞って「使命行動-2013A」演習の内容をお伝えいたしましたが、このような演習の目的を一言で言うとするならば、中国軍が「いつでも戦争ができる態勢を整える」ことにあります。 習近平主席が年初に「部隊は、招集されれば直ちに駆け付け、駆け付ければ戦争できる状態にし、戦えば必ず勝利するよう確保しろ」と発言した通り、中国は戦時体制にいつでも入れるよう、意図的に訓練を重ねているのです。 演習の成果を報告する記事が一段落すると、9/20の解放軍報一面で「領土と主権の維持に、中国は決心と自信がある」という記事が掲載されました。 記事の内容は尖閣諸島問題を中心に、近年の日中関係の悪化が日本の「右傾化」にあると非難するものでした。(9/20 解放軍報「維護領土主権、中国有決心有信心」) かつてクラウゼウィッツは「戦争は政治の延長である」と戦争の本質を喝破しました。 外交的発言の背景には軍事的な裏付けがあることが多く、この記事の発言も軍事演習の成果を背景としたものである可能性があります。 軍事力の強化と外交上の姿勢の相関関係について、今後の中国の動きを注視すべきです。(文責・HS政経塾第一期生 彦川太志) 「集団的自衛権」はなぜ重要か?(2)日本の空が危ない! 2013.09.24 ◆「集団的自衛権」行使容認もトーンダウンか? 安倍首相は22日、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈見直しの結論について、「いつまでにではなく、議論がまとまるのを見守りたい」と述べ、年内の見直し表明にこだわらない考えを示しました。慎重論が強い公明党に配慮した形です。(9/22 産経「首相、公明配慮と中朝対応ジレンマ 集団的自衛権」) 公明党への配慮も必要なのでしょうが、9月以降も尖閣周辺で、中国による挑発行為が激化しており、日米同盟を強化し、日本の守りを固めるためにも「集団的自衛権」の行使容認は急務です。 私は、前回のHRPニュースファイル「『集団的自衛権』はなぜ重要か?(1)」で、米軍の存在は「日本防衛の一部」であり、「集団的自衛権」は、憲法9条の「わが国を防衛するための必要最小限度の範囲に入る」と解釈するのが筋だと述べました。 ◆日本の空が危ない! ここで、最近の状況を見ておきたいと思います。 昨年2012年は、22年ぶりに自衛隊機の緊急発進回数が500回を突破しました。その内、中国機への対応が約半数で、他の国を引き離しています(計567回の内、中国は306回)。 しかも、一昨年に比べて対中国は2倍に増加しました(2011年は計425回の内、中国は156回)。中国の挑発行動はますますエスカレートしているのです。 今年の4月には、監視船が尖閣周辺の領海に、8隻で押し寄せました。 これだけでも大きな脅威ですが、これと連動して、中国軍の最新鋭戦闘機が40機以上も尖閣近辺に飛来し、海空連携の示威行動を行いました。 航空自衛隊那覇基地のF15戦闘機が緊急発進(スクランブル)で対処しましたが、自衛隊のパイロットの疲弊を狙って絶え間なく押し寄せたことに、防衛省は「前代未聞の威嚇だった」と述べています。(4/27 産経) ちなみに、尖閣諸島は沖縄本島の那覇から約420キロ(魚釣島)も離れていますので、戦闘機でも発進してから30分程度かかります。往復で1時間です。ですから、尖閣上空に留まれる在空時間は、どうしても短時間となります。 私はこの事件を見て、米軍の空母がなければ、沖縄方面の防衛は難しいと実感しました。 また、中国軍の戦闘機が、米海軍の海上パトロール任務につくP3C哨戒機と空軍のC130輸送機を執拗に追尾した事件がありました。 さらに9月8日には、中国の「H-6爆撃機」2機が、沖縄本島と宮古島の間を飛行。翌9日には、中国の無人機が、尖閣諸島に接近し、いずれも航空自衛隊の戦闘機が、緊急発進しました。 ◆「集団的自衛権」を行使できなければ、日米同盟が根底から揺らぐ 米空軍は、尖閣諸島を守るために、空中警戒管制機(AWACS:エーワックス)でパトロールしてくれています。 これらの日本防衛任務についている米軍に対し、現状では、自衛隊は米軍を守ることが出来ません(例えば、米軍の輸送機を自衛隊のF15がエスコート、防御するケース)。 前回も述べましたが、米軍を見殺しにすれば、日米同盟が根底から揺らぐ危機になるかもしれないのです。 ここに面白い調査があります。昨年の12月の総選挙の後、毎日新聞が行った当選した国会議員へのアンケートは、大変興味深いものでした。 なんと国会議員の78%が集団的自衛権の容認に賛成したのです。 この結果からも、国会議員も本音では「集団的自衛権」は、極めて重要であることを、よく理解しているものと思います。 ◆尖閣や沖縄を護る日米合同訓練 わが国の防衛は、現状、日米の共同作戦を抜きには考えられません。 今年6月には、尖閣や沖縄などの離島が占領されたことを想定した、日米合同の奪還・防衛訓練が行われました。 これは日本の陸海空の3自衛隊が合同参加する初の演習として非常に注目された演習でした。(防衛省「米国における統合訓練:ドーン・ブリッツ13」) この日米合同演習は、中国からしっかり中止の要請があったことを付け加えておきます。 この演習で、日本のヘリ空母にアメリカのオスプレイが着艦するという歴史的訓練もありましたが、この訓練の重要性は「日米で共同して尖閣を護る」という強力な意思を内外に示したことです。 もはや「集団的自衛権」を前提としなければ、作戦が成り立たないのです。 例えば、日本のヘリ空母に向かっている米軍のオスプレイに、中国からミサイル攻撃を受けたらどうでしょうか? オスプレイに自衛隊の隊員が乗り込んでいる場合もありますし、沖縄の民間人の救助、避難のためにオスプレイに同乗させていることだってあり得ます。 こうした様々なケースを想定しても、「集団的自衛権」行使容認がなぜ必要なのかご理解頂けるのではないでしょうか。(文責・岐阜県本部副代表 河田成治) 消費増税3つのウソ 2013.09.23 ◆まだ消費税増税は決まっていない 昨日のHRPニュースにも記載されている通り、安部首相が消費税8%増税を決断したかの如き報道がなされては、菅官房長官が訂正する、という茶番劇が繰り返されています。 いずれにせよ、安倍首相の消費増税に関する決断は10月に入ってからです。 幸福実現党は、9月23日には千葉県本部が「消費税増税の中止を求める!国民デモ」を開催致しましたが、最後の最後まで消費増税に反対して参ります! さて、「消費増税が必要だ」という議論には、ウソが多いことが気になります。 ◆ウソ1:増税したら税収が増える 財務省をはじめとする増税論者は「消費増税したら税収が増える」という嘘を宣伝しています。 確かに、「増税したら税収は増える」とお考え方はまだまだ多いのではないでしょうか。 しかし、幸福実現党が繰り返し述べている通り、消費税を増税しても税収は増えません。 このことは、日本経済は1997年の3%から5%への消費税増税時に既に経験しています。 実際、97年度以降、消費税収は毎年度4兆円増えていますが、消費増税による景気悪化により、所得税収や法人税収が大きく減っています。 翌98年度から2012年度までの15年間で、97年の税収を僅かに超えたのは2回で、それ以外の13ヶ年は97年度より大きく税収が減っています。 「東京オリンピックが決まったので、消費増税しても大丈夫だ」という議論も危険です。 なぜなら、イギリスでも2012年にロンドンオリンピックがあったにもかかわらず、付加価値税増税のために景気は回復できなかったからです。 2011年にイギリスで付加価値税(日本の消費税に相当)を2.5%増税した後、景気悪化のためにトータルの税収が減ったのです。 本当に税収が増えて財政が健全化するのであれば良いですが、増税によって税収が減ることが明らかである以上、消費税増税には反対するしかありません。 ◆ウソ2:増税しなければ国債が暴落する 消費増税推進派はしばしば、「財政再建のための増税をしなければ国債の信用を失う」と主張しています。 しかし、財政再建をしたいのであれば、そもそも税収を減らすような増税をしてはなりません。 日本国債の信用が高いことは、何よりも市場が証明しています。 日本は世界一の債権国であり、日本国債の9割以上は日本国民が引き受けています。 また、債務から資産を除いた純債務は、日米ともにGDP比約100%と変わりません。増税派が危機を煽っているだけです。 ◆ウソ3:景気が回復している 消費税増税法案には「景気条項」があり、首相が「景気が回復していない」と判断すれば、消費増税は中止できます。 そのため、増税推進派はしばしば「景気は順調に回復している」と言っております。しかし、これもウソです。 「消費者物価指数が上昇していたら景気は回復している」と言えます。しかし、消費者物価指数の算出方法に問題があります。 日本の消費者物価指数は、物価変動の大きい生鮮食品を除いて計算しています(コアCPI)。この数値は確かに+2.6%とプラスになっています。 しかし、世界標準となっている消費者物価指数は、エネルギーも除いて計算しており、この計算方法と用いると(コアコアCPI)、なんとマイナスです。 つまり、消費税増税推進派が言っている物価上昇は、昨今の原発停止による原油高の影響が大きいのです。 さらに円安の影響も加味されます。円安による原価コストアップによって、物価が押し上げられるからです。 しかも、民間消費の増加分は、資産効果によるものと言われています。つまり、所得が増えて消費が増えているのではないのです。 景気が回復しているのであれば、物価上昇に対して所得の上昇が上回らなければウソです。 また、民間設備投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は、6、7月と減少しています。 企業の設備投資がまだ回復していない以上、決して増税してはなりません。 ◆政治の都合で国民を犠牲にするな! 増税をせず、景気回復まで耐えることこそ、成長戦略に沿った最上の策です。 増税ではなく、景気回復による税収増を期待すべきです。そして、成長戦略によって、新産業を生み出すような分野に財政投資するべきです。 消費増税には、政治的な理由が大きいのではないでしょうか。 増税が延期になれば、自民党内の増税推進派が黙っておらず、安倍政権の党内基盤が弱くなると言われております。 政治的な理由で、また国民が犠牲となるのでしょうか。しかし、政治は国民のためにあるのではないのでしょうか。 安倍首相の本音は、消費税増税の延期や縮小を求めている本田悦郎教授と浜田宏一教授を内閣官房参与にしていることからも、増税ではなく、脱デフレにあると思われます。 安倍首相には、信念のある政治を見せて頂きたいと思います。そして「国益」を判断基準とした英断を望む次第です。(文責・HS政経塾 三期生 田部雄治) 中国が尖閣上陸を想定した大規模な軍事演習――危機感薄い日本政府 2013.09.20 ◆中国の挑発行動が急増 尖閣諸島の国有化1年を機に、中国人民解放軍による日本への挑発行動が急増しています。 9月8日、中国軍のH6爆撃機2機が沖縄本島と宮古島の間の公海の上空を通って東シナ海から太平洋側に出ました。 同じく8日深夜から9日未明にかけて、中国海軍の2隻の護衛艦が沖縄本島と宮古島の間の公海を通過。 9日には中国軍所属の無人偵察機BZK-005が尖閣諸島北方の東シナ海上空を飛行しました。同機は、米国がアフガニスタンなどでテロ組織掃討作戦に用いた無人武装偵察機「プレデター」に匹敵する性能を持つとされています。(9/20 読売) また、中国人民解放軍は9月10日より、兵力4万人以上を動員する大規模軍事演習「使命行動-2013」を開始しました。(9/10 中国網) 今回の演習に参加したのは南京軍区、広州軍区、および空軍に所属する一部の兵力で、計4万人余りに達しています。 両軍区はいずれも東シナ海から近い距離にあり、尖閣有事を想定した内容も含まれるとみられています。(9/11 産経「『日本が最大の仮想敵』急増する中国の挑発行動」) ◆大規模な軍事演習の目的とは? 今回の演習の内容、参加兵力を分析すると、中国の真意が浮かび上がってきます。 演習の参加兵力には、南京軍区の第31集団軍や東海艦隊が入っており、さらに演習では大規模な上陸演習も行われています。 今回の演習の主力である南京軍区は対台湾作戦が主要任務であり、海軍である東海艦隊とも連携し、尖閣諸島を含む東シナ海を管轄しています。 このことから、中国人民解放軍の主な目標は、台湾上陸、そして尖閣諸島上陸を想定したものであると推測されます。 習近平国家主席は、今年1月には軍に対して「戦争の準備を行え」と命じており、2月には「部隊は『招集されれば直ちに駆け付け、駆け付ければ戦争できる状態にし、戦えば必ず勝利する』よう確保しろ」と明確に指示を出しています。(2/7 時事) 中国人民解放軍が台湾と尖閣諸島へ侵攻するとした場合、必要なものが水陸両用戦の能力、陸・海・空軍が一体となる共同作戦能力、それを下支えする兵站や通信などの後方作戦能力などであり、今回の演習は尖閣諸島上陸の実戦を想定したものであることは明らかです。 ◆「世界の警察官」を辞めたアメリカ 一方、オバマ米大統領はシリア問題に関する10日のテレビ演説で、「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」と述べ、米国の歴代政権が担ってきた世界の安全保障に責任を負う役割は担わない考えを表明しました。(9/11 毎日「米大統領『世界の警察官』否定」) この発言は重大な意味を持ちます。これまでは、世界最強の軍事力を持つアメリカが「世界の警察官」を自認し、行動して来たことで、「抑止力」が働き、世界での紛争勃発を防いで来た側面があります。 シリアでの化学兵器の使用を含め、今後、様々な紛争を起こしても、アメリカが介入しないことが明確になれば、各地で紛争が勃発する可能性が高まります。 こうしたオバマ大統領の消極姿勢に対し、大川隆法総裁は、9月19日公開の「Spiritual Messages from the Guardian Spirit of President Assad―アサド大統領のスピリチュアル・メッセージ―」で、以下のように述べています。 「テロ国家ないしは独裁国家がまた悪さをし始めるので、やはり、ここ(注:シリア問題)は頑張らないといけない。警察がいなくなった暴力の街みたいに世界が変わっていくことは、やはり止めるべき。これを止められなかったら、北朝鮮や中国、イランで暴発が起きても、もはや、どこも何もすることができなくなる。」 ◆尖閣防衛を強化せよ! こうした中国の脅威の拡大とアメリカのプレゼンスの後退を受けて、日本はどうすべきでしょうか? 現在、日本は、尖閣諸島を守るための兵力を展開しているわけではありません。 尖閣諸島の直接の防衛は、海上保安庁の巡視船2隻に守られているに過ぎません。 アメリカが後退する中、日本が防衛を強化しなければ、尖閣諸島が奪われる危機を招きます。 まず、早急になすべきは、自衛隊の戦力をすみやかに南西諸島にシフトすることです。具体的には、沖縄に水陸両用部隊と護衛艦を配備し、戦闘機を増強することです。 そして、日本の防衛の最大の足かせである憲法9条を改正し、部隊行動基準(軍隊がいつ、どこで、いかなる相手に、どのような武器を使用するかを定めた基準のこと)を定めるべきです。 安倍首相が政権の座について9か月以上も経つにもかかわらず、このような尖閣諸島防衛のための具体策は実行に移されておらず、憲法改正論議も急速にトーンダウンしています。 そして、中国人民解放軍が実際に尖閣上陸の訓練を開始してもなお、具体的な動きがありません。 これは「安倍政権に日本防衛の明確な意志なし」と判断することができます。 本当の意味で尖閣諸島、そして日本を守り抜くことができるのは、国防の気概と勇気、政策を持っている幸福実現党だけであります。(政務調査会長 黒川白雲) 「集団的自衛権」はなぜ重要か?(1) 2013.09.03 ◆集団的自衛権の見直しが始まった 安倍首相と石破幹事長が会談し、石破氏は、集団的自衛権の行使を巡る憲法解釈の見直しについて、今週中にも党の幹部の間で論点整理を始める考えを示しました。(9/3 NHK「自民 集団的自衛権で論点整理」) また、小野寺防衛相は3日の閣議後の記者会見で、米国のヘーゲル国防長官と会談した際、「集団的自衛権行使容認」に向けた日本政府の検討に理解を求めたことを明らかにしました。(9/3 日経「防衛相『集団的自衛権検討に理解を』米長官に求める」) 安部政権は「集団的自衛権」の行使容認に向けて、いよいよ動き始めました。早ければ、今秋の臨時国会で容認を表明する検討に入っています。 この動きは大いに歓迎すべきで、是非とも実現すべきです。しかし、「集団的自衛権の行使容認」に向けた一連の活動を阻止しようとする左翼勢力も勢いを増しています。 このような中、左翼や中国の横槍に屈せず、改めて「『集団的自衛権』とは一体何か」「左翼の批判は的を得ているのか」「この見直しで何が変わるのか」等について、シリーズで考えてみたいと思います。 ◆「集団的自衛権」とは何か 集団的自衛権とは、国連憲章第51条で、加盟国に明確に認められている自衛権のひとつです。 ※【国連憲章第51条】この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。 「集団的自衛権」とは具体的には、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力を持って阻止する権利」のことです。 例えば、尖閣諸島で有事が発生し、日米共同で尖閣防衛を行う際に、中国が米軍を攻撃したら、自衛隊が米軍を守ることができる権利です。 ある意味、当然のことであり、国際法上、「集団的自衛権」を保有していることは当然に認められています。 ◆政府の摩訶不思議な憲法解釈 しかし、「集団的自衛権」に関する政府の公式見解は、「我が国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然であるが、憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであつて、憲法上許されないと考えている。」というものです。(昭和56年5月29日「憲法、国際法と集団的自衛権」に関する質問に対する答弁書) 政府は「集団的自衛権」について、「権利は保持しているが、行使できない」「保有すれども行使せず」という憲法解釈に固執し続けてきました。 これは例えば、「近くで家族や友人が強盗に襲われているのに、助ける権利は持っているが、助ける行動を起こしてはいけない」と言っているような理不尽な内容です。 したがって、現在の法解釈では、アメリカの軍艦に飛んできたミサイルは撃ち落とすことはできません。 本当に、このような状態で「日米同盟」を維持していくことができるのでしょうか? ◆米軍が自動的に日本を守ることは定められていない 中には、「日本の防衛は、米軍に任せて日本は何もしなくてもいいのだ」という方がいます。 しかしこれは暴論です。日米の防衛協力行動の指針に、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」というものがあります。 ガイドラインの「IV 日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」には、「自衛隊は、主として日本の領域及びその周辺海空域において防勢作戦を行い、米軍は、自衛隊の行う作戦を支援する。」と定められています。 すなわち、諸外国からの日本に対する武力攻撃に対しては、自衛隊が主体となって防衛し、米国がこれを補完・支援することになっているのです。 まず、自衛隊が主力となって戦い、次に、米軍が極力、速やかに到着して、自衛隊の作戦を支援するということです。 あくまでも、「日本の能力を超えた部分において、米軍が支援する」というのが米軍の役割です。 しかも、これは「指針」であって、米軍の義務ではありません。つまり「必ず助けてくれる」と言う確約ではありません。これは、日米安保のもろさを示している一例です。 ◆なぜ「集団的自衛権」が重要か? 日本が侵略を受けた際、自衛隊がまず出動し、次に米軍がやって来て共同で防衛することになります。 しかし、その時に、米軍が敵から攻撃されたとして、その時に、自衛隊が米軍を護る援助ができなければどうでしょうか? 第一に、間違いなく、日米関係にヒビが入ります。 日本の「集団的自衛権」の複雑な事情など、アメリカの国民のほとんどは知りません。 米国民が「日本は米軍を見捨てた」と騒げば、それだけで日米同盟は破たんの危機に瀕します。 日米同盟が崩壊すれば、日本単独の防衛力では、中国や北朝鮮の脅威から日本を守ることは極めて難しいのが現状です。 第二に、「集団的自衛権」は「日本の防衛のために不可欠」だということです。 日本の防衛は、そもそも米軍と協力して行う事を前提にしている以上、米軍に降りかかる火の粉を追い払うことを、他人の問題と切り捨てるわけにはいかないからです。 「集団的自衛権」行使に反対の方が、「我が国は、日本を護るための必要最小限度の防衛しか認められていないから、米軍まで護るという集団的自衛権は憲法違反である」という言い方をします。 しかし、自衛隊に足りない防衛能力を補おうとして米軍は支援してくれるのですから、米軍の存在は「日本防衛の一部」であることは明白です。 したがって、「集団的自衛権」は、憲法9条の「わが国を防衛するための必要最小限度の範囲に入る」と解釈し、行使を容認すべきと考えます。(文責・岐阜県本部副代表 河田成治) シリア問題にみる、米国の影響力低下と、ロシア外交の重要性 2013.09.02 ◆シリアへの軍事介入に見る米英のきしみ 8月27日、ブルネイで米国のヘーゲル国防長官がシリアへの軍事介入について、「われわれの準備は整っている」と述べ、早ければ29日にもミサイル攻撃がなされる可能性が報道されました。 シリアへの軍事攻撃開始は「秒読み段階」と見られ、日本でもマスコミ報道が活発化して来ました。 しかし、軍事行動を共にするとみられていたイギリスでは、8月29日、軍事介入についての是非を議会に諮ったところ、反対が多数となり、キャメロン首相が「国民の意見を反映した議会が、英国の軍事行動を望まないことは明らかだ。政府はこれに従って行動する」と述べ、軍事介入不参加を表明しました。(8/30 朝日夕刊) これに対して、オバマ米大統領が8月31日に軍事介入を決断したことを発表しましたが、これに先立ち、フランスのオランド大統領とは電話会談を行ったのに対して、英国のキャメロン首相は事前に連絡を受けていなかったと言われています。 また、英国キャメロン首相は議会の同意がなくても介入を決断することも可能だっただけに、オバマ大統領とキャメロン首相の信頼関係にも疑問符が残ります。 そもそも、「キャメロン首相は本気で軍事介入に参加する気があったのだろうか」という疑問の残るところであります。 ◆オバマ大統領のシリア攻撃先送りへの批判 しかし、オバマ大統領は8月31日に突如、「軍事介入について決断した」と述べると同時に「議会の承認を求める考え」を示しました。 軍事行動を共にするとみられていたイギリスが不参加を表明し、ロシアが強硬に軍事介入に反対する中、これまで「化学兵器の使用は許さない」と言い続けたオバマ大統領としては、米国のプレゼンス維持のためにも「軍事介入の決断はせざるを得ない」と考えたものと思われます。 しかし、イギリスと同様、軍事介入を行うためには、本来は議会の承認は必要ありませんが、オバマ大統領は、米国世論の半数が軍事介入に反対する中、「議会の承認による後押し」が必要だと考えたのでしょう。 また、化学兵器使用疑惑について調査した国連調査団の報告書が約2週間後に作成される見通しであり、9月5~6日にG20首脳会合がロシアで開催されることもあり、ロシア説得のための時間稼ぎが必要だと考えたのかもしれません。 ロシアは地中海に展開する艦艇を増強する見通しや、情報収集艦1隻を地中海に派遣した事が明らかになるなど、欧米への圧力を強めており、これは米国などに対して非常に大きな「抑止力」になっているものと思われます。 ロシアはシリアのアサド政権に対して対空ミサイルの輸出が指摘されているように、シリアの防空システムの能力向上はロシアの支援で行われてきており、アサド政権とロシアは友好関係にあるため、簡単にアサド政権転覆を許すとは考えられません。 このオバマ大統領の姿勢に対して、1日付シリア政府系紙アッサウラが「米国の歴史的後退の始まりと、世界の指導的立場からの撤退」を意味すると論評するなど、今回のオバマ大統領の決断が、今後の米国の影響力低下を決定的なものにしてしまうかもしれません。(9/1 産経「『米国の歴史的後退』シリア政府系紙が論評」) 米国内でも、オバマ氏の攻撃先送りの決断に対し、共和党のキング下院議員が「軍最高司令官としての責任放棄だ」と非難。民主党関係者も「大統領がこんなにふらふらしてはならない」と述べるなど、非難が高まっています。(9/2 共同「米、シリア攻撃先送り 土壇場の迷走 重圧感じたオバマ氏」) ◆米国の影響力低下を見据えた外交・国防の再構築を! 今後、日本としては、外交・国防を考える上で、オバマ大統領の姿勢と、ロシアの影響力については非常に参考になる事例になると考えられます。 今後、いかなる推移をたどるかは不明ですが、仮に米国議会の承認が得られず、オバマ大統領が軍事介入を断念するような事態になれば、「化学兵器を使用したアサド政権に対しても軍事介入を決断できなかった」ことになり、これはイランや北朝鮮、さらには中国に対するアメリカの「抑止力低下」を意味します。 そもそも、シリアに対しては限定的で短期間のミサイル攻撃が行われるものと見られ、アサド政権を終わらせるための軍事介入は否定されてきました。 これに対して、マケイン米上院議員らが「戦闘の流れを変え、アサド大統領を権力の座から降ろし、この紛争を終わらせるべきだ」という内容の声明を発表し、オバマ大統領の戦略が不十分だと指摘されてきました。 このように、オバマ大統領の「決断力」には非常に大きな懸念を感じざるを得ない状況の中、日本は独自の抑止力強化を急ぐべきです。 また今後、対北朝鮮や、対中国防衛を強化していくにあたり、ロシアが日米の側につくか、それとも中国や北朝鮮と連携するかは、戦略的に非常に大きな影響を及ぼします。 少なくとも「ロシアが日本や米国の敵にはならない」という状況を作っておかなければ、現在のシリア情勢を見る限り、「米国が日本を護ることをためらう」という状況になることが容易に予測されます。 日露外交を活発化し、日露友好を進めていくべきだと考えます。 今後のシリア情勢については、日本の安全保障を考える上でも重要であると考えますが、サリンなどの猛毒の化学兵器などでシリア国民の方々が苦しむ姿が連日報道されております。 一刻も早く、国際社会が団結し、事態が打開されることを願うばかりですが、日本としても、もう一段高い気概を持ち、「地球的正義とは何か」を考え、行動できる国へと成長しなければなりません。(文責・HS政経塾第二期生曽我周作) 進撃の帝国――中国の「戦略的辺疆論」の正体 2013.09.01 ◆「国境」と「辺疆」の違い 世界の国々には、国の境目に「国境線」という概念があります。 しかし、中国はそうした国際ルールを無視した「辺疆」(へんきょう)という概念があります。 「国境」は「境界線(border line)」ですが、中国の「辺疆」は「面(border area)」を意味します。 つまり、国防上、中央から遠く離れた「辺疆」(エリア)を中国の傘下、影響下におくことで、外敵から中央を守る。――これが中華帝国時代から続いて来た伝統的な考え方なのです。 また、「辺疆」の考え方には、国家としての総合力(政治力・経済力・軍事力)が強ければ、どこまでも拡大できるという意味があります。 すなわち、中国のパワーが強大になれば、影響を拡大して「辺疆」を自国の傘下に組み入れても良いと考えているのです。 ですから、中国は自由に国境線を越えて自国のパワーを拡大し、どんどん他国の領土に踏み込んで来ています。 モンゴル自治区、チベット自治区、新疆ウイグル自治区(「新疆」とは、新たに手に入れた「辺疆」という意味)も、この「辺疆」の考え方に基づいて中国のパワーがその地域を支配した結果です。 元防衛研究所研究室長の平松茂雄氏は「毛沢東の中国は、『グレーゾーン』である『辺疆』に居住する非漢民族の地域までも新中国の領土に組み入れて、かつての『中華世界』を再興する意図を建国当時から持っていた」と指摘しています。(平松茂雄著『中国は日本を併合する』講談社インターナショナル) この「辺疆」を海に展開させると、尖閣諸島で起きているように大量の公船を投入し、支配海域を拡張させる行為に繋がっていくのです。 ◆「戦略的辺疆論」とは何か 「辺疆」を現代戦争の戦略として進化させたものが「戦略的辺疆論」です。 これは1987年、三略研究院高級顧問の少将・徐光裕が中国軍機関誌に発表したものです。 「戦略的辺疆論」に基づいて、陸ではなく海に展開したのが下記の「海軍発展戦略」です。 【第一段階】2000~10年:「第一列島線」(鹿児島~沖縄~尖閣諸島~台湾~フィリピン~ボルネオを結ぶ線)の内部の制海権確保。つまり「南シナ海、東シナ海」を支配する。 【第二段階】2010~20年:「第二列島線」(伊豆諸島~小笠原諸島~グアム・サイパン~パプアニューギニアを結ぶ線)の内部の制海権確保。つまり「西太平洋」を支配する。 【第三段階】2020~40年:太平洋、インド洋で米軍と制海権を競う。つまり、南シナ海、東シナ海、そして西太平洋を段階的に「中国の海」にしていく戦略です。 現在、【第二段階】の西太平洋の支配の段階に入っています。 中国は2008年より、西太平洋上の沖ノ鳥島周辺海域で海軍の軍演習を行いましたが、その回数は年々増え、中国は今後、同海域での軍事演習を定例化すると発表しています。 こうして中国は、日本を含めた西太平洋を新たな「辺疆」にしようとしているのです。 こうした戦略を実現するために、数年内に西太平洋で中国空母艦隊の軍事演習が行われることは間違いありません。 これまで中国海軍の西太平洋進出は空母艦隊の陣形を取っていることから容易に予測できます。 ◆「中国艦艇の日本一周航海」の意味 先日のHRPニュースファイル「中国艦艇が日本一周航海――中国海軍の太平洋侵出と日本列島の危機」の中で、7月に中国の海軍艦艇が日本を一周する形で航行したことをお伝え致しました。⇒http://hrp-newsfile.jp/2013/888/ 6月の米中首脳会談で習近平は、オバマ米大統領に「太平洋には米中両大国を受け入れる十分な空間がある」と語りましたが、これは「中国とアメリカとで太平洋を分割して支配しよう」とアメリカに提案した形です。 その行動の手始めとして、中国艦艇が日本一周航海をすることによって、「尖閣・沖縄のみならず、太平洋側を含む日本列島は既に中国の支配ターゲットに入っている」ことを意思表示したわけです。 日本は、これまでも沖縄近海を航行し、西太平洋・沖ノ鳥島海域で行われた中国海軍の軍事演習を「公海上であり、問題がない」として、全く抗議すらしていません。 しかし、中国の「戦略的辺疆論」を知れば、日本が抗議しなければ、日本は暗黙の内に、中国の「辺疆」に組み入れられることを了承したと受け取られかねません。 日本の独立と尊厳を守り抜くためにも、安倍政権は中国の太平洋侵出に抗議すべきです。(文責・政務調査会 佐々木勝浩) 北極海航路開拓への挑戦と北の守りの強化を! 2013.08.31 ◆新たなるフロンティア、北極海航路 北極海の夏季の氷が年々薄くなっています。 アメリカ連邦政府は3~5年後の夏季には、北極海が全く氷結しなくなる可能性があるという予測をしてます。 現在は、北極海航路が利用できるのは7月から10月までの4ヶ月前後というのが定説ですが、古い氷が積み重なった多年氷に代わり、砕きやすい一年氷が増えれば、通年の航行も可能となるとも言われています。 これにより、アジアとヨーロッパを結ぶ最短ルートが注目を集めています。 こうした地政学的変化を受け、各国はロシア沿岸の北極海を横断する「北極海航路」の重要性を位置づけ直し、新たな戦略を作成しています。 ロシアのプーチン大統領は、北極海航路をスエズ運河に比肩する世界の大動脈に発展させる方針を示し、インフラ整備に力を入れるよう、2年前から関係当局に発破をかけています。 さらに、ロシアは原子力潜水艦の建造を急いでいます。北極海の海上アクセスを活用したロシアの北方艦隊強化の動きに警戒が必要です。 また、アメリカは「融氷した北極海における海軍作戦」の立案を急いでいるようです。 ◆日本にとっても重要な北極海航路 8月16日、ナフサ(粗製ガソリン)を積んでノルウェーを出発したタンカーが水島コンビナート(岡山県)に到着しました。実際にナフサタンカーが北極海を航海したのは初めてのことです。 スエズ運河を通る南回り航路では40日かかるところ北極海航路では25日程度で、日程を4割短縮しました。 運航コストにおいて砕氷船のチャーター料金は発生しますが、「スエズ運河の通航料や海賊対策の武装コストと変わらない」(旭化成ケミカルズ)とし、運航日数が短い分、2割程度安くなっています。(8/16 日経「北極海航路資源に『近道』旭化成など、北欧からナフサ 機動的調達可能に」) 現在使われている南回り航路には、不安定要素が数多く存在します。 ソマリア沖の海賊問題をはじめ、エネルギー輸入の大部分を頼る中東の不安定な政治情勢、中国の覇権拡張主義に脅かされる南シナ海、併合へのカウントダウンが始まろうとしている台湾近海などです。 ただ、日本は現在、原発を再稼働できないことから、石油や液化天然ガスなどほぼ全てのエネルギーをタンカーで輸入せざるをえません。 中国によるシーレーン封鎖などに対するリスク分散として、北極海航路の更なる活用は当然であり、ナフサのほか、液化天然ガス輸入も検討されています。 国としては国交省が昨年8月に北極航路の利用に向けた検討会を立ち上げましたが、諸外国と比べてあまりに後れを取っている状態です。 ◆東シナ海、南シナ海に続いて北極海を狙う中国 特に中国は、自国が「北極に近い国」であると称し、北極海での権益確保にかなり積極的に乗り出しています。 北極評議会(米・露・カナダ・デンマーク・ノルウェー・アイスランド・フィンランド・スウェーデンの北極圏に関して直接的な利害を得るとされている8カ国で構成)がOKを出した会議にしか参加できないアド・ホック・オブザーバーの立場であった中国は、オブザーバーの地位を狙って外交を展開。 例えば今年4月アイスランドとFTAを締結し、自国への輸出を前年の40%以上増加させ、友好国を増やす外交を展開。 その結果、今年5月に行われた北極評議会の会合で、カナダやロシアの強い反対にもかかわらず、中国は閣僚級会議以外のすべての会議に参加できるオブザーバーの地位を得ました(日本、韓国も同様)。 現在は、世界最大の砕氷観測船「雲龍」を保有。過去5回にわたり北極観測航海を行っている他、新たな砕氷観測船を建造中です。 また、ノルウェーに観測所を設けており、アイスランドにもオーロラ観測基地をつくる計画があり、相当の先行投資を行っています。 東シナ海、南シナ海に続き、世界の未発見のガスが30%、原油が13%眠るとされる北極海を手に入れるため、着々と計画を進めているのです。 ◆今後、熱くなる北極海航路に伴う守りを十分にせよ 一方で日本には中国、韓国が持っている砕氷船すらまだありません。今後は、砕氷船の建造・取得と共に、北極海航行用船舶の整備や専門技術を持つ船員の育成の課題なども出てきます。 また、北極海航路の利用が増えるにしたがって必要となるハブ港に、中国の大連港や韓国の釜山港が名乗りを上げていますが、本来であれば、北東アジアで一番北極海航路に近い位置の日本の苫小牧港がその役割を果たすべきです。 更には「北のシーレーン」防衛の問題が発生します。中国は20年には海上貨物の最大15%を北極海経由にする計画を持つとされています。 今年7月、中国海軍の艦艇5隻が宗谷海峡を通過したのが初めて確認されましたが、宗谷海峡は中国が海運拠点として有望視する北朝鮮の豆満江(とまんこう)から北極海に向かう「北のシーレーン」上にあります。 「北極海航路の重要性が増すにつれ、日本北方海域での各国海軍の動きはますます活発になる」と日本の防衛省関係者は指摘しています。(8/28 日経「『航路の利用進む北極海』=軍事機密、共通海図阻む=」) 中国は今後日本の宗谷海峡、加えて北極海への最短ルートである津軽海峡を頻繁に通過するようになるでしょう。津軽海峡の真ん中は、現在、公海となっています。 公海を通行しても日本が何もしてこないということを知っている中国が、この海峡を重要かつ脆弱なポイントとして認識していることは明らかです。 日本は今後、これら公海を含む海峡の定義の見直しと管理を強化し、中国を牽制しつつ国防を強化すると共に、新たなフロンティアである北極海航路開拓に向けて、積極的に打って出る必要があります。(文責・湊 侑子) 中国の宇宙・サイバー戦略を分析する 2013.08.29 本日は、中国人民解放軍が発行する「解放軍報」という新聞から、中国の宇宙・サイバー戦略について分析を試みてみたいと思います。 この新聞には軍区における演習の状況や党・軍の重要人物の発言などが掲載されている他、「軍事論壇」という紙面が構成されることがあります。8月は6日、13日、20日、27日付で掲載されました。 一つの国家が将来の軍事力を整備する上では、将来どのような脅威に直面するかを予想しなければなりません。 「軍事論壇」では、中国が将来的に直面すると予想される戦争を「未来戦争」と定義し、そのあり方が議論されています。 解放軍が将来の戦争を想定するにあたって何を参考とし、どのような準備をしているかを知ることは、我が国の国防を考える上でも、大変重要だと考えます。 ◆サイバー空間での軍事的優位を確立するための宇宙進出 まず最初に、宇宙開発を取り上げます。 2013年6月、中国は有人宇宙船神舟10号を打ち上げ、宇宙ステーション「天宮1号」とのドッキングを成功させています。宇宙開発は、中国の軍事戦略において重要な位置を占めています。 8月20日付の「軍事論壇」の記事では、「空・宇宙の情報系統を確保する事が、局地戦争の勝利のカギ」であり、特に「サイバー空間での優位を確保する事は、現実での戦闘を有利に進め、戦場での主導権を握るために極めて重要」といった指摘が見られます。(8/20『解放軍報』「戦法創新的“空間”有多大」) この記事から、中国の宇宙開発が「サイバー空間における優位性の獲得」という軍事戦略と一体となっている事実が伺われます。 さらに同記事では、制海権、制空権という用語と並んで「制天権」という言葉が用いられ、「より上層の空間を制する力を獲得すること」の必要性が説かれています。 このことから、解放軍は「宇宙空間を軍事的に支配する能力」を獲得することをも視野に入れていると見るべきでしょう。 ◆サイバー空間も「辺疆」として定義された 次に、中国のサイバー戦略観です。 宇宙開発によってサイバー優位を実現しようとする解放軍ですが、驚くべきことに、彼らはサイバー空間を「無形の辺疆」として位置付けているのです。(8/6『解放軍報』「無形辺疆重在建」) 「ネットの安全は、既に『辺疆』を形成している」――これは8月6日に発行された「解放軍報」の「軍事論壇」に掲載された記事の冒頭部分です。 「辺疆」とは、国防上、他国からの侵略に対して「緩衝地帯」を形成する重要な地域を指す用語であり、陸地ではチベット、ウイグル、モンゴルが該当し、海洋においては第一列島線・第二列島線の内側が該当します。 中国はこれらの地域における軍事的・政治的な支配力を確保し、その伸長を目指しているのです。 ◆サイバー攻撃と物理的攻撃を同等とみなす解放軍 8/6付の記事では、「サイバー空間の主権意識を強烈に喚起しなければいけない」という記述がみられるほか、「主権国家に対するサイバー攻撃は、ミサイルなどの物理的な攻撃と同じである」との主張が見られ、サイバー攻撃に対しては自衛権を発動する可能性があることを示唆しています。 サイバー空間そのものを国家主権の及ぶ「辺疆」とみなしているという中国の実態について、私たち日本国民は十分な情報を与えられていないのではないでしょうか。 ◆国際政治を理解するためにも、軍事の知識は必要 その一方で、中国はサイバー空間において「公正、民主、透明な国際規制」による「安全、解放、協力の空間秩序」の樹立をも主張しています。 これは一見もっともらしい主張に聞こえますが、これを字義通りに受け取ってはいけません。 あくまで、中国の本心は「辺疆」としてのサイバー空間の支配拡大であり、サイバー空間で強い力を持つ米国に足枷をはめることにあります。 我が国の一部のメディアには、軍事を扱うこと自体を忌避する傾向がありますが、国際政治を理解するためにも、「教養の一部」として、軍事に関わる最低限の情報を知ることは必要であると考えます。(文責・HS政経塾第一期生 彦川太志) すべてを表示する « Previous 1 … 73 74 75 76 77 … 101 Next »