Home/ 国防・安全保障 国防・安全保障 憲法論で「筋を通せる」のは、立憲民主党ではなく、幸福実現党 2019.05.01 憲法論で「筋を通せる」のは、立憲民主党ではなく、幸福実現党 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆立憲民主党 枝野代表の憲法論には矛盾がある 日本の安全保障の最大の問題は、憲法9条の改正ですが、これに関しては、共産党のほか、立憲民主党が、近年、抵抗を繰り広げています。 しかし、その代表である枝野氏に関しては、過去と現在の主張に大きな矛盾があります。 その矛盾をマスコミは広く国民に伝えていないので、今回は、その問題を掘り下げてみます。 ◆立憲民主党・枝野代表は2013年に「他国と共同して、自衛権を行使」と主張 民主党が野党になってから約10ヶ月が経った頃、枝野氏は、2013年10月号の『文藝春秋』に「憲法九条 私ならこう変える」と題して「改憲試案」を発表しました。 そこには「我が国の安全を守るために行動している他国の部隊に対して、急迫不正の武力攻撃がなされ」た場合に、「他の適当な手段がな」ければ、「必要最小限の範囲で、当該他国と共同して、自衛権を行使することができる」と書かれていたのです。 これは「集団的自衛権」の行使を認める内容です。 「我が国の安全を守るために」という条件がついているので「限定容認」ですが、その範囲で集団的自衛権が使える文言を入れたわけです。 実際に、枝野氏は、この論文のなかで「個別的か集団的かという二元論で語ること自体、おかしな話です」と書いています。 そして、自衛権の行使は、内容次第で是非を判断すべきだと論じていました。 --- 【具体例】 ・自衛のためでも先制攻撃や報復行為は認めない。 ・日本に照準を向けたミサイルが発射される前には自衛権を使ってよい。 ・日本に米軍基地があるのは「集団的自衛と説明するしかない」。 ・定義が困難な後方支援は「言及する必要がない」(※言及するとそれに縛られ、臨機応変に動けないため) --- この内容は、自民党の方針に近い内容だったので、当時、民主党では保守派だった長島昭久議員も賛成していました。 そのため、この改正案は、共産党から「集団的自衛権の行使に道を開くもの」(市田忠義書記局長〔当時〕)だと批判されていたのです。 ◆「筋を通す」ならば、立憲民主党の旗を下ろすべき しかし、2014年に安倍首相が集団的自衛権の行使を認めると、枝野氏は、反対しました。 本人は、改憲私案は「集団的自衛権の行使を認めたものではない」と言いますが、同盟軍である米軍が攻撃された時に、日本が共同して戦闘に参加するのは、集団的自衛権の行使です。 理解に苦しむ行動ですが、枝野氏は、そのあとに2017年に立憲民主党を立ち上げても、同じく、集団的自衛権の行使に反対を続けました。 枝野氏は、過去と現在の矛盾を、有権者にきちんと説明できていません。 枝野氏は、立憲民主党をつくった頃、「筋を通す」ためだと言っていましたが、実際は、言行不一致の状態が続いています。 筋を通すのならば、2013年に出した、もとの案に戻り、立憲民主党の旗を下ろすべきです。 ◆立党以来、「集団的自衛権の行使」「憲法改正」で一貫している幸福実現党 しかし、幸福実現党には、そのような問題はありません。 立党以来、「集団的自衛権の行使」による日米同盟の強化を訴えてきました。 憲法九条を変え、自分の国を自分で守ることを一貫して主張し続けています。 我々は、票を取りたいがために、平気で矛盾した主張を重ねる枝野氏が率いる立憲民主党とは違います。 しかし、幸福実現党には、そんな迷いはありません。今後も、変わらず、筋を通して、憲法9条の根本改正を訴えてまいります。 【参考】 ・枝野幸男「改憲試案発表 憲法九条 私ならこう変える」(『文藝春秋』2013年10月号) ・しんぶん赤旗「枝野9条改定私案―歯止めどころか集団的自衛権の行使に道を開くもの 市田氏が批判」(2013年9月10日) 開かれない憲法審査会 政治家の責任放棄だ 2019.04.22 開かれない憲法審査会 政治家の責任放棄だ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆衆院憲法審 ただいま機能停止中 北朝鮮が新型兵器の実験を行い、朝鮮半島の情勢が変わり始めていますが、日本では、いまだに平和ボケが続いています。 (※この「新型戦術兵器」は短距離ミサイルの可能性ありと憶測されている) 今の自民党の改憲案は、9条の条文を残し、自衛隊の存在を合憲化するだけの「加憲案」にすぎないので、成立しても、日本の安全保障はたいして変わりません。 そして、野党は、そうした改憲案でさえも議論を拒否しています。 昨今の国会では、まず、4月10日に予定された与野党の幹事懇談会に野党が出席を拒否しました。 日程は18日に再調整されたものの、自民党の萩生田幹事長代行が「ワイルドな憲法審査を」と発言したことに立憲民主党は反発。 ふたたび開催は見送りとなったのです。 戦後70年以上、現行憲法のままで国が安全であったことが災いして、国会議員から国民にまで、今の憲法の上にできた防衛体制に重大な欠陥があることは、広く知られていません。 そのため、憲法改正の世論は盛り上がらず、国会議員も、それを率先する熱意が足りないのです。 ◆現行の九条ではダメな理由:「軍隊」でなければ「戦争」には対応不能 日本は、憲法9条で「戦力」を持たないと定めながらも、「自衛力」という用語を使って、自衛隊の存在を正当化してきました。 「『自衛隊』は『軍隊』ではない。『自衛のための必要最小限度』の実力は持てる」と言って、憲法9条と自衛隊が要る現実との落差を埋めようとしてきたのです。 しかし、実際に戦争が起きた場合には、その差を埋めきれません。 戦争が起きれば、「想定外」の事態が続きますが、日本の行政のルールのもとでは、そうした状況に自衛隊が対処できないからです。 法的には、自衛隊は、消防隊や徴税職員などと同じ「執行機関」にあたるので、根拠となる法令がない場合には、非常時でも動けません。 (裏を返せば、「法令で想定した範囲でしか自衛隊は動けない」ということ) 安保法制などで、自衛隊も動きやすくはなったのですが、まだ、不十分な点は残っています。 例えば、自衛隊が米軍を後方支援できるのは、「戦闘行為を行っている現場」以外の地域なので、現地で戦闘が始まったら、自衛隊は退去しなければならないのです。 北朝鮮のミサイルが飛んできたり、日本国内に隠れていた特殊部隊がテロ攻撃をしかけた場合、予想外の地域が戦場に変わる危険性がありますが、そこまで考えきれていません。 そうした抜け穴は、「法令で決められたことしかできない」という枠がある限り、次々と出てきます。 こうした問題が起きるのは、自衛隊が軍隊ではなく、「行政法」の枠の中に置かれているからです。 諸外国と同じく「国際法」に則って、機動的に有事に対処できる軍隊に変えなければ、国は守れないのです。 ◆実は、安保法制でも「戦える国」にはなっていない 自民党の保守層は、今の体制の問題点を知っているので、集団的自衛権の解釈を変えただけでなく、「武器等防護」の名目で米軍艦艇を守れるようにしました。 これ自体は、日本の防衛体制を一歩前進させるものでした。 しかし、もともと、法令で全ての事態を網羅しつくすのは無理です。 仮に全てを網羅できても、有事にいちいち法令集を見ながら戦うことはできません。 自衛隊の元幹部は、今の体制だと、法令集を片手にもって戦わなければいけなくなると嘆いていました。 これは、あまりにも非現実的な防衛体制です。 こうした問題を解決するには、自衛隊を軍隊に変えなければなりません。 ◆自民党の改憲案だと、自衛隊は「軍隊ではない」まま ところが、自民党は国民を説得する自信が持てず、公明党の支持も見込めないので、現行憲法の条文を残したまま、自衛隊の根拠条文を「加憲」しよう、と言い出しました。 確かに、これができれば自衛隊は違憲ではなくなります。 しかし、9条1項と2項が残るので、この体制でも、自衛隊は軍隊ではない状態が続きます。 「有事でも根拠法令がないことは対処不能」という状態が続くので、本当は、何も変わらないのです。 ◆幸福実現党がなければ、憲法9条の根本改正は進まない 第一次安倍政権の頃、自民党は改憲の最前線にいました。 しかし、今は有名無実の加憲を掲げるだけの政党になってしまいました。 これは、政治の責任放棄です。 安倍首相は、一度、志に破れた体験のためか、憲法改正には、かなり後ろ向きになっています。 ポスト安倍と目される岸田氏はもっと後ろ向きで、人気のある小泉進次郎氏も、いまだに安保政策で目指しているものかが見えません。 自民党に、もう、憲法改正は期待できないのです。 今の日本では、幸福実現党のみが、憲法9条の1項、2項を含めた全面改正を選挙で訴え続けています。 自衛隊を軍隊にする、幸福実現党の改憲案こそが、日本を守るのです。 ※参考:九条の条文 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。 政治家の『Think Big』が宇宙開発の未来を拓く 2019.03.31 政治家の『Think Big』が宇宙開発の未来を拓く 幸福実現党 山形県本部統括支部長 城取良太 ◆際立つ日本の技術力と低予算 探査機「はやぶさ2」による快挙からはや1か月。 小惑星「りゅうぐう」への着地に成功し、回収された岩石には水分が含まれることが解析の結果、判明しました。 来年末、はやぶさ2が帰還すれば、水分を含んだ宇宙物質が持ち込まれることは世界初で、そのサンプルがもたらす貢献度は極めて高いものとなりましょう。 重力の関係上、着地が難しいとされる小惑星から物質を回収したこと自体、世界で際立つ技術力の証明ですが、対照的なのがその低予算ぶりです。 はやぶさ2関連の11年間分の総事業費は289億円、年平均で考えても25億円前後にしかなりません。 民主党政権下では、事業仕分けで一時3000万円にまで削減され、そのままならば、こうした快挙はまず起こらなかったでしょう。 宇宙開発全体の予算を見ても、JAXA・防衛省が約3000億円(2018年)に対し、米国は約4兆5000億円、米国と同等と言われる中国と比較しても、15倍の開きがあるのが現状なのです。 ◆「天空」支配を目論む中国の宇宙戦略 いま特に、宇宙で目覚ましい発展を遂げているのが中国です。 その旗印が≪中国製造2025≫と称される中国の国家戦略で、「2025年までに半導体等のハイテク部品の7割を自国で製造出来る体制を作り、宇宙開発などでアメリカを抜き、世界一を目指す」というものです。 もし中国の宇宙技術の進歩が、人類への貢献を目的とするものであれば称賛に値しますが、一党独裁の中国がその技術を「軍事に使う」となった場合、話は全く別物です。 現に、習近平主席は事実上の「宇宙軍」創設を明言し、毛沢東の遺志を継ぐ形で、宇宙技術の軍用化を主眼としていることは間違いありません。 中でも象徴的なのが、解読不能と言われる世界最高レベルの「量子暗号」と、それを搭載した「量子通信衛星」を2016年8月、世界で初めて打ち上げに成功させた驚愕の事実です。 「暗号を制する者が世界を制する」の通り、軍事的にも最も重要な要素の一つとも言える「情報」において、世界で優位にあるのは実は中国なのです。 他にも、昨年末には月の裏面探査にも着手、2022年には独自の宇宙ステーション稼働を計画するなど、分野によっては米国の先を行っている感は否めません。 これらは「一帯一路」とも連動しており、予算の少ない途上国に対して、人工衛星機能の活用を約束するなど、中国の宇宙技術が「懐柔」の大きな武器になっているのです。 ◆かつての宇宙大国を蘇らせた起業家たちの夢 一方、ソ連との宇宙開発競争で凌ぎを削り、圧倒的な地位を占めてきた米国ですが、NASAの官僚化に象徴されるように、宇宙開発は低迷の一途を辿ってきました。 そんな停滞感に風穴を開け、再び活気を取り戻したのが、スペースXのイーロン・マスク(テスラモーターズ)やブルーオリジンのジェフ・ベゾス(アマゾン)といった、異業種のベンチャー起業家たちでした。 彼らは巨額の私財を投じ、ロッキード・マーティンやボーイングの寡占状態にあった宇宙分野で、試行錯誤を重ねながら、僅か十数年で不可能とされた地表への垂直着陸を実現、民間初の有人宇宙船打ち上げも成功させています。 既に、地位や莫大な富も手にしていた彼らをそこまで突き動かしたのは、子供の時から強く持ち続けた「宇宙への壮大な夢」であったはずです。 そんな中、「月を拠点として、最初に人類を火星に運ぶ」と壮大なビジョンを掲げるトランプ大統領の誕生で、米国の宇宙開発は再び本格化しようとしております。 以前と違うのは、完全なる国家主導ではなく、民間の宇宙ベンチャーのノウハウと技術を最大限活かすもので、実業界出身の大統領ならではの官民協力体制に期待感が高まります。 また先月には、米国も「宇宙軍」創設を明言、トランプ政権は宇宙領域においても中国と真っ向から対峙する姿勢を見せています。 ◆米中と比肩する宇宙産業を創るために このように、日本と米中の宇宙構想や規模を比較しても、経済力の差を遥かに超えた大きな「差」があるのが現実です。 ようやく、日本でも民間宇宙ベンチャーの胎動や、トヨタ自動車が宇宙服なしで乗車できる月面車への開発の発表など、日の丸宇宙産業の立ち上がりの気配を徐々に感じさせます。 そんな中、米中と比較し最も不足しているのが、宇宙政策に関する国家の大きなビジョンと十分な予算ではないでしょうか。 日本は重力の小さい天体での強みを活かしつつも、堂々たる大国として「月を拠点に、火星に行く」という米国に負けない壮大な理想も描きたいところです。 また、消費増税という失策への補填で2兆円を使う位なら、米中に比肩するような宇宙産業の創造に投資するなど、国家予算の有効活用を是非ご検討頂きたいと思います。 将来、日の丸宇宙産業を背負って立つような人財を数多く創るため、子供たちが心の底からワクワクするような夢やビジョンを堂々と語り示すことも、これからの政治家に求められる責務ではないでしょうか。 日本人が目を向けるべき中国での宗教弾圧 2019.03.09 日本人が目を向けるべき中国での宗教弾圧 幸福実現党・山形県本部統括支部長 城取良太 ◆加速する「宗教の中国化」 3月5日、中国の国会にあたる全国人民代表大会が北京にて開幕しました。 その中で、寧夏回族自治区がイスラム系少数民族・回族の統制政策を進める方針を明らかにし、習主席が提唱した「宗教の中国化」を先駆けて実行する事を宣言しました。(3/7読売7面) 当自治区では、「ハラル」表記の中国語への書き換えやモスクでの国旗掲揚の強制、建築物の中国様式への建て替え等が行われ、共産党幹部の養成機関では、習主席が行った宗教に関する講話が必須科目となり、「宗教の中国化」を思想的に統一する動きも強化されています。 こうした「宗教の中国化」の成功例として、参考とされるのが新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒の弾圧であり、両自治区は協定を結び、「新疆方式」を取り入れることで連携すると報じられています。 こうした動きはムスリムが多く住む甘粛省でも報告され、一気に中国全土に広がる可能性が高いといっていいでしょう。 ◆世界最大の宗教弾圧が行われているウイグル 約1100万人のウイグル族が暮らす新疆ウイグル自治区では、100万人を優に超えるムスリムが拘束、強制収容所で棄教やウイグル族の言語禁止、共産党礼賛教育が強制的に行われ、従わなければ男女問わず、過酷な拷問に晒されます。 収容所の外でも、AIによる顔認証、指紋・音声やDNAサンプルなどで個人の動向を徹底的に監視し、信仰心や教義知識、海外との繋がりなどを数値管理化し、「要注意人物」を割り出す仕組みが既に出来上がっています。 それに対し、昨夏から国際社会でも中国のウイグル弾圧を取り上げ始め、米トランプ政権も、ウイグル族に対する不当な人権侵害について、初めて本腰を上げる姿勢を見せました。 2月には民族的にも同じ「テュルク系」の国、トルコも恣意的な拘束や拷問、洗脳による同化政策を非難、収容所の閉鎖を求める声を国際社会に発しました。 ◆イスラム諸国が沈黙を続ける理由とは 一方、こうした弾圧に対して、同胞であるはずの他のイスラム諸国は沈黙を続けてます。 2月下旬、習主席は記者殺害事件で欧米からの猛烈な非難を受けているサウジアラビアのムハンマド皇太子を自国に招き、欧米による「内政干渉への反対」を表明、擁護する姿勢を示しつつ、経済関係の更なる深化を約束しました。 一方、オバマ政権以降、対米関係が悪化しているエジプトには、「ニューカイロ」と呼ばれる新首都建設やスエズ運河の拡張、エネルギー施設建設等で、IMFの融資を上回る規模のチャイナマネーが流れ込み、ここ数年で一層存在感を高めています。 イスラム過激派の動向に悩まされるシシ大統領としては、この点でも習主席と利害が一致しており、17年にはエジプトに留学中のウイグル人を拘束、強制送還するという弾圧の助長行為まで行っています。 大国を中心に、「一帯一路」構想に参画するイスラム諸国のほとんどが、同胞への弾圧に沈黙を守り続ける理由の一つが、「中国への経済的依存」を保ちたいためです。 また、もう一点は、「人権よりも社会的安定を優先」という点で中国と「同じ穴のムジナ」であり、非難が自国に跳ね返るリスクがあるからです。 2つの点で利害が一致する中国は、イスラム諸国と米国との隙間風が吹く間隙をぬいながら、関係を深め、同胞たちを弾圧しても、沈黙させるだけの影響力を持ってきたと言えるでしょう。 ◆現代の「防共回廊」のカギはウイグルにあり 関岡英之氏の『帝国陸軍知られざる地政学戦略』には、戦前日本がウイグル、回族とも関係を構築し、独立を支援して、反共親日国家を樹立し、中ソによる共産化の拡大を阻止しようとしたという「防共回廊」構想に関して見事に描かれています。 また、現代人よりも遥かに深いイスラムや当地域への造詣を持ち、彼らの独立という悲願を叶えようと一生を捧げた知られざる先人たちの情熱を再認識させられます。 そうした戦前の先人たちの大いなる智慧を継承し、日本はイスラム諸国で唯一、声を上げたトルコと、ウイグルや中国全土に広がるイスラム弾圧について本格的に連携を深めるべきではないでしょうか。 奇しくも、日本・トルコ間の経済連携協定(EPA)の合意に関連し、6月にはエルドアン大統領が来日する見通しとなっているため、そのチャンスを絶対に活かすべきです。 また、中国の「一帯一路」モデルとは一線を画し、技術力や教育力、メンテナンス等の強みを活かしたインフラ輸出等を更に推進し、中国からの脱・経済依存を図っていくべきです。 何より、幸福実現党は日本の政党として唯一、ウイグル弾圧について国連等、国際社会で堂々と訴えて参りました。 民族の誇りや信仰心を強制的に排除し、人間としての幸福感や自由を奪い、思考能力のない機械人間に変えていく―ジョージ・オーウェルの「1984」さながらの思想洗脳が、同時代に行われているという驚くべき事実を、日本の多くの人々に認識頂き、我々の言論に賛同頂けることを心から願います。 迫りくる台湾の危機と日本が果たすべき役割【後編】 2019.03.07 迫りくる台湾の危機と日本が果たすべき役割【後編】 幸福実現党 HS政経塾1期卒塾生 湊侑子 ◆追い込まれる台湾と日本の過ち 前編では、香港に対する中国の政治的圧力を述べて参りました。 同じような未来が、台湾にもおとずれてしまうのでしょうか。 実際に、台湾の現状は厳しくなっています。 蔡英文政権になった2016年5月以降、台湾とエルサルバドルやドミニカ共和国など5か国が断交しました。これらは、台湾断交と同時に中国との国交を持ちました。 台湾が国交を持つのは現在17か国のみであり、国際社会において影響力が小さな国ばかりです。 かつては国連において常任理事国であったその地位を中華人民共和国に奪われて以来、台湾は中国にどんどんと国際社会の隅に追いやられています。 中国の狙いは、台湾という国がこの地上に存在しなかったことにすることでしょう。日本はかつてその狙いに手を貸してしまい、台湾を裏切りました。 1972年、日中国交正常化の際に出された日中共同声明発表後の記者会見の場で、日中国交正常化の結果、 日華平和条約は存続の意義を失い終了した(台湾との断交)との説明を行ったのです。 台湾は日本の方針に強く反発はしましたが、覆すことはできず、日華平和条約に基づいて過去20年間外交関係を維持してきた台湾との国交が断絶しました。 日本は日中共同声明の中で、「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であること」を認め、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であること」を「日本国政府は、十分理解し、尊重」する、と明記したのです。 しかし本当は、そこまで急いで中国の主張を全面的に受け入れ、日中国交正常化をする必要はなかったのです。一方的に台湾との断交を宣言した結果、台湾は現在の立ち位置まで後退しました。 同じ日本人であったことがある台湾の人々を裏切ったことは、私たちの恥の歴史です。そしてその結果、台湾はこの地上から消えるかもしれない危機を迎えているのです。 日本は一度犯した過ちを、もう二度と繰り返してはならないと思います。 ◆自由と民主主義、繁栄、信仰を守る使命が日本にはある 台湾防衛は、運命共同体である日本人の義務であり、台湾の方々へ誠意を示す最後のチャンスであります。 今後ますますかじ取りが難しくなるであろうアジアの安全保障において、絶対に不可欠な要素が民進党の蔡氏の再選です。 来年1月の総統選への再選出馬を表明した蔡氏は、2月19日のTwitteで、「私の2300万人の仲間の市民のために、明るい未来を築きながら台湾の自由と民主主義を守ることは、戦うに値する目標だ」と綴っています。 私たち幸福実現党も全く同じ思いです。 台湾が数十年かけて手に入れた自由と民主主義、また香港の持つ経済発展のための智慧や繁栄、そして共産党が何よりも恐れる神仏への信仰を中国本土に入れることこそが、台湾2300万人のみならず、中国国民14億人を全体主義の圧政から救い出す道であり、アジアの防衛と幸福の基になるのです。 現在、香港においては中国本土に歯向かう動きをした政党は活動禁止になります。 中国本土では共産党の指導を受け入れ、追認する合法政党があるのみで、実質一党独裁が行われています。 非合法政党が設立宣言を行うと党首・党員が逮捕されるため、中国国外で設立を宣言するしかありません。 しかし中国本土において、自由と民主主義、資本主義による繁栄、そして信仰を掲げる政党の出現こそが、私たちの願いです。 台湾をはじめ、香港や中国本土の幸福の実現のために、私たちは使命を果たすつもりです。 (参考文献) 蔡英文 Twitter https://twitter.com/iingwen?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor Newsweek日本版 香港民主化を率いる若きリーダーの終わりなき闘い 2018年3月10日(土) https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/03/post-9704.php THE SANKEI NET 香港の若者の半数が移民希望 政治対立に嫌気 https://www.sankei.com/world/news/190107/wor1901070006-n1.html AFPBB News 香港政府、独立派政党に活動禁止命令 返還後初 2018年9月24日 14:08 発信地:香港/中国 [ 中国 中国・台湾 ] https://www.afpbb.com/articles/-/3190680 迫りくる台湾の危機と日本が果たすべき役割【前編】 2019.03.06 迫りくる台湾の危機と日本が果たすべき役割【前編】 幸福実現党 HS政経塾1期卒塾生 湊侑子 ◆中国による台湾進攻は、現実的な問題 本年1月2日、習近平国家主席は北京の人民大会堂において、台湾の私有財産や信教の自由などは十分に保証されるとし、台湾同胞の利益と感情に十分に配慮する前提で、一つの国に異なる制度を認める「一国二制度」の具体化に向けた政治対話を台湾側に迫りました。 同日、この提案に対して、蔡英文氏は台湾の絶対多数の民意として、受け入れを拒絶すると会見で発表しました。 蔡英文は2月28日産経新聞の単独インタビューを受け、日本に安保対話を要請する趣旨の発言を行いました。 そしてその内容を、自身の公式ツイッターで日本語で発信しました。 蔡氏の発信を要約すれば、 (1) 他国(アメリカや日本)と協力して、台湾を中国からの攻撃(世論操作、偽情報、武力)から守りたい。 (2) 中国が言う『一国二制度』は断固拒否する。 (3) 国際社会にもっと台湾の存在を重視してもらいたい。 (4) 経済的に中国以外の国との繋がりを強くしたい(TPPに参加したい)。 (5) そのために、日本と話し合いがしたい。 という内容です。 普段、英語での発信を行う蔡氏にとって、日本語での発信は初めてではないですが、珍しいことです。 また基本的に一日に一投稿なのですが、これに関しては、日本語で四回・英語で五回、計九回連続で投稿を行っています。 中国による台湾進攻が現実性を持って迫っているのだと感じさせる内容です。 ◆幸福実現党は台湾を見捨てない 蔡氏の要請に対して、幸福実現党はすべて答えを用意しています。 (1) 日台関係に関する基本法を制定し、台湾との関係を強化します。台湾への武器供与を行うなど、安全保障面での関係も強化します。 (2) 台湾を独立国家として承認・国交回復を目指します。 (3) 台湾の国連加盟を後押しします。 (4) 日台FTAを締結して経済関係を強化します。 これが、2019年の現時点で幸福実現党が掲げるマニフェストの台湾に関する部分です。 中国共産党設立100周年の2021年、中国は台湾への武力侵攻を本気で考えています。 幸福実現党は台湾防衛に向けて、アメリカと共同作戦が出来るよう、国際標準的な集団的自衛権の全面的な行使を想定しており、憲法9条の改正とともに法整備を考えていることも、明記しています。 一方、自民党HPに掲載されている公約(最新版 自民党政権公約2017)には、「台湾」という言葉や台湾防衛に関することは明記されていません。 中国に配慮してのことでしょうが、経済力においても国際信用力においてもアジアの雄である日本の政権与党の公約としては残念です。 ◆台湾の未来、香港の今 台湾の未来は、香港の今を見れば想像できることです。 1997年にイギリスが中国に香港を返還した際、中国は本土と異なる政治・経済制度を今後50年間維持し、高度な自治を認めると約束しました。 しかし返還から20年も経たない2014年、普通選挙を求める香港市民による雨傘革命が香港・中国政府によって鎮静化させられ、その後は民主派市民の立候補妨害、当選後の議員資格はく奪・民主派政党の活動禁止と圧力が強まっています。 「1国2制度というより、1国1.5制度だ」 「その0.5もどんどん縮小し、完全に中国の支配下に置かれようとしている」 と雨傘革命リーダーの一人、黄之鋒は語っています。 香港中文大の香港アジア太平洋研究所は2019年1月7日、香港18~30歳の若者のうち51%が海外移住を考えているとの世論調査の結果を発表しました。 2017年の前回調査から5.5ポイント増加しています。 理由では「政治的な論争が多すぎ、社会の分裂が深刻」が25.7%で最多を占めています。これらの割合は今後ますます増えていくと予想されます。 次回、後編では、こうした香港の教訓を踏まえ、さらに台湾の現状と日本の役割について明らかにして参ります。 (つづく) アラブ諸国で進む対立構造の変化――世界平和と真の国際的正義の実現を(後編) 2019.02.20 アラブ諸国で進む対立構造の変化――世界平和と真の国際的正義の実現を(後編) 幸福実現党 広報本部チーフ 西野 晃 ◆エネルギー資源調達の多様化――日ロ協調の道 日本は国内で消費する石油の約7割をサウジアラビアとUAEから輸入していますが、こうしたアラブ諸国内での対立の激化は、日本のエネルギー安全保障においても対岸の火事ではありません。 中東からの石油の供給がストップすれば日本でオイルショックが起こる恐れもあるからです。 また、中東からの石油が通る海上交通路(シーレーン)の確保も重要です。 日本の全貿易船の5割、原油の9割が南シナ海を含むシーレーンを通過していますが、中国の軍事行動によってシーレーンが封鎖されてしまえば、日本に石油が入らなくなります。 エネルギー資源調達の多様化に向けて選択肢の一つとして考えられるのがロシアです。 ロシアの産油量は米国とサウジアラビアに次ぐ世界3位で中東産原油の代替として大きな潜在能力を有しています。 エネルギー資源外交を積極的に展開し、全体の3割程度までの原油・天然ガス・石炭をロシアから輸入したいところです。 また、ロシアとの協商関係の構築を図ることによって、ロシア極東地域を中心としたエネルギー・農業・交通インフラなどへの投資を活発化させて、北海道へのシベリア鉄道延伸を推進し、日露経済交流を促進させたいところです。 その意味で、今進んでいる日本とロシアとの平和条約締結は一日も早く締結するべきです。 ◆くすぶる火種――日本は国際的正義と秩序を示し調停役を 2月14日、米国のペンス副大統領はポーランドで開催された国際会合に出席し中東政策について演説しました。 その中で、イランを名指しして弾道ミサイル開発や周辺国の武装勢力支援を停止するよう要求、ヨーロッパ諸国に対しても経済制裁の強化に向けた共闘を呼びかけました。 会議に出席した欧州の外交官らはペンス氏の演説に反発しており、「われわれはイランを良い結果に導きたいのであって、イランを核コミットメントの外側に押し出したいとは思っていない」と語っています。 同日には、ロシアのプーチン大統領、トルコのエルドアン大統領、イランのロウハーニー大統領が、ロシア南部ソチで会談をしています。 3か国の対米姿勢は温度差があるものの、シリア過激派掃討で連携したい思惑があるのでしょう。 イラン国内においては、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の重要な位置を占めるとして対中接近の強化を主張する意見もあります。 米中新冷戦も始まる中、台湾併合や南シナ海への覇権を強める中国としては、米国の戦力・兵力の分散をさせる必要があるため、イランと米国もしくはイスラエルとの紛争・戦争が起こる状況をつくり出すことを考えているかもしれません。 また、イランそして米国を後ろ盾とするサウジアラビアとの間にくすぶる火種に引火すれば、次なる戦争の引き金ともなりかねません。 昨年に行われた米朝首脳会談によって朝鮮半島の非核化も動き始めていますが、トランプ大統領から北朝鮮に投げられた石は、同時にイランに対するメッセージでもあるでしょう。 世界的宗教を幾つも生み出した歴史ある国であるイランは親日国でもあります。 寛容で多様な文化や宗教観が息づく日本としても、関与出来る余地があるはずです。 幸福実現党では、イスラム教圏そしてキリスト教圏との橋渡しを外交的に進めながら、宗教対立の融和を目指しています。 世界平和と真の国際的正義の実現に向けて引き続き働きかけて参ります。 (参考) ローマ法王、UAEで異例のミサ イスラム指導者面会も(朝日新聞) https://www.asahi.com/articles/ASM260SH2M25UHBI02X.html ローマ法王がUAE訪問(日経新聞) https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40847860U9A200C1EAF000/ ◆オマーンを異例の訪問 イスラエル首相(産経新聞) https://www.sankei.com/world/news/181027/wor1810270002-n1.html ◆サウジとイラン 対立の構図 スンニ派とシーア派の盟主(日経新聞) https://www.nikkei.com/article/DGXZZO95859040X00C16A1000000/ ◆米副大統領「イスラム国」壊滅まで協力 同盟国に訴え 対イラン共闘も呼びかけ(日経新聞) https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41266050U9A210C1FF2000/ ◆米ペンス副大統領 欧州諸国にイラン核合意の離脱迫る(NHK NEWS) https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190215/k10011815611000.html ◆米副大統領が欧州主要国を非難、中東会議でイラン制裁巡り https://jp.reuters.com/article/mideast-crisis-summit-idJPL3N20A260 ◆石油統計速報(経済産業省) http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/sekiyuso/result.html ◆イラン識者「対中接近強化を」 政府腐敗が経済低迷の原因(産経新聞) https://www.sankei.com/world/news/190213/wor1902130021-n1.html ◆日本とロシア、天然ガス・パイプライン構想…日本に多大な恩恵、史上最悪の石油危機を克服(Business Journal) https://biz-journal.jp/2019/02/post_26556.html ◆イラン制裁発動でも弱気相場入りした原油市場 価格下落を防ぐ手だてはあるのか?(独立行政法人経済産業研究所) https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/fuji-kazuhiko/93.html ◆「世界最悪の人道危機」イエメン内戦、停戦合意の“脆弱性”(WEDGE) http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14972 ◆風雲急!米主導の反イラン連合にロシアが対抗(Newsweek) https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/02/post-11699.php ◆ロシア・イラン・トルコ首脳会談 シリア過激派掃討で連携(日経新聞) https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41273960U9A210C1FF2000/ アラブ諸国で進む対立構造の変化――世界平和と真の国際的正義の実現を(前編) 2019.02.19 アラブ諸国で進む対立構造の変化――世界平和と真の国際的正義の実現を(前編) 幸福実現党 広報本部チーフ 西野 晃 ◆ローマ法王フランシスコのUAE訪問 2月5日、ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王はUAE(アラブ首長国連邦)の首都・アブダビを訪問しました。 カトリックの最高位にあるローマ法王がイスラム教発祥の地であるアラビア半島を訪れるのは史上初めてです。 屋外競技場で開催されたミサには、数千人のイスラム教徒を含む約18万人が動員され、3日間の訪問中にはイスラム教の指導者らとも面会しています。 宗教間会合で行った演説では「どんな形であれ暴力は非難される。我々は宗教が暴力やテロリズムを許すことがないよう注視する必要がある」「特にイエメン・シリア・イラク・リビアに思いを馳せている」と、紛争が続く国などでの一刻も早い戦闘終結を訴えました。 地元メディアも「歴史的な訪問」と歓迎、UAEのムハンマド首長はツイッターで「訪問によって寛容の価値と、宗教間の理解を深めることができる」と指摘しました。 昨年にはイスラエルのネタニヤフ首相がオマーンを公式訪問しています。 UAEやサウジアラビアと良好な関係を持つオマーンは、これらの国々同様イスラエルを敵視してきただけに、この訪問は宗教上の対立構造が変化しつつあることを匂わせます。 ◆アラブ諸国内での対立軸の変化――スンニ派とシーア派との抗争 どうやらイスラム教とユダヤ教(そしてキリスト教世界)との宗教対立というものが比較的弱まりつつある一方で、アラブ諸国内での対立抗争の重要度が増しつつあるようです。 中東は現在も様々な対立軸が複雑に絡み合い混迷の最中にあります。 その一つが、イスラム教スンニ派が多数派を占めるサウジアラビアを中心とした勢力と、イスラム教シーア派が多数派を占めるイランを中心とした勢力との対立です。 両者はイスラム教の二大宗派で、世界のイスラム教徒人口のうちスンニ派が約8割、シーア派が1割強を占めています。 「世界最悪の人道危機」と呼ばれるイエメン内戦が両者の代理戦争となっていることは周知の事実です。 少なくともスンニ派陣営にとっては、今回の法王訪問を地域的な影響力拡大のためのツールとして利用しつつ、他宗教の勢力をも味方につけながら、自分たちの正当性を国際社会に向けてアピールしようという思いが透けて見えます。 こうした動きは今後ますます熾烈になっていくでしょう。 サウジアラビアでは、次期国王と目されるムハンマド皇太子が「ビジョン2030」を掲げており、建国以来の大改革に取り組んでいました。 しかし目玉である国有石油会社サウジアラムコの株式上場が中止に追い込まれ、脱石油依存の経済構築という目標は頓挫してしまった感が強くなっています。 皇太子が開始したイエメンへの軍事介入で軍事費は膨らむ一方で、2017年のサウジアラビアの軍事費は694億ドルと世界第3位となっています。 また、強権的手法を多用したことで国内からの資金流出が拡大、王族内で大きな亀裂が生じてしまったとの懸念も指摘されており、ムハンマド皇太子としては何とかしたいところでしょう。 中東・北アフリカ地域では昨年後半から経済状態の悪化に対する抗議運動が広まっています。 中東メディアは2011年に発生した「アラブの春」が再来する可能性を報じており、史上最悪の「石油危機」が起こる可能性も有り得えます。 その状況下で、日本はどのような外交戦略をとるべきか次回述べて参ります。 (つづく) 米中新冷戦の鍵となる「個人情報」――プライバシーとイノベーションの両立を目指せ! 2018.11.18 米中新冷戦の鍵となる「個人情報」――プライバシーとイノベーションの両立を目指せ! HS政経塾8期生 藤森智博 ◆「データを制する者は世界を制する」 この言葉は、中国の巨大IT企業アリババの創業者・馬雲(ジャック・マー)氏が語ったものです。 これを体現するかの如く、アリババは「データ」によって急成長し、現段階では5億人以上の個人情報を手がけています。2018年8月末時点で世界7位の時価総額を誇ります。 アリババのビジネスは、ネットとリアルを橋かけするものです。 「アリペイ」という新しい支払いシステムによって中国で爆発的にキャッシュレス経済を普及させました。現在は街全体をネットでつなぎ、人工知能(AI)で効率的な管理を実現する「スマートシティ」を手がけています。 中国ではこのようなIT技術の飛躍的な進化とともに国家の監視が強まっています。 矢野経済研究所によると、監視カメラの世界市場のうち、半分以上が中国を占め、2018年の1年間で3500万台近くの監視カメラが中国で売買されています。 この監視カメラと「顔認証」の技術を組み合わせて、国民一人ひとりの人間関係まで調べ上げることができるのです。 ◆アメリカに迫る最先端の技術 また、中国は自動運転などの技術でアメリカに迫っています。世界に先駆けて、運転席のない自動運転バス「アポロン」の公道投入に成功しました。 もちろん、まだ「アメリカ超え」には至っていません。公道試験の累計走行距離はアポロンの1万キロメートルを超える程度で、最大手のGoogle系ウェイモの1600万キロメートルには及びません。 しかし、本格的に市場投入が始まれば、逆転の可能性もあります。個人情報を国家で自由に扱える中国のほうが、走行記録の収集はたやすいでしょう。 走行記録からは、私生活が分かるため、重要な個人情報ですが、そのような情報を元手にして、AIのさらなるイノベーションも可能です。 ◆中国に対抗するため欧米諸国に必要なこと このような中国に日本や欧米諸国が対抗していくためには、個人が情報を預けられる「信頼」の構築と「イノベーション」を両立できる環境の両立が不可避です。 欧米諸国では、プライバシー意識の高まりから、個人情報を大量に扱う巨大IT企業に厳しい視線が向けられています。日本でも今年10月、8700万人の個人情報が流出したFacebookに対して行政指導が行われました。 ◆EUで施行された強力な個人情報保護法 EUでは個人情報を保護するための「一般データ保護規則(GDPR)」が今年5月25日に施行されました。GDPRは、プライバシーを守るための強力な権利を個人に保障しているという点で優れています。 一方で、細かすぎるルールや、中小企業も対象とした一律的な厳しい規制、2000万ユーロ(日本円で約26億円)か、世界売上高4%のいずれか高い方という高額な制裁金などが自由を抑制し、イノベーションを後退させてしまう懸念もあります。 トランプ政権のロス商務長官も、5月末にフィナンシャル・タイムズにてGDPRを「不要な貿易障壁」と評しました。 ◆「プライバシー」と「イノベーション」の両立を目指すアメリカ GDPRなどの動きを受け、アメリカでは、連邦全体のプライバシールールを作ろうという動きが強まっています。 9月下旬には、商務省管轄の国家電気通信管理局(NTIA)が、高度なプライバシー保護に向けた新しいアプローチを発表。11月9日まで広く意見を募集しました。 新しいアプローチは、「リスクベースマネジメント」を核とすることで、イノベーションができる柔軟性と個人のプライバシー保護の両立を目指しています。 扱う個人情報の「重要性」や「量」に応じた責任を追求する一方で、その責任の果たし方については一律的な規制は設けず、自由を重んじています。 これに対し、世界中から寄せられたコメントは200以上に及び、GDPRに携わる欧州委員会をはじめ、肯定的な意見が目立ちました。 従って、アメリカでは、この新しいアプローチを基にした統一的なルールが作られていくと言えるしょう。 ◆日本も「リスクベース」のアプローチを 日本では、現在、総務省を中心として「情報銀行」など個人が自分の情報をコントロールできる取り組みが進んでいます。 しかし、中身を紐解いてみると、「市場を育てる」のではなく、「国家主導で市場を作っていく」という社会主義的姿勢が目立ちます。 一方、個人情報保護法などの基礎となるルールも不十分です。 現行法の水準では、GDPRと違い、個人は企業から自分が預けたデータを取り戻せません。情報銀行より前に、環境整備が急務と言えましょう。 個人の権利と企業のイノベーションの両立には、法の明快さと柔軟性が不可欠です。 幸福実現党は「リスクベース」のアプローチから個人情報保護法を改正することで、「データ保護体制」で日米と連携し、中国の「デジタル共産主義」に対抗していきます。 参照 ・『チャイナ・イノベーション』(李智慧著、日経BP刊) ・『EU一般データ保護規則』(宮下紘著、勁草書房刊) ・矢野研究所HP https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/1868 ・日本経済新聞社 https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181116&ng=DGKKZO37736220U8A111C1EA1000 https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181117&ng=DGKKZO37736270U8A111C1EA1000 ・フィナンシャル・タイムズ https://www.ft.com/content/9d261f44-6255-11e8-bdd1-cc0534df682c ・NTIA https://www.ntia.doc.gov/files/ntia/publications/fr-rfc-consumer-privacy-09262018.pdf https://www.ntia.doc.gov/press-release/2018/ntia-releases-comments-proposed-approach-protecting-consumer-privacy ・総務省 http://www.soumu.go.jp/main_content/000559366.pdf いつまで私たちの血税を垂れ流すんですか?――遺棄化学兵器廃棄事業の闇 2018.09.18 いつまで私たちの血税を垂れ流すんですか?――遺棄化学兵器廃棄事業の闇 HS政経塾 第7期生 高橋 侑希(たかはし ゆき) ◆「遺棄化学兵器廃棄事業」とは 遺棄化学兵器廃棄事業という言葉をご存じでしょうか。 これは、旧日本軍が敗戦時に中国に「遺棄」したとされる化学兵器を、国費を用いて廃棄・回収する事業です。その数は200万発以上(日本政府は30万~40万発と推定)とされています。 当初取り決められていた廃棄期限は2007年でしたが、2018年現在でもこの事業は行われています。昨年は約360億円拠出されました。2000年から始まった「巨大事業」は現在3600億円を越え、全て執行されれば3兆円規模になることが懸念されています。(※1) しかし、旧日本軍が化学兵器を「遺棄」した事実はない―という衝撃の真実があります。また、日本が廃棄する義務もないのです。 ◆遺棄化学兵器廃棄事業の経緯 日本が廃棄の義務を負ったとされるのは、1997年に発行された化学兵器禁止条約と、それに伴い1999年に締結された日中間の「覚書」によってです。 化学兵器禁止条約は、「サリンなどの化学兵器の開発、生産、保有などを包括的に禁止し、(中略)化学兵器を一定期間内(原則として10年以内)に全廃することを定めたものです。 もともと「自国が所有し若しくは占有する化学兵器」の廃棄を義務づけたものでしたが、中国がこだわって「他の締約国の領域内に遺棄した化学兵器」の廃棄義務が条文に盛り込まれました。 これにより、日本は、同条約に基づき中国の遺棄化学兵器を廃棄する義務を負うことになったのです。 また、99年の「日中覚書」の第一項で、中国国内に大量の旧日本軍の遺棄化学兵器が存在していることを確認したとしています。日本は検証することなく中国の要求を丸呑みし、終わりのない地獄がはじまったのです。 これと、さらに後押ししたのが河野洋平・外務大臣と村山富市・首相(いずれも当時)の国会答弁(※2)で、現政権は今なおその方針を踏襲し続けています。 ◆この事業の問題点 まず、中国は日本に対する日中共同声明で「戦争賠償」を放棄しています。(昭和47年日中共同声明「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」。) 賠償の放棄とは、戦争に関わる被害に対して一切の請求権を放棄するということです。 たとえば日本はサンフランシスコ条約において請求権を放棄しているので、不発弾を発見したらその都度日本の責任において処理しています。 中国は自らの宣言を放棄し、日本に請求しているのです。本来ならば中国が責任を持って取り組む問題なのです。 次に、武装解除・旧日本軍の兵器の引き渡しが行われた詳細が約600冊の引き継ぎ書と関連文書で残っています。 武装解除されるとは、化学兵器の所有権は日本ではなく中国(あるいはソ連)に移ったということです。つまり、決して「遺棄」したものではないのです。 そして、旧日本軍が「遺棄」していない化学兵器にまで国費が垂れ流されています。2000年に黒竜江省で5万発を回収、3.7万発が処理されていますが、その9割は発煙筒や通常砲弾の類で、有害兵器ではないものでした。 また、日中合同で発掘回収した「遺棄化学兵器」は、2006年7月10日までに695発を発掘・回収しましたが、そのうち496発は日本以外の国の兵器でした。それを日本が指摘すると、中国は直後の発掘・回収を中国側だけですることに方針転換したのです。その結果、699発中697発が旧日本軍製だったといいます。 ◆今後日本のあるべき対応 約600冊の「旧日本軍兵器引継書」には、すべての兵器は中国に引き継がれたことを弾薬、発煙筒など事細かに記載されています。 なかには、電気スタンドやケント紙1枚まで記されているものもあり、旧日本軍の律義さが窺えます。そしてすべての引継書には日付、場所、授者と受者の署名がされています。 2000年から始まった「遺棄化学兵器廃棄事業」は、中国側に対して、「遺棄ではない」と主張できるだけの状況証拠はあったにも関わらず、中国の言いなりになってしまったのです。 年300億円以上国費を投じていますが、中国側の要請により内訳の詳細は非公表だといいます。 国民の大切な血税を、このような不透明な事業にいつまでも投じ続ける日本であってはなりません。 日本が化学兵器を遺棄したのか検証し、その事実がないなら「遺棄化学兵器廃棄事業」は中止すべきです。 ※1内閣府「遺棄化学兵器処理事業に関する有識者会議」 http://wwwa.cao.go.jp/acw/kaigi.html ※2「(化学兵器が)旧軍のものであるということがはっきりすれば、当然わが国がそれを処理する義務、責任があるというふうに思います」(河野答弁=95年4月11日) 「遺棄した方の国にその処理の責任がある(中略)の誠実に実行しなきゃならぬということは当然であります」(村山答弁=95年12月28日) 【参考書籍】水間政憲(2010)「いまこそ日本人が知っておくべき「領土問題」の真実」PHP研究所 日本政策研究センター(2006)「遺棄化学兵器問題 化学兵器は誰が「遺棄」したのか」「遺棄化学兵器問題 これが果たして「遺棄」なのか」 すべてを表示する « Previous 1 … 26 27 28 29 30 … 101 Next »