Home/ 釈 量子 釈 量子 執筆者:釈 量子 幸福実現党党首 「反撃能力」では日本は守れない。自前の核保有こそ「最大の抑止力」【後編】 2022.07.23 https://youtu.be/HQBVUzrZ2X0 幸福実現党党首 釈量子 ◆自前の核装備を 「核を使った攻撃」の議論については、根強い反対があるかもしれません。 とはいえ、現在の日本を取り巻く状況を考えた時、どうしても核を使った攻撃を想定しておくことが必要で、そのこと自体が「抑止力」になるのです。 特に日本は、中露北の3つの核保有国を相手にしています。この状況で核保有の議論がないのは大変心もとないことです。 「核シェアリング」といって、アメリカの核を持ち込んでもらい、いざとなったらアメリカに核を発射してもらうという方法もありますが、これは抑止力としては不十分です。 中国とロシアを合わせた核戦力はアメリカの核戦力を凌駕しており、中露が歩調を合わせている今、自国を攻撃される危険を冒してまで、アメリカが日本のために核を提供して守ってくれる保障はないからです。 ゆえに、自前の核装備を急ぐ必要があるのです。 ◆自前の核で日本を守り抜く とはいえ、現実的にアメリカは日本の核保有を許さないだろうという見立てもあります。しかし、まずは「自前の核で日本を守り抜く」という明確な国家意思を持つことです。 「広島的平和主義」の岸田首相にとっては、非核三原則の撤廃すら困難だと思います。 しかし、核を落とされた国だからこそ、「いざとなれば核を使った電磁パルス攻撃を行う」という体制を整えることで、相手国に核を落とさせない国、核を使わせない国にしなければならないのです。 5月下旬に行われた日米首脳会談では、バイデン大統領が日本の常任理事国入りを支持すると発言し、日本でも歓迎の声が上がりました。 実際に常任理事国の一角に入ったら、国際紛争の解決などに責任を負うことになりますが、現在の日本には、問題を解決する実力も覚悟も十分とは言えません。 現在の国連は、常任理事国同士が二手に分かれて戦っているような状況にあります。ゆえに日本は滅びる側につかないよう、国力相応の軍事力と外交力を持つための努力をしなくてはなりません。 ◆憲法9条の改正で国家防衛の意思を明確に そのように「自分の国は自分で守る」体制を整えるためにも、やはり憲法9条の改正は待ったなしです。 国防の議論が行われるたびに「足かせ」となっているのが、戦力の不保持と交戦権の否認を定めた憲法9条です。 「自衛のための最小限の戦力はよい」「しかし、攻撃的な兵器は許されない」など、解釈を変えることによって乗り越えるのはもはや限界です。 憲法9条の改正は、日本が本当の意味で自立した主権国家になる道です。国力相応の国防力を持てば、独自外交も展開できます。 現在、岸田首相はアメリカ追従でロシアを敵に回してしまいました。これは岸田首相の判断ミスもありますが、自国の防衛をアメリカに委ねている弱みもあると言えます。 中国の脅威を考えたならば、日本の現在の軍事力でロシアも敵に回すことの間違いが分かるはずです。 ゆえに、「中国の脅威に関しては一緒に戦うが、この件について日本はロシアとの友好を取る」という姿勢が必要でした。 少なくとも、ロシアへの制裁撤回は今すぐにでも行い、敵を減らさなければ、日本は国家存続が危ういことだけは強調しておきたいと思います。 ◆戦争自体が悪ではない そして最後に強調したいことは、日本人の中に根強く残る「戦争イコール悪」という考え方の間違いです。 大川総裁は『ウクライナ問題を語る 世界の7人のリーダー』のあとがきにおいて「世界史の中では、戦争自体が悪であるのではない。神と悪魔の区別がつかず、正義を闇に葬る戦争を「悪」というのである」と述べています。 先の大東亜戦争も、日本は自国を守ると共に、アジア諸国を欧米の植民地支配から解放すべく戦いました。実際、アジア諸国は戦後独立を果たしました。 こうした日本の行為がすべて悪で、植民地支配を行ったヨーロッパや核兵器を日本に落としたアメリカが正当化されるのは、おかしなことではないでしょうか。 大切なのは、神仏の目から見て何が正しく、何が間違っているかという判断です。そして、正義を守るためには、時には戦わなければならないこともあるのです。 私たち幸福実現党は、この国に精神の柱を立て、神仏の心を心として、日本と世界の正義を守るために必要な備えを行ってまいりたいと思います。 【参考】 『ウクライナ問題を語る世界の7人のリーダー』大川隆法著/幸福の科学出版 https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=2799 「反撃能力」では日本は守れない。自前の核保有こそ「最大の抑止力」【前編】 2022.07.22 https://youtu.be/HQBVUzrZ2X0 幸福実現党党首 釈量子 今回は、国際情勢が緊迫している中において、どのように日本を守っていけばよいのか考えてまいります。 ◆時代遅れの「反撃能力」 ロシア・ウクライナ戦争を受けて、岸田政権が対露制裁に踏み切って以降、日本は、中国、ロシア、北朝鮮の「三正面の脅威」に備えなければいけなくなりました。 しかもこの3か国は核保有国です。 自民党の安全保障調査会は、4月下旬に、「敵基地攻撃能力」という名称を、「反撃能力」という呼び名に変えました。 この「敵基地攻撃能力」という概念は、1956年の鳩山一郎内閣が示したもので、幸福実現党も2009年の立党時に、北朝鮮のミサイルの脅威を念頭に「敵基地攻撃能力」を訴えました。 しかし、それは当時の北朝鮮のミサイルが液体燃料を使い、燃料注入で明らかに発射の兆候が分かるのに、これを放置するのはあり得ないという主張でした。 しかし今や北朝鮮のミサイルは固形燃料を使い、さらにトンネルからの発射や、潜水艦からの発射にも成功したと言われています。 非公表ではありますが、弾道ミサイル基地は20か所もあるとされます。つまり、発射の兆候が極めて読みにくくなり、さらに脅威も増しているのです。 こうした状況で「反撃能力」といっても、もはや時代遅れです。 中国については、米国科学者連盟の分析によれば、地下の弾道ミサイルサイロが300、移動式発射台が100以上あると推計されています。 こうしたミサイル基地を全て叩くことなど、ほぼ不可能です。逆に、中途半端な反撃をすれば、核の報復を受けることになりかねません。 「反撃能力」を持つこと自体に反対する野党は論外ですが、現在の「反撃能力」の議論には、どうも具体性が欠けています。 「憲法や法律の範囲内で何がやれるか」ではなく、「国を守るために本当に必要な防衛力とは何か」をタブーなく考える時が来ているのではないでしょうか。 ◆日本を守るために必要な戦力とは では、三か国の脅威から日本を守るためには何が必要になるでしょうか。まず重要なことは、通常兵器で敵基地を攻撃するのは限界があると知ることです。 具体的には、核兵器によるEMP攻撃(電磁パルス攻撃)ができる状況を整える必要があります。 電磁パルス攻撃とは、高層大気圏で核爆発を起こして強力な電磁波(ガンマ線など)を発生させ、電子機器に過負荷をかけて誤作動させたり破壊したりすることを目的とした攻撃のことです。 人体には直接的な影響はないものの、飛行機や電力網、通信網、衛星通信を麻痺させ、電気制御された水道やガスのインフラなどを止め、相手国のミサイル発射能力などの攻撃力を大方奪うことができます。 何百発とあるミサイルのサイトをすべて通常兵器で叩くことは不可能であり、もし通常兵器で叩けば、当然、全面的な反撃を受ける可能性があります。 ですから、一瞬で大半の攻撃力を奪う方法を備えておく必要があるわけです。 そのうえで、日本が海軍基地などをミサイルで叩き、アメリカが日本近海に来援できる状況をつくります。アメリカの打撃力で中国奥地にあるICBM基地などを破壊することで、中国の攻撃力を無力化するのです。 それでもどうしても叩き損ねる基地や兵器が出てくるので、万が一に備えて、電磁波バリアをはりめぐらせ、迎撃システムや避難シェルターも備えておく必要があります。 こうした戦力を備えるためには、当然のことながら、防衛予算が必要です。自民党は5年以内に倍増すると言っていますが、遅すぎます。 今すぐ倍増すべきですし、倍増した予算はアメリカの兵器購入に使うのではなく、今、述べたようなミサイルや電磁バリアなど、国産の兵器開発に投じるべきです。 幸福実現党は2009年から防衛産業の育成を訴えてきました。もちろん、13年前から防衛産業に力を入れていたらよかったのですが、今ならまだギリギリ間に合います。 さらに、相手国の指揮命令系統を混乱・麻痺させるためのサイバー攻撃ができるよう部隊の整備も必要ですので、こうした人材養成にも予算を付ける必要があります。 ですから、経済発展に資さないバラマキ予算に使っている場合ではないのです。このように他国の攻撃を想定した備えをしておくことは大事です。 (後編につづく) 最低賃金引き上げで大失敗した韓国。日本は同じ過ちを犯すのか? 【後編】 2022.07.17 https://youtu.be/u6TMrDCReOM 幸福実現党党首 釈量子 ◆企業の価値創造を後押しする4つの提言 前編では、最低賃金引き上げで大失敗した韓国の例を紹介し、その問題点を明らかにしました。後編では日本の雇用を創出し、賃金をアップさせるために必要な4つの提言を紹介します。 (1)シュレーダー政権に学ぶ雇用の自由化 ここで参考にすべきはドイツのシュレーダー政権です。 ドイツには少子高齢化と東西ドイツ統一の影響で失業者が増加し、2003年には10年ぶりのマイナス成長に陥っていました。 これを立て直すためにシュレーダー政権は、まず法人税を大幅減税し、企業の活力を取り戻しました。さらに、生活保護の条件を厳しくする一方で、民間を巻き込んだ細やかな就労支援を行いました。 もう一つは、正社員の解雇規制を緩和しましたことです。企業側は解雇が難しいと、会社と合わない社員がいたとしても雇い続けなくてはならず、正社員の雇用に慎重になります。その結果、若者の非正規雇用が増えるのです。 つまり、解雇規制を緩和しないと、正社員と非正規雇用の格差がかえって開いていきます。日本では今もこれが続いているわけです。 ここにシュレーダー政権がメスを入れ、ただ、解雇の際には一定額の補償金を労働者がもらえるようにして、ひとつの会社でうまくいかなかったとしても、新しいチャンスを与えたわけです。 こうした一連の改革で、新しい産業に人材が集中するようになり、ドイツの発展の原動力になりました。このように、日本でも、政府の権限を減量し、自由に働ける環境を整える必要があります。 (2)カジノや観光客頼みではなく、質素倹約して必要なものに投資 2つ目は、カジノや観光客頼みのアベノミクス型の「観光やカジノで一時的な消費を増やせば経済は良くなる」というような甘い考え方ではなく、質素倹約して、本当に必要なものに投資していく精神が重要になります。 政府主導でカジノを誘致したり、旅行のための補助金を出したりすることで、かえって民間企業の自由な活動が阻害されることもあります。 このようなバラマキ型の予算は全部ストップさせるべきです。 (3)日本の技術を守るためにスパイ防止法制定 3つ目は、日本の付加価値を守る、技術を守る政策です。つまり、スパイ防止法の制定が必要です。 日本は資源のない国ですから、技術力は経済の生命線です。 例えば、虎の子の技術の「新幹線」です。中国の巨大市場に目がくらんで売り込んだ結果、技術ごと盗まれて、中国の国際特許にされてしまいました。 日本の国富を守るために、こうした技術流出は何としても防がなければなりません。 (4)電力の安定供給を実現 4つ目は、安定した電気など質の高いインフラの供給です。 規制緩和は大切ですが、インフラ系の自由化については、進め方を誤ると、いざというとき大変です。 例えば、アメリカのテキサス州は、規制も少なくて「ビジネスがしやすい州」として多くの企業が本社を移して経済成長率が上がっている州です。 しかし、電力自由化を進めた結果、2021年の大寒波で2万9千人の1週間の電気料金が100万円に爆増しました。 日本でも、国民の電気料金が上昇した原因の一つが電力の自由化です。いろんな再エネ業者が大量に参入しました。しかし、再エネ発電は不安定なので、安定供給に責任を持てません。 代わりに送電網を管理する会社が安定供給に責任を持つようになりましたが、急に電力需要が増えた時のバックアップ電源を常に持っておくと経営が成り立たなくなります。 その結果、国民は真夏に節電を強いられ、自由に電気を使えなくなりました。 ですから、インフラという国民の命を握る部分については、自由に対する責任を担保するような制度にしていくべきです。 具体的には、電力自由化はやめて、原発再稼働を急ぎ、再エネ固定価格買い取り制度(FIT)を廃止すると共に、次世代原発や石炭火力発電の建設を政府としてバックアップし、安定して電力を共有できる体制を築きます。 こうして、「すべての人が自由意志に基づいて勤勉に働ける体制」を整えていきます。 ◆若い人は本を読もう 今回は賃金をアップさせるための根本的な解決策について提言しました。 他党が主張しているような、企業に負担をかけて最低賃金を無理に上げるとか、税金で雇用を増やすといった政策は即効性があるように見えて、早晩行き詰まり、あとから厳しい反作用が来ます。 しばらくは大変厳しい時代が続くでしょう。お金や時間を浪費させるのではなく、堅実に富を増やしていく道が求められます。 それは、企業だけでなく、個人にも当てはまります。 最近、若い人が電車の中で、スマホのゲームやSNSに夢中になっている姿を見かけますが、厳しい時代だからこそ、自分自身にしっかりと投資して、自分の付加価値を上げていくことが大切です。 そこでお勧めしたいのが、読書です。それによって智慧を増やしていくことです。 幸福の科学グループの大川隆法総裁は、3000書突破記念講演会『なお、一歩を進める』におきまして次のように語っています。 「これから先、むしろ本をしっかり読んでいる人が新しい付加価値をつけて出世していく時代になると思います。」 知恵を蓄積しなければ、「お金さえ配れば満足するだろう」という政治家に騙され続け、ネットを通してGAFAなどに時間を奪われ続けてしまいます。 若い人が、そうした考えであっては国家存続の危機です。刻一刻と変化する、この厳しい国際情勢の中で、日本の国を守り、発展させていくためには、勤勉の精神で、勤勉革命を起こしていくしかありません。 最低賃金引き上げで大失敗した韓国。日本は同じ過ちを犯すのか? 【前編】 2022.07.16 https://youtu.be/u6TMrDCReOM 幸福実現党党首 釈量子 ◆最低賃金引き上げで大失敗した韓国 先の参院選では、多くの政党が最低賃金の引き上げを政策として掲げました。 しかし、幸福実現党は、最低賃金の引き上げには反対です。その理由は、最低賃金の引き上げは、若い人達の就労のチャンスを奪うことになるからです。 ギリギリのところで経営している企業にとって、最低賃金を強制的に引き上げるとなれば、誰かの首を斬らないと経営が厳しくなります。 その場合、給料に見合わない働きをしている若手から首を斬られる可能性が高いわけです。 そうした反作用が実際に起きたのが韓国です。 文在寅前大統領は、2017年の就任のとき、5年間で最低賃金を5倍にするという目標を掲げました。1年目には16.4%引き上げ、5年間の任期中に累計41.6%上げました。 その結果、何が起きたかというと。不況と若者の大量失業です。 GDPの成長は低迷し、所得下位20%世帯の月平均所得は2017年第4四半期から、2019年第4四半期には、日本円で月収が2万円近く減少しました。 失業率を見ると、2021年は3.0%と一見、低く見えるのですが、これは税金を使って無理やりバイト雇用を充実させたからだと元駐韓国特命全権大使の武藤正敏氏が指摘しています。 それも、この税金主導のバイト雇用で増やしたのは、シニア層ばかりで、若者の失業率は7.8%と高く、失業者の3人に1人が若者世代でした。 参院選で、最低賃金引上げを訴えている政党は、単純な引上げだけではなく、賃上げを政府が負担するもので2つのパターンがあります。 ◆補助金による賃上げ 1つ目は、れいわ新選組などが提言している補助金による賃上げです。賃金引上げによって生じる企業の負担を、政府に負担させるもので、つまり、バラマキです。 人件費分を政府が負担するというなら、これは公務員を増やすことと同じであり、行きつく先は企業の国有化で、旧ソ連などの共産主義の国と変わりません。 政府がお金を負担してくれるなら、企業も労働者も新しい価値を生み出したり、給料に見合った働きをしたりする必要がなくなります。 れいわ型の補助金による賃上げは国民の勤勉の精神を破壊しかねない極めて危険な政策で、日本を没落させてしまいます。 ◆助成金による賃上げ 「賃金をあげて、生産性も上げた企業に補助金をあげ、減税をする」というタイプもあります。 そのひとつが「業務改善助成金特例コース」です。コロナ禍で特に業績が厳しい中小企業を対象にして、賃金を引き上げ、設備投資などを行った場合に補助金を支給します、というものです。 ただし、賃金を引き上げた人数によって支給額が変わったり、投資の内容や条件などが細かく決められたりしている複雑な制度で、かえって企業の仕事の邪魔になってしまいます。 結局、政府が民間に介入するやり方では、賃金は上がりません。その証拠に、政府の支出が増えれば増えるほど、実質賃金が減っていきます。 なぜなら、お客様のためによいサービスや製品を生み出すことではなく、補助金をもらうことに民間のお金や時間を使うことになるからです。 政府が賃上げのためにすべきことは、「企業がビジネスしやすい環境を創り、企業が成長する後押しをする」ことです。 ◆勤勉に働ける体制を 幸福実現党は、法人税の実効税率を10%台にすることを掲げています。 複雑な条件を付けずに、まずは10%台に引き下げることで、企業は自由に使えるお金が増やし、節税など、余計な仕事に力を入れなくてもよくなります。 実際、トランプ政権で、法人税を10%台にしたことで、従業員の給料やボーナスは上がりました。 ◆企業の新たな価値創造を後押し ただし、法人税の減税だけでは不十分です。 未来の見通しが明るくなければなりません。今後も日本が繁栄していくという見通しが見えなければ、企業は新しいチャレンジをしません。 そして何より、日本を豊かにしたいという志を持つ人たちが増え、勤勉に働いてこそ新たな価値は生まれます。 豊田佐吉や松下幸之助など、日本経済を発展させてきた人物は、多くの人を便利にしたい、日本を豊かな国にしたいという志を立てて努力を重ねてこられた方ばかりです。 そうした人物を育み、応援できるよう、幸福実現党は、すべての人が自由意志に基づいて勤勉に働ける体制をつくりたいと考えています。後編では、そのために必要な4つの提言を致します。 (後編につづく) 急騰する食料・エネルギー価格。待ったなしの物価高対策 2022.07.15 https://youtu.be/UEq9-GpV31M 幸福実現党党首 釈量子 ◆深刻化する物価高 4月26日、政府は物価高対策として、低所得者層やひとり親世帯に現金を給付するなど、総額6兆2000億円の緊急対策を決定しました。 これはあくまで生活支援であって、物価高対策ではありません。むしろ、政府支出は更なる物価高要因になる可能性があります。 5月の消費者物価は生鮮食品を除いたものが2.1%の上昇。総合だと2.5%の上昇です。 しかし、電気代は18.6%、ガソリンは13.1%、生鮮食品は12.3%。皆さんの生活必需品の多くは、10%以上値上がりしています。(※1) 小麦は5月時点で15.4%(前年同月比)で値上がりしています(※2)が、これは昨年夏の北米での干ばつなどが主な原因で、ウクライナ戦争による本格的な値上がりは秋以降と言われています。 日本の主食である米は、自給率こそほぼ100%ですが、肥料の99%は海外からの輸入です。ある米作農家は、次のように言っています。 「次年度以降、肥料価格は倍以上となる。さらに、中国も肥料の輸出制限をしていて、トラクターの燃料代も上がっている。販売価格を大幅に上げるしか、生き延びる道はない。」 夏の猛暑、その先にはエネルギー需要が増える冬があり、さらにエネルギー問題も深刻化するでしょう。(※3) ◆幸福実現党の3つの物価高対策 幸福実現党は物価高対策について3つの提案を致します。 (1)原発再稼働とFITの廃止 まず、一つ目に政府の責任のもと、原発再稼働をさせることで電力の供給不足を解消することです。 さらに、FIT(固定価格買取制度)を廃止すれば、電気料金を1割以上減らすことが可能です。このFITの廃止と原発の即時再稼働で電気代を抑制できれば、製造コストも抑えることができます。 (2)停戦を仲介しロシア制裁を終わらせる 供給不足を終わらせるには、ロシアへの制裁を止めなければなりません。これが2点目になります。 西側諸国は資源国のロシアに制裁を加えて、自分の首を自分で絞めています。日本はウクライナ戦争の停戦を仲介し、世界的なロシア制裁を終わらせることです。 (3)円安の解決 3番目は円安の解決です。 円が安くなると、その分、輸入代が高くなります。円安の大きな原因の一つは、日米の金利差が拡大していることが挙げられます。 ですから、金利が高いドルの方が人気となって、円が売られて、円安になります。つまり、円安を止めるには利上げという話にもなるのですが、そう簡単にはできません。 政府と地方の借金は1200兆円を超え、金利が1%増えると利払い費が約10兆円も増えるからです。(※4) 貿易赤字が続けば円が流出し、円安はさらに進むという悪循環となります。これを正すには企業活動を活性化させなければいけません。 つまり、円安を正すには、企業に活力を取り戻し、政府の借金を減らさなければいけません。これを両立できる方法が一つだけあります。 ◆政府の減量を それが、政府の減量です。政府の減量とは、政府の予算の規模を小さくして、権限も小さくし、民間でできることは民間に任せることです。 具体的に以下の無駄な省庁を廃止します。 ・二重行政のデジタル庁(0.47兆円)や内閣府(4.38兆円)は廃止。これで約5兆円を減量(※5)。 ・プラスチックのレジ袋を有料化し、無理に米を30%配合したレジ袋を使わせたりするような無駄な規制ばかりつくる環境省も無くします。これでさらに約3兆円を減量(※6)。 ・子ども家庭庁や感染症危機管理庁などの新しい省庁もストップします。 ・厚生労働省にもメスを入れ、120兆円以上ある社会保障の中の無駄を減量し、国民の皆様の社会保険料を減らしていきます。 こうして財政赤字は徐々に減っていき、マイナス金利を止め、金融をゆっくりと正常化させることで円安を止め、インフレという見えない税金を退治します。 政府の減量は規制の減量にもつながります。 例えば脱炭素政策といったエネルギー規制、減反や新規参入を阻む農地規制などの農業の規制を減らし、エネルギーと食糧の自給率を高め、危機に強い日本をつくりあげます。 つまり、政府の仕事を減量し、無駄な規制や予算をなくすことで、企業に元気を取り戻し、円の実力を高めるという根本的な治療が必要です。 バラマキや一時的な減税という対症療法ではなく、日本の抜本的な立て直しが今、必要なのです。 【参考】 (※1) 2020年基準 消費者物価指数 全国 2022年(令和4年)5月分 総務省(令和4年6月24日) https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf (※2) 08年の再来?足元で加速「世界食料危機」の深刻度 ウクライナ侵攻で小麦やコメ、肥料価格も高騰 東洋経済2022/05/17 https://toyokeizai.net/articles/-/589544 (※3) ロシアからガスを絞られて、焦ったドイツ「石炭火力を2024年までフル稼働」の衝撃 CO2は「毒ガス」ではなかったのか? 2022.06.24 現代ビジネス https://gendai.ismedia.jp/articles/-/96711?imp=0&utm_source=pocket_mylist (※4) 【数字は語る】インフレで金利や成長率が上昇すると財政で何が起こるのか 週刊ダイヤモンド(2022年5月14日発行) https://cigs.canon/article/20220523_6771.html (※5) 令 和 4 年度デジタル庁所管 一般会計歳出予算各目明細書 https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/f4f6b57f-7779-4950-bbb5-07a265cb1d8f/20220125_budget_01.pdf 令和4年度予算(案)の概要 https://www.cao.go.jp/yosan/soshiki/r04/yosan_gai_r04.pdf (※6) 令 和 4 年度環境省所管 一般会計歳出予算各目明細書 https://www.env.go.jp/content/900470740.pdf コロナの医療対策に16兆円超の国費!?感染抑止効果はあったのか?【後編】 2022.07.14 https://youtu.be/hvyVUzLuYdE 幸福実現党党首 釈量子 前編では、コロナ対策16兆円が有効に使われたのかについて検証しました。 では、どのようなコロナ対策を進めるべきだったのでしょうか。幸福実現党としては、次のように提言したいと思います。 ◆ワクチンの有料化 まず、接種を希望する低所得者層を除いて、ワクチンは原則、有料化します。希望者が一定以上の自己負担をする方が国の財政の負担は少なく、無駄も減らせたはずです。 自己負担で接種を受けることになれば、接種をすることに慎重な判断が働き、ワクチンに対する正しい情報を求める声もより強くなるはずです。 さらに今回のようなワクチン接種をした日付が不明な人を「未接種」に分類するような事実上の改ざんに対してより厳しい目が向けられることになります。 またワクチンは、どんなものであっても副作用は一定の割合で生じます。実際に医療機関から報告があった数だけで、これまでに1700人を超える人が、ワクチンの接種直後に亡くなっています。 有料化すれば、副作用で亡くなった方々への補償や後遺症対策の原資に充てることもできたでしょう。 ◆感染症法の分類を5類相当に 次に、感染症法の分類を5類にすることです。 新しい感染症で対応に試行錯誤した医療現場の負担は大変なものだったとは思いますが、多くの国民が一番不安に思ったことは、感染して苦しんでいても病院になかなかアクセスできなかったことです。 日本は医師が少ないと言われていますが、毎年10万人の肺炎による死者が出ているのに、医療が逼迫して問題になったことはありませんでした。コロナ肺炎の死者は2年で2万人以下です。 つまり、病院にアクセスしやすくするには、現在のコロナの致死率から見れば、感染症法の分類を1類、2類相当から5類相当にすべきです。 1類、2類相当の感染症であれば、医師は診療を断ることができるからです。 もちろん、地域医療を守ろうとして患者を積極的に受け入れた、かかりつけ医や診療所などもありましたが、保健所を通さなければ入院の調整はできない状況にあります。 その結果、保健所が発熱や酸素飽和度だけで入院の可否を決めることになり、さらに一部の病院に重症者から軽症者までが集中し、現場はパンクしました。 また、保健所の方は膨大な感染者の情報の吸い上げでキャパオーバーとなり、医療崩壊に拍車をかけていました。 5類相当にして、初期段階では診療所ベースでかかりつけ医が対応し、入院の可否を判断し、本当に高度な医療を必要とする方を専門的な病院に任せることができます。 そうすることで、早期診療、早期対応ができれば、重症化に迅速に対応できるようになります。 ◆人間の尊厳の問題 安全第一という考えも分かりますが、多額の予算を投じた過剰な対策は、かえって人間の尊厳を踏みにじり、不幸を呼び込むことにもなりかねません。 コロナ禍が始まってから、入院患者や老人ホーム入所者へのお見舞いにも行けず、死に目にも会えず、そのまま火葬場に運ばれるケースも多いようです。 これは、厚生労働省が「必須ではないが、コロナで亡くなった方やその疑いのある方は、24時間以内に火葬することができる」というガイドラインを出しているためです。 「人間はいずれ死ぬ」というある種の諦観を持ち、冷静に「どう生き、どう死んでいくのか」を考えることがいま、とても大切です。 医療法の第1条の2には、「医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持」を旨とし、第1条では、同法の目的を「国民の健康の保持に寄与すること」と定めています。 そうであるならば、コロナの医療体制も、身体の健康だけではなく、「心の健康」にも配慮した「人の温もり」のある対策を実現していくべきではないでしょうか。 「死」というものを考えるにあたって、宗教の存在は避けて通れません。 「死」について知ってはじめて、「生きているその時間を、いかに有意義なものにし、いかに魂の向上のために使えるか」(※1)を考えることができるようになるのではないでしょうか。 幸福実現党は、宗教政党としてまっとうな死生観のもと、あくまで国民の自由を守り抜くコロナ対策を推し進めてまいります。 (※1) 『釈尊の未来予言』大川隆法(著)/幸福の科学出版 https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=2356 コロナの医療対策に16兆円超の国費!?感染抑止効果はあったのか?【前編】 2022.07.13 https://youtu.be/hvyVUzLuYdE 幸福実現党党首 釈量子 今回は、コロナ対策に投じられた国費の使い道を確認しながら、果たしてそれが有効なお金の使い方だったのかを検証していきたいと思います。 ◆医療供給体制強化に16兆円――その使い道とは? 2020年1月以降、新型コロナ対応の医療体制確保、ワクチン確保などに、少なくとも16兆円の国費が投入されました。 財務省の諮問機関が、4月13日に発表したところによると、16兆円の内訳は次のようになっています。 ・病床確保などの緊急包括支援金、約6.0兆円。 ・ワクチン関連で4.7兆円。(ワクチンの購入、冷凍状態で運搬、ワクチン接種会場の確保や医師等への手当などの費用) ・ワクチンの打ち手を確保するための医療従事者を派遣した医療機関への補助金。 ・治療費の確保やPCR検査体制を整える費用。 なお、コロナ禍が始まってからの経済対策費用は、財政投融資を含む事業規模293兆円に上ります。 他にもコロナの感染拡大に伴う緊急事態宣言の協力金、苦境に陥った中小企業などの支援にも多額の費用が投じられました。 ◆国費を投じた感染対策の効果? コロナの医療体制確保の予算が仮に16兆円だけだったとして、単純計算で国民一人当たり12万円の国費を投じたことになります。これだけの多額の国費を投じた感染対策には効果があったのでしょうか。 ワクチンを打っても感染者は増えたのは事実で、特にオミクロン株などの新しい株には効果が疑問視されていました。 5月には厚生労働省のワクチンデータの集計方法の変更が明らかになり、ワクチン接種を1回目、2回目接種した日付が不明な人を「未接種」に分類して集計していたことが判明しました。 この結果、多くの年代層で、2回接種した人の感染率が、未接種の人の感染率よりも上回りました。つまり、ワクチンを接種した人の方が、接種していない人よりも感染者が多かったことが判明したのです。 心筋炎のリスクも、ワクチン接種者の方が、未接種者よりも高かったことも判明しております。実際、ワクチン後遺症の事例も出てきており、愛知県は独自に相談窓口を設置し、サポートを始めています。 つまり、感染予防効果には疑問があるうえ、接種者の健康に悪影響を与えているというデータが出つつあるわけです。 ◆ワクチン接種の運用に関するムダ 次に、ワクチン接種の運用に関するムダです。 大規模会場で接種したことで、会場費、運営スタッフ、PR費用等が必要になりました。 また、各地で使用期限が過ぎたワクチンが大量廃棄されています。確保されたワクチン8.82億回分に対して、実際に接種された本数は、2.83億回(6/17時点)で、わずか32%です。 接種されていない68%のワクチンのうち、どれくらいが在庫なのか廃棄されたのかは分かっていません。 廃棄量を明らかにする自治体もありますが、厚生労働省は自治体の事務負担を考慮して廃棄量を調査していないからです。 しかし、ワクチンの接種数を報告させるのなら、廃棄量を報告させても、負担はそれほど増えないのではないでしょうか。 要は、廃棄数が明らかになり、批判がでることを恐れているのかもしれません。 ◆病床確保は有効だったのか 次に、病床確保は有効だったのかを検証します。 コロナ対策16兆円のうち、一番お金が投じられた緊急包括支援金です。 その約6.0兆円は主に「病床確保」に使われましたが、補助金だけもらって、実際は患者を受け入れない幽霊病床の問題が起きました。 確かに、ベッドが空いていても医者の手が空いていなければ患者を受け入れることは難しいわけです。しかし、病床使用率が100%でないのに、重症患者がたらいまわしにされる問題も相次ぎました。 ベッドを空けておきさえすれば、患者を受け入れなくても公金が入る仕組みになっているからです。 新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長が理事長を務める地域医療機能推進機構(JCHO)傘下の東京都内の5つの公的病院では、コロナ病床を183床確保していたのですが、このうち30~50%も使われていないということが批判されたこともあります。 このようにコロナ対策16兆円は、有効に使われたとは言えないのではないでしょうか。 (後編につづく) 「もうロシアとケンカしたくない!」が世界の本音? 【後編】 2022.06.27 https://youtu.be/aJS-Y8Bg52E 幸福実現党党首 釈量子 ◆アジア・アフリカで広がるロシア擁護の動き 実際、トルコから見た東方世界、中東・アジアに目を向ければ、「極悪な侵略者ロシア、可哀そうなウクライナを助ける欧米諸国」という日本のメディアにありがちなステレオタイプとは、全く異なった見方がされています。 例えば、ドバイを抱えるアラブ首長国連邦UAE、サウジアラビアといった伝統的な親米国が、トランプ政権からバイデン政権になってから、急速に距離を取りつつあります。 UAEに至っては、3月初旬に行われた国連安保理の「ロシアへの非難決議」で棄権票を投じ、ここまでアメリカ離れが進んでいるのかと、世界に衝撃を与えました。 UAEが誇る中東随一の経済都市ドバイは、経済制裁で苦しむロシア企業や富裕層にとって、うってつけの海外拠点となりつつあります。なんとドバイの不動産市場では「ロシア人マーケットがいま最も盛況」と言われています。 UAEの旧宗主国は英国なのですが、欧米諸国の対ロシア制裁に同調しないという姿勢をはっきりとさせています。(WSJ) ようやく原油増産に応じたサウジアラビアも、米バイデン政権から再三の懇願は無視し続け、電話も出ないという状況で、ロシアと歩調を合わせてきました。 3月には、サウジアラビアと中国の間で、原油取引の一部を米ドルから中国元で決済するという取り決めの可能性が報じられました。 石油のドル決済こそ、ドル覇権の力の源泉なので、大きな流れです。米国から中露へのシフトが顕著です。 また、アフリカ諸国も、ロシアやウクライナに食料を依存している地域ですが、欧米側の肩を明確に持つ国はあまりないのが実情です。 6月3日、アフリカ連合の議長国セネガルのサル大統領がプーチン大統領とソチで会談を行い、「欧米の対ロ制裁でロシア産の穀物がアフリカに届かなくなっており、制裁が状況を悪化させた」と訴えています。 それに対してプーチン大統領は「ロシアは常にアフリカの側にあり、植民地主義との戦いでアフリカを支援してきた」と語っています。 更にインドは、安保理決議ではUAEと同じく棄権票を投じましたが、ロシアとは軍事装備上、切っても切れない関係があり、明確に欧米側に付くことは考え難いと言えます。 ◆欧米諸国の中から噴出する「ロシアとケンカしたくない!」の声 最近になって、欧米諸国の内部からも、長引くウクライナ戦争や対ロ制裁について、「かえって自分たちの首を絞めかねない」と否定的な意見も多くなってきました。 ハンガリーは、EU加盟国ですが、NATOが5月4日にロシア産原油の輸入禁止を柱とした追加制裁を発動すると、これに強く反発しました。ロシア正教トップの総主教キリル1世への制裁もハンガリーの反対で見送られています。 ハンガリーはロシア産の原油がないと国が立ち行かなくなるので、制裁案を飲むなんてことは、「ハンガリー経済にとって核爆弾だ」というくらいの大打撃になるのは間違いありません。 ハンガリーのオルバン首相も、エルドアン大統領同様、プーチン大統領との個人的な信頼関係が強く、また宗教的・民族的な価値観など、EUという「外形的な枠組み」よりも、更に深いところでつながっているようです。 このように、欧米諸国も一枚岩ではありません。 停戦交渉についても、ドイツ、イタリア、フランスはロシアとの対話による和平を重視する一方、ロシア嫌いの英国やポーランド、エストニアなどバルト3国は「ウクライナの軍事的勝利が解決」と強硬路線を採り、EUに大きな亀裂が走っています。 米国では、対ロ制裁によるエネルギー価格の上昇などインフレ傾向が加速し、選挙には悪影響、もはや完全に逆効果になりつつあるようです。 米国が考える和平案の中には、ウクライナ保全の見返りに、NATOに対するウクライナ中立化や、クリミアやドンバスなどに関する対ロ交渉も議論の枠組みに、もう含まれていることが報道されてきました。 ◆「欧米追従」を貫く日本、いつの間にか肩透かしを食らうかも 世界大戦にエスカレーションするか否か、緊迫する世界情勢の中で、「機を見るに敏」で立ち回る国際社会の中で、日本政府の「欧米追従」の姿勢は変わる気配を見せません。 バイデン政権がアフガンにおいて、20年間で8兆ドルも投じたのに手のひらを返して撤退してしまったように、いつの間にか肩透かしを食らい、割を食うのは日本だけ、という事態にもなりかねません。 地政学的に見ても、ロシアを敵に回して最も危険度が高いのは欧州のどの国よりも、中国・北朝鮮・ロシアの3ヵ国に囲まれた日本かもしれません。 日本が本来担うべきは、トルコのように東西文明の懸け橋にならんとする、もっと大きな役割であるべきです。 そのためにも、世界の行く末をよき方向にリードしていこうとする積極的でダイナミックな立ち回りこそ、日本に求められているのではないでしょうか。 「もうロシアとケンカしたくない!」が世界の本音? 【中編】 2022.06.26 https://youtu.be/aJS-Y8Bg52E 幸福実現党党首 釈量子 ◆トルコが実質的に「世界大戦」化を防いでいる? もう一つ、別の視点から見て、世界大戦に広がりかねない火種を、結果的にトルコが抑えているのが現状です。それがスウェーデンとフィンランドのNATO加盟への反対です。 5月29日、トルコのエルドアン大統領はこの両国のNATO加盟は「認められない」との認識を改めて示しました。 1か月以上、両国との協議を進めてきましたが、現時点ではトルコにとって「期待したレベルに達していない」と判断した模様です。 その一つの判断材料となるのが、5月下旬にトルコからスウェーデンに示されてきた「条件リスト」の中身です。 基本的には、スウェーデンが、テロ組織の隠れ蓑となって、武器支援や財政的支援を行っていることへの強い不満が表明されています。 特に、トルコではクルド人勢力の問題があります。 クルド人というのは、トルコやシリア、イラク、イランなど国を超えて住んでいる民族で、約3000万人いると言われます。このクルド人は自分たちの国を持ったことがなく、「国を持たない最大の民族」と呼ばれています。 1980年代に、トルコでは「クルド人など存在しない」と主張して、国内にいる少数のクルド人を弾圧しました。すると、クルド労働者党(PKK)がトルコ国内で武装闘争を開始し、死者が4万人を超えてしまいました。 しかし、クルド人は独立を果たすことができず、トルコにとっては「テロ組織」と危険視しています。 一方、シリアやイラクに横断して住んでいるクルド人たちが、アメリカや欧米から支援を受けてIS(イスラム国)に対して、勝利しました。その見返りに、クルド人たちはシリア北部で自治区を作って独立を果たそうとします。 これにはトルコが警戒し、2019年シリア北部に侵攻して、クルド人20万人ぐらいが家を失ったとされます。 非常に複雑な歴史があり、トルコは「条件リスト」で、スウェーデンがクルド系組織を支援していると指摘して抵抗しているわけです。 ただ、トルコのこの動きが、結果的に、戦争の拡大を防いでいると言っても過言ではありません。 万が一、ロシアと国境を接するフィンランド、そしてスウェーデンがNATOに加盟したら、プーチン大統領にとってはウクライナ同様、レッドラインを超えたと見做すはずです。 実際に、5月下旬、フィンランド国境にロシア軍部隊を増強しています。 そういう意味からみれば、結果的にトルコの反対が世界大戦への波及を防いでいることは確かです。 ◆プーチンとエルドアンの不思議な絆 歴史的には、トルコは、クリミア戦争などで象徴されるように、隣国ロシアの南下政策には苦しめられてきた経緯があります。 現在進行形でシリアやリビアでは、ロシアと対立関係にもありますし、ウクライナにはトルコ製のドローン兵器を輸出してロシア軍と対峙したりもしています。 ところが、トルコ中東問題の専門家によると、「長年それぞれ国のトップを張り続けた、プーチン大統領とエルドアン大統領の間には、特別な絆、定期的に対話を重ねる信頼関係がある」と言われています。 エルドアン大統領に関する「指導者」としての評価は横に置きつつも、いま、核戦争につながりかねない世界大戦を未然に防いだほうがいい、という判断をしているのは注目されます。 (後編につづく) 「もうロシアとケンカしたくない!」が世界の本音? 【前編】 2022.06.25 https://youtu.be/aJS-Y8Bg52E 幸福実現党党首 釈量子 ◆ウクライナの「停戦仲介」に名乗りを挙げたトルコ ウクライナ戦争が開戦から4ヶ月半が経過しましたが、いま停戦の「仲介役」として本格的に名乗りを挙げ、世界から動向を注目されている国があります。 それが、東洋と西洋の狭間に位置する国トルコです。 3月から両国に停戦交渉の場を提供してきたトルコですが、5月30日、トルコのエルドアン大統領は改めて、ロシアのプーチン大統領、またウクライナのゼレンスキー大統領と電話協議し、両国の仲介に意欲を示しています。 それに合わせて、プーチン大統領にとって開戦後、初の外遊となるトルコ訪問について、ロシア大統領府は「準備している」ことを明らかにしました。 特に世界を危機に陥れている食料や肥料等の供給網の復旧、要するに、穀物、ヒマワリ油や肥料類などの輸出ルートが確保できるかどうか、という点が注目されています。 ◆ロシアではなく、ウクライナ?黒海封鎖の真犯人とは 欧米側のスタンスとしては、侵略者ロシア・プーチン大統領が、ウクライナ産の穀物が輸出されないように、黒海に面した港湾を封鎖、「世界に深刻な食料不足を引き起こした」という一面的な批判を展開しています。 一方、プーチン大統領の言い分は真っ向から異なります。 今回の食料危機は「誤った欧米の経済制裁」が原因であり、港湾の封鎖についてはウクライナ側が「港の入り口に機雷をしかけた」と訴えています。これについてもウクライナ側は「ロシアの仕業」だと言っています。 戦場となり、交通インフラが極めて不安定なウクライナは難しいとしても、ロシアとしては国内で収穫された食料の輸出は開戦後も行いたかったはずです。 実際に、ロシア産小麦や大麦、ヒマワリ油などの生産地域は、コーカサス地方やロシア南部など、ウクライナ周辺地域に集中しているため、輸出の主力となる海上ルートは黒海経由となるのが、妥当でしょう。 そういう意味から、機雷によって自国の輸出ルートを自ら潰すとは考え難く、ロシアを悪役にするウクライナ(または西側)側の策略とも考えられます。 そんな中、ロシアと共同しながら、黒海に敷設された機雷の除去という大きな役割を担っているのが、トルコなのです。 ロシアのラブロフ外相は6月1日、サウジアラビアでの会見で「(トルコの)エルドアン大統領と会談した結果、発展途上国にとって必要不可欠な食料物資等(貨物)とウクライナの港の機雷除去を進める手助けをするという合意に達した」とトルコの貢献を、国際社会に報じています。 このように、ロシアと対立関係にあるNATOの一員として、黒海の交通管理という国際的に承認された役割を担いつつ、ロシアとの独自外交で、停戦仲介のメインプレーヤーを演じるトルコが存在感を放っています。 また、6月3日、プーチン大統領はウクライナ産の穀物に関しては、同盟国ベラルーシ経由でバルト海から海上輸送する案が「一番簡単で安価だ」と述べ、条件としてベラルーシの制裁解除を挙げました。 ベラルーシのルカシェンコ大統領も、バルト海の港から自国製品の輸出が出来るようになれば、ウクライナ産の穀物も運ぶ用意があると認めております。 欧米側の制裁が解除されれば、世界を苦しめている食料危機が、実質的に大きく軽減される未来が容易にイメージできます。 (中編につづく) すべてを表示する « Previous 1 … 5 6 7 8 9 … 25 Next »