Home/ 2022年 July 2022年 July 「吉田ドクトリン」から脱却し、九条改正、国防軍編成、防衛産業の育成を目指す【後編】 2022.07.07 http://hrp-newsfile.jp/2022/4321/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「吉田ドクトリン」で日本が失ったもの(2):防衛産業 吉田ドクトリンを信じている人は、軍事にお金を使うことは経済の発展につながらないと考えています。 そうした考えのもとで、再軍備の勧めを断った結果、日本は、国家に不可欠な産業の一つを失いました。 それが、防衛産業です。 三菱重工のように自衛隊の装備をつくる企業はありますが、どの企業も、全体の中でその割合は低く、ほとんどが1割前後にとどまっています。 しかし、米国の防衛大手を見ると、ロッキードマーティンは9割以上が軍需です(71%が国防総省から受注。28%が世界への兵器輸出)。 レイセオンテクノロジーは軍需が65%を占めています(民間向け売り上げは35%)。 欧州を見ても、売り上げを占める軍需の割合は高く、英国のBAEシステムは9割、スウェーデンの国産戦闘機をつくるSAAB (サーブ)は8割あります。 日本には、防衛に特化した大手企業がなく、腰を入れて防衛産業に打ち込みにくい状況が続いているわけです。 2021年度の防衛費をみると、4分の3が現状維持に使われ、残りの4分の1から新規の装備費を出していますが、そのお金も、米国からの装備品購入に回される割合が増え続けています。 日本は、自国に防衛産業を育成しきれていないのですが、防衛装備を他国に依存しながら、自主防衛を実現することはできません。 国際政治アナリストの伊藤貫氏は、米国の兵器は「ブラックボックス」で管理されているので、もし、将来の大統領が「中国とは戦わない」と決めたならば、日本に売った兵器をすべて止めることが可能だとも指摘していました。 F35戦闘機を例にとると、予算が増えない中で米国兵器ばかりを買った場合、日本企業に払うお金が減り、戦闘機の生産基盤を維持できなくなります。 F2戦闘機の生産は終わったため、新しい需要を生み出さなければ、F35を買っている間に国内の技術者が離散し、日本は「戦闘機の作れない国」になってしまうのです。 そうした問題があるので、欧州ではユーロファイター、スウェーデンではグリペンという、自前の戦闘機を作り続けてきました。 防衛産業がなければ「独立」を維持できないからです。 こうした新型戦闘機の開発には「兆」の単位のお金がかかります。 それは、防衛予算の倍増なしには不可能なのです。 ◆防衛産業への投資は未来産業の育成のためにも不可欠 そもそも、軍事にお金を使うことは経済の発展につながらない、という考え方は、正しくありません。 日本でも、戦時中に戦闘機や軍艦、戦車などをつくっていた技術者は、戦後、民生用の航空機や船、自動車などの製造に力を注ぎ、経済発展に大きく貢献しました。 愛国心に満ちた技術者たちの力があって、「重厚長大」産業の復活が早まったのです。 たとえば、ヤンマーディーゼル社の山岡浩二郎社長は、「ヤンマーに入社した旧海軍の技術陣は、それこそそうそうたる顔ぶれであり、ヤンマーが今日あるための大きな礎石であった」と述べています(沢井実『海軍技術者の戦後史』名古屋大学出版)。 新幹線の振動問題を解決したのは、ゼロ戦の飛行を安定させた松平精という技術者です。 当時、新幹線開発を支えた鉄道技術研究所(鉄研)には、1000人もの旧軍技術者が集められていました。 軍事のために用いた技術力は、民間経済のためにも使えるので、軍事費を無駄な浪費と見なすのは、間違った考え方です。 今の社会のインフラをみると、軍事で使われて発展したものが数多くあります。 例えば、その一つが鉄道です。 プロイセンでビスマルクが宰相だった頃、モルトケ将軍は鉄道を用いて兵士をいち早く投入し、普墺戦争、普仏戦争に勝利しました。 鉄道は、社会の基幹インフラとなると同時に、軍の輸送や兵站を支える役割を果たしています。 航空技術は、第一次大戦前は、好事家の趣味程度のレベルでしたが、第二次大戦の頃には主戦力に変貌します。 そして、戦後世界を支える基幹技術となりました。 宇宙ロケットの技術と弾道ミサイルの技術も、かなりの部分が重なります。 原子力は兵器だけでなく、発電においても、エネルギー政策の基幹を担っています。 インターネットも、もとは軍用だったものが、民間に普及し、世界のインフラとなるに至りました。 軍事への投資には、基幹的な技術のレベルを高めるものが数多くあります。 世界の主要国が軍事に投資する中で、日本だけがそのお金を惜しんでいると、世界的な技術開発競争に劣後する危険性が高まるのです。 ◆「吉田ドクトリン」を乗り越え、真の独立、主権回復をめざす 国防軍も、防衛産業も、日本の独立を守るためには、不可欠なものです。 日本が21世紀に、独立国として、大国の責任を果たすためには、吉田ドクトリンから脱却しなければなりません。 憲法九条を抜本改正し、国防軍を編成し、自国の防衛産業を発展させる必要があります。 これがなければ、北朝鮮の核ミサイルや中国の軍拡には対抗できません。 日米同盟を維持しながらも、自主防衛力の強化を進めていかなければなりません。 米国が「世界の警察官」をやめた時代においては、自分の国を自分で守らなければならないからです。 そのために、幸福実現党は「吉田ドクトリン」からの脱却を呼びかけています。 そうであってこそ、日本が真の独立を果たし、主権を回復したと言えるからです。 経済大国となった日本は、いつまでも「一国平和主義、一国繁栄主義」を続けることはできません。 幸福実現党は、「自由・民主・信仰」を守り、中国や北朝鮮などの唯物論国家、一党独裁の国家から、アジアの国々を守るべく、力を尽くしてまいります。 【参考】 ・大川隆法著『国家繁栄の条件』幸福の科学出版 ・岸田文雄『岸田ビジョン』講談社+α新書 ・防衛白書 令和3年度版 ・『SAPIO 2015年10月号』 ・沢井実著『海軍技術者の戦後史』名古屋大学出版 「吉田ドクトリン」から脱却し、九条改正、国防軍編成、防衛産業の育成を目指す【前編】 2022.07.06 「吉田ドクトリン」から脱却し、九条改正、国防軍編成、防衛産業の育成を目指す【前編】 http://hrp-newsfile.jp/2022/4320/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「脱吉田ドクトリン」のための言論戦 幸福実現党は、参院選の公約で「日本は独立国として、いわゆる『吉田ドクトリン』、軽武装・経済優先の国家方針を転換し、国民の生命・安全・財産を守るための体制整備を急がねばなりません」と訴えました。 そう主張しているのは、この原則が、今後、日本を侵略を守るために、最も大きな障害となるからです。 吉田茂首相は、戦後講和を実現した1951年に、アメリカと安全保障条約を結び、「アメリカに守ってもらって、日本は経済活動に邁進する」という路線を敷きました。 アメリカに安全保障を依存し、軽武装のままで経済復興を最優先したのです。 1950年に朝鮮戦争が起き、アメリカが対日政策を転換した時、憲法改正の要請を断り、吉田茂は、アメリカを「日本の番犬」に見立て、経済成長に専念する体制をつくりました。 その後、日本は世界有数の経済大国になったので、長らく、この「吉田ドクトリン」がよしとされてきました。 しかし、今や中国の軍拡が進み、北朝鮮までが核ミサイルを日本に向けています。 米国が「世界の警察官」をやめた時代には、自分の国を自分で守らなければならないので、幸福実現党は「吉田ドクトリン」の転換を呼びかけています。 「半主権国家」となった日本を立て直そうとしているのです。 ◆「吉田ドクトリン」を愛している岸田首相 これに対して、岸田首相は、その著書で、自分が率いる宏池会こそが「吉田ドクトリン」の後継者だと主張しています。 「吉田茂の経済重視政策は、池田勇人元総理、大平正芳元総理、鈴木善幸元総理や河野洋平元衆議院議長、宮澤喜一元総理ら宏池会の先輩方に引き継がれました。結果からみれば、この方針により奇跡的な経済復興を遂げ、世界第三位の経済大国としての地位を回復することができました」(『岸田ビジョン』) これは、吉田首相がGHQの再軍備の勧めを断り、経済を優先したことが繁栄をもたらした、という歴史観です。 しかし、この考え方は、過去の「成功体験」が、日本を滅ぼしかねないことに目をつぶっています。 日本が「GDP比1%」の呪縛に囚われている間に、中国の公表軍事費は、日本の4倍以上にまで増えました(※円でいえば26兆3000億円程度。米国防総省は、その実態を1.1~2倍程度と見込む)。 また、北朝鮮はすでに700~1000発の弾道ミサイルを保有しています。 (※防衛白書令和3年度版は「『Jane’s Sentinel Security Assessment China and Northeast Asia』によれば、北朝鮮は弾道ミサイルを合計700~1,000発保有しており、そのうち45%がスカッド級、45%がノドン級、残り10%がその他の中・長距離弾道ミサイルであると推定されている」と記述) バイデン政権は、ロシアとウクライナの戦いに際して、他国のために核戦争をしないことを明らかにしました。 日米同盟があっても、防衛費の倍増や非核三原則の撤廃、自前の核装備の検討を、本気で考えなければいけなくなったのです。 ◆「吉田ドクトリン」で日本が失ったもの(1):自主防衛力と独立の気概 この「吉田ドクトリン」に関しては、米国への順応と経済復興だけが重んじられ、憲法改正や自主防衛力という、国の根本にあるべきものが軽視された、という批判があります。 その代表的な論者は「戦後政治の総決算」を掲げた中曽根康弘元首相でした。 中曽根氏は、戦後のかじ取りの難しさを考慮しつつも、「吉田路線で失われたものは無視できない」と考え、「吉田政治からの脱却」を訴えました。 しかし、それは志半ばで終わってしまいました。 安倍首相の「戦後脱却」も、かけ声だけで終わり、いまだ日本は、自主防衛が困難な体制に置かれています。 中国が台頭し、米国がアジア重視にかじを切っても、日本は同盟を強化する政策が実現できなくなっているのです。 国のトップが「自分の国を自分で守る」という理念を捨てたツケが、こうした形で回ってきました。 この問題に関して、大川隆法党総裁は、過去、何度も警鐘を鳴らしてきました。 「日本も、戦後、どこかの時点で、この「吉田ドクトリン」を見直さなければいけなかったのです。ここに大きな間違いがあったと思います」(『平和への決断』第5章 … page.211) 「神は、『クラゲのように漂って生きているだけの国家を許してはいない』」 「戦前がすべて間違っていたわけではありません。吉田茂の考え方のなかに、『日和見的な生き方』と、「責任を取らない考え方」があり、さらに、「神様のいる国としての国家運営という『神国日本』的な考え方が、スポッと抜け落ちていた」ということです。これが、戦後の「無神論国家」、「神様のいない国家」が、経済的にのみ繁栄した理由でもあります。この罪には、やはり、『マルクスに次ぐぐらいの悪さ』があるのではないでしょうか」(大川隆法著『国家繁栄の条件』幸福の科学出版) 《引用終わり》 この「吉田ドクトリン」によって、日本は憲法を改正できず、自主防衛の力を養えないまま、漂流する国となってしまいました。 識者の中には、生前の吉田に再軍備の意志があったという人もいますが、吉田政権の意思決定が、戦後政治に与えた影響は甚大でした。 その意志があろうがなかろうが、後代への影響を考えれば、吉田茂が、その責任を問われるのは当然です。 国会答弁で、「再軍備は未来永劫しないと言っているのではない。現下の状況においてこれを致すことはしない」とは言いましたが、再軍備のチャンスを逃したことが、その後の歴史に大きなツケを遺すことになったのです。 吉田茂に対して、大川隆法党総裁は、憲法改正と再軍備が「『一つの国としての自主権であり、独立国家としてのかたちをつくるためのチャンスである』ということを彼が見抜けなかった」ことに「不明」があったと批判しました。 そして、それが「何十年も祟ることになるとは、おそらく、本人も思ってはいなかったのではないでしょうか」と指摘しています(大川隆法著『国家繁栄の条件』幸福の科学出版) (後編につづく) 消費経済の限界。今こそ勤倹貯蓄、勤勉型経済を。 2022.07.05 消費経済の限界。今こそ勤倹貯蓄、勤勉型経済を。 HS政経塾スタッフ 赤塚一範 ◆「消費は経済を回す」は本当か? 消費が経済を回すという理論(有効需要の理論)を作り上げた20世紀の大経済学者ジョン・メイナード・ケインズに関して、次のようなエピソードが残っています。(参照:Ludwig von Mises, Marxism Unmasked) ある時、ケインズは友人と共にホテルに泊まった際、トイレにあるタオルをすべて汚しました。 友人がなぜそんなことをするのかと理由を尋ねると、ケインズはタオルを汚すことで、ホテル従業員の仕事を作ってやっていると言ってのけたのです。 これがケインズの理論なのです。 さらに、ここから、戦争は経済を回すという理論も生まれます。戦争は究極の消費だからです。 しかし、本当に消費は経済を向上させるのでしょうか?戦争ばかりしていて経済は良くなるのでしょうか? ◆消費で失われるもの 確かに、人間が生きる上で必要最低限の消費や楽しみというものは存在するし、消費で雇用が生まれるのも事実でしょう。 しかし、消費によって失われるものも確かに存在するのです。上記の例で考えてみましょう。 もしホテルに泊まった客の全員が、必要以上にタオルを汚したならば、確かにホテル従業員の雇用は増加します。 しかし、その雇用はホテルの宿泊客が品行方正であれば、必要なかった雇用であり、別の場所でもっと有効な仕事を生み出したかもしれない人たちなのです。 たとえば、彼らは、作物を作ったかもしれませんし、道路を作ったかもしれないのです。 ケインズのような消費が経済を拡大させるという理論が有効であるのは、あくまで供給過剰が存在し、そのような過剰を一時的に埋める場合だけなのです。 つまり、不況期における時限的理論に過ぎません。このような理論では、資本蓄積は生じませんし、長期的な発展は望めないのです。 ◆過剰な消費は国を亡ぼす 19世紀後半、大英帝国は栄光を誇っていました。 しかし、そのわずか50年後、同国家はアメリカの経済援助がなくては、維持できなくなってしまいました。なぜでしょうか。 それは、過剰に消費したからです。二つの世界大戦という究極の消費がイギリスを没落させたのです。 19世紀末、イギリスは世界各地にたくさんの資本を保有していました。産業革命で生産力を拡大し、輸出を拡大し、多額の資金を蓄えたイギリスは、世界各国に投資を行いました。 たとえば、当時のアメリカやアルゼンチンの鉄道会社の多くはイギリスが所有していたのです。 このようにイギリスは、勤勉に働き、働いたことで得た富を再投資することで資本を蓄積し、最強国となったのです。 しかし、この富は戦争による消費で失われてしまいました。イギリスは、戦争の経費を賄うために、それまで蓄えた資本を外国に売り払ったのです。 つまり、資本を消費に変えたのです。 ◆日本の危機的状況と勤勉、勤倹貯蓄型経済の復活 翻って日本ではどうでしょうか。 戦後の日本は、勤勉に働き、貯蓄を奨励し、その貯蓄でもって社会インフラや生産設備を整え、高度成長を実現しました。 現在の豊かさがあるのは、戦後の日本人の勤勉な労働と資本蓄積のおかげなのです。しかし、現在の日本は、急速な「少子高齢社会」という危機にさらされています。 なぜなら、「少子」というのは、労働力人口の減少、つまり生産力の減退を意味する一方で、「高齢」というのは消費をしないと生きていけない人の増加を意味するからです。 原則として、生産する以上に消費できないということを忘れてはなりません。もし生産以上に消費するならば、かつて蓄えた資本を取り崩すしかありません。 具体的に言うとするなら、日本に蓄えられた外貨で輸入をするか、日本が所有する生産設備を外国に売り払いそれで輸入をすれば、当面の消費を賄うことはできるでしょう。 しかし、長い目で見れば、これは日本の衰退であり、結局消費できなくなるのです。 これを食い止めるためには、勤勉に働き、消費を抑え、貯蓄を推進し、資本を蓄えるしかないのです。 だからこそ、今の日本には必要なのは、勤勉性の復活、勤倹貯蓄型経済の復活であり、生涯現役社会の確立なのです。 重大な分岐点が迫るロシア・ウクライナ戦争――停戦交渉の道を拓くべき【後編】 2022.07.04 重大な分岐点が迫るロシア・ウクライナ戦争――停戦交渉の道を拓くべき【後編】 http://hrp-newsfile.jp/2022/4315/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆泥沼化を避けるためには、停戦交渉が必要 今、欧米は、「どこまでウクライナへの武器支援を続けるのか」という問題を突き付けられています。 戦争を長引かせ、犠牲者が増えるだけとみて、支援を打ち切るのか。それとも、戦局が変わることを期待して、延々と支援を続けるのか。 この問題に、落としどころを示したのが、冒頭で紹介したキッシンジャー氏の提言だと言えます。 キッシンジャー氏は、アメリカがベトナム戦争を終わらせた時の大統領補佐官でした。同氏は、戦争は、どこかで終わらせなければいけないことを知っています。 しかし、ゼレンスキー大統領は、戦争をどこで終わりにしたらよいのかが見えていません。 現在、東部の帰属は戦争の結果で決めるしかなく、7月初の時点ではロシアが優勢です。 市民を民兵として動員するウクライナの戦い方は、敗勢に回った場合、多くの犠牲者が出るので、本来、ゼレンスキー大統領は、交渉が可能な間に「落としどころ」を考えなければいけません。 武器支援の中心を担う米英は、自分たちの血は一滴も流さずに、ウクライナに代理戦争を行わせ、ロシアを弱体化させようとしています。 支援なしには戦いを続けられない国は、はしごを外されたら終わりなので、キッシンジャー氏の忠告通り、「落としどころ」を考えるべきなのです。 ロシア・ウクライナに停戦を呼びかけたキッシンジャー氏は、ロシアと中国を同盟関係に追い込むことが、最も危険だと考えています。 フィナンシャルタイムズ紙のインタビューでは、以下のような大局観を述べています。(※3) 「ウクライナ戦争が終わった後、世界の地政学的状況は大きな変化を経験する」「すべての問題について、中国とロシアが同一の利害を持つのは、不自然なことだ」 「戦争後の状況では、ロシアは、最低限ヨーロッパとの関係や、NATOに対する姿勢を見直す必要が出てくる」「アメリカも、特にヨーロッパも、そうする必要がある」 「だから、2つの敵対国に対して、彼らを連携させるような形で、敵対的な立場を取るのは賢明ではない」「総合的な戦略からすれば、これからの時代、ロシアと中国を一体のものとして扱うべきではない」 今回、ウクライナをめぐって、欧米と日本がロシア叩きを続けた結果、中露が結託して動くことが増えてきました。 しかし、世界大戦の危機を避けたいのなら、中露の分断のための大戦略が必要です。 国際政治学者のミアシャイマー氏も、日本は、ウクライナ戦争の早期終結に向けて、米国に働きかけるべきだと論じました(『文芸春秋2022年6月号』)。 「ロシアではなく中国が本当の脅威であり、長期的にはロシアと協力するほうが合理的であることを、米国政府に理解させなければなりません。そのためにも、まずは日本が米国に対して、ウクライナ戦争を早期に終結し、全力で軸足を東アジアに向けるよう進言すべきです」 今まさに、中露を同盟関係に追い込み、そこに他の反米国がつらなって第三次世界大戦が起きることを防ぐための努力が必要なのです。 ◆この戦争の着地点はどこか? そうした大局観をもって、幸福実現党は、停戦とウクライナの中立化に向けた独自外交と、中露分断の必要性を訴え、3月以降、声明を出しています。 『日本はウクライナの中立化に向けた外交努力を(党声明)』(令和4年3月11日) https://info.hr-party.jp/press-release/2022/12477/ 『ロシアに対する追加制裁の撤回を求める(党声明)』(令和4年4月9日) https://info.hr-party.jp/press-release/2022/12565/ 幸福実現党は、バイデン政権のように「民主主義国家vs専制国家の戦い」という枠組みで国際社会を捉え、ロシアを敵視する路線では、中国の暴走は止められないと考えています。 「信仰ある国家vs無神論国家」という見方で捉え、信仰を理解するロシアを対中包囲網に参加させる戦略が必要だと訴えています。 我が党は、ウクライナの火種が次の世界大戦へと広がることを防ぐべく、力を尽くしてまいります。 (※3) フィナンシャルタイムズ紙のキッシンジャーのインタビュー Henry Kissinger: We are now living in a totally new era | FT https://www.youtube.com/watch?v=6b89jcNqgJo&t=279s 重大な分岐点が迫るロシア・ウクライナ戦争――停戦交渉の道を拓くべき【前編】 2022.07.03 http://hrp-newsfile.jp/2022/4314/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆ウクライナ東部の戦いは重大な局面に 6月以降、ウクライナの戦いは、ロシア軍が攻勢に転じています。6月下旬には、ロシア軍は、ウクライナ東部の要衝・セベロドネツク市を制しました。 ゼレンスキー大統領は、欧米に武器支援の拡大を求めていますが、「支援疲れ」が広がり、欧米の識者の中からは、停戦の勧めも出てきています。 その代表は、国際政治学者のキッシンジャー氏です。同氏は、5月23日に開催されたダボス会議で、以下のように提言しました。(※1) 「和平交渉および交渉のための活動を、今後、2カ月以内に開始する必要がある」「戦争の結果は、それらによって形づくられるべきだ」 「特に、最終的な露欧関係と、最終的なウクライナと欧州との関係との間で、克服しがたい(あるいは全く克服されない可能性がある)動揺と緊張が生み出される前に」 「理想的には、その境界線は戦争前の状況に戻すべきだ」 「それ以上を求めると、NATOが結束して取り組んできたウクライナの自由のための戦争ではなく、ロシアへの新たな戦争になってしまう」 「それ(ロシアへの新たな戦争)は、境界線を引くことを不可能にし、困難にする」 この提言は、ウクライナに、全領土の奪回を諦めることを勧めています。 戦争前には、ウクライナ東部で「ルガンスク人民共和国」が独立を宣言していたので、この主張は、ウクライナがクリミア半島や東部の親露派支配地域を放棄することを意味するわけです。 これに対して、ゼレンスキー大統領は、「和平という幻想との交換を提案する領土には、普通のウクライナ人が実際に住んでいる」と反発しました。 まず、ロシアを侵攻前の地点に押し戻し、その後、クリミア半島や東部2州を取り戻すと気勢を上げました。 しかし、全領土の奪回を目指すゼレンスキー氏の路線でゆくと、戦争は終わりません。 欧米とロシアの代理戦争がさらに激化し、多くの国民が命を落とすことになります。 ◆世界は対米追随国ばかりではない 日本のメディアは「ウクライナ応援」の一点張りですが、世界は、必ずしも、対ロ強硬派ばかりではありません。 まず、欧州を見ると、英国やポーランド、バルト3国などはバイデン政権のロシア弱体化路線を支持していますが、ドイツ、フランス、イタリアは停戦交渉が必要という立場です。 5月初めに、フランスのマクロン大統領は、ロシアに「屈辱を与えたいという誘惑や、報復したいという気持ちに屈してはならない」と述べました。 イタリアのドラギ首相は、訪米時に、欧州の人々は「停戦の確保と、信頼できる交渉の再開について考えたいと思っている」と発言をしています。 ドイツのショルツ首相は、マクロン氏とともに、電話でプーチン大統領と対話し、ウクライナに滞留する穀物を出荷できるよう、南部の主要港オデッサの封鎖解除を求めました(5/28)。 アジアやアフリカでは、さらに論調が違います。 G20の議長国インドネシアは、一貫して停戦を訴え、日米に反対されてもプーチン大統領にG20サミットへの招待状を送りました。 6月30日、インドネシアのジョコ大統領は、プーチン大統領にモスクワで会談した際、ゼレンスキー大統領からのメッセージを渡したことを明らかにし「両首脳の接触を調整する用意がある」と述べています。 インドは中立の立場をとり、「ロシアからの資源輸入を停止してほしい」という米国の要請を退けました。 アフリカ諸国(52か国)は、ロシア軍即時撤退を求めた3月2日の国連決議では、その半分がロシア非難に加わりませんでした。 つまり、世界のすべての国が、プーチンをヒトラーと同一視する風潮に賛同しているわけではありません。 日本では、反ロシア的な世論が盛り上がっていますが、わが国もまた、対ロ制裁に追随する以外の選択肢があることを忘れるべきではありません。 ◆「ロシアは悪、ウクライナは正義」という報道は停戦交渉の妨げ マスコミの多くは、プーチンをヒトラーと同一視し、ロシア軍をナチスと同じように扱っています。 しかし、こうした「世論」は、停戦交渉の開始を妨げます。 「ロシア軍はナチスと同じだ」という見方からは、「停戦交渉はナチスに領土を譲るのに等しい」という結論が導き出されるからです。 停戦を呼びかけたフランスの歴史学者エマニュエル・トッド氏も「敵国が怪物である」という印象操作が交渉の妨げになることを警告していました。(※2) こうした風潮は、「ロシアは悪、ウクライナは正義」と色分けされた報道によって増幅されてきました。 その典型は、ロシア軍が一般人の犠牲も辞さない戦いを続けている、という批判です。 ただ、今回のウクライナの戦いは、もともと、国際法が想定したような戦いにはなっていません。 ウクライナ側では、大統領が国民に武器を取ることを呼びかけ、一般人が民兵になって戦争に参加するケースが常態化しています。 (※正規兵に比べて訓練が短い「民兵」を戦場に投入し、国際法に違反せずに戦い続けるのは難しいので、従来、国際社会は、こうした戦い方に否定的だった) 武器を取らなくても、市民がスマホやドローンを使ってロシア軍の兵士や戦車の居場所を通報し、そこにウクライナ軍が攻撃をしかけるようなケースも多々ありました。 ウクライナ市民も戦争の参加者になっているので、ロシア軍の攻撃も、それに見合って激化しました。 そのため、これ以上、戦いが拡大していけば、被害者はうなぎのぼりに増えていきます。 「『ロシア軍=悪。ウクライナ軍=正義』という色をつけた報道で煽ることは、停戦交渉の妨げになり、結果的に、被害者を増やすことを助けてしまうかもしれない」と、冷静に考え直すべき時が来たのです。 (後編につづく) (※1) Henry Kissinger: Ukraine Should Give Up Territory to Russia to Reach Peace BY GIULIA CARBONARO 5/24/22 https://www.newsweek.com/henry-kissinger-ukraine-should-give-territory-russia-reach-peace-1709488) (※2) 日経ビジネスオンライン「エマニュエル・トッド氏『日本はウクライナ戦争から抜け出せ』」2022.5.31 国富を増やしていくには 2022.07.02 http://hrp-newsfile.jp/2022/4311/ HS政経塾スタッフ 赤塚一範 ◆実物資産と金融資産 家計の金融資産が2,000兆円を突破したと報道されています。 これを受けて、岸田総理が掲げる「所得倍増プラン」では「貯蓄から投資へ」つまり、NISAやiDeCo等の国民に株を買わせる政策を拡充しようとしています。 また、日銀の黒田総裁も、家計の金融資産の増加により、家計はインフレに耐えられると発言し、国民の非難を浴びました。 本当に家計の資産は増加しており、国民はインフレに耐えられ、株を買うことが出来るのでしょうか? ここで理解すべきことは、富には大きく実物資産と金融資産の2種類あり、金融資産だけ増えたとしても何の意味もないということです。 実物資産とは、現実の世界を生きている国民の生活を豊かにし、外国や自然の脅威から国民を守るための具体的に実体を持った資産のことをいい、その中でも特に固定資本が日本の国富の中心を構成しています。 固定資本とは、住宅、工場、機械設備、道路、ダム、港湾、知的財産等のことですが、日本には2020年末、1,986兆円存在しています。 他方で、同年の現預金、債券、株式等からなる金融資産は8,582兆円となっており、固定資産の約4倍も存在しています。 ◆金融資産は国富ではない 次のことに気を付けなければなりません。それは、金融資産とは、貨幣の貸借でいくらでも増やすことのできる資産であり、実物の財の裏付けがなければ、まやかしに過ぎないということです。 たとえば、日本国民が日本の国債を1兆円購入したとしましょう。この場合、国民は1兆円の金融資産を得ると同時に、日本政府は1兆円の負債を負ったことになるのです。 更に日本政府が日本国民にこの1兆円をばら撒き、日本国民がその1兆円で日本国債を購入するなら、さらに1兆円分の金融資産と負債が増加するのです。 アベノミクス第一の矢「異次元の金融緩和」によって、国全体の金融資産と負債は劇的に増加しました。2012年末の金融資産は6,018兆円でしたが、2020年末には8,582兆円となっています。 つまり8年間で金融資産は2,564兆円も増加したのです(当然ですが負債もほぼ同額増加しています)。 問題なのは、この金融資産の増加と比べて、国富の重要な要素である実物資産が増加していないことです。2012年末の固定資産は実質値で1,865兆円、2020年末は1,905兆円です。 なんと、8年で46兆円しか増えていないのです。金融資産が8年で2,564兆円増えたのと比べると驚きですが、これはバブルと言ってもよいでしょう。 かなりざっくり言うと、2,564兆円も貨幣的なものが増えたのに、その貨幣で買うことのできる実物資産は、46兆円しかないのです。 ◆日本は借金で飲み食い(消費)している これが意味するのは、アベノミクスの8年間で政府は、借金で、実物資産を作る(投資)のではなく、飲み食い(消費)していたということなのです。 今の日本は、将来の生産のための元手である資本を現在の生活のために食いつぶしているような状況です。 簡単に言えば、来年植える種イモを現在の生活のために食いつぶしている状態であり、これでは将来のイモが取れなくなってしまい、やがて困窮してしまうのです。 皆さんは21世紀が思ったより進歩していない、例えば、なぜドラえもんやアトムのような空中に道路があり、ロボットが仕事をし、宇宙旅行に行ける未来世界になっていないかをお考えになったことがあるでしょうか。 その大きな原因一つが資源の浪費です。日本経済全体で考えてみましょう。日本では、2020年度に535兆円の生産が行われました。 このうち、固定資産の形成に使われた金額は、135兆円で、残りの大部分(約400兆)は家計や政府によって消費されてしまったのです。135兆円もの投資があるなら、未来社会がやって来ると思う人もいるかもしれません。 しかし、毎年、同じ規模(2020年度は135兆円)で固定資産は摩耗、劣化していくのです。従って、固定資本が壊れる以上に投資をしないと実物資産は増加せず、アニメのような世界にはならないのです。 ◆国富を増やすには では、固定資産を増やし、国富を増加させるためには、どうしたら良いのでしょうか。 将来のイモの収穫を増やすには、現在の消費を抑えて種イモを多くのこし、来季に向けて畑を耕し、肥料を作り、用水路を整えることです。これを行うには、現在の消費を抑え、貯蓄を増やすしかないのです。 今回の参院選挙では、れいわ新撰組をはじめいくつかの政党で、即時の消費減税が言われています。しかし、もし、この減税と同等額の、政府支出のカットがなされなければ、インフレは加速してしまいます。 令和4年度の消費税の歳入見込みは21.5兆円です。 もし、21.5兆円分の歳出をカットすることなく、すなわち国債発行と日銀の買い取りで乗り切った場合、消費需要は純粋に21兆円分し拡大し、また同時に日本円も21兆円増加し、円安は進行するでしょう。その結果は、インフレの加速です。 インフレの加速は、更なる消費の増大を招き、資本の蓄積を妨げます。なぜなら、インフレ時には貯蓄は不利となり、直ぐにお金を財に変えてしまった方が得だからです。 実際、インフレの激しい、アルゼンチンでは、給料をもらうとすぐに使ってしまう国民が多いと聞きます。 また、インフレ時は消費財産業が活性化しやすいと言われていますが、これも国内の資本蓄積を妨げます。 人手不足、資源不足が叫ばれる現在、資本財産業を活性化させるには、国内の物的、人的資源を、現在の消費財産業から引き抜き、投資財産業や防衛産業で利用されなければならないのです。 日本における戦後のインフレを乗り切るために、貯蓄の推進が行われていたことを忘れてはいけないのです。 インフレにどう立ち向かうか【後編】 2022.07.01 http://hrp-newsfile.jp/2022/4309/ HS政経塾スタッフ 赤塚一範 ◆消費減税、補助金、賃上げだけでは、さらなるインフレを招く 前編で指摘したような病気を根本治療することなく、消費減税、補助金、賃上げという麻薬を用いて、物価上昇を和らげた場合、結論は更なるインフレです。 たとえば、今夏、電力不足が懸念されています。電力供給を強化することなしに、電力に対して消費減税をかけたり、補助金を出したりしたところで、電気を多量に生産できるわけではありません。 むしろ、電力需要が拡大してしまい、大停電になってしまうかもしれません。また、賃上げは、企業にとって単なる負担に過ぎず、投資不足、雇用減少を招き供給力低下に拍車をかけます。 他方で、賃金上昇によって消費者の需要を拡大させてしまうので、インフレが加速してしまうのです。もちろん、現金給付なども、勤労の精神を失わせ供給を弱らせるので、これもインフレ要因です。 日銀の金融緩和がインフレを引き起こしているという議論もあります。確かにそれもあるでしょう。しかし、日銀が国債を購入し、紙幣を市場に流すのは、政府支出を支えるためでもあるのです。 これら支出の大半は、年金や社会保障等のバラマキとして国民の消費を支えていますが、これも資源を浪費し、国民の勤労意欲を阻害するのでインフレ要因となります。 ◆減量と勤倹貯蓄による投資がインフレの治療薬である インフレの根本治療薬とは、(1)効率的生産部門へ労働を含む資源を集中、投資すること、そして、(2)不要な消費を抑え減量し、貯蓄を推進することです。 不必要な投資の例として、今回の参院選でも自民、公明、立民、維新、れいわ、国民民主、共産等が重要な政策とする「脱炭素に向けた投資の促進」があげられます。 かつて、毛沢東は、「大躍進政策」で中国の工業化を主導しました。鉄を国家の重要な資源と定め、農民に、農業を止め、それぞれ小規模な溶鉱炉を作るよう命令しました。 その結果が、大飢饉と、役に立たない粗悪品の鉄くずでした。毛沢東は、国の大切な資源を浪費したのです。 脱炭素に向けた国家主導の政策は、毛沢東を彷彿とさせます。日本には、火力発電所、原子力発電所がありますが、現在その多くが使われないか、まだ再投資すれば使えるにもかかわらず破棄されています。 そして、風力・太陽光といった非効率な再生エネルギーに投資されているのです。これらを止め、もう一度、火力、原子力に資源を投入すべきでしょう。 他方で、日本は、中国や北朝鮮といった軍事国家に囲まれており、いざという時のためのサプライチェーンの構築が急務です。 また、岸田首相は防衛費の増額を打ち出しています。これは必要な政策でしょう。 しかし、サプライチェーンを構築しなおし、軍事費を増額させるためにも、消費を抑える必要があるのです。 例えば、現在、JR東日本なども、半導体不足から一部の新規の車体製造を延期したと報道されるように、半導体が不足しています。 このようなときには、ゲーム機に使う半導体とミサイルに使う半導体は競合関係となり、ゲーム機に使う半導体を節約しなくては、ミサイルを作ることはできないのです。 サプライチェーンの構築も同様です。 例えば、ショベルカー等重機を動かすにはガソリンが必要ですが、ガソリンが不足する場合、ディスコやカジノを作ることと、国内の古びたインフラを再構築することとは競合関係となるのです。 勿論、これら資源の配分を市場統制によって行うわけにはいきません。これを自発的に行うには、消費者側の節約マインド、そして実のある産業を大きくしていこうとする勤労の精神が欠かせないのです。 そして、政府の社会保障や年金も縮小しなければなりません。これらは、消費を促進し、国家の資源を浪費するからです。 国民が消費を抑え、貯蓄をし、その貯蓄によって、サプライチェーンの再構築や軍事費が賄われなければなりません。 もし、貯蓄なしでこれらを行なおうとすれば、それは国債発行による貨幣の増発を用いて行うこととなり、インフレを加速させてしまうのです。 実際のところ、私達は、ある程度はこのインフレを受け入れなければなりません。それは、もう既に資源が浪費されてしまっているからです。 これを克服するためには、今一度本当に必要な商品とは何なのか、日本が安全であるためには何が必要なのかを消費者自身が考え、無駄な消費を抑え、必要なものに再投資していくという資本主義の精神の復活が望まれるのです。 すべてを表示する « Previous 1 2