Home/ 2017年 July 2017年 July 北朝鮮の弾道ミサイル発射――政治家に国民を守る気概はあるか? 2017.07.29 北朝鮮の弾道ミサイル発射――政治家に国民を守る気概はあるか? 幸福実現党・広報スタッフ 佐々木勝浩 ◆北朝鮮による弾道ミサイル発射 7月28日の夜、北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、北海道奥尻島沖 160 キロメートルの日本の排他的経済水域に落下しました。 室蘭ではNHKのカメラが、ミサイルが落下する様子を捉えていました。 今回のミサイルは、ロフテッド軌道(通常よりも角度を上げて高く打ち上げる)で打ち上げられ、高度 3700キロまで上昇し、45分程度飛行したと報道されています。 7月4日に発射された時よりも、さらに1000キロも高い高度で飛行しており、北朝鮮のミサイル技術は益々、向上しています。 アメリカは、今回のミサイルをICBM(大陸間弾道ミサイル)と断定。 かつ、米ジョン・ホプキンス大学大学院の米艦研究所は、今回のミサイルは通常軌道だと 1 万キロにも達すると分析しており、これはアメリカの本土にまで北朝鮮のミサイルが届くようになったということを意味します。 日本にとってもアメリカにとっても、「存立危機」の事態に直面していると言っても過言ではありません。 ◆日本国内の状況 ミサイルが発射された7月28日、日本では自衛隊のトップの防衛大臣、防衛事務次官、陸上幕僚長が、マスコミと野党の批判を浴びて辞任しました。 このタイミングでミサイルを撃たれたことは、日本にとって適切な国防の対応ができないことを意味しています。 アメリカでは、7月4日の独立記念日に合わせて北朝鮮がミサイルを発射したことを重く受け止め、次年度予算で防衛費を増やし、超党派で、国民を必死で守ろうとしています。 しかし日本では国家の危機を全く考えず、政治家は、加計学園など、政局絡みの足の引っ張り合いばかりしているような状況です。 「気骨のある政治家はいないのか」という憤りが、日本国民の間に沸き起こってもおかしくはありません。 ◆私たちがなすべきこと 今、日本がなすべきことはなんでしょうか。 まず何より、昨今の情勢を踏まえ、憲法9条の改正に正面から取り組むべきです。 自衛隊がしっかりと国を守ってくれるようにするためにも、憲法9条を改正しなければなりません。 また、日本の防衛費を大幅に増やす必要があります。 日本の防衛予算は、GDPの約 1%の 5 兆円ですが、日本を守るために必要な自衛隊員、装備を確保することが困難になっています。 いざ中国と一戦交えた場合、2~3日しか武器や弾薬が持たないという話もあります。 日本は、他の先進国と同様に、少なくともGDPの約2%、10兆円近くの防衛予算を確保すべきです。 さらにもう一つ大切なのが、いかに北朝鮮や中国の核にどう立ち向かうかです。 自衛隊のレベルは非常に高いのですが、核の脅威には核でなければどうしても抑止できません。 幸福実現党としては、まず、非核三原則の「もたず、つくらず、もちこませず」を撤廃し、日本に核装備の選択肢を生み出すことを訴えたいと思います。 世界唯一の被爆国であるからこそ、逆に、もう二度と核を落とされないよう、抑止力としての核を持つ権利もあるのです。 安倍首相は、非核三原則の撤廃を早急に検討して決断すべきです。 ◆国民の生命・安全・財産を守るために 今、日本人一人ひとりが、「自分の国を自分で守るのか、守らないのか」という選択に迫られています。 幸福実現党は引き続き、国民の皆様の生命・安全・財産を守るべく、今後も力を尽くしてまいります。 加計学園問題を巡る閉会中審査を受けて(党声明) 2017.07.27 7月26日、加計学園問題をにつきまして、下記「党声明」を発表致しましたのでお知らせいたします。 https://info.hr-party.jp/press-release/2017/5207/ ■加計学園問題を巡る閉会中審査を受けて(党声明) 学校法人「加計学園」による獣医学部新設について、官邸の意向が働いたか否かを巡って、今月 10 日に続き、24、25 の両日、衆参両院で閉会中審査が開かれました。 文部科学省の前事務次官は特区認定に関して「行政がゆがめられた」などと批判していますが、自治体が獣医学部の必要性を訴え、意欲ある大学が学部新設を目指しても、文科省が半世紀以上にわたり門戸を閉ざしてきたことこそ、行政の「ゆがみ」にほかなりません。 「学問の自由」「大学設置の自由」は守られてしかるべきであり、文科省の「岩盤規制」 を打破するための政治主導の発揮は認められると考えます。 大学設置は「認可」行為にもかかわらず、事実上の「特許」行為として文科省の独占状態にありますが、この現状は改めねばなりません。 加えて、大学設置や私学助成の権限を背景に、天下りを大学側に受け入れさせてきた文科省の体質は看過できず、解体も含めた抜本的な組織改革が必要であると考えるものです。 翻って、首相と昵懇の間柄でなければ突破できない「岩盤規制」の改革であれば、国民目線からは「公平性に欠ける」と受け止められても仕方ありません。 恣意的なものと受け止められかねない手法ではなく、大学・学部の設置認可はもとより、あらゆる規制をゼロベースから見直し、「自由の創設」を図るべきだというのが、規制改革に関するわが党の基本方針です。 このたびの審議では、「加計学園への伝達事項」と題した文科省の内部文書も取り上げられ、加計学園に対する教員確保や施設整備等についての助言が、「加計ありき」の証拠であるかのように扱われました。 しかしながら、このような批判は、ためにする議論と見なさざるを得ません。 大学設置基準を満たすには、認可に先立って、事業者が土地や建物、教授陣等を揃えなければならないことから、不認可のリスクを回避すべく、文科省との事前審査・相談を行っているのが実情です。 設置の要件を満たすため、事業者側に莫大な先行投資を課する一方、不認可となっても文科省は責任を負うことのない、こうした現行制度の是非も問われるべきだと考えるものです。 また、大学認可の可否を判断する「大学設置・学校法人審議会」についても、密室審査などの問題が指摘できることから、政策決定過程における責任の明確化、透明性の向上を図るためにも、そのあり方を見直すべきです。 平成 29 年 7 月 26 日 幸福実現党 食料安全保障の要である「種子(たね)」――唐突な種子法の廃止 2017.07.25 食料安全保障の要である「種子(たね)」――唐突な種子法の廃止 幸福実現党 宮城県本部代表 HS政経塾第5期卒塾生 油井哲史(ゆいてつし) ◆種子法によって多くのブランド米が生まれた コシヒカリ、ひとめぼれ、あきたこまちなど様々なブランド米があります。 それらは品種改良によって、おいしさや高い収穫量、病気への強さ、冷害や高温への耐性など生産者や消費者が望む特性を生み出してきました。 昭和に入ってから、コメの品種は国の農業試験場で改良された品種は約400種類ほどあり、都道府県の試験場が改良した品種も300種類以上、これまで700種類以上が開発されてきました。 このなかで300品種程度が現在栽培されています。 これらの優良な種子の生産や普及は「主要農作物種子法(種子法)」によって法的に管理されてきました。主要穀物の技術、品種改良に関する基本法です。 種子は基礎的な農業資源ですが、種子法によって、稲、麦、大豆などを対象にし、都道府県が農業試験場で地域に合う品種の研究開発を進め、奨励品種を指定。原種や、その元となる原原種を生産してきました。 近年は産地間競争が進み、山形県の「つや姫」や北海道の「ゆめぴりか」などの人気銘柄も開発されています。 一般的に一つの品種を開発するのには10年前後の期間を要し、公的機関のたゆまぬ努力でブランド米は誕生しています。 ◆唐突過ぎる種子法の廃止 その種子法の廃止が、昨年の10月に規制改革推進会議の農業ワーキンググループ(WG)で提起され、今年の2月に閣議決定、4月には廃止法が成立。わずか半年ほどの間で可決しました。 種子法の廃止に関しての議論は、十分になされているとは言えません。 種子法廃止の提起がされてから今年1月の農業WGで一度議論され、農業機械化促進法案と種子法廃止法案と合わせた2法案は、衆院農林水産委員会では一般質疑を5時間、参院農林水産委員会で一般質疑を5時間、参考人質疑を2時間行っただけで可決されました。唐突感は否めません。 ◆種子法の廃止は民間参入の促進 廃止の理由は、民間参入の促進にあります。 農業WGでは「地方公共団体中心のシステムで、民意の品種開発の意欲を阻害している」と指摘。民間が開発して奨励品種となるコメが少なく、都道府県が主導する奨励品種のあり方が問題視されました。 農林水産省は種子法の廃止によって民間活力を最大限に活用することを提起していますが、優良な種子の生産・普及に国や都道府県が責任を持つ体制を廃止しなければならない理由について詳しい説明はありません。 そもそも、民間参入は1986年に種子法の改正を行い、種子の生産流通に制限付きながら民間への門戸を開いており、それ以降、「みつひかり」などの民間が開発したコメの品種が出ています。 民間業者の参入が少ないのは、地域ごとの地域農業が行われており、その土地に合った特色による多様で品質の高い品種を栽培しているからです。 種子に対する民間参入を促すとしても、法の見直しや改正など方法は様々ですが、突然の廃止で、多くの疑問や懸念の声が出ています。 ◆種子法の廃止による懸念点 種子法の廃止で、都道府県の生産義務の根拠法がなくなり、予算や研究体制が縮小するのではないかという懸念。 さらに公的機関が持つ素材や施設が民間に提供されると、多くの税金で培われてきた国民共有の知的財産が海外流出し、多国籍企業による種子独占を招くのではないかという危険性が指摘されています。 地域振興のための流通量が少ない各地の銘柄米は、存続の危機に直面することも否めません。 農業の活性化のために、民間のノウハウの活用や官民連携は進めていくべきです。 しかしながら、稲などの品種開発や普及を公的機関が責任を負うことで、日本の食糧安全保障の要である「種」を守り、単純に「ビジネス化」することなく、農家に安価で優良な種を安定的に提供する役割を担ってきました。 政府は種子法の廃止で都道府県の種子生産が後退することへの懸念を踏まえ、種子生産の予算確保や外資による種子独占の防止に努めることなどを求める付帯決議を採択しています。 これらを徹底する方針を示していますが、十分な議論がなされないまま、なぜ法を廃止するのか、廃止の是非を広く問う必要がありました。 これまでに品質改良された種は、厳格に品質管理され、国民はおいしいコメが食べることができました。次の世代にも、しっかりとつないでいくために、種の管理は責任をもって進めていくべきです。 もちろん、農業を魅力ある産業とするため、自由化や民間参入を促して、国際競争力を高めていくことが求められますが、食料安全保障の点から、この規制緩和は結論を急ぎ過ぎたと言わざるを得ません。 今後の動向を見守り、種子行政に関する提言を行ってまいります。 【参考】 毎日新聞 「種子法廃止に広がる不安」 2017年4月21日 農業協同組合新聞 「【種子法廃止】種子の自給は農民の自立」 2017年3月30日 日本農業新聞 「種子法 廃止法案を可決 予算確保へ付帯決議 参院農水委」 2017年4月14日 日本の種子(たね)を守る有志の会 「種子(たね)を守る会院内集会報告」 2017年4月3日 三橋貴明の「新」経世済民新聞 「すべての日本人よ、主要農作物種子法(モンサント法)に反対せよ」 2017年4月7日 農林水産省 aff 2011年11月号 水素社会に向けて――課題と展望、そして光合成 2017.07.22 水素社会に向けて――課題と展望、そして光合成 幸福実現党茨城県本部代表・茨城第一選挙区支部長・政務調査会経済部会長 川辺賢一 ◆水素の魅力 水素は、“究極のクリーン・エネルギー”として90年代から注目を集め、2014年に政府のエネルギー基本計画で方針が示され、同年12月にはトヨタが水素で作った電気で走る燃料電池車としてMIRAI(ミライ)の販売を開始し、水素社会への期待は日に日に高まっております。 最近では、ホンダの燃料電池車クラリティをタクシーとして導入するとして帝都自動車交通が発表(7/4)。 またトヨタや東芝、岩谷産業、神奈川県等が水素社会に向けた環境省委託の実証実験に参加すると発表(7/12)。 内容は、風力で発電した電力で水素を作り、それを貯蔵・圧縮してトラックで運び、近隣の倉庫や工場で稼働する燃料電池フォークリフトに供給するというプロジェクトです。 では水素の魅力と何でしょうか。 例えば、水素と酸素の結合により発電する燃料電池では、発電の際に熱と水しか排出されず、有害ガスや温室効果のあるCO2を放出しないため、クリーンなのです。 クリーンな車として先行する電気自動車は充電に時間がかかる上、満充電でも航続距離が限られるところ、燃料電池車は数分で水素を補給でき、航続距離も比較的長いのです。 また発電の際に同時に放出される熱も利用して給湯を行うエネファーム(家庭用燃料電池)の利用も進んでおります。 しかし何より水素の魅力は、例えば水が地球上に無尽蔵に存在するように、宇宙一多く存在すると言われる水素原子(H)からなる物質である点です。 水素を自由に利用できる社会の実現は、日本にとってエネルギー安全保障上も悲願なのです。 ◆課題 ただし現状、水素社会に向けては多くの課題もあります。 まずは輸送や貯蔵の問題です。 水素はかさばるため、ガソリンならタンクローリーで20〜25t運べるのに、水素は20気圧に圧縮しても0.06t程度しか運べません。 また液化して運ぶ場合、蒸発損が多く、天然ガス・タンカーで蒸発損が1日0.6%のところ、液体水素はその5倍の3%以上だとされます。 貯蔵に関しても同様の困難が伴い、水素社会実現のためには、より高度な断熱材の開発等、周辺技術の開発も同時に進めなければなりません。 しかし最も重要な問題は、水素の製造です。 現状、最も経済的な水素製造方法は、天然ガスの改質ですが、水素を作るのに天然ガスを使うなら、天然ガスをそのまま使った方が良いでしょう。 また、水の電気分解という方法もありますが、これも水から水素を取り出すのに、電気エネルギーを要するので非効率です。 他には、石炭を加熱し、その際、発生するガスに含まれる水素を利用する方法もあり、今まで需要が少なかった低品位炭を利用する点で優れていますが、化石燃料由来のエネルギーを投入しなければならないことには変わりありません。 こうした点から米テスラ・モーターズのイーロン・マスク氏は「燃料電池車は馬鹿げている」とし、太陽光で発電し、電気自動車を走らせるのが理想だと語ります。 ◆水素を自由に取り出す技術の開発を それでも私たちは水素の夢を諦めるべきではありません。 水素技術の革新は、エネルギーにとどまらず、私たちの生活に欠かせない化学工業においても革命的技術となるからです。 例えば水素と一酸化炭素の混合ガスである合成ガスを反応させれば、ガソリンを始め、オレフィンやメタノール、またそれらの誘導により、化学製品や建材、あるいは窒素との結合で化学肥料も作れるのです。 私たちが水素を自由に取り出す技術を手にした時、いわば水素はあらゆる物質・エネルギーに変換可能な通貨となるのです。 そこで注目すべきは、植物の光合成であり、それを人工的に行う人口光合成の技術です。 植物は太陽光と水から水素と酸素を作り、その水素と大気中の二酸化炭素から炭水化物を作ります。 この光合成を人工的に行う技術こそ、水から自由に水素を取り出し、水素をエネルギーに、または、あらゆる物資に変換する究極の循環型エネルギー社会=水素社会を創る鍵なのです。 そのためには、燃料電池車の普及や水素ステーションの整備のみならず、人口光合成を始め、水素の製造方法に関して、基礎研究の助成を推進すべきです。 こうした未来産業の種を官民で育て、予算の代わりに報告義務で研究者を縛るのではなく、自由に研究できる環境を整えるべきなのです。 高等教育無償化 2017.07.20 高等教育無償化 HS政経塾6期生 須藤有紀 ◆「みんなにチャンス!構想会議」発足 安倍首相は6月19日、通常国会閉会を受けて官邸で記者会見を行い、「みんなにチャンス!構想会議」を7月に発足させると表明しました。 これは1億総活躍社会実現に向けた人材育成への投資を強化するため、「人づくり改革」を検討する有識者会議であり、担当相も設置すると言います。(6月19日産経新聞Web版) 安倍首相が年内国会提出を目指している憲法改正案のうち、目玉のひとつが「高等教育無償化」です。 この高等教育無償化も「人づくり改革」の一環であり、まさに「みんなにチャンス」を与えるための政策として位置づけられるようです。 ◆STOP!安易な無償化 結論から申し上げるならば、高等教育無償化はやめるべきです。 詳しくは、7月1日発行の和田みな執筆による、「教育の一律無償化は憲法改正に盛り込むべきではない」もご参照頂きたいのですが(http://hrp-newsfile.jp/2017/3217/)、高等教育を無償化するなら、奨学金の拡充をした方が良い、というのが私の意見です。 ◆日本の奨学制度 現在、日本の奨学制度で代表的なのは、日本学生支援機構(JASSO)による奨学制度です。財源は基本的には返還された奨学金ですが、国からの支出によっても賄われています。 JASSOが提示する奨学金には、貸与型(無利息、利息付、利息付で一時増額の3種類)と、今年度から開始した給付型(主に貧困層の学生に対し、月2~4万支給)の大きく2種類があります。 奨学金の返済義務を負うのは学生本人であるため、借りる際には通学している高校での成績や、学習意欲などが考慮されます。 例えば、無利息貸与型奨学金を希望する場合、高校1年生から奨学金申込時までの成績平均が、3.5以上(5段階評価)なければいけません。 また、JASSO以外では、都道府県や自治体が行っている「沖縄県国際交流・人材育成財団」や「東大阪市奨学金」、企業等が主催する「コカ・コーラ教育・環境財団」などの奨学制度があります。 しかし、日本の奨学制度は外国に比べれば、まだまだ多様性に乏しく、利用しやすいものとは言えません。 特に、給付型奨学金は種類や金額が少ない点が指摘されています。 ◆アメリカの奨学制度 それでは、他国の奨学制度はどうなっているのでしょうか。 奨学制度が充実している国として、代表的なのはアメリカです。 日本の奨学金は、多くの場合返済義務や金利のある「loan」ですが、アメリカの奨学金は、普通返済義務がありません。 そして、「どこから支払われるか」で、以下の通り分類されます。 ・federal(連邦政府が提供する奨学金・給付金) ・non federal(連邦政府以外が提供する奨学金・給付金) ・state(各州政府が提供する奨学金・給付金) ・institutional(組織が提供する奨学金・給付金) ・employer aid(雇用者への援助として企業が提供する奨学金・給付金) 連邦政府は「学生経済支援政策」を打ち出しており、ペル奨学金を始めとする大規模な給付奨学金、学生ローンなどの貸与奨学金のほかに、大学内や公共機関でのアルバイトを通じて報酬を出すワークスタディや、内国歳入庁の所轄する教育費の減税措置などを行っているようです。 ◆アメリカの大学の奨学金制度 また、その他に各大学が学内で行っている奨学制度も充実しています。 2008年には、ハーバード大学が年収6万ドル以下の家庭の学部生に対し、年間3.8万ドルの学費を免除することを決定。 年収6万~18万ドルの家庭も、「学費の拠出は最大で年収の10%まで」としました。 また、スタンフォード大学も年収6万ドル以下の家庭の学部生に対し、学費と寮費、計5万ドルを免除。 年収10万ドル以下の家庭には、学費だけ免除する方針を打ち出しています。 各大学は、莫大な寄附基金を資金源に、資産運用を行っています。そのため、「お上頼み」ではない独自の奨学金制度が実現しているのです。 ◆奨学金以外の学費軽減方法 上述した通り多様な奨学制度があるアメリカですが、奨学制度以外に学費を軽減する方法も存在します。 それが、Advanced Placementに代表される「高大接続システム」です。 簡単に言えば高校に通いながら大学の単位を先取りできる制度であり、大学卒業までの期間を短縮することが可能です。 アメリカの高校が単位制を採用しており、飛び級を容認しているために行える事ではありますが、才能ある学生を伸ばす上で有効な手段なのではないでしょうか。 ◆「無償化」ではない「チャンスの平等」を! ただ一律に高等教育を無償化したからといって、皆に平等にチャンスが訪れるわけではありません。むしろ更なる教育の質の低下を招きかねません。 真にチャンスの平等を実現し、才能ある学生を伸ばそうと考えるならば、無償化で3兆円もの予算をバラ撒く前に、給付型奨学制度のさらなる充実や、教育制度の見直しを図るべきではないでしょうか。 日本の更なる繁栄のため、教育の向上は不可欠です。 社会主義的平等主義を捨て、発展的観点から「人づくり改革」を行って頂きたいと思います。 【参考】 米国製エリートは本当にすごいのか? 著:佐々木紀彦 出版:東洋経済新報社 アメリカの才能教育 著:松村暢隆 出版:東信堂 日本学生支援機構HP、調査資料等 「米国の奨学金政策をめぐる最近の動向」国立国会図書館レファレンス 平成27年8月号 著:国立国会図書館調査及び立法考査局次長 寺倉憲一 http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9484228_po_077502.pdf?contentNo=1 G20後の米露関係―関係改善に向けて動き出した両大国 2017.07.18 G20後の米露関係―関係改善に向けて動き出した両大国 幸福実現党・政調会外交部会 副部会長 彦川太志(情報分析担当) 今回のニュースファイルでは、前回に続き、G20での米露首脳会談と、今後の国際情勢について報告したいと思います。 ◆G20での米露首脳会談に世界が注目 G20とは世界の経済大国19か国プラスEUで構成される、グローバル経済を促進することを目的としたグループですが、元々蔵相会議であったものが2008年の金融危機以降、首脳会議も開催されるようになっています。 本年はドイツのハンブルグを開催地とし、7月7日・8日の日程で首脳会議が開催され、米露首脳会談も、この日程の合間に実施されています。 ◆信頼回復の糸口が見えた米露首脳会談 「彼は対話相手の主張に耳を傾ける事ができるオープンな人格の持ち主であり、彼自身が作り上げたテレビの印象と全く違っていた。」 これは米露首脳会談の後で、トランプ大統領の印象についてプーチン大統領が語った言葉です。(※1) 両首脳は身を乗り出して固く握手を交わすと共に、米露関係について「悪化させるには、あまりにも重要すぎる関係」であるとの認識のもと、建設的な対話を進める必要性について合意したことが報道されました(※2)。 首脳会談の開催により、歩み寄りを模索していた両大国は「信頼回復」の糸口を掴んだものとみて良いでしょう。 ◆「過去は棚上げ」から出発する、新たな米露関係 今回の米露首脳会談の成果をあえて「一言」で表すとしたら、「過去については『棚上げ』し、両国の国益を損なわない実質的な解決方法を模索する」(※3)事で合意が得られたと言う事になります。 その姿勢が端的に表れたのが、米大統領選介入問題と、シリア・ウクライナ問題への対応でした。 (1)米大統領選介入問題 ロシアによる「米大統領選への介入疑惑」について、両首脳は40分間を費やしました。 トランプ大統領がプーチン大統領に対して率直に「介入の事実があったかどうか」を何度も問いただし、プーチン大統領は「介入の事実は無い」と返答する、と言ったやり取りが繰り返されたほか、米国や他国の選挙に対する介入が行われないよう、サイバーセキュリティについて「更なる交流を深めることで合意」したと伝えられています。(※4) 「オバマ政権下」で発生した「いざこざ」を掘り下げるよりも、両国の「信頼関係」構築に重点を置く意図が見えてくると言えるでしょう。 (2)シリア・ウクライナにおける緊張緩和 もう一つは、オバマ政権からの「負の遺産」とも言うべきシリア・ウクライナ問題です。 シリアについて、5月10日にホワイトハウスで行われたトランプ大統領と露外相との会談の中で、トランプ大統領は明確に「シリア政府の問題は、ロシアが手綱を取るべき」だと指摘していましたが、今回の首脳会談でも、シリア内戦の当事者に対し、「米露両国がそれぞれに影響力を行使する」事が「合意の核心」であったと伝えられています(※5)。 ウクライナ問題も同様です。G20終了後、トランプ大統領は「プーチン大統領の求めに応じて」対露強硬派として知られるクルツ・ボルカー前駐NATO大使のウクライナ派遣を決定すると共に、ロシアに対しては東部地域の緊張緩和と、停戦協定(ミンスク合意)履行に向けた行動を求めました(※6)。 これらの問題について、暫く予断を許さぬ状況が続くとは思われますが、オバマ政権下では米露が協力する兆候すらありませんでしたので、紛争地域の緊張緩和に向けた交渉が行われること自体、米露関係の改善に向けた動き出した証左と見ていくべきだと考えます。 ◆意見の「若干の違い」が残る北朝鮮・中国問題 以上の様に、2時間15分の首脳会談において「対立よりも前進」を選択した両首脳でしたが、一つだけ、意見に「若干の違い」がある問題があったと、ティラーソン国務長官によって明かされました。それが北朝鮮や中国に関する問題です(※7)。 これは私見ではありますが、北朝鮮・中国問題について「十分な信頼関係を構築できていない」という事を直接的に表現すると、「『アジアにおけるロシアの影響をどの程度認めるのか』と言う問題に話がついていない」と言う事を意味するものと思われます。 例えば、トランプ政権がシリアにおいてロシアとの信頼構築の糸口を見いだせた理由は、トランプ大統領が「シリアの手綱を引け」とラブロフ外相に伝えたように、同地域におけるロシアの影響力を一定程度認めたからに他なりません。 これを北東アジアにおいて当てはめるとしたら、どうでしょうか。その答えを出し、米露の橋渡しができるのは、北朝鮮と中国による「軍拡の危機」に直面している日本しかありません。 北朝鮮問題、即ち「朝鮮半島の非核化」の実現に向けては、北朝鮮の後ろ盾となっている中国に対して、ロシアからの圧力も必要です。そのためには、北方領土の帰属問題を一時「棚上げ」してでも、両国が互いに安全保障上の利益に尊重する事を前提とした、日露平和条約の締結を目指すべきであると考えます。(※8) 【下記セミナーにて、詳細を報告させて頂きます。】 ===================================== ■7/22 (土)13時~ 幸福実現党政調会・外交部会 月例公開セミナーのお知らせ 日々、幸福実現党にご支援を賜り、誠にありがとうございます。 7月22日(土)13時より、ユートピア活動推進館3階大会議室において、幸福実現党政調会・外交部会主催の公開セミナーを開催させていただきます。 今回のセミナーでは、G20サミット以降の米露関係と、国際情勢の展望について報告させて頂きます。 当日ご参加頂きました皆様には、外交部会作成のお持ち帰り資料をご用意させていただきます。多くの皆様の御参加をお待ちしております! テーマ:「G20サミット以降の米露関係・国際情勢について」質疑応答 日時:7月22日(土)12:45開場 13:00開始 場所:ユートピア活動推進館3F大会議室 東京都港区赤坂2-10-8 会費:1000円(持ち帰り資料あり) 主催:幸福実現党政調会 外交部会 講師: 同 副部会長 彦川太志(情報分析担当) ◆お申し込み・お問い合わせ ご参加のお申し込みは、【お名前】、【電話番号】、【所属支部(任意)】を明記の上、下記までメールをお送りください。 ※件名に「7月22日セミナー希望」とご記入ください。 担当:彦川太志 【victory777dh@gmail.com】 ===================================== <参考記事> (※1)2017/7/14 TASS:Putin believes Trump’s most important quality is ability to listen to his interlocutor (※2)~(※5)、(※7)2017/7/8 TASS:US-Russia relations are too important to focus on dispute (※6)2017/7/9 U.S.Department of State:Remarks With Ukrainian President Petro Poroshenko At a Joint Press Availability (※8)2016.12.18「安倍外交はなぜ「完敗」したか【第一回】――オピニオン力無き外交の終焉」2016.12.19「安倍外交はなぜ「完敗」したか【第二回】――「認識の齟齬」を生んだ安倍パフォーマンス外交」 「ロシア-ウクライナ「代理戦争」の様相を呈する、米「ロシア疑惑」問題」 2017.07.15 「ロシア-ウクライナ「代理戦争」の様相を呈する、米「ロシア疑惑」問題」 幸福実現党・政調会外交部会 副部会長 彦川太志(情報分析担当) ◆7月7日、G20サミットが開催 7月7日、ドイツでG20サミットが開催され、初の米露首脳会談に注目が集まりました。トランプ政権の誕生以来、米国内での「ロシア疑惑」の追及のためになかなか関係修復の糸口が掴めなかった両国ですが、事後の報道を見ると、「対立の中の協調」とでも言うべき成果があった事を見て取る事ができます。 今回は、まず米国での「ロシア疑惑」に関して整理した上で、2回に分けて首脳会談後の米露関係について解説したいと思います。 ◆トランプ大統領の「ロシア疑惑」について整理する まずは、トランプ大統領を悩ませる「ロシア疑惑」問題の大枠ついて整理したいと思います。 「ロシア疑惑」問題の発端は、米大統領選が行われていた2016年、数度にわたってヒラリー陣営の内部メールが「ウィキリークス」を通じて暴露された事件にあると言えます。 オバマ大統領はロシア政府によるサイバー攻撃の可能性を疑い、大統領選期間中から「ロシアの介入」を警告する発言を繰り返していました。 さらには退任間近の2016年12月、事実上の報復措置として駐米ロシア外交官35人の国外追放等に踏み切りました。 このような経緯を背景として、「トランプ氏が大統領選に勝利するため、ロシア政府と意思を通じていたのではないか」と言う報道が熱を帯びてきたのです。 トランプ陣営とロシア政府の繋がりを疑う報道の影響は大きく、選挙戦の最中にはポール・マナフォート選対本部長を辞任に追い込み、大統領就任後はマイケル・フリン補佐官を失脚させるなど、実際の政権運営にも実害を与えています。 疑惑の追及も厳しく、当初はトランプ氏とロシア政府の「共謀があった可能性」に関する報道であったものが、解任されたコミーFBI長官(当時)の証言を通じて、トランプ大統領が自身の側近に対する捜査を「妨害」していたのではないかと言う疑惑に発展するに至り、一時は議会による弾劾の可能性まで取り沙汰されることとなりました。 最近では、トランプ氏の長子であるトランプ・ジュニア氏が選挙期間中にロシア人弁護士と会合を行っていたことが問題となりましたが、結局、トランプ大統領とロシア政府の関係を立証する決定的証拠が提示されるには至っておりません。 ◆ヒラリー陣営にもあった!?外国政府との取引疑惑 ところで、ヒラリー陣営にも「外国政府との接触」の問題があることは意外と知られておりません。少なくとも、トランプ氏の大統領就任前後で一度、報道されているのですが、なぜかその後メディアから姿を消し、十分な追及は行われていなかったのです。 ところが、トランプ大統領が新たにクリストファー・レイ氏をFBI長官に指名し、上院でこれを承認するための公聴会が開催されて以降、再びこの問題に注目が集まっています。 それは、「2016年の大統領選当時、民主党全国委員会の関係者であったウクライナ系アメリカ人が、ウクライナ政府からトランプ大統領の不利となる情報提供を受けていた」と言う事実を暴き出す内容です。 つまり、「選挙戦を有利に進めるために外国政府と取引をした」疑いは、ヒラリー陣営にもあると言う事です。 もし米メディアが自国の選挙に対する「外国政府の干渉」問題に取り組むのであれば、ヒラリー陣営とウクライナ政府の「関係」も、「ロシア疑惑」と同様に追及していくべきだと言えるでしょう。 ◆「ロシア・ウクライナの代理戦争」の様相を呈した米大統領選 なお、FBI長官にレイ氏が指名されたことで、日本のメディアは「ロシア疑惑の追及」が加速すると見ていますが、米メディアではまったく逆に、「(レイ氏が)承認されれば、この問題(ウクライナ問題)を掘り下げていくつもりである」ことを公言した(※1)と報道されています。 さらには「次は民主党がFBIの追及に直面する可能性が高い」とも報道されている(※2)ほか、大統領選自体を「ロシアとウクライナの代理戦争(※3)」と表現する記事があるほどです。 ロシア寄りの人選で政権を固める事が予想されていたドナルド・トランプ氏の存在は、ウクライナにとって「危険な存在」以外の何物でもないと映っていた事でしょう。 ◆ウクライナ問題での協調見えた米露首脳会談 レイFBI長官の下、民主党に対する「ウクライナ政府との関係」が追及される事態となれば、トランプ大統領の政権運営や、米露関係の修復にも大きな影響が生じていく事が予想されます。 実際に、G20の米露首脳会談で取り上げられたテーマの一つに「ウクライナ問題」がありましたが、両政府関係者の発言を詳細に分析すると、表面的には対立を演出しつつも、米露が協調してミンスク合意を履行させ、ウクライナ問題を終息させようとする意図が見えてきます。 次回は、以上のような米国内の情勢変化を踏まえた上で、G20以降の米露関係・国際情勢を予測してみたいと思います。 =================================== ■7/22 (土)13時~ 幸福実現党政調会・外交部会 月例公開セミナーのお知らせ 日々、幸福実現党にご支援を賜り、誠にありがとうございます。 7月22日(土)13時より、ユートピア活動推進館3階大会議室において、幸福実現党政調会・外交部会主催の公開セミナーを開催させていただきます。 今回のセミナーでは、G20サミット以降の米露関係と、国際情勢の展望について報告させて頂きます。 当日ご参加頂きました皆様には、外交部会作成のお持ち帰り資料をご用意させていただきます。多くの皆様の御参加をお待ちしております! テーマ:「G20サミット以降の米露関係・国際情勢について」質疑応答 日時:6月17日(土)12:45開場 13:00開始 場所:ユートピア活動推進館2F礼拝室 東京都港区赤坂2-10-8 会費:1000円(持ち帰り資料あり) 主催:幸福実現党政調会 外交部会 講師: 同 副部会長 彦川太志(情報分析担当) ◆お申し込み・お問い合わせ ご参加のお申し込みは、【お名前】、【電話番号】、【所属支部(任意)】を明記の上、下記までメールをお送りください。 ※件名に「7月22日セミナー希望」とご記入ください。 担当:彦川太志 【victory777dh@gmail.com】 <参考記事> (1) 2017/7/12 CNN「DNC denies working with Ukrainian government, but contractor floated anti-Trump material」 (2) 2017/7/12 Washington Examiner「DNC could face investigation into Ukraine ties if Christopher Wray is confirmed」 (3) 2017/1/11 Politico「Ukrainian efforts to sabotage Trump backfire」 日本はどうする?アメリカでささやかれる米中戦争の可能性 2017.07.13 日本はどうする?アメリカでささやかれる米中戦争の可能性 HS政経塾2期卒塾生服部まさみ ◆北朝鮮問題の陰で浮上している米中戦争の可能性 北朝鮮によるミサイル問題の陰で「中国との戦争」という重いシナリオが議論されています。 米中戦争の可能性を指摘しているのは、米ハーバード大学のグラハム・アリソン教授で、昨年から米誌「ナショナル・インタレスト」や著書などで発表し、論議を巻き起こしています。 アリソン教授は過去500年間の欧州とアジアの覇権争いを研究し、「台頭する国家」が「支配する国家」との戦争によって取って代わる可能性があると述べ、米中は、互いに望まなくても数年後に、(1)南シナ海で米中軍艦の衝突、(2)台湾問題の緊張、(3)尖閣諸島をめぐる日中の争奪戦などが引き金となり、激突し、戦争を引き起こすという予測が立てられています。(7月12日付産経新聞14版) アメリカに代わって「世界の覇権を握る」という中国の国家戦略のもと、これらのシナリオが日々、現実味を帯びると共に、北朝鮮問題をめぐって米中の対立が激しくなっているのが事実です。 しかし、米中戦争の危機は今に始まったわけではなく、かつての朝鮮戦争、ベトナム戦争も、本当は米中戦争であり、中国は、「自分が戦ってるとは見せないで、支援している国に武器等の補給をして、パイロットなどを送り込んで戦う」ということをするのが得意だということを忘れてはなりません。 ◆中国が北朝鮮を止められない理由 中国は、北朝鮮の核兵器開発に反対し、米国との協力姿勢も示してきましたが、ここにきて、米国が北朝鮮に対する圧力強化を求めていることについて、「解決の鍵は中国政府の手にはない」とし、北朝鮮問題を巡る「中国責任論をやめ、各国がそれぞれ働きかけるべきだ」と異例の反論を米国に対して行っています。(7月11日ロイター) このような矛盾する中国の態度の背景にある本音とはどのようなものなのでしょうか?中国が北朝鮮を止めることができない理由は大きく3つあります。 一つ目は、北朝鮮が暴発することです。経済状態が悪化することで、資金や燃料不足から追い詰められた北朝鮮が、自暴自棄になって軍事的に暴発することを恐れていること。 二つ目は、北朝鮮が中国のコントロール下から外れてしまうことです。これまでも、中国が強い経済制裁をかけると、北朝鮮はロシアにすり寄ってきました。 中国とロシアはお互いに、自国の安全保障のために重要だと考えているエリアで、相手の影響力が高まることを警戒しているため、安全保障上、重要な位置に存在する北朝鮮を失いたくないのです。 三つ目は、中国の国内事情です。遼寧省などの地域は長期の経済停滞に苦しんでおり、北朝鮮との貿易で占める経済利益の割合が大きく、経済制裁を行うことで、国内にマイナスの影響を与えてしまうためです。 また、大量の難民があふれ出すことも予測されます。中国にとって、北朝鮮が米国との間の緩衝地帯であることの重要性は変わらず、自国の安全保障や経済上のリスクを冒して、中国が米国のために本気で協力するとは考えにくいのです。(参照:『中国が北朝鮮を止められない3つの理由』小原凡司) ◆戦わずして勝つ「トランプ戦略」 かつての朝鮮戦争やベトナム戦争が本当は米中戦争であったように、軍事的覇権をもって世界の大国になろうとし、米国に覇権戦争を挑んできている中国の本音や本質をトランプ大統領は見抜いた上で揺さぶりをかけていると考えます。 表舞台では、中国が北朝鮮に圧力をかけるべきだと要求し、首脳会談などでは、融和的な態度で協力を引き出していく一方で、「北朝鮮に強い制裁を行わない中国」という悪いイメージを作り上げて、批判し、一段と強硬姿勢を転じています。 具体的には、南シナ海の人工島近くで「航行の自由」作戦を再開し、台湾に大型武器を売却、北朝鮮と取引のある中国企業や個人に制裁を発動しました。 これに対して、中国は米韓の合同軍事演習が緊張を悪化していると非難し、韓国に新型迎撃ミサイルTHAAD(サード)を配備したことに神経をとがらせ反発、北朝鮮と取引がある中国企業や個人に制裁を課したことにも抗議しています。 米国も米韓演習は対北朝鮮の防衛力を維持するために必要だと反論し、中国が北朝鮮に更なる圧力をかけないのであれば、鉄鋼やアルミニウムなどの物資の米国への輸入を制限する制裁措置を取ることまでちらつかせています。 北朝鮮に対しては、軍事力行使も辞さないという毅然とした態度を示すと同時に、中国が嫌がることを全て行動で示し、中国の覇権を止めるという「トランプ革命」を一貫して実践しているのです。 G20でのロシアとの2時間以上に及ぶ首脳会談や中国との貿易構造まで変え、中国の利益体質を減らして兵糧攻めまで行おうとしているところは、中国の野望を打ち砕き、米国と戦うことをあきらめさせる、まさに、「戦わずして勝つ」戦略です。 国内外で色々と批判されるトランプ政権ですが、この見事な外交手腕には脱帽です。 大統領就任演説で「生命をかけてあなた方のために戦う」と宣言したトランプ大統領の信念と平和を築きあげるための大戦略がここに垣間見えます。 トランプ政権は、北朝鮮が米国本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)を保有することを「レッドライン」として警戒してきましたが、7月4日、米国の独立記念日に、アラスカやハワイを攻撃できるICBMの実験を成功させました。 いよいよ北朝鮮に対して、軍事力行使の可能性が高まり、米中戦争の可能性まで含めたこの現実を、「アメリカ頼み」の日本はどう受けとめ、今後、どのように対応していくのかが問われています。 政局争いを繰り返すことばかりが政治ではありません。当たり前のことを、当たり前のこととして真剣に議論し、この国を守り抜く決断をする政治を実現していきたいと思います。 バウチャー制度の導入で、「質」のいい保育所がつくれる 2017.07.11 バウチャー制度の導入で、「質」のいい保育所がつくれる HS政経塾第6期生 山本慈(やまもと・めぐみ) ◆待機児童はますます増加している 最近では、保護者層を中心に「保活(子どもを保育所に入れるために保護者が行う活動)」という言葉が定着しつつあり、都市部での待機児童問題が大きくとりあげられています。 厚生労働省は平成27年4月時点で、待機児童数が全国で45,315人に達し、平成28年には東京だけで8,466人に上ると発表しています。また入園申請をしていない等の「隠れ待機児童」も存在し、実際の待機児童数は45,315人以上いるとされています。 ◆保育所に預けられるかは、家庭の死活問題 出産後、生活費のために社会復帰する女性が多い中、保育所に子どもを預けられず、再就職できない人もいます。 なかには、保育所に子どもを預けるため、引っ越しを繰り返したり、(戸籍上)離婚したりする家庭もあります。 それほどまでに、子どもを保育所へ預けなければ家庭をやりくりできないという事情が明らかとなっています。 ◆保育所の増設だけではダメ こうした現状に対し、与野党は保育所を増やす政策を打ち出しています。 厚生労働省は平成28年3月28日に認可保育園の定員数を増やす規制緩和を盛り込みました。 しかし、定員数増と同時に保育士の待遇改善に触れなかったことで、保育士の労働環境は更に厳しいものになりました。 保育所を増設したり、児童受入れの定員を増やしたりするだけでは、保育所の「質」の低下と、多額の税金が費やされるだけで、待機児童問題の根本的な解決にはなりません。 ◆サービス向上に力が入らない理由 保育所のサービス向上を妨げているものは、補助金の手続きやおかしな規制です。 保育園経営者のなかには、補助金の仕組みが複雑なため、書類づくりに手がいっぱいになり、サービス向上や事業拡大に専念できないという意見もあります。 また保育所が認可されるには、さまざまな条件が壁となり、新規参入が難しいともいわれています。 ◆バウチャー制度の導入 保育所の「質」を維持・向上させつつ、待機児童問題を解消していくには、バウチャー制度を導入すべきでしょう。 バウチャー制度は「国や自治体などが目的を限定して個人を対象に補助金を支給する制度(※)」で、バウチャー(引換券)を渡すことで、公共サービスを受けられるというものです。 つまり、今よりも保護者が預けたい保育所を自由に選べるようになります。 子どもを預けたい保育所にバウチャーを渡せば、その保育所に補助金がおりる仕組みとなっているので、経営者は補助金の手続きに苦心する必要が無くなります。 (※)コトバンクより引用 ◆よりよい保育がのぞめる バウチャー制度導入により、バウチャーが保育所に渡される分だけ、補助金が入るようになります。 これにより、一定の補助金の限度が撤廃されたことで、限界なく保育士を雇えるようになります。十分な保育士を雇えることで、保育の「質」を維持・向上することがでるでしょう。 (参考) ●2016年4月29日付 Part 1 「保育園落ちた」をなくす方法 – 愛してるから、黙ってられない。 女性が損をしないための3つの政策 http://the-liberty.com/article.php?item_id=11236 ●2016年4月11日付 政府は本気で待機児童問題に取り組む気があるのか~保育中の事故で子供を亡くした母親が訴え「保育士を大切にしないと子どもの命は守れない」~私たち声をあげます!大作戦 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/296124 オバマケアと医療保険 2017.07.08 オバマケアと医療保険 幸福実現党・岡山県本部代表 たなべ雄治 ◆オバマケアの廃止は決まらず アメリカでは、医療保険制度改革法(オバマケア)廃止に向けての共和党の代替法案が話題となっています。 オバマケアの廃止は、トランプ大統領の公約の目玉の一つでした。 5月に、オバマケアの代替法案は僅差で米下院を通過しました。 ところが先月末、上院での過半数獲得が見込めず採決が延期となりました。 今、アメリカの医療サービスに何が起きているのでしょうか。 ◆アメリカの医療制度 アメリカでは、医療保険制度の大部分を民間に任せています。先進国では例外的です。 公的医療保険制度もあります。高齢者・障害者向けの「メディケア」と、低所得者向けの「メディケイド」で、人口の3分の1の方がこの制度に加入しています。 上記以外は民間保険であり、多くの米国民は雇用先を通じて民間医療保険に加入しています。 ところがアメリカの医療費が非常に高いこともあって、民間医療保険の保険料も高額になっています。 保険料が払えない中低所得者などを中心に無保険者は10%を超えており、医療費の支払いに起因する破産などの問題がおきていました。 オバマケアとは、上述の問題を解決すべく、国民皆保険を目指して2014年から導入された医療保険制度です。 国民には医療保険への加入を義務付けて、民間保険会社には国民の保険加入を断れないなどの規制を設け、財政支援も加えました。併せて、メディケイドの条件を広げ、加入しやすくしました。 こうすれば、確かに無保険者は減っていくはずです。 ◆オバマケアの評価 では、オバマケアは成功したのでしょうか。 確かに、医療保険の加入率は上がりました。 一方で、保険料が平均25%も値上がりし、オバマケアを提供する保険会社が相次いで撤退するなど、見通しの明るいものではありません。 その原因は、公営の社会保険ではなく、民間保険だからです。 民間保険の場合、リスクの高い人には高い保険料を求めますし、場合によっては加入を断ることもできます。 ところがオバマケアの規制により、リスクの高い国民の加入も断れなくなったため、保険給付が増え、その分を保険料の引き上げで補う必要が出てきたわけです。 さらに、収益を見込めない保険会社が撤退し始めました。 2018年には全米の約半数の州で、オバマケアの保険商品を提供する保険会社が1社以下になるという予想も出ています。 1社だと競争原理が働かず、保険料のさらなる値上がりも懸念されます。 オバマケアは成功とは言えません。 ◆オバマケアの代替法案 対して、共和党によるオバマケア代替法案とは、以下のようなものです。 ・国民への加入の義務付けを外す。 ・保険会社は、リスクの高い人の加入を断ることができる。保険内容に関する規制も緩和する。 ・拡大したメディケイドは、段階的に元に戻していく。 完全にオバマケア以前に戻すわけではありませんが、かなりの部分で規制が緩和されることになりそうです。 しかしこの代替法案が可決されると、再び無保険者が増加していくという分析があります。 上院では共和党の中にも代替法案に反対する議員が現れ、冒頭で述べた採決延期につながりました。 ◆医療保険のあり方 多くの先進諸国で、医療を含む社会保障が財政を圧迫しています。 医療のように、自由化して市場原理に任せればよいと単純には言えない分野が存在します。 まだどの国も、医療保険のあるべき姿を見つけ切れていないのではないでしょうか。 これからも様々な社会実験をしていくことになるでしょうが、方向性を示すことは可能だと思います。 それは、「公共の資源を食いつぶさない」という「インセンティブ(動機)」を与えることです。 日本では安くて高品質な医療サービスがいつでも受けられます。 しかし、私たちが窓口で支払う診察料の2倍以上の額が、国民の税金から支払われていることを忘れてはなりません。(自己負担3割) 「保険診療を無駄遣いしない」という「インセンティブ」が望まれます。 その一例として、岡山県総社市の「総社市国民健康保険 健康推進奨励金制度(総社市国保「健康で 1万円キャッシュバック」)」を挙げます。 一年間保険診療を使わず、かつ健康診断を受けている世帯に対して、1万円を還付するという制度です。 また、夕張市のような事例もあります。 http://hrp-newsfile.jp/2017/3209/ あるいは、保険診療の利用額が少ない人に、年金給付を増額して還付する方法も考えられます。これらは、生活習慣改善へのインセンティブにもなることでしょう。 正しいインセンティブを与えつつ、効率化は市場原理にゆだねる。これが医療保険のあるべき姿だと考えます。 すべてを表示する 1 2 Next »