Home/ 2011年 November 2011年 November TPP:ISDS条項(ISD条項)は本当に「毒素条項」なのか? 2011.11.30 TPPは多国間協定です。いくらアメリカの経済力と外交力が強大とはいえ、参加国内の利害を無視できません。 WTO(世界貿易機構)での交渉でさえ(アメリカ主導の面があるとはいえ)関連諸国との協議が難航していますし、二国間の貿易交渉でも簡単にルール設定ができません。 例えば、日米繊維交渉、日米自動車摩擦などを見ても、解決までには数年の歳月がかかりました。 また、多国間であれば、利害の対立・調整が一層難しくなります。逆に言えば、多国間で認められないものは採用が困難ということです。 また、多国間交渉は、各国に研究と準備期間を与えます。 TPPでは、チリの乳製品では12年間の歳月を、米豪間のFTA(自由貿易協定)では、牛肉とチョコレートに関して18年間の交渉期間が許容されていますが、要は交渉によって関税撤廃の期間延長が可能だということです(『TPP参加という決断』渡邊頼純 ウェッジ)。 では、様々な憶測が飛び交うISDS(投資家対国家の紛争解決)条項(ISD条項)とはどのようなものでしょうか? 実は、ISDS条項は投資環境の共通のルール設定を通じて市場の整備を促しました。 先進諸国が途上国への投資で一方的な損失(政府による資産の強制没収など)を避けるためには、投資家を保護することが必要になります。 特に、途上国と共産主義国には協定違反が多いということもあり、ISDS条項は投資家の「守り刀」の役割を果たしているのです。 現在、日本政府は、既に25を超える投資協定を締結しています。 近年は、企業の海外進出や対外直接投資が増えているので、ISDS条項がなければ、企業や投資家のリスクはカバーできません。 ISDS条項は、TPPによって初めて導入されるわけではなく、既に存在しているものであることも強調しておきましょう。 同時に、先進諸国内でさえも、制度や商慣行の違いによってトラブルが多発する可能性があるために、ISDS条項が適用されています。 ISDSは途上国だけでなく、先進国にとっても必要なのはこうした理由によります。 次に指摘しておきたい点は、日本政府は投資協定違反などで訴訟はされていないということです。 今後、わが国を相手取った訴訟が全くないとは言えません。ただ、既に市場開放を進めてきた先進国である日本が一体何を訴訟されるというのでしょうか? 関税以外の貿易と投資の阻害要因を非関税障壁と呼びますが、極論に行けば日本語さえ非関税障壁となります。 投資家が日本語を話せないのでISDS違反として訴訟を起こすといったばかげたことはあり得ません。 投資家が国を相手に訴訟を起こすということは、よほど国内において不透明で一方的な差別によって投資家が不利益を被ったケースです。 その際の対抗手段としてISDS条項があるのです。 もし、締約国間で協約違反が生じた場合は、ICSID(投資紛争解決国際センター)などで仲裁や調停が行われます。 審議には当事者からそれぞれ推薦1名と双方が合意した1名の計3名が仲裁人となります。また、仲裁機関によって、協定違反かどうかの審議をします。 仲裁機関を通じて双方の主張が審議されるわけですから、例えばアメリカだけの一方的な見解が通るはずがありません。 なお、判決に対して上訴ができないことを指摘されている方もいますが、新しい事実などが出てくれば、再審や取り消しも認められています。 最後に、「内国民待遇」という考え方について触れておきます。「内国民待遇」とは、相手国の企業や投資家を同じように扱うということです。 既にWTOでも認められており、自由貿易や投資の基本です。非関税障壁が「内国民待遇」に反しているとする説もありますが、非関税障壁=ISDS違反ではありません。 訴訟となるには、相応の契約違反や一方的差別のケースが多く、非関税障壁によってISDS訴訟が乱発されるわけではないのです。 非関税障壁の撤廃は交渉によって調整していくしかありません。 ただ、日本がISDS協定違反で訴訟されていない事実を見る限り、内国民待遇違反ということで訴訟となる可能性は極めて低いと言えるでしょう。 結論を言えば、ISDS条項は、決して「毒素条項」ではありません。 もちろん、万が一毒素条項が出てくることも想定しなければいけません。唯一の懸念は、こうした毒素条項をつぶすだけの交渉力があるかどうかです。 今後、日本政府には諸外国の動きをよく見ながら交渉の準備を進める戦略眼としたたかさ、そしてタフな交渉力が要求されます。(文責・中野雄太) 普天間基地移設問題~解決への道(4)保守化する沖縄県民 2011.11.29 今回、様々な混乱はあったものの、沖縄の石垣市、与那国町で中学校の公民教科書で育鵬社が採用されることになりました。これは、尖閣諸島事件に危機感を持つ石垣市民の声を正しく反映した採択だったと言えます。 例えば、尖閣諸島などの領土問題の記述が充実している育鵬社教科書の選定について、八重山漁業の組合長の話として「尖閣の問題を、中学生にもしっかり教えてほしい。漁業関係者にとってはありがたい話」という石垣市民の喜びの声を掲載しています。(8/24『八重山日報』) また従来、自衛艦の石垣島入港時には、反対派の抗議集会のみ開かれていましたが、それを上回る賛成派が歓迎行動を行い、「自衛隊の皆さま、震災復興活動ありがとう」などと書かれた横断幕等も見られるようになりました。(7/6『八重山日報』) こうした保守化傾向に対して、本土の左翼マスコミも、(従来、左翼が支配して来た沖縄では)「これまでは考えられなかった。明らかに一線を超えてしまっている」と表現しています。(『週刊金曜日』11/25号) このように、尖閣諸島中国漁船衝突事件を契機に、沖縄県民の保守回帰が進む中、去る10月26日、普天間飛行場の辺野古移設を容認する名護市議などが主催する北部振興推進・名護大会が開催されました。 そして、堰を切ったかのように、名護市民が本音を語り始めました。 「政治家は普天間移設と北部振興策はリンクしていないというが、真っ赤な嘘だ!」と名護漁協組合長が発言すると、客席から「そうだ、そうだ!」という声が上がりました。そして、雪崩を打って次々とリンク論が飛び出しました。 島袋前名護市長も「以前からリンクしていると感じていた。国や県が言わないので、その圧力で言い辛かった……基地問題、経済問題はリンクするということを確認しようではありませんか」と訴えられました。 昨年1月の名護市長選挙。幸福実現党は移設容認派の島袋前市長の応援のため、毎日街宣して参りました。 参議院選挙でも、沖縄県知事選挙でも名護の町に立ち、「名護の皆さん、辺野古移設をどうか受け入れてください」と訴え続けました。 昨年のあの日々のことを思い出しながら名護市民会館に駆けつけたとき、立錐の余地も無いほど住民がつめかけ、弁士の挨拶に食い入るように耳を傾けていました。 ある議員は勇気をもって「辺野古移設がベターである」と発言しました。 私は「これこそ誠の民意」という感を強くしました。沢山の方々から応援を頂いて県知事選を戦ったことは大きな効果があったと実感致しました。 沖縄、日本、アジアの平和そして沖縄の経済振興、更に基地負担の軽減という方程式の解はすなわち「辺野古移設」しかないことは明らかです。そうでなければ、「普天間の固定化」という最悪の事態が待っているのみです。 だからこそ、その勇気ある発言に敬意を表したい、そしてまた心から応援したいと思いました。 昨年の名護市長選挙においては、確かに県外・国外を強く掲げた稲嶺氏が勝利しました。しかし、移設容認を打ち出していた島袋氏とは僅差であったこともまた事実です。 アジア情勢を知るにつれ、普天間飛行場の辺野古移設を願う県民は確実に増えております。 幸福実現党の地道な啓蒙活動もその効果の一旦を担わせていただいている、と自負しております。 今、まさに多くの沖縄県民が、「過去」と「県内」だけを見る視点を乗り越え、現在進行形でアジアで起きていることを注視し始めたからだと考えております。(つづく) (文責・沖縄県本部副代表 金城タツロー) ※金城タツロー氏の次回原稿「普天間基地移設問題~解決への道(5)」は、12月5日(月)に掲載させて頂きます。 普天間基地移設問題~解決への道(3)普天間飛沖縄振興予算と普天間問題 2011.11.28 これまで、「普天間飛行場移設に向けての経緯」、「普天間移設が進まない理由」と普天間基地問題の歴史と経緯について述べて参りましたが、2006年5月1日時点で既に、米軍再編最終報告において2014年までに普天間基地の代替施設を建設し、辺野古へ移設するというロードマップが決まっていました。 この合意に至るまでに、日米両国、そして沖縄において、一体どれだけの人々が、どれほどの時間をかけて苦労をして来られたことでしょうか。 しかし、鳩山元首相の「政権交代」したいがための「最低でも県外」という一言で全てがひっくり返り、現在まで沖縄や日米関係の混乱が続いています。 今年10月26日、玄葉外相は衆院外務委員会で、鳩山元首相が政権交代前から県外発言をしていたことについて「誤りだった。鳩山政権ができたら恐らくこの問題で終わるんじゃないかと思った」と述べています。 しかし、野田首相は翌日の夜、鳩山元首相と東京都内で会食し、玄葉外相が「誤りだった」と答弁したことについて、「間違いだ。申し訳ない」と鳩山氏に謝罪しました。 鳩山氏が間違っていたことは誰の目からも明らかです。野田首相自身、辺野古への県内移設を進めようとしているのに、なぜ、鳩山氏に謝罪したのでしょうか? 野田首相はあの言葉に振り回された沖縄県民のことを本当に考えているのでしょうか? 野田首相は、薔薇色の未来を夢見させられた県民への心からの謝罪、そして「日米合意」に回帰した理由を、沖縄県民にしっかりと説明すべきです。 そして、総理大臣として「国民の生命・安全・財産を守る」ことを真摯に考えているならば、未だに「県外移設」を主張し続けている民主党沖縄県連を厳しく指導すべきです。 それができないならば、即刻、衆議院を解散し、一貫性のある政策に練り直し、国民の信を問い直すべきです。 政府は名護市を含めた「北部振興策」の補助金として2000年~2009年で約1000億円支出しています。 それは誰もが、普天間飛行場の移設を受け入れる用意のある地区への配慮だと思うでしょう。 しかし、沖縄では、責任ある立場の人は、誰も移設と補助金がリンクしているということを語ろうとしませんでした。 1972年に本土に復帰してより、10年単位で沖縄県の振興予算が措置されてきました。今年は四度目の振興計画の最終年です。 復帰までは米国の施政権下にありましたので、当然、本土との格差が生じました。その「本土との格差是正」の大義名分のもとに、補助金を措置してもらっていたのです。 しかし、近年はインフラ整備も進み、沖縄県は本土の平均的インフラに対してもまったく遜色なく、むしろ本土と逆転したかの感があります。 本年6月、知人の車で東日本大震災の被災地を見て周りましたが、津波被害の惨状と、復旧のために莫大な資金が必要であることを痛切に感じました。 沖縄に帰ってみて、県民の一人として、「今まで政府が沖縄のために投下して下さった血税を無駄にしてはならない」と強く思いました。 沖縄県民には「福を惜しむ気持ち」が必要です。 しかし、沖縄県の仲井真知事は政府に対し、今年度予算で約2300億円となっている沖縄関係振興費を3000億円に増額した上で、「全額一括交付金化」し、10年間予算確保できるよう要求しています。 仲井真氏は国民の血税を何だと思っているのでしょうか? 地域主権のさきがけとして、沖縄がまず自由に使える交付金を活用し、かつ経済自立を果たすという趣旨だそうですが、「普天間飛行場の辺野古移設とはリンクしていない」という全く意味不明なスタンスをとっています。 現に、今年1月、北沢前防衛省が沖縄入りして「県民が目を見張るような振興策を提示したい」と知事に伝えた際には、基地と振興策のリンク論ととらえ、新聞が騒ぎ立てました。 しかし、沖縄のメディアが伝えていることがまったくの出鱈目であることくらい、小学生でも知っています。(つづく) (文責・沖縄県本部副代表 金城タツロー) TPPを巡り、せめぎ合う米中――国際戦略としてのTPP 2011.11.27 TPPを巡るグローバルな見取図として、11/27の産経新聞3面の記事には「TPP、ASEAN…地域経済圏作り加速 WTO停滞 米見切り」と題し、以下のように記されています。 「WTOに代わって存在感を高めているのが、TPP、ASEANなど特定地域内での貿易圏構想だ。背景にあるのは米国と中国の覇権争い。巨大な市場をもつ中国やインドがドーハ・ラウンドでの門戸開放に消極的で議論が停滞する一方で、中国はアジア地域で自由貿易圏構築に乗り出した。 これに業を煮やし、リーマンショック後の経済低迷から輸出拡大で抜け出したい米国がドーハ・ラウンドに見切りを付け、TPP推進にかじを切った。」 WTO(世界貿易機関)は153カ国・地域による多角的自由貿易体制を目指し、参加各国が自由にモノ・サービスなどの貿易するためのルールを定め、関税や貿易障壁(非関税障壁)を削減・撤廃する機関です。 しかし、今年が10年目となるWTOの多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)はアメリカと中国、ブラジル、インド等の新興国との対立などで遅々として進まず、決着の先送りを重ねる失態が続いています。 そこで、世界各国でWTOの例外として認められている自由貿易協定(FTA)や、物流のみならず、資本やサービスなどを含む自由化を目指す経済連携協定(EPA)が結ばれる潮流が強まっています。 WTOでの全体的なルール作りが歩みを止める中、各経済陣営が仲間作り初め、囲い込みを始めています。TPPはまさに多国間版の経済連携協定(EPA)だと言えます。 アメリカはTPPを核としてアジア太平洋の地域経済統合を目指す一方、中国はASEAN+3(EATFA)やASEAN+6(CEPEA)の枠組みを核として、中国主導のアジア自由貿易圏の構築に乗り出しており、アジアを舞台とした「米国と中国の覇権争い」が始まっています。 中国は米国が主導するTPP構想に対抗して、米国抜きのアジア自由貿易経済圏を目指しており、まさに鳩山元首相が提唱していた米国抜きの「東アジア共同体」構想を具体化せんとしています。 一方、米国がTPPを進める背景として、外務省幹部は「中国主導の貿易圏や東アジア共同体構築に歯止めをかけ、ASEANを含むTPPをFTAAPの核にする狙いがある」と語っており、中国のアジア太平洋地域への経済進出や影響力行使に対する牽制であることは明白です。(『日経ビジネス』11/7号) 実際、米国通商代表部のマランティス次席代表は「中国はアジア太平洋地域で極めて活発な経済活動を展開しており、それが我々がこの地域への関与を増やさなければならない理由だ」として、TPP推進の背景に中国の存在があることを明言しています。(11/13毎日) アジアを舞台に、米中の自由貿易圏の主導権争いが活発化する中、日本が「どちらにつくのか」によって趨勢が決まります。すなわち、アジア太平洋の「第三の大国」である日本がキャスティング・ボードを握っている状況にあります。 世界も日本の動向を注視しています。実際、日本のTPP参加表明に合わせて、カナダとメキシコも参加を表明しました。北米自由貿易協定(NAFTA)を構成する両国が参加表明したことで、TPPは一気に拡大する可能性があります。「TPPは実質日米FTA」といった批判も当てはまらなくなりつつあります。 昨年、横浜で開催されたAPEC首脳会議において、「FTAAP」(アジア太平洋自由貿易圏、日米中印豪を含むAPEC全域における包括的な自由貿易構想)への道筋としてASEAN+3、ASEAN+6、TPPといった地域的取り組みを発展させていく3つの案が提示されました。 中国が加わる最初の2つは未だ研究段階ですが、TPPは既に具体的な交渉が始まっており、日本としては、FTAAP、そして、その先にある世界自由貿易圏構想に向けての道筋として、TPPを経由することが最有力候補であると考えます。 普天間基地問題によって日米同盟の亀裂が生じる中、TPP参加は日米同盟の再構築の出発点ともなるでしょう。日本は日米同盟に基づく自由貿易体制の最大の恩恵国であり、今更、覇権主義を拡張する中国の経済圏に入り、「東アジア共同体」を作るという選択肢はあり得ません。 TPPは単に経済上の問題にとどまらず、日本の安全保障にとっても大きな意義を有しています。こうした戦略的視点からTPPの意義と役割を捉え直していく必要があります。(文責・黒川白雲) 東証と大証の経営統合を日本経済再建に繋げよ 2011.11.26 東京証券取引所と大阪証券取引所が、2013年1月1日に「日本取引所グループ」として経営統合することを発表しました。 統合後の新会社に上場する企業の株式時価総額は3億6000ドル(役277兆円)と「ロンドン証券取引所」を抜き、「NYSEユーロネクスト」と「ナスダックOMX」に次ぐ世界第3位の規模となります(国際取引所連合10月末公表データ)。 現物株式の取引で国内シェア9割以上を占める東証と、デリバティブ(金融派生商品)など先物取引を強みとする大証が統合することで相互に補完することとなり、市場規模の拡大と金融商品の多様化を実現し、魅力ある市場となります。 また、取引を支える高度なコンピューターシステムへの投資や運営コストを年間70億円程度削減することができ、グローバル競争力の強化と利便性を提供することとなります。 日本においては、2007年には1日平均3兆円を超えていた売買代金の市場が、現在では1兆円規模と極端に縮小しており、地盤沈下に対する危機感をもって経営統合の判断が下されました。 しかし、市場が経営統合により財務が強化されるだけで、日本市場が活況を呈することはありません。実際、経営統合が発表された後、11月24日には、日経平均株価は年初以来の最安値8100円台を更新しています。 幸福実現党は日経平均株価株価2万円台を政策目標と掲げていますが、株式市場の活性化は、日本経済再建の原動力となります。そのためには、政府としても株式市場活性化に向けた支援政策が必要です。 市場統合を日本経済の再建につなげるためには、まずは、大胆な金融緩和によって、「貧血状態」とも言えるデフレから脱却し、マイルドなインフレ・トレンドに乗せなければ経済活動の体温は上がりません。 また、証券税制の軽減税率撤廃により、来年2012年1月より上場株式等の配当および譲渡益の課税が10%から20%に増税されます。「軽減税率撤廃」によって、多くの投資家の撤退と株式市場の低迷が懸念されています。 中国、韓国、香港、シンガポールなど、株の譲渡益課税は原則非課税であり、日本だけが世界の潮流に逆行しています。幸福実現党は株の配当課税、譲渡益課税の廃止を掲げていますが、今こそ政府は「株式減税」を断行すべきです。 同時に、法人税の減免、金融商品課税の減免も大胆に行い、企業活動の重荷を無くし、企業が積極的に設備投資・金融投資を行う意欲を高めていくべきです。 特に、法人税の足枷は国際競争力を削ぐだけでなく、日本企業の海外流出を促し産業の空洞化を拡大させ、外国企業の投資や誘致を阻害することにもなっています。実際、東証に上場する外国企業の数は、1991年に127社ありましたが、現在はわずか12社しかありません。 また、日本の「縦割り行政」に代表される「経済障壁」を排除していく規制緩和が必要です。株式や金利は金融庁、石油は経済産業省、農産物は農林水産省といった「縦割り行政」が元凶となって、商品相場に連動する金融商品の開発が遅れていることは問題です。 さらに「新産業の振興」の育成も必要です。カネ余りが続く中、資金は新たな「成長株」を求めています。政府は大胆な規制緩和と金融政策、インフラ整備投資によって、企業家精神を促す経済環境を形成し、「新産業の振興策」を進めていくべきです。 株式市場は日本経済の活力の源泉です。政府は、東証と大証の経営統合を梃子として、株式市場の活性化を強力に支援し、「日本経済再建」「新高度経済成長」を実現すべきです。(文責・小川俊介) 宮古海峡の中国海軍通過――政府はなぜ抗議しないのか! 2011.11.25 中国海軍の艦艇合わせて6隻が、22日から23日未明にかけて、沖縄本島と宮古島の間の公海上を通過しました。 中国海軍は空母の運用も見据えて、遠洋に進出する能力の強化を図っており、ここ数年、太平洋上で訓練を重ねています。 今年6月にも、艦艇11隻からなる艦隊が沖縄近海を通過して太平洋に進出し、洋上での燃料補給や実弾射撃などの訓練を行っており、今回もその一環と見られます。 今回の中国艦隊6隻の通過について、防衛省は「公海上のため国際法的に問題はない。海上自衛隊の哨戒機などによる警戒監視を続ける」としています。 しかし、今回の通過は、本当に「公海上のため国際法的に問題はない」のでしょうか? こうした事態は、本年6月8日にもありました。この際、幸福実現党ついき秀学党首は「【声明】中国海軍の沖縄近海通過を受けて」を発表し、「国海軍の航行に対し、日本政府は『公海上で国際法上問題はない』として抗議しない方針と報じられているが、そもそも同海域はわが国の『排他的経済水域内』であり、『公海』と言い切ることには間違いがある。 弱腰外交は中国の増長を招くのみであり、今回の事態に対して、何ら抗議しようとしない日本政府に対しては猛省を促すものである」と述べています。 日本では、領海の基線から12海里(約22キロメートル)までを「領海」、200海里(約370キロメートル)までを「排他的経済水域(EEZ)」(ただし、領海部分を除く)、200海里を超える海域を「公海」と定めています。 「公海」とは、どこの国の領海、排他的経済水域等にも含まれない海域のことを指しますが、今回、中国海軍の艦隊が通過した宮古海峡は明らかに日本の「排他的経済水域」であり、「公海」ではありません。 中国艦隊の同海峡通過に対して、政府はいつも「『公海上で国際法上問題はない』ので抗議しない」という姿勢を取っていますが、宮古海峡を「排他的経済水域」と認めないことは、明らかな主権放棄であり、マスコミをも含めた情報隠蔽、印象操作の典型です。 国民は「公海上の通過だから抗議のしようがないか」という印象を受けますし、中国は宮古海峡の通行について、日本政府のお墨付きを得て、「公海上の通過の何が悪い」と開き直っています。 もちろん、排他的経済水域であっても、国際法上、中国の艦隊の通過通航権は認められていますが、沿岸国として、事前通報なき軍艦の通行は、安全を脅かす行動であり、厳重に抗議すべきです。 中国の行動は観測気球的な要素もあり、相手が抗議しなければ、次はもっと踏み込んでくることは「法則」です。 一回一回の抗議を怠ることは、中国をそれだけつけあがらせ、大きなツケとなって戻って来ます。 ましてや、最近、頻発している中国の海洋調査船が事前通報と異なる海域で調査を実施している事件については、国連海洋法条約第40条「外国船舶(海洋の科学的調査又は水路測量を行う船舶を含む。)は、通過通航中、海峡沿岸国の事前の許可なしにいかなる調査活動又は測量活動も行うことができない」に明確に違反しています。 政府は、日本の国益、並びに安全保障を守るべく、中国に対して、毅然として厳重に抗議すべきであります。(文責・矢内筆勝) 日本独自の有人宇宙計画を!政治家は夢を語れ! 2011.11.24 日本独自の有人宇宙計画を!政治家は夢を語れ! 22日、国際宇宙ステーションからソユーズで、日本人としては最も長い167日の滞在を終えて、古川飛行士が帰還しました。日本人の宇宙滞在は計615日となり、ドイツを抜き、世界第3位の実績となりました。 しかし、日本では宇宙滞在実績や医学実験で得られた知見をどのような形で継承していくのかという大方針が定まっていません。 政府の宇宙開発戦略本部が、これまで将来の有人宇宙開発のあり方を巡る議論を棚上げしてきてからです。 有人宇宙活動は米露中など主要国でも「宇宙戦略の柱」です。米国は火星有人探査を新たな宇宙開発の柱とし、中国は宇宙開発に意欲を示し、独自の宇宙ステーションの開発を目指しています。 そろそろ、日本政府は、明確に「日本独自の有人宇宙活動を目指す」と宣言すべきです。 今回、古川飛行士が帰還した、ISSを往復する唯一の足を握るソユーズは輸送力に限界があるといわれます。 また、最近ロシアの宇宙開発にトラブルが相次いでいます。そして米スペースシャトルは今年7月に引退してしまいました。 日本は、米露に頼るのではなく、独自で目標を持つべき時が来ていると考えます。 日本はこれまでISS計画に年間400億を投じてきたものの、「これといった成果が見えない」との批判もあり、宇宙開発本部は運用の効率化と経費圧縮の方針を打ち出しました。 しかし、巨大プロジェクトについては、目先の効果だけで成果を判断すべきではありません。 今、閉塞感が覆う日本に必要なことは国民が共有できる“夢”を掲げることです。 幸福実現党は、航空・宇宙産業・防衛産業・ロボット産業の創出、海洋開発、新エネルギー開発、食料増産など、新たな基幹産業、未来産業となり得る分野に政府として10年以内に100兆円投資する計画を掲げています。 資金調達としては、官民共同のファンドを立ち上げ、政府や日銀が出資するとともに、民間からも出資を募ります。同時に国家未来事業債を発行し、国内外から資金を集めます。 「国家プロジェクト」として巨大プロジェクトに積極的な投資をし、技術が確立すれば、この技術を元に民間が商業化し、新産業として展開することも可能です。 日本は、しばらく夢を語れる政治家を見ていません。 野田首相は22日、行政刷新会議の「提言型事業仕分け」を視察し、「予算編成で反映していくことを各閣僚に指示したい」と述べましたが、細かい無駄遣いのチェックは会計検査院に任せ、もっと国民を奮い立たせ、日本の停滞感を払拭するような構想をぶち上げるべきです。 野田首相が見学に行ったのは「無駄をチェックして、削れるところを削ったから、国民の皆様も負担をお願いします」と増税とセットで考えたパフォーマンスに過ぎません。 1961年、人類初の人工衛星の打ち上げ、初の有人宇宙飛行と、ことごとくソ連に遅れをとっていた中、アメリカのケネディ大統領は”We choose to go to the moon in this decade !”(10年以内に人間を月面に到達させる) と語り、アメリカ国民を鼓舞しました。 ケネディ大統領が構想を発表した当時、NASAを含め、誰も月面着陸の見込みは無かったのですが、米国民が一体となり、1969年7月21日、ケネディ宇宙センターを飛び立ったアポロ11号は、見事、月面に着陸し、長い間、人類が夢見てきた月面着陸に成功しました! 日本の政治家も「2050年には誰もが月旅行に行ける。そして21世紀中には火星にも都市を建設する!」――このような夢あふれる国家目標を持ってフロンティアを拓いていきたいものです。 私達の孫やひ孫の代には、週末には月へ保養に行き、夏休みは火星探検をする。このくらいの「国家百年の計」をもてば、国家の活力が湧いて来ます。 今、政治が掲げる目標は「増税」などではなく、国家としての大きな未来ビジョン、構想であり、その構想に基づく国家一丸となった「新高度経済成長戦略」です。そうすれば、不況など飛んでいき、景気もぐんぐんよくなっていくでしょう。(文責・竜の口法子) TPPは本当にデフレを加速するのか 2011.11.23 最近なにかと話題の多いTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。 野田首相のTPP参加表明に際しても、与党内でも賛成派と反対派に二分されるなど、党内の連携が困難を極めました。一方、経団連などの財界は概ね賛成を、農協や日本医師会などは明確に反対を表明しています。 保守系団体はほとんどが反対を表明しており、現在でも各地でデモや集会、インターネット番組を通じてTPPの反対の論陣を張っています。 中には、TPPは「亡国最終兵器」だと主張されている方や、アメリカ陰謀論、農業や公的医療制度の崩壊を懸念する声も出ています。議論をすることは結構ですが、いささか感情論に走っていると見えなくもありません。 さて、TPPが懸念されている最大の問題は、「例外なき自由化」にあります。 TPPは、世界貿易機構(WTO)や自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)などの国際貿易の専門機関や貿易協定よりも強く自由化の促進を要求しています。 参加国内では、10年ほどの歳月をかけて関税を撤廃し、各国特有の商慣行や法律で貿易や投資の妨げとなる非関税障壁も見直すという意味では、「過激な自由化論」だという意見もあります。 よって、国内での職や市場シェアを外国勢に奪われることを懸念される方が声高に反対を表明しているのは一定の理解はできます。 さらに言えば、遺伝子組み換え食品や労働条件の悪化を懸念する声もあり、国民の生活を脅かす可能性があるとのことですが、いたずらに国民の不安を煽ることは賢明ではありません。 そのためには、参加国には約10年の時間があることや参加国全体で意見調整をして懸念を一つひとつつぶしていくことで対応するべきでしょう。 今やるべきは国民の不安を煽るのではなく、冷静な分析です。 このように、TPPの論点は多岐にわたっていますが、本日は貿易(自由化)がデフレを悪化させるのか否かについて絞って議論します。というのも、TPP反対派が盛んに主張しているのがこの論点だからです。 実は、貿易がデフレを悪化させるという論点は、最近も似た事例がありました。 現在、昇竜のごとく高成長を維持している中国からの輸入です。日本がデフレとなっているのは、中国からの安い商品が大量に入ってきているとする説です。 いわゆる「輸入デフレ説」です。貿易自由化とは異なりますが、参考までに取り上げてみましょう。 「輸入デフレ説」に従えば、全世界がデフレとなっているはずですが、現実はそうなっていません。 名目成長率を実質成長率で割ったGDPデフレター(インフレの程度を表す物価指数とも言える。これがプラスならばインフレ、マイナスならばデフレ)を見れば、日本は90年の「バブルつぶし」からずっと低下しています。 一方、アメリカ、イギリス、ドイツの先進国はずっと上昇トレンドを描いています。つまり、日本だけがデフレに陥っているのです。 デフレの原因は通貨供給量を絞っているからであって、輸入が原因ではないのです(IMFのデータ参照。1980年から2010年の期間の計測)。 実際、貿易自由化ならびに自由貿易を促進することによって国内価格よりも安い輸入財が入ってくることは事実です。 そうすれば、国内製品は輸入財と比較して割高となりますので、価格の引き下げをしなければなりません。場合によっては市場から撤退することもあります。いわゆる、貿易のデメリットです。 同時に、輸出価格と輸入価格の比率を示す交易条件も変化します。輸入財価格の低下は、交易条件を改善させます。 言い換えれば、より多くの製品を海外から購入できるとことを意味していますので、消費者にもメリットをもたらします。 加えて、消費者は安い輸入財が入ってきても、浮いたお金で他の製品を購入できるので、総需要は大きく変わることはありません。つまり、変化するのは相対価格であって一般物価ではありません。 最後に、景気との関連について述べておきましょう。 まず、輸入は国内の所得水準と密接に関連しています。現在の日本経済はデフレ不況です。国産品にせよ、輸入品にせよ、所得が低下している状況では消費は伸びません。 ましてや、日本の輸入依存度(輸入額対GDP比)を見ると、10.8%にしか過ぎません(総務省統計局2009年のデータ参照)。 つまり、日本人は、所得の中で輸入財に使う割合は、わずか1割程度だということです。貿易自由化によって多少増えるとしても、「デフレが深刻化する」というレベルでないことは明らかです。 一方、輸出にしても、現在のところ元気な国はありませんので、日本からの輸出が大きく伸びる可能性は低いと言えましょう。 貿易と景気は関連していますが、わが国では生活に影響を及ぼすほど大きなものではないのです。やはり、一般物価水準に影響を与えるのは金融政策です。 TPP反対派も認めているように、まずはデフレを脱却しなければなりません。デフレ対策は金融政策で対応するべきです。また、デフレ対策は円高対策にもなります。 国内の主要企業が輸出企業であることを考慮すれば、行き過ぎた円高ではTPPによる輸出増加というメリットを十分に活かすことはできません。 また、円高で交易条件が良くなっていても、国内が不況であれば、輸入すらも伸びません。その意味で、財政出動も行って景気回復を進めることも大事になります。 現政府は、復興増税や消費税増税を模索していますが、デフレ不況下の増税は景気悪化を招きます。政府が本気でTPPの効果を最大化したいならば、増税は引っ込め、金融緩和と財政出動を発動するべきです。 このように、TPP参加を表明したことで、かえってマクロ経済政策の重要性が高まったと言えます。だからこそ、政府は増税を急いではいけないのです。(文責・中野雄太) 普天間基地移設問題~解決への道(2)普天間移設が進まない理由 2011.11.22 昨日は普天間飛行場移設に向けての経緯について述べましたが、本日は、「なぜ、普天間飛行場移設が一歩も進まなかったのか」について考えてみたいと思います。 まず、第一は「民意を無視した日米合意」というマスコミによる批判です。 普天間飛行場の移設案の日米合意のプロセスにおいて「民意を無視した頭越しの合意」などという批判がマスコミ報道で繰り返されます。 「何をもって民意とするか」というと、マスコミが最大の拠り所とするのは市長選、知事選の選挙公約です。 私も選挙に出馬した際に、地元新聞社から普天間移設問題に関する選挙公約を問われましたが、「県内移設」と応えるだけでは済まず、必ず「現行案(V字型)」か、「浅瀬案」か、「沖合い案」かなどと聞いてきます。 「現実に脅威と化している対中国抑止を実効ならしめるために早期に移設を実現できればよい」というのが私の考えであるのですが、マスコミは、選挙で公約した時と工法が変わっただけで「民意に反している」と猛批判します。 住宅の上空飛行を避け、環境を破壊しないようにと配慮するため、時々刻々に最善の移設方法が検討されるのですから、マスコミに固められてしまった杓子定規な選挙公約通りにはいかなくなるのは当然です。 第二は、反対運動に対する政府の及び腰です。 1996年に日米両政府が普天間基地返還をうたったSACO合意後に、当時の大田知事は「沖縄の求めてきたのは単純返還だ。新たな代替基地の建設が付いてくるのは承諾できない」と合意以前に戻すような発言をし、地元の反対運動がそれを後押ししました。 その後、保守の稲嶺知事が当選しましたが、積極的に取り組むことがなく四年の任期が過ぎました。 計画が頓挫する危機感を感じた政府は稲嶺知事の再選後、2004年に辺野古沖のボーリング地質調査を始めますが、反対住民の座り込みなどで延期される中、同年8月、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落しました。 更に反対派が勢い付いて、9月に作業を再開するも、反対派の阻止に合い、一本のボーリングも設置されませんでした。 これは工事にとりかかる前提の調査ですら、反対派の妨害で実行不可能な状況になることを示しています。わずか数名の反対でも安保政策を妨害できるということなのです。 第三は、国民を騙してでも集票を優先しようとする政治家の言動です。 多くの皆様は鳩山元首相の2009年発言「最低でも県外」発言を覚えておられることでしょう。この言葉が沖縄を大混乱させることになります。 私は2009年の衆議院選挙に名護市を含む沖縄第3選挙区で出馬し、誰もが真っ先に聞いてくる「普天間問題」について「一切ぶれずに現行案。辺野古移設」という返答一本、街頭でも有権者に訴え続けて参りました。 その熱い夏。鳩山氏は私と同じ選挙区の民主党候補者の応援演説で駆けつけた際、「民主党が政権を担ったならば最低でも県外」と公言したのです。 自民党への不信と民主党のバラマキ政策への期待。その中で「本気でアメリカ政府と戦ってくれる政治家の出現」と歓喜する県民はたくさんおられました。 私が有権者にご意見を聞いて回っていたときは、民主党への期待は最高潮でした。長年自民党支持者だったある方は、「今まで自民党を応援してきたがもうやめた。鳩山さんはかならず県外を実行してくれるだろう。それが実現したならば鳩山さんはノーベル平和賞をとる」と期待値がものすごく高いのです。 私は、「お言葉ですが、どの政党が政権を握ろうとも、必ず日米合意に戻らざるを得なくなると思います。でなければ、日米安保条約そのものの危機になるでしょう」とお応えしましたが、逆に説教をされてしまいました。(つづく) (文責・沖縄県本部副代表 金城タツロー) ※金城タツロー氏の次回原稿「普天間基地移設問題~解決への道(3)」は、11月28日(月)に掲載させて頂きます。 普天間基地移設問題~解決への道(1)普天間飛行場移設に向けての経緯 2011.11.21 野田首相は12日、オバマ米大統領と会談し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた環境影響評価書を年内に提出することを報告しました。 着々と移設に向けて手を打とうとする政府に対して、14日、政府が環境影響評価書を断念するよう求める意見書を沖縄県議会が全会一致で可決するなど、先行きを危ぶむ声が上がっています。 しかし、10月26日に、名護市内で住民2,200人余りが参加した「北部振興推進・名護大会」では、「日米合意を踏まえた普天間飛行場移設の早期実現」など7項目が決議されました。 移設賛成派住民がこうした大会を開催して声を上げるのは初めてのことで、普天間基地移設に向けて、沖縄県民の間にも「着実な変化」が起こりつつあります。(産経10/27「普天間移設 早期実現へ決議 声を上げた賛成派」) ⇒http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111027/plc11102722520010-n1.htm そこで、普天間飛行場移設問題の経緯と沖縄県民の意識の変化、そして解決への道について、5回に分けてレポート致します。 (1)普天間飛行場移設に向けての経緯 普天間飛行場の移設問題が本格的に浮上したのは、今から16年前のことです。1995年に米兵による少女暴行事件が起きました。 その上、起訴に至らなければ関与が明らかでも米兵の身柄を日本側に引き渡すことができないという日米地位協定の問題もあり、「米兵の暴挙はこれ以上許さない」と県民の怒りに火がついて大規模な県民総決起大会が催されました。 当時、近所の女子高生が「もう我慢がならない。今こそアメリカを追い出すんだ」といきりたっていたのを覚えています。 大会を契機として、米軍基地の整理・縮小と日米地位協定の改定を強く求める訴えが強くなり、当時の大田知事も政府に対しその実行を強く迫りました。 その後、1996年に日本国政府および米国政府によって沖縄に関する日米行動委員会(SACO)が設置され、その最終報告を受けて沖縄県民に配慮した日米合意がもたらされました。 その中に盛り込まれた重要な一文が「今後5ないし7年以内に、十分な代替施設が完成し運用可能になった後、普天間飛行場を返還する」というものでした。更に嘉手納基地以南の大半の基地を返還するということも確認されました。 当時、普天間基地の返還業務を担当した政治家や官僚の方々は「先の戦争から復帰後も含めて、沖縄に多大な迷惑をかけてきた。だから、沖縄の労苦に報いなければいけない、負担軽減は絶対しないといけない」という気持ちをもって誠実に取り組んでおられたことと思います。 翌97年12月に基地受け入れの是非を問う名護市民投票が行われました。投票結果は僅差の52.8%が受け入れ反対。 しかし、比嘉名護市長が海上基地受け入れと辞任を表明、首相官邸ではその報告を受けた橋本首相が「ありがとう」と男泣きしたそうです。 その後の市長選挙で移設容認派の岸本氏が初当選を果たしましたが、病気のため、任期を全うすることができませんでした。 しかし、岸本市長も病気が重くなる中「次の市長選までに、人生最期の機会として普天間問題の後始末をしなければならない」という思いで取り組んでおられたそうです。 岸本氏は翌98年病気のため死去されますが、次期市長選で島袋氏が当選。後継の島袋市長は岸本氏の死去11日後に、防衛庁と滑走路二本のV字形案で基本合意しています。つまり、名護市は3期続けて移設容認派市長を誕生させたのです。 しかし、結果的に15年間、普天間飛行場は1センチも動くことはありませんでした。(つづく) (文責・沖縄県本部副代表 金城タツロー) すべてを表示する 1 2 3 Next 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