Home/ 釈 量子 釈 量子 執筆者:釈 量子 幸福実現党党首 サバクトビバッタの大襲来!――「世界の胃袋・中国」に食糧危機はくるのか?【後編】 2020.07.05 https://youtu.be/5mq_rM6ei98 (6月19日収録) 幸福実現党党首 釈量子 ◆中国で食糧危機が起こるかもしれない4つの要因 前編では、中国の万全にみえる食糧体制を紹介しましたが、それを根底から揺るがしかねない要因が、今回のサバクトビバッタです。それ以外にもいくつか出てきました。 (1)国内穀倉地(黒龍江省)でのイナゴの大量発生? 6月に入り、中国東北部の黒龍江省、吉林省、また南部の湖南省などでイナゴの大量発生が確認されています。 これはサバクトビバッタとは異なる種類ですが、中国一の穀倉地域と言われる黒龍江省での蝗害発生は中国にとってただ事ではありません。 (2)中国の食糧庫・アフリカのバッタ被害 習近平体制にとって「一帯一路」構想で一気に緊密化してきたアフリカ諸国におけるサバクトビバッタの被害は甚大です。 中国はアフリカを戦略的に「中国の食糧基地」と捉え、農業関連の投資を行ってきました。サバクトビバッタはこうした地域を食い荒らしています。 (3)コロナ責任論による中国への禁輸措置 更に、世界中で巻き起こる中国コロナ責任論が、中国の食料サプライチェーンを破壊する可能性も否めません。 実際に、オーストラリアが新型コロナの発生源について、独立した調査を実施したことに中国が強く反発しました。 その報復としてオーストラリアの大手4社から牛肉の輸入を停止するという強硬措置に出ました。 こうした中国コロナ責任論が更に飛び火し、アメリカや南米諸国など、輸出国から禁輸制裁を受ける可能性もあります。 ◆日本はどうすべきか? 世界を襲う食糧危機問題は、日本にとって対岸の火事では絶対に済まされません。 なぜなら、日本の食料自給率は37%、また飼料自給率は25%という低水準で、食料の自給率を少なくとも7割ぐらいを目指すべきではないかと思います。 まず、調達先を多角化し、あらゆる状況に応じてリスク分散を図ることができる供給体制を構築することが肝要です。 その有力候補がロシアです。小麦においては世界最大の輸出国です。 ただ、2018年時点で日本はわずか1.8万トンしか輸入出来ておらず、現状は米国、カナダ、オーストラリアの3か国にほとんど依存している状況です。 今後、中国包囲網を強化する意味でも、ロシアとのさらなる関係強化に力を入れてもいいと思います。 また、大豆やトウモロコシについてはウクライナという販路を開拓することも大事です。 国民の生命・安全を守るためにも、国内における食糧の自給体制をエネルギー自給率と合わせて一刻も早く整えることこそ、日本が採るべき「国家戦略」です。 サバクトビバッタの大襲来!――「世界の胃袋・中国」に食糧危機はくるのか?【前編】 2020.07.04 https://youtu.be/5mq_rM6ei98 (6月19日収録) 幸福実現党党首 釈量子 ◆サバクトビバッタによる食糧危機は? 本年に入ってから東アフリカ・アラビア半島周辺で発生したサバクトビバッタは、6月にインドのパキスタンに国境を接したラジャスタン州やインド北部の街アラハバードまで襲来しています。 (ラジャスタン州に襲来するサバクトビバッタの様子は、上記収録映像の0:20〜0:44で見ることができます) アラハバードからネパールまではわずか200kmで、今まで移動してきた距離を考えれば、中国に到達するのも時間の問題です。 サバクトビバッタの大量発生について、国連食糧農業機関(FAO)は、「東アフリカで2,500万人以上、イエメンでは1,700万人が食糧不足に陥ると予測(6/19産経ネット版)」しています。 (※7月3日現在、南米でもサバクトビバッタが大量発生し、世界各地で猛威を振るっています。) 「世界的な食糧危機が起こるのか?」という点については否定的な見方があるのは確かです。 というのも世界の穀物生産は8年連続の豊作となっており、穀物の主要生産地である南北アメリカ、ロシア・ウクライナ等でバッタの被害は全く出ていないからです。 ◆極めて不安定な「穀物」の特性 しかしながら「食糧(穀物)」を国際市場における「商品」として捉えると、いかに不安定な資源であるかがわかります。 大豆・小麦・トウモロコシ等の穀物は「基礎食料」であり、国内での消費・備蓄が最優先されるという特性があります。 その上で余った穀物が輸出されるため、どうしても数量は限られてしまうのです。 こうした穀物国際市場の特徴は「薄いマーケット(thin market)」と表現され、国際市場に出る穀物は、生産量のたった「約7分の1」にしか過ぎません。 また、投機マネーの対象となり、穀物の主要輸出国と輸入国が共にかなり限定されるので、今回のコロナ禍での禁輸措置などの要因が大きく作用し、価格が急に「乱高下する」という特性があります。 ◆穀物の不作から起こった「アラブの春」 近年でも「穀物」の不安定性が、世界的な大変動の要因の一つとなりました。 それが2011年に北アフリカから起こった民主化運動「アラブの春」です。 2010年に発生したエルニーニョの影響で干ばつが発生し、小麦輸出国世界1位のロシア、世界5位のウクライナが「輸出しない」と急遽禁輸を発表したのです。 この2か国のみで世界に出回る約3割の小麦を輸出していた上に、世界4位のカナダも豪雨で輸出が減少したため、世界2位の小麦輸出国であるアメリカに買いが殺到しました。 小麦を十分に確保できなかった北アフリカ・中東諸国で主食となるパンの価格が急騰し、食べられない庶民の不満が爆発したのが「アラブの春」の直接の引き金となったのではないかという説があります。 その結果、革命によってチュニジアやエジプト、リビア、イエメンといった国々の政権が転覆したのです。 ◆食糧危機で革命が起きてきた中国 中国史を見ても、多くの王朝が食糧不足による飢饉がおこり、民衆の反乱によって滅亡に至りました。 チンギス・ハーンが興した元帝国も、その後に続いた明も食糧危機が革命の直接的な原因の一つとなりました。 現代の中国は世界最大の人口14億人を食べさせなければなりません。 その「世界の胃袋」と言える中国では、2019年時点で6億トン強の食糧生産を誇り、ここ21世紀に入って20年間で約2億トンもの増産に成功しています。 トウモロコシ、小麦といった2品目においてはアメリカに次ぐ世界第2位の生産量を誇ります。 ◆中国の穀物消費量と増え続ける国民食「豚肉」 しかしながら、ここ10年、中国は輸入に頼らざるを得ない状況になっています。その要因は中国の国民食「豚肉」の存在です。 トウモロコシ、小麦、大豆といった穀物は、豚の餌として必要不可欠です。 特に、自給体制が整わない大豆については、米国、ブラジル、アルゼンチンといった輸出国からおよそ1億トン弱も輸入している状況です。 実に中国は世界の穀物在庫の過半を占めており、世界の小麦の51.6%、トウモロコシの67%、コメの64.7%を中国が「備蓄」しています。 国連食糧農業機関(FAO)が適正と考える在庫率が約2か月分の消費量にあたる17~18%と考えるとその3倍以上で、驚くべき備蓄率を誇っています。 以上、中国の穀物事情を見てきましたが、後編では、中国で起こるかもしれない食糧危機と日本への影響とその対策を述べて参ります。 (つづく) 産業界の「米中戦争」――カギを握るのは日本と韓国【後編】 2020.07.03 https://youtu.be/XXe6Moz8R9c 幸福実現党党首 釈量子 ◆文在寅大統領の手中にあるサムスンの難しい状況 残りは韓国、サムスンの動向です。 中国も「米国によるサムスン取り込み」の動きに気付いており、自国内での半導体生産体制をしっかりと守ろうと試みています。 年内には、習近平国家主席が韓国訪問を進めるべく、文在寅大統領との電話会談があったという報道もありましたが、中韓のつながりというのは非常に注目されます。 現段階では、サムスンの技術がなければ、最先端の製品を一つも作れず、ファーウェイの天下は一夜にして終焉してしまう状況です。 一般的に、サムスンは親米派と考えられていますが、サムスングループの事実上トップとされるサムスン電子の副会長、李在鎔(イ・ジェヨン)氏が不正疑惑で逮捕されています。 検察に捜査を受けている状況のため、完全に親中・文在寅政権のコントロール下にあります。 そのため、米中のどちらの味方をするのか、企業としては決められない状態にあると言えるでしょう。 ◆「米中技術戦争」のカギを握る国・日本 こうした「米中技術戦争」の動向を左右しうる国が日本です。 まず、韓国との関係です。 サムスンが最新鋭の半導体を製造する際には、日本の超高純度のフッ化水素が必要不可欠で、これなしでは製造が止まってしまいます。 ところが昨年7月、軍事転用を防ぐ取り組みが甘いとして、日本は韓国への輸出管理を厳格化しました。 一部輸出も再開していますが、未だ全面的な解禁には至っておりません。 韓国は自国でもフッ化水素を製造できると主張していますが、日本ほどの高純度の製品は難しいようです。 そのため、韓国への輸出管理の強化は、「日米連携での韓国への圧力ではないか」という見方が有力です。 ◆決定的な弱点を抱える中国の半導体業界 更に、中国との関係です。 ファーウェイのスマホに、日本企業の部品が多用されていることは知られていますが、中国の半導体専門メディアの報道によると、タブレットを分解したところ部品の8割が日本製だとしています。 ファーウェイ梁華会長へのインタビュー内容によれば、「2019年の日本企業からの調達額が過去最高の1兆1000億円に上る」「日本のサプライヤーとパートナーに感謝を申し上げたい」と述べています。(Business Insider Japan) ファーウェイに半導体や電子部材を供給している日本企業は、公表されているのは11社ですが、実際は20社に及ぶとも言われています。 また前述の通り、中国は半導体の自前化を進めていますが、中国も韓国と同様に欠点があります。 「中国半導体のゴッドファーザー」とも呼ばれる、新興半導体メーカー芯恩会長の張汝京(リチャード・チャン)氏は、「中国の半導体産業にはいくつか欠点があり、特に材料と設備がサプライチェーンの中でも最も弱い」と述べています。 そして「半導体材料の国産化こそが、半導体全体の国産化の中でも、非常に喫緊かつ困難な仕事である」と中国が抱える決定的な弱点を明らかにしています。 ◆既に日米で持ち上がる6G 構想 つまり、現時点においてはサムスンもファーウェイも、日本の技術がなくては成り立たないということです。 しかし、米国の対中規制が強化され、前述の通り25%ルールの基準が10%に変われば、日本からの中国への輸出は困難になる可能性があります。 今後は、中国との取引による経済的なメリットは失われるばかりか、日本も米国から制裁を受けかねないとも言えます。 現在、5Gを一気に飛び越えて、6Gを構築しようという構想が日米の間で持ち上がっています。 実際、昨年10月にはソニー、インテル、が次々世代6Gの通信規格で連携するという日経新聞の報道がありました。 今のところ、2031年に実用化が見込まれていますが、もし6Gの目処が立てば、下位規格の中国を外すことが可能になり、日本がアドバンテージを握る「虎の子の技術」があるというのは非常に朗報です。 最後に、日本は韓国や中国との取引を続けて目先の利益を選ぶのか、それともアメリカとの連携を強化し、中長期の繁栄を選ぶのか、答えは明白です。 そのためにも政治サイドは、サプライチェーンの国内回帰の後押しをして、法人税の減税、未来産業への思い切った投資などを進めるべきです。 幸福実現党としては、日本の高度な技術を、人権抑圧ではなく、世界の自由と繁栄を守るために使われるような環境を整えていきたいところです。 産業界の「米中戦争」――カギを握るのは日本と韓国【前編】 2020.07.02 https://youtu.be/XXe6Moz8R9c 幸福実現党党首 釈量子 ◆トランプ大統領のG11構想の思惑とは…? 今回は「産業界における米中戦争の勝敗のカギを握るのは日本と韓国」というテーマです。 5月末、トランプ大統領から突如G11構想について、以下のような発言が飛び出しました。 「現行のG7の枠組みは世界の状況を適切に反映しておらず、極めて時代遅れだ。ロシア、オーストラリア、インド、韓国を招待して、G10またはG11にしたい」というものです。 この発言に大喜びしたのが、文在寅大統領の側近でもある李秀赫(イ・スヒョク)駐米韓国大使です。 李大使は「新たな世界秩序を形成・管理していくにあたり、参加できる招待状を得たのと同じ」。また、「韓国は(米中双方から)選択を強いられる国ではなく、選択できる国だという自負心を持っている」と、かなり不用意な発言をしてしまいました。 これに対しては、韓国国内からも「米中の確執が広がる敏感な時期に、外交的に不適切だ」という批判が出たほどです。 ◆韓国に踏み絵を迫る米国 もちろん、アメリカがG11構想を持ち出したのは韓国のご機嫌を取るためではありません。 狙いは「中国と韓国の引き離し」です。 G11構想に先立って、米国は、日韓を含む有志国とサプライチェーンの再編を推進する「経済繁栄ネットワーク(EPN=Economic Prosperity Network)」構想を表明しています。 EPN構想とは、次世代通信システム「5G」を含む、幅広い分野において、自由主義陣営でサプライチェーンを構築しようとするもので、要するに「反中経済同盟」です。 李駐米大使の発言の後、米国は韓国外交部と電話会談を行い、「経済繁栄ネットワーク」について説明して、参加を公式に要求したと言われています。 米国が韓国に対して「米国と中国、どちらを選ぶのですか?」と踏み絵を迫ったと見ることもできます。 ◆米国が中国と韓国を引き離したい真相 米国が韓国を引き込もうとする最大の要因は、韓国最大の企業サムスンの首根っこを押さえたいからでしょう。 米国は以前から、5Gから中国企業のファーウェイを外すよう、他国に迫ってきました。 なぜなら、このファーウェイが5Gを構築する上で外せないのがサムスンの技術だからです。 「7nm(ナノ)プロセス技術」という超細密な技術を持っているのは、現在のところ、台湾企業の「TSMC」と韓国の「サムスン」だけです。 この技術レベルの半導体がなければ、次世代通信規格の5GやAIは製造できません。 スマホが5G規格になれば、「超高速」「大容量」「同時多接続」となり、今度産業分野でも、IoTや自動運転技術などに拡大し、更に、安全保障分野、軍事での活用も見込まれています。 実際に、TSMCの技術を利用して製造した米国半導体大手のザイリンクスの製品は、米軍の最新鋭ステルス戦闘機「F35」などにも使われています。 要するに、TSMCとサムスンを中国に取られてしまうと、技術面で米国は敗北してしまうわけです。 ◆ファーウェイから距離を取る台湾企業のTSMC 昨年5月になされた米国での輸出規制によって、米国製品が25%以上含まれている製品は、自由に輸出できないことになっていました。 しかし、今後は規制が更に厳格化し、米国製品が10%以上含まれるものから禁輸対象となる見込みです。 この方針を受け、TSMCは、ファーウェイからの新規受注を停止しました。 その理由は、TSMCが米企業の半導体製造装置を使用しているためです。 更に、米国はTSMCに対して、軍事用半導体を米国内で製造するように要請し、より微細な5㎚プロセスの工場をアリゾナ州に建設するプロジェクトが進んでいます。 後編では、サムスンの動向から見て参ります。 (つづく) マイナンバーと口座紐付けは、コロナ自粛に伴う増税準備!【後編】 2020.07.01 https://youtu.be/B8iTRnNncKQ 幸福実現党党首 釈量子 ◆「財政出動から大増税」はいつか来た道 前編では、マイナンバーと口座の紐付けの危険性を述べました。後編では、話を増税に戻します。 「コロナ後の増税」をさらに予感させるのが、政府の専門家会議に入った「経済専門家」です。その顔触れは、「増税による財政均衡」を主張する人たちです。 このうち、小林慶一郎・東京財団政策研究所研究主幹と、大竹文雄大阪大学大学院教授は、東日本大震災のあと、「復興増税」を提案した人物でした。 小林慶一郎氏は、「災害を受けて国民の結束が高まり、復興支援への合意が得られやすい現在は、政治的には増税の好機である」と訴えています。 また、大竹文雄教授は、さらに「基礎年金を消費税で全額賄う」ことを提唱しています。基礎年金を全額消費税で賄うとすると、それだけで消費税は18%に跳ね上がるそうです。 「復興増税」は、今もなお私たちの収入から引かれ続けていますが、「コロナからの復興」にも増税ということになれば、ダブルで「復興税」が取られる可能性もあるわけです。 ◆増税の「負のスパイラル」 他にも、「減税措置や優遇税制をやめ、事実上の税金である社会保険料を上げる」という形での増税も考えられます。 5月29日に成立した「年金改革法」も、従業員500人以下の中小企業への事実上の「増税」と言えるわけで、「コロナで免除してもらいたい」という声は多数あります。 さらに驚くのは、「コロナ防止」を名目とした増税案がもう出てきていることです。 それが「交通税」です。東京大学准教授の植田健一氏は日経新聞電子版で、「高速道路や鉄道、航空機といった交通手段に関し、例えば2020年度中だけでも、一定程度の税を課すのはどうだろう」と提言しています。 「首都圏などの地方自治体は期間限定で、飲食店などでの消費へ新税を導入する余地もあろう」と、塗炭の苦しみから必死に立ち上がろうとしている民間に対して、あまりの仕打ちです。 今回のコロナ感染者の多くは「医療施設」で確認され、市中感染とは関係がありません。 人々の恐怖心をあおり、人為的に、人々の行動を抑制しれば、経済的に苦しむ人が増え、給付金などの政府のサポートを求める人が増え、将来の増税につながる。こうした「負のスパイラル」に陥りつつあります。 ◆減税で経済を活性化 政府は「取れるところから取る」と言う発想で血眼ですが、むしろ、今行うべきは減税です。 ドイツは、期間限定で日本の消費税にあたる「付加価値税」を3%減税しました。食品にかかる軽減税率も2%減税です。 アメリカのトランプ大統領も、コロナからの復興を目指して、給与税の年内免除と、7.6%の減税を主張しています。 日本も、消費税を5%に恒久的に減税すると共に、年内だけでも法人税、固定資産税を減免すれば、景気刺激策としても、雇用維持の意味でも、効果が高いと言えます。 ◆コロナから復活する本道とは すでに、三次補正を求める声も上がっています。事業を継続させ、雇用を守ろうと努力する人たちに対して、スピーディな支援は不可欠ですが、永遠にこれは続きません。 そもそも現金給付は、一生懸命額に汗して国民が働いた血税です。営業の自由を奪い、仕事を奪い、人為的に経済を停滞させ、「給付金を大盤振る舞いして増税する悪循環」をやめようではありませんか。 「給付がもらえるなら働かなくていいじゃないか」という声もありますが、言葉を換えれば、政府の「補助金」に頼ることは、政府の奴隷になるということです。 補助金行政の癒着の温床にもなっています。「補助金をもらう代わりに、業界ごとに票を取りまとめる」という政治が続いてきたわけです。 そういう「補助金」を出すよりも「減税」です。減税は年齢や業界に関わらず、隅々まで行き渡る公平で平等な経済政策です。 日本の方向性としては、「自由の大国として繁栄する国づくり」を目指すべきです。 コロナ危機で、どさくさまぎれに人間の生き甲斐でもある仕事を奪って、「国がお金を払えばいいじゃないか」とか、変な方向に政治が流れないように注意すべきだと思います。 危機の時代だからこそ、自由主義市場を維持して、政府の介入に目を光らせる必要があることを今強く感じています。 マイナンバーと口座紐付けは、コロナ自粛に伴う増税準備!【前編】 2020.06.30 https://youtu.be/B8iTRnNncKQ 幸福実現党党首 釈量子 ◆コロナ給付金の裏で進む増税準備 今回のテーマは「コロナ自粛に伴う大盤振る舞いの裏で、ひそかに進む増税の準備」についてです。 4月に「緊急事態宣言」が出され、外出や営業の自粛を余儀なくされたことで、多くの企業や個人が、経済的苦境に追い込まれています。 政府の1人10万円の現金給付をはじめとする経済政策は、一次、二次補正あわせて財政出動の規模は56兆円を超えています。 しかし、その裏で静かに「増税」が検討されています。その動きの一つが、「マイナンバーと銀行口座の紐付けの義務化」です。 2018年以降、新規で銀行口座を開設する際は、マイナンバーの提出が求められるようになり、現時点では「任意」で、2021年から義務化される予定で進んでいました。 しかし、国民の抵抗感も強くあって、義務化の議論は進んでいませんでしたが、「1人10万円の現金給付」を背景に、政府は、銀行口座とのマイナンバーの紐付けなどを一気に進めようとしています。 政府も「このような時、現金給付がスムーズに行えます」とPRしていますが、これは本当に国民のためなのでしょうか? ◆マイナンバーと口座の紐付け義務化のねらい 政府は、来年の通常国会で「マイナンバー」と「全口座」の紐付け義務化の法整備を目指しているのですが、これは、要注意です。 なぜ、政府が私たちの銀行口座番号や財産を知る必要があるのでしょうか。 私有財産は自由の根源です。もしそんなことが堂々とできるなら、それは中国のような全体主義国家と同じようになってしまいます。 毎日新聞は6月1日の朝刊で「困窮者に30万円給付する案から、1人一律10万円の給付になったのは、背景に収入の減少状態を把握するのが困難だったからだ」と、マイナンバーの利点を力説しています。 そのうえで、「ある経済官庁」の幹部が「口座情報がマイナンバーと紐づいていれば、本当に困っている人にだけ支給できたのに…」という声を紹介していました。 実際のところ、政府の本音は、国民の資産を正確に把握したいのでしょう。 「困っているかどうか」を判断するには、間違いなく資産額や銀行口座のお金の出し入れをチェックすることになります。 こうしてみると、「マイナンバー」と「銀行口座」の紐付けの本当の目的は、国民の保有資産を把握し、資産課税(財産税)に道を拓くことにあると言わざるを得ません。 ◆政府が考える新たな税金アイデア 「資産課税」の一つとして、例えば、すでに「死亡消費税」という新たな税金のアイデアが出されています。これは東京大学の伊藤元重氏名誉教授が、2016年の「社会保障制度改革国民会議」で提唱したものです。 定年後の60歳から亡くなるまでの85歳までの間、使わずに貯蓄していた遺産から、そのお金を消費していれば払っていたと考えられる消費税分のお金を、「死亡消費税」として払ってもうというものです。 要するに、マイナンバーが口座に紐付けすると、「増税のインフラ」が整うわけです。 ◆マイナンバーの情報漏洩リスク ちなみに、日本で普及を急いでいるマイナンバーですが、海外では共通番号制があり、様々な個人情報が一気に流出した事例があり見直しが進んでいます。 アメリカでは、社会保障番号(ソーシャル・セキュリティ・ナンバー)が住民に割り当てられ、年金、医療、税務、その他の行政サービス全般、銀行口座の開設やクレジットカードの取得など民間でも使われています。 2017年には、人口の44%、約半分の1億4,500万人のナンバーが個人情報とともに漏洩してしまい、なりすましによる詐欺が増え、利用制限が行われました。 さらには、「電子マネー」の次に「デジタル通貨」など、ハッキング等で資産が消滅する危険があり、こうした対応を後回しにした推進はいかがなものかと思います。 (つづく) アフターコロナの中国包囲網、米中両天秤外交からの決別と国内回帰【後編】 2020.06.12 https://youtu.be/–Sop9A8fwU (5月29日収録) 幸福実現党党首 釈量子 前編では、アメリカと台湾の政策を紹介しましたが、今回は、もっと具体的に中国から日本企業を国内回帰させるためにどうしたらいいのかを探って参ります。 ◆日本経済を復活させる政策 (1)国内回帰を促す大胆な推進プランを! まず、中国にある日本の工場が国内回帰したくなるような政策を総動員して、産業構造をイノベーションし、企業への「優遇税制」など大胆な推進プランで、日本に帰ってきやすい環境を整えるべきです。 前編で述べた「コロナ関連予算」では、日本回帰の補助金の額も小さく、公募期間はわずか2カ月と、小出しです。 例えばトランプ政権が行った設備投資全額控除の「即時償却」や、法人税や固定資産税の減免も取り入れてはどうでしょうか。 また、台湾の蔡英文政権が行ったように、移転に伴う融資への金利や手数料への補助を3年から7年くらい行うことも必要だと思います。 スピード感を求めるなら、中国からの輸入品への関税を上げることぐらいの気概があってもいいのではないでしょうか。 移転費用を政府が補てんすることも考えていいと思います。 単なる立地補助金で終わらないよう、減税、金利手数料の優遇、移転費用の負担も含めて、「国内回帰」を全面的に支援することです。 (2)「中国の不当な産業補助金を止めさせる」 次に「中国の不当な産業補助金を止めさせる」ことです。アメリカや欧州と協力し、国際社会から中国にプレッシャーを与える必要もあります。 産業補助金はどこの国でもやっているのですが、中国の場合はケタがまったく違い、市場の公正な競争を大きく歪めています。 中国の上場企業に対して、中国政府と地方自治体が出す産業補助金は10年で4倍です。 17年の中国の政府補助金は1350億元(2兆1000万円)。4割は「中国製造2025」関連補助金で、半導体メーカーは大躍進し、アメリカの軍事技術を脅かすまでになりました。 世界貿易機関(WTO)にいわゆる「補助金協定」がありますが、GDP世界第2位でありながら、未だに「開発途上国」として優遇措置の対象にもなっていることはおかしいという声をあげるべきです。 (3)「国内需要の創出のための消費減税と未来投資」 さらに、中国に進出した日本企業が国内回帰に二の足を踏む理由として、「日本は消費税が上がったし、電気代も高い」という声をよく聴きます。 日本国内の需要を喚起するために最も有効なことは、消費減税です。GDPの6割の国内消費を喚起し、ビジネスチャンスを増やすことです。 もう一つは、未来に富や雇用を生む産業へ大胆な投資をすることです。 コロナで目先の暮らしのための大盤ふるまいよりも賢いお金の使い方は、宇宙産業、次世代の交通手段、国防産業、食料やエネルギーの自給率を高めるための研究開発に投資することです。 アメリカのIT企業や航空宇宙産業など、新産業の多くは、政府機関や軍事研究分野から出てきています。 家電や自動車の生産拠点を中国と取り合うだけでなく、日本にある技術の種から高付加価値の産業を育てられるとなれば、日本への資本還流も起こります。 (4)「親日の外国人労働者の議論開始」 「親日国からの移民や外国人労働者の受け入れ」を議論すべきです。 台湾は国内回帰とともに移民政策を進めましたが、台湾のように中国と距離を置くことが大前提になると思います。 現在、技能実習生や留学生を受け入れていますが、必ずしも友好国のみから受け入れているわけではありません。 中国共産党は2010年、国防動員法を施行しており、有事となれば、中国人が日本国内で蜂起することもあり得ます。私たちは、中国からの受け入れ拡大は反対です。 日本と安全保障での協力関係を構築しているような親日友好国で日本を愛し、日本人になりたいという方には、日本語の習得や、国を守る意識などを条件にして、積極的に人財を受け入れてもいいと思います。 ◆日本は、世界をけん引できるビジョンを描け コロナを機に、全世界で、グローバリズムの見直しは避けられません。 アメリカも日本も、グローバリズムで国内産業が壊滅され、人件費の安い中国などに流れ、国内に税金を払わない企業が栄え、国内の雇用が失われていきました。 「コロナ」は、ポストグローバリズムの経済を推し進めるチャンスと捉えるべきです。「コロナ不況対策」、「地方創生」、そして「中国の覇権主義へのけん制」という「一石三鳥」です。 米中を両天秤にかけ、中国を忖度する政治をやめ、「自由民主信仰」に基づいた政治で国家の方向性を明確にし、米中でアフターコロナの世界をけん引できるようなビジョンを描くべきだと思います。 アフターコロナの中国包囲網、米中両天秤外交からの決別と国内回帰【前編】 2020.06.11 https://youtu.be/–Sop9A8fwU (5月29日収録) 幸福実現党党首 釈量子 ◆日本経済復活の切り札 前回は、トランプ政権の「対中制裁」について取り上げました。 コロナに続いて、香港情勢でも5月29日に対中制裁を発動しました。注目したいのは、アメリカは大統領と議会が中国の覇権の暴走を止めるために一丸となっていることです。 日本の安倍政権も、中国とアメリカを「両天秤」にかけるような外交をやめて、「脱中国」の路線を明確に打ち出すべきではないでしょうか。 そこで今回は、「脱中国」の具体策としての「国内回帰」についてお話します。「中国にある工場などの生産拠点を日本国内に戻す」ということです。 これは、アメリカと歩調を合わせた「対中制裁」と、さらにはアフターコロナの「日本経済復活の切り札」にもなります。 ◆第一次補正、国内回帰予算について 日本は「コロナ」で中国依存の怖さを思い知りました。2月ごろから、都市封鎖や渡航制限の措置により、中国から部品が入らず、工場の生産が止まりました。 政府も、脆弱だったサプライチェーンを強靭化しようということで、4月末「令和2年度補正予算」で対策を打ちました。 まず、サプライチェーン対策のための「国内投資促進事業費補助金」です。 これは「特定国」で生産していた製品の工場を、日本に移す時の補助金で2200億円を5月22日から7月22日まで公募します。「特定国」といっても、当然、中国を念頭においたものです。 二つ目の「海外SC多元化等支援事業」は、「チャイナプラスワン」と言われていますが、中国の工場をASEAN諸国に分散させたりすることを想定しています。公募は5月26日から6月15日までです。 ◆「痛いところを突かれた」中国 これに敏感に反応したのは、中国共産党です。 中国版スマートニュースToutiaoは、日本企業が撤退したら、広東地区だけでも「電子工場の3分の2が倒産するだろう」と報じています。 そして、「中国から日本やASEANへ工場を移転させることは非現実的だ」「中国自体が重要な市場だ」と環球時報などで主張を広げ火消しに走りました。 中国の1月から3月のGDPは前年同期比6.8%減と急落し(中国国家統計局発表)、この数字も粉飾かもしれませんが、先日開催された全人代では経済成長の目標も打ち出しができませんでした。 日本の「国内回帰」路線は、習近平政権の「一番痛いところ」突き、アメリカと歩調を合わせる上でもっとも重要な戦略の一つといえます。 ◆企業の「中国撤退」を促すアメリカと台湾の事例 そこで見てみたいのが、戦略的に自国企業の中国からの国内回帰を進めているアメリカのトランプ政権と台湾の蔡英文政権の政策です。 まず、トランプ政権は、「アメリカ・ファースト」を合言葉に、中国からの輸入品への関税を高くして、メイド・イン・チャイナの地位を下げました。 最近、アップルも中国からインドやベトナムでの生産に大きく転換しようとしています。 さらに、国家経済会議(NEC)のクドロー委員長が「国外から移転してきた企業の法人税を半分の21%から10.5%に下げる」と発言し、「移転費用を100%補てんする」など、不退転の決意を表しています。 次に、台湾の蔡英文政権の国内回帰(投資台湾三大方案)です。 前政権で中国依存率が高まったことを問題視し、第一期で脱中国依存の路線を進めました。 その一環として、中国に進出した台湾企業の国内回帰を促す「台商回台投資方案」「根留台湾企業加速投資行動方案」「中小企業加速投資行動方案」の3セットで、大企業と中小企業も含めて台湾回帰の投資を進めています。 具体的には、台湾に戻ってくる投資案件には、2019年1月から3年間限定で、銀行手数料の補助や、外国人労働者に関する労働規制を緩和すること(これは「移民政策」)などです。 開始から1年半、480社、1兆36億台湾元(=約3.6兆円)の台湾回帰投資が行われ、8万人以上の雇用が生まれました。 ◆両天秤外交からの離脱 では、日本はどうすればよいのでしょうか。 まず、政治の明確な意思表示が必要です。ずばり、「米中両天秤外交からの離脱」です。 安倍首相が5月25日、海外メディアの記者から「アメリカと中国、日本はどっち側につくか」との質問をされました。 これに対して、安倍首相は「米国と協力をしながら、様々な国際的な課題に取り組んでいきたいと考えています」と表明しています。 それならば、習近平国家主席を国賓待遇で招待しようとする動きは白紙に戻し、国家としてどういう価値観を選ぶか、示さなければならないと思います。 後編では、アメリカと台湾の対中政策を参考に、さらに具体的に日本企業を国内回帰させる政策を探って参ります。 (つづく) トランプ大統領の対中報復開始!日本はどうする?【後編】 2020.06.07 https://youtu.be/rr2mI57hFfs (5月19日収録) 幸福実現党党首 釈量子 ◆世界に広がる中国賠償責任論 前編では、米トランプ政権が繰り出した「対中報復の3連打」を述べましたが、新たな中国制裁としてコロナの損害賠償で責任を取らせようという動きもあります。 5月1日、ワシントン・ポスト紙は、「アメリカの政府高官が、中国に金銭的な賠償を要求する可能性を検討し始めている」と報じました。 米国では、すでに中国政府や武漢の病毒研究所の関係者などを相手にネバダ州、フロリダ州、テキサス州で、弁護士組織や企業が集団訴訟を立ち上げています。 さらに、ミズーリ州では4月21日、州の司法長官が、「中国政府は新型コロナの危険性について嘘をつき隠蔽した」として、損害賠償請求の訴訟を起こしています。 もちろん、「中国という国家を訴えることができるのか」という議論もあります。 通常、裁判では「主権免除の原則」があり、「国家は外国の裁判権に服さない」という国際法上のルールがあります。 しかしアメリカでは、2016年に「テロ支援者制裁法」が成立したことがありました。 これは2001年9・11のハイジャック犯19人のうち、15人がサウジアラビア国籍だったことから、「主権免除の原則」の例外を認めて、テロの犠牲者がサウジ政府を訴えることができる道を拓きました。 今回のコロナでも、共和党トム・コットン上院議員らが、同様の趣旨の法律を作成しようと動いています。 他にも、中国に賠償を求める動きは世界にも広がっていて、フランス国際ラジオFRIによると4月29日の段階で、「コロナに対して世界8か国が、中国に100兆ドルの損害賠償を求めていて中国が激怒している」と報じました。 それによると、「アメリカ、イギリス、イタリア、ドイツ、エジプト、インド、ナイジェリア、オーストラリア」の8ヵ国で、賠償金額の合計は100兆ドル(約1京1000兆円)を上回り、中国の7年分のGDPに相当する額に達するとのことです。 加えて、「中国共産党幹部のアメリカ国内資産の凍結」という方法もあります。これまでもアメリカはイランや北朝鮮の政府高官、団体、企業などアメリカ国内の資産を凍結しています。 中国共産党の幹部は、莫大な資産をドルに換えて、海外に移転させており、カリフォルニアやニューヨークに数多くの不動産を所有していると言われています。これらを差し押さえることはかなりの効果があります。 ◆日本はどうすべきか? では日本はどうすべきでしょうか。二つあります。 1つめは、「中国マネーに対する警戒強化」です。 アメリカがファーウェイの切り離しに動く中、中国は技術力のある日本企業に目を向けてくるのは間違いありません。 欧米ではコロナショックで株価の下がった自国の企業を、中国による買収から守るために防衛策を強化しています。 日本も、法律上の規制と、企業への資金支援の両面から、中国による買収防止策を強化すべきです。 2つめは、「対中包囲網の構築」です。 中国国家安全省が4月初旬、中国の有力シンクタンク「中国現代国際関係研究所(CICIR)」の報告書を中国政府指導部に提出しました。 報告書によると、「世界的に高まる反中感情が、1989年の天安門事件以来の水準に悪化する恐れがある。アメリカが新型コロナ対応を巡り中国への反発をあおり、中国政府はアメリカとの武力衝突という最悪のシナリオも想定する必要がある」と指摘したようです。 中国はこうした情勢分析のもとで、「中国包囲網の結束」を破るために、天安門事件の時と同じように、日本の取り込みにかかると思われます。 天安門事件の後、国際的非難を浴びた中国に対して、国際社会復帰の道を拓いたのは、ほかならぬ日本の対中外交でした。 歴史の汚点を二度とつくってはならないと思います。 日本は、中国では経済的利益を得て、米国には安全保障をお願いする、という「両天秤外交」から、きっぱり決別すべきです。 今こそ、アメリカを中心に、自由・民主・信仰といった価値を重んじる国々による「中国包囲網」の中で、日本は、アジアのリーダーとしての役割を果たすべきです。 トランプ大統領の対中報復開始!日本はどうする?【前編】 2020.06.06 https://youtu.be/rr2mI57hFfs (5月19日収録) 幸福実現党党首 釈量子 ◆米トランプ政権が進める対中制裁 今回は、トランプ政権が中国に対して新型コロナウイルスの感染拡大の責任を取らせるために進めている対中政策についてお話をしたいと思います。 5月5日、米国のムニューチン財務長官は、「トランプ大統領が情報機関と共に中国の新型コロナウイルスに関するデータを精査している。そして中国を罰するための選択肢を検討している」と述べました。 そして、5月半ばトランプ政権が「対中報復の3連打」を繰り出しました。 (1)「金融制裁」の動き これまで、米中は関税や輸出の禁止などの貿易分野で「つばぜりあい」を行ってきましたが、アメリカはいよいよ資本規制に踏み出しました。 5月13日、アメリカの「公務員年金基金」が中国株への運用を無期延期すると発表しました。 アメリカには「連邦退職貯蓄(FRTIB)」という連邦職員や軍人の年金運用の基金があり、2017年に利益を拡大するため今年2020年半ばから中国株をより多く買う方針を決めていました。 しかし、直前に延期することになったというのが今回の方針決定です。 例えば、昨年からマルコルビオ上院議員のような対中強硬派は、中国の監視カメラ大手「ハイクビジョン」(杭州海康威視数字技術)や軍需企業などに公的年金を投資するのはいかがなものかと強く主張していました。 当初の予定では500億ドル(約5兆3000億円)を中国株に運用することになっており、そのまま運用していたら中国株に約50億ドル(約5,300億円)のお金が流れたはずでした。 (2)中国への断交宣言予告 5月14日にはトランプ大統領が「FOXニュース」に出演して爆弾発言を行いました。 「中国とのすべての関係を断ち切ることもあり得る」と。これは「断交宣言の予告」ともれるような発言だったと思います。 その時、「中国企業がアメリカの会計基準の採用を義務付けられれば、上場先を米国以外の市場に移す公算が大きい」と発言し、これもかなり踏み込んだ発言でした。 中国企業はアメリカの企業に比べ情報開示が甘く、これまで問題視されていたのです。 中国の企業は財務諸表やガバナンスなど、中国共産党との結びつきが明らかになるのが嫌なこともあるのか、これまでアメリカの会計基準に厳密には従ってこなかったのです。 トランプ大統領の発言は、ずばりウォール街から中国企業を締め出すのが狙いです。 もちろん、決定したわけではありません(5月19日現在)が、選択肢の一つに入っているのは間違いありません。 (3)ファーウェイの生命線を断つ 翌日15日も大きな動きがありました。 米中貿易戦争の主戦場であるハイテク分野で、ついに「ファーウェイ」(HUAWEI)の生命線を断つ動きがありました。 アメリカ商務省が「ファーウェイがアメリカの技術を活用して海外で半導体を開発することを制限する」と発表しています。 トランプ政権は、ファーウェイを「エンティティリスト」、つまり「禁輸措置対象のブラックリスト」に入れ、米国企業、あるいは海外企業でもアメリカ製品が25%以上含まれた製品を輸出することを禁止しました。 ところが抜け道があり、ファーウェイは台湾の半導体受託製造会社であるTSMC(台湾セミコンダクタ・マニュファクチャ・カンパニー)などに生産を委託して、台湾で製造した半導体を自社製品としてスマホやタブレットなどで使ってきました。 台湾のTSMCは、アメリカの技術やソフトを利用して製造された半導体製造装置を使って、ファーウェイ向けの半導体を生産していましたが、今回これもダメだということになりました。 ファーウェイはこれを予想しており、中国のシンセンを本拠地とする子会社のハイシリコンという会社で半導体の自前化に力を入れてきましたが、技術的にはTSMCのような最先端のレベルまでは到達していません。 今回の新しいルールの導入で、ファーウェイに半導体を供給するためには、アメリカ商務省の事前の許可が必要になるので、TSMCはついにファーウェイからの受託を停止しました。 さらに、アメリカは極めて戦略的な取り組みもしています。最近、台湾TSMCは、アリゾナ州に、建設費120億ドル(約1兆3000億円)の工場の計画を発表しました。 TSMCの半導体は、ステルス戦闘機F-35にも使用されているのですが、なんとコロナウイルスよりも小さい超微細な製造プロセスの半導体を製造する予定です。 TSMCレベルの半導体製造工場は、台湾以外ではアメリカが初めてです。 アメリカは中国への技術流出を防ぐとともに、自国内に経済と安全保障のカギとなる分野の供給網を確立しようとしているのです。 ちなみにTSMCレベルの最先端半導体を製造できるのはサムスンぐらいで、今後中国がサムスンを取り込むのか、韓国の動向も注目されます。 (つづく) すべてを表示する « Previous 1 … 20 21 22 23 24 25 Next »