Home/ 西邑拓真 西邑拓真 執筆者:西邑拓真 政調会成長戦略部会 成長戦略インサイト(8)勤勉性を失わせる財政は正されるべき 2021.04.04 成長戦略インサイト(8)勤勉性を失わせる財政は正されるべき 幸福実現党成長戦略部会長 西邑拓真 ――先月26日、令和3年度予算案が成立しました 新年度の国の一般会計総額は、前年の当初予算に比べて3.8%増となる106兆6,097億円に達し、9年連続で過去最大を更新する形となりました。 歳出がここまで積み上がったのは、年金や医療に対する歳出額が高齢化の進展で自然増となったほか、デジタル庁の発足に向けた予算や、新型コロナウィルス対策に向けた予備費が計上されたことによります。 政府の予算は、今回成立した「当初予算」だけに留まりません。「雇用調整助成金」の受給期間が6月末に切れるなど、政府による一連の措置の期限切れを迎えます。 追加の「経済対策」を実施するにあたって、今後、補正予算の編成に向けた議論が本格化すると見られますが、秋までに実施される次期衆院選を見越して、「大盤振る舞い」となる可能性は高いでしょう。 米国ではバイデン政権が、「8年間で2兆ドル(約220兆円)」のインフラ投資を実施するとの計画を示すと同時に、すでに、連邦法人税率を21%から28%に引き上げるとの考えを明らかにしています。 「播いた種は必ず刈り取らなければならない」のは、財政においても同じであると言えます。お金が成長に資する部分に効果的に使われなければ、納税者はいずれ、さらなる大増税に見舞われることになります。 バラマキ・増税は、国から「勤勉の精神」を失わせ、国民に貧困と苦しみを与えることになりかねません。 バラマキを受ける側は「頑張らなくても食べていけるのなら、働かなくても良い」という心理につながり、また、バラマキの原資を獲得するとして高所得者や企業を狙い撃ちに増税を実施するなどすれば、納税する側は、「収益を上げるために知恵を絞って勤勉に働こう」というモチベーションを低下させることになるでしょう。 国として、コロナに対して、適切なバランス感覚を持って必要な対策は実施しつつも、財政のあり方を「国の援助ありき」という考え方から、「自助努力」を促す方向に転換すべきだと思います。 ――さて、今、香港や新疆ウイグル自治区などで激しい人権弾圧を繰り広げている中国に対し、国際世論が厳しい目を向けている 香港において、一連の政治統制が繰り広げられているほか、ウイグルでは拷問や強制労働のほか、ウイグル人女性に対して、組織的な性被害や不妊手術の強制などが行われており、中国による人権弾圧は苛烈さを増しています。 先月30日、米国務省は、人権に関する年次報告書の中で、中国によるウイグル人の弾圧を国際法上の犯罪となる「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と「人道に対する罪」と非難しています。 また、米国のほか、これまで中国と良好な関係を築いてきたEUも、ウイグルでの人権侵害を理由に、中国共産党幹部を対象とする経済制裁を発動しています。 翻って日本政府は、加藤勝信官房長官が「深刻な懸念」を表明するに留まっています。そもそも日本は、人権侵害を理由に経済制裁を課す法律が、G7で唯一整備されていないというのが現状です。 こうした中で、超党派で法整備を進めようとの動きがあるのも事実ですが、中国への配慮もあってか、政権与党である公明党は法整備に慎重な考えを示しています。 日本の政治は戦後、国際社会における「正義」とは何かを顧みることなく政治を行ってきたと言えます。 かつて中国で起きた天安門事件では、日本は、国際的に孤立していた中国政府を擁護する姿勢をとりました。このことが、その後の「中国の巨大な勃興」を許してしまったのは否めません。 人間にとって尊い「人権」を踏みにじる国家による覇権拡大は、決して許されるべきではありません。日本は国際的な正義に照らして、人権弾圧を断固として許さないとの姿勢を明確に示すべきです。 成長戦略インサイト(7)「日本は明確に対中包囲網の形成を」 2020.11.13 幸福実現党政務調査会 西邑 ―――経済協定「RCEP(東アジア地域包括的経済連携)」が、今月15日に署名される見込みです RCEPとは、日中韓とオーストラリア、ニュージーランド、ASEAN10か国の計15か国の間で締結される貿易協定のことで、貿易をする際にかけられる関税の撤廃や税率の引き下げ、あるいは知的財産権を保護するためのルールが定められています。 これまで貿易交渉に参加してきたインドは、対中国の貿易赤字が拡大することを懸念して、交渉の最終局面で協定に加入しないと表明しています。 ―――日本はRCEPに入ることになりそうですが、日本にとって懸念される点はないですか 問題点を挙げるとすれば、例えば、RCEPによる関税の優遇措置によって、中国製の安い工業製品や農産品が日本国内に入り、日本で作られた品物が国内で駆逐される恐れがあることです。 中国発の新型コロナ感染症が世界的に拡大している状況を踏まえて、日本は本来、“自らで消費するものは、自らで生産する”体制を構築すべきと言えます。その意味では、モノの自給体制の構築がままならない中、日本は今回、RCEPへ加入すべきでなかったでしょう。 さらに、本質的に問題なのは、RCEPが取り結ばれると中国の経済圏が拡大し、米国がこれまで築いてきた対中抑止策が骨抜きになる恐れがあることです。 中国は最近、米国以外の貿易協定の実現を急いできましたが、それは、米トランプ政権との「貿易戦争」を繰り広げたことで、コロナ禍の有無にかかわらず中国経済が疲弊してきたからでしょう。 中国は今、南シナ海や東シナ海などで領土を拡張しようという横暴な動きを繰り広げていますが、中国の経済力が高まれば、「世界の覇権国家になろう」という野望が現実に向かうことになりかねません。 一方で日本は今、TPPを推進しながらRCEPにも加入しようとしています。TPPは中国包囲網を形成する性質があるのに対し、RCEPは中国の経済圏を拡大させる意味合いを持ちます。 日本が、両方の協定に入ろうとしていることが意味しているのはすなわち、「中国に対して明確な姿勢を持っていない」ということでしょう。「八方美人外交」を繰り広げる日本の外交姿勢がよく現れています。 今後、日本は、米国をはじめとした自由主義圏との連携を強化しながら、主導的に対中包囲網の形成を図るべきです。 また、今回、経済協定に参入しないことを決めたインドは将来的に、経済大国の一つになると予想されています。対中包囲網を形成する上では、インドは日本にとって極めて重要な国家です。対中包囲網の形成の一環として、日本は今後、インドとの経済連携を一層深めるような枠組みを作ることを検討すべきでしょう。 以上 成長戦略インサイト(6)財政投入は戦略性を持って行うべし 2020.05.28 成長戦略インサイト(6)財政投入は戦略性を持って行うべし 幸福実現党成長戦略部会長 西邑拓真 ――今月25日、政府は5都道県への緊急事態宣言を解除した 4月7日に発令された緊急事態宣言は、今回の解除を受けて約7週間ぶりに、全面的に解除されることとなりました。 政府や自治体の判断の遅れは企業経営者にとって命取りとなります。もっと早いタイミングでの全面解除とはならなかったのか、との思いは拭えません。 今後、感染拡大の第二波、第三波が到来することも予想されますが、政府が再度緊急事態宣言を発出するなど、今回と同様な措置を取るようなことがあれば、日本経済は奈落の底へと沈みかねません。 感染症の出口戦略として、東京都がロードマップを示すなど、自治体が独自に要請の解除に向けた基準を示しています。各要請を緩和するための一定の基準を示すのは良いのでしょうが、感染症の次の波が押し寄せた場合、これが経済活動を継続する上で支障をきたすことにつながりかねません。自治体などが何らかの判断を行うにあたっては、あくまで裁量の余地は残しておくべきでしょう。 今後、経済活動を行いながら徹底した感染症対策を行うべきなのは言うまでもありませんが、それはあくまでも、「国民の知恵を信頼する」ということを基本スタンスとすべきです。 ――27日には、事業規模117兆円に至る第二次補正予算が閣議決定された このうち、一般会計からの歳出分は31兆円余りとなります。いずれにしても、歳出のあり方については、その使途のあり方が問題となります。 日本は政府の失策もあり、経済は既に危機的状況を迎えている中にあって、企業等に対する融資策を強化すべきことには概ね異論はないでしょう。 しかし、雇用調整助成金や家賃支援給付、あるいは困窮学生への支援策等については本来、緊急事態宣言とそれに伴う措置がなければ、その多くは発生しなかったはずの歳出であったと言えます。 感染症の影響が長期に及んで、政府が今後も同様の形で給付策を実施するなどすれば、財政はいずれ持ちこたえられなくなるというのが、実際のところです。 そして、歳出が拡大し続けた場合、次に待ち受けているのは大増税であるということを忘れてはなりません。 今、マイナンバーと金融機関の預貯金口座を連結する案が浮上していますが、これが実現すれば、いずれ、国民の資産が国に丸裸にされる上、これが資産課税の強化に結びつくことになります。 マイナンバーを通じて、支援を受けるべき人に、行政側から迅速な支援が行われるという「プッシュ型支援」が実施されることを見返りに、国民は、大増税という大きなしっぺ返しを受けかねないというのが実態です。 ――歳出のあり方は本来、どうあるべきと思うか 政府は本来、コロナ禍という「レモン」を「レモネード」に変えるべく、戦略的な投資に向けてイノベーションを図るべきです。 具体的には、サプライチェーンを強化するための生産拠点の国内回帰策、あるいは万全なエネルギー供給体制の構築や農業生産力の強化など、経済成長のほか、危機に対応するための自給体制の構築に資する部分に対して、重点投資すべきです。 一方で、第一次補正予算においては、「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」が計上されていますが、その額はわずか2,200億円にすぎません。 政府がお金を使おうとすると、どうしても総花的なものとなるのでしょうが、本来あるべき規模感からいってそれが過小に留まることは、決して好ましいことではありません。 アフターコロナにおいて、新たなカリスマ企業家が、次の日本経済を引っ張る一要素となるでしょう。 政府が直接的にお金を使うばかりではなく、例えば、優れた目利きを持つ銀行家を介して、適切な分野や企業家に資金を適切に配分するという考え方も重要です。 政府は既に、政府系金融機関はもとより、官民ファンドを通じた融資策を行うとしていますが、必要に応じて、そうした枠組みを通じた融資策を拡充することは、検討に値するでしょう。 ――民間金融機関の動きとして、例えば横浜銀行は、資本性の強い「コロナ対応劣後ローン」を供給している 各地域の中小企業を支えるのが地銀です。横浜銀行が供給する「資本性が強いローン」は、返済を後回しにできる上、「借入」ではなく、「資本金」とみなすことができるとの性質を持っています。 日本経済を守るためには政府や日銀として、こうした仕組みを支えるための、何らかの枠組みを作ることは検討に値するでしょう。ただ、政府や日銀もある種「経営危機」に陥っている上、政府等の充実したバックアップがあればモラル・ハザードが起こり、例えば、金融機関が借り手にとってメリットが大きい貸し出しを、経営実態に対する検証を十分に行わないまま行うといった懸念もないわけではありません。従ってこの場合、バックアップ策を実施するとしても、「無制限に」というわけには中々いかないのが現実でしょう。 しかし、いずれにしても、ウィズコロナ、アフターコロナの世界に順応することもまた、企業にとっての一つの生き筋と言えます。こうした資本性融資の拡大を支援することにより、企業を救済するばかりか、変化に対応する民間の“サバイバル”を応援するのも良いと思います。 以上 成長戦略ナレッジ(4)「経済対策と持つべき財政的視点について」 2020.04.14 http://hrp-newsfile.jp/2020/3859/ (4月12日) 幸福実現党成長戦略部会長 西邑拓真 今月7日、新型コロナ感染症の感染拡大を受けて、政府は東京都などを対象に緊急事態を宣言しました。日本経済は今後一層、深刻度を増すことは否定できない状況にあり、国として万全の経済対策を実施すべきです。経済対策のあり方と持つべき財政的視点について、成長戦略部会としての考えを、下記の通りまとめております。 ◎概要 ・新型コロナウイルス感染症の感染拡大について、事態収拾まで長期に及ぶとの見方があります。政府として、的確な政策実施により、感染症の影響による経済損失を埋め合せるほか、これを“ジャパン・ファースト”で不確実性に耐える強靭な経済を作り、将来日本の明るい未来を到来させる好機と捉えるべきです。 ・コロナショックによる影響で長期のデフレスパイラルに陥ることがないよう、日本はまずもって、不安を払拭するに値する的確な政策を実施することが必要です。公共財としての性質を持つ公衆衛生を保持することは国の重要な役割であり、現在直面する状況に鑑み、万全な医療体制の確保と併せて、それらに対する財政投入は基本的には惜しむべきでないと考えます。 ・ 支援を要する人には、必要な分だけの迅速な支援を行い万全のセーフティネットを整備すべきなのは言うまでもありません。しかし、債務残高が1,100兆円超にのぼるわが国の財政状況にあって、歳出を無尽蔵に増加させる余力は残されていないのも事実です。歳出のあり方として、将来的な増税を余儀なくされるバラマキ一辺倒に陥ることなく、中小をはじめとした企業、事業者に対する支援強化策や、中長期的に日本経済の成長に資する分野に対し大胆投資を重点的に実施すべきです。 ・尚、政府は、基礎的財政収支(プライマリーバランス, PB)を2025年度に黒字化することを目標としていますが、危機的状況に対応するため一時的に歳出を拡大させることはやむをえない状況でもあるため、PBの早期黒字化は見直すべきと考えます。 ・そのほか、各論点についての基本的な考え方は、次の通りとなります。 ◯雇用の確保 ・現在、日本は消費増税とコロナショックによるダブルパンチに直面している状況ですが、まずは最低限のセーフティネットを整備し、企業や事業者への融資等によりまずもって雇用を確保することが重要となります。 ・仮に連鎖的な企業倒産等生じれば、今後一層、失業が大量に発生しかねません。コロナショックにより経営危機に直面する、中小など各企業の事業継続力の強化に向けては、迅速性を持った資金繰り支援を行うべきであり、政府系金融機関などによる実質的な無利子・無担保融資策等についても、状況に応じて柔軟に制度の拡充を進めるべきです。このほか、消費税や法人税をはじめとした納税の猶予措置拡大なども行うべきと考えます。 ◯消費の底上げ ・消費の大きな落ち込みを避けるためには、上記の通り雇用確保策を万全に進めるなど、社会に広がる経済的な不安を払拭するための確かな対策が必要となります。 ・また、コロナ収束後における景気のV字回復策として今後、期間限定のクーポン券などが配布されるとも言われていますが、バラマキ策の一つであることに変わりはなく、特定の業界を利して公平性を大きく欠如しかねません。 ・単なるバラマキは将来的な増税を想起させ、消費刺激策としては得策ではありません。コロナショックによる不安を払拭するに値する政策を実施するとともに、この際、将来的に日本経済の成長に資する分野に対する大胆投資を実行することが肝要です。 ・消費刺激策としては、インパクトが強く、すべての家計が恩恵を受けられる消費減税が望ましく、その税率は、安倍政権で2014年4月に実施された増税前の5%とすべきです。 ◯生産拠点の国内回帰 ・感染症拡大による多大な影響を受けているのが、製造業をはじめとした国内企業です。今回、中国からの部品供給が滞るなど、国境をまたぐサプライチェーンが寸断され、生産活動に支障をきたす事態に直面しています。 ・これまで、生産活動の面で中国に依存してきた各企業が、中国リスクを踏まえて体制を見直し、生産拠点の国内回帰を推し進められるよう、政府として強力に後押しすべきです。こうした動きは日本国内で新たな雇用を生み出し、経済成長や税収増に寄与することになります。 ・したがって、生産拠点を国内に移す際の設備投資については、大胆な投資促進策を実施すべきと考えます。 ◯成長分野への大胆投資 ・それ以外にも、経済対策としての歳出は、将来の税収増をもたらす成長分野に対して振り向けられるべきであり、製造業生産拠点の地方への誘致を進めることも念頭に、リニア新幹線網整備や高速道路網、自動運転車の普及促進などに向けたインフラ整備を進めるほか、経済上の国益確保の観点から、農業生産力向上のほか、次世代電力供給網の整備などエネルギー安全保障の拡大に向けた、大胆投資を実行すべきです。 成長戦略ナレッジ(3)「新型コロナ対応の特措法改正について」 2020.03.13 http://hrp-newsfile.jp/2020/3840/ (2020年3月13日付) 幸福実現党成長戦略部会長 西邑拓真 ◆改正新型インフルエンザ等対策特別措置法とは ・13日、新型コロナウイルス感染症を新たな適用対象とする改正新型インフルエンザ等対策特別措置法が、参院本会議で可決、成立しました。 ・政府は、全国一斉の臨時休校、大規模なイベントの自粛を要請するなどしていますが、今回成立した改正法に基づいて首相が「緊急事態宣言」を行えば、これらの措置に法的根拠を持たせることができるようになります。 ・緊急事態が宣言されれば、都道府県の知事は学校や興行場の使用を制限したり、催し物を中止するよう指示ができるようになるほか、臨時の医療施設の開設のため、所有者の同意なしに土地や建物を使えるようになるなど、個人の権利に制限が課されるとの懸念もあります。 ・一般論として、安全保障や危機管理の観点からは、国民の生命・安全を確保するため、一定の範囲内で行政府に権限が集中するというのはやむをえない面もあります。 ・今後、緊急事態の宣言や対象地域で然るべき対処を行うべき事態に至る場合、私権を制限するとの性格を有する以上、政府や自治体は専門家等による然るべき情報のもと、明確な論拠に基づいた適切な判断が求められます。 ・その上、緊急事態宣言の発出いかんに関わらず、政府による自粛要請などは日本経済に対して既に多大なダメージをもたらしています。今月10日、安倍晋三首相は、全国規模のイベント自粛、中止、延期、規模縮小要請を10日間程度延長させる考えを示していますが、その解除にあたっては、政府に迅速で的確な判断を求めたいところです。 ◆必要な経済対策とは ・同感染症が日本経済に深刻な影響を及ぼしつつある状況に鑑み、政府はこれまで、一連の緊急対策を実施することを明らかにしています。 ・第一弾として153億円規模の水際対策や国内感染対策、また中小企業支援として日本政策金融公庫などに5000億円規模の緊急貸付や補償枠を確保することを盛り込んでいます。また、第二弾として、同感染症により休業を余儀なくされた一部フリーランスや、休校中の子供のために仕事を休まざるをえなくなった保護者に向けた助成金制度の整備、PCR検査の能力拡大策が取りまとめられています。 ・今、政府により、2020年度の補正予算案の編成を視野に、対策の第三弾が検討されています。 ・本来あるべき対策の方向について、成長戦略部会として下記の通りまとめています。 ◯ジャパンファーストの一環として、生産拠点の国内回帰を ・現在、感染症の影響で中国国内の生産現場が混乱していることによりサプライチェーンが寸断され、日本企業の一部は生産活動に支障をきたす事態となっています。 ・これまで、生産活動の面で中国に依存してきた日本企業が、中国リスクを踏まえて体制を見直し、生産拠点の国内回帰を推し進められるよう、政府として強力に後押ししたいところです。 ・この観点から、現行の29%台の法人実効税率は15%へと大幅に引き下げるほか、生産拠点の国内回帰に伴う設備投資額については、法人税の納税額を算出する際に損金扱いとするなど、大胆な投資減税を実行すべきと考えます。 ◯中小企業に対する強力なバックアップを ・今、中小企業を中心に多くの企業が経営的危機に立たされています。政府による資金繰り支援策を柔軟に進めるのはもとより、政府が進める短時間労働者への厚生年金適用拡大策は当面凍結させるほか、4月より中小企業に適用される時間外労働の規制強化をはじめとする「働き方改革」についても、見直しを図るべきです。 ◯家計支援策としては、消費減税を ・また、政府は緊急対応策第3弾として、子育て世帯に3万円を給付する案などが検討されています。ただ、コロナ感染症による経済的な影響は子育て世帯に限ったものではなく、その支援は広く行うべきものです。ただし、その給付の対象範囲をむやみに広げれば、歳出額が大きく膨らむことになります。そうした観点から、現金給付策は得策とは言えません。 ・昨年10月に実施された税率10%への消費増税が家計を直撃し、内閣府が9日に発表した2019年10月-12月のGDP速報値(2次速報値)も、年率換算で実質マイナス7.1%を記録しています。ただし、これはコロナが経済に与える影響が明らかになる以前のものであり、今後、経済指標は一層深刻なものになるとも考えられます。 ・中国を中心にコロナが世界を覆う中、輸出も大幅に縮小すると見込まれます。今こそ、内需拡大策として5%への消費減税を実行すべきです。 ・また、一部有識者からは、全品目に軽減税率を適用すべきではないかとの案も出ているようです。これに関連し、自民党の一部若手議員などは消費税について、当面は軽減税率0 %を全品目に適用すべきと提言しているようです。経済の先行き不透明感が増す中、これも次善の策として十分に検討に値すると考えられます。ただ、あくまで減税は時限的な措置に留めるのではなく、幸福実現党がかねて訴えてきたように、標準税率そのものを変更し、当面は5%、財政状況に鑑みて将来的には消費税そのものを廃止すべきと考えます。 成長戦略インサイト(5)コロナショックにどう立ち向かうか 2020.03.07 幸福実現党成長戦略部会長 西邑拓真 ――5日、日中両政府は、習近平国家主席の国賓来日を当面延期すると発表した 新型コロナウイルスの感染拡大の状況を見れば、当然の判断とも言えますが、中国政府による強まる覇権主義、人権弾圧に鑑みて、本来は日本として、「中止する」と断言すべきだったでしょう。 また、安倍晋三首相は同日、感染拡大を防ぐための新たな水際対策として、中国、韓国からの入国者に対し、指定場所での二週間の待機を要請するなど、実質的な入国規制を実施することを表明しています。 特に中国に関しては、習氏の国賓来日や、中国経済に大きく依存する日本経済への配慮などがあったのでしょう。米国は2月上旬より、中国全土からの入国禁止措置をとっていたことを考えても、日本政府の措置は、遅きに失したと言わざるをえません。 ――6日、自民、公明両党は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための、新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案を了承した これは、既存の「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の対象に、新型コロナウイルス感染症を新たに加えようというものです。 改正法に基づいて、首相が「緊急事態宣言」を行えば、対象となる地域の都道府県の知事は、学校や興行場の使用を制限したり、催し物を中止するよう指示することができるようになります。 政府はこれまで、全国の小中高校などへの臨時休校、大規模なイベントの自粛を要請するなどしてきましたが、特措法の改正により、これらの措置に法的根拠を持たせることができるようになるわけです。 ただ、緊急事態が宣言されれば、上記の点や、臨時の医療施設の開設に向けて土地や建物の収用が可能になるなどの点から、個人の権利に一定の制限が課されることへの懸念もあります。 一般論として、安全保障や危機管理の観点からは、国民の生命・安全を確保するため、一定の範囲内で行政府に権限が集中するというのはやむをえない面もあるでしょう。 ただしこれは、政府や自治体が適切な対処を行うほか、その際、むやみに私権の制限が行われることなく、これが最小限に留められてこそ正当化されるものと言えます。これには、万全な情報収集体制が整っていることなどが前提となるでしょう。 今後、緊急事態の宣言や対象地域で然るべき対処を行うべき事態に至る場合、政府や自治体は、迅速な対応が必要となるのは言うまでもありませんが、それに加え、私権を制限するとの性格を有する以上、明確な論拠と情報に基づいた適切な判断が求められると思います。 ――また、10日にも、政府による緊急対策第2弾が打ち出されるとされている 中国製部品の供給滞りによるサプライチェーンの破綻や、国内消費の減退など、感染症の拡大が日本経済に需給両面で大きな影響を及ぼしています。 中小企業の資金繰り支援や生産拠点の国内回帰の後押しなどについて、政府として万全を期す必要があるのは言うまでもありません。 また、3日、FRB(米連邦準備制度理事会)が緊急利下げを行ったことで現在、為替相場は円高に振れていますが、これと感染症拡大による外需の縮小と併せ、日本の輸出関連企業が今後一層、大きな苦境に陥らないとも限りません。 こうした意味でも今、日本政府ができることとして、適切な内需拡大策を図ることは不可欠でしょう。 総務省は6日、1月の2人以上世帯の家計調査で、1世帯あたりの消費支出が前年同月比3.9%減(物価変動を除いた実質値)となったことを明らかにしました。 マイナスは4か月連続となりますが、これは、昨年10月の消費増税により、感染症の拡大の影響が本格的に出る前の段階で既に、国内消費が大きく冷え込んでいることを意味します。 今、増税と感染症のダブルパンチが日本経済に与えるダメージを考え、前回号(2月21日号)でも申し上げたように、消費税の標準税率を8%に戻す、ないしは5%に引き下げることが肝要と考えます。 成長戦略インサイト(4)中国リスクに動じない経済体制の構築を 2020.02.21 http://hrp-newsfile.jp/2020/3829/ 幸福実現党成長戦略部会長 西邑拓真 ――17日、内閣府は19年10月~12期の国内総生産(GDP)速報値(1次速報)を発表した 今回の発表により、物価変動の影響を除いた実質値で、当期のGDP成長率は、前期比1.6%減、年率換算では6.3%減となったことが明らかとなりました。 特に、民間最終消費支出、民間企業投資はそれぞれ、前期比で2.9%減、3.7%減(ともに実質値)と、国内民需の柱となる各項目が大幅減となっています。これについては、台風や暖冬による影響があるとの見方もありますが、やはり昨年10月に施行された消費増税の影響が最大の要因であることは、論をまちません。 日本政府が消費増税を強行したことについて、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)や英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が、「大失態」だったとして批判的な記事を掲載しています。 「増税は最悪のタイミングだ」とも言われていますが、デフレ脱却もままならない中、家計や企業活動を圧迫する消費増税を強行したのは理解し難いというのが実際のところでしょう。 ――マイナス成長は次の期にも及ぶのではないかとも危惧されている GDPが2四半期連続でマイナス成長を記録した場合、欧米では一般的に、「リセッション(景気後退局面)に入った」とみなされます。こうした事態が現実のものとなるのは、十分に想定されます。 一般的に、増税後の消費水準は、増税前の段階までは回復しないまでも、増税直後からは時間とともに緩やかに回復に向かうものです。 しかし、新型コロナウイルス感染症の影響次第で、消費水準の回復は鈍くならざるをえず、このため、消費の停滞傾向は今後も継続することも想定されます。 同感染症は、場合によっては2、3カ月では収束せず、その影響は少なくとも1年程度は続くとの見方もあります。 従って、東京五輪・パラリンピックについては、開催延期どころか、場合によっては無観客での開催や、大会そのものを中止すべきとの論調さえ聞かれるところです。 このような事態となれば、関連消費にもたらす悪影響もあり、日本経済にとって大きな打撃となるのは間違いありません。 こうして考えると、日本は、2期連続どころか、最悪の場合、2020年は通年でマイナス成長になる可能性も指摘されるところです。経済的な観点から見ても、2020年代の幕開けはまさに、「苦難からの出発」となりつつあるのが現実です。 ――中国国内については、スタグフレーション(インフレと景気後退が同時進行すること)への懸念もある 中国では、特に感染が広がっている地域を中心に、住民が外出を控えているほか、工場などでの生産活動が滞っていることにより、経済は需給両面において停滞している状況となっています。 この中で、昨年流行したアフリカ豚肉コレラ(ASF)による豚肉の供給量の減少で、豚肉とともに、海鮮、野菜など代替となる食糧の価格が急騰しています。 こうして、中国では景気低迷と同時に、生活必需品を中心としたインフレが同時進行する「スタグフレーション」が、同感染症により今後一層進行するのではないかと危惧されているのです。 日本国内へ与える影響についてはどうでしょうか。例えば野菜については、基本的に今年は国内品が豊作であることから、今のところ大きな影響はないとも見られています。 ただ、工業製品などについては、前号(20年2月7日号)でも一部指摘しておりますが、中国からの部品供給が追い付かないことから、今後一層、日本製製品の産出に悪影響をもたらすことも危惧されています。100円ショップなどでは中国製品そのものが品薄状態になっているケースもあるようです。 今、日本は、中国リスクを踏まえた生産体制の見直しと、その一環としての製造業の国内回帰、「メイドインジャパン」の復活を推進すべきでしょう。 ――講じるべき対策の方向性は 製造業の国内回帰はいわば国策として積極的に推進すべきです。日本企業が海外に置く生産拠点を国内に戻す動き(リショアリング)を進めやすくするため、政府は、現在約29%となっている法人実効税率を15%にまで引き下げるなど、大胆な政策を実施する必要があるでしょう。 また、政府は、感染症の影響による中小企業の経営悪化を懸念し、企業の資金繰りについて5000億円規模で支援する策を実施するとしています。 これについては、同感染症の影響次第では、こうした支援策を拡充することを検討すべきと考えます。 さらに、景気対策の位置づけとして一部有識者からは、消費税について全品目に軽減税率を適用すべきである、との考えが示されています。 先行き不透明な今後の日本経済の見通しを踏まえ、まずは全品目への軽減税率の適用を実施すべきとの考えは、次善の策としては、一考に値するかもしれません。 ただ、本来は、中長期的に力強く経済成長を推し進めるのはもとより、インバウンド消費に頼らなくてもよい経済を構築するとの観点から、減税は限定的な措置に留めるべきではなく、標準税率自体をまずは8%に戻す、ないしは5%への減税を実施すべきと思います。 (参考) 「新型肺炎で中国スタグフレーションか」(大和総研「新興国経済ニュースレター(2020年2月6日)」より) 「中国、スタグフレーションの色合いが一段と強まる状況に」(第一生命研究所「Asia Trends(2020年2月10日)より」) 成長戦略インサイト(3)「中国国内外を揺るがす新型ウイルス」 2020.02.07 本日は、成長戦略インサイト(3)「中国国内外を揺るがす新型ウイルス」(2020年2月7日号)をお送りします。 成長戦略インサイト(3)「中国国内外を揺るがす新型ウイルス」(2020年2月7日号) http://hrp-newsfile.jp/2020/3813/ 幸福実現党成長戦略部会長 西邑拓真 ――新型コロナウイルス感染症が中国を中心に感染が拡大している 6日9時時点で、感染者数は合計で28,248人に及び、そのうち中国国内の感染者数は28,018名(そのうち死者は563名)、日本国内の感染者は21名となっています。 中国湖北省・武漢市では連日、新たな患者が1,000人超規模で確認されていますが、現地では、病床、医療人員の不足など、医療体制が追いつかない状況が続いています。治療が十分に行われていないこともあり、武漢市での感染者の致死率は4.9%と、中国本土全体(2.1%)に比べて倍以上に及んでいます。 ウイルスの感染拡大をめぐっては、中国当局による情報統制により、拡大阻止への初動が遅れたと見られています。 肺炎の危険性にいち早く警鐘を鳴らしていた武漢市の医師・李文亮氏が、自らも感染症に感染し、7日、同肺炎のため亡くなりました。 李氏は昨年末、SNS上のグループチャットにおいて、「海鮮市場で7件のSARS(重傷急性呼吸器症候群)に似た肺炎が確認された」との書き込みを行ったのに対し、武漢市の公安当局が「事実でない情報を流布した」として、李氏に訓戒処分を言い渡していました。 その他、李氏の事案以外にも、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」へのウイルス感染に関する書き込みについて、投稿の削除が相次いで確認されており、このことからも当局が情報統制に躍起になっている状況が伺えます。 先月20日、習近平国家主席はようやく「重要指示」を出し、「迅速な情報開示」などを命じましたが、これをかけ声倒れに終わらせては、国際社会が許さないでしょう。これを機にして中国政府は、言論に対する統制のあり方そのものを根本的に見直すべきであり、国際世論も喚起されるべきです。 武漢市内では今、駅や高速道路等を封鎖する措置がとられていますが、武漢市にいる1100万人のうち、500万人はすでに、武漢市外へ移動したとも言われています。今後の感染拡大は予断を許さない状況です。 ――中国経済への影響も大きい 中国はまさに、米中貿易戦争と新型コロナウイルス感染症のダブルパンチを受けて人・モノの動きに制限がかけられ、経済的に大きな打撃を受けた状況にあります。 こうした中、中国人民銀行は3日、金融市場に対し1兆2千億元(約18兆7千億円)を供給する公開市場操作を実施しました。ただ、経済活動そのものに制限がかけられている以上、資金供給を行ったとしても、効果は限定的とも見られます。 中国経済の不調は今後、世界経済へも大きく波及すると懸念されています。 韓国の現代自動車は4日、中国からの部品供給が滞ったことが原因となり、韓国国内にある全工場の稼働を停止すると発表しました。このように、中国に生産拠点を置く企業は今、サプライチェーンのあり方について、方針転換を迫られているのです。 翻って日本政府はこれまで、インバウンド消費の拡大を推進してきましたが、感染症の拡大で、その流れに影を落としています。いずれにせよ、これを機に改めて「チャイナリスク」を見つめ直し、日本政府としても内需拡大と、製造業の国内回帰を推進すべきでしょう。 ――太平洋の島嶼国であるミクロネシア連邦とツバルは、日本からの入国を制限する措置を取った 日本が「感染国」との烙印を押されたのは、日本政府による対策の不徹底によるところがあると言わざるをえないでしょう。 日本政府はすでに、在留邦人のうち希望者に対し、チャーター便で帰国させる措置を取っていますが、第一便での帰還者のうち2人が一時、検査を拒否するなど、水際対策の不徹底が露わとなりました。 それに対して、米国政府は先月31日、同感染症をめぐって「公衆衛生の緊急事態」を宣言し、湖北省から帰還する米国人を2週間隔離したり、中国に滞在歴のある外国人を入国拒否とするなど、徹底した対策を行っています。 日本政府は1日、同感染症を「指定感染症」とする政令を施行しましたが、その指定は、患者の強制入院等を可能とする「2類」に留めています。本来は、「無症状病原体保持者」に対して「検査」や「隔離」措置などを行える「1類」指定を行うべきでしょう。 いずれにしても、今回の感染症に対する日本政府の対応は、危機管理能力の脆弱性が改めて浮き彫りとなった形です。 また、中国・習近平国家主席の国賓待遇での訪日が、同感染症の流行によって延期されるとの見方もありますが、「延期」では本来十分ではありません。 習氏の国賓待遇については、日本政府として、中国政府による強まる人権弾圧、覇権主義に鑑み、全面見直しをすべきです。 (参考)高橋洋一「新型肺炎、対応が遅すぎる日本政府! 頭使わぬ厚労省に呆れ…遅すぎた『感染症指定』の施行日 中国配慮?のWHOの動きも鈍く」(夕刊フジ, 20年2月5日付) 以上 成長戦略ナレッジ(2)「地方独自としての消費減税の可能性」 2020.02.04 政調会成長戦略部会は、地方独自としての消費減税の可能性について、「成長戦略ナレッジ」として論点整理を行いましたので、皆様にご紹介いたします。 成長戦略ナレッジ(2)「地方独自としての消費減税の可能性」(2020年2月3日) http://hrp-newsfile.jp/2020/3810/ 幸福実現党成長戦略部会長 西邑拓真 〇地方消費税の仕組み ・現在、消費税の標準税率は10%(軽減税率は8%)ですが、そのうち国税部分が7.8%(同6.24%)、地方消費税分が2.2%(同1.76%)となっています。現在の税制では、原則として地方消費税の税率は一律となっており、各自治体が独自に税率を設定できるわけではありません。 ・消費税は、負担者が消費者で、納税者が事業者と、負担者と納税者が異なるという意味で「間接税」と位置付けられます。事業者は消費税を国税分と地方税分を併せて税務署に一括して納付し、その後地方税分については各自治体(都道府県、市町村)に払い込まれる仕組みとなっています。 ・「消費税の最終的な負担は消費者であり、税収は最終消費者に帰属すべき」との考えにより、自治体に払い込まれる地方消費税額は、小売販売額や人口、従業者数などを基準に「精算」した上で配分されます。(*) (*)「地方消費税の精算基準の概要」(https://www.soumu.go.jp/main_content/000481794.pdf)参照 〇地方自治体が独自として消費減税するには課題もある ・ここでは、地域活性化策として地方消費税の減税を実施するにあたっては、どのような状況が起こりうるか議論していきます。まずは、税制を変更して、地方自治体が独自に地方消費税の税率を変更することができるようにした状況を想定します。 ・地域ごとに税率が異なることになれば、消費者や事業者などにとってもそうですが、消費税は小売段階だけでなく製造、卸売など中間段階にもかかることも考えれば、現状の「精算」機能を据え置いた場合などは、複雑な状況が起こることは避け難いと思われます。税率設定の自由化を行う際には、周辺の制度設計を見直す必要性が生じるなど、クリアすべき課題が多いというのが実際のところです。 ・欧州や北米では、国家間や国内の州・地方政府間で付加価値税、あるいは売上税の税率に差が生じている時、自身が属する地域ではなく、あえて税率の低い地域に足を運んで商品を購入するという「クロスボーダー・ショッピング」が生じることが観察されています。これは、税を含めた商品の価格差が、移動に伴う様々なコストを上回る際に生じるものです。 ・消費が行われる場が、税率が高い地域から低い地域へ移ることになれば、税率が高い地域はクロスボーダー・ショッピングが生じるのを避けるため、税率を低くしようとするでしょう。こうした動きが全国に広がれば、地域間で税率引き下げ競争が生じることも想定されます。 ・税率が下がること自体は喜ばしい面が大きいですが、税収減が伴わざるをえない部分も否定できません。国の財政状況を考えれば、現状では地方交付税交付金を大きく増額することは考えにくいため、地方自治体が減税策を行う際には、公共サービスの提供のあり方を見直すなど、地方行政のスリム化を図らなければならないでしょう。 ・また、地方消費税にかかる税率設定のあり方については現状のまま据え置くとした場合は、例えば、全国数カ所に「地域活性化のための特区」を設け、特区内の消費税は低く抑える、という方策も考えられます。ただ、人口減少に喘ぎ、地方活性化を急ぐべき地域は多く存在するほか、クロスボーダー・ショッピングが行われて特区周辺の消費が減退して不公平な状況が生じる可能性を含むため、特区の選定に向けては、一定の根拠が求められることになるでしょう。 〇地域活性化に向けて ・以上、様々な検討課題は残されてはいるものの、消費税の減税策については、「消費税の5%への減税を目指す」のを前提としながらも、当面の代替案として、「(a)地方消費税は地方が独自に設定できるようにするなど一連の制度改正を行い、地方消費税や交付税交付金に頼らない地方自治体(地方行政のスリム化や、企業や住民の誘致など他の地方活性化策による税収アップ)を目指しながら、地方自治体として消費税の地方税分を引き下げる、もしくは(b)全国に数カ所、地域活性化のための特区を設け、特区内で独自の消費税率(例えば5%)を設ける。」とするのも一つでしょう。 ・その他、地域活性化に向けては、農業分野や都市開発などにおける規制のあり方の見直し、都市・地方間における物流・人的交流の活性化に向けたリニア新幹線の整備をはじめとしたインフラ整備、観光資源の最大限の活用など、様々挙げられるでしょう。 ・地方を中心に少子高齢化が急激に進行するわが国にあって、地方独自として消費減税を実施するとの可能性を含めて、有効な地域活性化策の実施が急がれます。 (参考) 鈴木将覚「地方消費税の役割と課題」(みずほ総合研究所)(2015年2月4日) 深澤映司「地方消費税を巡る税制立設定の自由化に伴う経済的影響」(国立国会図書館レファレンス)(2014年4月) 以上 成長戦略ナレッジ(1)「新型コロナウイルス感染症の流行について」 2020.01.30 政調会成長戦略部会は、新型コロナウイルス感染症の流行について、「成長戦略ナレッジ」として論点整理を行いましたので、皆様にご紹介いたします。尚、本文は、1月30日時点での見解となります。 成長戦略ナレッジ(1号)「新型コロナウイルス感染症の流行について」 (2020年1月30日) 〇現在、中国・湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症が流行しており、感染者数は1月30日9時時点で7,794名となっています。(中国国内の感染者は7,711名、(そのうち死者は170名)、日本国内の感染者は9名。) 〇日本政府は在留邦人のうち希望者に対して、チャーター便で帰国させる措置をとっており、既に第2便による帰国まで実行されています。 *新型コロナウイルス感染症に関する日本政府の対応等については、下記URL(首相官邸HP(https://www.cas.go.jp/jp/influenza/200130_corona.pdf))参照。 〇第1便での帰国者のうち2人が、ウイルス検査を拒否しています。2人は現時点で症状がないとはいえ、ウイルスの潜伏期間は2週間とされており、感染している可能性を排除することはできません。これを踏まえても、政府による対応の甘さに疑問を呈せざるを得ません。 〇政府は28日、同感染症を「指定感染症」に指定し、感染が確認されれば、強制入院や就業制限の措置をとることができるようになりましたが、症状が確認されない場合には、基本的にはそれらの対象にはなりません。 〇武漢にいる自国民を帰国させる際、他国では、症状が出ていない人を含めて2週間隔離する(米国)などといった措置が取られています。そのほか、台湾はいち早く、武漢との団体観光の往来を禁止するとの措置をとっており、フィリピンでは、武漢からの観光客について、強制的に武漢へ送還するなどの措置が実施されています。 〇これ以上の感染拡大を阻止するためにも、日本政府に対しては今後、水際対策の徹底や強制的措置の強化のほか、一層の検査体制の充実、正確で迅速な情報開示等を行うよう求めたいところです。 〇また、新型コロナウイルスの流行によって、中国の習近平国家主席の国賓待遇での来日が延期されるとも一部で取り沙汰されていますが、中国共産党政権による強まる人権弾圧、覇権主義に鑑み、本来、日本政府として習氏の国賓待遇を全面的に見直すべきです。 〇中国経済は、米中貿易戦争からの回復を目指す中、新型肺炎によって人・モノの動きに制限がかけられ、大きな打撃を受けつつあり、世界経済への波及も懸念されるところです。日本としても、国内経済への影響を見据え、内需主導型経済への転換を本格的に考えなければならないでしょう。 以上 すべてを表示する « Previous 1 2 3 4 5 Next »