Home/ 黒川 白雲 黒川 白雲 執筆者:黒川 白雲 前・政務調査会長 朝鮮半島有事:在韓邦人救出に向け、早急に法改正や特措法の制定を進めよ! 2011.12.27 北朝鮮の最高指導者金正日総書記が12月17日に死去し、その後継者に金正恩氏が立てられました。金正恩氏はまだ若く、後継者として北朝鮮に浸透しているとは言い難く、その実績も非常に少ないものがあります。 このことから、金正恩氏が体制固めを強化すべく、規模の大小にかかわらず、何らかの軍事的行動に出て「実績づくり」に走ることが危惧されています。 そこで思い起こさなければならないのは「朝鮮戦争は未だ終わっていない」という事実です。朝鮮戦争は1953年7月27日発効の停戦協定によって「休戦」していますが、これは「戦争が終わっていない」ということを意味しています。 どちらかが協定を破棄するような事態になれば、再び戦争が開始されるリスクを常に伴っており、そのリスクが低くない以上、朝鮮半島に隣接する日本も万全の備えを整えていく必要があります。 朝鮮半島が有事に至った場合、日本にとって真っ先に問題になるのは、在韓邦人(韓国に住んでいる日本人)の救出です。在韓邦人は長期滞在者・永住者が約2万9000人、旅行者が毎日約9000人で、合わせて約3万8000人になります。 幸福実現党は金正日氏の死去に際し、「幸福実現News号外」を配布致しておりますが、その中で、真っ先に「自衛隊による在韓邦人救出に向けた法整備を行う」ことを挙げています。⇒http://p.tl/MEqI 昨年12月、延坪(ヨンピョン)島砲撃事案を契機に、菅前首相は、半島有事の際、拉致被害者を含めて邦人の救出に自衛隊の輸送機を派遣する考えを表明しました。 しかし、韓国側から「日本軍に対する韓国人の感情を度外視した浅はかな発言だ」といった猛反発を受け、仙谷前官房長官が「頭の体操に過ぎない」と菅氏の発言を全面否定して、うやむやに終わっています。事態は何も進展していません。 先日の野田首相と李明博大統領との日韓首脳会談でも、報道を見る限り、在韓邦人の救出問題は話題にも上がっていません。 今年のリビア動乱の際も、大使館員は2月25日に脱出しましたが、現地に7人の日本人が取り残されました。この期に及んでも、民主党政権は航空自衛隊所属の政府専用機をリビアに飛ばすことを検討せず、結果、内6名は韓国企業の手配で出国し、全員が出国したのは3月5日でした。 こうした経緯を鑑みると、民主党政権は半島有事の際、国民の生命と財産を守る責任を放棄し、4万人近い在韓邦人を見殺しにするであろうことは容易に予測がつきます。 もし、朝鮮戦争が再び開戦という事態になれば、韓国の首都ソウルは軍事境界線(38度線)から約50kmしか離れておらず、北朝鮮が短距離弾道ミサイルで首都ソウルへを攻撃することが想像に難くありません。 北朝鮮が保有しているとされる短距離弾道ミサイルは「スカッド」と「ノドン」の2つですが、両者とも高性能火薬を詰めた弾頭、毒ガスを詰めた弾頭(化学兵器)、ボツリヌス菌などを詰めた弾頭(生物兵器)を取り付けることができます。 核ミサイルでなかったとしても、化学兵器弾頭や生物兵器弾頭が都市部に落下すれば甚大な被害が及びます。 その被害は砲撃によるものとは比較にならず、韓国軍の指揮統制が破壊されることにより、非武装地帯における韓国軍の作戦行動に大きな影響を与えます。 そうなれば、韓国政府は非常に大きな混乱に陥り、邦人救出の協力など望めるべくもありません。韓国政府は、まず自国民の保護を優先することが当然だからです。 日本政府にとっても、他国の領土における日本国民を保護・救出することは基本中の基本です。米国政府も、米軍を除いても約8万5,000人もいる在韓米国人の救出を優先させるでしょう。在韓邦人にとって、最後の頼みの綱は日本政府しかありません。 北朝鮮の韓国に対する攻撃が発生した場合、非武装地帯に近いソウル特別市にある金浦国際空港や仁川広域市にある仁川国際空港も同時に攻撃を受ける可能性が高いと言えます。 そこで、ソウルにいる日本人には安全な韓国中部や南部、例えば釜山広域市や大邱広域市に退避させ、そこから空路、若しくは海路で日本に向けて脱出するシナリオが最も現実的だと考えます。 日本に向けて脱出する場合、自衛隊機だけでは輸送キャパに限度があるため、政府は旅客機などの民間機をチャーターすることが必要です。 事態が韓国全土に拡大する可能性も十分に考慮する必要があるため、投入しうる最大限の輸送力を以って、極めて迅速に輸送することが必要です。 1999年に自衛隊法が改正され、海外の自国民を救出するために、自衛隊の艦艇や軍用機を使用できるようになりましたが、「当該輸送の安全について…確保されていると認めるとき」という条件が付いています(自衛隊法第八十四条の三)。 しかし、安全な状況であれば、民間機を利用すれば良いわけで、有事においても自衛隊が救出に参画できるよう、自衛隊法の改正や「朝鮮半島有事に係る在外邦人脱出に関する特別措置法」の制定、事前の韓国との取り決め等が急務です。 邦人救出はスピード勝負です。朝鮮半島有事における邦人救出については、日本政府は今から迅速に法改正等に取り組み、何度もシミュレーションを繰り返すべきです。 こればかりはアメリカや韓国などの他の国を頼りにするわけにはいきません。日本人の生命・安全・財産を守るのは、日本政府の最大の責務です。(文責・黒川白雲) 朝鮮半島の激動に備えよ――「国防軽視」の野田・民主党政権は即刻下野せよ! 2011.12.22 北朝鮮の国営メディアは、金正日氏の死去発表後、後継者の金正恩氏を「最高指導者」だった金日成主席、金総書記と同一視し、正恩氏を奉ることが金総書記の「遺訓」と強調しています。 金正恩氏は、将来的には、党トップの「総書記」に選出され、国家指導者としての体裁を整えるものと見られます。 しかし、金正恩氏の本格的な権力の掌握はこれからであり、金正日氏という強力なカリスマ亡き後、政権移行期に混乱が生じることも予想されます。 権力の継承に失敗すれば、北朝鮮国内で権力闘争が勃発し、内乱状態に陥る可能性があります。 北朝鮮の経済状態は悪く、慢性的な食糧不足のため、国民の不満が募っており、難民の流入や、体制の移行に伴う権力空白をついてのクーデター勃発も考えられます。 また、金正恩氏の軍事的暴走の危険性について、元公安調査庁・調査第2部部長の菅沼光弘氏は、下記のように指摘しています。(12/21夕刊フジ「“後継者”金正恩の狂気…戦争いとわぬ激情家の恐怖」http://p.tl/wDOY) ・「芸術的素養があった父と違うのは正恩氏が早くから軍事の道に入ったこと。大学でミサイルの弾道計算について研究し、日本海に向けてのミサイル発射実験の際には自ら立ち会って現場指導に当たった。北の国内では『戦争に踏み切る胆力がある』と評価されている」 ・「軍事力による恫喝が北にとっての唯一最大の外交手段。北の国内では『正恩氏なら日韓に対して大胆な挑発ができる』という期待感が高まっている。この意を受けて、正恩氏が過激な軍事行動を主導する可能性は否定できない」 既に、金正恩体制は17、19日に日本海に向けて、短距離弾道ミサイルを発射しています。 また、来年2012年は金日成生誕100年、金正日生誕70年、金正恩生誕30年の記念の年として「強盛大国の大門を開く」とのスローガンを掲げて来ただけに、軍事的な国威発揚の可能性が予測されます。 日本政府は不測の事態を想定し、日米韓の緊密な連携で認識を共有し、不測の事態への対応を万全にすべきです。 幸福実現党はかねてより、中国の覇権主義の動きや北朝鮮の暴発リスクを踏まえ、日米同盟の強化や、憲法9条の適用除外(憲法前文にいう「平和を愛する国」とは言えない国家に対し、憲法9条を適用されないことを明確にし、国際法上認められる自衛権を確立)等を訴えて来ました。 また、朝鮮半島有事も見据え、3万人といわれる在韓邦人の安全確保や、今も日本海を隔てて救出を待つ拉致被害者の保護を可能とする法制度は急務です。 しかしながら、野田首相は、19日正午に行われた金正日氏死去の特別放送に先立って、内閣情報調査室から放送情報を得ていたにもかかわらず、特別放送を待たずに街頭演説に向かうなど、危機管理能力を著しく欠いています。 また、金総書記の死去を受け、19日午後に開催された安全保障会議には、山岡国家公安委員長が遅刻、同氏は「事務方が出るべき」と釈明するなど、危機意識の欠如は甚だしい状況です。 そもそも、こうした国家の有事が予想される時期に、防衛大臣に「防衛問題の素人」を自認する一川保夫氏を据えるなど、野田首相の「安全保障軽視」は明確であり、「危機の時代」の国家指導者としては失格です。 日本を取り巻く安全保障情勢が不透明感を増す中、もはや野田政権に国民の生命・財産・安全を守ることを期待することはできません。 幸福実現党は、国家を守る気概なき野田首相の即時退陣、並びに、国防弱体化を進めて来た民主党政権の即刻下野・解散を強く求めて参ります。(文責・黒川白雲) 「若き独裁者」金正恩氏の「先軍政治」に備えよ! 2011.12.20 今、世界中の関心は、金正日氏の死去に伴い、「次期北朝鮮の指導者となる金正恩体制はいかなる政治体制となるのか」、また「若い金正恩氏が北朝鮮を統治できるのか」という点に集まっています。 北朝鮮から漏れてくる情報が限られている中、日本としても、北朝鮮の動きを注視し、金正恩体制の未来を予測していくことが不可欠です。 複数の日本政府高官によると、北朝鮮は19日午前、弾道ミサイルを少なくとも2度、日本海に向けて発射しました。 日本政府は、短距離弾道ミサイル「スカッド」の可能性が高いとしていますが、中距離弾道ミサイル「ノドン」だった可能性もあるとして分析を急いでいます。 政府高官は「以前から計画されていたものではないか」と指摘し、金正日総書記の死去とは直接関係ないとの分析をしています。(12/20産経) しかし、今回の報道については、二つの不審な点があります。 一つ目は、これが本当に「弾道ミサイル」であるのかという点です。その証拠に、弾道ミサイルの発射兆候が見られた場合に必ず動くアメリカ海軍のイージス艦が動いたという情報はありません。 韓国軍は、これまで北朝鮮が最大射程120kmの「地対空ミサイルKN-02」の射程距離を伸ばす発射実験を繰り返していたことから、今回のミサイルは「KN-02」を2発発射したと見ています。(12/20韓国聯合) これが「地対空ミサイル」であったとすれば、日本まで届く飛行距離はありませんが、韓国空軍にとっては十分に脅威となり得ます。 二つ目は、日本の政府高官は、今回のミサイル発射は「金正日総書記の死去とは直接関係ない」と断言している点です。 金正日氏死去報道の直前のミサイル発射は、世界中から注目を浴びることは分かりきっており、そこに意図が込められていると解する方が自然です。 実際、今回の北朝鮮のミサイル発射について、ロシア戦略技術分析センターのマキエンコ副所長は19日、「金総書記の死亡と明らかに関係がある」と語り、北朝鮮の目的は、「国際社会や周辺国に北朝鮮軍が十分な戦闘態勢を維持しており、いかなる状況にも対応可能だと示すこと」だと分析しています。(12/20韓国聯合) 今回のミサイル発射は、後継者の金正恩氏が軍を掌握しており、首領が代わっても、「強い兵器を保持し、戦闘態勢を維持する」という北朝鮮の強いメッセージが込められていると見て間違いないと考えます。 また、国際的な人権団体「アムネスティ」が最近受けた報告によりますと、金正恩氏の継承に脅威と見なされた「数百人の政府関係者」が粛清され、処刑されたり、政治囚収容所に収監されているとのことです。(12/19アムネスティ発表国際ニュース⇒http://p.tl/81My) 過去1年に渡ってアムネスティが収集した情報によれば、金正恩氏とその支持者は、抑圧を強化し、体制批判の可能性を徹底的に押しつぶすことによって、新たな支配体制を強固なものにして来ました。 金正恩氏は、これまで後継者としての地位を固めるために、祖父や父と同じく、反抗者や敵対勢力に対して「血の粛清」を繰り返し、「恐怖政治」によって、北朝鮮の権力を掌握して来た冷酷な人物です。 こうしたことからも、後継者の金正恩氏は、父親の金正日氏と同じく、独裁体制を堅持し、「先軍政治」を引き継ごうとしているは明らかです。 北朝鮮の政治体制の中核は「主体(チュチェ)思想」と「先軍政治」です。 「主体思想」とは、首領は頭であり、党は胴体であり、人民大衆は手足であるとして、首領の絶対的な権威を打ち立て、独裁体制の支柱となっている独自の政治思想です。 「先軍政治」とは、社会主義の推進役は領導者が率いる軍であり、軍が全てにおいて優先されるという考え方です。 北朝鮮のメディアは19日、金正恩氏を「チュチェ思想の革命的理念の偉大なる後継者であり、我が党と軍、人民の傑出した指導者」であり、「金正恩氏の統率力により、チュチェ思想の革命を実現する保証がもたらされる」と報道しています。 こうしたことからも、日本としては、金正恩氏が「主体思想」「先軍政治」を堅持すると見て、有事に備え、日米同盟を強化し、安全保障を強化すると共に、早急に韓国やロシアなどの周辺国とも連携して万全な対策を講じていくべきです。(文責・黒川白雲) 国家公務員のボーナス4.1%増の欺瞞――公務員の給与を景気連動型にせよ! 2011.12.16 12月9日、国家公務員の冬のボーナス(期末・勤勉手当)が支給されました。管理職を除く一般行政職の平均支給額は61.7万円で、前年より2.4万円(4.1%)増額となりました。 政府は東日本大震災の復興財源を生み出すため、ボーナスの一律1割カットを目指していましたが、与野党対立で関連法案の成立が間に合わなかったため、結果的に「ボーナス4.1%増額」という、国民にとって全く理解できない結果に至っています。 そもそも、人事院は9月30日、国家公務員一般職給与を平均で年間0.23%、1.5万円引き下げるよう内閣と国会に勧告していました。 しかし、政府は人事院勧告を無視して、震災の復興財源確保のため、ボーナスの10%カットを含む、給与を平均7.8%引き下げる特例法案成立を優先させる判断をしました。 特例法案成立が成立しなかったのは、野党からの法案修正案に対して、民主党の最大の支持勢力である連合の意向を受けた労組系議員のドンである輿石東幹事長らが反対して「ゼロ回答」をしたため、与野党合意に至らなかったことが原因です。(12/3産経) 結局、官公労に支配された野田政権は、0.23%引き下げの人事院勧告を無視した上、給与を平均7.8%引き下げる特例法案も成立を断念。「ドジョウ戦略」で巧みに公務員ボーナス4.1%増額を成就しました。 世界的な不況と東日本大震災により、民間企業の今冬のボーナス額は前年比0.3%減の37.8万円(みずほ証券調べ)と、3年連続の減少となっています(11/2産経)。 民間のボーナス減少の理由について、みずほ証券は「東日本大震災直後に企業活動が制限された影響や政府の23年度補正予算の成立が遅れ、復興需要も遅れているため」としています。 政府の責任で不況が深刻化しているのに、公務員だけがボーナス増となり、国と地方の公務員のボーナス平均は76.5万円(みずほ証券調べ)で、民間平均37.8万円の2倍以上となり、「官民格差」は広がるばかりです。 日本は既に「官」のみが肥え、「民」がやせ衰えていく「国家社会主義」の兆候を示しています。 野田政権は、臨時国会の会期を延長せず、国家公務員の給与引き下げ法案の成立を断念すると共に、国会議員の定数削減などの懸案も全て先送りし、身を削ることなく、復興増税を成し遂げ、消費増税に突き進もうとしています。 国民は「まず国が身を削る」といった虚言を吐いて復興増税を成立させた政府の責任を追及すると共に、消費税増税を断固拒否すべきです。 また、幸福実現党は、景気の変動に連動して公務員の給与も上下する「公務員の景気連動型給与体系」を政策として掲げています。 これは民間の業績連動型給与と同様、給与や賞与の一定割合をGDP成長率、あるいは日経平均株価などと連動させる給与体系です。 これが実現すれば、行政コストの削減を実現すると共に、官僚達が「デフレ下の増税」といった愚劣な思考をやめ、景気向上、経済成長をもたらす政策を最優先で選択するインセンティブともなるでしょう。 不況や震災で国民が苦しんでいる時に「増税」して負荷をかけると共に、自分達だけは私腹を肥やしている「悪徳役人」は日本には要りません。(文責・黒川白雲) TPP:日本は「自由貿易」を推し進め、「世界経済の牽引役」を果たせ! 2011.12.09 幸福実現党の機関紙「幸福実現News」第27号(党員限定版、PDF⇒http://p.tl/UTAp)が発行されました。 1面の特集では「TPP参加で大国の責任を果たせ」と題し、「企業同士の競争では『ゼロサム・ゲーム』のような弱肉強食的競争が起こりますが、国家間の自由貿易は『勝つか、負けるか』ではなく、国際分業によるwin-winの関係をもたらします」と述べられています。 では、なぜ、国家間の自由貿易は、企業の競争と違って、互いの国に利益をもたらす「プラスサム・ゲーム」になるのでしょうか? これは、経済学の最初期から論じられてきた重大なテーマです。 「経済学の祖」であるアダム・スミスは「重商主義」を徹底的に批判し、自由貿易によって経済が活性化し、国富が増大することを明らかにしました。 「重商主義(貿易差額主義)」とは、輸出増大を図る一方、「関税」によって輸入を制限することにより、国内産業を保護育成しようとする保護貿易政策です(「輸出-輸入」の差額を最大化させる政策)。 これは輸出を「善(利得)」、輸入を「悪(損失)」と見る考え方で、TPP批判論者の多くがこの間違いに陥っています。 アダム・スミスは、輸出が「得」で、輸入が「損失」と考えるのは「重商主義が『富は貨幣あるいは金銀に存する』という通俗的な見解に立っている」からだと批判しています。(鈴木真実哉教授著「『重商主義』再考」(聖学院大学論叢第18巻第2号2006.3)⇒http://p.tl/xgsh) このアダム・スミスの重商主義批判を理論化したのが、リカードの「比較優位論」です。 これは簡単に言えば、自由貿易が進めば「国際分業」が進み、互いの国が最も得意とする分野(生産性の高い分野)に、資源(労働力、資金等)を集中することで、各国の生産性が高まり、国富が増大し、世界全体の生産性も高まるという理論です。 「比較優位の原則」とは、例えば、会社の社長がその秘書よりもタイピングが上手かったとしても、社長はタイピングを秘書に任せて経営に専念し、秘書は経営ではなくタイピングに専念した方がトータルの生産性が高まることは数学的にも明らかです。 幸福実現党が、TPPによって安い輸入品を入れると共に「日本経済は、もう一段の高付加価値産業へのシフトを成し遂げるべき」と提言しているのは「比較優位論」にも則っています。 では、こうした「自由貿易が経済を活性化させる」という経済学の理論は、現実の経済にあてはまるのでしょうか? 大戦後、発展途上国や社会主義国の多くは、先進国経済に席巻される恐れから「貿易の自由化」を拒み、高関税、非関税障壁などの保護貿易政策を取ってきました。 しかし、保護貿易政策を行った国家で急速な発展を遂げた国は一つも生まれませんでした。 その中で、韓国、台湾、香港、シンガポールといった「アジアの四小龍」が貿易自由化を推し進め、急速な経済成長を遂げました。 有名な事例として、米国から台湾に戻ってきた著名な経済学者が、貿易自由化や資本を誘致することが台湾の経済に大きく貢献するはずだと政策転換を迫り、それが台湾の成功に繋がったと言われています。(伊藤元重著『ゼミナール・現代経済入門』日経新聞社刊) こうした国々の経済成長を見て、中国、タイ、マレーシア、インドネシアなども保護貿易から「開放路線」に政策転換し、急速な成長軌道に入りました。 「自由貿易が、国の経済に活力をもたらす」というアダム・スミスの理論は、歴史的にも実証されています。 TPPは「アジア太平洋自由貿易圏 (FTAAP)」 の構築に向けた一過程であり、TPPを道筋として、将来的にはWTOが目指している世界的な自由貿易圏の構築を目指すべきです。 日本はTPPを通じ、より一層の貿易の自由化を推し進め、もう一段の経済成長を成し遂げると共に、「世界経済の牽引役」を目指すべきです。(文責・黒川白雲) 復興増税成立――政府の無駄を削減すれば増税の必要はない! 2011.12.01 東日本大震災の復興財源を賄う臨時増税などを盛り込んだ復興財源確保法案が11月30日、可決されました。 13年1月から所得税は納税額に2.1%上乗せする定率増税を25年間実施。個人住民税は14年6月から10年間、年1000円上乗せされます。また法人税は実効税率を5%引き下げたうえで、その範囲内で3年間増税されます。 野田首相は「将来世代に負担を先送りしない」と言いながら、民意を問うことなく、25年間に渡る実質「恒久増税」をなし崩し的に成立させました。 民主主義の根本には「(民意を無視した)政府の勝手な増税を許さない」ことがありますが、野田首相はこの一線を超え、まさしく「独裁」の域に入りました。 また、政府は「財源が足りないから増税する」と説明する一方で、財務省は11月30日、政府・日銀が10月28日以降、約1か月間に行った外国為替市場での市場介入額が9兆916億円だったと発表しました。 10月31日の介入額は7兆5000億~8兆円前後と見られており、10月31日以降も、介入の事実を公表しない「覆面介入」を続けていたことが明らかになりました。 政府・日銀の介入は、8月分と合わせて約12兆円と見られていましたが、実際には約13.5兆円という、復興増税額(10.5兆円)をはるかに超える額を為替介入に投下していたことが明らかになりました。 単独介入の効果の薄さ、単独介入に対する国際的批判を鑑みるに、13.5兆円という介入資金枠を復興財源に回すべきでした。そうすれば、復興増税を回避することができたはずです。 ※為替介入の資金は、政府が政府短期証券を発行して借金で調達していますが、既に政府短期証券は171兆円まで残高が膨らんでおり(10/29読売)、更に円高によって、外国為替資金特別会計は年間の税収額(40兆円程度)に相当する「含み損」を生んでいます(11/2ブルームバーグ)。 また、復興増税が成立した直後の12月1日、野田首相は安住財務大臣に対して、2兆円を超える規模の第4次補正予算案の編成に入るよう指示しました。 会談後、安住財務大臣は「財源については、赤字国債などは発行せず、国債の(利払いの)不用額などが出てくるので、その中で対応する。規模は2兆円を下回ることはないと思う」と述べ、2兆円を超える規模の埋蔵金の存在を示唆しました。 幸福実現党は「国債整理基金特別会計の剰余金(10兆円程度)で財源を捻出すれば復興増税は必要ない」と主張しておりましたが、復興増税成立前にはそうした埋蔵金の存在を一切、秘匿し(あると分かれば復興増税不要論が盛り上がるため)、復興増税成立直後に埋蔵金の存在を明かすのは非常に卑怯な手口です。 今後、政府は復興増税をスプリングボードとして、消費税率を10年代半ばまでに10%まで引き上げる法案を次期通常国会に提出する予定ですが、1997年の消費税増税でも日本経済は痛い経験をしましたように、消費増税は景気に対して極めて深刻な打撃を与えます。 政府は増税に次ぐ増税を企図すべきではなく、特殊法人等への補助金や財政支出を含む、膨大にして多岐に渡る無駄を削減すると共に、増税ではなく、経済成長によって税収を増やしていく「成長戦略」をこそ選択すべきです。(文責・黒川白雲) TPPを巡り、せめぎ合う米中――国際戦略としてのTPP 2011.11.27 TPPを巡るグローバルな見取図として、11/27の産経新聞3面の記事には「TPP、ASEAN…地域経済圏作り加速 WTO停滞 米見切り」と題し、以下のように記されています。 「WTOに代わって存在感を高めているのが、TPP、ASEANなど特定地域内での貿易圏構想だ。背景にあるのは米国と中国の覇権争い。巨大な市場をもつ中国やインドがドーハ・ラウンドでの門戸開放に消極的で議論が停滞する一方で、中国はアジア地域で自由貿易圏構築に乗り出した。 これに業を煮やし、リーマンショック後の経済低迷から輸出拡大で抜け出したい米国がドーハ・ラウンドに見切りを付け、TPP推進にかじを切った。」 WTO(世界貿易機関)は153カ国・地域による多角的自由貿易体制を目指し、参加各国が自由にモノ・サービスなどの貿易するためのルールを定め、関税や貿易障壁(非関税障壁)を削減・撤廃する機関です。 しかし、今年が10年目となるWTOの多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)はアメリカと中国、ブラジル、インド等の新興国との対立などで遅々として進まず、決着の先送りを重ねる失態が続いています。 そこで、世界各国でWTOの例外として認められている自由貿易協定(FTA)や、物流のみならず、資本やサービスなどを含む自由化を目指す経済連携協定(EPA)が結ばれる潮流が強まっています。 WTOでの全体的なルール作りが歩みを止める中、各経済陣営が仲間作り初め、囲い込みを始めています。TPPはまさに多国間版の経済連携協定(EPA)だと言えます。 アメリカはTPPを核としてアジア太平洋の地域経済統合を目指す一方、中国はASEAN+3(EATFA)やASEAN+6(CEPEA)の枠組みを核として、中国主導のアジア自由貿易圏の構築に乗り出しており、アジアを舞台とした「米国と中国の覇権争い」が始まっています。 中国は米国が主導するTPP構想に対抗して、米国抜きのアジア自由貿易経済圏を目指しており、まさに鳩山元首相が提唱していた米国抜きの「東アジア共同体」構想を具体化せんとしています。 一方、米国がTPPを進める背景として、外務省幹部は「中国主導の貿易圏や東アジア共同体構築に歯止めをかけ、ASEANを含むTPPをFTAAPの核にする狙いがある」と語っており、中国のアジア太平洋地域への経済進出や影響力行使に対する牽制であることは明白です。(『日経ビジネス』11/7号) 実際、米国通商代表部のマランティス次席代表は「中国はアジア太平洋地域で極めて活発な経済活動を展開しており、それが我々がこの地域への関与を増やさなければならない理由だ」として、TPP推進の背景に中国の存在があることを明言しています。(11/13毎日) アジアを舞台に、米中の自由貿易圏の主導権争いが活発化する中、日本が「どちらにつくのか」によって趨勢が決まります。すなわち、アジア太平洋の「第三の大国」である日本がキャスティング・ボードを握っている状況にあります。 世界も日本の動向を注視しています。実際、日本のTPP参加表明に合わせて、カナダとメキシコも参加を表明しました。北米自由貿易協定(NAFTA)を構成する両国が参加表明したことで、TPPは一気に拡大する可能性があります。「TPPは実質日米FTA」といった批判も当てはまらなくなりつつあります。 昨年、横浜で開催されたAPEC首脳会議において、「FTAAP」(アジア太平洋自由貿易圏、日米中印豪を含むAPEC全域における包括的な自由貿易構想)への道筋としてASEAN+3、ASEAN+6、TPPといった地域的取り組みを発展させていく3つの案が提示されました。 中国が加わる最初の2つは未だ研究段階ですが、TPPは既に具体的な交渉が始まっており、日本としては、FTAAP、そして、その先にある世界自由貿易圏構想に向けての道筋として、TPPを経由することが最有力候補であると考えます。 普天間基地問題によって日米同盟の亀裂が生じる中、TPP参加は日米同盟の再構築の出発点ともなるでしょう。日本は日米同盟に基づく自由貿易体制の最大の恩恵国であり、今更、覇権主義を拡張する中国の経済圏に入り、「東アジア共同体」を作るという選択肢はあり得ません。 TPPは単に経済上の問題にとどまらず、日本の安全保障にとっても大きな意義を有しています。こうした戦略的視点からTPPの意義と役割を捉え直していく必要があります。(文責・黒川白雲) 米海兵隊のオーストラリア駐留と日米同盟の未来 2011.11.17 11月16日、オバマ米大統領が就任後初めてオーストラリアを訪問。オーストラリアとの軍事協力関係を拡大すると共に、アジア太平洋地域において米国のプレゼンスを高める方針を発表しました。 今回の訪問によって、米海兵隊をダーウィンとオーストラリア北部地域に駐留させ、軍事演習や訓練を実施することが決まりました。 海兵隊の規模は当初最大250人程度を予定し、今後数年間で2500人の駐留を目指すということです。 最前線で戦闘任務を受け持つ海兵隊を置くことで、南シナ海で海洋権益拡大を狙う中国を牽制する狙いがあるとされています。 これに伴って、日本政府内では「アジア・太平洋地域における米軍の配置が抜本的に見直される可能性もあるのではないか」という懸念も出ており、新聞各紙とも、在沖縄海兵隊の移転計画について関心が集中しています。 毎日新聞(11/14)は「<在日米軍再編>米海兵隊、『司令』と『戦闘』分散 一極集中の危険を回避」と題し、以下のように述べています。 「欧州などに比べ、アジア太平洋には政治的に不安定な地域が多い。クリントン米国務長官は外交誌『フォーリン・ポリシー』(11月号)で、アジア太平洋の米軍が今後、 (1)地理的に配置を分散する (2)作戦面での弾力性を高める (3)駐留国などの『政治的な持続可能性』に配慮する の3原則に基づいて再編されるとの見通しを示している。 背景には、中国軍が弾道ミサイルの精度を高め、海軍力、空軍力を増強している事情がある。グアムに海兵隊の一大拠点を設けて『一極集中』すれば、弾道ミサイルの格好の標的となる。海兵隊の司令部や拠点を分散すれば、攻撃される危険性を減じ、万が一、攻撃された場合にも反撃能力を温存できる。」(引用終わり) このように、米海兵隊が中国のA2/AD戦略の影響下にある日本から、影響外にあるオーストラリアに分散、若しくは移設され、日米同盟は破棄されるとする見方(例:JBpress「日米安保破棄を真剣に検討し始めた米国」⇒http://goo.gl/VBPhF)も出ていますが、現状では、日本から海兵隊がすぐに撤退することは考えられません。 なぜなら、地理的に見て、オーストラリアは海兵隊の作戦基地としては遠過ぎるからです。 オーストラリアから南シナ海に展開するには距離的に有利ですが、想定される中国の台湾侵攻や朝鮮半島有事に即応するためには、余りにも距離が遠過ぎます。 また、オーストラリアは、地理的に大規模な部隊を動かすにはあまり適しておらず、1万数千人と言われる在沖海兵隊を代替するには規模も施設・設備も違い過ぎます。 したがって、現在想定される米軍の対中国戦略から見て、オーストラリアが日本に代わって、アジア太平洋における米海兵隊の中核の拠点となることは考えにくいと言えます。 今回のオーストラリアへのアメリカ海兵隊駐留は、締結六十周年を迎えた「太平洋安全保障条約」(オーストラリア・ニュージーランド・合衆国の間で結ばれた軍事同盟)の同盟強化が目的であると考える方が自然でしょう。 今のところ、海兵隊にとって最も必要な条件は「良好な環境にある部隊集結地」です。海兵隊の航空・海上・地上部隊を集結させ、戦闘能力維持のために訓練を施す、そのための良好な環境としては、現状では「沖縄」が最適な地です。 普天間基地の移設予定先である辺野古のキャンプ・シュワブは、海兵隊の戦闘強襲大隊や訓練場、弾薬庫などが集中しており、「海兵隊の足」の役割を担う普天間飛行場の海兵隊航空部隊が移設されれば集結効果は高まります。 しかし、普天間基地の移設問題がこじれ、沖縄の左翼勢力や仲井真知事が強く主張している「普天間基地の県外移設」に追い込まれれば、海兵隊部隊が分散・離散され、「沖縄が最適の地」とは言えなくなります。 その意味で、国内の米軍基地問題にも決着をつけることができない日本政府の失態が、アメリカ政府当局の判断に影響を与えていることも事実です。 今回のオーストラリアの海兵隊駐留は、即座に米海兵隊の日本撤退を意味するものではありませんが、このまま、何も決められない民主党政権が続き、普天間基地問題が暗礁に乗り上げれば、日米同盟の先行きが不透明になることは明らかです。 中国の脅威が日に日に迫る今こそ、「日米同盟」を基軸としつつ、「自分の国は自分で守る」自主防衛体制を構築する、そうした外交・国防の鉄則を掲げる幸福実現党の政策実現が求められているのです。(文責・黒川白雲) アメリカの国防戦略の変化を見極めよ! 2011.11.11 昨日のHRPニュースファイルに、矢内筆勝局長の「『日米安保破棄」の危機!?」が掲載されました。極めて重要な問題提起です。 では、果たして、実際に日米同盟は破棄される危険があるのでしょうか?この件について、もう少し考察してみたいと思います。 そもそも、なぜ、今、アメリカはアジア太平洋政策を見直そうとしてるのでしょうか? その理由は「米国防費大幅削減の危機―迫られる日本の『自主防衛』強化」にも書きましたが、米国の財政問題に起因して国防予算が大幅削減される危険があり、その中で、米軍は国家安全保障政策全体を見直さざるを得なくなっているのが主な原因です。 では、国防予算の大幅削減が現実となった場合、日米安保は破棄され、米軍は撤退していくのでしょうか? まず、短期的には日米安全保障条約が破棄されることは無いと考えます。 アメリカのアジア太平洋政策は、海洋戦略上は日本とフィリピンに大きく依存して来ました。これは大型空母が着岸できる整備された良港であり、保有が確立された海軍拠点が横須賀海軍基地とスービック海軍基地の2ヶ所しかないためです。 特に、1991年にフィリピンのスービック海軍基地から米海軍が撤退した後は、アジア太平洋の海軍拠点は日本の横須賀海軍基地のみとなりました。 21世紀初頭から本格的に開始された米軍再編(トランスフォーメーション)に際しても、普天間基地の返還等は予定されていても、基本的な日本の位置付けは変わっていません。 現在、原子力空母は太平洋両岸、つまり日本の横須賀とアメリカのノーフォークを中心として常時2隻以上が配置についています。 太平洋上の危機に対して、横須賀の空母ジョージ・ワシントンが初動を行い、ノーフォークの空母が増援にかかるというのが当面の戦略であり、日米安保が運用の基軸となっています。 では、昨日のHRPニュースファイルにありましたように、アメリカ海軍の基地をオーストラリアに移すべきとする見解はどこから生まれているのでしょうか? これは「撤退」というより、アメリカ軍の対中新戦略である「統合エアシーバトル構想(空海戦闘)」の一環であると考えられます。 この構想は、2010年2月に公表された「4年ごとの国防計画見直し(QDR2010)」に掲げられた取り組みの具体化であり、中国の「接近阻止/領域拒否(A2/AD戦略)」に対抗した戦略です。 これはシンプルに言えば、今までの直接的な戦いから、遠距離での撃ち合いに変化していく構想であり、米軍がトランスフォーメーションにより、部隊編成や基地の配置を変えている一環でもあります。 「QDR2010」にも明記されているように、アメリカが本戦略を展開をしていくためには、有力な同盟国の助けを必要としています。 米国にとって西太平洋は最も重要な戦略地域であり、この地域の覇権争いに中国が台頭している現在、米国にとっては日本は重要なパートナーであり続けます。 むしろ、日米同盟が破綻する可能性があるとすれば、民主党政権による普天間基地移設問題の白紙撤回など、日本政治や外交の迷走が原因となって破裂する可能性を危惧すべきです。 政府には今、日本が置かれている国際的戦略環境を正しく認識して、国防戦略を立案し、強固な日米同盟を構築していく構想力と実行力が求められているのです。(文責・黒川白雲) 八重山教科書問題、決着か――文部科学相、竹富町に自費購入促す 2011.10.27 8月23日に八重山採択地区協議会が育鵬社の公民教科書を選定してから2ヶ月。石垣市、与那国町は育鵬社の教科書を国が無償供与、竹富町は自費で東京書籍を購入するという方向性が出て来ました。 問題の発端は、8月23日の同協議会の結果を受けて、石垣市教委、与那国町教委が育鵬社を採択したのに対し、竹富町教委が育鵬社の採択を断固拒否。東京書籍を採択する意向を示して来たことにあります。 これに対して、中川文部科学相は26日の衆院文科委員会で、竹富町について「教科書の無償給与の対象にならない」と述べ、育鵬社版を採択しなければ教科書の無償給与は認めず、東京書籍版を使用する場合は町の自費購入を求める考えを明らかにしました。 その理由として、中川氏は「文科省としては8月23日の採択地区協議会の答申と8月31日の協議会の再協議が協議の結果だと認識している。それに基づき採択した石垣市、与那国町の教育委員会は無償給与の対象になるが、協議の結果に基づいた採択をしていない竹富町はその対象にならない」と述べています。 これは、8月23日に育鵬社を選定した八重山採択地区協議会の選定こそが法的に有効であるとする幸福実現党の主張に沿ったものです。 無償措置を適用しない自治体が出れば、1963年の教科書無償措置法制定後初となり、こうした結論に対して、竹富町教育委員会は「違法なことはしていないのに有償にするのはおかしい」と反発しています。 しかし、「教科書無償措置法」により、採択地区の市町村は同一の教科書を採択しなければなりませんが、同協議会の要請を拒否し、従わなかった竹富町教委は「違法状態」を続けて来たと言わざるを得ません。 竹富町が育鵬社の教科書を使わず、東京書籍を使う場合は自費購入になりますが、その場合、4年間、竹富町民にしわ寄せが来ます。その責任は、個人的イデオロギーで無理を押し通して来た竹富町の慶田盛教育長にあります。 慶田盛教育長は「(育鵬社の)教科書は絶対に子どもの手に触れさせてはならない」とまで言い切っています(8月21日『琉球新報』)。これは「公正中立」が求められる立場にありながら、文科省の検定を通った教科書を選択肢から強引に排除する、とんでもない問題発言です。 慶田盛教育長は2ヶ月以上の混乱を引き起こし、竹富町が教科書を購入するにせよ、税金という形で竹富町民の負担を増やした責任を取るべきです。 なお、自費購入を前提としつつも、文部科学大臣が竹富町教委のゴネ得を認めたことは、今後の採択制度の崩壊をもたらす危険があると共に、自費購入の措置が「義務教育は、これを無償とする」とした憲法第26条に抵触する恐れもあります。 本来であれば、文部科学大臣は、地教行法(地方教育行政の組織及び運営に関する法律)第49条、第50条に基づき、沖縄県教委を飛び越して、竹富町教委に対して、八重山地区採択協議会の答申に従って採択するよう是正要求、または指示すべきであります。(文責・黒川白雲) すべてを表示する « Previous 1 … 8 9 10 11 12 Next »