Home/ 遠藤 明成 遠藤 明成 執筆者:遠藤 明成 HS政経塾 「吉田ドクトリン」から脱却し、九条改正、国防軍編成、防衛産業の育成を目指す【後編】 2022.07.07 http://hrp-newsfile.jp/2022/4321/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「吉田ドクトリン」で日本が失ったもの(2):防衛産業 吉田ドクトリンを信じている人は、軍事にお金を使うことは経済の発展につながらないと考えています。 そうした考えのもとで、再軍備の勧めを断った結果、日本は、国家に不可欠な産業の一つを失いました。 それが、防衛産業です。 三菱重工のように自衛隊の装備をつくる企業はありますが、どの企業も、全体の中でその割合は低く、ほとんどが1割前後にとどまっています。 しかし、米国の防衛大手を見ると、ロッキードマーティンは9割以上が軍需です(71%が国防総省から受注。28%が世界への兵器輸出)。 レイセオンテクノロジーは軍需が65%を占めています(民間向け売り上げは35%)。 欧州を見ても、売り上げを占める軍需の割合は高く、英国のBAEシステムは9割、スウェーデンの国産戦闘機をつくるSAAB (サーブ)は8割あります。 日本には、防衛に特化した大手企業がなく、腰を入れて防衛産業に打ち込みにくい状況が続いているわけです。 2021年度の防衛費をみると、4分の3が現状維持に使われ、残りの4分の1から新規の装備費を出していますが、そのお金も、米国からの装備品購入に回される割合が増え続けています。 日本は、自国に防衛産業を育成しきれていないのですが、防衛装備を他国に依存しながら、自主防衛を実現することはできません。 国際政治アナリストの伊藤貫氏は、米国の兵器は「ブラックボックス」で管理されているので、もし、将来の大統領が「中国とは戦わない」と決めたならば、日本に売った兵器をすべて止めることが可能だとも指摘していました。 F35戦闘機を例にとると、予算が増えない中で米国兵器ばかりを買った場合、日本企業に払うお金が減り、戦闘機の生産基盤を維持できなくなります。 F2戦闘機の生産は終わったため、新しい需要を生み出さなければ、F35を買っている間に国内の技術者が離散し、日本は「戦闘機の作れない国」になってしまうのです。 そうした問題があるので、欧州ではユーロファイター、スウェーデンではグリペンという、自前の戦闘機を作り続けてきました。 防衛産業がなければ「独立」を維持できないからです。 こうした新型戦闘機の開発には「兆」の単位のお金がかかります。 それは、防衛予算の倍増なしには不可能なのです。 ◆防衛産業への投資は未来産業の育成のためにも不可欠 そもそも、軍事にお金を使うことは経済の発展につながらない、という考え方は、正しくありません。 日本でも、戦時中に戦闘機や軍艦、戦車などをつくっていた技術者は、戦後、民生用の航空機や船、自動車などの製造に力を注ぎ、経済発展に大きく貢献しました。 愛国心に満ちた技術者たちの力があって、「重厚長大」産業の復活が早まったのです。 たとえば、ヤンマーディーゼル社の山岡浩二郎社長は、「ヤンマーに入社した旧海軍の技術陣は、それこそそうそうたる顔ぶれであり、ヤンマーが今日あるための大きな礎石であった」と述べています(沢井実『海軍技術者の戦後史』名古屋大学出版)。 新幹線の振動問題を解決したのは、ゼロ戦の飛行を安定させた松平精という技術者です。 当時、新幹線開発を支えた鉄道技術研究所(鉄研)には、1000人もの旧軍技術者が集められていました。 軍事のために用いた技術力は、民間経済のためにも使えるので、軍事費を無駄な浪費と見なすのは、間違った考え方です。 今の社会のインフラをみると、軍事で使われて発展したものが数多くあります。 例えば、その一つが鉄道です。 プロイセンでビスマルクが宰相だった頃、モルトケ将軍は鉄道を用いて兵士をいち早く投入し、普墺戦争、普仏戦争に勝利しました。 鉄道は、社会の基幹インフラとなると同時に、軍の輸送や兵站を支える役割を果たしています。 航空技術は、第一次大戦前は、好事家の趣味程度のレベルでしたが、第二次大戦の頃には主戦力に変貌します。 そして、戦後世界を支える基幹技術となりました。 宇宙ロケットの技術と弾道ミサイルの技術も、かなりの部分が重なります。 原子力は兵器だけでなく、発電においても、エネルギー政策の基幹を担っています。 インターネットも、もとは軍用だったものが、民間に普及し、世界のインフラとなるに至りました。 軍事への投資には、基幹的な技術のレベルを高めるものが数多くあります。 世界の主要国が軍事に投資する中で、日本だけがそのお金を惜しんでいると、世界的な技術開発競争に劣後する危険性が高まるのです。 ◆「吉田ドクトリン」を乗り越え、真の独立、主権回復をめざす 国防軍も、防衛産業も、日本の独立を守るためには、不可欠なものです。 日本が21世紀に、独立国として、大国の責任を果たすためには、吉田ドクトリンから脱却しなければなりません。 憲法九条を抜本改正し、国防軍を編成し、自国の防衛産業を発展させる必要があります。 これがなければ、北朝鮮の核ミサイルや中国の軍拡には対抗できません。 日米同盟を維持しながらも、自主防衛力の強化を進めていかなければなりません。 米国が「世界の警察官」をやめた時代においては、自分の国を自分で守らなければならないからです。 そのために、幸福実現党は「吉田ドクトリン」からの脱却を呼びかけています。 そうであってこそ、日本が真の独立を果たし、主権を回復したと言えるからです。 経済大国となった日本は、いつまでも「一国平和主義、一国繁栄主義」を続けることはできません。 幸福実現党は、「自由・民主・信仰」を守り、中国や北朝鮮などの唯物論国家、一党独裁の国家から、アジアの国々を守るべく、力を尽くしてまいります。 【参考】 ・大川隆法著『国家繁栄の条件』幸福の科学出版 ・岸田文雄『岸田ビジョン』講談社+α新書 ・防衛白書 令和3年度版 ・『SAPIO 2015年10月号』 ・沢井実著『海軍技術者の戦後史』名古屋大学出版 「吉田ドクトリン」から脱却し、九条改正、国防軍編成、防衛産業の育成を目指す【前編】 2022.07.06 「吉田ドクトリン」から脱却し、九条改正、国防軍編成、防衛産業の育成を目指す【前編】 http://hrp-newsfile.jp/2022/4320/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「脱吉田ドクトリン」のための言論戦 幸福実現党は、参院選の公約で「日本は独立国として、いわゆる『吉田ドクトリン』、軽武装・経済優先の国家方針を転換し、国民の生命・安全・財産を守るための体制整備を急がねばなりません」と訴えました。 そう主張しているのは、この原則が、今後、日本を侵略を守るために、最も大きな障害となるからです。 吉田茂首相は、戦後講和を実現した1951年に、アメリカと安全保障条約を結び、「アメリカに守ってもらって、日本は経済活動に邁進する」という路線を敷きました。 アメリカに安全保障を依存し、軽武装のままで経済復興を最優先したのです。 1950年に朝鮮戦争が起き、アメリカが対日政策を転換した時、憲法改正の要請を断り、吉田茂は、アメリカを「日本の番犬」に見立て、経済成長に専念する体制をつくりました。 その後、日本は世界有数の経済大国になったので、長らく、この「吉田ドクトリン」がよしとされてきました。 しかし、今や中国の軍拡が進み、北朝鮮までが核ミサイルを日本に向けています。 米国が「世界の警察官」をやめた時代には、自分の国を自分で守らなければならないので、幸福実現党は「吉田ドクトリン」の転換を呼びかけています。 「半主権国家」となった日本を立て直そうとしているのです。 ◆「吉田ドクトリン」を愛している岸田首相 これに対して、岸田首相は、その著書で、自分が率いる宏池会こそが「吉田ドクトリン」の後継者だと主張しています。 「吉田茂の経済重視政策は、池田勇人元総理、大平正芳元総理、鈴木善幸元総理や河野洋平元衆議院議長、宮澤喜一元総理ら宏池会の先輩方に引き継がれました。結果からみれば、この方針により奇跡的な経済復興を遂げ、世界第三位の経済大国としての地位を回復することができました」(『岸田ビジョン』) これは、吉田首相がGHQの再軍備の勧めを断り、経済を優先したことが繁栄をもたらした、という歴史観です。 しかし、この考え方は、過去の「成功体験」が、日本を滅ぼしかねないことに目をつぶっています。 日本が「GDP比1%」の呪縛に囚われている間に、中国の公表軍事費は、日本の4倍以上にまで増えました(※円でいえば26兆3000億円程度。米国防総省は、その実態を1.1~2倍程度と見込む)。 また、北朝鮮はすでに700~1000発の弾道ミサイルを保有しています。 (※防衛白書令和3年度版は「『Jane’s Sentinel Security Assessment China and Northeast Asia』によれば、北朝鮮は弾道ミサイルを合計700~1,000発保有しており、そのうち45%がスカッド級、45%がノドン級、残り10%がその他の中・長距離弾道ミサイルであると推定されている」と記述) バイデン政権は、ロシアとウクライナの戦いに際して、他国のために核戦争をしないことを明らかにしました。 日米同盟があっても、防衛費の倍増や非核三原則の撤廃、自前の核装備の検討を、本気で考えなければいけなくなったのです。 ◆「吉田ドクトリン」で日本が失ったもの(1):自主防衛力と独立の気概 この「吉田ドクトリン」に関しては、米国への順応と経済復興だけが重んじられ、憲法改正や自主防衛力という、国の根本にあるべきものが軽視された、という批判があります。 その代表的な論者は「戦後政治の総決算」を掲げた中曽根康弘元首相でした。 中曽根氏は、戦後のかじ取りの難しさを考慮しつつも、「吉田路線で失われたものは無視できない」と考え、「吉田政治からの脱却」を訴えました。 しかし、それは志半ばで終わってしまいました。 安倍首相の「戦後脱却」も、かけ声だけで終わり、いまだ日本は、自主防衛が困難な体制に置かれています。 中国が台頭し、米国がアジア重視にかじを切っても、日本は同盟を強化する政策が実現できなくなっているのです。 国のトップが「自分の国を自分で守る」という理念を捨てたツケが、こうした形で回ってきました。 この問題に関して、大川隆法党総裁は、過去、何度も警鐘を鳴らしてきました。 「日本も、戦後、どこかの時点で、この「吉田ドクトリン」を見直さなければいけなかったのです。ここに大きな間違いがあったと思います」(『平和への決断』第5章 … page.211) 「神は、『クラゲのように漂って生きているだけの国家を許してはいない』」 「戦前がすべて間違っていたわけではありません。吉田茂の考え方のなかに、『日和見的な生き方』と、「責任を取らない考え方」があり、さらに、「神様のいる国としての国家運営という『神国日本』的な考え方が、スポッと抜け落ちていた」ということです。これが、戦後の「無神論国家」、「神様のいない国家」が、経済的にのみ繁栄した理由でもあります。この罪には、やはり、『マルクスに次ぐぐらいの悪さ』があるのではないでしょうか」(大川隆法著『国家繁栄の条件』幸福の科学出版) 《引用終わり》 この「吉田ドクトリン」によって、日本は憲法を改正できず、自主防衛の力を養えないまま、漂流する国となってしまいました。 識者の中には、生前の吉田に再軍備の意志があったという人もいますが、吉田政権の意思決定が、戦後政治に与えた影響は甚大でした。 その意志があろうがなかろうが、後代への影響を考えれば、吉田茂が、その責任を問われるのは当然です。 国会答弁で、「再軍備は未来永劫しないと言っているのではない。現下の状況においてこれを致すことはしない」とは言いましたが、再軍備のチャンスを逃したことが、その後の歴史に大きなツケを遺すことになったのです。 吉田茂に対して、大川隆法党総裁は、憲法改正と再軍備が「『一つの国としての自主権であり、独立国家としてのかたちをつくるためのチャンスである』ということを彼が見抜けなかった」ことに「不明」があったと批判しました。 そして、それが「何十年も祟ることになるとは、おそらく、本人も思ってはいなかったのではないでしょうか」と指摘しています(大川隆法著『国家繁栄の条件』幸福の科学出版) (後編につづく) 重大な分岐点が迫るロシア・ウクライナ戦争――停戦交渉の道を拓くべき【後編】 2022.07.04 重大な分岐点が迫るロシア・ウクライナ戦争――停戦交渉の道を拓くべき【後編】 http://hrp-newsfile.jp/2022/4315/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆泥沼化を避けるためには、停戦交渉が必要 今、欧米は、「どこまでウクライナへの武器支援を続けるのか」という問題を突き付けられています。 戦争を長引かせ、犠牲者が増えるだけとみて、支援を打ち切るのか。それとも、戦局が変わることを期待して、延々と支援を続けるのか。 この問題に、落としどころを示したのが、冒頭で紹介したキッシンジャー氏の提言だと言えます。 キッシンジャー氏は、アメリカがベトナム戦争を終わらせた時の大統領補佐官でした。同氏は、戦争は、どこかで終わらせなければいけないことを知っています。 しかし、ゼレンスキー大統領は、戦争をどこで終わりにしたらよいのかが見えていません。 現在、東部の帰属は戦争の結果で決めるしかなく、7月初の時点ではロシアが優勢です。 市民を民兵として動員するウクライナの戦い方は、敗勢に回った場合、多くの犠牲者が出るので、本来、ゼレンスキー大統領は、交渉が可能な間に「落としどころ」を考えなければいけません。 武器支援の中心を担う米英は、自分たちの血は一滴も流さずに、ウクライナに代理戦争を行わせ、ロシアを弱体化させようとしています。 支援なしには戦いを続けられない国は、はしごを外されたら終わりなので、キッシンジャー氏の忠告通り、「落としどころ」を考えるべきなのです。 ロシア・ウクライナに停戦を呼びかけたキッシンジャー氏は、ロシアと中国を同盟関係に追い込むことが、最も危険だと考えています。 フィナンシャルタイムズ紙のインタビューでは、以下のような大局観を述べています。(※3) 「ウクライナ戦争が終わった後、世界の地政学的状況は大きな変化を経験する」「すべての問題について、中国とロシアが同一の利害を持つのは、不自然なことだ」 「戦争後の状況では、ロシアは、最低限ヨーロッパとの関係や、NATOに対する姿勢を見直す必要が出てくる」「アメリカも、特にヨーロッパも、そうする必要がある」 「だから、2つの敵対国に対して、彼らを連携させるような形で、敵対的な立場を取るのは賢明ではない」「総合的な戦略からすれば、これからの時代、ロシアと中国を一体のものとして扱うべきではない」 今回、ウクライナをめぐって、欧米と日本がロシア叩きを続けた結果、中露が結託して動くことが増えてきました。 しかし、世界大戦の危機を避けたいのなら、中露の分断のための大戦略が必要です。 国際政治学者のミアシャイマー氏も、日本は、ウクライナ戦争の早期終結に向けて、米国に働きかけるべきだと論じました(『文芸春秋2022年6月号』)。 「ロシアではなく中国が本当の脅威であり、長期的にはロシアと協力するほうが合理的であることを、米国政府に理解させなければなりません。そのためにも、まずは日本が米国に対して、ウクライナ戦争を早期に終結し、全力で軸足を東アジアに向けるよう進言すべきです」 今まさに、中露を同盟関係に追い込み、そこに他の反米国がつらなって第三次世界大戦が起きることを防ぐための努力が必要なのです。 ◆この戦争の着地点はどこか? そうした大局観をもって、幸福実現党は、停戦とウクライナの中立化に向けた独自外交と、中露分断の必要性を訴え、3月以降、声明を出しています。 『日本はウクライナの中立化に向けた外交努力を(党声明)』(令和4年3月11日) https://info.hr-party.jp/press-release/2022/12477/ 『ロシアに対する追加制裁の撤回を求める(党声明)』(令和4年4月9日) https://info.hr-party.jp/press-release/2022/12565/ 幸福実現党は、バイデン政権のように「民主主義国家vs専制国家の戦い」という枠組みで国際社会を捉え、ロシアを敵視する路線では、中国の暴走は止められないと考えています。 「信仰ある国家vs無神論国家」という見方で捉え、信仰を理解するロシアを対中包囲網に参加させる戦略が必要だと訴えています。 我が党は、ウクライナの火種が次の世界大戦へと広がることを防ぐべく、力を尽くしてまいります。 (※3) フィナンシャルタイムズ紙のキッシンジャーのインタビュー Henry Kissinger: We are now living in a totally new era | FT https://www.youtube.com/watch?v=6b89jcNqgJo&t=279s 重大な分岐点が迫るロシア・ウクライナ戦争――停戦交渉の道を拓くべき【前編】 2022.07.03 http://hrp-newsfile.jp/2022/4314/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆ウクライナ東部の戦いは重大な局面に 6月以降、ウクライナの戦いは、ロシア軍が攻勢に転じています。6月下旬には、ロシア軍は、ウクライナ東部の要衝・セベロドネツク市を制しました。 ゼレンスキー大統領は、欧米に武器支援の拡大を求めていますが、「支援疲れ」が広がり、欧米の識者の中からは、停戦の勧めも出てきています。 その代表は、国際政治学者のキッシンジャー氏です。同氏は、5月23日に開催されたダボス会議で、以下のように提言しました。(※1) 「和平交渉および交渉のための活動を、今後、2カ月以内に開始する必要がある」「戦争の結果は、それらによって形づくられるべきだ」 「特に、最終的な露欧関係と、最終的なウクライナと欧州との関係との間で、克服しがたい(あるいは全く克服されない可能性がある)動揺と緊張が生み出される前に」 「理想的には、その境界線は戦争前の状況に戻すべきだ」 「それ以上を求めると、NATOが結束して取り組んできたウクライナの自由のための戦争ではなく、ロシアへの新たな戦争になってしまう」 「それ(ロシアへの新たな戦争)は、境界線を引くことを不可能にし、困難にする」 この提言は、ウクライナに、全領土の奪回を諦めることを勧めています。 戦争前には、ウクライナ東部で「ルガンスク人民共和国」が独立を宣言していたので、この主張は、ウクライナがクリミア半島や東部の親露派支配地域を放棄することを意味するわけです。 これに対して、ゼレンスキー大統領は、「和平という幻想との交換を提案する領土には、普通のウクライナ人が実際に住んでいる」と反発しました。 まず、ロシアを侵攻前の地点に押し戻し、その後、クリミア半島や東部2州を取り戻すと気勢を上げました。 しかし、全領土の奪回を目指すゼレンスキー氏の路線でゆくと、戦争は終わりません。 欧米とロシアの代理戦争がさらに激化し、多くの国民が命を落とすことになります。 ◆世界は対米追随国ばかりではない 日本のメディアは「ウクライナ応援」の一点張りですが、世界は、必ずしも、対ロ強硬派ばかりではありません。 まず、欧州を見ると、英国やポーランド、バルト3国などはバイデン政権のロシア弱体化路線を支持していますが、ドイツ、フランス、イタリアは停戦交渉が必要という立場です。 5月初めに、フランスのマクロン大統領は、ロシアに「屈辱を与えたいという誘惑や、報復したいという気持ちに屈してはならない」と述べました。 イタリアのドラギ首相は、訪米時に、欧州の人々は「停戦の確保と、信頼できる交渉の再開について考えたいと思っている」と発言をしています。 ドイツのショルツ首相は、マクロン氏とともに、電話でプーチン大統領と対話し、ウクライナに滞留する穀物を出荷できるよう、南部の主要港オデッサの封鎖解除を求めました(5/28)。 アジアやアフリカでは、さらに論調が違います。 G20の議長国インドネシアは、一貫して停戦を訴え、日米に反対されてもプーチン大統領にG20サミットへの招待状を送りました。 6月30日、インドネシアのジョコ大統領は、プーチン大統領にモスクワで会談した際、ゼレンスキー大統領からのメッセージを渡したことを明らかにし「両首脳の接触を調整する用意がある」と述べています。 インドは中立の立場をとり、「ロシアからの資源輸入を停止してほしい」という米国の要請を退けました。 アフリカ諸国(52か国)は、ロシア軍即時撤退を求めた3月2日の国連決議では、その半分がロシア非難に加わりませんでした。 つまり、世界のすべての国が、プーチンをヒトラーと同一視する風潮に賛同しているわけではありません。 日本では、反ロシア的な世論が盛り上がっていますが、わが国もまた、対ロ制裁に追随する以外の選択肢があることを忘れるべきではありません。 ◆「ロシアは悪、ウクライナは正義」という報道は停戦交渉の妨げ マスコミの多くは、プーチンをヒトラーと同一視し、ロシア軍をナチスと同じように扱っています。 しかし、こうした「世論」は、停戦交渉の開始を妨げます。 「ロシア軍はナチスと同じだ」という見方からは、「停戦交渉はナチスに領土を譲るのに等しい」という結論が導き出されるからです。 停戦を呼びかけたフランスの歴史学者エマニュエル・トッド氏も「敵国が怪物である」という印象操作が交渉の妨げになることを警告していました。(※2) こうした風潮は、「ロシアは悪、ウクライナは正義」と色分けされた報道によって増幅されてきました。 その典型は、ロシア軍が一般人の犠牲も辞さない戦いを続けている、という批判です。 ただ、今回のウクライナの戦いは、もともと、国際法が想定したような戦いにはなっていません。 ウクライナ側では、大統領が国民に武器を取ることを呼びかけ、一般人が民兵になって戦争に参加するケースが常態化しています。 (※正規兵に比べて訓練が短い「民兵」を戦場に投入し、国際法に違反せずに戦い続けるのは難しいので、従来、国際社会は、こうした戦い方に否定的だった) 武器を取らなくても、市民がスマホやドローンを使ってロシア軍の兵士や戦車の居場所を通報し、そこにウクライナ軍が攻撃をしかけるようなケースも多々ありました。 ウクライナ市民も戦争の参加者になっているので、ロシア軍の攻撃も、それに見合って激化しました。 そのため、これ以上、戦いが拡大していけば、被害者はうなぎのぼりに増えていきます。 「『ロシア軍=悪。ウクライナ軍=正義』という色をつけた報道で煽ることは、停戦交渉の妨げになり、結果的に、被害者を増やすことを助けてしまうかもしれない」と、冷静に考え直すべき時が来たのです。 (後編につづく) (※1) Henry Kissinger: Ukraine Should Give Up Territory to Russia to Reach Peace BY GIULIA CARBONARO 5/24/22 https://www.newsweek.com/henry-kissinger-ukraine-should-give-territory-russia-reach-peace-1709488) (※2) 日経ビジネスオンライン「エマニュエル・トッド氏『日本はウクライナ戦争から抜け出せ』」2022.5.31 給付金は「資本主義の精神」を破壊する――守るべきは、近代日本を築いた「勤勉の哲学」【後編】 2022.06.29 http://hrp-newsfile.jp/2022/4304/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆経産省がスポーツ賭博の解禁を検討? 現政権のいう「資本主義」の中身の疑わしさは、他の例をみてもよくわかります。 6月7日、読売新聞が朝刊一面で「スポーツ賭博の解禁案、経産省議論へ」と題した記事を掲載しました(※読売の独自取材)。 そこでは、「経済産業省が、スポーツの試合結果やプレー内容を賭けの対象とする「スポーツベッティング(賭け)」の解禁に向けて取りまとめた素案が判明した」と報じられています。 同紙によれば、素案には、野球やサッカーなどのスポーツを見ながらスマホなどで試合の勝敗などを賭ける「スポーツ賭博」を解禁し、賭けを運営する業者からお金を取れば、スポーツ業界の収益増につながる、という構想が書かれているそうです。 しかし、それが解禁されれば、ギャンブル依存症患者の増加が懸念されます。 最近は、「試合中に選手が次にどんなプレーをするか」ということも賭けの対象になっているので、それが選手の八百長行為を招きかねません。 そのため、読売は「八百長やギャンブル依存を招きかねないスポーツ賭博には反対論が強く、スポーツ界はじめ各界の猛反発は必至だ」と結んでいました。 こうした政策もまた、資本主義の精神に反しています。 富というものは、「勤勉の上に築かれなければならない」からです(大川隆法著『釈迦の本心――政治編』宗教法人・幸福の科学)。 これは、安倍政権の頃から続く、「公営ギャンブル」の範囲を広げるプランです。 自公政権は、刑法では賭博が禁じられているのに、特別な法律で例外的に認められる競馬や競輪などの「公営ギャンブル」を増やし、経済を活性化させようとしてきました。 2018年には、カジノを含んだ統合型リゾート(IR)施設を整備する「IR推進法」が成立しています。 これに対して、大川隆法党総裁は、次のように批判しました。 「個人の罪のほうを放置して、公のほうがそれを推進するのは、バランスを欠いているのではないでしょうか」 (カジノを)「『違法ではない』とするだけの根拠がありません。公がカジノをしたとしても、個人の破滅につながる恐れがあることでは同じだからです」(大川隆法著『繁栄への決断』幸福の科学出版)。 今回の経産省の「スポーツ賭博の解禁案」も、同じ問題を抱えています。 「お金が儲かり、税収増につながるから、それでいい」というのでは、経済倫理は成り立ちません。 ◆「資本主義の精神」があってこそ、経済政策は意味を持つ 岸田首相は「新しい資本主義」を目指し、「分配なくして次の成長なし」と訴えました。 自民党は、給付金の「分配」に力を入れています。 公明党も、立憲民主党も、国民民主党も、共産党も、れいわ新選組も、負けじと分配を叫んでいます。 しかし、資本主義の根本には「勤勉の哲学」がなければなりません。 大川隆法・幸福実現党総裁は、岸田首相が分配のことばかりを考えていることに警鐘を鳴らしています。 前任者(菅首相)は、まだ「自助・共助・公助」と言っていましたが、岸田首相からは「勤勉に働く」という言葉が、まったく出てこないからです。 そして、「勤勉の哲学」を体現した二宮尊徳の生き方のなかにこそ、「資本主義の精神」があると指摘しました。 (以下、大川隆法著『減量の経済学』幸福の科学出版より引用) (尊徳は)「荒れ地を開墾して菜種を植えて、油を採って、それをまた売ってお金に換えて、自分でゼロから価値を生み出しています。 そして、とうとう背中に薪を背負って、本を読みながら歩いている、小学校によく立っていた二宮尊徳像、あれが「資本主義の精神」なのです。 だから、質素倹約をするところでは質素倹約をしながら、「勤勉の哲学」を失わずに自分の時間密度を高めていく。それから、人間的活動としての付加価値を増やしていく。これが全体の潮流になってくれば、国としては発展して富んでいくことになるわけです」 (引用終わり) 今の日本では、与党も野党も、給付金の分配を公約し、国民の「勤勉さ」を失わせるような経済政策を掲げています。 これは、ひとときのバラマキで票を稼ぎ、国民の未来を奪う、亡国の道です。 我われは、「地獄への道は善意で舗装されている」という格言を忘れてはなりません。 本来、資本主義の根源にあるものは、「時は金なり」という格言を体現したベンジャミン・フランクリンのような勤勉な生き方だからです。 二宮尊徳のように、「質素倹約をしながら、『勤勉の哲学』を失わずに自分の時間密度を高めていく」生き方です。 日本が明治以降、栄えてきたのは、そうした「勤勉の哲学」をもった偉人が数多く出てきたからです。 「天は自ら助くる者を助く」と訴えたサミュエル・スマイルズの『自助論』が翻訳され、ベストセラーになったころ、豊田佐吉は産業報国の志を立て、今のトヨタグループの源流を築きました。 我われが今、豊かな国で生きているのは、当時の人々が、志を立て、刻苦勉励する生き方を、後世の人たちのために残してくれたからです。 そうした伝統を破壊し、分配ばかりを欲しがる人を増やすような経済政策は間違っています。 バラマキ政策が主流になれば、「再配分システムのなかにおいて、個人個人がやる気をなくしていって、真面目に働いた者がバカを見るというような社会」がやってきます。 そうした暗黒の未来を阻止し、日本の未来を拓くためにも、幸福実現党は、小さな政府と安い税金、勤勉革命の実現を訴えてまいります。 【参照】 ・大川隆法著『減量の経済学』幸福の科学出版 ・大川隆法著『繁栄への決断』幸福の科学出版 ・大川隆法著『釈迦の本心――政治編』宗教法人・幸福の科学 ・朝日デジタル「コロナ給付金詐欺容疑者、20代以下68% SNSで『安易に加担』」編集委員・吉田伸八 2022年6月15日 ・読売オンライン「【独自】スポーツ賭博の解禁案、経産省が議論へ…八百長や依存症懸念で猛反発は必至」2022/06/07 給付金は「資本主義の精神」を破壊する――守るべきは、近代日本を築いた「勤勉の哲学」【前編】 2022.06.28 http://hrp-newsfile.jp/2022/4303/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆バラマキ政策が並ぶ各党参院選の公約 参院選に向けて、多くの政党が、票を求めて様々な交付金を公約しています。 自民党、公明党、立憲民主党だけを見ても、補助金や交付金、手当といった言葉が目白押しです。 自民党は「1兆円の地方創生臨時交付金」や「赤字でも賃上げする企業に対する補助金」「事業再構築補助金、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金」「出産育児一時金の引上げ」「大胆な児童手当や育休給付の拡充」などを公約。 公明党は「中小企業の賃上げを支援する補助金の拡充」「ものづくり、事業再構築、持続化補助金等」における「グリーン枠」の拡充、結婚と出産から保育、高等教育までの無償化をはかる「子育て応援トータルプラン」の策定、「基礎年金の再配分機能の強化」などを掲げました。 立憲民主党は「燃料等の購入費補助」「事業復活支援金の支給上限額倍増」「年金生活者支援給付金」「給付付き税額控除」「高校の授業料無償化や児童手当の所得制限撤廃」「児童手当などの延長・増額」で対抗したので、結局、どちらが多くのお金を配るか、という競争になってきています。 まるで打ち出の小槌があるかのように、大盤振る舞いのメニューが並んでいます。 配る金額の規模は、自民党よりも公明党のほうが大きく、立憲民主党や国民民主党よりも共産党のほうが大きいのですが、どの政党も、目指しているところは同じです。 それは、バラマキにほかなりません。 「身を切る改革」を掲げる維新の会は違うのではないか、と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらも、基本政策に「ベーシックインカム」を掲げ、全国民にお金を配ろうとしているので、結局、目指すところは同じです。 今の日本で、「小さな政府」と「減量」を訴えているのは、幸福実現党だけだと言えるでしょう。 ◆お金を配ってインフレに対抗? そんな馬鹿な・・・ コロナショック以降、給付金が大量に配られましたが、最近では、それが「物価高対策としてお金を配るべきだ」という政策に変わりつつあります。 4月26日には、政府が、地方創生臨時交付金を拡充し、1兆円の「コロナ禍における原油価格・物価高騰対応分」という枠を創設。 国会では、5月31日に、物価高騰対策を盛り込んだ2.7兆円の補正予算が成立し、そのうち、1.7兆円が原油高対策の補助金とされています(石油元売り会社への補助金)。 これに対して、立憲民主党をはじめとする野党は「岸田インフレ」と戦うために、もっと多くのお金を配ろうとしているのです。 しかし、これらの政策には、根本的な間違いがあります。 今のインフレは、コロナ対策で日銀が大量のお金を刷り、政府が大量のお金を使ったことで引き起こされました。 インフレの原因である「お金を配る」政策で、インフレ対策をすることはできません。 なぜ、インフレが進むのかというと、物やサービスの総量はたいして変わっていないのに、お金だけが大量に増えているからです。 物やサービスの総量が変わらない中で、お金の量が増えれば、1円あたりの価値が下がるのは当然です。 さらに、米国やヨーロッパが市場に流すお金を減らす中で、日本だけがお金をたくさん刷り続けているのですから、ドルやユーロに対して円は安くなっていきます。 日本は、食料や燃料、資源を外国から輸入しなければ経済が回らないので、円安になると、今までと同じ値段で製品がつくれなくなります。 そうなると、今まで110円で変えたものが120円、130円と値上がりし、生活が苦しくなっていきます。 そして、「物価高で生活が苦しい」という声が大きくなると、政治家はお金を配ることを約束しますが、それは、未来の物価高を生み出すので、何も問題は解決しません。 のどが渇いた人が塩水を飲み、もっとのどが渇くのと同じことです。 結局、バラマキをやめ、幸福実現党が訴える「減量の経済学」を実践しないと、物価高対策はうまくいきません。 政府の無駄な仕事を減量し、無駄に使われているお金や、見通しなく配られているお金を減らさないと、「また値段が上がった」と嘆く毎日を、延々と過ごさなければいけなくなります。 今回の物価高は、ロシアとウクライナの戦いの影響を受けていますが、本当の原因は日本国内にあるということを忘れてはなりません。 ◆給付金によって壊れる「経済倫理」 給付金には、それ以外にも、危険な一面があります。 それは、努力なくお金をもらえることをきっかけにして、悪の道に転落する人が出てくる、ということです。 例えば、最近、朝日新聞で、コロナ給付金詐欺の容疑者は、20代以下が7割を占めているということが報じられていました。 警察庁によれば、給付金詐欺で、昨年7月から今年の5月末までに摘発された3770人のうち10代と20代が68%を占めました。 (朝日デジタル「コロナ給付金詐欺容疑者、20代以下68% SNSで『安易に加担』」編集委員・吉田伸八 2022年6月15日) 警察庁幹部は、その人たちについて「申請名義人として使われたケースが多いと思われる」「若者がSNSなどを通じて、安易に犯罪に加担している状況がうかがえる」などと指摘しています。 若者が多いのは、日本の給与体系では若い人の年収が少ない、という背景もあるのでしょう。 しかし、「給付金」が悪の誘惑を生み出していることは見逃せません。 「努力をしなくてもお金をもらえる」という仕組みが、倫理の元になる「縁起の理法」に反しているからです。 努力なくして豊かさを望むのではなく、やはり「善因善果、悪因悪果」という掟に従い、経済倫理のもとに「豊かさ」を求めることが大事です。 ヨーロッパで資本主義ができたのは、宗教改革の後にできたキリスト教徒(プロテスタント)の倫理があったからだと言われています。 神の栄光を地上に著すために、人との契約を守り、勤勉に努力し、時間あたりの効率を上げていく人たちが、豊かな社会をつくり出してきました。 岸田総理は「新しい資本主義」を訴えているのに、こうした「倫理」の大切さを忘れています。 給付金が、人の勤勉の精神を奪い、転落の道にいざなっている事実からは目をつぶっているのです。 (後編につづく) 自民党の「反撃能力」 使えるのは、核ミサイルを落とされた後?【後編】 2022.06.12 http://hrp-newsfile.jp/2022/4287/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆有事にだけ、米国に「核持ち込み」をお願いするのは筋違い 冷戦以降、日本が、核を「持たず、つくらず、持ち込ませず」という三原則のうち、「持ち込ませず」をあいまいにしてきたのは、近隣諸国に「日本に米軍の核があるかもしれない」と思わせるためでした。 そうすることで旧自民党は、ソ連や中国、北朝鮮などをけん制してきましたが、これが、民主党政権が行った「核密約の公開」で崩れました。 核密約は、米軍が核を持ち込んでも日本政府は知らぬふりをする、ということが主な内容だったからです。 今の日本は、核保有国に包囲されている状態なので、本来は、「持ち込ませず」を廃止し、核抑止力を強化しなければいけません。 しかし、岸田首相は欧米のロシア制裁に歩調を合わせ、ウクライナに防弾チョッキなどを送り、ロシアを敵に回しました。 中国・北朝鮮・ロシアという三方位に脅威がある中で、岸田政権は、核抑止力が下がった状態を放置しているわけです。 自民党政調会の提言には「緊急事態における核の持ち込みと非核三原則についての考え方を踏襲していく」と書かれていました。 しかし、米軍の「核の持ち込み」は、本来、核攻撃や核威嚇を防ぐために、緊急事態になる前に、平時に行うべき政策です。 緊急事態になった後、バイデン大統領に「核を持ち込んでください」と言っても、ウクライナの時と同じく、「第三次大戦を避けたい」と言われる可能性が高いからです。 核密約を公開し、非核三原則を守ってきた日本が、米国に「有事にだけ核を持ち込んでください」と頼むのは、虫が良すぎる考え方だと言えます。 やはり、「核の持ち込み」が必要なのであれば、「核を持ち込ませず」という原則を廃止し、米軍がいつでも核を持ち込める体制に変えなければなりません。 ◆自民党の憲法改正案は「専守防衛」をよしとしている こうしてみると、自民党政調会の提言では、日本を守れないことがよくわかります。 それは、自民党の憲法改正案についても同じことが言えます。 自民党案では「自衛隊を明記」する条文を「加憲」するだけなので、「戦争放棄」と「戦力不保持」「交戦権の否認」を定めた今の9条がそのまま残ります。 9条の1項と2項の解釈から生まれた「専守防衛」が残るので、先制攻撃を受ける体制の中で「自衛隊を保持する」と言っているだけの話にすぎません。 これでは日本を守れないので、幸福実現党は、抜本的な憲法九条の改正が必要だと訴えています。 「戦争放棄」と「戦力不保持」「交戦権の否認」の全てを改め、国防軍を組織する必要があるからです。 ◆「憲法九条の抜本改正」こそが日本を救う 幸福実現党が憲法九条の抜本改正を訴えているのは、戦争がしたいからではありません。 今の体制では、日本が守れないからです。 大川隆法党総裁は2019年に「どうしても避けられない戦争が未来に起きる。それも、自分たちから侵略するのではなく、他国から侵略されて、国民に大いなる受難が来る」ということが予想されるならば、せめて国民の「生命・安全・財産」と「領土・領海・領空」を護るために、きっちりとした仕事をすることは、税金を集めている国家の使命である」と訴えています(『自由・民主・信仰の世界』第三章)。 専守防衛のように、被害が出た後に反撃する体制だと抑止力が効かず、日本への攻撃を誘発しかねません。 憲法9条のない他国と同じように、通常の軍隊で国を守れる体制をつくり、「抑止力」を機能させなければならないのです。 通常戦力には通常戦力、核には核でしか抑止が効かないため、幸福実現党は「非核三原則の撤廃」や「米軍による核の持ち込み容認」を主要政策に掲げています。 そして、米国だけに日本の運命を委ねることはできないので、「自前の核装備を積極的に検討」しなければいけないと考えています。 そうすることで、幸福実現党は、日本を守る「責任政党」としての使命を果たそうとしています。 【参照】 ・NHK NEWS WEB「自民 茂木幹事長『防衛費増額や “反撃能力”の保有 公約に』」(2022年5月29日) ・自由民主党政務調査会『新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言』(https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/203401_1.pdf) ・朝日デジタル「核密約公開、民主政権に再三『憂慮』 米外交公電で判明」(2011年5月7日) 自民党の「反撃能力」 使えるのは、核ミサイルを落とされた後?【前編】 2022.06.11 http://hrp-newsfile.jp/2022/4286/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆自民党が「防衛費増」と「反撃能力」を公約に盛り込む? 5月29日、自民党の茂木幹事長は、防衛費を「来年度予算で6兆円台の半ばか、それ以上」にし、「5年以内に対GDP比2%も念頭に」増やす方針を述べました。 弾道ミサイルなどに対処する「反撃能力」を持つことを「党の選挙公約にもしっかり書き込んでいきたい」と述べています。 防衛費の増額も、反撃能力の保有も、4月に自民党政調会が提言していた政策で、この二つが参院選の公約に入る可能性が濃厚になりました。 (※自民党は『新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言』を4月26日に党議決定) ◆自民党の「反撃能力」は、日本が先制攻撃を受けることが前提 しかし、自民党の防衛費増額は少なすぎますし、5年以内というのも遅すぎます。 この提言では、中国の公表国防予算が「日本の約4倍となっている」と言いながら、それに対抗できない増額案を出しています。 さらに、もう一つの「反撃能力」にも重大な欠陥があります。 これは「専守防衛」の範囲でしか使えないからです。 専守防衛とは「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使」することなので、結局、日本に大きな被害が出た後に反撃できると言っているだけです。 しかも、その反撃には、自衛のための「必要最小限」という条件がついています。 (*自民党政調会の提言には「専守防衛の考え方の下で、弾道ミサイル攻撃を含むわが国への武力攻撃に対する反撃能力を保有し、これらの攻撃を抑止し、対処する」と書かれている) ◆北朝鮮や中国の核ミサイルが落ちた後に「反撃」するのか 「武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使」する、と言っている政治家は、目の前の脅威を見ようとしていません。 北朝鮮と中国は核ミサイルを撃てるので、先制攻撃を許せば自衛隊は先に壊滅します。東京や名古屋、大阪といった主要都市も崩壊します。 通常兵器の戦いでも、先制攻撃を許せば、陸・海・空などの戦場で自衛隊は大きな被害を蒙ります。 現代では、ミサイルや戦闘機、火砲といった飛び道具の性能が昔よりも格段に上がっているからです。 「専守防衛」の日本には、先制攻撃で優位に立てるので、自民党が言う「反撃能力」で、中国や北朝鮮の「攻撃を抑止し、対処する」ことはできないでしょう。 ◆中国が核ミサイルを持つ前に生まれた「専守防衛」を現代の防衛に持ち込むのは筋違いな話 そもそも、「専守防衛」という考え方は、ミサイルをはじめとした兵器の性能の向上を無視しています。 「専守防衛」という言葉は、1955年に、当時の防衛庁長官(杉原荒太氏)が初めて国会答弁で使いました。 ソ連が初めて宇宙空間に人工衛星を送ったのは1957年(スプートニクショック)。 米ソのミサイル開発競争が本格化する時代の前に使われた言葉が、今の日本の防衛政策の中心に置かれています。 1955年には、ソ連からアメリカの主要都市に届く長距離ミサイル(大陸間弾道弾)は、まだ、ありませんでした。 ソ連は射程距離2000km以下の弾道ミサイルを持っていましたが、当時は、今よりも、ミサイルの数が、はるかに少なかったのです。 当然、そのころには、中国も北朝鮮も核ミサイルを持っていません。 そんな時代に出てきた「専守防衛」を、中国や北朝鮮、ロシアの核ミサイルに包囲された今の日本に持ち込んだなら、どんな防衛政策も機能しなくなります。 ◆岸田首相は、民主党政権の「核持ち込み」についての方針を踏襲 さらに、自民党の防衛政策には、岸田首相に特有の「核アレルギー」という問題があります。 岸田首相は、今年の3月、国会で、米軍の「核持ち込み」については、民主党政権の岡田外務大臣の答弁を踏襲すると語っています。 2010年に、岡田氏は、以下のように述べました。 「緊急事態ということが発生して、しかし、核の一時的寄港ということを認めないと日本の安全が守れないというような事態がもし発生したとすれば、それは、そのときの政権が政権の命運をかけて決断をし、国民の皆さんに説明する」 岸田政権は、この鳩山政権の方針を踏襲したのです。 (後編につづく) ※岸田氏の発言の全文 「令和4年3月7日の参議院予算委員会での岸田総理答弁」 「かつて、2010年の当時の岡田外務大臣のこの発言でありますが、余り仮定の議論をすべきではないと思いますが、緊急事態ということが発生して、しかし、核の一時的寄港ということを認めないと日本の安全が守れないというような事態がもし発生したとすれば、それはそのときの政権が政権の命運を懸けて決断し、国民の皆さんに説明する、そういうことであるという発言があります。これが当時の岡田外務大臣の発言でありますが、こうした答弁について岸田内閣においても引き継いでいるというのが立場であります」 (*これが自民政調会の提言の中に引用されている) 新築住宅への「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理【後編】 2022.06.10 新築住宅への「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理【後編】 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆安易に「強制力」を使いたがる政治の危険性 前編では、「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理について指摘してきしました。 結論を言えば、新築住宅への太陽光の発電パネル設置の義務化は、企業活動の自由を圧迫する政策と言わざるをえません。 CO2削減を錦の御旗にして、環境確保条例で、住宅メーカーに負担を上乗せしたがっています。 「CO2を削減しなければ大変なことになる」という論理を使い、経済を権力で統制しようとしているのです。 危機を理由にして、経済統制を行いたがる傾向は、最近の中央政府の政策にもみられます。 5月27日、経産省は、本年の冬に電力需給が逼迫することを想定し、大規模停電の恐れが高まった時、大企業などに「電気使用制限」の発令を検討すると公表しました。 これは、違反した場合は罰金を伴います。 「需給がひっ迫したらしかたがない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、原発の再稼働を進めずに、企業に罰則つきの電力制限を課するのは筋が通りません。 2022年6月9日の時点で、稼働している原発は3基しかありません。 電力の供給が少なくなるというのなら、まず、発電能力を高めるのが先決です。 それをなさずに、足りない電力をいかに「分配」するかだけを考え、企業活動の自由を統制しようとするのは間違っています。 危機を理由に、経済統制を行う傾向は、コロナ対策の頃から強まってきました。 大川隆法党総裁は、2021年に「『緊急事態』と称して全体主義が入ってくるので、気をつけなければいけないところがあると思います」と警鐘を鳴らしました(『コロナ不況にどう立ち向かうか』)。 政府が強制力を駆使する前に、なすべきことがあります。 原発を十分に稼働させずに、無理に太陽光ばかりを推進したり、企業に罰則つきの電力制限を課したりするのは、筋が通りません。 幸福実現党は、こうした現状を打破してまいります。 原発を早く再稼働させ、日本経済が健全に発展する基盤をつくります。 不安定な太陽光発電に比べると、原発には安定電源としての強みがあります。 また、燃料費が高騰している今、火力発電だけに依存するのは望ましくありません。 バランスのとれた電源構成を再構築しなければいけないのです。 【参照】 大川隆法著『コロナ不況にどう立ち向かうか』幸福の科学出版 「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)の改正について~カーボンハーフの実現に向けた実効性ある制度のあり方について~(中間のまとめ)」(2022年5月 東京都環境審議会) 週刊ダイヤモンド「消費者と住宅メーカーが両損 『太陽光発電義務化』の無理筋」2022/6/4 東京新聞(WEB版)「太陽光パネル義務付け条例制定に向けて東京都がパブコメ開始 反対論に小池知事『おかしなことでない』」2022年5月27日 杉山大志「新築住宅への太陽光義務化 見送りは妥当か否か」(2021.8.2) キャノングローバル戦略研究所HP 原子力規制委員会HP「原子力発電所の現在の運転状況」 新築住宅への「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理【前編】 2022.06.09 http://hrp-newsfile.jp/2022/4284/ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「新築住宅への太陽光の発電パネル設置の義務化」とは 東京都は、2030年までにCO2を2000年比で半分にする(50%減)という目標を掲げています。 それを実現するための政策の一つとして、全国に先んじて、新築の一戸建てやマンションへの太陽光の発電パネル設置を義務化する方針が出されました。 昨年12月、小池都知事が、新築住宅を対象にして、住宅メーカーに太陽光パネル設置を義務化する方針を打ち出しました。 その半年後、5月に開催された都の有識者検討会(東京都環境審議会)の答申案(※)にも、その内容が盛り込まれました。 ただ、この政策は、まだ、国レベルでは実施されていません。 昨年の6月、政府が公共建築物を新築する場合、原則として太陽光発電設備を設置する方針を決めましたが、負担の重さなどを理由に、新築住宅への設置義務化は見送られたのです。 しかし、この政策が、今後、国や他の自治体に取り入れられる可能性があるので、注意する必要があります。 (※本稿で参照する「答申案」の出典は「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)の改正について~カーボンハーフの実現に向けた実効性ある制度のあり方について~(中間のまとめ)」) ◆「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理(1) パネルを付けた後にビルが建ったらどうする? 新築住宅への太陽光の発電パネル設置の義務化といっても、一応、答申案では「隣接建物による日陰等」と例をあげ、「設置に不向きな場合を考慮する」としています。 (※日当たりが悪い地域では、代替案として他の再生可能エネルギーの設置や再エネ電力購入などを講じる方針) そのうえで、答申案は、85%の住宅がパネル設置に「適」しているとしています。 しかし、そこには、「条件付き」の「適」が含まれています。 (※これは「東京ソーラー屋根台帳」という小平市の「環境部 環境政策課」が作成したWEBマップの数字) 統計や地図上では可能に見えても、現地の「条件」を見たら無理だった、ということがありえるわけです。 太陽光パネルの設置前には、高層ビルの有無や、土地の高低差、近隣の建物の並び方、日射取得率などから発電のシミュレーションを行います。 また、日影規制や斜線制限(建築基準法)、高度地区の高さ制限(都市計画法)といった規制に合わせなければいけません。 一つ一つの案件を見ていかなければならないので、太陽光パネルの設置は、一律の「義務化」にそぐわないところがあります。 さらに言えば、家を建てた時は太陽光発電ができても、その後、近隣にビルが建てば、十分な発電量が確保できなくなります。 住宅が太陽光パネル設置に適していると判定されても、その状態が続くかどうかは限らないわけです。 ◆「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理(2) メーカーの負担増 住宅販売減 もう一つの問題は、太陽光パネルの費用(100万円程度)が住宅価格に上乗せされるということです。 木材などの資材の価格が上がる中で、さらに値上がりするのです。 また、半導体不足で太陽光パネルの供給が遅れているという問題もあります。 その中でパネル設置を義務化すれば、住宅の完成も遅れます。 住宅をつくる際にも、売る際にも、マイナスの影響が出ます。 「太陽光パネル設置の初期費用は、パネルの余剰電力売却金で回収できる」という意見もありますが、家の値段は高いので、消費者の中には「パネル代まで払えない」という人が出てきます。 また、「初期費用を住宅メーカーが負担し、後で、それをパネルの余剰電力売却金から回収する」という方法も考えられています。 しかし、この場合でも、回収が終わるまでの負担がメーカーにのしかかります。 政府が企業や消費者を補助金で支援したとしても、結局、そのお金の出どころは税金か国債です。 やはり、この政策が国民の負担増につながることは否定できません。 ◆「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理(3) 義務目標が未達の場合、事業者名を公表 答申案の内容から「義務化」の対象になるのは、大手住宅メーカー50社程度とみられています。 (「環境審議会がまとめた案では、一戸建てなど中小規模の建物では、建築主ではなく、中小規模の建物の供給量が都内で年間2万平方メートル以上の住宅メーカーに義務が課される。都内で年間に販売される新築住宅の5割強が対象になる見通しだ」東京新聞WEB版 2022年5月27日) 都は住宅メーカーなどに、環境対策についての報告を求め、基準未達成の場合は「都による指導、助言、指示、勧告、氏名公表などを通して、適正履行を促していくべきである」と書かれています。 従わなければ業者名を公表し、国民の前でさらし者にするという、恐怖政治的な手法が取り入れられているのです。 ◆「太陽光発電パネル設置の義務化」の不条理(4) ウィグル自治区でつくられた太陽光パネルでもおとがめなし? この政策は事業者にとっては負担増になるため、コストを切り詰めなければいけなくなります。 この政策が実施されれば、多くの企業が、中国製の安い太陽光パネルを使うことになりそうです。 しかし、キャノングローバル戦略研究所の杉山大志氏によれば、最も安い結晶シリコン方式の中国製パネルのうち、半分近くが新疆ウイグル自治区で生産されているそうです。 「いま最も安価で大量に普及しているのは結晶シリコン方式であり、世界における太陽光発電用結晶シリコンの80%は中国製である。そして、うち半分以上が新疆ウイグル自治区における生産であり、世界に占める新疆ウイグル自治区の生産量のシェアは実に45%に達する。」 (杉山大志「新築住宅への太陽光義務化 見送りは妥当か否か」(2021.8.2) キャノングローバル戦略研究所HP) しかし、都の有識者会議の答申書では、なぜか、この問題は取り上げられていませんでした。 (後編につづく) すべてを表示する 1 2 3 … 11 Next »