税金を重くするばかりでは国民は豊かにならない【幸福実現党NEWS(170号)解説】
幸福実現党政務調査会代理 小川佳世子
幸福実現党NEWS(170号)
https://info.hr-party.jp/newspaper/2025/14707/
解説動画
https://youtu.be/IaGgQ-oPdY4
◆税制改正大綱の議論
2025年度からの税金の制度をどうするかという議論が、これから本格化します。税金の制度は一年ごとに変わります。
まず、与党の税制調査会が、各省庁や業界団体からの要望を聞いて議論をし、来年度以降の税金のあり方、どの分野にどのように税金を課すかなどを具体的にまとめていきます。
これを「税制改正大綱」と呼んでいます。
これを年末までに閣議決定し、これに基づいて国税については財務省が、地方税は総務省が改正法案を作成します。
そして、今年は1月24日から始まる通常国会で議論し、3月までに法案を可決、成立させ、4月以降に新しい税金の制度が始まるという流れです。
今回のNEWSは、「税制改正大綱」の内容を踏まえ、政府が来年度以降、どのような税金の仕組みを考えているかについて、今話題になっている「年収103万円の壁」見直しの話を中心にまとめました。
なお、「税制改正大綱」についてもう一段詳しい解説については、幸福実現党のYouTube番組「言論チャンネル」で公開しますので、こちらも是非ご覧ください。
◆「103万円の壁」の見直しとは?
まず、最近話題になっている「103万円の壁」の引き上げについて、見ていきましょう。
今回、税制改正が話題になったのは、昨年の衆院選で国民民主党が「103万円の壁を引き上げ、国民の手取りを増やす」という政策を掲げて躍進したことが一つのきっかけです。
一定の年収を超えるまでは所得税は課税されません。この所得税がかかり始める金額が、年収103万円で、それを「103万円の壁」と呼んでいるのです。
国民民主党は、この壁を178万円まで上げようと主張して注目を浴びています。
一定の時間しか働かないパートやアルバイトの人たちは、なるべく税金を取られて手取りを減らしたくないので、一年間の収入が103万円を超えないように働く時間を調整している人が多くいます。
所得税が取られる年収が178万円まで引き上げられることで、こうした人たちはもう少し働こうかなという気持ちになります。
また、会社からお給料をもらっている人たちや、自営業などで収入を得ている人たちも、現在の収入から178万円が差し引かれた金額に、所得税がかかることになります。
壁が178万円になれば、収入から103万円が差し引かれる場合に比べて、所得税がかけられる金額が減ることになり、それだけ所得税が減税されるというわけです。
例えば、年間600万円の収入を得ている人は、年間14.6万円の減税になるという試算もあります。
しかし、自民党、公明党が作成した与党の案は、123万円までの引き上げにしよう。
しかも、そのうち10万円分は、年間162.5万円以下の給料をもらっている人にのみ恩恵が及ぶような形でお茶を濁そうとしているのです。つまり、大半の人にとっては、113万円までしか差し引かれないということになります。
そうなると、年収600万円の人は、1万円程度しか減税にならないと見込まれています。
現在、自民・公明の与党だけでは衆院で過半数の議席がありません。ですので、与党案はそのまま国会で成立することはなく、1月24日からの通常国会で駆け引きが始まります。
国民民主も、衆院選の公約として掲げた178万円の壁に向けて妥協はしないでしょう。
確かにこの国民民主党案は、年収に関わらず1人当たり4万円という決まった額を減税するという岸田政権の減税策に比べ、働く意欲が増すという点でよい減税策と言えます。
ただし、国民民主党は、膨らみ続けている多額の国家予算を減らすことは考えていないようです。
そうなると、減税分の赤字国債を発行しなければならなくなり、政府の借金が増えることになります。これは、さらに物価高を加速させることにもつながるのです。
また、資産課税など別の増税策も打ち出していますので、国民民主党の案が日本経済を元気にすることにつながるかは、よくよく注意して見ていく必要があります。
◆防衛を口実にした法人税の増税
また、今回の税制改正大綱の注目ポイントは、岸田政権の時に議論されていた防衛増税の導入が明記されたことです。
私たち幸福実現党は、防衛費の増額は必要だと考えています。
しかしながら、本来、税金というのは、防衛や治安維持、大規模災害対策など、政府にしかできない仕事をしてもらうために納めているものです。
無駄な省庁をたくさんつくった上、バラマキ政策や社会保障の大盤振る舞いをしておきながら、「防衛予算を増やさなくてはいけないから、増税します」というのは筋が通りません。
政府がしなくてもいい仕事を思い切って減らしても、それでも税金が足りないというなら、防衛増税は理解できますが、増税の前にもっと政府の仕事を減量するべきです。
ちなみに、今回の防衛増税の導入で、法人税は約1%分上がる見込みです。決して軽くない負担がのしかかります。
さらに、円安が続いて、海外から兵器を買う時の値段がどんどん上がっています。今後も「防衛予算が足りないから増税します」という流れになりかねません。
しかも、与党がまとめた「税制改正大綱」では、今後の方針として「法人税を引き上げつつターゲットを絞った政策対応を実施するなど、メリハリのある法人税体系を構築していく」と書かれています。
簡単に言うと、「以前、法人税を引き下げたけど、国内投資や賃上げは思うように進まなかったので、これから法人税は増税していきますが、政府の言うことを聞いて投資や賃上げ、子育て支援などをした企業には、ご褒美として法人税を下げてあげます」ということです。
これは企業の経済活動の自由を奪うという意味で、まさに「大きな政府」の発想です。
企業も、本当は頑張っている従業員の給料を上げたいのです。しかし、円安で様々なモノの値段が高くなる、原発が動かず、再エネ賦課金なども取られて電気代は高くなる、働き方改革で人件費が増える、という状態であれば、そんなに簡単に給料を上げられません。
こうした逆風に加えて法人税の増税まで待っているとしたら、経営者たちはやっていられません。
◆社会保険料の対象となる「106万円の壁」の方が問題
企業の負担はそれだけではありません。社会保険料の増額が待っています。
現在、税制改正の議論と合わせて、社会保険加入範囲の拡大の議論が出ています。
所得税がかかりはじめる103万円の壁を引き上げる話は先ほどお伝えしましたが、次に「106万円の壁」というものがあります。
これは、年収106万円をこえると、社会保険への加入が義務化され、年金などの社会保険料を払わなくてはいけなくなるということです。
この106万円の壁をなくし、2027年10月には、一週間に20時間以上働いた人は社会保険料に加入し、保険料を払ってもらおうという話になっているのです。
これによって、新たに200万人が厚生年金の加入対象になるとのことです。
社会保険料を払うことになるとどうなるか。まず、従業員にとっては手取りが大きく減ることになります。
同時に、企業の負担も増えます。社会保険料は「労使折半」といって、従業員と会社が半分ずつ負担する仕組みです。ですから、企業にとっては人件費が増えることになります。
それでも、スーパーや飲食店など、パートやアルバイトで支えられている仕事では、社会保険料を理由に従業員を減らすわけにはいきません。
実際、年収106万円の壁を意識する従業員がシフトを減らし、働き手が確保できないという悩みを抱えている経営者は多いようです。
そこで政府は、年収156万円未満の人に対しては、従業員の手取りが減らないように、社会保険料を会社側がより多く負担してもいいよ、という仕組みをつくるとのことです。
ただ、会社の側もこれ以上の負担は無理です。裏面のグラフに示されているように、税金と社会保険料の滞納を原因とした倒産は、昨年は前年の2倍近くに増えました。
そこで、従業員の負担分を一部肩代わりしたことによって負担が重くなる会社には、政府が支援をするそうです。
もちろん、この「支援」は税金で行われるわけです。個人や企業の負担を増やしておきながら、「負担が増えたら税金で支援をします」というのは意味が分かりません。
一体、何をやっているのでしょうか。
国民民主は、103万円の所得税の壁については問題意識を持っていますが、この106万円の壁をなくして社会保険料の負担が増える案については「将来、もらえるお金が増えるのだから」ということで、むしろ賛成の立場です。
しかし、それでは社会保険料の負担なら増やしてもいいということになりかねず、国民の手取りは減っていく一方です。
◆「小さな政府」を目指さなければ国民の負担は減らない
幸福実現党は、公的年金や介護保険などの社会保障も含めて、政府の仕事を思い切って減らすという「小さな政府」の実現を訴えています。
政府の仕事を減らせば、税金や社会保険料など、個人や企業の負担を軽くすることができますし、何より政府が民間の仕事に口を挟むことが無くなるので、自由の範囲が拡大します。
そもそも、年金など、老後の面倒をすべて政府に見てもらうというのは不可能なのです。
大川隆法総裁は、著書『経営者マインドの秘密』のなかで、「政府が大きくなると、無駄な仕事がとても多くなる」と指摘し、さらに次のように述べています。
「『大きな政府』というのは、必ず独裁化するし、強権化する。また、そこからお金を、飴を撒くようにバラまいてもらって生きていく国民が増えれば、必ず、それは奴隷化していくことになるので、堕落するのです」
実際、公的年金制度では、政府は後先のことを考えずに年金を大盤振る舞いしただけでなく、国民から預かったお金を保養施設などの建設に使って大赤字を出し、目減りさせました。
その結果、今の中堅世代以降は、自分が払った年金よりも、将来年金として受け取る額が減ると見込まれています。
そのような失敗を覆い隠すため、政府は一人でも多くの人を年金制度に加入させようとするなど、次から次へと国民の負担を増やす施策を打ち出してくるわけです。
また、国民の側も、「これだけ税金や社会保険料を払っているのだから、年老いた親の面倒は政府が見るべきだ」と考えるようになり、家族の絆が希薄になっています。
こうした悪循環を食い止めるためにも、政府の仕事を思い切って減らす必要があると幸福実現党は考えています。
◆地方税の導入に反対の声をあげよう
そのためにも、「大きな政府」や「重い税金」の動きがあれば、反対の声を上げていかなくてはいけないと思います。
2000年から徐々に地方自治体の課税自主権が強化されたことで、次々と新たな地方税が導入されています。
地方自治体は、地方税法で決められている住民税、固定資産税、事業税などの税金以外に、条例で税金を新しく導入できますが、2000年の法改正により、自治体で使い道を自由に決められる税金を導入するハードルが下がったのです。
代表的なものが宿泊税です。2002年に東京都で導入され、現在では3都府県・7市町で導入されており、千葉県でも導入が検討されています。
例えば京都市は、2018年から宿泊税を導入し、市内のホテルや旅館の宿泊客から税金を徴収しています。現在の最高額は1000円ですが、2026年3月から最高で1泊1万円の税金をとるという方針が発表されました。
これによって、文化財保護や増えつつある観光客の受け入れ環境の整備などに使うと言いますが、税金が重くなると、宿泊客が減るのではないかという懸念も出ています。
また、地方で導入された税が全国に広がるケースもあります。
例えば、森林環境税は2003年に高知県が導入し、その後37府県に広がり、昨年から国税として国民全員に年間1000円が課税されるようになったのです。
また、滋賀県では現在、交通税の導入が議論されていますが、根強い反対の声があります。
自治体が税金を集めて、果たして有効に使われるのか。負担を増やすのではなく、他の自治体の仕事を削る余地はないのか。こうしたことを検討せず、安易に新しい税金を導入すれば、私たちの負担はどんどん重くなります。
幸福実現党は現在、公認地方議員が55人いますが、各地で増税を食い止めるために頑張っています。地方から増税の風穴を開けさせないためにも、幸福実現党の地方議員を是非応援してください。共に増税反対の声をあげていきましょう。
参考
宿泊税
https://www.nhk.or.jp/shutoken/chiba/articles/101/016/38/#:~:text
クローズアップ現代 地方税
https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/episode/te/JR8VX44N46/
総務省(法定外税)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_24.html
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_23.html