【COP28】「脱炭素」は姿を変えた共産主義
幸福実現党党首 釈量子
◆中東の産油国で開催されたCOP28
2023年11月30日から12月12日にかけて、UAE=アラブ首長国連邦のドバイ、エキスポシティで、気候変動対策を話し合うCOP28が開催されました。
しかし、10月7日のハマス攻撃、2022年からのウクライナ戦争と、世界中が温暖化防止よりエネルギー安全保障や経済を優先せざるを得なくなり、温暖化防止への熱意は失速してきています。
昨年ウクライナ戦争で石油価格が高騰したので、バイデン大統領はOPECに石油の増産を求めました。
ところが普段は「温暖化防止だ、石油を使うな」と言っておきながら、増産を頼み込むバイデン大統領への反発は大きく、ほとんど増産に応じませんでした。
逆に中国の仲介で、昨年3月にサウジとイランが外交を正常化するなど、存在感を見せてきました。
◆「CO2温暖化説」はfake science
今回のCOP28の議長は、UAEスルタン・アル・ジャベル産業先端技術大臣ですが、11月21日のオンラインイベントで化石燃料の段階的廃止の必要性を問われ、「科学的根拠はない」などと発言をし、批判の声が上がりました。
「人為的CO2温暖化説」は「fake scienceだ」とする科学者は世界中いて、アメリカ人の過半数の人は、脱炭素などまったくの無駄だと考えています。
◆グローバルストックテイク
今回の合意内容をみると、「パリ協定」の枠組みの下、「グローバルストックテイク」について初めての決定が採択され、特徴は二つあります。簡単に言うと、「トップダウン」と「ボトムアップ」です。
(1)トップダウン型
トップダウン型の「世界共通目標」として、「産業革命以降の気温上昇を2度以内に抑え、できれば1.5度努力する」などの枠組みを決めました。
(2)ボトムアップ型
その共通目標のもと、各国が、国情に合わせて「自主目標」を設定します。
日本は「2030年までに、13年度比45%削減、さらに長期的には2050年にカーボンニュートラルを達成する」という目標を立てています。
この「自主目標」を実効あらしめるため、進捗を定期的に評価する仕組みを「グローバル・ストックテイク」です。「ストックテイク」とは「棚卸」の意味です。
ただ、自主目標なので、各国の目標を積み上げると2030年には2010年比で14%増えてしまいます。
さらにCOP26のグラスゴーで「1.5度目標、2050年カーボンニュートラル」を強調したために、2030年までに2010年比で45%の削減、すごい勢いで減らさなくてはなりません。
コロナで経済活動が停滞した2020年で、わずか5.8%減なので、中国のように2030年をピークに、その後から減らします。またインドのように2030年以降も排出を増やす国もあるので、形骸化は確実です。
◆合意内容
ではCOP28の合意内容を見てみます。
・およそ10年間で化石燃料からの移行を加速
・2030年までに世界の再エネ設備容量を3倍に
・途上国を支援する基金への先進国の一層の貢献を呼びかけ(ロス&ダメージ基金)
最大の争点は「化石燃料」の扱いです。これまで言及されてこなかった石炭や石油、ガスなどすべての「化石燃料からの脱却」を、産油国開催のCOPで打ち出せるかが焦点になっていました。
ところがやはり、各国の合意を取り付けることができませんでした。
当初は「化石燃料を削減する」という言葉でしたが、化石燃料の消費と生産の両方を削減する。最終的には、化石燃料からの移行を進め、この重要な10年間の行動を加速するという文言になりました。
また、「排出削減対策を講じない石炭火力」についても、当初案では、「段階的廃止(フェーズアウト)」という主張があったのですが、サウジアラビアや、ロシア、中国などの反対で「段階的削減に向けた取り組みを加速」という表現に「後退」しました。
「加速」について定義があるわけではないので「抜け道だらけ」と言えばその通りです。
◆「化石燃料の脱却」は極めて非現実的
では、化石燃料から「脱却する」ことはできるのかというと、無理です。
現状、世界の一次エネルギー(加工されていないエネルギー)のうち、8割は化石燃料に依存しています。
温室効果ガス・世界最大の排出国である中国を筆頭に、多くの国がエネルギーの8割以上を化石燃料に依存しています。現代文明に必要な鉄鋼やプラスチック、農業で必要な肥料もCO2排出が前提です。
アメリカも「化石燃料を削減すべき」としていた欧州に同調していますが、「削減する」どころか、今、欧州向けの石油を増加させています。
米国エネルギー情報局(EIA)によると、ウクライナ紛争でロシア制裁の一環でロシア産石炭を輸入禁止措置が取られるようになってから、2022年8月~23年7月までの一年間、アメリカ産石炭の欧州への輸出が前年比22%増の3310万トンに拡大しています。
また、米国を含めた北米(米国、メキシコ、カナダ)で、LNG(液化天然ガス)の輸出基地建設が急拡大しています。2027年までにLNGの輸出能力は現状からほぼ倍増の見込みです。
二枚舌のアメリカのリーダーの姿を見れば、他国が真面目に取り組むわけもありません。
◆中国を利するだけの再エネ目標
COP28の合意内容の2点目」は、「世界全体で再エネ設備容量を2030年までに3倍」という目標が掲げられました。
再エネの太陽光や風力発電の設備には、重要鉱物が必要ですが、これは、世界のシェアを占める中国への依存を強めることになります。
参考;山本隆三「COPで表明、再エネ3倍増 阻む重要鉱物の中国依存」
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/32285
◆途上国支援で環境マネーは国際規模に
3点目に、「ロス&ダメージに対応するための基金」を含む、途上国支援のための先進国の支援の大枠が決まったことです。
ロス(損失)というのは、気候関連災害で失われたもの、ダメージを受けた被害を指します。
基金は世界銀行のもとに設置し、立ち上げ経費は先進国が出すことなどが決まり、日本を含む各国から「いくら出します」という誓約(プレッジ)が行われました。
岸田文雄首相も、立ち上げ経費として1000万ドル(約15億円)の拠出を表明しています。これまでのところ、世界で合わせて7億9200万ドルが拠出されています。
「支援を受けるのは気候変動の影響が大きい脆弱な途上国」に絞り、「先進国を中心に、義務でなく、自主的な資金拠出を求める」などで合意しましたが、ウクライナ戦争でも「支援疲れ」が起き、自国の防衛に回す必要も高まっています。
となると、途上国は「支援がなくなれば削減しません」ということになるのは必定だと思います。
化石燃料を使って豊かになった先進国が、途上国の経済発展に必要な化石燃料の利用に反対して太陽と風力だけというのは、価値観の押し付けだ、エコ植民地主義だという反発も当然でしょう。
本質的には、先進国からお金を吸い上げようとする「共産主義」の発想で、今回支援のための金額は過去最大に増加しました。
しかし、これらの資金公約は、計画を実施し、途上国を支援するためにははるかに及びません。途上国を交えてこの目標を達成するには、金額ベースで、年間1000億ドルという資金が必要で、現実的ではありません。
◆「脱・脱炭素」が必要
今回のCOP28で掲げられた目標は、実現すれば西側先進国の没落の引き金ともなるものばかりです。
岸田首相は「すでにおよそ20%を削減し、着実に進んでいる」と世界にアピールしましたが、その陰で、莫大な負担に苦しむ国民がいます。
民主党政権時代から始まった「再エネ全量買い取り制度」で太陽光発電を大量導入した結果、再エネ賦課金として、いま国民は毎年2.7兆円を電気料金に上乗せされています。
また日本政府は「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」と称して、官民合わせて今後10年間で150兆円を超える脱炭素投資を行うとしています。そのうち、20兆円規模は政府がGX移行債を発行して調達します。
その償還には「カーボン・プライシング」、つまり企業などの排出するCO2に価格をつけ、それによって排出者の行動を変化させるために導入する政策手法を導入すると見られます。
日本は大きな目標を掲げ、国際舞台で資金を拠出しているうちに、国内は倒産、失業の山になるでしぃう。
日本の全産業を停止させて化石燃料を全く使わなかったとしても、世界の排出量の5%しか現象せず、それで下がる気温は0.00002~0.00004度と言われます。
来年のアメリカ大統領選でトランプ大統領が復活すれば、「パリ協定」どころか「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」からの脱退の可能性もあると言われています。
日本も世界統一政府のような全体主義的な動きから距離を置き、無駄な脱炭素方針を根本的に見直しすべきです。
最適なエネルギー政策が必要ですし、また、それを支えるため、いまは無き「長銀」のような、強靭な金融を復活させなければなりません。
◆原子力の設備容量を2050年までに3倍に
一つだけ良かったのは、COP28の合意文章で初めて、原子力への言及があったことです。
「世界全体で原子力の設備容量を2050年までに3倍にする」という宣言には、アメリカや日本をはじめ22か国が署名しました。
脱炭素に向けた電源の大量確保という文脈で出てきた文面とは言え、日本にとっても国益に適うものです。
経済同友会が、「縮・原発」から「活・原子力」に転換するという提言を出しましたが、政治の責任として、再稼働・新増設に向けて迅速に舵を切るべきです。
世界の海運・石油大手も紅海ルートを避け、喜望峰を迂回する航路へ切り替えています。石油の95%を中東に依存する日本は安穏としていられません。
最後に、幸福実現党の大川隆法総裁は、2009年の立党時に、次のように述べておられました。
「CO2の増加によって、地球が温暖化し、破滅的な最後になる」という考え方は、一種の終末論」と喝破され「そうなることはありえません。必ず地球の自動調整装置が働きます。CO2の増加と温暖化とは特別な因果関係はないのです。(『幸福維新』/第一部 夢のある国へ2009年7月3日「ミラクルの起こし方」)
そして、「姿を変えたマルキシズムに気をつけなければいけない」と警鐘を鳴らされました。
いま、私たちの住む地球のシステム自体が人間の想像を超え、はるかに安定的であることも分かってきていますが、人間の浅知恵では計り知れない地球を創造された神の叡智に、思いを馳せる必要もあると思います。